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特開2024-100972ウイルスベクター及びパッケージング細胞株
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100972
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ウイルスベクター及びパッケージング細胞株
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240719BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N15/63 Z
A61K35/76
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/436
A61K31/706
A61K38/13
C12N7/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024084707
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2021505621の分割
【原出願日】2019-04-11
(31)【優先権主張番号】62/656,823
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520393462
【氏名又は名称】ウモジャ バイオファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー シャーレンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ローリー バイツ
(57)【要約】
【課題】T細胞のin vivo増殖のための核酸ベクター及びパッケージング細胞株を提供すること。
【解決手段】より具体的には、本開示は、in vivoでの腫瘍浸潤リンパ球の形質導入及び薬剤媒介増殖のために適合されたレンチウイルスベクターの直接腫瘍内注射に関する。一態様では、本開示は、T細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸配列に動作可能に連結されたT細胞及び/またはNK細胞特異的プロモーターを含む核酸ベクターであって、T細胞/NK細胞活性化受容体は、小分子によって活性化することが可能である、核酸ベクターを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/656,823号の優先権を主張し、その開示は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、本明細書への参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含有するテキストファイルの名前は、VITI_001_01WO_SeqList_ST25.txtである。テキストファイルは94KBであり、2019年4月11日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
本開示は一般に、ウイルスベクター、パッケージング細胞株、及び関連する使用方法、特に疾患病態の治療のためのin vivoでの免疫細胞集団の増殖のための使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がん免疫療法は、腫瘍に対する免疫反応の治療的誘導に基づく治療手法である。養子T細胞療法(ACT)は、がん免疫療法の一形態である。リンパ球、特に腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、身体から単離され、ex vivoで培養され、増殖され、次いで再注入される。増殖工程は、TILの抗原特異的増殖または遺伝子改変を含み得る。ACTは、Rosenberg et al. Adoptive cell transfer as personalized immunotherapy for human cancer. Science. 348:62-8(2015)で概説されている。
【0005】
本発明者は、ACTの代替手段として、TIL、または他の免疫細胞のin vivo形質導入が、ex vivoではなくin vivoでの細胞の増殖を促進し得ることに気づいた。さらに、本発明者は、TIL、または他の免疫細胞のin vivoでの形質導入は、ACTによって必要とされるコストが高く、時間がかかり、リスクのある処置を伴わずに、がんまたは他の疾患病態の治療を可能にするであろうことに気づいた。
【0006】
したがって、in vivoでTILまたは他の免疫細胞の集団を増殖させる手段が必要とされている。特に、in vivoでTILまたは他の免疫細胞の所望の集団を選択的に増殖させることが可能な治療剤が必要とされている。本開示は、疾患病態の治療のためのin vivoでのTILまたは他の免疫細胞の増殖のためのウイルスベクター、パッケージング細胞株、及び関連する使用方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Rosenberg et al. Adoptive cell transfer as personalized immunotherapy for human cancer. Science. 348:62-8(2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、T細胞/NK細胞活性化受容体(及び任意に他のエフェクタータンパク質)を発現するように設計されたレンチウイルスベクター及びパッケージング細胞株が、T細胞のin vivoでの増殖に有用であるという発見に部分的に基づいている。本開示のレンチウイルスベクター及びパッケージング細胞株は、例えば、レンチウイルスベクターがパッケージング細胞株を使用してレンチウイルス粒子にパッケージングされ、得られたレンチウイルス粒子が対象の体内に送達される場合、in vivoでの腫瘍浸潤リンパ球の形質導入及び薬物媒介増殖のために適合され得る。本開示によるレンチウイルス粒子の腫瘍内注射は、腫瘍浸潤リンパ球のin vivo増殖をもたらす。腫瘍浸潤リンパ球の増殖は、T細胞/NK細胞活性化受容体が小分子によって活性化(または不活性化)することが可能である場合に、そのような小分子の使用によって制御可能である。任意に、パッケージング細胞株は、T細胞活性化または共刺激分子を発現し、外因性活性化剤の非存在下でパッケージング細胞株に由来するレンチウイルス粒子によるT細胞形質導入を促進する。任意に、レンチウイルスベクターは、免疫抑制薬(複数可)に対する抵抗性を付与し、標的細胞の選択的増殖を促進する。
【0009】
一態様では、本開示は、T細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸配列に動作可能に連結されたT細胞及び/またはNK細胞特異的プロモーターを含む核酸ベクターであって、T細胞/NK細胞活性化受容体は、小分子によって活性化することが可能である、核酸ベクターを提供する。一実施形態では、核酸ベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態では、核酸ベクターは、配列番号6~11またはそのフラグメントと少なくとも部分的に同一の配列を含む。
【0010】
別の態様では、本開示は、T細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸配列に動作可能に連結された強力プロモーターを含む核酸ベクターであって、T細胞/NK細胞活性化受容体は、小分子によって活性化することが可能である、核酸ベクターを提供する。一実施形態では、強力プロモーターは、配列番号1~5から選択される。
【0011】
別の態様では、本開示は、T細胞を活性化し、効率的に形質導入することが可能なレンチウイルス粒子を生成するためのパッケージング細胞株であって、レンチウイルスベクターをパッケージングすることが可能な培養細胞を含み、その培養細胞は、T細胞活性化または共刺激分子を発現するように遺伝子改変されている、パッケージング細胞株を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、本開示の核酸ベクターのいずれかなどの核酸ベクターを含むレンチウイルス粒子を提供する。一実施形態では、レンチウイルス粒子は、T細胞活性化または共刺激分子、例えば、抗CD3抗体、CD28リガンド、または41bbリガンドを含む。
【0013】
別の態様では、本開示は、請求項19に記載の核酸ベクターを、T細胞活性化または共刺激分子を発現するように遺伝的改変された培養細胞に形質導入することによって調製された、T細胞を活性化し、効率的に形質導入するためのレンチウイルス粒子を提供する。
【0014】
別の態様では、本開示は、がんに罹患している対象を治療するための方法であって、本開示のレンチウイルス粒子のいずれかを対象に投与することと、小分子(レンチウイルス粒子のT細胞/NK細胞活性化受容体は小分子によって活性化することが可能である)を対象に投与することとを含み、がんが対象において治療される、方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本開示は、腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞の増殖を、それを必要とする対象において行うための方法であって、本開示のレンチウイルス粒子のいずれかを対象に投与することと、小分子(レンチウイルス粒子のT細胞/NK細胞活性化受容体は小分子によって活性化することが可能である)を対象に投与することとを含み、対象において腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞が増殖される、方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本開示は、T細胞、NK細胞、またはT細胞及びNK細胞に特異的なプロモーターを含む核酸であって、その核酸の配列は、配列番号1~4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である、核酸を提供する。
【0017】
本開示の追加の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明から明らかになる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
T細胞を活性化し、効率的に形質導入するためのレンチウイルス粒子であって、小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、プロモーターに動作可能に連結されており、前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、小分子によって活性化することが可能である、前記レンチウイルス粒子。
(項目2)
前記レンチウイルス粒子は、T細胞活性化または共刺激分子を含む表面改変されたレンチウイルス粒子である、項目1に記載のレンチウイルス粒子。
(項目3)
前記T細胞活性化または共刺激分子は、抗CD3抗体、CD28リガンド、及び41bbリガンドのうちの1つ以上を含む、項目2に記載のレンチウイルス粒子。
(項目4)
前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、(i)サイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン、(ii)共刺激受容体シグナル伝達ドメイン、(iii)T細胞受容体サブユニットシグナル伝達ドメイン、(iv)NK細胞受容体サブユニットシグナル伝達ドメイン、及び(v)成長因子受容体シグナル伝達ドメインからなる群から選択されるシグナル伝達ドメインを含む、項目1~3のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目5)
前記シグナル伝達ドメインは、共通サイトカイン受容体ガンマ鎖のサイトカイン受容体シグナル伝達ドメインを含む、項目4に記載のレンチウイルス粒子。
(項目6)
前記シグナル伝達ドメインは、共通サイトカイン受容体ベータ鎖のサイトカイン受容体シグナル伝達ドメインを含む、項目4または項目5に記載のレンチウイルス粒子。
(項目7)
前記シグナル伝達ドメインは、ITAMを含む、項目4~6のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目8)
前記シグナル伝達ドメインは、チロシンがリン酸化された場合にSH2ドメインに結合することが可能な前記チロシンを含む、項目4~7のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目9)
前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、FK506結合タンパク質(FKPB)またはその機能性ホモログを含む、項目1~8のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目10)
前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)タンパク質またはその機能性ホモログを含む、項目1~9のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目11)
前記レンチウイルス粒子は、チェックポイント阻害リガンドをコードする核酸配列をさらに含む、項目1~10のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目12)
前記チェックポイント阻害リガンドは、PD-1/PD-L1チェックポイントを遮断することが可能である、項目11に記載のレンチウイルス粒子。
(項目13)
前記チェックポイント阻害リガンドは、Tim-3チェックポイントを遮断することが可能である、項目11または項目12に記載のレンチウイルス粒子。
(項目14)
免疫抑制薬に対する抵抗性を提供するタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、項目1~13のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目15)
前記免疫抑制薬は、メトトレキサート、ラパマイシン、ラパログ、タクロリムス、及びシクロスポリンからなる群から選択される、項目14に記載のレンチウイルス粒子。
(項目16)
2Aペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、項目1~15のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目17)
wPRE核酸配列をさらに含む、項目1~16のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目18)
TGFベータドミナント・ネガティブ阻害受容体をコードする核酸配列をさらに含む、項目1~17のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目19)
前記プロモーターは、MNDプロモーター、T細胞特異的プロモーター、CD4 T細胞特異的プロモーター、CD8 T細胞特異的プロモーター、NK細胞特異的プロモーター、T細胞及びNK細胞特異的プロモーター、CD4 T細胞及びNK細胞特異的プロモーター、ならびにCD8 T細胞及びNK細胞特異的プロモーターからなる群から選択される、項目1~18のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目20)
前記プロモーターの配列は、配列番号1~4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である、項目1~19のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子。
(項目21)
がんに罹患している対象を治療するための方法であって、
a)項目1~20のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子を前記対象に投与することと、
b)前記対象に小分子を投与することと、を含み、
前記がんが、前記対象において治療される、前記方法。
(項目22)
腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞の増殖を、それを必要とする対象において行うための方法であって、
i)項目1~20のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子を前記対象に投与することと、
b)前記対象に小分子を投与することと、を含み、
前記対象において腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞が増殖される、前記方法。
(項目23)
前記レンチウイルス粒子は、静脈内注射によって投与される、項目21または項目22に記載の方法。
(項目24)
前記レンチウイルス粒子は、腫瘍内注射によって投与される、項目21または項目22に記載の方法。
(項目25)
前記小分子は、静脈内注射によって投与される、項目21~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記小分子は、経口投与される、項目21~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記小分子は、前記T細胞/NK細胞活性化受容体を活性化するのに十分な濃度で投与される、項目21~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記小分子は、ラパマイシンである、項目21~27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
ラパマイシンは、0.1nM、1nM、または10nMを超えるラパマイシンの血清濃度を維持するのに十分な濃度で投与される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記小分子は、ラパログである、項目21~27のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記ラパログは、0.1nM、1nM、または10nMを超える前記ラパログの血清濃度を維持するのに十分な濃度で投与される、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記小分子は、細胞活性化シグナルをもたらす前記T細胞/NK細胞活性化受容体の二量体化を引き起こす、項目21~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
i)前記小分子は、前記レンチウイルス粒子と同時に投与されるか、または
ii)前記小分子は、前記レンチウイルス粒子が投与される約30分前または後、約1時間前または後、約2時間前または後、約4時間前または後、約5時間前または後、または約10時間前または後に投与される、項目21~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記対象に免疫抑制剤を投与することをさらに含む、項目21~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記免疫抑制剤は、タクロリムスである、項目34に記載の方法。
(項目36)
タクロリムスは、0.1nM、1nM、または10nMを超えるタクロリムスの血清濃度を維持するのに十分な濃度で投与される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記免疫抑制剤は、シクロスポリンである、項目34に記載の方法。
(項目38)
シクロスポリンは、0.1nM、1nM、または10nMを超えるシクロスポリンの血清濃度を維持するのに十分な濃度で投与される、項目37に記載の方法。
(項目39)
T細胞、NK細胞、またはT細胞及びNK細胞に特異的なプロモーターを含む核酸であって、前記核酸の配列は、配列番号1~4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である、前記核酸。
(項目40)
T細胞を活性化し、効率的に形質導入することが可能なレンチウイルス粒子を生成するためのパッケージング細胞株であって、レンチウイルスベクターをパッケージングすることが可能な培養細胞を含み、前記培養細胞は、T細胞活性化または共刺激分子を発現するように遺伝子改変されている、前記パッケージング細胞株。
(項目41)
前記T細胞活性化または共刺激分子は、抗CD3抗体、CD28リガンド、及び41bbリガンドからなる群から選択される、項目40に記載のパッケージング細胞株。
(項目42)
前記パッケージング細胞株は、HEK-293T細胞株である、項目40または項目41に記載のパッケージング細胞株。
(項目43)
前記パッケージング細胞株は、MHCクラスIの発現を欠くように遺伝子修飾されている、項目40~42のいずれか1項に記載のパッケージング細胞株。
(項目44)
前記パッケージング細胞株は、MHCクラスIIの発現を欠くように遺伝子修飾されている、項目40~43のいずれかに記載のパッケージング細胞株。
(項目45)
前記パッケージング細胞株は、阻害性受容体リガンドの発現を欠くように遺伝子修飾されている、項目40~44のいずれかに記載のパッケージング細胞株。
(項目46)
前記阻害性受容体リガンドは、PD-L1リガンドまたはTim3リガンドである、項目45に記載のパッケージング細胞株。
(項目47)
T細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸配列に動作可能に連結されたT細胞及び/またはNK細胞特異的プロモーターを含む核酸ベクターであって、前記T細胞及び/またはNK細胞活性化受容体は、小分子によって活性化することが可能である、前記核酸ベクター。
(項目48)
T細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸配列に動作可能に連結された強力プロモーターを含む核酸ベクターであって、前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、小分子によって活性化することが可能である、前記核酸ベクター。
(項目49)
前記プロモーターは、MNDプロモーター、T細胞特異的プロモーター、CD4 T細
胞特異的プロモーター、CD8 T細胞特異的プロモーター、NK細胞特異的プロモーター、T細胞及びNK細胞特異的プロモーター、CD4 T細胞及びNK細胞特異的プロモーター、ならびにCD8 T細胞及びNK細胞特異的プロモーターからなる群から選択される、項目48に記載の核酸ベクター。
(項目50)
前記プロモーターの配列は、配列番号1~4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である、項目47~49のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目51)
前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、サイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン、共刺激受容体シグナル伝達ドメイン、T細胞受容体サブユニットシグナル伝達ドメイン、NK細胞受容体サブユニットシグナル伝達ドメイン、及び成長因子受容体シグナル伝達ドメインからなる群から選択されるシグナル伝達ドメインを含む、項目47~50のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目52)
前記シグナル伝達ドメインは、共通サイトカイン受容体ガンマ鎖のサイトカイン受容体シグナル伝達ドメインを含む、項目51に記載の核酸ベクター。
(項目53)
前記シグナル伝達ドメインは、共通サイトカイン受容体ベータ鎖のサイトカイン受容体シグナル伝達ドメインを含む、項目51または項目52に記載の核酸ベクター。
(項目54)
前記シグナル伝達ドメインは、ITAMを含む、項目51~53のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目55)
前記シグナル伝達ドメインは、チロシンがリン酸化された場合にSH2ドメインに結合することが可能な前記チロシンを含む、項目51~54のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目56)
チェックポイント阻害リガンドをコードする核酸配列をさらに含む、項目47~55のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目57)
前記チェックポイント阻害リガンドは、PD-1/PD-L1チェックポイントを遮断することが可能である、項目56に記載の核酸ベクター。
(項目58)
前記チェックポイント阻害リガンドは、Tim-3チェックポイントを遮断することが可能である、項目56に記載の核酸ベクター。
(項目59)
免疫抑制薬に対する抵抗性を提供するタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、項目47~58のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目60)
前記免疫抑制薬は、メトトレキサート、ラパマイシン、ラパログ、タクロリムス、及びシクロスポリンからなる群から選択される、項目59に記載の核酸ベクター。
(項目61)
FK506結合タンパク質(FKPB)またはその機能性ホモログ、及びFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)タンパク質またはその機能性ホモログのいずれかまたは両方をコードする1つ以上の核酸配列をさらに含む、項目47~60のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目62)
2Aペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、項目47~61のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目63)
wPRE核酸配列をさらに含む、項目47~62のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目64)
TGFベータドミナント・ネガティブ阻害受容体をコードする核酸配列をさらに含む、項目47~62のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目65)
前記核酸ベクターは、レンチウイルスベクターである、項目47~63のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目66)
前記核酸ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、項目47~64のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目67)
前記核酸ベクターは、アデノウイルスベクターである、項目47~64のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目68)
配列番号6~11から選択される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、または99%同一の配列を含む核酸ベクター。
(項目69)
項目67に記載の核酸ベクターでパッケージング細胞株をトランスフェクションすることによって生成されるレンチウイルス粒子。
(項目70)
T細胞活性化または共刺激分子をさらに含む、項目68に記載のレンチウイルス粒子。(項目71)
前記T細胞活性化または共刺激分子は、抗CD3抗体、CD28リガンド、及び41bbリガンドからなる群から選択される、項目69に記載のレンチウイルス粒子。
(項目72)
前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、
(a)(i)配列番号13と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性FKPBドメイン、及び(ii)配列番号14と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性IL2Rbドメインのいずれかまたは両方を含む第1の鎖;及び/または
(b)(i)配列番号16と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性FRBドメイン、及び(ii)配列番号17と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性IL2Rgドメインのいずれかまたは両方を含む第2の鎖
を含む、項目1~20もしくは68~70のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子、項目21~38のいずれか1項に記載の方法、または項目47~67のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
(項目73)
前記T細胞/NK細胞活性化受容体は、
(a)機能性FKPBドメイン及び機能性IL2Rbドメインを含む第1の鎖であって、配列番号12と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する、前記第1の鎖;及び/または
(b)機能性FRBドメイン及び機能性IL2Rgドメインを含む第2の鎖であって、配列番号15と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する、前記第2の鎖
を含む、項目1~20もしくは68~70のいずれか1項に記載のレンチウイルス粒子、項目21~38のいずれか1項に記載の方法、または項目47~67のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】A及びBは、レンチウイルス粒子を示している。Aは、Bに示されたレンチウイルス粒子には存在しない表面発現した抗CD3及びT細胞共刺激分子を含む、表面改変されたレンチウイルス粒子の実施形態の図である。
図2】抗CD3 scFV、CD86、及びCD137Lをコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたHEK-293T細胞に由来するHATSE-293パッケージング細胞株を生成するために使用された実験プロトコルを示している。CD86CD137Lを蛍光活性化セルソーティングによって単離し、増殖させ、長期保存及び使用のために凍結した。
図3A】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期された発現なし)についての親HEK-293細胞株の分析を示している。染色されていない(モック)サンプルでは検出可能な蛍光標識は観察されなかった(図3A)。抗CD46抗体染色によってCD46の高度な発現が検出され(図3A~B;PE抗ヒトCD46)、CD86(図3E;パシフィックブルー抗ヒトCD86)またはCD137L(図3D;PE抗ヒト4-1BBリガンド(CD137L))のいずれの発現も、それぞれCD86及びCD137Lのための特異的染色によって検出されなかった。
図3B】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期された発現なし)についての親HEK-293細胞株の分析を示している。抗CD46抗体染色によってCD46の高度な発現が検出され(図3A~B;PE抗ヒトCD46)、CD86(図3E;パシフィックブルー抗ヒトCD86)またはCD137L(図3D;PE抗ヒト4-1BBリガンド(CD137L))のいずれの発現も、それぞれCD86及びCD137Lのための特異的染色によって検出されなかった。
図3C】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期された発現なし)についての親HEK-293細胞株の分析を示している。
図3D】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期された発現なし)についての親HEK-293細胞株の分析を示している。抗CD46抗体染色によってCD46の高度な発現が検出され(図3A~B;PE抗ヒトCD46)、CD86(図3E;パシフィックブルー抗ヒトCD86)またはCD137L(図3D;PE抗ヒト4-1BBリガンド(CD137L))のいずれの発現も、それぞれCD86及びCD137Lのための特異的染色によって検出されなかった。
図3E】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期された発現なし)についての親HEK-293細胞株の分析を示している。抗CD46抗体染色によってCD46の高度な発現が検出され(図3A~B;PE抗ヒトCD46)、CD86(図3E;パシフィックブルー抗ヒトCD86)またはCD137L(図3D;PE抗ヒト4-1BBリガンド(CD137L))のいずれの発現も、それぞれCD86及びCD137Lのための特異的染色によって検出されなかった。
図3F】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期されたCD86/CD137L発現)についてのHATSE-293細胞株の分析を示している。図3F及び図3Gは、染色されていない(モック)サンプルにおいて検出可能な蛍光標識はないことを実証する。
図3G】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期されたCD86/CD137L発現)についてのHATSE-293細胞株の分析を示している。図3F及び図3Gは、染色されていない(モック)サンプルにおいて検出可能な蛍光標識はないことを実証する。
図3H】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期されたCD86/CD137L発現)についてのHATSE-293細胞株の分析を示している。図3H及び図3Iは、抗CD46抗体染色(PE抗ヒトCD46)によって検出されたCD46の均一な高発現を実証する。
図3I】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期されたCD86/CD137L発現)についてのHATSE-293細胞株の分析を示している。図3H及び図3Iは、抗CD46抗体染色(PE抗ヒトCD46)によって検出されたCD46の均一な高発現を実証する。
図3J】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期されたCD86/CD137L発現)についてのHATSE-293細胞株の分析を示している。図3J及び図3Kは、CD86またはCD137Lのいずれかの低量及び高量を発現する2つの集団が、抗CD86(図3J)及び抗CD137L(図3K)抗体をそれぞれ使用して検出されることを実証する。
図3K】CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86+/CD137L発現(HATSE-293細胞株でのみ予期された発現)についての親293細胞及びHATSE-293パッケージング細胞株のFACS分析を示している。CD46(両方の細胞株で予期された構成的発現)、及びCD86/CD137L発現(予期されたCD86/CD137L発現)についてのHATSE-293細胞株の分析を示している。図3J及び図3Kは、CD86またはCD137Lのいずれかの低量及び高量を発現する2つの集団が、抗CD86(図3J)及び抗CD137L(図3K)抗体をそれぞれ使用して検出されることを実証する。
図4】対照レンチウイルス粒子または以下の定義及び実施例に記載のHATSE細胞株から生成されたレンチウイルス粒子によって形質導入されたT細胞の成長曲線を示している。陽性対照として、T細胞を、刺激ビーズの存在下で対照レンチウイルス粒子で形質導入した。「形質導入後の日数」は、細胞が粒子に曝露された日(0日目)から経過した日数を指す。
図5】293T対照粒子[293T無刺激];293T対照粒子及び刺激ビーズ[293T刺激];1回ソーティングされたHATSE粒子[1回ソーティングされたHATSE(無刺激)];または2回ソーティングされたHATSE粒子[2回ソーティングされたHATSE(無刺激)]に曝露された細胞の蛍光顕微鏡写真を示している。
図6】vivo-TIL 104 LNGFR(配列番号6)についてのベクターマップを示している。
図7】vivo-TIL 105 TCP1(配列番号7)についてのベクターマップを示している。
図8】vivo-TIL 106 TCP2(配列番号8)についてのベクターマップを示している。
図9】vivo-TIL 107 TCP3(配列番号9)についてのベクターマップを示している。
図10】vivo-TIL 108 TCP4(配列番号10)についてのベクターマップを示している。
図11】vivo-TIL 109 hPerfP(配列番号11)についてのベクターマップを示している。
図12A】例示的な小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体(RACCRと称される)についての結果を示している。例示されたRACCR分子の設計を示している。GFPを発現する対照レンチウイルス粒子で形質導入された細胞を示している。
図12B】例示的な小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体(RACCRと称される)についての結果を示している。mCherryを発現する表面改変された粒子で形質導入された細胞を示している。
図12C】例示的な小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体(RACCRと称される)についての結果を示している。RACCRを発現する表面改変された粒子で形質導入された細胞を示している。
図12D】例示的な小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体(RACCRと称される)についての結果を示している。
図12E】例示的な小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体(RACCRと称される)についての結果を示している。IL-2またはラパマイシンの存在下で、RACCRを発現するSE-LVPを含む様々な表面改変されたレンチウイルス粒子(SE-LVP)で形質導入されたT細胞のT細胞増殖のグラフを示している。
図12F】例示的な小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体(RACCRと称される)についての結果を示している。RACCRによって駆動されるT細胞の増殖が、ラパマイシンで制御可能であることを確認するデータを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、ACTの代替手段として、TIL、または他の免疫細胞のin vivo形質導入が、ex vivoではなくin vivoでの細胞の増殖を促進し得ることに気づいた。さらに、本発明者は、TIL、または他の免疫細胞のin vivoでの形質導入により、免疫細胞のex vivoでの増殖の欠点を伴わずにがんまたは他の疾患病態の治療が可能になることに気づいた。
【0020】
よって、本開示は、in vivoでTILまたは他の免疫細胞の集団を増殖させる手段を提供する。特に、本開示は、in vivoでTILまたは他の免疫細胞の所望の集団を選択的に増殖させることが可能な治療剤を提供する。本開示は、疾患病態の治療のためのin vivoでのTILまたは他の免疫細胞の増殖のためのウイルスベクター及び関連する使用方法を提供する。
【0021】
本開示は、T細胞/NK細胞活性化受容体(及び任意に他のエフェクタータンパク質)を発現するように設計されたレンチウイルスベクター及びパッケージング細胞株が、T細胞のin vivoでの増殖に有用であるという発見に部分的に基づいている。本開示のレンチウイルスベクター及びパッケージング細胞株は、例えば、レンチウイルスベクターがパッケージング細胞株を使用してレンチウイルス粒子にパッケージングされ、得られたレンチウイルス粒子が対象の体内に、例えば、固形腫瘍に罹患している患者に送達される場合、in vivoでの腫瘍浸潤リンパ球の形質導入及び薬物媒介増殖のために適合され得る。開示されるレンチウイルスベクター及び粒子は、自己または同種のT細胞または他の免疫細胞のin vitroでの形質導入によるACTに使用され得る。いくつかの場合では、本開示のレンチウイルスベクター及び粒子は、in vivoでの使用のために構成される。レンチウイルスベクターは、in vitroまたはin vivoで形質導入された標的細胞に細胞分裂シグナルを提供することが可能なT細胞/NK細胞活性化受容体の発現を提供するように構成されているので、レンチウイルス粒子の腫瘍内注射は、腫瘍浸潤リンパ球のin vivoでの増殖をもたらす。
【0022】
1.1 核酸ベクター
本明細書で使用される場合、用語「核酸ベクター」は、対象となる核酸を運ぶ、保持する、または発現するように機能する任意の核酸を意味することが意図されている。核酸ベクターは、発現、パッケージング、シュードタイプ化、または形質導入などの特殊な機能を有し得る。核酸ベクターはまた、クローニングまたはシャトルベクターとしての使用のために適合されている場合、操作機能を有し得る。ベクターの構造は、作製することが可能であり、かつ特定の使用のために望ましい任意の望ましい形態を含み得る。そのような形態には、例えば、プラスミド及びファージミドなどの円形形態、及び線状または分枝状形態が含まれる。核酸ベクターは、例えば、DNAまたはRNAから構成され、部分的にまたは完全に、ヌクレオチド誘導体、アナログ及び模倣物を含有し得る。そのような核酸ベクターは、天然源から得られ得るか、組換えで生成され得るか、または化学的に合成され得る。
【0023】
本開示のベクター系の非限定的な例には、レトロウイルス、レンチウイルス、泡沫状ウイルス、及びスリーピングビューティートランスポゾンが含まれる。
【0024】
1.1.1 レンチウイルスベクター
レンチウイルスは、複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、及びenvに加えて、制御または構造的機能を有する他の遺伝子を含有する。より高い複雑性により、ウイルスは、潜伏感染の過程のように、そのライフサイクルを調節することが可能となる。レンチウイルスの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)及びシミアン免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。レンチウイルスベクターは、HIVの病原性遺伝子を複合的に減衰させることによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpu及びnefが欠失することにより、生物学的に安全なベクターとなっている。
【0025】
レンチウイルスベクターは、遺伝子療法に多大な利点を提供する。非統合型に改変されていない限り、レンチウイルスベクターは、標的細胞の染色体に安定して統合し、送達された導入遺伝子の長期発現を可能する。さらに、それらはウイルス遺伝子を移行させないので、細胞傷害性T細胞によって破壊され得る形質導入された細胞を生成するという問題を回避する。さらに、それらは、ほとんどの想定される臨床適用にとって十分な比較的大きなクローニング能力を有する。また、レンチウイルスは、他のレトロウイルスとは対照的に、非分裂細胞を形質導入することが可能である。これは、造血系、脳、肝臓、肺及び筋肉などの組織のための遺伝子療法という意味で非常に重要である。例えば、HIV-1由来のベクターは、in vivo及びex vivoでの効率的な送達、導入遺伝子の細胞、例えば、ニューロン、肝細胞、及び筋細胞への統合及び安定な発現を可能にする(Blomer et al.,1997;Kafri et al.,1997;Naldini et al.,1996;Naldini et al.,1998)。
【0026】
レンチウイルスベクターは、当該技術分野で知られており、Naldini et al.(1996)Science272:263-7;Zufferey et al.(1998)J.Virol.72:9873-9880;Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463-8471;米国特許第6,013,516号;及び米国特許第5,994,136号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。一般に、これらのベクターは、ベクターを含有する細胞の選択のための、レンチウイルス粒子に外来核酸を組み込むための、及び標的細胞への核酸の移行のための必須配列を保有するように構成される。
【0027】
一般的に使用されるレンチウイルスベクター系は、いわゆる第三世代系である。第三世代のレンチウイルスベクター系は、4つのプラスミドを含む。「トランスファープラスミド」は、レンチウイルスベクター系によって標的細胞に送達されるポリヌクレオチド配列をコードする。トランスファープラスミドは一般に、トランスファープラスミド配列の宿主ゲノムへの統合を促進する長い末端リピート(LTR)配列の隣に対象となる1つ以上の導入遺伝子配列を有する。安全上の理由から、トランスファープラスミドは一般に、生じるベクターの複製が無効になるように設計される。例えば、トランスファープラスミドは、宿主細胞内での感染性粒子の生成に必要な遺伝子要素を欠いている。また、トランスファープラスミドは、3’LTRを欠失させて、ウイルスを「自己不活性化」(SIN)させるように設計され得る。Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463-71;Miyoshi et al.(1998)J.Virol.72:8150-57を参照されたい。
【0028】
第三世代系はまた一般に、2つの「パッケージングプラスミド」及び「エンベローププラスミド」を含む。「エンベローププラスミド」は一般に、プロモーターに動作可能に連結されたEnv遺伝子をコードする。例示的な第三世代系において、Env遺伝子はVSV-Gであり、プロモーターはCMVプロモーターである。第三世代系は、2つのパッケージングプラスミドを使用し、一方はgag及びpolをコードし、他方は、さらなる安全的特徴、すなわち、いわゆる第二世代系の単一パッケージングプラスミドに対する改善としてrevをコードする。第三世代系は、より安全ではあるものの、使用するのがより煩雑であり、追加のプラスミドの追加により、より低いウイルス力価をもたらす。例示的なパッケージングプラスミドには、限定されないが、pMD2.G、pRSV-rev、pMDLG-pRRE、及びpRRL-GOIが含まれる。
【0029】
レンチウイルスベクター系は、「パッケージング細胞株」の使用に依存する。一般に、パッケージング細胞株は、トランスファープラスミド、パッケージングプラスミド(複数可)、及びエンベローププラスミド(複数可)が細胞内に導入された場合に細胞が感染性レンチウイルス粒子を生成することが可能な細胞株である。トランスフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、プラスミドを細胞内に導入する様々な方法が使用され得る。いくつかの場合では、パッケージング細胞株は、レンチウイルスベクター系をレンチウイルス粒子内に高効率でパッケージングするために適合される。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「レンチウイルスベクター」は、ゲノムパッケージングに必要とされるレンチウイルスシス核酸配列をコードする核酸を意味することが意図される。レンチウイルスベクターはまた、例えば、逆転写、プロウイルス統合またはゲノム転写に必要とされるシス配列を含む、遺伝子送達に有益な他のシス核酸配列をコードし得る。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスベクターの形質導入機能を実施する。このように、ベクターゲノムの正確な構成は、標的細胞に導入することが望まれる遺伝性物質に依存する。それ故、ベクターゲノムは、例えば、パッケージング、逆転写、統合、または転写に必要とされるもの以外の追加のポリペプチドまたは機能をコードし得る。そのような機能は一般に、対象となる核酸の発現に必要とされるシスエレメントをコードすることを含む。レンチウイルスベクターゲノムがパッケージング細胞株によってレンチウイルス粒子にパッケージングされ、標的細胞に導入され得る限り、レンチウイルスのシス配列またはエレメントは、レンチウイルスゲノムまたは他のウイルスもしくはベクターゲノムに由来し得る。
【0031】
レンチウイルスベクターの非限定的な例には、配列番号6~11が含まれ、これらは図6~11に示されている。
【0032】
生成されるレンチウイルス粒子は一般に、RNAゲノム(トランスファープラスミドに由来する)、Envタンパク質が埋め込まれた脂質多層エンベロープ、ならびにインテグラーゼ、プロテアーゼ、及びマトリックスタンパク質を含む他の付随タンパク質を含む(図1Bを参照されたい)。本明細書で使用される場合、用語「レンチウイルス粒子」は、エンベロープを含み、レンチウイルスの1つ以上の特性を有し、標的宿主細胞に侵入することが可能なウイルス粒子を意味することが意図されている。そのような特性には、例えば、非分裂宿主細胞に感染すること、非分裂宿主細胞を形質導入すること、宿主免疫細胞に感染するかもしくはそれを形質導入すること、gag構造ポリペプチドp7、p24、及びp17のうちの1つ以上を含むレンチウイルスビリオンを含有すること、envがコードする糖タンパク質p41、p120、及びp160のうちの1つ以上を含むレンチウイルスエンベロープを含有すること、複製、プロウイルス統合もしくは転写において機能する1つ以上のレンチウイルス性シス作用配列を含むゲノムを含有すること、レンチウイルスプロテアーゼ、逆転写酵素もしくはインテグラーゼをコードするゲノムを含有すること、またはTatもしくはRevなどの調節活性をコードするゲノムを含有することが含まれる。トランスファープラスミドは、米国特許第8,093,042に記載されているように、cPPT配列を含み得る。
【0033】
系の効率は、ベクター工学において重要な関心事である。レンチウイルスベクター系の効率は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)などによるベクターコピー数(VCN)またはベクターゲノム(vg)の測定、またはミリリットル当たりの感染単位(IU/mL)でのウイルスの力価の測定を含む、当該技術分野で知られている様々な方法で評価され得る。例えば、力価は、Humbert et al. Development of Third-generation Cocal Envelope Producer Cell Lines for Robust Lentiviral Gene Transfer into Hematopoietic Stem Cells
and T-cells.Molecular Therapy24:1237-1246(2016)に記載されているように、培養された腫瘍細胞株HT1080で実施される機能性アッセイを使用して評価され得る。継続的に分裂している培養細胞株で力価が評価される場合、刺激は必要とされないので、測定される力価は、レンチウイルス粒子の表面改変によって影響を受けない。レンチウイルスベクター系の効率を評価するための他の方法は、Gaererts et al. Comparison of lentiviral vector titration methods.BMC Biotechnol. 6:34(2006)で提供されている。
【0034】
レンチウイルスベクター系が限られた効率を有すること、及びレンチウイルスベクター系を改変しようとする試みがしばしば効率の低下をもたらすことは広く知られている。本発明者は、驚くべきことに、レンチウイルスベクター系(例えば、第三世代系)のエンベローププラスミドが、融合糖タンパク質またはその機能性バリアントに加えて複数のポリペプチドをコードするように修飾され得ることを発見した。
【0035】
いくつかの場合では、本開示のベクター及びパッケージング細胞株は、少なくとも約1×10IU/mL、少なくとも約2×10IU/mL、少なくとも約3×10IU/mL、少なくとも約4×10IU/mL、少なくとも約5×10IU/mL、少なくとも約6×10IU/mL、少なくとも約7×10IU/mL、少なくとも約8×10IU/mL、少なくとも約9×10IU/mL、または少なくとも約1×10IU/mLの力価で表面改変されたレンチウイルス粒子を生成することが可能である。いくつかの場合では、本開示の多シストロン性ベクターは、少なくとも約1×10IU/mL、少なくとも約2×10IU/mL、少なくとも約3×10IU/mL、少なくとも約4×10IU/mL、少なくとも約5×10IU/mL、少なくとも約6×10IU/mL、少なくとも約7×10IU/mL、少なくとも約8×10IU/mL、少なくとも約9×10IU/mL、または少なくとも約1×10IU/mLの力価で表面改変されたレンチウイルス粒子を生成することが可能である。
【0036】
1.2 T細胞/NK細胞活性化受容体
本開示は、T細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸ベクター、レンチウイルスベクター、及びAAVベクターを企図している。本明細書で使用される場合、用語「T細胞/NK細胞活性化受容体」は、T細胞/NK細胞活性化受容体が細胞分裂シグナルを形質導入された細胞に提供するように、形質導入された細胞の細胞表面上で発現するように構成された1つ以上の膜貫通タンパク質を指す。T細胞/NK細胞活性化受容体は、標的細胞がほとんどの場合、T細胞またはNK細胞であるため使用される。本方法は、別の細胞型で活性を保持する活性化受容体の使用によって他の細胞型での使用に適合され得る。本明細書で有用なT細胞/NK細胞活性化受容体は、サイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン、共刺激受容体シグナル伝達ドメイン、T細胞受容体サブユニットシグナル伝達ドメイン、NK細胞受容体サブユニットシグナル伝達ドメイン、成長因子受容体シグナル伝達ドメインなどのシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0037】
1.2.1 T細胞/NK細胞活性化受容体の非限定的な例
使用されるシグナル伝達ドメインは、共通サイトカイン受容体ガンマ鎖のものまたは共通サイトカイン受容体ベータ鎖のものであり得る。シグナル伝達ドメインは、ITAM、またはチロシンがリン酸化された場合にSH2ドメインに結合することが可能なチロシンを含み得る。いくつかの場合では、シグナル伝達は、活性化受容体のホモまたはヘテロ二量体化によって引き起こされ得る。活性化受容体の細胞内ドメイン上の1つ以上のチロシン残基のリン酸化は、いくつかの場合では、SH2ドメインとの二量体化をもたらし、それによって細胞分裂シグナル伝達カスケードを開始させ得る。いくつかの場合では、本開示のシグナル伝達ドメインは、チロシン残基上でリン酸化され、その後、別の分子上のSH2ドメインに結合することが可能であり得る。
【0038】
いくつかの場合では、T細胞/NK細胞活性化受容体は、天然に存在する活性化受容体である。代替的に、当該技術分野で知られている異なる活性化受容体から得られる1つ以上の遺伝子要素の複合体。本発明において有用な改変されたT細胞/NK細胞活性化受容体の例には、限定されないが、Hunter et al.Chimeric γc cytokine receptors confer cytokine independent engraftment of human T lymphocytes. Mol Immunol. 2013 Nov;56(1-2):1-11.;Shum et al.Constitutive Signaling from an Engineered IL7 Receptor Promotes Durable
Tumor Elimination by Tumor-Redirected T
Cells. Cancer Discov. 2017 Nov;7(11):1238-1247に記載されているように、構成的活性化IL2受容体またはIL7受容体が含まれる。
【0039】
1.2.2 小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体
いくつかの場合では、体内で形質導入された細胞の増殖を制御するための手段を提供することが有利であり得る。いくつかの場合では、これは、細胞の再度の過剰な増殖をガードするためのフェイルセーフとして機能し得る。他の場合では、治療目的のために形質導入された細胞の増殖を制御し得る。よって、本開示は、小分子の使用によって制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体を提供する。レンチウイルスベクターがそのような制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体をコードする場合、小分子の投与により活性化受容体が活性化して細胞分裂シグナルを形質導入された細胞に提供することが可能となる一方で、小分子の投与の中止は、活性化受容体が、細胞分裂シグナルを形質導入された細胞に提供することを妨げる。このようにして、レンチウイルス粒子を対象に投与することによって生成されたin vivoTILは、小分子が対象に存在する間のみ増殖する。小分子は、レンチウイルス粒子の投与と同時に、または投与後の期間中に、全身的または局所的に提供され得る。TILの増殖は、血液サンプル、生検、または医用画像化によりモニターされ得、過剰な増殖が観察された場合に小分子は取りやめられ得る。いくつかの場合では、治療プロトコルを最適化するために、小分子のパルスまたは間欠投与が使用され得る。いくつかの場合では、小分子は、TIL増殖を調整するために漸増される。いくつかの場合では、小分子は、腫瘍の寛解または再発に応答して、または他の治療上の理由のために、取りやめられ得るか、または投与され得る。
【0040】
いくつかの場合では、T細胞/NK細胞活性化受容体は、小分子の存在下で誘導的に二量体化するか、または小分子の非存在下で誘導的に二量体化し、小分子を除去、分解、または希釈すると単量体状態に戻るタンパク質サブユニットで二量体T細胞/NK細胞活性化受容体の細胞外ドメインを置換することによって、小分子によって制御可能となるように構成され得る。ヘテロ二量体T細胞/NK細胞活性化受容体の場合、T細胞/NK細胞活性化受容体は、T細胞/NK細胞活性化受容体の一方のユニットの細胞外ドメインが、誘導的に二量体化するタンパク質サブユニットの一方の単量体を含み、かつT細胞/NK細胞活性化受容体の他方のユニットの細胞外ドメインが、誘導的に二量体化するタンパク質サブユニットの他方の単量体を含むように、修飾され得ることが企図される。ヘテロ二量体T細胞/NK細胞活性化受容体は、誘導的に二量体化するホモ二量体タンパク質サブユニットまたは誘導的に二量体化するヘテロ二量体タンパク質サブユニットのいずれかを使用してこのように修飾され得る。他の場合では、ホモ二量体T細胞/NK細胞活性化受容体は、誘導的に二量体化するホモ二量体タンパク質サブユニットまたは誘導的に二量体化するヘテロ二量体タンパク質サブユニットのいずれかを使用してこのように修飾され得る。小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体は、ホモ二量体である場合は単一の導入遺伝子によってコードされ、ヘテロ二量体である場合には2つの導入遺伝子によってコードされ得る。
【0041】
誘導的に二量体化するタンパク質サブユニットの例には、限定されないが、FK506結合タンパク質(FKBP)及びFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインが含まれる。FK506結合タンパク質は、タクロリムス(FK506)の存在下で二量体化する。FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインは、ラパマイシンの存在下で二量体化する。よって、本開示による小分子は、タクロリムス、ラパマイシン、またはラパログ(ラパマイシンアナログ)のいずれかであり得る。小分子で制御可能な受容体が制御され得る小分子のさらなる例には、限定されないが、ラパマイシン、ラパログ、クーママイシン、ジベレリン、アブシジン酸(ABA)、メトトレキサート、シクロスポリンA、FKCsA、トリメトプリム(Tmp)-FKBPの合成リガンド(SLF)、またはそれらの任意の誘導体が含まれる。本開示の受容体における融合タンパク質として好適な例示的なドメインの対には、限定されないが、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌性DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、もしくはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択される対が含まれる。
【0042】
いくつかの場合では、小分子で制御可能な受容体は、1つ以上の小分子結合ドメインを含む細胞外ドメインを含む。細胞外ドメイン(複数可)への小分子の結合は、受容体分子の分子内相互作用(例えば、ホモ二量体化またはヘテロ二量体化)を引き起こし、これにより細胞内ドメイン(複数可)からの下流シグナルを活性化する。小分子で制御可能な受容体の細胞内ドメイン(複数可)は、CD28、OX-40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rべータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、IL-21Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1 ld、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1 la、LFA-1、ITGAM、CD1 lb、ITGAX、CD1 lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンド、CD27、CD28、ICOS、4-1BB、CD40、RANK/TRANCE-R、OX40、TGFbR1、TGFbRII、myd88、CD40及び任意の他のTNF受容体スーパーファミリーメンバー、ならびにそれらの組み合わせのドメインまたはフラグメントから選択される1つ以上のドメインを含み得る。
【0043】
FKBPまたはFRBなどの対象となるタンパク質の「ホモログ」には、そのタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約70%、80%、90%、95%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるタンパク質が含まれる。ホモログはまた、ヌクレオチド配列と少なくとも約70%、80%、90%、95%、98%または99%の同一性を有する核酸によってコードされるタンパク質であり得る。
【0044】
対象となるタンパク質の「機能性ホモログ」は、タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有するタンパク質のホモログを指す。例えば、FKPBの機能性ホモログは、ラパマイシン(または関連するラパログ)の存在下でFRBとヘテロ二量体化するか、またはAP1903などの分子の存在下でホモ二量体化するFKPBのホモログを指し、FRBの機能性ホモログは、ラパマイシン(または関連するラパログ)の存在下でFKPBとヘテロ二量体化するFRBのホモログを指す。
【0045】
いくつかの実施形態では、T細胞/NK細胞活性化受容体は、(a)(i)配列番号13と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性FKPBドメイン、及び(ii)配列番号14と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性IL2Rbドメインのいずれかまたは両方を含む第1の鎖;及び/または(b)(i)配列番号16と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性FRBドメイン、及び(ii)配列番号17と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する機能性IL2Rgドメインのいずれかまたは両方を含む第2の鎖を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、T細胞/NK細胞活性化受容体は、(a)機能性FKPBドメイン及び機能性IL2Rbドメインを含む第1の鎖であって、配列番号12と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する、第1の鎖;及び/または(b)機能性FRBドメイン及び機能性IL2Rgドメインを含む第2の鎖であって、配列番号15と少なくとも95%、99%、または100%の配列同一性を共有する、第2の鎖を含む。
【0047】
1.2.3 キメラ抗原受容体
いくつかの場合では、形質導入された細胞を特定の細胞または組織に標的化するための手段を提供することが有利であり得る。いくつかの場合では、レンチウイルスベクターは、(他の遺伝子の代わりに、またはそれに加えて)キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含む。当該技術分野で知られている様々なCARが採用され得る。代替的に、T細胞受容体(TCR)融合物が使用され得る。ベクターがCARをコードする場合、CARは、CD28、OX-40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rべータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、IL-21Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1 ld、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1 la、LFA-1、ITGAM、CD1 lb、ITGAX、CD1 lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンド、CD27、CD28、ICOS、4-1BB、CD40、RANK/TRANCE-R、OX40、TGFbR1、TGFbRII、myd88、まだ列挙されていない他のTNF受容体スーパーファミリーメンバー、ならびにそれらの組み合わせのドメインまたはフラグメントから選択される1つ以上のドメインを含み得る。
1.2.4 小分子で制御可能なキメラ抗原受容体
【0048】
いくつかの場合では、形質導入された細胞の標的化を制御するための手段を提供することが有利であり得る。いくつかの場合では、これは、細胞の再度の過剰な活性をガードするためのフェイルセーフとして機能し得る。他の場合では、治療目的のために形質導入された細胞の活性を制御し得る。よって、本開示は、CAR、または同様の標的化受容体、例えば、小分子の使用によって制御可能なTCR融合物を提供する。レンチウイルスベクターがそのような制御可能な標的化受容体をコードする場合、小分子の投与により標的化受容体が活性化して形質導入された細胞を標的細胞に標的化することが可能となる一方で、小分子の投与の中止は、その受容体が、形質導入された細胞を標的細胞に標的化することを妨げる。このようにして、レンチウイルス粒子を対象に投与することによって生成されたin vivo TILは、小分子が対象に存在する間のみ活性化する。小分子は、レンチウイルス粒子の投与と同時に、または投与後の期間中に、全身的または局所的に提供され得る。TILの活性は、血液サンプル、生検、または医用画像化によりモニターされ得、過剰な活性が観察された場合に小分子は取りやめられ得る。いくつかの場合では、治療プロトコルを最適化するために、小分子のパルスまたは間欠投与が使用され得る。いくつかの場合では、小分子は、TIL活性を調整するために漸増される。いくつかの場合では、小分子は、腫瘍の寛解または再発に応答して、または他の治療上の理由のために、取りやめられ得るか、または投与され得る。
【0049】
いくつかの場合では、標的化受容体(例えば、CAR)は、小分子の存在下で誘導的に二量体化するか、または小分子の非存在下で誘導的に二量体化し、小分子を除去、分解、または希釈すると単量体状態に戻るタンパク質サブユニットへの融合によって、小分子によって制御可能となるように構成され得る。ヘテロ二量体標的化受容体の場合、T細胞/NK細胞活性化受容体は、標的化受容体の一方のユニットの細胞外ドメインが、誘導的に二量体化するタンパク質サブユニットの一方の単量体を含み、かつ標的化受容体の他方のユニットの細胞外ドメインが、誘導的に二量体化するタンパク質サブユニットの他方の単量体を含むように、修飾され得ることが企図される。ヘテロ二量体標的化受容体は、誘導的に二量体化するホモ二量体タンパク質サブユニットまたは誘導的に二量体化するヘテロ二量体タンパク質サブユニットのいずれかを使用してこのように修飾され得る。他の場合では、ホモ二量体標的化受容体は、誘導的に二量体化するホモ二量体タンパク質サブユニットまたは誘導的に二量体化するヘテロ二量体タンパク質サブユニットのいずれかを使用してこのように修飾され得る。小分子で制御可能な標的化受容体は、ホモ二量体である場合は単一の導入遺伝子によってコードされ、ヘテロ二量体である場合には2つの導入遺伝子によってコードされ得る。
【0050】
誘導的に二量体化するタンパク質サブユニットの例には、限定されないが、FK506結合タンパク質(FKBP)及びFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインが含まれる。FK506結合タンパク質は、タクロリムス(FK506)の存在下で二量体化する。FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインは、ラパマイシンの存在下で二量体化する。よって、本開示による小分子は、タクロリムス、ラパマイシン、またはラパログ(ラパマイシンアナログ)のいずれかであり得る。小分子で制御可能な受容体が制御され得る小分子のさらなる例には、限定されないが、ラパマイシン、ラパログ、クーママイシン、ジベレリン、アブシジン酸(ABA)、メトトレキサート、シクロスポリンA、FKCsA、トリメトプリム(Tmp)-FKBPの合成リガンド(SLF)、またはそれらの任意の誘導体が含まれる。本開示の受容体における融合タンパク質として好適な例示的なドメインの対には、限定されないが、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌性DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、もしくはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択される対が含まれる。
【0051】
いくつかの場合では、小分子で制御可能な標的化受容体は、1つ以上の小分子結合ドメインを含む細胞外ドメインを含む。細胞外ドメイン(複数可)への小分子の結合は、受容体分子の分子内相互作用(例えば、ホモ二量体化またはヘテロ二量体化)を引き起こし、これにより標的細胞への結合及び/または細胞内ドメイン(複数可)からの下流シグナルを活性化する。小分子で制御可能な受容体の細胞内ドメイン(複数可)は、CD28、OX-40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rべータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、IL-21Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1 ld、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1
la、LFA-1、ITGAM、CD1 lb、ITGAX、CD1 lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンド、CD27、CD28、ICOS、4-1BB、CD40、RANK/TRANCE-R、OX40、TGFbR1、TGFbRII、myd88、CD40及び任意の他のTNF受容体スーパーファミリーメンバー、ならびにそれらの組み合わせのドメインまたはフラグメントから選択される1つ以上のドメインを含み得る。さらなる例示的な制御可能なCARは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,196,444号によって提供される。
【0052】
いくつかの実施形態では、誘導的に二量体化する2つのタンパク質サブユニットはそれぞれ、シグナル伝達ドメイン(複数可)を含む膜貫通タンパク質及び結合因子(例えば、一本鎖可変フラグメント、scFv)に融合される。結合因子は、対象となる標的に特異的に結合することが可能である。小分子で誘導される二量体化は、膜貫通タンパク質の膜貫通領域を介して二量体化タンパク質サブユニットにより結合因子から細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)まで及ぶ二量体ユニットを再構成する。いくつかの実施形態では、2つの膜貫通タンパク質が採用され、1つまたは2つの小分子に応答して、互いに及び結合因子融合タンパク質に誘導的に二量体化する。いくつかの実施形態では、小分子で制御可能なCARは、シグナル伝達ドメイン(複数可)を含む膜貫通タンパク質にそれぞれ個々に二量体化する2つ以上の結合因子融合タンパク質を含む。
【0053】
1.4 プロモーター及び遺伝子制御要素
本開示は、T細胞、NK細胞、またはT細胞及びNK細胞に特異的なプロモーター及び/またはエンハンサーを含むレンチウイルスベクターをさらに企図している。本開示は、T細胞及び/またはNK細胞特異的プロモーターの核酸配列(配列番号1~4)を提供する。これらは、一般にレンチウイルスベクターによってコードされる遺伝子にプロモーター配列5’を挿入することによってT細胞/NK細胞活性化受容体に動作可能に連結され得る。使用されるプロモーターは、配列番号1~4に示される配列と同一であり得るか、またはプロモーターがT及び/またはNK細胞においてプロモーター活性を保持する限り、配列番号1~4に示される配列と80%、85%、90%、95%、または99%同一であり得る。
【0054】
いくつかの場合では、他のプロモーターが、T細胞/NK細胞活性化受容体の発現を制御するために使用され得る。本開示で有用なプロモーターの例には、限定されないが、MNDプロモーター、T細胞特異的プロモーター、CD4 T細胞特異的プロモーター、CD8 T細胞特異的プロモーター、NK細胞特異的プロモーター、T細胞及びNK細胞特異的プロモーター、CD4 T細胞及びNK細胞特異的プロモーター、ならびにCD8 T細胞及びNK細胞特異的プロモーターが含まれる。
【0055】
いくつかの場合では、「強力」プロモーターが使用される。プロモーターの強さは、それが機能する細胞の特質によって部分的に決定されることが理解される。いくつかの場合では、本開示の強力プロモーターは、TILなどの標的細胞においてそれが動作可能に連結されている遺伝子要素の高レベルの発現をもたらす。強力プロモーターには、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)及びマウス幹細胞ウイルス(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、CMVエンハンサー及びニワトリベータ-アクチンプロモーター及びウサギベータ-グロビン遺伝子の一部から構成されるプロモーター配列(CAG)、SV40プロモーター及びCD43プロモーターの一部から構成されるプロモーター配列(SV40/CD43)、ならびに骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーを有する修飾MoMuLV LTRのU3領域を含有する合成プロモーター(MND)が含まれる。本開示の組成物及び方法で有用な例示的な強力プロモーターは、Jones et al.Lentiviral vector design for optimal T cell receptor gene expression in the
transduction of peripheral blood lymphocytes and tumor-infiltrating lymphocytes. Hum Gene Ther. 2009 Jun;20(6):630-40によって提供される。
【0056】
いくつかの場合では、強力プロモーターは、合成強力プロモーターであり得る。例示的な合成強力プロモーターは、Schlabach et al.(2010)Proc Natl Acad Sci USA.10:2538-2543によって提供される。いくつかの場合では、他のプロモーターが使用される。いくつかの場合では、パッケージング細胞株において活性な任意のプロモーターが使用される。いくつかの場合では、誘導性プロモーター、例えば、薬物誘導性プロモーターが使用される。
【0057】
いくつかの場合では、本開示のベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(wPRE)またはwPREと実質的に同一の核酸配列を含み得る。米国特許第6,136,597号;Lee et al.(2005)Exp Physiol.90:33-7を参照されたい。縮小したサイズを有するwPREエレメントのバリアントは当該技術分野で知られている。wPRE-Oは、中間サイズを有するwPREのバリアントを指す。
【0058】
いくつかの場合では、本開示のレンチウイルスベクターは、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。用語「2Aペプチド」は、単一のオープンリーディングフレームから2つ以上のタンパク質を生成するように構成された自己切断ペプチドを指す。2Aペプチドは、真核細胞において翻訳中のポリペプチドの「切断」を媒介する18~22残基長のウイルス性オリゴペプチドである。「2Aペプチド」は、様々なアミノ酸配列を有するペプチドを指す場合がある。本開示において、レンチウイルスベクターが2つ以上の2Aペプチドを含む場合、2Aペプチドは互いに同一または異なり得ることが理解される。2Aペプチドの設計及び使用のための詳細な方法論は、Szymczak-Workman et al.(2012)Cold Spring Harb. Protoc. 2012:199-204によって提供される。その文献において、2Aペプチドはしばしば自己切断ペプチドと称されているが、機械学的研究では、観察される「自己切断」は、実際にはリボソームが2AペプチドのC末端でグリシルプロリルペプチド結合の形成をスキップした結果であることが示されている。Donnelly et al. (2001)J Gen Virol.82:1027-41。
【0059】
いくつかの場合では、本開示のレンチウイルスベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(wPRE)またはwPREと実質的に同一の核酸配列を含み得る。Lee et al. Optimizing regulatable gene
expression using adenoviral vectors. Exp Physiol. 90(1): 33-7(2005)を参照されたい。本開示のウイルスベクターにおいて、wPRE配列は、前記ウイルスベクターによって送達される遺伝子の発現を増加させる。
【0060】
1.5 融合糖タンパク質
様々な融合糖タンパク質は、レンチウイルスベクターをシュードタイプ化するために使用され得る。最も一般的に使用されている例は、水胞性口炎ウイルスからのエンベロープ糖タンパク質(VSVG)であるが、他の多くのウイルスタンパク質もレンチウイルスベクターのシュードタイプ化に使用されてきた。Joglekar et al.(2017)Human Gene Therapy Methods 28:291-301を参照されたい。本開示は、様々な融合糖タンパク質の置換を企図している。注目すべきことに、いくつかの融合糖タンパク質は、より高いベクター効率をもたらす。
【0061】
いくつかの実施形態では、融合糖タンパク質またはその機能性バリアントをシュードタイプ化することは、T細胞またはNK細胞を含むがこれらに限定されない特定の細胞型の標的化された形質導入を促進する。いくつかの実施形態では、融合糖タンパク質またはその機能性バリアントは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp160、マウス白血病ウイルス(MLV)gp70、ギボン猿白血病ウイルス(GALV)gp70、ネコ白血病ウイルス(RD114)gp70、両種指向性レトロウイルス(Ampho)gp70、10A1 MLV(10A1)gp70、エコトロピックレトロウイルス(Eco)gp70、ヒヒ猿白血病ウイルス(BaEV)gp70、麻疹ウイルス(MV)H及びF、ニパウイルス(NiV)H及びF、狂犬病ウイルス(RabV)G、モコラウイルス(MOKV)G、エボラザイールウイルス(EboZ)G、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)GP1及びGP2、バキュロウイルスGP64、チクングニアウイルス(CHIKV)E1及びE2、ロスリバーウイルス(RRV)E1及びE2、セムリキ森林ウイルス(SFV)E1及びE2、シンドビスウイルス(SV)E1及びE2、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEEV)E1及びE2、西部馬脳炎ウイルス(WEEV)E1及びE2、インフルエンザA、B、CまたはDのHA、家禽ペストウイルス(FPV)HA、水胞性口炎ウイルスVSV-G、またはチャンディプラウイルス及びピリーウイルスCNV-G及びPRV-Gの完全長ポリペプチド(複数可)、機能性フラグメント(複数可)、ホモログ(複数可)、または機能性バリアント(複数可)である。いくつかの場合では、融合糖タンパク質またはその機能性バリアントは、水胞性口炎アラゴアスウイルス(VSAV)、カラジャスベシキュロウイルス(CJSV)、チャンディプラベシキュロウイルス(CHPV)、コカルベシキュロウイルス(COCV)、水胞性口炎インディアナウイルス(VSIV)、イスファハンベシキュロウイルス(ISFV)、マラバベシキュロウイルス(MARAV)、水胞性口炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)、バス・コンゴウイルス(BASV)のGタンパク質の完全長ポリペプチド、機能性フラグメント、ホモログ、または機能性バリアントである。いくつかの実施形態では、融合糖タンパク質またはその機能性バリアントは、コカルウイルスGタンパク質である。
【0062】
1.6 チェックポイント阻害リガンド
いくつかの場合では、本開示のレンチウイルスベクターは、チェックポイント阻害リガンドをコードする核酸配列をさらに含み得る。任意に、チェックポイント阻害リガンドは、PD-1/PD-L1チェックポイントを遮断することが可能である。任意に、チェックポイント阻害リガンドは、Tim-3チェックポイントを遮断することが可能である。
【0063】
チェックポイント阻害剤療法は、免疫チェックポイントを刺激または阻害するための薬剤を使用し、それによって免疫反応を調節するがん治療の形態である。腫瘍は、対象の免疫系からまたはがん免疫療法で使用される治薬剤からそれらを保護するためのチェックポイントを使用し得る。本開示は、チェックポイント阻害リガンドをコードする核酸配列を含むレンチウイルスベクターであって、レンチウイルスベクターから生成されたレンチウイルス粒子が、それらの表面にチェックポイント阻害リガンドを提示し、それ故、レンチウイルス粒子の投与が、治療的使用の部位においてチェックポイント阻害リガンドの対象への送達をもたらす、レンチウイルスベクターを提供する。本開示は、チェックポイント阻害リガンドをコードする核酸配列を含むレンチウイルスベクターであって、レンチウイルスベクターから生成されたレンチウイルス粒子の投与が、標的細胞にポリヌクレオチド配列を送達し、次いでその標的細胞が、治療的使用の部位においてチェックポイント阻害リガンドを発現する、レンチウイルスベクターをさらに提供する。
【0064】
本開示によって提供されるチェックポイント阻害性リガンドの例には、限定されないが、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体またはCTLA4、PD-1、もしくはPD-L1とそれぞれ相互作用する任意の非抗体リガンド(例えば、ナノボディ、DARPin)が含まれる。いくつかの場合では、チェックポイント阻害リガンドは、PD-1/PD-L1チェックポイント及び/またはTim-3チェックポイント及び/またはCTLA-4チェックポイントを遮断することが可能である。チェックポイント阻害の使用は、例えば、Anderson et al. Tim-3: an emerging target in the cancer immunotherapy landscape. Cancer Immunol Res. 2014 May;2(5):393-8で概説されている。
【0065】
1.5 免疫抑制薬に対する抵抗性
いくつかの場合では、本開示のレンチウイルスベクターは、免疫抑制薬に対する抵抗性を提供する核酸配列を(例えば、トランスファープラスミド上に)さらに含む。免疫抑制薬に対する抵抗性を提供する核酸配列は、いくつかの場合、対象を治療するための方法のいずれか、または本開示によって提供される腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞の増殖をそれを必要とする対象において行うための方法のいずれかの間に免疫抑制薬が患者に投与された場合に、標的細胞の選択的増殖を促進する。いくつかの場合では、免疫抑制薬は、メトトレキサート、ラパマイシン、ラパログ、タクロリムス、シクロスポリン、またはそれらの任意の組み合わせである。免疫抑制薬は、小分子と同じであり得るか、または異なり得る。すなわち、レンチウイルスベクターは、免疫抑制薬が対象に投与されるときはいつでも形質導入された細胞の増殖が引き起こされるように、小分子で制御可能なT細胞/NK細胞活性化受容体が免疫抑制薬によって誘導されるように設計され得る。代替的に、免疫抑制に依存しない形質導入された細胞の増殖の制御を可能にするようにレンチウイルスベクターを設計することが有利な場合があり得る。
【0066】
いくつかの場合では、レンチウイルスベクターは、免疫抑制薬に対する抵抗性を形質導入された細胞に付与することによって標的細胞の選択的増殖を促進し、標的細胞の選択的増殖を促進する。本開示は、当該技術分野で知られている免疫抑制薬に対する抵抗性を付与する核酸配列のいずれかを含むレンチウイルスベクターを提供する。免疫抑制薬の例には、限定されないが、ラパマイシンまたはその誘導体、ラパログまたはその誘導体、タクロリムスまたはその誘導体、シクロスポリンまたはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、及びミコフェノレートモフェチル(MMF)またはその誘導体が含まれる。様々な抵抗性遺伝子が当該技術分野で知られている。ラパマイシンに対する抵抗性は、mTORドメインに見られ、かつFKBP-ラパマイシン複合体の標的であることが知られているタンパク質ドメインFRbをコードするポリヌクレオチド配列によって付与され得る。タクロリムスに対する抵抗性は、カルシニューリン変異体CNa22またはカルシニューリン変異体CNb30をコードするポリヌクレオチド配列によって付与され得る。シクロスポリンに対する抵抗性は、カルシニューリン変異体CNa12またはカルシニューリン変異体CNb30をコードするポリヌクレオチド配列によって付与され得る。これらのカルシニューリン変異体は、Brewin et al.(2009)Blood 114:4792-803に記載されている。メトトレキサートに対する抵抗性は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の様々な変異体形態によって提供され得(Volpato et al.(2011) J Mol Recognition 24:188-198を参照されたい)、MMFに対する抵抗性は、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)の様々な変異体形態によって提供され得る(Yam et al.(2006)Mol Ther 14:236-244を参照されたい)。
【0067】
免疫抑制薬は一般的に、ACTの前、その間、及び/またはその後に使用される。いくつかの場合では、免疫抑制薬の使用は、治療結果を改善し得る。いくつかの場合では、免疫抑制薬の使用は、限定されないが、急性移植片対宿主病、慢性移植片対宿主病、及び移植後リンパ増殖性疾患などの治療の副作用を減弱し得る。本開示は、限定されないが、レンチウイルスベクターが免疫抑制薬に対する抵抗性を形質導入された細胞に付与する本開示の方法が含む、本開示の疾患または病態を治療または予防する方法のいずれかで免疫抑制薬を使用することを企図している。
【0068】
2.1 パッケージング細胞株
別の態様では、本開示は、T細胞を活性化し、効率的に形質導入することが可能なレンチウイルス粒子を生成するためのパッケージング細胞株であって、レンチウイルスベクターをパッケージングすることが可能な培養細胞を含み、その培養細胞は、T細胞活性化または共刺激分子を発現するように遺伝子改変されているか、または一過性トランスフェクションを介してT細胞活性化または共刺激分子を一過性に発現するように誘導されている、パッケージング細胞株を提供する。本開示のパッケージング細胞株は、前述されたものを含むがこれらに限定されない任意のレンチウイルスベクターと共に使用され得る。いくつかの場合では、T細胞/NK細胞活性化受容体をコードする核酸配列を含むレンチウイルスベクターを有するパッケージング細胞株を使用することが有利である。いくつかの場合では、そのT細胞/NK細胞活性化受容体は、小分子によって活性化することが可能であることが有利である。しかし、開示されるパッケージング細胞株は、他のレンチウイルスベクターと共に同様に使用され得る。
【0069】
いくつかの場合では、パッケージング細胞株は、HEK-293T細胞株である。同様の結果は、限定されないが、B2Mまたは他の免疫学的に活性な表面タンパク質を欠損するように改変されたHEK-293T細胞株を含む他の細胞株で達成され得る。in vitroでトランスフェクション可能であり、かつ高力価レンチウイルスベクター生成が可能である他の細胞株(例えば、プロモーターに動作可能に連結されたポリオーマウイルスラージT抗原の遺伝子配列を含む細胞株)が使用され得る。
【0070】
パッケージング細胞株は、いくつかの場合では、MHCクラスIの発現、MHCクラスIIの発現、またはPD-L1(PD-1リガンド)などの阻害性チェックポイントリガンド、もしくはTIM3に対するリガンドの発現を欠くように遺伝子修飾され得る。パッケージング細胞株による阻害性リガンドの発現は、レンチウイルス粒子によるT細胞の活性化を制限し得るので、これらの遺伝子修飾は、いくつかの場合、そのような阻害性シグナルを除去する機能をし、レンチウイルス粒子によるT細胞の活性化及び形質導入をさらに促進する。
【0071】
いくつかの場合では、パッケージング細胞株は、レンチウイルスベクターをレンチウイルス粒子にパッキングするのに有用な1つ以上の遺伝子を含むように遺伝子改変されている。いくつかの場合では、パッケージング細胞株は、遺伝子gag-pol、env、及びrevをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。本発明の典型的なレンチウイルスベクターにおいて、gag-pol及びenvタンパク質をコードする領域の1つ以上の少なくとも一部は、レンチウイルスベクターから除去され、パッケージング細胞株によって提供され得る。レンチウイルスベクターは、Dull et al.(1998)J
Virol 72:8463-71(その全体が本明細書に組み込まれる)で提供されている方法に従ってパッケージングされ得る。例示的なパッケージング細胞株は、Retroviruses. Cold Spring Harbour Laboratory (Coffin et al.,eds)(1997)で提供されている。
【0072】
本開示は、限定されないが、遺伝子の追加、遺伝子の削除、及び遺伝子への点変異の導入を含む他の方法で本開示のレンチウイルスベクター及び粒子の免疫学的特質を改善するためにパッケージング細胞株を遺伝子改変することをさらに提供する。
【0073】
2.2 T細胞活性化または共刺激分子
従来、in vitroでのレンチウイルス形質導入には、「刺激ビーズ」、例えば、Dynabeads(商標)ヒトT-活性化因子CD3/CD28などの外因性活性化剤の添加を必要とする。本開示のパッケージング細胞株を使用して作製されるレンチウイルス粒子は、パッケージング細胞株によって発現されるT細胞活性化または共刺激分子の1つ以上のコピーをレンチウイルス粒子に組み込み;レンチウイルス粒子におけるT細胞活性化または共刺激分子(複数可)の組み込みにより、レンチウイルス粒子は、外因性活性化剤の非存在下で、すなわち、刺激ビーズも同等の薬剤も用いずに、T細胞を活性化し、効率的に形質導入することが可能となる。これにより、活性化剤の外因性送達が非実用的であり得る場合、これらのパッケージング細胞株から作製されたレンチウイルス粒子をin vivoで使用することが可能となる。
【0074】
いくつかの場合では、T細胞活性化または共刺激分子は、抗CD3抗体、CD28リガンド(CD28L)、及び41bbリガンド(41BBLまたはCD137L)からなる群から選択され得る。様々なT細胞活性化または共刺激分子が当該技術分野で知られており、これには、限定されないが、T細胞発現タンパク質CD3、CD28、OX40としても知られるCD134、または4-1BBもしくはCD137もしくはTNFRSF9としても知られる41bbのいずれかに特異的に結合する薬剤が含まれる。例えば、CD3に特異的に結合する薬剤は、抗CD3抗体(例えば、OKT3、CRIS-7またはI2C)または抗CD3抗体の抗原結合フラグメントであり得る。いくつかの態様では、CD3に特異的に結合する薬剤は、抗CD3抗体の一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。いくつかの場合では、本開示は、T細胞活性化または共刺激分子が、抗CD3抗体、CD28リガンド(CD28L)、及び41bbリガンド(41BBLまたはCD137L)からなる群から選択されることを企図している。B7-2としても知られるCD86は、CD28及びCTLA-4の両方のリガンドである。いくつかの場合では、CD28Lは、CD86であり得る。CD80は、CD28の追加リガンドである。いくつかの場合では、CD28のリガンドは、CD80である。いくつかの場合では、CD28のリガンドは、レンチウイルス粒子の表面上に提示するための膜貫通ドメインに融合した抗CD28抗体または抗CD28 scFvである。1つ以上のT細胞活性化または共刺激分子を含むレンチウイルス粒子は、WO2016/139463によって提供されている方法によって作製され得る。
【0075】
3 レンチウイルス粒子
別の態様では、本開示は、本開示のレンチウイルスベクターのいずれかを含むレンチウイルス粒子をさらに提供する。本開示のレンチウイルス粒子は、本開示のパッケージング細胞株を用いて、もしくは別のパッケージング細胞株を用いて、またはレンチウイルスベクター及びヘルパープラスミドで培養細胞、例えば、HEK-293T細胞をコトランスフェクションすることによって作製され得る。本開示のレンチウイルス粒子は、例えば、本開示のレンチウイルスベクターのいずれかを、T細胞活性化または共刺激分子を発現するように遺伝子改変された培養細胞に形質導入することによって調製され得る。いくつかの場合では、レンチウイルスベクター、選択されたパッケージング細胞株、またはコトランスフェクションされたヘルパープラスミドにより、レンチウイルス粒子は、限定されないが、分子が抗CD3抗体、CD28リガンド、または41bbリガンドであり得るT細胞活性化または共刺激分子を含むことになる。T細胞活性化または共刺激分子を発現するように遺伝子改変された培養細胞は、HEK-293T細胞であり得る。いくつかの場合では、培養細胞は、MHCクラスIの発現、MHCクラスIIの発現、またはPD-L1(PD-1リガンド)などの阻害性チェックポイントリガンド、もしくはTIM3に対するリガンドの発現を欠くように遺伝子修飾される。
【0076】
4 使用方法
別の態様では、本開示は、がんに罹患している対象を治療するための方法であって、本開示の任意のレンチウイルス粒子を対象に投与することと、小分子を対象に投与することとを含み、がんが対象において治療される、方法を提供する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療に使用するための表面改変されたレンチウイルス粒子を提供する。他の実施形態では、本開示は、がんを治療する方法で使用するための表面改変されたレンチウイルス粒子を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、がんを治療するための薬剤の製造において使用するための表面改変されたレンチウイルス粒子を提供する。
【0078】
いくつかの場合では、がんは、黒色腫、非小細胞肺癌、または乳癌などの固形腫瘍であり得る。本開示の方法は、限定されないが、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺癌、腺肉腫、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、未分化星細胞腫、血管肉腫、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌、B細胞リンパ腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨髄癌、腸癌、脳癌、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、胆管癌、軟骨肉腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚リンパ腫、皮膚黒色腫、びまん性星細胞腫、上皮内腺管癌、子宮内膜癌、上衣腫、類上皮肉腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、卵管癌、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド癌、消化管間質腫瘍、一般、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、多形性膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、血管内皮腫、ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、ホジキン病、下咽頭癌、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、炎症性乳癌、腸癌、肝内胆管癌、侵襲性/浸潤性乳癌、島細胞癌、顎癌、カポシ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、軟膜転移、白血病、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、上皮内小葉癌、低悪性度星細胞腫、肺癌、リンパ節癌、リンパ腫、男性乳癌、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、間葉性軟骨肉腫、間葉性(mesenchymous)、中皮腫、転移性乳癌、転移性黒色腫、転移性扁平頚部癌、混合性神経膠腫、口腔癌、粘液性癌、粘膜黒色腫、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、鼻腔癌、鼻咽頭癌、頸部癌、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、眼癌、眼黒色腫、乏突起膠腫、口癌、口腔癌、口腔咽頭癌、骨原性肉腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣原発性腹膜癌、卵巣性索間質腫瘍、パジェット病、膵臓癌、乳頭癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、骨盤癌、陰茎癌、末梢神経癌、腹膜癌、咽頭癌、褐色細胞腫、毛様細胞性星細胞腫、松果体部腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎骨盤癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、肉腫、骨、肉腫、軟部組織、肉腫、子宮、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、脊椎癌、脊柱癌、脊髄癌、脊椎腫瘍、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫/胸腺癌、甲状腺癌、舌癌、扁桃腺癌、移行細胞癌、移行細胞癌、移行細胞癌、トリプルネガティブ乳癌、卵管癌、管状癌、未診断癌、尿管癌、尿管癌、尿道癌、子宮腺癌、子宮癌、子宮肉腫、腟癌、外陰癌を含む任意のがんを治療することを含み得る。
【0079】
別の態様では、本開示は、腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞の増殖を、それを必要とする対象において行うための方法であって、対象において腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞が、レンチウイルス粒子によって形質導入され、増殖するように、本開示のレンチウイルス粒子を対象に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、レンチウイルス粒子は、静脈内注射によってまたは腫瘍内注射によって投与される。
【0080】
いくつかの場合では、レンチウイルス粒子は標的化因子を含むか、または核酸ベクターが標的化因子をコードする。例示的な標的化因子は、抗体及びキメラ抗原受容体(「CAR」)を含む。用語「抗体」は、任意の種類の無傷の抗原結合免疫グロブリン、またはそれ自体が抗体の標的抗原に特異的に結合するそのフラグメントを指し、例えば、キメラ、ヒト化、完全ヒト、及び二重特異的抗体を含む。本開示で使用されるCARは、いくつかの場合では、B細胞に特異的な、例えば、CD19、CD22、CD20またはCD79a(CD19が好ましい)などの、B細胞リンパ腫に見られ得るCDマーカーに特異的な結合ドメインを含む。CARを発現するように遺伝子改変されたT細胞(例えば、T細胞CAR)は、WO2007/131092に例示されている。標的化因子は、いくつかの場合では、腫瘍細胞などの他の特定の細胞型に対して細胞媒介免疫を誘導する機能をする。
【0081】
別の態様では、本開示は、腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞の増殖を、それを必要とする対象において行うための方法であって、本開示の任意のレンチウイルス粒子を対象に投与することと、小分子を対象に投与することとを含み、対象において腫瘍細胞を認識し、殺傷することが可能なT細胞が増殖される、方法を提供する。
【0082】
所定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、哺乳動物であり得る。いくつかの場合では、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウスまたはラットである。対象は、ヒトの女性もしくはヒトの男性であり得る。
【0083】
併用療法もまた、本発明によって企図される。本明細書で使用されるような併用は、同時治療または逐次治療を含む。本発明の方法と標準的な医学的治療(例えば、コルチコステロイド)との併用は、新規な療法との併用と同様に、特に企図される。いくつかの場合では、対象は、本明細書に記載のレンチウイルス粒子の投与に対する免疫反応を防止または低減するために、ステロイド(例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、デフラザコート)で治療され得る。所定の場合では、対象が本明細書に記載のレンチウイルス粒子に対する抗体を発現している場合、対象は、アフェレシスまたは別の免疫調節剤を受けてもよい。いくつかの場合では、特に免疫抑制剤(例えば、タクロリムスまたはシロリムス)が投与される場合、そのような免疫調節剤は不要であり得る。いくつかの場合では、リツキサンは、レンチウイルス粒子を用いた治療と同時にまたは逐次投与される。リツキサンは、いくつかの場合、レンチウイルス粒子に対する免疫反応を遮断する機能を有し得る。
【0084】
本開示のレンチウイルス粒子、小分子、及び免疫抑制薬は、経口、経鼻、静脈内、動脈内、筋肉内、または腹腔内経路を含む任意の経路によって投与され得る。いくつかの場合では、レンチウイルス粒子は、静脈内注射によってまたは腫瘍内注射によって投与される。いくつかの場合では、小分子は、静脈内注射によって投与されるか、または経口投与される。いくつかの場合では、小分子は、T細胞/NK細胞活性化受容体を活性化するのに十分な濃度で投与される。いくつかの場合では、小分子は、0.1nM、1nM、または10nMを超えるラパマイシンの血清濃度を維持するのに十分な濃度で任意に投与されるラパマイシンである。いくつかの場合では、小分子は、0.1nM、1nM、または10nMを超えるラパログの血清濃度を維持するのに十分な濃度で任意に投与されるラパログである。いくつかの場合では、小分子は、細胞活性化シグナルをもたらすT細胞/NK細胞活性化受容体の二量体化を引き起こすことが可能である。
【0085】
いくつかの場合では、小分子は、レンチウイルス粒子と同時に投与されるか、または小分子は、レンチウイルス粒子が投与される約30分前または後、約1時間前または後、約2時間前または後、約4時間前または後、約5時間前または後、または約10時間前または後に投与される。いくつかの場合では、方法は、免疫抑制剤を対象に投与することをさらに含む。いくつかの場合では、免疫抑制剤は、0.1nM、1nM、または10nMを超えるタクロリムスの血清濃度を維持するのに十分な濃度で任意に投与されるタクロリムスである。いくつかの場合では、免疫抑制剤は、0.1nM、1nM、または10nMを超えるシクロスポリンの血清濃度を維持するのに十分な濃度で任意に投与されるシクロスポリンである。いくつかの場合では、免疫抑制剤は、免疫抑制薬である。いくつかの場合では、免疫抑制剤は、免疫抑制薬であり、レンチウイルスベクターは、前記免疫抑制薬に対する抵抗性を提供するタンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0086】
注射用の使用に好適な薬学的形態には、無菌水溶液または分散体及び無菌注射用溶液または分散体の即席調製のための無菌粉末が含まれる。すべての場合において、その形態は、無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動的でなければならない。それは製造及び保存の条件で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合において、等張化剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0087】
無菌注射用溶液は、必要に応じて、上記で列挙した様々な他の成分を有する適切な溶媒中に必要量のrAAVを組み込むことによって調製される。注射用溶液は、無菌で調製され得るか、または濾過滅菌され得る。
【0088】
5 定義
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的のため、以下の用語を以下に定義する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「293T対照粒子」または「モック(293Tベクター)」は、293T細胞をレンチウイルスベクターで形質導入することによって生成されたレンチウイルス粒子を指す。本明細書で使用される場合、「刺激ビーズ(stimbead)」は、形質導入中にT細胞を刺激するために使用されるビーズベースの試薬を指す。ラベル「+対照(ベクター+刺激ビーズ)」は、刺激ビーズを用いた293T対照粒子での形質導入を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「HATSE細胞」または「HATSE細胞株」または「HATSE-293」は、293T細胞をCD86及びCD137Lをコードするレンチウイルスベクター(複数可)で形質導入することによって作成され、CD86及びCD137Lの両方を高度に発現した細胞のために蛍光活性化セルソーティング(FACS)に1回以上供されたパッケージング細胞株を指す。ラベル「(1回ソーティングされた)HATSE細胞ベクター」は、HATSE細胞をCD86/CD173L二重陽性細胞について1回FACSソーティングした後、レンチウイルスベクターでHATSE細胞を形質導入することによって生成されたレンチウイルス粒子を指す。ラベル「(2回ソーティングされた)HATSE細胞ベクター」は、HATSE細胞をCD86/CD173L二重陽性細胞について1回FACSソーティングした後、レンチウイルスベクターでHATSE細胞を形質導入することによって生成されたレンチウイルス粒子を指す。
【0091】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0092】
代替手段(例えば、「または」)の使用は、代替手段の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0093】
用語「及び/または」は、代替手段の一方、または両方のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「およそ」は、参照量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%と同じ程度に変化する量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、用語「約」または「およそ」は、参照量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さについて±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さの範囲を指す。
【0095】
濃度範囲、割合範囲、比の範囲、または整数範囲は、別段示されない限り、記述された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合には、その分数(整数の10分の1及び100分の1など)を含むものと理解されたい。用語「約」は、数または数字の直前にある場合、その数または数字がプラスまたはマイナス10%の範囲であることを意味する。
【0096】
本明細書を通して、文脈が別段必要としない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、記述された工程もしくは要素または工程もしくは要素の群を含むことを意味するが、任意の他の工程もしくは要素または工程もしくは要素の群を除外することを意味しないと理解される。特定の実施形態では、用語「含む(include)」、「有する」、「含有する」、及び「含む(comprise)」は同義的に使用される。
【0097】
「からなる」は、語句「からなる」に続くものは何でも含むことを意味し、それに限定される。よって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要とされるか、または必須であり、他の要素が存在しない場合があることを示す。
【0098】
「から本質的になる」は、その語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素について本開示で特定された活性または作用と干渉せず、それに寄与もしない他の要素に限定される。
【0099】
本明細書を通して「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「所定の実施形態」、「追加の実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」またはそれらの組み合わせに対する言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書を通して様々な場所での前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な手法で組み合わされ得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、その本来の状態で通常それに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。特定の実施形態では、用語「得られた」または「誘導された」は、単離されたと同義的に使用される。
【0101】
「対象」、「患者」または「個体」は、本明細書で使用される場合、本明細書で企図されるベクター、組成物、及び方法を用いて治療され得る疼痛を示す任意の動物を含む。好適な対象(例えば、患者)には、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、農場動物、及び家畜またはペット(ネコまたはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類及び、好ましくは、ヒト患者が含まれる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」には、治療に関連する任意の有益なまたは望ましい効果が含まれる。「治療」は、疾患もしくは病態、またはそれに関連する症状の完全な根絶または治癒を必ずしも示すものではない。
【0103】
本明細書で使用される場合、「予防する」及び「予防された」、「予防すること」などの同様の単語は、障害の発生または再発の可能性を予防、阻害、または減少させるためのアプローチを示す。本明細書で使用される場合、「予防」及び同様の単語はまた、発症または再発前の疾患または障害の強度、作用、症状及び/または負担を減少させることを含む。
【0104】
本明細書で使用される場合、ウイルスまたはレンチウイルス粒子の「治療的有効量」または「有効な量」または「有効量」は、臨床結果を含む、有益なまたは所望の予防的または治療的結果を達成するために必要とされるウイルスまたはレンチウイルス粒子の量を指す。
【0105】
「予防的有効量」は、所望の予防的結果を達成するために有効なウイルスまたはレンチウイルス粒子の量を指す。典型的には、しかし必ずしもそうではないが、予防的用量は、疾患の前またはより早い段階の対象において使用されるので、予防的有効量は、治療的有効量よりも少ない。
【0106】
ウイルスまたはレンチウイルス粒子の「治療的有効量」は、疾患病態、個体の年齢、性別、及び体重、ならびに個体における所望の反応を誘発させるための幹細胞及び前駆細胞の能力などの要因に応じて変化し得る。治療的有効量はまた、治療的に有益な効果がウイルスの任意の毒性または有害な効果を上回るものである。用語「治療的有効量」は、対象(例えば、患者)を「治療する」のに有効な量を含む。
【0107】
生理学的反応、例えば、電気生理学的活性または細胞活性の「増加した」または「向上した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、未処置対象における活性のレベルの1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍以上(例えば、500、1000倍)(それらの間で1を超えるすべての整数及び小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)の増加を含み得る。
【0108】
生理学的反応、例えば、電気生理学的活性または細胞活性の「低下」または「減少した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、未処置対象における活性のレベルの1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍以上(例えば、500、1000倍)(それらの間で1を超えるすべての整数及び小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)の低下を含み得る。
【0109】
「維持する」、または「保存する」、または「維持」、または「変化なし」、または「実質的に変化なし」、または「実質的に低下なし」は一般に、ビヒクル、または対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる反応に匹敵する生理学的反応を指す。匹敵する反応は、参照反応と有意に異なっておらず、測定可能に異なってもいないものである。
【0110】
「受容体-リガンド結合」、「リガンド結合」、及び「結合」は、受容体とリガンドまたは合成リガンドとの間の物理的相互作用を意味するために互換的に本明細書で使用される。リガンド結合は、当該技術分野で知られている様々な方法(例えば、放射性標識されたリガンドとの関連性の検出)によって測定され得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合親和性」または「特異的に結合する」または「特異的に結合した」または「特異的結合」は、本明細書及び特許請求の範囲を通して互換的に使用され、対になった分子種、例えば、受容体とリガンドの間で生じる結合を指す。2つの種の相互作用が非共有結合で結合した複合体を生成する場合、生じる結合は典型的には、静電的、水素結合、または親油性相互作用の結果である。様々な実施形態では、1つ以上の種間の特異的結合は、直接的である。一実施形態では、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合(非特異的結合)の約2倍を超え、バックグラウンド結合の約5倍を超え、バックグラウンド結合の約10倍を超え、バックグラウンド結合の約20倍を超え、バックグラウンド結合の約50倍を超え、バックグラウンド結合の約100倍を超え、もしくはバックグラウンド結合の約1000倍を超え、またはそれ以上である。
【0112】
一般に、「配列同一性」または「配列相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列のそれぞれのヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の正確な対応を指す。典型的には、配列同一性を決定するための技術は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定すること、及び/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、及びこれらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することを含む。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「同一率」を決定することによって比較され得る。2つの配列の同一率は、核酸配列であるかアミノ酸配列であるかにかかわらず、2つの整列した配列間の完全一致の数を短い方の配列の長さで除算し、100で乗算したものである。同一率はまた、例えば、国立衛生研究所から入手可能なバージョン2.2.9を含む高度なBLASTコンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することによって決定され得る。BLASTプログラムは、Karlin and Altschul,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268(1990)のアライメント方法に基づき、Altschul,et al.,J.Mol. Biol. 215:403-410(1990);Karlin And Altschul,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877(1993);及びAltschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)で論述されている。簡潔には、BLASTプログラムは、同一の整列された記号(通常はヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を2つの配列のうちの短いほうの記号の総数で除算したものとして同一性を定義する。そのプログラムは、比較されているタンパク質の全長にわたって同一率を決定するために使用され得る。短いクエリー配列、例えば、blastpプログラムで検索を最適化するためにデフォルトパラメータが提供される。そのプログラムはまた、Wootton and Federhen,Computers and Chemistry 17:149-163(1993)のSEGプログラムによって決定されるクエリー配列のセグメントをマスクオフするためにSEGフィルターの使用を可能にする。配列同一性の所望の程度の範囲は、およそ80%~100%、及びこれらの間の整数値である。典型的には、開示される配列と、特許請求される配列との間の同一率は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%である。
【0113】
用語「外因性」は、生命体外に由来する核酸、タンパク質またはペプチド、小分子化合物などを含む任意の分子を指すために本明細書で使用される。対照的に、用語「内因性」は、生命体内に由来する(すなわち、生命体によって自然に生成される)任意の分子を指す。
【0114】
用語「MOI」は、感染標的(例えば、細胞)に対する薬剤(例えば、ウイルス粒子)の比である感染多重度を指すために本明細書で使用される。
【0115】
本明細書で挙げられたすべての刊行物及び特許は、各々の個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのようにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書の任意の定義を含む本出願が優先する。しかしながら、本明細書で引用された任意の参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願の言及は、それらが有効な先行技術を構成するか、または世界の任意の国における一般的知識の一部を形成するという認識、または示唆の任意の形態ではなく、そのように受け取られるべきではない。
【0116】
本明細書で使用された項の見出しは、組織的な目的のためのものにすぎず、記載された主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【0117】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これは特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定しない。
【実施例0118】
実施例1:HATSE-293パッケージング細胞株
T細胞を活性化し、効率的に形質導入することが可能なレンチウイルス粒子を生成するためのパッケージング細胞株(HATSE-293と称される)を以下のように生成した。MNDプロモーターならびにモノクローナル抗体OKT3の抗CD3一本鎖Fvフラグメント(scFv);CD86;及びCD137Lをコードする2Aペプチドが連結された多シストロン性オープンリーディングフレーム(抗CD3 scFV-2A-CD86-2A-CD137L)を含むレンチウイルスベクターを構築した。レンチウイルスベクターを細胞培養で成長したHEK-293T細胞に形質導入した結果、MNDプロモーター及び多シストロン性オープンリーディングフレームが宿主細胞のゲノムに安定に統合した。形質導入されたHEK-293T細胞を、CD86及びCD137Lの両方を高度に発現した細胞のための蛍光活性化セルソーティング(FACS)に供した(図2)。多シストロン性オープンリーディングフレームの構造により、CD86/CD137L細胞はまた、抗CD3 scFvを必然的に発現する。CD86/CD137L細胞集団を培養して増殖させて、HATSE-293パッケージング細胞株を生成し、アリコートを長期保存及び使用のために凍結した。CD86及びCD137の発現をフローサイトメトリーによって確認した(図3)。
【0119】
HATSE-293細胞にpMND-GFPレンチウイルスベクター及び4つのレンチウイルスパッケージングプラスミド(pMD2.G、pRSV-rev、pMDLG-pRRE、及びpRRL-GOI)をコトランスフェクションし、ウイルス粒子を細胞上清から採取してレンチウイルス粒子(HATSE粒子と称される)を生成した。対照として、HEK-293T細胞にpMND-GFPレンチウイルスベクター及び4つのレンチウイルスパッケージングプラスミド(pMD2.G、pRSV-rev、pMDLG-pRRE、及びpRRL-GOI)をコトランスフェクションし、ウイルス粒子を細胞上清から採取してレンチウイルス粒子(293T対照粒子)を生成した。
【0120】
ヒト初代T細胞(2.5×10細胞)を外因性T細胞活性化刺激剤(Dynabeads(商標)ヒトT-活性化因子CD3/CD28-「刺激ビーズ」)の存在下または非存在下で、MOI5またはMOI20で、HATSE粒子または293T粒子のいずれかに二連で曝露した。細胞の成長を自動化細胞カウンター(Countess(商標)II、Thermo Fisher)によって7日間にわたって評価した(図3)。HATSE粒子に曝露した細胞の成長は、対照粒子で形質導入されたビーズ刺激T細胞と同様であり、293T対照粒子よりも7日目でおよそ2倍大きかった。GFP発現を蛍光顕微鏡によって評価した(図4)。HATSE粒子に曝露された細胞は噴出を示し、対照粒子で形質導入されたビーズ刺激T細胞と同様の高いGFP発現を示し、このことは、異種T細胞活性化刺激(すなわち、刺激ビーズ)への曝露の欠如にもかかわらず、HATSE粒子に曝露されたT細胞の効率的な形質導入を確認している。
【0121】
実施例2:レンチ-RACCR
レンチ-RACCRは、ラパマイシン活性化キメラ細胞表面受容体(RACCR)をコードする導入遺伝子を含有するレンチウイルスベクターである。具体的には、この例示的なRACCRは、ラパマイシンの存在下で二量体化し、それによってシグナル伝達を活性化するように設計された2つの融合タンパク質から作製される(図12A)。第1の融合タンパク質は、FKBPが融合タンパク質の細胞外ドメインを形成するように、IL-2受容体ベータ鎖(IL2Rb)の細胞質ドメインをFK506結合タンパク質(FKBP)に融合させた結果物である。第2の融合タンパク質は、FRBが融合タンパク質の細胞外ドメインを形成するように、IL-2受容体ガンマ鎖(IL2Rg)の細胞質ドメインをラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)のFKBP-ラパマイシン結合(FRB)ドメインに融合した結果物である。細胞外ドメインは、ラパマイシンの存在下で三量体複合体を形成し、その結果、受容体サブユニットが二量体化して、能動的にシグナル伝達する受容体複合体を形成することが知られている。
【0122】
2Aペプチド(イタリック体)を有し、シグナルペプチド(括弧内)を有するRACCR-ベータ-FKBP-IL2Rb融合タンパク質:
【化1】
(配列番号12)。
【0123】
FKBPドメインは、以下の配列を有する:
【化2】
(配列番号13)。
【0124】
IL2Rbドメインは、以下の配列を有する:
【化3】
(配列番号14)。
【0125】
2Aペプチド(イタリック体)を有し、シグナルペプチド(括弧内)を有するRACCR-ガンマ-FRB-IL2Rg融合タンパク質
【化4】
(配列番号15)。
【0126】
FRBドメインは、以下の配列を有する:
【化5】
(配列番号16)。
【0127】
IL2Rgドメインは、以下の配列を有する:
【化6】
(配列番号17)。
【0128】
緑色蛍光タンパク質をコードするレンチウイルストランスファープラスミドは、標準的なパッケージングプラスミドpMD2.Gを使用してレンチウイルス粒子にパッケージングされ、得られたレンチウイルス粒子は、対照実験としてヒト初代T細胞を形質導入するために使用される。低レベルの形質導入のみが観察される(図12B)。
【0129】
mCherryをコードするレンチウイルストランスファープラスミドは、T細胞活性化及び共刺激分子をコードするプラスミドを使用してレンチウイルス粒子にパッケージングされ、それによって表面改変されたレンチウイルス粒子(SE-LVP)を生成する。得られたレンチウイルス粒子(mCherry:SE-LVP)は、対照実験としてヒト初代T細胞を形質導入するために使用される。高レベルの形質導入が観察される(図12C)。
【0130】
RACCRをコードするレンチウイルストランスファープラスミドは、T細胞活性化及び共刺激分子をコードするプラスミドを使用してレンチウイルス粒子にパッケージングされ、それによって表面改変されたレンチウイルス粒子(SE-LVP)を生成する。得られたレンチウイルス粒子(RACCR:SE-LVP)は、ヒト初代T細胞を形質導入するために使用される。高レベルの形質導入が観察される(図12D)。
【0131】
mCherry:SE-LVPまたはRACCR:SE-LVPで形質導入されたヒト初代T細胞をIL-2(「IL2」)、ラパマイシン(「ラパ」)、または無処置(「NT」)の存在下で培養する。対照として、標準的なパッケージングプラスミドpMD2.Gを使用してパッケージングされたmCherryコンストラクトもIL-2で試験する。RACCR:SE-LVPは、ラパマイシンの存在下で、しかし外因性IL-2を用いずに、18日間にわたってT細胞の持続的増殖を媒介する(図12E)。T細胞の増殖は、ラパマイシンまたはIL-2の存在に依存する(図12F)。これは、表面改変粒子が成長刺激受容体ペイロードを送達し、初代ヒトT細胞を増殖させ得るという概念のin vitroでの証拠を構成する。形質導入のためにレンチウイルス粒子のスピノキュレーションまたは他の操作は必要とされない。10の感染多重度(MOI)での細胞の形質導入は、およそ20%の形質導入効率を提供した。
【0132】
当業者は、慣用の実験を超えるものを使用せずに、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態と均等の多くのものを認識し、確認することが可能である。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
【配列表】
2024100972000001.app
【外国語明細書】