(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100971
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】バイオマス資源由来ポリエステルエラストマー
(51)【国際特許分類】
C08G 63/668 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
C08G63/668
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084700
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2022176687の分割
【原出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】住野 翔郷
(72)【発明者】
【氏名】赤石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】玉城 勇気
(57)【要約】
【課題】着色のない、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマーが有する優れた機械特性、滞溜安定性、耐水老化性、及び耐熱老化性を保持することができるバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーを提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ポリエーテルを構成成分とするソフトセグメントが結合したポリエステルエラストマーであって、前記芳香族ジカルボン酸と前記脂肪族及び/又は脂環族ジオールは化石燃料資源由来であり、前記脂肪族ポリエーテルはバイオマス資源由来であり、前記ポリエステルエラストマーのバイオベース度が20~85%であり、かつ前記ポリエステルエラストマーの還元粘度が1.2dl/g以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ポリエーテルを構成成分とするソフトセグメントが結合したポリエステルエラストマーであって、前記芳香族ジカルボン酸と前記脂肪族及び/又は脂環族ジオールは化石燃料資源由来であり、前記脂肪族ポリエーテルはバイオマス資源由来であり、前記ポリエステルエラストマーのバイオベース度が20~85%であり、かつ前記ポリエステルエラストマーの還元粘度が1.2dl/g以上であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステルエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオベース度が高くても着色がなく、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマーが有する優れた機械特性、滞溜安定性、耐水老化性、及び耐熱老化性を保持することができるバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルエラストマーは、射出成形性、押出成形性に優れ、機械的強度が高く、弾性回復性、耐衝撃性、柔軟性などのゴム的性質、耐熱性と耐寒性に優れる材料として、自動車部品、電気・電子部品、繊維、フィルム、スポーツ部品など幅広い用途に使用されている。
【0003】
近年の化石燃料資源の枯渇への危惧、大気中の二酸化炭素の増加という世界規模での環境問題の背景から、各種ポリマーのバイオマス化が進められている。バイオマス資源は再生可能な資源であるため、SDGsやカーボンニュートラルの観点から、今後のポリマー開発において、重要な設計思想になると考えられる。
【0004】
しかしながら、バイオマス資源由来原料には、精製工程では除ききれなかった不純物が含まれているため、ポリエステル中のバイオベース度を高くしようとしてバイオマス資源由来原料の割合を増加させると、不純物の量が増加し、その結果、反応が阻害されて還元粘度が上昇せず、化石燃料資源由来ポリエステルの優れた特性を保持することが困難であった。
【0005】
かかる問題に対して、バイオマス資源由来原料のジカルボン酸及び/又はジオールを原料としたポリエステル中の硫黄原子含有量や酸末端基量を低減させてポリエステルの機械特性の低下を防止することが提案されている(特許文献1参照)。このバイオマス資源由来ポリエステルは、機械特性の低下をある程度防ぐが、ポリエステルの着色を招き、成型品の外観を悪くする問題があった。また、滞溜安定性、耐水老化性、及び耐熱老化性に関して化石燃料資源由来ポリエステルが有する優れた特性を維持することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、ポリエステルエラストマー中のバイオマス資源由来原料の使用割合を高めても、着色がなく、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマーが有する優れた機械特性、滞溜安定性、耐水老化性、及び耐熱老化性を保持することができるバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリエステルエラストマーのハードセグメントを構成するポリエステルの芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族及び/又は脂環族ジオールを化石燃料資源由来のものとし、ソフトセグメントを構成する芳香族ジカルボン酸と脂肪族ポリエーテルのうち、この脂肪族ポリエーテルをバイオマス資源由来のものにすることにより、化石燃料資源由来のポリエステルエラストマーの有する優れた機械特性、滞溜安定性、耐水老化性、及び耐熱老化性を保持することができるとともに着色のないバイオマス資源由来のポリエステルエラストマーを提供することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の(1)~(6)を構成するものである。
(1)芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ポリエーテルを構成成分とするソフトセグメントが結合したポリエステルエラストマーであって、前記芳香族ジカルボン酸と前記脂肪族及び/又は脂環族ジオールは化石燃料資源由来であり、前記脂肪族ポリエーテルはバイオマス資源由来であり、前記ポリエステルエラストマーのバイオベース度が20~85%であり、かつ前記ポリエステルエラストマーの還元粘度が1.2dl/g以上であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステルエラストマー。
(2)バイオマス資源由来の脂肪族ポリエーテルが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであることを特徴とする(1)に記載のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマー。
(3)ガラス転移温度(Tg)が-70~10℃であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマー。
(4)ポリエステルエラストマーのCo-b値が7以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマー。
(5)ポリエステルエラストマーのバイオベース度が35~85%であり、かつポリエステルエラストマーの還元粘度が1.8dl/g以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマー。
(6)ポリエステルエラストマーのハードセグメントがブチレンテレフタレート単位よりなるポリエステルであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマー。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーは、バイオマス資源由来原料の使用割合を高めても、ポリエステルエラストマーの着色を防止することができ、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマーが有する優れた機械特性、滞溜安定性、耐水老化性、及び耐熱老化性を保持することができる。そのため、本発明のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーは、化石燃料資源の枯渇問題等の世界的な環境問題の解決に大きく貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ポリエーテルを構成成分とするソフトセグメントが結合したポリエステルエラストマーであり、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールを化石燃料資源由来とし、脂肪族ポリエーテルをバイオマス資源由来としたことに特徴を有する。
【0012】
ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸としては、通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、主たる芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸(異性体の中では2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい)であることが好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸の含有量は、ハードセグメントのポリエステルを構成する全ジカルボン酸中、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であっても良い。テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられることができ、その量は全酸成分の30モル%以下が好ましく、より好ましくは20モル%以下であり、さらに好ましくは10モル%以下であり、0モル%であっても良い。これらジカルボン酸をポリエステルエラストマーの原料として用いる場合は、ジカルボン酸のエステル体であっても良い。例えば、原料としては、テレフタル酸も使用可能であり、テレフタル酸ジメチルも使用可能である。
【0013】
また、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族又は脂環族ジオールとしては、一般の脂肪族又は脂環族ジオールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2~8のアルキレングリコール類であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールのいずれかであることが好ましい。
【0014】
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位(テレフタル酸と1,4-ブタンジオールからなる単位)あるいはブチレンナフタレート単位(2,6-ナフタレンジカルボン酸と1,4-ブタンジオールからなる単位)よりなるものが、物性、成形性、コストパフォーマンスの点から好ましい。
【0015】
また、ポリエステルエラストマーのハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルを事前に製造し、その後ソフトセグメント成分と共重合させる場合、該芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000~40000を有しているものが好ましい。
【0016】
ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを構成する芳香族ジカルボン酸としては、前記ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸が使用可能である。ソフトセグメントの構成成分である芳香族ジカルボン酸とハードセグメントの構成成分である芳香族ジカルボン酸は、同じものであることが好ましい態様である。
【0017】
ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを構成する脂肪族ポリエーテルとしては、ハードセグメントのポリエステルと結合するため、グリコール化合物であることが好ましい。具体的には、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、弾性特性の点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0018】
本発明では、ソフトセグメントの構成成分である脂肪族ポリエーテルとして、バイオマス資源由来のもの、特に、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を使用することが好ましい。かかるPTMGとしては、市販のものを入手して使用することができ、例えば、三菱ケミカル製のBioPTMG1000、BioPTMG2000等が好ましく用いられる。
【0019】
ポリエステルエラストマーは、テレフタル酸、1,4-ブタンジオール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコールを主たる成分とする共重合体であることが好ましい。ポリエステルエラストマーを構成するジカルボン酸成分中、テレフタル酸が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。ポリエステルエラストマーを構成するグリコール成分中、1,4-ブタンジオールとポリテトラメチレンエーテルグリコールの合計が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0020】
前記ポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、好ましくは500~4000、より好ましくは700~3000、さらに好ましくは800~2500である。数平均分子量が上記範囲未満であると、エラストマー特性を発現しにくい場合がある。一方、数平均分子量が上記範囲を超えると、ハードセグメント成分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。
【0021】
本発明におけるハードセグメントの質量は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールで構成される成分質量を指し、ソフトセグメントの質量は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ポリエーテルで構成される成分質量のことを指す。例えば、テレフタル酸と1,4-ブタンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)から成るポリエステルエラストマーであれば、ハードセグメントの質量は、ブチレンテレフタレート単位(テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの縮合単位)の質量となり、ソフトセグメントの質量は、テレフタル酸とポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)の縮合単位の質量となる。
【0022】
ポリエステルエラストマーのハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率は、5/95~90/10が好ましく、10/90~85/15がより好ましく、15/85~80/20がさらに好ましい。ハードセグメント量が少ない(PTMG量が多い)と、ポリエステルエラストマーとしての耐熱老化性、成形性(結晶性)の機能を満足するものが得られない場合がある。反対にハードセグメント量が多い(PTMG量が少ない)と、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分の相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。
また、ポリエステルエラストマーの融点は、150~230℃であることが好ましい。融点が150℃を下回ると、ポリエステルエラストマーとしての耐熱老化性、成形性(結晶性)の機能を満足するものが得られない場合がある。反対に融点が230℃を上回ると、ハードセグメント量を多く含むため、それに応じてガラス転移温度(Tg)が高くなってしまい、ポリエステルエラストマーとしての反発弾性、柔軟性、低温機械特性の機能を満足するものが得られない場合がある。
【0023】
本発明のポリエステルエラストマーを製造するためには、重縮合の時間を従来より長くすることが好ましい。通常、ポリエステルエラストマーの製造における重縮合の時間は、50~90分程度であるが、本発明においては、重縮合の時間は、好ましくは100~140分、より好ましくは105~135分である。また、重縮合の温度を狭い範囲に制御することが好ましい。通常、ポリエステルエラストマーの製造における重縮合の温度は、235~260℃程度であるが、本発明においては、重縮合の温度は、好ましくは235~255℃、より好ましくは240~250℃である。重縮合の時間が短かったり、重縮合の温度が低いと、ポリエステルエラストマーの還元粘度が上昇せず、切断時伸びや切断時引張強さもポリエステルエラストマーとしての機能を満足するものが得られない場合がある。反対に重縮合の時間が長かったり、重縮合の温度が高いと、ポリエステルエラストマーの着色が起き、外観を悪化させてしまったり、熱劣化による還元粘度の低下を引き起こしてしまう恐れがある。
【0024】
本発明のポリエステルエラストマーのバイオベース度は、20~85%、好ましくは30~85%、より好ましくは35~85%である。従来、バイオマス資源由来原料には精製工程では除ききれなかった不純物が含まれているため、バイオベース度を高くしようとしてバイオマス原料の割合を増加させると、不純物の量が増加するため、反応が阻害されて還元粘度が上がらず、重合時間が長くなり、着色するという問題があった。そのため、生産効率を下げることなく、着色することを防止し、かつ優れた柔軟性、低温機械特性、耐熱老化性、耐水性を保持することができるバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーを得ることは困難であった。そこで、本発明者は、ポリエステルエラストマーの重合原料を鋭意検討した結果、ハードセグメントは化石燃料資源由来のものを使用し、ソフトセグメントのみにバイオマス資源由来の原料として脂肪族ポリエーテルを使用することにより、そして適切な重縮合の反応時間と温度を採用することにより、着色がなく、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマーが有する優れた特性を保持することができるバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーを得ることに成功した。
【0025】
本発明のポリエステルエラストマーの特性として、分子量の指標となる還元粘度(ηsp/c)は極めて重要である。本発明において、ポリエステルエラストマーとしての長期耐久性(耐熱老化性、耐水性)を発現する還元粘度は、1.2dl/g以上、好ましくは1.3dl/g以上、より好ましくは1.4dl/g以上、さらに好ましくは1.8dl/g以上である。還元粘度(ηsp/c)が低いと、分子量が小さいため、ポリエステルエラストマーとしての長期耐久性(耐熱老化性、耐水性)の機能を満足するものが得られない場合がある。
【0026】
本発明のポリエステルエラストマーの特性として、低温機械特性の指標となるガラス転移温度(Tg)は重要である。ポリエステルエラストマー中のソフトセグメント比率に応じてガラス転移温度は変化する。本発明において、ポリエステルエラストマーとしての反発弾性、柔軟性、低温機械特性の機能を発現するガラス転移温度は、好ましくは-70~10℃、より好ましくは-65~10℃である。ガラス転移温度が高いと、ポリエステルエラストマーとしての反発弾性、柔軟性、低温機械特性の機能を満足するものが得られない場合がある。
【0027】
本発明のポリエステルエラストマーの特性として、成型品の外観の指標となるCo-b値は重要である。バイオマス資源由来原料中の不純物や重合条件によってCo-bの値は変化する。本発明において、良好な外観を得るためのCo-bは、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは4以下である。Co-bが大きいと、調製されるペレットが黄変し、成型品の外観を大きく損なってしまうため、満足するものが得られない場合がある。
【0028】
本発明のポリエステルエラストマーの組成、及び組成比を決定する方法としては、試料を重クロロホルム等の溶剤に溶解して測定する1H-NMRのプロトン積分比から算出することも可能である。
【実施例0029】
本発明の効果を実証するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、特性値の評価は以下の方法により行なった。また、実施例で使用した原料や、特に明記がないものは化石燃料資源由来のものである。
【0030】
(1)還元粘度(ηsp/c)
ポリエステルエラストマー0.05gを25mLの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かし、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
【0031】
(2)融点(Tm)
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、窒素中にて250℃で2分間溶融した後、降温速度20℃/分で50℃まで降温し、さらに50℃から250℃まで20℃/分で昇温し、得られたサーモグラム曲線から融解による、吸熱ピークを融点とした。
【0032】
(3)ガラス転移温度(Tg)
動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000(株式会社ユービーエム社製)を用い、測定サンプルはNF型単動圧縮成形機(株式会社神藤金属工業製)を用い200~250℃に加熱した熱板でプレスすることにより0.4mm厚のシートを作成し、測定は測定周波数11Hz、昇温速度は2℃/分の条件で-150℃から150℃までのtanδでそのピーク位置をTgとした。
【0033】
(4)酸価(AV)
試料0.2gを精秤し、ベンジルアルコールを入れて、加熱溶解する。20mlのクロロホルムに溶解し、0.08Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定し、中和に要した水酸化カリウムの滴定量から酸価を求めた。指示薬にはフェノールレッドエタノール溶液を用いた。
【0034】
(5)色差
自動色差計(東洋理化工業(株)製)でCo-b値(値が大きいほど黄味が大きい)を測定した。
【0035】
(6)滞溜安定性(ΔMFR)
実施例、比較例で得られたポリエステルエラストマー組成物のペレットをJIS K7210記載の試験法(A法)に準拠し、190℃(実施例2~4、参考例2~4、比較例4)または230℃(実施例1,5,6、参考例1,5,6、比較例1~3)、25分滞溜させた後、2160gでメルトフローレート(MFR:g/10min)を測定した。測定には水分率0.1質量%以下の組成物を用いた。
【0036】
(7)切断時引張伸びおよび強さ
ポリエステルエラストマーの切断時の引張伸びおよび強さをJIS K6251に準拠して測定した。試験片は、100℃で5時間減圧乾燥した樹脂を射出成形機(山城精機社製、model-SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、100mm×100mm×2mmの平板に射出成形した後、該平板よりダンベル状3号形の試験片を打ち抜いて製作した。
【0037】
(8)耐水老化性(耐水老化試験後の切断時伸び保持率が50%となる処理時間)
試験片を100℃の沸水中に処理した後、上記方法により切断時伸びを測定した。沸水中で処理していない試験片についても切断時伸びを測定し、沸水処理後の切断時伸びの保持率を以下のように計算した。初期切断時伸びは、沸水処理前の切断時伸びである。
切断時伸び保持率(%)=(沸水処理後の切断時伸び/初期切断時伸び)×100
切断時伸び保持率が50%となったときの沸水処理時間を伸度半減期として測定した。
【0038】
(9)耐熱老化性(耐熱老化試験後の切断時伸び保持率が50%となる処理時間)
試験片を140℃の空気中に処理した後、上記方法により切断時伸びを測定した。熱処理していない試験片についても切断時伸びを測定し、熱処理後の切断時伸びの保持率を以下のように計算した。初期切断時伸びは、熱処理前の切断時伸びである。
切断時伸び保持率(%)=(熱処理後の切断時伸び/初期切断時伸び)×100
切断時伸び保持率が50%となったときの熱処理時間を伸度半減期として測定した。
【0039】
(10)バイオベース度
バイオベース度とは、ポリエステルエラストマーを構成する全モノマー成分の質量に対するバイオマス資源由来のモノマー成分の質量から計算される、バイオマス資源由来のモノマー成分の割合である。バイオベース度は、ポリエステルエラストマーに含まれる全ての炭素に対して、バイオマス資源由来原料にのみ含まれる14C炭素(12C炭素の同位体)の割合を測定した値と整合する。ポリエステルエラストマーのバイオベース度は、ASTM D6866に基づき、加速器質量分析装置(AMS)により測定する。
【0040】
実施例1
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)2000g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1360g、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(BioPTMG1000、数平均分子量1000、三菱ケミカル製)750g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで150分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、75分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を135分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が72/28(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを実施例1のポリエステルエラストマーとした。
【0041】
実施例2
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)1200g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)800g、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(BioPTMG1000、数平均分子量1000、三菱ケミカル製)1780g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで165分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を115分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が33/67(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを実施例2のポリエステルエラストマーとした。
【0042】
実施例3
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)680g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)430g、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(BioPTMG2000、数平均分子量2000、三菱ケミカル製)2330g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで200分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を115分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が17/83(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを実施例3のポリエステルエラストマーとした。
【0043】
実施例4
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)840g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)560g、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(BioPTMG2000、数平均分子量2000、三菱ケミカル製)2150g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで200分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を120分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が24/76(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを実施例4のポリエステルエラストマーとした。
【0044】
実施例5
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDC、SK Petrochemical製)1790g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1020g、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(BioPTMG1000、数平均分子量1000、三菱ケミカル製)1130g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで90分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を110分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が56/44(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを実施例5のポリエステルエラストマーとした。
【0045】
実施例6
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDC、SK Petrochemical製)1920g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1120g、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(BioPTMG1000、数平均分子量1000、三菱ケミカル製)960g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで90分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を105分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が62/38(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを実施例6のポリエステルエラストマーとした。
【0046】
参考例1
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)2000g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1360g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG1000、数平均分子量1000、BASF製)750g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで150分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、75分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を90分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が72/28(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを参考例1のポリエステルエラストマーとした。
【0047】
参考例2
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)1200g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)800g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG1000、数平均分子量1000、BASF製)1780g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで90分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を105分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が33/67(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを参考例2のポリエステルエラストマーとした。
【0048】
参考例3
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)680g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)430g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG2000、数平均分子量2000、BASF製)2330g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで90分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を100分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が17/83(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを参考例3のポリエステルエラストマーとした。
【0049】
参考例4
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)840g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)560g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG2000、数平均分子量2000、BASF製)2150g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで90分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を95分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が24/76(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを参考例4のポリエステルエラストマーとした。
【0050】
参考例5
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDC、SK Petrochemical製)1790g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1020g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG1000、数平均分子量1000、BASF製)1130g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで90分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を90分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が56/44(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを参考例5のポリエステルエラストマーとした。
【0051】
参考例6
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDC、SK Petrochemical製)1920g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1120g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG1000、数平均分子量1000、BASF製)960g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで90分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、90分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を85分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が62/38(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを参考例6のポリエステルエラストマーとした。
【0052】
比較例1
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)2000g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1360g、バイオマス資源由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(BioPTMG1000、数平均分子量1000、三菱ケミカル製)750g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで150分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、75分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を90分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が72/28(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを比較例1のポリエステルエラストマーとした。
【0053】
比較例2
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)2030g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1460g、バイオマス資源由来のダイマージオール(C36DiOH、Croda製Pripol2033)840g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで110分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、75分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を55分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が65/35(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを比較例2のポリエステルエラストマーとした。
【0054】
比較例3
テレフタル酸ジメチル(DMT、SK Petrochemical製)1815g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1665g、バイオマス資源由来のダイマー酸(C36DiCOOH、Croda製Propol1009)860g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで120分間かけて昇温しエステル交換反応とエステル化反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、75分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を60分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が66/34(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを比較例3のポリエステルエラストマーとした。
【0055】
比較例4
バイオマス資源由来のフランジカルボン酸ジメチル(FDME、BASF製)2110g、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO、三菱ケミカル製)1540g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG1000、数平均分子量1000、BASF製)1780g、テトラブチルチタネート(TBT、ナカライテスク製)2.4g、AO-330(ADEKA製)6.0gをオートクレーブに仕込み、室温から180℃まで120分間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、75分間かけて245℃、1Torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃で、1Torr以下の状態で重合反応を46分間行い、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比率が71/29(質量%)のポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーを比較例4のポリエステルエラストマーとした。
【0056】
実施例1~6、参考例1~6、比較例1~4のポリエステルエラストマーの組成と評価結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
表1から明らかなように、バイオマス資源由来の原料をソフトセグメントの脂肪族ポリエーテルに使用した実施例1~6はいずれも、同種の化石燃料資源由来原料のみを使用した参考例1~6の化石燃料資源由来ポリエステルエラストマーが有する優れた柔軟性、低温機械特性、耐熱老化性かつ耐水性をほぼ保持することができていた。一方、比較例1は、実施例1と同じ組成を有するが、従来の重縮合の時間を採用したため、還元粘度が低くなり、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマー特有の優れた各種特性を保持できなくなった。また、比較例2~4は、バイオマス資源由来の原料をソフトセグメントの脂肪族ポリエーテル以外の部分に使用しているため、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマー特有の優れた各種特性を保持できなかった。
本発明のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーは、着色がなく、化石燃料資源由来ポリエステルエラストマーが有する優れた柔軟性、低温機械特性、耐熱性かつ耐水性を保持することができる。従って、本発明のバイオマス資源由来ポリエステルエラストマーは、化石燃料資源の枯渇問題等の環境問題の解決に大きく貢献し、当業界において極めて有用である。