(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010092
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ボツリヌス神経毒血清型Eの治療的及び美容的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20240116BHJP
A61K 8/66 20060101ALI20240116BHJP
C07K 14/33 20060101ALN20240116BHJP
A61P 17/00 20060101ALN20240116BHJP
A61P 25/00 20060101ALN20240116BHJP
A61P 21/00 20060101ALN20240116BHJP
A61Q 19/00 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
A61K38/48
A61K8/66
C07K14/33 ZNA
A61P17/00
A61P25/00
A61P21/00
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183117
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2021517578の分割
【原出願日】2019-07-04
(31)【優先権主張番号】1815844.4
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポンス,ローラン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】BoNT/Aとは異なる薬力学的特性を有する代替治療として、ボツリヌス神経毒血清型E(BoNT/E)の治療的及び美容的使用を提供する。
【解決手段】障害の治療に使用するボツリヌス神経毒血清型E(BoNT/E)に関するものであり、BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、投与後14日目に、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害の治療に使用するボツリヌス神経毒血清型E(BoNT/E)であって、前記BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、
投与後14日目に、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する、ボツリヌス神経毒血清型E。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロストリジウム神経毒並びにその治療的及び美容的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウム属の細菌は、非常に強力且つ特異的なタンパク質毒素を産生し、これらは、送達されたニューロン及び他の細胞を害する可能性がある。このようなクロストリジウム毒素の例には、C.tetani(TeNT)及びC.botulinum(BoNT)血清型A乃至G及びX(WO2018/009903A2を参照)により産生される神経毒、並びにC.baratii及びC.butyricumにより産生されるものが含まれる。
【0003】
クロストリジウム神経毒には、公知の最も強力な毒素の幾つかが含まれる。一例として、ボツリヌス神経毒素は、血清型に応じて、マウスに対する半致死量(LD50)値が0.5乃至5ng/kgの範囲となる。破傷風毒素及びボツリヌス毒素は、共に、罹患ニューロンの機能、具体的には神経伝達物質の放出を阻害することにより作用する。ボツリヌス毒素が神経筋接合部で作用し、末梢神経系におけるコリン作用性伝達を阻害する一方、破傷風毒素は、中枢神経系において作用する。
【0004】
自然界では、クロストリジウム神経毒は、タンパク質切断事象により翻訳後に修飾されてジスルフィド結合により互いに結合した2つのポリペプチド鎖を形成する単鎖ポリペプチドとして合成される。切断は、鎖間ジスルフィド結合を提供するシステイン残基間に位置する、活性化部位と呼ばれることが多い特定の切断部位において生じる。この二鎖型が、毒素の活性型となる。2本の鎖は、分子量略100kDaの重鎖(H鎖)及び分子量略50kDaの軽鎖(L鎖)と呼ばれる。H鎖は、N末端転位置成分(HNドメイン)及びC末端標的指向化成分(HCドメイン)を含む。切断部位は、L鎖と転位置ドメイン成分との間に位置する。HCドメインのその標的ニューロンとの結合と、エンドソームを介した細胞内への結合毒素のインターナリゼーションとに続いて、HNドメインは、エンドソーム膜を介してサイトゾル内へL鎖を転位置させ、L鎖は、プロテアーゼ機能を提供する(無細胞毒性プロテアーゼとしても知られる)。
【0005】
無細胞毒性プロテアーゼは、SNAREタンパク質として知られる細胞内輸送タンパク質(例えば、SNAP-25、VAMP、又はシンタキシン)をタンパク分解性に切断することにより作用する(Gerald K (2002) "Cell and Molecular Biology” (4th edition) John Wiley & Sons, Inc.参照)。SNAREとは、Soluble NSF Attachment Receptorという用語に由来し、ここで、NSFは、N-エチルマレイミド感受性因子を意味する。SNAREタンパク質は、細胞内小胞融合に不可欠であり、したがって細胞からの小胞輸送による分子の分泌に不可欠である。プロテアーゼ機能は、亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性であり、SNAREタンパク質に対して高い基質特異性を示す。そのため、所望の標的細胞に送達されると、無細胞毒性プロテアーゼは、標的細胞からの細胞分泌を阻害することができる。クロストリジウム神経毒のL鎖プロテアーゼは、SNAREタンパク質を切断する無細胞毒性プロテアーゼである。
【0006】
ボツリヌス神経毒は、弛緩性筋麻痺を引き起こす能力で知られている。この筋弛緩特性から、ボツリヌス神経毒(BoNT/A等)は、眉間皺又は多動性顔面皺、頭痛、片側顔面痙攣、膀胱の運動亢進、多汗症、鼻唇皺、頸部ジストニア、眼瞼痙攣、及び痙縮の治療を含む広範な医療及び美容処置において利用されている。
【0007】
しかしながら、BoNT/Aは、特定の治療又は美容の状況では不利となる長期間の効果(例えば、6か月以上)に関連している。したがって、BoNT/Aとは異なる薬力学的特性を有する代替治療の必要性が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題の1つ以上を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ヒト対象に投与した際のBoNT/E(例えば、天然のBoNT/Eに存在する複合タンパク質が欠如したBoNT/E)の薬力学的特性を初めて決定した。驚くべきことに、本発明者らは、BoNT/Eが、標的細胞又は組織からの神経伝達物質放出の最大阻害を達成するまでの時間が短いこと、及び効果の持続期間が短いこと(例えば、投与から150日未満)を含む、BoNT/Aとは異なる薬力学的特性を有することを見出した。
【0010】
BoNT/Eは、in vitro系及び非ヒト動物モデル(マウス等)において試験されているが、天然の複合BoNT/Eにより実施した以前の研究は、非複合(例えば組換え)BoNT/Eの薬力学的特性の予測には適しておらず、これらの異なる形態のBoNTは、インビボで異なる挙動を示すことが知られている。例えば、複合型及び非複合型のBoNTは、ヒト神経細胞において著しく異なる宿主細胞応答を示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明者らの発見に基づいて、ヒト対象において治療効果を達成するために適切なBoNT/Eの臨床的有用性を決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって、一態様において、本発明は、障害の治療に使用するボツリヌス神経毒血清型E(BoNT/E)を提供する。関連する態様には、障害を治療するための方法、及び障害を治療するための薬剤の製造におけるBoNT/Eの使用が含まれ、BoNT/Eは、ヒト対象に投与される。
【0013】
一態様において、障害の治療に使用するボツリヌス神経毒血清型E(BoNT/E)が提供され、BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、(神経伝達物質分泌の阻害は)投与後14日目に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する。
【0014】
別の態様は、障害を治療するための方法を提供し、この方法は、BoNT/Eをヒト対象に投与することを含み、BoNT/Eを投与することは、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、(神経伝達物質分泌の阻害は)投与後14日目に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する。
【0015】
他の態様は、BoNT/Eをヒト対象に投与することを含む美容方法を提供し、BoNT/Eを投与することは、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、(神経伝達物質分泌の阻害は)投与後14日目に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する。
【0016】
更に他の態様は、障害を治療するための薬剤の製造におけるBoNT/Eの使用を提供し、BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、(神経伝達物質分泌の阻害は)、投与後14日目に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する。
【0017】
BoNT/Eは、好ましくは、非複合形態である(即ち、天然のBoNT/Eに存在する複合タンパク質を含まない)。このような複合タンパク質の例には、神経毒関連タンパク質(NAP)及び非毒性非血球凝集素成分(NTNH)が含まれる。
【0018】
非複合形態のBoNT/Eの利点の1つは、タンパク質含有量による総重量が神経毒(BoNT/E)自体によりもたらされる点である。したがって、例えば、5ngの非複合形態のBoNT/Eの投与は、通常、5ngのBoNT/E神経毒の投与に対応する。一方、5ngの複合形態のBoNT/E(好ましくは、タンパク質含有量による総重量がA280での吸光度又は例えばブラッドフォードアッセイにより決定される)の投与は、複合タンパク質(群)を含み、BoNT/Eの投与量は少なくなる(即ち、5ng未満)。
【0019】
(上述したような)非複合形態のBoNT/Eには、通常、BoNT/Eタンパク質100ナノグラム(ng)当たり50ピコグラム(pg)未満の複合タンパク質、例えば、BoNT/Eタンパク質100ng当たり20pg未満の複合タンパク質を含む。一実施形態において、非複合形態のBoNT/Eは、BoNT/Eタンパク質100ng当たり10pg未満の複合タンパク質、例えば、BoNT/Eタンパク質100ng当たり5pg未満の複合タンパク質を含む。
【0020】
本発明のBoNT/Eは、好ましくは組換えBoNT/Eである(したがって、複合タンパク質を含まない)。
【0021】
本明細書で使用する「治療」又は「治療する」という用語は、予防的治療(例えば、疾患の発症を予防する)及び矯正的治療(既に疾患に罹患している対象の治療)を包含する。好ましくは、「治療」又は「治療する」は、本明細書での使用において、矯正治療を意味する。「治療」又は「治療する」という用語は、疾患及びその症状の両方を治療することを包含する。一部の実施形態において、「治療」又は「治療する」は、疾患の症状を示す。
【0022】
したがって、BoNT/Eは、治療有効量又は予防有効量でヒト対象に投与し得る。
【0023】
「治療有効量」は、疾患(又はその症状)を治療するためにヒト対象に単独で又は組み合わせて投与された際に、このような疾患又はその症状の治療をもたらすのに十分なBoNT/Eの任意の量である。
【0024】
「予防有効量」は、ヒト対象に単独で又は組み合わせて投与された際に、疾患(又はその症状)の発生又は再発を阻害する又は遅延させるBoNT/Eの任意の量である。一部の実施形態において、予防有効量は、疾患の発生又は再発を完全に防止する。発生を「阻害する」とは、疾患発生(又はその症状)の可能性を軽減すること、又は発生を完全に予防することを意味する。
【0025】
「組織からの神経伝達物質放出の阻害」という用語は、前記組織内の神経からの神経伝達物質放出の阻害を意味し得る。
【0026】
本発明は、更に、BoNT/Eをヒト対象に投与することを含む美容方法を提供する。
【0027】
BoNT/Eは、所望の治療効果を達成するのに適した任意の方法でヒト対象に投与し得る。一実施形態において、BoNT/Eは、非経口的に投与される。このような投与は、局所注射を介してよい。一実施形態において、BoNT/Eは、皮下注射、皮内注射、及び/又は筋肉内注射により投与される。好ましくは、BoNT/Eは筋肉内に、例えば、筋肉内注射により投与される。
【0028】
ヒト対象に投与されるBoNT/Eの総投与量は、通常0.03ng以上且つ通常50ng以下となる。例えば、一部の実施形態において、投与されるBoNT/Eの総投与量は、略5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、又は50ngとなる。
【0029】
「総投与量」という用語は、治療レジメン毎に患者に投与されるBoNT/Eの絶対量(グラム又はナノグラムで表される)を意味する。例えば、BoNT/Eの総投与量が5ngとされる場合、5ngのBoNT/Eがヒト患者に投与され、これにより、その患者の治療レジメンが完了することを意味する。
【0030】
総投与量は、同じ治療レジメンの一部を形成する1つ以上の投与ステップにより投与し得る。例えば、5ngの総投与量は、2ngのBoNT/Eの第1の投与、及び3ngのBoNT/Eの第2の投与により投与し得る。
【0031】
好ましくは、総投与量は、単一の投与ステップにおいて投与される。
【0032】
投与されるBoNT/Eの総投与量は、通常50ng未満、例えば40、30、20、又は10ng未満である。
【0033】
本発明の利点の1つは、作用(例えば、神経伝達物質放出の阻害)の迅速な発現をもたらすことである。これは、多くの臨床的及び美容的適応にとって非常に望ましい。本発明の別の利点は、隣接する筋肉へのBoNT/Eの局所拡散が実質的に回避される(即ち、目立った効果が観察されない)ことである。
【0034】
したがって、本発明によれば、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも15%の阻害を投与後1日以内、好ましくは15時間以内にもたらす。例えば、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも20%の阻害を、投与後1日以内、好ましくは15時間以内にもたらす。
【0035】
一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)投与後14日目に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、又は80%超の阻害をもたらす。例えば、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)投与後14日目に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害をもたらすことが好ましい。BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)投与後14乃至49日目に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害をもたらす。
【0036】
別の実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の40乃至95%の阻害を、投与後13日以内、12日以内、11日以内、10日以内、9日以内、8日以内、又は7日以内にもたらす。例えば、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の40乃至60%の阻害を、投与後13日以内、12日以内、11日以内、10日以内、9日以内、8日以内、又は7日以内にもたらす。
【0037】
一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の40乃至95%の阻害を、投与後6日以内にもたらす。例えば、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の40乃至60%の阻害を、投与後6日以内にもたらす。
【0038】
別の実施形態において、BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害を、投与から13日以内、好ましくは6日以内にもたらす。例えば、BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも50%の阻害を、投与から13日以内、好ましくは6日以内にもたらす。
【0039】
一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を、投与後15日以内、好ましくは10日以内、より好ましくは7日以内にもたらす。
【0040】
本発明の他の利点は、BoNT/Aと比較して早い作用の消失(即ち、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害後の消失)をもたらす点にある。これは多くの臨床適応にとって非常に望ましい。
【0041】
本発明によれば、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)
投与後13日以内(好ましくは12日以内又は10日以内)での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害と、
投与後21日超乃至100日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害の15%以下への減少と、をもたらす。
【0042】
例えば、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)
投与後13日以内での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害と、
投与後21日超乃至80日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害の15%以下への減少と、をもたらす。
【0043】
一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)
投与後13日以内での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害と、
投与後40日超乃至100日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害の15%以下への減少と、をもたらす。
【0044】
例えば、BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、(例えば、ある用量において)
投与後13日以内(好ましくは12日以内又は10日以内)での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害と、
投与後40日超乃至80日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害の15%以下への減少と、をもたらす。
【0045】
標的細胞又は組織(好ましくは標的組織)からの神経伝達物質分泌の阻害は、当業者に公知のルーチン手法により評価し得る。一実施形態において、本明細書で使用される「神経伝達物質分泌の阻害百分率」は、筋活動電位(例えば、複合筋活動電位、CMAP)の阻害百分率に対応する。筋活動電位の阻害は、標準的な手法を使用して評価し得る。例えば、刺激された筋肉の活動電位は、阻害百分率を決定するために、電極を介してBoNT/E投与の前後に測定し得る。例えば、電極は、組織内の(神経伝達物質分泌により生じた)活動電位を測定して、活動電位の阻害百分率(神経伝達物質放出の阻害百分率に対応)を決定するための電気生理学的研究において使用し得る。
【0046】
したがって、一実施形態において、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、電気生理学を用いて測定される。例えば、(電気生理学を用いて測定される)活動電位の阻害百分率を測定して、神経伝達物質分泌の阻害百分率の読み出し情報を提供し得る。
【0047】
電気生理学を用いて神経伝達物質分泌の阻害百分率を測定することの主要な利点は、客観的な結果を提供する標準化されたアプローチを取り得る点にある。これは、治療後の筋肉痙縮又は顔の皺のレベルの手動評価等、治療に対する反応の手動/人的(例えば、医師による)評価に基づいて阻害百分率を推測すること等により、神経伝達物質分泌の阻害百分率を測定する主観方法とは対照的である。このような主観方法の結果は、高い変動の度合いに影響されやすいため、客観方法の精度及び信頼性を有していない。
【0048】
「神経伝達物質分泌の阻害百分率」は、電気生理学的研究で特に利用しやすい表在組織、例えば、短趾伸筋(EDB)において測定された阻害百分率に対応し得る。このような表在組織での神経伝達物質分泌の阻害百分率を測定することにより、(表在性の低い組織での測定と比較して)正確性/信頼性の高い読み出し情報が提供され得ることになり、これは、(治療又は美容目的の標的となる)代替組織での神経伝達物質分泌の阻害百分率に対して外挿し得るという利点を有する。
【0049】
前記「神経伝達物質分泌の阻害百分率」の評価は、付記実施例及び材料及び方法を参照することで実証され、そこに記載の方法論(例えば、そこに記載の薬力学モデル)を用いて評価し得る。
【0050】
一実施形態において、神経伝達物質は、アセチルコリンである。
【0051】
本発明者らは、BoNT/Eを投与し、(例えば、ある用量において)神経伝達物質分泌の阻害の迅速な開始と、その後の神経伝達物質分泌の(最大阻害に続く)漸進的な(実質的に線形の)回復とを提供することを見出した。このような漸進的な回復は、用量に依存しないという利点を有する場合があり、本発明者らにより、0.04ng乃至略4.0ngの範囲の用量で実証されている。
【0052】
したがって、本発明は、ヒト対象における(最大阻害に続く)「神経伝達物質分泌の阻害百分率」の予測可能な実質的に線形の減少をもたらすBoNT/Eの総用量を提供するという利点を有し、これにより、治療に対する対象の応答を、投与後100日間まで予測し得る(
図12を参照)。例えば、BoNT/Eが障害の症状を抑制する場合、症状が再発し始める可能性のある時点の予測を、特定の時点で再発する症状の重症度の予測と共に行い得る。
【0053】
したがって、一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)最大の阻害に続いて、「神経伝達物質分泌の阻害百分率」の実質的に線形の減少をもたらす。
【0054】
「実質的に線形」という用語は、「神経伝達物質分泌の阻害百分率」の値のプロファイル(プロット)が、R二乗値が0.8を超える線形曲線(Microsoft Excel 2010、マイクロソフト)を当てはめ得ることを意味する。一実施形態において、前記R二乗値は、0.85超、0.9超、又は0.95超である。好ましくは、前記R二乗値は、0.9超となり得る。より好ましくは、前記R二乗値は、0.95超となり得る。
【0055】
一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)最大阻害後に「神経伝達物質分泌の阻害百分率」の実質的に線形の減少をもたらし、前記実質的に線形の減少は、投与後10乃至56日、10乃至42日、及び/又は10乃至21日に亘る。
【0056】
好ましくは、投与後10乃至56日、10乃至42日、及び/又は10乃至21日に亘る前記プロファイルは、神経伝達物質分泌の最大阻害後のBoNT/E効果(神経伝達物質分泌の阻害)の「消失」を表す。
【0057】
一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)投与後13日以内、12日以内、11日以内、10日以内、9日以内、8日以内、7日以内、又は6日以内(好ましくは6日以内)に標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害をもたらし、その後、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率の1日当たり1乃至10%の減少をもたらす。
【0058】
前記最大阻害(神経伝達物質分泌の阻害百分率)は、40%以上、60%以上、75%以上、又は80%以上(例えば、85%以上)となり得る。好ましくは、前記最大阻害は、80%超である。
【0059】
一実施形態において、前記最大阻害(神経伝達物質分泌の阻害百分率)は95%以上である。
【0060】
標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、通常、最大阻害後、1日当たり約2乃至10%減少する。
【0061】
例えば、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、最大阻害後、毎日、1日当たり約1乃至4%、約4乃至6%、約6乃至8%、又は約8乃至10%減少する。好ましくは、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、最大の阻害後、毎日約1乃至4%減少する。
【0062】
標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、通常、投与後10乃至21日目、6乃至42日目、10乃至42日目、10乃至49日目、及び/又は10乃至56日目に毎日約1乃至4%減少する。
【0063】
便宜上、神経伝達物質分泌の阻害百分率の減少は、対象となる時間枠全体、例えば、投与後10乃至24日目、6乃至42日目、10乃至42日目、10乃至49日目、及び/又は10乃至56日目の平均減少として計算し得る。
【0064】
標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、最大阻害後、毎週、1週間当たり約1乃至30%減少し得る。例えば、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、最大阻害後、毎週、1週間当たり約1乃至28%、2乃至28%、約2乃至22%、約4乃至16%、約9乃至18%、約14乃至16%、約9乃至12%減少する。
【0065】
一実施形態において、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、投与後、1乃至3週目、1乃至6週目、及び/又は2乃至6週目に毎週約9乃至17%減少する。
【0066】
便宜上、神経伝達物質分泌の阻害百分率の減少は、対象となる時間枠全体、例えば、投与後1乃至6週目、2乃至6週目、及び/又は1乃至3週目の平均減少として計算し得る。
【0067】
前記最大阻害(神経伝達物質分泌の阻害百分率)は、40%以上、60%以上、75%以上、又は80%以上(例えば、85%以上)となり得る。好ましくは、前記最大阻害は、80%超である。
【0068】
一実施形態において、前記最大阻害(神経伝達物質分泌の阻害百分率)は、95%超である。
【0069】
神経伝達物質分泌の阻害百分率は、「神経伝達物質分泌の阻害百分率」の実質的に線形の減少後に水平状態になり得る。
【0070】
一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約10%乃至40%(好ましくは約15%乃至40%)の阻害を、投与後49日超乃至100日未満、又は49日超乃至90日未満にもたらす。一実施形態において、BoNT/Eは、投与されると、(例えば、ある用量において)標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約10%乃至40%(好ましくは約15%乃至40%)の阻害を、投与後42日超乃至100日未満、又は42日超乃至90日未満にもたらす。
【0071】
使用時、投与されるBoNT/Eの総投与量は、一般に10ng未満であり、例えば、0.04乃至5ngの範囲である。一実施形態において、BoNT/Eは、0.5乃至5ng(例えば、0.9ng又は3.6ng)の用量で投与される。別の実施形態において、BoNT/Eは、0.1乃至0.5ng(例えば、0.2ng)の用量で投与される。一実施形態において、BoNT/Eは、1乃至5ng(例えば、3.6ng)の用量で投与される。別の実施形態において、BoNT/Eは、0.5乃至2ng(例えば、0.9ng)の用量で投与される。
【0072】
一実施形態において、BoNT/Eは、0.5乃至5ng(例えば、0.9ng又は3.6ng)の用量で投与されると、以下をもたらす:
投与後7日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも85%の阻害、及び/又は
投与後14日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも80%の阻害、及び/又は
投与後21日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも70%の阻害、及び/又は
投与後28日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも50%の阻害、及び/又は
投与後35日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害、及び/又は
投与後42日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも30%の阻害、及び/又は
投与後49日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも25%の阻害。
【0073】
例えば、BoNT/Eは、0.5乃至5ng(例えば、0.9ng又は3.6ng)の用量で投与されると、以下をもたらす:
投与後56日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも15%の阻害、及び/又は
投与後63日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害。
【0074】
別の実施形態において、BoNT/Eは、0.1乃至0.5ng(例えば、0.2ng)の用量で投与されると、以下をもたらす:
投与後7日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも65%の阻害、及び/又は
投与後14日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも65%の阻害、及び/又は
投与後21日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも50%の阻害、及び/又は
投与後28日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも30%の阻害、及び/又は
投与後35日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも30%の阻害、及び/又は
投与後42日での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害。
【0075】
一実施形態において、BoNT/Eは、1乃至5ng(例えば、3.6ng)の用量で投与されると、以下をもたらす:
投与後約3日超乃至13日以内での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも85%の阻害、及び/又は
投与後17日超乃至19日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約80%乃至90%(好ましくは約84%乃至86%)の阻害、及び/又は
投与後20日超乃至22日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約70%乃至80%(好ましくは約74%乃至76%)の阻害、及び/又は
投与後23日超乃至26日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約55%乃至65%(好ましくは約60%乃至64%)の阻害、及び/又は
投与後27日超乃至29日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約50%乃至60%(好ましくは約54%乃至56%)の阻害、及び/又は
投与後34日超乃至36日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約35%から45%(好ましくは約43%から44%)の阻害、及び/又は
投与後41日超乃至43日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約30%乃至40%(好ましくは約34%乃至36%)の阻害、及び/又は
投与後48日超乃至50日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約25%乃至35%(好ましくは約29%乃至31%)の阻害、及び/又は
投与後55日超乃至57日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約10%乃至20%(好ましくは約15%乃至17%)の阻害、及び/又は
投与後62日超乃至64日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約7%乃至17%(好ましくは約13%乃至15%)の阻害、及び/又は
投与後75日超での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害。
【0076】
別の実施形態において、BoNT/Eは、0.5乃至2ng(例えば、0.9ng)の用量で投与されると、以下をもたらす:
投与後3日超乃至13日以内での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも85%の阻害、及び/又は
投与後17日超乃至19日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約70%乃至80%(好ましくは約77%乃至79%)の阻害、及び/又は
投与後20日超乃至22日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約65%乃至75%(好ましくは約71%乃至73%)の阻害、及び/又は
投与後23日超乃至26日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約60%乃至70%(好ましくは約65%乃至67%)の阻害、及び/又は
投与後27日超乃至29日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約55%乃至65%(好ましくは約58%乃至60%)の阻害、及び/又は
投与後34日超乃至36日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約45%乃至55%(好ましくは約50%乃至52%)の阻害、及び/又は
投与後41日超乃至43日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約30%乃至40%(好ましくは約34%乃至37%)の阻害、及び/又は
投与後48日超乃至50日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約30%乃至40%(好ましくは約33%乃至35%)の阻害、及び/又は
投与後55日超乃至57日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約30%乃至40%(好ましくは約35%乃至37%)の阻害、及び/又は
投与後62日超乃至64日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約20%乃至30%(好ましくは約22%乃至27%)の阻害、及び/又は
投与後75日超(例えば、85日超)での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害。
【0077】
一実施形態において、BoNT/Eは、0.1乃至0.5ng(例えば、0.2ng)の用量で投与されると、以下をもたらす:
投与後3日超乃至13日以内での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも70%の阻害、及び/又は
投与後17日超乃至19日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約47%乃至57%(好ましくは約52乃至54%)の阻害、及び/又は
投与後20日超乃至22日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約45%乃至55%(好ましくは約50%乃至52%)の阻害、及び/又は
投与後23日超乃至26日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約25%乃至35%(好ましくは約29%乃至31%)の阻害、及び/又は
投与後27日超乃至29日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約25%乃至35%(好ましくは約31%乃至33%)の阻害、及び/又は
投与後34日超乃至36日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約25%乃至35%(好ましくは約30%乃至33%)の阻害、及び/又は
投与後41日超乃至43日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約1%乃至10%(好ましくは約4%乃至6%)阻害、及び/又は
投与後48日超での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害。
【0078】
一部の実施形態において、投与されるBoNT/Eの総投与量は、0.2ng未満、例として0.04乃至0.15ng(又は0.01乃至0.04ng)であることが好ましい。有利なことに、本発明者らは、より低用量のBoNT/E(0.2ng未満)を投与することにより、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害が達成されることを見出した。こうした低用量は、神経伝達物質分泌の良好な最大阻害(例えば、少なくとも40%又は50%の阻害)、大幅に短い効果持続期間を伴い、及び/又は最大効果までの同様の時間を伴う。この後者の点は、驚くべきことであり、高用量(例えば、0.2ng以上の用量)の投与時に最大阻害を達成する時間が大幅に短縮される複合タンパク質を含むBoNT(例えば、複合タンパク質を含むBoNT/A)とは正反対となる。例えば、本発明者らは、僅か0.04ng(40pg)のBoNT-E(例えば、組換えBoNT-E)が、20UのBoNT-A(Dysport(登録商標))と同じ効果の振幅(投与後1乃至7日間)をもたらすことを見出した(実施例4参照)。特に、20U Dysport=108pg神経毒(5.35乃至5.38pg神経毒/U、一般に5.35pg神経毒/ U)となった。これは、発明者にとって特に驚くべきことだった。
【0079】
一実施形態において、BoNT/Eは、0.04乃至0.15ng(例えば、0.04ng)の用量で投与されると、以下をもたらす:
投与後3日超乃至13日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害、及び/又は
投与後17日超乃至19日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約30%乃至40%(好ましくは約33乃至35%)の阻害、及び/又は
投与後20日超乃至22日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約7%乃至17%(好ましくは約12%乃至14%)の阻害、及び/又は
投与後23日超乃至26日未満での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の約15%乃至25%(好ましくは約21%乃至23%)の阻害、及び/又は
投与後48日超での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害。
【0080】
一実施形態において、標的組織は、筋肉である。このような筋肉の例には、後頭前頭筋、鼻筋、口輪筋、口角下制筋、広頸筋、胸骨舌骨筋、前鋸筋、腹直筋、外腹斜筋、大腿筋膜張筋、腕橈骨筋、腸骨筋、大腰筋、恥骨筋、長内転筋、縫工筋、薄筋、外側広筋、大腿直筋、内側広筋、大腿四頭筋の腱、膝蓋骨、腓腹筋、ヒラメ筋、脛骨、長腓骨筋、前脛骨筋、膝蓋靭帯、腸脛靭帯、小指球筋群、母指球筋群、尺側手根屈筋、浅指屈筋、長掌筋、橈側手根屈筋、腕橈骨筋、円回内筋、上腕筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大胸筋、三角筋、僧帽筋、胸鎖乳突筋、咬筋、眼輪筋、側頭筋、帽状腱膜、大円筋、指伸筋、尺側手根伸筋、肘筋、長母指外転筋、足底筋、アキレス腱、ヒラメ筋、大内転筋、大殿筋、中殿筋、広背筋、棘下筋が含まれる。
【0081】
一実施形態において、標的組織は、皺眉筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋、上腕筋、及び/又は腕橈骨筋、指伸筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0082】
一実施形態において、標的組織は、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、深指屈筋、浅指屈筋、長母指屈筋、母指内転筋、上腕筋、腕橈骨筋、上腕二頭筋、円回内筋、上腕三頭筋、大胸筋、肩甲下筋、広背筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である(好ましくは、BoNT/Eは、上肢痙縮の治療に用いる)。
【0083】
一実施形態において、標的組織は、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。一実施形態において、標的組織は、深指屈筋、浅指屈筋、長母指屈筋、母指内転筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。一実施形態において、標的組織は、上腕筋、腕橈骨筋、上腕二頭筋、円回内筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。一実施形態において、標的組織は、上腕三頭筋、大胸筋、肩甲下筋、広背筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0084】
一実施形態において、標的組織は、ヒラメ筋、腓腹筋(例えば、内側頭又は外側頭)、後脛骨筋、長指屈筋、短指屈筋、長母趾屈筋、短母趾屈筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である(好ましくは、BoNT/Eは、下肢痙縮の治療に使用される)。
【0085】
一実施形態において、標的組織は、ヒラメ筋である。一実施形態において、標的組織は、腓腹筋(例えば、内側頭又は外側頭)である。一実施形態において、標的組織は、後脛骨筋、長指屈筋、短指屈筋、長母趾屈筋、短母趾屈筋、又はそれらの組み合わせである。
【0086】
一実施形態において、標的組織は、皺眉筋、鼻根筋、眼輪筋、前頭筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である(好ましくは、BoNT/Eは、上顔面皺線の治療に使用される)。
【0087】
一実施形態において、標的組織は、皺眉筋と、鼻根筋、眼輪筋、前頭筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上とである。一実施形態において、標的組織は、鼻根筋と、皺眉筋、眼輪筋、前頭筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上とである。一実施形態において、標的組織は、眼輪筋と、皺眉筋、鼻根筋、前頭筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上とである。一実施形態において、標的組織は、前頭筋と、皺眉筋、鼻根筋、眼輪筋、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上とである。
【0088】
一実施形態において、標的細胞は、運動ニューロン又は感覚ニューロンである。好ましくは、標的細胞は、運動ニューロンである。
【0089】
標的細胞(本明細書では「神経」という用語と同義語として使用される)は、腋窩神経、横隔神経、脊髄神経節、脊髄神経、交感神経節鎖、陰部神経、総掌側指神経、尺骨神経、尺骨神経深枝、坐骨神経、腓骨神経、脛骨神経、伏在神経、骨間神経、浅腓骨神経、中間足背皮神経、内側足底神経、内側足背皮神経、深腓骨神経、脛骨神経筋枝、伏在神経膝蓋下枝、総腓骨神経、大腿神経筋枝、大腿神経前皮枝、坐骨神経筋枝、大腿神経、腸骨鼠径神経、終糸神経、腸骨下腹神経、閉鎖神経、橈骨神経、肋下神経、肋間神経、肋間神経背側枝、肋間神経内側皮枝、筋神経(musculaneous nerve)、三角筋神経(deltoid nerve)、迷走神経、腕神経叢神経、鎖骨上神経、顔面神経、耳介側頭神経、又はそれらの組み合わせとなり得る。好適な実施形態において、標的細胞は、腓骨神経である。
【0090】
本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。一実施形態において、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号1に対して少なくとも80%又は90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。好ましくは、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号1を有する(又は、これからなる)ヌクレオチド配列によりコードされ得る。好ましくは、本発明で使用するBoNT/Eは、大腸菌宿主細胞等の異種発現系での発現用にコドン最適化された配列(例えば、配列番号1)を有する(又は、これからなる)ヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0091】
本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2又は配列番号3に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。一実施形態において、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2又は配列番号3に対して少なくとも80%又は90%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2又は配列番号3として示されるポリペプチド配列を含む(又は、これからなる)。
【0092】
好ましくは、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2に対して少なくとも80%又は90%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。より好ましくは、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2として示されるポリペプチド配列を含む(又は、それからなる)。
【0093】
本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含んでよく、但し、ポリペプチド配列は、以下のアミノ酸の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、又は8つ、好ましくは8つ全て)を含む(アミノ酸位置の番号付けは、BoNT/Eタンパク質のN末端メチオニンアミノ酸残基から始まり、C末端アミノ酸残基で終わる):
177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0094】
一実施形態において、本発明で使用するBoNT/Eは、配列番号2に対して少なくとも80%又は90%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含んでよく、但し、ポリペプチド配列は、以下のアミノ酸の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、又は8つ、好ましくは8つ全て)を含む(アミノ酸位置の番号付けは、BoNT/Eタンパク質のN末端メチオニンアミノ酸残基から始まり、C末端アミノ酸残基で終わる):
177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0095】
前記アミノ酸は、野生型BoNT/Eポリペプチド配列(配列番号3等)と比較した場合の置換(例えば、変異)であってよい。例えば:
177位のグリシンは、アルギニンからグリシンへの置換(R177G)であってよく、
198位のセリンは、C198S置換であってよく、
340位のアラニンは、R340A置換であってよく、
773位のロイシンは、I173L置換であってよく、
963位のロイシンは、F963L置換であってよく、
964位のグルタミンは、E964Q置換であってよく、
967位のアラニンは、R967A置換であってよく、及び/又は
1195位のアスパラギンは、挿入であってよい(例えば、配列番号3のポリペプチド配列等の野生型BoNT/E配列のG1194とN1195との間の挿入)。
【0096】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギンを含む(又は、これらからなる)。
【0097】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、177位のグリシン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギンを含む(又は、これらからなる)。
【0098】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、177位のグリシンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0099】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、198位のセリンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):177位のグリシン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0100】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、340位のアラニンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):177位のグリシン、198位のセリン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0101】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、773位のロイシンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0102】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、963位のロイシンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0103】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、964位のグルタミンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
【0104】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、967位のアラニンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、1195位のアスパラギン。
【0105】
一実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸は、1195位のアスパラギンと、以下の1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ)とを含む(又は、これらからなる):177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン。
【0106】
一実施形態において、上述したように前記1つ以上のアミノ酸が存在することで、前記アミノ酸(群)を欠くBoNT/Eタンパク質と比較して、溶解度が改善されたBoNT/Eタンパク質が提供される。前記溶解度の改善により、大腸菌発現系等の異種発現系におけるタンパク質の収量が増加する。
【0107】
一実施形態において、上述したように前記1つ以上のアミノ酸が存在することで、前記アミノ酸(群)を欠くBoNT/Eタンパク質と比較して、BoNT/Eタンパク質の効力が改善される。前記効力の改善は、好ましくは、インビボ効力の改善(より好ましくは、ヒト対象におけるインビボ効力の改善)となり得る。
【0108】
一実施形態において、BoNT/Eは、出典を明記することにより本願明細書の一部としたWO2014/068317A1に記載のもの(又は記載のヌクレオチド配列によりコードされるもの)である。
【0109】
BoNT/Eは、分子量が略100kDaの重鎖(H鎖)及び分子量が略50kDaの軽鎖(L鎖)の2本のポリペプチド鎖から形成される。H鎖は、C末端標的指向化成分(受容体結合ドメイン又はHCドメイン)と、N末端転位置成分(HNドメイン)とを含む。H鎖(HCドメイン及びHNドメイン)とL鎖との両方を含むBoNT/Eは、ホロトキシンと呼ばれる。
【0110】
一実施形態において、本発明で使用するBoNT/Eは、ホロトキシンである。
【0111】
L鎖基準配列の例は、BoNT/Eのアミノ酸残基1乃至422を含む。しかしながら、この基準配列は、目安と考えるべきであり、血清亜型により僅かな変動が生じ得る。一例として、US2007/0166332(出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする)では、アミノ酸残基M1乃至R422の僅かに異なるBoNT/E L鎖配列が引用されている。
【0112】
BoNT/E HCドメイン基準配列の例には、アミノ酸残基R846乃至K1252が含まれる。
【0113】
本発明で使用するBoNT/EのL鎖は、次の通りとなり得る(配列番号4)。
【化1】
【0114】
本発明で使用するBoNT/EのH鎖は、次の通りとなり得る(配列番号5)。
【化2】
【0115】
BoNT/EのHCドメインは、HCCドメイン及びHCNドメインと呼ばれる2つの異なる構造的特徴を含む。受容体結合に関与するアミノ酸残基は、主にHCCドメインに位置すると考えられている。BoNT/E HCNドメイン基準配列の例には、アミノ酸残基846乃至1085が含まれる。
【0116】
上記の配列位置は、サブタイプに応じて僅かに異なる場合があり、適切な(基準)BoNT/E HCNドメインの他の例には、アミノ酸残基848乃至1085が含まれる。
【0117】
BoNT/Eは、C.botulinum又はC.butyricum、好ましくはC.botulinumにより産生され得る。一実施形態において、BoNT/Eは、非クロストリジウム細胞において産生される。あるいは(好ましくは)、BoNT/Eは、組換え形態(例えば、大腸菌)において産生され得る。したがって、一実施形態において、本発明で使用するBoNT/Eは、大腸菌等の異種発現系において産生される。一実施形態において、大腸菌細胞は、大腸菌BLR(DE3)である。
【0118】
異種発現系(大腸菌等)で産生されるBoNT/Eの詳細は、出典を明記することにより本願明細書の一部としたWO2014/068317A1に記載されている。
【0119】
本発明のBoNT/E組成物は、利点として、トリプシンプロテアーゼ(一本鎖ポリペプチドを活性化するために用いられる)を実質的に含まず、そのため、BoNT/Eタンパク質の望ましくない非特異的切断を防止する。
【0120】
本発明のBoNT/E組成物では、組成物のタンパク質含有量が実際の神経毒(BoNT/E)によりもたらされる。したがって、例えば、4ngのBoNT/E組成物の投与は、4ngのBoNT/E神経毒の投与に対応する。
【0121】
一実施形態において、(上述したような)BoNT/E組成物が実質的にトリプシンを含まない場合、組成物は、BoNT/Eタンパク質100ナノグラム(ng)当たり100ピコグラム(pg)未満のトリプシン、例えば、BoNT/Eタンパク質100ng当たり50、20、10、9、8、7、6、又は5pg未満のトリプシンを含む。一実施形態において、(上述したような)組成物は、BoNT/Eタンパク質100ng当たり10pg未満のトリプシン、又はBoNT/Eタンパク質100ng当たり7pg未満のトリプシン、又はBoNT/Eタンパク質100ng当たり5pg未満のトリプシンを含む。好適な実施形態において、(上述したような)組成物は、BoNT/Eタンパク質100ng当たり10pg未満のトリプシン、又はBoNT/Eタンパク質100ng当たり7pg未満のトリプシンを含む。
【0122】
したがって、一実施形態において、「実質的にトリプシンを含まない」という語句は、BoNT/Eタンパク質100ng当たり100pg未満のトリプシン、例えば、BoNT/Eタンパク質100ng当たり50、20、10、9、8、7、6、又は5pg未満のトリプシン、好ましくはBoNT/Eタンパク質100ng当たり10pg未満のトリプシン、又はBoNT/Eタンパク質100ng当たり7pg未満のトリプシンを意味する。
【0123】
組成物中のトリプシンの濃度を決定する方法は、当該技術分野において公知である(例えば、WO2014/068317に記載されている)。例として、本発明の組成物中のトリプシンの濃度は、サンドイッチELISA(酵素結合免疫吸着測定法)を使用して決定し得る。
【0124】
BoNT/Eは、25kDaのシナプトソーム関連タンパク質(SNAP-25)を切断することが知られている。
【0125】
一部の実施形態において、BoNT/Eは、限定ではなく以下に記載したものを含む修飾BoNT/E又はその誘導体にし得る。修飾BoNT/E又は誘導体は、天然(未修飾)型のBoNT/Eと比較して修飾された1つ以上のアミノ酸を含み得るか、又は天然(未修飾)型のBoNT/Eに存在しない1つ以上の挿入アミノ酸を含み得る。一例として、修飾BoNT/Eは、天然(未修飾)BoNT/E配列と比較して、1つ以上のドメインに修飾アミノ酸配列を有し得る。このような修飾は、BoNT/Eの機能的側面、例えば生物学的活性又は持続性を修飾し得る。したがって、一実施形態において、BoNT/Eは、修飾BoNT/E、又はBoNT/E誘導体である。
【0126】
修飾神経毒は、重鎖(修飾HCドメイン等)のアミノ酸配列に1つ以上の修飾を有してよく、修飾重鎖は、天然(未修飾)BoNT/Eより高い又は低い親和性で標的神経細胞に結合する。HCドメインにおけるこうした修飾は、標的神経細胞のガングリオシド受容体及び/又はタンパク質受容体との結合を変化させる、HCドメインのガングリオシド結合部位又はタンパク質(SV2又はシナプトタグミン)結合部位における残基の修飾を含むことができる。こうした修飾クロストリジウム神経毒の例は、共に出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部としたWO2006/027207及びWO2006/114308に記載されている。
【0127】
修飾BoNT/Eは、軽鎖のアミノ酸配列における1つ以上の修飾、例えば修飾L鎖のSNAREタンパク質特異性を変更又は修飾し得る基質結合又は触媒ドメインにおける修飾を有し得る。こうした修飾クロストリジウム神経毒の例は、共に出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部としたWO2010/120766及びUS2011/0318385に記載されている。
【0128】
修飾BoNT/Eは、修飾BoNT/Eの生物学的活性及び/又は生物学的持続性を増加又は減少させる1つ以上の修飾を含み得る。例えば、修飾BoNT/Eは、ロイシン又はチロシンに基づくモチーフであって、修飾神経毒の生物学的活性及び/又は生物学的持続性を増加又は減少させるモチーフを含み得る。適切なロイシンに基づくモチーフには、xDxxxLL、xExxxLL、xExxxIL、及びxExxxLM(xは任意のアミノ酸)が含まれる。適切なチロシンに基づくモチーフには、Y-x-x-Hy(Hyは疎水性アミノ酸)が含まれる。ロイシン及びチロシンに基づくモチーフを含む修飾クロストリジウム神経毒の例は、出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部としたWO2002/08268に記載されている。
【0129】
「BoNT/E」という用語は、一実施形態において、ハイブリッド及びキメラBoNT/Eを包含するものである。ハイブリッドBoNT/Eは、1つのクロストリジウム神経毒又はそのサブタイプ由来の軽鎖の少なくとも一部と、別のクロストリジウム神経毒又はクロストリジウム神経毒サブタイプ由来の重鎖の少なくとも一部とを含み、サブタイプの少なくとも1つはBoNT/Eサブタイプである。一実施形態において、ハイブリッドBoNT/Eは、1つのクロストリジウム神経毒サブタイプ由来の軽鎖の軽鎖全体と、別のクロストリジウム神経毒サブタイプ由来の重鎖とを含んでよく、サブタイプの少なくとも1つは、BoNT/Eサブタイプである。別の実施形態において、キメラクロストリジウム神経毒は、1つのクロストリジウム神経毒サブタイプの重鎖の一部(例えば、結合ドメイン)を、別のクロストリジウム神経毒サブタイプに由来する重鎖の別の部分と共に含んでよく、サブタイプの少なくとも1つは、BoNT/Eサブタイプである。同様に又は代わりに、治療要素は、異なるBoNT/Eサブタイプ由来の軽鎖部分を含み得る。このようなハイブリッド又はキメラBoNT/Eポリペプチドは、例えば、特定のクロストリジウム神経毒サブタイプに対して免疫耐性を有する患者、特定のクロストリジウム神経毒重鎖結合ドメインに対する受容体の濃度が平均より低い可能性のある患者、又は膜又は小胞毒素基質(例えば、SNAP-25、VAMP、及びシンタキシン)のプロテアーゼ耐性変異体を有する可能性のある患者に対して、その治療効果を届ける手段として有用となる。ハイブリッド及びキメラクロストリジウム神経毒は、出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部としたUS8,071,110に記載されている。したがって、一実施形態において、本発明のBoNT/Eは、ハイブリッドBoNT/E、又はキメラBoNT/Eである。
【0130】
本発明は、更に、非天然プロテアーゼ切断部位を有するBoNT/Eを包含する。このようなBoNT/Eポリペプチドにおいて、天然のプロテアーゼ切断部位(上述したように活性化部位としても知られる)は、BoNT/Eが天然に有しないプロテアーゼ切断部位(即ち、外因性切断部位)により修飾又は置換される。このような部位は、切断のために外因性プロテアーゼを必要とし、これにより、切断イベントのタイミング及び位置の制御を改善することができる。BoNT/Eにおいて利用し得る非天然プロテアーゼ切断部位は、以下を含む。
エンテロキナーゼ (DDDDK↓)
第Xa因子 (IEGR↓/IDGR↓)
TEV(タバコエッチ病ウイルス) (ENLYFQ↓G)
トロンビン (LVPR↓GS)
PreScission (LEVLFQ↓GP)。
【0131】
追加のプロテアーゼ切断部位には、無細胞毒性プロテアーゼ、例えばクロストリジウム神経毒の軽鎖により切断される認識配列が含まれる。これらには、クロストリジウム神経毒の軽鎖等の無細胞毒性プロテアーゼにより切断されるSNARE(SNAP-25、シンタキシン、VAMP等)タンパク質認識配列が含まれる。非天然プロテアーゼ切断部位を含むクロストリジウム神経毒は、全て出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部としたUS7,132,259、EP1206554-B2、及びUS2007/0166332に記載されている。プロテアーゼ切断部位という用語には、自己切断配列であるインテインも包含される。自己スプライシング反応は、例えば、存在する還元剤の濃度を変えることにより制御することができる。
【0132】
本発明は、更に、「破壊的切断部位」を含むBoNT/Eを包含する。前記BoNT/Eポリペプチドにおいて、非天然プロテアーゼ切断部位は、前記部位での切断がBoNT/Eの活性を低下させるか、又は不活性化するように選択された位置で、BoNT/Eに組み込まれる。破壊的プロテアーゼ切断部位は、投与後にBoNT/Eが非標的位置に移動する場合、局所プロテアーゼによる切断を受けやすい可能性がある。適切な非天然プロテアーゼ切断部位には、上述したものが含まれる。破壊的切断部位を含むクロストリジウム神経毒は、共に出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部としたWO2010/094905及びWO2002/044199に記載されている。
【0133】
一実施形態において、BoNT/Eは、天然の切断部位を含む。
【0134】
一実施形態において、BoNT/Eは、E3リガーゼ認識モチーフを含まない。
【0135】
BoNT/E、特にその軽鎖成分は、PEG化してよく、これは、安定性、例えば、軽鎖成分の作用の持続期間の増加に役立ち得る。PEG化は、好ましくは、軽鎖成分のN末端に対するPEGの追加を含む。一例として、軽鎖のN末端は、同一又は異なるものにしてよい1個以上のアミノ酸(例えば、システイン)残基により伸長し得る。1つ以上の前記アミノ酸残基は、それ自体に結合された(例えば、共有結合された)PEG分子を有し得る。この手法の例は、出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部としたWO2007/104567に記載されている。
【0136】
本発明で使用するBoNT/Eは、組換え核酸技術を使用して産生することができる。
【0137】
本発明で使用するBoNT/Eは、適切な宿主細胞においてBoNT/Eをコードする核酸を発現させること、宿主細胞を溶解して一本鎖BoNT/Eを含む宿主細胞ホモジネートを提供すること、及び一本鎖BoNT/Eを単離することを含む方法により調製し得る。本発明で使用する前に、一本鎖BoNT/Eは、好ましくは、一本鎖BoNT/Eを、BoNT/E活性化ループのペプチド結合を加水分解するプロテアーゼと接触させることにより二本鎖BoNT/E(例えば、軽鎖及び重鎖がジスルフィド結合により結合されている)を産生することにより、対応する活性二本鎖BoNT/Eへとタンパク分解性に処理される。
【0138】
好ましくは、前記宿主細胞は、異種(例えば、非クロストリジウム)発現系を提供する。好ましくは、宿主細胞は、大腸菌である。
【0139】
本発明で使用するBoNT/Eは、好ましくは二本鎖形態である。
【0140】
BoNT/Eは、本発明において医薬組成物の一部として使用し得る。医薬組成物は、BoNT/E及び医薬的に許容可能な担体、賦形剤、アジュバント、及び/又は塩を含み得る。したがって、一実施形態において、BoNT/Eは、医薬的に許容可能な担体、賦形剤、アジュバント、及び/又は塩と組み合わせて投与し得る。
【0141】
BoNT/Eは、非経口、持続注入、又は局所塗布用に処方し得る。一実施形態において、BoNT/Eは、皮下注射、皮内注射、及び/又は筋肉内注射等による非経口投与用に処方される。好ましくは、BoNT/Eは、非経口投与用、より好ましくは(例えば、注射による)筋肉内投与用等に処方される。
【0142】
注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、又は乳液、或いは使用前に適切な溶媒に溶解又は懸濁させる乾燥粉末の形態にし得る。
【0143】
局所的に送達されるBoNT/Eの場合、BoNT/Eは、クリーム(例えば、局所塗布用)として、又は皮下への注入用に処方し得る。
【0144】
局所送達手段は、エアロゾル又は他の噴霧器(例えば、ネブライザ)を含み得る。
【0145】
流体投与形態は、一般に、BoNT/Eとパイロジェンフリー無菌溶媒とを使用して調製される。BoNT/Eは、溶媒と、用いる濃度とに応じて、溶媒に溶解又は懸濁させることができる。溶液の調製では、BoNT/Eを溶媒に溶解することが可能であり、溶液は、必要な場合には、塩化ナトリウムを加えて等張にし、無菌操作により細菌濾過器を介して濾過し滅菌した後、適切な滅菌バイアル又はアンプルに充填して密封する。或いは、溶液の安定性が十分である場合、密封容器内の溶液をオートクレーブにより滅菌する。緩衝剤、可溶化剤、安定化剤、防腐剤又は殺菌剤、懸濁化剤又は乳化剤、及び/又は局部麻酔剤等の添加剤を、溶媒に溶解し得るという利点を有する。
【0146】
使用前に適切な溶媒に溶解又は懸濁させる乾燥粉末は、事前に滅菌した材料を、無菌区域内で無菌操作により滅菌容器に充填することで調製し得る。或いは、材料は、無菌区域内で無菌操作により適切な容器内へ溶解させてもよい。その後、製品を凍結乾燥させ、容器を無菌状態で密封する。
【0147】
筋肉内、皮下、又は皮内注射に適した非経口懸濁液は、実質的に同一の方法で調製されるが、但し、滅菌成分は、溶解させる代わりに滅菌溶媒中に懸濁させ、滅菌は、濾過により行うことはできない。成分は、無菌状態で単離してよく、或いは、単離後に、例えばガンマ線照射により滅菌してもよい。
【0148】
懸濁剤、例えばポリビニルピロリドンを組成物(群)に含め、成分の均一な分布を促進することが有利となる。
【0149】
本発明による投与では、微小粒子カプセル化、ウイルス送達系、又は高圧エアロゾル衝突を含む様々な送達技術を利用し得る。BoNT/Eは、罹患臓器の神経支配に関与する脊髄分節のレベルでの、脊柱における髄腔内又は硬膜外注射により、患者に投与し得る。
【0150】
BoNT/Eを投与するための投与量の範囲は、所望の治療効果を生み出すものとなる(例えば、上述したもの)。投与量は、実施例に記載したようにCBA単位に基づくものにし得る。
【0151】
一実施形態において、本発明の障害は、次のうちの1つ以上である:斜視に関連する状態、眼瞼痙攣、斜視、ジストニア(例えば、痙性ジストニア、顎口腔ジストニア、局所性ジストニア、遅発性ジストニア、喉頭ジストニア、四肢ジストニア、頸部ジストニア)、斜頚(例えば、痙性斜頸)、(SNAREの下方制御又は不活性化による)細胞/筋肉の無能力化が有効となる美容療法(美顔)用途、神経筋障害又は眼球運動の状態(例えば、共同性斜視、上下斜視、外直筋麻痺、眼振、甲状腺異常ミオパシ)、書痙、眼瞼痙攣、歯ぎしり、ウィルソン病、振戦、チック、分節性ミオクローヌス、攣縮、慢性多発性硬化症による痙縮、異常な膀胱制御をもたらす痙縮、アニスムス、背部痙攣、筋肉硬直、緊張型頭痛、挙筋骨盤症候群、二分脊椎、遅発性ジスキネジア、パーキンソン病、吃音、片側顔面痙攣、眼瞼疾患、脳性麻痺、焦点痙縮、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮(例えば、下肢痙縮又は上肢痙縮)、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、胃腸分泌過剰、筋痛(例えば、筋肉痙攣による疼痛)、頭痛の痛み(例えば、緊張性頭痛)、眉間皺、皮膚皺(例えば、眉間線、外眼角線、及び/又は前頭線等の上顔面皺線)、癌、子宮障害、泌尿生殖器障害、泌尿生殖器神経障害、慢性神経性炎症、及び平滑筋障害。
【0152】
一実施形態において、障害は、下肢痙縮である。好ましくは、下肢痙縮は、18歳以上の対象におけるものである。
【0153】
一実施形態において、障害は、上肢痙縮である。好ましくは、上肢痙縮は、18歳以上の対象におけるものである。
【0154】
本発明は、更に、BoNT/Eの使用を含む美容方法を包含する。例えば、美容方法は、上顔面皺線(眉間線、外眼角線、及び/又は前頭線等)を治療するためのものにし得る。
【0155】
一実施形態において、美容方法は、眉間線と、外眼角線及び前頭筋線から選択される1つ以上とを治療するためのものである。一実施形態において、美容方法は、外眼角線と、及び眉間線及び前頭線から選択される1つ以上を治療するためのものである。一実施形態において、美容方法は、前頭線と、眉間線及び外眼角線から選択される1つ以上とを治療するためのものである。
【0156】
本発明の美容方法は、眉間線、外眼角線、及び/又は前頭線を治療するために(有効量の)BoNT/Eを投与することを含んでよく、BoNT/Eは、前記眉間線、外眼角線、及び/又は前頭線のそれぞれが治療される(好ましくは同時に治療される)ように、同時に又は連続して、前記眉間線、外眼角線、及び/又は前頭線を治療する部位に投与される。
【0157】
好ましくは、美容方法は、眉間線を治療するためのものである。眉間線は、(例えば、医師により決定される)中等度又は重度のものとなり得る。
【0158】
BoNT/Eの使用に関連する実施形態は、本明細書に記載の治療方法及び美容方法に等しく適用されるものであり、逆も同様である。
【0159】
一実施形態において、ヒト対象は、男性である。
【0160】
配列相同性
【0161】
同一性パーセントは、限定では無く、グローバル法、ローカル法、及び、例えばセグメントアプローチ法等のハイブリッド法を含む様々な配列アラインメント方法の何れかを用いて決定することができる。同一性パーセントを決定するためのプロトコルは、当業者の範囲内の日常の手順である。グローバル法は、配列を分子の最初から最後まで整列させ、個々の残基対のスコアを合計すると共に、ギャップペナルティを与えることにより、最善のアラインメントを決定する。非限定的な方法には、例えば、CLUSTAL W(例えば、Julie D. Thompson et al., CLUSTAL W: Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting, Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice, 22(22) Nucleic Acids Research 4673-4680 (1994)参照)及び反復改良(例えば、Osamu Gotoh, Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein. Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J. MoI. Biol. 823-838 (1996)参照)が含まれる。ローカル法は、入力配列の全てが共有する1つ以上の保存モチーフを同定することにより配列を整列させる。非限定的な方法には、例えば、Match-box(例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans, Match-Box: A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5) CABIOS 501 -509 (1992)参照)、ギブスサンプリング(例えば、C. E. Lawrence et al., Detecting Subtle Sequence Signals: A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment, 262(5131 ) Science 208-214 (1993)参照)、Align-M(例えば、Ivo Van WaIIe et al., Align-M - A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences, 20(9) Bioinformatics:1428-1435 (2004)参照)が含まれる。
【0162】
したがって、配列同一性パーセントは、従来の方法により決定される。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603-16, 1986及びHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-19, 1992を参照されたい。簡単に言うと、ギャップ開始ペナルティとして10、ギャップ伸長ペナルティとして1、及び以下に示すようなHenikoff and Henikoff(前掲)の「blosum62」スコア行列(アミノ酸を標準の1文字コードで示す)を用いてアラインメントスコアを最適化するように2つのアミノ酸配列を整列させる。
【0163】
2つ以上の核酸又はアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、配列が共有する同一位置数の関数である。したがって、同一性パーセントは、同一のヌクレオチド/アミノ酸の数をヌクレオチド/アミノ酸の合計数で除算したものに100を乗算して計算し得る。配列同一性パーセントの計算は、ギャップ数と、2つ以上の配列のアラインメントを最適化するために導入する必要がある各ギャップの長さとを考慮して行ってもよい。2つ以上の配列間の配列比較及び同一性パーセントの決定は、当業者によく知られているBLAST等の特定の数学アルゴリズムを用いて実施することができる。
【0164】
【0165】
次に、同一性パーセントは次のように計算される。
【数2】
【0166】
実質的に相同なポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有することを特徴とする。こうした変化は、好ましくは軽微な性質のものであり、即ち、保存的アミノ酸置換(下記参照)及びポリペプチドの折り畳み又は活性に著しく影響しない他の置換、一般には1乃至約30個のアミノ酸の僅かな欠失、及びアミノ末端メチオニン残基、約20乃至25残基までの小さなリンカペプチド、若しくはアフィニティタグ等の僅かなアミノ又はカルボキシル末端伸長である。
【0167】
保存的アミノ酸置換
【0168】
塩基性:
アルギニン
リジン
ヒスチジン
酸性:
グルタミン酸
アスパラギン酸
極性:
グルタミン
アスパラギン
疎水性:
ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族:
フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
小型:
グリシン
アラニン
セリン
スレオニン
メチオニン
【0169】
20種類の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(例えば4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン、及びα-メチルセリン)により、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基を置換し得る。限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝コードによりコードされないアミノ酸、及び非天然アミノ酸により、ポリペプチドアミノ酸残基を置換し得る。本発明のポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる
【0170】
天然に存在しないアミノ酸は、限定では無く、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグリシン、アロ-スレオニン、メチル-スレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、及び4-フルオロフェニルアラニンを含む。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質に組み込むために、当該技術分野において幾つかの方法が知られている。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサtRNAを用いてナンセンス変異を抑制したインビトロ系を利用することができる。アミノ酸及びアミノアシル化tRNAを合成するための方法は、当該技術分野において公知である。ナンセンス変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、E.coli S30抽出物と、市販の酵素及び他の試薬とを含む無細胞系において実施される。タンパク質は、クロマトグラフィにより精製する。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991、 Ellman et al., Methods Enzymol. 202:301, 1991、 Chung et al., Science 259:806-9, 1993、及びChung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10145-9, 1993を参照されたい。第2の方法において、翻訳は、アフリカツメガエル卵母細胞において、変異mRNA及び化学的にアミノアシル化されたサプレッサtRNAのマイクロインジェクションにより実施される(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271:19991-8, 1996)。第3の方法では、大腸菌細胞を、置換対象の天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)が存在せず、所望の天然に存在しないアミノ酸(群)(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、又は4-フルオロフェニルアラニン)が存在する状態で培養する。天然に存在しないアミノ酸は、自然状態での対応物の代わりにポリペプチドに取り込まれる。Koide et al., Biochem. 33:7470-6, 1994を参照されたい。天然に存在するアミノ酸残基は、インビトロ化学修飾により、天然に存在しない種に変換することができる。化学修飾は、部位特異的突然変異誘発と組み合わせて、置換の範囲を更に拡大することができる(Wynn and Richards, Protein Sci. 2:395-403, 1993)。
【0171】
限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝コードによりコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、及び非天然アミノ酸により、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基を置換し得る。
【0172】
本発明のポリペプチド内の必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発等、当該技術分野において公知の手順により同定することができる(Cunningham and Wells, Science 244: 1081-5, 1989)。生物学的相互作用の部位は、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識のような手法により決定されるような構造の物理解析により、推定接触部位のアミノ酸の突然変異と組み合わせて決定することもできる。例えば、de Vos et al., Science 255:306-12, 1992; Smith et al., J. Mol. Biol. 224:899-904, 1992; Wlodaver et al., FEBS Lett. 309:59-64, 1992を参照されたい。必須アミノ酸の同定は、本発明のポリペプチドの関連成分(例えば、転位置又はプロテアーゼ成分)との相同性の解析から推測することもできる。
【0173】
多重アミノ酸置換を、Reidhaar-Olson and Sauer (Science 241:53-7, 1988)又はBowie and Sauer (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-6, 1989)により開示されるもの等、公知の突然変異誘発及びスクリーニング方法を用いて実施及び試験することができる。簡単に言うと、これらの執筆者は、ポリペプチド内の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、その後、突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して、各位置で許容される置換の範囲を決定する方法を開示している。使用可能な他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30:10832-7, 1991、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、HuseのWIPO公開番号WO92/06204)と、領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46:145, 1986; Ner et al., DNA 7:127, 1988)とが含まれる。
【0174】
多重アミノ酸置換を、Reidhaar-Olson and Sauer (Science 241:53-7, 1988)又はBowie and Sauer (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-6, 1989)により開示されるもの等、公知の突然変異誘発及びスクリーニング方法を用いて実施及び試験することができる。簡単に言うと、これらの執筆者は、ポリペプチド内の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、その後、突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して、各位置で許容される置換の範囲を決定する方法を開示している。使用可能な他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30:10832-7, 1991、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、HuseのWIPO公開番号WO92/06204)と、領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46:145, 1986; Ner et al., DNA 7:127, 1988)とが含まれる。
【0175】
特に定義されない限り、本明細書で用いられる技術用語及び科学用語は、本明細書が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。一般的な教科書及び辞書と一致する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 20 ED., John Wiley and Sons, New York (1994)及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は、当業者にとって、本開示で用いられる多くの用語の一般的な辞書となる。
【0176】
本開示は、本明細書に開示した方法及び材料の例により限定されず、本明細書に記載したものと類似する又は等価の任意の方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験に用いることができる。数値範囲は、範囲を定める数を含む。特に指示の無い限り、任意の核酸配列は、5’から3’の方向で左から右に書かれており、アミノ酸配列は、それぞれアミノからカルボキシへの方向で左から右に書かれている。
【0177】
本明細書に記載の見出しは、本開示の様々な態様又は実施形態を限定するものではない。
【0178】
本明細書において、アミノ酸は、アミノ酸の名前、3文字の略語、又は1文字の略語を用いて示す。本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。本明細書で使用される場合、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」という用語及び/又は「タンパク質」という用語と同義である。場合により、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である。場合により、「アミノ酸配列」という用語は「酵素」という用語と同義である。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書において相互に交換可能に用いられる。本開示及び特許請求の範囲では、アミノ酸残基の従来の1文字及び3文字のコードが使用される場合がある。アミノ酸の3文字コードは、生化学的命名法に関するIUPAC-IUB共同委員会(JCBN)に準拠して定義されたものである。また、遺伝暗号の縮重のため、ポリペプチドは、複数のヌクレオチド配列によりコードされ得ると理解される。
【0179】
用語の他の定義は、明細書全体を通して現れる場合がある。実施形態の例をより詳細に説明する前に、本開示は、説明された特定の実施形態に限定されず、それ自体が変化し得ることを理解されたい。また、本開示の範囲は、添付特許請求の範囲によりのみ定義されるため、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0180】
値の範囲が提示された場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値も、文脈上明らかに別の意味を示す場合を除き下限の単位の10分の1まで、具体的に開示されると理解される。記載範囲内の任意の記載値又は介在値と、記載範囲内の他の任意の記載値又は介在値との間の、より小さな範囲は、本開示に含まれる。こうしたより小さな範囲の上限及び下限は、独立して範囲内に包含又は除外してよく、より小さな範囲に上限及び下限の一方又は両方が含まれる場合又は何れも含まれない場合の各範囲も、記載範囲内で具体的に除外された任意の上下限に応じて本開示に含まれる。記載範囲が上下限の一方又は両方を含む場合、含まれた上下限の一方又は両方を除外した範囲も、本開示に含まれる。
【0181】
本明細書及び付記特許請求の範囲での使用において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別の意味を示す場合を除き、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ボツリヌス神経毒(a botulinum neurotoxin)」への言及は、複数のそのような候補薬剤を含み、「ボツリヌス神経毒(the botulinum neurotoxin)」への言及は、1つ以上のボツリヌス神経毒及び当業者に公知のその等価物への言及等を含む。
【0182】
本明細書にて論じた公表文献は、本出願の出願日より前の開示内容のみのために提示している。本明細書の如何なる部分も、このような公表文献が本明細書の付記特許請求の範囲の先行技術を構成することを認めるものと解釈するべきではない。
【0183】
次に、本発明の実施形態を、単なる例として、以下の図及び実施例を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【
図1】
図1は、(A)短趾伸筋の位置、及び(B)記録された活動電位の描写を示す。
【
図2】
図2は、BoNT/Eの用量漸増の手順及び結果を示す。
【
図3】
図3は、プラセボと比較した、異なる用量のrBoNT/E投与後12週間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図4】
図4は、プラセボと比較した、異なる用量のDysport(登録商標)投与後26週間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図5】
図5は、プラセボと比較した、異なる用量のrBoNT/E投与後26週間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図6】
図6は、プラセボと比較した、異なる用量のrBoNT/E投与後7日間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図7】
図7は、プラセボと比較した、異なる用量のDysport(登録商標)投与後7日間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図8】
図8は、0.04ngのrBoNT/E又は20UのDysport(登録商標)投与後26週間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図9】
図9は、0.04ngのrBoNT/E又は20UのDysport(登録商標)投与後7日間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図10】
図10は、0.2ngのrBoNT/E又は40UのDysport(登録商標)投与後26週間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図11】
図11は、0.2ngのrBoNT/E又は40UのDysport(登録商標)投与後7日間に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。
【
図12】
図12は、0.04ngのrBoNT/E投与後10乃至21日に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。R二乗値が0.9642、傾きがy=3.5531x+9.9523の線形曲線を、CMAP値に当てはめている(Microsoft Excel)。CMAP値は、
図3において、この用量について示される値に対応している。
【
図13】
図13は、0.9ngのrBoNT/E投与後10乃至42日に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。R二乗値が0.9926、傾きがy=1.6167x-4.8227の線形曲線を、CMAP値に当てはめている(Microsoft Excel)。CMAP値は、
図3において、この用量について示される値に対応している。
【
図14】
図14は、3.6ngのrBoNT/E投与後10乃至56日に亘る、刺激された短趾伸筋のベースライン複合筋活動電位(CMAP)に対する百分率を示す(平均±SEM)。R二乗値が0.9736、傾きがy=1.7325x-9.3108の線形曲線を、CMAP値に当てはめている(Microsoft Excel)。CMAP値は、
図3において、この用量について示される値に対応している。
【0185】
配列表
【0186】
最初のMetアミノ酸残基又は対応する最初のコドンが以下の配列番号の何れかに示される場合、当該残基/コドンは、任意選択となり得る。
【0187】
配列番号1(BoNT/Eのヌクレオチド配列)
1 atgccaaaaa ttaatagttt taattataat gatcctgtta atgatagaac aattttatat
61 attaaaccag gcggttgtca agaattttat aaatcattta atattatgaa aaatatttgg
121 ataattccag agagaaatgt aattggtaca accccccaag attttcatcc gcctacttca
181 ttaaaaaatg gagatagtag ttattatgac cctaattatt tacaaagtga tgaagaaaag
241 gatagatttt taaaaatagt cacaaaaata tttaatagaa taaataataa tctttcagga
301 gggattttat tagaagaact gtcaaaagct aatccatatt tagggaatga taatactcca
361 gataatcaat tccatattgg tgatgcatca gcagttgaga ttaaattctc aaatggtagc
421 caagacatac tattacctaa tgttattata atgggagcag agcctgattt atttgaaact
481 aacagttcca atatttctct aagaaataat tatatgccaa gcaatcacgg ttttggatca
541 atagctatag taacattctc acctgaatat tcttttagat ttaatgataa tagtatgaat
601 gaatttattc aagatcctgc tcttacatta atgcatgaat taatacattc attacatgga
661 ctatatgggg ctaaagggat tactacaaag tatactataa cacaaaaaca aaatccccta
721 ataacaaata taagaggtac aaatattgaa gaattcttaa cttttggagg tactgattta
781 aacattatta ctagtgctca gtccaatgat atctatacta atcttctagc tgattataaa
841 aaaatagcgt ctaaacttag caaagtacaa gtatctaatc cactacttaa tccttataaa
901 gatgtttttg aagcaaagta tggattagat aaagatgcta gcggaattta ttcggtaaat
961 ataaacaaat ttaatgatat ttttaaaaaa ttatacagct ttacggaatt tgatttagca
1021 actaaatttc aagttaaatg taggcaaact tatattggac agtataaata cttcaaactt
1081 tcaaacttgt taaatgattc tatttataat atatcagaag gctataatat aaataattta
1141 aaggtaaatt ttagaggaca gaatgcaaat ttaaatccta gaattattac accaattaca
1201 ggtagaggac tagtaaaaaa aatcattaga ttttgtaaaa atattgtttc tgtaaaaggc
1261 ataaggaaat caatatgtat cgaaataaat aatggtgagt tattttttgt ggcttccgag
1321 aatagttata atgatgataa tataaatact cctaaagaaa ttgacgatac agtaacttca
1381 aataataatt atgaaaatga tttagatcag gttattttaa attttaatag tgaatcagca
1441 cctggacttt cagatgaaaa attaaattta actatccaaa atgatgctta tataccaaaa
1501 tatgattcta atggaacaag tgatatagaa caacatgatg ttaatgaact taatgtattt
1561 ttctatttag atgcacagaa agtgcccgaa ggtgaaaata atgtcaatct cacctcttca
1621 attgatacag cattattaga acaacctaaa atatatacat ttttttcatc agaatttatt
1681 aataatgtca ataaacctgt gcaagcagca ttatttgtaa gctggataca acaagtgtta
1741 gtagatttta ctactgaagc taaccaaaaa agtactgttg ataaaattgc agatatttct
1801 atagttgttc catatatagg tcttgcttta aatataggaa atgaagcaca aaaaggaaat
1861 tttaaagatg cacttgaatt attaggagca ggtattttat tagaatttga acccgagctt
1921 ttaattccta caattttagt attcacgata aaatcttttt taggttcatc tgataataaa
1981 aataaagtta ttaaagcaat aaataatgca ttgaaagaaa gagatgaaaa atggaaagaa
2041 gtatatagtt ttatagtatc gaattggatg actaaaatta atacacaatt taataaaaga
2101 aaagaacaaa tgtatcaagc tttacaaaat caagtaaatg caattaaaac aataatagaa
2161 tctaagtata atagttatac tttagaggaa aaaaatgagc ttacaaataa atatgatatt
2221 aagcaaatag aaaatgaact taatcaaaag gtttctatag caatgaataa tatagacagg
2281 ttcttaactg aaagttctat atcctattta atgaaattaa taaatgaagt aaaaattaat
2341 aaattaagag aatatgatga gaatgtcaaa acgtatttat tgaattatat tatacaacat
2401 ggatcaatct tgggagagag tcagcaagaa ctaaattcta tggtaactga taccctaaat
2461 aatagtattc cttttaagct ttcttcttat acagatgata aaattttaat ttcatatttt
2521 aataaattct ttaagagaat taaaagtagt tcagttttaa atatgagata taaaaatgat
2581 aaatacgtag atacttcagg atatgattca aatataaata ttaatggaga tgtatataaa
2641 tatccaacta ataaaaatca atttggaata tataatgata aacttagtga agttaatata
2701 tctcaaaatg attacattat atatgataat aaatataaaa attttagtat tagtttttgg
2761 gtaagaattc ctaactatga taataagata gtaaatgtta ataatgaata cactataata
2821 aattgtatga gagataataa ttcaggatgg aaagtatctc ttaatcataa tgaaataatt
2881 tggacattgc aagataatgc aggaattaat caaaaattag catttaacta tggtaacgca
2941 aatggtattt ctgattatat aaataagtgg atttttgtaa ctataactaa tgatagatta
3001 ggagattcta aactttatat taatggaaat ttaatagatc aaaaatcaat tttaaattta
3061 ggtaatattc atgttagtga caatatatta tttaaaatag ttaattgtag ttatacaaga
3121 tatattggta ttagatattt taatattttt gataaagaat tagatgaaac agaaattcaa
3181 actttatata gcaatgaacc taatacaaat attttgaagg atttttgggg aaattatttg
3241 ctttatgaca aagaatacta tttattaaat gtgttaaaac caaataactt tattgatagg
3301 agaaaagatt ctactttaag cattaataat ataagaagca ctattctttt agctaataga
3361 ttatatagtg gaataaaagt taaaatacaa agagttaata atagtagtac taacgataat
3421 cttgttagaa agaatgatca ggtatatatt aattttgtag ccagcaaaac tcacttattt
3481 ccattatatg ctgatacagc taccacaaat aaagagaaaa caataaaaat atcatcatct
3541 ggcaatagat ttaatcaagt agtagttatg aattcagtag gaaataattg tacaatgaat
3601 tttaaaaata ataatggaaa taatattggg ttgttaggtt tcaaggcaga tactgtagtt
3661 gctagtactt ggtattatac acatatgaga gatcatacaa acagcaatgg atgtttttgg
3721 aactttattt ctgaagaaca tggatggcaa gaaaaataa
【0188】
配列番号2(BoNT/Eのポリペプチド配列)
PKINSFNYNDPVNDRTILYIKPGGCQEFYKSFNIMKNIWIIPE
RNVIGTTPQDFHPPTSLKNGDSSYYDPNYLQSDEEKDRFLKIVTKIFNRINNNLSGGI
LLEELSKANPYLGNDNTPDNQFHIGDASAVEIKFSNGSQDILLPNVIIMGAEPDLFET
NSSNISLRNNYMPSNHGFGSIAIVTFSPEYSFRFNDNSMNEFIQDPALTLMHELIHSL
HGLYGAKGITTKYTITQKQNPLITNIRGTNIEEFLTFGGTDLNIITSAQSNDIYTNLL
ADYKKIASKLSKVQVSNPLLNPYKDVFEAKYGLDKDASGIYSVNINKFNDIFKKLYSF
TEFDLATKFQVKCRQTYIGQYKYFKLSNLLNDSIYNISEGYNINNLKVNFRGQNANLN
PRIITPITGRGLVKKIIRFCKNIVSVKGIRKSICIEINNGELFFVASENSYNDDNINT
PKEIDDTVTSNNNYENDLDQVILNFNSESAPGLSDEKLNLTIQNDAYIPKYDSNGTSD
IEQHDVNELNVFFYLDAQKVPEGENNVNLTSSIDTALLEQPKIYTFFSSEFINNVNKP
VQAALFVSWIQQVLVDFTTEANQKSTVDKIADISIVVPYIGLALNIGNEAQKGNFKDA
LELLGAGILLEFEPELLIPTILVFTIKSFLGSSDNKNKVIKAINNALKERDEKWKEVY
SFIVSNWMTKINTQFNKRKEQMYQALQNQVNAIKTIIESKYNSYTLEEKNELTNKYDI
KQIENELNQKVSIAMNNIDRFLTESSISYLMKLINEVKINKLREYDENVKTYLLNYII
QHGSILGESQQELNSMVTDTLNNSIPFKLSSYTDDKILISYFNKFFKRIKSSSVLNMR
YKNDKYVDTSGYDSNININGDVYKYPTNKNQFGIYNDKLSEVNISQNDYIIYDNKYKN
FSISFWVRIPNYDNKIVNVNNEYTIINCMRDNNSGWKVSLNHNEIIWTLQDNAGINQK
LAFNYGNANGISDYINKWIFVTITNDRLGDSKLYINGNLIDQKSILNLGNIHVSDNIL
FKIVNCSYTRYIGIRYFNIFDKELDETEIQTLYSNEPNTNILKDFWGNYLLYDKEYYL
LNVLKPNNFIDRRKDSTLSINNIRSTILLANRLYSGIKVKIQRVNNSSTNDNLVRKND
QVYINFVASKTHLFPLYADTATTNKEKTIKISSSGNRFNQVVVMNSVGNNCTMNFKNN
NGNNIGLLGFKADTVVASTWYYTHMRDHTNSNGCFWNFISEEHGWQEK
【0189】
配列番号3(BoNT/E-UniProt Q00496)
MPKINSFNYNDPVNDRTILYIKPGGCQEFYKSFNIMKNIWIIPERNVIGTTPQDFHPPTSLKNGDSSYYDPNYLQSDEEKDRFLKIVTKIFNRINNNLSGGILLEELSKANPYLGNDNTPDNQFHIGDASAVEIKFSNGSQDILLPNVIIMGAEPDLFETNSSNISLRNNYMPSNHRFGSIAIVTFSPEYSFRFNDNCMNEFIQDPALTLMHELIHSLHGLYGAKGITTKYTITQKQNPLITNIRGTNIEEFLTFGGTDLNIITSAQSNDIYTNLLADYKKIASKLSKVQVSNPLLNPYKDVFEAKYGLDKDASGIYSVNINKFNDIFKKLYSFTEFDLRTKFQVKCRQTYIGQYKYFKLSNLLNDSIYNISEGYNINNLKVNFRGQNANLNPRIITPITGRGLVKKIIRFCKNIVSVKGIRKSICIEINNGELFFVASENSYNDDNINTPKEIDDTVTSNNNYENDLDQVILNFNSESAPGLSDEKLNLTIQNDAYIPKYDSNGTSDIEQHDVNELNVFFYLDAQKVPEGENNVNLTSSIDTALLEQPKIYTFFSSEFINNVNKPVQAALFVSWIQQVLVDFTTEANQKSTVDKIADISIVVPYIGLALNIGNEAQKGNFKDALELLGAGILLEFEPELLIPTILVFTIKSFLGSSDNKNKVIKAINNALKERDEKWKEVYSFIVSNWMTKINTQFNKRKEQMYQALQNQVNAIKTIIESKYNSYTLEEKNELTNKYDIKQIENELNQKVSIAMNNIDRFLTESSISYLMKIINEVKINKLREYDENVKTYLLNYIIQHGSILGESQQELNSMVTDTLNNSIPFKLSSYTDDKILISYFNKFFKRIKSSSVLNMRYKNDKYVDTSGYDSNININGDVYKYPTNKNQFGIYNDKLSEVNISQNDYIIYDNKYKNFSISFWVRIPNYDNKIVNVNNEYTIINCMRDNNSGWKVSLNHNEIIWTFEDNRGINQKLAFNYGNANGISDYINKWIFVTITNDRLGDSKLYINGNLIDQKSILNLGNIHVSDNILFKIVNCSYTRYIGIRYFNIFDKELDETEIQTLYSNEPNTNILKDFWGNYLLYDKEYYLLNVLKPNNFIDRRKDSTLSINNIRSTILLANRLYSGIKVKIQRVNNSSTNDNLVRKNDQVYINFVASKTHLFPLYADTATTNKEKTIKISSSGNRFNQVVVMNSVGNCTMNFKNNNGNNIGLLGFKADTVVASTWYYTHMRDHTNSNGCFWNFISEEHGWQEK
【0190】
配列番号4(BoNT/EのL鎖のポリペプチド配列)
PKINSFNYNDPVNDRTILYIKPGGCQEFYKSFNIMKNIWIIPE
RNVIGTTPQDFHPPTSLKNGDSSYYDPNYLQSDEEKDRFLKIVTKIFNRINNNLSGGI
LLEELSKANPYLGNDNTPDNQFHIGDASAVEIKFSNGSQDILLPNVIIMGAEPDLFET
NSSNISLRNNYMPSNHGFGSIAIVTFSPEYSFRFNDNSMNEFIQDPALTLMHELIHSL
HGLYGAKGITTKYTITQKQNPLITNIRGTNIEEFLTFGGTDLNIITSAQSNDIYTNLL
ADYKKIASKLSKVQVSNPLLNPYKDVFEAKYGLDKDASGIYSVNINKFNDIFKKLYSF
TEFDLATKFQVKCRQTYIGQYKYFKLSNLLNDSIYNISEGYNINNLKVNFRGQNANLN
PRIITPITGRGLVKKIIRFCKNIVSVKGIR
【0191】
配列番号5(BoNT/EのH鎖のポリペプチド配列)
KSICIEINNGELFFVASENSYNDDNINT
PKEIDDTVTSNNNYENDLDQVILNFNSESAPGLSDEKLNLTIQNDAYIPKYDSNGTSD
IEQHDVNELNVFFYLDAQKVPEGENNVNLTSSIDTALLEQPKIYTFFSSEFINNVNKP
VQAALFVSWIQQVLVDFTTEANQKSTVDKIADISIVVPYIGLALNIGNEAQKGNFKDA
LELLGAGILLEFEPELLIPTILVFTIKSFLGSSDNKNKVIKAINNALKERDEKWKEVY
SFIVSNWMTKINTQFNKRKEQMYQALQNQVNAIKTIIESKYNSYTLEEKNELTNKYDI
KQIENELNQKVSIAMNNIDRFLTESSISYLMKLINEVKINKLREYDENVKTYLLNYII
QHGSILGESQQELNSMVTDTLNNSIPFKLSSYTDDKILISYFNKFFKRIKSSSVLNMR
YKNDKYVDTSGYDSNININGDVYKYPTNKNQFGIYNDKLSEVNISQNDYIIYDNKYKN
FSISFWVRIPNYDNKIVNVNNEYTIINCMRDNNSGWKVSLNHNEIIWTLQDNAGINQK
LAFNYGNANGISDYINKWIFVTITNDRLGDSKLYINGNLIDQKSILNLGNIHVSDNIL
FKIVNCSYTRYIGIRYFNIFDKELDETEIQTLYSNEPNTNILKDFWGNYLLYDKEYYL
LNVLKPNNFIDRRKDSTLSINNIRSTILLANRLYSGIKVKIQRVNNSSTNDNLVRKND
QVYINFVASKTHLFPLYADTATTNKEKTIKISSSGNRFNQVVVMNSVGNNCTMNFKNN
NGNNIGLLGFKADTVVASTWYYTHMRDHTNSNGCFWNFISEEHGWQEK
【実施例0192】
材料及び方法
【0193】
薬力学モデル
【0194】
薬力学モデルには、短趾伸筋(EDB)を利用した(
図1A)。EDBは、足の表在筋であり、電気生理学的研究に利用しやすい。足の第2指乃至第4指の伸展に関与し、その弱さにより、歩行は損なわれない。
【0195】
EDB筋は、Hamjian and Walker (1994), Muscle Nerve, 17(12): 1385-92において公開されているように、BoNT/Aの効果を決定するために以前に使用されている。それ以降、このモデルは、以下の目的で広く使用されている。
・BoNT注射後のヒトの筋肉弛緩の開始及び程度並びに効果の持続期間の定量化(Sloop et al (1996), Neurology, 46(5), 1382-6)。
・BoNTの様々なサブタイプの比較(例えば、BoNT/B対BoNT/A)(Sloop et al (1997), Neurology, 49(1), 189-94)。
・BoNT/A製剤の効力の確認((Park and Ahn (2013), J Clin Neurol, 9(3), 157-164)。
【0196】
この方法には、注入を受けたEDBの刺激と、その活動電位の記録とが含まれる(
図1B)。BoNT/E又はBoNT/Aを超音波ガイド下投与により投与し、表面電極を用いて、活動電位の刺激及び記録を行った。
【0197】
図2は、以前のコホートからの安全性(盲検)及び薬力学的(匿名)データのレビューに基づく用量漸増手順をまとめている。
【0198】
研究デザイン及び治療
【0199】
第1相無作為化二重盲検プラセボ対照研究(ヒト臨床試験)を実施した。
【0200】
各被験者は、右EDB筋に、rBoNT-E又はプラセボ(3:1でランダム化)の一回の筋肉内投与を受けた。
【0201】
被験者のコホートを用いて、各コホートに以前より高用量のrBoNT-Eを注射した。各コホートの全ての被験者には、同じ用量のrBoNT-E又はプラセボを投与した。
【0202】
コホートは、最大8つとした。
・初期コホート:コホート毎に4人の被験者(3人がrBoNT-E、1人がプラセボ)。
・後期コホート:少なくとも3人のrBoNT-E注射被験者において、3つの連続した時点で、CMAPのベースラインからの阻害が約50%となった時点で、コホートを2倍にし、8人の被験者とした。
【0203】
コホートは、用量の低い順に連続して注射した。
・2つの連続したコホートで、コホート当たり6人のrBoNT-E注射被験者のうち少なくとも4人において、3つの連続した時点で最大のCMAP阻害(ベースラインから85%以上の減少)が達成されるまで用量を増大させた。
・使用した用量は、0.1細胞ベースアッセイ単位(CBA U、0.04ng)、0.5CBA U(0.2ng)、2.25CBA U(0.9ng)、及び9.0CBA U(3.6ng)とした。
【0204】
組み入れ基準には、以下を含めた:
・健康な成人男性(18乃至55歳)、肥満度指数18乃至30kg/m2。
・電気生理学的検査のための腓骨神経の刺激によるEDB CMAPの総振幅が5mV以上(スクリーニング時及び注射前)。
・研究プロトコルを順守し、必要な期間クリニックに留まることに同意。
【0205】
除外基準には、以下を含めた:
・登録前6か月以内の過去のBoNT治療。
・rBoNT-E製剤の成分に対する過敏症の病歴。
・BoNTへの曝露により被験者が危険となる病状。
・神経筋伝達剤の使用。
【0206】
細胞ベースアッセイ
【0207】
rBoNT/Eの生物活性は、細胞ベースアッセイ(CBA)により測定し、定義された参照標準に対する相対効力百分率により表す。このCBAは、BoNT/Eのインビボ作用機序、即ち、受容体への結合からつながる毒素の内部移行及び軽鎖エンドペプチダーゼドメインによるシナプトソーム関連タンパク質25(SNAP25)の切断を模倣している。CBAでは、フルオロフォアであるシアン蛍光タンパク質及び黄色蛍光タンパク質(YFP)が隣接した全長SNAP-25を利用するレポータを発現するように設計されたマウス神経芽細胞腫細胞株Neuro-2Aを使用する。操作された細胞をBoNT/Eと共にインキュベートすると、毒素が結合し、受容体依存性エンドサイトーシスを介して内部移行し、BoNT/E軽鎖のサイトゾル内への放出につながる。エンドペプチダーゼ軽鎖は、レポータ内のSNAP-25を切断し、SNAP-25の残基及びYFPを含むC末端レポータフラグメントのサイトゾル内への放出が生じる。フラグメントは急速に分解され、YFP蛍光が失われる。組換えBoNT/E生物活性は、毒素がBoNT/E H鎖受容体の結合、内部移行、及び転位置活性を介して細胞に侵入した場合にのみ検出され、したがって、インビトロCBAはBoNT/Eの自然の細胞生物学を模倣している。以下の例では、BoNT/Eの量に対応するCBA単位を記載している。
【0208】
1CBA単位は、1分間に1nMの基質(SNAP-25)を切断するのに必要なBoNT/Eの量として定義し得る。
【0209】
実施例1
【0210】
BoNT/Eの投与
【0211】
図3は、プラセボが100%CMAPベースライン付近で変化することを示しており、BoNT/Eの明確な用量効果を示している。2つの高用量は、最大阻害(90%以上)に達する同じ薬力学的(PD)プロファイルを示し、作用持続期間は、約50日(15%阻害カットオフ)又は30日(50%阻害カットオフ)となった。
【0212】
Dysport(登録商標)の投与
【0213】
図4は、プラセボが100%ベースライン付近で変化し、Dysport(登録商標)(BoNT/A)の用量が40及び70Uで60乃至70%の阻害に達したことを示している。阻害は、数週間に亘り水平状態となり、26週間のフォローアップ期間終了時に回復(15%の阻害に復帰)しなかった。
【0214】
実施例2
【0215】
投与後26週間までの分析
【0216】
図4及び
図5を比較すると、調査した用量範囲で、rBoNT-Eは、効果の発現が速く、ピーク効果が大きく、効果の持続期間が短いことが明らかとなった。
【0217】
実施例3
【0218】
作用の発現
【0219】
BoNT/Eの作用発現までの時間(15%のCMAP阻害が記録された最初の時点として定義)は、全ての被験者及び調査した全てのrBoNT-E用量レベルにおいて速く一貫していた。また、発現は、1日目(BoNT/E投与の日)乃至2日目の範囲であるのに対し、Dysport(登録商標)では1日目乃至7日目の範囲であることが分かった。結果を
図6及び
図7に示し、値を以下の表にまとめる。
【0220】
【0221】
rBoNT/Eは、1日目(投与日)乃至2日目の作用の迅速な発現を伴った。最大効果までの時間は、2日目乃至(遅くとも)14日目に記録された。また、rBoNT/Eは、2つの最高試験用量で約50日間続く短い作用持続期間を伴った。
【0222】
表2に、Dysport(登録商標)のデータを示す。
【表2】
【0223】
Dysport(登録商標)は、調査した用量範囲で1日目乃至7日目と作用の発現が遅く、投与後26週間を超える作用持続期間を示した。
【0224】
実施例4
【0225】
40pgのrBoNT/Eと20UのDysport(登録商標)の比較
【0226】
図8及び
図9は、40pgのrBoNT-Eが、20UのDysport(登録商標)と同じ効果の振幅をもたらすことを示している。特に、20UのDysport=108pg神経毒(5.38pg神経毒/U)となる。
【0227】
PD特性の比較を以下の表で行っている。
【0228】
表3に、rBoNT/E及びDysport(登録商標)の比較データを示す。
【表3】
【0229】
実施例5
【0230】
200pgのrBoNT/Eと40UのDysport(登録商標)の比較
【0231】
図10及び11は、200pgのrBoNT-Eが、40UのDysport(登録商標)と同じ効果の振幅をもたらすことを示している。PD特性の比較を以下の表で行っている。
【0232】
表4に、rBoNT/E及びDysport(登録商標)の比較データを示す。
【表4】
【0233】
結論として、BoNT/Eは以下を示した。
・健康なボランティア(正常な筋肉)における最大3.6ngのrBoNT-Eの単回筋肉内投与に対する良好な全体的な安全性プロファイル。
・隣接する筋肉(AH及びADQ)への局所的拡散の不在。
・調査した用量に無関係の迅速な作用の発現。
・0.9ngから最大効果に到達する用量依存的な効果の振幅。
・略1週間以内に最大効果に到達。
・略50日間の効果持続期間を伴う2つの最高試験用量での同様のPDプロファイル。
【0234】
対照的に、CMAPの阻害は、Dysport(登録商標)の26週間(6か月)の記録期間終了時に依然として観察された。
【0235】
最大効果の振幅について:
・20UのDysportは、0.04ngのrBoNT-Eと比較され、
・40乃至70UのDysportは0.2ngのrBoNT-Eと比較される。
【0236】
実施例6
【0237】
上顔面皺線の治療
【0238】
重度の眉間線(顔面皺スケール(FWS)によるグレード3(0=なし、3=重度))を有する被験者を提示する。少なくとも0.1ng(注射部位当たり)の用量のrBoNT/Eを、5つの部位に筋肉内注射する(各筋肉が実質的に同時に注射されるように連続して行う):鼻根筋内1部位、各皺眉筋内2部位。
【0239】
被験者の眉間線の重症度は、FWSを用いて7日目(投与後)に評価し、グレード0と判定される(したがって、rBoNT/Eは、上顔面皺線を治療する作用の発現が速いことが実証される)。
【0240】
被験者の眉間線の重症度は、FWSを用いて35日目(投与後)に評価され、グレード2(中等度)と判定される。
【0241】
被験者の眉間線の重症度は、FWSを用いて56日目(投与後)に評価され、グレード3(重度)と判定される(したがって、rBoNT/Eは、上顔面皺線を治療する効果が短いことが実証される)。
【0242】
上記明細書において言及した全ての文書は、出典を明記することにより本願明細書の一部とする。本発明の記載された方法及びシステムの様々な変形及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。本発明を、特定の好適な実施形態に関連して説明してきたが、請求項に係る発明は、このような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、生化学及び生命工学又は関連分野の当業者には明らかである、記載された本発明を実施するための形態の様々な変形は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0243】
項目
[項目1]
障害の治療に使用するボツリヌス神経毒血清型E(BoNT/E)であって、前記BoNT/Eは、ヒト対象に投与され、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、
投与後14日目に、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する、ボツリヌス神経毒血清型E。
[項目2]
障害を治療するための方法であって、BoNT/Eをヒト対象に投与することを含み、前記BoNT/Eを投与することは、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、
投与後14日目に、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する、方法。
[項目3]
BoNT/Eをヒト対象に投与することを含む美容方法であって、前記BoNT/Eを投与することは、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害を投与後13日以内にもたらし、
投与後14日目に、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の25%超の阻害まで減少する、美容方法。
[項目4]
前記BoNT/Eは、天然のBoNT/Eに存在する複合タンパク質を含まない、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目5]
前記BoNT/Eは、組換えBoNT/Eである、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目6]
投与されるBoNT/Eの総投与量は、3.6ngより多い、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目7]
投与されるBoNT/Eの総投与量は、4ngより多い、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目8]
前記BoNT/Eは、投与されると、投与後13日以内での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害と、
投与後21日超乃至100日未満での、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害の15%以下への減少と、をもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目9]
前記BoNT/Eは、投与されると、投与後13日以内での、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害と、
投与後40日超乃至80日未満での、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害の15%以下への減少と、をもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目10]
前記BoNT/Eは、投与されると、神経伝達物質分泌の最大阻害後に神経伝達物質分泌の阻害百分率の実質的に線形の減少をもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目11]
前記BoNT/Eは、投与されると、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の少なくとも40%の阻害を、投与から10日以内にもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目12]
前記BoNT/Eは、投与されると、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害を、投与から80日未満でもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目13]
前記BoNT/Eは、投与されると、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害を、投与から60日未満でもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目14]
前記BoNT/Eは、投与されると、前記標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の15%以下の阻害を、投与から30日未満でもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目15]
前記BoNT/Eは、投与されると、神経伝達物質分泌の15%超の阻害を、5乃至100日間に亘りもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目16]
前記BoNT/Eは、投与されると、神経伝達物質分泌の15%超の阻害を、5乃至60日間に亘りもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目17]
前記BoNT/Eは、投与されると、神経伝達物質分泌の15%超の阻害を、5乃至40日間に亘りもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目18]
前記BoNT/Eは、投与されると、神経伝達物質分泌の15%超の阻害を、5乃至30日間に亘りもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目19]
前記BoNT/Eは、投与されると、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の40乃至60%の阻害を、投与後13日以内にもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目20]
前記BoNT/Eは、投与されると、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の40乃至60%の阻害を、投与後11日以内にもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目21]
前記BoNT/Eは、投与されると、
a.投与後13日以内に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害と、
b.その後の神経伝達物質分泌の阻害百分率の1日当たり1乃至10%の減少と、をもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目22]
前記BoNT/Eは、投与されると、
a.投与後10日以内に、標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の最大阻害と、
b.投与後10乃至24日目、6乃至42日目、10乃至42日目、及び/又は10乃至56日目における、その後の神経伝達物質分泌の阻害百分率の1日当たり1乃至3%の減少と、をもたらす、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目23]
標的細胞又は組織からの神経伝達物質分泌の阻害百分率は、電気生理学の手段を用いて測定される、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目24]
前記BoNT/Eは、
a.配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ、又は
b.配列番号2又は配列番号3に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目25]
前記BoNT/Eは、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、但し、前記ポリペプチド配列は、以下のアミノ酸の1つ以上を含む、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒(アミノ酸位置の番号付けは、BoNT/Eタンパク質のN末端メチオニンアミノ酸残基から始まり、C末端アミノ酸残基で終わる):
177位のグリシン、198位のセリン、340位のアラニン、773位のロイシン、963位のロイシン、964位のグルタミン、967位のアラニン、1195位のアスパラギン。
[項目26]
前記障害は、斜視に関連する状態、眼瞼痙攣、斜視、ジストニア(例えば、痙性ジストニア、顎口腔ジストニア、局所性ジストニア、遅発性ジストニア、喉頭ジストニア、四肢ジストニア、頸部ジストニア)、斜頚(例えば、痙性斜頸)、(SNAREの下方制御又は不活性化による)細胞/筋肉の無能力化が有効となる美容療法(美顔)用途、神経筋障害又は眼球運動の状態(例えば、共同性斜視、上下斜視、外直筋麻痺、眼振、甲状腺異常ミオパシ)、書痙、眼瞼痙攣、歯ぎしり、ウィルソン病、振戦、チック、分節性ミオクローヌス、攣縮、慢性多発性硬化症による痙縮、異常な膀胱制御をもたらす痙縮、アニムス、背部痙攣、筋肉硬直、緊張型頭痛、挙筋骨盤症候群、二分脊椎、遅発性ジスキネジア、パーキンソン病、吃音、片側顔面痙攣、眼瞼疾患、脳性麻痺、焦点痙縮、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、胃腸分泌過剰、筋痛(例えば、筋肉痙攣による疼痛)、頭痛の痛み(例えば、緊張性頭痛)、眉間皺、皮膚皺、癌、子宮障害、泌尿生殖器障害、泌尿生殖器神経障害、慢性神経性炎症、及び平滑筋障害のうちの1つ以上である、先行項目の何れかに記載の使用、方法、又は美容方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目27]
前記障害は、上肢痙縮である、項目1及び2又は4乃至26の何れかに記載の使用又は方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目28]
前記障害は、18歳以上の対象における上肢痙縮である、項目1及び2又は4乃至26の何れかに記載の使用又は方法のためのボツリヌス神経毒。
[項目29]
上顔面皺線を治療するためのものであり、随意により、前記上顔面皺線は、眉間線、外眼角線、前頭線、又はそれらの組み合わせから選択された1つ以上である、項目3乃至25の何れかに記載の美容方法。
[項目30]
眉間線を治療するためのものである、項目3乃至25又は29の何れかに記載の美容方法。