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特開2024-10093NK細胞を活性化するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010093
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】NK細胞を活性化するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240116BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240116BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20240116BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 38/19 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/07
C12N1/20 A
A61P35/00
A61K35/32
A61K35/12
A61P43/00 107
A61P37/06
A61K38/19
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183162
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2019564396の分割
【原出願日】2018-02-15
(31)【優先権主張番号】62/459,397
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェウェット,アナヒド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌のNK免疫療法の改善のための治療用組成物及び方法を提供する。
【解決手段】本出願は、破骨細胞(OC)及び/又は樹状細胞によってNK細胞をインビトロ、エクスビボ、及び/又はインビボで活性化する方法、及びこれらの活性化NK細胞を用いて疾患を治療する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び/又は図面に記載の通りの発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年2月15日に出願された米国仮出願第62/459,397号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、がん幹細胞/未分化腫瘍を溶解し、分化して、MHCクラスI、CD54及びB7H1を低発現し、CD44を高発現する。末梢血リンパ球の中程度から高い細胞障害活性は、がんリスクの低下と関連し、NK細胞による腫瘍への高い浸潤は、良好な予後と関連する一方、低い活性は、がんリスクの増加と関連する。
【0003】
NK細胞の抑制は、腫瘍微小環境におけるNK受容体のダウンレギュレーションによって媒介される。NK細胞の機能は、腫瘍患者において著しく減少することが以前に示されている。いくつかのインビトロNK増殖技術は、より多い治療細胞用量を可能にするために開発されている。末梢血単核細胞(PBMC)又はNK細胞の精製集団を、フィーダー細胞、例えば、インターロイキン(IL)-15及び41BBリガンドを発現するK562細胞、EBV-TM-LCL、ウィルムス腫瘍又は照射PBMCで刺激することで、十分な機能を有するより多くのNK細胞が得られた。生成されたNK細胞は、より高レベルのNKG2D、自然細胞傷害性受容体、DNAM-1、及びICAM-1を発現した。従って、エクスビボで増殖させ、活性化させた、CD3+T細胞が枯渇したNK細胞を得るための種々の方法が、臨床使用のために確立されている。さらに、がんが進行した患者におけるHLA半合致移植NK細胞の養子細胞移動の安全性及び有効性が確立されている。さらに、同種異系NK細胞は、固体腫瘍中で治療的役割を果たし、患者に移しても安全であることが、臨床試験により示されている。
【0004】
NK細胞による免疫療法は、十分な数の高機能NK細胞が得られないために制限されている。さらに、健康な個体からのNK細胞とは異なり、患者のNK細胞の増殖は、担癌ヒト化マウスからのものと同様に、それらのより速い増殖能力によってNK細胞に群がるごく一部の汚染T細胞の増殖により著しく制限される。
【0005】
NK細胞免疫調節の発生機序は理解されていない。NK免疫療法の改善のための治療用組成物及び方法を同定する大きな必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、少なくとも一部は、破骨細胞が、NK細胞の増殖を誘導することができ、健康なヒト及びがん患者の両方においてCD8+/CD4+T細胞比をさらに増加させるという発見に基づく。がん患者は、一般的に、健康なヒトに比べて、インビボでより高いNK細胞及びCD8+/CD4+T細胞比を有するが、過剰なNK及びCD8+T細胞は、(NK細胞機能を抑制し得る汚染T細胞の増殖により)寿命が短く、活性(例えば、細胞障害性及びサイトカイン選択)が欠如している。しかしながら、破骨細胞は、NK細胞増殖を誘導し、(例えば、サイトカイン分泌能力によって測定された)がん患者中のNK細胞の細胞数及び機能の両方を増加することができる。樹状細胞は、T細胞の増殖を優先的に促進する一方、破骨細胞は、NK細胞の増殖を優先的に促進し、T及びNK細胞の選択的増殖に対する微小環境の違いを示唆している。従って、本発明は、免疫療法戦略において使用される多数の活性化NK細胞を増殖させる方法を提供する。かかる細胞は、幹様/低分化腫瘍の分化を促進することによってがん幹細胞及び対照腫瘍の成長を阻害又は排除するために使用することができる。
【0007】
培地中のNK細胞を破骨細胞(OC)と一緒に培養することを含む、インビトロ又はエクスビボでのNK細胞の活性化方法を本明細書で提供する。NKは、場合により、形質転換されていない一次(初代)NK細胞であってもよい。活性化NK細胞は、4週間以内に、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25回、又はそれ以上の集団倍加まで増殖し得る。培養物は、複数の破骨細胞(OC)及び複数のNK細胞を含み得、例えば、細胞培養物中のOC:NK細胞の比は、少なくとも1:2である。破骨細胞は、例えば、NK細胞による口腔扁平上皮癌幹様細胞(OSCSC)の溶解又は51Cr放出細胞傷害性アッセイによって測定された通り、NK細胞の細胞傷害性を増強し得る。
【0008】
さらに、破骨細胞は、NK細胞によって産生されたサイトカイン又はケモカインのうちの少なくとも1つの産生、分泌、及び/又は機能を増強し得る。例えば、破骨細胞は、NK細胞によるIFN-γ及び/又はIL-12の分泌、及び/又はNK細胞によるNKG2D、NKp46、NKp44、NKp30、CD94、KIR2、及びKIR3のうちの1つ以上の発現を増強し得る。
【0009】
NK細胞は、ヒト対象のがん試料から精製された細胞であってもよい。ある特定の実施形態では、細胞培養物は、がん試料からも生じるT細胞をさらに含む。ある特定のそのような実施形態では、NK細胞は、T細胞に対して優先的に増殖され得る。NK細胞は、任意の期間、例えば、少なくとも1ヵ月間増殖され得る。培養培地は、少なくとも1つの破骨細胞を補充して、NK細胞を優先的に増殖させ続けてもよい。T細胞は、例えば、51Cr放出細胞傷害性アッセイにおいて、例えば、T細胞によるOSCSCの溶解によって測定される通り、IFN-γを分泌するが、細胞傷害性を媒介しなくてもよい。増殖したNK細胞は、CD8+T細胞を増殖させることができ得る。OCにより増殖したNK細胞はまた、CD4+T細胞に比べて、CD8+T細胞を優先的に増殖させることができ得る。ある特定の実施形態では、方法は、例えば、NK細胞によるIFN-γの分泌をさらに増強するために、抗CD3抗体を細胞培養物に添加することをさらに含む。活性化NK細胞は、分割アネルギー化され得る。
【0010】
ある特定の実施形態では、方法は、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusから選択される少なくとも1つの細菌株を含む組成物を細胞培養物に添加することをさらに含み得、場合により、少なくとも1つの細菌株は、生きているか又は超音波処理され得る。例えば、組成物は、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusを含み得る。あるいは又はさらに、組成物は、sAJ2細菌を含み得る。細胞培養物中のNK細胞及び/又はOC濃度に対するsAJ2細菌濃度の比は、例えば、i)NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2;ii)OC:sAJ2について少なくとも1:4;及び/又はiii)OC:NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2:4であり得る。
【0011】
ある特定の実施形態では、方法は、NK細胞を活性化することができる別の薬剤を細胞培養物に添加することをさらに含み得る。
【0012】
ある特定の好ましい実施形態では、方法は、i)破骨細胞(OC)、NK細胞、及びT細胞を含む細胞培養物を提供すること;及びii)細胞培養物中のNK細胞、T細胞、及び破骨細胞を培養することを含み、それによって、T細胞に比べて、NK細胞を優先的に活性化することを含む。
【0013】
同様に、i)樹状細胞(DC)、NK細胞、及びT細胞を含む細胞培養物を提供すること;及びii)細胞培養物中のNK細胞、T細胞、及び樹状細胞を培養することを含み、それによって、NK細胞に比べて、T細胞を優先的に活性化することを含む、方法を本明細書で提供する。NK細胞は、一次NK細胞であってもよく、場合により、一次NK細胞は、形質転換されていない。培養物は、複数の破骨細胞(OC)及び複数のNK細胞を含み得、例えば、細胞培養物中のOC:NK細胞の比は、少なくとも1:2である。破骨細胞は、NK細胞増殖、及び/又はNK細胞によるIL-15の分泌を増強し得る。活性化NK細胞は、4週間以内に、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25回、又はそれ以上の集団倍加まで増殖し得る。さらに、破骨細胞は、例えば、NK細胞による口腔扁平上皮癌幹様細胞(OSCSC)の溶解によって測定された通り、NK細胞の細胞傷害性を増強し得る。細胞の細胞傷害性は、51Cr放出細胞傷害性アッセイによって測定され得る。
【0014】
ある特定の実施形態では、破骨細胞(OC)は、NK細胞によって産生されたサイトカイン又はケモカインのうちの少なくとも1つの産生、分泌、及び/又は機能を増強し得る。例えば、破骨細胞は、NK細胞によるIFN-γ及び/又はIL-12の分泌を増強し得る。破骨細胞は、NK細胞によるNKG2D、NKp46、NKp44、NKp30、CD94、KIR2、及びKIR3のうちの1つ以上の発現を増強し得る。NK細胞及び/又はT細胞は、対象、例えば、ヒト対象由来のがん試料から精製され得る。ある特定の実施形態では、NK細胞の優先的活性化は、少なくとも1ヵ月間持続し得る。さらに、NK細胞の優先的活性化が減衰又は停止した後、少なくとも1つの破骨細胞は、NK細胞の培養後に少なくとも1ヵ月間、細胞培養物に添加することで、NK細胞の活性化を継続し得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、IFN-γを分泌するが、細胞傷害性を媒介しなくてもよい。細胞傷害性は、例えば、51Cr放出細胞傷害性アッセイで、T細胞によるOSCSCの溶解によって測定され得る。増殖したNK細胞は、CD8+T細胞を増殖させることができ得、CD4+T細胞に比べて、CD8+T細胞を優先的に増殖させることができ得る。ある特定の実施形態では、DCにより増殖したNK細胞は、CD8+T細胞に対して、CD4+T細胞を優先的に増殖させることができ得る。他の実施形態では、抗CD3抗体は、例えば、NK細胞によるIFN-γの分泌をさらに増強するために、細胞培養物に添加し得る。さらに、活性化NK細胞は、分割アネルギー化され得る。
【0015】
ある特定の実施形態では、方法は、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusから選択される少なくとも1つの細菌株を含む組成物を細胞培養物に添加することをさらに含み得、場合により、少なくとも1つの細菌株は、生きているか又は超音波処理される。例えば、組成物は、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusを含み得る。
【0016】
あるいは又はさらに、組成物は、sAJ2細菌を含み得る。ある特定のそのような実施形態では、細胞培養物中のNK細胞及び/又はOC濃度に対するsAJ2細菌濃度の比は、例えば、i)NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2;ii)OC:sAJ2について少なくとも1:4;及び/又はiii)OC:NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2:4であり得る。
【0017】
さらに、方法は、NK細胞を活性化することができ得る別の薬剤を細胞培養物に添加することをさらに含み得る。方法は、T細胞を活性化することができる別の薬剤を細胞培養物に添加することをさらに含み得る。
【0018】
同様に、対象に、治療有効量の破骨細胞(OC)、破骨細胞(OC)を含む細胞培養物、及び/又は破骨細胞(OC)を含む細胞培養物の上清を投与することによって、がん又はがん関連疾患若しくは障害を有するか又は有すると疑われる対象におけるがん又はがん関連疾患若しくは障害を治療する方法を本明細書で提供する。
【0019】
破骨細胞は、対象中のNK細胞増殖を増強し得、場合により、破骨細胞は、NK細胞によるIL-15の分泌を増強する。ある特定の実施形態では、増強されたNK細胞増殖は、4週間以内に、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25回、又はそれ以上の集団倍加であり得る。さらに、破骨細胞は、例えば、NK細胞による口腔扁平上皮癌幹様細胞(OSCSC)の溶解によって測定された通り、NK細胞の細胞傷害性を増強し得る。細胞の細胞傷害性は、51Cr放出細胞傷害性アッセイによって測定され得る。
【0020】
ある特定の実施形態では、破骨細胞は、NK細胞によって産生されたサイトカイン又はケモカインのうちの少なくとも1つの産生、分泌、及び/又は機能を増加又は促進し得る。例えば、破骨細胞は、NK細胞によるIFN-γ及び/又はIL-12の分泌を増強し得る。破骨細胞は、T細胞に比べて、NK細胞を優先的に活性化し、及び/又はT細胞に比べて、NK細胞の増殖を優先的に増強し得る。ある特定の実施形態では、NK細胞の優先的活性化は、少なくとも1ヵ月間持続し得る。T細胞は、例えば、51Cr放出細胞傷害性アッセイで、T細胞によるOSCSCの溶解によって測定される通り、IFN-γを分泌するが、がんの細胞傷害性を媒介しなくてもよい。
【0021】
ある特定の実施形態では、活性化NK細胞は、対象中のCD8+T細胞を増殖させ得、例えば、CD4+T細胞に比べて、CD8+T細胞を優先的に増殖させ得る。対象は、NK細胞によるIFN-γの分泌をさらに増強するために、抗CD3抗体でも治療され得る。活性化NK細胞は、分割アネルギー化され得る。
【0022】
ある特定の実施形態では、治療方法は、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusから選択される少なくとも1つの細菌株を含む組成物を細胞培養物に添加することをさらに含み得、場合により、少なくとも1つの細菌株は、生きているか又は超音波処理される。例えば、組成物は、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusを含み得る。ある特定の実施形態では、組成物は、sAJ2細菌を含み得る。
【0023】
ある特定の実施形態では、方法は、NK細胞を活性化することができる別の薬剤を細胞培養物に添加することをさらに含み得る。
【0024】
ある特定の実施形態では、破骨細胞、細胞培養物、及び/又は上清は、医薬組成物中で投与され得、がんに全身又は局所投与され得る。ある特定の実施形態では、破骨細胞、細胞培養物、及び/又は上清は、対象に少なくとも2回投与され得、例えば、破骨細胞、細胞培養物、及び/又は上清は、最初の投与から少なくとも1ヵ月後に対象に投与され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトであり得る。
本発明は、以下の実施形態も提供する。
項目[1] インビトロ又はエクスビボでのNK細胞の活性化方法であって、
培地中の前記NK細胞を破骨細胞(OC)と一緒に培養することを含む、前記方法。
項目[2] i)NK細胞及び破骨細胞を含む細胞培養物を提供すること;並びに
ii)前記細胞培養物中の前記NK細胞及び前記破骨細胞を培養すること
を含み、それによって、前記NK細胞を活性化することを含む、方法。
項目[3] 前記NK細胞が、一次NK細胞であり、場合により、前記一次NK細胞が、形質転換されていない、項目[1]又は[2]に記載の方法。
項目[4] 前記活性化NK細胞が、4週間以内に少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25回、又はそれ以上の集団倍加まで増殖する、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[5] 前記培養物が、複数の破骨細胞(OC)及び複数のNK細胞を含み、並びに前記細胞培養物中のOC:NK細胞の比が、少なくとも1:2である、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[6] 前記破骨細胞が、NK細胞の細胞傷害性を増強し、場合により、前記NK細胞の細胞傷害性が、前記NK細胞による口腔扁平上皮癌幹様細胞(OSCSC)の溶解によって測定される、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[7] 前記NK細胞の細胞傷害性が、51Cr放出細胞傷害性アッセイによって測定される、項目[6]に記載の方法。
項目[8] 前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIFN-γの分泌を増強し、場合により、前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIL-12の分泌を増強する、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[9] 前記破骨細胞が、前記NK細胞によるNKG2D、NKp46、NKp44、NKp30、CD94、KIR2、及びKIR3のうちの1つ以上の発現を増強する、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[10] 前記NK細胞が、がん試料から精製される、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[11] 前記がん試料が、前記がんを有する対象由来である、項目[10]に記載の方法。
項目[12] 前記対象が、ヒトである、項目[11]に記載の方法。
項目[13] 前記細胞培養物が、前記がん試料からも生じるT細胞をさらに含む、項目[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
項目[14] 前記NK細胞が、前記T細胞に対して優先的に増殖される、項目[13]に記載の方法。
項目[15] 前記NK細胞を少なくとも1ヵ月間優先的に増殖させることをさらに含む、項目[14]に記載の方法。
項目[16] 前記培養培地に少なくとも1つの破骨細胞を補充し、前記NK細胞を優先的に増殖させ続けることをさらに含む、項目[15]に記載の方法。
項目[17] 前記T細胞が、IFN-γを分泌するが、細胞傷害性を媒介せず、場合により、前記細胞傷害性が、好ましくは51Cr放出細胞傷害性アッセイで、前記T細胞によるOSCSCの溶解によって測定される、項目[14]に記載の方法。
項目[18] 前記増殖したNK細胞が、CD8+T細胞を増殖させることができる、項目[13]~[17]のいずれか1つに記載の方法。
項目[19] 前記OCにより増殖した前記NK細胞が、CD4+T細胞に比べて、CD8+T細胞を優先的に増殖させることができる、項目[18]に記載の方法。
項目[20] 抗CD3抗体を前記細胞培養物に添加することをさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[21] 前記抗CD3抗体が、前記NK細胞によるIFN-γの分泌をさらに増強する、項目[20]に記載の方法。
項目[22] 前記活性化NK細胞が、分割アネルギー化される、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[23] 前記細胞培養物に、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusから選択される少なくとも1つの細菌株を含む組成物を添加することをさらに含み、場合により、前記少なくとも1つの細菌株が、生きているか又は超音波処理される、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[24] 前記組成物が、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusを含む、項目[23]に記載の方法。
項目[25] 前記組成物が、sAJ2細菌を含む、項目[23]に記載の方法。
項目[26] 前記細胞培養物中の前記NK細胞及び/又は前記OC濃度に対する前記sAJ2細菌濃度の比が、
i)NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2;
ii)OC:sAJ2について少なくとも1:4;及び/又は
iii)OC:NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2:4
である、項目[25]に記載の方法。
項目[27] 前記細胞培養物に、NK細胞を活性化することができる別の薬剤を添加することをさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[28] 前記破骨細胞が、前記NK細胞によって産生される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの産生、分泌、及び/又は機能を増強する、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
項目[29] i)破骨細胞(OC)、NK細胞、及びT細胞を含む細胞培養物を提供すること;並びに
ii)前記細胞培養物中の前記NK細胞、前記T細胞、及び前記破骨細胞を培養すること
を含み、それによって、前記T細胞に比べて、前記NK細胞を優先的に活性化することを含む、方法。
項目[30] i)樹状細胞(DC)、NK細胞及びT細胞を含む細胞培養物を提供すること;並びに ii)前記細胞培養物中の前記NK細胞、前記T細胞、及び前記樹状細胞を培養すること
を含み、それによって、前記NK細胞に比べて、前記T細胞を優先的に活性化することを含む、方法。
項目[31] 前記NK細胞が、一次NK細胞であり、場合により、前記一次NK細胞が、形質転換されていない、項目[29]又は[30]に記載の方法。
項目[32] 前記培養物が、複数の破骨細胞(OC)及び複数のNK細胞を含み、並びに前記細胞培養物中のOC:NK細胞の濃度比が、少なくとも1:2である、項目[29]又は[31]に記載の方法。
項目[33] 前記破骨細胞が、NK細胞増殖を増強し、場合により、前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIL-15の分泌を増強する、項目[29]、[31]、又は[32]に記載の方法。
項目[34] 前記活性化NK細胞が、4週間以内に少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25回、又はそれ以上の集団倍加まで増殖する、項目[33]に記載の方法。
項目[35] 前記破骨細胞が、NK細胞の細胞傷害性を増強し、場合により、前記NK細胞の細胞傷害性が、前記NK細胞による口腔扁平上皮癌幹様細胞(OSCSC)の溶解によって測定される、項目[29]及び[31]~[34]のいずれか1つに記載の方法。
項目[36] 前記細胞の細胞傷害性が、51Cr放出細胞傷害性アッセイによって測定される、項目[35]に記載の方法。
項目[37] 前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIFN-γの分泌を増強し、場合により、前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIL-12の分泌を増強する、項目[29]及び[31]~[36]のいずれか1つに記載の方法。
項目[38] 前記破骨細胞が、前記NK細胞によるNKG2D、NKp46、NKp44、NKp30、CD94、KIR2、及びKIR3のうちの1つ以上の発現を増強する、項目[29]及び[31]~[37]のいずれか1つに記載の方法。
項目[39] 前記NK細胞及び/又は前記T細胞が、がん試料から精製される、項目[29]~[38]のいずれか1つに記載の方法。
項目[40] 前記がん試料が、前記がんを有する対象由来である、項目[39]に記載の方法。
項目[41] 前記対象が、ヒトである、項目[40]に記載の方法。
項目[42] 前記NK細胞の優先的活性化が、少なくとも1ヵ月間持続する、項目[29]及び[31]~[41]のいずれか1つに記載の方法。
項目[43] 前記NK細胞の優先的活性化が減衰又は停止した後、少なくとも1つの破骨細胞を前記細胞培養物に添加することによって、前記NK細胞の活性化を継続することをさらに含み、場合により、少なくとも1つの破骨細胞の前記細胞培養物への添加が、前記NK細胞の培養の少なくとも1ヵ月後である、項目[42]に記載の方法。
項目[44] 前記T細胞が、IFN-γを分泌するが、細胞傷害性を媒介せず、場合により、前記細胞傷害性が、好ましくは、51Cr放出細胞傷害性アッセイで、前記T細胞によるOSCSCの溶解によって測定される、項目[29]~[43]のいずれか1つに記載の方法。
項目[45] 前記増殖したNK細胞が、CD8+T細胞を増殖させることができる、項目[29]及び[31]~[44]のいずれか1つに記載の方法。
項目[46] 前記OCにより増殖した前記NK細胞が、CD4+T細胞に比べて、CD8+T細胞を優先的に増殖させることができる、項目[45]に記載の方法。
項目[47] 前記DCにより増殖した前記NK細胞が、CD8+T細胞に対して、CD4+T細胞を優先的に増殖させることができる、項目[30]~[44]のいずれか1つに記載の方法。
項目[48] 抗CD3抗体を前記細胞培養物に添加することをさらに含む、項目[29]及び[31]~[46]のいずれか1つに記載の方法。
項目[49] 前記抗CD3抗体が、前記NK細胞によるIFN-γの分泌をさらに増強する、項目[48]に記載の方法。
項目[50] 前記活性化NK細胞が、分割アネルギー化される、項目[29]~[49]のいずれか1つに記載の方法。
項目[51] 前記細胞培養物に、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusから選択される少なくとも1つの細菌株を含む組成物を添加することをさらに含み、場合により、前記少なくとも1つの細菌株が、生きているか又は超音波処理される、項目[29]及び[31]~[50]のいずれか1つに記載の方法。
項目[52] 前記組成物が、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusを含む、項目[51]に記載の方法。
項目[53] 前記組成物が、sAJ2細菌を含む、項目[52]に記載の方法。
項目[54] 前記細胞培養物中の前記NK細胞及び/又は前記OC濃度に対する前記sAJ2細菌濃度の比が、
i)NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2;
ii)OC:sAJ2について少なくとも1:4;及び/又は
iii)OC:NK細胞:sAJ2について少なくとも1:2:4
である、項目[53]に記載の方法。
項目[55] 前記細胞培養物に、NK細胞を活性化することができる別の薬剤を添加することをさらに含む、項目[29]及び[31]~[52]のいずれか1つに記載の方法。
項目[56] 前記細胞培養物に、T細胞を活性化することができる別の薬剤を添加することをさらに含む、項目[30]~[52]のいずれか1つに記載の方法。
項目[57] 前記破骨細胞(OC)が、前記NK細胞によって産生される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの産生、分泌、及び/又は機能を増強する、項目[29]及び[31]~[55]のいずれか1つに記載の方法。
項目[58] がん又はがん関連疾患若しくは障害を有するか又は有すると疑われる対象におけるがん又はがん関連疾患若しくは障害の治療方法であって、
前記対象に、治療有効量の破骨細胞(OC)、破骨細胞(OC)を含む細胞培養物、及び/又は破骨細胞(OC)を含む細胞培養物の上清を投与することを含む、前記方法。
項目[59] 前記破骨細胞が、前記対象中のNK細胞を活性化させる、項目[58]に記載の方法。
項目[60] 前記NK細胞が、一次NK細胞であり、場合により、前記一次NK細胞が、形質転換されていない、項目[59]に記載の方法。
項目[61] 前記破骨細胞が、前記対象中のNK細胞増殖を増強し、場合により、前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIL-15の分泌を増強する、項目[59]~[60]のいずれか1つに記載の方法。
項目[62] 前記増強されたNK細胞増殖が、4週間以内に少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25回、又はそれ以上の集団倍加である、項目[61]に記載の方法。
項目[63] 前記破骨細胞が、NK細胞の細胞傷害性を増強し、場合により、前記NK細胞の細胞傷害性が、前記NK細胞による口腔扁平上皮癌幹様細胞(OSCSC)の溶解によって測定される、項目[59]~[62]のいずれか1つに記載の方法。
項目[64] 前記NK細胞の細胞傷害性が、51Cr放出細胞傷害性アッセイによって測定される、項目[63]に記載の方法。
項目[65] 前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIFN-γの分泌を増強し、場合により、前記破骨細胞が、前記NK細胞によるIL-12の分泌を増強する、項目[59]~[64]のいずれか1つに記載の方法。
項目[66] 前記破骨細胞が、T細胞に比べて、NK細胞を優先的に活性化し、場合により、前記破骨細胞が、T細胞に比べて、NK細胞の増殖を優先的に増強させる、項目[59]~[65]のいずれか1つに記載の方法。
項目[67] 前記NK細胞の優先的な増殖が、少なくとも1ヵ月間持続する、項目[66]に記載の方法。
項目[68] 前記T細胞が、IFN-γを分泌するが、前記がんの細胞傷害性を媒介せず、場合により、前記細胞傷害性が、例えば、51Cr放出細胞傷害性アッセイで、前記T細胞によるOSCSCの溶解によって測定される、項目[67]に記載の方法。
項目[69] 前記活性化NK細胞が、前記対象中のCD8+T細胞を増殖させる、項目[59]~[68]のいずれか1つに記載の方法。
項目[70] 前記活性化NK細胞が、CD4+T細胞に比べて、CD8+T細胞を優先的に増殖させる、項目[69]に記載の方法。
項目[71] 抗CD3抗体を前記対象に添加することをさらに含む、項目[58]~[70]のいずれか1つに記載の方法。
項目[72] 前記抗CD3抗体が、前記NK細胞によるIFN-γの分泌をさらに増強する、項目[71]に記載の方法。
項目[73] 前記活性化NK細胞が、分割アネルギー化される、項目[59]~[72]のいずれか1つに記載の方法。
項目[74] 前記対象に、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusから選択される少なくとも1つの細菌株を含む組成物を添加することをさらに含み、場合により、前記少なくとも1つの細菌株が、生きているか又は超音波処理される、項目[58]~[73]のいずれか1つに記載の方法。
項目[75] 前記組成物が、Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、KE99、及びLactobacillus bulgaricusを含む、項目[74]に記載の方法。
項目[76] 前記組成物が、sAJ2細菌を含む、項目[74]に記載の方法。
項目[77] 前記細胞培養物に、NK細胞を活性化することができる別の薬剤を添加することをさらに含む、項目[58]~[76]のいずれか1つに記載の方法。
項目[78] 前記破骨細胞(OC)が、前記NK細胞によって産生される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの産生、分泌、及び/又は機能を増加又は促進する、項目[58]~[77]のいずれか1つに記載の方法。
項目[79] 前記破骨細胞、前記細胞培養物、及び/又は前記上清が、医薬組成物中で投与される、項目[58]~[78]のいずれか1つに記載の方法。
項目[80] 前記破骨細胞、前記細胞培養物、及び/又は前記上清が、前記がんに全身又は局所投与される、項目[58]~[79]のいずれか1つに記載の方法。
項目[81] 前記破骨細胞、前記細胞培養物、及び/又は前記上清が、前記対象に少なくとも2回投与され、場合により、前記破骨細胞、前記細胞培養物、及び/又は前記上清が、最初の投与から少なくとも1ヵ月後に前記対象に投与される、項目[58]~[80]のいずれか1つに記載の方法。
項目[82] 前記対象が、ヒトである、項目[58]~[81]のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1-1】パネルA、B、C、及びDとして識別された4個のパネルを含み、破骨細胞によるNK活性化リガンドのより高い発現を示す。破骨細胞(OC)を生成するため、単球は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)(25ng/ml)及びRANKL(25ng/ml)を含有する培地中で21日間培養した。高純度のNK細胞(1×10個の細胞/ml)を、IL-2(1000U/ml)及び抗CD16 mAb(3μg/ml)の組み合わせで18時間処理した後、それぞれ、1:2:4(OC:NK:sAJ2)の比で、sAJ2細菌の存在下又は不在下で、自己OCと共培養した。CD3、CD16、及びCD56の表面発現は、フローサイトメトリーを用いて、6、9、12、15、19、24、29、及び34日目に共培養からの1×10個のリンパ球試料中で解析し、培養培地を新鮮にし、rh-IL-2(1000U/ml)を補充した(図1A)。
図1-2】細胞を、図1Aに示すように共培養し、増殖したリンパ球を、顕微鏡を用いて手動で計数した(図1B)。単球を、健康なドナーのPBMCから単離した。樹状細胞を生成するため、単球を、GM-CSF(150ng/ml)及びIL-4(50ng/ml)を含有する培地中で8日間培養した。破骨細胞を生成し、NK細胞を、図1Aに示すように精製した後、それぞれ、1:2:4(標的細胞:NK:sAJ2)の比で、sAJ2細菌の存在下にて自己細胞と共培養した。培養の6日目に、培養培地を除去し、NK細胞を、rh-IL-2で5時間処理した後、上清を収穫し、単一ELISAを用いてIFN-γ分泌を判断した(図1C)。
図1-3】単球を単離し、樹状細胞及び破骨細胞は、図1A及び図1Dに示すように生成し、OSCSC及びK562腫瘍細胞株を、材料及び方法で示すように培養し、1×10個の細胞を使用して、PE共役抗体及びフローサイトメトリーを用いて、MHC-1、CD54、KIR2、KIR3、KLRG1及びMICA/B表面発現を解析した。IgG2アイソタイプは、対照として使用した(図1D)。
図2-1】パネルA~Jとして識別された10個のパネルを含み、破骨細胞によるNK細胞及び樹状細胞によるT細胞の優先的な増殖及び機能の有意な向上を示す。単球は、ヒトPBMCから精製し、GM-CSF(150ng/ml)及びIL-4(50ng/ml)で8日間培養し、DCを生成した。破骨細胞を生成するため、単球を、M-CSF(25ng/ml)及びRANKL(25ng/ml)を含有するアルファ-MEM培地で21日間培養した。増殖のために、精製NK細胞(1×10個の細胞/ml)を、IL-2(1000U/ml)及び抗CD16 mAb(3μg/ml)の組み合わせで18時間処理した後、1:2:4(単球、DC又はOC:NK:sAJ2)の比でのsAJ2の存在下にて自己単球、DC、又はOCと共培養した。CD3、CD16、及びCD56の表面発現は、フローサイトメトリーを用いて、図に示される日数で解析し、培養培地を新鮮にし、rh-IL-2(1000U/ml)を補充した(図2A)。
図2-2】細胞は、図2Aに示すように共培養し、増殖したリンパ球の数を、顕微鏡測定を用いて評価した(図2B)。NK細胞(図2C)及びT/NKT(図2D)細胞の数を、図2Bの増殖細胞の総数の内のNK及びT/NKT細胞(図2A)のパーセンテージを用いて判断した。
図2-3】細胞は、図2Aに示すように共培養し、口腔扁平上皮癌幹細胞株(OSCSC)に対する細胞傷害性は、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて、図に示される日数で判断した。溶解単位30/10個の細胞は、30%のOSCSC×100を溶解するのに必要なリンパ球の逆数を用いて判断した(図2E)。図1Aに示すように、上清を、6、9、12及び15日目にNKのOCとの共培養物から収穫し、単一ELISAを用いてIFN-γ分泌を判断した(図2F)。NK細胞を、自己破骨細胞と共培養し、図2Aに示すように、10人の健康なドナーから増殖させた。NK細胞の累積増殖倍数は、ドナーごとに31日間算出し(図2G)、集団倍加は、ベースライン計数に対する最終計数の比の対数を、2の対数で除したものに基づいて算出した(図2H)。
図2-4】樹状細胞及び破骨細胞は、図2Aに示すように生成し、1×10個の細胞を使用して、PE共役抗体及びフローサイトメトリー解析を用いて、ULBP、KIR2、KIR3、KLRG1及びMICA/B表面発現を解析した。IgG2アイソタイプ対照抗体は、対照として使用した(図2I)。
図2-5】新たに単離されたNK細胞(上段)、及び図2Aに示すように自己破骨細胞と共培養し増殖させたNK細胞(下段)を使用して、PE共役抗体を用いて、CD16、Nkp30、Nkp44、Nkp46、KIR2、KIR3、CD94、及びNKG2D表面発現を解析した。IgG2アイソタイプ対照抗体は、対照として使用した(図2J)。
図3-1】パネルA~Hとして識別された8個のパネルを含み、NK細胞とは異なり、破骨細胞により増殖したNK細胞から精製されたT細胞は、OSCSCに対する細胞傷害性を媒介せず、IFN-γを適度に分泌することを示す。精製したばかりのNK細胞を処理し、材料及び方法で示すように、単球由来自己破骨細胞と共培養した。CD3、CD16、CD56、GL3(TCRγ/δ)、CD4及びCD8の表面発現は、FITC-及びPE-共役抗体及びフローサイトメトリーを用いて、9日目に共培養物からのリンパ球試料中で解析した(図3A)。NK細胞を処理し、図1Aに示すように、自己破骨細胞と共培養し、9日目に、CD3T陽性細胞は、CD3T陽性選択キットを用いて選別し、CD3T陰性(NK)細胞の純度は、CD3、CD16、CD56 FITC及びPE共役抗体及びフローサイトメトリーを用いて評価した(図3B)。
図3-2】CD3T陽性細胞及びCD3T-陰性細胞(CD16陽性細胞)を、rh-IL-2(1000U/ml)で18~20時間処理した後、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて、OSCSC(図3C)及びK562(図3D)細胞株に対する細胞傷害性を試験した。溶解単位30/10個の細胞を、材料及び方法に記載される方法を用いて、OSCSC及びK562についてそれぞれ判断した。上清を培養物から収穫し、単一ELISAを用いてIFN-γ分泌を判断した(図3E)。NK細胞、CD3T、CD4T、CD8T、及びγδT細胞を、材料及び方法で示すように、PBMCから精製し、rh-IL-2で18~20時間活性化した後、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて、OSCSCに対する細胞傷害性を試験した(図3F)。溶解単位30/10個の細胞は、30%のOSCSC×100を溶解するのに必要なリンパ球の逆数を用いて判断した(図3F)。NK及びT細胞を、材料及び方法で示すように、PBMCから精製し、NK細胞を、材料及び方法で示すように処理した。T細胞は、抗CD3(1μg/ml)及び抗CD28(3μg/ml)で18~20時間活性化した後、自己OCと培養し、増殖したリンパ球は、培養の4日後に顕微鏡を用いて手動で計数した(図3G)。NK及びT細胞を精製し、OCと培養し、図3Gに示すように、4日目に計数し、OCにより増殖したリンパ球の増殖倍数を、OCを有さないリンパ球の増殖倍数で除した(図3H)。
図4-1】パネルA~Sとして識別された19個のパネルを含み、破骨細胞及びsAJ2細菌によるNK細胞培養物の連続する各再刺激による、NK細胞の割合の減少、NK細胞媒介細胞傷害性、及びIFN-γ分泌を示す。精製したばかりのNK細胞を処理し、図2Aに示すように、単球由来自己破骨細胞と共培養した。CD3、CD16及びCD56の表面発現を、フローサイトメトリー解析を用いて、図に示される日数で、共培養物からの1×10個のリンパ球中で解析した(図4A)。36日後、NK細胞が増殖を止めると、図2Aに示すように、新たな自己破骨細胞で再培養した。CD3、CD16、及びCD56の表面発現は、抗体染色及びフローサイトメトリー解析を用いて、図に示される日数で解析した(図4B)。63日目に、細胞が増殖を止めると、示したようにOCと再培養し、CD3、CD16及びCD56の表面発現を、図に示される日数で解析した(図4C)。
図4-2】増殖したリンパ球の数を、顕微鏡測定を用いて評価し(図4D、4G、4J)、NK細胞(図4F、4I、4L)及びT/NKT(図4E、4H、4K)細胞の数を、増殖細胞の総数の内のNK及びT/NKT細胞のパーセンテージを用いて判断した(図4D)。
図4-3】細胞死は、ヨウ化プロピジウム染色及びフローサイトメトリー解析を用いて、36、59及び83日目にリンパ球中で判断した(図4M)。精製したばかりのNK細胞を処理し、図2Aに示すように、自己破骨細胞と共培養した。その後、リンパ球を、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて、共培養の6、17、及び34日後(図4N)、共培養の40及び63日後(図4O)又は共培養の76及び92日後(図4P)に、OSCSCに対する細胞傷害性を試験した。溶解単位30/10個の細胞は、図2Eに示される方法を用いて判断した。上清を収穫し、IFN-γ分泌は、6、9、12、15、18及び21日目、(図4Q);40、46、51、55、及び59日目(図4R)、並びに76、83、92、及び97日目(図4S)の上清を用いて、単一ELISAを用いて判断した。
図5-1】パネルA~Hとして識別された8個のパネルを含み、K562又はOSCSCではなく破骨細胞が、NK細胞を増殖させ、NK細胞機能を実質的に増加させることを示す。破骨細胞を生成するため、単球を、M-CSF(25ng/ml)及びRANKL(25ng/ml)を含有する培地で21日間培養し、K562腫瘍細胞株を、材料及び方法で示すように培養した。高純度のNK細胞(1×10個の細胞/ml)を、IL-2(1000U/ml)及び抗CD16mAb(3μg/ml)の組み合わせで18時間処理した後、それぞれ、1:2:4(OC:NK:sAJ2)の比で、sAJ2細菌の存在下にてK562及び自己OCと共培養した。培養した細胞を、6、10及び13日目に顕微鏡を用いて手動で計数した(図5A)。図1Aに示すように生成した破骨細胞、及びK562腫瘍細胞株に、材料及び方法で示すように、40グレイ(Gy)で照射した。NK細胞を精製し、材料及び方法で示すように処理した後、それぞれ、1:2:4(OC:NK:sAJ2)の比で、sAJ2細菌の存在下にて照射K562及び照射自己OCと共培養した。培養した細胞を、6、10及び13日目に顕微鏡を用いて手動で計数した(図5B)。NK細胞を精製し、図1Aに示すように、OC及びK562と培養し、6日間共培養したリンパ球の細胞傷害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図3Fに記載される方法を用いて判断した(図5C)。NK細胞を精製し、図5Bに示すように、OC及びK562と培養し、6日間共培養したリンパ球の細胞傷害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図3Fに記載される方法を用いて判断した(図5D)。
図5-2】NK細胞を精製し、図5Aに示すように、OC及びOSCSCと培養し、6日間共培養したリンパ球の細胞傷害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図3Fに記載される方法を用いて判断した(図5E)。NK細胞を精製し、図3Aに示すように、OC及びK562と培養し、上清を、3、6、7、10及び13日目に収穫し、IFN-γ分泌を、単一ELISAを用いて判断した(図5F)。NK細胞を精製し、照射OC及び照射K562と培養し、上清を、3、6、7、10及び13日目に収穫し、IFN-γ分泌を、単一ELISAを用いて判断した(図5G)。NK細胞を精製し、OC及びOSCSCと培養し、上清を、1、3、6及び8日目に収穫し、IFN-γ分泌を、単一ELISAを用いて判断した(図5H)。
図6-1】パネルA~Pとして識別された16個のパネルを含み、がん患者からのOCと培養した精製NK細胞が、NK細胞よりもT細胞を増殖させ、健康なドナーから増殖したものと比べて、非常に低い細胞傷害性及びサイトカイン分泌を媒介することを示す。健康なドナー及びがん患者からの精製したばかりのNK細胞を、図2Aに示すように、処理し、単球由来OCと共培養した。CD3、CD16及びCD56の表面発現は、抗体の染色を用いて、がん患者(図6A)及び健康なドナー(図6B)の6、9、12、15、18、21、24、27、及び31日目に増殖細胞で解析した後、フローサイトメトリーで解析した。
図6-2】細胞死は、PI染色及びフローサイトメトリー解析を用いて、19日目に、がん患者及び健康なドナーからの増殖NK細胞上で判断した(図6C)。共培養の6、9、12、15、18、21、24、27、及び31日後、増殖したリンパ球を、顕微鏡を用いて手動で計数した(図6D)。NK細胞(図6E)及びT/NKT(図6F)細胞の数は、図6A及び図6Bの増殖細胞の総数の内のNK及びT/NKT細胞のパーセンテージを用いて判断した。リンパ球の細胞障害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて、12及び15日目に判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図2Eに記載される方法を用いて判断した。
図6-3】NK細胞(図6E)及びT/NKT(図6F)細胞の数は、図6A及び図6Bの増殖細胞の総数の内のNK及びT/NKT細胞のパーセンテージを用いて判断した。リンパ球の細胞障害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて、12及び15日目に判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図2Eに記載される方法を用いて判断した。図6Fからの溶解単位は、NK細胞に基づいて正規化した(図6H)。上清を、共培養の一晩、6、9、12、15、18、21、24、及び27日目から収穫し、IFN-γ(図61)、IL-10(図6J)、及びIL-6(図6K)分泌を、単一ELISAを用いて判断した。
図6-4】上清を、共培養の一晩、6、9、12、15、18、21、24、及び27日目から収穫し、IFN-γ(図61)、IL-10(図6J)、及びIL-6(図6K)分泌を、単一ELISAを用いて判断した。健康なドナー、扁桃癌(患者#1)及び膵臓癌(患者#2)を有するがん患者からの精製したばかりのNK細胞を、図2Aに示すように、処理し、OCと共培養した。CD3、CD16、及びCD56の表面発現は、健康なドナー及び患者NKの21日目の共培養、及び健康なドナーの87日目の共培養(第3刺激)からのリンパ球で解析し(図6L)、Nkp30、Nkp44、Nkp46、KIR2、KIR3、CD94及びNKG2Dの表面発現は、CD16陽性細胞内で解析した(図6M)。IgG2アイソタイプ対照抗体は、対照として使用した(図6L及び図6M)。
図6-5】健康なドナー、扁桃癌(患者#1)及び膵臓癌(患者#2)を有するがん患者からの精製したばかりのNK細胞を、図2Aに示すように、処理し、OCと共培養した。CD3、CD16、及びCD56の表面発現は、健康なドナー及び患者NKの21日目の共培養、及び健康なドナーの87日目の共培養(第3刺激)からのリンパ球で解析し(図6L)、Nkp30、Nkp44、Nkp46、KIR2、KIR3、CD94及びNKG2Dの表面発現は、CD16陽性細胞内で解析した(図6M)。IgG2アイソタイプ対照抗体は、対照として使用した(図6L及び図6M)。
図6-6】上清を、13日目に共培養物から収穫し、各ドナーからの等量の上清(200μl)を使用して、OSCSCを一晩分化させた後、MHC-I、CD54、CD44及びB7H1表面発現のレベルをOSCSC上で判断した。IgG2アイソタイプ対照抗体は、対照として使用した(図6N)。細胞死は、ヨウ化プロピジウム染色及びフローサイトメトリー解析を用いて、未処理及びNK細胞上清分化OSCSCで判断した(図6O)。高純度のNK細胞をIL-2(1000U/ml)で処理し、使用して、4時間51Cr放出アッセイで、未処理及びNK上清分化OSCSCに対する細胞傷害性を判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図2Eに記載される方法を用いて判断した(図6P)。
図7-1】パネルA~Kとして識別された11個のパネルを含み、がん患者からの精製NK細胞中のごく少量の汚染T細胞が、より速く増殖し、おそらくNK細胞機能の低下によりNK細胞に群がることを示す。健康なドナー及び膵臓癌患者からの精製したばかりのNK細胞を処理し、図1Aに示すように、単球由来同種異系(異なる健康なドナーから)破骨細胞と共培養した。CD3、CD16及びCD56の表面発現を、FITC-及びPE共役抗体及びフローサイトメトリーを用いて、がん患者(図7A)及び健康なドナー(図7B)の6、10、13、17、21、24、28、32及び36日目に、共培養物からの1×10個のリンパ球試料中で解析した。
図7-2】共培養の6、10、13、17、21、24、28及び32日後に、増殖したリンパ球を、顕微鏡を用いて手動で計数した(図7C)。細胞を図7Cで述べたように計数し、図7A及び7Bで解析した表面発現に基づいて調整し、T/NKT細胞(図7D)及びNK細胞の数を毎日(図7E)判断した。18~20時間、13、20及び32日間共培養したリンパ球の細胞障害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図3Fに記載される方法を用いて判断した(G)。
図7-3】溶解単位30/10個の細胞は、図3Fに記載される方法を用いて判断した(G)。図7Fからの溶解単位を、図7A及び7Bで解析した表面発現に基づいて調整し、1NK細胞が媒介した、OSCSCに対する細胞傷害性を判断した(図7H)。上清を、共培養の一晩、6、10、13、17、21、24、28及び32日目から収穫し、IFN-γ(図7I)、IL-10(図7J)、及びIL-6(図7K)分泌を、単一ELISAを用いて判断した。
図8】hu-BLTマウスの脾細胞からの、CD3 T細胞が枯渇したリンパ球の表現型を示す。ヒト化BLT(hu-BLT;ヒト骨髄/肝臓/胸腺)マウスは、6~8週齢の免疫不全NOD.CB17-Prkdcscid/J及びNOD.Cg-Prkdcscid I12rgtmlWjl/SzJ(NSG)マウスの腎被膜下に、ヒト胎児肝臓及び胸腺組織を外科移植することによって生成した。組織移植の4~6週間後に、マウスに亜致死的に照射し、胎児肝臓から単離されたCD34+細胞を静脈内注入し、ヒト骨髄の完全再構成を支持した。CD34+細胞を注入した8~12週間後に、ヒト免疫系の再構成を、血液検体を用いて解析した。この実験の終わりに、ヒト免疫細胞の生着は、脾細胞及び骨髄細胞を抗ヒトCD45、CD3、CD4及びCD8抗体で染色することで確認し、フローサイトメトリーで解析した(データ不図示)。再構成に成功したhu-BLTマウス(健康なドナーに匹敵するT細胞のレベル及び血統)の口腔底に、1×10個のヒトOSCSCを同所注入した。疾患進行及び体重減をさらに3~4週間モニターした。動物を犠牲にし、脾臓を、犠牲にした動物から収穫し、単細胞懸濁液を材料及び方法で示すように得た。CD3T細胞は、ヒトCD3T陽性選択キットを用いて選別した。フロースルーセル(CD3陰性細胞)は、それぞれ、PE共役、PE-Cy5共役、及びFITC共役抗体による染色後に、ヒトCD3、CD16、CD56、CD45、CD19、CD14の表面発現について解析した。アイソタイプ対照抗体は、対照として使用した。
図9-1】パネルA~Kとして識別された11個のパネルを含み、担癌ヒト化BLTマウスからの、T細胞を枯渇させたインビトロ増殖したリンパ球が、健康なhu-BLTマウスから得られたものと比べた場合に、T細胞を増殖させ、少ないNK細胞を含有し、及び低い細胞傷害性を媒介することを示す。再構成されたBLT(健康なドナーに匹敵するT細胞のレベル及び血統)の口腔底に、1×10個のヒトOSCSCを同所注入した。疾患進行及び体重減をさらに4~5週間モニターした。マウスを犠牲にし、脾臓を収穫し、単細胞懸濁液を補足材料及び方法で示すように得た。CD3+T細胞は、陽性選択キットを用いて選別し、フロースルーセルは、それぞれの抗体による染色後に、ヒトCD3/CD16/CD56の表面発現について解析した。アイソタイプ対照抗体は、対照として使用した(図9A)。hu-BLTマウスからのCD3陰性細胞(1×10個の細胞/ml)を、IL-2(1000U/ml)及び抗CD16mAb(3μg/ml)の組み合わせで18時間処理した後、1:2:4(OC:NK:sAJ2)の比で、sAJ2の存在下にてOCを培養した。CD3、CD16、及びCD56の表面発現は、フローサイトメトリー解析を用いて、6、10、14、18、及び22日目に解析した(図9B)。
図9-2】共培養の6、10、18、及び22日後に、増殖したリンパ球を、顕微鏡を用いて手動で計数した(図9C)。NK細胞(図9D)及びT/NKT(図9E)細胞の数は、増殖細胞の総数の内のNK及びT/NKT細胞のパーセンテージを用いて判断した。10及び18日間共培養したNK細胞の細胞障害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて判断し、溶解単位30/10個の細胞は、30%のOSCSC×100を溶解するのに必要なNK細胞の逆数を用いて判断した(図9F)。
図9-3】溶解単位を正規化し、OSCSCに対するNK細胞溶解ごとに調整した(図9G)。上清を、6、10、及び13日目に共培養物から収穫し、IFN-γ(図9H)、IL-10(図9I)、及びIL-6(図9J)分泌を、単一ELISAを用いて判断した。心臓穿刺による死後に、hu-BLTマウスから末梢血を回収し、血清試料を収穫し、多重アレイを用いて、IFN-γ、IL-10、及びIL-6分泌について解析した(図9K)。
図10a】パネルA~Cとして識別された3個のパネルを含み、一次細胞及び破骨細胞により増殖したNK細胞が分泌したサイトカイン、ケモカイン、及び成長因子並びにリガンドを示す。高純度のNK細胞及び単球を、健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から得て、NK細胞(1×10個の細胞/ml)をIL-2(1000U/ml)で18時間処理した後、上清を収穫した。破骨細胞を生成するため、単球を、M-CSF(25ng/ml)及びRANKL(25ng/ml)を含有するアルファ-MEM培地で21日間培養した。増殖のために、精製NK細胞(1×10個の細胞/ml)を、IL-2(1000U/ml)及び抗CD16mAb(3μg/ml)の組み合わせで18時間処理した後、それぞれ、1:2:4(OC:NK:sAJ2)の比で、sAJ2細菌の存在下にて自己破骨細胞と共培養した。上清を、共培養の6日後に収穫し、多重アッセイを使用して、一次NK細胞及び増殖したNK細胞が分泌したサイトカイン(図10A)、ケモカイン(図10B)及び成長因子(図10C)レベルを判断した。
図10b】上清を、共培養の6日後に収穫し、多重アッセイを使用して、一次NK細胞及び増殖したNK細胞が分泌したサイトカイン(図10A)、ケモカイン(図10B)及び成長因子(図10C)レベルを判断した。
図10c】上清を、共培養の6日後に収穫し、多重アッセイを使用して、一次NK細胞及び増殖したNK細胞が分泌したサイトカイン(図10A)、ケモカイン(図10B)及び成長因子(図10C)レベルを判断した。
図11】パネルA~Cとして識別された3個のパネルを含み、IL-12、IL-15、又は両方の組み合わせの遮断により、NK細胞増殖の低下、NK細胞媒介の細胞傷害性及びサイトカイン分泌をもたらしたことを示す。健康なドナーからの精製したばかりのNK細胞を処理し、図2Aに示すように、抗IL12、-IL-15、又は抗IL-12及び-IL-15 mAbsの組み合わせの存在下及び不在下で、それぞれ、100ng/ml及び1μg/mlで、自己破骨細胞と共培養した。共培養物にIL-2(1000単位/mL)を2日ごとに補充した。NK細胞を、6、8、12、14、及び20日目に顕微鏡を用いて計数した(図11A)。9日目及び15日目に、各増殖試料からの1×10個のNK細胞を、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出で使用した。溶解単位30/10個の細胞は、30%のOSCSC×100を溶解するのに必要なNK細胞の逆数を用いて判断した(図11B)。上清を、8、12、15及び20日目に共培養物から収穫し、IFN-γ分泌を、単一ELISAを用いて判断した(図11C)。
図12-1】パネルA~Gとして識別された7個のパネルを含み、抗CD3抗体の添加がT細胞増殖を阻害し、OCにより増殖したNK細胞を増加させることを示す。健康なドナー及びがん患者からの精製したばかりのNK細胞をOCで27日間増殖させた後、培養物を、rh-IL-2及び抗CD3(1μg/ml)で処理し、その後、NK細胞(図12A)及びT細胞(図12B)の数を、29、31、及び35日目に顕微鏡評価で判断した(健康及び患者の両方)。前方及び側方散乱の損失は、図12A及び図12Bに示すように処理した健康細胞(図12C)及び患者細胞(図12D)で判断した。
図12-2】細胞をPIで染色し、DNA断片化について解析した(図12E)。培養31日目のリンパ球を、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出で使用した。溶解単位30/10個の細胞は、30%のOSCSC×100を溶解するのに必要なNK細胞の逆数を用いて判断した(図12F)。上清を、35日目に共培養物から収穫し、IFN-γ分泌を、単一ELISAを用いて判断した(図12G)。
図13】NK細胞の不在下で抗CD3 mAbで処理した精製T細胞が、前方及び側方散乱を損失しなかったことを示す。高純度のNK細胞及び単球を、健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から得て、T細胞(1×10個の細胞/ml)をIL-2(100U/ml)及び抗CD3(1μg/ml)で18時間処理した後、それぞれ、1:2:4(OC:T細胞:sAJ2)の比で、sAJ2細菌の存在下にて自己破骨細胞と共培養した。細胞は、培養の9日後に、CD3、CD16及びCD56について解析した。抗CD3処理したT細胞は、NK細胞の不在下で、前方及び側方散乱を損失しなかった。
図14-1】パネルA~Hとして識別された8個のパネルを含み、破骨細胞が活性化したNK細胞が、CD8+T細胞数を実質的に増加させることを示す。健康なドナー及びがん患者からのPBMCを、PE-及びFITC共役抗体の染色を用いて、CD3、CD4及びCD8の表面発現について解析した後、フローサイトメトリーで解析した(図14A)。健康なドナー及びがん患者からの精製したばかりのNK細胞を処理し、図2Aに示すように、OCと共培養した。T細胞は、CD3陽性選択キットを用いて、健康なドナー及びがん患者のPBMCから精製し、T細胞は、rh-IL2(100U/ml)及び抗CD3(1μg/ml)及び抗CD28 mAbs(1μg/ml)の組み合わせで18~20時間活性化させた後、1:2:4(OC:T細胞:sAJ2)の比で、sAJ2の存在下にてOCと共培養した。CD3、CD4、及びCD8の表面発現を、リンパ球で解析した(図14B)。単球は、ヒトPBMCから精製し、OC及びDCを生成し、精製NK細胞を図2Aに示すように共培養し、増殖したリンパ球の数を、顕微鏡測定を用いて評価し(図14C)、T細胞(図14D)及びNK細胞(図14E)の数は、図14Cの増殖細胞の総数内で、図2Aに示すように、NK及びT細胞のパーセンテージを用いて判断した。
図14-2】CD3+CD4+及びCD3+CD8+細胞の表面発現をリンパ球で解析し、CD3+CD4+T細胞(図14F)及びCD3+CD8+T細胞(図14G)の数は、パネルDのT細胞の総数の内でCD4及びCD8細胞のパーセンテージを用いて判断した。OCにより活性化したNKは、T細胞を増殖させ、DCにより活性化したNKは、T細胞を増殖させ、OCにより増殖した/活性化したT細胞、及びDCにより増殖した/活性化したT細胞を、CD45RO、CD62L、CD28、CD44、CCR7及びCD127に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析した。第2象限の数は、CD3+T細胞内の抗体ごとの細胞陽性のパーセンテージを表す(図14H)。
図15】パネルA及びBとして識別された2個のパネルを含み、破骨細胞により増殖したNK細胞が、凍結後にそれらのサイトカイン分泌及び細胞障害機能を保持したことを示す。図1Aに示すように、精製したばかりのNK細胞を処理し、培養の9日後に単球由来自己破骨細胞と共培養し、増殖したNK細胞を凍結した。NK細胞を解凍し、培養の6日及び9日後に、rh-IL-2(1000U/ml)で処理し、上清を収穫し、IFN-γ分泌を、単一ELISA(図15A)を用いて判断した。NK細胞を図1Aに示すように培養し、培養の6日及び9日後のリンパ球の細胞傷害性は、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて判断した。溶解単位30/10個の細胞は、図3Fに記載される方法を用いて判断した(図15B)。
図16】パネルA~Eとして識別された5個のパネルを含み、膵臓(図16B)、結腸(図16C)、口腔(図16D)、及び前立腺(図16E)がん患者の末梢血から得られたPBMCの数の減少を示す。図16Aは、健康な対象対患者の減少を示す。
図17-1】パネルA~Eとして識別された5個のパネルを含み、健康な対象(図17A)、膵臓(図17B)、結腸(図17C)、口腔(図17D)、及び前立腺(図17E)癌患者の末梢血から得られたPBMCからの、NK及びCD14単球のパーセンテージは増加したが、T細胞及びB細胞は著しく減少したことを示す。
図17-2】パネルA~Eとして識別された5個のパネルを含み、健康な対象(図17A)、膵臓(図17B)、結腸(図17C)、口腔(図17D)、及び前立腺(図17E)癌患者の末梢血から得られたPBMCからの、NK及びCD14単球のパーセンテージは増加したが、T細胞及びB細胞は著しく減少したことを示す。
図18】パネルA~Dとして識別された4個のパネルを含み、健康なNK細胞と比べた場合の、患者のNK細胞によるNK細胞の細胞傷害性の減少を示す。
図19-1】パネルA~Hとして識別された8個のパネルを含み、患者由来の破骨細胞により増殖したNK細胞、及びIFN-γの細胞障害性及び分泌を示す。
図19-2】パネルA~Hとして識別された8個のパネルを含み、患者由来の破骨細胞により増殖したNK細胞、及びIFN-γの細胞障害性及び分泌を示す。
図20】膵臓癌患者からの、非破骨細胞により増殖したNK細胞中のサイトカイン分泌を示す。
図21】パネルA~Eとして識別された5個のパネルを含み、健康な対象(図21A)、膵臓(図21B)、結腸(図21C)、口腔(図21D)、及び前立腺(図21E)がん患者からの、破骨細胞により増殖したT細胞のIFN-γ分泌を示す。
図22】パネルA~Fとして識別された6個のパネルを含み、NK細胞対T細胞(図22A)、健康な対象(図22B)、膵臓(図22C)、結腸(図22D)、前立腺(図22E)、及び口腔(図22F)がん患者からの、NK細胞、T細胞、及び破骨細胞により増殖したNK細胞及びT細胞からのIFN-γ分泌を示す。
図23】パネルA~Dとして識別された4個のパネルを含み、健康な対象(図23A)、膵臓(図23B)、結腸(図23C)、及び前立腺(図23D)癌患者からの、IFN-γのT細胞分泌を示す。
図24】パネルA~Fとして識別された6個のパネルを含み、累積NK細胞対T細胞(図24A)、健康な対象からのNK細胞(図24B)、膵臓(図24C)、結腸(図24D)、口腔(図24E)、及び前立腺(図24F)癌患者において、増殖しているT細胞対0~15日以内に判断された表面受容体架橋を通じて活性化されたT細胞効果を通じて活性化したNK細胞の総数を示す。
図25】パネルA~Eとして識別された5個のパネルを含み、0~15日以内に判断した健康な個体(図25A)の能力と比べた場合の、膵臓(図25B)、結腸(図25C)、及び前立腺(図25D)癌患者のT細胞を増殖する能力を示す。
図26】患者対健康な個体の血清中のサイトカイン及びケモカインの減少を示す。
図27】A~Bの2個のパネルを含み、健康な個体と比べた場合の、膵臓(図27A)及び結腸(図27B)癌患者からのPBMC中のCD4 T細胞及びCD8 T細胞のパーセンテージを示す。
図28】A~Eの5個のパネルを含み、膵臓(図28B)、結腸(図28C)、口腔(図28D)、及び前立腺(図28E)癌患者対健康な個体(図28A)のPBMC内のCD4/CD8 T細胞の比を示す。
図29-1】5個のパネルを含み、健康な対象(図29A)対膵臓(図29B)、結腸(図29C)、口腔(図29D)、及び前立腺(図29E)癌患者における、CD4 T細胞のCD8 T細胞に対する比を示す。
図29-2】5個のパネルを含み、健康な対象(図29A)対膵臓(図29B)、結腸(図29C)、口腔(図29D)、及び前立腺(図29E)癌患者における、CD4 T細胞のCD8 T細胞に対する比を示す。
図30】A~Bの2個のパネルを含み、破骨細胞を有さない(図30A)及び破骨細胞を有する(図30B)CD8 T細胞及びCD4 T細胞を培養する効果を示す。
図31】NK及びCD8 T細胞のIFN-γ分泌を示す。
図32】破骨細胞及びNK細胞によりそれぞれ促進されたCD8 T細胞増殖及びCD4 T細胞増殖を示す。
図33】破骨細胞により増殖したNK細胞の、がん幹細胞/未分化腫瘍に対する細胞傷害性を示す。
図34】NK細胞増殖に対する、破骨細胞により増殖したNK細胞の効果、及び破骨細胞により増殖した細胞によるNK細胞の細胞傷害効果を示す。
図35】DCにより増殖したNK細胞と比べた場合の、OCにより増殖したNK細胞中の、エフェクターメモリー表現型を有するT細胞を示す。
図36-1】OCにより増殖したNK細胞対DCにより増殖したNK細胞中の、消耗表現型を有するT細胞の数を示す。
図36-2】OCにより増殖したNK細胞対DCにより増殖したNK細胞中の、消耗表現型を有するT細胞の数を示す。
図37】膵臓癌患者からの、OCにより増殖したNK細胞中の、IFN-γを発現するNK細胞を示す。
図38】OCにより増殖したT細胞が分泌した、CD8及びNK特異的サイトカイン、共刺激リガンド、グランザイム、パーフォリン及び可溶性Fas及びFasリガンドの表を示す。
図39】OCにより増殖したNK細胞培養物からのCD8+T細胞が分泌した、CD8関連サイトカイン、ケモカイン、共刺激リガンド、sFas及びFasリガンド、及びグランザイム、及びパーフォリンの表を示す。
図40】NK又はOCにより増殖したCD8細胞から分泌された、GM-CSF、IFN-g、IL-10、TNF-a、低い共刺激リガンドsCD137、グランザイム、パーフォリン、可溶性Fas、及びFasリガンドのレベルを示す。
図41】腫瘍のないマウスと比べた場合の、口腔腫瘍を移植したBLTマウスからのNK細胞の細胞障害活性を示す。
図42】腫瘍移植後のスーパーチャージドNK細胞による免疫療法後の、BM、脾臓、及び血液中のCD8+T細胞を示す。
図43】腫瘍移植後のBLTマウス中のスーパーチャージドNK細胞による免疫療法後の、血清IFN-γ、IL-6、ITAC、GM-CSF、及びIL-8を示す。
図44】種々の増殖日数における、破骨細胞により増殖した患者のNK細胞の細胞傷害性を示す。
図45-1】種々の増殖日数における、患者における破骨細胞により増殖したNK細胞集団中のNK細胞の数を示す。
図45-2】種々の増殖日数における、患者における破骨細胞により増殖したNK細胞集団中のNK細胞の数を示す。
図46】15~25日目の、DCにより増殖したNK細胞と比べた場合の、破骨細胞により増殖したNK細胞の数を示す。
図47】種々の増殖日数における、DCにより増殖したNK細胞と比べた場合の、破骨細胞により増殖したNK細胞の数を示す。
図48】種々の増殖日数における、破骨細胞により増殖したT細胞と比べた場合の、DCにより増殖したT細胞の数を示す。
図49】種々の増殖日数における、DCにより増殖したNK細胞と比べた場合の、破骨細胞により増殖したNK細胞の細胞傷害性を示す。
図50】種々の増殖日数における、健康なドナーのNK細胞と比べた場合の、一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖した患者のNK細胞によるIFN-γ分泌を示す。
図51】種々の増殖日数における、健康なドナーのT細胞と比べた場合の、一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖した患者のT細胞によるIFN-γ分泌を示す。
図52-1】種々の増殖日数における、健康なドナーのNK細胞から得られたものと比べた場合の、破骨細胞により増殖した患者のNK細胞によるIFN-γ分泌を示す。
図52-2】種々の増殖日数における、健康なドナーのNK細胞から得られたものと比べた場合の、破骨細胞により増殖した患者のNK細胞によるIFN-γ分泌を示す。
図53-1】種々の増殖日数における、数人の患者中の健康なドナーのT細胞から得られたものと比べた場合の、一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖した患者のT細胞によるIFN-γ分泌を示す。
図53-2】種々の増殖日数における、数人の患者中の健康なドナーのT細胞から得られたものと比べた場合の、一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖した患者のT細胞によるIFN-γ分泌を示す。
図54】種々の増殖日数における、健康なドナーのT細胞から得られたものと比べた場合の、一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖した患者のT細胞(T細胞は、陽性選択した)によるIFN-γ分泌(全ての増殖日数からの分泌の組み合わせ)を示す。
図55】健康なドナーからの陰性選択されたT細胞と比べた場合の、陽性選択された一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖した患者のT細胞によるIFN-γ分泌(全ての増殖日数からの分泌の組み合わせ)を示す。
図56】健康なドナーから得られたNK細胞と比べた場合の、破骨細胞により増殖したT細胞(T細胞は、陽性選択した)によるIFN-γ分泌/細胞を示す。IL-2により活性化した、一次の陽性選択されたT細胞は、NK細胞と比較した場合により多くのIFN-γを分泌した。
図57】健康なドナーから得られたT細胞と比べた場合の、一次の、非破骨細胞及び破骨細胞により増殖した患者のT細胞(T細胞は、陽性選択した)によるIFN-g分泌/細胞を示す。
図58】破骨細胞により増殖した患者のT細胞(T細胞は、陽性選択した)及びNK細胞によるIFN-g分泌/細胞を示す。IL-2により活性化した、一次の、非破骨細胞により増殖したT細胞は、IL-2で処理した一次NK細胞と比較した場合により多くのIFN-gを分泌した。
図59】健康なドナーからの陰性選択されたNK細胞又は陰性選択されたT細胞と比べた場合の、陽性選択された一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖したT細胞による増殖細胞数の増加を示す。
図60】健康なドナーから得られたものと比べた場合の、陽性選択された一次の、非破骨細胞により増殖した及び破骨細胞により増殖した患者のT細胞による増殖細胞数の減少を示す。
図61-1】膵臓患者の血液からの血清中のサイトカイン及びケモカインのレベルを示す。
図61-2】膵臓患者の血液からの血清中のサイトカイン及びケモカインのレベルを示す。
図62-1】パネルA~Cとして識別された11個のパネルを含み、スーパーチャージドNK細胞の単回注入が、AJ2の給餌の有無に依らず、hu-BLTマウス中の腫瘍増殖を阻害したことを示す。Hu-BLTマウスを、材料及び方法で示すように生成し、図に示す(図62A)。Hu-BLT及びNSGマウスの口腔底に、1×10個のヒトOSCSCを同所移植し、7~10日後に、ある群のhu-BLTマウスに、尾静脈を介して、1.5×10個のスーパーチャージドNK細胞を注入し、マウスの疾患進行をモニターした。別の群のhu-BLTマウスに、NK注射の存在下及び不在下で、OSCSCの移植前、及び腫瘍の移植後に、AJ2プロバイオティクス細菌(5百万個/日)を48時間ごとに2週間給餌し、実験を終了した(図62B)。週1回の頻度でマウスを計量することで体重減をモニターした。3つの代表的な実験の1つをこの図で示す(図62C)。
図62-2】実験の終了時、マウスを犠牲にし、腫瘍の写真を切除後に撮影し(図62D)、計量した(n=4)(図62E)。図62Bに示すように、マウスにヒトOSCSCを移植し、NK細胞を注入し、AJ2を給餌し、腫瘍を切除し、死後に計量した(n=4)(図62F)。PBMCを、hu-BLTマウス及びヒトから単離し、ヒトCD3(n=5)(図62G)、CD4(n=5)(図62H)、CD8(n=5)(図62I)、CD19(n=3)(図62J)及びCD16(n=5)(図62K)の表面発現は、抗体の染色を用いて、CD45+免疫細胞内で判断した後、フローサイトメトリーで解析した。
図63-1】A~Iとして識別された9個のパネルを含み、スーパーチャージドNK細胞の注入が、AJ2の給餌の有無に依らず、担癌hu-BLTマウスにおける血液中のNK細胞、脾臓、BM、強化NK細胞、及び精製CD3+T細胞のIFN-γ分泌及び細胞障害機能を回復させて、増加させたことを示す。図62Bに示すように、Hu-BLTマウスにヒトOSCSCを移植し、NK細胞を注入し、AJ2を給餌し、NK細胞注入の一週間後に、マウスに、尾静脈注入を介して抗PD1(50μg/マウス)を注入した。犠牲にした後、脾臓(n=5)(図63A)、BM(n=5)(図63B)及び末梢血(n=5)(図63C)を回収し、単細胞懸濁液を各組織から調製し、(脾臓及びBMに関して1×10個の細胞/ml、及びPBMCに関して0.7×10個の細胞/ml)を、IL-2(1000U/ml)で7日間処理した。NK強化細胞を、脾細胞から単離し、(1×10個の細胞/ml)を、IL-2(1000U/ml)で7日間処理した(n=3)(図63D)。
図63-2】細胞障害性アッセイは、OSCSCに対して、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて行い、LU30/10個の細胞は、30%のOSCSC×100を溶解するのに必要な細胞の逆数を用いて判断した。(脾臓及びBMに関して1×10個の細胞/ml、及びPBMCに関して0.7×10個の細胞/ml)の脾細胞(n=5)(図63E)、BM細胞(n=5)(図63F)、PBMC(n=5)(図63G)を、IL-2(1000U/ml)で各々処理し、1×10個の細胞/mlの脾細胞からの陽性選択したCD3+T細胞(n=4)を、IL-2(100U/ml)(図63H)で7日間処理した後、上清を収穫し、IFN-γのレベルを、特異的ELISAを用いて判断した。各群のマウスからの各組織中のIFN-γ分泌の倍数変化は、OSCSCのみを注入したマウスから得られたものから判断した(図63E図63H)。
図64】A及びBとして識別された2個のパネルを含み、スーパーチャージドNK細胞の単回注入が、AJ2の給餌の有無に依らず、hu-BLTマウス中のCD8+T細胞の数を増加させたことを示す。図62Bに示すように、Hu-BLTマウスにOSCSCを移植し、NK細胞を注入し、AJ2を給餌し、BM細胞(n=3)(図64A)及び脾細胞(n=3)(図64B)内のヒトCD8+T細胞のパーセンテージは、抗体の染色を用いて判断した後、フローサイトメトリーで解析した。
図65-1】A~Jとして識別された10個のパネルを含み、スーパーチャージドNK細胞の単回注入が、BLTマウスにおけるAJ2の給餌の有無に依らず、インビボでの腫瘍分化を媒介し、IFN-γ分泌を増加し、より多くの数のヒト免疫細胞を腫瘍に移動させて、エクスビボの腫瘍増殖の減少をもたらしたことを示す。Hu-BLT及びNSGマウスに、OSCSCを移植し、図62Bに示すように、NK細胞を注入した。犠牲にした後、口腔腫瘍を収穫し、単細胞懸濁液を調製し、各群からの同じ数の細胞(1×10個の細胞/mlで、合計3×10個の細胞)を、0日目に培養した。10日目に、上清を除去し、付着した腫瘍細胞を計数し、その後の培養では、NKを注入したマウスが、最小の数の腫瘍を増殖させたため、それらから得られた数に各群の数を調整した。10、14、19及び20日目に、エクスビボ増殖する腫瘍細胞の総数を、各群で判断した。いくつかの代表的な実験の1つをこの図で示す(図65A)。図62Bに示すように、OSCSC、又はインビトロでのNK分化OSCSC(分化OSCSC)、又はIFN-γ及びTNF-αに対する抗体で処理したNK分化OSCSCをHu-BLTマウスに移植して、分化を遮断した後、hu-BLTマウスにNKを注入した。犠牲にした後、口腔腫瘍を解離し、単細胞を調製し、(1×10個の細胞/mlで、合計3×10個の細胞)で培養し、増殖する腫瘍細胞の数を、図65Aに示すように判断した。いくつかの代表的な実験の1つをこの図で示す(図65B)。図62Bに示すように、Hu-BLTマウスに、OSCSC又は、分化OSCSC、又はIFN-γ及びTNF-αに対する抗体で処理した分化OSCSCを移植して、NK細胞を注入し、及び/又はAJ2を給餌した。犠牲にした後、口腔腫瘍を収穫し、培養し、増殖する腫瘍細胞の数を、図65Aに示すように判断した(n=7)(図65C)。図62Aに示すように、Hu-BLT及びNSGマウスにOSCSCを移植した後、hu-BLTマウスにNKを注入した。口腔腫瘍を収穫し、単細胞懸濁液を調製した。培養12日目の非付着細胞内にhu-CD45C免疫細胞が浸潤するパーセンテージを、抗体の染色を用いて判断した後、フローサイトメトリーで解析した。3つの代表的な図の1つをこの図で示す(図65D)。hu-BLT及びNSGマウスからの口腔腫瘍を図4Aに示すように培養し、IL-2(1000U/ml)で処理し、それらの上清を図で示される日に収穫し、IFN-gレベルを、ELISAを用いて判断した。いくつかの代表的な図の1つをこの図で示す(図65E)。
図65-2】ヒトCD54及びMHC-Iの発現は、それぞれの抗体で染色後に、フローサイトメトリー解析を用いて、hu-BLT及びNSGマウスからの口腔腫瘍培養の10日目に評価した。いくつかの代表的な実験の1つをこの図で示す(図65F)。健康なヒトドナーの末梢血からの精製NK細胞(1×10個の細胞/ml)を未処理のまま、又はIL-2(1000U/ml)で18時間処理した後、hu-BLTマウスの異なる実験群の切除腫瘍から培養した51Cr標識OSCSCにそれらを添加し、それを、種々のエフェクター対標的の比でラボで維持したOSCSCの培養と比較した。NK細胞媒介細胞傷害性は、標準的な4時間51Cr放出アッセイを用いて判断した。LU30/10個の細胞は、材料及び方法で示すように判断した(n=4)(図65G及び図65H)。図65Aに示すようにhu-BLTマウスからの口腔腫瘍細胞を、IL-2(1000U/ml)で処理し、3及び7日後に上清を収穫し、VEGF分泌のレベルを、特異的ELISAを用いて判断した。NK注入動物(n=6)から得られた腫瘍によるVEGF分泌の減少は、OSCSCのみを注入したマウスから得られた量に基づいて算出した(図65I)。hu-BLTマウスの異なる実験群から解離した口腔腫瘍内にhu-CD45C免疫細胞が浸潤するパーセンテージは、抗体染色後に、フローサイトメトリー解析を用いて判断した。いくつかの代表的な実験の1つをこの図で示す(図65J)。
図66】A~Cとして識別された3個のパネルを含み、スーパーチャージドNK細胞の単回注入が、担癌マウスにおけるAJ2の給餌の有無に依らず、hu-BLTマウスの末梢血から得られた血清内のサイトカイン、ケモカイン、及び増殖因子の分泌を回復し、増加させた。末梢血からの血清は、実施例4に示すように得られ、多重アレイを実施して、IFN-γの分泌を判断し、4つの代表的な図の1つをここで示す(図66A)。IFN-γの倍数変化は、対照hu-BLTマウス(n=5)から得られた値に基づいて判断した(図66B)。多重アレイを使用して、末梢血から得られた血清中のサイトカイン、ケモカイン、及び増殖因子の分泌を判断した(図66C)。
図67】A及びBとして識別された2個のパネルを含み、CDDP又はパクリタキセルが、NACの有無に依らず、NK上清で分化したOSCSC中では著しい細胞死を誘導し、低分化の腫瘍では誘導しないことを示す。高純度のNK細胞を、IL-2(1000U/mL)及び抗CD16mAb(3mg/mL)の組み合わせで18時間処理した後、NK上清を、抗TNF-a(1:100)及び抗IFN-g(1:100)の存在下で、OSCSCに5日間添加した。その後、OSCSCを取り外し、シスプラチンの有無で18~24時間処理した。OSCSCの生存率を、PI染色及びフローサイトメトリー解析を用いて判断した。3つの代表的な実験の1つをこの図で示す(図67A)。図67Aに示すように、OSCSCを、NK細胞からの上清で処理した。その後、腫瘍を取り外し、NAC(20nM)の有無で24時間処理した後、パクリタキセルで18~24時間処理した。OSCSC生存率は、PI染色及びフローサイトメトリー解析で判断した。3つの代表的な実験の1つをこの図で示す(図67B)。
図68】A~Eとして識別された5個のパネルを含み、NK細胞を注入した、又はNK分化OSCSC腫瘍のみを移植した担癌マウスからの単球又は破骨細胞が、腫瘍のみを移植した、NK細胞を有するマウスと比べた場合に、自己NK腫瘍又は同種異系NK腫瘍の共培養物から有意に多いIFN-gを誘導したことを示す。図62Bに示すように、Hu-BLTマウスにOSCSCを移植し、NK細胞を注入し、AJ2を給餌した。犠牲の後、脾細胞からのNK細胞、及びBM細胞からの単球を本明細書に記載のように単離した。自己NK細胞を未処理のまま、又は単球(NK:単球、2:1)と組み合わせてIL-2(1000U/ml)で処理し、共培養の7日後に、OSCSCに対する標準的な4時間51クロム放出アッセイにおけるエフェクター細胞としてNK細胞を使用した。LU30/10個の細胞は、標的細胞×100の30%を溶解するのに必要なNK細胞の逆数を用いて判断した(図68A)。自己NK細胞を、未処理のまま、又は、単球(NK:単球、2:1)の不在下及び存在下で、IL-2(1000U/ml)で、若しくはIL-2(1000U/ml)及びLPS(100ng/ml)の組み合わせで7日間処理した後、上清を収穫し、IFN-g分泌を、単一ELISAを用いて判断した(図68B)。実施例4に示すように、精製されたhu-BLT単球からOCを生成した。健康なヒトドナーからの精製同種異系NK細胞を、IL-2(1000U/mL)及び抗CD16mAb(3mg/mL)で18時間前処理した後、sAJ2の存在下で(NK:OC:sAJ2、2:1:4)、hu-BLT-OCと培養した。培養後、培養物中のNK細胞数を、顕微鏡を用いて、5、8、12及び15日目に計数した(図68C)。5、8、12及び15日目に培養物から上清を収穫し、IFN-g分泌を、単一ELISAを用いて判断した(図68E)。ELISAから得られたIFN-gのレベルは、図68Cからの細胞計数を用いて、1×10個の細胞で判断した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、一部は、破骨細胞(OC)を含む培地中でNK細胞を培養することを含む、インビトロ又はエクスビボでのNK細胞を活性化する方法に関する。同様に、樹状細胞(DC)を含む培地中でT細胞を培養することを含む、インビトロ又はエクスビボでのT細胞を活性化する方法を本明細書で提供する。本発明は、破骨細胞(OC)を含む培地中でNK細胞及びT細胞を培養することを含む、T細胞に比べてNK細胞をインビトロ又はエクスビボで活性化する方法をさらに提供する。本発明は、樹状細胞(DC)を含む培地中でNK細胞及びT細胞を培養することを含む、NK細胞に比べてT細胞をインビトロ又はエクスビボで活性化する方法をさらに提供する。かかる活性化NK細胞は、宿主免疫応答を改善するために使用してもよく、疾患(例えば、がん)を治療するために使用してもよい。いくつかの態様では、本発明は、インビボでNK細胞を活性化する、場合により、破骨細胞(OC)によってT細胞に比べてNK細胞を活性化する方法を提供する。いくつかの実施形態では、OC又はOC培養上清は、疾患(例えば、がん)を治療するために対象に投与してもよい。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス細菌(例えば、sAJ2)は、OCの機能を改善し、NK細胞を活性化するために添加してもよい。破骨細胞(OC)及び樹状細胞(DC)に加えて、NK細胞又はT細胞を活性化することができる他の薬剤、例えば、任意の遺伝子、タンパク質、代謝物質などを、細胞培養物に添加又は対象に投与してもよい。
【0028】
I.定義
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1又は2以上(すなわち、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法上の目的語を意味して使用される。例として、「an」要素は、1つの要素又は2以上の要素を意味する。
【0029】
「投与すること」という用語は、薬剤(例えば、少なくとも1つの破骨細胞(OC)又は樹状細胞(DC)、少なくとも1つの破骨細胞(OC)又は樹状細胞(DC)を含む細胞培養物、かかる細胞培養物の上清、かかるOC(複数可)又はDC(複数可)を含む任意の組成物、少なくとも1つのプロバイオティクス細菌、かかるプロバイオティクス細菌を含む任意の組成物、NK細胞及び/又はT細胞を活性化するか又はかかるOC(複数可)又はDC(複数可)及び/又はプロバイオティクス細菌などの機能促進することができる他の薬剤、例えば、明細書に記載される種々の薬剤の処理された(すなわち、単離された、精製された、濃縮された、又は治療用若しくは他の使用のための他のプロセス後)形態も含む)が、その意図した機能を実行することができる投与経路を含むことを意図する。使用することができる身体の治療の投与経路の例としては、注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、髄腔内など)、経口、吸入、及び経皮経路が挙げられる。注射は、ボーラス注射であってもよく、又は持続注射であってもよい。投与経路によっては、薬剤が意図された機能を発揮する能力を妨げるおそれのある自然条件から薬剤を保護するために、薬剤を、選択された材料で被覆するか、又はその中に収容してもよい。薬剤は、単体で投与してもよいし、又は薬学的に許容可能な担体と併せて投与してもよい。また、薬剤は、インビボでその活性形態に変換されるプロドラッグとして投与してもよい。
【0030】
「活性化すること」又は「活性化」という用語は、標的の機能の増強を指す。例えば、本開示は、インビトロ、エクスビボ、及び/又はインビボでのNK細胞又はT細胞の活性化方法であって、場合により、かかる活性化は、それぞれ、T細胞又はNK細胞に比べて優先的である、方法を提供する。本開示では、細胞の活性化は、かかる細胞の機能の増強、例えば、細胞型(例えば、NK細胞又はT細胞)の各細胞の活性及び/又は少なくとも1つの細胞機能(例えば、細胞傷害性、細胞分裂及び/又は成長速度など)の少なくとも増強、細胞型の細胞数の増強(例えば、細胞増殖)、又は両方を指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される薬剤は、少なくとも1つの細胞、例えば、NK細胞(複数可)又はT細胞(複数可)を活性化する。他の実施形態では、本明細書で使用される薬剤は、別のもの(例えば、T細胞、又はNK細胞)に比べて、1つの細胞型(例えば、NK細胞、又はT細胞)を優先的に活性化する。
【0031】
「増強」という用語は、薬剤及び/又は標的の機能について意味ある量の任意の増加を指す、本開示における「増加」、「アップレギュレーション」、「改善」などの用語と交換可能で使用される。例えば、細胞型(例えば、NK細胞又はT細胞)の活性及び/又は細胞数の増強は、量の増加が、対照中の元の量及び/又は正常な量(例えば、正常な対象又は疾患若しくは障害(例えば、がん)を有さない対象中の細胞型の活性及び/又は細胞数)よりも、量の評価に使用されるアッセイの標準誤差よりも大きい量、好ましくは、その量よりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、350%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、又はそれ以上多い場合には「有意」であり得る。あるいは、細胞型の活性及び/又は細胞数の増強は、かかる増強が、元の活性/量及び/又は正常な活性/量よりも少なくとも約2、好ましくは、少なくとも約3、4、又は5倍、又はそれ以上である場合、「有意」であると考えられ得る。かかる「有意性」は、本明細書に記載される任意の他の測定パラメーター、例えば、発現、阻害、細胞傷害性、細胞成長などに適用することもできる。いくつかの実施形態では、細胞型(例えば、NK細胞又はT細胞)の活性及び/又は細胞数の増強は、本明細書に記載されるように「有意」でなくてもよいが、その生物学的関連性を理解するために当業者に十分な増加であり得る。
【0032】
本明細書で他に規定されていない限り、「抗体(単数及び複数)」という用語は、単鎖抗体、キメラ及びヒト化抗体、及び多重特異的抗体などの自然発生形の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)及び組み換え抗体、並びに以上の全ての断片及び誘導体で、少なくとも1つの抗原結合部位を有する断片及び誘導体を広義に含む。抗体誘導体は、抗体と共役するタンパク質又は化学的部分を含み得る。
【0033】
「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)も含む。「抗原結合部分」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原(例えば、バイオマーカーポリペプチド又はその断片)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行できることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2個のFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単腕のVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2個のドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらのドメインを、VL及びVH領域が対形成して一価ポリペプチドを形成した単一のタンパク質鎖として作製することができる合成リンカーにより、組み換え方法を用いて連結することができる(単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;及びOsbourn et al.1998,Nature Biotechnology 16:778を参照されたい)。かかる単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含されることを目的とする。完全IgGポリペプチド又は他のアイソタイプをコードする発現ベクターを生成するために、特異的scFvの任意のVH及びVL配列を、ヒト免疫グロブリン定常領域cDNA又はゲノム配列に連結することもできる。VH及びVLは、タンパク質化学又は組み換えDNA技術のいずれかを用いて、免疫グロブリンのFab、Fv又は他の断片の生成において用いることもできる。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは、二価、二重特異性抗体であり、この抗体においては、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖において発現されるが、同じ鎖における2個のドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2個の抗原結合部位を形成する(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0034】
抗体は、ポリクローナル若しくはモノクローナル;異種間、同種異系間若しくは同系間;又はこれらの修飾型(例えば、ヒト化、キメラなど)であり得る。抗体は、完全にヒトであってもよい。本発明の抗体は、バイオマーカーポリペプチド又はその断片に特異的に又は実質的に特異的に結合するのが好ましい。「モノクローナル抗体」及び「モノクローナル抗体組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位のうち1種のみを含有する抗体ポリペプチドの集団を指す一方、「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体組成物」という用語は、特定の抗原と相互作用することができる抗原結合部位のうち複数種を含有する抗体ポリペプチドの集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、典型的には、これが免疫反応する特定の抗原に対する単一の結合親和性を表示する。
【0035】
「がん」又は「腫瘍」又は「過剰増殖」という用語は、無秩序増殖、不死、転移能力、急速な成長及び増殖速度、及び特定の特徴的形態学的特性など、がんを引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞が存在することを指す。特に明記しない限り、用語は、化生を含む。いくつかの実施形態では、かかる特徴は、宿主免疫応答のサイレンシング、低減、及び/又は回避、及び/又は宿主細胞(例えば、NK細胞)溶解及び/又は分化への抵抗性のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、かかるがんを引き起こす細胞は、がん幹細胞(例えば、口腔扁平上皮癌幹細胞(OSCSC))である。いくつかの実施形態では、かかる細胞は、少なくとも1つの遺伝子突然変異による一部又は全てのかかる特徴を示す。がん細胞は腫瘍の形態であることが多いが、かかる細胞は、動物の体内に単独で存在するか、又は白血病細胞などの非腫瘍発生がん細胞であり得る。本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、前悪性並びに悪性がんを含む。がんには、B細胞癌、例えば、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、H鎖病、例えば、アルファ鎖病、ガンマ鎖病、及びミュー鎖病、良性単クローン性免疫グロブリン血症、及び免疫細胞アミロイドーシス、メラノーマ、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳又は中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、子宮頸癌、子宮又は子宮内膜癌、口腔又は咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸又は虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、血液組織癌などが含まれるが、これらに限定されない。本発明に含まれる方法に適用可能ながんのタイプの他の非限定的な例には、ヒト肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、肝癌、絨毛上皮癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、骨癌、脳腫瘍、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭管腫瘍、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏枝神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、例えば、急性リンパ球性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病)、及び真正赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びH鎖病が含まれる。いくつかの実施形態では、がんは、本来は上皮性であり、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、婦人科のがん、腎臓癌、喉頭癌、肺癌、口腔癌、頭頸部癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、又は皮膚癌を含むが、これらに限定されない。他の実施形態では、がんは、口腔癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、又は大腸癌である。さらに他の実施形態では、上皮癌は、非小細胞肺癌、非乳頭状腎細胞癌、子宮頸癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)、又は乳癌である。上皮癌は、漿液、子宮内膜、粘液性、明細胞、ブレナー、又は未分化型を含むが、これらに限定されない他の種々の方法で特徴付けることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、がんは、「トリプルネガティブ乳癌」又は「TNBC」であり、これは、ストロゲン受容体(ER)陰性、プロゲステロン受容体(PR)陰性、及びヒト上皮成長因子受容体2(HER-2)陰性である乳癌を指す(Pegram et al.(1998)J.Clin.Oncol.16:2659-2671;Wiggans et al.(1979)Cancer Chemother.Pharmacol.3:45-48;Carey et al.(2007)Clin.Cancer Res.13:2329-2334)。
【0037】
ある特定の実施形態では、がんは、「PI3Kベータ依存性がん」であり、これは、PI3Kベータに機能的に依存するがんを指し得る。例えば、腫瘍組織中のPI3Kベータ(例えば、PI3KベータmRNA、PI3Kベータタンパク質、新たに合成されたPI3Kベータタンパク質など)の発現レベルが、正常な組織中のその発現レベルに匹敵する場合であっても、例えば、RNAi又は任意の他の手段を用いることによる直接又は間接的なPI3KベータmRNA及び/又はタンパク質の阻害、又はPI3Kベータ遺伝子(例えば、ノックアウト又はクラスター化されて、規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)技術)の欠失が、発がん、腫瘍細胞増殖、腫瘍転移の阻害をもたらすか又は腫瘍細胞分化を誘導すれば、がんは、PI3Kベータ依存性である。「PI3Kベータ依存性がん」という用語は、PI3Kベータが、PI3Kベータ依存性がんと同じ細胞型の非がん性細胞中で発現されたPI3Kベータ(例えば、PI3KベータmRNA、PI3Kベータタンパク質、新たに合成されたPI3Kベータタンパク質など)の正常な量よりも有意に高いレベルで発現される、がんも指す。
【0038】
「微小転移巣」という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは、大きさが0.2mmより大きい、及び/又は200個より多くの細胞を有するものから最大幅2mmまでの集密的ながん細胞の群として定義される。より好ましくは、「微小転移巣」は、最大幅が0.2mmから2mmまでの集密的ながん細胞のグループとして定義される。(Edge et al.(2010)AJCC Cancer Staging Manual and Handbook(7th ed.)を参照されたい)。「微小転移巣」の代わりの好ましい定義は、少なくとも1000個のがん細胞の、最も幅広い寸法において少なくとも0.1mm~最も幅広い寸法において1mmまでの集密的な群である。微小転移巣は、一般的に、標準的なコントラストMRI画像化又は他の臨床的な画像化技法では見えない。しかしながら、ある特定のがんでは、腫瘍選択的抗原(例えば、乳癌転移に関してHer2)に向けられた放射性抗体は、微小転移巣の可視化を可能にする。他の間接的検出法には、VEGFに誘導される血管漏出による脳微小転移巣部位における造影剤の漏出が含まれる(Yano et al.(2000)Cancer Res.60:4959-49067;米国特許公開第2015/0352113号)。微小転移巣を検出するために、より高感度な画像化技法を適用することもできる。例えば、微小転移巣を検出するために、代わりの造影剤USPIO(Molday Iron,Biopal,Worcester,Mass.)を用いてMRIにより血液量を画像化してもよい(Yin et al.(2009)Clin.Exp.Metastasis.26:403-414)。
【0039】
「対照」という用語は、試験試料中の発現産物、細胞数、及び/又は細胞機能との比較を提供するために適切な任意の参照標準を指す。ある特定の実施形態では、対照は、発現産物、細胞数、及び/又は細胞機能のレベルを検出し、試験試料からの発現産物、細胞数、及び/又は細胞機能のレベルと比較する元となる「対照試料」を取得することを含む。かかる対照試料は、既知の結果を有する対照のがん患者からの試料(保存試料又は以前の試料測定値でもよい)、正常な患者又はがん患者などの対象から単離した正常な組織又は細胞、正常な対象又はがん患者などの対象から単離した培養一次細胞/組織、がん患者の同じ器官又は体部位から取得した隣接正常細胞/組織、正常な対象から単離した組織又は細胞試料、又は保管所から取得した一次細胞/又は組織を含むが、これらに限定されない任意の適切な試料を含み得る。他の好ましい実施形態では、対照は、ハウスキーピング遺伝子、正常な組織(又は他の以前に解析した対照試料)からの発現産物レベル範囲、ある患者群からの試験試料内で以前に判定した発現産物レベル範囲、又は特定の結果(例えば、1年、2年、3年、4年などの生存率)を有する、又はある特定の治療(例えば、がん治療の標準治療)を受けた一組の患者を含むが、これらに限定されない任意の適切な源からの参照標準の発現産物レベルを含み得る。かかる対照試料及び参照標準発現産物、細胞数、及び/又は細胞機能のレベルを組み合わせて、本発明の方法で対照として使用できることが、当業者には理解される。ある特定の実施形態では、対照は、正常又は非がん性細胞/組織試料を含み得る。他の好ましい実施形態では、対照は、一組のがん患者などの一組の患者、又はある特定の治療を受けた一組のがん患者、又は別の結果に対する1つの結果を有する一組の患者の発現レベル、ある特定の細胞型(例えば、NK細胞又はT細胞)の数、及び/又はある特定の細胞型の細胞機能を含み得る。前者のケースでは、各患者の特定の発現産物、細胞数、及び/又は細胞機能のレベルを、パーセンタイルの発現、細胞数、及び/又は細胞機能のレベルに割り当てるか、又は参照標準発現、細胞数、及び/又は細胞機能レベルの平均値より高い又は低いと表現することができる。他の好ましい実施形態では、対照は、正常な細胞、併用化学療法で治療した患者の細胞、及び良性腫瘍の患者の細胞を含み得る。他の実施形態では、対照は、測定値、例えば、ある母集団のハウスキーピング遺伝子又は別の細胞型の発現レベルと比べた場合の、同じ母集団の特定の細胞型(例えば、NK細胞又はT細胞)の特定の遺伝子、細胞数、及び/又は細胞機能の平均発現レベルも含み得る。かかる母集団は、正常な対象、いかなる治療も受けていない(すなわち、治療未処置)がん患者、標準治療中のがん患者、又は良性腫瘍の患者を含み得る。以下のデータで実証するように、本発明の方法は、試験試料の発現産物、細胞数、及び/又は細胞機能のレベルを対照と比較する際に特定の切点を使用することに限定されない。
【0040】
「対象に対する適切な治療計画を判断すること」という用語は、本発明による解析の結果に基づいて、又は本質的に基づいて、又は少なくとも一部が基づいて開始、修正、及び/又は終了される対象に関する治療計画(すなわち、単剤療法、又は対象におけるがんの防止及び/又は治療に使用される種々の療法の組み合わせ)の判断を意味するものである。一例は、手術後にアジュバント療法を開始することであり、その目的は、再発のリスクを低下させることであり、別の例は、特定の化学療法の投与量を修正することであろう。判断は、本発明による解析の結果に加えて、治療される対象の個人的特徴に基づくことができる。ほとんどの場合、対象に対する適切な治療計画の実際の判断は、主治医又は医者によって行われるであろう。
【0041】
「がんの診断」という用語は、本発明の方法、システム、及びコードを使用して、個体におけるがん又はそのサブタイプの有無を判定することを含む。この用語は、個体における疾患の活性レベルを評価する方法、システム、及びコードも含む。
【0042】
「免疫細胞」という用語は、免疫応答にある役割を担っている細胞を指す。免疫細胞は、造血由来であり、リンパ球、例えば、B細胞又はT細胞;ナチュラルキラー細胞;骨髄細胞、例えば、単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球を含む。
【0043】
「サイトカイン」という用語は、細胞シグナル伝達において重要な小タンパク質(~5~20kDa)の広範かつ緩いカテゴリーを指す。それらの放出は、それらの周りの細胞の挙動に影響を及ぼし、サイトカインは、免疫調節剤として自己分泌シグナル伝達、傍分泌シグナル伝達、及び内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子を含み、本開示のホルモン又は成長因子をさらに含み得る。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球及びマスト細胞のような免疫細胞、並びに内皮細胞、線維芽細胞、及び種々の間質細胞を含む、広範囲の細胞で産生される。好ましいサイトカインは、明細書及び本開示の図面、例えば、表1に例示される。
【0044】
「サイトカイン/ケモカイン活性」という用語は、サイトカイン又はケモカインが、細胞機能のうちの少なくとも1つを調節する能力を含む。一般的に、サイトカイン又はケモカインは、体液性及び細胞ベースの免疫応答間のバランスを調節し、特定の細胞集団の成熟、成長、及び応答性を調節する。従って、「サイトカイン/ケモカイン活性」という用語は、サイトカイン又はケモカインがその天然細胞受容体(複数可)と結合する能力、細胞シグナルを調節する能力、及び免疫応答を調節する能力を含む。
【0045】
「免疫応答」という用語は、T細胞媒介及び/又はB細胞媒介免疫応答を含む。例示的な免疫応答は、T細胞応答、例えば、サイトカイン生産、及び細胞性細胞傷害性を含む。また、免疫応答という用語は、T細胞活性化によって間接的に影響を受ける免疫応答、例えば、抗体生産(体液性応答)及びサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化を含む。
【0046】
「免疫治療剤」という用語は、宿主免疫系を刺激して、対象中の腫瘍又はがんに対する免疫応答を生成することができる、任意の分子、ペプチド、抗体、又は他の薬剤を含み得る。種々の免疫治療剤が、本明細書に記載される組成物及び方法で有用である。
【0047】
「阻害する」という用語は、例えば、特定の作用、機能、又は相互作用の低下、制限、又は遮断を含む。いくつかの実施形態では、がんの少なくとも1つの症状が軽減、終了、緩徐化、又は防止された場合、がんは、「阻害」されている。本明細書で使用する場合、がんの再発又は転移が軽減、緩徐化、遅延、又は防止した場合も、がんは、「阻害」されている。同様に、生物学的機能、例えば、タンパク質の機能は、基準状態、例えば、野生型状態のような対照と比較して低減している場合には阻害されている。例えば、PI3キナーゼ阻害剤と接触される変異体PI3キナーゼ又はPI3キナーゼのキナーゼ活性は、キナーゼ活性が、阻害剤と接触されない野生型PI3キナーゼ及び/又はPI3キナーゼと比較して、突然変異及び/又は阻害剤との接触により低減している場合には阻害されている。かかる阻害は、例えば、特定の時間及び/又は場所での薬剤の塗布によって誘導することができ、又は、例えば、遺伝性突然変異によって構成することができる。かかる阻害は、一部又は完全であり得る(例えば、基準状態、例えば、野生型状態のような対照と比較して、本質的に測定可能な活性ではない)。本質的に完全な阻害は、ブロックと呼ばれる。
【0048】
「相互作用」という用語は、2つの分子間の相互作用を指す場合、分子相互の物理的接触(例えば、結合)を指す。一般的に、かかる相互作用は、前記分子の一方又は両方に(生物学的効果を生成する)活性をもたらす。
【0049】
「キット」は、本発明のマーカーの発現を特異的に検出する及び/又はこの発現に影響を及ぼすために、少なくとも1つの試薬、例えば、プローブ又は小分子を含む任意の製造物(例えば、パッケージ又は容器)である。キットは、本発明の方法を実行するためのユニットとして宣伝、流通、又は販売することができる。キットは、本発明の方法で有用な組成物を発現するのに必要な、1つ以上の試薬を含み得る。ある特定の実施形態では、キットは、基準物質、例えば、細胞の増殖、分裂、遊走、生存、又はアポトーシスを制御するシグナル伝達経路に影響を及ぼさず、又はこれを調節しないタンパク質をコードする核酸をさらに含み得る。当業者は、一般的な分子タグ(例えば、緑色蛍光タンパク質及びベータ-ガラクトシダーゼ)、遺伝子オントロジー基準により、細胞の増殖、分裂、遊走、生存、又はアポトーシスを包含する経路のうちのいずれにも分類されないタンパク質、又は普遍的なハウスキーピングタンパク質を含むがこれらに限定されない、多くのかかる対照タンパク質を想定し得る。キット中の試薬は、個別の容器により供給することもでき、単一の容器内の、2つ又はそれ以上の試薬の混合物として供給することもできる。さらに、キット内の組成物の使用について記載する指示材料も含まれ得る。
【0050】
「ネオアジュバント療法」という用語は、一次治療前に行われる治療を指す。ネオアジュバント療法の例には、化学療法、放射線療法、及びホルモン療法が含まれ得る。例えば、乳癌の治療では、ネオアジュバント療法は、大きな乳癌を有する患者が乳房温存手術を受けることを可能にできる。
【0051】
バイオマーカーの発現及び/又は活性の「正常な」レベルは、がんに罹患していない対象、例えば、ヒト患者の細胞中のバイオマーカーの発現及び/又は活性のレベルである。バイオマーカーの「過剰発現」又は「有意に高い発現レベル」は、発現の評価に使用されるアッセイの標準誤差より大きい試験試料の発現レベルを指し、対照試料(例えば、バイオマーカー関連の疾患がない健康な対象からの試料)のバイオマーカーの発現活性又はレベル、及び好ましくはいくつかの対照試料のバイオマーカーの平均発現レベルの好ましくは、少なくとも10%、より好ましくは、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍又はそれ以上高い。バイオマーカーの「有意に低い発現レベル」は、対照試料(例えば、バイオマーカー関連の疾患がない健康な対象からの試料)のバイオマーカーの発現レベル、及び好ましくはいくつかの対照試料のバイオマーカーの平均発現レベルの少なくとも10%、及びより好ましくは、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍又はそれ以上低い、試験試料のレベルを指す。同じ判断を行って、過剰発言又は過少発現を判断することができる。
【0052】
NK細胞
ナチュラルキラー細胞又はNK細胞は、自然免疫系に極めて重要な細胞傷害性リンパ球の一種である。NK細胞の役割は、NK細胞が果たす役割は、脊椎動物の適応免疫応答における細胞傷害性T細胞の役割と類似している。NK細胞は、ウイルス感染した細胞への迅速な応答(感染のおよそ3日後に作用する)を提供し、腫瘍形成に応答する。典型的には、免疫細胞は、感染した細胞表面上に提示された主要組織適合複合体(MHC)を検出し、サイトカイン放出をトリガーし、溶解又はアポトーシスを引き起こす。NK細胞は、ユニークであるが、しかしながら、抗体及びMHCの不在下で、ストレス細胞を認識する能力を有するため、はるかに迅速な免疫反応が可能になる。NK細胞は、MHCクラス1の「自己」マーカーが欠如している細胞を殺すために活性化する必要がないという初期概念のため、「ナチュラルキラー」と命名された。この役割は、MHCIマーカーが欠如している有害な細胞は、他の免疫細胞、例えば、Tリンパ球細胞によって検出し、破壊することができないために特に重要である。
【0053】
NK細胞(自然リンパ球の群に属する)は、大顆粒リンパ球(LGL)として定義され、Bリンパ球及びTリンパ球を生じる共通のリンパ性前駆細胞から分化した第3の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃、及び胸腺で分化及び成熟し、次いでそこから循環系に入ることが知られている。NK細胞は、起源及びそれぞれのエフェクター機能によって、ナチュラルキラーT細胞(NKT)と表現型的に異なる;しばしば、NKT細胞活性は、IFNγを分泌することによってNK細胞活性を促進する。NKT細胞とは対照的に、NK細胞は、T細胞抗原受容体(TCR)又はパンTマーカーCD3又は表面免疫グロブリン(Ig)B細胞受容体を発現しないが、一般的に、ヒトにおいては、表面マーカーCD16(FcγRIII)及びCD56を発現し、C57BL/6マウスにおいては、NK1.1又はNK1.2を発現する。NKp46細胞表面マーカーは、ヒト、いくつかのマウス株(例えば、BALB/cマウス)及び3つの一般的なサル種の両方で発現されている、好みの別のNK細胞マーカーを瞬時に構成する。
【0054】
NK細胞は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI特異的阻害受容体によって、負の制御を受けている(Karre et al.,1986;Ohlen et al.,1989)。これらの特異的受容体は、MHCクラスI分子の多型性決定基又は他の細胞上に存在するHLAに結合し、NK細胞の溶解を阻害する。ヒトでは、キラーIg様受容体(KIR)と称される受容体ファミリーに属するメンバーの一部が、HLAクラスI対立遺伝子の群を認識する。
【0055】
KIRは、NK細胞を含む、リンパ球のある特定のサブセットに存在する受容体の巨大なファミリーである。KIRの命名は、細胞外ドメイン(KIR2D又はKIR3D)の数及び細胞質尾部が長い(KIR2DL又はKIR3DL)か、又は短い(KIR2DS又はKIR3DS)どうかに基づいている。ヒトの中では、特定のKIRの有無は、単一個体中に存在するNK集団内で、NK細胞ごとに変動し得る。ヒト集団内では、KIR分子の多型性レベルも比較的高く、ある特定のKIR分子は、一部の個体に存在するが、全ての個体に存在するわけではない。ある特定のKIR遺伝子産物は、適切なリガンドに結合したときに、リンパ球活性の刺激を引き起こす。確認されている刺激性KIRは全て、免疫刺激モチーフ(ITAM)を有するアダプター分子と会合する、帯電した膜貫通残基を有する短い細胞質尾部を有している。他のKIR遺伝子産物は、性質上、阻害的である。
【0056】
プロバイオティクス細菌
いくつかの実施形態では、本発明は、NK細胞機能を調節することができる、少なくとも1つのプロバイオティクス細菌株を含む組成物に関する。かかるプロバイオティクス細菌は、活性化NK細胞中で著しい分割アネルギー(split anergy)を誘導し、IFN-γ及びTNF-αの著しい誘導をもたらす。さらに、かかるプロバイオティクス細菌は、NK細胞の著しい増殖を誘導する。
【0057】
胃腸の不快感の減少又は免疫系の強化の種々の効果を有する、多くの市販のプロバイオティクスが入手可能である。本明細書に記載される組成物及び方法で使用される好ましいプロバイオティクス細菌種は、市販のプロバイオティクス細菌株(例えば、sAJ2細菌)由来のもの、特に、Streptococcus(例えば、S.thermophiles)、Bifidobacterium(例えば、B.longum、B.breve、B.infantis、B.breve、B.infantis)、及びLactobacillus genera(例えば、L.acidophilus、L.helveticus、L.bulgaricus、L.rhamnosus、L.plantarum、及びL.casei)由来のものを含む。本開示は、少なくとも1つのプロバイオティクス細菌株、好ましくは、2つ又はそれ以上の異なる細菌株の組み合わせを、対象、好ましくは、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与する方法を含む。かかる投与は、全身又は局所的に(例えば、腸に直接)行ってもよい。投与経路は、経口投与が好ましい。他の経路(例えば、直腸)を使用してもよい。投与の場合、細菌(例えば、湿潤の、超音波処理、接地、又は乾燥した形態又は形式)、細菌を含む細菌培養培地、又は細菌培養培地上清(細菌を含まない)のいずれかを投与してもよい。
【0058】
破骨細胞
破骨細胞は、造血幹細胞に由来する骨細胞の一種である。それらの機能である骨組織の吸収は、骨の維持、修復、及びリモデリングに極めて重要である。骨ホメオスタシスは、骨芽細胞の骨形成と破骨細胞の骨吸収のバランスが保たれている場合に達成される。破骨細胞は、RANKLを発現する骨芽細胞からの刺激を通じて成熟し、それらの相互作用は、ICAM-1を介した強固な接着で媒介される。破骨細胞は、活性化NK細胞上に存在する受容体の多くのリガンドも発現する。破骨細胞は、ULBP-1、ULBP-2/5/6及びULBP-3を発現するが、NK細胞の活性化受容体であるNKG2DのMIC-A、MIC-B、又はMHCクラスI様リガンドをほとんど又は全く発現しないことが報告された。
【0059】
破骨細胞(OC)は、樹状細胞(DC)及び単球と比較して、NK細胞増殖及び機能の重要な活性化因子である(Tseng et al.(2015)Oncotarget 6(24):20002-25)。さらに、破骨細胞は、NK細胞を活性化することが知られているIL-12、IL-15、IFN-γ及びIL-18をかなりの量で分泌し、破骨細胞は、重要なNK活性化リガンドも発現する。本開示は、高機能で、スーパーチャージド、破骨細胞により増殖したNK細胞を、他の方法論で確立されたものよりも有意に高いレベルに増殖させる方法の新規の戦略を提供する。いくつかのインビトロNK増殖技術は、より高い治療細胞用量を確立する一方で、NK細胞の活性及びインビボ増殖能を強化するために開発されてきた。これらの技術のいくつかは、種々のフィーダー細胞、例えば、膜結合IL-15及び41BBリガンドを発現するK562細胞(K562-mb15-41BBL)、EBV-TM-LCL、ウィルムス腫瘍又は照射PBMCと時には組み合わせた、末梢血単核細胞(PBMC)、NK細胞のPBMC精製集団の刺激、又はヒト臍帯血の使用を含む。これらの研究は、良好な機能を有する、臨床的に意義のあるNK細胞数を生成した。
【0060】
樹状細胞
樹状細胞(DC)は、哺乳動物免疫系の抗原提示細胞(アクセサリー細胞とも知られる)である。それらの主な機能は、抗原物質を処理し、それを、その表面上で、免疫系のT細胞に提示することである。樹状細胞は、自然免疫系と適応免疫系の間のメッセンジャーとして作用する。
【0061】
樹状細胞は、皮膚(ランゲルハンス細胞と呼ばれる特殊の樹状細胞型が存在する)、並びに鼻、肺、胃及び腸の内層などの外部環境と接触する組織中に存在する。それらは、血液中に未成熟状態で見ることもできる。活性化後、それらは、リンパ節に移動し、そこでT細胞及びB細胞と相互作用して、適応免疫応答を惹起し、形成する。ある発生段階では、それらは、細胞にその名称を与える樹状突起である、分岐突起部を生成させる。外観は似ているが、これらは、神経細胞の樹状突起とははっきり異なる構造である。未熟な樹状細胞は、それらが樹状突起ではなく大きな細胞質「ベール」を処理するため、ベール細胞とも呼ばれる。
【0062】
本開示は、破骨細胞を用いてNK細胞を活性化し、腫瘍標的細胞のNK細胞媒介アポトーシス、並びにサイトカイン産生に対する感作の増強をもたらす、新規の方法を提供する。「活性化する」、「活性化」、又は「活性化すること」という用語は、NK細胞の増殖及び/又はNK細胞機能の活性化を、単独又は組み合わせて増強することを指す。「NK細胞機能(複数可)」という用語は、NK細胞の任意の機能、例えば、細胞傷害性及び/又はサイトカイン/ケモカイン産生/分泌活性を指す。
【0063】
「防止する」、「防止すること」、「防止」、「防止的処置」などの用語は、疾患、障害、又は状態を有さないが、これらを発症する危険性があるか、又はこれらに感受性の対象における、疾患、障害、又は状態を発症する確率を低減することを指す。
【0064】
「抗がん治療に対する応答」又は「プロバイオティクス細菌の少なくとも1つを含む組成物単体による療法又は他のNK免疫療法との併用療法に対する応答」という用語は、抗がん剤(複数可)、例えば、プロバイオティクス細菌の少なくとも1つを含む組成物のみによる治療又は他のNK免疫療法との併用治療に対する過剰増殖障害(例えば、がん)の任意の応答、好ましくは、ネオアジュバント又はアジュバント療法の開始後の腫瘍質量及び/又は体積の変化に関する。例えば、有効性のために、又はネオアジュバント又はアジュバント状況で、過剰増殖疾患応答を評価することができ、全身性介入後の腫瘍のサイズを、CT、PET、マンモグラム、超音波又は触診で測定したままの初期のサイズ及び寸法と比較してもよい。応答は、生検又は外科的切除の後に腫瘍のキャリパー測定又は病理検査でも評価してもよい。応答は、腫瘍体積の変化百分率のような定量的方法で、又は「病理学的完全奏功」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的不変」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)、又は他の定性的基準のような定性的方法で記録してもよい。過剰増殖疾患応答の評価は、ネオアジュバント又はアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間、数日、数週後、又は好ましくは数カ月後に実行してもよい。応答評価の典型的な終点は、ネオアジュバント化学療法の終了後、又は残留腫瘍細胞及び/又は腫瘍床の外科的除去後である。これは、典型的には、ネオアジュバント療法の開始から3カ月後である。いくつかの実施形態では、本明細書で述べる治療の臨床有効性は、臨床的利益率(CBR)を測定することによって判定してもよい。臨床的利益率は、完全寛解(CR)である患者のパーセンテージ、部分寛解(PR)である患者の数、及び不変(SD)である患者の数の合計を、治療終了から少なくとも6カ月の時点で判定することによって測定される。この式の略記は、CBR=6カ月にわたるCR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、特定のがん治療計画のCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又はそれ以上である。がん治療に対する応答を評価する追加の基準は「生存」に関し、これは以下の全てを含む。すなわち、全生存としても知られる死亡までの生存(前記死亡は原因とは無関係、又は腫瘍関連でよい)、「無再発生存」(再発という用語は、限局的再発及び遠隔再発の両方を含むものとする)、無転移生存、無疾患生存(疾患という用語は、がん及びそれに関連する疾患を含むものとする)である。前記生存の長さは、定義された開始点(例えば、診断又は治療開始の時)及び終点(例えば死亡、再発又は転移)を参照することによって計算してもよい。また、治療の有効性の基準は、化学療法に対する応答、生存の確率、所与の期間内の結果の確率、及び腫瘍再発の確率を含むように拡大してもよい。例えば、適切な閾値を判定するために、特定のがん治療計画を対象の母集団に適用することができ、結果は、任意のがん治療を適用する前に判定したバイオマーカー測定値に相関させることができる。結果測定値は、ネオアジュバント環境で与えられた療法に対する病理学的応答としてもよい。あるいは、全生存及び無疾患生存などの結果の尺度は、がん治療後に測定値が分かっている対象についてある期間にわたってモニターすることができる。ある特定の実施形態では、投与量は、がん治療薬について当該技術分野で知られている標準的用量である。対象をモニターする期間は様々でよい。例えば、対象は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60カ月間モニターしてもよい。がん治療の結果と相関するバイオマーカー測定値閾値は、実施例のセクションで述べるような当該技術分野で周知の方法を使用して判定することができる。
【0065】
「抵抗性」という用語は、がん治療に対するがん試料又は哺乳動物の後天的又は先天的抵抗性(すなわち、治療的処置に対する非応答性、応答低下、応答制限)を指し、例えば、治療的処置に対して25%以上、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍又はそれ以上の応答低下を有する。応答低下は、抵抗性を獲得する前の同じがん試料又は哺乳動物と比較する、又は治療的処置に対して抵抗性がないと分かっている別のがん試料又は哺乳動物と比較することによって測定することができる。化学療法に対する典型的な後天的抵抗性は、「多剤耐性」と呼ばれる。多剤耐性は、P-グリコプロテインによって媒介できる、又は他の機序によって媒介できる、又は哺乳動物が多剤耐性微生物又は微生物の混合に感染した場合に生じることがある。治療的処置に対する抵抗性の判定は、当該技術分野の日常業務であり、当業者の技術に含まれ、例えば、本明細書で「感作」と言う細胞増殖アッセイ及び細胞死アッセイによって測定することができる。いくつかの実施形態では、「逆抵抗性」という用語は、一次がん治療(例えば、化学療法又は放射線療法)と組み合わせた第2の薬剤の使用により、一次がん治療(例えば、化学療法又は放射線療法)のみでは未治療腫瘍の腫瘍体積と比較して腫瘍体積を統計学的に有意に低減させることができない状況で、未治療腫瘍の腫瘍体積と比較した場合、統計学的に有意のレベル(例えば、p<0.05)で腫瘍体積を有意に低減させることができるという意味である。これは通常、未治療腫瘍が対数的に増殖している時に、腫瘍体積の測定に適用される。
【0066】
「応答」又は「応答性」という用語は、例えば、腫瘍サイズの低下又は腫瘍増殖の阻害という意味で抗がん応答を指す。用語は、例えば、最初の再発までの期間であり、再発のエビデンスを伴わない最初の事象若しくは死として二次原発がんを検閲する最初の再発までの期間である、再発までの時間の延長、又は処置から、任意の原因による死までの期間である、全生存の延長により反映される、予後診断の改善も指す場合がある。応答する又は応答を有するとは、刺激に曝露された場合に達せられる有益なエンドポイントがあることを意味する。あるいは、刺激に曝露されると、負の又は有害な症状は、最小化されるか、軽減されるか、又は緩和される。腫瘍又は対象が、好適な応答を呈する可能性を評価することは、腫瘍又は対象が、好適な応答を呈さない(すなわち、応答の欠如を呈するか、又は非応答性である)可能性を評価することと同等であることが理解されるであろう。
【0067】
少なくとも1つのバイオマーカーの存在又はレベルを検出又は判定するために使用される「試料」という用語は、典型的には、脳組織、脳脊髄液、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(例えば、大便)、涙、及び任意の他の(例えば、「体液」の定義で上述したような)体液、又は組織試料(例えば、生検材料)、例えば、小腸、大腸試料、又は外科的切除組織である。特定の場合、本発明の方法はさらに、試料中の少なくとも1つのマーカーの存在又はレベルを検出又は判定する前に、個体から試料を取得することを含む。
【0068】
「感作する」という用語は、がん治療(例えば、本明細書に記載の組成物で治療すること)で関連するがんのさらに効果的な治療を可能にする方法で、がん細胞又は腫瘍細胞を変化させることを意味する。いくつかの実施形態では、正常な細胞は、正常な細胞を不当に傷害するような程度まで影響を受けない。治療的処置に対する感度向上又は感度低下は、特定の治療について当該技術分野で知られている方法、及び本明細書で下述する方法により測定され、それには、細胞増殖アッセイ(Tanigawa et al.(1982)Cancer Res.42:2159-2164)、細胞死アッセイ(Weisenthal et al.(1984)Cancer Res.94:161-173;Weisenthal et al.(1985)Cancer Treat.Rep.69:615-632;Weisenthal L M,In: Kaspers et al.eds.Drug Resistance in Leukemia及びLymphoma.Langhorne,P A:Harwood Academic Publishers,1993:415-432;Weisenthal et al.(1994)Contrib.Gynecol.Obstet.19:82-90)が含まれるが、これらに限定されない。感度又は抵抗性は、ある期間、例えば、ヒトの場合は6カ月及びマウスでは4~6週間にわたって腫瘍のサイズ低減を測定することによって、動物でも測定してもよい。組成物又は方法は、かかる組成物又は方法がない状態の治療感度又は抵抗性と比べた場合の、治療感度の増大又は抵抗性の低下が25%以上、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上から2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍又はそれ以上である場合、治療的処置に対して応答を感作するという。治療的処置に対する感度又は抵抗性の判定は、当該技術分野の日常業務であり、当業者の技術に含まれる。がん治療の有効性を向上させるために本明細書で述べるいずれの方法も、がん治療に対して過剰増殖又は他のがん細胞(例えば、耐性細胞)を感作させる方法に同等に適用できることを理解されたい。
【0069】
「特異的結合」という用語は、抗原などの所定の標的に結合する抗体などの作用物質を指す。典型的には、抗体は、解析物として対象の抗原を、リガンドとして抗体を使用してBIACORE(登録商標)アッセイ機器で表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した場合に、例えば、およそ10-8M、10-9M又は10-10M未満、又はさらに低いような、およそ10-7M未満の親和性(KD)で結合し、所定の抗原又は密接に関連した抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対するその親和性よりも少なくとも1.1-、1.2-、1.3-、1.4-、1.5-、1.6-、1.7-、1.8-、1.9-、2.0-、2.5-、3.0-、3.5-、4.0-、4.5-、5.0-、6.0-、7.0-、8.0-、9.0-、又は10.0-倍、又はそれ以上である親和性で所定の抗原に結合する。「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と交換可能に使用される。選択的結合は、抗体が、ある抗原の結合を別のものと区別する能力を指す相対的な用語である。
【0070】
「相乗効果」という用語は、2つ以上の抗がん剤(例えば、プロバイオティクス細菌の少なくとも1つを含む組成物の組み合わせによる治療のみ又は他のNK免疫療法と併用した治療)の複合効果が、抗がん剤のみの別個の効果の合計より大きくできることを指す。
【0071】
「対象」という用語は、任意の健康な動物、哺乳動物又はヒト、又はがん、例えば、脳転移、肺、卵巣、膵臓、肝臓、乳房、前立腺、結腸癌、黒色腫、多発性骨髄腫などに罹患した任意の動物、哺乳動物又はヒトを指す。「対象」という用語は、「患者」と交換可能である。
【0072】
「生存」という用語は以下の全てを含む。すなわち、全生存としても知られる死亡までの生存(前記死亡は原因とは無関係、又は腫瘍関連でよい)、「無再発生存」(再発という用語は、限局的再発及び遠隔再発の両方を含むものとする)、無転移生存、無疾患生存(疾患という用語は、がん及びそれに関連する疾患を含むものとする)である。前記生存の長さは、定義された開始点(例えば、診断又は治療開始の時)及び終点(例えば、死亡、再発又は転移)を参照することによって計算してもよい。さらに、治療の有効性の基準は、化学療法に対する応答、生存の確率、所与の期間内の結果の確率、及び腫瘍再発の確率を含むように拡大してもよい。
【0073】
「治療効果」という用語は、薬理学的活性物質により引き起こされる、動物、特に哺乳動物、より特定には、ヒトにおける局所又は全身効果を指す。したがって、用語は、疾患の診断、治癒、軽減、治療、若しくは防止、又は動物若しくはヒトにおける、所望の身体若しくは精神の発達及び状態の増強における使用のために意図される任意の物質を意味する。「治療有効量」という語句は、何らかの所望の局所又は全身効果を、任意の治療に適用可能な、妥当な利益/リスク比で生み出す、このような物質の量を意味する。ある特定の実施形態では、化合物の治療有効量は、その治療指数、溶解度などに依存するであろう。例えば、本発明の方法により発見されるある特定の化合物は、このような治療に適用可能な、妥当な利益/リスク比をもたらすのに十分な量で投与することができる。
【0074】
本明細書で使用する場合、「無応答性」という用語は、治療に対するがん細胞の不応状態、又は、例えば、活性化受容体又はサイトカインを介した刺激のような刺激に対する治療細胞、例えば、免疫細胞の不応状態を含む。無応答性は、例えば、免疫抑制剤への暴露又は高用量の抗原への暴露のために、生じ得る。本明細書で使用する場合、「アネルギー」又は「寛容」という用語は、受容体媒介性刺激の活性化に対する不応状態を含む。そのような不応状態は、一般に抗原特異的であり、寛容化抗原への暴露が終わった後も持続する。例えば、(無応答性とは異なり)T細胞におけるアネルギーは、例えば、IL-2のようなサイトカイン産生の欠如によって特徴付けられる。T細胞アネルギーは、T細胞が抗原に暴露され、第2のシグナル(同時刺激シグナル)の不存在下で第1のシグナル(T細胞受容体又はCD-3媒介シグナル)を受ける。これらの条件下で、同じ抗原への細胞の再暴露は、(たとえ再暴露が同時刺激ポリペプチドの存在下で生じても)サイトカイン産生の失敗となり、よって増殖の失敗となる。しかしながら、アネルギーT細胞は、サイトカイン(例えば、IL-2)と共に培養される場合は増殖し得る。例えば、T細胞アネルギーは、指標細胞株を使用する増殖アッセイによって又はELISAにより測定したTリンパ球によるIL-2産生の欠如によっても観察され得る。あるいは、レポーター遺伝子コンストラクトを使用してもよい。例えば、アネルギーT細胞は、5’IL-2遺伝子エンハンサーの制御下で異種プロモーターによって、又はエンハンサー内に見出すことができるAP1配列の多量体によって誘導されるIL-2遺伝子転写の開始に失敗する(Kang et al.(1992)Science 257:1134)。
【0075】
II.対象
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法に適する対象は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、霊長類、非ヒト哺乳動物、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの家畜など)であり、好ましくは、ヒトである。他の実施形態では、対象は、がんの動物モデルである。例えば、動物モデルは、ヒト口腔扁平上皮癌であるか、又はがん幹細胞(CSC)/未分化腫瘍を含む、同所性異種移植動物モデルであり得る。
【0076】
本発明の方法の他の実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的療法、及び/又は抗免疫治療(例えば、NK細胞関連免疫治療)などの治療を受けていない。さらに他の実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的療法、及び/又は抗免疫治療(例えば、NK細胞関連免疫治療)などの治療を受けている。
【0077】
ある特定の実施形態では、対象は、がん性又は前がん性組織を除去する手術を受けている。他の実施形態では、がん性組織は、除去されていない、例えば、がん性組織は、身体の手術不能な領域、例えば、命に必要不可欠な組織、又は外科的処置が患者にかなりの危害リスクを引き起こす領域に位置し得る。
【0078】
本発明の方法を使用して、プロバイオティクス細菌のうちの少なくとも1つを含む組成物を単体又は他のNK免疫療法と併用して、対象における多くの種々のがん、例えば、本明細書に記載されるもの応答性を治療及び/又は判断することができる。
【0079】
III.抗がん治療
一態様では、他の抗がん治療及び/又は免疫療法の組み合わせ、又は療法の組み合わせ(例えば、1つ以上のPI3Kベータ選択的阻害剤、例えば、KIN193を、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体との組み合わせ、単独又はさらに追加の抗がん治療、例えば、標的療法との組み合わせ)は、特に、対象が本明細書に開示される組成物に対して可能性のあるレスポンダーであると最初に示されている場合に実施することができる。他の実施形態では、かかる療法は、対象が、かかる療法に対して可能性のあるレスポンダーではないと示されていれば回避することができ、代替の治療計画、例えば、標的及び/又は非標的抗がん治療を、本明細書に開示される組成物と一緒に実施することができる。
【0080】
併用療法は、例えば、1つ以上の化学療法剤及び放射線、1つ以上の化学療法剤及び免疫療法、又は1つ以上の化学療法剤、放射線及び化学療法も考えられ、それらを含むことができ、それらの各々の組み合わせは、本明細書に開示される療法とすることができる。以下に記載するように、薬剤は、例えば、化学療法剤、ホルモン、抗血管新生剤、放射性標識した化合物との、又は手術、寒冷療法、及び/又は放射線療法との組み合わせ療法において投与することができる。前述の治療方法は、他の形態の従来療法(例えば、当業者に周知のがんの標準治療)と併せて、従来療法と連続して、その前、又はその後のいずれかで実施することができる。例えば、これらの調節薬剤は、治療上有効な用量の化学療法剤と一緒に投与することができる。他の実施形態では、これらの調節薬剤は、化学療法と併せて投与し、化学療法剤の活性及び有効性を高める。米医薬品便覧(PDR)には、種々のがんの治療において用いられている化学療法剤の投与量が開示されている。治療上有効なこれらの前述の化学療法剤の投薬計画及び投与量は、治療される特定の黒色腫、疾患の程度及び当該技術分野における技術のある医師に精通されている他の要因に依存し、医師により決定することができる。
【0081】
「標的療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用することで、がんを治療する薬剤の投与を指す。一例としては、乳癌又は卵巣癌抗原が挙げられる。
【0082】
あるいは、免疫療法は、例えば、癌ワクチン及び/又は感作抗原提示細胞の使用を含み得る標的療法の1つの形態である。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に感染し、溶解させることができる一方、正常な細胞を無傷のままにして、がん治療に潜在的に有用にさせるウイルスである。腫瘍溶解性ウイルスの複製は、腫瘍細胞の破壊を助長するとともに、腫瘍部位での用量増幅をもたらす。それらは、抗がん遺伝子のベクターとして作用してもよく、抗がん遺伝子を腫瘍部位に特異的に送達するのを可能にする。免疫療法は、がん抗原又は疾患抗原に対して向けられる予備生成抗体の投与(例えば、モノクローナル抗体、場合により、化学療法剤又は毒素、腫瘍抗原に結合したモノクローナル抗体の投与)により達成される、宿主の短期防御に対する受動免疫療法を伴い得る。免疫療法は、がん細胞株の細胞傷害性リンパ球認識エピトープの使用に焦点を当てることができる。あるいは、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチドなどを使用して、腫瘍又はがんの開始、進行、及び/又は病理につながる生体分子を選択的に調節することができる。
【0083】
「非標的療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用しないが、がんを治療する薬剤の投与を指す。非標的療法の代表的な例としては、化学療法、遺伝子療法、及び放射線療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
ある特定の実施形態では、化学療法を使用する。化学療法は、化学療法剤の投与を含む。かかる化学療法剤は、以下の化合物の群:細胞傷害性抗生物質、抗代謝剤、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害物質、タキサン、ヌクレオシド類似体、植物アルカロイド、及び毒素、並びにこれらの合成誘導体から選択されるものであってもよいが、これらに限定されない。例示の化合物としては、アルキル化剤:シスプラチン、トレオスルファン、及びトロフォスファミド;植物アルカロイド:ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル;DNAトポイソメラーゼ阻害剤:テニポシド、クリスナトール、及びマイトマイシン;抗葉酸:メトトレキサート、ミコフェノール酸、及びヒドロキシウレア;ピリミジン類似体:5-フルオロウラシル、ドキシフルリジン、及びシトシンアラビノシド;プリン類似体:メルカプトプリン及びチオグアニン;DNA抗代謝物質:2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、アフィジコリングリシネート、及びピラゾロイミダゾール;並びに抗有糸分裂剤;ハリコンドリン、コルヒチン、及びリゾキシンが含まれるが、これらに限定されない。1つ以上の化学療法剤を含む組成物(例えば、FLAG、CHOP)が、用いられてもよい。FLAGは、フルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)、及びG-CSFを含む。CHOPは、シクロフォスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、及びプレドニゾンを含む。別の実施形態では、PARP(例えば、PARP-1及び/又はPARP-2)阻害物質が用いられ、このような阻害物質は、当該技術分野において周知である(例えば、オラパリブ、ABT-888、BSI-201、BGP-15(N-Gene Research Laboratories,Inc.);INO-1001(Inotek Pharmaceuticals Inc.);PJ34(Soriano et al.,2001、Pacher et al.,2002b);3-アミノベンズアミド(Trevigen);4-アミノ-1,8-ナフタルイミド(Trevigen);6(5H)-フェナントリジノン(Trevigen);ベンズアミド(米国再交付特許第36,397号);及びNU1025(Bowman et al.)。この作用機序は、一般的に、PARPに結合してその活性を低下させるPARP阻害剤の能力と関係がある。PARPは、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からニコチンアミド及びポリ-ADP-リボース(PAR)への転換に触媒作用を及ぼす。ポリ(ADP-リボース)及びPARPの両方は、いずれも転写の調節、細胞増殖、ゲノム安定性、及び発がんに関連している(Bouchard V.J.et.al.Experimental Hematology,Volume 31,Number 6,June 2003,pp.446-454(9);Herceg Z.;Wang Z.-Q.Mutation Research/Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis,Volume 477,Number 1,2 Jun. 2001,pp.97-110(14))。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)は、DNA一本鎖切断(SSB)の修復における重要な分子である(de Murcia J,et al.1997,Proc Natl Acad Sci USA 94:7303-7307;Schreiber V,Dantzer F,Ame JC,de Murcia G(2006)Nat Rev Mol Cell Biol 7:517-528;Wang ZQ,et al.(1997)Genes Dev 11:2347-2358)。PARP1機能の阻害によるSSB修復のノックアウトによりDNA二本鎖切断(DSB)が誘導され、これは欠損のある相同性に誘導されたDSB修復によるがん細胞において合成致死性を誘導することができる(Bryant HE,et al.(2005)Nature 434:913-917;Farmer H,et al.(2005)Nature 434:917-921)。化学療法剤の上記の例は、例示的であり、限定するものではない。
【0085】
他の実施形態では、放射線療法を使用する。放射線療法で用いられる放射線は、電離放射線であり得る。放射線療法はまた、ガンマ線、X線、又は陽子ビームであり得る。放射線療法の例としては、体外照射療法、放射性同位元素(I-125、パラジウム、イリジウム)の組織内移植、ストロンチウム-89などの放射性同位元素、胸部放射線療法、腹腔内P-32放射線療法、及び/又は全腹部並びに骨盤放射線療法が含まれるが、これらに限定されない。放射線療法の総括については、Hellman,Chapter 16:Principles of Cancer Management:Radiation Therapy,6th edition,2001、DeVita et al.,eds.,J.B.Lippencott Company,Philadelphiaを参照されたい。放射線療法は、放射線が遠隔放射線源から向けられる体外照射療法又は遠隔放射線療法として施され得る。放射線治療は、放射線源ががん細胞又は腫瘍塊に近接する体内に配置されている、内照射療法又は近距離照射療法としても施される。ヘマトポルフィリン若しくはその誘導体、ベルトポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、デメトキシ-ヒポクレリンA、及び2BA-2-DMHAなどの光増感剤の投与を含む光線力学療法の使用も包含される。
【0086】
さらに他の実施形態では、外科的介入は、がん性細胞及び/又は組織を物理的に除去することができる。
【0087】
さらに他の実施形態では、ホルモン療法を使用する。ホルモン治療的処置は、例えば、ホルモン作動薬、ホルモン拮抗薬(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、酢酸ロイプロリド(LUPRON)、LH-RH拮抗薬)、ホルモン生合成並びにプロセシングの阻害物質、及びステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、全トランス型レチノイン酸(ATRA))、ビタミンD3類似体、アンチゲスタゲン(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)、又は抗アンドロゲン(例えば、酢酸シプロテロン)を含むことができる。
【0088】
さらに他の実施形態では、身体組織を高温(106°Fまで)に曝露する手法である温熱療法を使用する。熱は、細胞を損傷する又は生存に必要な物質を欠乏させることによって腫瘍を縮小するのを助け得る。温熱療法は、外部及び内部加熱装置を使用する、局所、領域、及び全身温熱療法であり得る。温熱療法は、それらの有効性を高める試みとしてほとんど常に他の形態の治療(放射線療法、化学療法、及び生物学的療法)と共に使用される。局所温熱療法は、腫瘍などの非常に小さな領域に適用される熱を指す。身体の外部の装置から腫瘍を目標として高周波で領域を外的に加熱し得る。内部加熱を達成するためには、細い加熱ワイヤ又は温水を満たした中空チューブ;移植マイクロ波アンテナ;及び高周波電極を含む、いくつかのタイプの無菌プローブの1つを使用し得る。領域温熱療法では、器官又は四肢を加熱する。高エネルギーを発生する磁石と装置を加熱する部位の上に設置する。灌流と呼ばれるもう1つのアプローチでは、患者の血液の一部を取り出し、加熱して、その後内的に加熱する部位に送り込む(灌流する)。全身加熱は、身体全体に広がった転移性がんを治療するために使用される。これは、温水ブランケット、高温ワックス、誘導コイル(電気毛布におけるもののような)、又はサーマルチャンバー(大きなインキュベーターに類似する)を用いて達成できる。温熱療法は、放射線副作用又は合併症の著明な上昇を引き起こさない。皮膚に直接適用される熱は、しかしながら、治療される患者の約半数に不快な、またさらには重大な局所痛を引き起こし得る。また水疱を生じさせることもあるが、一般には迅速に治癒する。
【0089】
さらに他の実施形態では、光線力学的療法(PDT、光放射線療法、光線療法又は光線化学療法とも呼ばれる)は、一部の種類のがんの治療に使用される。
【0090】
さらに他の実施形態では、レーザー療法は、がん細胞を破壊するための高輝度光線の使用を含む。この技術は、しばしば出血又は閉塞などのがんの症状を緩和するため、特にがんが他の処置では治療できないときに使用される。また、腫瘍を縮小又は破壊することによってがんを治療するためにも使用し得る。
【0091】
療法による治療の期間及び/又は用量は、特定の治療剤又はその組み合わせに従って変更し得る。特定のがん治療剤の適切な治療時間は、当業者であれば理解されるであろう。本発明では、がん治療剤ごとの最適な治療スケジュールの継続評価が考えられ、対象のがんの表現型は、本発明の方法によって判断されるように、最適な治療用量及びスケジュールを判断する因子である。
【0092】
他の実施形態では、組み換えバイオマーカーポリペプチド及びその断片は、対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、生物学的性質が増強された融合タンパク質を構築し、投与することができる。さらに、バイオマーカーポリペプチド及びその断片は、バイオアベイラビリティの増加及びタンパク質分解の減少など、望ましい生物学的活性をさらに増強するために、当該技術分野において周知の薬理学的方法に従って修飾することができる(例えば、ペグ化、グリコシル化、オリゴマー化など)。
【0093】
臨床有効性は、当該技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。例えば、治療、例えば、本明細書に開示される組成物に対する応答は、がん、例えば、腫瘍の治療に対する任意の応答、好ましくは、ネオアジュバント又はアジュバント化学療法の開始後の腫瘍質量及び/又は体積の変化に関する。腫瘍応答は、ネオアジュバント又はアジュバント状況で評価してもよく、ここで、全身性介入後の腫瘍のサイズは、CT、PET、マンモグラム、超音波又は触診で測定したままの初期のサイズ及び寸法と比較することができ、腫瘍の細胞充実度は、組織学的に推定し、治療の開始前に採取した腫瘍生検の細胞充実度と比較することができる。応答は、生検又は外科的切除の後に腫瘍のキャリパー測定又は病理検査でも評価してもよい。応答は、腫瘍体積又は細胞充実度の変化百分率のような定量的方法で、又は「病理学的完全奏功」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的不変」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)、又は他の定性的基準のような定性的方法で、残存腫瘍量などの半定量的採点システム(Symmans et al.,J.Clin.Oncol.(2007)25:4414-4422)又はMiller-Payneスコア(Ogston et al.,(2003)Breast(Edinburgh,Scotland)12:320-327)を用いて記録してもよい。腫瘍応答の評価は、ネオアジュバント又はアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間、数日、数週後、又は好ましくは数カ月後に実行してもよい。応答評価の典型的な終点は、ネオアジュバント化学療法の終了後、又は残留腫瘍細胞及び/又は腫瘍床の外科的除去後である。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書で述べる治療的処置の臨床有効性は、臨床的利益率(CBR)を測定することによって判定してもよい。臨床的利益率は、完全寛解(CR)である患者のパーセンテージ、部分寛解(PR)である患者の数、及び不変(SD)である患者の数の合計を、治療終了から少なくとも6カ月の時点で判定することによって測定される。この式の略記は、CBR=6カ月にわたるCR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、特定の治療計画のCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又はそれ以上である。
【0095】
本明細書に開示される治療に対する応答を評価する追加の基準は「生存」に関し、これは以下の全てを含む。すなわち、全生存としても知られる死亡までの生存(前記死亡は原因とは無関係、又は腫瘍関連でよい)、「無再発生存」(再発という用語は、限局的再発及び遠隔再発の両方を含むものとする)、無転移生存、無疾患生存(疾患という用語は、がん及びそれに関連する疾患を含むものとする)である。前記生存の長さは、定義された開始点(例えば、診断又は治療開始の時)及び終点(例えば死亡、再発又は転移)を参照することによって計算してもよい。さらに、治療の有効性の基準は、化学療法に対する応答、生存の確率、所与の期間内の結果の確率、及び腫瘍再発の確率を含むように拡大することができる。
【0096】
例えば、適切な閾値を判定するために、特定のがん治療計画を対象の母集団に適用することができ、結果は、本明細書に開示される任意の組成物の投与前に判定したバイオマーカー測定値に相関させることができる。結果測定値は、ネオアジュバント環境で与えられた療法に対する病理学的応答としてもよい。あるいは、全生存及び無疾患生存などの結果の尺度は、治療後に測定値が分かっている対象についてある期間にわたってモニターすることができる。ある特定の実施形態では、同じ用量の治療組成物が、各対象に投与される。対象をモニターする期間は様々でよい。例えば、対象は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60カ月間モニターしてもよい。本明細書に開示される治療の結果と相関するバイオマーカー測定値閾値は、実施例のセクションで述べるような当該技術分野で周知の方法を使用して判定することができる。
【0097】
3.医薬組成物
本発明は、本明細書で開示される組成物の薬学的に許容可能な組成物を提供する。以下で詳細に述べるように、本発明の医薬組成物は、固体又は液体形態で投与するように特別に製剤化することができ、(1)経口投与、例えば、飲薬(水性又は非水性溶液又は懸濁液)、錠剤、巨丸薬、粉末、顆粒、ペースト剤、(2)非経口投与、例えば、無菌溶液又は懸濁液として、例えば、皮下、筋肉、又は静脈内注入、(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、又は噴霧としての局所適用、(4)例えば、ペッサリー、クリーム又は発泡体などの膣内又は直腸内、又は(5)例えば、水性エアロゾル、リポソーム製剤又は化合物を含む固体粒子としてのエアロゾル、に適応する形態が含まれる。
【0098】
本明細書に記載される組成物、例えば、プロバイオティクス細菌の組成物は、プロバイオティクス細菌を胃腸管の組織に導入することを目的として、胃腸管への経口投与に使用してもよい。本発明の治療用組成物の製剤はまた、胞子発芽及び/又は細菌増殖を促進する他のプロバイオティクス剤又は栄養素を含んでいてもよい。例示的な物質としては、有益なプロバイオティクス細菌の増殖を促進する、bifidogenic oligosaccharideがある。ある特定の実施形態では、プロバイオティクス細菌株は、プロバイオティクス細菌組成物は、治療上有効な用量の(好ましくは、適用範囲の広い)抗生物質又は抗真菌剤と組み合わされる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、腸溶性被覆された、徐放性カプセル又は錠剤中に封入される。腸溶性被覆により、胃腸管を通過する際に、一定時間後まで、及び/又はGI管の特定の部分(例えば、小腸)に到達するまで、カプセル/錠剤を無傷のまま(すなわち、未溶解)にすることができる。徐放性成分は、本明細書に記載される組成物中のプロバイオティクス細菌株の「放出」を所定の期間防止する。
【0099】
本発明の治療用組成物はまた、既知の抗酸化剤、緩衝剤、及び他の薬剤、例えば、着色剤、香料、ビタミン又はミネラルを含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明の治療用組成物、例えば、破骨細胞、破骨細胞の細胞培養物、及び/又は破骨細胞の細胞培養物の上清は、単体で、それを投与する種に生理学的に適合性がある担体と組み合わせて投与することができる。担体は、錠剤、カプセル剤又は粉末形態の製剤の場合には固体を主成分とする乾燥材料から構成することができ、又は担体は、液体又はゲル形態の製剤に製剤化するための、液体又はゲル状の材料から構成することができる。特定の種類の担体、並びに最終的な製剤は、一部は、選択される投与経路(複数可)に依存する。本発明の治療用組成物はまた、種々の担体及び/又は結合剤を含んでいてもよい。好ましい担体は、総重量1gの投与量に仕上げるのに十分な量で添加された微結晶セルロース(MCC)である。担体は、錠剤、カプセル剤又は粉末形態の製剤の場合には固体を主成分とする乾燥材料であってもよく、液体又はゲル形態の製剤の場合には液体又はゲル状の材料であってもよく、その形態は、ある程度投与の経路に依存する。乾燥製剤のための典型的な担体は、トレハロース、マルトデキストリン、米粉、微結晶セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム、イノシトール、FOS、GOS、デキストロース、スクロース、及び同類の担体が含まれるが、これらに限定されない。適切な液体担体又はゲル状担体は、水及び生理食塩水、尿素、アルコール及び誘導体(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、水性担体は、中性のpH値(すなわち、pH7.0)を有する。本明細書に記載される組成物を投与するための他の担体又は薬剤は、当該技術分野で、例えば、米国特許第6,461,607号で公知である。本発明の、破骨細胞、破骨細胞の細胞培養物、及び/又は破骨細胞の細胞培養物の上清は、当該技術分野で公知であり、かつ本明細書に記載される局所及び/又は全身投与経路を用いて投与することができる。
【0101】
本明細書に記載される破骨細胞(OC)又は樹状細胞(DC)は、当該技術分野で公知の任意の投与経路を通じて、任意の薬学的に許容可能な組成物で、対象に投与するために使用してもよい。例えば、OC又はDC、かかるOC又はDCを含む細胞培養物、又はかかる細胞培養物の上清は、場合により、追加の薬剤(複数可)と共に、全身及び/又は局所で(例えば、がん又は腫瘍組織又はその近くに)注射(例えば、静脈内)を介して、医薬組成物で投与してもよい。
【0102】
「薬学的に許容可能」という語句は、健全な医療の判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症がなく、妥当な利益/リスクの比率に対応し、ヒト又は動物の組織と接触状態で使用するのに適しているこれらの薬剤、材料、組成物、及び/又は剤形を指すものとして、本明細書では使用される。
【0103】
「薬学的に許容可能な担体」という語句は、本明細書で使用する場合、主題の化学物質を1つの器官又は身体部分から別の器官又は身体部分へと運搬又は輸送することに関与する液体又は固体の充填材、希釈剤、賦活剤、溶剤又は封入材料などの、薬学的に許容可能な材料、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、対象に有害ではないという意味で、「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として働くことができる材料のいくつかの例としては、(1)乳糖、ブドウ糖及び蔗糖などの糖、(2)トウモロコシ澱粉及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、(4)粉末状トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)滑石、(8)ココアバター及び座剤蝋などの父兄剤、(9)落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロジェン除去水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、及び(21)医薬製剤に使用される他の非毒性相溶性物質が挙げられる。
【0104】
経口投与に適切な製剤は、カプセル、カシェ、ピル、錠剤、トローチ剤(風味付けされた基剤、通常、スクロース、及びアカシア、又はトラガカントを使用)、粉末、顆粒の形態で、又は、水性もしく非水性液体の溶液若しくは懸濁液として、又は、水中油型若しくは油中水型液状乳液として、又はエリキシル若しくはシロップとして、あるいはトローチ(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを使用)、及び/又はマウスウォッシュなどとしてであってよく、各々は、所定の量の本明細書に開示される1つ以上の細菌株を含有する。
【0105】
本発明は、本明細書に記載されるバイオマーカーを検出及び/又は調節するキットも包含する。本発明のキットはまた、本明細書に提供される本開示の方法における本開示のキット又は抗体の使用を開示又は記載する取扱い説明書が含まれる。キットはまた、そのキットが意図された特定の適用を円滑にするための付加的成分が含まれる。例えば、キットには、標識を検出する手段(例えば、酵素標識用の酵素気質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、適切な二次的な標識、例えば、ヒツジ抗マウスHRPなど)、及び対照に必要な試薬(例えば、対照生物学的試料又は基準物質)がさらに含まれてもよい。キットはさらに、本開示の方法での使用が認められる緩衝液及び他の試薬を含んでもよい。非限定的な例としては、担体タンパク質又は洗剤など、非特異的結合を低下させるための薬剤が挙げられる。
【実施例0106】
実施例1:実施例2及び3の材料及び方法
細胞株、試薬、及び抗体
10%のウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI 1640完全培地(Gemini Bio-Product)を細胞培養に使用した。口腔扁平上皮癌細胞(OSCC)及び口腔扁平上皮癌幹細胞(OSCSC)は、UCLAにて、舌腫瘍を有するがん患者から単離し[参考文献2及び33~35を参照されたい;以下の全ての引用は、同じ参考文献リストを指す]、10%のFBSを含有するアルファ-MEM(Life Technologies,CA)を、破骨細胞及びDCの培養に使用した。M-CSF(Biolegend、CA)及びRANKL、GM-CSF及びIL-4は、PeproTech(NJ)から購入し、rh-IL-2は、NIH-BRBから得られた。ヒトCD3/CD28 T細胞活性化因子は、Stem Cell Technologiesから購入した。
【0107】
MHC-I、KIR2、KIR3、CD44、CD54、B7H1、CD16、NKG2D、MICA/B、KLGR1、CD45、CD3/16/56、CD8、CD3、CD28、CD4、GL3、NKp40、NKp30、NKp44、NKp46及びCD94に対する抗体は、Biolegend(San Diego,CA)から購入した。ULBP1-6抗体は、R&D Systemsから購入した。ヨウ化プロピジウム(PI)は、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。sAJ2は、上述のように調製した[36]。
【0108】
ヒトPBMC及びhu-BLT脾細胞からのNK細胞及びT細胞の精製
NK細胞及びT細胞は、上述のように精製した[37]。hu-BLT脾細胞からのT細胞を、Stem Cell Technologies(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)からの単離キットを用いて積極的に精製した。
【0109】
hu-BLTマウス及びヒトPBMCからの、単球の精製、並びに樹状細胞及び破骨細胞の生成
UCLA Institutional Review Board(IRB)によって承認された書面によるインフォームドコンセントは、健康な血液ドナーから得られ、全ての手順は、UCLA-IRBによって承認された。単球を上述のように精製した[37]。hu-BLTマウスからの単球を、ヒトCD14単離キット(eBioscience,San Diego,CA)を用いて、骨髄から積極的に単離した。95%を超える純度が、フローサイトメトリー解析に基づいて、サブセットごとに達成された。M-CSF(25ng/mL)及びRANKL(25ng/mL)で21日間処理することで、単球を破骨細胞に分化した。DCを得るため、単球を、GM-CSF(150ng/mL)及びIL-4(50ng/mL)で7日間処理した。
【0110】
NK細胞の増殖
ヒト精製NK細胞及びhu-BLT強化NK細胞を、rh-IL-2(1000U/ml)及び抗CD16 mAb(3μg/ml)で18~20時間活性化した後、フィーダー細胞及びsAJ2と共培養した。IL-2を有する培養培地を3日ごとに新鮮にした。
【0111】
hu-BLTマウスからの腫瘍移植及び組織調製
本明細書で述べる動物研究は、全ての連邦、州、及び地域の法規に準じて、UCLA Animal Research Committee(ARC)の書面による承認の下で行った。複合免疫不全NOD.CB17-Prkdcscid/J及びNOD.Cg-Prkdcscid I12rgtmlWjl/SzJ(NSGが不足するT、B、及びナチュラルキラー細胞)は、Jackson Laboratoryから購入した。ヒト化BLT(hu-BLT;ヒト骨髄/肝臓/胸腺)マウスは、上述及び図8に示すように、NSGバックグラウンドで調製した[38、39]。同所性腫瘍を確立するため、酸素と組み合わせてイソフルランでマウスを最初に麻酔し、その後、腫瘍細胞を、10μlのHCマトリゲル(Corning,NY,USA)(1×10個の細胞)を有する懸濁液中で、口腔底に直接注入した。腫瘍注入の4~5週間後、マウスを安楽死させ、骨髄、脾臓、及び血液を収穫し、単細胞懸濁液を調製した[40]。
【0112】
ELISA及び多重サイトカインアレイキット
単一ELISA及び多重アッセイは、上述のように行った[37]。
【0113】
NK細胞上清によるがん幹細胞分化
NK細胞からの上清を調製し、上述のように、OSCSCの分化に使用した[36]。13日目に、OCにより増殖したNK細胞からの上清を分化に使用した。
【0114】
表面染色及び細胞死アッセイ
上述のように、細胞を抗体又はヨウ化プロピジウムで標識することで、染色を行った[37、41、42]。Beckman Coulter 20 Epics XLサイトメーター(Brea,CA)を用いてフローサイトメトリー解析を行い、FlowJo vXソフトウェア(Ashland,OR)を用いて結果を解析した。
【0115】
51Cr放出細胞傷害性アッセイ
51Cr放出アッセイは、上述のように行った[43]。
【0116】
統計解析
対応のない又は対応のある両側スチューデントt検定を行って、統計解析した。ボンフェローニ事後検定による一元配置分散分析法を使用して、異なる群を比較した。***(p値<0.001)、**(p値0.001~0.01)、*(p値0.01~0.05)。
【0117】
実施例2:破骨細胞は、スーパーチャージドNK細胞を優先的に活性化し、CD8+T細胞を急速に増殖させ、がん患者及びBLTヒト化マウスからのナチュラルキラー細胞数の減少をもたらす。
破骨細胞によるNK細胞及び樹状細胞によるT細胞の優先的な増殖及びそれらの機能の有意な向上。
NK細胞の増殖及び機能に対する破骨細胞、単球及びDCの活性化効果を比較した。NK細胞は、IL-2及び抗CD16 mAbで18~20時間活性化させた後、OC及び/又はsAJ2と共培養した。OC及びsAJ2の組み合わせは、NK細胞を優先的に増殖させた一方、T細胞を低い割合に維持した(図1)。その後、NK培養中の汚染T細胞の増殖速度及びレベルを、sAJ2で処理したOC、DC、及び単球との共培養物間で比較した。OCと共培養したNK細胞は、NK細胞を優先的に増殖させ、汚染T細胞の増殖速度は、培養の最初の1~2ヵ月間にわたって非常に低いままであった(図2及び4A)。これに対し、DCは、T細胞を優先的に増殖させ、NK細胞の割合は、低いままであった。単球は、T細胞を増殖させることもできたが、T細胞増殖は、NK細胞増殖よりも低いままであった。3つ全ての培養中でT細胞の割合は最初は増加したが、しかしながら、その後の培養では、T細胞の増殖速度は、OCとの共培養物で減少した一方、T細胞は、増殖し続け、DCとの培養物中に実質的に増加した。T細胞増殖の定常状態は、単球との共培養物でも見ることができる。(図2A~D)。
【0118】
OCと共培養したNK細胞は、単球又はDCと共培養したNK細胞よりも著しくOSCSCを溶解することができ、9日目~15日目に著しい増加があった。これは、15日目のOCとの共培養物中のNK細胞のより速い増殖と相関した(図2E)。OCと培養した、IL-2及び抗CD16 mAb活性化NK細胞は、単球又はDCと共培養したNK細胞と比較して、有意に高い量のIFN-γを分泌した(図2F)。NK細胞の増殖速度及び集団倍加(ベースライン計数に対する最終計数の比の対数を、2の対数で除したものと定義した)を解析すると、OCは、NK細胞を、20日目に21,000~132,000倍、31日目に300,000-5,100,000倍に増殖させ、4週間以内に17~21回の集団倍加であることが分かった(図2G~H)。
【0119】
単離したばかりの単球を、重要な表面受容体を発現する成熟DC及びOCと比較した。CD54は、DC及びOC上でアップレギュレートされた一方、MHC-Iは、単球と比較して、DC及びOC上で減少した(図1D)。キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、KLRG1、及びMICA/Bは、OC上で高く、単球上で中程度、DC上で非常に低かった(図2I)。ULBP1-6は、単球上で高く、OC上で中程度、DC上で低かった(図2I)。CD94及びNKG2Dを含むNK細胞受容体は、未処理の一次NK細胞(図2Jの上段)と比較して、OCにより増殖したNK細胞(図2Jの下段)上で高かった。KIR2及びKIR3発現は、増殖したNK細胞(図2Jの下段)上で中程度であった。
【0120】
OCにより増殖したNK細胞から精製されたT細胞の残存集団は、細胞傷害性を媒介しないが、IFN-γを分泌する。
OCにより増殖したNK細胞からのT細胞汚染の大部分は、CD8+T細胞であった(図3A)。9日目のOCにより増殖したNK細胞からのT細胞汚染を選別して、精製したT細胞及びNK細胞を得た。その後、CD16及びCD3/56抗体を用いて、NK細胞の純度を試験した(図3B)。次いで、NK細胞及びT細胞をIL-2で18~20時間処理した後、OSCSC及びK562に対する51Cr放出アッセイで使用した。OCにより増殖したNK細胞から単離されたCD3+T細胞は、OSCSC(図3C)又はK562(図3D)を溶解できなかった。NK細胞からの上清は、T細胞と比較して、有意に高いレベルのIFN-γを分泌した(図3E)。
【0121】
破骨細胞によるNK細胞の増殖は、1ヵ月目には高いままであり、2ヵ月目に徐々に低下し、3ヵ月目にかなり低下した。
OCと培養したNK細胞は、31~36日間増殖した一方、汚染T細胞の速度は、低いままであった(図4A)。36日目の増殖NK細胞をOCと再培養し、2ラウンド目の増殖をさせて、NK増殖は、27日間継続した(図4B)。同様に、T細胞の増殖速度は、OCによるNK細胞増殖の2ラウンド目において非常に低いままであった(図4B)。67日目の増殖NK細胞をOCと再培養し、3ラウンド目の増殖をさせたが、しかしながら、NK細胞は、T細胞増殖により徐々に失われた(図4C)。細胞死レベルは、OCによる増殖の3ラウンド目における増殖NK細胞中で全く若しくは僅かしか観察することができなかった(図4M)。NK細胞が、がん幹細胞を溶解し、IFN-γを分泌する能力は、1~2ラウンド目の増殖で徐々に低下し、T細胞のより多くのパーセンテージが増殖する3ラウンド目では、これらの機能は、最小限になった(図4N~4S)。
【0122】
破骨細胞は、K562又はOSCSCを除いて、NK細胞を増殖させ、及びNK細胞機能を増加させる。
活性化NK細胞を、sAJ2の存在下で、OSCSC、K562、OC、照射K562、又は照射OCと培養し、NK増殖及びそれらの機能レベルを判断した(図5A~5H)。非照射、照射K562又はOSCSCのいずれかにより誘導されたNK細胞増殖及び機能(細胞傷害性及びIFN-g分泌)は、非照射又は照射OCにより誘導されたものよりも有意に低かった(図5)。
【0123】
患者からのNK細胞による細胞傷害性の低下及びIFN-γの低分泌は、T細胞増殖の増加と一致する。
OCと培養した場合、がん患者からの精製NK細胞は、NK細胞の増殖を維持することができず、実際に、12日目までに、増殖細胞の半分以上が、T細胞であった。さらに、31日目までに、10%のNK細胞しか培養物中に残らなかった(図6A及び図7A)。さらに、増殖したNK及びT細胞の総数は、がん患者において、増殖の31~36日以内に判断し、健康な対照と比較して、がん患者からの増殖細胞が少なく(図6D及び図7C)、T細胞の増殖レベルは、NK細胞よりも有意に高かった(図6E~F及び図7D~F)。これに対し、健康なドナーから単離されたNK細胞は、NK細胞の増殖を維持し、NKの増殖レベルは、T細胞よりも有意に高かった(図6B、E、F及び図7B、7E、7F)。NK細胞の増殖は、培養の様々な日数で、健康なNK細胞と比べた場合に、患者のNK細胞で全く又はほんの僅かしか観察されなかった(図7F)。健康なドナー又は患者のいずれかからの増殖細胞において著しい細胞死を観察することはできなかったが、細胞死の速度は、健康なドナーよりも患者からの細胞で僅かに高かった(図6C)。
【0124】
OCと培養した患者のNK細胞は、OCと培養した健康なNK細胞と比べた場合に、有意に少ないOSCSCを溶解した(図6G及び図7G)。NK細胞の数に基づいて正規化した場合、患者によるNK細胞ごとに誘導された細胞傷害性は、健康な対照からのNK細胞と比べた場合に低かった(図6H及び図7H)。OCにより増殖した患者のNK細胞は、OCにより増殖した健康なNK細胞と比べた場合に、有意に少ないIFN-γを分泌した(図6I及び図7I)。OCにより増殖した口腔癌患者のNK細胞は、健康なNK細胞と比べた場合に、有意に少ないIL-10(図6J)を分泌した一方、膵臓癌患者からのものは、健康なNK細胞と比べた場合に、より高いIL-10(図7J)を分泌した。健康又はがん患者のNK細胞によるIL-6分泌レベルについて有意差を観察することはできなかった(図6K及び図7K)。破骨細胞により増殖した健康な対照NK細胞と比較して、患者のNK細胞の表面上で、NKG2D表面発現レベルは同様であった一方、CD94発現は高く、KIR2、NKp30、NKp44及びNKp46発現は、低かった(図6L及び6M)。
【0125】
患者の増殖NK細胞からの上清は、OSCSCを分化する能力が非常に低い。
OSCSCを、患者及び健康なドナーからの等しい容量の13日目の上清で18~20時間処理した後、CD44、B7H1、CD54、及びMHC-Iの発現レベルを解析した(図6N)。健康なNK上清によるMHC-I発現は、7.1倍の増加したが、患者のNK上清により誘導された増加は、僅か2.56倍であった(図6N)。CD54発現の場合、患者のNK上清による2.1倍の増加と比較して、健康なNK上清による13倍の増加が観察された。B7H1の場合、患者のNK上清による1.5倍の増加と比較して、健康なNK上清による3.75倍の増加が観察された。CD44は、健康なNK上清によって減少した一方、患者のNK上清による減少は観察されなかった(図6N)。OSCSCをNK上清で処理した後に、著しい細胞死を観察することができなかった(図6O)。図6Pに示すように、健康なNK上清で処理した場合、NK細胞媒介細胞傷害性の74%の減少が観察された一方、患者のNK上清では、33%の減少しか観察されなかった(図6P)。
【0126】
ヒト化マウス中の口腔腫瘍は、T細胞を優先的に増殖させ、IFN-γ分泌を保持しながら、NK細胞傷害性の喪失をもたらす。
ヒト化BLTマウスに口腔腫瘍を移植し、腫瘍移植の4週間後にマウスを犠牲にした。hu-BLTマウスから脾臓を収穫し、T細胞を選別した。その後、B細胞を含有するフロースルーセル(図8)を、IL-2及び抗CD16mAbで18~20時間処理した後、BLT-OCと培養した。担癌hu-BLTマウスは、より大きな割合のNK細胞を含んでいたが(図9A)、増殖は、徐々に、かつ、著しいT細胞の増殖をもたらした。これは、6日目に始まり、22日目まで継続し、この時点で、96%の細胞がT細胞であり、NK細胞は僅か1.1%であった。これに対し、より少ないNK細胞を最初に含んでいた、hu-BLT腫瘍のないマウスからのフロースルーセルは、NK細胞を増殖させ、レベルは、6日目の28.6%のNK細胞から22日目の69%のNK細胞に上昇した(図9B)。自己OCと培養した場合のNK細胞レベルは、培養初日から両方の動物で増加したが、腫瘍のないマウスは、0日目から6日目までに10.59倍に増加した一方、腫瘍のあるマウスは、4.56倍に増加した(図9B)。増殖したリンパ球の総数は、腫瘍のないものと比較して、担癌マウスで低く(図9C)、その大部分は、T細胞であり、NK細胞ではなかった(図9D及びE)。
【0127】
担癌マウスからのNK強化細胞は、OCと共培養した場合、腫瘍のない対照マウスのものよりも有意に少ないOSCSCを溶解することができた(図9F)。さらに、NK細胞1個ごとの細胞傷害性を評価した場合、腫瘍のない対照マウスからのNK細胞と比較して、担癌マウスからのNK細胞には、細胞傷害性の低さが見られた(図9G)。担癌マウスからのNK強化細胞は、腫瘍のない対照マウスと比べた場合に、有意に高いIFN-γ(図9H)、低いIL-10(図9I)、及び僅かに低いIL-6(図9J)を分泌した。担癌hu-BLTマウスの末梢血からの血清は、対照腫瘍のないマウスと比較して、IFN-γ、IL-10、及びIL-6の分泌の増加を示した(図9K)。
【0128】
IL-15は、一部で、破骨細胞によるNK細胞の増殖を媒介する一方、IL-12は、NK細胞によるIFN-γ分泌の増加の役割を担う。
一次NK細胞及び6日目のOCにより増殖したNK細胞が分泌したサイトカイン、ケモカイン、成長因子、及びリガンドのレベルを判断した(図10)。分泌したサイトカイン、ケモカイン、成長因子、及びリガンドの大部分は、IL-2及び抗CD16 mAbで活性化された一次NK細胞が分泌したものと比べた場合に、OCにより増殖したNK細胞でより高かった(図10)。50~60倍高いIL-12の誘導、及び20~26倍高いIL-15の分泌は、一次NK細胞と比較して、OCにより増殖したNK細胞で見られた(図10)。抗IL-12及び/又は抗IL-15 mAbの添加は、細胞増殖を有意に低下させ、1μg/mlの抗IL-15が最も効果が大きかった(図11A)。抗IL-12及び/又は抗IL-15による処理は、9日目のNK細胞の細胞障害機能に影響を与えなかった(図11B)が、15日目に著しく阻害した(図11B)。OCにより増殖したNK細胞によるIFN-γ分泌レベルは、抗IL-15処理と比べた場合に、抗IL-12でより低下した(図11C)。
【0129】
抗CD3抗体の添加は、T細胞増殖を制御し、OCにより増殖したNK細胞を増加させる。
リンパ球を、抗CD3で処理し、NK又はT細胞増殖を、様々な日数で評価した(図12A及び12B)。前方及び側方散乱の両方を喪失した細胞のレベルは、増加し(図12C及び12D)、DNA断片化の上昇は、細胞周期解析におけるサブG0/G1ピークの増加から明らかなように、T細胞の喪失を示す抗CD3処理細胞で得られた(図12E)。したがって、NK細胞のレベルは、患者及び健康なドナーの両方で上昇した(図12A~12B)。前方及び側方散乱を喪失した集団は、CD3及びCD16 mAb染色によって判断したように、CD3+T細胞であった(データ不図示)。NK細胞の不在下で、抗CD3 mAb処理T細胞は、前方及び側方散乱を喪失せず(図13)、細胞死も示さなかった(データ不図示)。NK細胞の細胞傷害性を、抗CD3 mAbの添加の前後に評価した場合、健康及び患者の両方ドナーからのNK細胞は、有意に低い細胞傷害性を有したが、レベルは、健康なNK細胞でさらに高かった(図12G)。これに対し、IFN-γ分泌のレベルは、健康及び患者のNK試料の両方において著しく上昇し、これは、T細胞に結合した抗CD3mAbによるNK細胞中の分割アネルギーの誘導を示した(図12F)。
【0130】
破骨細胞により活性化したNK細胞は、CD8+T細胞数を実質的に増加させる。
がん患者は、健康な対照と比べた場合に、平均して適度に高い割合のCD8+T細胞、及び低い割合のCD4+T細胞を有する(図14A)。破骨細胞と培養した場合、NK細胞の不在下のT細胞は、CD8+T細胞を増殖できなかったが、しかしながら、非常にごく少量の汚染T細胞を含んだOCで活性化した精製NK細胞は、患者のNK細胞培養物が健康なNK細胞よりも速くT細胞を増殖させたにも関わらず、健康及び患者の培養物の両方からCD8+T細胞を増殖させた(図14B)。OCにより活性化したNK細胞により増殖したT細胞を、OCにより活性化したNK細胞により増殖したT細胞と比較した場合、OCは、NK細胞媒介CD8+T細胞を優先的に増殖させた一方、DCは、NK細胞媒介CD4+T細胞を増殖させた(図14C図14G)。さらに、OCにより活性化したNK細胞により増殖したCD8+T細胞は、CD45RO+CD44+CD62L-/低CCR7-/低表示メモリー/エフェクター表現型であったため、全て活性化された表現型であった(図14H)。
【0131】
インビボ及びインビトロ研究により、破骨細胞がNK細胞の主要な活性化因子であることが最近示された。より重要なことは、破骨細胞による単月の刺激が、健康なドナーから2ヵ月を上回る間、スーパーチャージドNK細胞の増殖を維持できたことである。さらに、NK細胞の細胞障害機能は、1ヵ月目に有意に高いままであり、増殖の2ヵ月目で衰えた。多数のNK細胞が増殖し続けたにも関わらず、NK細胞機能が、刺激の2ヵ月目で衰え続ける理由は不明である。2ヵ月目でのNK細胞の細胞傷害性の維持に追加のシグナルが必要である、及び/又はOCをより頻繁に補充する必要がある可能性がある。
【0132】
OCをフィーダー細胞として使用することは、前述のものと比較して、多数のNK細胞を増殖させるための最良の戦略であった(表1)。まず、出願者らは、20日目に21,000~132,000倍の増殖、及び31日目に0.3~5.1百万個、増殖の4週間以内に17~21回の集団倍加を得、これは、以前に報告されたいずれの方法よりもはるかに速い速度である(表1)。研究を通じて増殖したNK細胞の細胞障害機能は、使用した様々な種類の標的により比較するのは難しいが、本明細書で開示される戦略は、がん幹細胞を標的にして溶解し、IFN-γを分泌する重要な能力を有する多数のNK細胞を提供する(表1)。さらに、一次NK細胞は、形質転換の可能性が全く又はほとんどない状態で増殖された。ここで、形質転換は、ほとんどのNK株(例えば、YT、NK92又はNK-L)又はトランスフェクトNK細胞は、それぞれ、それらの細胞障害及びIFN-γ分泌能力のほとんど又は一部のいずれかを喪失しやすいために、NK細胞死滅の可能性に影響を与えることが知られている。さらに、NK細胞増殖を維持するための抗CD3抗体治療は、T細胞増殖を制限する素晴らしい戦略であるが、かかるNK細胞の細胞障害活性は、NK細胞で誘導された著しい分割アネルギーにより低い。この戦略は、IFN-γ分泌の大きな増加により腫瘍の分化を誘導するために素晴らしいかもしれないが;しかしながら、腫瘍の除去に対する最適性が非常に低い。これは、固体腫瘍の免疫療法におけるNK細胞の使用が、試験した患者の少数において腫瘍の退縮をもたらさなかった理由の1つかもしれない。
【0133】
【表1】
【0134】
OCとは異なり、DCは、精製NK細胞中の少数の汚染T細胞の優先的な増殖を刺激し、T細胞レベルを、1ヵ月間上昇し続けたため、NK増殖を減少させた。したがって、OSCSCに対する低レベルの細胞傷害性が見られた。興味深いことに、同様の割合のNK細胞がOC及びDC培養物で観察されたより早い時点でNK細胞の細胞傷害性を評価した場合、NK細胞傷害性の上昇は、OCと培養したNK細胞によって観察することができた(データ不図示)。同様に、DCと培養したものと比べた場合に、OCと培養したNK細胞によるIFN-γ分泌が増加し、これは、細胞1個当たりで、NK細胞が、DCと培養したものと比べて、OCと培養した場合により高いIFN-γを分泌したことを示す(図1C)。OCにより増殖したNK細胞から選別したT細胞は、細胞傷害性が非常に低く、T細胞によって見られた最小限の細胞傷害性は、おそらくは汚染NK細胞によるものであった(図3C及び図3B)。一方、T細胞は、IFN-γを放出し得るが、そのレベルは、NK細胞が放出したものよりも有意に低かった(図3E)。T細胞のサブセット;CD8、CD4及びgdT細胞を選別し、細胞傷害性アッセイで使用した場合、NK細胞だけが、これらの細胞を溶解することができ、T細胞サブセットで見られる残存細胞傷害性は、汚染NK細胞によるものであった(図3F)。OCは、DCと比較して、活性化しているNKリガンドをより多く発現した一方、両方とも同様のレベルの分化抗原CD54を示した。興味深いことに、両方とも、単球と比べた場合に、低レベルのMHCクラスI発現を示した(図1D)。さらに、IL-15分泌は、NK細胞の増殖に重要であると思われた(図11A)一方、IL-12は、IFN-γの分泌に重要であった(図11C)。両方のサイトカインは、増殖のより早い時点と比較して後日に評価した場合に、NK細胞の細胞障害機能に重要であった(図11B)。
【0135】
OCと比較して、非照射又は照射であるかどうかに関わらず試験した全ての腫瘍細胞株は、長期間におけるNK細胞の増殖を支持せず、短期間において、IFN-γの分泌がK562及びOSCSCとの培養物で観察することができたとしても、この効果は短命であった(図5)。さらに、OC誘導増殖を照射PBMCと比較して、OCのものよりも著しく劣ることが分かった(データ不図示)。OCにより増殖したNK細胞は、一次NK細胞と比べた場合に、非常に高レベルの活性化受容体(NKG2D、NKp46、NKp44、NKp30、CD94を含む)の発現を示し、阻害受容体KIR2及びKIR3を増加させ、非常に低レベルのCD16受容体を発現した(図2J、下段)。健康なドナーのOCにより増殖したNK細胞を比較した場合、がん患者は、一般的に、非常に低い受容体発現を有し、そのレベルは、著しい細胞障害及びサイトカイン分泌能力が喪失しており、T細胞を増殖させることができる刺激された健康なNK細胞の3ラウンド目で見られるものよりもさらに低かった。患者のNK細胞と同様に、K562及びOSCSCにより増殖したNK細胞は、短命であり、非常に低い細胞障害及びサイトカイン分泌能力を有した。K562又はOSCSCは、OCとは異なり、低レベルのNK活性化リガンドを発現し(図1D)、OCによるこれらのシグナルの増加は、NK細胞の増殖及び機能を上昇することができるため、NK細胞の増殖を担う重要なサイトカインの分泌を欠いた(図10A)。遺伝子操作されたK562細胞によるNK細胞の増殖速度は、OCにより増殖したNK細胞よりも100倍の大きさで低いため(表1及び図5A及び図5B)、遺伝子操作されたK562によるかかるシグナル(表1)が、OCにより送達されたものよりも劣るかどうかはまだ確定していない。さらに、遺伝子操作されたK562による持続的な刺激が、NK増殖を維持するために必要である一方、スーパーチャージドNK細胞を1ヵ月超にわたって増殖させるには、OCによるたった1回の刺激で十分であった。さらに、OCにより増殖したNK細胞は、一次NK細胞とは異なり、凍結温度にかなり耐え、生存率又は機能を喪失することなく、それらのスーパーチャージド特性及び増殖速度を保持する(図15)。
【0136】
自己又は同種異系OCを使用して、がん患者からのNK細胞を増殖させる場合、全く異なるプロファイルが観察された。がん患者のOCは、培養の初期にT細胞も増殖させ、様々な日数でNK細胞の全体的な増殖を低下させる。OC培養後に患者のNK細胞の機能を評価した場合、NK細胞の細胞傷害性の著しい喪失、及びIFN-γ分泌の減少が、NK細胞ごとに観察することができた(図6H及び図15G)。この観察は、がん患者における精製NK培養物中のごく少量の汚染T細胞の早い増殖が、NK細胞の細胞障害機能の喪失と相関するために重要である。従って、NK細胞の喪失はまた、がん幹細胞の成長及び転移に対して肥沃な土壌を提供し得る。
【0137】
腫瘍を移植したヒト化マウスから得られたOCが、がん患者のOCと同様に、それらの非担癌同等物よりも速く、精製NK培養物内でごく少量の汚染T細胞を増殖させるかどうかを試験するため、口腔底にOSCSCを移植し、増殖させた。増殖の5週間後に、マウスを安楽死させ、T細胞を除去した後、細胞を自己及び同種異系OCと培養し、NK細胞の増殖速度を判断した。健康なドナーのNK細胞と同様に、腫瘍のないhu-BLTマウスからのNK細胞は、NK細胞を長期間増殖した一方、担癌マウスからのものは、NK培養物中でごく少量の汚染T細胞をより速く増殖させ、NK細胞を上回るT細胞の増殖に好都合である。興味深いことに、がん患者で観察されたNK細胞の細胞傷害性の喪失と同様に、腫瘍を移植したhu-BLTマウスにおいてNK細胞の細胞傷害性の著しい喪失も観察され、これは、T細胞の増殖の発症機序であり得る。しかしながら、担癌マウスからのOCにより増殖したNK+T細胞は、腫瘍のないものと比べた場合に、高レベルのIFN-γを分泌し、NK細胞における分割アネルギーの潜在的な誘導ががん幹細胞の分化を駆動することを示唆している。このことは、NK注入した担癌hu-BLTマウスにおける腫瘍の単細胞調製が、より高い分化抗原を示し、NK細胞媒介細胞傷害性に耐性があったことが事実であると分かった。
【0138】
ヒトIL-15の添加がNK細胞の増加を促進するため、ヒト化マウス中の微小環境は、ネズミ及びヒトIL-15の間の交差反応性の欠如によりNK細胞の増殖に役に立たないと仮説を立てる。それらの増殖のために破骨細胞からのシグナルを必要とするNK細胞とは異なり、T細胞は、破骨細胞の不在下で急速に増殖し、破骨細胞は、T細胞増殖を適度に刺激する(図3G及び図3H)。マウスの組織微小環境から受けたシグナルが、T及びB細胞増殖を維持するのに十分である一方、NK細胞増殖は、骨髄サブセットからのシグナルを必要とする可能性が高い。興味深いことに、NK及び骨髄サブセットの両方の頻度は、末梢血及び組織中で減少する一方、骨髄細胞が豊富な骨髄では、T及びNK細胞のレベルは同様のままである。DCが末梢血中でのT細胞の増殖に好都合であり、破骨細胞が骨髄中でのNK細胞の増殖に好都合であるかどうかは、さらなる研究を必要とする。両方のモデルにおいて、NK細胞の低いパーセンテージ並びに機能低下は、がん進行に潜在的に寄与することが分かっているため、ヒト化マウスは、最良であり、かつ、ヒトがんモデルに最も近いもモデルである。
【0139】
最も刺激的な発見は、OCの存在下で培養した場合に、NK細胞がCD8+T細胞を増加させる能力である。NK細胞が、CD8+T細胞の増殖における重要なエフェクターであることで、MHCクラスIをより多く発現する腫瘍細胞の標的化及び溶解を増加させることができることを、このデータは示唆している。NK細胞が、抗原特異的CD8+T細胞を増加させることで、抗原特異的な方法で腫瘍細胞の溶解を増加させるかどうかは、さらなる研究を必要とする。がん患者及びヒト化マウスの末梢血/組織中のT細胞の急速な増殖及びNK細胞数の減少は、腫瘍細胞量を最小にするために、がん幹細胞/未分化腫瘍を含むMHCクラスI低標的をNK細胞によって標的化するには有害であり得る。さらに、NK細胞は、がん幹細胞の最適な分化及びMHCクラスIの高発現を促進し、CD8+T細胞を標的化するために、多量のIFN-γも提供する。従って、がん患者におけるNK細胞数及び機能の回復は、効果的な腫瘍制御を確立するために重要であろう。
【0140】
実施例3:破骨細胞により活性化したスーパーチャージドNK細胞は、スーパーチャージドCD8+T細胞を優先的かつ急速に増殖させる:がん患者及びBLTヒト化マウスにおける、OCにより増殖したNK細胞によるCD8+T細胞増殖の動力学の増加。
さらなる研究を実施例2の試験のために実施し、結果を以下にまとめる。
【0141】
OCにより増殖したNK細胞から精製されたT細胞の残存集団は、細胞傷害性を媒介しないが、IFN-γを分泌する。
OCにより増殖したNK細胞からのT細胞汚染の大部分は、CD8+T細胞であった(補足図S2A)。9日目のOCにより増殖したNK細胞からのT細胞汚染を選別して、精製したT細胞及びNK細胞を得た。その後、CD16及びCD3/56抗体を用いて、NK細胞の純度を試験した(補足図S2B)。次いで、NK細胞及びT細胞をIL-2で18~20時間処理した後、OSCSC及びK562に対する51Cr放出アッセイで使用した。OCにより増殖したNK細胞から単離されたCD3+T細胞は、OSCSC(補足図S2C)又はK562(補足図S2D)を溶解できなかった。NK細胞からの上清は、T細胞と比較して、有意に高いレベルのIFN-γを分泌した(補足図S2E)。
【0142】
患者からのNK細胞による細胞傷害性の低下及びIFN-γの低分泌は、T細胞増殖の増加と一致する。
OCと培養した場合、がん患者からの精製NK細胞は、NK細胞の増殖を維持することができず、実際に、12日目までに、増殖細胞の半分以上が、T細胞であった。さらに、31日目までに、10%のNK細胞しか培養物中に残らなかった(図3A及び補足図S4A)。さらに、増殖したNK及びT細胞の総数は、がん患者において、増殖の31~36日以内に判断し、健康な対照と比較して、がん患者からの増殖細胞が少なく(図3D及び補足図S4C)、T細胞の増殖レベルは、NK細胞よりも有意に高かった(図3E図3F及び補足図S4D~E)。これに対し、健康なドナーから単離されたNK細胞は、NK細胞の増殖を維持し、NKの増殖レベルは、T細胞よりも有意に高かった(図3B図3E図3F及び補足図S4B、S4D、S4E)。NK細胞の増殖は、培養の様々な日数で、健康なNK細胞と比べた場合に、患者のNK細胞で全く又はほんの僅かしか観察されなかった(図3E及びS4D)。健康なドナー又は患者のいずれかからの増殖細胞において著しい細胞死を観察することはできなかったが、細胞死の速度は、健康なドナーよりも患者からの細胞で僅かに高かった(図3C)。
【0143】
OCと培養した患者のNK細胞は、OCと培養した健康なNK細胞と比べた場合に、有意に少ないOSCSCを溶解した(図3G及び補足図S4F)。NK細胞の数に基づいて正規化した場合、患者によるNK細胞ごとに誘導された細胞傷害性は、健康な対照からのNK細胞と比べた場合に低かった(図3H及び補足図S4G)。OCにより増殖した患者のNK細胞は、OCにより増殖した健康なNK細胞と比べた場合に、有意に少ないIFN-γを分泌した(図31及び補足図S4H)。OCにより増殖した口腔癌患者のNK細胞は、健康なNK細胞と比べた場合に、有意に少ないIL-10(図3J)を分泌した一方、膵臓癌患者からのものは、健康なNK細胞と比べた場合に、より高いIL-10(補足図S4I)を分泌した。健康又はがん患者のNK細胞によるIL-6分泌レベルについて有意差を観察することはできなかった(図3K及び補足図S4J)。NKG2D表面発現レベルは、破骨細胞により増殖した患者のNK細胞と比較して、健康なNK細胞と同様であった(図3L)。CD94発現の強度は、健康な対照と比較して、患者のNK細胞の表面上でより高い(図3L)。KIR2、NKp30、NKp44及びNKp46発現は、健康なNK細胞と比べた場合に、OCにより増殖した患者のNK細胞の表面上で低かった(図3L)一方、KIR3発現は、健康なNK細胞と比べた場合に、OCにより増殖した患者のNK細胞の表面上で同じか又は低いのいずれかであった(図3L)。
【0144】
破骨細胞により活性化したNK細胞は、CD8+T細胞数を実質的に増加させる。
がん患者は、健康な対照と比べた場合に、平均して高い割合のCD8+T細胞、及び低い割合のCD4+T細胞を有する(図7A)。破骨細胞と培養した場合、NK細胞の不在下のT細胞は、CD8+T細胞を増殖できなかったが、しかしながら、検出不能な又は非常にごく少量の汚染T細胞を含んだOCで活性化した精製NK細胞は、患者のNK細胞培養物が健康なNK細胞よりも速くT細胞を増殖させたにも関わらず、健康及び患者の培養物の両方からCD8+T細胞を増殖させた(図7B)。患者から単離されたT細胞は、健康な対照から単離されたT細胞と比べた場合に、高レベルのCD45RO、及び低レベルのCD45RA、CD62L、CD28、CCR7及びCD127を有した(図7C)。
【0145】
OCにより活性化したNK細胞は、CD8+T細胞を優先的に増殖させた一方、DCにより活性化したNK細胞は、CD4+T細胞を増殖させた。
OC対OCにより活性化したNK細胞により増殖したT細胞の亜集団間に差があるかどうか判断するため、健康なドナーにおけるCD4及びCD8亜集団を解析した。OCにより活性化したNK細胞は、CD8+T細胞を優先的に増殖させた一方、OCにより活性化したNK細胞は、CD4+T細胞を増殖させた(図7D~7I)。OCにより活性化したNK細胞により増殖したCD8+T細胞は、高CD45RO及びCD44、非常に低レベルのCD62L、CCR7及びCD127、及び中レベルのCD28を示した一方、OCにより活性化したNK細胞により増殖したCD4+T細胞は、低レベルのCD45RO、中レベルのCD44、及び高レベルのCD62L、CCR7を示し、CD127の変化はほとんどなく、CD28は低レベルであった(図7J)。NK細胞の不在下でOC又はDCのいずれかにより活性化したT細胞は、OCにより活性化したNKにより得られたものと似ていたCD28発現を除いて、DCにより活性化したNKにより得られたものと同様の表面プロファイルを示した(図7J)。CD3+T細胞内のCD4及びCD8の割合は、PBMCと、NK細胞の不在下でOC又はDCのいずれかにより活性化したものとの間で同様であり、NK細胞の存在下又は不在下でOC又はDCのいずれかにより活性化したT細胞上で有意なレベルのPD-1、Tim3又はKLRG-1を観察することはできなかった(図7K図7M)。
【0146】
実施例4:実施例5に対する材料及び方法
細胞株、試薬、及び抗体
10%のウシ胎児血清(FBS)を補充したRPMI 1640(Gemini Bio-Products,CA)を使用して、免疫細胞を培養した。OSCSC及びOSCCを解離し、UCLAで患者の舌腫瘍から増殖させて、10%のFBSを補充したRPMI 1640で培養した。組み換えIL-2は、NIH-BRBから得た。この試験で使用したフローサイトメトリー抗体は、Biolegendから得た(San Diego,CA)。モノクローナル抗TNF-α及びモノクローナル抗IFN-g抗体は、商業的供給源から得たか又は我々の研究所で調製され、1:100の希釈が、上述のように実験を遮断するために使用する最適濃度であることが分かった。
【0147】
ヒトNK細胞及び単球の精製
UCLA Institutional Review Board(IRB)により承認された書面による同意書が得られ、全ての手順は、UCLA-IRBにより承認された。健康なヒトドナー380人からのPBMCを単離し、NK細胞及び単球は、前述したように、Stem Cell Technologiesから得られた単離キットを用いて精製された。NK細胞及び単球集団の純度は、フローサイトメトリー解析に基づいて、それぞれ、95%又はそれ以上であることが分かった。
【0148】
プロバイオティクス細菌
AJ2は、幹細胞の分化を誘導するために使用されるグラム陽性プロバイオティクス細菌の8種の異なる株(Streptococcus thermophiles、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium 10 infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus casei、及びLactobacillus bulgaricus)の組み合わせであり、NK細胞中の炎症誘発性及び抗炎症性サイトカインの両方の最適分泌を誘導する優れた能力に対して選択される。さらに、各株を増殖させ、温度及び酸度などの環境圧力に耐える能力に基づいて、3ラウンド目のサブクローニング後に、特異的なコロニーを選択した。
【0149】
破骨細胞の生成及びスーパーチャージドヒト及びhu-BLT由来NK細胞の増殖
精製した単球を、M-CSF(25ng/mL)及びRANKL(25ng/mL)を含有するアルファ-MEM培地400中で21日間又は特に指定せずに培養した。培地を、M-CSF及びRANKLを含有する新鮮なアルファ-MEMで、3日ごとに新鮮にした。ヒト精製及びhu-BLT強化されたNK細胞を、rh-IL-2(1000U/ml)及び抗CD16mAb(3ug/ml)で18~20時間活性化した後、破骨細胞と共培養し、AJ2を超音波処理した。上述のように、培養培地を3日ごとにrh-IL-2で新鮮にした。破骨細胞及びsAJ2によりエクスビボ増殖したNK細胞は、他の増殖方法論と比べた場合に、優れた細胞傷害性及びIFN-g分泌を有し、長期間生存したため、スーパーチャージドNK細胞と呼ばれた。超音波処理の場合、AJ2を計量し、10mg/mlの濃度で10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中で再懸濁した。細菌を徹底的にボルテックス撹拌した後、6~8の振幅で15秒間、氷上で超音波処理した。その後、超音波処理した試料を、氷上で30秒間インキュベートした。5パルスごとに1回、試料を採取し、細胞壁少なくとも80%が溶解するまで、顕微鏡下で観察した。氷上でおよそ20ラウンドの超音波処理/インキュベーションを実施して、完全な超音波処理を達成したと判断した。最後に、超音波処理した試料(sAJ2)をアリコートにし、-80℃の冷凍庫で使用するまで保存した。
【0150】
免疫不全及びヒト化マウス中のヒト口腔癌細胞増殖の解析
動物研究は、UCLA Animal Research Committee(ARC)(2012-101-13A)の書面による承認の下で実施された。ヒト化BLT(hu-BLT;ヒト骨髄/肝臓/胸腺)マウスは、前述のように、我々のコア施設で調製した。
【0151】
口腔腫瘍のインビボ増殖は、8~10週齢のNSGマウス又はhu-BLTマウスの口腔底に腫瘍細胞を同所的に移植することで行った。イソフルランを用いてマウスを麻酔した後、腫瘍細胞を、口腔底に直接注入することで、10plのHCマトリゲルと共に移した(Corning,NY,USA)。手術の7~10日後に、マウスは、尾静脈を介して1.5×10個のスーパーチャージドNK細胞を受け取った。マウスにAJ2(5百万個の細菌/用量)を給餌し、腫瘍移植の1又は2週間前に給餌を開始し、実験を通して、48時間ごとに給餌した。病的状態の兆候が明らかになると、マウスを安楽死させた。口腔腫瘍、BM、脾臓、及び末梢血を収穫した。
【0152】
hu-BLT及びNSGマウスの組織から細胞の解離及び培養
その後の解析用にマウス組織の単細胞懸濁液を調製するため、動物を犠牲にし、BM、脾臓、末梢血、及び口腔腫瘍を得た。口腔腫瘍を直ちに1mmに切り刻み、DMEM中で1mg/mlの(脂肪組織の)コラゲナーゼII、10U/mlのDNAse I、及び1%のウシ血清アルブミンを含有する消化用緩衝液中に置き、150rpm撹拌機を備えたオーブンで37℃にて20分間インキュベートした。消化後、40pmのセルストレーナーを通じて試料を濾過し、1500rpmで4℃にて10分間遠心分離した。ペレットをDMEM中で再懸濁し、細胞を計数した。BM及び脾臓からの単細胞懸濁液は、上述のように、組織を消化することで得た。PBMCは、ヘパリン化血液検体のフィコール・ハイパック遠心分離を用いて得た。PBMCを含有するバフィーコートを収穫し、洗浄し、RPMI 1640培地中で再懸濁した。
【0153】
hu-BLTマウスからのNK細胞、CD3T細胞、及び単球の精製
T細胞選択キット(Stem-Cell Technologies)を用いて、CD3C T細胞をhu-BLT脾細胞から単離し、T細胞が枯渇した細胞をNK強化細胞として使用し;hu-BLTマウスからのNK細胞は、ヒトCD56陽性選択キット(Stem-Cell Technologies,Canada)を用いて単離した。hu-BLTマウスからの単球は、ヒトCD14陽性選択キット(eBioscience,San Diego,CA)を用いて、BM細胞から単離した。
【0154】
ELISA
単一ELISAは、上述のように行った。サイトカイン及びケモカイン濃度を解析して得るため、製造者によって提供された組み換えサイトカインの2倍又は3倍希釈のいずれかによって標準曲線を生成した。
【0155】
表面染色及び細胞死アッセイ
上述のように、細胞を抗体又はヨウ化プロピジウムで標識することで染色を行った。1%のBSAを含有する氷冷PBSで細胞を2回洗浄した。所定の最適濃度の特異的ヒトモノクローナル抗体を、50plの冷却BSA中の1×10個の細胞に添加し、細胞を氷上で30分間インキュベートした。その後、細胞を冷却PBS-BSA中で洗浄し、PBS-BSAと共に500plにした。細胞死アッセイの場合、50plの冷却BSA中の1×10個の細胞を8pg/mlのヨウ化プロピジウムで染色し、細胞を氷上で10分間インキュベートし、PBS-BSAと共に500plにした。Beckman 485 Coulter Epics XLサイトメーター(Brea,CA)を用いてフローサイトメトリー解析を行い、FlowJo vXソフトウェア(Ashland,OR)で結果を解析した。
【0156】
51Cr放出細胞傷害性アッセイ
51Cr放出アッセイは、上述のように行った。簡単に言えば、異なる数のエフェクター細胞を51Cr標識標的細胞でインキュベートした。4時間のインキュベーション期間後、上清を各試料から収穫し、γ計数器を用いて、放出放射能を計数した。特異的細胞傷害性のパーセンテージを以下のように算出した:
%細胞障害性D実験cpm-自発cpm総cpm-自発cpm
LU30/10は、30%の腫瘍標的細胞を溶解するのに必要なエフェクター細胞の数の逆数を用いて算出する。
【0157】
NK細胞上清による幹細胞分化
NK細胞を、抗CD16モノクローナル抗体(3pg/mL)及びIL-2(1,000U/mL)の組み合わせで18時間処理した後、上清を除去し、分化実験に使用した。活性化NK細胞により産生したIFN-γの量は、IFN-γ ELISA(Biolegend,CA,USA)で測定した。NK細胞上清の量を増加させて徐々に日々添加することで、OSCSCを分化した。平均して、分化を誘導するため、上清を含有するIFN-γの合計3,500pgを4日間添加し、OSCSCの分化及びNK細胞媒介細胞傷害性に対する抵抗性を誘導した。その後、標的細胞を1×PBSで洗浄し、取り外し、前述のように実験に使用した。
【0158】
統計解析
対応のない両側スチューデントt検定を行って、統計解析した。ボンフェローニ事後検定による一元配置分散分析法を使用して、異なる群を比較し、(n)は、実験に使用したマウスの数を示す。細胞傷害性及びサイトカイン解析の場合、二重又は三重試料のいずれかを評価に使用した。以下の記号は、各解析内で統計有意性のレベルを表し、***(p値<0.001)、**(p値0.001~0.01)、*(p値0.01~0.05)。
【0159】
実施例5:スーパーチャージドNK細胞は、ヒト化BLTマウスにおける幹様/低分化口腔腫瘍のインビボ成長及び進行を阻害する。
スーパーチャージドNK細胞の単回注入は、OSCSC腫瘍増殖を阻害し、マウスの健康を著しく改善した。
Hu-BLTマウスを生成し、ヒトOSCSCをNSG及びhu-BLTマウスの口腔底に移植し(図62A及び図62B)、体重減を週1回の頻度でモニターした(図62C)。スーパーチャージドNK細胞の単回注入は、OSCSCを移植したマウスの少しの体重減をもたらした(図62C)。OSCSCを移植し、NK細胞を注入したマウスは、病的状態を示さず、食物を摂取することができた一方、NK注入の不在下で口腔腫瘍を有するマウスは、病的になり、腫瘍の増殖により食物摂取の合併症を有し(データ不図示)、急速な体重減を示した(図62C)。興味深いことに、NK注入をしない担癌hu-BLTマウスは、担癌NSGマウスと比べた場合に、体重減が少なく、再構成されたヒト免疫細胞が腫瘍増殖を僅かに制限することができるが、効率的ではないことを示した(図62C)。hu-BLTマウスにおけるNK注入の治療効果は、腫瘍切除後に腫瘍サイズを比較した場合にも見られた。NKを注入しない担癌hu-BLTマウスからの腫瘍は、NKを注入した担癌hu-BLTマウスのものよりもはるかに大きい(図62D及び62E)。腫瘍重量は、NK処置を受けなかった担癌マウスで形成された大きな腫瘍(図62D図62F)と比較して、NK又はNK注入/AJ2給餌マウス(図62F)において実質的に小さいままであった。さらに、体重減データに一致して、NKを注入しない担癌hu-BLTマウスは、担癌NSGマウスと比べた場合に、僅かに小さな腫瘍を有し、再構成されたヒト免疫細胞が腫瘍増殖を制限することができるが、効率的ではないことを示した(データ不図示)。
【0160】
Hu-BLTマウスは、汚染マウスCD45免疫細胞について考えると、BM、脾臓、及び100末梢血中のhCD45免疫細胞との96%~99%を超える再構成を示した。hu-BLTマウスの末梢血中のCD3T細胞(図16G)、CD3CD4T細胞(図16H)、及びCD3CD8T細胞(図62I)のプロファイルは、ヒト末梢血のものと似ていたが;しかしながら、ヒトと比べて、hu-BLTマウスにおいて、B細胞のパーセンテージは、僅かに高い(図62J)一方、NK細胞のパーセンテージは、低かった(図62K)。
【0161】
全ての組織コンパートメント内の担癌マウスにおけるNK細胞傷害性及びIFN-γ分泌の喪失、並びにNK注入及び/又は給餌AJ2及び抗PD1注入による回復
担癌マウスは、脾細胞(図63A)、BM由来の免疫細胞(図63B)、PBMC(図63C)、及びCD3枯渇脾細胞(図63D)において、低いNK媒介細胞傷害性を示す。NKを注入した担癌マウスは、単体及びAJ2の給餌との組み合わせの両方で、全ての組織コンパートメントにおいてNK細胞傷害性の上昇を示し、最も大きな増加は、マウスにAJ2を給餌し、NK細胞及び抗PD1抗体を注入した場合に観察された(図63A図64D)。CD3陽性選択キットによってT細胞を脾細胞から枯渇させた場合、同様のNK細胞傷害性プロファイルが、図63Aで観察されたように、CD3枯渇脾細胞で見ることができた(図63D)。125匹の担癌hu-BLTマウスの脾細胞(図63E及び表2)、BM由来の免疫細胞(図63F)、PBMC(図63G)、及び脾細胞からのCD3T細胞(図63H)は、低いIFN-γを分泌した。NK細胞及びAJ2と組み合わせた抗PD1抗体の注入は、NK及びAJ2群と比べた場合に、全ての組織コンパートメントにおいて、IFN-γ分泌に対する効果がないか又はその効果の低下のいずれかを有した(図63E図63G)。NKを注入した担癌マウスは、全ての組織コンパートメント内でIFN-γ分泌の上昇を示し、最も大きな増加は、マウスにAJ2を給餌した場合に観察された(図63E図63H)。CD3陽性選択キットによってT細胞を脾細胞から枯渇させた場合、NK注入を受けた担癌マウスが、NK注入の不在下の担癌マウス、又はNKを注入した非担癌対照マウスと比較して、IFN-γ分泌の最も大きな増加を有した(図63I)。
【0162】
【表2】
【0163】
hu-BLTマウスにNK細胞を注入し、AJ2を給餌した場合、種々の組織コンパートメントにおいてCD3CD8T細胞の割合が増加した。
CD3又はCD3CD8T細胞の割合の増加は、NK細胞を単体で又はAJ2給餌と組み合わせて注入したマウスのBM(図64A)、脾臓(図64B)及び血液(データ不図示)中で見られた(表3及び表4)。犠牲の時点のT細胞のパーセンテージを考えた場合、PBMC、脾臓、及びBMは、高いパーセンテージのCD3T細胞を示し、BMは、NK細胞を単体で又はAJ2給餌と組み合わせて注入した担癌マウスにおいて、HLADRCD11B免疫サブセットの上昇を示した(表3)。CD3T細胞及びCD3CD8T細胞のパーセンテージは、BM及び脾細胞を培養した場合、NK細胞を単体で又はAJ2給餌と組み合わせて注入した担癌マウスで増加した(表3)。同様に、NK及び/又は給餌AJ2を注入した担癌マウスから解離した腫瘍は、犠牲の時点のCD3T細胞レベルの上昇を示した(表4)。
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
NK注入及び/又はAJ2給餌は、幹様口腔腫瘍の増殖及び進行を阻害し、hu-BLTマウスにおいて、インビボでCSCを分化する。
NKを注入しないNSG(図65A)及びhu-BLTマウスからの腫瘍細胞は、急速に増殖した一方、NK細胞を有するものは、増殖しないか又は非常にゆっくり増殖した(図65A図65C)。同様に、NK上清により分化した腫瘍を移植したhu-BLTマウスからの腫瘍は、増殖せず(図65C)、移植前に抗IFN-γ及び抗TNF-α抗体を組み合わせて腫瘍分化を遮断することにより、インビボでの腫瘍増殖を回復させた(図65B及び図65C)。腫瘍増殖は、NK単体を注入したマウスと比較して、AJ2を給餌したNK注入マウスでより少なく(図65C)、両方とも、口腔腫瘍移植のみを受けたものよりも実質的に少なかった(図65C)。9~11倍以上のhCD45免疫細胞が、腫瘍のみのマウスと比べた場合に、NK細胞を注入した担癌マウスの腫瘍に浸潤した(図65D)。腫瘍中で表面EpCAMを発現する上皮細胞のパーセンテージは、NKを注入した担癌マウスと比べた場合に、NKを注入しない担癌マウスからおよそ5倍以上であった。
【0167】
有意に多いIFN-g分泌が、担癌hu-BLT又はNSGマウスからのものと比べた場合に、様々な培養日数で、NK細胞を注入した担癌マウスの腫瘍から得られた(図65E)。CD54及びMHC-Iの発現は、腫瘍のみを受けたhu-BLT及びNSGマウスと比べた場合に、NKを注入した担癌マウスから得られた腫瘍上でより高かった(図65F)。AJ2の給餌の不在下及び存在下でNKを注入した担癌マウスからの腫瘍は、NKを注入しない担癌マウスからの腫瘍と比べた場合に、NK細胞媒介細胞傷害性に強い抵抗性を示し、それらの分化した表現型が実証された(図65G及び図65H)。腫瘍細胞のNK媒介分化が、移植前に抗IFN-γ及び抗TNF-α抗体で遮断された場合、NK細胞媒介細胞傷害性に対する腫瘍の感受性は回復した(図65H)。NK細胞を注入したhu-BLTマウスからの口腔腫瘍は、担癌マウスからのVEGFの分泌に基づいて標準化した場合、比較的少ないVEGFを分泌した(図65I)。NKを注入したhu-BLTマウスからの腫瘍は、高レベルのhCD45浸潤リンパ球を有し、最も高い増加は、NK細胞を注入し、AJ2を給餌したもので見られた(図65J)。浸潤CD45免疫細胞の大部分は、CD3T細胞であり、CD4T細胞サブセットは、CD8T細胞よりも適度に高い割合を有し、CD3CD56CD16NKTサブセットを実証した。腫瘍をIL-2で処理した場合、腫瘍との相互作用中にダウンレギュレートされた、高強度のCD4、CD8、及びCD16/CD56表面発現が回復した。
【0168】
NKを注入した担癌hu-BLTマウスの末梢血からの血清は、NK細胞がない担癌hu-BLTマウスからのものと比べた場合に、IFN-γ分泌、並びに他のサイトカイン/ケモカイン/成長因子及びリガンドの増加を示し、特に、IFN-γ分泌は、マウスにAJ2を給餌することでさらに増強された(図66A及び図66C)。
【0169】
CDDP又はパクリタキセルは、NACの有無に依らず、IL-2+抗CD16mAbで処理したNK上清で分化したOSCSC中で有意な細胞死を誘導する。
NK上清によるOSCSCの分化は、CDDPに対する腫瘍の有意な感受性をもたらした(図67A)。同様に、パクリタキセルは、NK上清により分化したOSCSCのより高い細胞死を媒介し、NACは、パクリタキセル媒介の細胞死を有意に増加させた(図67B)。抗IFN-γ及び抗TNF-α抗体によるOSCSCのNK媒介分化の遮断は、NACの有無に依らず、CDDP又はパクリタキセルにより誘導された細胞死を実質的に減少させた(図67B)。CDDP又はパクリタキセル及びNACによるOSCC(患者由来の分化口腔腫瘍)の処置は、より高い細胞死を示した。
【0170】
NKを注入した担癌マウスからの単球及び破骨細胞は、NK注入の不在下で、担癌マウスからのものと比べた場合に、NK細胞を活性化するより大きな能力を有した。
自己単球と培養した場合のNKを注入した担癌マウス及びNK上清により分化した担癌マウスからのNK細胞は、NK細胞注入の不在下で、未分化腫瘍を移植したものと比べた場合に、細胞傷害性(図68A)及びIFN-γ分泌(図68B)を有意に増加させた。移植前のTNF-α及びIFN-γに対する抗体の添加を通じた腫瘍のNK媒介分化の遮断は、NK細胞の細胞傷害性(図68A)及びIFN-γ分泌(図68B)を減少させた。その後、hu-BLTマウスのBM由来単球からOCを生成し、健康なヒトドナーからの同種異系NK細胞と培養し、NK細胞増殖の程度を試験した。NK細胞増殖(図68C)及びIFN-g分泌(図68D及び図68E)は、NKを注入しない担癌マウスから得られたものと比べた場合に、NKを注入した担癌マウス又はNK上清により分化した担癌マウスで増加した(図68C図68E)。従って、NKを注入した担癌マウスからの単球及び破骨細胞は、NK注入の不在下で、担癌マウスからのものよりも大きなNK細胞を活性化する能力を有した。
【0171】
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【0172】
参照文献による援用
本明細書で述べた全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が出典明示により特にかつ個々に援用されるべきことが示されるように、出典明示によりその全体がここに援用される。矛盾する場合、本明細書での定義を含む本出願が優先する。
【0173】
その全体が出典明示によりまた援用されるものは、例えば、ワールドワイドウェブtigr.orgにThe Institute for Genomic Research(TIGR)及び/又はワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.govにNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって維持されているもののような公的データベースにおけるエントリーに相関する受託番号を引用する任意のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列である。
【0174】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載された発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し又は常套的なものに過ぎない実験を使用して確認できるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものである。
図1-1】
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図2-1】
図2-2】
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