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特開2024-100855液状組成物を輸送及び貯蔵するための容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100855
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】液状組成物を輸送及び貯蔵するための容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/02 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B65D88/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024080395
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2021520991の分割
【原出願日】2019-10-14
(31)【優先権主張番号】62/746,043
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アール・ドゥルズネスキー
(72)【発明者】
【氏名】レナード・エイチ・パリス
(72)【発明者】
【氏名】サラ・レイノー
(57)【要約】
【課題】易燃性、可燃性、発熱分解を起こしやすい、爆発性、及び/又はその他の危険性を有する、たとえば液体の有機ペルオキシド含有組成物のような、組成物を安全に貯蔵及び輸送するのに有用な容器が提供される。
【解決手段】その容器としては、熱硬化性ポリマーを含有する壁面、さらにはベントメカニズムを有する封じ込め容器が挙げられる。その封じ込め容器は、たとえばポリエチレンのような熱可塑性ポリマーを使用した回転成形プロセスによって製造することが可能であり、それを架橋させて、熱硬化性のポリマーとする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状組成物を貯蔵及び輸送するために有用な容器であって、前記容器が、ベントメカニズムを備え、且つ熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器を含む、容器。
【請求項2】
前記熱硬化性ポリマーが、少なくとも1種の架橋された熱可塑性ポリマーを含有する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記熱硬化性ポリマーが、少なくとも1種の架橋されたポリエチレンを含有する、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記熱硬化性ポリマーが、架橋された塩素化ポリエチレン;架橋された低密度ポリエチレン;架橋された線状低密度ポリエチレン;架橋された高密度ポリエチレン;エチレンと、オクテン、ヘプテン、ヘキセン、ペンテン、ブテン、プロペン、及びそれらの組合せからなる群より選択される1種又は複数のコモノマーとのコポリマー;並びにそれらのブレンド物からなる群より選択される少なくとも1種の架橋ポリエチレンを含有する、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記熱硬化性ポリマーが、融解抵抗性の前記熱硬化性ポリマーを与えるのに有効な架橋レベルを有し、ここで前記容器が、Test Procedure Class Number 6020、Large Scale Testing for Fire Performance of Intermediate Bulk Containers(FM Approvals LLC、2016年9月)に従って試験して20分間、破損又は漏洩することなく火炎環境に耐えることが可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
前記封じ込め容器が、250リットル~1500リットルの内容積を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記封じ込め容器が、十分に透明であって、前記封じ込め容器の内部にパッケージ化された液状組成物を肉眼で外部から検出することを可能とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の容器。
【請求項8】
前記容器が、前記封じ込め容器を少なくとも部分的に取り囲み、且つパレットに取り付けられるか又はパレットを含む保護ケージをさらに含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記封じ込め容器が、空のときに、自立しているか、折り畳み可能か、又は崩すことが可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の容器。
【請求項10】
前記ベントメカニズムの少なくとも一部が、前記封じ込め容器と一体になっている、請求項1~9のいずれか1項に記載の容器。
【請求項11】
前記ベントメカニズムが、ラプチャーディスク、圧力放出弁、ポップオフキャップ、ラプチャーボルト、ばね荷重クランプリング、熱がかかったときに融解する熱可塑性ポリマー含有する圧力放出部分、並びに、封じ込め容器に内圧がかかったときに、前記封じ込め容器の破裂圧力に達するより前に、前記じ込め容器の内部の圧力を制御しながら放出させるための、前記封じ込め容器の壁面の残りの部分よりも十分に薄い、前記封じ込め容器の壁面における圧力放出部分、からなる群より選択される機器を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の容器。
【請求項12】
前記封じ込め容器が、充填剤、難燃剤、防火剤、抗酸化剤、光安定剤、内部離型剤及び外部離型剤、並びにそれらの組合せからなる群より選択される1種又は複数の添加物をさらに含有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の容器。
【請求項13】
前記封じ込め容器が、前記熱硬化性ポリマーを含む単一層からなる壁面を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の容器。
【請求項14】
前記封じ込め容器が、前記熱硬化性ポリマーを含む少なくとも1種の層と共に複数の層を含む壁面を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の容器。
【請求項15】
前記封じ込め容器が、第一の熱硬化性ポリマーを含有する第一の層と、第二の熱硬化性ポリマーを含有する第二の層とを含む壁面を有し、前記第一の熱硬化性ポリマーと前記第二の熱硬化性ポリマーとが相互に異なっている、請求項1~12又は14のいずれか1項に記載の容器。
【請求項16】
前記熱硬化性ポリマーが、ASTM D-1998-06(2006)により測定して、少なくとも60%の重量保持率を示す、請求項1~15のいずれか1項に記載の容器。
【請求項17】
前記封じ込め容器が、0.5mm~125mmの平均厚みを有する壁面を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の容器。
【請求項18】
前記容器が、充填口又は小出し用栓の少なくとも1つをさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の容器。
【請求項19】
前記熱硬化性ポリマーが非易燃性である、請求項1~18のいずれか1項に記載の容器。
【請求項20】
パッケージ化した組成物であって、請求項1~19のいずれか1項に記載の容器と、前記容器の中にパッケージ化された液状組成物とを含む、パッケージ化した組成物。
【請求項21】
前記液状組成物が、易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解可能のうちの少なくとも1つである少なくとも1種の化合物を含有する、請求項20に記載のパッケージ化した組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1種の化合物が、少なくとも1種の有機ペルオキシドを含む、請求項21に記載のパッケージ化した組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種の有機ペルオキシドが、前記組成物の中に、ニートの形態、1種又は複数の溶媒と組み合わせた溶液の形態、又は水性エマルションの形態で存在する、請求項22に記載のパッケージ化した組成物。
【請求項24】
容器及び液状組成物を含むパッケージ化した組成物であって、前記容器の中にパッケージ化された、容器、並びに易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解可能のうちの少なくとも1つである少なくとも1種の化合物を含有し、前記容器には、ベントメカニズム及び充填口又は小出し用栓の少なくとも1つが備えられ、且つ1000リットル又は1250リットルの内容積を有する、前記組成物のための封じ込め容器を含み、前記少なくとも1種の架橋ポリエチレンに融解抵抗性を与えるのに有効な架橋レベルを有する少なくとも1種の架橋ポリエチレンを含有する壁面を有し、それによって、前記容器が、Test Procedure Class Number 6020、Large Scale Testing for Fire Performance of Intermediate Bulk Containers(FM Approvals LLC、2016年9月)に従って試験して20分間、破損又は漏洩することなく火炎環境に耐えることが可能である、パッケージ化した組成物。
【請求項25】
請求項1~19のいずれか1項に記載の容器を作製する方法であって、回転成形、吹込み成形、又は三次元プリンティングによって前記封じ込め容器を成形するステップを含む、方法。
【請求項26】
熱可塑性ポリマーを成形して、前記封じ込め容器のための前駆体構造物とし、且つその後で、前記前駆体構造物の前記熱可塑性ポリマーを架橋させて、前記熱可塑性ポリマーを前記熱硬化性ポリマーに転換させ、それによって、前記封じ込め容器を得る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記熱可塑性ポリマーの架橋が、前記熱可塑性ポリマーを、1種又は複数のフリーラジカル重合開始剤と、任意選択により1種又は複数の架橋助剤と共に反応させること;前記熱可塑性ポリマーを湿分硬化させることであって、前記熱可塑性ポリマーには、シラン基が含まれること;及び放射線で硬化させることであって、前記熱可塑性ポリマーが、放射線に暴露されること、からなる群より選択される方法により達成される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
液状組成物をパッケージ化する方法であって、請求項1~19のいずれか1項に記載の容器の中に前記組成物を導入するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状組成物、特に、易燃性(flammable)若しくは可燃性(combustible)である液状組成物か、又は、たとえば、発熱分解を起こしやすい有機ペルオキシドのような化合物を含む液状組成物を保持するように適応させた容器、より詳しくは、複合中間製品容器(composite intermediate bulk container)に関する。本発明の容器は、慣用されるプラスチック製の複合中間製品容器に比較して、火炎環境下に、特定の時間の間且つ特定の条件下で、破損することなく耐えることが可能であるという点で、改良された安全特性を示す。本発明はさらに、そのような改良された容器を作製するための方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の複合中間製品容器は、各種のタイプの液状組成物を貯蔵及び輸送するために、産業界では、多年にわたって広く使用されてきた。中間製品容器(intermediate bulk container、一般的にIBCと呼ばれている)は、典型的には、約1000リットル又は1250リットルの容量を有していて、貯蔵及び/又は輸送される組成物の量が、55ガロンのドラムに収納できるのには多すぎるが、鉄道輸送タンク車やタンクローリーを満杯にするには少なすぎるような場合に使用するのに都合がよい。プラスチック製の複合IBCは、熱可塑性ポリマー、たとえばポリエチレンで構成された、封じ込め容器(containment vessel)を有しているが、それは、パレットに固定されるか、又はパレットと一体化された保護ケージの中に収納されている。満足のいく耐薬品性及び耐溶媒性を有する熱可塑性ポリマーを入手することは可能ではあるが、そのようなポリマーは、そのプラスチック製の複合IBCが、(たとえば、火災の場合に遭遇するような)高熱条件に暴露されたような場合、容易に軟化及び融解する。そのような条件下では、そのプラスチック製の封じ込め容器は、その構造的な完全性を失い、その内容物を放出させてしまう可能性がある。
【0003】
プラスチック製の複合IBCに耐火性を付与するための、いくつかのアプローチ方法が、特許文献に記載されている。いくつかの特許文献(独国特許出願公開第102015012163A号明細書、欧州特許出願公開第0986421A1号明細書、欧州特許出願公開第2979991A1号明細書、韓国特許出願公開第20170033332A号明細書、韓国特許出願公開第20180056711A号明細書、及び米国特許第5921420号明細書)では、耐火性の外装の使用に焦点をあてており、IBCを完全に取り囲むように置いて、火災から遮断する。米国特許第5924589号明細書、米国特許第5984126号明細書、米国特許出願公開第2016/0289566A1号明細書、及び米国特許第7828995B2号明細書に記載されているまた別のアプローチ方法には、プラスチックの中に難燃性添加物を組み入れるか、又は火災の際にはIBCのまわりに断熱層を形成させるような膨張性コーティングを用いてそのプラスチックを塗装することが含まれている。米国特許第9738441B2号明細書に記載されている第三のアプローチ方法では、火災や、たとえばフォークリフトのような機械的な移送装置が原因の損傷からIBCを保護するための、組込式の第二の容器を使用している。
【0004】
発熱分解を起こす可能性がある、たとえば有機ペルオキシドのような化合物をパッケージ化するのに特に適した容器も、当業界では公知である。たとえば、米国特許第8,783,503号明細書には、発熱分解を起こしやすい化合物と、任意選択により1種又は複数の有機希釈剤とを含むパッケージ化配合物が記載されているが、この場合、その配合物は、ガスを放出するベントを備え、且つ(a)その配合物がいかなる希釈剤も含まない場合には、発熱分解を起こしやすいその化合物の流出温度、又は(b)その配合物が有機希釈剤を含んでいる場合には、希釈剤の全重量の少なくとも50重量%の沸騰温度よりも高くないVicat B軟化温度を有する熱可塑性プラスチック物質から作製された、少なくとも250リットルの容積を有する容器の中にパッケージ化されている。しかしながら、そのようなパッケージ化は、理想的とは言えないが、その理由は、火災で、その熱可塑性プラスチック物質が融解するのに十分な温度と時間があった場合には、その容器の内容物がすべて放出される可能性があるからである。また別なアプローチ方法が、米国特許出願公開第2012/0184685号明細書に記載されているが、そこでは、液状のペルオキシド配合物を収納し、最小のベント面積/容積の比率を有するように設計された、ステンレス鋼製のIBCが開示されている。しかしながら、そのようなステンレス鋼製IBCは、ある種の欠点を有している。それらは相対的に重く、それによって輸送コストが上昇し、また現場での移動もより困難となる。さらに、そのようなステンレス鋼製IBCは不透明であり、そのため、それらの中にある液体のレベルを知ることは容易ではない。その上、このタイプのIBCは、比較的に高コストである。
【0005】
米国特許第4,857,257号明細書及び米国特許出願公開第2017/0247534号明細書には、高密度ポリエチレン(HDPE)ホモポリマー、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び各種のアルファオレフィンモノマーを含むポリエチレンコポリマーを使用した、架橋させた回転成形タンクの製造が記載されている。米国特許第5,260,381号明細書にも、少量のエチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマーを含む、回転成形し、架橋させたタンクを作製するための同様のアプローチ方法が開示されている。米国特許第8,911,842号明細書には、2層の架橋層の間に封入された、架橋されていない内部バリヤー層を含む、3層のタンクが教示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
易燃性、可燃性、又はその他の危険性がある液体を貯蔵及び輸送するのに有用であり、且つより厳しいガイドライン、たとえば、NFPA(National Fire Protection Association)のコード30の2018年版に記載されているようなガイドラインに適合することが可能な、新規なタイプの容器の開発が望まれているであろう。本発明が目的としているのは、FM 6020(Approval Standard for Composite Intermediate Bulk Containers)に記載された試験方法に従って、火炎環境下で20分間破損することなく耐えることが可能な、熱硬化性の中間製品容器(IBC)である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ある種の態様においては、組成物(特には、液状組成物、たとえば、易燃性、可燃性、爆発性の少なくとも1つであるか、発熱分解の可能性があるか、又はその他の危険がある、少なくとも1種の化合物を含有する液状組成物)を貯蔵及び輸送するのに有用な容器を提供するが、その容器には、ベントメカニズムが備えられ、且つ熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器が含まれる。
【0008】
本発明の他の態様では、容器と、その容器の中にパッケージ化された液状組成物(特には、易燃性、可燃性、爆発性の少なくとも1つであるか、発熱分解の可能性があるか、又はその他の危険がある、少なくとも1種の化合物を含有する液状組成物)とを含むパッケージ化された組成物が提供されるが、ここでその容器には、ベントメカニズムが備えられ、且つ熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器が含まれる。
【0009】
本発明の態様によりさらに提供されるのは、ベントメカニズムが備えられ、且つ熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器が含まれる容器を作製する方法であり、ここでその方法には、回転成形、吹込み成形、又は三次元プリンティングによってその封じ込め容器を成形するステップが含まれる。
【0010】
本発明のまたさらなる態様においては、液状組成物(たとえば、易燃性、可燃性、発熱分解の可能性、爆発性、又はその他の危険性の少なくとも1つである、少なくとも1種の化合物を含有する液状組成物)をパッケージ化する方法が提供されるが、ここでその方法には、ベントメカニズムが備えられ、且つ熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器が含まれる容器の中にその組成物を導入するステップが含まれる。
【0011】
本発明は、添付の図面と関連させて読むことによって、以下の説明から理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】HDPEを架橋/硬化させるための、各種の量/担持レベル(ペルオキシドを含まない場合も含む)の有機ペルオキシドの場合の、架橋対時間を示すレオグラフである。
図2】HDPEを架橋/硬化させるための、各種の量/担持レベル(ペルオキシドを含まない場合も含む)の有機ペルオキシドの場合の、架橋対時間を示すレオグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による容器には、熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器が含まれ、それに加えてベントメカニズムも有しているが、そのベントメカニズムによって、その封じ込め容器の内容物が熱に暴露されたり、及び/又は分解を起こして揮発性の分解反応生成物を発生したりしたときに、その封じ込め容器の内部の過剰な圧力を放出することが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様においては、その容器が、容量が1000リットル又は1250リットルの中間製品容器であり、それは、Test Procedure Class Number 6020、Large Scale Testing for Fire Performance of Intermediate Bulk Containers(FM Approvals LLC、2016年9月)に従った試験で、火炎環境下で20分間、破損又は漏洩することなく耐えることが可能であるように構成されている。このTest Procedureは、National Fire Protection Association Flammable and Combustible Liquids NFPA Code30(2018)のガイドラインに引用されている。大規模な火炎暴露試験としては、ミネラルシール油を充填した1000リットル又は1250リットルの容量の8個の中間製品容器の2×2×2のパレット化したアレイを、ミネラルシール油のプールの火炎に20分間暴露させるものが挙げられる。その試験アレイは、3.0×3.0mのグリッドで間隔を空けた4本のスプリンクラーの下に、その中心を置く。この試験に合格するためには、その20分間の暴露の間、又は試験終了後24時間の間に、その中間製品容器の破損又は漏洩がまったくないことが必要とされる。中間製品容器における液体レベルより上での穴の形成は、その正味の面積が13cm2を超えなければ、許容される。
【0015】
耐火性であって、且つ易燃性、可燃性、爆発性であるか、又は発熱分解を起こす化合物を含む組成物を安全に貯蔵及び輸送することを可能とすることができる容器を提供するために、その容器の構成成分として使用される封じ込め容器は、熱硬化性ポリマーを含有している。「熱硬化性ポリマー」とは、一般的には、熱可塑性ポリマーとは対照的に、加熱されたときに融解しないポリマーを意味していると理解されたい。本発明の文脈においては、熱硬化性ポリマーは、1000リットル又は1250リットルの容量を有し、そのポリマーを含む壁面を有する封じ込め容器が中間製品容器に採用された場合には、そのようにして得られた中間製品容器が、Test Procedure Class Number 6020、Large Scale Testing for Fire Performance of Intermediate Bulk Containers(FM Approvals LLC、2016年9月)に記載された試験方法に従って、火炎環境下で20分間、破損又は漏洩することなく耐えることが可能であるような、融解に対して十分な抵抗性を有するポリマーである。各種の実施態様においては、その封じ込め容器の壁面は、熱硬化性ポリマーを含有するか、それから実質的になるか、又はそれからなっている。すなわち、その封じ込め容器は、熱硬化性ポリマーを含む壁面を有しているが、ここでその壁面は、本発明の各種の特定の実施態様による熱硬化性ポリマー以外の、1種又は複数の追加の物質を含んでいても、或いは含んでいなくてもよい。
【0016】
熱硬化性ポリマーは、繰り返して、加熱すれば軟化又は融解し、冷却すれば硬化するであろうポリマーである熱可塑性ポリマーとは対照的に、融解及び成形に対して抵抗性を有するポリマーである。典型的には、熱硬化性ポリマーは、分子架橋プロセスを起こす物質であり、このプロセスは不可逆であり、且つその物質に不融性を与える。架橋は、ポリマー鎖の間の反応を介して起こり、三次元の網目構造を形成させる。本発明のある種の実施態様においては、その封じ込め容器の壁面の熱硬化性ポリマーが、熱硬化性(熱硬化可能な)樹脂組成物、たとえばエポキシ樹脂組成物、メラミン樹脂組成物、フェノール樹脂組成物、熱硬化可能なビニルエステル樹脂組成物、熱硬化可能なポリエステル樹脂組成物、又は熱硬化可能なポリウレタン若しくはポリウレア樹脂組成物を硬化させることにより、製造される。しかしながら、本発明の好ましい実施態様においては、その熱硬化性ポリマーが、架橋された熱可塑性ポリマー、すなわち、その熱可塑性ポリマーに十分に高い架橋レベルを付与することによって熱硬化性ポリマーに転換させた熱可塑性ポリマーである(達成されるその架橋密度が、熱可塑性ポリマーを熱硬化性ポリマーに転換させるのに有効である)。1つの好ましい実施態様においては、その架橋された熱可塑性プラスチックが、約34%~37%の範囲の塩素含量を有する、XL-CPEとして知られている架橋された塩素化ポリエチレンである。
【0017】
熱可塑性ポリマー(たとえば、CPE)を架橋させる前に、必要に応じて、当業界では公知の各種の添加物を加えて、そのIBCの難燃性をさらに向上させることも可能である。水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムのような鉱物質の化合物を、本発明における難燃剤として使用することもできる。リン酸エステル化合物を含めて、リン難燃剤は、可燃性物質の固相に作用する非ハロゲン化化合物である。その他の難燃化プラスチック添加物としては、臭素化難燃剤(BRF)のタイプも挙げられる。それらの添加物は、単独で使用することもできるし、或いは、難燃効率を向上させる目的で、組合せで使用することもできる。具体的には、臭素化化合物、塩素化化合物、臭素化ポリマー、又は塩素化ポリマーが、三酸化アンチモンと共に、相乗効果で使用されることも多い。この組合せは、気相ラジカル消失における、臭素及び塩素ラジカルの放出速度を上げるための触媒として機能する。
【0018】
有機ペルオキシド、特にジアルキルタイプのペルオキシドを使用して、回転成形プロセスによって、架橋された(熱硬化性)熱可塑性ポリマーを含有するIBCのための封じ込め容器を製造するのが好ましい。性質的に熱可塑性ポリマーを熱硬化性とするための、架橋に最小限必要な量を得るためには、そのジアルキルペルオキシドの濃度は、(その熱可塑性ポリマーがポリエチレンである場合には)、少なくとも0.2phr(100重量部の樹脂あたりの、ペルオキシドの重量部)とするべきである。使用するペルオキシドの範囲は、0.2phr~4.0phr、好ましくは0.25phr~3.0phr、より好ましくは0.3phr~2.0phr、さらにより好ましくは0.4phr~1.5phr、なおもより好ましくは0.4~1.0phrとすることができる。好ましくは、トリアリルタイプの架橋助剤(たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、又はトリアリルホスフェート、それらは、組合せた形で存在していてもよい)もまた、ペルオキシドと共に、0.2phr~3.0phr、好ましくは0.3phr~2.0phr、より好ましくは0.4phr~1.0phrのレベルで使用される。
【0019】
したがって、本発明の好ましい実施態様においては、その熱硬化性ポリマーが、架橋された熱可塑性ポリマー、特には、その熱可塑性ポリマーを熱硬化性ポリマーに転換させるのに十分なレベルで架橋された熱可塑性樹脂である。本発明の好ましい実施態様においては、最初に、熱可塑性ポリマーを成形して、所望する封じ込め容器のサイズ及び形状と実質的に同じものを有する、封じ込め容器の前駆体構造とし、次いで、その前駆体構造の中の熱可塑性ポリマーを架橋させて、熱硬化性ポリマーとし、本発明の容器で使用するのに適した封じ込め容器を得る。好適な成形方法としては、たとえば、吹込み成形、回転成形、及び三次元プリンティングが挙げられる。他の好ましい方法においては、熱可塑性ポリマーの成形と架橋とを同時に起こさせるか、又はオーバーラップ方式(この場合、成形と架橋が、ある程度まで同時に起きる;たとえば、熱可塑性ポリマーを成形して封じ込め容器とする初期のステージの間は、架橋が起きないが、その成形ステージの後の方では、架橋が開始される)で起こさせる。
【0020】
本発明に従って封じ込め容器を構成するのに使用される熱可塑性ポリマーにおける架橋度は、たとえば、ASTM D-1998-06(2006)に従って、架橋された熱可塑性ポリマーのサンプルをキシレン溶解試験にかけることによって、モニターすることができる。この試験においては、最初に、架橋された熱可塑性ポリマーの断片であるサンプルを、封じ込め容器から取り出す。次いで、そのサンプルを秤量する。次いで、そのサンプルを、キシレン中で煮沸する。次いで、そのサンプル再秤量し、次式を用いてその%重量保持率を計算する:(煮沸後のサンプル重量)÷(初期サンプル重量)×100。その%重量保持率が高い程、架橋の程度が高い。本発明の各種の実施態様においては、封じ込め容器に利用される、熱可塑性ポリマーを架橋させることによって得られた熱硬化性ポリマーが、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、さらには100%の、ASTM D-1998-06(2006)に従って測定された重量保持率を有している。
【0021】
計器(すなわち、レオメーター)を使用する他の方法も存在するが、それでは、以下の標準化試験手順に従って、相対的な架橋度を求めることができる:ASTM D-5289、ASTM D-5992、及びASTM D-6601の無ローター(rotorless)レオメーター(ムービングダイレオメーター、又はMDR若しくはRPA装置ともよばれている)法、これらは、架橋量を計量するために使用され、本発明の実施において、dN・mのトルク値に基づいて架橋度を求めることができる。
【0022】
有機ペルオキシドを輸送するための、架橋された物質から作製されたIBCにおいて特に重要なことは、特に臨界SADT(self accelerating decomposition temperature=自己加速分解温度)、(及びそれより高温)での、G’の交点での、温度に対するその架橋された物質の弾性率G’応答の関係である。これらG’の測定では、TA Instrument RSA3 Dynamic Mechanical Analyzer(歪み制御式)及び/又はTA Instruments RSA-G2 Solid Analyzer(歪み制御式)、及び/又はAnton Paar MCR502レオメーター(応力制御式)を使用し、ASTM D4065-12(Standard Practice for Plastics:Dynamic Mechanical Properties:Determination and Report of Procedures)に記載の手順及び計算法を使用する。その「SADT」及び/又は「流出(run-away)」温度及びそれより高温では、有機ペルオキシドが、制御不能な自己加速的分解を起こし、熱及び易燃性ガスを発生する。「SADT」及び/又は「流出」温度又はそれよりも高温での封じ込め容器の完全性を保持する目的で、IBCのための架橋された封じ込め容器を設計しようとすると、G’とSADT温度(危険温度)との関係は重要である。まとめれば、架橋された熱可塑性プラスチック物質から作製されたIBC封じ込め容器が、Rubbery Plateauを有するように設計していることが、特に有利である(この領域では、ガラス転移温度(Tg)より高い温度、貯蔵されている物質のSADT及びそれより高い温度の関数として、モジュラスG’が効果的に一定である)。架橋されていない熱可塑性プラスチック物質は、それらのDMAにおいて、そのような特性を示すことはないであろう。
【0023】
本発明の各種の実施態様においては、熱可塑性ポリマーを架橋させることによって得られ、封じ込め容器において使用される熱硬化性ポリマーは、ASTM D-5289-95(再承認、2001年)により、ムービングダイレオメーターを使用し、190℃、100cpm、及び1度アークの試験条件下で測定して、下記のトルク値を有している:少なくとも7dN・m、少なくとも8dN・m、少なくとも9dN・m、少なくとも10dN・m、少なくとも15dN・m、少なくとも20dN・m、少なくとも25dN・m、少なくとも30dN・m、少なくとも35dN・m、少なくとも40dN・m、少なくとも45dN・m、又は少なくとも50dN・m。
【0024】
封じ込め容器の壁面を構成するために使用される熱硬化性ポリマーとして、架橋された熱可塑性ポリマーを使用すると、いくつかのメリットを得ることができる。多くの熱可塑性ポリマー、たとえば高密度ポリエチレン(HDPE)は、ほとんど半透明である。しかしながら、高度に架橋させると、そのような熱可塑性ポリマーが、はるかに高い透明度を有するようにすることができる。このことは、特に、その架橋反応を十分に高い温度で実施したような場合に可能となる(たとえば、その熱可塑性ポリマーがHDPEである場合なら、約190℃の温度)。封じ込め容器の壁面を構成させるために、より高度に架橋された熱可塑性ポリマーを使用することによって、その封じ込め容器の中の液体のレベルを、より容易にモニターすることが可能となる(すなわち、その壁面が透明であることによって、その容器の中の液体のレベルを、速やかに目視評価することが可能となる)。
【0025】
それに加えてさらに有利なのは、架橋させることによって、その封じ込め容器の耐衝撃性が、架橋されていない熱可塑性ポリマーから成形された封じ込め容器に比較して、改良できるということである。たとえば、典型的には、ある種の有機ペルオキシドを貯蔵するのに推奨され、使用されている非架橋のHDPEは、特に低温では、脆くなる可能性がある。架橋されていない熱可塑性ポリマーたとえばHDPEから作製された封じ込め容器は、取扱いの際に、比較的小さな機械的衝撃を受けただけでも、亀裂を生じる可能性があり、そのためそのような亀裂が、その封じ込め容器の完全性を損ない、その内容物の漏洩をもたらす可能性がある。したがって、熱可塑性ポリマー、たとえばHDPEを架橋させることによって、改良された低温耐衝撃性を有する容器が得られる。
【0026】
架橋された熱可塑性プラスチック物質の耐衝撃性は、Fractovis(Ceast/Instron)高速計装衝撃試験器を使用して測定される。この高速衝撃試験の役割は、衝撃事象から、IBCのための封じ込め容器を構成するために使用される、架橋された熱可塑性プラスチック物質の、靱性、加重-撓み曲線、及び全エネルギー吸収量を測定することである。速度が可変であるので、高速での実際の衝撃値をシミュレートすることができる(たとえば、フォークリフト車の金属製フォークによる衝撃)。この精緻な衝撃試験によって、衝撃ヘッド及びロードセルを含有するドロップハンマー(tup)を使用したミリ秒の衝撃の間の全力エネルギー量及びエネルギー曲線が得られる。Fractovis衝撃試験器は、プラスチック産業界の要請に合わせて、以下のASTM試験法に従い、設計され作製されたものである:ASTM D3763-15(High Speed Puncture Properties of Plastics Using Load and Displacement Sensors)、さらには他の方法、たとえばASTM D5628-96(Impact Resistance of Flat,Rigid Plastic Specimens by Means of Falling Dart(Tup or Falling Mass)。
【0027】
本発明の少なくともいくつかの実施態様によって得られる、さらにまた別の有力な利点は、架橋によって、その熱可塑性ポリマーの可撓性が改良できるということである。すなわち、架橋された熱可塑性ポリマーを含む封じ込め容器の壁面を、類似の架橋されていない形の熱可塑性ポリマーを含む封じ込め容器の可撓性に比較して、より高い可撓性とすることができる。たとえば、十分に架橋されたポリエチレンは、エラストマーであると考えることも可能である。したがって、そのような架橋ポリエチレンで作製された封じ込め容器は、(その封じ込め容器の中に液体が存在しない場合)、非架橋ポリエチレンの壁面を有する封じ込め容器に比較して、顕著に、より容易に崩すことができる。より容易に崩すことができる封じ込め容器は、その封じ込め容器が空のときに、貯蔵したり処分したりするのに有利となりうるし、さらには、封じ込め容器の内容物を分取するときに、その中に残っている液体のレベルを、より容易にモニターすることができる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様においては、架橋ポリエチレンが利用されるが、他の好適な架橋された熱可塑性ポリマーとしては、たとえば以下のものが挙げられる:他のタイプのポリオレフィン、並びにオレフィンと他のタイプのモノマーとのコポリマー。出発物質の熱可塑性のポリエチレンは、当業界では公知の各種のエチレンのホモポリマー及びコポリマーであってよい。好適なエチレンコポリマーとしては、エチレンが、そのコポリマーの中の繰り返し単位の、重量で、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を占め、それとバランス量の繰り返し単位が、1種又は複数のコモノマー、たとえばオレフィン、特にはC3~C10アルファ-オレフィン、及び/又は酢酸ビニルである、コポリマーが挙げられる。
【0029】
その容器の中にパッケージ化される組成物が、易燃性及び可燃性の液体及び/又は有機ペルオキシドを含有している場合には、架橋された高密度ポリエチレン(HDPE)が特に好ましいが、その理由は、それが、一般的には、そのような物質によって劣化されることがなく、且つ通常の貯蔵条件下(たとえば、約40℃までの温度)では、有機ペルオキシドとは化学的に両立しうるからである。
【0030】
使用するのに適したものとしてはさらに、重合させた後に、たとえば塩素化処理によって変性されたエチレンのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。したがって、本発明のある種の実施態様においては、その出発物質の熱可塑性のポリエチレンには、少なくとも塩素化ポリエチレンが含まれる。1つの実施態様においては、少なくとも1種の塩素化ポリエチレンと、少なくとも1種の非塩素化ポリエチレン(たとえば、高密度ポリエチレン)とのブレンド物が採用される。より一般的には、2種以上の異なった架橋された熱可塑性ポリマーのブレンド物を使用することが可能であろう。たとえば、2種以上の熱可塑性ポリマーを共にブレンドし、次いでそのブレンド物を架橋させて、熱硬化性ポリマーを得ることも可能である。
【0031】
熱可塑性ポリマーの架橋は、当業界では公知の各種適切な手段によって実施すればよいが、但し、そこで採用される単一又は複数の方法で、元々の熱可塑性ポリマーを熱硬化性ポリマーに変化させるに十分な架橋度が得られなければならない。たとえば、化学的架橋法及び物理的架橋法のいずれを採用してもよい。そのような方法の1つとして、熱可塑性ポリマーを、任意選択により1種又は複数の架橋助剤と共に、1種又は複数の有機ペルオキシドと反応させる方法が挙げられる。このアプローチ方法では、典型的には、複数のポリマー鎖の間で炭素-炭素結合が形成される。好適な有機ペルオキシドとしては、以下のものが挙げられる:ジアルキルペルオキシド、アルキルアリールペルオキシド、ジアシルペルオキシド、有機ヒドロペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ケトンペルオキシド、及びモノペルオキシカーボネート、たとえば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3;p-ジ-t-ブチルペルオキシ(ジ-イソプロピル)ベンゼン;m-ジ-t-ブチルペルオキシ(ジ-イソプロピル)ベンゼン;イソプロペニル-t-ブチルクミルペルオキシド;1-(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)-3-イソプロペニルベンゼン;t-ブチルクミルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジ-t-ブチルペルオキシド;ジ-t-アミルペルオキシド;n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート;;1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;Trigonox(登録商標)301;Trigonox(登録商標)311;並びにそれらの組合せ。好ましい有機ペルオキシドは、99℃より高い温度で、1時間の半減期を有するものである。本発明の好ましい実施態様においては、比較的に高い架橋度を達成するためには、熱可塑性ポリマーの0.5重量%~3重量%である有機ペルオキシドの量が採用される。好適な架橋助剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:1分子あたり2個以上の反応性炭素-炭素二重結合(たとえば、アリル、ビニル芳香族、及び(メタ)アクリレート官能基の中に存在しているもの)を含む架橋助剤、たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、及びそれらの組合せ。また別の好適な架橋助剤は、Nofmer(登録商標)MSDのブランド名で販売されているアルファ-メチルスチレンダイマー(2,3-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン)であるが、このものは、単独で使用することも、或いは上に挙げたアリル官能性化学種との組合せで使用することも可能である。本発明の好ましい実施態様においては、使用される架橋助剤の量は、有機ペルオキシドの量と同等、たとえば、熱可塑性ポリマーの0.5重量%~6重量%である。架橋の際に存在させてもよいその他の成分としては、以下のものが挙げられる:ヒドロキノンたとえば、モノ-t-ブチルヒドロキノン(MTBHQ)及びHQMME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、ペルオキシド捕捉剤(早すぎる架橋を防止するため)たとえば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(略称:4-OH-TEMPO)、及び/又は抗酸化剤(ヒンダードフェノール及びチオベースの抗酸化剤を含む)。熱可塑性ポリマーの架橋を起こさせるために、有機ペルオキシド以外のフリーラジカル重合開始剤を使用することもまた可能である。
【0032】
また別の好適な方法としては、熱可塑性ポリマーを湿分硬化させる方法が挙げられるが、その場合、その熱可塑性ポリマーには、架橋を可能とするシラン基が含まれる。熱及び/又はシラノールの縮合触媒を採用して、架橋速度を加速させてもよい。シラン官能化ポリエチレンも含めて、シラン官能化熱可塑性ポリマーは、当業界には周知である。熱可塑性ポリマーにシラン官能基を導入するためには、シラングラフト法を使用することができる。ポリエチレンを、ビニルトリアルコキシシラン及びフリーラジカル重合開始剤たとえば有機ペルオキシドと組み合せ、且つポリエチレンとビニルトリアルコキシシランとの反応を開始させることによって、たとえば、ビニルトリアルコキシシラン(たとえば、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランを含む)をポリエチレン鎖の上にグラフトさせることができるが、この場合、シランのグラフト反応が起きて、ポリマー鎖の上にトリアルコキシシラン官能基が形成される。水が存在すると、そのトリアルコキシシラン官能基が、転換してシラノール官能基となり、次いでそれらが互いに縮合して、架橋したシロキサン結合を形成する。
【0033】
さらなる方法においては、放射線硬化が使用されるが、この場合は、熱可塑性ポリマーを、放射線たとえばγ線又は電子ビームの照射に暴露させる。ペルオキシドにより開始させる架橋の場合と同様に、放射線硬化によって形成される共有結合的な架橋は、典型的には、ポリマー鎖の間の炭素-炭素結合である。
【0034】
ある種の実施態様においては、その封じ込め容器の壁面が、熱硬化性ポリマーの単一層を有していてもよい。他の実施態様においては、その封じ込め容器の壁面に、2層以上のポリマーの層が含まれていてもよいが、その内の少なくとも1層は、熱硬化性ポリマーである。封じ込め容器の壁面が、異なった2種以上の熱硬化性ポリマー層を含有していることもまた可能である。たとえば、その封じ込め容器の壁面が、架橋された塩素化ポリエチレンの外側層と、架橋された高密度ポリエチレンの内側層とを有していてもよい。また別な例としては、その外側層が、架橋された塩素化ポリマーであり、且つその内側層が、架橋された高密度ポリエチレンと架橋された塩素化ポリエチレンとのブレンド物であってもよい。
【0035】
本発明のある種の実施態様においては、その封じ込め容器の壁面が、少なくとも1種の熱硬化性ポリマーの少なくとも1層と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの少なくとも1層とを有している。たとえば、その封じ込め容器の壁面の内側に熱可塑性ポリマーの層が存在し、その封じ込め容器の壁面の外側に熱硬化性ポリマー(たとえば、十分に架橋された熱可塑性ポリマー)の層が存在していてもよい。本発明の好ましい実施態様においては、そのような熱可塑性ポリマーの層を形成させるために、耐熱性のエンジニアリングサーモプラスチックが採用される。好適な耐熱性エンジニアリングサーモプラスチックポリマーの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:フルオロポリマー(たとえば、ArkemaからKynar(登録商標)のブランド名で販売されているフルオロポリマー)、ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン(たとえば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、たとえば、ArkemaからKepstan(登録商標)のブランド名で販売されているポリアリールエーテルケトン)、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、芳香族ポリエステルたとえば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィン、ポリイミド、並びにポリアセタール。
【0036】
その封じ込め容器の壁面が、2種以上のポリマー層を含有している場合には、1種又は複数のタイ層を、隣接したポリマー層の間に配置して、隣接したポリマー層の間の接着性を改良又は向上させてもよい。この目的のためには、当業界では公知のいかなるタイ層組成物を使用してもよいが、そのようなタイ層組成物は、典型的には、ポリマーベースのものであるが、ある種の1種又は複数の追加の添加物を含んでいてもよい。タイ層組成物において使用される単一又は複数のポリマーは、たとえば、以下のような反応性、及び/又は極性の官能基を用いて官能化されているのが好ましい:カルボン酸基、カルボキシレート基、エポキシ基、ヒドロキシル基、無水物基など。タイ層組成物に使用するのに適したポリマーの代表例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:エチレン-酢酸ビニルポリマー、エチレン-アクリル酸メチルポリマー、エチレン-アクリル酸ブチルポリマー、エチレン-アクリル酸ポリマー、エチレン-メタクリル酸ポリマー、無水マレイン酸をグラフトさせたポリオレフィン、たとえば無水マレイン酸をグラフトさせたポリエチレン(ethylene-grafted-maleic anhydride polymer)(無水物変性ポリエチレンとも呼ばれる)、ポリアミド、フルオロポリマーなど。
【0037】
熱硬化性ポリマー(又は複数の熱硬化性ポリマーのブレンド物)を単独で使用して、封じ込め容器の壁面を得てもよいが、ある種の実施態様においては、1種又は複数の熱硬化性ポリマーを、1種又は複数の添加物と組み合わせて採用している。そのような添加物は、ポリマー業界で公知のいかなる添加物であってもよいが、例としては以下のものが挙げられる:充填剤、難燃剤(flame retardant)、防火剤(fire retardant)、抗酸化剤、光安定剤(UV安定剤及びHALSヒンダードアミン光安定剤を含む)、内部離型剤及び外部離型剤、並びにそれらの組合せ。したがって、その封じ込め容器の壁面には、少なくとも1種の熱硬化性ポリマーと、少なくとも1種の、先に説明したような添加物とを含有する熱硬化性ポリマー組成物を含むことができる。本発明のさらなる実施態様においては、その封じ込め容器に、その外部が膨張性の層又は難燃剤及び/又は防火剤の層を用いてコーティングされた熱硬化性ポリマーの壁面が含まれているが、その層は、その封じ込め容器にさらなる難燃性及び/又は防火性を付与するのに有効である。しかしながら、他の実施態様においては、そのような膨張性層、難燃剤層/防火剤層は存在させない。
【0038】
本発明のある種の好ましい実施態様においては、封じ込め容器壁面を与えるために採用された熱硬化性ポリマーが、非易燃性である。本発明の文脈においては、「非易燃性(non-flammable)」という用語は、その熱硬化性ポリマーを裸火に暴露させても発火しない、或いは自己消火性である(すなわち、その熱硬化性ポリマーが、発火したとしても、炎を維持できない)ということを意味している。たとえば、その熱硬化性ポリマーは、UL 94のV格付けで、V-Oを有している。他の実施態様においては、その熱硬化性ポリマーが、ASTM D2863-17aに従って測定して、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、又は少なくとも60の限界酸素指数(LOI=Limiting Oxygen Index)を有している。
【0039】
封じ込め容器の壁面は、各種所望又は適切な厚みを有していてよく、その封じ込め容器の各部分での壁面の厚みは、一定であってもよいし、異なっていてもよい。たとえば、その封じ込め容器が、約0.5mm~約125mmの平均壁面厚みを有していてもよい。
【0040】
封じ込め容器は、適切又は所望の各種の形状又はサイズであってよい。たとえば、本発明の各種の実施態様においては、その封じ込め容器が、立方体、直方体、又は円筒の形状であってよい。その封じ込め容器が立方体又は直方体である場合には、その封じ込め容器は、四つの側面、1つの上面、及び1つの底面を有することができ、それらそれぞれが、一般的には平面である。その封じ込め容器が円筒状である場合には、その封じ込め容器は、単一の曲線的側面、一般的には平面状の上面、及び一般的には平面状の底面を有することができる。それらの壁面は、襞、プリーツなどのようなものを有していて、その封じ込め容器に剛性及び/又は折り畳み性を与えていてもよい。封じ込め容器が、その封じ込め容器の内容積を規定する。封じ込め容器の内容積は、たとえば、少なくとも250リットル、少なくとも500リットル、又は少なくとも750リットルであるが、それとは独立して、10,000リットル以下、5000リットル以下、又は2500リットル以下でもよい。ある種の実施態様においては、その封じ込め容器が、500リットル~3000リットル、900~1500リットル、又は約1000リットル、又は約1250リットルの内容積を有していてよい。
【0041】
その容器には、少なくとも1種のベントメカニズムを備えていて、それが、その封じ込め容器の内容物のベンティングを可能とするように構成されている。そのベントメカニズムは、それが一時的に開いて、その封じ込め容器の内部圧力を逃がし、次いで、その内部圧力が所定のレベルより下に戻ったら、閉じるとなるように適合されている。別な方法として、ある所定の内部圧力に達したら、開き放しになるように、そのベントメカニズムを設計することもできる。単一又は複数のベントメカニズムは、封じ込め容器と一体で構成してもよいし(たとえば、封じ込め容器又はそれの前駆体構造を成形する時に、その封じ込め容器の中に、又はそれと共に成形する)、或いは別な方法として、封じ込め容器を組み立てた後で、その封じ込め容器に取り付けたり、組み合わせたりしてもよい。
【0042】
本発明で使用するのに適したベントメカニズムのタイプとしては、たとえば、以下のものが挙げられる:ラプチャーディスク、圧力放出弁、ポップオフキャップ(pop off cap)、ラプチャーボルト、ばね荷重クランプリング(spring-loaded clamp ring)、熱がかかったときに融解する熱可塑性ポリマーを含有する圧力放出部分、並びに、封じ込め容器に内圧がかかったときに、その封じ込め容器の破裂圧力に達するより前に、その封じ込め容器の内部の圧力を制御しながら放出させるための、その封じ込め容器の壁面の残りの部分よりも十分に薄い、封じ込め容器の壁面における圧力放出部分。その容器には、2種以上のベントメカニズムを備えていてもよく、それらが異なったタイプであってもよい。
【0043】
その容器は、定められた最大圧力を超えるような場合には、その封じ込め容器の内容物の少なくとも一部を速やかに放出して、爆発を回避できるように、少なくとも1種のベントメカニズム又は複数のベントメカニズムを備えていなければならない。この開口で必要とされるサイズ(ベント面積)は、たとえば、封じ込め容器の容積、封じ込め容器の製造原料、及びその封じ込め容器の中に存在している液状組成物のタイプに依存する。ある特定のパッケージ化配合物の場合に必要とされる最低ベント面積は、United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goodsの、the Manual of Test and Criteria ST/SG/AC.10/32/Add.2(2005年2月23日),Appendix 5の第4改訂版のAmendment 1に記載されている、10リットルベンティング試験によって求めることができる。
【0044】
その容器のベント面積/容積の比率は、少なくとも20×10-32/m3、好ましくは少なくとも50×10-32/m3、より好ましくは少なくとも80×10-32/m3、最も好ましくは少なくとも約100×10-32/m3であってよい。実務的な理由から、そのベント面積/容積の比率は、好ましくは250×10-32/m3以下、より好ましくは125×10-32/m3以下である。
【0045】
その封じ込め容器には、その封じ込め容器の中に物質(たとえば液体)を導入したり、抜き出したりすることができるように、その壁面に1つ又は複数の開口部(それは、ベントメカニズムとは独立していてもよいし或いは独立していなくてもよい)を有しているのがよい。そのような開口部がいずれも、充填、排出、及び/又は封じ込め容器の清掃に便利なように、それらが開閉できるように構成されているのが望ましい。
【0046】
本発明の1つの実施態様においては、その封じ込め容器が、そこを通して、その封じ込め容器に充填する目的で、流体を通すためにその封じ込め容器に一時的に接続されたフィード配管(たとえばホース、パイプなど)を使用して、その封じ込め容器の中に液状組成物を導入することを可能とする、(たとえば、封じ込め容器の上側壁面に)充填口として機能する開口部を有していてよい。その封じ込め容器が所望のレベルまで充填されたら、フィード配管を切り離し、その開口部(及び一般的にはその封じ込め容器)を、ベントメカニズムを含む装置を使用してシールする。たとえば、その開口部には、ねじが切ってあって、それにより、フィード配管、さらにはベントメカニズムを含むキャップが取り付けられる(たとえば、フィード配管を切り離してから、ベントメカニズムを備えたキャップを、ねじを切った開口部にねじ込む)ようになっているのがよい。また別の実施態様においては、開口部を通してディップチューブを挿入し、そのディップチューブをポンプなどに接続して、その封じ込め容器の中に存在している液状組成物を、その封じ込め容器から抜き出すように、その開口部が構成されていてもよい。
【0047】
その封じ込め容器には、追加又は置き換えとして、その封じ込め容器の底面、又はその封じ込め容器の側面の底へりに近いところに位置する小出し用栓(dispensing tap)を備えていてもよいが、その小出し用栓は、その封じ込め容器の中に存在している液状組成物を排出したり、或いは、その封じ込め容器の内部から抜き出したりできるように構成されている。充填口及び/又は小出し用栓はさらに、封じ込め容器をフラッシングしたり及び/又はクリーニングしたりする目的で使用することもまた可能であるが、それらは、再使用可能又は再充填可能なように取り付けられる。
【0048】
ある種の実施態様においては、その封じ込め容器が、保護ケージに取り囲まれていてもよい。その保護ケージは、その容器の使用、貯蔵、又は輸送の際に損傷を受けたり破壊されたりすることから容器を保護すること、及び/又は(特に、その封じ込め容器が、それなしでは、折り畳まれたり、崩れたりする場合に)封じ込め容器を支持することを目的として構成されていてもよい。当業界では公知の各種のデザインの保護ケージが、本発明の容器と共に使用するのに採用できる。たとえば、その保護ケージが、筒状の金属ケージ、たとえば筒状の強化ステンレス鋼又は鉄のケージであってよい。そのケージはさらに、非金属材料、たとえば、単一のポリマー材料又は各種のポリマー材料の組合せ(たとえば、Elium(登録商標)のブランド名でArkemaより販売されている液状熱可塑性樹脂)で構成されていても又はそれから構成されてもよい。
【0049】
その保護ケージには、パレットが含まれていてもよいし、或いは、パレットが取り付けられていてもよい。たとえば、保護ケージの底面がパレットの形状に成形されていて、そのパレット(したがって、その封じ込め容器及びそのパッケージ化された内容物を含む容器)が、フォークリフト又はパレットジャッキを使用して移動できるように設計されている。本発明の容器が、積重ね可能なように構成されていてもよい。
【0050】
本発明のある種の実施態様においては、その封じ込め容器が自立するように、その容器が構成されていてもよい。すなわち、その封じ込め容器が空の場合に、その三次元形状を実質的に保持し、崩れたり折りたたまれたりしないようにする。そのような実施態様においては、封じ込め容器の壁面が十分な厚みを有していて、それにより、その封じ込め容器に自立性を付与するように構成するのがよい。そのような自立式の封じ込め容器の基部が、熱硬化性ポリマーで作製され、フォークリフト又はその他のそのような機器のフォークを受け入れる開口部を構成していて、それによって、パレットを別途取り付ける必要がないようにしてもよい。
【0051】
本発明の容器は、危険な組成物、特に危険な液状組成物をパッケージ化するのに特に有用である。たとえば、パッケージ化される組成物は、易燃性、可燃性、爆発性、及び/又は発熱分解を起こしやすいものであってよい。本発明の容器の中にパッケージ化してしまえば、そのような組成物は、容易且つ利便性良く、輸送、貯蔵、及び使用することが可能であると共に、容器が火災その他の高熱の状況に暴露されるような事態でも、容器の内容物がすっかり洩れたり、容器が爆発で粉々になったりする危険性が低減される。本発明に従ってパッケージ化するのに好適な組成物としては、易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解可能のうちの少なくとも1つである組成物、さらには、易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解可能のうちの少なくとも1つである少なくとも1種の化合物を含む組成物が挙げられる。
【0052】
本発明の容器の中にパッケージ化するのに適した組成物としては、たとえば、易燃性又は可燃性の有機溶媒、及び少なくとも1種の易燃性又は可燃性の有機溶媒を含有する組成物、及び少なくとも1種の易燃性又は可燃性の有機溶媒の中に溶解又は分散させた少なくとも1種の成分(易燃性又は可燃性の有機溶媒以外)が挙げられる。ペルオキシド、特に有機ペルオキシドもまた、本発明の容器の中にパッケージ化することができる。そのようなペルオキシドは、ニートの形態でも、液状の形態でもよく、或いは、液状媒体、たとえば単一の有機溶媒又は複数の有機溶媒の混合物の中に溶解又は分散されていたり、水性エマルションの形態であったりしてもよい。単一の有機ペルオキシド又は複数の有機ペルオキシドのブレンド物には、有機溶媒及び/又は水以外の1種又は複数の成分、たとえば安定剤及び火薬鈍感剤(phlegmatizer)を配合してもよい。本発明による容器の中には、たとえば以下に示す各種のタイプの有機ペルオキシドをパッケージ化することができる:ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルケタール、ペルカーボネート、ジアルキルペルオキシド、アルキルアリールペルオキシド、モノペルオキシカーボネート、ヒドロペルオキシドなど、及びそれらの組合せ。
【0053】
本発明において使用される封じ込め容器は、各種適切な方法を用いて作製することができる。
【0054】
たとえば、封じ込め容器を成形するための1つの方法においては、熱可塑性ポリマーを吹込み成形し、次いで架橋して、その熱可塑性ポリマーを熱硬化性ポリマーに転換させる。熱可塑性ポリマーたとえばポリエチレンを吹込み成形するための方法は、当業界では周知であり、本発明において使用するのに、容易に適合させられる。一般的に言って、吹込み成形プロセスには、型の中に溶融させた熱可塑性ポリマーのチューブを押出し、次いでチューブの中心に圧縮ガスを注入することによって、その熱可塑性ポリマーを型の壁面に押しつけることが含まれる。1つの方法においては、熱可塑性ポリマー及び少なくとも1種の架橋添加物(たとえば、有機ペルオキシド、アリル含有架橋助剤、及びヒドロキノン)を含有する樹脂組成物を、吹込み成形の途中にその熱可塑性ポリマーに架橋を起こさせるのに有効な条件下で吹込み成形するか、及び/又は吹込み成形の後に、その吹込み成形された前駆体構造物を加熱することによって架橋を起こさせる。熱可塑性ポリマーの架橋は、その熱可塑性ポリマーを、有機ペルオキシドの存在下に、その有機ペルオキシドを活性化させるのに有効な温度(すなわち、有機ペルオキシドからフリーラジカル化学種(次いでこれが、熱可塑性ポリマーを架橋させる)を発生させるのに有効な温度)にまで加熱することによって達成させることができる。そのような高温加熱は、封じ込め容器とするための前駆体構造物が、まだ型の中にある内に実施することもできる。
【0055】
また別の実施態様においては、シラン官能化熱可塑性ポリマーを使用して、吹込み成形された封じ込め容器とするための(所望の封じ込め容器とほぼ同じ形状及び寸法を有している)前駆体構造物を成形し、次いで、その吹込み成形された前駆体構造物を湿分硬化させて、封じ込め容器に転換させるが、ここで、そのシラン官能化熱可塑性ポリマーが架橋されて、熱硬化性ポリマーを形成する。
【0056】
なおもさらなる実施態様においては、熱可塑性ポリマーを使用して、吹込み成形された前駆体構造物を作製し、次いでそれを照射し、それによりその熱可塑性ポリマーを架橋させることによって、熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器へと転換させる。その照射は、電子線、ガンマ線などを使用して実施することができる。
【0057】
また別の実施態様においては、三次元プリンティング法を使用して、熱可塑性ポリマーを成形して、封じ込め容器とするための前駆体構造物とする。その3Dプリントした前駆体構造物を、次いで、各種適切な方法により、熱硬化性ポリマーを含有する壁面を有する封じ込め容器へと転換させる。たとえば、その3Dプリントした前駆体構造物を、その熱可塑性ポリマーを架橋させて熱硬化性ポリマーを形成させるのに効果的な条件下で、電子線、ガンマ線などを使用して照射してもよい。また別のアプローチ方法では、シラン官能化熱可塑性ポリマーを使用して、前駆体構造の三次元プリンティングを実施し、次いでその前駆体構造物を湿分硬化させて、熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器を得る。さらにまた別のアプローチ方法では、熱可塑性ポリマー及びフリーラジカル重合開始剤(たとえば、有機ペルオキシド)を含有する架橋性の熱可塑性樹脂組成物を使用して、封じ込め容器とするための前駆体構造物を三次元プリントし、次いで、その前駆体構造物を、熱可塑性ポリマーが熱硬化性(耐融解性)を獲得するのに十分な架橋を達成させるのに有効な温度と時間をかけて加熱する。熱可塑性ポリマーを採用した三次元プリンティング技術は、当業界では公知であり、選択的レーザーシンタリング法、及び溶融フィラメント製造法も含め、そのような技術のいずれもが、本発明で使用するために採用することができる。
【0058】
1つの好ましい実施態様においては、封じ込め容器を、回転成形法を使用して成形することができる。当業界では公知の回転成形法のいずれもが、本発明での使用に合わせることができる。典型的には、回転成形では、粒子の形態(たとえば、粉体又は顆粒の形態)にある熱可塑性ポリマーを中空の型の中に入れ、次いでそれを閉じ、二軸上で回転させ、そして(可能であれば、加熱炉の中で)加熱すると、熱可塑性ポリマー粒子状物質が互いに融着して、型の内側に、固形で中空の物体が得られる。次いで、炉から型を取り出し、大気又は水噴霧で冷却する。冷却してから、その成形された中空のパーツを取り出し、その型の内部に、新しく熱可塑性ポリマーの粒子状物質を充填して、また別のサイクルを開始する。熱可塑性ポリマーを含む回転成形法の説明は、たとえば、以下の特許文献(それぞれを、すべての目的のために、参考として引用し本明細書に組み入れるものとする)に記載されている:米国特許第4,857,257号明細書;米国特許第5,260,381号明細書;米国特許第8,911,842号明細書;及び米国特許出願公開第2017/0247534号明細書。本発明においては、熱可塑性ポリマーを熱硬化性樹脂へと転換させるために、それらの方法を修正しなければならないことは理解されたい。
【0059】
本発明の1つの態様においては、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(たとえば、少なくとも1種のポリエチレン)、少なくとも1種のフリーラジカル重合開始剤(たとえば、少なくとも1種の有機ペルオキシド)、及び任意選択により(とは言え、好ましくは)少なくとも1種の架橋助剤(たとえば、少なくとも1種の、複数のビニル基で官能化された化合物)を含有する架橋性樹脂組成物の粒子状物質を回転成形プロセスにおいて使用して、熱硬化性ポリマー(たとえば、架橋された熱可塑性ポリマーたとえば架橋ポリエチレン)の壁面を有する封じ込め容器を調製する。そのような粒子状物質は、たとえば、50~500ミクロンの平均直径を有していてよく、且つ各種適切な方法によって調製されたものであってよい。たとえば、熱可塑性ポリマーを、フリーラジカル重合開始剤及び任意選択により他の成分と共にコンパウンディングし、成形してペレット又は顆粒とし、次いでそれを、粉砕又は摩砕し、且つ任意選択により篩別するか又は他のサイズ区分法にかけて、粒子状の架橋性樹脂組成物を得る。また別の実施態様においては、(可能であれば、1種又は複数の他の添加物と組み合わせて)熱可塑性ポリマーを成形して、所望のサイズの粒子状物質とし、その粒子状物質に、フリーラジカル重合開始剤(そして可能であれば他の添加物たとえば架橋助剤)、特には、液状のフリーラジカル重合開始剤、又は適切な単一溶媒又は複数の溶媒の混合物の中のフリーラジカル重合開始剤の溶液を含浸させる。そのような加工の際には、フリーラジカル重合開始剤の望ましくない反応を最小限にするよう、注意すべきである。そのフリーラジカル重合開始剤が熱によって活性化されるような場合には、たとえばその加工温度を、フリーラジカル重合開始剤からフリーラジカル化学種への顕著な転化の開始が起きる温度よりも低く保つべきである。このようにすることで、その熱可塑性ポリマーの熱可塑的(溶融性)特性を維持することが可能となり、それにより、その架橋性樹脂組成物の粒子状物質を、満足のいく回転成形にかけることが可能となる。
【0060】
本発明のある種の実施態様においては、熱可塑性樹脂組成物の粒子状物質を中空の型の中に導入し、次いでその粒子状物質を含む中空の型を回転させながら、粒子状物質を互いに融着させて、所望の封じ込め容器とするための前駆体構造物を形成させるのに効果的な温度で加熱する。この成形ステージの際の温度は、その熱可塑性樹脂の実質的な架橋(未融解の粒子状物質状態にある熱可塑性ポリマーを熱硬化性ポリマーに転化させ、粒子状物質の満足のいく融解を妨害する)が起きる温度よりも低く維持するべきである。しかしながら、比較的に低いレベルの架橋は許容できるが、その理由は、幾分かの架橋が生じたとしても、その粒子状物質が、十分なレベルの熱可塑性を保持し、融解可能であるからである。回転成形した前駆体構造物を次いで、その前駆体構造物を、熱可塑性ポリマーの中で所望のレベルの架橋を得るのに有効な温度にまで加熱する(それによって、回転成形した前駆体構造物の中の熱可塑性ポリマーが、転換されて熱硬化性ポリマーとなる)ことによって、所望の封じ込め容器に加工することができる。そのような加熱は、型の中でも実施可能であり(たとえば、前駆体構造物を、型の中に留めたまま、フリーラジカル重合開始剤(たとえば、有機ペルオキシド)を活性化させ、且つ熱可塑性ポリマーを熱硬化性樹脂に転換させるのに必要な架橋度を達成させるのに有効な、より高い温度にまで加熱する)、次いでその回転成形した封じ込め容器を型から取り出す。そのような追加の加熱の際には、型を依然として回転させておいて、その封じ込め容器が、所望の形状を保持できるようにするのが好ましい。すなわち、少なくとも、封じ込め容器の壁面が十分な熱硬化性の特性(回転を止めてもその封じ込め容器に歪みが生じない)を獲得するようになるまでの時間は、封じ込め容器を、フリーラジカル重合開始剤の活性化温度で加熱しながら、その充填した型の回転を続ける。また別の実施態様においては、その封じ込め容器とするための前駆体構造物を型から取り出し、熱可塑性ポリマーを所望のレベルまで架橋させ、それによって、熱硬化性ポリマーの壁面を有する封じ込め容器が得られるのに有効な条件下で、さらなる加熱にかける。
【0061】
回転成形法はさらに、その内の少なくとも1層が熱硬化性ポリマーを含有する、多層の壁面を有する封じ込め容器を成形するのにも使用することができる。たとえば、最初に、上述の方法を使用して、熱硬化性ポリマー(又は、熱硬化性ポリマーへの前駆体、すなわち、架橋可能な熱可塑性ポリマー組成物)を含有する外側壁面を、型の中で成形する。次いで、その型の内部に、第二のポリマー組成物の粒子状物質を導入することにより、内側壁面を形成させる。その第二のポリマー組成物は、また別の架橋性熱可塑性ポリマー組成物(たとえば、熱可塑性ポリマー、フリーラジカル重合開始剤及び任意選択により架橋助剤を含有する組成物)であってもよいし、或いは、非架橋性の熱可塑性プラスチック組成物(たとえば、熱可塑性ポリマーは含有するが、フリーラジカル重合開始剤を含まない組成物)であってもよい。次いで、その第二のポリマー組成物の粒子状物質の回転成形を実施して、第一の層の内側表面の上に、第二の(内側)層が形成されるようにする。また別の実施態様においては、第一の層(封じ込め容器の外側壁面を与える)を、非架橋性の熱可塑性ポリマー組成物の粒子状物質を使用して作製し、それに対して、第二の層(封じ込め容器の内側壁面を与える)を、架橋性の熱可塑性ポリマー組成物を使用して調製し、それを転換させて熱硬化性ポリマーとする。
【0062】
封じ込め容器が成形できたら、それに、1種又は複数のさらなる構成成分を組み合わせて、本発明における容器を得る。たとえば、本明細書に記載の封じ込め容器には、ベントメカニズム、充填口、小出し用栓、保護ケージ、及び/又はパレットを取り付けてもよい。そのようにして組み立てた容器に、次いで液状組成物、たとえば、易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解を起こしやすい、の少なくとも1つである少なくとも1種の化合物を含有する液状組成物を仕込んで、本発明に従ってパッケージ化した組成物を得ることができる。そのパッケージ化した組成物は、貯蔵及び/又は輸送された後に、そのパッケージ化した組成物の内容物が使用されるが、その場合には、その組成物の少なくとも一部が封じ込め容器から(たとえば、小出し用栓又はディップチューブの手段によって)抜き出され、次いで意図した目的に使用される。たとえば、有機ペルオキシドを含有する組成物が抜き出されて、重合や、有機ペルオキシドを必要とするその他の化学反応を開始させるのに使用される。
【0063】
本発明の各種の非限定的な態様は、以下のようにまとめることができる:
【0064】
[態様1]
液状組成物(たとえば、易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解可能のうちの少なくとも1つである、少なくとも1種の化合物を含有する液状組成物)を貯蔵及び輸送するために有用な容器であって、前記容器が、ベントメカニズムを備え、且つ熱硬化性ポリマーを含む封じ込め容器を含む、容器。
【0065】
[態様2]
前記熱硬化性ポリマーが、少なくとも1種の架橋された熱可塑性ポリマーを含有する、態様1に記載の容器。
【0066】
[態様3]
前記熱硬化性ポリマーが、少なくとも1種の架橋されたポリエチレンを含有する、態様1に記載の容器。
【0067】
[態様4]
前記熱硬化性ポリマーが、架橋された塩素化ポリエチレン;架橋された低密度ポリエチレン;架橋された線状低密度ポリエチレン;架橋された高密度ポリエチレン;エチレンと、オクテン、ヘプテン、ヘキセン、ペンテン、ブテン、プロペン、及びそれらの組合せからなる群より選択される1種又は複数のコモノマーとのコポリマー;並びにそれらのブレンド物からなる群より選択される少なくとも1種の架橋ポリエチレンを含有する、態様1に記載の容器。
【0068】
[態様5]
前記熱硬化性ポリマーが、融解抵抗性の前記熱硬化性ポリマーを与えるのに有効な架橋レベルを有し、ここで前記容器が、Test Procedure Class Number 6020、Large Scale Testing for Fire Performance of Intermediate Bulk Containers(FM Approvals LLC、2016年9月)に従って試験して5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、又は30分間、破損又は漏洩することなく火炎環境に耐えることが可能である、態様1~4のいずれか1項に記載の容器。
【0069】
[態様6]
前記封じ込め容器が、250リットル~1500リットルの内容積を有する、態様1~5のいずれか1項に記載の容器。
【0070】
[態様7]
前記封じ込め容器が、十分に透明であって、前記封じ込め容器の内部にパッケージ化された液状組成物を肉眼で外部から検出することを可能とする、態様1~6のいずれか1項に記載の容器。
【0071】
[態様8]
前記容器が、前記封じ込め容器を少なくとも部分的に取り囲み、且つパレットに取り付けられるか又はパレットを含む保護ケージをさらに含有する、態様1~7のいずれか1項に記載の容器。
【0072】
[態様9]
前記封じ込め容器が、空のときに、自立しているか、折り畳み可能か、又は崩すことが可能である、態様1~8のいずれか1項に記載の容器。
【0073】
[態様10]
前記ベントメカニズムの少なくとも一部が、前記封じ込め容器と一体になっている、態様1~9のいずれか1項に記載の容器。
【0074】
[態様11]
前記ベントメカニズムが、ラプチャーディスク、圧力放出弁、ポップオフキャップ、ラプチャーボルト、ばね荷重クランプリング、熱がかかったときに融解する熱可塑性ポリマーを含有する圧力放出部分、並びに、封じ込め容器に内圧がかかったときに、前記封じ込め容器の破裂圧力に達するより前に、前記封じ込め容器の内部の圧力を制御しながら放出させるための、前記封じ込め容器の壁面の残りの部分よりも十分に薄い、前記封じ込め容器の壁面における圧力放出部分、からなる群より選択される機器を含む、態様1~10のいずれか1項に記載の容器。
【0075】
[態様12]
前記封じ込め容器が、充填剤、難燃剤、防火剤、抗酸化剤、光安定剤、内部離型剤及び外部離型剤、並びにそれらの組合せを含む群より選択される1種又は複数の添加物をさらに含有する、態様1~11のいずれか1項に記載の容器。
【0076】
[態様13]
前記封じ込め容器が、前記熱硬化性ポリマーを含む単一層からなる壁面を有する、態様1~12のいずれか1項に記載の容器。
【0077】
[態様14]
前記封じ込め容器が、前記熱硬化性ポリマーを含む少なくとも1種の層と共に複数の層を含む壁面を有する、態様1~12のいずれか1項に記載の容器。
【0078】
[態様15]
前記封じ込め容器が、第一の熱硬化性ポリマーを含有する第一の層と、第二の熱硬化性ポリマーを含有する第二の層とを含む壁面を有し、前記第一の熱硬化性ポリマーと前記第二の熱硬化性ポリマーとが相互に異なっている、態様1~12又は14のいずれか1項に記載の容器。
【0079】
[態様16]
前記熱硬化性ポリマーが、ASTM D-1998-06(2006)により測定して、少なくとも60%の重量保持率を示す、態様1~15のいずれか1項に記載の容器。
【0080】
[態様17]
前記封じ込め容器が、0.5mm~125mmの平均厚みを有する壁面を有する、態様1~16のいずれか1項に記載の容器。
【0081】
[態様18]
前記容器が、充填口又は小出し用栓の少なくとも1つをさらに含む、態様1~17のいずれか1項に記載の容器。
【0082】
[態様19]
前記熱硬化性ポリマーが非易燃性である、態様1~18のいずれか1項に記載の容器。
【0083】
[態様20]
パッケージ化した組成物であって、態様1~19のいずれか1項に記載の容器と、前記容器の中にパッケージ化された液状組成物とを含む、パッケージ化した組成物。
【0084】
[態様21]
前記液状組成物が、易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解可能のうちの少なくとも1つである少なくとも1種の化合物を含有する、態様20に記載のパッケージ化した組成物。
【0085】
[態様22]
前記少なくとも1種の化合物が、少なくとも1種の有機ペルオキシドを含む、態様21に記載のパッケージ化した組成物。
【0086】
[態様23]
前記少なくとも1種の有機ペルオキシドが、前記組成物の中に、ニートの形態、1種又は複数の溶媒と組み合わせた溶液の形態、又は水性エマルションの形態で存在する、態様22に記載のパッケージ化した組成物。
【0087】
[態様24]
容器及び液状組成物を含むパッケージ化した組成物であって、前記容器の中にパッケージ化された、易燃性、可燃性、爆発性、又は発熱分解可能のうちの少なくとも1つである少なくとも1種の化合物を含有し、前記容器には、ベントメカニズム及び充填口又は小出し用栓の少なくとも1つが備えられ、且つ1000リットル又は1250リットルの内容積を有する、前記組成物のための封じ込め容器を含み、且つ前記少なくとも1種の架橋ポリエチレンに融解抵抗性を与えるのに有効な架橋レベルを有する少なくとも1種の架橋ポリエチレンを含有する壁面を有し、それによって、前記容器が、Test Procedure Class Number 6020、Large Scale Testing for Fire Performance of Intermediate Bulk Containers(FM Approvals LLC、2016年9月)に従って試験して、20分間、破損又は漏洩することなく火炎環境に耐えることが可能である、パッケージ化した組成物。
【0088】
[態様25]
態様1~19のいずれか1項に記載の容器を作製する方法であって、回転成形、吹込み成形、又は三次元プリンティングによって前記封じ込め容器を成形するステップを含む、方法。
【0089】
[態様26]
熱可塑性ポリマーを成形して、前記封じ込め容器のための前駆体構造物とし、且つその後で、前記前駆体構造物の前記熱可塑性ポリマーを架橋させて、前記熱可塑性ポリマーを前記熱硬化性ポリマーに転換させ、それによって、前記封じ込め容器を得る、態様25に記載の方法。
【0090】
[態様27]
前記熱可塑性ポリマーの架橋が、前記熱可塑性ポリマーを、1種又は複数のフリーラジカル重合開始剤(たとえば、有機ペルオキシド)と、任意選択により1種又は複数の架橋助剤と共に反応させること;前記熱可塑性ポリマーを湿分硬化させることであって、前記熱可塑性ポリマーには、シラン基が含まれること;及び放射線で硬化させることであって、前記熱可塑性ポリマーが、放射線に暴露されること、からなる群より選択される方法により達成される、態様26に記載の方法。
【0091】
[態様28]
液状組成物をパッケージ化する方法であって、態様1~19のいずれか1項に記載の容器の中に前記液状組成物を導入するステップを含む、方法。
【0092】
本明細書においては、明瞭且つ簡潔な明細書を書くことを可能とするようにして実施態様を記述してきたが、それらの実施態様は、本発明から外れない範囲で、各種の併合又は分離をしてもよいということが意図されており、このことは認められるであろう。たとえば、本明細書に記載のすべての好ましい態様は、本明細書に記載されている本発明のすべての態様にあてはめることができるということは認められるであろう。
【0093】
いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の本発明では、容器、その容器を作製するための方法、及び、その容器を使用してパッケージ化した組成物の基本的且つ新規な特性に実質的に影響しないような、各種の構成要素又はプロセス工程は、除外してあると考えることができる。さらには、いくつかの実施態様においては、本発明は、本明細書において特定されていない、各種の構成要素及びプロセス工程を排除していると解釈してよい。
【0094】
特定の実施態様を参照しながら、本明細書の中で本発明を説明し、記述しているが、以下に示す詳細に本発明が限定されることは意図されていない。むしろ、特許請求の範囲と等価の範囲の中で、本発明から逸脱することなく、各種の修正を細かく実施することができる。
【0095】
実施例において使用される実験装置及び手順
Alpha TechnologiesのRPA(登録商標)2000E(これは、1つのタイプのムービングダイレオメーターであり、「MDR」又は「RPA」とも呼ばれている)を使用して、HDPE樹脂の回転成形グレードにおけるペルオキシド配合物の架橋性能を検討した。RPAによって、最終的な硬化状態MH(dN・m)及びtc90(分)(これは、90%の架橋に達するのに要した時間である)の測定が得られた。これらの検討においては、RPAは、歪みを1度アーク、且つ振動周波数を100cpm(サイクル/分)に設定した。架橋温度は、上側及び下側両方のダイプラテンを190℃に設定した。
【0096】
実施例において使用される略称
MH=最大トルク(単位:dN・m):架橋に関連。
ML=最小トルク(単位:dN・m)(注:実施例においては、ML値は常にゼロであったので、紙面節約のためにデータの表には記載していない)。
MH-ML=相対架橋度(単位:dN・m)。
ts0.4=スコーチ時間(単位:分):最小トルクMLから出発して、トルクが0.4dN・mだけ上昇するのにかかった時間。これを、架橋開始時間と定義する。4%の架橋に達するまでの時間を示し、その時点でMH値は、約9~10dN・mである。
ts1=スコーチ時間(単位:分):最小トルクMLから出発して、トルクが1dN・mだけ上昇するのにかかった時間。約10%の架橋でのまた別のスコーチ時間遅延測定であって、その時点でMH値は、約9~10dN・mである。
tc90=最終硬化の90%までの時間(単位:分)。
phr=100重量部の樹脂(すなわち、HDPE又はポリエチレン)あたりの、成分の重量部。
Luperox(登録商標)101=2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン
HDPE=高密度ポリエチレン
CPE=塩素化ポリエチレン
【実施例0097】
実施例1
米国特許出願公開第2008/0161526A1号明細書(公開:2008年7月3日、発明の名称:「Crosslinked Polyethylene Resin for Large Part Blow Molding」、Guentherら)のパラグラフ[0012]に、ポリエチレンの容器、ドラム、及びIBC(中間製品容器(Industrial Bulk Containers))の、大型吹込み成形法が教示されている。Guentherの述べているところでは、これらの物品は、(ペルオキシドにより)架橋されたポリエチレンである。しかしながら、以下の実施例で示すように、Guentherによって得られたポリエチレンは、熱硬化性ではなく、熱可塑性のプラスチックである。Guentherは、最大でも150ppmのペルオキシドしか使用せず、ペルオキシドが多すぎると望ましくない製品が得られると述べている(パラグラフ[0019])。具体的には、Guentherは、表3において、Luperox(登録商標)101を、20ppmから最高でもわずか150ppmのレベルで使用している(パラグラフ[0016])。
【0098】
本明細書の実施例1においては、Guentherの教示に従って、150ppmを使用し、190℃の硬化温度でHDPEを架橋させると、ペルオキシド濃度が低すぎて、熱硬化性である架橋HDPEポリマーが得られず、むしろ熱可塑性であることが示される。
【0099】
以下の表1で示されるデータの意義は、「架橋された」ポリエチレンが得られたとGuentherが主張しているにも関わらず、Guentherは、その吹込み成形プロセスでは、熱可塑性のHDPEポリマーを必要としており、その場合、その最終的なポリエチレンは、ペルオキシドと反応させる前の、元々の(virgin)HDPEポリマーと性能的に極めて類似したものでなければならないということである。本発明実施例におけるRPAレオメーターのデータから、150ppmのLuperox(登録商標)101を用いて反応させた後では、そのようにして得られたポリエチレンが、元々の(ペルオキシド非使用)HDPEと同じ挙動をし、且つ同一のレオロジーを示すことが明らかである。したがって、Guentherの言う「架橋された」ポリエチレンは、封じ込め容器を作製するのに有用な十分な融解抵抗性(1000リットル又は1250リットルの容量を有する中間製品容器の成形品が、Test Procedure Class Number 6020、Large Scale Testing for Fire Performance of Intermediate Bulk Containers(FM Approvals LLC、2016年9月)に従って試験して、火炎環境下で、20分間、破損又は漏洩することなく耐えることが可能である)を有していないであろう。
【0100】
150ppmのLuperox(登録商標)101を用いて変性した後の、MH最大トルク(単位:dNm)は、0dN・mである。ペルオキシド無しのHDPEもまた、0dN・mのMH最大トルクを示した。
【0101】
比較すると、0.5phr(5000ppm)のLuperox(登録商標)101を用いて架橋されたHDPEは、3.70dN・mのMH最大トルク及びMH-ML(相対架橋度)を示した(得られた最小トルクは、0dN・mであった)。表1に見られるように、Luperox(登録商標)101の使用量を増やしていくと、相対架橋度(MH-ML)が高くなっていった。
【0102】
まとめると、Guentherが記載した手順に従って、150ppmのLuperox(登録商標)101を用いてHDPEを反応させた後では、その最終的なHDPEポリマーは、元々のHDPE(ペルオキシド非使用)と実質的には変わらず、従って、GuentherがIBC容器を吹込み成形するのに使用したポリエチレンは、熱可塑性であって、真に架橋された(熱硬化性)ものではなかったのである。下の表1と、図1及び図2で示すレオグラフを参照されたい。したがって、そのようなポリエチレンから製造した封じ込め容器は、融解する筈であり、火炎環境下では耐え抜くことができないであろう。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例2
この実施例においては、HDPE、及びHDPEとCPE(塩素含量36%)とのブレンド物を硬化させた。使用したペルオキシド配合物は、「硬化剤E-2」であるが、その組成は、表2に示した。硬化剤のレベルを1.0phr~1.5phrの範囲で変化させ、相対的な架橋の量を、RPAレオメーターを使用し、190℃で8分間かけてHDPE又はHDPEとCPEとのブレンド物を架橋させて、1度のアーク歪み及び振動数100cpm(サイクル/分)を使用して測定して得られたMH-ML値(単位:dN・m)から求めた。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
この実施例が示すところでは、IBCのための封じ込め容器を作製する目的の回転成形用途のために、HDPEとCPEとのブレンド物を架橋させることが可能であり、ここで測定したMH-ML値(単位:dN・m=デシニュートン・メートル)に基づくと、硬化剤E-2の濃度を高くすると、より高い架橋度が得られる。回転成形操作によってIBCのための封じ込め容器を作製しようとすると、最低でも7dN・mの相対架橋度が望ましいが、それは、表2の硬化剤組成物を1.0phr使用することで得られた。本発明による、IBCのための封じ込め容器を作製するのに有用な熱硬化性ポリマーを得るためには、少なくとも1.25phrの「硬化剤E-2」を使用するのが好ましく、1.5phrの「硬化剤E-2」を使用すればより好ましい。
【0108】
実施例3
この実施例3においては、HDPE、架橋HDPE、CPE、及び架橋CPEの引火性について検討した。それらのポリマーに、難燃性化学物質又は抗酸化剤又は充填剤のいずれも添加しなかった。この実施例では、元々のポリマーだけの形態のものを試験して、火災の際に耐えうるポリマーの性能に及ぼす架橋の効果を検討した。
【0109】
元々のHDPE及びCPEポリマーの形態は、微粉体であった。それぞれの粉体から、長さ5インチ、幅0.5インチ、厚み1/8インチの試験用バーを成形した。使用した粉体のHDPEは、0.94~0.97g/cm3の密度範囲を有しているとされたものである。粉体のCPEポリマーは、36%の塩素含量であるとされたものである。
【0110】
HDPE(架橋されていない高密度ポリエチレン)及びXL-HDPE(架橋HDPE)の試験用バーを作製するには、185℃の成形温度を用いた。CPE(架橋されていない塩素化ポリエチレン)及びXL-CPE(架橋された塩素化ポリエチレン)の試験用バーを作製するには、195℃の成形温度を用いた。それぞれの場合において、HDPE、架橋HDPE、CPE、及び架橋CPEの試験用バーを成形するにはいずれの場合も、Carverプレスを使用し、15,000psiの圧力で20分かけて成形操作を実施した。5本の試験用バーを作製した。
【0111】
架橋したHDPE及びCPEのバーを作製する場合には、上で述べた成形操作を使用する前に、4phrの量(100部のポリマー樹脂あたりのペルオキシド配合の部数)を、そのポリマーの粉体に注意深く添加した。これは、小型のブレット高速ブレンダーを使用して実施し、数分間混合して、溶融させたペルオキシド配合物と粉体のHDPE及びCPEとを均質にブレンドした。使用したペルオキシド配合物は、「硬化剤E-3」であるが、その組成は、表4に示した。このペルオキシド組成物は、室温では部分的に液体であるので、これを、容器に入れて、60℃に設定した熱風炉に約1時間置くことにより完全に溶融させ、そして完全に溶融させた後で、粉体のポリマーに添加した。
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
表5の中のポリマー粉体配合物を使用したサンプルバーは、この実施例の前の方で説明した条件を使用して、カーバ-プレスを使用して成形した。これらのバーを、本明細書に記載のガス炎燃焼試験に使用した。ポリマー試験用バー(A~D)を、垂直位置でクランプ止めし、バーの下部を、ガス炎に包み込み/暴露させ、そのバーへの着火が始まったら、ガス炎を取り除き、観察し、記録した。
【0115】
【表6】
【0116】
この実施例は、橋かけ重合体の使用が重要であり、且つそのような橋かけ重合体が火炎環境下でどのような挙動をとることができるかを示している。これらのポリマーはいずれも、追加の防火剤成分は含まれない。IBC容器を成形又は製造するためのポリマー配合物を設計する場合には、防火性添加物を使用するのが好ましい/望まれるが、それをCPEに添加すると、それが架橋されて、防火剤を含むXL-CPEとなるであろう。
【0117】
この実施例の目的は、選択されたポリマーを架橋させて、火炎環境下で防御するための追加の層を与える、有機ペルオキシド配合物の価値を説明することである。この実施例に使用されたポリマーには、防火剤は一切添加されていない。表6の「サンプルバーのガス炎試験の結果」に見られるように、防火剤を添加していないXL-CPE(架橋CPE)は、わずか3秒で自己消火したが、それに対して、防火剤を添加していない非架橋CPEでは33秒であった。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状組成物を貯蔵及び輸送するために有用な容器であって、前記容器が、ベントメカニズムを備え、且つ熱硬化性ポリマーを含有する封じ込め容器を含む、容器。
【外国語明細書】