(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100899
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20240719BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240719BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240719BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240719BHJP
B60L 53/20 20190101ALI20240719BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240719BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J7/00 P
H02J7/34 D
B60L50/60
B60L53/20
B60L53/14
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082726
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2023049402の分割
【原出願日】2018-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
(57)【要約】
【課題】主幹ブレーカをトリップさせることなく、しかも、利用できる電力は有効に活用して電動車両の充電を行う。
【解決手段】蓄電池を搭載した電動車両を、充電ケーブルを介して需要家と電気的に接続し、前記蓄電池を充電する充電システムであって、前記需要家の受電点に流れる電流および前記受電点に印加されている電圧に基づく電力を計測して得られた電力計測値および所定の受電電力目標値を取得し、取得した前記電力計測値および前記受電電力目標値に基づいて、前記蓄電池の充電電力目標値を逐次更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を搭載した電動車両を、充電ケーブルを介して需要家と電気的に接続し、前記蓄電池を充電する充電システムであって、
前記需要家の受電点に流れる電流および前記受電点に印加されている電圧に基づく電力を計測して得られた電力計測値および所定の受電電力目標値を取得し、取得した前記電力計測値および前記受電電力目標値に基づいて、前記蓄電池の充電電力目標値を逐次更新する、充電システム。
【請求項2】
前記充電電力目標値は、固定値、または、時期に応じて値が変わる変動値である、請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記充電電力目標値を、0から充電電力上限値までの範囲内に定める、請求項1または請求項2に記載の充電システム。
【請求項4】
前記蓄電池を充電するAC/DC変換回路を前記充電電力目標値に基づいて制御する電力制御装置を含み、
前記AC/DC変換回路は、スイッチング素子によって構成されたフルブリッジ回路であり、
前記電力制御装置は、前記需要家から前記AC/DC変換回路に進相無効電流が流れるよう前記AC/DC変換回路を制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項5】
前記蓄電池を充電するAC/DC変換回路を前記充電電力目標値に基づいて制御する電力制御装置を含み、
前記電力制御装置は、前記蓄電池を放電させるように前記AC/DC変換回路を動作させ得る、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラグインハイブリッド車(PHEV)や、電気自動車(EV)が増え始めている。特に、電気自動車は電力のみで走行するため、充電電力が大きい。充電は、多くの場合、電気自動車を使用する人の自宅の駐車場で、屋内配線に接続された充電ケーブルの先端のコネクタを電気自動車に装着することで行われる(例えば、特許文献1参照。)。
また、電気自動車の充電に関しては、種々の条件を考慮して、一定の充電電力を設定し、充電することも考えられている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-128180号公報
【特許文献2】特開2008-136291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般家庭等の電力の需要家は、電力会社と、単相3線式で、例えば6kVA程度の受電契約になっていることが多い。分電盤の主幹ブレーカは、契約電力に合わせた電流定格となっている。需要家の消費電力が増大して電流定格を超えると、主幹ブレーカが、所定の限時特性に従ってトリップする。需要家において、例えばエアコン等、消費電力の比較的大きい家電機器を多数稼働させているとき、一定電力を消費する電気自動車の充電が行われると、主幹ブレーカがトリップする可能性がある。
【0005】
また、電気自動車の普及が進むと、近隣地域内で多数の電気自動車の充電が同時に行われる可能性がある。この場合、線路インピーダンスによる電圧降下のため、配電系統の電圧が低下する。一方、電気自動車の充電電力を低い一定値に抑えると、本来利用できた電力が利用されず、電気自動車の充電不足になる可能性もある。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、主幹ブレーカをトリップさせることなく、しかも、利用できる電力は有効に活用して電動車両の充電を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【0008】
本発明の一表現に係る蓄電システムは、蓄電池を搭載した電動車両を、充電ケーブルを介して需要家と電気的に接続する蓄電システムであって、前記需要家の受電点に流れる電流及び前記受電点に印加されている電圧に基づく電力を計測して電力計測値を取得し、当該電力計測値及び所定の受電電力目標値の情報を発信する電力計測部と、前記電力計測部から前記情報を受信し、受信した前記電力計測値及び前記受電電力目標値に基づいて、前記蓄電池の充電電力目標値を逐次更新する電力制御部と、前記電力制御部の制御に応じて前記蓄電池を充電するAC/DC変換回路と、を備えている。
【0009】
また、本発明の一表現に係る蓄電池の充電方法は、蓄電池を搭載した電動車両と需要家とによって構成される蓄電システムが存在する場合における、前記蓄電池の充電方法であって、前記需要家と前記電動車両とを充電ケーブルを用いて互いに電気的に接続し、前記需要家の受電点に流れる電流及び前記受電点に印加されている電圧に基づく電力を計測して電力計測値を取得し、かつ、当該電力計測値及び所定の受電電力目標値の情報を発信し、受信した前記電力計測値及び前記受電電力目標値に基づいて、前記蓄電池の充電電力目標値を逐次更新し、前記充電電力目標値に応じて前記蓄電池を充電する、蓄電池の充電方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受電電力が過大になり主幹ブレーカのトリップに至ることを抑制し、かつ、使用可能な電力を有効利用して適切な充電電力で蓄電池を充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、蓄電システムのうち、需要家側(住宅側)の設備の概要の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、蓄電システムのうち、電気自動車側の設備の概要の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、参考例として、一般的に多く使われているAC/DC変換回路を示す回路図である。
【
図4】
図4は、
図3のAC/DC変換回路に進相無効電力を注入する場合の、交流の電圧(点線)、電流(実線)の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のAC/DC変換回路を示す回路図である。
【
図6】
図6は、
図5のAC/DC変換回路に進相無効電力を注入する場合の、交流の電圧(点線)、電流(実線)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0013】
(1)本開示は、蓄電池を搭載した電動車両を、充電ケーブルを介して需要家と電気的に接続する蓄電システムであって、前記需要家の受電点に流れる電流及び前記受電点に印加されている電圧に基づく電力を計測して電力計測値を取得し、当該電力計測値及び所定の受電電力目標値の情報を発信する電力計測部と、前記電力計測部から前記情報を受信し、受信した前記電力計測値及び前記受電電力目標値に基づいて、前記蓄電池の充電電力目標値を逐次更新する電力制御部と、前記電力制御部の制御に応じて前記蓄電池を充電するAC/DC変換回路と、を備えている。
【0014】
上記のように構成された蓄電システムにおいて電力制御部は、受信した電力計測値及び受電電力目標値に基づいて、蓄電池の充電電力目標値を逐次更新する。従って、充電電力目標値は、常に一定とは限らず、現在の電力計測値及び受電電力目標値に基づいて変化し得る。このようにして、受電電力が過大になり主幹ブレーカのトリップに至ることを抑制し、かつ、使用可能な電力を有効利用して適切な充電電力で蓄電池を充電することができる。
【0015】
(2)また、(1)の蓄電システムにおいて、前記受電電力目標値は、固定値又は、時期に応じて値が変わる変動値であってもよい。
変動値とすれば、例えば、電力会社との契約により時間帯によって電気料金が異なる場合、それに応じて受電電力目標値を変えることで、電気料金を節約することができる。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)の蓄電システムにおいて、前記電力制御部は、前記充電電力目標値を、0から充電電力上限値までの範囲内に定めることもできる。
この場合、蓄電池に対して、放電と、過剰な充電とを防止することができる。
【0017】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの蓄電システムにおいて、前記電力計測値の取得、前記情報の発信、及び、前記充電電力目標値の更新は、前記受電点における交流基本波の周期以下の時間ごとに実行されることが好ましい。
この場合、主幹ブレーカが過電流に反応してトリップするよりも早く、充電電力を絞ることができ、トリップを抑制することができる。
【0018】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの蓄電システムにおいて、例えば、前記電力計測部は前記需要家に設置され、前記電力制御部及び前記AC/DC変換回路は、前記電動車両に搭載されている。
この場合、必要な情報は需要家側から提供され、電力制御部は提供された情報に応じて充電を行うことができる。従って、電動車両の充電を、需要家と同様なシステムに対応した他の設備によって行うことができ、また、電動車両を取り替えても同じ需要家にて充電を行うことができる。
【0019】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの蓄電システムにおいて、前記電力計測部は、現在の前記電力計測値を表示する表示部を有するものであってもよい。
この場合、例えば、表示部に電力計測値及び受電電力目標値を表示することで、需要家の住人に対して注意喚起をすることができる。例えば、住人が表示部の表示を見て重要でない負荷の節電をすることにより、より多くの充電電力を得ることも可能となる。
【0020】
(7)上記(1)~(6)のいずれかの蓄電システムにおいて、前記AC/DC変換回路は、スイッチング素子によって構成されたフルブリッジ回路であり、前記電力制御部は、前記需要家から前記AC/DC変換回路に進相無効電流が流れるよう前記AC/DC変換回路を制御するようにしてもよい。
この場合、需要家の交流電圧が蓄電池の充電によって低下している場合に、交流電圧の低下を抑制することができる。
【0021】
(8)上記(1)~(7)のいずれかの蓄電システムにおいて、例えば、前記電力計測部と前記電力制御部との通信は、前記充電ケーブルを介して行われる。
この場合、充電ケーブルを電動車両に装着することにより、充電用の電力線と、通信線とを、同時に接続することができる。
【0022】
(9)上記(1)~(8)のいずれかの蓄電システムにおいて、前記電力制御部は、前記蓄電池を放電させるように前記AC/DC変換回路を動作させ得るようにしてもよい。
この場合、電動車両の蓄電池に需要家から充電電力を与えるのみならず、逆に、蓄電池から需要家に給電を行うことができる。例えば、需要家以外の場所において低価格で蓄電池を充電し、需要家に戻って放電すれば、電気料金の節約になり、ダックカーブ(Duck curve)現象の緩和も実現することができる。
【0023】
(10)一方、これは、蓄電池を搭載した電動車両と需要家とによって構成される蓄電システムが存在する場合における、前記蓄電池の充電方法であって、前記需要家と前記電動車両とを充電ケーブルを用いて互いに電気的に接続し、前記需要家の受電点に流れる電流及び前記受電点に印加されている電圧に基づく電力を計測して電力計測値を取得し、かつ、当該電力計測値及び所定の受電電力目標値の情報を発信し、受信した前記電力計測値及び前記受電電力目標値に基づいて、前記蓄電池の充電電力目標値を逐次更新し、前記充電電力目標値に応じて前記蓄電池を充電する、蓄電池の充電方法である。
【0024】
上記のような蓄電池の充電方法によれば、受信した電力計測値及び受電電力目標値に基づいて、蓄電池の充電電力目標値が逐次更新される。従って、充電電力目標値は、常に一定とは限らず、現在の電力計測値及び受電電力目標値に基づいて変化し得る。このようにして、受電電力が過大になり主幹ブレーカのトリップに至ることを抑制し、かつ、使用可能な電力を有効利用して適切な充電電力で蓄電池を充電することができる。
【0025】
[実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る蓄電システム及び蓄電池の充電方法について、図面を参照して説明する。
【0026】
《蓄電システムの構成例》
図1は、蓄電システム100のうち、需要家側(住宅側)の設備の概要の一例を示す図である。なお、商用電力系統1から分電盤6までは、説明の必要上、複線図で示すが、その他は単線図で示している。
【0027】
図1において、商用電力系統1からの単相3線式の引込線2には、電力メータ3が接続されている。商用電力系統1から電力メータ3までは、電力会社の所有に係る設備である。電力メータ3から需要家4側の始端を受電点5とすると、受電点5から需要家4側の電気配線は、需要家4の所有に係る設備である。電力メータ3は、買電・売電の双方向の計量機能を有している。
【0028】
受電点5と、需要家4内の分電盤6とは、電圧線である2本の電路7u,7wと、中性線の電路7oとによって互いに接続されている。電路7u,7o,7wには、電流検出部8が設けられている。電流検出部8は、例えば電路7u及び電路7wにそれぞれ設けられた電流センサ(CT)8u及び電流センサ8wにより構成されている。分電盤6内に引き込まれた電路7u,7o,7wは、主幹ブレーカの1次側から分岐して電圧計測線9u,9o,9wとして引き出される。電圧計測線9u,9o,9wは、電力計測部12に入力される。電流検出部8は、受電点5に流れる電流を検出することができる。電流検出部8の検出出力は電力計測部12に送られる。電力計測部12は、電流検出部8の検出出力及び、電圧計測線9u,9o,9wを介して直接取り込まれた電圧に基づいて、受電点5の電力を計測する。電力計測部12は、計測データ等の表示部12dを備えている。なお、表示部12dは、電力計測部12の本体と通信可能な別体のモニタであってもよい。
【0029】
需要家4には、例えば、太陽光発電パネル10が設けられている。太陽光発電パネル10の発電出力はパワーコンディショナ11により交流電力に変換される。パワーコンディショナ11の出力する交流電力は、分電盤6に送られる。なお、太陽光発電パネル10を設けるのは分散型電源の典型例であるが、燃料電池等、その他の分散型電源であってもよい。
【0030】
また、図示は省略するが、分電盤6内には主幹ブレーカ及びその傘下の多数のブレーカが設けられており、各ブレーカを介して、需要家4内に屋内配線・屋外配線が展開されている。
【0031】
そして、この需要家4の駐車場には、電気自動車に充電を行うための充電スタンド13が設けられている。充電スタンド13は、分電盤6から引き出された電力線14pにより、例えば200Vの電圧供給を受ける。充電スタンド13には充電ケーブル15が設けられている。充電ケーブル15の先端には、電気自動車に着脱可能なコネクタ15cが設けられている。
【0032】
電力計測部12は、受電点5に流れる電流及び受電点5に印加されている電圧に基づく電力を計測して電力計測値を取得する。また、電力計測部12には、所定の受電電力目標値が設定され、記憶されている。電力計測部12は通信線14cを介して充電スタンド13と接続されている。充電ケーブル15は、電力線14p及び通信線14cの延長線を1本のケーブルに収めたものである。電力計測部12は、計測して得た電力計測値及び受電電力目標値の情報を、通信線14cを介して電気自動車20(
図2)に送ることができる。
【0033】
なお、電力計測12はハードウェアのみによって構成することもできるが、コンピュータを含むものであってもよい。コンピュータを含む場合は、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、電力計測部12の記憶装置(図示せず。)に格納される。
【0034】
図2は、蓄電システム100のうち、電気自動車側の設備の概要の一例を示す図である。図において、電気自動車20は、大容量な走行用の蓄電池21を搭載している。蓄電池21には、交流から直流への変換又はその逆の変換も可能なAC/DC変換回路22が接続されている。AC/DC変換回路22は、電力制御部23により制御される。電力制御部23は、例えばコンピュータを含み、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、電力制御部23の記憶装置(図示せず。)に格納される。
【0035】
充電ケーブル15のコネクタ15cが電気自動車20に装着されると、AC/DC変換回路22と繋がる電力線24pは、需要家4側の電力線14pと接続される。また、電力制御部23に繋がる通信線24cは、需要家4側の通信線14cと接続される。
【0036】
《充電の電力制御》
上記のような蓄電システム100において、電流検出部8は、太陽光発電パネル10の出力が分電盤6に入る電路上の位置より系統側に配置されている。そのため、電気自動車20の充電電力を含む需要家4で消費可能な電力は、商用電力系統1からの受電電力の上限値に太陽光発電パネル10の発電電力を加えた合計値にまで高めることができる。
【0037】
電力計測部12は、受電点5における電力(有効電力)prを計算する。以下、電力prの符号は、商用電力系統1からの受電方向を正、逆潮流方向を負として説明する。電力計測部12は、商用電力系統1の基本波周期(50又は60Hz)で電力計測値を求め、更新する。電力計測部12は、計測して得た電力計測値を電力制御部23に送信する。
【0038】
電力制御部23は、電力計測値prと、受電電力の上限値以下に設定した受電電力目標値p*
rを比較して、下記の式(1)又は式(2)に基づいてAC/DC変換回路22の充電電力目標値p*
cを更新する。ここで、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲインである。また、式(1)を用いる場合には右辺第3項(積分項)を省略してもよい。なお、下記の式(1),(2)の他、後述の式(3),(4)における文字フォントの違いに意味はない。文字フォントに関わらず、同じ文字は同じ物理量を表している。
【0039】
【0040】
【0041】
受電電力目標値p*
rは固定値としてもよい。但し、時間帯別契約で商用電力系統1から電力の供給を受けている場合には、時刻情報と組み合わせて、電気料金が高い時間帯ではp*
rを小さく設定し、電気料金が低い時間帯ではp*
rを大きく設定することによって、電気自動車20の充電による電気料金を節約することができる。
【0042】
電力制御部23は、式(1)又は式(2)によって一旦更新した充電電力目標値p*
cをさらに、充電電力上限値pc-maxと比較して、式(3)によってp*
c[n+1]を書き換える。電力制御部23は、p*
c[n+1]が負の場合には0として扱い、充電を停止する。また、電力制御部23は、p*
c[n+1]がpc-max以上であった場合にはp*
c[n+1]を、pc-maxに書き換える。充電電力上限値pc-maxは、AC/DC変換回路22の最大許容電力値であってもよいし、蓄電池21の充電状態と、目標とする充電状態と、充電にかける時間とから求めた最適値としてもよい。
【0043】
【0044】
電力計測値prが受電電力の上限値を超えた場合には、分電盤6の主幹ブレーカが反応して例えば数秒でトリップし電流が遮断される。そこで、遮断されるよりも早く、電力制御部23は、充電電力を絞って、受電電力を許容範囲内に制御することが望ましい。そのためには、電力計測部12から電力制御部23に送信する電力計測値prは、交流基本波周期と同じか、それよりも短い周期で更新することが望ましい。
【0045】
電力制御部23とAC/DC変換回路22は、
図2に示すように、電気自動車20に搭載されている構成の他、例えば充電スタンド13に組み込まれた構成であってもよい。前者の場合には、必要な情報は需要家4側から提供され、電力制御部23は提供された情報に応じて充電を行うことができる。従って、電気自動車20の充電を、需要家4と同様なシステムに対応した他の設備によって行うことができ、また、電気自動車20を取り替えても同じ需要家4にて充電を行うことができる。
【0046】
また、例えば、電力計測部12の表示部12dに電力計測値prの現在値及び受電電力目標値p*
rを表示すれば、需要家4の住人に対して注意喚起をすることができる。例えば、住人が表示部12dの表示を見て重要でない負荷の節電をすることにより、より多くの充電電力を得て、迅速な充電を行うことも可能となる。
【0047】
《ここまでのまとめ》
開示したのは、蓄電池21を搭載した電気自動車20を、充電ケーブル15を介して需要家4と電気的に接続する蓄電システム100であって、需要家4の受電点5に流れる電流及び受電点に印加されている電圧に基づく電力を計測して電力計測値prを取得し、当該電力計測値及び所定の受電電力目標値p*
rの情報を発信する電力計測部12と、電力計測部12から情報を受信し、受信した電力計測値及び受電電力目標値に基づいて、蓄電池21の充電電力目標値p*
cを逐次更新する電力制御部23と、電力制御部23の制御に応じて蓄電池21を充電するAC/DC変換回路22と、を備えている。
【0048】
上記のように構成された蓄電システム100において電力制御部23は、受信した電力計測値pr及び受電電力目標値p*
rに基づいて、蓄電池21の充電電力目標値p*
cを逐次更新する。従って、充電電力目標値p*
cは、常に一定とは限らず、現在の電力計測値pr及び受電電力目標値p*
rに基づいて変化し得る。このようにして、受電電力が過大になり主幹ブレーカのトリップに至ることを抑制し、かつ、使用可能な電力を有効利用して適切な充電電力で蓄電池21を充電することができる。
【0049】
また、開示したのは、蓄電池21を搭載した電気自動車と需要家4とによって構成される蓄電システム100が存在する場合における、蓄電池の充電方法であって、
(a)需要家4と電気自動車20とを充電ケーブル15を用いて互いに電気的に接続し、
(b)需要家4の受電点5に流れる電流及び受電点5に印加されている電圧に基づく電力を計測して電力計測値prを取得し、かつ、当該電力計測値pr及び所定の受電電力目標値p*
rの情報を発信し、
(c)受信した電力計測値pr及び受電電力目標値p*
rに基づいて、蓄電池21の充電電力目標値p*
cを逐次更新し、
(d)充電電力目標値p*
cに応じて蓄電池21を充電する、という蓄電池の充電方法である。
【0050】
上記のような蓄電池の充電方法によれば、受信した電力計測値及び受電電力目標値に基づいて、蓄電池の充電電力目標値が逐次更新される。従って、充電電力目標値は、常に一定とは限らず、現在の電力計測値及び受電電力目標値に基づいて変化し得る。このようにして、受電電力が過大になり主幹ブレーカのトリップに至ることを抑制し、かつ、使用可能な電力を有効利用して適切な充電電力で蓄電池を充電することができる。
【0051】
《負荷消費集中による系統電圧低下の緩和》
近隣地域内で、各住宅内の負荷消費、電気自動車の充電が集中すると配電系統の電圧が低下する。この場合には、電力制御部23はpc-maxの設定値を小さくして充電電力を抑制すれば電圧低下を緩和することができる。充電電力を維持しながら電圧低下を抑制するためには、充電電流(商用電力系統1から需要家4側に流れる方向を正)を系統電圧に対して進めて、進相無効電力を注入すればよい。進相無効電力によって系統電圧は上昇するので、電圧低下を緩和することができる。
【0052】
この場合の、AC/DC変換回路の好適な例について説明する。
図3は、参考例として、一般的に多く使われているAC/DC変換回路220を示す回路図である。図において、AC/DC変換回路220は、商用電力系統1と、蓄電池21との間にある。AC/DC変換回路220は、ダイオードブリッジ227と、力率改善回路(PFC)228と、DC/DCコンバータ229とを備えている。
【0053】
図4は、
図3のAC/DC変換回路220に進相無効電力を注入する場合の、交流の電圧(点線)、電流(実線)の一例を示す図である。
図3に示すAC/DC変換回路220で無効電力を注入すると、
図4に示すように電流のゼロクロス近傍で歪が発生する。
【0054】
これに対して、
図5は、本実施形態のAC/DC変換回路22を示す回路図である。図において、AC/DC変換回路22は、商用電力系統1と、蓄電池21との間にある。AC/DC変換回路22は、フィルタ回路221と、ゲートコントロールが可能なスイッチング素子によって構成されたフルブリッジ回路222と、平滑コンデンサCdと、DC/DCコンバータ223とを備えている。フィルタ回路221は、コンデンサCaと、交流リアクトルLとを含む。フルブリッジ回路222は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるスイッチング素子S1,S2,S3,S4を備えている。スイッチング素子S1~S4及びDC/DCコンバータ223は、電力制御部23により制御される。
【0055】
図6は、
図5のAC/DC変換回路220に進相無効電力を注入する場合の、交流の電圧(点線)、電流(実線)の一例を示す図である。
図5に示すAC/DC変換回路22で無効電力を注入すると、
図6に示すように、無効電力を注入しても歪のない正弦波電流を維持することができる。
【0056】
《電気自動車からの放電による電力ピークシフト、電圧低下の緩和》
図2のAC/DC変換回路22として、
図5のAC/DC変換回路22を用いることによって、電気自動車20に搭載された蓄電池21に充電されたエネルギーを需要家4側の負荷消費に利用することができる。このとき、前述の式(1)又は式(2)で求めた充電電力目標値p
*
c[n+1]を、式(3)の代わりに以下の式(4)で再設定する。これにより、充電電流目標値p
*
c[n+1]は負の値をとる場合に放電電力下限値p
c-min(負の値、最大放電電力)以内の放電を行うことができる。受電電力目標値p
*
rを0以上で、より小さな値に設定すれば、需要家から系統への逆潮流を防止しながら、電気自動車からの放電量をより大きくすることができる。
【0057】
【0058】
電力計測部12で計測した系統電圧が低いときに、電気自動車からの放電を行えば、系統電圧の低下を緩和することができる。
この回路及び制御によれば、需要家4内に設置した分散型電源等によって余剰電力が発生する時間帯の電力を電気自動車20に充電し、電力が不足する時間帯に放電して負荷消費に使用することができる。また、前述のように、電力制御部23とAC/DC変換回路22とを電気自動車20に搭載する場合、電気自動車20は、充電とは異なる場所で放電することができる。例えば、電気自動車20を通勤に用いて、昼間は勤務先に設置された太陽光発電の余剰電力を吸収して、これを帰宅後の電力ピークに合わせて使用することにより、電力系統全体の安定化に寄与することができる。
【0059】
《その他》
上記実施形態では、電気自動車20を含む蓄電システム100として説明したが、電動バイク、電動産業車両等、その他の電動車両であっても同様に蓄電システムを構成することができる。
また、上記実施形態では、電力計測部12から電力制御部23への通信は有線通信としたが、無線通信に置き換えてもよい。
【0060】
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 商用電力系統
2 引込線
3 電力メータ
4 需要家
5 受電点
6 分電盤
7u,7o,7w 電路
8 電流検出部
8u 電流センサ
8w 電流センサ
9u 電圧計側線
9o 電圧計測線
9w 電圧計測線
10 太陽光発電パネル
11 パワーコンディショナ
12 電力計測部
12d 表示部
13 充電スタンド
14p 電力線
14c 通信線
15 充電ケーブル
15c コネクタ
20 電気自動車
21 蓄電池
22 AC/DC変換回路
23 電力制御部
24p 電力線
24c 通信線
100 蓄電システム
220 AC/DC変換回路
221 フィルタ回路
222 フルブリッジ回路
223 DC/DCコンバータ
227 ダイオードブリッジ
228 力率改善回路
229 DC/DCコンバータ
Ca コンデンサ
Cd 平滑コンデンサ
L 交流リアクトル
S1,S2,S3,S4 スイッチング素子