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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100859
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G02B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080691
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2020007031の分割
【原出願日】2020-01-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第63回宇宙科学技術連合講演会(アクティとくしま、令和元年11月6日開催) 第63回宇宙科学技術連合講演会 予稿集写し
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 亮介
(57)【要約】
【課題】小型・軽量な光学系構成で、マイクロラジアン程度以下の光伝搬方向の制御精度を持ち、耐環境性・耐振動性も高く、大口径ビームや高パワー光への対応も可能で、しかも低コストな光学装置及び光伝搬方向制御器を提供すること。
【解決手段】光学装置1は、焦点を有する集光光学部品である凸レンズ10と、凸レンズ10とその前記焦点との間に挿入され、凸レンズ10側から見た際の見かけ上の焦点を、光軸に垂直な方向へシフトすることができる光学素子である平行平面板20とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点を有する集光光学部品と、
前記集光光学部品と前記焦点との間に挿入され、前記集光光学部品側から見た際の見かけ上の焦点を、光軸に垂直な方向へシフトすることができる光学素子と
を具備する光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自由空間光の送光器または受光器において、その送光または受光の方向を高精度に制御する光伝搬方向制御器や選択器として用いられる光学装置に関する。
本発明は、このような光学装置を有する光伝搬方向制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)、自由空間光通信、光3Dプリンタなどのレーザアプリケーションの急速な発展に伴い、レーザビーム等の光の伝搬方向を高速かつ高精度(ミリラジアン以下の誤差)に固定または掃引する光伝搬方向制御器のニーズが高まっている。
【0003】
従来の主な光伝搬方向制御器の構成としては、ミラーの角度制御によるもの、レンズ位置シフト等により光学軸をずらすものなどが挙げられる。前者には、ジンバルミラー(非特許文献1参照)、ガルバノミラーシステム(非特許文献2参照)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー(非特許文献3参照)等が一般に用いられる。さらには、機械的な可動部分を有せず、光の位相に空間的な変調をかけることで光伝搬方向を変化させる空間光変調器などがある(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y. Kaymak et al., "A Survey on Acquisition, Tracking, and Pointing Mechanisms for Mobile Free-Space Optical Communications," IEEE Communications Surveys and Tutorials 20, 1104-1123 (2018).
【非特許文献2】H. Jigang et al., "Two Dimensional Laser Galvanometer Scanning Technology for Additive Manufacturing," International Journal of Materials, Mechanics and Manufacturing 6, 332-336 (2018).
【非特許文献3】S. T. S. Holmstrom et al., "MEMS Laser Scanners: A Review," Journal of Microelectromechanical System 23, 259-275 (2014).
【非特許文献4】応用物理学会会誌「光学」 36巻、p.122 (2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、月面ランダから月面探査ローバへのレーザ無線給電を検討している。これは、太陽光発電パネルを搭載する日照域内の月面ランダより、レーザ光(100ワット以上)を使って1km以上離れることもある永久影域内の月面探査ローバに無線給電するシステムである。ここで要求されるレーザ光の伝搬方向制御精度は、数十マイクロラジアン以下となる。また、宇宙機一般の要求として、光伝搬方向制御器は、小型・軽量、耐環境性、耐振動性などが強く望まれる。さらに、1kmを超えるようなレーザ伝送の場合、光の回折効果によりビーム径が広がるため、送光側のビーム径は、十数から数十mm以上に大きくする必要がある。このようなシステムに上記の従来の光伝搬方向制御器を用いようとする場合、以下のような新たな課題が発生する。
【0006】
(1)ジンバルミラーやガルバノミラーシステムの光伝搬方向制御精度は、モーターなどのアクチュエータの性能でほぼ決まるが、軽量かつ大口径で、前述の要求精度を実現することは難しい。また、当アクチュエータで制御するミラーの角度変化の2倍が、そのまま光伝搬方向の変化となるため、ミラーへの振動の影響は大きい。
【0007】
(2)MEMSミラーは、サイズが小さいため、径の大きなビームや高パワー光に対応することが難しい。
【0008】
(3)空間光変調器は、周囲環境変動(温度、等)や高パワーへの耐性が低く、また、その利用には、高度な光位相モニタ/制御の技術が不可欠となる。
【0009】
(4)一般にマイクロラジアン級の高精度な光伝搬方向制御器は高コストとなり易い。
【0010】
本発明は、このような新規課題を解決する構成を提供するものであり、その目的は、小型・軽量な光学系構成で、マイクロラジアン程度以下の光伝搬方向の制御精度を持ち、耐環境性・耐振動性も高く、大口径ビームや高パワー光への対応も可能で、しかも低コストな光学装置及び光伝搬方向制御器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学装置は、焦点を有する集光光学部品と、前記集光光学部品と前記焦点との間に挿入され、前記集光光学部品側から見た際の見かけ上の焦点を、光軸に垂直な方向へシフトすることができる光学素子とを具備し、前記集光光学部品の前記光学素子が無い側の空間における光の伝搬方向角を、前記シフト量に応じて変化させることを特徴とする。
【0012】
(1)前記光学素子として平行平面板を採用した場合、その平行平面板の光学厚(=厚さx屈折率)とレンズ焦点距離の選択だけで、光伝搬方向制御の精度と掃引ピッチを調整可能であり、回転アクチュエータ自体の性能以上の方向制御精度を引き出すことが可能となる。また同時に、従来方法に比べて回転アクチュエータの機械的な動きに対して鈍感となるため、従来方法と同程度の精度で光伝搬方向を制御する場合には、振動耐性が向上する。
【0013】
(2)光の集束点(焦点)近傍に前記平行平面板を配置するため、方向制御精度を大きく低下させることなく、平行平面板等の光学素子の面積もそれほど広げることなく、大口径ビームにも対応可能である。さらに、透過波長に対して吸収の少ない平行平面板材料を採用し、平行平面板両面に反射防止処理を施すことにより、低光損失で、かつ、強パワー光への耐性を確保することも可能となる
【0014】
(3)単純な平行平面板等の光学素子の回動のみで高精度制御が可能であり、一般に温湿度等の周囲環境の影響も受け難い。
【0015】
(4)光学厚の異なる平行平面板等の光学素子を複数枚挿入することで、高精度と広範囲の光伝搬方向制御の両立が可能となる。
【0016】
(5)従来のコリメータやビーム径変換器の中に、平行平面板等の光学素子を追加挿入するだけで、光学系のサイズや重量を大きく増加させることもなく、簡易に高精度な方向制御機能を持たせることが可能となる。
【0017】
(6)安価な平行平面板等の光学素子の追加のみで構成可能である。
【0018】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記光学素子は、光軸に対して垂直な軸で回動が可能、もしくは、一定傾斜角度で固定され電磁気・熱・光などの外部作用により屈折率変化が可能な透過型の平行平面板を有する。
【0019】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記集光光学部品は、1枚以上のレンズ又は1枚以上の反射鏡によって構成されたコリメータである。
【0020】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記反射鏡は、50mm径以上の径を持つ反射型望遠鏡である。
【0021】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記集光光学部品は、1枚以上のレンズ、1枚以上の反射鏡又は1枚以上のレンズと1枚以上の反射鏡の組み合わせによって構成されたリレー光学系又はビーム径変換器である。
【0022】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記反射鏡は、50mm径以上の直径を持つ反射型望遠鏡である。
【0023】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記平行平面板は、互いに直交した2つの軸で回動が可能である。
【0024】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記光学素子は、前記光軸に垂直な第1の軸を回転軸として回動が可能、もしくは、一定傾斜角度で固定され電磁気・熱・光などの外部作用により屈折率変化が可能な透過型の第1の平行平面板と、前記光軸及び第1の軸に垂直な第2の軸を回転軸として回動が可能、もしくは、一定傾斜角度で固定され電磁気・熱・光などの外部作用により屈折率変化が可能な透過型の第2の平行平面板とを有する。
【0025】
本発明の一形態に係る光学装置では、前記光学素子は、それぞれが独立に回動が可能、もしくは、一定傾斜角度で固定され電磁気・熱・光などの外部作用により独立に屈折率変化が可能で、かつ、外部作用無しの時の光学厚(=厚さx屈折率)が異なる2枚以上の透過型の平行平面板を有する。
本発明の一形態に係る光学装置では、前記集光光学部品の前記光学素子が配置された側と反対側に配置されたビームシェイパを更に具備してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、小型・軽量な光学系構成で、マイクロラジアン程度以下の光伝搬方向の制御精度を持ち、耐環境性・耐振動性も高く、大口径ビームや高パワー光への対応も可能であり、しかも低コストな光伝搬方向制御器や選択器等を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図2図1に示した光学装置の原理をより詳細に説明するための図である。
図3図1に示した光学装置における光伝搬方向角の計算結果例を示すグラフである。
図4】本発明の第2の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図7図6に示した光学装置における厚さの異なる各平行平面板を単独で回動した際の光伝搬方向角の計算結果例である。
図8】本発明の第5の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図9】本発明の第6の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図10】本発明の第7の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図11】本発明の第8の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図12】本発明の第9の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図13】本発明の第10の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図14】本発明の第11の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図15】本発明の第12の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図16】本発明の第1の実施形態の変形例に係る光学装置の構成を示す図である。
図17】月面ローバにレーザ無線給電するシステムに本発明に係る光学装置を適用した実施例を示す図である。
図18図17に示したレーザ送光器の内部構成を示す図である。
図19】ライダー/リモートセンシングシステムに本発明に係る光学装置を適用した実施例を示す図である。
図20図19に示した観測器の内部構成を示す図である。
図21】本発明に係るビーム方向制御器の精度を実証するための実験結果であり、平行平面板を保持する2軸ホルダーの調整ツマミを所定回数回転した際の800m伝送先のビーム画像を示す。
図22】本発明に係るビーム方向制御器の精度を実証するための実験結果であり、800m伝送先ビーム画像の重心位置の変化量を示す(mm単位)。
図23】本発明に係るビーム方向制御器の精度を実証するための実験結果であり、800m伝送先ビーム画像の重心位置(レーザ送光器側から見た光伝搬方向角)の変化量を示す(μrad単位)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図1に示すように、光学装置1は、発散ビームを平行光に変換するコリメータであり、凸レンズ10と、レーザ光源30と凸レンズ10との間に挿入された透過型の平行平面板20とを有する。
【0030】
集光光学部品として機能する凸レンズ10は、凸レンズ10の焦点の位置に配置されたレーザ光源30から出力された発散光であるレーザ光を平行光とする。
【0031】
平行平面板20は、回動可能に保持されている。例えば、平行平面板20は、図中符号rの方向に回動され、点線で示す位置に保持される。
【0032】
平行平面板20は、図示を省略した保持機構(光学素子ホルダ)により保持され、例えば手動で回動される。或いは図示を省略した回転駆動機構(光学素子用キネマティックマウントや回転ステージ)により回動可能に保持され、例えば図示を省略した所定の制御システム(ステッピングモータやピエゾ駆動デバイスを有するシステム)による制御のもとで回動駆動されてもよい。
【0033】
このような光学装置1は、光空間分布と光伝搬角度分布の間の変換作用を持つフーリエ変換光学系からなる光伝搬方向制御器や選択器等を構成する。
【0034】
例えば、この光学装置1において、平行平面板20が図中符号rの方向に回動されて点線で示す位置になると、凸レンズ10側から見た際の見かけ上の焦点(レーザ光源30の出射端像)は、光軸に垂直な方向へシフトする。これにより、その凸レンズ10を挟んで焦点(レーザ光源30の出射端像)とは反対側の光の伝搬方向を制御する。すなわち、本発明に係る光学装置1では、光軸に対する平行平面板20の角度を変化させることで、凸レンズ10を挟んで反対側の光の伝搬方向を制御することができる。
【0035】
図2はこのように構成された光学装置1の原理をより詳細に説明するための図である。
図2において、集光光学部品である凸レンズ10の焦点距離をf、平行平面板20の屈折率をnとした場合における、平行平面板20の傾斜角度θ0に対する光伝搬方向角φは、下記の数式1で示される。なお、図2において、dは平行平面板20の厚さ、Δxは光軸に垂直な方向への光線の平行シフト量(=見かけ上の焦点位置のシフト量)を示している。
【数1】
【0036】
この数式1で、fを100mm、nを1.5として計算すると図3のとおりとなる。図3のグラフは、異なる厚さdを持つ4つの平行平面板20に関し、その傾斜角度θに対する光伝搬方向角φを示しており、方向制御性能の厚さdへの依存性を示す計算結果となっている。このグラフからも明らかなように、θ0に対してφの変化量は約3桁小さくなるため、光伝搬方向の制御精度は約3桁向上することになる。例えば、開口300mm径程度の受光パネルを搭載する月面探査ローバへレーザ無線給電を行う場合、少なくとも50μrad(1km先で50mmのずれ)程度以下の方向制御精度が必要となるが、d=1.5mmであれば、θは10mrad程度の回動精度で十分ということになる。
【0037】
本発明に係る光学装置1では、前記の1次元的な方向制御ばかりでなく、2次元的な方向制御を行ってもよい。2次元的な方向制御は、例えば2枚の平行平面板20をレーザ光源30と凸レンズ10との間に挿入し、光軸(z軸)に垂直で、かつ、紙面に垂直な軸(x軸)と、紙面に平行な軸(y軸)でそれぞれを回動させるか、1枚の平行平面板を、x軸とy軸の2軸で回動させることで実現可能となる。また、光軸(z軸)に垂直な任意の軸(r軸)に対する回動と光軸(z軸)自身を中心軸とした回転の組み合わせでも、2次元方向制御が可能となる。
【0038】
また、数式1を見れば分かるとおり、前記光学装置1に代え、図16に示すように、例えば屈折率制御部161による制御のもとで電気、磁気、熱、または、光などの印加の制御によって屈折率nが変化できる平行平面板20'を用いた光学装置1'の場合には、平行平面板20'を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。屈折率変化が可能なものとしては、例えば、LN(ニオブ酸リチウム)結晶、KDP(リン酸二水素カリウム)結晶、BBO(ベータホウ酸バリウム)結晶、KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)結晶などにおける電気光学効果を利用した光学結晶が挙げられるが、これらを平行平面板20'として用いることで、少なくともkHzオーダー以上の高速な方向制御も可能と考えられる。尚、平行平面板20'の材質は、これらに限定されることなく、屈折率が変化できるものであれば何でも良い。さらに、屈折率変化が可能な2枚の平行平面板20'を用い、それぞれお互いに直交した軸(例えば、縦と横)上で光伝搬方向角φを制御することで、2次元的な方向制御も可能となる。
【0039】
尚、図1及び図2におけるレーザ光源30を光センサで置き換え、光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0040】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0041】
図4に示すように、光学装置2は、リレー光学系又はケプラー方式のビーム径変換器であり、第1の凸レンズ11と、透過型の第1の平行平面板21と、透過型の第2の平行平面板22と、第2の凸レンズ12とを有する。
【0042】
第1の凸レンズ11は、平行光であるレーザ光を光学装置2内にて集束する。第2の凸レンズ12は光学装置2内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置2は、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮する。
【0043】
第1の平行平面板21は、第1の凸レンズ11と第1及び第2の凸レンズ11、12の焦点との間に挿入されている。第2の平行平面板22は、第1及び第2の凸レンズ11、12の焦点と第2の凸レンズ12との間に挿入される。第1及び第2の平行平面板21、22は、図中符号r方向に回動可能に保持される。
【0044】
このように構成された光学装置2では、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮しつつ、第1及び第2の平行平面板21、22をr方向に回動制御することで、凸レンズ12通過後のレーザ光の伝搬方向を制御することができる。
【0045】
尚、この光学装置2では、焦点の両側にそれぞれ第1及び第2の平行平面板21、22が挿入されているが、いずれか一方のみに1枚の平行平面板を挿入してもよい。
【0046】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板21、22を用いた場合には、平行平面板21、22を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0047】
尚、図4における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0048】
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0049】
図5に示すように、光学装置3は、ガリレオ式のビーム径変換器であり、1枚の凹レンズ13と、1枚の凸レンズ14と、透過型の平行平面板23とを有する。
【0050】
凹レンズ13は、平行光であるレーザ光を光学装置3内にて発散する。凸レンズ14は、光学装置3内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置3は、ビーム径変換器の機能を発揮する。
【0051】
平行平面板23は、凸レンズ14と凸レンズ14の焦点(光学装置3の外側に存在する。)との間で、かつ、凹レンズ13と凸レンズ14の間に挿入されている。平行平面板23は、図中符号rで示す方向に回動可能に保持されている。
【0052】
このように構成された光学装置3では、ビーム径変換器の機能を発揮しつつ、平行平面板23をr方向に回動制御することで、凸レンズ14通過後のレーザ光の伝搬方向を制御することができる。尚、図4に示した第2の実施形態に比べ、凹レンズ13と凸レンズ14の焦点が光学装置3の外側にあるため、光学装置3のサイズを小さくできる等の特徴を有する。
【0053】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板23を用いた場合には、平行平面板23を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0054】
尚、図5における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0055】
<第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0056】
図6に示すように、光学装置4は、図1に示した光学装置1が1枚の平行平面板20を有していたのに対して、厚さの異なる3枚の透過型の平行平面板24、25、26を有する。
【0057】
平行平面板24、25、26は、凸レンズ10とレーザ光源30との間に挿入されている。平行平面板24、25、26は、それぞれ図中符号rで示す方向に独立して回動可能に保持されている。
【0058】
このように構成された光学装置4では、コリメータの機能を発揮しつつ、平行平面板24、25、26をr方向にそれぞれ独立に回動制御することで、レーザ光の伝搬方向を異なる精度・ピッチで変化させることが可能となる。尚、平行平面板の枚数は、3枚に限らず、何枚であっても良く、その枚数に応じて、精度・ピッチの自由度が増えることになる。
【0059】
図7のグラフは、平行平面板24、25、26の厚さdを大きく離した場合の、それぞれの平行平面板の傾斜角度θに対する凸レンズ10通過後の光伝搬方向角φを示す計算結果例である。ここでは凸レンズ10の焦点距離を100mm、屈折率は全て1.5としている。このグラフから分かるように、厚さの大きく異なる平行平面板を3枚挿入した場合、それぞれの平行平面板による方向制御精度・ピッチは、数倍から10倍程度以上の差を持つ値となり得る。本実施形態におけるトータルの制御角は、それぞれの平行平面板24、25、26の制御角の和となるため、厚さの大きく異なる平行平面板を複数挿入することにより、粗調整と微調整の両方を同時に可能にするなど、既存のデバイスでは困難な機能の一括搭載が可能となる。尚、図7の計算では、3枚とも同じ屈折率に設定したが、それぞれの屈折率の値を変えることでも、同様にそれぞれの平行平面板による制御精度・ピッチを変えることが可能である。
【0060】
本実施形態に係る光学装置4では、上述のようにレーザ光の伝搬方向を異なる精度・ピッチで変化させることが可能となるばかりでなく、平行平面板の数を2枚以上に増やして各々の傾斜角度θの最大値を小さくすることで、角度θの2乗に比例して増加する非点収差を軽減させることも同時に可能となる。
【0061】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板24、25、26を用いた場合には、平行平面板24、25、26を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0062】
尚、図6におけるレーザ光源30を光センサで置き換え、光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0063】
<第5の実施形態>
図8は、本発明の第5の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図8に示すように、光学装置101は、発散ビームを平行光に変換するコリメータであり、凹面鏡110と、レーザ光源130と凹面鏡110との間に挿入された透過型の平行平面板120とを有する。
【0064】
凹面鏡110は、凹面鏡110の焦点の位置に配置されたレーザ光源130から出力された発散光であるレーザ光を平行光とする。
【0065】
平行平面板120は、回動可能に保持されている。例えば、平行平面板120は、図中符号rの方向に回動される。
【0066】
平行平面板120は、図示を省略した保持機構(光学素子ホルダ)により保持され、例えば手動で回動される。或いは図示を省略した回転駆動機構(光学素子用キネマティックマウントや回転ステージ)により回動可能に保持され、例えば図示を省略した所定の制御システム(ステッピングモータやピエゾ駆動デバイスを有するシステム)による制御のもとで回動駆動されてもよい。
【0067】
このような光学装置101は、光空間分布と光伝搬角度分布の間の変換作用を持つフーリエ変換光学系からなる光伝搬方向制御器や選択器等を構成する。
【0068】
例えば、この光学装置101において、平行平面板120が図中符号rの方向に回動されると、凹面鏡110側から見た際の見かけ上の凹面鏡110の焦点(レーザ光源130の出射端像)を、レーザ光源130と凹面鏡110とを結ぶ光軸に垂直な方向へシフトする。これにより、その凹面鏡110を介してレーザ光源130と凹面鏡110とを結ぶ光軸とは交差する方向の光の伝搬方向を制御する。すなわち、本発明に係る光学装置101では、光軸に対する平行平面板120の角度を変化させることで、光学装置101から出力される凹面鏡110通過後のレーザ光の光伝搬方向の制御が可能となる。尚、本実施形態においては、透過屈折型で一般に屈折率分散を持つレンズではなく、反射型の凹面鏡を用いているため、光軸が大きく曲がると同時に光学アライメントの難易度が一般に上昇し易いものの、より広い波長範囲で適用できる可能性がある。また、反射型ゆえに光吸収による発熱が起こり難く、仮に発熱した場合であっても、冷却がしやすいなどの特徴を持つ。
【0069】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板120を用いた場合には、平行平面板120を回動せずに一定角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0070】
尚、図8におけるレーザ光源130を光センサで置き換え、光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0071】
<第6の実施形態>
図9は、本発明の第6の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
図9に示すように、光学装置102は、発散ビームを平行光に変換する大口径のカセグレン式反射望遠鏡を用いたコリメータであり、一対の凹面鏡111及び凸面鏡112と、レーザ光源130と凹面鏡111及び凸面鏡112との間に挿入された透過型の平行平面板121とを有する。
【0072】
一対の凹面鏡111及び凸面鏡112は、一対の凹面鏡111及び凸面鏡112の焦点の位置に配置されたレーザ光源130から出力された発散光であるレーザ光を平行光とする。本実施形態のようにカセグレン式反射望遠鏡を用いることで、一般に透過屈折型のレンズでは対応が難しい50mm径程度以上の大口径ビームに対応が可能となる。
【0073】
平行平面板121は、回動可能に保持されている。例えば、平行平面板121は、図中符号rの方向に回動される。
【0074】
平行平面板121は、図示を省略した保持機構(光学素子ホルダ)により保持され、例えば手動で回動される。或いは図示を省略した回転駆動機構(光学素子用キネマティックマウントや回転ステージ)により回動可能に保持され、例えば図示を省略した所定の制御システム(ステッピングモータやピエゾ駆動デバイスを有するシステム)による制御のもとで回動駆動されてもよい。
【0075】
このような光学装置102は、光空間分布と光伝搬角度分布の間の変換作用を持つフーリエ変換光学系からなる光伝搬方向制御器や選択器等を構成する。
【0076】
例えば、この光学装置102において、平行平面板121が図中符号rの方向に回動されると、一対の凹面鏡111及び凸面鏡112側から見た際の見かけ上の焦点(レーザ光源130の出射端像)を、レーザ光源130と一対の凹面鏡111及び凸面鏡112とを結ぶ光軸に垂直な方向へシフトする。これにより、その一対の凹面鏡111及び凸面鏡112を挟んで焦点(レーザ光源130の出射端)とは反対側の光の伝搬方向を制御する。すなわち、本発明に係る光学装置102では、光軸に対する平行平面板121の角度を変化させることで、その一対の凹面鏡111及び凸面鏡112を挟んで反対側の光の伝搬方向を制御することができる。尚、図9では、一般に透過屈折型のレンズでは対応が難しい50mm径程度以上の大口径ビームに対応し得る光学機構(集光光学部品)として、カセグレン式反射望遠鏡を例として挙げたが、これに限ることなく、その他の方式の反射望遠鏡であっても構わない。
【0077】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板121を用いた場合には、平行平面板121を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0078】
尚、図9におけるレーザ光源130を光センサで置き換え、光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0079】
<第7の実施形態>
図10は、本発明の第7の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0080】
図10に示すように、光学装置103は、ケプラー方式の反射型のリレー光学系又はビーム径変換器であり、第1の凹面鏡113と、透過型の第1の平行平面板122と、透過型の第2の平行平面板123と、第2の凹面鏡114とを有する。
【0081】
第1の凹面鏡113は、平行光であるレーザ光を光学装置103内にて集束する。第2の凹面鏡114は、光学装置103内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置103は、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮する。
【0082】
第1の平行平面板122は、第1の凹面鏡113と第1及び第2の凹面鏡113、114の焦点との間に挿入されている。第2の平行平面板123は、第1及び第2の凹面鏡113、114の焦点と第2の凹面鏡114との間に挿入される。第1及び第2の平行平面板122、123は、図中符号r方向に回動可能に保持される。
【0083】
このように構成された光学装置103では、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮しつつ、第1及び第2の平行平面板122、123をr方向に回動制御することで、凹面鏡114通過後の光の伝搬方向を制御することができる。尚、本実施形態においては、透過屈折型で一般に屈折率分散を持つレンズではなく、反射型の凹面鏡を用いているため、光軸が大きく曲がると同時に光学アライメントの難易度が一般に上昇し易いものの、より広い波長範囲で適用できる可能性がある。また、反射型ゆえに光吸収による発熱が起こり難く、仮に発熱した場合であっても、冷却がしやすいなどの特徴を持つ。
【0084】
尚、この光学装置103では、焦点の両側にそれぞれ第1及び第2の平行平面板122、123が挿入されているが、焦点のいずれか一方のみに1枚の平行平面板を挿入してもよい。
【0085】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板122,123を用いた場合には、平行平面板122,123を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0086】
尚、図10における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0087】
<第8の実施形態>
図11は、本発明の第8の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0088】
図11に示すように、光学装置104は、ガリレオ式の反射型のビーム径変換器であり、1枚の凸面鏡115と、1枚の凹面鏡116と、透過型の平行平面板124とを有する。
【0089】
凸面鏡115は、平行光であるレーザ光を光学装置104内にて発散する。凹面鏡116は、光学装置104内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置104は、ビーム径変換器の機能を発揮する。
【0090】
平行平面板124は、凹面鏡116と凹面鏡116の焦点(光学装置104の外側に存在する。)との間で、かつ、凹面鏡116と凸面鏡115の間に挿入されている。平行平面板124は、図中符号rで示す方向に回動可能に保持されている。
【0091】
このように構成された光学装置104では、ビーム径変換器の機能を発揮しつつ、平行平面板124をr方向に回動制御することで、凹面鏡116通過後の光の伝搬方向を制御することができる。尚、本実施形態においては、透過屈折型で一般に屈折率分散を持つレンズではなく、反射型の凹面鏡を用いているため、光軸が大きく曲がると同時に光学アライメントの難易度が一般に上昇し易いものの、より広い波長範囲で適用できる可能性がある。また、反射型ゆえに光吸収による発熱が起こり難く、仮に発熱した場合であっても、冷却がしやすいなどの特徴を持つ。さらに、第7の実施形態に比べて、凸面鏡115と凹面鏡116の焦点が光学装置104の外側にあるため、一般に光学装置104のサイズを小さくすることが可能である。
【0092】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板124を用いた場合には、平行平面板124を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0093】
尚、図11における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0094】
<第9の実施形態>
図12は、本発明の第9の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0095】
図12に示すように、光学装置105は、ケプラー方式の透過・反射混合型のリレー光学系又はビーム径変換器であり、凸レンズ117と、透過型の第1の平行平面板125と、透過型の第2の平行平面板126と、凹面鏡118とを有する。
【0096】
凸レンズ117は、平行光であるレーザ光を光学装置105内にて集束する。凹面鏡118は、光学装置105内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置105は、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮する。
【0097】
第1の平行平面板125は、凸レンズ117と凸レンズ117及び凹面鏡118の焦点との間に挿入されている。第2の平行平面板126は、凸レンズ117及び凹面鏡118の焦点と凹面鏡118との間に挿入される。第1及び第2の平行平面板125、126は、図中符号r方向に回動可能に保持される。
【0098】
このように構成された光学装置105では、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮しつつ、第1及び第2の平行平面板125、126をr方向に回動制御することで、凹面鏡118通過後の光の伝搬方向を制御することができる。本実施形態のように、本発明を導入するシステムの要求や制限(例えば、レーザ送光器筐体内部のレイアウトや、レーザ波長・帯域、温度制御性能など)に応じて、集光または発散のための素子として一長一短を持つ透過屈折型レンズと反射鏡を使い分け、かつ、組み合わせて使うことが可能である。当然ながら、凸レンズ117を凹面鏡に置換し、凹面鏡118を凸レンズに置換しても良い。
【0099】
尚、この光学装置105では、焦点の両側にそれぞれ第1及び第2の平行平面板125、126が挿入されているが、焦点のいずれか一方のみに1枚の平行平面板を挿入してもよい。
【0100】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板125,126を用いた場合には、平行平面板125、126を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0101】
尚、図12における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0102】
<第10の実施形態>
図13は、本発明の第10の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0103】
図13に示すように、光学装置106は、ガリレオ式の透過・反射混合型のビーム径変換器であり、1枚の凹レンズ119と、1枚の凹面鏡131と、透過型の平行平面板127とを有する。
【0104】
凹レンズ119は、平行光であるレーザ光を光学装置106内にて発散する。凹面鏡131は、光学装置106内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置106は、ビーム径変換器の機能を発揮する。
【0105】
平行平面板127は、凹面鏡131と凹面鏡131の焦点(光学装置106の外側に存在する)との間で、かつ、凹面鏡131と凹レンズ119の間に挿入されている。平行平面板127は、図中符号rで示す方向に回動可能に保持されている。
【0106】
このように構成された光学装置106では、ビーム径変換器の機能を発揮しつつ、平行平面板127をr方向に回動制御することで、凹面鏡131通過後の光の伝搬方向を制御することができる。本実施形態のように、本発明を導入するシステムの要求や制限(例えば、レーザ送光器筐体内部のレイアウトや、レーザ波長・帯域、温度制御性能など)に応じて、集光または発散のための素子として一長一短を持つ透過屈折型レンズと反射鏡を使い分け、かつ、組み合わせて使うことが可能である。当然ながら、凹レンズ119を凸面鏡に置換し、凹面鏡131を凸レンズに置換しても良い。尚、第9の実施形態に比べて、凹レンズ119と凹面鏡131の焦点が光学装置106の外側にあるため、一般に光学装置106のサイズを小さくすることが可能である。
【0107】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板127を用いた場合には、平行平面板127を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0108】
尚、図13における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0109】
<第11の実施形態>
図14は、本発明の第11の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0110】
図14に示すように、光学装置107は、ケプラー方式の透過・反射混合型のリレー光学系又はビーム径変換器であり、凸レンズ132と、カセグレン式反射望遠鏡である一対の凹面鏡133及び凸面鏡134と、透過型の平行平面板128とを有する。
【0111】
凸レンズ132は、平行光であるレーザ光を光学装置107内にて集束する。一対の凹面鏡133及び凸面鏡134は、光学装置107内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置107は、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮する。本実施形態のようにカセグレン式反射望遠鏡を用いることで、一般に透過屈折型のレンズでは対応が難しい50mm径程度以上の大口径ビームにも対応が可能となる。
【0112】
平行平面板128は、凸レンズ132と凸レンズ132の焦点との間に挿入されている。平行平面板128は、図中符号r方向に回動可能に保持される。
【0113】
このように構成された光学装置107では、リレー光学系又はビーム径変換器の機能を発揮しつつ、平行平面板128をr方向に回動制御することで、凹面鏡133通過後の光の伝搬方向を制御することができる。尚、図14では、一般に透過屈折型のレンズでは対応が難しい50mm径程度以上の大口径ビームに対応し得る光学機構(集光光学部品)として、カセグレン式反射望遠鏡を例として挙げたが、これに限ることなく、その他の方式の反射望遠鏡であっても構わない。
【0114】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板128を用いた場合には、平行平面板128を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0115】
尚、図14における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0116】
<第12の実施形態>
図15は、本発明の第12の実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【0117】
図15に示すように、光学装置108は、ガリレオ式の透過・反射混合型のビーム径変換器であり、凹レンズ135と、カセグレン式反射型望遠鏡である一対の凹面鏡136及び凸面鏡137と、透過型の平行平面板129とを有する。
【0118】
凹レンズ135は、平行光であるレーザ光を光学装置108内にて発散する。一対の凹面鏡136及び凸面鏡137は、光学装置108内の発散光であるレーザ光を平行光とする。これにより、光学装置108は、ビーム径変換器の機能を発揮する。本実施形態のようにカセグレン式反射望遠鏡を用いることで、一般に透過屈折型のレンズでは対応が難しい50mm径程度以上の大口径ビームにも対応が可能となる。
【0119】
平行平面板129は、一対の凹面鏡136及び凸面鏡137と一対の凹面鏡136及び凸面鏡137の焦点(光学装置108の外側に存在する。)との間で、かつ、凸面鏡137と凹レンズ135の間に挿入されている。平行平面板129は、図中符号rで示す方向に回動可能に保持されている。
【0120】
このように構成された光学装置108では、ビーム径変換器の機能を発揮しつつ、平行平面板129をr方向に回動制御することで、凹面鏡136通過後の光の伝搬方向を制御することができる。尚、図15では、一般に透過屈折型のレンズでは対応が難しい50mm径程度以上の大口径ビームに対応し得る光学機構(集光光学部品)として、カセグレン式反射望遠鏡を例として挙げたが、これに限ることなく、その他の方式の反射望遠鏡であっても構わない。さらに、第11の実施形態に比べて、凹レンズ135と一対の凹面鏡136及び凸面鏡137の焦点が光学装置108の外側にあるため、一般に光学装置108のサイズを小さくすることが可能である。
【0121】
また、電気、磁気、熱、または、光などの印加によって屈折率が変化できる平行平面板129を用いた場合には、平行平面板129を回動せずに一定の傾斜角度に固定したまま光伝搬方向角φを制御することが可能である。この場合には、機械的駆動部がなく、機械的な振動や摩耗などに対する耐性も向上する。
【0122】
尚、図15における光の進行方向を逆にした光学装置も考えられる。この場合には、光の到来角を高精度に選択できる受光装置となる。
【0123】
<月面ローバにレーザ無線給電するシステムへの適用例>
図17は、月面ローバにレーザ無線給電するシステムに本発明に係る光学装置を適用した実施例を示す図である。
【0124】
図17に示すように、レーザ無線給電システム170は、月面の日照領域171に配置された月面ランダ172と、月面の永久影領域173を走行する月面ローバ174とを有する。
【0125】
月面ランダ172は、太陽光発電パネル175を使った発電システム(図示を省略)と、本発明に係る光学装置を使ったレーザ送光器176とを有する。月面ローバ174は、レーザ送光器176から送られたレーザ光を受けて電気に変換するレーザ受光用光電変換パネル177を有する。レーザ受光用光電変換パネル177の受光面は、重量・サイズの制限を考慮し、例えば直径30cm程度の小さいものを想定する。
【0126】
図18は、レーザ送光器176の内部構成を示す図である。
【0127】
図18に示すように、レーザ送光器176は、レーザ光源178と、例えば図5に示した凹レンズ13、凸レンズ14及び透過型の平行平面板23を有する光学装置33と、可変ビーム径変換器191と、ビームシェイパ192とを有する。平行平面板23は、例えば図示を省略した制御システムによる制御のもとで、2次元的に送光方向を調整可能に構成されている。2次元的な光伝搬方向制御は、例えば1枚の平行平面板23を、x軸とy軸の2軸で回動させることで実現可能となる。ビームシェイパ192は、光学装置33の後段側に配置され、光学装置33より出射されるレーザ光が当該ビームシェイパ192を介して月面ローバ174側に出射される。ビームシェイパのようなレーザ光の波面を精密に制御するデバイスを搭載した光学系においては、従来技術では、その波面制御された光の伝搬方向を高精度に制御することは一般に困難である。つまり、光伝搬方向制御器をそのビームシェイパの前に挿入した場合には、典型的には光入力条件に敏感なビームシェイパを含む後段の光学系全体も、その方向制御に応じて調整せねばならず、一方、後段に挿入する場合には、制御した波面を崩す等のリスクが発生し得る。それに対し、平行平面板の挿入のみで済む本発明に係る構成を用いることで、簡易にそれらを回避することが可能となっている。尚、図1図2に示したとおり、レンズ10の右側の焦点位置においては、光伝搬方向を振ってもビーム重心位置は変化しないが、ここに相当する位置にビームシェイパ192を配置することで、ビームシェイパ192への光入力条件の変化、つまり、波面制御性能の劣化を抑えることが可能となっている。
【0128】
このように構成されたレーザ無線給電システム170では、レーザ到達位置のずれを検知するサブシステム(図示を省略)からの信号に応じて平行平面板23を調整することで、月面ランダ172のレーザ送光器176より出射されるレーザ光を1km程度離れることもある月面ローバ174のレーザ受光用光電変換パネル177に、数cm程度以下の位置ずれで正確に照射することが可能となる。これにより、レーザ無線給電システム170では、月面ランダ172より月面ローバ174に、ほぼ光学損失無しで確実に無線給電することができるようになる。また、特に、このレーザ無線給電システム170は、ビームシェイパ192を光学装置33の後段側に配置したことで、伝送後ビームの強度分布を均一化することができる。また、月面ローバ174側にビームの強度分布を均一化する構成を設ける必要がなくなるので、給電される側である月面ローバ174の軽量化が可能であり、月面ローバ174の消費電力を低減することができる。
【0129】
<ライダー/リモートセンシングシステムへの適用例>
図19は、ライダー/リモートセンシングシステムに本発明に係る光学装置を適用した実施例を示す図である。
【0130】
図19に示すように、ライダー/リモートセンシングシステム180は、例えば移動可能な観測車両181と、この観測車両181に搭載された観測器182とを有する。
【0131】
図20は、本発明に係る光学装置が実装された観測器182の構成を示す図である。
【0132】
図20に示すように、観測器182は、例えば図19に示す数100mから数km程度離れたところにある被観測物186に向けて単色、複数色又は白色のレーザ光を照射するレーザ光源183と、被観測物186からの反射・散乱光を測定する光検出器又は分光器184と、光検出器又は分光器184の入射部に配置された、例えば図9に示したカセグレン式反射望遠鏡である一対の凹面鏡111及び凸面鏡112と平行平面板121を有する光学装置102と、光検出器又は分光器184と光学装置102との間に介挿されたアパーチャ185とを有する。平行平面板121は、例えば図示を省略した制御システムによる制御のもとで、2次元的に受光方向を精密に選択できるよう構成されている。2次元的な方向制御は、例えば光軸(z軸)に垂直な任意の軸(r軸)に対する回動と光軸(z軸)自身を中心軸とした回転の組み合わせなどで実現できる。被観測物186のある程度広範囲の表面上に前記レーザ光を照射し、そこからの反射・散乱光を光学装置102により2次元的に選択かつ掃引しながら、光検出器又は分光器184で受光及び測定分析することにより、被観測物186の表面や表層内部の状態の2次元マップを得ることが可能と考えられる。ここで、アパーチャ185は、受光方向をより正確に選択・限定するために使用する。
【0133】
尚、図20におけるレーザ光源183からのレーザ光も図18に示したような形態で、2次元的にレーザ光伝搬方向を制御しても良い。つまり、非観測物186上の特定位置を選択的に照射したり、その選択領域を高速に掃引しても良い。その場合には、光学装置102は、その掃引に同期させて選択照射領域からの反射散乱光を受光するか、または、広い受光方向範囲を一括して受光する形となる。
【0134】
<実験結果>
図5に示した光学装置3において、凹レンズ13の焦点距離を-75mm、凸レンズ14の焦点距離を100mmとした構成のレーザ送光系を設計・構築し、平行平面板23(厚さ:1mm、屈折率:約1.5)を角度調整器である商品名「KC2-T-M」(Thorlabs社製)に取り付け、レーザ光伝搬方向制御器の精度を実証するための実験を行った。「KC2-T-M」のツマミは100TPI(Threads per inch)でネジが切られており、ツマミ1回転当たり3.36mradの角度調整が可能となっている。ツマミ5回転で16.8mradの角度変化となる。
【0135】
この実験系で、レーザ光源の出力パワーを250mW程度とし、800m伝送後のビーム画像を観測した。「KC2-T-M」の手動操作(ツマミ±5,10回転)でレーザ光伝搬方向を中心位置から上下/左右に掃引したときの800m伝送先におけるビーム画像を図21に示す。さらに、800m伝送先におけるビーム重心位置の変化量を図22に示し、それに対応する、光学装置3を搭載した送光側から見た光伝搬方向角の変化量を図23に示す。尚、図22図23は、複数回分の測定データ点を重ねて表示してある。
【0136】
これらの実験結果から、再現性も含め、少なくとも±10μrad以下の精度でビーム重心の方向を制御できることが実証できた。これは、1km先におけるビーム重心位置ずれが±10mm以下であることに相当する。
【0137】
尚、今回の測定におけるビーム重心位置の時間的揺らぎは、方向制御器固定のまま複数回測定した結果より、数μrad以下であることも確認できている。この値は、伝送路大気の僅かな揺らぎや測定系の雑音が支配要因であり、本発明の特徴である高耐震性により、送光器の振動の寄与はほぼ皆無と考えられる。
【0138】
<その他>
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で様々な変形や応用が可能であり、その変形や応用をした実施の範囲も本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0139】
1、1'、2、3、4、101、102、103、104、105、106、107、108 :光学装置
10 :凸レンズ
11 :第1の凸レンズ
12 :第2の凸レンズ
13 :凹レンズ
14 :凸レンズ
20 :平行平面板
20' :平行平面板
21 :第1の平行平面板
22 :第2の平行平面板
23 :平行平面板
24 :平行平面板
25 :平行平面板
26 :平行平面板
33 :光学装置
110 :凹面鏡
111 :凹面鏡
112 :凸面鏡
113 :第1の凹面鏡
114 :第2の凹面鏡
115 :凸面鏡
116 :凹面鏡
117 :凸レンズ
118 :凹面鏡
119 :凹レンズ
120 :平行平面板
121 :平行平面板
122 :第1の平行平面板
123 :第2の平行平面板
124 :平行平面板
125 :第1の平行平面板
126 :第2の平行平面板
127 :平行平面板
128 :平行平面板
129 :平行平面板
131 :凹面鏡
132 :凸レンズ
133 :凹面鏡
134 :凸面鏡
135 :凹レンズ
136 :凹面鏡
137 :凸面鏡
161 :屈折率制御部
170 :レーザ無線給電システム
171 :月面の日照領域
172 :月面ランダ
173 :月面の永久影領域
174 :月面ローバ
175 :太陽光発電パネル
176 :レーザ送光器
177 :レーザ受光用光電変換パネル
178 :レーザ光源
180 :ライダー/リモートセンシングシステム
181 :観測車両
182 :観測器
183 :レーザ光源
184 :光検出器又は分光器
185 :アパーチャ
186 :被観測物
191 :可変ビーム径変換器
192 :ビームシェイパ
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