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特開2024-100857低プリントスルー深さの3Dプリント用インク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100857
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】低プリントスルー深さの3Dプリント用インク
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20240719BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240719BHJP
【FI】
B29C64/106
B33Y70/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080648
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2022168925の分割
【原出願日】2018-11-07
(31)【優先権主張番号】62/582,631
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】カリル ムサ
(57)【要約】
【課題】一態様では、三次元(3D)プリントシステムで使用するためのインクを本明細書に記載する。
【解決手段】一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、80重量%までのオリゴマー硬化性材料;80重量%までのモノマー硬化性材料;10重量%までの光開始剤;1重量%までの非硬化性吸収体材料;および10重量%までの1つまたは複数の追加成分を含み、前記成分の合計量は100重量%に等しい。さらに、光開始剤は、ピーク波長λを有する入射硬化放射線に光開始剤が曝露されると、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能である。さらには、インクは、波長λでの浸透深さ(D)、臨界エネルギー(E)、および2×D以下のプリントスルー深さ(DPT)を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリントシステムで使用するためのインクであって、インクの総重量に基づき、
80重量%までのオリゴマー硬化性材料、
80重量%までのモノマー硬化性材料、
10重量%までの光開始剤、
1重量%までの非硬化性吸収体材料、および
10重量%までの1つまたは複数の追加成分
を含み、
前記オリゴマー硬化性材料、モノマー硬化性材料、光開始剤、非硬化性吸収体材料、および1つまたは複数の追加成分の合計量は100重量%に等しく、
前記光開始剤は、波長のガウス分布およびピーク波長λを有する入射硬化放射線に該光開始剤が曝露されると、前記オリゴマー硬化性材料および/または前記モノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能であり、
前記インクは、波長λでの浸透深さ(D)および臨界エネルギー(E)を有し、
前記インクのEは10~30mJ/cmであり;かつ
(μm cm)/mJの単位でのD/E比は、10と50の間である、インク。
【請求項2】
インクのEが20mJ/cm以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
(μm cm)/mJの単位でのD/E比が、15と30の間である、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
インクのDが151~200μmである、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
5重量%までの光開始剤を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項6】
5重量%までの光開始剤、および0.5重量%までの非硬化性吸収体材料を含み、
光開始剤の非硬化性吸収体に対する重量比が5と100の間である、請求項1に記載のインク。
【請求項7】
前記非硬化性吸収体材料および前記光開始剤の両方が、波長λの30nm以内に吸収ピークを有する、請求項1に記載のインク。
【請求項8】
波長λにおける前記非硬化性吸収体材料の総吸光度が、波長λにおける前記光開始剤の総吸光度の約0.1~10倍である、請求項1に記載のインク。
【請求項9】
前記非硬化性吸収体材料が多環式芳香族化合物を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項10】
前記非硬化性吸収体材料がピレンを含む、請求項1に記載のインク。
【請求項11】
前記非硬化性吸収体材料が油溶性黄色染料を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項12】
前記光開始剤がα開裂型光開始剤を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項13】
前記オリゴマー硬化性材料が(メタ)アクリレート部分を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項14】
前記モノマー硬化性材料が(メタ)アクリレート部分を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項15】
前記1つまたは複数の追加成分が光増感剤を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項16】
前記1つまたは複数の追加成分が、前記非硬化性吸収体材料とは異なる着色剤を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項17】
前記1つまたは複数の追加成分が重合禁止剤を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項18】
前記1つまたは複数の追加成分が安定剤を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項19】
前記1つまたは複数の追加成分が粘度調整剤を含む、請求項1に記載のインク。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2017年11月7日出願の米国仮特許出願第62/582,631号に対する35U.S.C.§119に従う優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、三次元(3D)プリントシステムで使用するためのインクに関する。
【背景技術】
【0003】
サウスカロライナ州ロックヒル所在の3D Systems社製のProJect(商標)3Dプリンタなどのいくつかの市販の3Dプリンタまたは積層造形システムは、液体としてプリントヘッドを通して噴射されるインク(ビルド材料としても知られている)を使用して、さまざまな3D物体、物品または部品を形成する。他の3Dプリントシステムも、プリントヘッドを通して噴射されるかあるいは他の方法で基体上に分配されるインクを使用する。一部の例では、インクは周囲温度で固体であり、高温の噴射温度で液体に変化する。他の例では、インクは周囲温度で液体である。さらには、一部の例では、インクを基体上に分配および/または堆積させた後にインクを硬化させることができる。硬化は、レーザまたは他の電磁放射線源を使用して達成することができる。
【0004】
他の3Dプリンタは、流体インクまたはビルド材料、あるいは粉末インクまたはビルド材料のリザーバ、バットまたは容器から3D物品を形成する。一部の例では、結合剤材料、あるいはレーザまたは他のエネルギー源を使用して、段階的な様式で、インクまたはビルド材料の層を選択的に固化または固結(consolidate)させて3D物品を提供する。
【0005】
硬化放射線を使用する3Dプリントシステムでは、硬化放射線が意図したまたは望ましいよりも深くインクに浸透する可能性がある。より具体的には、放射線は、プリント物品構造の一部として硬化または固結されることが意図されているインクの部分よりも深く浸透する可能性がある。そのような望ましくない過剰な硬化深さは、「プリントスルー(print through)」または「プリントスルー深さ(print through depth)」と称することができる。プリントスルーの発生は、いくつかの理由で問題となり得る。第1に、プリントスルーにより、部分的に硬化したインクまたはビルド材料の望ましくない「ゴム状の(gummy)」層が積層造形システムの特定の表面(1または複数の「ダウン表面」など)上に形成される可能性がある。第2に、プリントスルーはビルド材料を無駄にする。第3に、最も問題のないものであっても、プリントスルーにより、一般に、プリント物品のある層または他の層が意図したものとは異なる(例えば、対応するコンピュータ支援設計または「CAD」ファイルの指示とは異なる)ものになることを考慮するために、ビルドプロセスで補正が必要となる。例えば、そのようなずれは、プリント物品を形成するのに使用する特定のCADファイルを作製または選択するときに考慮または補正することができる。しかしながら、このような補正は正確でない場合があり、部品の歪みやプリント精度の全般的な損失につながる。最後に、プリントスルーが発生すると、一般に、より多くの不明または不正確な値がビルドプロセスに導入される。さらには、プリントスルーが大きいほど、エラーおよび/または不確実性の導入が大きくなる。このような不確実性は、もちろん積層造形プロセスにおいて望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、プリントスルー特性が改善された3Dプリントのための改善された方法およびインクが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、3Dプリンタで使用するためのインクを本明細書に記載し、そのインクは、一部の実施形態では、従来のインク、特に積層造形で使用するための放射線硬化性インクに対して1つ以上の利点を有することができる。例えば、本明細書に記載のインクを使用して、改善された正確度および/または精度で物品をプリントすることができる。本明細書に記載のインクは、積層造形プロセスに関連する廃棄物の量を減らすこともできる。本明細書に記載のインクはまた、一部の例では、積層造形プロセスの速度を犠牲にすることなく、積層造形プロセスのエネルギー効率を犠牲にすることなく、および/またはプリント物品の所望の機械的特性を犠牲にすることなく、前述の利点の1つまたは複数を提供する。さらに、本明細書に記載のインクは、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロセッシング(digital light processing)(DLP)、およびマルチジェットプリント(MJP)に基づくシステムなど、さまざまな異なる3Dプリンタまたは積層造形システムで使用できる。
【0008】
一部の実施形態では、本明細書に記載の3Dプリントシステムで使用するためのインクは、インクの総重量に基づき、80重量%までのオリゴマー硬化性材料;80重量%までのモノマー硬化性材料;10重量%までの光開始剤;10重量%までの非硬化性吸収体材料;および10重量%までの1つまたは複数の追加成分を含む。もちろん、オリゴマー硬化性材料、モノマー硬化性材料、光開始剤、非硬化性吸収体材料、および1つまたは複数の追加成分の合計量は100重量%に等しいことを理解されたい。1つまたは複数の追加成分は、着色剤、禁止剤、および/または安定剤を含んでいてよい。
【0009】
さらに、本明細書に記載のインクの光開始剤は、波長のガウス分布およびピーク波長λを有する入射硬化放射線に光開始剤が曝露されると、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能である。さらに、インクは、波長λでの浸透深さ(penetration depth)(D)および臨界エネルギー(E)を有する。用語DおよびEは、以下でさらに詳しく説明する。インクはまた、2xD以下または1.5xD以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)を有する。用語DPTについては、以下で詳しく説明する。さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクは、そのようなDPT値に対応する波長λでのD値およびE値を有する。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、少なくとも10または少なくとも15の(μm cm)/mJの単位でのDP/E比を有する。一部の例では、(μm cm)/mJの単位でのD/E比は、10と50の間、10と25の間、10と15の間、10と13の間、15と50の間、15と30の間、15と25の間、または19と25の間である。以下でより詳細に説明するように、そのような特性を有するインクは、入射硬化放射線との相互作用の改善によるものを含む、改善されたプリント性能を提供できると考えられる。
【0010】
一部の例示的な実施形態では、本明細書に記載のインクは、60~100μmのDおよび2~4mJ/cmのEを有する。他の例では、インクのDは101~150μmであり、インクのEは4~20mJ/cmである。さらに他の例では、インクのDは151~200μmであり、インクのEは8~15mJ/cmである。
【0011】
以下でさらに説明するように、インクに含まれる光開始剤および/または非硬化性吸収体材料の量は、インクの他の成分と組み合わせて、所望のD、E、および/またはDPT値を得るように選択できる。一部の実施形態では、例えば、本明細書に記載のインクは、5重量%までの光開始剤、および2重量%までまたは1重量%までの非硬化性吸収体材料を含む。さらに、一部の例では、波長λでの非硬化性吸収体材料の総吸光度は、波長λでの光開始剤の総吸光度の約0.1~10倍である。さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクの非硬化性吸収体材料および光開始剤の両方が、波長λの30nm以内に吸収ピークを有する。
【0012】
別の態様では、積層造形により3D物品を形成する方法を本明細書に記載する。一部の実施形態では、そのような方法は、本明細書に記載のインクを提供するステップ、および波長のガウス分布および波長λでのピーク波長を有する入射硬化放射線を使用してインクの一部を選択的に硬化するステップを含む。例えば、一部の例では、インクは、2×D以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)、および/または10と50の間の(μm cm)/mJの単位でのD/E比を有する。さらに、本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、インクは、事前に選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータにしたがって選択的に硬化され、DはCADパラメータのボクセル深さ(voxel depth)に対応する。
【0013】
さらに、一部の例では、インクを提供するステップは、流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積させて、三次元物品を形成することを含む。あるいは、他の実施形態では、インクを提供するステップは、インクを流体状態で容器内に保持することを含み、インクの一部を選択的に硬化させるステップは、容器内のインクに硬化放射線を選択的に適用して、インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化または固結し、それにより物品の第1の断面を画成する第1の固化または固結層を形成することを含む。そのような方法は、第1の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供し、容器内のインクに硬化放射線を選択的に適用して、インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化し、それにより物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成することをさらに含んでいてよく、第1の断面と第2の断面はz方向に互いに結合している。以下でさらに説明するように、前述のステップを、3D物品を完成させるのに必要な任意の所望の回数繰り返してよい。
【0014】
さらに別の態様では、プリント3D物品(printed 3D article)を本明細書に記載する。このような物品は、任意のインクから、および本明細書に記載されている任意の方法を使用して形成することができる。そのようなプリント3D物品は、ある場合には、いくつかの他の3D物品と比較して優れた精度を有する。
【0015】
これらおよび他の実施形態を以下の詳細な説明でより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載の実施形態は、以下の詳細な説明および実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。しかしながら、本明細書で説明される要素、装置、および方法は、詳細な説明および実施例で提示される特定の実施形態に限定されない。これら実施形態は、本開示の原理の単なる例示であることを認識されたい。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、多数の修正および適合が当業者に容易に明らかになるであろう。
【0017】
さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、その中に含まれるすべての部分範囲を包含すると理解されたい。例えば、記述範囲「1.0~10.0」は、1.0以上の最小値で始まり、10.0以下の最大値で終わる任意のすべての部分範囲、例えば、1.0~5.3、または4.7~10.0、または3.6~7.9を含むと解釈されたい。同様に、記述範囲「1~10」は、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わる任意のすべての部分範囲、例えば1~5、または4~10、または3~7、または5~8などを含むと見なされる。
【0018】
また、本明細書に開示されるすべての範囲は、特に明記されていない限り、その範囲の端点を含むものとみなされるべきである。例えば、「5と10の間」、「5から10」または「5~10」の範囲は、一般に、端点の5および10を含むとみなされるべきである。
【0019】
さらに、「まで」という語句が量または数量に関連して使用されている場合、その量は、少なくとも検出可能な量または数量であると理解すべきである。例えば、特定量「まで」の量で存在する物質は、検出可能な量から特定量(その特定量を含む)まで(以下)の量で存在することができる。
【0020】
「三次元プリントシステム」、「三次元プリンタ」、「プリント」などの用語は、ステレオリソグラフィ、選択的堆積、噴射、溶融堆積モデリング、マルチジェットモデリング、ならびにビルド材料またはインクを使用して三次元物体を製造する当技術分野で現在知られているまたは将来知られるであろう他の積層造形技術により、三次元物品または物体を作製するためのさまざまな固体自由形状製造技術を一般に記載する。
【0021】
I.3Dプリント用インク
1つの態様では、3Dプリンタで使用するためのインクを本明細書に記載する。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、80重量%までのオリゴマー硬化性材料、80重量%までのモノマー硬化性材料、10重量%までの光開始剤、10重量%までの非硬化性吸収体材料、および10重量%までの1つまたは複数の追加成分を含む。前述の重量パーセントは、インクの総重量に基づく。さらに、当業者によって理解されるように、オリゴマー硬化性材料、モノマー硬化性材料、光開始剤、非硬化性吸収体材料、および1つまたは複数の追加成分の合計量は100重量%に等しい。さらには、光開始剤は、光開始剤がピーク波長λを有する入射硬化放射線に曝露されると、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能である。すなわち、光開始剤は、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化の光開始剤である。さらに、インクは、波長λでの浸透深さ(D)および臨界エネルギー(E)を有する。インクはまた、2xD以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)も有する。
【0022】
当業者によって理解されるように、DPTは、全硬化深さから層厚さを引いたものを指し、「全硬化深さ」は、入射硬化放射線に応答してインクの何らかの硬化または重合が生じる深さを指す。「層厚さ」は、入射硬化放射線に応答してインクの「完全な」硬化あるいは重合または硬化が生じる領域の厚さを指す。このような「完全な」硬化は、入射放射線によってもたらされる最大の硬化を指す。例えば、「完全な」硬化は、80~100%の硬化、80~95%の硬化、80~90%の硬化、85~100%の硬化、85~99%の硬化、85~95%の硬化、90~100%の硬化、90~99%の硬化、または90~95%の硬化に相当し、ここでパーセンテージ(%)は、利用可能な硬化性部分(官能基)の総数に基づく。
【0023】
一部の例では、本明細書に記載のインクは、1.5xD以下、1.3xD以下、1.2xD以下、または1.1xD以下の波長λでのDPTを有する。一部の例では、波長λでのDPTは、0.8xDと2xDの間、0.8xDと1.5xDの間、0.9xDと2xDの間、0.9xDと1.8xDの間、0.9xDと1.5xDの間、0.9xDと1.3xDの間、1xDと2xDの間、1xDと1.7xDの間、0.1xDと1.5xDの間、1.1xDと2xDの間、1.1xDと1.5xDの間、1.2xDと2xDの間、1.2xDと1.8xDの間、1.3xDと2xDの間、1.3xDと1.7xD、または1.5xDと2xDの間である。
【0024】
理論に拘束されることを意図していないが、そのようなDPT値を有するインクは、本明細書に記載の積層造形プロセスなどの積層造形プロセスにおいてビルド材料として使用されると、改善された一貫性、精度、および解像度をもたらすと考えられる。本明細書に記載のインクはさらに、ビルド材料の無駄を減らし、および/または積層造形プロセスの完了後の積層造形システムの表面上の望ましくない「ビルドアップ」または「ゴム状の」残留物または層の発生を低減または排除すると考えられる。そのような残留物は、3Dプリントシステムのいわゆる「ダウン表面(down surface)」では特に望ましくない可能性がある。
【0025】
さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクは、上記のDPT値に対応する波長λでのD値およびE値を有する。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、少なくとも10または少なくとも15の(μm cm)/mJの単位でのD/E比を有する。一部の実施形態では、(μm cm)/mJの単位でのD/E比は、10と50の間、10と25の間、10と15の間、10と13の間、15と50の間、15と30の間、15と25の間、または19と25の間である。このようなD/E値は、上記の値に対応するDPT値を提供できる。
【0026】
例えば、1つの「形態(regime)」では、インクのDは60~100μmであり、インクのEは2~4mJ/cmである。他の例示的な実施形態では、インクのDは101~150μmであり、インクのEは4~20mJ/cmである。さらに他の例では、インクのDは151~200μmであり、インクのEは8~15mJ/cmである。
【0027】
さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、そのインクをビルド材料として使用して、エネルギー効率がよくおよび/または迅速な積層造形を可能にするE値を有する。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、60mJ/cm以下、50mJ/cm以下、40mJ/cm以下、20mJ/cm以下、または10mJ/cm以下のEを有する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、1~30mJ/cm、1~20mJ/cm、1~15mJ/cm、1~10mJ/cm、2~25mJ/cm、2~20mJ/cm、2~15mJ/cm、2~10mJ/cm、2~15mJ/cmのEを有する。
【0028】
同様に、本明細書に記載のインクは、一部の例では、そのインクを使用して高解像度および/または迅速な積層造形を可能にするD値を有する。一部の例では、例えば、本明細書に記載のインクは、50~200μm、60~150μm、70~150μm、または70~100μmのDを有する。
【0029】
さらに、パラメータまたは特性D、E、およびDPTは、本明細書に記載のインクの構造パラメータまたは特性であることを理解されたい。これらの値の「構造的」または「組成的」性質についての議論は、例えば、Chapter 4 of Paul F. Jacobs, Rapid Prototyping & Manufacturing: Fundamentals of Stereolithography (Society of Manufacturing Engineers, McGraw-Hill, 1992)(初版)(本明細書において以下「Jacobs」と称する)に見ることができる。当業者によって理解されるように、値Dは、表面放射照度の1/eに等しいレベルまで放射照度の減少をもたらすインクの深さとして定義されるインクの浸透深さであり、eは自然対数の底である(2.7182818...に等しい)。Jacobsの86ページに記載されているように、Eは、インクのゲル化点を得るために必要なエネルギーである臨界エネルギーである。さらに、Jacobs(86~89ページ)でさらに説明されているように、メトリックEは、縦座標の硬化深さと横座標の最大放射線暴露の対数との片対数プロットに対応する作業曲線の切片に等しい。Eは、硬化深さがゼロである切片に指定される。
【0030】
本明細書に記載のインクに含まれる光開始剤および/または非硬化性吸収体材料の量は、インクの他の成分と組み合わせて、所望のD、E、および/またはDPT値を得るように選択できることをさらに理解されたい。しかしながら、一部の例では、光開始剤および/または非硬化性吸収体材料の特定の組合せによって得られる所望のD、E、および/またはDPT値を実質的に変更することなく、オリゴマーおよびモノマー硬化性材料などのインクの他の成分のタイプおよび/または量を変更できることを理解されたい。例えば、一部の例では、(現在開示されているタイプおよび量の範囲内で)オリゴマーおよびモノマー硬化性材料のタイプおよび/または量を変更すると、インクのD、E、および/またはDPT値に、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の影響を及ぼす。より具体的には、D、E、および/またはDPT値のそのような最小限の変化は、光開始剤および非硬化性吸収体材料以外のインクの成分(オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料など)が、波長λの光を吸収(または屈折または反射)しないか、あるいは最小限しか吸収(または屈折または反射)しない場合に得ることができる。あるいは、D、E、および/またはDPT値のこのような最小限の変化は、どの正確な成分の種または量(現在開示されている種および量の選択肢の範囲内)が選択されるかに関係なく、光開始剤および非硬化性吸収体材料以外のインクの成分(オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料など)が、波長λの光をほぼ同じ程度吸収(または屈折または反射)する場合にも得られる。すなわち、本明細書に記載される組成物および方法の文脈において、光開始剤および非硬化性吸収体材料以外の本明細書に記載のインクの成分は、本質的に(そして一般に)波長λで光学的「スペクテーター(spectator)」種であり得、したがってこれら「スペクテーター」種はインク全体のD、E、および/またはDPT値に実質的に影響を及ぼさない。したがって、以下でより詳細に説明するように、オリゴマーおよびモノマー硬化性材料は、一部の例では、インクごとに使用される正確な種および/または量が類似の光吸収プロファイルおよび/または屈折率を有するように、(正確な種および/または量に関して)インクごとに望ましいように変更することができる。
【0031】
本明細書での参照目的のために、「非硬化性吸収体材料」は、本明細書に記載の硬化放射線によって硬化可能ではなくまたは実質的に硬化可能ではなく、かつインクの他の成分の実質的な硬化を引き起こさずに硬化放射線の少なくとも一部を吸収する材料または化学種である。したがって、「非硬化性」吸収体材料は、「非硬化」または「非反応性」吸収体材料と呼ぶこともできる。さらに、「実質的に」硬化可能ではない、または「実質的な」硬化を引き起こさない、本明細書に記載の非硬化性または非硬化吸収体材料は、吸収された硬化放射線光子の5%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満を硬化イベントに変換(または硬化イベントで使用)すると理解される。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載の非硬化性(または非硬化)吸収体材料は、吸収された光子の2%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満をフリーラジカル種に変換することができ、それは(メタ)アクリレート重合または他の硬化プロセスを開始できまたはそれに参加できる。
【0032】
本明細書に記載の非硬化性または非硬化吸収体材料は、それでもなお入射硬化放射線の光子の吸収に関してインク光開始剤と「競合する」重合「スペクテーター」(すなわち、非重合性または非重合開始)種であり得ることをさらに理解されたい。したがって、一部の例では、本明細書に記載のインクの非硬化性吸収体材料と光開始剤は、特に上記のピーク波長λに対応するかまたはそれを含む電磁スペクトルの領域において、実質的に重複する光子吸収プロファイルを有する。一部の例では、例えば、非硬化性吸収体材料および光開始剤の両方が、波長λの30nm以内、20nm以内、15nm以内、10nm以内、または5nm以内に吸収ピークを有する。
【0033】
しかしながら、本明細書に記載のインクの非硬化性吸収体材料および光開始剤は、波長λまたは他の任意の特定波長で、同じ吸光度、光学密度、軽減係数(extenuation coefficient)、および/またはモル吸光係数を有する必要はないことを理解されたい。むしろ、非硬化性吸収体材料と光開始剤は、波長λ、ならびに他の波長で、異なる吸光度、光学密度、軽減係数、および/またはモル吸光係数を有することができる。
【0034】
さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクに含まれる光開始剤の量および非硬化性吸収体材料の量は、波長λにおけるものを含めて、それら種の吸光度、光学密度、軽減係数、および/またはモル吸光係数の類似性または差異に基づき選択される。例えば、一部の例では、光開始剤および非硬化性吸収体材料の量は、波長λでの各種の総吸光度の所望の比を提供する、および/または上記の所望のDPT、D、またはD/E値を提供するように選択される。一部のそのような実施形態では、波長λでの非硬化性吸収体材料の総吸光度は、波長λでの光開始剤の総吸光度の約0.1~10倍、約0.2~5倍、または約0.5~2倍であり、波長λでの各種の「総吸光度(total absorbance)」とは、各種の量(モル)に波長λでのその種のモル吸光係数を掛けたものと理解される。
【0035】
さらに、波長λは、本開示の目的と矛盾しない任意の波長であってよいことに留意されたい。例えば、一部の例では、λは電磁スペクトルの紫外(UV)または可視領域の波長である。一部の例では、ピーク波長λは、電磁スペクトルの赤外(IR)領域にある。一部の実施形態では、波長λは、250nmと400nmの間、または300nmと385nmの間である。他の例では、波長λは、600nmと800nmの間、または900nmと1.3μmの間である。ただし、正確な波長λは特に限定されない。
【0036】
本開示の目的と矛盾しない任意の非硬化性吸収体材料を本明細書に記載のインクに使用してよい。例えば、一部の実施形態では、非硬化性吸収体材料は、ピレンなどの多環式芳香族化合物を含む。非硬化性吸収体材料は、上記の説明と一致する吸収プロファイルを有する「染料」であってもよい。そのような「染料」は、より詳細には、疎水性または油溶性染料であってよい。例えば、一部の例では、非硬化性吸収体材料は、油溶性黄色染料などの黄色染料である。他の黄色染料も使用できる。他の例では、非硬化性吸収体材料は、Keystone、Inc.から市販されているKEYPLAST染料などの青または緑の染料を含む。さらには、好ましくない場合もあるが、一部の実施形態では、非硬化性吸収体材料は、より狭い吸収プロファイルではなく、より広い吸収プロファイルを有していてもよい。例えば、そのような場合には、非硬化性吸収体材料は黒色染料を含む。一部の実施形態では、カーボンブラックまたは別の炭素同素体も非硬化性吸収体材料として使用することができる。
【0037】
上記のように、非硬化性吸収体材料成分は、本明細書に記載のインク中に、インクの総重量に基づき、10重量%までの量で存在することができる。例えば、一部の例では、インクは、7重量%まで、5重量%まで、3重量%まで、2重量%まで、または1重量%までの非硬化性吸収体材料を含む。一部の実施形態では、インクは、インクの総重量に基づき、0.01~10重量%、0.01~5重量%、0.01~3重量%、0.01~2重量%、0.01~1重量%、0.05~10重量%、0.05~5重量%、0.05~3重量%、0.05~1重量%、0.1~10重量%、0.1~7重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%、0.1~1重量%、0.5~10重量%、0.5~7重量%、0.5~5重量%、0.5~2重量%、0.5~1重量%、1~10重量%、1~7重量%、1~5重量%、または1~3重量%の非硬化性吸収体材料を含む。一部の特に好ましい実施形態では、非硬化性吸収体材料の量は、約1重量%以下である。例えば、一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、0.0001~1重量%、0.0001~0.5重量%、0.0001~0.1重量%、0.001~1重量%、0.001~0.5重量%、0.001~0.1重量%、0.001~0.05重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.1重量%、または0.01~0.05重量%の非硬化性吸収体材料を含む。「不活性な」非硬化性吸収体材料は、硬化中に光学的に関連する材料であるだけでなく、非反応性「フィラー(filler)」の役割を果たすこともできるため、上記の量のような比較的少量の非硬化性吸収体材料の使用は、ある例では、所定のインクから形成される物品の所望の機械的特性を維持または達成するために特に有利になり得る。
【0038】
本明細書に記載のインクはまた、1つまたは複数の光開始剤を含む。本開示の目的と矛盾しない任意の光開始剤を本明細書に記載のインクに使用することができる。一部の実施形態では、例えば、光開始剤は、フリーラジカルを生成するために、約250nmと約400nmの間、または約300nmと約385nmの間の光を吸収するように動作可能な、α開裂型(単分子分解プロセス)光開始剤または水素引き抜き型の光増感剤-第3級アミン相乗剤(synergist)を含む。α開裂型光開始剤の例は、Irgacure 184(CAS 947-19-3)、Irgacure 369(CAS 119313-12-1)、およびIrgacure 819(CAS 162881-26-7)である。光増感剤-アミンの組合せの例は、Darocur BP(CAS 119-61-9)とジエチルアミノエチルメタクリレートとの組合せである。
【0039】
さらに、一部の例では、光開始剤は、ベンゾイン、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテルおよびベンゾイルイソプロピルエーテルなど)、ベンゾインフェニルエーテルおよびベンゾインアセテートなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシアセトフェノンおよび1,1-ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンジル、ベンジルケタール(例えば、ベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタールなど);2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノンおよび2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;トリフェニルホスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO)など);ベンゾフェノンおよび4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;チオキサントンおよびキサントン;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体または1-フェニル-1,2-プロパンジオン;2-O-ベンゾイルオキシム;1-アミノフェニルケトン;または、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、および4-イソプロピルフェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトンなどの1-ヒドロキシフェニルケトン類を含む。
【0040】
光開始剤はまた、HeCdレーザ放射線源と共に使用するのに動作可能な光開始剤も含んでいてよく、そのような光開始剤には、アセトフェノン、2,2-ジアルコキシベンゾフェノン、および1-ヒドロキシフェニルケトン(例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンまたは2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン(=2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン)など)が含まれる。さらに、一部の例では、光開始剤は、Arレーザ放射線源と共に使用するのに動作可能な光開始剤を含み、そのような光開始剤にはベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール類が含まれる。一部の実施形態では、光開始剤は、α-ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタールまたは2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、あるいはそれらの混合物を含む。
【0041】
本明細書に記載のインクに含めることができる別のクラスの光開始剤には、化学線を吸収して重合開始のためのフリーラジカルを生成することができるイオン性染料-対イオン化合物が含まれる。いくつかのイオン性染料-対イオン化合物、およびその動作モードが、欧州特許出願公開第0223587号明細書、米国特許第4,751,102号、同第4,772,530号、および同第4,772,541号に開示されている。本明細書に記載の光開始剤は、トリフェニルスルホニウム光開始剤などのカチオン性光開始剤であってもよい。
【0042】
光開始剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載のインク中に存在していてよい。一部の実施形態では、光開始剤は、インクの総重量に基づき、約10重量%まで、約8重量%まで、約7重量%まで、約5重量%まで、約3重量%まで、または約2重量%までの量でインク中に存在する。一部の例では、光開始剤は、約0.1~10重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.5~5重量%、0.5~3重量%、0.5~2重量%、1~10重量%、1~8重量%、1~5重量%、1~4重量%、または1~3重量%の量で存在する。一部の特に好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、約5重量%までの量の光開始剤を含む。例えば、一部の例では、光開始剤成分は、インクの総重量に基づき、0.1~5重量%、または0.5~5重量%、あるいはさらにより好ましくは1~5重量%、2~5重量%、または2~4重量%の量でインク中に存在する。
【0043】
さらに、直前の段落に記載されている量(重量パーセント)は、非オリゴマー性および非ポリマー性である光開始剤を指すことを理解されたい。すなわち、上記の量は、例えば400未満の分子量を有する、「モノマー」または「分子」光開始剤を指す。しかしながら、オリゴマーまたはポリマー光開始剤も本明細書に記載のインクおよび方法で使用され得ることも理解されたい。しかしそのような場合(オリゴマーまたはポリマー光開始剤が使用される場合)、上記の量(重量パーセント)は、オリゴマーまたはポリマー光開始剤のオリゴマーまたはポリマー部分の重量を考慮しないで計算されるべきである。すなわち、インク中に存在するオリゴマーまたはポリマー光開始剤の総量(重量パーセント)を決定するために、その計算(具体的には、分数の分子)は、(本開示の目的のために)光開始剤の光活性部分の分子量のみに基づくべきであり、オリゴマーまたはポリマー光開始剤の残りの部分または繰り返し単位の分子量に基づくべきではない。
【0044】
さらに、上記のように、光開始剤の量および非硬化性吸収体材料の量は、互いを参照して選択することができる。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、5重量%までの光開始剤と1重量%までの非硬化性吸収体材料を含む。他の例では、本明細書に記載のインクは、4重量%までの光開始剤と0.5重量%までの非硬化性吸収体材料、または5重量%までの光開始剤と0.05重量%までの非硬化性吸収体材料を含む。一部の特に好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、少なくとも1重量光開始剤を、例えば0.5重量%までの非硬化性吸収体材料の量などの本明細書に記載されるある量の非硬化性吸収体材料と組み合わせて含む。本明細書でさらに説明するように、光開始剤が少なすぎる(特に非硬化性吸収体の量と比較して)組成物は、距離D内の硬化放射線に十分に反応することができず、その結果Dで規定される空間領域内で十分な重合が生じない。一部の例では、光開始剤の非硬化性吸収体材料に対する好ましい(重量)比は、1以上、5以上、または10以上である。一部の実施形態では、光開始剤の非硬化性吸収体材料に対する好ましい(重量)比は、1~200、1~100、5~100、1~200、10~150、10~100、25~200、25~100、50~200、50~150、または50~100である(光開始剤の重量が分子であり、非硬化性吸収体材料の重量が分母である)。そのような比は、一部の例では、硬化されたポリマーネットワークの形成に関して、他の非機能性または非硬化「フィラー」材料の量を最小限に抑えながら、所望の硬化効果(例えば、所望のD、E、またはD/E比の達成)をもたらすことができる。
【0045】
さらに、上記のように、光開始剤と非硬化性吸収体材料の相対量は、(重量パーセントまたは質量のみに基づくのとは対照的に)少なくとも部分的に、波長λにおける光開始剤および非硬化性吸収体材料のそれぞれの総(光学)吸光度に基づくことができる。例えば、非硬化性吸収体材料が波長λで比較的弱く吸収する場合、非硬化性吸収体材料が波長λで比較的強く吸収する状況(その場合、比較的少量(モルまたは重量パーセント)の非硬化性吸収体材料が同じ所望の「光子競合」を達成するために必要となり得る)と比較して、光開始剤との所望の「光子競合」を達成するために比較的大量(モルまたは重量パーセント)の非硬化性吸収体材料が必要となり得る。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載の光開始剤の非硬化性吸収体材料に対する比(上記の重量ベースの比など)が、光開始剤および非硬化性吸収体材料が波長λでお互いの2倍内の吸収(または光学密度)値を有する場合に用いられる。さらには、一部の例では、前の段落で説明した比(10~100の範囲内の光開始剤の非硬化性吸収体材料に対する比など)は、重量ベースの比ではなく、波長λでの総吸光度の比である。
【0046】
ここで、本明細書に記載のインクの他の具体的な構成要素に関して、本明細書に記載のインクは、1つまたは複数のオリゴマー硬化性材料および/または1つまたは複数のモノマー硬化性材料を含んでいてよい。本明細書での参照目的のために、硬化性材料は、1つまたは複数の硬化性または重合性部分を含む化学種を含む。本明細書での参照目的のために、「重合性部分」は、重合または硬化してプリント3D物品または物体を提供することができる部分を含む。このような重合または硬化は、本開示の目的と矛盾しない任意の方法で行うことができる。一部の実施形態では、例えば、重合または硬化は、重合または架橋反応を開始するのに十分なエネルギーを有する電磁放射線を重合性または硬化性材料に照射することを含む。例えば、一部の例では、紫外線(UV)放射を利用することができる。したがって、一部の例では、重合性部分は、UV重合性部分などの光重合性または光硬化性部分を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の硬化性材料は、約300nm~約400nmまたは約320nm~約380nmの範囲の波長で光重合可能または光硬化可能である。あるいは、他の例では、硬化性材料は、電磁スペクトルの可視波長で光重合可能である。さらに、硬化放射線には、一般に、上記のようにλのピーク波長を有する硬化放射線が含まれる。
【0047】
さらに、一部の例では、重合反応は、エチレン性不飽和点を含む、不飽和点間の反応などのフリーラジカル重合反応を含む。他の重合反応を用いてもよい。当業者に理解されるように、本明細書に記載の硬化性材料を重合または硬化するために使用される重合反応は、互いに反応して1つ以上の共有結合を形成できる1つ以上の官能基または部分を有する複数の「モノマー」または化学種の反応を含んでいてよい。
【0048】
本明細書に記載の硬化性材料の重合性部分の非限定的な一例は、ビニル部分、アリル部分、または(メタ)アクリレート部分などのエチレン性不飽和部分であり、用語「(メタ)アクリレート」には、アクリレートまたはメタクリレート、あるいはそれらの混合物または組合せが含まれる。
【0049】
本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料に含まれる「オリゴマー」種は、それ自体がポリマーまたはオリゴマーであり、比較的高分子量または比較的高粘度を有する。これらの種は、本明細書に記載の1つまたは複数の不飽和点を介してなど、追加の重合を受けることもできる。本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料中のオリゴマー種の集団は、(例えば、単一でない分子量分布を有するウレタンアクリレートの特定の塊(mass)によって示され得る、またはエチレングリコール単位の分布および/または集団内のエトキシ単位の分布を有するエトキシル化ポリエチレングリコールの特定の塊によって示され得るような)集団全体にわたりさまざまな分子構造および/または式を有することができる。本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料の重量平均分子量は、一般に、400~10,000、約600~10,000、約500~7,000、または約500~5,000の範囲であってよい。
【0050】
「オリゴマー」種とは対照的に、本明細書に記載のモノマー硬化性材料に含まれる「モノマー」種は、それ自体はポリマーまたはオリゴマーではなく、比較的低分子量または比較的低粘度を有する。モノマー硬化性材料に含まれる「モノマー」種は、(例えば、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレートの特定の塊、または上記の硬化性モノマーの特定の塊によって示されるような)その集団全体にわたり一貫したまたは明確に定義された分子構造および/または式を有し得る。さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のモノマー硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で500センチポアズ(cP)以下の粘度を有するが、一方「オリゴマー」硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で1000cP以上の粘度を有する。
【0051】
本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料またはモノマー硬化性材料の重合性部分の非限定的な一例は、ビニル部分、アリル部分、または(メタ)アクリレート部分などのエチレン性不飽和部分であり、用語「(メタ)アクリレート」には、アクリレートまたはメタクリレート、あるいはそれらの混合物または組合せが含まれる。
【0052】
さらに、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料およびモノマー硬化性材料は、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性、またはより高官能性の硬化性種を含むことができる。本明細書での参照目的のために、「単官能性」硬化性種は、1つの硬化性または重合性部分を含む化学種を含む。同様に、「二官能性」硬化性種は、2つの硬化性または重合性部分を含む化学種を含み;「三官能性」硬化性種は、3つの硬化性または重合性部分を含む化学種を含み;「四官能性」硬化性種は、4つの硬化性または重合性部分を含む化学種を含み;「5官能性」硬化性種は、5つの硬化性または重合性部分を含む化学種を含む。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクの単官能性硬化性材料は、モノ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの二官能硬化性材料は、ジ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの三官能硬化性材料はトリ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの四官能性硬化性材料はテトラ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの五官能性硬化性材料はペンタ(メタ)アクリレートを含む。他の単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、および五官能性の硬化性材料も使用することができる。
【0053】
さらに、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、および五官能性硬化性材料は、一部の例では、比較的低分子量の種、すなわちモノマー種、または比較的高分子量の種、すなわちオリゴマー種を含むことができる。
【0054】
一般に、本開示の目的と矛盾しない任意のオリゴマー硬化性材料またはオリゴマー硬化性材料の組合せを、本明細書に記載のインクで使用することができる。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクでの使用に適したオリゴマー硬化性材料は、波長λまたは波長λに近い(30nm以内の)波長に関連して上述した吸収プロファイルおよび/または屈折率を含む、同様の波長吸収プロファイルおよび/または屈折率を有する。一部の例では、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料は、ピーク波長λを有する硬化放射線の外側にあるかまたはそれを含まない光子吸収プロファイルを有する。
【0055】
一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、またはエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーおよび/またはEBECRYL 7100などのアクリレートアミンオリゴマー樹脂を含む。一部の例では、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料は、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む。一部の実施形態では、オリゴマー硬化性材料は、単官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートを含む。さらに、一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、脂肪族、脂環式または芳香族ジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートエステルを含み、それらには、ポリエチレングリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールF、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールS、エトキシル化またはプロポキシル化1、1、1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、あるいはエトキシル化またはプロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレートが含まれる。オリゴマー材料はまた、脂環式エポキシも含んでいてよい。
【0056】
本明細書に記載の一部の実施形態で有用な市販のオリゴマー硬化性材料の一部の非限定的な例には以下のものが含まれる:SARTOMER社からSR 611の商品名で市販されているアルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;RAHN USA社から商品名GENOMER 1122で市販されている単官能性ウレタンアクリレート;ALLNEX社から商品名EBECRYL 8402で市販されている脂肪族ウレタンジアクリレート;DYMAX社から商品名BR-952で市販されている多官能性アクリレートオリゴマー;DYMAX社から商品名BR-371Sで市販されている脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレート。他の市販のオリゴマー硬化性材料を使用してもよい。
【0057】
本明細書に記載のインクでの使用に適したウレタン(メタ)アクリレートは、一部の例では、典型的には、ヒドロキシル末端ウレタンをアクリル酸またはメタクリル酸と反応させて対応するウレタン(メタ)アクリレートを得るか、または、イソシアネート末端プレポリマーをヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートと反応させてウレタン(メタ)アクリレートを得るなどの、公知の方法で調製することができる。適切なプロセスは、とりわけ、欧州特許出願公開第114982号および同第133908号に開示されている。そのような(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、一部の例では、約400~10,000、または約500~7,000であってよい。ウレタン(メタ)アクリレートはまた、SARTOMER社からCN980、CN981、CN975およびCN2901の製品名で、あるいはBOMAR Specialties社からBR-741の製品名で市販されている。本明細書に記載の一部の実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ASTM D2983に準拠した方法で測定した場合に、約50℃で約140,000センチポアズ(cP)~約160,000cP、または約50℃で約125,000cP~約175,000cPの範囲の粘度を有する。一部の例では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ASTM D2983に準拠する方法で測定した場合に、約50℃で約100,000cP~約200,000cP、または、約50℃で約10,000cP~約300,000cPの範囲の粘度を有する。
【0058】
オリゴマー硬化性材料は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載のインク中に存在することができる。一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、インクの総重量に基づき、合計で、約80重量%まで、約70重量%まで、約60重量%まで、約50重量%まで、約40重量%まで、約30重量%まで、または約20重量%までの量でインク中に存在する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、約10~80重量%または10~70重量%のオリゴマー硬化性材料を含む。一部の実施形態では、インクは、インクの総重量に基づき、約10~60重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~30重量%、10~20重量%、15~40重量%、15~30重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、30~60重量%、30~50重量%、または40~60重量%のオリゴマー硬化性材料を含む。一部の特に好ましい実施形態では、オリゴマー硬化性材料の量は、インクの総重量に基づき、約60重量%以下である。一部の例では、例えば、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、10~60重量%、10~55重量%、15~60重量%、15~55重量%、15~50重量%、20~60重量%、20~55重量%、20~50重量%、25~60重量%、25~55重量%、25~50重量%、30~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、35~60重量%、35~55重量%、40~60重量%、40~55重量%、40~50重量%、45~60重量%、45~55重量%、または50~60重量%のオリゴマー硬化性材料を含む。
【0059】
さらに、本明細書に記載のインク中のオリゴマー硬化性材料の量が60重量%を超える場合、比較的低分子量のオリゴマーが一般に使用されかつ一般に好ましいことが理解される。例えば、本明細書に記載のインクが65~80重量%のオリゴマー硬化性材料を含む場合、オリゴマー硬化性材料の平均分子量(例えば、重量平均分子量)は、1000を超えるのではなく、1000未満であり得る。あるいは、他の例では、本明細書に記載のインク中のオリゴマー硬化性材料の量が60重量%を超える場合、インクの粘度がこの段落で前述した他のインクの粘度と同様になるように積層造形プロセス中にインクを高温で使用することを条件に、1000より高い重量平均分子量を有するオリゴマー硬化性材料を使用できる。
【0060】
さらに、本開示の目的と矛盾しない任意のモノマー硬化性材料またはモノマー硬化性材料の組合せを、モノマー硬化性材料成分として使用することができる。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクでの使用に適したモノマー硬化性材料は、波長λまたは波長λに近い(30nm以内の)波長に関連して上述した吸収プロファイルおよび/または屈折率を含む、同様の波長吸収プロファイルおよび/または屈折率を有する。一部の例では、本明細書に記載のモノマー硬化性材料は、ピーク波長λを有する硬化放射線の外側にあるかまたはそれを含まない光子吸収プロファイルを有する。
【0061】
一部の例では、本明細書に記載のインクのモノマー硬化性材料は、例えば1種または複数種の単官能性(メタ)アクリレート、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性(メタ)アクリレート、四官能性(メタ)アクリレートおよび/または五官能性(メタ)アクリレートなどの、1種または複数種の(メタ)アクリレートを含む。一部の実施形態では、例えば、モノマー硬化性材料は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロへキシルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレート,またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、モノマー硬化性材料は、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、およびシクロヘキサンジメタノールジアクリレートの内の1つ以上を含む。さらには、一部の例では、モノマー硬化性材料は、脂肪族、脂環式または芳香族ジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートエステルを含み、これらには、1,3-または1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたはビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールSなどが含まれる。本明細書に記載のモノマー硬化性材料はまた、1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、および/またはビス(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。さらに、一部の例では、モノマー硬化性材料は、エトキシル化またはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールF、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールS、エトキシル化またはプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、あるいはエトキシル化またはプロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの、エトキシル化またはプロポキシル化種を含んでいてもよい。一部の例では、モノマー硬化性材料は脂環式エポキシを含む。
【0062】
本明細書に記載の一部の実施形態で有用な市販のモノマー硬化性材料の追加の非限定的な例には、以下のものが含まれる:SARTOMER社からSR 506の商品名で市販されているイソボルニルアクリレート(IBOA);SARTOMER社からSR 423Aの商品名で市販されているイソボルニルメタクリレート;SARTOMER社からSR 272の商品名で市販されているトリエチレングリコールジアクリレート;SARTOMER社からSR 205の商品名で市販されているトリエチレングリコールジメタクリレート;SARTOMER社からSR 833Sの商品名で市販されているトリシクロデカンジメタノールジアクリレート;SARTOMER社からSR 368の商品名で市販されているトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;SARTOMER社からSR 339の商品名で市販されている2-フェノキシエチルアクリレート;SARTOMER社からSR 349の商品名で市販されているエトキシル化(3モル)ビスフェノールAジアクリレート;RAHN USA社からGENOMER 1120の商品名で市販されている環式単官能アクリレート;およびSARTOMER社からSR 399LVの商品名で市販されているジペンタエリトリトールペンタアクリレート。他の市販のモノマー硬化性材料も使用できる。
【0063】
モノマー硬化性材料は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載のインク中に存在することができる。一部の例では、モノマー硬化性材料は、インクの総重量に基づき、合計で、約80重量%まで、約70重量%まで、約60重量%まで、または約50重量%までの量で存在する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、約0~80重量%または10~80重量%のモノマー硬化性材料を含む。一部の実施形態では、インクは、インクの総重量に基づき、約0~75重量%、0~70重量%、0~60重量%、0~50重量%、0~40重量%、0~35重量%、0~30重量%、0~25重量%、0~20重量%、0~15重量%、0~10重量%、0~5重量%、10~75重量%、10~70重量%、10~60重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~35重量%、10~30重量%、10~25重量%、10~20重量%、20~80重量%、20~60重量%、または20~40重量%のモノマー硬化性材料を含む。
【0064】
本明細書に記載のインクの可能な追加成分に関して、本明細書に記載のインクは、1つまたは複数の光増感剤をさらに含むことができる。一般に、そのような増感剤をインクに添加して、存在し得る1つまたは複数の光開始剤の有効性を高めることができる。一部の例では、増感剤はイソプロピルチオキサントン(ITX)または2-クロロチオキサントン(CTX)を含む。
【0065】
増感剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量でインク中に存在することができる。一部の実施形態では、増感剤は、インクの総重量に基づき、約0.1重量%%~約2重量%または約0.5重量%~約1重量%の範囲の量で存在する。しかしながら、他の例では、本明細書に記載のインクは上記のような増感剤を除外する。
【0066】
本明細書に記載のインクの別の可能な成分に関して、本明細書に記載のインクはまた、インクの非硬化性吸収体材料とは異なっていてもよい少なくとも1つの着色剤を含むことができる。本明細書に記載のインクのそのような着色剤は、粒状顔料などの粒状着色剤、または分子染料などの分子着色剤であってよい。本開示の目的と矛盾しない任意のそのような粒状または分子着色剤を使用することができる。一部の例では、例えば、インクの着色剤は、TiOおよび/またはZnOなどの無機顔料を含む。一部の実施形態では、インクの着色剤は、RGB、sRGB、CMY、CMYK、L、またはPantone(登録商標)カラー化スキームに使用するための着色剤を含む。さらには、一部の例では、本明細書に記載の粒状着色剤は、約5μm未満または約1μm未満の平均粒径を有する。一部の例では、本明細書に記載の粒状着色剤は、約500nm未満の平均粒径、例えば、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、または約150nm未満の平均粒径を有する。一部の例では、粒状着色剤は、約50~5000nm、約50~1000nm、または約50~500nmの平均粒径を有する。
【0067】
着色剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載のインク中に存在することができる。一部の例では、着色剤は、インクの総重量に基づき、約2重量%までの量、あるいは約0.005~2重量%、0.01~2重量%、0.01~1.5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.1~2重量%、0.1~1重量%、0.1~0.5重量%、または0.5~1.5重量%の量でインク中に存在する。
【0068】
さらには、本明細書に記載のインクは、一部の実施形態では、1つまたは複数の重合禁止剤および/または安定剤をさらに含む。重合禁止剤は、組成物に付加的な熱的安定性をもたらすためにインクに添加することができる。本開示の目的と矛盾しない任意の重合禁止剤を使用することができる。さらには、重合禁止剤は、重合速度を遅延または低下させる、および/または重合禁止剤が消費されるまでのある期間または「誘導時間」の間、重合が生じるのを防ぐことができる。さらに、一部の例では、本明細書に記載の重合禁止剤は、「付加型」の禁止剤である。本明細書に記載の禁止剤はまた、「連鎖移動型」の禁止剤であってもよい。一部の例では、適切な重合禁止剤はメトキシヒドロキノン(MEHQ)を含む。
【0069】
安定剤は、一部の実施形態では、1つまたは複数の酸化防止剤を含む。安定剤は、本発明の目的と矛盾しない任意の酸化防止剤を含んでいてよい。一部の例では、適切な酸化防止剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などのさまざまなアリール化合物が含まれ、それらは、本明細書に記載の一部の実施形態において重合禁止剤としても使用できる。より一般的には、単一種が安定剤と重合禁止剤の両方の役割を果たす場合がある。一部の例では、複数の禁止剤および/または安定剤を使用することも可能であり、その際に異なる禁止剤および/または安定剤が異なる効果をもたらすおよび/または相乗的に機能する。
【0070】
重合禁止剤および/または安定剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量でインク中に存在することができる。一部の実施形態では、重合禁止剤は、インクの総重量に基づき、約0.01重量%~約2重量%または約0.05重量%~約1重量%の範囲の量で存在する。同様に、一部の例では、安定剤は、インクの総重量に基づき、約0.1重量%~約5重量%、約0.5重量%~約4重量%、または約1重量%~約3重量%の範囲の量でインク中に存在する。
【0071】
一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、粘度調整剤を含むことができる。粘度調整剤の非限定的な例には、飽和脂肪酸または飽和脂肪酸の組合せ、あるいは植物油などの油が含まれる。本明細書に記載のインクは、5重量%まで、3重量%まで、1重量%まで、0.5重量%まで、または0.1重量%までの本開示の目的と矛盾しない粘度調整剤を含んでいてよい。
【0072】
本明細書に記載のインクは、さまざまな望ましい特性を示すことができる。例えば、本明細書に記載のインクは、本開示の目的と矛盾しない、任意の凝固点、融点、および/または他の相転移温度を有することができる。一部の例では、インクは、相変化インクと共に使用するように設計された3Dプリントシステムなどの、いくつかの3Dプリントシステムにおいて使用される温度と整合する凝固点および融点を有する。一部の実施形態では、インクの凝固点は約40℃より高い。一部の例では、例えば、インクは、約45℃~約55℃または約50℃~約80℃の範囲の温度を中心とした凝固点を有する。一部の例では、インクは、約40℃より低いまたは約30℃より低い凝固点を有する。
【0073】
さらには、本明細書に記載の一部の実施形態では、インクは、シャープな凝固点または他の相転移を示す。一部の例では、例えば、インクは、約1~10℃、約1~8℃、または約1~5℃の範囲などの、狭い温度範囲で凝固する。一部の実施形態では、シャープな凝固点を有するインクは、X±2.5℃の温度範囲で凝固し、ここで、Xは、凝固点の中心となる温度である(例えば、X=65℃)。
【0074】
さらに、本明細書に記載のインクは、一部の例では、いくつかの3Dプリントシステムにおいて直面する噴射温度で流体である。さらには、一部の実施形態では、インクは、三次元的にプリントされた物品または物体の製造中に表面に堆積されるとすぐに固化する。あるいは、他の例では、インクは、表面への堆積時には実質的に流体のままである。インクの固化は、一部の実施形態では、インクまたはインクの成分の相変化を通じて生じる。相変化は、液体から固体への相変化または液体から半固体への相変化を含むことができる。さらには、一部の例では、インクの固化は、低粘度状態から高粘度状態への粘度の上昇など、インクの粘度の上昇を含む。インクの固化はインクの硬化によっても生じることができる。
【0075】
さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、未硬化のときに、MJPまたはSLAシステムなどの1つ以上の3Dプリントシステムの要件およびパラメータに整合する粘度プロファイルを有する。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、30℃で、1600センチポアズ(cP)以下、1200cP以下、または800cP以下の動的粘度を有する。好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、ASTM規格D2983に準拠して測定した場合に(例えば、ブルックフィールドモデルDV-II+粘度計を使用して)、30℃で500cP以下の動的粘度を有する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、未硬化のときに、ASTM規格D2983に準拠して測定した場合に、30℃で約200~1600cP、約200~1200cP、約200~800cP、約200~500cP、または約200~400cPの動的粘度を示す。
【0076】
本明細書に記載のインクはまた、硬化状態において、上記に記載されるものに加えて、さまざまな望ましい特性を示すことができる。本明細書で使用される「硬化」状態のインクは、少なくとも部分的に硬化された、すなわち少なくとも部分的に重合および/または架橋された硬化性材料または重合性成分を含むインクを含む。例えば、一部の例では、硬化したインクは、少なくとも約70%が重合または架橋されているか、または少なくとも約80%が重合または架橋されている。一部の実施形態では、硬化したインクは、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも99%が重合または架橋されている。一部の例では、硬化したインクは、約80%~約99%が重合または架橋されている。
【0077】
一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約10~70%、約10~60%、約15~50%、または約20~50%の破断伸びを有する。さらに、本明細書に記載の硬化したインクは、一部の例では、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約40~70MPa、約40~60MPa、または約45~55MPaの引張強度を有することができる。さらに、本明細書に記載の硬化したインクは、一部の実施形態では、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約1800~2100MPa、約1900~2100MPa、または約1950~2050MPaの引張弾性率を有することができる。また、本明細書に記載の硬化したインクは、ASTM D256に準拠して測定した場合に、1~4ft・lb/in(約53~214J/m)(ノッチ付き)、1~3ft・lb/in(約53~160J/m)(ノッチ付き)、または1~2ft・lb/in(約53~107J/m)(ノッチ付き)の耐衝撃性を有することができる。最後に、一部の例では、本明細書に記載の硬化したインクは、ASTM D790に準拠して測定した場合に、2000~2500MPa、2100~2400MPa、または2100~2200MPaの曲げ弾性率を有する。
【0078】
さらには、一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、複数の上記の特性を示すことができる。例えば、一部の実施形態では、インクは、硬化したときに、ASTM D638に準拠して測定した場合に、約40~70MPaの引張強度;ASTM D256に準拠して測定した場合に、1~4ft・lb/in(約53~214J/m)の耐衝撃性;およびASTM D638に準拠して測定した場合に、約10~70%の破断伸びを有する。
【0079】
本明細書に記載のインクは、本開示の目的と矛盾しない任意の方法で製造することができる。一部の実施形態では、例えば、本明細書に記載のインクの調製方法は、インクの成分を混合し、混合物を溶融し、溶融した混合物を濾過するステップを含む。混合物の溶融は、一部の例では、約75℃または約75℃~約85℃の範囲の温度で行われる。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、インクのすべての成分を反応容器に入れ、得られた混合物を攪拌しながら約75℃~約85℃の範囲の温度に加熱することによって製造される。加熱および撹拌は、混合物が実質的に均質化された溶融状態に達するまで続けられる。一般に、溶融混合物を流動状態にある間に濾過して、噴射または吐出あるいは他のプリントプロセスと干渉する可能性のある大きな望ましくない粒子を除去することができる。その後、ろ過した混合物を周囲温度まで冷却し、3Dプリントシステムで使用する準備ができるまで保管する。
【0080】
本明細書に記載のインクは、成分および/または特性の組合せが本発明の原理および目的と矛盾しないことを条件として、上記の成分および/または特性の組合せを含む、有する、または示すことができる。例えば、一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、60重量%までのオリゴマー硬化性材料;80重量%までのモノマー硬化性材料;5重量%までの光開始剤;1重量%までの非硬化性吸収体材料;および10重量%までの1つまたは複数の追加成分を含み、ここで、オリゴマー硬化性材料、モノマー硬化性材料、光開始剤、非硬化性吸収体材料、および1つまたは複数の追加成分の合計量は100重量%に等しく;光開始剤は、波長のガウス分布およびピーク波長λを有する入射硬化放射線に光開始剤が曝露されると、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能であり;インクは、波長λでの浸透深さ(D)および臨界エネルギー(E)を有し;インクは、2×D以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)、または10~50(μm cm)/mJのD/E値を有する。他の好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、40~60重量%のオリゴマー硬化性材料、40~60重量%のモノマー硬化性材料、1~5重量%の光開始剤%、および0.001~0.1重量%の非硬化性吸収体材料を含み、ここで、オリゴマー硬化性材料、モノマー硬化性材料、光開始剤、非硬化性吸収体材料、および1つまたは複数の追加成分の合計量は100重量%に等しく;光開始剤は、波長のガウス分布およびピーク波長λを有する入射硬化放射線に光開始剤が曝露されると、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能であり;インクは、波長λでの浸透深さ(D)および臨界エネルギー(E)を有し;インクは、1.5×D以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)を有し;Eは15mJ/cm未満である。さらなる他の好ましい実施形態では、この段落に記載されるインクはさらに、以下の特徴の1つ、少なくとも2つ、または特に好ましい実施形態ではすべてを有する:(1)(μm cm)/mJの単位でのD/E比が10と50の間である;(2)光開始剤の非硬化性吸収体材料に対する重量比が5と100の間である;(3)Dが200μm以下または100μm以下である。そのような特性を有するインクは、積層造形プロセスの通常の(またはより速い)速度を維持しながら、積層造形の通常のエネルギー効率(硬化に必要なエネルギーに関して)を維持(または改善)しながら、および/またはプリント物品の所望の機械的特性を維持(または改善)しながら、積層造形の正確度および/または精度を向上させるために特に好ましいものになることができる。上記の「通常の」または「維持された」特性は、本開示/好ましい実施形態に従う本発明のインクに匹敵するが、上記で同定された本発明の測定基準内に含まれないインクと比較したものであることを理解されたい。同様に、「所望の機械的特性」は、インク成分の所定の選択に基づいて変化し得ることをさらに理解されたい。再度、しかしながら、上記の好ましいインクなどのインクは、それら(インク)が本明細書に記載の本発明のパラメータの範囲外にある場合にインクが提供する機械的特性を実質的に損なうことなく、本開示で企図される利点をもたらすことができる。例えば、(例えば特定のモノマーおよび/またはオリゴマー硬化性材料の選択を通して)高い伸びまたは引張強度を有するように配合されたインクは、上記の好ましい実施形態に一致する態様で処方中に光開始剤および非硬化性吸収性材料を含むにもかかわらず、そのような伸びまたは引張強度を維持することができる(例えば、伸びまたは引張強度を本明細書に記載の好ましいインクを用いて達成することができ、ここで伸びまたは引張強度は、パーセント偏差を計算するための分母として所望の値を使用して、所望の伸びまたは引張強度値から5%を超えては逸脱しない)。
【0081】
II.3D物品の形成方法
別の態様では、積層造形によって3D物品または物体を形成または「プリント」する方法を本明細書に記載する。本明細書に記載される3D物品または物体を形成する方法は、層ごとの様式で、本明細書に記載のインクの複数の層から3D物品を形成することを含んでいてもよい。積層造形により3D物品を形成する方法は、層ごとの様式以外の方法で物体を形成することを含んでいてもよい。セクションIにおいて上述した任意のインクを、本明細書に記載の方法で使用することができる。
【0082】
例えば、一部の例では、本明細書に記載の方法は、波長λでの浸透深さ(D)および臨界エネルギー(E)を有するインクを提供し;さらに波長のガウス分布および波長λのピーク波長を有する入射硬化放射線を使用してインクの一部を選択的に硬化することを含み、インクは、2xD以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)および/または0~50の(μm cm)/mJの単位でのD/E比を有する。さらに、本明細書に記載の一部の実施形態では、インクは、事前に選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータにしたがって選択的に硬化され、DはCADパラメータのボクセル深さに対応する。さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクの1つまたは複数の層は、約10μm~約100μm、約10μm~約80μm、約10μm~約50μm、約20μm~約100μm、約20~約80μm、または約20~約40μmの厚さを有する。他の厚さも可能である。
【0083】
さらに、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、例えば、MJPまたはSLA 3Dプリント方法を含むことができることを理解されたい。例えば、一部の例では、3D物品をプリントするMJP方法は、本明細書に記載のインクの層を流体状態で3Dプリントシステムのビルドパッドなどの基体上に選択的に堆積させることを含む。さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、支持材料でインクの層の少なくとも1つを支持することをさらに含む。本開示の目的と矛盾しない任意の支持材料を使用することができる。
【0084】
本明細書に記載の方法は、上記の硬化放射線(ピーク波長λを有する硬化放射線など)を用いることを含む、インクの層を硬化することも含むことができる。さらに、硬化は、インクの1つまたは複数の成分の1つまたは複数の重合性部分または官能基を重合することを含むことができる。一部の例では、堆積されたインクの層は、別のまたは隣接するインクの層の堆積の前に硬化される。さらに、一部の実施形態では、堆積されたインクの1つまたは複数の層の硬化は、1つまたは複数の層を、上述のように、UV光、可視光、または赤外光などの電磁放射に暴露することによって行われる。
【0085】
「材料堆積」法(MJPなど)または「バット重合」法(SLAなど)を含む、さまざまな方法に関するさらなる詳細を以下に記載する。
【0086】
A.材料堆積法
材料堆積法では、本明細書に記載のインクの1つまたは複数の層を基体上に選択的に堆積させ、さらに硬化させる。インクの硬化は、インクの1つの層、各層、いくつかの層、またはすべての層の選択的堆積の後に生じ得る。
【0087】
一部の例では、本明細書に記載のインクを、3Dプリントシステムのビルドパッドなどの基体上に、流体状態で選択的に堆積させる。選択的堆積は、例えば、事前に選択されたCADパラメータにしたがってインクを堆積させることを含んでいてよい。例えば、一部の実施形態では、プリントすべき所望の3D物品に対応するCADファイルの図面を作製し、十分な数の水平スライスにスライスする。その後、CADファイルの図面の水平スライスにしたがって、層ごとにインクを選択的に堆積させて所望の3D物品をプリントする。「十分な」数の水平スライスは、例えば正確かつ精密にそれを製造するために、所望の3D物品をうまくプリントするのに必要な数である。
【0088】
さらに、一部の実施形態では、事前に選択された量の本明細書に記載のインクを、適切な温度に加熱し、適切なインクジェットプリンタの1つまたは複数のプリントヘッドを通して噴射させて、プリントチャンバ内のプリントパッド上に層を形成する。一部の例では、事前に選択されたCADパラメータにしたがってインクの各層を堆積させる。インクを堆積させるのに適したプリントヘッドは、一部の実施形態では、圧電プリントヘッドである。本明細書に記載のインクおよび支持材料の堆積に適したさらなるプリントヘッドは、さまざまなインクジェットプリント装置製造メーカーから市販されている。例えば、一部の例では、Xerox、Hewlett Packard、またはRicohのプリントヘッドを使用することができる。
【0089】
さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、堆積した際に実質的に流体のままである。あるいは、他の例では、インクは、堆積してすぐに相変化を示す、および/または、堆積してすぐに固化する。さらには、一部の例では、インクの噴射された液滴が受容面と接触すると固化するようにプリント環境の温度を制御することができる。他の実施形態では、噴射されたインクの液滴は、受容面と接触しても固化せず、実質的に流体状態のままである。さらに、一部の例では、各層が堆積された後、堆積された材料は、次の層の堆積前に、電磁放射線(例えば、UV線、可視光線または赤外線)を用いて平坦化および硬化される。任意選択で、平坦化および硬化の前に、いくつかの層を堆積させてもよく、あるいは多数の層を堆積および硬化させた後に、1つまたは複数の層を堆積させ、その後硬化せずに平坦化してもよい。平坦化により、分配された材料を平らにして過剰な材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一に滑らかな露出した面または平坦な上向きの面を作り出すことによって、材料の硬化前に1つまたは複数の層の厚さを補正する。一部の実施形態では、平坦化は、1つ以上のプリント方向において逆回転し得るが、1つ以上の他のプリント方向においては逆回転しないローラなどの、ワイパ装置を用いて達成される。一部の例では、ワイパ装置は、ローラと、ローラから過剰の材料を除去するワイパとを備える。さらに、一部の例では、ワイパ装置は加熱される。硬化前の噴射された本明細書に記載のインクの粘稠度は、一部の実施形態では、その形状を保持するのに十分であり、かつ平坦化装置からの過剰な粘性抵抗を受けないことが望ましいことに留意されたい。
【0090】
さらには、支持材料は、使用する場合には、インクについて上述したものに準拠する様式で堆積させることができる。支持材料は、例えば、支持材料がインクの1つまたは複数の層に隣接または連続するように、事前に選択されたCADパラメータにしたがって堆積させることができる。噴射された支持材料の液滴は、一部の実施形態では、受容面と接触すると固化または凝固する。一部の例では、堆積された支持材料も平坦化、硬化、または平坦化および硬化を受ける。本開示の目的と矛盾しない任意の支持材料を使用することができる。
【0091】
インクおよび支持材料の積層堆積は、3D物品が形成されるまで繰り返すことができる。一部の実施形態では、3D物品をプリントする方法は、インクから支持材料を除去することをさらに含む。
【0092】
インクの硬化は、1つのインクの層、各インクの層、いくつかのインクの層、または所望の3D物品をプリントするのに必要なすべてのインクの層の選択的堆積の後に生じ得る。一部の実施形態では、堆積されたインクの部分的硬化は、1つのインクの層、各インクの層、いくつかのインクの層、または所望の3D物品をプリントするのに必要なすべてのインクの層の選択的堆積の後に行われる。本明細書における参照目的のために、「部分的に硬化された」インクは、さらなる硬化を受けることができるものである。例えば、部分的に硬化されたインクは、約30%まで重合または架橋されている、あるいは約50%まで重合または架橋されている。一部の実施形態では、部分的に硬化されたインクは、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、または約95%まで重合または架橋されている。
【0093】
堆積されたインクの部分的硬化は、電磁放射線源を用いてインクに照射する、または(上記の硬化放射線を用いることを含む)インクを光硬化することを含んでいてもよい。例えば、UV線、可視光線または赤外線を放射する電磁放射線源など、本開示の目的と矛盾しない任意の電磁放射線源を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、電磁放射線源は、例えばキセノン(Xe)アークランプなど、約300nm~約900nmの波長を有する光を放射するものであってよい。
【0094】
さらに、一部の実施形態では、部分的硬化が行われた後に後硬化が行われる。例えば、一部の例では、後硬化は、所望の3D物品を形成するのに必要なすべてのインクの層を選択的に堆積させた後、すべてのインクの層を部分的に硬化させた後、あるいは前記のステップの両方を実施した後に実施される。さらには、一部の実施形態では、後硬化は、ピーク波長λを有する上記の硬化放射線を用いることを含めて、光硬化を含む。再度、本開示の目的と矛盾しない任意の電磁放射線源を、本明細書に記載の後硬化ステップに使用してよい。例えば、一部の実施形態では、電磁放射線源は、部分的硬化に使用される電磁放射線源よりも高いエネルギー、低いエネルギー、またはそれと同じエネルギーを有する光源であってよい。後硬化に用いられる電磁放射線源が部分的硬化に使用されるものよりも高いエネルギー(すなわち、より短い波長)を有する一部の例では、キセノン(Xe)アークランプを部分的硬化に使用することができ、水銀(Hg)ランプを後硬化に使用することができる。
【0095】
さらに、後硬化後、一部の例では、インクの堆積層は、少なくとも約80%が重合または架橋されているか、または少なくとも約85%が重合または架橋されている。一部の実施形態では、インクの堆積層は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%が重合または架橋されている。一部の例では、インクの堆積層は、約80~100%、約80~99%、約80~95%、約85~100%、約85~99%、約85~95%、約90~100%、または約90~99%が重合または架橋されている。
【0096】
B.バット重合法
SLA法などのバット重合法を用いて、本明細書に記載のインクから3D物品を形成することも可能である。したがって、一部の例では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、本明細書に記載のインクを流体状態で容器内に保持し、容器内のインクにエネルギー(特に、例えば、ピーク波長λを有する硬化放射線)を選択的に印加して、インクの流体層の少なくとも一部を固化し、それにより3D物品の断面を画成する固化層を形成することを含む。さらに、本明細書に記載の方法は、インクの固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面に未固化インクの新しいまたは第2の流体層を提供し、次いで容器内のインクにエネルギーを再び選択的に印加し、インクの新しいまたは第2の流体層の少なくとも一部を固化して、3D物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成することをさらに含んでいてよい。さらに、インクを固化するためにエネルギーを印加することによって、3D物品の第1の断面と第2の断面を、z方向(または、上記の上昇または下降方向に対応するビルド方向)に互いに結合または接着させることができる。さらには、一部の例では、電磁放射線は、300~900nmの平均波長を有し、他の実施形態では、電磁放射線は、300nm未満の平均波長を有する。一部の例では、硬化放射線はコンピュータ制御されたレーザ光線によって提供される。さらに、一部の例では、インクの固化層を上昇または下降させることは、流体インクの容器内に配置された昇降プラットフォームを使用して行われる。本明細書に記載の方法はまた、昇降プラットフォームを上昇または下降させることによってもたらされる流体インクの新しい層を平坦化することも含んでいてよい。このような平坦化は、一部の例では、ワイパまたはローラによって行うことができる。
【0097】
さらに、3D物品を提供するために、前述のプロセスを所望の回数だけ繰り返してよいことをさらに理解されたい。例えば、一部の例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができ、ここで、nは、最大約100,000、最大約50,000、最大約10,000、最大約5000、最大約1000、または最大約500であってよい。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、エネルギー(例えば、ピーク波長λの硬化放射線)を容器内のインクに選択的に印加して、インクのn番目の流体層の少なくとも一部を固化し、それにより3D物品のn番目の断面を画成するn番目の固化層を形成するステップ、インクのn番目の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+1)番目の層を提供するステップ、容器内のインクの(n+1)番目の層にエネルギーを選択的に印加して、インクの(n+1)番目の層の少なくとも一部を固化して、3D物品の(n+1)番目の断面を画成する(n+1)番目の固化層を形成するステップ、インクの(n+1)番目の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+2)番目の層を提供するステップ、および3D物品を形成するために前述のステップを繰返し続けるステップを含んでいてよい。さらに、インクの層にエネルギー(例えば、本明細書に記載の硬化放射線)を選択的に印加するステップなど、本明細書に記載の方法の1つまたは複数のステップを、コンピュータ可読フォーマットの3D物品の画像にしたがって行うことができることを理解されたい。ステレオリソグラフィを使用する3Dプリントの一般的な方法は、特に、米国特許第5,904,889号および同第6,558,606号にさらに記載されている。
【0098】
上記のプリントプロセスを実行することにより、本明細書に記載のインクから、高い特徴解像度を有するプリント3D物品を提供することができる。本明細書での参照目的のために、物品の「特徴解像度(feature resolution)」とは、物品の最小の制御可能な物理的特徴サイズであることができる。物品の特徴解像度は、マイクロメートル(μm)などの距離の単位、または1インチ当たりのドット数(dpi)で記載することができる。当業者に理解されるように、より高い特徴解像度は、より高いdpi値に対応し、またμmでのより短い距離に対応する。一部の例では、本明細書に記載のインクを堆積または固化することによって形成される物品は、高温での解像度を含めて、約500μm以下、約200μm以下、約100μm以下、または約50μm以下の特徴解像度を有することができる。一部の実施形態では、物品は、約50μmと約500μmの間、約50μmと約200μmの間、約50μmと約100μmの間、または約100μmと約200μmの間の特徴解像度を有する。それに対応して、一部の例では、本明細書に記載の物品は、少なくとも約100dpi、少なくとも約200dpi、少なくとも約250dpi、少なくとも約400dpi、または少なくとも約500dpiの特徴解像度を有する。一部の例では、物品の特徴解像度は、約100dpiと約600dpiの間、約100dpiと約250dpiの間、または約200dpiと約600dpiの間である。
【0099】
上記のようなバット重合法において、上記のセクションIIAで説明したように、インクは部分的に硬化され得る。例えば、一部の実施形態では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加してインクの流体層の少なくとも一部を固化させることは、インクの流体層の少なくとも一部を部分的に硬化させることを含んでいてもよい。他の実施形態では、インクの流体層の少なくとも一部の部分的硬化は、インクの第1の層を提供および固化した後、インクの第2の層を提供または固化する前または後、あるいはインクの1つ、いくつか、またはすべてのその後の層を提供または固化する前または後に、生じ得る。
【0100】
さらに、本明細書に記載のバット重合法の一部の実施形態では、部分的硬化後、あるいは所望の3D物品が形成された後に、上記のセクションIIAで説明したような後硬化を行ってもよい。所望の3D物品は、例えば、CADファイルの設計に対応する物品であってよい。
【0101】
III.プリント3D物品
別の態様では、プリント3D物品を本明細書に記載する。一部の実施形態では、プリント3D物品は、本明細書に記載のインクから形成される。本明細書の上記セクションIに記載のいずれのインクを用いてもよい。例えば、一部の例では、インクは、インクの総重量に基づき、60重量%までのオリゴマー硬化性材料;80重量%までのモノマー硬化性材料;5重量%までの光開始剤;1重量%までの非硬化性吸収体材料;および10重量%までの1つまたは複数の追加成分を含み、前記成分の合計量は100重量%に等しい。さらに、光開始剤は、ピーク波長λを有する入射硬化放射線に光開始剤が曝露されると、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能である。さらには、インクは、波長λでの浸透深さ(D)、臨界エネルギー(E)および2×D以下のプリントスルー深さ(DPT)を有する。
【0102】
3Dプリント用インクのいくつかの実施形態を、以下の非限定的な実施例でもさらに説明する。
【実施例0103】
実施例1
インクの調製方法
本明細書に記載の一部の実施形態によるインクは以下のように調製した。具体的には、さまざまなインクを調製するために、以下の表I~VIの成分を反応容器内で混合して、表に示されている特定のインクを形成した。表I~VIのさまざまな成分の量は、インクの総重量に基づき、指定されたインクの各成分の重量%を表す。各インクについて、適切な混合物を撹拌しながら約75~85℃の温度に加熱した。混合物が実質的に均質化された溶融状態になるまで、加熱および撹拌を続けた。その後、溶融混合物を濾過した。次に、濾過した混合物を周囲温度まで放冷した。
【0104】
実施例2
オリゴマーおよびモノマー硬化性材料の異なる量
表1のインク1および2は、実施例1の手順にしたがって調製した。光開始剤および非硬化性吸収体材料の量を一定に保ちながら、オリゴマー硬化性材料およびモノマー硬化性材料の量を変化させた。インク1とインク2のオリゴマー硬化性材料およびモノマー硬化性材料は、化学的同一性は同じであり、波長λ(405nmであった)で非吸収性の(メタ)アクリレートからなる。光開始剤は、インク1と2で同じであり、Irgacure 819からなる。非硬化性吸収体材料は、インク1と2で同じであり、Keystoneのオイルイエロー(Oil Yellow)とブルーB(Blue B)の重量で1:1の混合物からなる。表Iのインク1および2のさまざまな成分の量は、各インクの総重量に基づき重量パーセント(重量%)として提供される。DおよびEの値も各インクについて表Iに示す。表I(および後続の表)におけるこれらの値の単位は以下の通りである:D(μm)、E(mJ/cm)、およびD/E比((μm cm)/mJ)。
【表1】
【0105】
表Iに示すように、D、E、およびD/E比(したがってDPT)は、オリゴマーおよびモノマー硬化性材料の異なる濃度にわたって実質的に一定のままであり、光開始剤および非硬化性吸収体材料の量がこれら組成物(ならびに、上記ならびに以下の実施例3でさらに説明するように、硬化性材料が光学的スペクテーターである他の組成物)のD、E、およびDPTを主に制御することを示す。
【0106】
実施例3
異なるオリゴマーおよびモノマー硬化性材料
表IIのインク3~6は、実施例1の手順にしたがって調製した(ここでも、表IIにおいて成分は重量%として提供される)。インク3および4において、オリゴマーおよびモノマー硬化性材料、光開始剤、および非硬化性吸収体材料の濃度は実質的に一定のままであり、かつオリゴマー硬化性材料、光開始剤、および非硬化性吸収体材料は同じであった。ただし、モノマー硬化性材料のタイプまたは種は、インク3とインク4とで異なっていた。具体的には、それらインクは、異なる種の(メタ)アクリレートモノマーを含んでいた。しかし、インク3および4の両方のモノマー硬化性材料は、波長λ(405nm)で実質的に非吸収性の光学的スペクテーター種であった。
【0107】
インク5および6において、オリゴマーおよびモノマー硬化性材料、光開始剤、および非硬化性吸収体材料の濃度は、実質的に一定のままであった。さらに、光開始剤および非硬化性吸収体の材料は、両方のインクで同じ種であった。ただし、インク5とインク6のオリゴマー硬化性材料のタイプまたは種は異なっていた。具体的には、それらインクは、異なる種の脂肪族ウレタンアクリレートを含んでいた(インク6はトリアクリレートを含むが、インク5はジアクリレートのみを含んでいた)。インク5および6の両方のオリゴマー硬化性材料は、波長λ(405nm)で実質的に非吸収性の光学的スペクテーター種であった。
【表2】
【0108】
インク3および4に関して表IIに示すように、モノマー硬化性材料は本質的に光学的スペクテーター種であるため、モノマー硬化性材料のタイプを変更すると、D、E、およびD/E比(したがってDPT)にわずかな変化をもたらす。同様に、インク5および6に関して、オリゴマー硬化性材料のタイプの変化も、D、E、およびD/E比にわずかな変化をもたらすのみである。
【0109】
実施例4
追加の変更
表IIIのインク7~14は、実施例1の手順にしたがって調製した(ここでも、表IIIにおいて成分は重量%として提供される)。表IVは、表IIIのさまざまなインクで使用されたさまざまな成分を示す。表IIIおよびIVにおいて、ダッシュ(――)は、成分が存在しないか、または値がここに報告されていないことを示す。しかしながら、明確にするために、インク7~14はすべて、本明細書で広く説明されている「本発明による」インクである(同じことがインク1~6のすべてにも当てはまる)。さらに、インク1~12は、本発明の特に好ましい実施形態である。光開始剤および非硬化性吸収体材料を除いて、以下の表IIIのインク7~12のすべての成分は、波長λで実質的に非吸収性であり、これらの種は上記のように本質的に光学的スペクテーターであった。
【表3】
【表4-1】
【0110】
表IIIに示すように、異なる濃度およびタイプの光開始剤および非硬化性吸収体材料をここに記載のインクに使用して、D、E、およびD/E比(したがってDPT)を調整することができる。
【0111】
実施例5
比較データ
インク15~17および比較インク1および2は、実施例1の手順にしたがって調製した。表IVに示すように、インク15および16を比較インク1と比較する。インク15および16は、比較インク1と同じオリゴマーおよびモノマー硬化性材料のタイプを匹敵する量で有する。3つのインクはすべて、同じ光開始剤および非硬化性吸収体材料も含む。ただし、比較インク1における光開始剤の非硬化性吸収体に対する比は低すぎて、特にEが高いため本明細書に記載の所望の結果(プリント効率および速度など)に合致するD/E比を達成できない。互いに比較されるインク17と比較インク2は、同じオリゴマーおよびモノマー硬化性材料を匹敵する量で含む。どちらのインクも同じ光開始剤および非硬化性吸収体材料を含む。しかしながら、比較インク2における非硬化性吸収体材料の量が多すぎる。さらなる比較の目的で、インク1~12は、インク1~12の光開始剤と非硬化性吸収体の組合せを除外して他の点では類似するインクと比較して、望ましい機械的特性を維持しながら改善されたプリントスルー特性を示したことにさらに留意されたい(データは示していない)。
【表4-2】
【0112】
上記の実施例のデータによって示されるように、本明細書に記載されかつ特許請求されるインクは、インク1~17の正確な実施形態のみに限定されないことを理解されたい。そうではなく、本開示の教示に基づき、当業者は他の具体的なインクを配合することができる。
【0113】
実施例6
追加の例示的インク組成物
上記のインク1~17に加えて、本開示による他のインクを以下の表Vの量を用いて提供する。表Vにおける量は、インクの総重量に基づく特定のインクの各成分の重量%を示し、所定の場合において合計量は100重量%に等しい。さらに、「PI」は「光開始剤」の略である。
【表5】
【0114】
いくつかの追加の非限定的な例示的実施形態を以下に提供する。
【0115】
実施形態1
三次元プリントシステムで使用するためのインクであって、インクの総重量に基づき、
80重量%までのオリゴマー硬化性材料、
80重量%までのモノマー硬化性材料、
10重量%までの光開始剤、
1重量%までの非硬化性吸収体材料、および
10重量%までの1つまたは複数の追加成分
を含み、
オリゴマー硬化性材料、モノマー硬化性材料、光開始剤、非硬化性吸収体材料、および1つまたは複数の追加成分の合計量は100重量%に等しく、
光開始剤は、波長のガウス分布およびピーク波長λを有する入射硬化放射線に光開始剤が曝露されると、オリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料の硬化を開始するように動作可能であり、
インクは、波長λでの浸透深さ(D)および臨界エネルギー(E)を有し、さらに
インクは、2×D以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)、および/または10~50(μm cm)/mJのD/E値を有する、インク。
【0116】
実施形態2
1.5×D以下の波長λでのプリントスルー深さ(DPT)を有する、実施形態1のインク。
【0117】
実施形態3
インクのDが60~100μmであり、かつ
インクのEが2~4mJ/cmである、実施形態1または実施形態2のインク。
【0118】
実施形態4
インクのDが101~150μmであり、かつ
インクのEが4~20mJ/cmである、実施形態1または実施形態2のインク。
【0119】
実施形態5
インクのDが151~200μmであり、かつ
インクのEが8~15mJ/cmである、実施形態1または実施形態2のインク。
【0120】
実施形態6
10と50の間の(μm cm)/mJの単位でのD/E比を有する、先行する実施形態のいずれかのインク。
【0121】
実施形態7
5重量%までの光開始剤を含む、先行する実施形態のいずれかのインク。
【0122】
実施形態8
5重量%までの光開始剤、および0.5重量%までの非硬化性吸収体材料を含み、かつ
光開始剤の非硬化性吸収体に対する重量比が5と100の間である、先行する実施形態のいずれかのインク。
【0123】
実施形態9
非硬化性吸収体材料および光開始剤の両方が、波長λの30nm以内に吸収ピークを有する、先行する実施形態のいずれかのインク。
【0124】
実施形態10
波長λにおける非硬化性吸収体材料の総吸光度が、波長λにおける光開始剤の総吸光度の約0.1~10倍である、先行する実施形態のいずれかのインク。
【0125】
実施形態11
非硬化性吸収体材料がピレンを含む、先行する実施形態のいずれかのインク。
【0126】
実施形態12
非硬化性吸収体材料が油溶性黄色染料を含む、先行する実施形態のいずれかのインク。
【0127】
実施形態13
積層造形により三次元物品を形成する方法であって、
実施形態1~12のいずれかのインクを提供するステップ、および
波長のガウス分布および波長λにピーク波長を有する入射硬化放射線を使用して、インクの一部を選択的に硬化するステップ
を含む、方法。
【0128】
実施形態14
インクは、事前に選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータにしたがって選択的に硬化され、
はCADパラメータのボクセル深さに対応する、実施形態13の方法。
【0129】
実施形態15
インクを提供するステップは、流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積して三次元物品を形成することを含む、実施形態13または実施形態14の方法。
【0130】
実施形態16
インクを提供するステップは、インクを流体状態で容器内に保持することを含み、
インクの一部を選択的に硬化するステップは、
容器内のインクに硬化放射線を選択的に適用して、インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化し、それにより物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成すること、
第1の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供すること、および
容器内のインクに硬化放射線を選択的に適用して、インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化し、それにより物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成すること
を含み、第1の断面と第2の断面はz方向に互いに結合している、実施形態13~15のいずれかの方法。
【0131】
実施形態17
実施形態1~12のいずれかのインクからおよび/または実施形態13~16のいずれかの方法を使用して形成されたプリント三次元物品。
【0132】
本明細書で言及されるすべての特許文書は、その全体が参照により組み込まれる。本発明のさまざまな実施形態が、本発明のさまざまな目的の実現において説明されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることを認識されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それらの多数の修正および適応が当業者に容易に明らかになるであろう。