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特開2024-100876固液分離装置の駆動方法および固液分離装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100876
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】固液分離装置の駆動方法および固液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/26 20060101AFI20240719BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20240719BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20240719BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B01D21/26
B01D21/02 M
B01D21/24 G
B01D21/24 B
B01D21/24 S
E03F5/22
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081726
(22)【出願日】2024-05-20
(62)【分割の表示】P 2020058174の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】川上 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大原 利隆
(57)【要約】
【課題】固液分離装置の小型化を実現可能な固液分離装置の駆動方法および固液分離装置を提供する。
【解決手段】固体が混入した固体混入液から一部の液体を取り除いて固体の濃度が高まった濃縮液を排出口331から排出する容器3と、排出口331から排出された濃縮液を受け入れる貯留槽4とを備えた固液分離装置1の駆動方法であって、固体混入液を容器3に流入させる流入工程と、排出口331から貯留槽4に濃縮液を排出しつつ貯留槽3内の液体成分を排出口331から吸い込む排出吸込工程とを有し、排出吸込工程は、液面が排出口331の高さ位置以下の状態で液体成分を排出口331から吸い込む工程である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体が混入した固体混入液から一部の液体を取り除いて前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する容器と、該排出口から排出された該濃縮液を受け入れる貯留槽とを備えた固液分離装置の駆動方法であって、
前記固体混入液を前記容器に流入させる流入工程と、
前記排出口から前記貯留槽に前記濃縮液を排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込む排出吸込工程とを有し、
前記排出吸込工程は、液面が前記排出口の高さ位置以下の状態で前記液体成分を該排出口から吸い込む工程であることを特徴とする固液分離装置の駆動方法。
【請求項2】
前記排出吸込工程は、前記容器に形成され、前記排出口の開口面積よりも大きい開口面積を有する送出口を通して、前記排出口から吸い込んだ前記液体成分を送り出す工程であることを特徴とする請求項1記載の固液分離装置の駆動方法。
【請求項3】
前記貯留槽に洗浄液を注入する注入工程を有することを特徴とする請求項1または2記載の固液分離装置の駆動方法。
【請求項4】
固体が混入した固体混入液が流入する流入口と、該固体混入液から一部の液体を送出する送出口と、該送出口から一部の液体が送出されることで前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出する排出口とを有する容器と、
前記濃縮液を受け入れる貯留槽と、
前記排出口の周囲に水平方向に向かって拡がるフランジとを備え、
前記排出口は、前記貯留槽内に開口したものであり、
前記容器は、前記流入口と前記排出口の間に、該容器の内周面によって画定された内部空間の断面積が該流入口側よりも該排出口側の方が減少した絞り部を有するものであり、
前記排出口は、前記濃縮液を前記貯留槽に排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込むものであり、
前記フランジは、前記排出口から空気を吸い込みにくくして、空気に対して前記液体成分が該排出口に吸い込まれる比率を高めるものであることを特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
前記送出口は、前記排出口よりも大きな開口面積を有するものであることを特徴とする
請求項4記載の固液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体が混入した固体混入液から液体を分離する固液分離装置の駆動方法および固液分離浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設には、汚水から砂を除去するための沈砂池や汚水から汚泥を除去するための沈殿池が設けられている。沈砂池では、流れ込んできた汚水に含まれている砂を沈降させて池底の集砂ピットに集めた後、集められた砂が混入した砂混入水を揚砂ポンプで吸い上げて地上に設けられた固液分離装置に移送している。この固液分離装置は、移送された砂混入水を受け入れ、砂混入水から砂と汚水を分離して汚水を沈砂池に戻している。また、沈殿池は、受け入れた汚水に含まれている汚泥を池底の汚泥ピットに集めた後、汚泥ピットに集められた汚泥が混入した汚泥混入水を汚泥ポンプによって沈殿池よりも上方に設けられた固液分離装置に移送している。この沈殿池の上方に設けられた固液分離装置においても、移送された汚泥混入水を受け入れ、汚泥混入水から汚水を分離して沈殿池に戻している。さらに、下水処理施設以外においても、液体に固体が混入した混入液から液体を分離する固液分離装置が用いられている。このような固液分離装置としては、例えば、工場排水から金属粉等と水を分離するものや、ダム湖等の貯水池に流入した土砂等と水を分離するものなどがある。以下、汚水等に含まれている砂や汚泥、工業排水に含まれている金属粉、あるいは貯水池に水とともに流入する土砂等を総称して固体と称することがある。また、固体が混入した液体を総称して固体混入液と称することがある。
【0003】
この固液分離装置として、容器と貯留槽と搬出装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1の容器は、貯留槽よりも上方に配置され、沈砂池に配置された揚砂ポンプと揚砂管によって接続されている。容器は、揚砂ポンプによって沈砂池から移送された砂混入水を受け入れ、汚水に対する砂の濃度が砂混入水よりも高まった濃縮液を、容器に設けられた排出口から排出する。貯留槽は、容器が排出した濃縮液を受け入れて貯留する。貯留槽の上部にはオーバーフロー口が設けられている。貯留槽内では、砂と汚水を沈降分離させて、上澄み液である汚水をオーバーフロー口から排水して沈砂池に戻している。搬出装置は、貯留槽の下端部分に接続され、その接続された部分から斜め上方に向かって延在している。貯留槽の下端部分に沈降した砂は、この搬出装置によって斜め上方に向かって水切りされつつ搬送されて貯留槽の外部に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-21483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された固液分離装置では、オーバーフロー口から砂を多く含む汚水が排水されてしまうと、固液分離装置における砂の回収率が低下してしまうので、受け入れる濃縮液の量に対応した大きさの貯留槽が使用される。すなわち、受け入れた濃縮液に含まれる砂が貯留槽内を沈降して上澄み液とほぼ分離されるまで受け入れた濃縮液がオーバーフロー口から排水されないような容量を有する貯留槽が使用する必要がある。このため、固液分離装置が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、固液分離装置の小型化を実現可能な固液分離装置の駆動方法および固液分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の固液分離装置の駆動方法は、固体が混入した固体混入液から一部の液体を取り除いて前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する容器と、該排出口から排出された該濃縮液を受け入れる貯留槽とを備えた固液分離装置の駆動方法であって、
前記固体混入液を前記容器に流入させる流入工程と、
前記排出口から前記貯留槽に前記濃縮液を排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込む排出吸込工程とを有し、
前記排出吸込工程は、液面が前記排出口の高さ位置以下の状態で前記液体成分を該排出口から吸い込む工程であることを特徴とする。
【0008】
前記排出吸込工程において前記貯留槽内の前記液体成分を前記排出口から吸い込むことで前記濃縮液が排出されていても該貯留槽内の該液体成分が増加しにくくなるため、小さな貯留槽を使用することができる。その結果、固液分離装置を小型化できる。
【0009】
ここで、前記容器は、液体サイクロンであってもよい。また、前記貯留槽内の前記液体成分には、前記濃縮液の液体成分が含まれる。さらに、前記排出吸込工程は、前記貯留槽に排出する前記濃縮液の液量以上の量の前記液体成分を前記排出口から吸い込む工程であってもよい。さらに、前記排出吸込工程は、前記液体成分とともに前記排出口近傍の空気を吸い込む工程であってもよい。そして、前記排出吸込工程は、前記貯留槽に排出する前記濃縮液の液量と、前記排出口から吸い込む前記液体成分の量とがほぼ一致したバランス状態を形成して維持する工程であってもよい。加えて、前記排出吸込工程は、前記排出口の高さ位置以下で該排出口に液面が対面した状態で該液面近傍の前記液体成分を該排出口から吸い込む工程であってもよく、該液面が前記排出口の高さを超えた状態で該排出口近傍にある前記液体成分を吸い込む工程であってもよい。なお、前記液体成分は、前記濃縮液に含まれる有機物などの比重の小さい夾雑物を含んでいてもよい。
【0010】
この固液分離装置の駆動方法において、前記排出吸込工程は、前記容器に形成され、前記排出口の開口面積よりも大きい開口面積を有する送出口を通して、前記排出口から吸い込んだ前記液体成分を送り出す工程であってもよい。
【0011】
こうすることで、前記送出口から送り出せる前記液体成分の量が増加し、前記排出口から該液体成分を吸い込みやすくなる。また、前記排出口の高さ位置以下で該排出口に前記液面が対面して該排出口と液面の間に隙間がある状態では、前記液体成分とともに該排出口近傍の空気も該排出口から吸い込まれる。前記送出口の開口面積を大きくすることで、吸い込まれた空気が混ざった前記液体成分の多くを前記容器の外部に送り出すことができる。さらに、この空気が混ざった前記液体成分は空気が混ざっていない前記液体成分よりも比重が小さくなるので、より前記固体との比重差が生じる。これにより、比重の大きい該固体は、より前記貯留槽に排出されやすくなる。
【0012】
さらに、この固液分離装置の駆動方法において、前記貯留槽に洗浄液を注入する注入工程を有していてもよい。
【0013】
前記洗浄液を注入することで、前記貯留槽内にある前記固体を洗浄することができる。
【0014】
ここで、前記注入工程は、前記洗浄液として浄水を用いる工程であってもよく、該洗浄水としてファインバブル水を用いる工程であってもよい。また、前記注入工程は、前記貯留槽の下側部分に堆積している前記固体に向かって前記洗浄液を吐出する工程でもよい。前記固体に向かって前記洗浄液を吐出することで、該固体を効率的に洗浄できる。なお、前記注入工程は、前記流入工程と同時に行われる工程であってもよく、前記排出吸込工程と同時に行われる工程であってもよい。
【0015】
また、上記目的を解決する本発明の固液分離装置は、固体が混入した固体混入液が流入する流入口と、該固体混入液から一部の液体を送出する送出口と、該送出口から一部の液体が送出されることで前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出する排出口とを有する容器と、
前記濃縮液を受け入れる貯留槽と、
前記排出口の周囲に水平方向に向かって拡がるフランジとを備え、
前記排出口は、前記貯留槽内に開口したものであり、
前記容器は、前記流入口と前記排出口の間に、該容器の内周面によって画定された内部空間の断面積が該流入口側よりも該排出口側の方が減少した絞り部を有するものであり、
前記排出口は、前記濃縮液を前記貯留槽に排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込むものであり、
前記フランジは、前記排出口から空気を吸い込みにくくして、空気に対して前記液体成分が該排出口に吸い込まれる比率を高めるものであることを特徴とする。
【0016】
前記貯留槽内の液体成分を前記排出口から吸い込むことで該貯留槽内の前記濃縮液が増加しにくくなるため、小さな貯留槽を使用することができる。その結果、固液分離装置を小型化できる。
【0017】
ここで、前記容器は、液体サイクロンであってもよい。また、前記貯留槽内の液体成分には、前記濃縮液の液体成分が含まれる。さらに、前記排出口は、前記貯留槽に排出する前記濃縮液の液量以上の量の液体成分を吸い込むものであってもよい。またさらに、前記排出口は、前記液体成分とともに前記排出口近傍の空気を吸い込むものであってもよい。そして、前記排出口は、前記貯留槽に排出する前記液体の液量と、前記排出口から吸い込む前記液体成分の量とがほぼ一致したバランス状態を形成して維持するものであってもよい。加えて、前記排出口は、該排出口の高さ位置以下で該排出口に液面が対面した状態で該液面近傍の前記液体成分を該排出口から吸い込むものであってもよく、該液面が前記排出口の高さを超えた状態で該排出口近傍の液体成分を吸い込むものであってもよい。
【0018】
この固液分離装置において、前記送出口は、前記排出口よりも大きな開口面積を有するものであってもよい。
【0019】
この態様によれば、前記送出口から送り出せる前記液体成分の量が増加し、前記排出口から該液体成分を吸い込みやすくなる。また、前記排出口の高さ位置以下で該排出口に前記貯留槽の液面が対面して該排出口と液面の間に隙間がある状態では、前記液体成分とともに該排出口近傍の空気も該排出口から吸い込まれる。前記送出口の開口面積が大きくすることで、吸い込まれた空気が混ざった前記液体成分の多くを前記容器の外部に送り出すことができる。さらに、この空気が混ざった前記液体成分は比重が小さくなるので、より前記固体との比重差が生じる。これにより、比重の大きい該固体は、より前記貯留槽に排出されやすくなる。
【0020】
また、この固液分離装置において、前記排出口の周囲に水平方向に向かって拡がるフランジを備えていてもよい。
【0021】
前記フランジにより、前記排出口の側方や上方から空気が入り難くなるので、多くの液体成分を該排出口から吸い込むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、固液分離装置の小型化を実現可能な固液分離装置の駆動方法および固液分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に相当する固液分離装置が配置された沈砂池を示す概略構成図である。
図2】(a)は、図1に示した容器の平面図であり、(b)は、同図(a)におけるA-A断面図である。
図3図1に示した容器と貯留槽と搬出装置の下側部分とを示す正面図である。
図4図1に示した容器と貯留槽と搬出装置の下側部分とを示す右側面図である。
図5図1に示した固液分離装置の動作を示すフローチャートである。
図6図1に示した固液分離装置の変形例を示す、図3と同様の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、沈砂池から砂が混入した汚水が移送される固液分離装置に本発明を適用した例を用いる。なお、沈砂池は、下水処理施設の上流側に配置され、下水または雨水などの汚水から砂を取り除くためのものである。沈砂池において砂が取り除かれた汚水は、下流にある沈殿池などに送られる。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に相当する固液分離装置が配置された沈砂池を示す概略構成図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の固液分離装置1が配置された沈砂池9は、ポンプ井91と、トラフ92と、集砂ノズル93と、集砂ピット94とを備えた池である。この沈砂池9には、図の右側から汚水が流れ込んでくる。流れ込んだ汚水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく。沈砂池9では、汚水が流れていく間に、汚水に含まれている砂が池底に向かって沈降していく。ポンプ井91は、沈砂池9の最も下流側に配置されている。ポンプ井91は、砂が取り除かれた汚水が貯留される部分である。ポンプ井91の内部には、揚水ポンプ911が設けられている。この揚水ポンプ911は、ポンプ井91に貯留された汚水を沈砂池9の外部に送るものである。揚水ポンプ911には揚水管912が接続されている。揚水ポンプ911によって吸引された汚水は、この揚水管912を通して不図示の沈殿池に送られる。なお、図1には汚水の池水面WL1も示されている。この池水面WL1の位置は、沈砂池9へ流れ込む汚水の量によって、トラフ92の底からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
【0027】
トラフ92は、ポンプ井91よりも上流の池底であって池幅方向の中央に形成されている。このトラフ92は、沈砂池9における汚水の流れ方向に沿って延在している。トラフ92の池幅方向両側の池底には、トラフ92に向かうに従って下方に傾斜した池底傾斜面95が形成されている。沈砂池9に流れ込んだ汚水に含まれる砂は、池底に向かって沈降し、池底傾斜面95を滑り落ちて或いは直接トラフ92内に堆積する。
【0028】
集砂ノズル93は、トラフ92の上流端に配置されている。集砂ノズル93には、上述した不図示の沈殿池から汲み上げられた汚水が供給される。集砂ノズル93に供給された汚水は集砂ノズル93の先端から沈砂池9の下流側に向かって吐出される。トラフ92の下流端は集砂ピット94に接続されている。トラフ92内に堆積した砂は、集砂ノズル93から吐出される水の流れによって集砂ピット94に集められる。
【0029】
集砂ピット94は、ポンプ井91とトラフ92の間に形成されている。集砂ピット94に集められた砂は、揚砂ポンプ941によって固液分離装置1に送られる。揚砂ポンプ941は、集砂ピット94の内部であって、集砂ピット94の底近傍に配置されている。この揚砂ポンプ941には、揚砂管942が接続されている。揚砂ポンプ941は、集砂ピット94の内部に集められた砂を汚水とともに吸引し、砂が混入した汚水を揚砂管942を通して容器3に移送する。この砂は固体の一例に相当し、汚水は液体の一例に相当する。なお、汚水に有機物などの夾雑物も混入していることがあるが、本実施形態ではこの夾雑物が混入した汚水を単に汚水と称する場合がある。以下、この揚砂ポンプ941によって容器3に移送される、砂が混入した汚水を、砂混入水と称する。そして、この砂混入水は、固体混入液の一例に相当する。揚砂ポンプ941によって容器3に移送される砂混入水に含まれる砂の割合は、集砂ピット94の内部に集められた砂の量等によって変動するが、平均すると5%程度である。また、揚砂ポンプ941によって容器3に移送される砂混入水は、約2.0m3/分である。容器3に流入する砂混入水の量は、揚砂ポンプ941の能力によって定まる。このため、揚砂ポンプ941は、容器3や貯留槽4の大きさに応じて適宜選択される。ただし、後述する貯留槽4から吸い上げられる液体成分の量と、容器3の排出口331から排出される後述する濃縮液とがバランスするためには容器3に流入する砂混入水の量が2.0m3/分以上になる揚砂ポンプ941を用いることが好ましい。一方、むやみに能力の高い揚砂ポンプ941を用いても、揚砂ポンプ941の価格および消費電力が高くなるだけなので、揚砂ポンプ941は、容器3に流入する砂混入水の量が4m3/分以下になるものを用いることが好ましい。
【0030】
固液分離装置1は、容器3と、貯留槽4と、搬出装置5と、送出管6とを備えている。容器3と貯留槽4と搬出装置5は、地上であって沈砂池9の近傍に配置されている。容器3の下側部分は貯留槽4の槽内に配置され、容器3の上側部分は貯留槽4よりも上部に突出している。容器3は、所謂液体サイクロンであり、流入した砂混入水から、一部の汚水を取り除いて送出管6に送り出すものである。また、容器3は、一部の汚水が取り除かれることで砂の濃度が高まった濃縮液を貯留槽4に排出する。貯留槽4は、排出された濃縮液を排出口331に対面して貯留する。容器3から直接送出管6に送出される汚水は、後述する貯留槽4から吸い上げられる液体成分とともに送出管6を通して沈砂池9に戻される。以下、容器3から直接送出管6に送出される汚水および貯留槽4から吸い上げられて送出管6に送出される液体成分を総称して送出水と称する。また、貯留槽4に貯留されている砂と液体成分を総称して貯留液と称する。なお、貯留液には夾雑物も混入していることがあるが、本実施形態では、この夾雑物が混入した貯留液を単に貯留液と称し、夾雑物が混入した液体成分を単に液体成分と称する場合がある。送出管6は、容器3の容器蓋312に接続された一端部分61と、容器3よりも上方で水平に延びた水平部分と、水平部分から折れ曲がって下方に延びた垂直部分とを有している。そして、その垂直部分の下端である他端6aは容器3よりも下方であって貯留槽4の外部である沈砂池9の上流側部分に配置されている。他端6aを沈砂池9の集砂ピット94よりも上流側に配置することで、万一送出管6を通して固液分離装置1から砂が送出されてしまったとしても、沈砂池9において下流側に流れる間に砂は池底に沈降するので、再度容器3に移送することができる。なお、送出管6の他端6a側を沈砂池9の池水面WL1よりも下方まで延在させて他端6aが水中に没するようにしてもよい。さらに、他端6aを沈砂池9の池底近傍に配置してもよい。これらの容器3と貯留槽4については後に詳述する。
【0031】
搬出装置5は、貯留槽4の下端に接続され、斜め上方に向かって延在している。この搬出装置5は、スクリューコンベア51と投下口52とを有する。スクリューコンベア51は、搬出装置5内に配置されている。スクリューコンベア51の軸方向は、搬出装置5の延在方向に一致している。搬出装置5の上端部分には、モータ53と駆動伝達機構54が固定されている。このモータ53を駆動することで、駆動伝達機構54を介してスクリューコンベア51が回転する。なお、駆動伝達機構54は、モータ53の駆動軸とスクリューコンベア51それぞれに固定されたスプロケットと、各スプロケットに巻き掛けられたチェーンとから構成されているが、歯車などの他の伝動用機械要素で構成されていてもよい。また、駆動伝達機構54を設けずに、モータ53とスクリューコンベア51を直接連結してもよい。貯留槽4内に排出された濃縮液に含まれていた砂は、貯留槽4内を沈降して貯留槽4に接続された搬出装置5内に流れ込み、スクリューコンベア51が回転することで、水切りされながら斜め上方に搬送される。投下口52は、スクリューコンベア51の上端近傍に配置されている。スクリューコンベア51によって水切りされた砂は、投下口52から下方に向けて投下される。すなわち、搬出装置5は、貯留槽4に貯留されている貯留液に含まれている砂を貯留槽4の外部に搬出するものである。なお、スクリューコンベア51の代わりに、ベルトコンベアなどの他の搬送機構を用いてもよい。
【0032】
図2(a)は、図1に示した容器の平面図であり、図2(b)は、同図(a)におけるA-A断面図である。図2(a)および図2(b)には、送出管6の一端部分61と揚砂管942の一部も示されている。
【0033】
図2(b)に示すように、容器3は、流体導入部31と、絞り部32と、排出部33と、流体流入管34とを備えている。流体導入部31は、容器3の上側部分に設けられている。絞り部32は、その上端が流体導入部31の下端に接続している。また、絞り部32の下端には、排出部33の上端が接続されている。容器3の内周面3aは、流体導入部31の内周面31aと絞り部32の内周面32aと排出部33の内周面33aによって構成されている。この容器3の内周面3aによって内部空間X1が画定されている。すなわち、これらの流体導入部31、絞り部32、および排出部33によって、内部空間X1を有する中空状のタンクが構成されている。
【0034】
流体導入部31は、内周面31aが円筒状をした円筒部311と、円筒部311の上端を閉塞する容器蓋312とを備えている。円筒部311は、板厚3.2mmの鋼板を内径500mmの円筒状に加工したものである。また、容器蓋312は、板厚6.0mmの鋼板を外径が586mmで内径が216mmの環状に加工したものである。容器蓋312には、不図示の点検扉が設けれらており、その点検扉から容器3内への空気の流入および容器3からの空気の流出が可能になっている。なお、円筒部311および容器蓋312の形状、材質、および厚みは、内部空間X1の大きさ等に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
円筒部311の上側部分には、流体流入管34が連結されている。図1に示した揚砂ポンプ941と流体流入管34とは揚砂管942を介して接続されている。揚砂管942と流体流入管34とは、接続端に設けられたフランジどうしがボルトで締結されることで着脱可能に結合されている。流体流入管34は内径100mmの管である。図2(b)に示すように、この流体流入管34と円筒部311との連結部には、流入口341が形成されている。図2(a)および図2(b)に右向きの直線の矢印で示すように、揚砂ポンプ941が吸い上げた砂混入水は、円筒部311の内周面31aの接線方向から流入口341を通って内部空間X1に導入される。これにより、内部空間X1には砂混入水の旋回流が形成される。
【0036】
絞り部32は、流入口341と排出部33の間に配置されている。この絞り部32では、内部空間X1の断面積が排出部33に向かうに従って減少する。換言すれば、絞り部32は、円筒部311から離れるにつれて漸次縮径する逆円錐状の内周面32aを有している。この絞り部32は、板厚3.2mmの鋼板を円錐状に加工したものであり、上端は内径500mm、下端は内径100mmに形成されている。なお、絞り部32の材質や厚みは、内部空間X1の大きさや絞り量等に応じて適宜選択すればよい。また、絞り部32は、円筒部311から離れるにつれて段階的に内部空間X1の断面積が減少するように形成されていてもよい。すなわち、絞り部32は、内部空間X1の断面積が流入口341側よりも排出口331側の方が小さいものであればよい。絞り部32の下端の断面積は、排出口331の開口面積と等しい。この実施形態では、絞り部32の下端の断面積、すなわち排出口331の開口面積(断面積)を流入口341の開口面積(断面積)と一致させているが、排出口331の開口面積は、流入口341の開口面積以上であってもよく、流入口341の開口面積以下であってもよい。ただし、排出口331の開口面積を小さくしすぎると、容器3における圧力損失が増大するので、排出口331の開口面積は、流入口341の開口面積以上であることが好ましい。加えて、排出口331の開口面積は、小さくしすぎても大きくしすぎても後述する貯留槽4から容器3への吸込み作用が低下するため、流入口341の開口面積の50%以上150%以下にすることが望ましい。絞り部32の上端には、容器3の外側に向かって突出した容器フランジ321が形成されている。
【0037】
排出部33は、絞り部32の、流体導入部31が接続された側とは反対側に接続している。すなわち、排出部33は、絞り部32の下端に接続している。排出部33は、下端にフランジ332が形成された円筒状をしている。この排出部33の下端の開口が排出口331になる。なお、排出部33は省略してもよい。省略した場合、絞り部32の下端の開口部が排出口になる。フランジ332は、外径が200mmの環状をしている。
【0038】
送出管6は、内径200mmの管である。送出管6の一端部分61は、溶接によって容器蓋312に水密状態で結合している。なお、一端部分61は、内部空間X1内に突出していてもよい。この一端部分61下端が、送出管6の一端になり、その一端の開口が送出口611になる。従って、一端部分61および送出口611は、容器3に接続されている。この送出口611から送り出された送出水は、送出管6を通して沈砂池9に戻される。図2(a)および図2(b)には、送出水の流れる方向が左向きの直線の矢印で示されている。送出口611の開口面積は、排出口331の開口面積以上であることが好ましい。こうすることで、送出口611から排出される送出水の量を増加させ、容器3における圧力損失を低減することができる。また、送出口611の開口面積は、流入口341の開口面積以上の面積にすることが好ましい。こうすることで、流入口341から流入する砂混入水よりも多くの量の流体を送出口611から送り出すことができる。この実施形態における送出口611の開口面積は、排出口331および流入口341の開口面積の4倍である。
【0039】
図3は、図1に示した容器と貯留槽と搬出装置の下側部分とを示す正面図である。また、図4は、図1に示した容器と貯留槽と搬出装置の下側部分とを示す右側面図である。
【0040】
図3に示すように、貯留槽4は、容器3よりも外側に配置されて排出口331よりも上方に延在した側壁41と、側壁41の上端を閉塞する槽蓋42と、貯留槽4を支える脚43とを備えている。この実施形態では、側壁41は、排出口331よりも下方から、絞り部32と流体導入部31との接続部分の高さまで延在している。槽蓋42の平面視における中央部には、容器3の流体導入部31の外周と同一径の孔が形成されている。容器3は、絞り部32の上端部分がその孔に挿入された状態で、容器フランジ321が槽蓋42に溶接されることで貯留槽4に結合している。槽蓋42には、脱臭管421が設けられている。脚43は、平面視で貯留槽4の四隅にそれぞれ配置されている。図3では、脚43は中間部か省略されて上端部分と下端部分のみが示されている。この脚43の下端部分が接地されることで、貯留槽4は地上に配置されている。なお、搬出装置5の延在方向の中間部分にも搬出装置5を支持する支持部材が設けられているが、その支持部材は図示省略している。
【0041】
貯留槽4は、上側部分が平面視で略正方形の角筒に形成されている。図4に示すように、貯留槽4の下側部分には、槽傾斜面41aが形成されている。この槽傾斜面41aの下端は、搬出装置5に接続されている。また、図3に示すように、貯留槽4の下端は、搬出装置5の傾斜角度と同じ角度で斜め上方に向かって切り欠かれた形状をしている。容器3の排出口331から排出された濃縮液に含まれていた砂は、槽傾斜面41aを滑り落ちて或いは直接貯留槽4の下端に接続された搬出装置5の下側部分に堆積する。上述したように、搬出装置5に堆積した砂は、スクリューコンベア51によって固液分離装置1の外部に搬出される。搬出装置5の下端には、点検時などに貯留槽4および搬出装置5内に残っている液体や砂を排出するための排出管55が設けられている。この排出管55には不図示の弁が設けられている。図3および図4には、排出口331から排出された貯留液の上澄み液によって、排出口331に対面した高さ位置に形成された槽水面WL2も示されている。
【0042】
次に、この固液分離装置1の駆動方法と作用について説明する。図5は、図1に示した固液分離装置の動作を示すフローチャートである。
【0043】
沈砂池9および固液分離装置1の動作は、不図示の制御装置によって集中制御されている。なお、沈砂池9と固液分離装置1それぞれに制御装置を設け、互いに情報または指令を送受信可能な構成にしてもよい。図1に示した沈砂池9の底面に堆積した砂がある程度の量になった所定の時期に、沈砂池9は、集砂ノズル93から汚水を吐出させてトラフ92に堆積した砂を集砂ピット94に集める集砂動作を行う。その集砂動作の後、固液分離装置1は固液分離動作を開始する。ここで所定の時期は、例えば月に一回など定期的でもよく、沈砂池9に流入した汚水の合計流量または沈砂池9から排出された汚水の合計流量が一定量になったときでもよい。なお、集砂ピット94に砂を集めている途中で固液分離動作を開始してもよい。
【0044】
固液分離動作では、まず搬出装置5の駆動を開始する(ステップS10)。搬出装置5を駆動している間、搬出装置5の下側部分に堆積している砂は搬出装置5の搬出経路に沿って斜め上方に搬送されていく。スクリューコンベア51によって搬送されている砂は、搬出経路のうち槽水面WL2よりも高い後半部分で水切りされながら搬送される。そして、搬出装置5の搬出経路の上端部分に達した砂は、投下口52から下方に向けて投下される。搬出装置5の駆動を開始したら、次に揚砂ポンプ941の駆動が開始される。この駆動開始により、容器3への砂混入水の流入が開始される(ステップS11)。砂混入水は円筒部311の内周面31aの接線方向から流入するので、内部空間X1において、容器3の内周面3a近傍には砂混入水の旋回流が形成される。砂混入水に含まれている砂は、汚水よりも比重が大きいため遠心力により容器3の内周面3aに押し付けられつつ、その内周面3aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下していく。一方、容器3の径方向の中心部分には、砂混入水から砂が取り除かれた汚水が集まり上昇流が発生する。この上昇流により、中心部分に集まった汚水は容器3の上端にある送出口611から送出される。送出された汚水は、送出管6を通って送出管6の他端6aから沈砂池9内に放出される。この送出管6の他端6aは、送出管6の一端に形成された送出口611よりも下方に配置されているので、送出管6内が液体で満たされるとサイフォンの原理により送出口611から内部空間X1にある砂混入水等を吸い上げて沈砂池9に流れ出そうとする力が生じる。これにより、送出水の量が増加し、後述する排出口331における吸込み作用がより高まる。
【0045】
内部空間X1において、内周面3aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下した砂は、ある程度の汚水とともに排出口331から濃縮液として排出され始める(ステップS12)。濃縮液は、旋回流の遠心力によって排出口331から放射方向に向かって放出される。図3および図4には、濃縮液の放出方向が曲線の矢印で示されている。濃縮液の排出が開始されたときに貯留槽4の槽内が空の状態であった場合、貯留槽4の槽水面WL2は徐々に上昇していく。また、貯留槽4の槽内に貯留された貯留液に含まれる砂は、自重により貯留槽4の底部に向かって沈降し、搬出装置5の下側部分に堆積していく。なお、堆積した砂の量が増加すると、搬出装置5の下側部分に入りきらない砂が貯留槽4の下側部分にも堆積していく。
【0046】
槽水面WL2が上昇し、図3および図4に示すように、槽水面WL2が排出口331に対面する高さ位置に達すると(ステップS13でYES)、排出口331に対面した部分にある貯留液の上澄み液(汚水)が、排出口331に吸い込まれていく(ステップS14)。この排出口331に吸い込まれる上澄み液は液体成分の一例に相当する。上澄み液は、容器3内の上昇流によって排出口331の径方向の中心部分から吸い込まれる。図3および図4には、上澄み液の吸込み方向が直線の矢印で示されている。この上澄み液が排出口331に吸い込まれる際に、排出口331の周囲の空気も排出口331に吸い込まれている。すなわち、排出口331には、排出される濃縮液の量以上の量の流体(上澄み液と空気)が吸い込まれる。本実施形態では、排出口331よりも大きい開口面積を有する送出口611が形成されているので、送出口611から大量の流体を送り出すことが可能に構成されている。その結果、排出口331から流体を吸い込みやすくなっている。また、排出される濃縮液の量以上の量の流体を排出口331から吸い込んでも、送出口611から送り出すことができる。排出口331から上澄み液と空気を吸い込んでいる状態では、排出口331から貯留槽4に排出される濃縮液の液量と、排出口331から内部空間X1に吸い込んでいる上澄み液の液量とがほぼ一致したバランス状態が形成されている。排出口331に吸い込まれる空気の体積は、上澄み液の体積の1/5以下である。この実施形態では、排出口331の周囲に水平方向に向かって拡がるフランジ332が形成されているので、排出口331よりも上方にある空気は排出口331に吸い込まれにくくなっている。また、排出口331近傍の槽水面WL2の波うちがフランジ332によって抑制されている。これらにより、空気が排出口331に吸い込まれにくく、空気に対して上澄み液が排出口331に吸い込まれる比率が高められている。さらに、排出口331から排出される濃縮液は、フランジ332によって放射方向に整然と排出されやすくなる。その結果、排出口331から排出された濃縮液に含まれていた砂が、排出口331の径方向の中心部分から吸い込まれる上澄み液に混じってしまうことが抑制されている。なお、槽水面WL2が排出口331に対面する高さ位置とは、槽水面WL2と排出口331との距離が0mm以上20mm以下である高さに槽水面WL2が達した位置を指す。ここで、上述したように濃縮液は排出口331から放射方向に向かって放出されるので、濃縮液に含まれている砂が、排出口331の中心部分から吸い込まれてしまう可能性は低い。加えて、砂は比重が高く貯留槽4の下方に早期に沈降しやすい。このため、容器3内に強い上昇流が形成されて排出口331に生じている吸込み力が強くても、容器3に吸い込まれる砂の量は極僅かな量に限定される。その極僅かな量の砂も、上澄み液と比較して比重が大きいので殆どが容器3内で上昇流から放射方向にはじきだされて旋回流にのみこまれ、再度排出口331から貯留槽4に排出される。上述したように排出口331からは空気も吸い込まれているので、容器3内の中央部分に生じている上昇流は、吸い込まれた空気が混ざった比重が小さい流体の流れになっている。従って、上昇流を主に構成している流体と砂との比重差がより大きくなり、比重の大きい砂はより放射方向にはじき出されやすい。
【0047】
なお、容器3に流入する砂混入水の量が2.0m3/分よりも少ない場合、排出口331に吸い込まれる上澄み液の量が排出口331から排出される濃縮液よりも少なくなり、排出口331を超えて槽水面WL2が上昇することがある。しかし、槽水面WL2が排出口331に達すると排出口331が貯留液で閉塞されるため、排出口331から排出される濃縮液の量は減少する。すなわち、絞り部32における内部空間X1の断面積の減少による抵抗と排出口331に加わる貯留液の水圧が相まって、排出口331から濃縮液が排出されにくくなる。そして、槽水面WL2が上昇するにつれ、排出口331に加わる貯留液の水圧が高まるため、排出口331から排出される濃縮液の量は減少し、送出口611から送出される送出水の量は増加する。また、上述したように送出管6内を液体が満たすとサイフォンの原理により送出口611から沈砂池9に流れ出ようとする作用が送出水に生じるので、送出口611から送出される送出水の量はさらに増加する。これらにより排出口331に吸い込まれる上澄み液の量が増加して槽水面WL2は排出口331に対面する位置まで低下する。すなわち、槽水面WL2が低下している期間は、排出口331から排出される濃縮液の量以上の量の上澄み液が吸い込まれている。このように、容器3に流入する砂混入水を減らした場合、安価な揚砂ポンプ941が使用でき、また揚砂ポンプ941で使用される電力量を削減できる。なお、槽水面WL2が排出口331を超えて上方にある状態においても、貯留液は、排出口331に対面して貯留されている。
【0048】
揚砂ポンプ941の駆動開始から第1所定時間経過したら(ステップS15でYES)、揚砂ポンプ941の駆動を停止する(ステップS16)。この第1所定時間は、集砂ピット94に集められた砂の多くを揚砂ポンプ941で吸い上げることができる時間であり、揚砂ポンプ941の能力や集砂ピット94に集めることができる砂の量などに応じて適宜設定された時間である。揚砂ポンプ941を停止することで、容器3への砂混入水の流入、貯留槽4への濃縮液の排出、上澄み液の吸込み、および送出水の送出も停止する。以上説明したステップS11からステップS16が流入工程の一例に相当する。また、ステップS14からステップS16が排出吸込工程の一例に相当する。
【0049】
揚砂ポンプ941の駆動が停止してから第2所定時間が経過したら(ステップS17でYES)、搬出装置5の駆動を停止する(ステップS18)。以上説明したステップS10からステップS18は搬出工程の一例に相当する。この第2所定時間は、排出口331から排出された濃縮液に含まれていた砂が搬出装置5の下側部分に沈降する時間と搬出装置5の下側部分から投下口52まで砂を搬送する時間の合計時間である。なお、第2所定時間が経過したか否か判断することに代えて、搬出装置5の下側部分の砂の有無を検出する砂有無センサを搬出装置5に設け、その検出が発生したか否かを判断してもよい。以上で固液分離装置の動作を修了する。搬出装置5の駆動中、槽水面WL2は、排出口331よりも下方か排出口331とほぼ一致する位置にあるので、搬出経路が短くても、水切りしつつ砂を搬送することができる。搬出経路は斜め上方に向かって延在しているので、搬出経路を短くすることで搬出装置5の横幅と高さが短くなる。その結果、固液分離装置1を小型化できる。
【0050】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略することがある。
【0051】
図6は、図1に示した固液分離装置の変形例を示す、図3と同様の正面図である。
【0052】
図6に示すように、この変形例の固液分離装置1は、貯留槽4に洗浄水供給管45が接続されている点が図1に示した固液分離装置1と異なる。洗浄水供給管45は、貯留槽4の側壁41を水密状態で貫通している。洗浄水供給管45の先端には吐出口451が形成されている。吐出口451は、貯留槽4内であって貯留槽4の下端部分に配置されている。洗浄水供給管45には、弁452が設けられている。弁452を開放することで吐出口451から浄水が吐出される。これによって貯留槽4に、約0.2m3/分の浄水が注入される。この浄水は、洗浄水の一例に相当する。この変形例では、送出口611からは、約2.2m3/分の送出水が送り出される。弁452は、この変形例では手動弁であるが、電動弁であってもよい。吐出口451は、貯留槽4の下端部分において堆積している砂に向かって浄水を吐出する。このように構成することで、堆積している砂を効率的に洗浄することができる。なお、洗浄効果は低下するものの、吐出口451を貯留槽4の上端部分に設けて、槽水面WL2よりも上方から浄水を注入してもよい。
【0053】
貯留槽4への浄水の注入は、図5に示したステップS11(揚砂ポンプ941の駆動開始)からステップS16(揚砂ポンプ941の駆動停止)の間、すなわち流入工程の間実行される。ただし、ステップS11よりも前に注入を開始しておき、あらかじめ槽水面WL2を排出口331に対面させておいてもよい。この場合、濃縮液の排出と同時に上澄み液の吸込みが開始される。ステップS14以降、槽水面WL2の高さ位置と排出口331の高さ位置はほぼ一致した位置になる。このため、この変形例では排出口331から空気は殆ど吸い込まれない。貯留槽4への浄水の注入は、ステップS11よりも後、例えばステップS14(上澄み液の吸込み開示)からステップS16(揚砂ポンプ941の駆動停止)の間、すなわち排出吸込工程の間実行してもよい。この貯留槽4へ浄水を注入する工程が注入工程の一例に相当する。浄水を注入することで、貯留槽4内にある砂を洗浄することができる。
【0054】
また、不図示のファインバブル水発生装置を設けて、浄水の代わりにファインバブル水を貯留槽4に注入してもよい。なお、ファインバブル水とは、100μm以下の微細気泡を含有した微細気泡含有液である。ファインバブル水は、直径が1μmよりも大きく100μm以下の気泡であるマイクロバブルを含有した液体であってもよく、直径が1μm以下の気泡であるウルトラファインバブルを含有した液体であってもよい。さらに、ファインバブル水は、マイクロバブルとウルトラファインバブルの両方を含有した液体であってもよい。ファインバブル水を用いることで貯留槽4内にある砂をより効果的に洗浄することができる。
【0055】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、固液分離装置1を沈砂池9に設置した例で説明したが、固液分離装置1は、沈殿池に設けてもよく、ダム湖等の貯水池に設けてもよい。また、工場等で生じた工場排水から水と金属粉等を分離する固液分離装置1として使用してもよい。
【0056】
以上説明した実施形態や変形例によれば、固液分離装置1を小型化することができる。
【0057】
以上説明した固液分離装置の駆動方法は、固体が混入した固体混入液から一部の液体を取り除いて前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する容器と、該排出口から排出された該濃縮液を受け入れる貯留槽とを備えた固液分離装置の駆動方法であって、
前記固体混入液を前記容器に流入させる流入工程と、
前記排出口から前記貯留槽に前記濃縮液を排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込む排出吸込工程とを有し、
前記排出吸込工程は、前記排出口の高さ位置以下で該排出口に液面が対面した状態で該液面近傍の前記液体成分を該排出口から吸い込む工程であることを特徴とする。
【0058】
また、固体が混入した固体混入液から一部の液体を取り除いて前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する容器と、該排出口から排出された該濃縮液を受け入れる貯留槽とを備えた固液分離装置の駆動方法であって、
前記固体混入液を前記容器に流入させる流入工程と、
前記排出口から前記貯留槽に前記濃縮液を排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込む排出吸込工程とを有することを特徴としてもよい。
【0059】
また、以上説明した固液分離装置は、固体が混入した固体混入液が流入する流入口と、該固体混入液から一部の液体を送出する送出口と、該送出口から一部の液体が送出されることで前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出する排出口とを有する容器と、
前記濃縮液を受け入れる貯留槽と、
前記排出口の周囲に水平方向に向かって拡がるフランジとを備え、
前記排出口は、前記貯留槽内に開口したものであり、
前記容器は、前記流入口と前記排出口の間に、該容器の内周面によって画定された内部空間の断面積が該流入口側よりも該排出口側の方が減少した絞り部を有するものであり、
前記排出口は、前記濃縮液を前記貯留槽に排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込むものであることを特徴とする。
【0060】
また、固体が混入した固体混入液が流入する流入口と、該固体混入液から一部の液体を送出する送出口と、該送出口から一部の液体が送出されることで前記固体の濃度が高まった濃縮液を排出する排出口とを有する容器と、
前記濃縮液を受け入れる貯留槽とを備え、
前記容器は、前記流入口と前記排出口の間に、該容器の内周面によって画定された内部空間の断面積が該流入口側よりも該排出口側の方が減少した絞り部を有するものであり、
前記排出口は、前記濃縮液を前記貯留槽に排出しつつ該貯留槽内の液体成分を該排出口から吸い込むものであることを特徴としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 固液分離装置
3 容器
4 貯留槽
331 排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6