(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010090
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】リラキシン融合ポリペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240116BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240116BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240116BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20240116BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20240116BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240116BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240116BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240116BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240116BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/12
C12N15/16
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/22
A61K47/65
A61K47/68
A61P1/16
A61P9/04
A61P9/10
A61P13/12
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183003
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2019538362の分割
【原出願日】2018-01-24
(31)【優先権主張番号】62/450,338
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ウェイドン・ハオ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】チャンショウ・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・セルマディラス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リラキシン生物学的活性を保持し、長期にわたる半減期および好都合な投薬などのような利点を提供する、さらなる組換えリラキシン融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、ならびに医薬組成物を含むキットおよび治療の方法を含む医薬組成物の使用を提供する。
【解決手段】A-L-BまたはB-L-Aを含む融合ポリペプチドであって、Aは、リラキシンA鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;Bは、リラキシンB鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;かつLは、少なくとも15のアミノ酸を含むリンカーポリペプチドであり;前記融合ポリペプチドは、リラキシン活性を有し、かつ半減期を延長する成分をさらに含む、融合ポリペプチドである。本発明のポリペプチドおよび組成物は、特に、心臓血管系疾患の治療において、たとえば心不全の治療に有用であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-L-BまたはB-L-Aを含む融合ポリペプチドであって、
Aは、リラキシンA鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;
Bは、リラキシンB鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;かつ
Lは、少なくとも15のアミノ酸を含むリンカーポリペプチドであり;
前記融合ポリペプチドは、リラキシン活性を有し、かつ半減期を延長する成分をさらに含む、融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記リラキシンA鎖は、リラキシン2 A鎖であり、前記リラキシンB鎖は、リラキシン2 B鎖である、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記リンカーポリペプチドLは、長さが15~20アミノ酸である、請求項1または2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記リンカーポリペプチドLは、配列GGGGS(配列番号58)の3つ以上のリピートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記リンカーポリペプチドLは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号57)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記リンカーポリペプチドLは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号57)からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記半減期を延長する成分は、免疫グロブリンFc領域である、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記Fc領域は、ヒトIgG1免疫グロブリンに由来する、請求項7に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記Fc領域は、アミノ酸修飾の以下の組み合わせ:
(i) Fc-YTE(M252Y,S254T,T256E);
(ii) Fc-FQQ(L234F,L235Q,K322Q);
(iii) Fc-TM(L234F,L235E,P331S);
(iv) Fc-YTE-FQQ(M252Y,S254T,T256E,L234F,L235Q,K322Q);
(v) Fc-YTE-TM((M252Y,S254T,T256E,L234F,L235E,P331S),
(vi) Fc-TM-ΔTHT(L234F,L235E,P331S,D221G,K222G,T223G,H224S,T225A),
(vii) Fc-TM-ΔTHTΔK(L234F,L235E,P331S,D221G,K222G,T223G,H224S,T225A,ΔK447),
の少なくとも1つを含むアミノ酸配列を有し、
アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである、請求項7または8に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
前記半減期を延長する成分は、融合ポリペプチドのN-末端に付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項11】
前記半減期を延長する成分は、コネクターポリペプチドを介して前記融合ポリペプチドに付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項12】
前記コネクターポリペプチドは、アミノ酸配列GGSP(配列番号56)またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号57)を含む、請求項11に記載の融合ポリペプチド。
【請求項13】
前記コネクターポリペプチドは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号69)、AAAGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSA(配列番号70)を含む、請求項11に記載の融合ポリペプチド。
【請求項14】
リラキシン活性を有する融合ポリペプチドであって、前記融合ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、および28のいずれか1つにおいて示される配列を有する、融合ポリペプチド。
【請求項15】
基準となるリラキシンタンパク質のリラキシン活性に対する前記融合ポリペプチドのリラキシン活性の比は、約10-5および約105の間である、請求項1~14のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターまたは請求項16に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを産生するための方法であって、請求項18に記載の宿主細胞を培養するステップおよび前記融合ポリペプチドを収集するステップを含む方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項21】
療法における使用のための請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記融合ポリペプチドまたは医薬組成物は、前記対象に投与される、心不全を有する対象の治療における使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記融合ポリペプチドまたは医薬組成物は、皮下注射によって前記対象に投与される、請求項21もしくは22に記載の使用のための融合ポリペプチドまたは請求項21もしくは22に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記融合ポリペプチドまたは医薬組成物は、自己投与によって投与される、請求項21~23のいずれか一項に記載の使用のための融合ポリペプチドまたは請求項21~23のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
請求項20の医薬組成物を含むキット。
【請求項26】
疾患または障害を有する対象を治療するための方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項20に記載の医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項27】
心不全を有する対象を治療するための方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項20に記載の医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項28】
前記融合ポリペプチドまたは医薬組成物は、皮下注射によって前記対象に投与される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記融合ポリペプチドまたは医薬組成物は、自己投与によって投与される、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラキシン融合ポリペプチドに関する。特に、本発明は、リラキシン2融合ポリペプチドおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リラキシンは、インスリンスーパーファミリーに属するペプチドホルモンである。ヒトでは、リラキシンペプチドファミリーは、構造の類似性が高いが配列類似性が低い、7つのペプチドを含む:リラキシン1、2、および3ならびにインスリン様ペプチドINSL3、INSL4、INSL5、およびINSL6。リラキシン遺伝子のコード領域は、シグナルペプチドで始まり、Bポリペプチド鎖、Cペプチド、およびAポリペプチド鎖が続く。シグナルペプチドおよびCペプチドは、タンパク質分解によって除去され、成熟リラキシンタンパク質が産生され、これは、2つの鎖間ジスルフィド結合によって共有結合で連結されたA鎖およびB鎖からなる。A鎖は、さらなる鎖内ジスルフィド結合を有する。成熟リラキシンタンパク質は、およそ6000Daの分子量を有する。
【0003】
リラキシンは、妊娠の間に全身性の血行動態のおよび腎臓の適応変化を媒介することが知られている多面的なホルモンである。リラキシンはまた、抗線維性の特性を有し、かつ心不全において有益な効果を有することも示された。心不全は、深刻な罹患率および死亡率に関連する。心不全は、心筋細胞死の増加および間質性線維症を伴う複雑な組織リモデリングによって特徴付けられる(Bathgate et al.,2013;Felker et al.,2014;Mentz et al.,2013;Tietjens et al.,2016;Wilson et al.,2015)。リラキシンは、虚血再灌流および心不全といった状況において有益であることが示された多くのシグナル伝達カスケードを活性化する(Bathgate et al.,2013)。これらのシグナル伝達経路は、ホスホイノシチド3-キナーゼ経路の活性化および一酸化窒素シグナル伝達経路の活性化を含む(Bathgate et al.,2013)。
【0004】
臨床試験が、未修飾組換えヒトリラキシン2、セレラキシンを使用して行われた。セレラキシンは、現在、急性非代償性心不全(ADHF)についての第III相臨床試験中である。この研究において、セレラキシンは、入院心不全患者に対して48時間、連続静脈内注入によって投薬された(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02064868)。
【0005】
以前に終了した臨床試験では、セレラキシンの静脈内投与は、心臓、腎臓、および肝臓の損傷ならびにうっ血のマーカーを改善した(Felker et al.,2014;Teerlink et al.,2013;Metra et al.,2013)。しかしながら、患者の血液循環からのセレラキシンの急速な排除のために、治療効果は、入院患者にとって限られたものであり、一旦静脈内注射を止めたら、正の効果は、急速に消滅した。そのうえ、およそ3分の1の患者は、セレラキシンを静脈内に受けた後に、深刻な血圧低下(>40mm Hg)を経験し、半分またはさらにもっと用量を低下させなければならなかったという結論に達した。
【0006】
国際公開第2013/004607号パンフレットは、リラキシンA鎖ポリペプチドがリンカー配列によりリラキシンB鎖ポリペプチドに融合されている組換え単鎖リラキシン融合ポリペプチドを記載する。発明者らは、少なくとも5つのアミノ酸および15未満のアミノ酸のリンカー長がリラキシン活性に必要とされることを見出した。国際公開第2013/004607号パンフレットは、さらに、抗体のFcドメインに融合された組換え単鎖リラキシン2融合ポリペプチドを記載し、これは、野生型リラキシン2に対して半減期の改善を呈した。
【0007】
未修飾組換えリラキシンによりこれまでに行われた有望な臨床研究を考慮すれば、リラキシン生物学的活性を保持し、長期にわたる半減期および好都合な投薬などのような利点を提供する、さらなる組換えリラキシン融合ポリペプチドの必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リンカーポリペプチドによって連結されるリラキシンA鎖およびリラキシンB鎖を含み、リンカーポリペプチドは、少なくとも15のアミノ酸を含むリラキシン融合ポリペプチドに関する。それと関連して、本発明は、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、および医薬組成物を含むキットならびに治療の方法を含む、医薬組成物の使用を提供する。
【0009】
本発明の態様および実施形態は、添付の請求項において述べられる。本発明のこれらのおよび他の態様および実施形態はまた、本明細書においても記載される。
【0010】
図面の簡単な説明および配列表
本発明は、ここで、添付の図面に関してより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチドの略図および略称を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc_hRLX2_4-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-TM_hRLX2_4-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるTM突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-FQQ_hRLX2_4-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるFQQ突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-YTE_hRLX2_4-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるYTE突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-YTE-TM_hRLX2_4-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるYTE-TM突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-YTE-FQQ_hRLX2_4-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるYTE-FQQ突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-G4P_hRLX2_4-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc_hRLX2_15-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-TM_hRLX2_15-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるTM突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-FQQ_hRLX2_15-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるFQQ突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-YTE_hRLX2_15-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるYTE突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-YTE-TM_hRLX2_15-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるYTE-TM突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-YTE-FQQ_hRLX2_15-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く;Fc部におけるYTE-FQQ突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-G4P_hRLX2_15-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-TMΔTHTΔK_hRLX2_21-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。Fc部におけるTMΔTHTΔK突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(Fc-TMΔTHTΔK_hRLX2(BA)_21-15AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。Fc部におけるTMΔTHTΔK突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(hRLX2_Fc-TMΔTHTΔK_15-24AA)のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。Fc部におけるTMΔTHTΔK突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態によるリラキシン2融合ポリペプチド(hRLX2(BA)_Fc-TMΔTHTΔK_15-24AA) のヌクレオチド(上)配列およびアミノ酸(下)配列を示す図である(それぞれ、コネクター(一重の下線)配列およびリンカー(二重の下線)配列に下線を引く)。Fc部におけるTMΔTHTΔK突然変異に下線を引き、太字にする)。
【
図20】
図20は、RXFP1発現細胞における本発明のいくつかのリラキシン2融合ポリペプチドのインビトロにおける活性を示す図である。相対発光量(relative light unit)(RLU)は、cAMP産生の刺激に相当する。
【
図21】
図21は、RXFP1発現細胞における本発明のいくつかのリラキシン2融合ポリペプチドのインビトロにおける活性(cAMP産生の刺激)を示す図である。
【
図22】
図22は、リラキシン-2受容体に対する本発明のいくつかのリラキシン2融合ポリペプチドの特異性を示す図である。
【
図23】
図23は、本発明のいくつかのリラキシン2融合ポリペプチドによるVEGF発現の誘発を示す図である。この図において、「ゼロ=1」は、偽「治療なし」コントロールで測定された活性(すなわち、アッセイにおいてRLX2またはRLX2融合ポリペプチドの追加なし)をベースラインとして採用したことを意味する(すなわち、「治療なし」コントロールの倍数変化の値は1である)。
【
図24】
図24は、静脈内に(上)または皮下に(下)投与された融合ポリペプチドFc_hRLX2_4-15AA(4mg/kg)のラットPKプロファイルを示す図である。
【
図25】
図25は、静脈内に(上)または皮下に(下)投与された融合ポリペプチドFc_hRLX2_15-15AA(4mg/kg)のラットPKプロファイルを示す図である。
【
図26】
図26は、静脈内に(「IV」、丸)または皮下に(「SC」、三角)投与された融合ポリペプチドFc_hRLX2_15-15AA(6mg/kg)のマウスPKプロファイルを示す図である。「CL」は、IV投与後のFc-リラキシンの全身クリアランスを示し、「CL/F」は、SC投与後のFc-リラキシンの見かけの全身クリアランスを示す。
【
図27】
図27は、皮下に投与された融合ポリペプチドFc_hRLX2_15-15AA(1mg/kg(丸)、6mg/kg(四角)、および30mg/kg(三角))のマウスPKプロファイルを示す図である。「CL」は、IV投与後のFc-リラキシンの全身クリアランスを示し、「CL/F」は、SC投与後のFc-リラキシンの見かけの全身クリアランスを示す。
【
図28-1】
図28は、細胞ベースのcAMPアッセイにおける、ヒト(A)およびマウス(B)細胞株における本発明のいくつかのFc-リラキシン-2融合ポリペプチドのインビトロにおける活性ならびにRXFP2選択性(C)を示す図である。
【
図28-2】
図28は、細胞ベースのcAMPアッセイにおける、ヒト(A)およびマウス(B)細胞株における本発明のいくつかのFc-リラキシン-2融合ポリペプチドのインビトロにおける活性ならびにRXFP2選択性(C)を示す図である。
【
図29】
図29は、Fc_hRLX2_15-15AAにより治療されたマウスにおけるイソプロテレノール誘発性の心肥大の予防を示す図である。(A)は、心臓重量(HW)/下腿長(Tibia Length)(TL)(mg/mm)の比を示し、(B)は、コラーゲン含有量(μg/組織1mg)を示し、6グループを試験した:(1)ビヒクル、(2)Fc_hRLX2_15-15AA、(3)イソプロテレノール、(4)イソプロテレノール+エナラプリル、(5)イソプロテレノール+rhRLX2、(6)イソプロテレノール+Fc_hRLX2_15-15AA。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配列番号表
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
詳細な説明
本発明は、構造A-L-BまたはB-L-Aを有するリラキシン融合ポリペプチドであって、リラキシンA鎖(A)は、リンカーポリペプチド(L)を介してリラキシンB鎖に連結され、リンカーポリペプチドLは、長さが少なくとも15のアミノ酸である、リラキシン融合ポリペプチドに関する。いくつかの実施形態では、リラキシン融合ポリペプチドは、リラキシン2融合ポリペプチドである。リラキシン2融合ポリペプチドは、リラキシン2 A鎖およびリラキシン2 B鎖を含む。
【0018】
本発明は、リンカーポリペプチドLが少なくとも15のアミノ酸を含む融合ポリペプチドが、リラキシン活性を有するという驚くべき発見に基づく。したがって、本発明者らは、15アミノ酸のリンカーによりA鎖のC末端がB鎖のN-末端につながれているリラキシン2融合ポリペプチドが、UniProtKB/Swiss-Prot Accession Number P04090.1のリラキシン2ポリペプチドなどのような成熟リラキシン2ポリペプチドのA鎖およびB鎖のアレイを有するリラキシン2タンパク質(すなわちA鎖およびB鎖の間にリンカーを有していない)と同等の生物学的活性を呈することを見出した。同様に、本発明者らは、15アミノ酸のリンカーによりB鎖のC末端がA鎖のN-末端につながれているリラキシン2融合ポリペプチドが、成熟リラキシン2ポリペプチドのA鎖およびB鎖のアレイを有するリラキシン2タンパク質と同等の生物学的活性を呈することを見出した。これらの発見は、15未満のアミノ酸のリンカー長が生物学的活性に必要であることが見出された国際公開第2013/004607号パンフレットにおける教示を考慮して特に驚くべきことである。
【0019】
天然に存在するリラキシンは、構造B-C-Aを有するプロホルモンとして発現され(ここで、「B」はリラキシンのB鎖であり、「C」はリラキシンのCペプチドであり、「A」はリラキシンのA鎖である)、成熟タンパク質は、プロホルモンコンバターゼ1(PC1)およびプロホルモンコンバターゼ2(PC2)の酵素によるプロホルモンのエンド型タンパク質分解性の(endoproteolytic)切断により、Cペプチドを除去することによって産生される。本発明の融合ポリペプチドは、PC1およびPC2によるそのようなエンド型タンパク質分解性の切断を受けないことが理解されるであろう。
【0020】
本発明の融合ポリペプチドは、リラキシンA鎖ポリペプチドまたはその変異体およびリラキシンB鎖ポリペプチドまたはその変異体を含む。いくつかの実施形態では、リラキシンB鎖ポリペプチドは、そのC-末端にいかなる付属物も有していない。言いかえれば、リラキシンB鎖ポリペプチドは、遊離C-末端を有する。他の実施形態では、リラキシンA鎖ポリペプチドは、そのC-末端にいかなる付属物も有していない。言いかえれば、リラキシンA鎖ポリペプチドは、遊離C-末端を有する。
【0021】
融合ポリペプチドは、リラキシン1、リラキシン2、およびリラキシン3から選択されるリラキシンのグループ由来のリラキシンA鎖およびB鎖ポリペプチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、リラキシン2またはリラキシン3由来のリラキシンA鎖およびB鎖ポリペプチドを含む。したがって、融合ポリペプチドは、リラキシン2 A鎖またはリラキシン3 A鎖ポリペプチドまたはその変異体およびリラキシン2 Bまたはリラキシン3 B鎖ポリペプチドまたはその変異体を含んでいてもよい。いくつかの他の実施形態では、融合ポリペプチドは、リラキシン3 A鎖ポリペプチドまたはその変異体およびリラキシン3 B鎖ポリペプチドまたはその変異体を含む。特に、融合ポリペプチドは、ヒトリラキシンA鎖およびB鎖ポリペプチドを含んでいてもよい。
【0022】
融合ポリペプチドは、リラキシン2 A鎖ポリペプチドまたはその変異体およびリラキシン2 B鎖ポリペプチドまたはその変異体を含んでいてもよい。特定の実施形態では、リラキシンA鎖ポリペプチドは、ヒトリラキシン2 A鎖ポリペプチドまたはその変異体およびヒトリラキシン2 B鎖ポリペプチドまたはその変異体を含む。ヒトリラキシン2 A鎖ポリペプチドは、配列番号42において示される配列またはその変異体を有していてもよく、ヒトリラキシン2 B鎖ポリペプチドは、配列番号44もしくは配列番号46において示される配列またはその変異体を有していてもよい。さらなる実施形態では、ヒトリラキシン2 A鎖ポリペプチドは、配列番号42において示される配列を有し、ヒトリラキシン2 B鎖ポリペプチドは、配列番号46において示される配列を有する。
【0023】
リラキシンA鎖およびB鎖の変異体は、当技術分野において知られている。そのうえ、リラキシンA鎖およびB鎖の変異体の設計の手引きは、当業者に入手可能である。たとえば、変異体が、リラキシン機能に必要とされるアミノ酸を保持してもよいことは理解されるであろう。たとえば、リラキシン2 B鎖変異体は、保存モチーフArg-X-X-X-Arg-X-X-Ile(配列番号55)(Claasz et al,2002、Wilkinson et al.,2005)またはArg-X-X-X-Arg-X-X-Val(配列番号60)(Bathgate et al,2013)を含んでいてもよい。変異体は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を含んでいてもよい。たとえば、リラキシン2 B鎖変異体は、配列番号44と比較して、Val23、Ala24、Lys54、Arg55、およびN-末端Metから選択される1つ以上のさらなるアミノ酸を有していてもよい。その代わりにまたはそのうえ、変異体は、1つ以上のアミノ酸誘導体を含んでいてもよい。たとえば、リラキシン2 B鎖変異体の第1のアミノ酸は、ピログルタミン酸であってもよい。
【0024】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、ペプチド結合を通して連結された2つ以上のアミノ酸の鎖を指すために本明細書において区別なく使用されてもよい。
【0025】
本発明の融合ポリペプチドは、組換え融合ポリペプチドであってもよい、すなわち、それは、組換えDNA技術によって作られたものであってもよい。野生型リラキシンタンパク質と異なり、本発明の融合ポリペプチドは、生物学的活性のためにエンド型タンパク質分解性のプロセシングを必要としない。
【0026】
リラキシンファミリーペプチドは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化およびそれぞれGsまたはGiタンパク質サブユニットによるcAMPシグナル伝達経路の続く刺激または阻害を通して、少なくとも部分的に、それらの生物学的効果を伝達する。リラキシン2は、GPCR RXFP1(LGR7としても知られている)および程度はより低いが、GPCR RXFP2(LGR8としても知られている)を活性化して、したがって、Gs-cAMP依存性のシグナル伝達経路を刺激し、セカンドメッセンジャー分子cAMPの増加に至ることが知られている。
【0027】
本明細書において使用されるように、用語「リラキシン活性」は、リラキシン分子が、リラキシン受容体に結合するおよび/または前記リラキシン受容体を活性化するおよび/または細胞の内部でシグナル伝達カスケードを開始する能力を指す。リラキシン活性がリラキシン2活性である実施形態では、リラキシン活性は、受容体RXFP1および/またはRXFP2に結合するおよび/またはそれを活性化する能力を指してもよい。リラキシン活性がリラキシン3活性である実施形態では、リラキシン活性は、受容体RXFP1、RXFP3、および/またはRXFP4に結合するおよび/またはそれを活性化する能力を指してもよい(Bathgate et al.,2013)。用語「リラキシン活性」は、「生物学的活性」と区別なく使用されてもよい。
【0028】
リラキシン活性は、リラキシン受容体へのリラキシン分子の結合を測定することによっておよび/またはリラキシン受容体への結合の下流のイベントを測定することによって決定されてもよい。
【0029】
リラキシン活性は、インビトロにおいておよび/またはインビボにおいて決定されてもよい。いくつかの実施形態では、リラキシン活性は、インビトロにおいて決定される。
【0030】
リラキシン活性は、受容体のリラキシンによる活性化の下流の分子の量および/または存在を測定することによって決定されてもよい。たとえば、リラキシン活性は、受容体のリラキシンによる活性化後のcAMP産生を測定することによって決定されてもよい。リラキシン誘発性のcAMP生成の検出のための方法は、当技術分野において知られている。そのような方法は、cAMP ELISAおよびHitHunter(登録商標)cAMPアッセイを含む。リラキシン活性はまた、受容体のリラキシンによる活性化後の一酸化窒素(NO)産生を測定することによって決定されてもよい。リラキシン活性はまた、受容体のリラキシンによる活性化の下流の分子の活性化を測定することによって決定されてもよい。たとえば、リラキシン活性は、p42/44 MAPKの活性化を測定することによって決定されてもよい。
【0031】
その代わりにまたはそのうえ、リラキシン活性は、既知のリラキシン標的遺伝子の活性化を測定することによって決定されてもよい。たとえば、リラキシン活性は、THP-1細胞における既知のリラキシン標的遺伝子、VEGFの転写の活性化を測定することによって決定されてもよい。遺伝子の転写の活性化を決定する方法は、当技術分野において知られており、mRNAの定量PCR分析を含む。VEGF mRNAの相対的な発現は、Xiao et al.(2013)において記載されるように、リラキシンとのTHP-1細胞のインキュベーション後にVEGF転写物の定量リアルタイムPCR誘発によって測定することができる。
【0032】
その代わりにまたはそのうえ、リラキシン活性は、リラキシンの1つ以上の下流の効果を測定することによって決定されてもよい。たとえば、心肥大の低下は、心エコー法、標準的な方法による体重および/または下腿長に比べた左心室重量によって測定することができる。別の実施例では、リラキシン活性は、マッソン三色染色法によって線維症低下を測定することによって決定されてもよい。別の実施例では、リラキシン活性は、線維化促進性(profibrotic)因子(TGF-ベータなど)の阻害、線維芽細胞増殖および分化の阻害、ならびに/またはMMP媒介性の細胞外マトリックス分解の活性化などのような結合組織代謝の変化を測定することによって決定されてもよい(Bathgate et al.,2013)。
【0033】
本発明のリラキシン融合ポリペプチドの活性は、基準となるリラキシンタンパク質と比較して決定されてもよい。いくつかの実施形態では、基準となるリラキシンタンパク質は、組換えタンパク質である。リラキシン融合ポリペプチドの活性は、UniProtKB/Swiss-Prot Accession Number P04090.1のリラキシン2ポリペプチドなどのような成熟リラキシンポリペプチドのリラキシンA鎖およびリラキシンB鎖のアレイを有する基準となるリラキシンタンパク質(すなわちA鎖およびB鎖の間にリンカーを有していない)と比較して決定されてもよい。そのようなリラキシンは、市販で入手可能である。たとえば、成熟ヒトリラキシン2のリラキシン2鎖Aおよびリラキシン2鎖Bのアレイを有する組換えヒトリラキシン2は、R&D systems(カタログ番号6586-RN-025)から入手可能である。いくつかの実施形態では、基準となるリラキシンタンパク質は、本発明の融合ポリペプチドのAおよびBリラキシン鎖と同じAおよびBリラキシン鎖を有するまたは10以下のアミノ酸、たとえば1つもしくは2つのアミノ酸が、本発明の融合ポリペプチドのAおよびBリラキシン鎖と異なる。他の実施形態では、基準となるリラキシン2のB鎖の第1のアミノ酸は、Dであり、このアミノ酸は、本発明の融合ポリペプチドのB鎖において欠失している。さらなる実施形態では、融合ポリペプチドが配列番号42のリラキシン2 A鎖ポリペプチドおよび配列番号44または46のリラキシン2 B鎖ポリペプチドを含む場合、基準となるリラキシンは、成熟ヒトリラキシン2の鎖Aおよび鎖Bのアレイを有し、かつUniProtKB/Swiss-Prot Accession Number P04090.1の下で開示されるアミノ酸配列を有する組換えリラキシン2である。
【0034】
本発明の融合ポリペプチドは、それらが、基準となるリラキシンタンパク質の活性の少なくとも一部を示す場合、リラキシン活性を有すると考えられてもよい。たとえば、融合ポリペプチドは、それが、基準となるリラキシンタンパク質の活性の少なくとも約半分を有する場合、リラキシン活性を有すると考えられてもよい。その代わりに、本発明の融合ポリペプチドは、基準となるリラキシンタンパク質の活性に対する前記融合ポリペプチドの活性の比が、1および約105の間、1および約104の間、約1および約103の間、約1および約100の間、約1および約50の間、約1および約20の間、約1および約15の間、約1および約10の間、または約1および約5の間にある場合、リラキシン活性を有すると考えられてもよい。その代わりに、本発明の融合ポリペプチドは、基準となるリラキシンタンパク質の活性に対する前記融合ポリペプチドの活性の比が、約10-5および約1の間、約10-4および約1の間、約10-3および約1の間、約10-2および約1の間、約1/50および約1の間、約1/20および約1の間、約1/15および約1の間、約1/10および約1の間、約1/5および約1の間である場合、リラキシン活性を有すると考えられてもよい。
【0035】
ある実施形態では、基準となるリラキシンタンパク質のリラキシン活性に対する本発明の融合ポリペプチドのリラキシン活性の比は、約10-5および約105の間である。
【0036】
いくつかの実施形態では、基準となるリラキシンタンパク質の活性に対する本発明の融合ポリペプチドの活性の比は、約1および約100の間、たとえば約1および約50の間、約1および約20の間または約1および約15の間または約1および約10の間または約1および約5の間である。
【0037】
他の実施形態では、基準となるリラキシンタンパク質の活性に対する本発明の融合ポリペプチドの活性の比は、約10-2および約1の間または約1/50および約1の間、たとえば約1/20および約1の間、約1/15および約1の間、約1/10および約1の間、もしくは約1/5および約1の間である。
【0038】
さらに他の実施形態では、基準となるリラキシンタンパク質の活性に対する本発明の融合ポリペプチドの活性の比は、約1である。
【0039】
リラキシン活性は、EC50値として決定されてもよい。本明細書において使用されるように、用語「EC50」(半有効濃度)は、ベースラインおよび特定の暴露時間の後の最大値の間の中間の応答を誘発する治療用化合物の有効な濃度を指す。
【0040】
発明者らは、本発明の融合ポリペプチドが、R&D systemsの組換えリラキシンタンパク質(カタログ番号6586-RN-025)などのような成熟リラキシン2ポリペプチドのリラキシン2 A鎖およびリラキシン2 B鎖のアレイを有するリラキシンタンパク質(すなわちA鎖およびB鎖の間にリンカーを有していない)のように、リラキシン活性を有することを示した。実験の部で示されるように、R&D systemsの組換えリラキシンタンパク質(カタログ番号6586-RN-025)について決定された平均EC50値に対する本発明のいくつかの融合ポリペプチドについて決定された平均EC50値の比は、約1および約100の間である。したがって、本発明の融合ポリペプチドは、基準となるリラキシンタンパク質のEC50値と同じまたは実質的に同じであるEC50値を有していてもよい。その代わりに、融合ポリペプチドは、基準となるリラキシンタンパク質のEC50値よりも高いEC50値を有していてもよい。その代わりに、融合ポリペプチドは、基準となるリラキシンタンパク質のEC50値未満であるEC50値を有していてもよい。
【0041】
本発明の融合ポリペプチドは、基準となるリラキシンタンパク質のEC50に対する前記融合ポリペプチドのEC50の比が、1および約105の間、1および約104の間、約1および約103の間、約1および約100の間、約1および約50の間、約1および約20の間、約1および約15の間、約1および約10の間、または約1および約5の間であるEC50値を有していてもよい。その代わりに、本発明の融合ポリペプチドは、基準となるリラキシンタンパク質のEC50に対する前記融合ポリペプチドのEC50の比が、約10-5および約1の間、約10-4および約1の間、約10-3および約1の間、約1/100および約1の間、約1/50および約1の間、約1/20および約1の間、約1/15および約1の間、約1/10および約1の間、約1/5および約1の間であるEC50値を有していてもよい。ある実施形態では、基準となるリラキシンタンパク質のEC50値に対する本発明の融合ポリペプチドのEC50値の比は、約10-5および約105の間である。
【0042】
いくつかの実施形態では、リラキシン融合ポリペプチドは、約1.10-11および約1.10-7Mの間、たとえば約1.10-10および約1.10-8Mの間または約1.10-10および約8.10-9Mの間または約1.10-10および約5.10-9Mの間または約1.10-10および約1.10-9Mの間のEC50値を有する。
【0043】
融合ポリペプチドのリンカーポリペプチドLは、長さが少なくとも15のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドLは、長さが少なくとも16、17、18、19、または20のアミノ酸残基である。リンカーポリペプチドLは、長さが15~30のアミノ酸残基とすることができる、たとえば、リンカーポリペプチドLは、長さが15~25のアミノ酸残基または長さが15~20のアミノ酸残基とすることができる。特定の実施形態では、リンカーポリペプチドLは、102アミノ酸のアミノ酸配列長を有していない。別の実施形態では、前記リンカーポリペプチドLは、100未満、90未満、80未満、70未満、60未満、または50未満のアミノ酸のアミノ酸配列長を有する。
【0044】
リンカーポリペプチドLは、任意のアミノ酸から構成することができる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドLは、Chen et al.,2013において記載されるものなどのように、グリシン残基およびセリン残基を含む。さらなる実施形態では、リンカーポリペプチドLは、モチーフ(GGGGS)n(配列番号58のリピート)を含み、nは、1および5の間であってもよい、たとえば、nは、4である。他の実施形態では、リンカーポリペプチドLは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号57)を含むまたはそれからなる。代わりとなる実施形態では、リンカーポリペプチドLは、配列A(EAAAK)nA(配列番号59)を含みまたはそれからなり、nは、Chen et al.,2013において記載されるように、5である。
【0045】
リンカーポリペプチドLは、リラキシンCペプチドと、特に、アミノ酸配列 配列番号48のヒトリラキシン2 Cペプチドと異なるアミノ酸配列を有していてもよい。特に、リンカーポリペプチドLは、アミノ酸配列 配列番号48のヒトリラキシン2 CペプチドなどのようなリラキシンCペプチドと80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満の同一性を有していてもよい。
【0046】
リンカーポリペプチドLは、人工ポリペプチド、たとえば、化学的ペプチド合成によって合成されるポリペプチドであってもよい。
【0047】
本発明の融合ポリペプチドはまた、半減期を延長する成分をも含む。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、対応する基準となるリラキシンと比較して、長期の半減期を有する。長期の半減期は、安全で好都合な投薬スケジュールに従って治療用タンパク質が投与されるのを可能にするので、たとえば、より少ない用量をより低い頻度で投与することができるので、有利であることが認識されるであろう。さらに、より少ない用量の達成は、改善された安全性プロファイルの提供および/またはインビボにおける多数の作用メカニズムの活性化などのような、さらなる利点をもたらしてもよい。
【0048】
本発明者らは、半減期を延長する成分を有する本発明の融合ポリペプチドが、リラキシン活性を持ち、それと同時に、基準となるリラキシンと比較して、長期の半減期を有することを示した。たとえば、本発明者らは、本発明のいくつかの実施形態による半減期を延長する成分を有する融合ポリペプチドが、ラットおよびマウスのモデルにおいて少なくとも2日間の半減期を有することを示した(実施例5および6を参照)。比較すると、IV投与後のヒトリラキシン2の半減期は、約0.09+/-0.04時間、すなわちヒトでは5.4+/-2.4分間である(Chen et al.1993)。
【0049】
本明細書において使用されるように、用語「半減期」は、血漿中の融合ポリペプチドの濃度がその最初のレベルの50%まで下がるのにかかる時間を指すために使用される。血漿中のポリペプチドの「半減期」は、ポリペプチドのサイズ、その安定性、そのクリアランス速度、代謝回転速度、インビボにおけるタンパク質分解、身体または特定の組織による吸収速度などのような様々な因子に依存してもよい。タンパク質の半減期を決定する方法は、当技術分野において知られており、下記の実施例において記載される。
【0050】
半減期を延長する成分は、融合ポリペプチドのN-末端またはC-末端に付けられてもよい。いくつかの実施形態では、半減期を延長する成分は、融合ポリペプチドのN-末端に付けられる。他の実施形態では、半減期を延長する成分は、融合ポリペプチドのC-末端に付けられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、半減期を延長する成分は、タンパク質性の半減期を延長する成分である。タンパク質性の半減期の延長する成分は、免疫グロブリンのFc領域、アルブミン結合ドメイン、血清アルブミン、およびトランスフェリンからなる群から選択されてもよい。他の実施形態では、半減期を延長する成分は、Fc領域である。
【0052】
さらなる実施形態では、半減期を延長する成分は、残りの本発明の融合ポリペプチドに共有結合でまたは非共有結合で付けられてもよいポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖などのような、タンパク質でもペプチドでもない化学成分である。ペグ化は、前記PEGポリマー鎖を分子に付けるプロセスであり、当技術分野においてよく知られている方法に従って実行することができる。
【0053】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を定義し、これは、完全な抗体のパパイン消化によって生成されてもよい。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、任意選択でCH4ドメインを含む。
【0054】
Fc領域は、任意の種の免疫グロブリンに由来してもよい。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。さらなる実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG免疫グロブリンに由来する。特定の実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1免疫グロブリンに由来する。他の実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG4免疫グロブリンに由来する。
【0055】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、天然のFc配列、すなわち、自然界で見つけられるアミノ酸配列と同一なアミノ酸配列を含む。代わりとなる実施形態では、Fc領域は、変異Fc配列、すなわち、少なくとも1つのアミノ酸修飾によってそのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む。Fc領域は、たとえば、FcRnに対するIgG分子の親和性を増加させるために修飾されてもよい。国際公開第02/060919号パンフレットは、1つ以上のアミノ酸修飾を有するFc領域を含む修飾免疫グロブリンを開示し、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。IgG4免疫グロブリンに由来するFc領域については、Fc領域はまた、たとえば、IgG4アミノ酸配列中にS228P修飾を導入することによって、Fabアーム交換(IgG4抗体が分子の半分を交換することができるダイナミックなプロセス)を低下させるために修飾されてもよく、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。1つ以上のアミノ酸修飾を有するFc領域を作製する方法は、当技術分野において知られている。
【0056】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1配列、特に、以下のアミノ酸修飾の組み合わせ:
(i) Fc-YTE(M252Y,S254T,T256E);
(ii) Fc-FQQ(L234F,L235Q,K322Q);
(iii) Fc-TM(L234F,L235E,P331S);
(iv) Fc-YTE-FQQ(M252Y,S254T,T256E,L234F,L235Q,K322Q);
(v) Fc-YTE-TM((M252Y,S254T,T256E,L234F,L235E,P331S),
(vi) Fc-TM-ΔTHT(L234F,L235E,P331S,D221G,K222G,T223G,H224S,T225A),
(vii) Fc-TM-ΔTHTΔK(L234F,L235E,P331S,D221G,K222G,T223G,H224S,T225A,ΔK447),
の少なくとも1つを含むヒトIgG配列を含み、
アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0057】
さらなる実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG4配列を含む。特に、Fc領域は、セリンが228位でプロリンに修飾されている(「S228P」)ヒトIgG4配列を含み、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものであり、前記修飾Fc領域は、これによって「Fc-G4P」と略される。さらなる実施形態では、IgG4に由来するFc領域は、S228P修飾および以下のアミノ酸修飾の組み合わせ:
(i) Fc-YTE(M252Y,S254T,T256E);
(ii) Fc-FQQ(L234F,L235Q,K322Q);
(iii) Fc-TM(L234F,L235E,P331S);
(iv) Fc-YTE-FQQ(M252Y,S254T,T256E,L234F,L235Q,K322Q);
(v) Fc-YTE-TM((M252Y,S254T,T256E,L234F,L235E,P331S),
(vi) Fc-TM-ΔTHT(L234F,L235E,P331S,D221G,K222G,T223G,H224S,T225A),
(vii) Fc-TM-ΔTHTΔK(L234F,L235E,P331S,D221G,K222G,T223G,H224S,T225A,ΔK447),
の少なくとも1つを含み、
アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0058】
用語「KabatのEUのインデックス」は、Kabat et al,Sequences of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)において記載されるヒトIgGl EU抗体のナンバリング方式を指す。本出願で参照されるアミノ酸の位置はすべて、EUインデックスの位置を指す。たとえば、「L234」および「EU L234」は共に、Kabatに示されるEUインデックスに従って234位のアミノ酸ロイシンを指す。
【0059】
本発明の一態様によれば、野生型免疫グロブリン定常ドメインに比べて1つ以上のアミノ酸修飾を含む免疫グロブリン定常ドメインを含む修飾免疫グロブリンであって、1つ以上のアミノ酸修飾は、234、235、および331位の1つ以上のところにあり、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである、修飾免疫グロブリンが提供される。別の一態様によれば、野生型免疫グロブリン定常ドメインに比べて1つ以上のアミノ酸修飾を含む免疫グロブリン定常ドメインを含む修飾免疫グロブリンであって、1つ以上のアミノ酸修飾は、234、235、および322位の1つ以上のところにあり、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである、修飾免疫グロブリンが提供される。本発明の別の態様によれば、野生型免疫グロブリン定常ドメインに比べて1つ以上のアミノ酸修飾を含む免疫グロブリン定常ドメインを含む修飾免疫グロブリンであって、1つ以上のアミノ酸修飾は、221、222、223、224、225、および447位の1つ以上のところにあり、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである、修飾免疫グロブリンが提供される。本発明のさらなる態様によれば、野生型免疫グロブリン定常ドメインに比べて1つ以上のアミノ酸修飾を含む免疫グロブリン定常ドメインを含む修飾免疫グロブリンであって、1つ以上のアミノ酸修飾は、221、222、223、224、225、234、235、331、および447位の1つ以上のところにあり、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである、修飾免疫グロブリンが提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾は、Fc領域のエフェクター機能を消失させるならびに/または細胞傷害、たとえば抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)を低下させるもしくは回避する。
【0060】
本発明の一態様によれば、野生型免疫グロブリン定常ドメインに比べて1つ以上のアミノ酸修飾を含む免疫グロブリン定常ドメインを含む修飾免疫グロブリンであって、1つ以上のアミノ酸修飾は、252、254、および256位の1つ以上のところにあり、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである、修飾免疫グロブリンが提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾は、融合ポリペプチドの半減期を増加させる。
【0061】
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。
【0062】
他の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾は、アミノ酸欠失である。
【0063】
さらなる実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、234位でのフェニルアラニンとの置換、235位でのグルタミン酸との置換、および/または331位でのセリンとの置換の1つ以上を含む。特定の実施形態では、修飾免疫グロブリンは、234位でのフェニルアラニン、235位でのグルタミン酸、および331位でのセリンのアミノ酸置換を含む。ここで言及されるアミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0064】
さらなる実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、234位でのフェニルアラニンとの置換、235位でのグルタミンとの置換、および/または322位でのグルタミンとの置換の1つ以上を含む。特定の実施形態では、修飾免疫グロブリンは、234位でのフェニルアラニン、235位でのグルタミン、および322位でのグルタミンのアミノ酸置換を含む。ここで言及されるアミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0065】
他の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、252位でのチロシンとの置換、254位でのトレオニンとの置換、および/または256位でのグルタミン酸との置換の1つ以上を含む。特定の実施形態では、修飾免疫グロブリンは、252位でのチロシン、254位でのトレオニン、および256位でのグルタミン酸のアミノ酸置換を含む。ここで言及されるアミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0066】
さらに他の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾は、221位でのグリシンとの置換、222位でのグリシンとの置換、223位でのグリシンとの置換、224位でのセリンとの置換、225位でのアラニンとの置換、および/または447位でのリシンの欠失の1つ以上を含み、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0067】
さらに他の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾は、221位でのグリシンとの置換、222位でのグリシンとの置換、223位でのグリシンとの置換、224位でのセリンとの置換、225位でのアラニンとの置換、234位でのフェニルアラニンとの置換、235位でのグルタミン酸との置換、331位でのセリンとの置換、および/または447位でのリシンの欠失の1つ以上を含み、アミノ酸のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。
【0068】
修飾免疫グロブリンが、本明細書において詳述される他のアミノ酸修飾などのような他のアミノ酸修飾またはその任意の組み合わせをさらに含んでいてもよいことが理解されるであろう。
【0069】
融合ポリペプチドに半減期を延長する成分を付ける方法は、当技術分野において知られている。たとえば、半減期を延長する成分は、化学的コンジュゲーションまたは組換え技術によって付けられてもよい。半減期を延長する成分は、融合ポリペプチドに直接またはコネクターポリペプチドを通して付けられてもよい。コネクターポリペプチドの使用は、融合ポリペプチドが、Fc領域などのようなタンパク質性の半減期を延長する成分を含む場合、特に適切であってもよい。
【0070】
コネクターポリペプチドは、任意の適した長さをしていてもよい。たとえば、長さが約1および100アミノ酸の間、長さが約1および50アミノ酸の間、長さが約1および25アミノ酸の間、長さが約1および15アミノ酸の間、または長さが約4および15アミノ酸の間であってもよい。いくつかの実施形態では、コネクターは、長さが4および15アミノ酸の間である。たとえば、コネクターは、長さが4、5、または15アミノ酸とすることができる。他の実施形態では、コネクターは、長さが15および25アミノ酸の間である、たとえば、コネクターは、長さが15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸とすることができる。
【0071】
コネクターポリペプチドは、任意のアミノ酸を含んでいてもよい。本発明に適したコネクターポリペプチドは、Chen et al.,2013において記載されるもののいずれかを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、コネクターは、Chen et al.,2013において記載されるものなどのように、グリシン残基およびセリン残基を含む。さらなる実施形態では、コネクターポリペプチドは、モチーフGGGGS(配列番号58)の1つ以上のリピートを含む。たとえば、コネクターポリペプチドは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号57)を含んでいてもよい。さらなる実施形態では、コネクターポリペプチドは、C-および/またはN-末端部にプロリン残基を有する。他の実施形態では、コネクターポリペプチドは、C-および/またはN-末端部に1つ以上の、たとえば1~3のアラニン残基を有する。いくつかの実施形態では、コネクターポリペプチドは、融合ポリペプチドのリンカーポリペプチドLと同じ配列を含むまたはそれからなる。
【0072】
コネクターの例は、GGSP(配列番号56)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号57)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号69)、AAAGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSA(配列番号70)を含む。
【0073】
本発明の融合ポリペプチドは、単鎖リラキシン融合ポリペプチドであってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、構造
Fc - Cn - A - L - BまたはFc - Cn - B - L - A
を有し、
Aは、リラキシンA鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;Bは、リラキシンB鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;Lは、少なくとも15のアミノ酸を含むリンカーポリペプチドであり;Cnは、コネクターポリペプチドであり;Fcは、免疫グロブリン重鎖のFc領域である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、構造
A - L - B - Cn - FcまたはB - L - A - Cn - Fc
を有し、
Aは、リラキシンA鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;Bは、リラキシンB鎖ポリペプチドまたはその変異体であり;Lは、少なくとも15のアミノ酸を含むリンカーポリペプチドであり;Cnは、コネクターポリペプチドであり;Fcは、免疫グロブリン重鎖のFc領域である。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、表1および
図1~19において示される1つ以上の融合ポリペプチドである。
図2~19において、リンカーLは、二重の下線によって示され、コネクターCnは、一重の下線によって示され、ヌクレオチドおよびアミノ酸の置換は、太字および太線の下線によって示される。
【0077】
【0078】
本発明の融合ポリペプチドは、当技術分野において知られている任意の方法によって生成されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、宿主細胞における、融合ポリペプチドをコードする核酸分子の組換え発現によって生成される。
【0079】
したがって、本発明は、本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸分子、たとえばDNA分子ならびに本発明の核酸分子を含むベクターならびにそのような核酸分子およびベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0080】
いくつかの実施形態による本発明の核酸分子の配列は、
図2~19および表1において述べられる。
【0081】
当業者らに知られている方法は、本発明の核酸分子を含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。適したベクターは、たとえばプラスミド、ファージミド、ファージ、またはウイルスベクターを含む。
【0082】
本発明の核酸分子を含有するベクターは、従来の技術によって宿主細胞に移されてもよい。適した宿主細胞は、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞またはCHO細胞などのような哺乳動物細胞である。
【0083】
トランスフェクトされた細胞は、本発明の融合ポリペプチドを産生するために、従来の技術によって培養されてもよい。
【0084】
一旦、本発明の融合ポリペプチドが、たとえば組換え発現によって産生されたら、それは、当技術分野において知られている任意の方法によって精製されてもよい。例示的なタンパク質精製技術は、クロマトグラフィー(たとえばイオン交換、アフィニティー、および/またはサイジングカラムクロマトグラフィー(sizing column chromatography))、遠心分離法、ならびに溶解度差(differential solubility)を含む。本発明は、任意選択で少なくとも1つの精製ステップによって、細胞培養物から分離された単離融合ポリペプチドを提供する。
【0085】
本発明の融合ポリペプチドは、医薬組成物において提供されてもよい。
【0086】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を含んでいてもよい。薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野において知られており、たとえば、その全体が本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences(by Joseph P.Remington,18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA)を参照されたい。
【0087】
本発明は、疾患、障害、または感染に関連する症状を予防する、治療する、または寛解させるために、動物、特に哺乳動物、たとえばヒトに本発明の融合ポリペプチドを投与するステップを含む療法を包含する。
【0088】
したがって、本発明の融合ポリペプチドまたは医薬組成物は、たとえば、疾患または障害を治療するために、療法において使用されてもよい。対象またはその必要がある患者に治療有効量の本発明の融合ポリペプチドを投与するステップを含む、疾患または障害を治療するための方法もまた、提供される。使用または方法は、野生型リラキシン分子の治療的に有効な投薬スケジュールよりも、本発明の融合ポリペプチドの服用の頻度が低い治療的に有効なスケジュールを行うステップを含んでいてもよい。
【0089】
本発明の融合ポリペプチドは、心臓血管系疾患の治療において、たとえば心不全の治療に使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0090】
本明細書において使用されるように、用語「心不全」は、急性心不全、慢性心不全(CHF)、および急性非代償性心不全(ADHF)を含む。用語「心不全」はまた、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が軽度低下した心不全、または駆出率が低下した心不全(HFrEF)などのような、より詳細な診断を含んでいてもよい。
【0091】
本発明の融合ポリペプチドはまた、腎疾患、肺疾患、ならびに線維性の障害、たとえば、腎臓、心臓、肺、および肝臓の線維性の障害の治療においてならびに創傷治癒において使用されてもよい(Sherwood,2004)。本発明の融合ポリペプチドはまた、糖尿病患者におけるインスリン抵抗性の回復において使用されてもよい(Bonner et al.,2013)。
【0092】
本発明の融合ポリペプチドおよび/または医薬組成物は、対象または患者への非経口投与に適している。いくつかの実施形態では、対象または患者は、哺乳動物、特にヒトである。
【0093】
野生型ヒトリラキシン2は、インビボにおいて数分間の半減期を有する。結果として、それは、入院患者において連続静脈内注入によって投与されなければならず、血圧低下を含む重度の副作用を引き起こす。対照的に、本発明の融合ポリペプチドおよび/または医薬組成物の実施形態は、対象または患者に、静脈内、皮下、または筋肉内注射によってなどのように、注射によって投与されてもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドおよび/または医薬組成物は、皮下注射によって投与される。皮下注射によってなどのような注射による投与は、対象または患者にとってより快適であるという長所および病院の外で対象または患者に投与する自由度を提供する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドまたは医薬組成物は、自己投与によって投与される。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、野生型リラキシンと比較して、半減期の増加を有し、これは、モル濃度に基づいて、より低い全体的な暴露を可能にする。たとえば、本発明の融合ポリペプチドは、野生型リラキシンよりも低い頻度で投与されてもよく、したがって、より好都合な投薬スケジュールを提供する。
【0095】
本発明は、本発明の医薬組成物を含むキットを提供する。キットは、本発明の医薬組成物および説明書を含有するパッケージを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、単一用量バイアルまたは容器施栓系(たとえば、あらかじめ充填されたシリンジ)において製剤される。任意選択で、そのような容器に、医薬品または生物学的製剤の製造、使用、または販売を規制する、政府機関によって指示された形態をした通知を添えることができ、この通知は、ヒト投与に対する、製造、使用、または販売についての機関による承認を表わす。
【0096】
本明細書において使用されるように、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つのまたは1つを超える(たとえば少なくとも1つの)、冠詞の文法上の目的語を指してもよい。
【0097】
「約」は、一般に、測定法の性質または精度を考慮すれば、測定される数量について許容される程度の誤差を意味してもよい。誤差の例示的な程度は、与えられた値または値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0098】
1つ以上の特徴を「含む」として本明細書において記載される実施形態はまた、そのような特徴「からなる」対応する実施形態の開示と考えられてもよい。
【0099】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される」は、動物における、より詳細にはヒトにおける使用について、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているまたは米国の薬局方、欧州の薬局方、もしくは他の一般に認識されている薬局方に載っていることを意味する。
【0100】
濃度、量、容量、パーセンテージ、および他の数値は、範囲形式で本明細書において示されてもよい。そのような範囲形式は、単に便宜および簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に詳述される数値だけでなく、あたかもそれぞれの数値および部分範囲が明示的に詳述されるかのように、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲のすべてを含むことが柔軟に解釈されるべきであることもまた、理解されるべきである。
【0101】
上記の実施形態は、例証となる実施例として理解されるべきである。さらなる実施形態が、想定される。任意の1つの実施形態に関して記載されるいかなる特徴も、単独でまたは記載される他の特徴と組み合わせて使用されてもよく、また、任意の他の実施形態または任意の他の実施形態の任意の組み合わせの1つ以上の特徴と組み合わせて使用されてもよいことが理解されるべきである。さらに、上記に記載されない等価物および変更もまた、添付の請求項において定義される本発明の範囲から逸脱することなく用いられてもよい。
【0102】
本開示に関連して、本明細書において記載される融合ポリペプチドおよび方法の他の例および変形は、当業者に明らかになるであろう。他の例および変形は、添付の請求項において述べられるように、本開示の範囲内にある。
【0103】
本明細書において引用されるすべての文献は、引用される文献において示されるデータ、表、図、および原文をすべて含め、それぞれ、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
【実施例0104】
実施例1:構築物
いくつかのDNA構築物を、様々なIgG1-Fc/コネクター/リラキシン2 A鎖/リンカー/リラキシン2 B鎖融合ポリペプチドを発現させるために作った。これらの構築物において、コネクターは、長さを4アミノ酸(GGSP)または15アミノ酸(GGGGSGGGGSGGGGS)のいずれかとし、リンカーは、長さを15アミノ酸(GGGGSGGGGSGGGGS)とした。Fc成分は、天然の野生型ヒトIgG1 Fc成分(「hFc-G1」と略される)または以下の突然変異の1つまたは数個の組み合わせを含むヒトIgG1 Fc成分の突然変異形態とした:
(i) M252Y、S254T、T256E(「YTE」と略される)。YTE突然変異を含むFc成分は、「hFc-G1-YTE」と略される。
(ii) L234F、L235Q、K322Q(「FQQ」と略される)。FQQ突然変異を含むFc成分は、「hFc-G1-FQQ」と略される。YTEおよびFQQ突然変異の両方を含むFc成分は、「hFc-G1-YTE-FQQ」と略される。
(iii) L234F、L235E、P331S(「TM」と略される)。TM突然変異を含むFc成分は、「hFc-G1-TM」と略される。YTEおよびTM突然変異の両方を含むFc成分は、「hFc-G1-YTE-TM」と略される。
【0105】
これらの構築物において、A鎖は、ヒトリラキシン2の天然の野生型A鎖(配列番号42)とし、B鎖は、第1のアミノ酸(D)を欠くヒトリラキシン2の天然の野生型B鎖(配列番号44)に対応するB鎖変異体(配列番号46)とした。
【0106】
天然のヒトIgG-1 Fc配列を有する融合ポリペプチドについてのDNAは、GeneArt(登録商標)(Regensburg、Germany)によって合成し、プラスミドDNAとして供給した。ヒトIgG1 Fc遺伝子配列を、XbaIおよびNotIによる制限酵素消化によってGeneArt(登録商標)プラスミドから取り出し、XbaIおよびNotIによる同じ制限消化を使用して、pHOEベクターの中にクローニングした。pHOEベクターは、ヒト抗体IgG1の重鎖を発現するように設計した。このクローニング戦略により、ベクター抗体配列はすべて除去したが、シグナルペプチドおよびFc配列の間の介在配列は保存した。
【0107】
必要とされるヒトIgG1 Fc突然変異(YTE、FQQ、およびTM)は、ヒトIgG1 Fc内に位置する300bp KasI制限断片内に存在する。適切な突然変異を有するKasI断片は、GeneBlockとしてIDT(Coralville、IA)によって合成した。天然のFc融合物を有するヒトリラキシン-2プラスミドをKasIにより消化し、KasI GeneBlockを、シームレスクローニングのためにNEBuilder HiFi Assembly Master Mix(NEB# E2621S)を使用してpHOEベクターにクローニングした。
【0108】
Fc-hRLX2-4-15AAおよびFc-hRLX2-15-15AA
Fc-hRLX2-4-15AAおよびFc-hRLX2-15-15AA遺伝子配列は、GeneArt(登録商標)(Regensburg、Germany)によって合成し、プラスミドDNAとして供給した。遺伝子配列を、XbaIおよびNotIによる制限酵素消化によってGeneArt(登録商標)プラスミドから取り出し、同じ制限消化部位を使用して、pHOEベクターの中に別々にクローニングし、それぞれpOE-Fc-hRLX2-4-15AAプラスミドおよびpOE-Fc-hRLX2-15-15AAプラスミドがもたらされた。pHOEベクターは、ヒトIgG1の重鎖部分を発現するように使用する。このクローニング戦略により、ベクター抗体配列はすべて除去したが、シグナルペプチドおよびFc配列の間の介在配列は保存した。
【0109】
Fc-YTE-hRLX2-4-15AAおよびFc-YTE-hRLX2-15-15AA
YTE突然変異(M252Y/S254T/T256E)は、ヒトIgG1 Fc中に位置する300bp KasI断片内に存在する。適切な突然変異を有するKasI断片は、GeneBlockとしてIDT(Coralville、IA)によって合成した。pOE-Fc-hRLX2-4-15AAプラスミドおよびpOE-Fc-hRLX2-15-15AAプラスミドをKasIにより別々に消化し、KasI GeneBlockを、シームレスクローニングのためにNEBuilder HiFi Assembly Master Mix(NEB# E2621S)を使用して上記のプラスミドの中にクローニングした。
【0110】
Fc-YTE-TM-hRLX2-4-15AAおよびFc-YTE-TM-hRLX2-15-15AA
YTE-TM突然変異(M252Y/S254T/T256E、L234F/L235E/P331S)は、ヒトIgG1 Fc中に位置する300bp KasI断片内に存在する。適切な突然変異を有するKasI断片は、GeneBlockとしてIDT(Coralville、IA)によって合成した。pOE-Fc-hRLX2-4-15AAプラスミドおよびpOE-Fc-hRLX2-15-15AAプラスミドをKasIにより別々に消化し、KasI GeneBlockを、シームレスクローニングのためにNEBuilder HiFi Assembly Master Mix(NEB# E2621S)を使用して空のベクターの中にクローニングした。3’KasI部位は、これらのプラスミドにおいて破壊される。
【0111】
Fc-YTE-FQQ-hRLX2-4-15AAおよびFc-YTE-FQQ-hRLX2-15-15AA
YTE-FQQ突然変異(M252Y/S254T/T256E、L234F/L235Q/K322Q)は、ヒトIgG1 Fc中に位置する300bp KasI断片内に存在する。適切な突然変異を有するKasI断片は、GeneBlockとしてIDT(登録商標)(Coralville、IA)によって合成した。pOE-Fc-hRLX2-4-15AAプラスミドおよびpOE-Fc-hRLX2-15-15AAプラスミドをKasIにより別々に消化し、KasI GeneBlockを、シームレスクローニングのためにNEBuilder HiFi Assembly Master Mix(NEB# E2621S)を使用して空のベクターの中にクローニングした。
【0112】
他のいくつかのDNA構築物は、長さが15アミノ酸よりも長いコネクターを有するFc融合ポリペプチドおよび融合タンパク質のN-またはC-末端のいずれかに位置するFc部を含み、かつリラキシン鎖について考え得る2つの方向(A-L-BまたはB-L-A)を有するリラキシン2融合タンパク質としてリラキシン2を発現するために作った。
【0113】
これらの他の構築物において、コネクターは、21アミノ酸(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS)または24アミノ酸(AAAGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSA)のいずれかとし、リンカーは、長さを15アミノ酸(GGGGSGGGGSGGGGS)とした。
【0114】
Fc成分は、以下の突然変異を含む、「hFc-G1-TM-ΔTHT-ΔK」と略されるヒトIgG1 Fc成分の突然変異形態とした:
(i) L234F、L235E、P331S(「TM」と略される)、
(ii) D221G、K222G、T223G、H224S、T225A(「ΔTHT」と略される)、
(iii) K447の欠失(「ΔK」と略される)。
【0115】
これらの他の構築物において、A鎖は、ヒトリラキシン2の天然の野生型A鎖(配列番号42)とし、B鎖は、第1のアミノ酸(D)を欠くヒトリラキシン2の天然の野生型B鎖(配列番号44)に対応するB鎖変異体(配列番号46)とした。
【0116】
構築物Fc-TMΔTHTΔK_hRLX2_21-15AA(
図1の構築物15)およびhRLX2-Fc-TMΔTHTΔK_15-24AA(
図1の構築物17)についてのDNA挿入物は、
図1の構築物8(Fc_hRLX2_15-15AA)のDNA分子のPCR増幅によって生成した。構築物(Fc-TMΔTHTΔK_hRLX2(BA)_21-15AA(
図1の構築物16)およびhRLX2(BA)-Fc-TMΔTHTΔK_15-24AA(
図1の構築物18)についてのDNA挿入物は、GenScript(登録商標)(Piscataway、USA)によって合成し、次いで、制限酵素による消化の前にPCRによって増幅した。構築物15および16についてのPCRアンプリコンは、制限酵素BamHIおよびEcoRIによって消化した。構築物17および18についてのPCRアンプリコンは、制限酵素NgoMIVおよびNotIによって消化した。消化した挿入物は、プラスミドpepFc(pOEに由来)の中にライゲーションした。プラスミドは、FcのC-末端での融合のためにBamHIおよびEcoRIによりまたはN-末端での融合のためにNgoMIVおよびNotIにより消化した。Quick ligation kit(NEB)は、プラスミドの中にDNA挿入物をライゲーションするために使用した。
【0117】
リラキシンFc融合物は、Daramola,et al.,2014において記載されるように、標準的な方法によってCHO細胞において発現させた。融合タンパク質は、MabSelectSuReカラムを有するアフィニティークロマトグラフィーによってAKTAxpressシステムを使用して上清から精製した。カラムは、1×DPBS(Gibco、Invitrogen.Cat No:14190-094))において平衡化した。上清をロードした後、カラムに特異的に結合しない分子を除去するために、カラムを1×DPBSにより洗浄した。Fc融合物の溶出は、pH2.7の0.1Mグリシンの溶液を使用して実現した。精製タンパク質は、1×DPBSにバッファー交換した。タンパク濃度は、280nmの吸収を使用して決定した。次いで、精製タンパク質は、純度および単量体含有量を判断するために、SDS-PAGEおよびSEC-HPLC(TSKgel G3000SWXLカラム)によって分析した。
【0118】
図1は、本発明のFcヒトリラキシン2融合ポリペプチドのうちのいくつかについての略図および略称を提供する。
【0119】
実施例2:Fc-リラキシン-2融合ポリペプチドのインビトロにおける活性(インビトロにおけるcAMPアッセイ)
インビトロにおける細胞ベースのアッセイは、実施例1において生成したリラキシン2融合ポリペプチドの活性を測定するために使用した。アッセイにより、融合ポリペプチド(Fc-hRLX2-4-15AAおよびFc-hRLX2-15-15AA)がcAMP産生を刺激する能力を測定した。
【0120】
DiscoverXのHitHunter(登録商標)cAMPアッセイ(カタログ番号90-0075、Fremont、CA)は、リラキシン2融合ポリペプチドによるリガンド刺激の後に産生されるcAMPを測定するために使用した。アッセイは、メーカーのプロトコールに基づいて実行した。手短に言えば、RXFP1発現細胞株、CHO-K1 RXFP1 Gs(DiscoverXカタログ番号95-0127C2、Fremont、CA)由来の細胞を、MultiDrop Combiディスペンサー(Thermo Scientific、Waltham、MA)を使用して1%抗生物質、0.8mg/mlジェネテシン、および10%ウシ胎児血清を補足した100μL/ウェルのF12K培地(Gibco、Cat#21127022)中に20,000細胞/ウェルで接種し、5% CO2インキュベーターにおいて37℃で一晩付着させた。インキュベーション後、プレートを100μL/ウェルのF12K無血清培地により洗浄した。洗浄培地を除去し、プレートに20μL/F12K無血清培地を追加して、いつでもアッセイができるようにした。サンプル調製物を試験するために、別々の96U字底プレートにおいて、3倍希釈液のリラキシン2融合ポリペプチドおよびポジティブコントロールとしての組換えヒトリラキシン-2(R&D systems、カタログ番号6586-RN-025)を、反復実験において作製した。希釈し、滴定したサンプルプレートから、それぞれのウェルの10μLをアッセイプレートの中に移し、30分間37℃でインキュベートした。インキュベーション後、10μL/ウェルの抗体試薬(HitHunter(登録商標)キットの)を追加し、続いて、40μL/ウェルのcAMP working detection solution(HitHunter(登録商標)キットにおいて指示されるように作製)を直ちに追加し、1時間、暗中、室温でインキュベートした。次に、40μLのcAMP solution A(HitHunter(登録商標)キットの)を追加した。アッセイプレートを暗中、室温で、さらに3時間インキュベートした。アッセイプレートは、0.1~1秒/ウェルで標準的な発光プレート読み取り装置(EnVision、PerkinElmer)で読み取った。データ分析は、統計分析ソフトウェア(GraphPad Prism、V6)を使用して実行した。
【0121】
結果および結論
試験した構築物の生物学的活性を、表2および
図16(1回の実験)および17(繰り返しの実験)において提供する。
【0122】
数回のアッセイの組換えヒトリラキシン-2および融合ポリペプチドの両方についての平均EC50を表2に要約した。
【0123】
【0124】
これらの結果は、本発明のリラキシン2融合ポリペプチドが、インビトロにおける細胞ベースのアッセイを使用するとわかるように、生物学的に活性であることを示す。
【0125】
インビトロにおける細胞ベースのcAMP刺激アッセイのばらつきのために、組換えヒトリラキシン-2を、ポジティブコントロールとしてそれぞれのアッセイにおいて常に使用する。さらなる注釈として、活性比の計算は、融合物ペプチドおよび組換えヒトリラキシン-2の両方が含まれたそれぞれのアッセイについてのみ意味がある。融合ポリペプチド(EC50)の活性は、比を導き出すために、組換えヒトリラキシン-2(EC50)の活性と比較し、これは、数回の独立した繰り返しから得られる平均EC50値を前記比を決定するために使用する場合、約10または約50となる。対照的に、同じアッセイ(1回の繰り返し)内で得られるEC50値に基づいて計算すると、比は、より低く、典型的に、約10および20の間または約15となる(たとえば
図20を参照)。
【0126】
実施例3:リラキシン-2受容体に対するFc-リラキシン-2融合ポリペプチドの特異性
リラキシンファミリーペプチドは、4つのGタンパク質共役受容体(GPCR)のグループを活性化することによって、それらの生理学的効果をもたらし、これらは、それらのリガンドによって刺激する(Gs)または阻害する(Gi)ことができる。リラキシン2は、受容体RXFP1に特異的に結合する。
【0127】
RXFP1受容体に対するリラキシン2融合ポリペプチドの結合性および活性化特異性を確認するために、以下の細胞株:
・cAMP Hunter(商標)CHO-K1 RXFP2 Gs細胞株(カタログ番号95-0140C2、DiscoverX)、リガンドは、INSL3(カタログ番号4544-NS、R&D System)である
・cAMP Hunter(商標)CHO-K1 RXFP3 Gi細胞株(カタログ番号95-0102C2、DiscoverX)、リガンドは、リラキシン-3(カタログ番号TP723377、Origene)である
・cAMP Hunter(商標)CHO-K1 RXFP4 Gi細胞株(カタログ番号95-0134C2、DiscoverX)、リガンドは、INSL5(カタログ番号TP723251、Origene)である
・cAMP Hunter(商標)CHO-K1 ADCYAP1R1 Gs/Gq細胞株(カタログ番号95-0064C2、DiscoverX)、リガンドは、PACAP1-27(カタログ番号1183、R&D systems)である
をDiscoverX(Fermont、CA)から購入した。
【0128】
RXFP2細胞株は、Gs野生型GPCR RXFP2を自然に過剰発現し、アゴニスト刺激に応じた細胞内cAMPレベルの増加を検出するために設計されている。RXFP3細胞株およびRXFP4細胞株は、それぞれGi野生型GPCR RXFP3およびRXFP4を自然に過剰発現し、アンタゴニスト刺激に応じた細胞内cAMPレベルの減少を検出するために設計されている。CHO-K1 ADCYAP1R1は、無関係なGPCR過剰発現細胞株で、アッセイコントロールとして使用する。
【0129】
これらの細胞株は、DiscoverXのHitHunter(登録商標) cAMP XS+chemiluminescent detection kit(カタログ番号90-0075、Fremont、CA)によりIgG1-Fcヒトリラキシン融合ポリペプチドの活性を測定するために使用した。cAMPアッセイは、実施例2において記載されるように実行したが、細胞株RXFP3およびRXFP4は例外とし、それぞれ25μMまたは20μM フォルスコリン(カタログ番号1099、R&D systems)を、アッセイにおいて使用するリガンドがcAMP産生を阻害するので、cAMPの細胞内レベルを増加させるために、希釈プレートおよび無血清培地に追加した。実験は、少なくとも2回実行した。
【0130】
結果および結論
結果を
図22に示す。試験したリラキシン2融合ポリペプチドは、RXFP2発現細胞株において最少の活性しか有しておらず、他の関係のあるRXFP発現細胞株(RXFP3およびRXFP4)において活性でない。予想通り、ADCYAP1R1 Gs/Gq細胞株において活性は観察されなかった。
【0131】
実施例4.Fc-リラキシン-2融合ポリペプチドはTHP-1細胞においてVEGF発現を誘発する
リラキシン2融合ポリペプチドが、リラキシン2の既知の下流の標的であるVEGFの発現を誘発する能力について(Xiao et al.,2013)、アッセイした。THP-1細胞(カタログ番号TIB-202、ATCC)におけるVEGF RNAの発現は、定量リアルタイムPCRによって分析した。合計106細胞/mlを、400μl試験培地(フェノールレッド、0.5% FBS、1% Pen/Strep、および0.05mMの2-メルカプトエタノールなしのRPMI-1640)において24ウェル平底プレート(カタログ番号353226、Corning)に接種した。37℃、5%CO2での24時間のインキュベーションの後に、ヒトリラキシン-2(カタログ番号3956-RN、R&D systems)またはFc-hリラキシン-2融合ポリペプチドを37℃で2.5時間、プレート中の細胞に追加した。THP-1細胞からのRNA単離および精製は、メーカーのプロトコールに従って、QiagenのQiaShredder(カタログ番号79656、Qiagen)およびRNA Plus Mini Kit(カタログ番号74134、Qiagen)を使用して実行した。mRNA濃度は、NanoDrop(Thermofisher)によって測定し、サンプルは、同一の出発濃度(RT-PCR設定;50~20ng/μlの間の範囲)に対して標準化した。RT-PCRサンプルは、Express One-Step Superscript qRT-PCR kit(カタログ番号11791-200、Invitrogen)を使用して調製し、プライマー/プローブセットは以下のとおりとした:VEGFAヒト(Hs00900055_m1、カタログ番号4331182、ThermoFisher Scientific)およびGAPDHヒト(Hs02758991_g1、カタログ番号4331182、ThermoFisher Scientific)。RT-PCR反応は、7900HT Fast Real-Time PCR machineを使用して実行し、サイクルの設定は以下のとおりとした:cDNA合成のための15分間50℃での1サイクル、Taq活性化における20秒間95℃での1サイクル、ならびにqPCRのための1秒間95℃および20秒間60℃の2つの温度での40サイクル。VEGF mRNAレベルの相対的倍数変化は、GAPDH発現を標準化に使用して、比較Ct法によって計算した。結果は、治療なしコントロールに対する倍数変化として計算した。実験は、n>2で三通り実行した。データは、GraphPad、V6を用い、対応のある両側t検定によって分析した。
【0132】
結果および結論
図23(上)に示されるように、5ng/ml、50ng、および80ng/mlの濃度で、偽「治療なし」コントロールと比較して、試験したリラキシン2融合ポリペプチドは、THP-1細胞においてVEGF転写物を有意に刺激する。同様に、市販で入手可能な組換えヒトリラキシン2(R&D systems)もまた、0.01、0.06、および10ng/mlの濃度で、「治療なし」コントロール細胞と比較して、THP-1細胞においてVEGF転写物を有意に増加させた。ヒトリラキシン2と比較するために、Fcリラキシン2融合ポリペプチド濃度は、分子量の差(6×)およびcAMPアッセイにおいて見られた活性の低下(10~15倍)に基づいて調整した。
【0133】
図23(下)は、試験したリラキシン2融合ポリペプチドが、偽「治療なし」コントロールと比較して、THP-1細胞において、VEGF転写物を有意に刺激することを示す。
【0134】
実施例5:いくつかのFc-リラキシン2融合ポリペプチドのPKプロファイル
本発明のいくつかのリラキシン2融合ポリペプチドの薬物動態学的(PK)プロファイルをリラキシンELISAアッセイを使用して決定した。ラットインビボPKプロファイルを以下の融合ポリペプチドについて決定した:Fc_hRLX2_4-15AAおよびFc_hRLX2_15-15AA。
【0135】
SureBlue(商標) TMB Substrate(KPL、52-00-01.Ready-to-use SureBlue(商標) TMB Microwell Peroxidase Substrate)およびTMB Stop Solution(KPL、50-85-05)は、アッセイを現像するために使用した。Fc_hRLX2_4-15AAおよびFc_hRLX2_15-15AA融合ポリペプチドは、4mg/kgで静脈内(IV)または皮下(SC)ルートによって8週齢のウィスターラット(Charles River)に投与した。血液サンプルは、IVルートについては薬剤の投与の5分後、30分後、3時間後、8時間後、1日後、2日後、3日後、4日後、7日後、9日後、14日後、および21日後にならびにSCルートについては薬剤の投与の8時間後、1日後、2日後、3日後、4日後、7日後、9日後、14日後、および21日後に収集した。サンプルは、EDTAを含有するチューブの中に収集し、直ちに氷上に置いた。サンプルは、収集の30分以内に1000xgで15分間遠心分離した。小分けしたサンプルを、≦-20℃で保存し、その後ELISAによって試験した。半減期は、Fc捕捉およびリラキシン検出ELISAアッセイを使用して判断した(R&D Systems Relaxin detection ELISA kit、カタログ番号DRL200のポリクローナル抗体を使用)。
【0136】
結果および結論
図24は、ラットにおける皮下(SC)または静脈内(IV)投与後のFc_hRLX2_4-15AAのインビボにおけるPKプロファイルを示す。SC投与後、ピーク血漿濃度は、8~24時間以内に実現した。ノンコンパートメント解析から推測した平均終末相半減期は、IV用量グループについては2.46日であり、SC用量グループについては3.21日であった。
【0137】
図25は、ラットにおけるSCまたはIV投与後のFc_hRLX2_15-15AAのインビボにおけるPKプロファイルを示す。SC投与後、ピーク血漿濃度は、8~24時間以内に実現した。ノンコンパートメント解析から推測した平均終末相半減期は、IV用量グループについては3.59日であり、SC用量グループについては3.75日であった。
【0138】
比較すると、IV投与後のヒトリラキシン2の半減期は、約0.09+/-0.04時間、すなわちヒトでは5.4+/-2.4分間である(Chen et al.1993)。
【0139】
実施例6:FcRnトランスジェニックマウスにおけるPK研究
Fc融合ポリペプチド中に存在するYTE突然変異(M252Y/S254T/T256E)によって与えられる長期の半減期を、社内で生成したFcRnトランスジェニックマウスにおいて6mg/kgの用量で静脈内にまたは皮下に投与するFc-YTE-hRLX2-15-15AA、Fc-YTE-FQQ-hRLX2-15-15AA、およびFc-YTE-TM-hRLX2-15-15AA融合ポリペプチドについて実行するPKプロファイル研究によって確認する。長期の半減期は、Fc捕捉およびリラキシン検出ELISAアッセイを使用して判断した(R&D Systems Relaxin detection ELISA kit、カタログ番号DRL200のポリクローナル抗体を使用)。
【0140】
図26は、SCまたはIV投与後のFc_hRLX2_15-15AAのマウスインビボPKプロファイルを示す。SC用量グループにおける平均終末相半減期は、IV用量グループと比較して、およそ26.5%長かった。
【0141】
図27は、1mg/kg、6mg/kg、または30mg/kgの用量でのSC投与後のFc_hRLX2_15-15AAのマウスインビボPKプロファイルを示す。ピーク血清濃度は、SC投与後24~72時間の間に達した。平均終末相半減期は、4.59~7.06日の範囲にわたった。用量に対して標準化したCmaxは、用量の増加と共に減少した。
【0142】
実施例7:ヒトおよびマウス細胞株におけるいくつかのFc-リラキシン-2融合ポリペプチドのインビトロにおける活性ならびにRXFP2選択性(細胞ベースのcAMP活性アッセイにおいて)
実施例1において記載されるように産生した本発明のFc-リラキシン-2融合ポリペプチドのいくつか(Fc_hRLX2_15-15AA, Fc-TMΔTHTΔK_hRLX2_21-15AA, Fc-TMΔTHTΔK_hRLX2(BA)_21-15AA, hRLX2-Fc-TMΔTHTΔK_15-24AA, hRLX2(BA)-Fc-TMΔTHTΔK_15-24AA)を以下の方法によって、生物学的活性、たとえば、1つ以上の細胞の受容体応答の刺激について試験した。
【0143】
ヒトもしくはマウスRXFP1受容体またはヒトRXFP2を発現する安定したCHO細胞株を、DiscoverXから購入し、受容体特異性を試験するために使用した。使用した細胞株は、以下のとおりであった:cAMP Hunter(商標) CHO-K1 RXFP1 Gs細胞株(カタログ番号95-0127C2、DiscoverX)、cAMP Hunter(商標) CHO-K1 RXFP2 Gs細胞株(カタログ番号95-0140C2、DiscoverX)、cAMP Hunter(商標) CHO-K1 mRXFP1 Gs細胞株(カタログ番号95-0180C2、DiscoverX)。これらの受容体の活性化は、機能活性アッセイにおいて測定することができるcAMPセカンドメッセンジャーの下流の産生をもたらす。
【0144】
通常のcAMPアッセイを、ウシ血清アルブミン(BSA)ベースのアッセイバッファー:0.1% BSA(Sigma #A9418)および0.5mM IBMX(Sigma #I7018)を補足し、1M NaOHによりpH7.4に調整したハンクス液(Sigma #H8264)を使用して実行した。関心のある受容体を発現する細胞の冷凍クライオバイアルを、ウォーターバスにおいて速やかに解凍し、あらかじめ温めた細胞培地に移し、5分間240xgで回転させた。細胞を、最適化濃度(たとえば3.33×104細胞/mlのhRXFP1)で細胞培地中に再懸濁した。
【0145】
30μL細胞懸濁液を、ポリ-D-リシンコーティング384ウェルプレート(Greiner #781946)に追加し、一晩接着させた。翌日、培地をプレートから軽く払い落とし、5μLアッセイバッファーと交換した。試験組換えペプチド/Fc融合サンプルの11段階連続希釈液を非接触液体ディスペンサー(ECHO(商標)、Labcyte)を使用して細胞に追加した。サンプル希釈液はすべて、二通り作製した。さらなる5μLアッセイバッファーを、それぞれのウェルに追加し、プレートを30分間室温でインキュベートした。
【0146】
cAMPレベルは、メーカーの推奨どおり2段階のプロトコールに従って市販で入手可能なcAMP dynamic 2 HTRF kit(Cisbio、Cat #62AM4PEJ)を使用して測定した。手短に言えば、抗cAMPクリプタート(ドナーフルオロフォア)およびcAMP-d2(アクセプターフルオロフォア)を、キットにおいて提供されるコンジュゲート&溶解バッファー中でそれぞれ1/20に希釈することによって別々に用意した。5μL抗cAMPクリプタートをアッセイプレートのすべてのウェルに追加し、5μL cAMP-d2を、非特異的結合(NSB)ウェル以外のすべてのウェルに追加し、これらにはコンジュゲートおよび溶解バッファーを追加した。プレートを1時間室温でインキュベートし、次いで、320nmの励起波長および620nm&665nmの放射波長を使用してEnvision(Perkin Elmer)で読み取った。データは、メーカーのガイドラインにおいて記載されるように、%Delta Fに変換し、次いで、最大天然アゴニスト応答に対する活性化パーセントに変換し、EC50値を決定するために4パラメーターロジスティックフィットによって分析した。
【0147】
結果を、hRXFP1細胞の場合は組換えヒトリラキシン-2(カタログ番号6586-RN、R&D systems)、mRXFP1細胞ではmリラキシン-1(カタログ番号6637-RN、R&D systems)、またはhRXFP2細胞ではINSL-3(カタログ番号4544-NS、R&D systems)についての対応する結果と比較する。発明者らは、EC50を決定するために、データの非拘束4パラメーターロジスティックフィット、曲線の中間点を使用した。
【0148】
結果および結論
試験した融合ポリペプチドの生物学的活性を表3に提供し、それぞれのポリペプチドについての1つの代表的なアッセイの結果を
図28に示す。
インビトロにおける細胞ベースのcAMP刺激アッセイのばらつきのために、組換えヒトリラキシン-2を、ポジティブコントロールとしてそれぞれのアッセイにおいて常に使用する。
【0149】
数回のアッセイの組換えヒトリラキシン-2および融合ポリペプチドの両方についての平均EC50を表3に要約した。
【0150】
【0151】
これらの結果は、以下のことを示す:
-リラキシン融合ポリペプチドのN-末端にまたはリラキシン融合ポリペプチドのC-末端に付けられたFc成分を含む試験したリラキシン-2融合ポリペプチドは、生物学的に活性である。
-試験したリラキシン-2融合ポリペプチドは、どちらの鎖方向(B-AまたはA-B)を含んでいても、生物学的に活性である。
-RXFP1およびRXFP2の間の選択性は、試験したすべてのFc-リラキシン-2融合ポリペプチドについて保持される。
【0152】
結果はまた、試験したリラキシン-2融合ポリペプチドが、ヒトリラキシン-2よりも、ヒトおよびマウスの間で類似する種交差反応性を有することを示す。特に、結果は、Fcドメインへの融合がヒトリラキシン-2の種交差反応性に影響を与えないことを示す。
【0153】
実施例8:Fc_hRLX2_15-15AAはマウスにおいてイソプロテレノール誘発性の心肥大を予防する
グループ当たりn=8のマウス(C57BL/6Jのオスのマウス)を有する合計6つの研究グループについて実行した。グループは以下のとおりとした:ビヒクル、Fc_hRLX2_15-15AA、イソプロテレノール、イソプロテレノール+エナラプリル、イソプロテレノール+組換えヒトリラキシン2、およびイソプロテレノール+Fc_hRLX2_15-15AA。薬剤およびビヒクルは、Alzetミニポンプ(モデル1002;速度:0.25μl/時間(±0.05)、1日に6μl@37℃)またはFc_hRLX2_15-15AAについては皮下注射によって送達した。
【0154】
イソプロテレノールは以下のとおりに作製した:500mM溶液(123.9mg/ml)を0.0002% Na-Asc食塩水、0.22μMろ過中に新たに入れる)。ミニポンプ中の最終[Iso]濃度:15mg/kg/日=体重(BW)1グラム当たり15mg/247.72/6μl/1000g=10.1mM。ビヒクルは、0.0002% アスコルビン酸Na(Sigma カタログ# A7631)とした。
【0155】
エナラプリルは以下のとおりに作製した:エナラプリルはマレイン酸塩、MW492.52、Sigma カタログ# E6888として使用する。200mMストック溶液(98.5mg/ml)をメタノール、0.22μMろ過中に新たに入れる。ミニポンプ中の最終濃度:2.5mg/kg/日=体重(BW)1グラム当たり2.5mg/492.52/6μl/1000g=0.846mM、すなわち、30グラムのマウスについての1回のミニポンプは19.0μlの200mM Ena(150μl×0.846/200mM×30g BW)を必要とするであろう。
【0156】
イソプロテレノール+エナラプリル:上記に記載されるように作製したイソプロテレノールおよびエナラプリルをポンプ中に含めた。
【0157】
6つのグループおよび投薬について表4に示す。
【0158】
【0159】
研究の終わりに、体重、心臓重量、肺重量、および下腿長を測定した。そのうえ、組織学的検査およびコラーゲンアッセイを心臓サンプルを使用して実行した。
【0160】
線維症は、ヒドロキシプロリンの検出に基づいて測定した(Total collagen assay、QuickZyme Biosciences)。組織学的検査(H&Eおよびマッソン三色染色)もまた、治療の2週間後にホルマリン処理した心臓組織に対して実行した。
【0161】
結果および結論
図29Aは、下腿長(TL)に対する心臓重量(HW)の比を示し、
図29Bは、コラーゲン含有量を示す。
【0162】
イソプロテレノールによる治療は、HW/TLおよびコラーゲン含有量の増加によって示されるように、ビヒクルまたはFc_hRLX2_15-15AAのみと比較して、心肥大および線維症の有意な増加をもたらした(
図29A、B)。
【0163】
イソプロテレノールで観察された心肥大および線維症の増加は、イソプロテレノールをエナラプリル、rhRLX2、またはFc_hRLX2_15-15AAと同時に投与した場合に、有意に減じた(
図29A、B)。
【0164】
組織学的検査研究のデータは、コラーゲンおよび肥大の測定値と一貫した(データ示さず)。
【0165】
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前記コネクターポリペプチドは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号69)、AAAGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSA(配列番号70)を含む、請求項11に記載の組成物。
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを産生するための方法であって、請求項18に記載の宿主細胞を培養するステップおよび前記融合ポリペプチドを収集するステップを含む方法。