(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100934
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】液体送達組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/395 20060101AFI20240719BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240719BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240719BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240719BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240719BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240719BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240719BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240719BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/395
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/10
A61K9/48
A61P1/00
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083518
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2020534389の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】17210119.8
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505400004
【氏名又は名称】コスモ・テクノロジーズ・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランサ フェラーリ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ボンフェローニ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッピーナ サンドリ
(72)【発明者】
【氏名】ルイージ マリア ロンゴ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ マセローニ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィア ロッシ
(57)【要約】
【課題】特に活性物質の長期の滞留時間を提供することができるin situの送達ビヒクルのための生体材料の化学的および物理的な進歩に続いて、活性物質の送達の分野における革新を提供する必要がある。
【解決手段】本発明は、液体製剤中に少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)を含む、送達ビヒクルとして使用するための組成物を提供する。ポリマーAは、好ましくはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーまたはセルロース誘導体である。ポリマーBは多糖類である。組成物は、送達するための活性物質を含有することもでき、または、間葉系幹細胞などの、投与時に添加される物質のための送達ビヒクルとして使用することもできる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体製剤中に少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)、少なくとも1つの生体接着性ポリマー、および送達のための少なくとも1つの活性成分を含み、前記送達のための少なくとも1つの活性成分が、リファマイシンSVであり、37℃より低い温度では液体状態であり、37℃以上に曝されるとゲルまたは構造化された組成物となる、送達ビヒクルとして使用するための組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱応答性ポリマーAが、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407など、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)など、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのイオン感応性ポリマーBが、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸、それらの塩およびそれらの混合物からなる多糖類の群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの他の賦形剤、例えば抗酸化剤、キレート剤、防腐剤および/または抗菌剤、界面活性剤、補助界面活性剤、親油性化合物、精製水または注射用水、有機および無機塩、栄養活性を有する緩衝剤などをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、経口、口腔、目、直腸、肛門周囲、膣、耳、鼻、歯の経路または注射により投与され、好ましくは、投与の前記注射の経路は、粘膜下、腹腔内、腫瘍内、皮下、筋肉内、関節内、鼻腔内、肛門周囲、くも膜下腔内、硬膜外、脳もしくは脊髄へ、または網膜下腔への実質内の注射により投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、溶液、ミセル分散液、懸濁液、エマルションまたはマイクロエマルションに製剤化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、浣腸剤、シロップ、ドロップ、溶液、懸濁液、ミセル分散液、エマルション、マイクロエマルション、構造化された粘性組成物、膣洗浄剤、ソフトゲルカプセル内の液体の形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
人体に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの熱応答性ポリマーがポロキサマー407を含み、前記少なくとも1つのイオン感応性ポリマーがアルギン酸ナトリウムを含み、前記少なくとも1つの生体接着性ポリマーがカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ポロキサマー407が、前記組成物の重量に対して0.3~25%(w/w)の量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポロキサマー407が、前記組成物の重量に対して15%(w/w)の量で存在する、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
アルギン酸ナトリウムが、前記組成物の重量に対して0.01~2.0%(w/w)の量で存在する、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
アルギン酸ナトリウムが、前記組成物の重量に対して0.2%(w/w)の量で存在する、請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
カルボキシメチルセルロースナトリウムが、前記組成物の重量に対して0.01~2.0%(w/w)の量で存在する、請求項9~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
カルボキシメチルセルロースナトリウムが、前記組成物の重量に対して0.05%(w/w)の量で存在する、請求項9~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
人体に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減における使用のための、請求項9~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
炎症性腸疾患の診断、予防、緩和、治療および/または低減における使用のための、請求項9~15のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの薬学および非薬学的分野において、用途の広い送達ビヒクルとして使用するための液体組成物に製剤化された、生体材料の革新的な組み合わせを提供する。本発明の生体材料の組合せを含む液体組成物は、ヒトにおける医療目的の送達ビヒクルとして提供される。
【背景技術】
【0002】
生体材料は、医療目的-治療(身体の組織機能の治療、増強、修復または置換)、保護または診断のいずれかのために、生体系と相互作用する物質である。
【0003】
生体材料は、自然から得るか、様々な化学的アプローチを用いて実験室で合成することができる。
【0004】
生体適合性は、様々な化学的および物理的条件下の様々な環境における生体材料の挙動に関係する。この用語は、材料をどこで、またはどのように使用するかを指定せずに、材料の特定の性質を表すこともある。例えば、ある材料は、特定の細胞型または組織と融合できてもよく、できなくてもよい。この用語のあいまいさは、生体材料が人体と相互作用するかどうか、どのように相互作用するのか、そして、どのようにそれらの相互作用が医療機器および薬剤の臨床的成功を決定するのか、についての洞察の継続的な発展を反映している。
【0005】
人体における活性物質の送達の制御は、医療目的にとって重要である。
【0006】
特定の標的の場合、送達の部位特異性が、所望の医療結果を得るために重要となる可能性がある。他の特定の標的の場合、送達の部位特異性および作用時間は、好成績を得るための唯一の方法を表し、対象または患者に服薬順守の重要な側面を表すことができる。加えて、多くの医療用途において、適用部位との長時間の接触を達成するために、活性物質の長時間の持続放出を得る必要があり、活性物質の濃度を、長時間、最小有効濃度(MEC)よりも高く維持することが重要である。この性質の最初の結果は、結果的な投与頻度の減少であり、これは患者の服薬順守の向上につながり、患者が症状の緩和または疾病の治癒を達成する可能性をより高くする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”3rd edition,Informa Healtcare
【非特許文献2】Sandri et al. “An In Situ Gelling Buccal Spray Containing Platelet Lysate for the Treatment of Oral Mucositis”, Current Drug Discovery Technologies, 2011,8,277-285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に活性物質の長期の滞留時間を提供することができるin situの送達ビヒクルのための生体材料の化学的および物理的な進歩に続いて、活性物質の送達の分野における革新を提供する必要がある。
【0009】
さらに、活性物質を送達ビヒクルに添加でき、かつ標的部位への速やかな送達のために患者に投与することができる、明確に定義された選択部位または臨床現場において使用するための送達ビヒクルも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、液体製剤中に少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)を含む、送達ビヒクルとして使用するための組成物を提供する。
【0011】
好ましくは、ポリマーAは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407など、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース(MC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)など、ならびにそれらの混合物を含むがこれらに限定されない群から選択される。
【0012】
好ましくは、ポリマーBは、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸塩など、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない群から選択されるが。
【0013】
本明細書に開示される発明の液体組成物は、少なくとも1つの生体接着性ポリマー(ポリマーC)をさらに含んでもよく、キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、シクロデキストリン、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチンなど、並びにそれらの混合物を含むがこれらに限定されない群から選択される。
【0014】
組成物は、少なくとも1つの他の賦形剤をさらに含んでもよく、例えば抗酸化剤、キレート剤、防腐剤および/または抗菌剤、界面活性剤、補助界面活性剤、親油性化合物、精製水または注射用水、有機および無機塩、栄養活性を有する緩衝剤などである。
【0015】
一実施形態において、組成物は、送達のための少なくとも1つの活性物質をさらに含む。
【0016】
少なくとも1つの活性成分は、タンパク質またはペプチド、モノクローナル抗体、サイトカイン、制酸剤、アドレナリン作動薬、抗アドレナリン作動薬、染料、免疫賦活剤、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン剤、経鼻抗ヒスタミン剤/充血除去剤、下痢止め剤、抗悪性腫瘍剤、抗菌剤、抗生物質、抗真菌剤、抗痔薬、抗アドレナリン作動薬、アドレナリン作動薬、鎮痛剤、気管支拡張剤、選択的アルファ-2拮抗薬、抗コリン作用薬/鎮けい薬、抹消オピオイド受容体拮抗薬、緩下剤、尿生殖路薬、下剤、膣剤、膣用抗真菌剤、膣用抗菌剤、口腔殺菌剤または口腔抗生物質、創傷治癒薬、止血剤、麻酔薬、硬化薬、またはそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0017】
さらに別の実施形態において、組成物は、投与時に、特に即座に、活性物質を加えることができるように、製剤化される。
【0018】
投与時に添加される活性物質は、任意のもの、または上記のものとすることができ、さらに細胞および/または、例えば微小胞、ゲノム物質およびリソソームなどの細胞成分を含む細胞物質とすることもできる。
【0019】
細胞は、外胚葉(皮膚細胞およびメラニン細胞を含むが、これらに限定されない);内胚葉(肺胞細胞および膵臓細胞を含むが、これらに限定されない);中胚葉(心筋細胞および骨格筋細胞を含むが、これらに限定されない);または胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、および人工多能性幹細胞などの幹細胞由来の分化細胞とすることができ、好ましくは間葉系幹細胞(MSC)である。
【0020】
本明細書において説明するように、本発明は、上で開示したような細胞物質の送達に使用するための組成物を提供する。本明細書において説明するように、本発明は、細胞、好ましくは幹細胞、より好ましくは間葉系幹細胞の送達に使用するための組成物を提供する。細胞は、投与時にビヒクル組成物に加えることができる。
【0021】
機能性および生存特性を守るために、細胞は、投与前8時間を超えない期間内、好ましくは6時間を超えない期間内に加えられるべきである。
【0022】
本発明の一態様によれば、液体組成物は、ヒトにおける送達ビヒクルとして使用される。
【0023】
本発明のまた別の態様によれば、液体組成物は、人体に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用される。
【0024】
本発明の非限定的かつ詳細な説明が、非限定的な実施例および図を参照して続く。
【0025】
図は、本明細書において提示される実施例に直接関係し、この文書の後半で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、4℃および37℃でMSC懸濁ビヒクルと2、4および6時間接触した後のMSCの生存率を示す。透明なバー:対照(培地+MSC);塗りつぶしたバー:ビヒクル+MSC。
【
図2】
図2は、異なる濃度のMSC懸濁ビヒクルでのMSCのMTTアッセイを示す。
【
図3】
図3は、異なる濃度のMSC懸濁ビヒクルでの、ボイデンチャンバーにおける間葉系幹細胞のDAPI染色(倍率20倍)を示す。上部のパネル(左から右に、対照、75%、80%);下部のパネル(左から右に、90%、95%、100%)。
【
図4】
図4は、異なる濃度のMSC懸濁ビヒクルでのボイデンチャンバーにおけるMSCの遊走率を示す。
【
図5】
図5は、ムチンの存在下および生物学的基質の非存在下で得られたFmax値を表す。
【
図6】
図6(aおよびb)は、それぞれ貫通力および仕事値を示す。
【
図7】
図7は、37℃で20分後にゲル化が起こることを示すG’プロファイルを表す。
【
図8】
図8は、2倍希釈後のビヒクルの弾性率の値(G’)を示す。
【
図9】
図9は、ジェランガム(GG)を添加した時の、生理学的範囲の温度におけるポロキサマー(Kolliphor(登録商標) P407)ベースのゲルの強度の改善を示す。
【
図10】
図10は、全ての試験試料の創傷領域の経時的な進化を表す。異なる時点(t0、t24、t48およびt72)後の試料の10倍画像が示される。黒い長方形は、創傷領域を囲んでいる。
【
図11】
図11は、72時間後の対照、参照ビヒクル(7386)+PLおよび(7364/1)+PL試料の比較を表す。72時間後の試料の10倍画像が示される。黒い長方形は、創傷領域を囲んでいる。
【
図12】
図12は、異なる時点(t0、t24、t48およびt72)後の対照、参照ビヒクル(7386)+PLおよび(7364/1)+PL試料の創傷ギャップ内の細胞の平均数の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
驚くべきことに、特定の生体材料の組合せにより、少なくとも1つの活性物質を特定の作用部位に向けることができ、その部位で物質を長時間維持することができる、新たな送達ビヒクルが得られることを見出した。
【0028】
本発明の生体材料の組合せは、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)を組成物中、好ましくは液体形態に含む。
【0029】
本発明の生体材料の組合せは、少なくとも1つの生体接着性ポリマー(ポリマーC)をさらに含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の生体材料の組合せは、好ましくは、少なくとも1つの活性剤および少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤と共に、液体組成物に製剤化される。
【0031】
他の実施形態において、本発明の生体材料の組合せは、好ましくは、少なくとも1つの活性剤および少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤と共に、構造化された粘性組成物に製剤化される。これらの実施形態によれば、構造化された粘性組成物は、半固体ビヒクルおよび/またはソフトゲルに類似しており、特定の範囲の液体の流動性を保ちながら、作用部位で生体関連媒体と接触するとそれ自身をさらに構造化およびゲル化することができる。
【0032】
本発明の1つの対象は、以下に開示するように、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せである。
【0033】
本発明のまた別の対象は、少なくとも1つの生体接着性ポリマー(ポリマーC)をさらに含有する、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せである。
【0034】
本発明のまた別の対照は、以下に開示するように、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)およびイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せ、少なくとも1つの活性物質、ならびに少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤を含む、液体組成物である。
【0035】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せ、少なくとも1つの生体接着性ポリマー(ポリマーC)、少なくとも1つの活性物質、ならびに少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤を含む、液体組成物である。
【0036】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せを含む、構造化された粘性組成物である。
【0037】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、少なくとも1つの活性物質および少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤の組合せを含む、構造化された粘性組成物である。
【0038】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せ、少なくとも1つの生体接着性ポリマー(ポリマーC)、少なくとも1つの活性物質、ならびに少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤を含む、構造化された粘性組成物である。
【0039】
本発明の液体組成物は、溶液、ミセル分散液、懸濁液、エマルション、またはマイクロエマルションとすることもできる。本発明の溶液および懸濁液は、水ベースの溶液または水ベースの懸濁液である。本発明のエマルションまたはマイクロエマルションは、水中油型または油中水型エマルションまたはマイクロエマルションである。本発明の液体組成物は、構造化された粘性組成物またはソフトゲルとすることもできる。
【0040】
本発明の液体組成物は、経口、口腔、歯、目、直腸、肛門周囲、膣、耳、もしくは鼻の経路により、または注射により投与することができる。本発明の組成物はまた、局所的に、好ましくは直接適用または注射により、投与することもできる。
【0041】
本発明の液体組成物は、外科的に、疾病から、または損傷から生じた空洞に直接投与することができる。
【0042】
本発明の生体材料の組合せを含む液体組成物は、粘膜下、腹腔内、腫瘍内、皮下、筋肉内、関節内、鼻腔内、くも膜下腔内、硬膜外、脳もしくは脊髄へ、または網膜下腔への実質内の注射により投与することができる。本発明の液体組成物は、無菌または非無菌の形態とすることができる。
【0043】
本発明の液体組成物は、浣腸剤、シロップ、ドロップ、溶液、懸濁液、ミセル分散液、エマルション、マイクロエマルション、構造化された粘性ビヒクル、ソフトゲル内で構造化された粘性ビヒクル、膣洗浄剤、かん注組成物、ソフトゲルカプセル内の液体組成物の形態とすることができる。
【0044】
本発明の液体組成物は、様々な薬学的および非薬学的分野において用途の広い送達ビヒクルとして使用することができる。本発明の液体組成物は、ヒトにおける医薬および/または医療目的のための送達ビヒクルとして提供される。
【0045】
本発明の生体材料の組合せを含む液体組成物は、少なくとも1つの活性物質を、胃腸管、膀胱、膣、目、耳、鼻、およびそれが有益であろう任意の他の組織または臓器に、直接適用または注射により、直接送達するために使用することができる。
【0046】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、送達ビヒクルとして使用するための、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せを含む液体組成物である。
【0047】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、ヒトにおける医薬または医療目的のための送達ビヒクルとして使用するための、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せを含む、液体組成物である。
【0048】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、人体に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用するための、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せを含む、液体組成物である。
【0049】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、送達ビヒクルとして使用するための、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)を含む、構造化された粘性組成物である。
【0050】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、ヒトにおいて医薬または医療目的の送達ビヒクルとして使用するための、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せを含む、構造化された粘性組成物である。
【0051】
本発明のまた別の対象は、以下に開示するように、人体に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用するための、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せを含む、構造化された粘性組成物である。
【0052】
少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せにより、標的臓器または粘膜にグラフトされたビヒクルを維持することができ、かつ、所望の作用部位および作用部位での活性物質の所望の持続時間で、所望のプロファイルに従って、本発明の液体組成物または構造化された粘性組成物からの少なくとも1つの活性物質のin situでの放出を調節することができる。
【0053】
実際、2つのタイプの生体材料が同じ組成物に含まれる場合に、構造化および生体接着性に対する予期しない相乗効果が見出された:少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)および少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)の組合せは、組織または臓器において、人体と相互作用するそれらの能力の予想外の上昇をもたらす。どちらのタイプのポリマーも、独立して、生体関連媒体、例えば粘膜の細胞外マトリックスと接触して、ゲル化または構造化することができる;驚くべきことに、一緒に組み合わせた場合に、ポリマーAは、ポリマーBの生体関連媒体との相互作用を相乗的に高め、また逆も同様であり、結果として、ゲル化または構造化する能力が拡大することが発見された。したがって、この組合せは、系のレオロジーと相互作用して、所望の部位での本発明の液体組成物からの少なくとも1つの活性物質の放出を調節し、その部位で持続性および滞留時間を高める。
【0054】
これらの生体材料の作用のメカニズムは異なる:熱応答性ポリマー(ポリマーA)は、温度が適切な範囲の値に到達したときに、ゲル化して生体関連媒体との構造を作り、イオン感応性ポリマー(ポリマーB)は、適切な濃度の特定イオンの存在下で、生体関連媒体との構造を作る。
【0055】
一実施形態において、生体関連媒体と接触した後の第1のポリマー(A)は、生理的温度(すなわち、約37℃)でゲル化または構造化された組成物を作り、同時に、ポリマーBと作用部位との相互作用を可能にし、そこで、特定のスターターイオンの存在がもう一方の環境媒体との相互作用を強化し、結果として混合物のゲル化または構造化能力の拡大をもたらす。ポリマー自身と、微小環境を有するポリマーとの間の強い相乗効果をもたらす2つのポリマーAおよびBの最適な組合せのおかげで、本発明の組合せは機能し、作用部位における組成物の強化されたゲル化/構造化をもたらす。
【0056】
このような強化されたゲル化は、粘弾性率G’の大幅な増加により説明される。液体形態からゲル状態または構造化された組成物の状態への遷移は、微分パラメータΔG’により説明されるように、組成物の生体接着性を強化し、適切な時間にわたる投与部位での接着性の強化に続く。微分パラメータΔG’は、生理的温度(すなわち約37℃)および室温(すなわち約25℃)の組成物で観察されるG’値の差として計算される。驚くべきことに、水および/または生体関連媒体(例えば、模擬結腸液または人工唾液など)で希釈しても、微分パラメータΔG’は変化しないままであることが発見された。このような強化されたゲル化または構造化は、投与部位/適用部位における液体組成物のより高い持続性にも貢献する。これは、所望の耐久時間の間、所望の作用部位(in situ)で、少なくとも1つの活性物質を標的化することができる、多用途の液体ビヒクル組成物の入手を可能にする。この予期せぬ柔軟性は、医薬分野および非医薬分野において、液体組成物を様々な用途のためのビヒクルとして使用することを可能にする。
【0057】
ポリマーAおよびポリマーBの組合せは、適切な期間の間、標的組織または標的臓器、例えば粘膜および/または粘膜下などと接着および/または結合することを可能にする、生体接着性を有する本発明の組成物を提供する。
【0058】
したがって、本発明の組成物は、選択組織または臓器への増大した移植特性のおかげで、所望の作用部位、およびその作用の所望の持続時間を考慮して、活性物質の放出を制御することができる、柔軟なビヒクルである。
【0059】
同様のビヒクルは、有利には、この種の改善した特性を必要とする治療されるべき異なる疾患に応じて、活性物質の放出プロファイルの制御を可能にする。構造化されたビヒクルは、分散した活性物質の移動性を制御するより高い能力を有するか、デポーの内側から可溶化された活性物質が拡散することに対するより強い抵抗を生み出す。
【0060】
本発明の組成物は、リザーバーまたはデポーとして働くことができる。
【0061】
本明細書に開示される発明によれば、組成物は、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)およびイオン感応性ポリマー(ポリマーB)を含む。
【0062】
本明細書に開示される発明による液体組成物の調製において、適切な熱応答性ポリマー(ポリマーA)およびその濃度の選択は、体温より低い温度(すなわち、約37℃より低く、好ましくは約20~25℃)では液体状態であり、一度体温またはそれより高い温度(すなわち、約37℃以上)に曝されるとゲルまたは構造化された組成物となる最終組成物を得るようにされてもよい。
【0063】
本明細書に開示される発明による液体組成物の調製において、適切なイオン感応性ポリマー(ポリマーB)およびその濃度の選択は、特定のイオンの存在下で、適切なゾル-ゲル転移または構造化組成物への転移を得るようにされてもよい。
【0064】
本発明によれば、イオン感応性ポリマーは、一価および/または二価の無機イオン、例えばNa+、K+、Mg2+、Ca2+、およびZn2+など、ならびに有機イオンと高い親和性で結合することができるものの中から選択することができる。イオン強度に対する応答性は、イオン化可能な基を含むポリマーの典型的な特性である。イオン強度の変化は、ポリマーミセルのサイズおよびポリマーの溶解性の変化を引き起こし得る。
【0065】
投与されると、本明細書に開示される発明による液体組成物の優れた流動性により、組成物は自動的に体温(すなわち、約37℃)に温められ、したがって、熱応答性ポリマー(ポリマーA)により、液体からゲル状態(ゾル-ゲル転移)または構造化された状態へと転移する;次に、イオン感応性ポリマー(ポリマーB)と生体関連媒体および/または生態環境に存在するイオンとの相互作用を経て、粘弾性率G’の大幅な増加によって説明されるように、ゲルまたは構造化された組成物がさらに強化される。
【0066】
2つのポリマー間の相乗的な相互作用をよりよく示すために、生理的温度範囲(すなわち、約37℃)において、少なくとも1つの熱応答性ポリマーベースのゲルの強さの向上が、ポリマーAおよびポリマーBの組合せと共に示される。そのような向上はΔG’値により示され、熱応答性ポリマー単独の溶液に対して2つのポリマーの組合せはより高く、生体関連媒体で希釈すると更なる向上が得られる。
【0067】
本発明のこのような態様によれば、液体形態からゲル状態または構造化された状態への転移は、組成物の生体接着性を強化すると共に、次に、微分パラメータΔG’により説明されるように、投与部位で適切な期間、組織、例えば粘膜および/または粘膜下などへの接着を強化する。微分パラメータΔG’は、そのままの状態および生体関連媒体(模擬結腸液または人工唾液)で希釈された組成物の生理的温度(すなわち約37℃)および室温(すなわち約25℃)で観察されるG’値の間の差として計算される。
【0068】
さらに、本発明の医薬液体組成物の粘弾性率の増加は、少なくとも1つの活性物質の拡散を遅くし、治療効果を延長とともに患部への活性物質の送達を遅らせる。注射により体内に投与された場合、本発明の組成物は自動的に体温(すなわち約37℃)まで温められ、したがって、熱応答性ポリマーの存在により、粘度の大幅な増加と共に、液体からゲル形態へ転移する;次に、イオン感応性ポリマーと注入部位のイオンとの相互作用は、ゲルまたは構造化組成物をさらに強化する。これは、注射部位での、少なくとも1つの活性物質の徐放プロファイルを有するデポーの形成をもたらす。
【0069】
投与された場合、本発明のこのような態様による液体組成物は、患部を覆う薄いゲルまたは構造化された層を形成することができ、臓器の壁に沿って流れる傾向が減少する。これは、本発明のこのような態様による当該液体組成物と患部との間の接触時間を最大化する:結果として、その中に含まれる少なくとも1つの活性物質は、既知の組成物と比べて、より長期間、粘膜の上皮細胞の細胞膜と接触したままである。
【0070】
本明細書に開示される発明によれば、少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407など、ポリ(オキシエチレングリコール)/ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ブロックコポリマー(PEG-PLGA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PLA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。
【0071】
適切な液体組成物を形成するために、上記の熱応答性ポリマーの任意の混合物を使用することができる。
【0072】
また、熱応答性ポリマーの中で、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびメチル(ヒドロキシエチル)セルロースのようないくつかのセルロース誘導体を選択してもよい。
【0073】
好ましい態様において、液体組成物の熱応答性ポリマーはポロキサマー188である。
【0074】
また別の好ましい態様において、液体組成物の熱応答性ポリマーはポロキサマー407である。
【0075】
さらにまた別の好ましい態様において、熱応答性ポリマーは、ポロキサマー188およびポロキサマー407のいくつかの混合物を含む。
【0076】
また別の好ましい態様において、液体組成物の熱応答性ポリマーはメチルセルロースである。
【0077】
本明細書に開示される発明によれば、少なくとも1つの熱応答性ポリマーの量は、液体組成物の重量に対して約0.1重量%~約30重量%、より好ましくは液体組成物の重量に対して約0.2重量%~約25重量%、さらにより好ましくは液体組成物の重量に対して約0.3重量%~約25重量%の範囲である。
【0078】
好ましい態様によれば、少なくとも1つの熱応答性ポリマーは、液体組成物の重量に対して、約0.1重量%、または約0.3重量%、または約1.0重量%、または約5.0重量%、または約10.0重量%、または約15重量%、または約20重量%、または約25重量%、または約30重量%の量で含まれる。
【0079】
本明細書に開示される発明によれば、少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)は、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸および/またはその塩を含むがこれらに限定されない多糖類の群から選択されてもよい。少なくとも1つのイオン感応性ポリマーは、例えば、アルギン酸ナトリウムでもよい。
【0080】
本明細書に開示される発明によれば、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーは、組成物の重量に対して、約0.001重量%~約10重量%、好ましくは約0.005重量%~約5重量%、より好ましくは約0.01重量%~約2.0重量%の範囲の量で含まれる。
【0081】
好ましい態様によれば、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーは、液体組成物の重量に対して、約0.1重量%、または約0.2重量%、または約0.3重量%、または約0.5重量%、または約1重量%、または約2重量%の量で含まれる。
【0082】
本明細書に開示される発明によれば、液体組成物は少なくとも1つの界面活性剤をさらに含んでもよい;一態様によれば、少なくとも1つの界面活性剤は、PEG-脂肪酸モノエステル界面活性剤、例えばPEG-15ヒドロキシステアレート、PEG-30ステアレート、PEG-100モノステアレート(ポリオキシル100モノステアレートとしても知られる)、PEG-40ラウレート、PEG-40オレエートなど;PEG-脂肪酸ジエステル界面活性剤、例えばPEG-32ジオレエート、PEG-400ジオレエートなど;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80など;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばPEG-20セトステアリルエーテル、ポリオキシル25セトステアリル、セトマクロゴール1000など;ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレートなど;脂肪酸のプロピレングリコールエステル;脂肪酸のポリグリセロールエステル;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、例えばポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油など;カプリロカプリルポリオキシル-8グリセリド;ポリオキシルグリセリド、例えばカプリロカプロイルポリオキシグリセリド、ラウロイルポリオキシルグリセリド、オレイルポリオキシルグリセリドなど、セテアレス16、セテアレス20、セテアレス10、ステアレス20、セテス20など、を含むがこれらに限定されない非イオン性界面活性剤の群から選択されてもよい。
【0083】
適切な医薬液体組成物を形成するために、上記の非イオン性界面活性剤の任意の組合せを使用することができる。一態様において、非イオン性界面活性剤はポリソルベート80である。
【0084】
また別の態様において、非イオン性界面活性剤はソルビタンモノステアレートである。また別の態様において、非イオン性界面活性剤はポリオキシル100モノステアレートである。
【0085】
また別の態様において、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシル-35ヒマシ油である。好ましい態様において、非イオン性界面活性剤はPEG-15ヒドロキシステアレート(ポリオキシル-15-ヒドロキシステアレートとしても知られる)である。
【0086】
また別の態様において、少なくとも1つの界面活性剤は、卵レシチン、ホスファチジルコリン、卵レシチン由来水素添加ホスファチジルコリン、大豆レシチン、水素添加大豆レシチン、グリセロホスホコリン、大豆リゾレシチン、リン脂質、水素添加リン脂質、ラウリル硫酸ナトリウムなどを含むがこれらに限定されないイオン性界面活性剤の群から選択されてもよい。
【0087】
適切な医薬液体組成物を形成するために、上記のイオン性界面活性剤の任意の混合物を使用することができる。適切な非イオン性界面活性剤は、Lipoid(登録商標)のブランド名で、Lipoid(登録商標)により商品化されている。
【0088】
一態様において、イオン性界面活性剤は卵レシチンである。また別の態様において、イオン性界面活性剤は卵レシチン由来の水素添加ホスファチジルコリンである。また別の態様において、イオン性界面活性剤はホスファチジルコリンである。
【0089】
また別の態様において、イオン性界面活性剤は大豆レシチンである。
【0090】
さらにまた別の態様において、イオン性界面活性剤は水素添加大豆レシチンである。
【0091】
本明細書に開示される発明によれば、少なくとも1つの界面活性剤は、液体組成物の重量に対して約0.001重量%~約15重量%、好ましくは液体組成物の重量に対して約0.005重量%~約10重量%、より好ましくは液体組成物の重量に対して約0.01重量%~約5重量%の範囲の量で含まれる。
【0092】
好ましい態様によれば、少なくとも1つの界面活性剤は、液体組成物の重量に対して、約0.3重量%、または約0.5重量%、または約1重量%、または約2重量%、または約3重量%、または約4重量%の量で含まれる。
【0093】
本明細書に開示される発明の組成物は、キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチンなどを含むがこれらに限定されない群から選択される、少なくとも1つの生体接着性ポリマーをさらに含んでもよい。
【0094】
本発明による適切な医薬液体組成物を得るために、上記生体接着性ポリマーの任意の組合せを使用することができる。
【0095】
一態様において、少なくとも1つの生体接着性ポリマーはキトサンである。
【0096】
また別の態様において、少なくとも1つの生体接着性ポリマーはアルギン酸ナトリウムである。
【0097】
好ましい態様において、少なくとも1つの生体接着性ポリマーはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。また別の好ましい態様において、少なくとも1つの生体接着性ポリマーはヒアルロン酸および/またはその塩である。
【0098】
この態様によれば、少なくとも1つの生体接着性ポリマーは、他の成分との更なる相乗効果を提供し、液体ビヒクルの接着性の向上したレベル、および所望の部位での改善した滞留時間をもたらす。理想的な作用メカニズムにおいて、生体接着性ポリマーはビヒクルの体組織への移植可能性を向上させ、一方他のポリマーは、標的の体表面に本発明のビヒクル組成物を広げることにより得られるゲル化層の構造を強化してリザーバーまたはデポーとして作用し、またはどのような場合でも持続性および効果を確実にする。
【0099】
この態様によれば、液体送達ビヒクルに含まれる活性物質の有効性を最大化できる。
【0100】
本発明によれば、少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤は、親水性の特徴を有する水相、および必要に応じて、親油性の特徴を有する油相を含むことができる。
【0101】
したがって、液体組成物は、疎水性(親油性)および親水性の活性物質の両方を可溶化することができる。疎水性(親油性)活性物質の場合、油相の組成および量を変えて、油相への疎水性(親油性)物質の完全な可溶化を達成することができる。親水性活性物質の場合、水相は量を変えて、水相への親水性活性物質の完全な可溶化を達成することができる。親水性活性物質の場合、水ベースの溶媒が存在することにより、または疎水性(親油性)活性および親水性活性物質、もしくは疎水性(親油性)活性物質の場合、異なる極性の2つの相により、親水性および疎水性活性物質の両方を同じ医薬液体組成物中に、本発明のミセル分散液、エマルション、マイクロエマルションまたは水ベースの溶液の形態で、製剤化することができる
【0102】
これらすべての有益な特徴により、本発明の液体組成物は、異なる極性を有する活性物質を可溶化することができる。
【0103】
ある態様において、本発明の液体組成物は、少なくとも1つの疎水性活性物質を含む。
【0104】
他の態様において、本発明の液体組成物は、少なくとも1つの親水性活性物質を含む。
【0105】
他の態様において、本発明の医薬液体組成物は、少なくとも1つの疎水性活性物質および少なくとも1つの親水性活性物質を含む。
【0106】
放出の制御は、本発明の液体組成物から組織および/または胃腸管の粘膜下/粘膜層への活性物質の-生体接着力の寄与により-長続きする拡散によって達成される。
【0107】
さらに、本発明の液体組成物の粘弾性率の増加は、少なくとも1つの活性物質の拡散を遅くし、治療効果の延長とともに、患部への送達を遅延させる。
【0108】
したがって、本発明のそのような態様による医薬液体組成物に関して、ポリマーBの存在により混合物のゲル化能力の拡大と結びつく、可逆的な熱応答性ゾル-ゲル転移は、標的部位との接触に反応して、少なくとも1つの活性物質の放出プロファイルの決定において効果的に働き、患部において長時間作用することができる。
【0109】
注射により投与された場合、本発明の液体組成物は、少なくとも1つの活性物質のデポーを形成し、持続的な放出、改善された(投与部位での)局所のバイオアベイラビリティ、および長時間の有効性をもたらす同様のリザーバーを確保する:放出制御は、デポーのゆっくりとした拡散により達成され、組織および/または粘膜下/粘膜層への少なくとも1つの活性物質の長続きする拡散を伴う。
【0110】
これは、1回の注射で、または注射回数を減らしても、最適な用量の活性物質の効果的な投与を可能にし、長期にわたる注射の繰り返しの必要性を回避、または削減する。
【0111】
経口、経膣または直腸経路により投与される場合、本発明の液体組成物は、患部を覆う薄いゲル層を形成すし、組織の壁に沿って流れる傾向が低下する。これは、液体組成物と患部との接触時間を最大化する:結果として、そこに含まれる少なくとも1つの活性物質は、単純な医薬液体組成物と比較して、より長期間粘膜の上皮細胞の細胞膜と接触した状態にとどまる。
【0112】
本明細書に開示される発明は、液体組成物、およびヒトにおいて送達ビヒクルとして使用するための同じものに関し、当該医薬液体組成物は、
(a)少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)
(b)少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)
(c)任意選択的に少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤
を含む。
【0113】
本明細書に開示される発明は、液体組成物、およびヒトにおいて送達ビヒクルとして使用するための同じものに関し、当該医薬液体組成物は、
(a)少なくとも1つの熱応答性ポリマー(ポリマーA)
(b)少なくとも1つのイオン感応性ポリマー(ポリマーB)
(c)少なくとも1つの活性物質
(d)任意選択的に少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤
を含む。
【0114】
本発明によれば、少なくとも1つの活性物質は、タンパク質またはペプチド、モノクローナル抗体、サイトカイン、制酸剤、アドレナリン作動薬、抗アドレナリン作動薬、染料、免疫賦活剤、ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン剤、経鼻抗ヒスタミン剤/充血除去剤、下痢止め剤、抗悪性腫瘍剤、抗菌剤、抗生物質、抗真菌剤、抗痔薬、抗アドレナリン作動薬、アドレナリン作動薬、鎮痛剤、気管支拡張剤、選択的アルファ-2拮抗薬、抗コリン薬/鎮けい薬、抹消オピオイド受容体拮抗薬、緩下剤、尿生殖路薬 、下剤、膣剤、膣用抗真菌剤、膣用抗菌剤、口腔殺菌剤または口腔抗生物質、創傷治癒薬、止血剤、麻酔薬、硬化薬、またはそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0115】
好適な制酸剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、またはそれらの混合物から選択することができる。好ましい一態様によれば、クエン酸はクエン酸一水和物である。
【0116】
好ましい一態様によれば、クエン酸ナトリウムはクエン酸ナトリウム二水和物である。
【0117】
好適な染料は、生体染色色素(または吸収性染料)、非生体染色色素(または造影剤)、および反応性染料から選択することができる。
【0118】
本明細書に開示される発明によれば、生体染色色素(または吸収性染料)は、ルゴール液、メチレンブルー、トルイジンブルー、クリスタルバイオレットなどを含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。
【0119】
本明細書に開示される発明によれば、非生体染色色素(または造影剤)は、インジゴカルミンなどを含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。本明細書に開示される発明によれば、反応性染料は、コンゴレッド、フェノールレッドなどを含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。適切な液体組成物を形成するために、上記の染料の任意の混合物を使用することができる。
【0120】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの染料はメチレンブルーである。
【0121】
また別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの染料はインジゴカルミンである。
【0122】
本発明による適切な免疫賦活剤は、サッカロミセス・セレビシエ(saccharomyces cerevisiae)、アルギニン、レスベラトロール、アストラガルス・メンブラナセウス(astragalus membranaceus)、エキナセア・ウンカリア(echinacea uncaria)、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、およびそれらの混合物から選択される。
【0123】
本発明による適切な抗菌剤または抗生物質は、リファマイシンSV、リファキシミン、リファンピシン、テトラサイクリン系、臭化ベンザルコニウム、アミノグリコシド系、セファロスポリン系、ペニシリン系、マクロライド系、アンサマイシン系、スルホンアミド系、カルバペネム系、またはそれらの混合物から選択される。本発明による適切な局所抗菌剤は、酸化亜鉛、銀またはその塩、スルファジアジン銀、酸化銀、ヨウ素、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、およびそれらの混合物から選択される。
【0124】
適切な止血剤は、エピネフリン、ノルエピネフリン、それらの混合物および/または塩から選択することができる。
【0125】
適切な硬化薬は、オレイン酸エタノールアミン、モルヒ酸ナトリウム5%、テトラデシル硫酸ナトリウム1%および3%、ポリドカノール0.5%~3%、無水アルコール、高張(50%)ブドウ糖液、それらの混合物または塩から選択することができる。
【0126】
適切な麻酔薬は、リドカイン、ブピバカイン、メピバカイン、アルチカイナ(articaina)、ベンゾカイン、テトラカイン、プリドカイン、それらの混合物および/または塩から選択することができる。
【0127】
好適な抗炎症薬は、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬、またはそれらの混合物から選択される。
【0128】
本発明によるステロイド性抗炎症薬は、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、トリアムシノロン、アセトニド、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、モメタゾン、デソニド、フルオシノロン、エステル類、それらの塩またはそれらの混合物から選択される。
【0129】
本発明による非ステロイド性抗炎症薬は、5-ASA、ケトロラク、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、フルルビプロフェン、チアプロフェン酸、メタミゾール、ニメスリド、それらの塩またはそれらの混合物から選択される。
【0130】
好ましい態様によれば、活性物質はステロイド性抗炎症薬であり、より好ましくはブデソニドである。
【0131】
本発明による適切な抗真菌剤は、イトラコナゾール、フルコナゾール、カプソファンギン(capsofungin)、グリセオフルビン、またはそれらの混合物から選択される。
【0132】
本発明による適切な抗痔薬は、シンカテキンス(sincatechins)、サッカロミセス・セレビシエ、ヒドロコルチゾン、プラモキシン、フェンレフィオン(phenlephione)またはそれらの混合物から選択される。
【0133】
本発明による適切な抗アドレナリン作動薬は、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、またはそれらの混合物から選択される。
【0134】
本発明による適切なアドレナリン作動薬およびベータアドレナリン遮断薬は、エピネフリン、ノルエピネフリン、その塩またはそれらの混合物、およびプロプラノール、ソタロール、メトプロロール、およびそれらの混合物から選択される。
【0135】
本発明による適切な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、フェナセン、ナトリウムアシレート(sodium acylate)、またはそれらの混合物から選択される。
【0136】
本発明による適切な気管支拡張剤は、アルブテロール、プロカテロール、レバブテロール、およびそれらの混合物から選択される。
【0137】
本発明による適切な選択的α2拮抗薬は、サルブタモール、テルブタリン、エフェドリン、オルシプレナリン硫酸塩、およびそれらの混合物から選択される。
【0138】
本発明による適切な下痢止め剤は、ロペラミド、サッカロミセス・ブラウディ(saccharomyces boulardii)、ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(lactobacillus bulgaricus)、およびそれらの混合物から選択される。
【0139】
本発明による適切な腸の抗炎症薬は、5-アミノサリチル酸、オルサラジン、スルファサラジン、ブデノシド、およびそれらの混合物から選択される。
【0140】
本発明による適切な抗コリン作用薬/鎮けい薬は、臭化オクチロニウム、ヒスチアミン、アトロピン、スコポラミン、オキシブチイン(oxybutyin)およびそれらの混合物から選択される。
【0141】
本発明による適切な抹消オピオイド受容体拮抗薬は、メチルナルトレキソン、ナロキセゴール、およびそれらの混合物から選択される。
【0142】
本発明による適切な緩下剤は、マグネシウム塩(クエン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、重炭酸塩など)、センナ、ビサコジル、ラクツロース、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸塩、ドキュセート、およびそれらの混合物から選択される。
【0143】
本発明による適切な尿生殖路薬は、アセトヒドロキサム酸、フェナゾピリジン、ベタネコール、およびそれらの混合物から選択される。
【0144】
本発明による適切な経鼻抗ヒスタミン剤および充血除去剤は、フェニレフリン、オキシメタゾリン、エフェドリン、プソイドエフェドリン、それらの塩およびそれらの混合物から選択される。
【0145】
本発明による適切な下剤は、ビサコジル、ピコスルファートナトリウム、PEG、およびそれらの混合物から選択される。
【0146】
本発明による適切な膣剤は、エストラジオール、エストロゲン、結合型エストロゲン、その他ホルモン、およびそれらの混合物から選択される。
【0147】
本発明による適切な膣用抗真菌剤および抗生物質は、クロトリマゾール、クリンダマイシン、ミコナゾール、メトロニダゾール、およびそれらの混合物から選択される。
【0148】
本発明による適切な口腔殺菌剤または抗菌剤は、塩化ベンザルコニウム、セチルピリジニウム塩酸塩またはヨウ化チベゾニウム、およびいくつかのアミノ誘導体、例えばベンジルアミンおよびクロルヘキシジン、ならびにそれらの塩およびそれらの誘導体から選択される。
【0149】
本発明の好ましい態様によれば、適切な活性物質は、制酸剤、染料、免疫賦活剤、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬、抗菌剤、抗生物質、抗痔薬、またはそれらの混合物から選択される。
【0150】
少なくとも1つの活性物質の投与量は、人体に影響を与える病理または障害について検討した診断、予防、緩和、治療および/または低減の検討に応じて設計される。
【0151】
本発明の一態様によれば、液体組成物は、ヒトにおける送達ビヒクルとして使用される。
【0152】
本発明のまた別の態様によれば、液体組成物は、人体に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用される。
【0153】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、胃腸管、膣、膀胱、鼻、耳または目において送達ビヒクルとして使用される。
【0154】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、胃腸管、膣、膀胱、鼻および目に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用される。
【0155】
これらの態様によれば、胃腸管は、中咽頭管と肛門との間の管を指す。より詳細には、胃腸管は、口、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸)、大腸(盲腸、結腸、S字結腸(sigma)、および直腸)および/または肛門を意味する。
【0156】
好ましい態様によれば、胃腸管は、食道、胃または腸を指す。
【0157】
また別の態様によれば、胃腸管に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減は、炎症性および/または変性の病理であり、好ましくは、内視鏡手術の間または後に発生する炎症性病変、異形成、新生物、および/または合併症から選択される。より詳細には、そのような炎症性および/または変性疾患は、バレット食道、前腫瘍形成、腫瘍形成、腫瘍、ポリープ、腺腫、鋸歯状病変、潰瘍、狭窄(stenosis)、狭窄(strictures)、静脈瘤、胃食道逆流症(GERD)、食道炎、痔、瘻孔、亀裂、運動性変化、食道がん、食道潰瘍、食道異形成、食道狭窄、食道静脈瘤、大腸静脈瘤、炎症性腸疾患、ヘルバタム(herbatum)、胃酸過多、胸焼け、胃の不快感、局所麻酔、および/または結腸癌から選択することができる。また別の好ましい態様によれば、切除手術(例えば、切除、ポリープ切除、EMR、ESDなど)の間または後に起こる炎症性病変の場合、本発明の組成物は、切除手術により組織および/またはその周辺部位に形成された人工潰瘍に、1以上の円形または半円形のin situの注入により、局所的に注入される。
【0158】
また別の好ましい態様によれば、胃腸管の炎症性および/または変性疾患は、バレット食道、食道炎、食道狭窄(stenosis)(狭窄(stricture))および/またはGERDである。
【0159】
また別の好ましい態様によれば、胃腸管の炎症性および/または変性疾患は、痔または瘻孔である。
【0160】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、膣または膀胱または胃腸管に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用するためのものであり、膣または膀胱または胃腸管に影響を与える病理または障害は、より一般的な用語では、好ましくは細菌感染、真菌感染、がん、ホルモン障害、および炎症から選択される。より好ましくは、膣炎、膣の乾燥、かゆみ、炎症(burning)、膀胱炎、更年期障害、カンジダ症、ヘルペスおよび子宮頸がんから選択される。
【0161】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、目または耳に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用するためのものであり、目または耳に影響を与える病理または障害は、好ましくは、細菌感染、真菌感染および炎症から選択される。より好ましくは、目の乾燥、黄斑症、緑内障および中耳炎から選択される。
【0162】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、鼻に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に用いるものであり、鼻に影響を与える病理または障害は、好ましくは、真菌性副鼻腔炎などの副鼻腔炎、慢性萎縮性鼻炎などの鼻炎、前庭炎、鼻づまり、ヒスタミン反応およびアレルギー性疾患から選択される。
【0163】
一態様によれば、本発明の液体組成物は、経口経路を介して投与される。
【0164】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、直腸経路を介して投与される。
【0165】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、膣の経路を介して投与される。
【0166】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、目の経路を介して投与される。
【0167】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、鼻の経路を介して投与される。
【0168】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、耳の経路を介して投与される。
【0169】
また別の態様によれば、本発明の液体組成物は、注射により投与される。
【0170】
この態様によれば、薬剤の制御放出を提供して長く作用する反応を得るために、局所粘膜下注射は液体組成物を、好ましくはエマルションまたはマイクロエマルションで、病理領域組織、病変、または病理領域組織もしくは病変の周辺にin situで、1以上の円形または半円形の注入により、注射することで実施される。
【0171】
本発明によれば、局所注射の数は、病理または障害の種類に応じて変えることができる。
【0172】
これら全ての態様において、本発明の液体組成物は、活性物質のデポーを形成することができ、持続放出、改善された(注射部位での)局所のバイオアベイラビリティおよび長時間の有効性をもたらす活性物質のリザーバーを確保することができる。
【0173】
放出制御は、組織および/または粘膜下/粘膜層への薬剤の長続きする拡散を伴う、デポーのゆっくりとした浸食により達成される。したがって、有効性は主に、活性物質の局所作用に関係するため、あらゆる全身的な副作用を低減または回避する。
【0174】
本明細書に開示され本発明によれば、医薬液体組成物の水相の1つの主要な成分は、注射用水(WFI)でもよい。
【0175】
本明細書に開示される発明のいくつかの態様において、水相は、溶解した形態で、1つ以上の無機塩を含んでもよく、無機塩は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩等を含むがこれらに限定されない群から選択される。
【0176】
いくつかの態様において、水相は、溶解した形態で、1つ以上の有機塩を含んでもよく、有機塩は、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、乳酸塩等を含むがこれらに限定されない群から選択される。
【0177】
適切な液体組成物を形成するために上記無機塩および有機塩の任意の混合物を用いてもよく、一般的には組成物のpHを適切な生体適合性の範囲に緩衝するか、または、特に注入時に、投与される場所の生理学的環境に要求される浸透圧に到達する。
【0178】
いくつかの態様において、本明細書に開示される液体組成物の水相は、低張の最終液体組成物が得られるように、ある量の1つ以上の無機塩および/または有機塩またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0179】
いくつかの態様において、本明細書に開示される液体組成物の水相は、等張の最終液体組成物が得られるように、ある量の1つ以上の無機塩および/または有機塩またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0180】
いくつかの態様において、本明細書に開示される液体組成物の水相は、例えば、高張の最終液体組成物を得るために、ある量の1つ以上の無機塩および/または有機塩またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0181】
本明細書に開示される発明によれば、無機塩および/または有機塩またはそれらの混合物は、水相の重量に対して0重量%~5重量%、より好ましくは、水相の重量に対して0.1重量%~4重量%、さらにより好ましくは、水相の重量に対して0.4重量%~3重量%の範囲の量で存在してもよい。好ましい態様において、液体組成物の水相は、溶解した塩化ナトリウムを含む。
【0182】
後者の態様によれば、塩化ナトリウムは、水相の重量に対して0重量%~5重量%、より好ましくは、水相の重量に対して0.1重量%~4重量%、さらにより好ましくは0.4重量%~3重量%の範囲の量で存在する。
【0183】
いくつかの態様において、本明細書に開示される液体組成物の水相は、緩衝剤を含む。
【0184】
いくつかの態様において、緩衝剤はリン酸緩衝液である。
【0185】
いくつかの態様において、緩衝剤はクエン酸緩衝液である。いくつかの実施形態において、緩衝剤は重炭酸緩衝液である。
【0186】
好ましい態様において、緩衝剤は、pHを緩衝することができない1つ以上の無機塩が添加されたリン酸緩衝液である。
【0187】
後者の態様によれば、リン酸緩衝液およびpHを緩衝できない無機塩の濃度は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である水相を得られるようにされる。PBSのいくつかの組成および調製方法は、当技術分野でよく知られている。
【0188】
本明細書に開示される発明によれば、医薬液体組成物のpHの値は、約4.0~10.0、より好ましくは約4.5~8.5、さらにより好ましくは、5.0~8.0の範囲である。
【0189】
本発明によれば、医薬液体組成物のpHの値は、当技術分野で周知の一般的な技術、例えば、生理学的に許容可能な塩基および/または酸の添加などにより、所望の範囲内に調節されてもよい。
【0190】
本明細書に開示される発明によれば、油相は少なくとも1つの親油性化合物を含む。
【0191】
いくつかの態様において、少なくとも1つの親油性化合物は、アーモンド油、ヒマシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油などを含むがこれらに限定されない天然油の群から選択されてもよい。
【0192】
いくつかの態様において、少なくとも1つの親油性化合物は、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチルなどを含むがこれらに限定されない脂肪酸エステルの群から選択されてもよい。
【0193】
いくつかの態様において、少なくとも1つの親油性化合物は、ミリスチンアルコール(myristic alcohol)、オレイルアルコールなどを含むがこれらに限定されない脂肪族アルコールの群から選択されてもよい。
【0194】
いくつかの態様において、少なくとも1つの親油性化合物は、ミリスチン酸、オレイル酸、パルミチン酸などを含むがこれらに限定されない脂肪酸の群から選択されてもよい。
【0195】
いくつかの態様において、少なくとも1つの親油性化合物は、例えば長鎖および/または中鎖トリグリセリドなどのトリグリセリドの群から選択されてもよい。
【0196】
いくつかの態様において、少なくとも1つの親油性化合物は、ジグリセリドの群から選択されてもよい。
【0197】
いくつかの態様において、少なくとも1つの親油性化合物は、モノグリセリドの群から選択されてもよい。
【0198】
適切な液体組成物を形成するために、上記の親油性化合物の任意の混合物を使用することができる。
【0199】
一態様において、油相の親油性化合物は、ゴマ油である。
【0200】
また別の態様において、油相の親油性化合物は、オレイン酸エチルである。
【0201】
また別の態様において、油相の親油性化合物は、中鎖トリグリセリドである。
【0202】
好ましい態様において、油相の親油性化合物は、大豆油である。
【0203】
本明細書に開示される発明によれば、液体組成物の油相は、液体組成物の重量に対して約0.001重量%~約20重量%、好ましくは、液体組成物の重量に対して約0.01重量%~約15重量%、より好ましくは、液体組成物の重量に対して約0.02重量%~約10重量%の範囲である。
【0204】
より好ましくは、油相は、組成物の重量に対して、約0.02% w/wまたは約0.05% w/w、または約0.1重量%、または約1.0重量%、約3.0重量%、または約5.0重量%の量で、本発明の組成物に含まれる。
【0205】
本明細書に開示される発明の液体組成物は、任意選択的に、少なくとも1つの補助界面活性剤を含んでもよい。エマルションまたはマイクロエマルションの形態にある場合、補助界面活性剤は界面活性剤との相乗効果で、系の安定させる効果と共に、液体組成物の分散相の液滴の界面張力を下げる働きをするため、少なくとも1つの補助界面活性剤を油相-界面活性剤-水相の混合物へ加えることは有益である。本明細書に開示される発明によるエマルションまたはマイクロエマルションの形態の液体組成物の調製において、少なくとも1つの補助界面活性剤は、短鎖および中鎖アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノールなど;グリコール、例えばプロピレングリコールなど;ポリエチレングリコール、例えばPEG200、PEG300、PEG400など;DMSO;長鎖アルコール、例えばセチルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなど;グリセロール;短鎖エステル、例えば酢酸エチル、乳酸エチルなど;脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなど;脂肪酸の塩、例えばオレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなど、を含むがこれらに限定されない群から選択することができる。適切な液体組成物を形成するために、上記の補助界面活性剤の任意の混合物を使用することができる。一態様において、補助界面活性剤はプロピレングリコールである。また別の態様において、補助界面活性剤はグリセロールである。また別の態様において、補助界面活性剤はオレイン酸ナトリウムである。好ましい態様において、補助界面活性剤は、グリセロールとオレイン酸ナトリウムとの混合物である。
【0206】
本明細書に開示される発明によれば、少なくとも1つの補助界面活性剤は、液体組成物の重量に対して約0.00001重量%~約3重量%、好ましくは、液体組成物の重量に対して約0.00005重量%~約0.05重量%、より好ましくは、液体組成物の重量に対して約0.0001重量%~約1.5重量%の範囲の量で含まれる。
【0207】
本明細書に開示される発明の液体組成物は、胃腸管粘膜の上皮細胞に対して栄養活性を有することを特徴とする少なくとも1つの薬剤をさらに含んでもよい。
【0208】
栄養剤は、細胞の成長、分化および生存を促進することができる物質である。この意味において、本発明による液体組成物への、胃腸管粘膜の上皮細胞に対する栄養活性を有することが証明された少なくとも1つの薬剤の組み込みは有益であろう。液体組成物が創傷治癒に良い、有益な効果を発揮して、外科的創傷の迅速な閉鎖および創傷治癒に向けて細胞成長および分化を促進し得るからである。
【0209】
さらに、適切な特性および安定性を備える最終組成物を得るために、少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤を本明細書に開示される発明による液体組成物に添加してもよい。例として、少なくとも1つの生理学的に許容可能な賦形剤は、抗酸化剤、キレート剤、防腐剤および/または抗菌剤の中から選択されてもよい。
【0210】
本発明の態様は、上述したような液体組成物、およびヒトにおける送達ビヒクルとして使用するための液体組成物に関する。
【0211】
本発明の態様は、人体に影響を与える病理または障害の診断、治療、緩和、低減および/または予防に使用するための、上に開示したような液体組成物に関する。
【0212】
本発明による送達ビヒクルは、本発明の液体組成物から、投与部位の組織および/または粘膜下/粘膜層への活性成分の長続きする拡散により、投与部位での少なくとも1つの活性成分の放出を制御することができる。
【0213】
一態様において、少なくとも1つの活性物質は、細胞または細胞成分を含む細胞物質である。
【0214】
本発明による組成物のある特定の用途は、細胞、および微小胞と、遺伝子材料と、リソソームとを含むがこれらに限定されない細胞成分の送達に関する。細胞は、皮膚細胞および色素細胞を含むがこれらに限定されない外胚葉;肺胞細胞および膵臓細胞を含むがこれらに限定されない内胚葉;心筋細胞および骨格筋細胞を含むがこれらに限定されない中胚葉;または胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞および人工多能性幹細胞などの幹細胞に由来する分化細胞でもよく、好ましくは間葉系幹細胞(MSC)である。
個々の患者に送達する必要がある細胞は、臨床の場で、投与の直前に送達ビヒクルに加えることができる。
【0215】
間葉系幹細胞(MSC)は、多くの病理の治療にとって優れた選択肢となる可能性のある独自の性質を有する。他の成熟した幹細胞と異なり、それらは免疫系による非自己認識を免れるようであり、かつ、免疫調節特性を有し、このことは同種細胞治療製品としての使用を検討することを可能にする。
【0216】
臨床治療としての間葉系幹細胞(MSC)の使用は、様々な疾患の治療のための研究の比較的新しい手段であるが、損傷した組織の修復を促進する幹細胞治療の大きな可能性を示す、膨大かつ増加し続ける多数の、MSC療法を用いた前臨床試験および初期臨床試験がある。
【0217】
MSCの治療効果は、機能の多様性および宿主組織との相互作用に基づく。MSCは、損傷組織および炎症過程における結果を改善し得る、抗炎症性、再生特性、および分化特性を有する。
【0218】
MSCの主要な能力は、周辺組織において宿主反応を誘導することである。この宿主反応は、細胞-細胞相互作用だけでなく、例えば、低分子タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、および他の細胞レギュレーターなどの生理活性分泌因子の産生を通じて、さまざま臨床シナリオに適用することができる。
【0219】
これらの因子は、血管新生または血管成長を誘導し、走化性となり、かつ細胞の動員を誘導する能力を有する。MSCはまた、関与する環境により分化し、細胞特有の方法で組織を再生し、または宿主組織を順応させる能力を有する。
【0220】
間葉系幹細胞(MSC)は、特に罹患および損傷した組織および臓器の治療に対して、最も研究された幹細胞の1つとなっている。MSCは、低侵襲アプローチの手段により多くの成熟組織から容易に単離することができる。MSCは、多数の継代まで自己複製する能力があり、したがって、組織および臓器の再生に十分な数まで増やすことができる可能性がある。
【0221】
MSCは、分裂により自己複製することができ、かつ、骨、軟骨、筋肉および脂肪細胞を含む多様な組織、並びに結合組織に分化することができる。
【0222】
MSCの送達は、細胞療法において重要なポイントであり、実際、送達のための材料の組成は、細胞および宿主組織の特徴との生体適合性を考慮しなければならない。治療用細胞を送達するために様々な解決法が提案されており、例えば分解性の高分子足場または天然由来のバイオポリマーから作られるヒドロゲルなどは、主要な特徴を有する分解性の足場の一種である。
【0223】
細胞療法は新規な治療とみなされており、様々な種類の細胞が、神経変性疾患、脳卒中、脊髄損傷、肝臓および膵臓疾患、心臓病、呼吸器疾患、移植片対宿主病、腎臓病、骨疾患、慢性創傷および炎症性腸疾患、耳鼻咽喉科の頭頸部手術のために研究されている。
【0224】
初期の試験のいくつかは、幹細胞を接着剤と組み合わせた。しかし、接着剤の添加は利益を提供せず、のちに接着剤が細胞の生存能力を損なうことが認められた。したがって、より最近の試験では、幹細胞は、単に培地を含む懸濁液の状態で注入されている。
【0225】
したがって、標的部位に細胞を送達し、残留性を促進する一方で、生体適合性であり、かつ、一定期間内に完全に再吸収可能である、細胞療法用の改良されたビヒクルの必要性が存在する。
【0226】
本発明はそのような改良されたビヒクルを提供する。
【0227】
本明細書に記載のビヒクルは、骨細胞、軟骨細胞、上皮細胞、筋細胞、分泌細胞、脂肪細胞、および特に間葉系幹細胞などの、さまざま異なる細胞のタイプを送達して、さまざまな組織構造を得るために使用することができる。
【0228】
一態様において、細胞は、外胚葉、内胚葉および中胚葉、または、例えば胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞などの幹細胞に由来する細胞を含み、好ましくは、間葉系幹細胞(MSC)である。
【0229】
本発明の送達ビヒクルを構成する懸濁液および細胞は、さまざまな疾患、例えば神経変性疾患、脳卒中、脊髄損傷、肝臓および膵臓疾患、心臓病、呼吸器疾患、移植片対宿主病、腎臓病、骨疾患、慢性創傷、炎症性腸疾患、耳鼻咽喉科の頭頸部手術などに使用することができる。
【0230】
移植される部位および細胞の数は、個々の必要性および特定の病理によって決まる。
【0231】
本発明の組成物は、約50~5000万細胞/mlの濃度で懸濁された細胞を含んでもよく、結果として生じる本発明の組成物中の細胞懸濁液は、経腸経路および非経口経路などの全身経路、ならびに局所経路により注射することができる。
【0232】
ビヒクルと混合された細胞は、4℃~37℃に維持される場合、8時間を超えない時間内に、好ましくは6時間を超えない時間内に投与されるべきである。
【0233】
本発明の組成物の細胞懸濁液は、針の有無に関わらず、シリンジまたは特定の器具を介して、特定の領域へ直接注入することができ、投与/適用部位に基づき適切に選択されるべきである。
【0234】
本発明の組成物の細胞懸濁液は、炎症性腸疾患、短腸症候群および照射損傷を含む腸疾患に使用することができる。
【0235】
痔瘻および直腸膣瘻などの病変の場合、本発明の組成物の細胞懸濁液は、瘻の壁および直接その内腔(チャネル)へ投与することができる。
【0236】
本発明の組成物の細胞懸濁液は、胃食道逆流を正すために胃腸管の領域に直接注入することができ、または消化器系の潰瘍病変に注入することができる。
【0237】
排尿障害は、腹圧性尿失禁、過活動膀胱および膀胱尿管逆流を含む、多様な範囲の泌尿器系疾患を表す。したがって、一態様において、本発明の組成物の細胞懸濁液は、これらの障害の治療のために、膀胱鏡検査の針を通して、尿道括約筋に注入することができる。
【0238】
肝臓および膵臓のような、高い潜在的再生能を有する臓器において、本発明の組成物の細胞懸濁液は、臓器を刺激し、再生させるために、特定の領域に投与することができる。
【0239】
例えば、肝臓疾患において、本発明の組成物の細胞懸濁液は、肝硬変、アルコール性肝疾患、アルコール性肝炎、炎症性疾患等の疾患の肝臓組織を再生するために使用することができる。
【0240】
整形外科の環境において、本発明の組成物の細胞懸濁液は、関節軟骨損傷、半月板および回旋腱板の損傷などの損傷した軟骨、アキレス腱または前十字靭帯などの腱の損傷、および骨格全体の骨病変に投与される。
【0241】
心血管の修復において、本発明の組成物の懸濁液は、壊死組織を支持し、再生させるために特定の領域に投与することができる。
【0242】
皮膚の創傷治癒は、様々な細胞集団間の相互作用を必要とする複雑なプロセスである;一態様において、本発明の組成物の細胞懸濁液は、損傷および/または障害された皮膚に皮膚と同等の構成の間葉系成分として局所的に適用されて真皮を再生するか、またはより直接的に創傷に送達されて真皮を再生する。
【0243】
送達用ビヒクルに含まれる細胞は、成長因子を分泌して髪の成長を促進することができる。本発明の組成物の細胞懸濁液は、脱毛症の髪を再生させるために頭皮に投与することができる。
【0244】
本発明の組成物の液体懸濁液は、歯周病、重度の虫歯、歯根破折または偶発的な外傷による歯の喪失/抜歯の後に起こる歯槽骨吸収のさまざまな範囲に使用することができる。
【0245】
耳鼻咽喉疾患などの耳鼻科および「頭頚部」の疾患、顎顔面手術、歯周病学、歯科保存学および眼疾患において、本発明の組成内の細胞懸濁液は、通常の構造および機能の復元に使用することができる。
【0246】
主に失われた視細胞および網膜神経節細胞(RGC)は置換されず、RGCの軸索は再生できないために、目の変性疾患における網膜神経、それらの接続および支持グリアの喪失は永久的な失明を引き起こす。幹細胞などの細胞の使用は、目の失われた細胞の置換および/または傷害した神経網への成長因子の放出を通して、目の変性疾患に対する細胞療法としての可能性を証明している。一態様において、本発明の組成物の細胞懸濁液は、変性した網膜の神経に栄養的支持を与え、グリアを刺激して神経修復の間接的な手助けをするために注入することができる。
【0247】
好ましい用途に応じて、本発明による組成物は、少なくとも1つの熱応答性ポリマー、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーおよび少なくとも1つの生体接着性ポリマーを含んでもよい。一態様において、少なくとも1つの熱応答性ポリマーはポロキサマー407を含んでもよく、少なくとも1つのイオン感応性ポリマーはアルギン酸ナトリウムを含んでもよく、少なくとも1つの生体接着性ポリマーはカルボキシメチルセルロースナトリウムを含んでもよい。
【0248】
一態様において、組成物はポロキサマー407、アルギン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0249】
任意選択的に、ポロキサマー407は、液体組成物の重量に対して約0.1重量%~約30重量%の量で存在してもよく、任意選択的に組成物の重量に対して0.2%~25%、0.3%~25%の範囲で存在してもよく、好ましくは組成物の重量に対して15重量%である。
【0250】
任意選択的に、アルギン酸ナトリウムは、組成物の重量に対して約0.001重量%~約10重量%の量で存在してもよく、任意選択的に組成物の重量に対して0.005重量%~5重量%、0.01重量%~2.0重量%の範囲で存在してもよく、好ましくは組成物の重量に対して0.2%(w/w)の量である。
【0251】
任意選択的に、カルボキシメチルセルロースナトリウムは、組成物の重量に対して約0.001重量%~約10重量%の量で存在し、任意選択的に組成物の重量に対して0.005重量~5重量%、0.01重量%~2.0重量%の範囲で存在し、好ましくは組成物の重量に対して0.05重量%~0.1重量%であり、より好ましくは組成物の重量に対して0.05%(w/w)である。
【0252】
そのような組成物は治療方法に用いられてもよく、組成物は、組成物の投与時に活性物質を添加できるように製剤化される。所望の用途によっては、任意選択的に、投与時に添加される活性物質は、微小胞、遺伝子材料およびリソソームなどの細胞物質、外胚葉、内胚葉または中胚葉由来の分化細胞、または胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、および人工多能性幹細胞などの幹細胞を含んでもよく、好ましくは間葉系幹細胞(MSC)である。任意選択的に、一態様において、投与時に添加される活性物質はヒト皮膚線維芽細胞を含む。
【0253】
そのような組成物は、ヒトにおける送達ビヒクルとして使用し得る。
【0254】
そのような組成物は、人体に影響を与える病理または障害の診断、予防、緩和、治療および/または低減に使用し得る。
【0255】
定義
本明細書において、「一実施形態」、「実施形態」、「一態様」、「態様」および同様の語句への言及は、記載された実施形態または態様が、特定の態様、特徴、構造または特性を包含し得ることを示す。さらに、このような語句は、必ずではないが、本明細書の他の部分で言及する同様の実施形態または態様を参照し得る。さらに、特定の態様、特徴、構造または特性が他の実施形態または態様と関連して記載されている場合、明確に記載されていてもいなくても、その態様、特徴、構造または特性に他の実施例または態様が影響を及ぼすまたは関連することは、当業者の知識の範囲内である。
【0256】
単数形の「1つ(a、an)」および「その(the)」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数の言及を包含する。したがって、例えば、「化合物(a compound)」への言及は、複数のそのような化合物を含む。さらに、特許請求の範囲は、いずれの任意選択的な構成要素も除くように起草され得ることに留意されたい。したがって、この記載は、特許請求の範囲の構成要素の列挙に関連して、「ただ(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な用語の使用、または「消極的(negative)」制限の使用について先行詞として働くことを意図している。
【0257】
用語「および/または」は、アイテムのいずれか1つ、アイテムの任意の組合せ、またはこの用語が関係するアイテムのすべてを意味する。
【0258】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」は、非制限的用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」を意味する)として解釈され、用語「から本質的になる(consist essentially of)、(consisting essentially of)」、「からなる(consist of、consisting of)」に対してサポートを提供すると考えられる。
【0259】
用語「から本質的になる(consist essentially of、consisting essentially of)」は、セミ-クローズドの用語として解釈されるべきであり、本発明の基礎的かつ新規な特徴(ならびに任意選択的に、生理学的に許容可能な賦形剤および/または補助剤)に実質的に影響を与える他の成分を含まないことを意味する。
【0260】
用語「からなる(consisits of、consisting of)」は、クローズドの用語と解釈される。
【0261】
PEG:ポリエチレングリコール
GG:ジェランガム
PLX:ポロキサマー
HPC:ヒドロキシプロピルセルロース
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース
MC:メチルセルロース
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
BHA:ブチルヒドロキシアニソール
WFI:注射用水
MTT:3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド
【0262】
本明細書において、他に指示がない限り、用語「約」は、個々の成分、組成または実施形態の機能性の点で均等である列挙した範囲に近接する値、例えば重量百分率を含むことを意図する。
【0263】
あらゆる目的のために、特に記載の説明を提供する点で、本明細書に列挙した全ての範囲がまた、あらゆる可能な部分範囲ならびにその部分範囲の組合せ、ならびに範囲を作る個々の値、特に整数値を包含することを当業者は認識するであろう。列挙した範囲は、その範囲内の各特定値、整数、少数または恒等数を含む。
【0264】
メンバーをマーカッシュグループなどの一般的な方式でグループ化する場合、本発明が、総じて列挙したグループ全体だけでなく、グループの個々の各メンバー、および主グループのすべての可能なサブグループも網羅することを当業者は認識するであろう。さらに、すべての目的のために、本発明は、主グループだけでなく、1つ以上のグループのメンバーが存在しない主グループも包含する。したがって、本発明は、列挙したグループのメンバーうちのいずれかまたは複数の明確な除外を想定するものである。したがって、条件は開示のカテゴリまたは実施形態のうちのいずれにも適用することができ、それにより、列挙した構成要素、種、または実施形態のうちのいずれかまたは複数が、例えば、明確な否定的限定において使用されるように、そのようなカテゴリまたは実施形態から除外され得る。
【0265】
用語「緩和」は、胃腸管の炎症性および/または変性疾患の症状および/または兆候が軽減されることを指す。
【0266】
用語「低減」は、胃腸管の炎症性および/または変性疾患により起こる損傷の程度を減少させること、またはそのような損傷に関連する臨床的兆候または症状を減少させることを指す。
【0267】
用語「エマルション」は、2つの不混和性の液体(慣例により、油および水と記載する)から構成され、一方が他方の全体にわたって、微細な液滴として均一に分散している不均一の調製物を指す。小さい液滴として存在する相は、分散相、分散された相、または内相と呼ばれ、支持液体は連続相または外相として知られる。エマルションは、連続相が水か油かにより、水中油型(o/w)または油中水型(w/o)に便宜上分類される。多層エマルションは、2つの分散相を生じるように既存のエマルションを再乳化することにより油および水から調製され、これも製薬の対象でもある。油中水中油(o/w/o)型の多層エマルションは、水球自体が分散された油球を含有するw/oエマルションである:これに対して、水中油中水型(w/o/w)エマルションは、内水相および外水相が油で分離されているものである。「マイクロエマルション」は、界面活性剤分子の界面膜により安定化されている、油および水の熱力学的に安定で透明(または半透明)な分散液である。界面活性剤は、純粋でも混合物でもよく、または中鎖アルコールなどの補助界面活性剤と組み合わされていてもよい。マイクロエマルションは、その透明性、低粘性、およびより根本的な熱力学的安定性、および自然発生的に形成される能力により、通常のエマルションと容易に区別される。しかし、膨張ミセル(約10~140nm)のサイズと微細なエマルションの液滴(約100~600nm)のサイズとの間の境界線は明確にはに定義されていないものの、マイクロエマルションは非常に変化を起こしやすい系であり、マイクロエマルションの液滴は1秒の何分の1かのうちに消失する可能性があり、一方で、別の液滴が系のどこか他のところで自然発生的に生じる。「エマルション」および「マイクロエマルション」の上記の定義は、“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”,3rd edition,Informa Healtcare(非特許文献1)から取り入れた。
【0268】
用語「内視鏡的粘膜切除術」(EMR)は、GI管の表層(粘膜および粘膜下)に限定される固着または扁平な新生物を除去するために開発された内視鏡技術を指す。用語「内視鏡的粘膜剥離術」(ESD)は、より大きい病変の除去のために特に開発された内視鏡技術を指す。
【0269】
「内視鏡用注射針」は、「注射針」または「注射針カテーテル」または「内視鏡用注射針カテーテル」という名前でも知られ、長さが最大約230cmまであり得、かつ遠位注射針を有する内部注入管がスライド可能に配置されている比較的長いカテーテルを内部に含む器具である。通常、近位作動ハンドルは、必要に応じて一方を他方に対して移動させるためにカテーテルおよび注入管に連結されている。針は、通常収納可能である。注入管に入る流体は、典型的には、ハンドル上のルアーコネクタにより提供される。内視鏡用注射針器具は、典型的には、ワーキングチャネルを通って注入部位に運ばれる。内視鏡ワーキングチャネルの内腔を損傷から保護するため、器具を内視鏡に挿入する前に、注射針器具のハンドルを操作し、遠位注射針をカテーテルの内腔に引っ込める。器具は内視鏡の内腔を通って移動するので、これは注射針の鋭い先端の露出を防ぐために重要である。内視鏡用注射針器具の遠位端部を注入部位に位置付けたら、注射針をカテーテルの内腔から遠位に移動させるようにハンドルを再度操作する。最も遠位の位置まで進んだとき、注射針の露出部分は、およそ4~6mmの長さになる。
【0270】
「粘度」は流れに対する液体または半固体の抵抗を定義する。液体または半固体の流れは、粘度によって、またはより正確にはせん断粘度ηによって説明される。流体のせん断粘度は、隣接層が異なる速度でお互いに平行に移動する場合のせん断流に対する抵抗を表す。粘度測定の一般的な単位は、パスカル秒(Pa・s)、ポワズ(P)およびcP(センチポワズ)である。
【0271】
「弾性率G」は、力学的状態において得られる弾性率または貯蔵弾性率を示す。弾性率(弾性率(modulus of elasticity)としても知られる)は、対象または物質に応力が加えられた時に、弾性的に(すなわち、非永久的に)変形することに対する抵抗を測定した数値である。対象の弾性率は、弾性変形領域における応力-ひずみ曲線の傾きとして定義される。
【0272】
「細胞物質」は、細胞および/または細胞成分を指す。
【0273】
「体温」は、身体プロセスにより産生され、保持される熱のレベルを示す。熱は、栄養素の代謝により体内で生じ、放散、対流、および汗の蒸発を通じて体表面から失われる。熱の生成および喪失は、視床下部および脳幹で調節され、制御される。正常な成人の体温は、口で測定した場合、1日を通してわずかな変動が通常記録されるものの、37℃である。
【0274】
「室温」(RT)は、一般的に、所与の処置に使用されている環境に関わらず、周囲空気温度として定義される。より具体的には、周囲温度は、その性質上、この範囲にない場合があるので、20~25℃と定義する。一般的に、工程をRTで行うことが求められているプロトコルでは、温度が18℃を下回らず、27℃を超えないことが必要である。
【0275】
本明細書で使用する「実験室試験条件において(の下で)」または「実験室条件において」または「実験室試験において」は、in vitro条件、例えば、組成物の物理的-化学的特徴付けを行うために実験室試験で一般的に使用される方法、装置および機器などを指す。この用語は、実験室において使用され、実施された方法、装置および機器を指す。
【0276】
「Pa・s」パスカル秒は、粘度測定の単位である。
「P」ポワズは、粘度測定の単位である。
「cP」センチポワズは、粘度測定の単位である。
【0277】
以下の実施例は、本発明のある態様および実施形態の説明を目的として挙げたものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例0278】
実施例1-マイクロエマルション
【0279】
【0280】
適切な容器内で、ポリオキシル15-ヒドロキシステアレートを、均質な溶融物が得られるまで撹拌しながら60℃まで温める;次に、温度を60℃に維持したまま、撹拌下でブデソニドを加える。次に、ブデソニドが完全に溶解するまで撹拌しながら中鎖トリグリセリドおよびPEG400を加える(A相)。
撹拌下でWFIの総量の一部(4~20%)をA相に注ぐ(T=60℃);均質な混合物が得られたら、温度をRTまで下げる;次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながらエタノールを加える(B相)。
メインの容器に残りの量のWFI(80~96%)を注ぐ。次に、激しく撹拌しながらB相を滴下する。次に、ポリマーが完全に溶解するまで激しく撹拌しながらポロキサマー188を加える。ポロキサマーの溶解の終わりに、ポリマーが完全に溶解するまで激しく撹拌しながらアルギン酸ナトリウムを加える(C相)。
添加の終わりに、pH6になるまで水酸化ナトリウムを加え、完全に溶解するまで混合物を撹拌する(D相)。
WFIを加えて混合物を最終体積にする。均質になるまで混合物を撹拌下に維持する。このような組成物の適用は、食道炎およびバレット食道に対して活性になるために、食道および胃粘膜へ生体接着させることを目的とし、少量の組成物を飲むことにより容易に行うことができる。別の方法では、組成物はまた、粘膜下注射などの注射により、または胃内視鏡に挿入されたカテーテルで投与され得る。
【0281】
実施例2 エマルション
【0282】
【0283】
適切な容器内で、均質な溶融物が得られるまで撹拌しながらポリオキシル15-ヒドロキシステアレートを60℃まで温める;次に、撹拌下で中鎖トリグリセリドを加える。温度を60℃に維持したまま、撹拌下でブデソニドおよびブチルヒドロキシアニソール(BHA)を上記混合物に加える。ブデソニドが完全に溶解するまで、混合物を撹拌する(A相)。
撹拌下でWFIの総量の一部(4~20%)をA相に注ぐ(T=60℃);均質な混合物が得られたら、温度をRTまで下げる(B相)。
また別の容器に残りの量のWFI(80~96%)を注ぎ、60℃に温める。撹拌下でポロキサマー188を加え、ポリマーが完全に溶解するまで混合物を撹拌する(T=60℃)(C相)。
激しく撹拌しながら、B相をC相に滴下する(T=60℃)。添加の終わりに、温度をRTまで冷まし、次に、アルギン酸および塩化ナトリウムを加え、完全に溶解するまで混合物を撹拌する(D相)。
WFIを加えて混合物を最終体積にする。混合物は、均質になるまで撹拌下に維持する。このような組成物の適用は、食道および胃粘膜へ生体接着させることを目的とし、少量の組成物を飲むことにより容易行うことができる。別の方法では、組成物はまた、粘膜下注射などの注射により、または胃内視鏡に挿入されたカテーテルで投与され得る。
【0284】
実施例3-エマルション
【0285】
【0286】
組成物の製造方法を以下に記載する。
a) 撹拌機を備えた適切な容器に、WFI(総量の90%)を投入する;次に、温度を5℃~20℃の範囲に冷却する;次に、撹拌下でポロキサマー407を加える。完全に溶解するまで組成物を撹拌下に維持し、次に室温まで温める(A相)。
b) スターラーを備えた適切な容器に、WFIの総量の約0.02%を投入する;温度を60℃に上げる。撹拌下でホスファチジルコリン、グリセロールおよびオレイン酸ナトリウムを加える。完全に均質になるまで撹拌する(B相)。
c) また別の容器で、60℃で、撹拌下でブデソニドを大豆油に加える;完全に溶解するまで、60℃で混合物を撹拌下に維持する(C相)。
d) 60℃で撹拌しながら、C相をB相に加える。均質なエマルションが得られるまで、撹拌下で混合物をT=60℃で維持する。次に、エマルションを室温に冷却する(D相)。
e) 撹拌下でD相をA相に加える。次に、撹拌下で塩酸ノルエピネフリンおよびPBS(周知の従来の配合に従い調製する)を加える。均質になるまで混合物を撹拌下に維持する。
f) 添加の終わりに、完全に溶解するまで激しく撹拌しながらアルギン酸ナトリウムを加える。
WFIを加えて混合物を最終重量にする。均質性になるまで混合物を撹拌下に維持する。このような組成物の適用は、食道および胃粘膜への生体接着を目的とし、少量の組成物を飲むことで容易に行うことができる。また別の方法では、組成物はまた、粘膜下注射などの注射により、または胃内視鏡に挿入されたカテーテルで投与され得る。
【0287】
実施例4-マイクロエマルション
【0288】
【0289】
実施例4の製法および投与法は実施例1のものと同様である。
【0290】
実施例5 水ベースの溶液
【0291】
【0292】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を投入する;次に、撹拌下で安息香酸ナトリウムを加える。完全に溶解するまで混合物を撹拌下に維持し、次に、完全に溶解するまで撹拌しながらソルビン酸カリウムを加える。
完全に溶解するまで激しく撹拌しながら、ポロキサマーを上記混合物に加える。
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながらアルギン酸ナトリウムを上記混合物に加える。
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながらペクチンを上記混合物に加える。
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながらカルボキシメチルセルロースナトリウムを上記混合物に加える。
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながらクエン酸ナトリウムおよびクエン酸を上記混合物に加える。
添加の終わりに、完全に溶解するまで撹拌しながらスクラロースおよび香味剤を加える。
精製水を加えて混合物を最終重量にする。混合物は、均質性が得られるまで撹拌下に維持する。このような組成物の適用は、食道および胃粘膜に生体接着させることを目的とし、少量の組成物を飲むことにより容易に行うことができる。
【0293】
実施例6 水ベースの溶液
経口経路を介した食道壁への適用を意図したビヒクルを調製する。
【0294】
【0295】
実施例6の製造法および投与法は実施例5のものと同様である。
【0296】
次に、液体組成物は、10mLまたは20mLの組成物を含むバイアルに充填する。
【0297】
投与前に、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムおよびマンニトールから構成される粉末混合物を、プラグおよびプランジャー単回投与シェーカーシステム内にロードする。キャップを回して粉末をビヒクルに落とし、次に、均質な懸濁液が得られるまでバイアルをよく振る。
このような組成物の適用は、食道および胃粘膜へ生体接着させることを目的とし、少量の組成物を飲むことで容易に行うことができる。
【0298】
実施例7 水ベースの溶液
【0299】
【0300】
実施例7の製造法および投与法は、実施例5のものと同様である。
このような組成物の適用は、食道および胃粘膜へ生体接着させることを目的とし、少量の組成物を飲むことで容易に行うことができる。このような場合、胃腸内視鏡検査における粘膜組織の色のコントラストを得るために、胃腸内視鏡検査(食道および胃)の約30分前に飲むべきである。
【0301】
実施例8 水ベースの溶液
【0302】
【0303】
撹拌機を備えた適切な容器に、精製水(総量の95%)を投入する;次に、5℃~20℃の範囲の温度に冷却する;次に、撹拌しながらポロキサマー407を加える。完全に溶解するまで混合物を撹拌下に維持し、次に、室温まで温める。
均質な混合物が得られるまで撹拌しながらアルギン酸ナトリウムを上記混合物に加える。
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながらカルボキシメチルセルロースナトリウムを上記混合物に加える。
精製水を加えて混合物を最終重量にする。均質性が得られるまで混合物を撹拌下に維持する。
【0304】
このような組成物の適用は、ビヒクル内の間葉系幹細胞(MSC)のすぐに使える用時懸濁液を注射することにより容易に行うことができる。
【0305】
MSC懸濁ビヒクルは、尿失禁疾患、特に、尿道括約筋の構造的および機能的回復に適用し得る。
【0306】
懸濁後、生存率および細胞毒性の観点から生体適合性を試験し、そのようなビヒクルにおけるMSCの遊走などの機能性試験を実施した。
【0307】
生存率試験
MSCを実施例8のビヒクルに懸濁させ、細胞の生存率を試験した。
【0308】
生存率試験は、総体積300μlのビヒクル中で、FACsチューブあたり120,000細胞に実施した。インキュベーションを4℃および37℃の両方で実施し、2、4および6時間後に分析した。同時に、対照は、完全細胞培地のみで培養したMSCとして定義され、MSC懸濁ビヒクルと同じ条件で分析した。
【0309】
重要なことに、2時間~6時間の時間は、懸濁液が投与され得る間隔をシミュレートする。代わりに温度は、懸濁液が投与前に4℃などの低温、または体温(37℃)などの生理的な温度に維持された場合に、ビヒクルに対する細胞の安定性/生存率を確立する。
生存率試験は、フローサイトメトリー分析の直前に1μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)を添加することを含む。死んだ細胞は傷ついた膜を有するため、それらはPIにより染色された。
【0310】
4℃および37℃の両方で、培地中の細胞の生存率とMSC懸濁ビヒクルに再懸濁した細胞の生存率との間に違いは認められなかった。37℃で得られた生存率によって、有利なデータが示され、実際、培地の対照と比べてMSC懸濁ビヒクル中の細胞がより多く生存していた。この結果は、それらの細胞が体内の標的部位に到達したときに何が起こりうるかを予測する(
図1)。
【0311】
細胞毒性試験:実施例8のビヒクルの生体適合性をより良く理解するために、ISO10993-5に従い細胞毒性試験を実施した。
ビヒクルに懸濁させた間葉系幹細胞に、MTTアッセイを用いて細胞毒性試験を実施した。
MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)は、生きた細胞内で青紫色の不溶性のホルマザンに代謝還元される。
1日目に、培養液中の間葉系幹細胞を、Tryple select(Gibco)などの酵素消化により培養フラスコから取り出した。
【0312】
細胞懸濁液を1400rpmで10分間遠心分離し、ペレットを1×104細胞/100μlの密度で完全培養培地に懸濁させた。
100μlの細胞懸濁液を96ウェル組織培養プレートのウェルに分注し、24時間インキュベートした(5%CO2、37℃、>90%湿度)。
【0313】
24時間のインキュベート後、細胞から培養培地を吸引した。ウェルあたり、適切な濃度の試験するビヒクルを含む培地100μlを加えた。
【0314】
5つの異なる濃度のMSC懸濁ビヒクルを試験した:完全培養培地中に20%、10%、5%、2.5%および1.25%であった。細胞を24時間インキュベートした(5%CO2、37℃、>90%湿度)。24時間の処理の後、プレートから培養培地を取り除き、各ウェルに50μlのMTT溶液を加え、プレートを37℃のインキュベーターで2時間インキュベートした。MTT溶液は、In Vitro Toxicology Assay,MTT Based Tox-1(Sigma)を含むデータシートに従い希釈した。
【0315】
インキュベーション時間の後、MTT可溶化溶液(In Vitro Toxicology Assay,MTT Based Tox-1;Sigma)100μlを加えることで、ホルマザン結晶を可溶化した。
【0316】
結晶を完全に溶解させるために、旋回振とう機で混合した後、570nmの波長で吸光度を測定し、690nmでバックグラウンドの吸光度の測定を実施した。
【0317】
物質は、70%以上の値の生存率で細胞毒性がなく、
図2に示すように、24時間後のビヒクルの生存率は常に74%より大きかった。これは、MSC懸濁ビヒクルは間葉系幹細胞に対して細胞毒性がないことを示す。
【0318】
細胞遊走アッセイ:
送達ビヒクルとしての実施例8のビヒクルの適合性を評価するために、ボイデンチャンバーを用いて細胞遊走を実施し、蛍光顕微鏡により画像を取得した。
【0319】
これらの実験のために選択された細胞遊走試験はボイデンチャンバーであり、これは細胞の異なる遊走反応の定量分析に理想的に適する。
【0320】
古典的なボイデンチャンバーシステムは、一端を多孔質膜で密閉した中空のプラスチックチャンバーを用いる。細胞の遊走反応を誘導するために、チャンバーの下部の区画に誘引物質を加えた。
【0321】
標準的なボイデンアッセイにおいて、膜の孔径は通常3~12μmであり、24ウェルプレートにおいて8μmの孔径を選択した。この寸法は間葉系幹細胞の最適な遊走をサポートするためである。
【0322】
24ウェルプレートに遊走チャンバー(8μm)を準備した後、無血清培地100μlをチャンバーに加えた。血清を除去した後、約2×105細胞を、培地および異なる濃度のMSC懸濁ビヒクル(75%、80%、85%、90%、95%および100%)の溶液と混合し、37℃、5%CO2で2時間、遊走チャンバーに置いた。
対照には完全培養培地を加えた。750μlに等しい量の血清を有する培養培地をチャンバーの下部に加え、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。培地をチャンバーから取り除き、チャンバーをPBSで2回洗浄した。
【0323】
細胞は、室温で15分間、ホルムアルデヒド(PBS中3.7%)で固定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した後、100%メタノールを用いて、室温で30分間、透過処理を実施した。メタノールを除去し、ギムザ染色またはDAPI染色を行って、膜に捕捉された細胞を検出した。
【0324】
DAPI染色の
図3は、MSC懸濁ビヒクルの重要な特性を示し、実際、この組成物は、運動性などの細胞機能を阻害せず、細胞の遊走を可能にする。したがって、このことは、体の特定の領域に注入された細胞の運動性を予測する。
【0325】
さらに、得られたデータは、ビヒクルの濃度が100%に等しい場合、約60%の細胞が遊走できたことを示した。MSC懸濁ビヒクルの希釈が増加し、通常の「インビボ」メカニズムの希釈をシミュレートすると、遊走値は83%対89%と、対照に匹敵した(
図4)。
【0326】
実施例8の2 水ベースの溶液(注入可能な細胞療法)
【0327】
【0328】
本実施例で詳細に記載される本発明による例示的組成物を、in vitro創傷治癒試験-組織再生試験で試験した。
【0329】
イントロダクション
本発明の液体組成物は、皮膚の損傷を治療するために、細胞療法の分野でビヒクルとして使用することができる。創傷治癒は、失活し、失われた細胞構造および組織層を置き換える複雑で動的なプロセスである。一連の相互に作用する重複するフェーズがあり、様々な細胞およびマトリックス成分が一緒に作用して、損傷組織の完全性を再確立し、失われた組織を置き換える。創傷治癒の段階は組織的な方法で進み、4プロセス;止血、炎症、増殖および成熟に従う。この一連の出来事は、血清から成長因子、サイトカインおよびタンパク質のプールを局所環境へ分泌することにより、血小板の活性化から、負傷の直後に始まる。血小板は、組織の再生に関与する多様な成長因子およびタンパク質の供給源を構成する。多くの報告が、組織再生のための実験的および臨床的細胞培養におけるウシ胎児血清(FBS)の代替的な補助剤として、血小板溶解物の有効性を記載している。
【0330】
本実施例に詳細に記載する本発明による例示的組成物(7364/1とも呼ぶ)を、in vitro創傷治癒試験-組織再生試験で試験し、異なる液体製剤と比較した。
【0331】
組織再生の参照ビヒクルとして使用した液体製剤(7386とも呼ぶ)は、Sandriら(非特許文献2)が記載する組成物である。
参照ビヒクル組成物を以下に示す。
【0332】
【0333】
試験は、組織再生用ビヒクルとしての、本発明による組成物の使用の可能性を評価するために実施された。組成物7364/1および参照ビヒクル7386のどちらも、血小板溶解物を入れ、疑似皮膚病変で試験して細胞成長および細胞再生能力に与えるそれらの効果を調査した。血清を含まない完全培地を対照として使用した。
【0334】
in vitro創傷治癒試験
第5継代のヒト皮膚線維芽細胞(HSF)をin vitro創傷治癒試験に使用した。10%ウシ胎児血清(FBS)(EuroClone、ミラノ、イタリア)、200U/mlのペニシリンおよび0.2mg/mlのストレプトマイシン(Gibco by life technologies)を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma Life Science)を成長培地として使用した。
【0335】
この試験で使用したヒト血小板溶解物(PL)はウルム(ドイツ)の赤十字社により製造され、16人以下の健康なドナーのプールから得られた。
【0336】
細胞は、相対湿度95%の5%CO2の雰囲気で、37℃に維持した。
【0337】
in vitro創傷治癒試験は、インサートを包含するPetri μ-Dish(Ibidi、ジャルディーニ、ミラノ、イタリア)を用いて行った。インサートは、500μm±50μm幅の細胞なしギャップを有するセプタムにより分割されている、0.22cm2の成長領域を有する2つのチャンバーから形成されている。
【0338】
この手法は、コンフルエントな細胞の単層に線状の細いひっかき「傷」を作り(ギャップの作成)、その後、一定時間ごとにギャップを埋める細胞の画像を取ることを含む。
【0339】
HSFを、成長培地中105細胞/cm2で各チャンバーに播種した;24時間後、細胞がコンフルエントに達し、インサートが取り除かれ、あらかじめ付けられたギャップから分離された、細胞層の2つの領域を表示する。
【0340】
190μLの完全培地と10μLの血小板とを混合することで血小板溶解物(PL)混合物を調製した。両方の製剤;本発明の範囲内の組成物に相当する実施例8の2(試験)の製剤(7364/1)および製剤7386(参照ビヒクル)を、上述のように調製したPL混合物で1:20に希釈した。
【0341】
PLを導入して得られたビヒクルをウェルに播種した。無血清の完全培地を対照として播種した。
【0342】
あらかじめ定めた時間(t0、24時間、48時間および72時間)に顕微鏡写真を撮影し、組織再生の指標としてギャップにおける細胞増殖を評価した。
【0343】
画像は、画像解析用のImageJソフトウェア(NIH、ベセスダ、メリーランド州)を用いて分析した。
【0344】
絶対創傷密度(AWD)および相対創傷密度(RWD)を使用して、ImageJソフトウェアにより細胞遊走を測定した。このソフトウェアは、以下の式を適用するグレースケールを通してギャップ内の細胞の存在および数を検出することができる。
【0345】
AWD=MGVt-MGVt0
RWD=(MGVt-MGVt0)/(MGV Ctrlt-MGV Ctrlt0)
【0346】
MGV=平均グレー値
t=定められた時間
t0=開始時
Ctrl=対照(無血清培地)
【0347】
表11に、各時間の実験結果を示す。3枚の写真を収集し、分析した。平均および標準偏差を報告する
【0348】
【0349】
図10は、経時的な全ての試験試料の創傷領域の評価を示す。異なる時間(t0、t24、t48およびt72)後の試料の10倍画像を示す。黒い長方形は創傷領域を囲む。
【0350】
表12は関係する対照に関する試験製剤のRWDを示す。
【0351】
【0352】
0時間では、インサートを取り除いた後、細胞なしギャップまたは創傷ギャップは、全ての試料:無血清培地(対照)、PLを有する製剤7386(参照ビヒクル)およびPLを有する製剤7364/1(本発明の範囲内の組成物)ではっきりしていた。
【0353】
24時間後の全ての試料において、細胞なし領域の減少が観察された。いくらかの細胞内スペースは未だはっきりしていたが、いくつかの細胞ブリッジが対照および試験した2つのビヒクルの両方に存在した。表12に示すように、PLを導入した本発明の範囲内の組成物は、対照よりも約2倍高い創傷再生を示した。
【0354】
48時間後には、試験した全ての試料でMGV値の増加が得られた。PLを含む本発明の組成物は、対照よりも3倍高いRWD比を示し、対照の状態に対して細胞形態に差異は観察されなかった。一方で、PLを含む参照ビヒクルは、対照よりも2倍高い増加を示した。
【0355】
72時間後、
図11に示すように、フリーギャップへ細胞が完全に遊走するのを見ることができ、PLを含む本発明の例示的組成物では、創傷ギャップにおいて、対照と比べてRWDが約2.5倍であり、一方、PLを含む参照ビヒクルは、対照と比較してRWDが2.2倍であった。
【0356】
図11は、72時間後の対照、参照ビヒクル(7386)+PLおよび(7364/1)+PLの試料の比較を示す。72時間後の試料の10倍画像が示される。黒い長方形は創傷領域を囲む。
【0357】
驚くべきことに、
図11はまた、細胞形態および細胞数の点で、本発明の例示的組成物と参照製剤との間の関連性のある差異を示す。形態は、細胞の健康状態を評価するための重要なパラメータである。驚くべきことに、PLを含む本発明の製剤が、細胞の良好な健康状態を維持する一方、PLを含む参照ビヒクルでは、画像が、損傷し、しわのある細胞を示すことが明らかとなった。実際、PLを含む本発明の製剤に再懸濁した細胞は、細胞の規則的なマージンを示す一方、PLを含む参照ビヒクルに再懸濁した細胞は、不規則なマージンおよび減少した細胞質を示した。
【0358】
さらに、細胞集団について、創傷ギャップ内の細胞数を得るために、ImageJソフトウェアを用いて推定を行った。
図12は、あらかじめ定めた時間(t0、t24、t48およびt72)における試験した製剤の創傷ギャップ内の平均細胞数を示す。PLを含む本発明の例示的組成物は、創傷ギャップ内の平均細胞数の経時的な明らかな増加を示す。これは、全ての試験時間において、PLを含む参照ビヒクルよりも優れていた。さらに、48時間以降、対照に対する優位性を示している。
【0359】
この試験は、PLを含む本発明による例示的な製剤が、72時間まで細胞遊走およびヒト線維芽細胞の増殖に正の影響を示すことを実証している。
【0360】
特に、細胞遊走および細胞形態の維持に対するこの効果により、本発明の製剤は、創傷治癒において、血小板溶解物(PL)などの成長因子の送達ビヒクルとして使用でき、かつ細胞および細胞物質の潜在的なビヒクルとしても使用できる。
【0361】
実施例9 水ベースの溶液
【0362】
【0363】
撹拌機を備えた適切な容器に精製水(総量の95%)を投入する;次に、安息香酸ナトリウムおよびパラヒドロキシ安息香酸メチルを完全に溶解するまで溶解する;次に、溶液を5℃~20℃の範囲の温度で冷却する;次に、撹拌しながらポロキサマー407を加える。完全に溶解するまで混合物を撹拌下に維持し、次に室温まで温める。
次に、完全に溶解するまで撹拌しながらインフリキシマブを加える。
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながら上記の混合物にジェランガムを加える。
次に、均質な混合物が得られるまで撹拌しながらヒドロキシプロピルセルロースを上記の混合物に加える。
精製水を加えて混合物を最終重量にする。均質性が得られるまで混合物を撹拌下に維持する。このような組成物の適用は、S字結腸および/または直腸の粘膜に生体接着させることを目的とした、組成物の浣腸剤などの直腸投与により容易に行うことができる。
【0364】
実施例10 水ベースの溶液
【0365】
【0366】
実施例10の製造法は実施例8のものと同様である。
このような組成物の適用は、痔瘻または直腸膣瘻を含むがこれらに限定されない瘻孔の治療のために、MSCの懸濁液の瘻孔内腔または瘻孔壁への注入により容易に行うことができる。
【0367】
実施例11 水ベースの溶液
【0368】
【0369】
実施例11の製造法は、実施例8のものと同様である。
このような組成物の適用は、痔瘻または直腸膣瘻を含むがこれらに限定されない瘻孔の治療のために、瘻孔内腔または瘻孔壁への注入により容易に行うことができる。
【0370】
実施例12 水ベースの溶液
【0371】
【0372】
実施例12の製造法は、実施例8のものと同様である。この組成物は、浣腸剤の形態で、または標的粘膜組織に適用されると生体接着性が備わる粘性構造化組成物として、痔核叢(emmorroidal plexus)に局所的に適用することができる。
【0373】
実施例13 水ベースの溶液
【0374】
【0375】
実施例13の製造法は、実施例8のものと同様である。
この組成物は、浣腸剤の形態で、または、標的粘膜組織に適用されると生体接着性が備わる粘性構造化組成物として、痔核叢に局所的に適用することができる。
【0376】
実施例14
メチルセルロース(MC)0.31% w/w、ジェランガム(GG)0.38% w/w、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)0.22% w/wから構成されるビヒクルを調製する。このようなビヒクルは、直腸経路を介して遠位結腸の粘膜に適用することが意図される。以下の特性を考慮した。
1) 室温(25℃)でのビヒクルの粘度。容易な投与のための機能である;
2) 温度の上昇(室温から37℃)および模擬結腸液(SCF)での希釈後のビヒクル粘度の上昇。このような上昇は、投与後の適用部位におけるビヒクルの持続性のための機能である。
3) 投与後の粘弾性的挙動。適用部位におけるビヒクルの保護作用のための機能である。
そのままのビヒクルおよび模擬結腸液(SCF)で5:2 w/wに希釈した後のビヒクルは、増加するせん断速度(10~300S-1)における粘度で特徴付けられる。SCFは周知の従来の処方に従い調製する。粘度のデータから、2つの応答変数を測定する:
1) 25℃および50S-1せん断速度におけるそのままのビヒクルの粘度:0.093±0.002Pa・s;
2) 10S-1における正規化Δ粘度:0.7±0.2、以下の式により計算した:
式1:正規化Δ粘度=(η37℃,SFC-η25℃,水)/η25℃,水
ここで、η37℃,SFC=SCFで希釈したビヒクル(5:2 w/w)の粘度、37℃、10S-1せん断速度で測定した;
η25℃,水=水で希釈したビヒクル(5:2 w/w)の粘度、25℃、10S-1せん断速度で測定した。
【0377】
10S-1における正規化Δ粘度の計算において、37℃の代わりに水で希釈した後に25℃で測定した粘度の値の使用は、試料の粘度に対するイオンの影響だけでなく、(MCによる)熱ゲル化の効果をも指摘することを可能にする。SCFで5:2 w/wに希釈した後のビヒクルは、37℃での粘弾性測定(振動試験)および粘膜接着性評価を受けた。このような試験は、SCF中のムチン懸濁液に浸したフィルターディスクからビヒクル層を分離するために必要な剥離力(Fmax)の測定を提供する。以下の変数を測定した:
1) 粘弾性測定に関して:損失正接(Tanデルタ):0.11±0.01、粘性率(G’’)および弾性率(G’)の比として計算した。
2) 粘膜接着性測定に関して:最大剥離力(Fmax):1317±102mN;
調製したビヒクルは、生理的温度において模擬結腸液で希釈した際に、ゲル化または構造化することができ、粘膜接着性を示す。
【0378】
実施例15
ポロキサマー407(PLX)14.0% w/w、ジェランガム(GG)0.29% w/wおよびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)0.41% w/wから構成されるビヒクルを調製する。このようなビヒクルは直腸経路を介して遠位結腸の粘膜に適用することが意図される。
【0379】
SCFを用いた2つの異なる希釈:5:2および5:0.65 w/wを検討する。そのままのビヒクル、および蒸留水またはSCFで5:2または0:65 w/wに希釈した後のビヒクルを、実施例16に記載するように、増加するせん断速度(10~300S-1)での粘度について特徴付ける。粘度のデータから、3つの変数を測定した:
1) 25℃、50s-1せん断速度でのそのままのビヒクルの粘度:0.206±0.001Pa・s;
2) 5:2 w/wに希釈した時の10s-1(25℃)における正規化Δ粘度=3.1±0.2、および
5:0.65 w/wに希釈した時の10s-1(25℃)における正規化Δ粘度=3.1±0.2、以下の式に従い計算した:
式1:正規化Δ粘度=(η37℃,SFC-η25℃,水)/η25℃,水
ここで、η37℃,SFC=SCFで希釈した(5:2または5:0.65 w/w)ビヒクルの粘度、37℃、10S-1せん断速度で測定した;
η25℃,水=水で希釈した(5:2または5:0.65 w/w)ビヒクルの粘度、25℃、10S-1せん断速度で測定した。
3)5:2 w/wに希釈した時の10s-1(37℃)における正規化Δ粘度=12.5±0.7、および
5:0.65 w/wに希釈した時の10s-1における正規化Δ粘度=1.13±0.06、以下の式に従い計算した:
式2:正規化Δ粘度=(η37℃,SFC-η37℃,水)/η37℃,水
ここで、η37℃,SFC=SCFで希釈した(5:2または5:0.65 w/w)ビヒクルの粘度、37℃、10S-1せん断速度で測定した;
η37℃,水=水で希釈した(5:2または5:0.65 w/w)ビヒクルの粘度、37℃、10S-1せん断速度で測定した。
【0380】
両方の重量比に従いSCFで希釈したビヒクルも粘膜接着性を示す。実際、生物学的基質の非存在下(ブランク)よりも、ムチンの存在下において、より高いFmax値が得られたことを示す(
図5)。
【0381】
実施例16
経口経路を介して食道壁に適用することを意図したビヒクルを調製する。ビヒクルは、1.5% w/wMC、0.1% w/wアルギン酸ナトリウム(ALG)、2.7% w/w重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)、0.3% w/w酸化マグネシウム(MgO)から構成される。90℃で撹拌しながら3% w/wの濃度でMCを蒸留水に溶解させることにより調製する。続いて、完全に透明になるまで撹拌しながら溶液を氷浴に置く。MC溶液を、0.2% w/wALGおよび5.4% w/wNaHCO
3の水溶液と1:1 w/wで混合する。最後に、MgOを加える。37℃、20分間のサーモスタットの後、ビヒクルは増加したちょう度を示す。このような増加を、貫入試験および粘弾性測定により評価する。貫入試験は、室温および37℃、20分間のサーモスタットの後に実施した。
図6(aおよびb)は、それぞれ貫通力および貫通仕事の値を示す。粘弾性測定は、25℃および37℃、20分間のサーモスタットの後に実施した。貯蔵弾性率(G’)により表される試料の弾性は、0.1~10Hzの範囲で増加する周波数において測定する。
図7は、ビヒクルのG’プロファイルを示す。得られた結果は、37℃、20分間のサーモスタットの後にビヒクルのゲル化が起こることを示す。
ビヒクルの性能は、2回の希釈:人工唾液(AS)で3:1 w/w、およびHCl 0.2Nで1:1 w/wの後に調査する。
図8は、上記の2回希釈の後のビヒクルの弾性率(G’)を示す。3:1 w/wのAS、およびHClの代わりに1:1の水で希釈したビヒクルのG’値は、ビヒクル性能に対する酸性環境の影響を調査するための参照として使用する。得られた結果は、胃腸壁に対する保護作用に対して機能的であるビヒクルの弾性は、HClで希釈した後に増加することを証明する。
【0382】
実施例17
2つの異なるビヒクル:
1) ポロキサマー407 10.3% w/wの水溶液を含むビヒクルと、
2) 精製水中にポロキサマー407 10.3% w/wおよびジェランガム0.41% w/wの混合物を含むビヒクルと、
を調製した。
両者のビヒクルを、5:2 w/wの比率に従い水または模擬結腸液で希釈して、弾性率G’について特徴付けした。精製水で5:2 w/wに希釈して生理的温度(36、38℃)および室温(25℃)で観察されるG’値の差として計算される、微分パラメータΔG’の値が計算され、表18に示される。イオン感応性ポリマー、GGの存在は、驚くべきことに、このようなパラメータにおいて顕著な増加を生じ、形成されたゲルの強化を示すことが観察される。
さらにより驚くべきことに、同じ試料を模擬結腸液で5:2 w/wの比率に希釈した場合、ゲルの強さがさらに増加することが分かる(
図9;表19)。
【0383】
表18-ポロキサマー溶液(蒸留水で5:2 w/wに希釈した10.3% w/wポロキサマー)およびポロキサマー/GG混合物(蒸留水で5:2 w/wに希釈した10.3% w/wポロキサマー/0.41% w/w GG)について計算した微分パラメータΔG’の値(平均値±標準誤差、n=3)
ΔG’36または38℃=(G’36または38℃-G’25℃)
【0384】
【0385】
表19-ポロキサマー溶液(模擬結腸液で5:2 w/wに希釈した10.3% w/wポロキサマー)およびポロキサマー/GG混合物(模擬結腸液で5:2 w/wに希釈した10.3% w/wポロキサマー/0.41% w/w GG)について計算した微分パラメータΔG’の値(平均値±標準誤差、n=3)
ΔG’36または38℃=(G’36または38℃-G’25℃)
【0386】
【0387】
したがって、驚くべきことに、熱応答性ポリマーがイオン感応性ポリマーと組み合わされた場合、37℃における弾性率G’が顕著に増加することが示される。これは、驚くべきことに、本発明の組合せ(熱応答性+イオン感応性)が腸の実際の環境を模倣する模擬結腸液で希釈された場合によりいっそう認められた(約37℃体温で水のみが940±222Paに対して模擬結腸液が4937±1129Pa)。