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特開2024-100866発泡性ポリウレタン組成物及びポリウレタン発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100866
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】発泡性ポリウレタン組成物及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240719BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/00 H
C08G18/40 018
C08G18/42 008
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081264
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2020038202の分割
【原出願日】2020-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
(57)【要約】
【課題】難燃性に優れる発泡体を形成することができ、かつ保管時に沈殿物が生じ難いことにより取り扱い性に優れ、かつ使用時に用いる吹き付け装置などの摩耗を抑制することができる発泡性ポリウレタン組成物を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物であって、前記発泡性ポリウレタン組成物は無機フィラーを実質的に含有せず、前記発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体を、下記条件でTG-DTAにより測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、発泡性ポリウレタン組成物である。TG-DTA測定は、ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物であって、
前記発泡性ポリウレタン組成物は無機フィラーを実質的に含有せず、
前記発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体を、TG-DTAにより、下記条件で測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、発泡性ポリウレタン組成物。
(TG-DTA測定条件)
ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG-DTA測定を行う。
【請求項2】
ポリオール化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含むポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート化合物との混合物である、請求項1に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1又は2に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物がポリエステルポリオールを含有する、請求項1~3のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記ポリオール化合物がポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含有する、請求項1~4のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルポリオールの含有量が、ポリオール化合物全量基準で50質量%超である、請求項4又は5に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオールである、請求項4~6のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記触媒が三量化触媒を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項9】
イソシアネートインデックスが150~700である、請求項1~8のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項10】
吹き付け用途に用いられる、請求項1~9のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項11】
ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体であって、
前記発泡性ポリウレタン組成物は無機フィラーを実質的に含有せず、
前記ポリウレタン発泡体を、下記条件にてTG-DTA測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、ポリウレタン発泡体。
(TG-DTA測定条件)
ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG-DTA測定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ポリウレタン組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性を利用して、マンション等の集合住宅、戸建住宅、商業ビル等の建築物の天井、屋根、壁面などの断熱や結露防止に実用されている。 ポリウレタン発泡体は、軽量であるものの、有機物であるため燃えやすい。これを改善するため、難燃剤などをポリウレタン発泡体に含有させ、難燃性を高めたポリウレタン発泡体が用いられている。
例えば、特許文献1では、ポリリン酸アンモニウム、ウレア誘導体、ポリオール、イソシアネートを用いて得られる難燃性ポリウレタンフォームであって、該難燃性ポリウレタンフォームが、ポリオール100重量部に対して5~150重量部の範囲のポリリン酸アンモニウム及び0.001~15重量部の範囲のウレア誘導体が用いられることで得られることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム(発泡体)が記載されている。
また、特許文献2では、ポリオールをイソシアネートと反応させて得られる発泡性ポリウレタン組成物であって、前記発泡性ポリウレタン組成物は整泡剤、触媒、発泡剤、および難燃剤を含み、硬化された発泡性ポリウレタン組成物の330℃における重量減少率が30%以下であることを特徴とする発泡性ポリウレタン組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-151524号公報
【特許文献2】特開2017-43779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載のポリウレタン組成物や発泡体は、一定の難燃性を有する。しかしながら、特許文献1では、固体状の難燃剤を用いており、また特許文献2でも、開示されているすべての実施例において、赤燐などの一般に用いられる固体状の難燃剤や充填剤などの粉物(後述する無機フィラーに相当)を用いている。このように、ポリウレタン発泡体を形成するための組成物に、粉物である無機フィラーが含まれると、保管時に沈殿物が生じて取り扱い性が悪くなったり、使用時に用いる機具に摩耗が生じるなどの問題があった。また、上記特許文献1及び2には、無機フィラーを用いずに、難燃性を高める方法について、何ら記載も示唆もされていない。
そこで、粉物である無機フィラーを実質的に含有しない発泡性ポリウレタン組成物であって、難燃性に優れる発泡体を形成可能な発泡性ポリウレタン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討した。その結果、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含み、かつ無機フィラーを含有しない発泡性ポリウレタン組成物であって、一定条件下でTG-DTA測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である発泡性ポリウレタン組成物により上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物であって、前記発泡性ポリウレタン組成物は無機フィラーを実質的に含有せず、前記発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体を、TG-DTAにより、下記条件で測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、発泡性ポリウレタン組成物。
(TG-DTA測定条件)
ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG-DTA測定を行う。
[2]ポリオール化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含むポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート化合物との混合物である、上記[1]に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[3]前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、上記[1]又は[2]に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[4]前記ポリオール化合物がポリエステルポリオールを含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[5]前記ポリオール化合物がポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[6]ポリエステルポリオールの含有量が、ポリオール化合物全量基準で50質量%超である、上記[4]又は[5]に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[7]前記ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオールである、上記[4]~[6]のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[8]前記触媒が三量化触媒を含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[9]イソシアネートインデックスが150~700である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[10]吹き付け用途に用いられる、上記[1]~[9]のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[11]ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体であって、
前記発泡性ポリウレタン組成物は無機フィラーを実質的に含有せず、
前記ポリウレタン発泡体を、下記条件にてTG-DTA測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、ポリウレタン発泡体。
(TG-DTA測定条件)
ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG-DTA測定を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、難燃性に優れる発泡体を形成することができ、かつ保管時に沈殿物が生じ難いことにより取り扱い性に優れ、かつ使用時に用いる吹き付け装置などの摩耗を抑制することができる発泡性ポリウレタン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[発泡性ポリウレタン組成物]
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物であって、該発泡性ポリウレタン組成物は無機フィラーを実質的に含有せず、該発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体を、下記条件にてTG-DTA測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、発泡性ポリウレタン組成物である。
(TG-DTA測定条件)
ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG-DTA測定を行う。
【0008】
<重量減少率>
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、該組成物から形成されるポリウレタン発泡体を、後述する条件でTG-DTA(熱重量示差熱分析装置)により測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、発泡性ポリウレタン組成物である。
重量減少率が40%を超えると、発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体が火災時に酸化分解しやすくなり、難燃性が低下する。難燃性を向上させる観点から、上記重量減少率は、好ましくは39%以下であり、より好ましくは38%以下である。重量減少率は、低ければ低いほど酸化分解が抑制されて難燃性は高まるため、0%が好ましい。
300℃における重量減少率は、測定前の試料(ポリウレタン発泡体)の重量と、TG-DTA測定の300℃における試料の重量から、以下の式(1)で求められる。
300℃における重量減少率(%)=100×(試験前の試料の重量-300℃における試料の重量)/測定前の試料の重量・・・式(1)
式(1)の300℃における試料の重量とは、TG-DTA測定において、40℃から1000℃まで昇温速度10℃/分で昇温させて測定する際の、300℃に到達したときの試料の重量である。
【0009】
TG-DTA測定は、次のように行う。ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG-DTA測定を行う。なお、TG-DTA測定は、空気下にて行う。なお、ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を測定試料としているのは、最表層を測定対象から除くことを意図しており、表層から5mm~10mmの位置であれば、任意の位置をサンプリングして測定試料としてよい。
このようにTG-DTA測定を行い、上記式に基づき300℃における重量減少率を求めることができる。なお、TG-DTA測定で用いるポリウレタン発泡体は、実施例にて記載する条件で作製したものを使用する。
【0010】
重量減少率は、発泡性ポリウレタン組成物における組成を調整することで、所望の値に調節でき、例えば、使用するポリオール化合物の種類及び量、液状の難燃剤及び発泡剤の量、イソシアネートインデックスなどにより調節することができる。
【0011】
<無機フィラー>
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、無機フィラーを実質的に含有しない。無機フィラーを実質的に含有しないことにより、保管時に沈殿物が生じ難く、取り扱い性に優れ、かつ使用時に用いる機具などの摩耗を抑制することができる発泡性ポリウレタン組成物を提供することができる。
ここで、無機フィラーを実質的に含有しないとは、発泡性ポリウレタン組成物全量基準において、無機フィラーの含有量が、例えば5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であることを意味する。
【0012】
なお、無機フィラーとは、粒子状又は繊維状などの無機系の化合物であり、例えば、金属、金属酸化物、金属水酸化物、セラミックなどが挙げられ、固体難燃剤、固体難燃剤以外の無機充填剤などが例示される。
上記固体難燃剤は、23℃において固体状の難燃剤であり、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等のアンチモン含有難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ素含有難燃剤、ホスフィン酸系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、赤燐などが挙げられる。
また、固体難燃剤以外の無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカパルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素パルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムポレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0013】
<ポリオール化合物>
本発明の発泡性ポリウレタン組成物に含まれるポリオール化合物は、特に限定されないが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどを含有することが好ましい。得られるポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、ポリオール化合物は、後述するように、芳香族ポリエステルポリオールを含有することが好ましく、該芳香族ポリエステルポリオールとしては、フタル酸系ポリエステルポリオールが好ましい。
【0014】
(ポリエステルポリオール)
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、ポリエステルポリオールを含有することが好ましい。ポリエステルポリオールを含有することにより、難燃性が向上しやすくなる。
ポリエステルポリオールとしては、芳香族ポリエステルポリオールおよび脂肪族ポリエステルポリオールなどが挙げられる。中でも、得られるポリウレタン発泡体のTG-DTA測定における重量減少率を低下させ、難燃性を向上させる観点から、ポリエステルポリオールは、芳香族ポリエステルポリオールであることが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、芳香族ポリエステルポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールであることが好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオールであることがさらに好ましい。
グリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。
【0015】
ポリエステルポリオールは、臭素系ポリエステルポリオールであってもよい。臭素系ポリエステルポリオールは、芳香族環を有するものであって、少なくとも1つ以上の臭素が芳香族環と結合した骨格を有するポリエステルポリオールである。
【0016】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、100~400mgKOH/gであることが好ましく、150~350mgKOH/gであることがより好ましい。なお、本明細書において、水酸基価は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される値である。
【0017】
得られるポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、ポリオール化合物全量基準における、ポリエステルポリオールの含有量は、好ましくは50質量%超であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、そして好ましくは95質量%以下である。
【0018】
(ポリエーテルポリオール)
本発明のポリオール化合物は、ポリエーテルポリオールを含有することが好ましい。ポリエーテルポリオールを含有することにより、発泡性ポリウレタン組成物の取り扱い性が良好になる。また、本発明のポリオール化合物は、上記したポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールの両方を含むことが好ましい。これにより、発泡性ポリウレタン組成物の取り扱い性が良好になり、かつ得られるポリウレタン発泡体の難燃性が高まる。
【0019】
ポリエーテルポリオールは、2個以上の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールである。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、シュクロース類、ソルビトール類などの糖類)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物など)などが挙げられ、これらはそれぞれ1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0020】
ポリエーテルポリオールとしては、発泡性ポリウレタン組成物を発泡させる際の注入時の成型性や、吹付けする際の施工性を高める観点から、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、シュクロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオールなどが好ましく、中でもマンニッヒ系ポリエーテルポリオールがより好ましい。これらポリオール化合物は、成型性及び施工性並びに難燃性を優れたものとする観点から、上記した芳香族ポリエステルポリオールと併用することが好ましい。
【0021】
上記トリレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、開始剤としてトリレンジアミンを用いて得られたポリエーテルポリオールのことである。シュクロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオールも同様である。
上記マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子内に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、又はそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールである。より具体的には、フェノール及びそのアルキル置換誘導体の少なくともいずれか、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られたマンニッヒ縮合物、又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールである。
【0022】
ポリエーテルポリオールは、臭素系ポリエーテルポリオールであってもよい。臭素系ポリエーテルポリオールは、芳香族環を有するものであって、少なくとも1つ以上の臭素が芳香族環と結合した骨格を有するポリエーテルポリオールである。
【0023】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、200~1000mgKOH/gであることが好ましく、300~600mgKOH/gであることがより好ましい。
【0024】
ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール化合物全量基準において、好ましくは5質量上以上であり、そして好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0025】
(ポリイソシアネート化合物)
発泡性ポリウレタン組成物に含有されるポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネート化合物を用いることができる。好ましくは、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタン発泡体の物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(ポリメリックMDIともいう)が挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業)などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」:日本ポリウレタン工業製)などでもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよく、併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0026】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物のイソシアネートインデックスの範囲は、好ましくは150~700であり、より好ましくは200~500であり、さらに好ましくは250~450である。イソシアネートインデックスをこのような範囲とすることにより、上記したTG-DTAにおける300℃における重量減少率を低くしやすくなる。
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0027】
INDEX=イソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、
イソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0028】
(液状の難燃剤)
本発明の発泡性ポリウレタン組成物には、室温で液状の難燃剤を含有する。ここで室温とは23℃を意味することとする。液体の難燃剤を含有することにより、上記したTG-DTAにおける重量減少率に調整しやすくなり、かつ液体であることにより、発泡性ポリウレタン組成物の使用時に用いる機具などの摩耗を抑制することができる。
液体の難燃剤として、例えば、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等のリン酸エステル系難燃剤が挙げられる。
モノリン酸エステルとしては、特に限定されないが、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどが挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名CR747)などが挙げられる。
液状の難燃剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは35質量部以上、より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、そして好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
液状の難燃剤の含有量をこれら上限値以下とすることにより、使用するポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物の量を相対的に増加させることができ、ポリウレタン発泡体を形成させやすくなる。液状の難燃剤の含有量がこれら下限値以上であると、発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体のTG-DTA測定における重量減少率を低下させやすくなる。また、液状の難燃剤の含有量をこれら下限値以上としつつ、イソシアネートインデックスを上記した範囲に調整することにより、より効果的にポリウレタン発泡体のTG-DTA測定における重量減少率を低下させやすくなり、難燃性が向上しやすくなる。
【0029】
(発泡剤)
発泡剤の具体例としては、例えば、水、低沸点の炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素化合物、フッ素化合物、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ハイドロフルオロカーボン、エーテル化合物、ハイドロフルオロオレフィンなどが挙げられる。さらに、発泡剤としては、これらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
上記低沸点の炭化水素としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
上記塩素化脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
上記フッ素化合物としては、例えば、CHF3、CH22、CH3F等が挙げられる。
上記ハイドロクロロフルオロカーボン化合物としては、例えば、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22 (クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等が挙げられる。
上記エーテル化合物としては、例えば、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、HFO-1233zd(E)(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)、HFO-1224yd(Z)(トランス-1-クロロ-2,3,3,3,‐テトラフルオロプロペン)等が挙げられる。
【0030】
上記発泡剤の中でも、地球温暖化などの環境問題を考慮すると、本発明における発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンなどのGWP(地球温暖化係数)が低いものを含むことが好ましい。発泡剤のGWPは、具体的には10以下であることが好ましい。
GWPが10以下の発泡剤を具体的に挙げると、例えば、HFO-1233zd(E)(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)、HFO-1224yd(Z)(トランス-1-クロロ-2,3,3,3,‐テトラフルオロプロペン)、HFO-1336mzz(Z)(シス―1,1,1,4,4,4、-ヘキサフルオロブタ-2-エン)、などのハイドロフルオロオレフィンが挙げられる。これら、ハイドロフルオロオレフィン以外にも、GWPが10以下の発泡剤として、水、ギ酸メチルなどが挙げられる。
【0031】
本発明においては、発泡剤は水を含むことが好ましく、より詳細には、上記した低沸点の炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素化合物、フッ素化合物、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ハイドロフルオロカーボン、エーテル化合物、及びハイドロフルオロオレフィンから選択される少なくともいずれかの化合物と水を併用した発泡剤が好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水などを適宜用いることができる。ポリオール化合物100質量部に対する水の量は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、そして好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは0.7質量部以下である。水の含有量がこれら下限値以上であると、発泡性ポリウレタン組成物を発泡させやすくなり、密度を所望の範囲に調整しやすくなる。また、水の含有量がこれら上限値以下であると、ポリウレタン発泡体のTG-DTAにおける重量減少率を上記した所望の範囲に調整しやすくなる。
【0032】
本発明においては、発泡剤はハイドロフルオロオレフィンを含有することが好ましく、ハイドロフルオロオレフィンと上記した水とを共に含有することがより好ましい。ポリオール化合物100質量部に対するハイドロフルオロオレフィンの量は、10~60質量部が好ましく、25~50質量部がより好ましく、35~45質量部がさらに好ましい。
【0033】
(触媒)
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、触媒を含有する。触媒は、例えばウレタン化触媒及び三量化触媒の一方又は両方を含有してもよく、両方を含有することが好ましい。なお、発泡性ポリウレタン組成物に含まれる触媒は、本発明における無機フィラーに該当しないものとする。
【0034】
ウレタン化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進させる触媒である。具体的には、アミノ化合物、錫化合物、ビスマス化合物、アセチルアセトン金属塩が挙げられる。
前記アミノ化合物としては、例えば、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチル-N’,N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1-メチルイミダゾール、トリメチルアミノエチルピペラジン、トリプロピルアミン等が挙げられる。
また、錫化合物としては、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。ビスマス化合物としては、ネオデカン酸ビスマス、オクチル酸ビスマスなどが挙げられる。
アセチルアセトン金属塩としては、例えば、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンベリリウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトンマンガン、アセチルアセトンモリブデン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトンバナジウム、アセチルアセトンジルコニウム等が挙げられる。
ウレタン化触媒は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0035】
発泡性ポリウレタン組成物におけるウレタン化触媒の配合量に特に限定はないが、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との合計100質量部に対して、0.3~10質量部の範囲であることが好ましく、0.5~8質量部の範囲であることがより好ましく、1~5質量部の範囲であることが更に好ましい。上記範囲内とすることで、適度な反応速度で、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進できる。
【0036】
三量化触媒は、イソシアヌレート結合を形成する三量化を促進する触媒である。ポリウレタン樹脂は、三量化が促進されることで、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。
三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム、ギ酸カリウム、オクチル酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、2-エチルアジリジン等のアジリジン類、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ナトリウムメトキシド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができる。
三量化触媒は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0037】
三量化触媒の配合量は特に限定されないが,ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との合計100質量部に対して、0.3~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましく、0.8~5質量部であることが更に好ましい。三量化触媒の量を上記範囲内とすることで、イソシアヌレート結合が適度に形成され、難燃性が向上する。
また、触媒の合計量は、ウレタンの硬化速度や難燃性を向上させる観点から、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との合計100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、1~16質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
【0038】
(整泡剤)
発泡性ポリウレタン組成物は、必要に応じて整泡剤を含有しても良い。整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。また、シリコーン系整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンとポリエチレングリコールのグラフト共重合体を含むものでもよい。
整泡剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましい。整泡剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0039】
発泡性ポリウレタン組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、添加剤として、例えば、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱・光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等を含むことができる。
【0040】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応して硬化するため、その粘度は時間と共に変化する。そこで発泡性ポリウレタン組成物を使用する前は、発泡性ポリウレタン組成物を二以上に分割して、発泡性ポリウレタン組成物が反応して硬化することを防止しておく。そして発泡性ポリウレタン組成物を使用する際に、二以上に分割しておいた発泡性ポリウレタン組成物を一つにまとめることが好ましい。
【0041】
なお発泡性ポリウレタン組成物を二以上に分割するときは、二以上に分割された発泡性ポリウレタン組成物のそれぞれの成分単独では硬化が始まらず、発泡性ポリウレタン組成物のそれぞれの成分を混合した後に硬化反応が始まるようにそれぞれの成分を分割すればよい。通常、発泡性ポリウレタン組成物を、ポリオール化合物を含有するポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を含有するポリイソシアネート組成物とに分割する。
【0042】
上記した室温で液状の難燃剤、発泡剤、触媒、及び必要に応じて配合される整泡剤は、ポリオール組成物に含有されていてもよいし、ポリイソシアネート組成物に含有されていてもよいし、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物とは別に提供されてもよいが、ポリオール組成物に含有されることが好ましい。
すなわち、ポリオール組成物は、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含むポリオールプレミックスであることが好ましく、本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、該ポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート化合物との混合物であることが好ましい。
【0043】
本発明のポリウレタン発泡体は、特に限定されないが、例えば2液型の発泡性ポリウレタン組成物などのように2以上に分割される場合には、例えば、予め各成分を混合して調製されたポリオール組成物、及びポリイソシアネート組成物などの2以上に分割されたものを作製しておき、それらを混合して、発泡させることで得ることができる。各成分の混合及び発泡は、公知の方法により行うことができる。例えば高圧発泡機、低圧発泡機、吹き付け発泡機、ハンドミキサーなど公知の装置を用いて得ることができる。また、1液型の場合には、発泡性ポリウレタン組成物を構成する各成分を混合して得た発泡性ポリウレタン組成物を公知の方法で発泡させる方法が挙げられる。
【0044】
(用途)
本発明の発泡性ポリウレタン組成物の用途は特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物などの空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、構造物に対して吹き付ける用途、すなわち、吹き付け用の発泡性ポリウレタン組成物として用いることが好ましい。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネート組成物を吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。
【0045】
[ポリウレタン発泡体]
本発明のポリウレタン発泡体は、上記した発泡性ポリウレタン組成物から形成されてなるものであり、具体的には、発泡性ポリウレタン組成物を発泡及び硬化させて得られるものである。
ポリウレタン発泡体は、TG-DTA測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である。重量減少率が40%を超えると、ポリウレタン発泡体が火災時に酸化分解しやすくなり、難燃性が低下する。難燃性を向上させる観点から、上記重量減少率は、好ましくは39%以下であり、より好ましくは38%以下である。重量減少率は、低ければ低いほど酸化分解が抑制されて難燃性は高まるため、0%が好ましい。
【0046】
ポリウレタン発泡体の密度は、特に限定されないが、20~200kg/mの範囲であることが好ましい。密度を200kg/m以下とすることで、ポリウレタン発泡体が軽量となり、構造物への施工性が高まる。また、20kg/m以上とすることで、所望の難燃性を発現しやすくなる。これら観点から、ポリウレタン発泡体の密度は、25~100kg/mの範囲であることがより好ましく、25~80kg/mの範囲であることがさらに好ましい。ポリウレタン発泡体の密度は、JIS K7222に準拠して測定できる。
【実施例0047】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0048】
各実施例及び比較例において使用した各成分の詳細は次の通りである。
(1)ポリオール化合物
・p-フタル酸系ポリエステルポリオール(日立化成社製、製品名:SV-208、水酸基価=235mgKOH/g)
・マンニッヒ系ポリエーテルポリオール(第一工業製薬社製、製品名:DK3776、水酸基価=350mgKOH/g)
・シュクロース系ポリエーテルポリオール(AGC社製、製品名:EL-100S、水酸基価=450mgKOH/g)
・エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール(AGC社製、製品名:エクセノール750ED、水酸基価=760mgKOH/g)
・トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール(三井化学社製、製品名:GR-40A、水酸基価=400mgKOH/g)
(2)液状の難燃剤
・リン酸エステル系難燃剤<トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート>、(大八化学社製、製品名:TMCPP)
(3)整泡剤
・シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193)
(4)触媒
(i)三量化触媒
・4級アンモニウム塩(エボニックジャパン社製、製品名:TMR-7)
(ii)ウレタン化触媒
・イミダゾール化合物、(花王社製、製品名:KL No.390)
・非イミダゾール化合物(エボニックジャパン社製、製品名:PC-201)
・ビスマス化合物、(日東化成社製、製品名:ネオスタンU-600)
(5)発泡剤
・水
・HFO-1233zd<ハイドロフルオロオレフィン>(ハネウェル製、製品名:ソルスティスLBA) GWP=1
(6)ポリイソシアネート化合物
・MDI(住化コベストロウレタン(株)製、製品名:44V-20)
【0049】
各物性及び性状の測定方法は、以下のとおりである。
【0050】
[重量減少率]
各実施例及び比較例で作製したポリウレタン発泡体について、次のようにしてTD-DTA測定を行った。TD-DTA測定に用いた装置は、セイコー電子工業社製のTG/DTA-6200である。
ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料(1.5mg)について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG/DTA測定を空気下で行った。測定前の試料(ポリウレタン発泡体)の重量と、TG-DTA測定の300℃における試料の重量から、以下の式(1)で重量減少率を求めた。
300℃における重量減少率(%)=100×(試験前の試料の重量-300℃における試料の重量)/測定前の試料の重量・・・式(1)
【0051】
[UL94による難燃性試験]
ポリウレタン発泡体を切り出して、125mm×13mm×13mmのサイズの測定試料とした。該測定試料について、UL規格のUL94に準拠して燃焼試験を行った。各測定試料を5本ずつ燃焼させ、その平均燃焼時間から燃焼性能を以下の基準で評価した。
〇・・V-0に相当
×・・V-0よりも性能が劣る
【0052】
[発熱性試験(CCM:コーンカロリーメーター)]
各実施例及び比較例で作製した石膏ボードに吹き付けて作製したポリウレタン発泡体を、縦100mm、横100mm、厚さ32.5mm(内石膏ボード12.5mm、ポリウレタン発泡体20mm)に切断して、コーンカロリーメーター試験用サンプルを準備した。該試験用サンプルを、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて5分間加熱したときの最高発熱速度を測定し、以下の基準で評価した。
〇・・最高発熱速度が150kw/m以下
×・・最高発熱速度が150kw/m
【0053】
[実施例1]
表1の配合に従い、ポリオール化合物、液状の難燃剤、整泡剤、触媒、発泡剤を混合しポリオールプレミックスを調製した。該ポリオールプレミックスとポリイソシアネート化合物(MDI)とを吹き付け装置(GRACO社製:A-25)に導入し、装置内で温度調整し、スプレーガン(ガスマー社製:Dガン)を利用して、厚さ12.5mmの石膏ボード上に吹き付けることで、表1に記載の発泡性ポリウレタン組成物からなるポリウレタン発泡体を作製した。該ポリウレタン発泡体を用いて、各評価を行った。結果を表1に示した。
【0054】
[実施例2~3、比較例1~2]
配合を表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン発泡体を得た。該ポリウレタン発泡体を用いて、各評価を行った。結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
各実施例で示されているように、本発明の発泡性ポリウレタン組成物により形成されたポリウレタン発泡体は、300℃における重量減少率が低く、難燃性試験(UL94)の評価も良好であった。さらに、各実施例の発泡性ポリウレタン組成物は、実質的に無機フィラーを含有しておらず、保管時に沈殿物が生じ難いため取り扱い性に優れ、かつ使用時に用いる吹き付け装置などの摩耗を抑制することができる。
これに対して、比較例の発泡性ポリウレタン組成物により形成されたポリウレタン発泡体は、300℃における重量減少率が高く、難燃性試験(UL94)の評価結果が悪かった。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物であって、
前記発泡性ポリウレタン組成物全量基準において、無機フィラーの含有量が5質量%以下であり
前記ポリオール化合物がフタル酸系ポリエステルポリオールを含有し、前記フタル酸系ポリエステルポリオールの含有量が、ポリオール化合物全量基準で50質量%超であり、
前記発泡剤が水を含み、前記水の含有量が前記ポリオール化合物100質量部に対して、1.5質量部以下である、発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項2】
ポリオール化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含むポリオールプレミックスと、ポリイソシアネート化合物との混合物である、請求項1に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1又は2に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物がポリエーテルポリオールを含有する、請求項1~のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記触媒が三量化触媒を含有する、請求項1~のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
イソシアネートインデックスが150~700である、請求項1~のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
吹き付け用途に用いられる、請求項1~のいずれかに記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項8】
ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、及び液状の難燃剤を含む発泡性ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体であって、
前記発泡性ポリウレタン組成物全量基準において、無機フィラーの含有量が5質量%以下であり
前記ポリオール化合物がフタル酸系ポリエステルポリオールを含有し、前記フタル酸系ポリエステルポリオールの含有量が、ポリオール化合物全量基準で50質量%超であり、
前記発泡剤が水を含み、前記水の含有量が前記ポリオール化合物100質量部に対して、1.5質量部以下であり、
前記ポリウレタン発泡体を、下記条件にてTG-DTA測定した場合の300℃における重量減少率が40%以下である、ポリウレタン発泡体。
(TG-DTA測定条件)
ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの位置を切り出して測定試料とし、該測定試料について、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40~1000℃にて、TG-DTA測定を行う。