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特開2024-100975ジヒドロピリジノン誘導体を含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100975
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ジヒドロピリジノン誘導体を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K9/20
A61K47/26
A61K9/48
A61P3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024084738
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2024013082
(32)【優先日】2024-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】下川 正二朗
(72)【発明者】
【氏名】五味 真人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健佑
(57)【要約】
【課題】式(I):

で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含有する医薬組成物を提供すること。
【解決手段】高分子を含有することで、化合物の溶解濃度に優れた、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物が提供される。また、式(I)で示される化合物等を含有するカプセル剤とすることで、酸性条件下で安定なカプセル剤が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物、および高分子を含有する医薬組成物。
【請求項2】
高分子がセルロース系高分子、ビニル系高分子、アクリル酸系高分子およびポリエーテル系高分子からなる群から選択される1以上である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
高分子がセルロース系高分子またはビニル系高分子である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
高分子がセルロース系高分子であり、セルロース系高分子がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、酢酸フタル酸セルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルメロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびフマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物からなる群から選択される1以上である、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
セルロース系高分子がヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
高分子がビニル系高分子であり、ビニル系高分子がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、フマル酸・ステアリル酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、クロスポビドン、カルボキシビニルポリマーおよびポリビニルアルコールコポリマーからなる群から選択される1以上である、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項7】
ビニル系高分子がポリビニルピロリドンである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
高分子が、式(I)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物及び高分子からなる平錠に水1μLを垂らした時の接触角が85度以下となる高分子である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
平錠が、50mgの式(I)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物、および10mgの高分子からなり、直径が7.5mmである錠剤である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
さらに賦形剤、崩壊剤および滑沢剤を含む、請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
D-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含む、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
式(I)で示される化合物の水和物を含む、請求項1~11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
カプセル剤である、請求項1~12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
式(I):
【化2】

で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物を含有するカプセル剤。
【請求項15】
0.1N塩酸水溶液において37℃、パドル50rpmで5分間溶出試験を実施した際に、式(II):
【化3】

で示される化合物が検出されない、請求項14記載のカプセル剤。
【請求項16】
カプセル基剤が腸溶性基剤以外のカプセル基剤である、請求項14または15記載のカプセル剤。
【請求項17】
カプセル基剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項14~16のいずれかに記載のカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物(以下、式(I)で示される化合物等という。)を含有する医薬組成物に関する。さらに詳しくは、高分子を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に、式(I)で示される化合物等がモノアシルグリセロール アシルトランスフェラーゼ2(monoacylglycerol acyltransferase2、以下MGAT2とも称する)阻害作用を有し、肥満症等の疾患および障害の治療に有用であることが記載されている。
MGATはMGAT1、MGAT2、およびMGAT3の3種類のアイソフォームが同定されている。このうち、MGAT2およびMGAT3は小腸で高発現しており、小腸における脂肪吸収に関与していると考えられている。
野生型マウスによる実験により、高脂肪食負荷により小腸におけるMGAT2の発現が亢進し、MGAT活性が上昇したことが報告されている(非特許文献1)。さらに、MGAT2ノックアウトマウスにおいて、高脂肪食負荷による体重増加の抑制、インスリン抵抗性惹起の抑制、血中コレステロール上昇の抑制、脂肪肝形成などの抑制、エネルギー消費の亢進が確認されている(非特許文献2)。
【0003】
また、特許文献3には、式(I)で示される化合物等の結晶が記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、ヒドロキシピロピルセルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、D-マンニトール、ステアリン酸マグネシウムを添加剤として含有し、塩酸セフカペンピボキシルを有効成分として含有する製剤が開示されている。
しかし、いずれの引用文献においても、本発明の製剤は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2019/013311
【特許文献2】WO2019/013312
【特許文献3】WO2023/243616
【特許文献4】特開2009-249377
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Biological Chemistry (2004), 279, 18878-18886
【非特許文献2】Nature Medicine (2009), 15, (4), 442-446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を製造するにあたり、高分子を用いることで、式(I)で示される化合物等の溶解濃度が優れた医薬組成物を製造できることを見出し、本発明である式(I)で示される化合物等及び高分子を含有する医薬組成物を完成させた。
また、本発明者らは、式(I)で示される化合物等が酸性、中性及び弱アルカリ性条件下において不安定であることを見出し、式(I)で示される化合物等を含有するカプセル剤を完成させた。
【0009】
本発明者らは、以下に示す、式(I)で示される化合物等および高分子を含有する医薬組成物を見出した。
また、本発明者らは、式(I)で示される化合物等および高分子を含有するカプセル剤を見出した。
(1)式(I):
【化2】

で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物、および高分子を含有する医薬組成物。
(2)高分子がセルロース系高分子、ビニル系高分子、アクリル酸系高分子およびポリエーテル系高分子からなる群から選択される1以上である、上記(1)記載の医薬組成物。
(3)高分子がセルロース系高分子またはビニル系高分子である、上記(2)記載の医薬組成物。
(4)高分子がセルロース系高分子であり、セルロース系高分子がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、酢酸フタル酸セルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルメロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびフマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物からなる群から選択される1以上である、上記(3)記載の医薬組成物。
(5)セルロース系高分子がヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、上記(4)記載の医薬組成物。
(6)高分子がビニル系高分子であり、ビニル系高分子がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、フマル酸・ステアリル酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、クロスポビドン、カルボキシビニルポリマーおよびポリビニルアルコールコポリマーからなる群から選択される1以上である、上記(3)記載の医薬組成物。
(7)ビニル系高分子がポリビニルピロリドンである、上記(6)記載の医薬組成物。
(8)高分子が、式(I)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物及び高分子からなる平錠に水1μLを垂らした時の接触角が85度以下となる高分子である、上記(1)記載の医薬組成物。
(9)平錠が、50mgの式(I)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物、および10mgの高分子からなり、直径が7.5mmである錠剤である、上記(8)記載の医薬組成物。
(10)さらに賦形剤、崩壊剤および滑沢剤を含む、上記(1)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11)D-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含む、上記(10)記載の医薬組成物。
(12)式(I)で示される化合物の水和物を含む、上記(1)~(11)のいずれかに記載の医薬組成物。
(13)カプセル剤である、上記(1)~(12)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14)式(I):
【化3】

で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物を含有するカプセル剤。
(15)0.1N塩酸水溶液において37℃、パドル50rpmで5分間溶出試験を実施した際に、式(II):
【化4】

で示される化合物が検出されない、上記(14)記載のカプセル剤。
(16)カプセル基剤が腸溶性基剤以外のカプセル基剤である、上記(14)または(15)記載のカプセル剤。
(17)カプセル基剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、上記(14)~(16)のいずれかに記載のカプセル剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、式(I)で示される化合物等の溶解濃度が優れた、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物が提供される。また、本発明により、優れた溶出性を有し、安定性の高い医薬組成物として、カプセル剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】式(I)で示される化合物を液体クロマトグラフ法により測定した際のクロマトグラムである。
図2】実施例11および参考例4のカプセル剤の溶出試験の結果である。縦軸は溶出率(単位:%)、横軸は時間(単位:分)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明は、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物に関する。
本発明の一つの態様は、式(I)で示される化合物等および高分子を含有する医薬組成物である。特に好ましくは、高分子として水溶性高分子を含有する医薬組成物である。
また、本発明の一つの態様は、セルロース系高分子、ビニル系高分子、アクリル酸系高分子およびポリエーテル系高分子からなる群から選択される1以上の高分子を含有する、上記の医薬組成物である。特に好ましくは水溶性セルロース系高分子または水溶性ビニル系高分子が好ましい。
【0014】
セルロース系高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下ヒプロメロースとも称する)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、酢酸フタル酸セルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルメロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびフマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物からなる群から選択される1以上が好ましい。水溶性セルロース系高分子が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムが好ましい。特に、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましく、さらにヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
ビニル系高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、フマル酸・ステアリル酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、クロスポビドン、カルボキシビニルポリマーおよびポリビニルアルコールコポリマーからなる群から選択される1以上が好ましい。水溶性ビニル系高分子が好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコールコポリマーが好ましい。特に、ポリビニルピロリドンが好ましい。
アクリル酸系高分子としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、メタクリル酸コポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、乾燥メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルアクリレートコポリマーEからなる群から選択される1以上が好ましい。水溶性アクリル酸系高分子が好ましく、メタクリル酸コポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルアクリレートコポリマーEが好ましい。特に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーが好ましい。
ポリエーテル系高分子としては、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロック共重合体が好ましい。水溶性ポリエーテル系高分子が好ましく、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロック共重合体が好ましい。
高分子は、医薬組成物の全体の重量に対して、0.5~40重量%用いることができる。好ましくは、0.5~30重量%である。特に好ましくは、0.5~10重量%である。さらには、0.5~5重量%である。なお、医薬組成物がカプセルの場合はカプセルを除いて、カプセルに充てんする医薬組成物の全重量に対して0.5~40重量%用いることができる。好ましくは、0.5~30重量%である。特に好ましくは、0.5~10重量%である。さらには、0.5~5重量%である。
【0015】
本発明の別の態様として、高分子として、式(I)で示される化合物等及び高分子からなる平錠に水1μLを垂らした時の接触角が85度以下となる高分子を含有する医薬組成物が挙げられる。平錠に使用する式(I)で示される化合物等としては、式(I)で示される化合物の水和物を使用することができる。
接触角の測定は、試験例2の濡れ性評価記載の方法に従って実施することができる。従って、当業者であれば、本発明の医薬組成物において使用する高分子を選択することができる。すなわち、当業者であれば、式(I)で示される化合物等及び高分子からなる平錠に水1μLを垂らした時の接触角が85度以下となる高分子を選択することができる。そのような高分子としては、たとえば、水溶性セルロース系高分子、水溶性ビニル系高分子等が挙げられる。
ヒドロキシプロピルセルロースの場合、接触角は77~82度であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合、接触角は80~85度であり、ポリビニルピロリドンの場合、接触角は77~82度である。
上記接触角が85度以下となる高分子を用いた場合、実施例1に記載するように、特に良好な溶解濃度を示した。
【0016】
式(I)で示される化合物等及び高分子からなる平錠としては、50mgの式(I)で示される化合物等、および10mgの高分子からなる平錠を用いることができる。錠剤の直径は特に限定されるものではないが、7.5mmの直径の平錠を用いることができる。
平錠とは、錠剤の上下面がフラットな錠剤のことを示す。接触角については、静止液体の自由表面が固体壁に接する場所で液面と固体面とのなす角(液の内部にある角をとる)をいい、化学辞典に記載されている。
【0017】
本発明の医薬組成物は、さらに賦形剤、崩壊剤および滑沢剤を含有していてもよい。
賦形剤としてはマンニトール、微結晶セルロース、結晶セルロース、乳糖、トウモロコシデンプン、バイレショデンプン等を用いることができる。特に、マンニトール(たとえば、D-マンニトール)、結晶セルロース、微結晶セルロースが好ましい。さらに好ましくは、D-マンニトールである。
崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、粉末セルロース、部分アルファー化デンプン、バレイショデンプン、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファー化デンプン、デンプン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。好ましくは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びクロスポビドンであり、さらに好ましくは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、サラシミツロウ、ダイズ硬化油、ミツロウ、セタノール、ラウリル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(マクロゴール)等が挙げられる。好ましくは、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びショ糖脂肪酸エステルであり、さらには好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。
本発明の医薬組成物が賦形剤、崩壊剤および滑沢剤を含む場合、当業者が通常有する知識や経験に従って、適宜配合量を選択することができる。
【0018】
本発明の医薬組成物は、賦形剤、崩壊剤および滑沢剤以外の製薬分野において使用される添加剤を用いることができる。たとえば、結合剤、流動化剤、香料、矯味剤等を含有することができる。
結合剤としては、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等を用いることができる。特に、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク等を用いることができる。特に、軽質無水ケイ酸が好ましい。
香料としては、具体的にはオレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が好ましい。
矯味剤としては具体的には、アスパルテーム、スクラロース、グリシン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、希塩酸、クエン酸およびその塩、無水クエン酸が好ましい。
本発明の医薬組成物が結合剤、流動化剤、香料、矯味剤等を含む場合、当業者が通常有する知識や経験に従って、適宜配合量を選択することができる。
【0019】
式(I)で示される化合物の製薬上許容される塩としては、特に限定するものではないが、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フマル酸塩等が挙げられる。
式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の溶媒和物としては、水和物、エタノール和物、ジオキサン和物等が挙げられる。好ましくは、水和物であり、さらには0.25水和物が好ましい。水和物の製法については特許文献3に記載されている。
式(I)で示される化合物等としては、式(I)で示される化合物の水和物が好ましく、さらには式(I)で示される化合物の0.25水和物が好ましい。
本発明の医薬組成物において、式(I)で示される化合物等は、1~50mg含まれていてもよく、好ましくは3~30mg含まれていてもよい。特に好ましくは、3mg、10mgまたは30mgである。
【0020】
本発明の医薬組成物としては固形製剤が望ましく、固形製剤としてはカプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤等が挙げられる。特に、カプセル剤が好ましい。
カプセル剤の場合、カプセル剤のサイズとしては、000~5号カプセルが好ましい。さらに好ましくは、2~4号カプセルが好ましい。特に好ましくは、2号カプセルまたは4号カプセルが好ましい。
【0021】
本発明の別の態様は、式(I)で示される化合物等を含有するカプセル剤である。
0.1N塩酸水溶液(たとえば、50mLの0.1N塩酸水溶液)において37℃、パドル50rpmで5分間溶出試験を実施した際に、式(II)で示される化合物が検出されないカプセル剤があげられる。
好ましくは、10分間溶出試験を実施した際に、式(II)で示される化合物が検出されないカプセル剤があげられる。さらに好ましくは、15分間溶出試験を実施した際に式(II)で示される化合物が検出されないカプセル剤があげられる。
式(II)の測定は、試験例3記載の方法に従って実施することができる。
【0022】
カプセル剤に使用するカプセル基剤としては、ヒプロメロース、ゼラチン、プルラン、カルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒプロメロース、ゼラチンであり、特に好ましくは、ヒプロメロースである。
また、カプセル剤に使用するカプセル基剤としては、腸溶性基剤以外のカプセル基剤を用いることができる。たとえば、ヒプロメロース、ゼラチン、プルラン等が挙げられる。好ましくは、ヒプロメロース、ゼラチンであり、特に好ましくは、ヒプロメロースである。
【0023】
本発明の医薬組成物の全重量は、特に限定するものではないが、40~250mgであり、より好ましくは88~210mgであり、特に好ましくは、88mgまたは210mgである。
本発明のカプセル剤の全重量は、特に限定するものではないが、40~250mgであり、より好ましくは88~210mgであり、特に好ましくは、88mgまたは210mgである。
【0024】
本発明の医薬組成物がカプセル剤の場合、特に制限されないが、以下のように製造することができる。具体的には、式(I)で示される化合物等、高分子、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤等の添加剤を混合して混合末を製造し、当該混合末をカプセルに充填することにより、カプセル剤を製造することができる。
本発明の医薬組成物が顆粒剤の場合、特に制限されないが、以下のように製造することができる。具体的には、上記のように混合末を製造し、当該混合末を造粒する。造粒工程は、好ましくは水、結合剤を含有する水や溶媒を添加して造粒する湿式造粒法や水を使用しない乾式造粒法や溶融造粒法を用いることで顆粒を製造することができる。
本発明の医薬組成物が錠剤の場合、特に制限されないが、例えば、上記のように顆粒を製造し、当該顆粒を打錠機で打錠することにより、錠剤を製造することができる。また、上記のように混合末を製造し、当該混合末を打錠機で打錠することによっても、錠剤を製造することができる。また、式(I)で示される化合物等、高分子等の添加剤を混合して混合末を製造し、当該混合末を造粒し、崩壊剤、滑沢剤等を混合し、当該混合物を打錠機で打錠することにより、錠剤を製造することもできる。
本発明の医薬組成物が散剤、丸剤等の場合、当業者が通常有する知識や経験に従って、製造することができる。
【0025】
本発明の医薬組成物は、上記の顆粒剤や錠剤を製造後、当該顆粒剤や錠剤を被覆層で被覆することがある。顆粒剤に被覆層を形成する際、流動層造粒コーティング機、流動層転動コーティング機等を用いることができる。錠剤に被覆層を形成する際、パンコーティング機、通気式コーティング機等を用いることができる。コーティング機の中で、顆粒剤や錠剤を流動させながら、この顆粒剤や錠剤に当該コーティング液を噴霧、乾燥し、被覆層を形成する。
【0026】
本発明の医薬組成物は、経口で投与することができる。特に限定するものではないが、式(I)で示される化合物として、3~30mg/日投与することができる。特に好ましくは、3、10、30mg/日投与することができる。
【0027】
本発明の医薬組成物は、特許文献1~3記載の用途に用いることができる。例えば、高脂肪食負荷による体重増加の抑制、インスリン抵抗性惹起の抑制、血中コレステロール上昇の抑制、脂肪肝形成などの抑制、エネルギー消費の亢進または治療に用いることができる。本発明の医薬品組成物により、肥満症等を改善することができる。
【実施例0028】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。式(I)で示される化合物については、D50が2.74μm、D90が8.34μmである粒子径の化合物、D50が3.29μm、D90が10.94μmである粒子径の化合物を使用し、純度(定量値)はそれぞれ99.4%,99.6%である化合物を使用した。D50が3.29μm、D90が10.94μmである粒子径の化合物を測定方法:1に示す液体クロマトグラフ法により、注入量2μLで測定した際のクロマトグラムを図1に示す。式(I)で示される化合物は純度(pa%)99.4%で保持時間12.800分に検出された。
【0029】
測定方法:1
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長267nm)
・カラム:YMC-Triart C18 ExRS、3.0×100mm、1.9μm・カラム温度:60℃付近の一定温度
・移動相A:薄めたギ酸(1→1000)、移動相B:アセトニトリル
・移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を、以下のように変えて濃度勾配制御した。
【表1】
【0030】
(試験例1)溶解濃度評価
式(I)で示される化合物30mgおよび実施例1~4に示す水溶性高分子それぞれ300mgを遠沈管に添加し、pH6.8リン酸緩衝液30mLを加え、恒温振とう機にて37℃、100rpmで振とうした。2時間振とう後、検体を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液中の式(I)で示される化合物の濃度を測定方法:2に示す液体クロマトグラフ法により注入量10μLで測定した。なお、参考例1は高分子を添加せず、式(I)で示される化合物30mgのみを用いて同様の試験を実施した。
高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、ヒプロメロース(信越化学工業社製)、ポリビニルアルコール(Merck社製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製)を使用した。
【表2】
【0031】
測定方法:2
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長267nm)
・カラム:YMC-Triart C18 ExRS、3.0×100mm、1.9μm
・カラム温度:60℃付近の一定温度
・移動相A:薄めたギ酸(1→1000)、移動相B:アセトニトリル
・移動相の送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を3:2となるように濃度勾配制御した。
【0032】
(結果)式(I)で示される化合物の溶解濃度試験結果を以下の表に示す。その結果、式(I)で示される化合物は、高分子を添加することで溶解濃度が大幅に向上した。
【表3】
【0033】
(試験例2)濡れ性評価
式(I)で示される化合物50mgおよび実施例5~7に示す水溶性高分子各10mgをそれぞれ混合した後、静的圧縮機で直径7.5mm、打錠圧5kNの条件で圧縮成形した平錠を得た。得られた各平錠の表面に水1μLの液滴を落とし、このときの接触角を自動接触角計 DMo-601(協和界面科学株式会社)を用いて測定した。繰り返し測定を4回または5回実施し、その平均を算出した。なお、参考例2は高分子を添加せず、式(I)で示される化合物50mgのみを用いて平錠を調整し、同様の試験を実施した。
高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、ヒプロメロース(信越化学工業社製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製)、を使用した。
【0034】
(結果)式(I)で示される化合物および実施例5~7で示す高分子で成形した平錠における接触角及び参考例2の平錠における接触角を以下の表に示す。その結果、式(I)で示される化合物は、高分子を添加することで接触角が小さくなり、濡れ性が向上していることがわかった。
【表4】
【0035】
(試験例3)不純物の抑制効果確認試験
式(I)で示される化合物30mgをヒプロメロースカプセル、またはゼラチンカプセルに充てんし、カプセル剤を得た(実施例8、実施例9)。これを37℃に加温した0.1N HCl 50mLに添加し、50rpmにて溶出試験を実施した。5分後、10分後、15分後、20分後、に3mL抜き取り、0.45μmのフィルターでろ過後にpH9.7の炭酸緩衝液を用いて2倍希釈したものを試験液とした。注入量10μLとし、測定方法:1の条件で類縁物質試験を実施し、式(II)で示される化合物量を測定した。なお、参考例3、参考例4、参考例5及び参考例6は、式(I)で示される化合物30mgのみを用い、pHが異なる試験液を用いて同様の試験を実施した。各経過時間で抜き取った試験液はpH約6.5となるように適切な液で2倍希釈したものを試験液とした。類縁物質量は、HPLCチャートのクロマトグラムのピーク面積の合計を100%とし、その量に対する割合(%)を算出した。
【0036】
(結果)式(I)で示される化合物をカプセルに充てんし、0.1N HCl 50mLで溶出試験を実施した際の式(II)で示される化合物の量及び参考例3~6の結果を表5に示す。その結果、式(I)で示される化合物のみで溶出試験を実施した場合(参考例3~6)には、式(II)で示される化合物が検出されるのに対して、ヒプロメロースカプセルに式(I)で示される化合物を充てん(実施例8)して、同様の溶出試験を実施した場合には式(II)で示される化合物が検出されてないことが分かった。またゼラチンカプセルに式(I)で示される化合物を充てん(実施例9)して、同様の溶出試験を実施した場合には式(II)で示される化合物が試験開始から15分まで検出されなかった。
【表5】
【0037】
(カプセル剤の製造方法)
式(I)で示される化合物を含有するカプセル剤を製造した。表6に、1カプセルあたりの処方を示す。式(I)で示される化合物、D-マンニトール(Roquette社製)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、およびステアリン酸マグネシウム(SpecGx LLC社製)を混合し、30メッシュふるいで篩過、再混合することで混合末を得た。得られた混合末を表6記載のサイズのカプセルに充てんすることで、カプセル剤を製造した。
【表6】
【0038】
(試験例4)溶出試験
実施例10~12および参考例4のカプセル剤について、溶出試験を実施した。試験液にpH6.8リン酸緩衝液 900mLを用い、パドル法により、毎分50回転で試験を行った。試験にはシンカーを使用した。カプセル剤1個をとり、試験を開始し、5、10、15、20、30、45および60分後にそれぞれ溶出液5mLを正確にとり、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、初めのろ液3mLを除き、次のろ液を試験溶液とした。別に式(I)で示される化合物11.1mgを精密に量り、アセトニトリルに溶かし、正確に10mLとした。この液1mLを正確に量り、pH6.8リン酸緩衝液を加えて100mLとし、標準溶液とした。試験溶液及び標準溶液5μLずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、それぞれの式(I)で示される化合物のピーク面積を測定した。

試験条件
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:267mm)
・カラム:YMC-Triart C18 ExRS、3.0×100mm、1.9μm
・カラム温度:60℃付近の一定温度
・移動相A:薄めたギ酸(1→1000)、移動相B:アセトニトリル
・移動相の送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を3:2となるように濃度勾配制御した。
【0039】
上記試験の結果として、実施例11と参考例4の結果を図2に示した。実施例11のカプセル剤は速やかな溶出挙動を示した。なお、実施例10及び12も、実施例11と同様に速やかな溶出挙動を示した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のジヒドロピリジノン誘導体を含有する医薬組成物は優れた溶解濃度を有し、優れた溶出性及び安定性を示すため、肥満症等の疾患および障害の治療に有用である。
図1
図2