(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100976
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】成型用ガラス素材
(51)【国際特許分類】
C03C 3/062 20060101AFI20240719BHJP
G02B 3/00 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C03C3/062
G02B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084799
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2022503597の分割
【原出願日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020034271
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020034272
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020034273
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020063203
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020208160
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020208163
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】庄司 昂浩
(72)【発明者】
【氏名】根岸 智明
(57)【要約】
【課題】 再加熱時の安定性に優れる、成型用ガラス素材を提供すること。
【解決手段】 線膨張係数の最大値α
maxと、質量%表示でのSiO
2およびZrO
2の合計含有量[SiO
2+ZrO
2]とが、下記式(1)を満たす、成形用ガラス素材。α
max×[SiO
2+ZrO
2]≦27900 ・・・(1)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線膨張係数の最大値αmaxと、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とが、下記式(1)を満たす、成形用ガラス素材。
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27900 ・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用ガラス素材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ガラスは、屈折率やアッベ数といった特定の光学常数を有するだけでなく、高い光線透過率や光学特性の均質性も有するという点で窓ガラスや瓶ガラスといった従来のケイ酸塩系ガラスとは異なる。
【0003】
近年は、映像機器の高精細化に対応するため、撮像機器に対する高性能化要求も高まると共に、光学素子自体の低背化要求も大きい。そこで、比較的屈折率が高く、また安定性に優れる光学ガラスが求められている。
【0004】
ここで、光学ガラスの製造方法として、ガラスを再加熱して成形する、リヒートプレス製法や丸棒成形法、押出成形法などが挙げられる。これらのような製法において、例えばNb2O5、TiO2、またはLa2O3といった、光学特性を高める成分が多く導入されたケイ酸塩系光学ガラスでは、ガラスの安定性が低下しやすく、特に再加熱の際に結晶化が進行しやすいという問題があった。
【0005】
結晶化しやすい無機化合物の融液は、急冷することで、ガラス化が可能となることが知られている。したがって、本発明が対象とする無機ガラスは、熔融状態にある無機化合物を結晶化の進行速度よりも早い速度で冷却することによって、その熔融状態における無秩序な原子配置を室温においても保持・凍結させたものである。
【0006】
しかし、少なくとも可視光に吸収を持たない光学ガラスは熔融状態にあっても熱伝導率が高くないため、ガラス全体の冷却速度はガラスの厚みが大きくなるほど低下し、その急冷効果は限定される。例えば非特許文献1に示すとおり、厚さ0.5mmのガラス融液を金属板でプレス成形すれば102~103℃/秒の冷却速度が得られるとしても、厚さ5mmのガラス融液を金属板でプレス成形した際の冷却速度は10~20℃/秒に留まる。このような理由のため、急冷により得られるガラスは、非特許文献2に示す「薄片」であるといわれている。
【0007】
そして、光学素子を成形するための厚みを持つガラスは、およそ10mm程度、大きいもので30mmや40mmの厚みのガラスを連続的に熔融して製造される。そして、ガラスの内部に結晶が存在すると光を散乱する原因となるので、そのようなガラスは、光学素子として使用できない。仮に、このような厚みを持つガラス表面を急冷することによってガラスを得ようとしても、ガラスの内部は十分に急冷されないため、ガラスの内部に結晶が生じてしまうことがある。また、このようなガラス内部の結晶化を避けようとして冷却条件を強くしすぎると、ガラス内部よりも先にガラス表面が固化して、その結果、クラックが発生する、あるいはガラスが割れるなどの問題が生じる。
【0008】
このように、ある程度の厚みを有するガラスを製造する場合に、通常の急冷の操作によって、結晶化せずにガラス化できるのは表面近傍のみである。さらに、一度内部に結晶が生じたガラスを再加熱しても、結晶化の傾向は消失することはなく、成形時にはふたたびガラスの結晶化が進行する可能性が大きい。それゆえ、このようにして得られたガラス素材は、加熱軟化して所望の形状を得ることもできないことから、一般的に産業界で用いられる光学ガラスとしては使用できないものであった。
【0009】
他方で特許文献1には、光学ガラスにおいて通常と異なる冷却条件を提案した先行技術が開示されている。すなわちTiO2を多く含有するケイ酸塩系ガラスについて、熔融ガラスを室温まで冷却し、その後ガラス転移温度Tgよりも低い温度でアニールして除歪することで、再加熱時における結晶の生成を抑制できるガラス素材が得られることが開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1のガラス素材から得られる光学ガラスでは、可視光の短波長域とりわけ青色の光線透過率が低く、部分分散比Pg,Fの値が大きいなど、近年の光学設計の要求を満たすことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】作花済夫「ガラス非晶質の科学」(1983年)p.23
【非特許文献2】(社)ニューガラスフォーラム「ニューガラス基礎講座」(1983年)p.2-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、再加熱時の安定性に優れる、成型用ガラス素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕線膨張係数の最大値αmaxと、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とが、下記式(1)を満たす、成形用ガラス素材。
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27900 ・・・(1)
【0015】
〔2〕線膨張係数の最大値αmaxと、100~300℃における平均線膨張係数α100-300と、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とが、下記式(4)を満たす、成形用ガラス素材。
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦264 ・・・(4)
【0016】
〔3〕線膨張係数の最大値αmaxが、当該成形用ガラス素材をガラス転移温度Tgにおいて均熱化した後-30℃/hrで4時間冷却し、その後放冷して得たガラス素材の線膨張係数の最大値αmax(Tg)よりも小さい、成形用ガラス素材。
【0017】
〔4〕11mm×11mm×10.5mmのサンプルを、ガラス転移温度Tgより200℃高い温度で5分間熱処理したときの、ガラス1gあたりの結晶の数密度Dが10個/g未満である、〔1〕~〔3〕に記載の成形用ガラス素材。
【0018】
〔5〕質量%表示でのTiO2の含有量[TiO2]とNb2O5の含有量[Nb2O5]とが、下記式(7)を満たす、〔1〕~〔4〕に記載の成形用ガラス素材。
{5×[TiO2]}/{3×[Nb2O5]}≦3 ・・・(7)
【0019】
〔6〕280~700nmの波長範囲において、厚さ10mmのガラスの内部透過率が80%を示す波長λτ80が395nm以下である、〔1〕~〔5〕に記載の成形用ガラス素材。
【0020】
〔7〕アッベ数νdと部分分散比Pg,Fとが、下記式(8)を満たす、〔1〕~〔6〕に記載の成形用ガラス素材。
Pg,F≦-0.00286×νd+0.68700 ・・・(8)
【0021】
〔8〕上記〔1〕~〔7〕に記載の成形用ガラス素材からなる光学ガラス。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、再加熱時の安定性に優れる、成型用ガラス素材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る成形用ガラス素材の一例について、製造工程におけるガラスの温度を示すグラフである。縦軸はガラスの温度であり、横軸は対数表示での時間(秒)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明および本明細書において、ガラス組成は、特記しない限り、酸化物基準で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいい、各ガラス成分の表記は慣習にならい、SiO2、TiO2などと記載する。ガラス成分の含有量および合計含有量は、特記しない限り質量基準であり、「%」は「質量%」を意味する。また、「成形用ガラス素材」を単に「ガラス」または「ガラス素材」と称することがある。
【0025】
ガラス成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、等の方法で定量することができる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容する。
【0026】
以下に、本発明の成形用ガラス素材を第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態に分けて説明する。なお、第2、3実施形態におけるガラスの特性は、第1実施形態におけるガラスの特性と同様である。また、第2、3実施形態における各ガラス成分の作用、効果は、第1実施形態における各ガラス成分の作用、効果と同様である。したがって、第2、3実施形態において、第1実施形態に関する説明と重複する事項については適宜省略する。
【0027】
第1実施形態
第1実施形態に係る成形用ガラス素材は、
線膨張係数の最大値αmaxと、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とは、下記式(1)を満たす。
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27900 ・・・(1)
【0028】
第1実施形態に係る成形用ガラス素材において、線膨張係数の最大値αmaxと、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とは、下記式(1)を満たし、好ましくは下記式(2)を満たし、より好ましくは下記式(3)を満たす。下記式を満たすことで、再加熱時の安定性に優れる成型用ガラス素材が得られる。
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27900 ・・・(1)
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27500 ・・・(2)
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27000 ・・・(3)
【0029】
線膨張係数の最大値αmaxは、後述するガラス素材の製造工程において、熔融ガラスを冷却する条件を調整することにより、制御できる。
【0030】
線膨張係数の測定方法は、日本工学工業会規格JOGIS08の規定に基づいて測定する。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とする。試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように加熱し、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定する。線膨張係数の最大値αmaxは、室温~屈伏点温度(試料が屈伏して見かけ上の伸びが止まる温度)の間における線膨張係数の最大値であるので、単位温度上昇あたりの試料の伸びが極大となる温度における線膨張係数を求めればよい。線膨張係数の最大値αMAXは、測定点31個における線膨張係数の移動平均処理をして得られた値の最大値を採用してもよい。また、後述する平均線膨張係数α100-300は、100~300℃における線膨張係数の平均値である。
【0031】
なお、本明細書では、線膨張係数の最大値αMAXおよび平均線膨張係数α100-300は、JOGIS08の規定に従い、10-7℃-1の単位で、整数第1位まで表示する。すなわち、線膨張係数の最大値αMAXおよび平均線膨張係数α100-300は[10-7・℃-1]を単位とする整数で表示する。
また、本明細書では、平均線膨張係数αを[℃-1]を用いた単位で表しているが、単位として[K-1]を用いた場合でも平均線膨張係数αの数値は同じである。
【0032】
本実施形態に係る成形用ガラス素材における上記以外の特性およびガラス組成について、以下に非制限的な例を示す。
【0033】
第1実施形態に係る成形用ガラス素材において、線膨張係数の最大値αmaxと、100~300℃における平均線膨張係数α100-300と、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とは、好ましくは下記式(4)を満たし、より好ましくは下記式(5)を満たし、さらに好ましくは下記式(5)を満たす。再加熱時の安定性に優れる成型用ガラス素材を得るために、下記式を満たすことが好ましい。
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦264 ・・・(4)
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦260 ・・・(5)
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦255 ・・・(6)
【0034】
線膨張係数の最大値αmaxおよび平均線膨張係数α100-300は、後述するガラス素材の製造工程において、熔融ガラスを冷却する条件を調整することにより、制御できる。
【0035】
第1実施形態に係る成形用ガラス素材において、線膨張係数の最大値αmaxは、好ましくは、当該成形用ガラス素材をガラス転移温度Tgにおいて均熱化した後-30℃/hrで4時間冷却し、その後放冷して得たガラス素材の線膨張係数の最大値αmax(Tg)よりも小さい。ただし、線膨張係数の最大値αmaxは、上記線膨張係数の最大値αmax(Tg)よりわずかに大きくてもよい。したがって、αmaxとαmax(Tg)の差分[αmax(Tg)-αmax]は、10-7・℃-1の単位で整数第1位まで表示すると、好ましくは-9以上であり、さらには-4以上、0以上、5以上、10以上、20以上、40以上、60以上、80以上、100以上、120以上、140以上、160以上、180以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上の順により好ましい。また、該差分の上限は特に限定されないが、通常、αmax(Tg)であり、好ましくはαmax(Tg)-100程度である。
【0036】
線膨張係数の最大値αmax(Tg)は、成形用ガラス素材を、ガラス転移温度Tgで均熱化されるように保持した後、-30℃/hrで4時間冷却して得られるガラスについての線膨張係数の最大値である。なお、第1実施形態に係る成形用ガラス素材は、線膨張係数の最大値αmaxを有し、線膨張係数の最大値αmax(Tg)を有さない。後述するとおり、第1実施形態に係る成形用ガラス素材は、ガラス転移温度Tgよりも低い温度で保持して得られるため、αmax(Tg)よりも小さいαmaxを有する。
【0037】
ガラス転移温度Tgで均熱化する場合に、成形用ガラス素材をTg以上の温度に加熱してから、Tgと同じ温度となるように降温してもよい。または、成形用ガラス素材を徐々に加熱して、Tgと同じ温度となるようにしてもよい。
【0038】
図1は、本実施形態に係る成形用ガラス素材の一例について、製造工程におけるガラスの温度を示すグラフである。本実施形態に係る成形用ガラス素材は、後述するとおり、工程2においてガラス転移温度Tgよりも低い温度で保持される。ここで、線膨張係数の最大値α
max(Tg)は、
図1中の比較例(Tg1)のように、工程2においてガラス転移温度Tgで保持されて得られるガラスについての線膨張係数の最大値である。または、線膨張係数の最大値α
max(Tg)は、
図1中の比較例(Tg2)のように、成形用ガラス素材を室温から加熱して、ガラスの温度がTgと同じ温度で均熱化した後、冷却して得られるガラスについての線膨張係数の最大値でもよい。
【0039】
成形用ガラス素材をガラス転移温度Tgよりも高い温度に加熱した後冷却する場合の、ガラス転移温度Tgで均熱化させるのに要する時間の下限は、サンプルの大きさにもよるが、ガラス表面の温度がTgとなってからおよそ30分であり、さらには1時間、2時間、4時間としてもよい。その上限には特に制限がなく、通常は24時間以内であり、好ましくは12時間以内である。なお、ガラスの内部もTg温度に到達した後の均熱化時間は10分程度で良い。
【0040】
成形用ガラス素材を均熱する場合、例えばガラスの表面の温度はガラス転移点Tgとなっていても、内部の温度までTgとなっているとは限らない。ここで、均熱化が十分であるかどうかの判定は、比重により知ることができる。ガラス転移温度Tgで十分に均熱化されてから冷却して得られるガラスは、Tgで均熱化された状態の保持時間が長くなっても比重はほとんど変化しない。一方で、ガラス転移温度Tgで均熱化される前に、例えばガラス内部がガラス転移温度Tgに達する前に冷却されて得られるガラスでは、ガラス内部がTgで十分に均熱化された後に冷却されて得られるガラスとで、比重に差が生じる。
【0041】
したがって、例えば、ガラス転移温度Tgで均熱化されるように成形用ガラス素材を炉内で加熱して保持時間t1(hr)保持した後、冷却して得られるガラスの比重d(t1)と、ガラスを炉内で加熱して保持時間t1+K(hr)保持した後、冷却して得られるガラスの比重d(t1+K)との変化量[d(t1)-d(t1+K)]の絶対値は、0.002以下であることが好ましい。ここで、Kの値の下限は好ましくは4であり、更に好ましくは8、一層好ましくは12である。
【0042】
上記変化量を満たす場合には、保持時間t1での加熱でガラスの均熱化が十分であると判断できる。この場合、ガラス転移温度Tgで均熱化に要する時間はt1以上としてよい。
【0043】
ガラス転移温度Tgで均熱化されたガラスを冷却する方法は、均熱後に降温速度-30℃/hrで4時間冷却する限り、特に制限されない。例えば、温度プログラムが可能な徐冷炉などを用いることができる。なお保持温度Tgから降温速度-30℃/hrで4時間冷却しても、ガラスの歪点を下回らない場合は、保持温度Tgから降温速度-30℃/hrで5時間ないし6時間冷却してもよい。
【0044】
再加熱時の加熱温度は、通常、ガラスが軟化し変形する温度である。加熱温度として具体的には、低い場合でガラス転移温度Tgより50℃程度高い温度、高い場合でガラス転移温度Tgより200~300℃程度高い温度が想定される。再加熱時の加熱温度が低い場合、すなわち、ガラス転移温度Tgより50℃程度高い温度で加熱する場合には、ガラスの安定性を確保しやすく、結晶の発生や失透を抑制できる。
【0045】
しかし、再加熱時の加熱温度が低いと、成形時に高い圧力を加える必要がある。その結果、成形されたガラス成形品(例えばレンズやレンズブランク、丸棒、押出成形品など)にクラックが生じたり、ガラスが割れたりする可能性が高まる。そのため、再加熱時の加熱温度が低い場合には、生産の歩留まりが低下しやすく、また、成形可能なガラス成形品の形状が制限されやすい。
【0046】
一方、再加熱時の加熱温度が高い場合、すなわち、ガラス転移温度Tgより200~300℃程度高い温度で加熱する場合、より短時間で変形でき、成形品の形状の自由度が向上することもあるが、ガラスの安定性が確保しにくく、結晶が生じやすく失透しやすい。これらのことから、本発明のような組成を有するガラスにおいては、成形温度を高めるとより結晶が析出しやすく、その結晶析出を避けて成形温度を従来のガラスよりも低くする必要があるので、クラックや割れ等の変形不良が発生する可能性が高くなる。
【0047】
第1実施形態に係る成形用ガラス素材において、11mm×11mm×10.5mmのサンプルを、ガラス転移温度Tgより200℃高い温度で5分間熱処理したときの、ガラス1gあたりの結晶の数密度Dは、好ましくは10個/g未満であり、その上限は、9個/g、8個/g、7個/g、6個/g、5個/g、4個/g、3個/g、2個/g、1個/gの順により好ましい。結晶の数は、もっとも好ましくは0個/gである。
【0048】
上記数密度Dを求める際の結晶の数は、光学顕微鏡(100倍)で結晶と認められる輝点の数とする。
【0049】
上記数密度Dは、以下の手順で算出する。
【0050】
[サンプルの作製]
まず、光学顕微鏡(100倍)による観察で、ガラス内部に確認可能な異物や結晶が無いことを確認する。その後、ガラスを切断、切削しておよそ11mm×11mm×10.5mmの直方体状の試料を得る。この試料の表面は全て、番手♯80~400の砥石により研削された砂摺り面とする。
【0051】
[熱処理炉の均熱]
ガラス転移温度Tgより200℃高い温度に設定し、炉内温度がTg+200℃に到達後15分以上均熱しておいた、内部空間体積が約25cm×約10cm×約10cmである熱処理炉に入れて加熱する。
【0052】
この際、熱処理炉の制御温度計は内部空間のほぼ中心に設置し、ガラス試料の熱処理時にはガラス試料が制御温度計センサー部から3cm以内に位置するよう設置する。
【0053】
[受け皿の予熱]
大きさ約10.5cm×約3cm×約1cmの直方体状の六面体であるアルミナ製のセラミック板を受け皿とする。その受け皿先端に粉末アルミナ等の融着防止剤、またはBN等の固体潤滑剤を0.01~0.3g、好ましくは0.5g~0.15g、より好ましくは0.1g塗布し、その上にガラス試料を載せ、受け皿ごと熱処理炉に入れて加熱する。上記受け皿は試験前までに熱処理炉に入れて15分以上予熱しておく。
【0054】
[ガラス試料の熱処理]
受け皿をガラス試料投入直前に熱処理炉から取り出し、直ちに当該受け皿上の融着防止剤または固体潤滑剤を塗布した位置にガラス試料を配置し、ガラス試料を受け皿とともに炉内の元の位置に戻す。受け皿を取り出し、元の位置に戻すまでの時間は、受け皿の温度低下を避けるため、好ましくは10秒以内、より好ましくは8秒以内、さらに好ましくは6秒以内に行う。ガラス試料の投入より5分後に上記ガラスを受け皿ごと取り出し、さらに受け皿よりガラス試料を取り出したのち、割れない程度の冷却速度で冷却する。このとき、ガラスの安定性に影響を与えることなく、また、効率よく冷却するために、ガラス試料を、炉より取り出して、即座に(およそ3±1秒後に)にセラミックファイバー等に転げ落とし、試料上面も圧迫しない程度にセラミックファイバー等で覆い、室温まで冷却するとよい。冷却後のガラス試料端部を光学研磨し、光学顕微鏡(100倍)でガラス試料内部を観察する。光学研磨の際には軟化させたガラス試料の好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上を被観察体積として残す。ガラス試料内部の結晶(輝点)の数を数え、また光学研磨後の試料の重量を測定して、1gあたりの数に換算する。
【0055】
第1実施形態に係る成形用ガラス素材において、質量%表示でのTiO2の含有量[TiO2]とNb2O5の含有量[Nb2O5]とは、好ましくは下記式(7)を満たす。
{5×[TiO2]}/{3×[Nb2O5]}≦3 ・・・(7)
【0056】
上記{5×[TiO2]}/{3×[Nb2O5]}の上限は、よりPg,Fを小さくし、かつ、ガラスの安定性および/または高屈折率を実現する目的から、より好ましくは2であり、さらには、1.25、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5の順により好ましい。他方、特にPg,Fを小さくし、更に青色領域の透過率λτ80を向上させる観点から、上記5×[TiO2]}/{3×[Nb2O5]}の上限は、好ましくは0.4であり、さらには0.3、0.2、0.1の順により好ましい。上記5×[TiO2]}/{3×[Nb2O5]}は0.0にすることもできる。
【0057】
上記{5×[TiO2]}/{3×[Nb2O5]}は、成形用ガラス素材におけるTiイオンとNbイオンとの存在比率を表す。Tiイオンが多すぎると、部分分散比Pg,Fが増大するおそれがある。また、熔融ガラスの冷却時に微細な結晶核が生成するおそれがあり、これにより、その後の成形条件によって結晶が成長して光学的な品質が低下するなど、ガラスの生産に支障をきたすおそれがある。したがって、部分分散比Pg,Fの上昇を抑制し、ガラスの結晶化を抑制するために、上記式を満たすことが好ましい。
【0058】
第1実施形態に係る成形用ガラス素材において、部分分散比Pg,Fは好ましくは下記式(8)を満たし、より好ましくは下記式(9)、さらに好ましくは下記式(10)、特に好ましくは下記式(11)、最も好ましくは下記式(12)を満たす。部分分散比Pg,Fが下記式を満たすことにより、色収差補正に好適な光学ガラスを提供することができる。
Pg,F≦-0.00286×νd+0.68700 ・・・(8)
Pg,F≦-0.00286×νd+0.68600 ・・・(9)
Pg,F≦-0.00286×νd+0.68500 ・・・(10)
Pg,F≦-0.00286×νd+0.68400 ・・・(11)
Pg,F≦-0.00286×νd+0.68300 ・・・(12)
【0059】
部分分散比Pg,Fは、g線、F線、C線における各屈折率ng、nF、nCを用いて、下式(13)のように表される。
Pg,F=(ng-nF)/(nF-nC) ・・・(13)
【0060】
部分分散比はPg,Fは、後述する質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O
)/(SiO2+P2O5+B2O3)]、質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]、質量比[(SiO2+P2O5+B2O3)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]、質量比[ZrO2/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]、質量比[P2O5/(SiO2+P2O5+B2O3)]、質量比[Nb2O5/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]を調整することで制御できる。
【0061】
また、ΔPg,Fはノーマルラインに対するPg,Fの偏差として、式(14)のようにして求められる。
ΔPg,F=Pg,F-(0.6483-0.001802×νd) ・・・(14)
【0062】
第1実施形態に係る成形用ガラス素材は、部分分散比Pg,fが比較的小さい高分散ガラスとすることができる。高分散ガラスにおいて、Pg,fの値を低減させることで、通常のF線とC線に注目した色消し(焦点距離の調整)を行う際に、g線付近の焦点距離のずれ、すなわち短波長域の色収差の発生を抑えやすくなる。また、カメラで撮影した画像を拡大した時のコントラストを改善しやすくなる。さらにはデジタル画像を電子的に認識する際にも、被写体のエッジの認識を容易にできることから、画像エンジンの計算負荷の抑制が期待できる。
【0063】
本実施形態に係る成形用ガラス素材は、以下に詳述するガラス組成A、ガラス組成B、またはガラス組成Cを有し得る。
【0064】
(ガラス組成A)
以下に、本実施形態に係る成形用ガラス素材がガラス組成Aを有する場合の、ガラス成分の含有量・比率、およびガラス特性について説明する。
【0065】
本実施形態に係る成形用ガラス素材は、ガラス組成のA場合、好ましくは、ガラスのネットワーク形成成分として主にSiO2を含有する、ケイ酸塩系ガラスである。SiO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには、6%、11%、16%の順に、数値が大きいほどより好ましい。特に、ガラスの屈折率よりも熱的安定性を重視する場合のSiO2の含有量の下限は、好ましくは21%であり、24%、26%、または28%とすることもできる。また、SiO2の含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには38%、35%、33%の順に、数値が小さいほど好ましく、特にガラスの安定性よりも屈折率を重視する場合のSiO2の含有量の上限は、好ましくは30%であり、28%、26%、または25%とすることもできる。
【0066】
SiO2は、ガラス組成Aにおいて、ガラスのネットワーク形成成分として、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善し、熔融ガラスの粘度を高め、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する。再加熱時の熱的安定性も高め、結晶の数密度Dを小さくする効果を有する。一方、SiO2の含有量が多いと、ガラスの耐失透性が低下する傾向があり、Pg,Fを上昇させる。そのため、したがって、SiO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る成形用ガラス素材は、ガラス組成Aの場合、好ましくはP2O5を含有する。P2O5の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには、0.2%、0.4%、0.6%の順により好ましい。また、P2O5の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには、8%、7%、6%、5%、4%の順により好ましい。
【0068】
ガラス組成Aにおいて、P2O5の含有量の下限が上記を満たすことで、再加熱時の熱的安定性も高め、結晶の数密度Dを小さくする効果を有する。また、P2O5の含有量の
上限が上記を満たすことで、部分分散比Pg,Fの上昇を抑制し、再加熱時の安定性を保持できる。
【0069】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、B2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%の順により好ましい。B2O3の含有量は0%であってもよい。
【0070】
B2O3は、ガラス組成Aにおいて、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熔解性を高めるとともに、熱的安定性を改善する働きを有する。一方、B2O3の含有量が多すぎると、ガラス熔融時にガラス成分の揮発量が増加するおそれがあり、また、高分散化を妨げ、耐失透性が低下する傾向がある。さらに、同量のSiO2と置換した場合と比較するとガラスの粘性がより低下するおそれがある。そして、過剰に導入すると再加熱時の熱的安定性を低下させるおそれもある。そのため、B2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0071】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Al2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。Al2O3の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには、0.02%、0.04%、0.08%、0.12%、0.14%、0.16%、0.2%、0.3%の順により好ましい。Al2O3の含有量は0%であってもよい。
【0072】
Al2O3は、ガラス組成Aにおいて、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有するガラス成分であり、ネットワーク形成成分として考えることができる。一方、Al2O3の含有量が多くなると、ガラスの耐失透性が低下する。また、ガラス転移温度Tgが上昇するほか、熔融ガラスを冷却する際の熱的安定性が低下する等の問題が生じやすい。このような問題を回避する観点から、Al2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。また、ガラス融液を熔融ないし搬送する際に耐火物レンガ製の容器および/または樋を使用する場合には、Al2O3の含有量は0.02%以上とすることもできる。
【0073】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SiO2およびP2O5の合計含有量[SiO2+P2O5]の下限は、好ましくは5%であり、さらには、11%、16%、21%の順により好ましい。特に、安定性を重視する場合の該合計含有量の下限は、好ましくは24%であり、27%、または30%とすることもできる。また、該合計含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには、38%、36%、34%、33%の順により好ましい。
【0074】
ガラス組成Aにおいて、SiO2およびP2O5の合計含有量[SiO2+P2O5]の下限が上記を満たすことで、再加熱時の熱的安定性を高め、結晶の数密度Dを小さくすることができる。また、該合計含有量の上限が上記を満たすことで、屈折率の低下や部分分散比Pg,Fの上昇を抑制し、また、ガラスの熱的安定性を保持できる。
【0075】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SiO2、P2O5およびB2O3の合計含有量[SiO2+P2O5+B2O3]の下限は、好ましくは5%であり、さらには10%、15%、18%、21%、22%、23%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは50%であり、さらには45%、40%、37%、35%、34%、33%の順により好ましい。特に、屈折率を重視する場合の該合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、28%、26%、または25%とすることもできる。
【0076】
ガラス組成Aにおいて、再加熱時の安定性を保持する観点から、合計含有量[SiO2+P2O5+B2O3]は上記範囲であることが好ましい。
【0077】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SiO2の含有量に対するB2O3の含有量の質量比[B2O3/SiO2]の上限は、好ましくは0.8
0であり、さらには0.70、0.60、0.50、0.40、0.30、0.20、0.10、0.05、0.03の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.005、0.01、0.015、0.02の順により好ましい。該質量比は0であってもよい。
【0078】
ガラス組成Aにおいて、ガラスの比重の増大を抑制し、また、ガラスの着色の増大を抑制する観点から、質量比[B2O3/SiO2]は上記範囲であることが好ましい。
【0079】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SiO2およびP2O5の合計含有量に対するP2O5の含有量の質量比[P2O5/(SiO2+P2O5)]の下限は、好ましくは0.00であり、さらには、0.006、0.011、0.016、0.021の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.20であり、さらには、0.18、0.16、0.14、0.12、0.11の順により好ましい。
【0080】
ガラス組成Aにおいて、質量比[P2O5/(SiO2+P2O5)]が低すぎると再加熱時の安定性が悪化するおそれがあり、高すぎると部分分散比Pg,Fが上昇するおそれがある。したがって、該質量比は上記範囲であることが好ましい。
【0081】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SiO2、P2O5およびB2O3の合計含有量に対するP2O5の含有量の質量比[P2O5/(SiO2+P2O5+B2O3)]の下限は、好ましくは0.00であり、さらには、0.006、0.011、0.016、0.021の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.20であり、さらには、0.18、0.16、0.14、0.12、0.11の順により好ましい。
【0082】
ガラス組成Aにおいて、質量比[P2O5/(SiO2+P2O5+B2O3)]が高すぎると部分分散比Pg,Fが上昇するおそれがある。したがって、該質量比は上記範囲であることが好ましい。
【0083】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SiO2、P2O5およびB2O3の合計含有量に対するSiO2の含有量の質量比[SiO2/(SiO2+P2O5+B2O3)]の下限は、好ましくは0.100であり、さらには、0.200、0.300、0.400、0.500、0.600、0.700、0.800、0.820、0.840、0.860の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.000であり、さらには、0.995、0.990、0.985、0.980、0.978の順により好ましい。
【0084】
ガラス組成Aにおいて、再加熱時の安定性を保持する観点から、質量比[SiO2/(SiO2+P2O5+B2O3)]は上記範囲であることが好ましい。
【0085】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、ZrO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには、2%、3%、4%、5%の順に好ましい。特に屈折率よりも安定性を重視する場合のZrO2の含有量の下限は、好ましくは6%であり、または8%とすることもできる。また、ZrO2の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには、14%、13%、12%、11%、10%の順により好ましい。
特に安定性よりも屈折率を重視する場合のZrO2の含有量の上限は、好ましくは9%であり、8%、7%、または6%とすることもできる。
【0086】
ガラス組成Aにおいて、ZrO2の含有量の下限が上記を満たすことで、高屈性率高分散性かつ高い内部透過率λτ80を両立したガラスを得ることができる。また、ZrO2の含有量の上限が上記を満たすことで、部分分散比Pg,Fの上昇を抑制し、光学素子としての欠陥の発生を抑制できるほか、ガラスの熔融性および熱的安定性を保持できる。
【0087】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5の含有量の下限は、好ましくは1%であり、さらには、11%、21%、26%、31%、34%、36%の順により好ましい。特に安定性よりも屈折率を重視する場合のNb2O5の含有量の下限は、好ましくは39%であり、41%、46%、49%、または50%とすることもできる。また、Nb2O5の含有量の上限は、好ましくは80%であり、さらには、70%、64%、59%、56%、54%の順により好ましい。特に屈折率よりも安定性を重視する場合のNb2O5の含有量の上限は、好ましくは51%であり、47%、44%、43%、または38%とすることもできる。
【0088】
ガラス組成Aにおいて、Nb2O5の含有量の下限が上記を満たすことで、部分分散比Pg,Fの低減された、高屈折率高分散性のガラスを得ることができる。また、Nb2O5は、ガラスの熱的安定性および化学的耐久性を改善するガラス成分でもある。含有量が少ないとPg,Fが上昇するおそれがある一方、過剰に含有するとガラスの熱的安定性が悪化するおそれがある。したがって、Nb2O5の含有量の上限が上記を満たすことで、ガラスの熱的安定性および化学的耐久性を良好に保持し、再加熱時の成形性を向上できる。
【0089】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、TiO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには、1%、2%、3%、4%の順により好ましい。また、TiO2の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、15%、11%、8%、6%の順により好ましい。
【0090】
TiO2は、ガラス組成Aにおいて、高屈折率かつ高分散化に寄与する成分であり、Nb2O5と共存することによって、高屈折率を維持しながらガラス安定性を改善し、再加熱時の安定性を向上させる。一方で、TiO2を過剰に導入すると、部分分散比Pg,Fが上昇し、またガラスの短波長域の透過率が低下するおそれがある。また、ガラスの屈伏点よりも低い温度範囲において結晶が生成することがあり、ガラスの生産性に支障をきたすおそれがある。したがって、TiO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0091】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5およびTiO2の合計含有量[Nb2O5+TiO2]の下限は、好ましくは10%であり、さらには、20%、30%、35%、38%、39%、40%、41%の順により好ましい。特に安定性よりも屈折率を重視する場合の該合計含有量の下限は、好ましくは45%であり、48%、51%、53%、または55%とすることもできる。また、該合計含有量の上限は、好ましくは80%であり、さらには、75%、70%、65%、62%、59%、56%の順により好ましい。特に屈折率よりも安定性を重視する場合の該合計含有量の上限は、好ましくは53%であり、50%、47%、44%、または43%とすることもできる。
【0092】
ガラス組成Aにおいて、高屈折率を維持しながらガラス安定性を改善し、再加熱時の安定性を向上させる観点から、合計含有量[Nb2O5+TiO2]は上記範囲であることが好ましい。
【0093】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5の含有量に対するTiO2の含有量の質量比[TiO2/Nb2O5]の上限は、好ましくは0.50であり、さらには0.40、0.30、0.20、0.18、0.16の順により好ましい。該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.02、0.04、0.06、0.08、0.10の順により好ましい。該質量比は0であってもよい。
【0094】
ガラス組成Aにおいて、部分分散比Pg,Fの上昇を抑制し、λτ80を高める観点から、質量比[TiO2/Nb2O5]は上記範囲であることが好ましい。
【0095】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5の含有量に対するP2O5の含有量の質量比[P2O5/Nb2O5]の下限は、好ましくは0.000であり、さらには、0.005、0.010、0.015、0.020の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.200であり、さらには、0.150、0.100、0.090、0.080の順により好ましい。
【0096】
ガラス組成Aにおいて、部分分散比Pg,Fの上昇を抑制させる観点から、質量比[P2O5/Nb2O5]は上記範囲であることが好ましい。
【0097】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5およびTiO2の合計含有量に対するP2O5の含有量の質量比[P2O5/(Nb2O5+TiO2)]の下限は、好ましくは0.000であり、さらには、0.005、0.010、0.015、0.018の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.200であり、さらには、0.150、0.100、0.090、0.080の順により好ましい。
【0098】
ガラス組成Aにおいて、所望の高分散性を得る観点から、質量比[P2O5/(Nb2O5+TiO2)]は上記範囲であることが好ましい。
【0099】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、WO3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、17%、14%、11%、8%、6%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%の順により好ましい。また、WO3の含有量の下限は、好ましくは0%である。WO3の含有量は0%であってもよい。
【0100】
WO3は、ガラス組成Aにおいて、再加熱時の安定性を向上させる成分である。一方、WO3は、部分分散比Pg,Fを上昇させる。また、ガラスの着色の原因となりやすく、λτ80を低下させる。したがって、WO3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0101】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Bi2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、17%、14%、11%、8%、6%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%の順により好ましい。また、Bi2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Bi2O3の含有量は0%であってもよい。
【0102】
Bi2O3は、ガラス組成Aにおいて、適量を含有させることによりガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Bi2O3の含有量が多すぎると、部分分散比Pg,Fが上昇する。さらに、ガラスの着色が増大し、λτ80が低下するおそれがある。したがって、Bi2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0103】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量[Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3]の上限は、好ましくは80%であり、さらには、75%、70%、65%、62%、59%、56%の順により好ましい。特に屈折率よりも安定性を重視する場合の該合計含有量の上限は、好ましくは53%であり、50%、47%、44%、または43%とすることもできる。また、該合計含有量の下限は、好ましくは10%であり、さらには、20%、30%、35%、38%、39%、40%、41%の順により好ましい。特に安定性よりも屈折率を重視する場合の該合計含有量の下限は、好ましくは45%であり、48%、51%、53%、または55%とすることもできる。
【0104】
ガラス組成Aにおいて、TiO2、WO3およびBi2O3は、Nb2O5とともに、高屈折率化、高分散化に寄与する成分である。したがって、合計含有量[Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3]は上記範囲であることが好ましい。
【0105】
また、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するNb2O5の含有量の質量比[Nb2O5/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限は、ガラスの熱的安定性を保持し、ガラスのλτ80を高め、かつ再加熱時の安定性を向上する観点から、好ましくは1であり、さらには0.98、0.96、0.94、0.92の順により好ましい。該質量比の下限は、好ましくは0.1であり、さらには0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8の順により好ましい。
【0106】
さらに、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するZrO2の含有量の質量比[ZrO2/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限は、ガラスの熱的安定性を保持する観点から、好ましくは1であり、さらには0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.25の順により好ましい。また、質量比[ZrO2/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の下限は、ガラスのλτ80を高める観点から、好ましくは001であり、さらには0.03、0.05、0.08、0.09、0.10、0.11の順により好ましい。なお、ガラスの高分散性を維持する観点からは、質量比[ZrO2/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限を0.02、0.01、または0.00とすることもできる。
【0107】
そして、本実施形態に係るガラスにおいて、ガラス組成Aの場合、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するSiO2、P2O5およびB2O3の合計含有量の質量比[(SiO2+P2O5+B2O3)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限は、好ましくは5であり、さらには4、3、2、1.5、1.3、1.1、1.0、0.9、0.8の順により好ましい。特に屈折率を重視する場合の該質量比の上限は、好ましくは0.7であり、0.6、0.5、または0.45とすることもできる。また、該質量比の下限は、好ましくは0.013であり、さらには0.10、0.20、0.30、0.35、0.40の順により好ましい。特に安定性を重視する場合該質量比の下限は、好ましくは0.50であり、0.60、0.70、または0.75とすることもできる。
【0108】
ガラス組成Aにおいて、質量比[(SiO2+P2O5+B2O3)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]を上記範囲とすることで、ガラスの屈折率を調整し、熱的安定性を保持できる。
【0109】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Ta2O5の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、8%,6%、4%、2%、1%の順により好ましい。また、Ta2O5の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ta2O5の含有量は0%であってもよい。
【0110】
Ta2O5は、ガラス組成Aにおいて、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するガラス成分である。一方、Ta2O5の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスを熔融するときに、ガラス原料の熔け残りが生じやすくなる。また、高価な成分であり、ガラスの製造コストが増大するおそれがある。そのため、Ta2O5の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0111】
また、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するTa2O5の含有量の質量比[Ta2O5/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限は、好ましくは0.9であり、さらには0.7、0.5、0.3、0.2、0.1、0.05の順により好ましい。該質量比の下限は、好ましくは0.000である。
【0112】
ガラス組成Aにおいて、比重の増加を抑制し、またガラスの製造コストの増大を抑制する観点から、質量比[Ta2O5/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]は上記範囲であることが好ましい。
【0113】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには9%、8%、7%、6%の順により好ましい。Li2Oの含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1%、2%、3%、3.5%、4%、4.5%の順により好ましい。
【0114】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Na2Oの含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、18%、16%、14、12%の順により好ましい。Na2Oの含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1%、2%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%の順により好ましい。
【0115】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、K2Oの含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには20%、15%、10%、7%、4%の順により好ましい。K2Oの含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%の順により好ましい。
【0116】
ガラス組成Aにおいて、Li2O、Na2OおよびK2Oは、いずれも液相温度を下げ、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると、化学的耐久性、耐候性が低下する。そのため、Li2O、Na2OおよびK2Oの各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0117】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]の下限は、好ましくは1%であり、さらには5%、8%、10%、12%、13%、14%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには35%、30%、25%,22%、20%、19%、18%、17%の順により好ましい。
【0118】
ガラス組成Aにおいて、合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]の下限が上記を満たすことで、ガラスの熔融性を改善し、液相温度の上昇を抑制できる。また、該合計含有量の上限が上記を満たすことで、ガラスの粘性を高めてガラス融液の結晶化の速度を小さくするとともに、再加熱時の安定性を向上できる。
【0119】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5およびTiO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O)/(Nb2O5+TiO2)]の下限は、好ましくは0.10であり、さらには0.15、0.18、0.21、0.23、0.25の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.70であり、さらには0.65、0.60、0.55、0.50、0.45の順により好ましい。
【0120】
ガラス組成Aにおいて、ガラスの熔解特性や熱的安定性を維持しながら所望の光学恒数を得る観点から、質量比[(Li2O+Na2O+K2O)/(Nb2O5+TiO2)]は上記範囲であることが好ましい。
【0121】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2O、K2OおよびNb2O5の合計含有量に対するP2O5の含有量の質量比[P2O5/(Li2O+Na2O+K2O+Nb2O5)]の上限は、好ましくは0.500であり、さらには0.400、0.300、0.200、0.100、0.080、0.070、0.060の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.005、0.010、0.011、0.012、0.013、0.014の順により好ましい。
【0122】
ガラス組成Aにおいて、ガラスを安定化させ、かつ部分分散比Pg,Fの上昇を抑制する観点から、質量比[P2O5/(Li2O+Na2O+K2O+Nb2O5)]は上記範囲であることが好ましい。
【0123】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Cs2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%,3%、2%、1%の順により好ましい。Cs2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0124】
Cs2Oは、ガラス組成Aにおいて、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると、化学的耐久性、耐候性が低下する。そのため、Cs2Oの含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0125】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O+Cs2O]の下限は、好ましくは1%であり、さらには5%、8%、10%、12%、13%、14%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには35%、30%、25%,22%、20%、19%、18%、17%の順により好ましい。
【0126】
ガラス組成Aにおいて、再加熱時の安定性を保持する観点から、合計含有量[Li2O+Na2O+K2O+Cs2O]は上記範囲であることが好ましい。
【0127】
また、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2O、K2O、およびCs2Oの合計含有量に対するLi2Oの含有量の質量比[Li2O/(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)]の上限は、液相温度の上昇を抑制し、耐候性の低下を抑制する観点から、好ましくは1であり、さらには0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.45、0.4の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.2、0.25、0.29、0.31、0.33の順により好ましい。
【0128】
さらに、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2O、K2O、およびCs2Oの合計含有量に対するNa2Oの含有量の質量比[Na2O/(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)]の上限は、液相温度の上昇を抑制し、耐候性の低下を抑制する観点から、好ましくは1であり、さらには0.95、0.9、0.85、0.80、0.75、0.70、0.66の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.2、0.25、0.29、0.31、0.33、0.34の順により好ましい。
【0129】
そして、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2O、K2O、およびCs2Oの合計含有量に対するK2Oの含有量の質量比[K2O/(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)]上限は、液相温度の上昇を抑制し、耐候性の低下を抑制する観点から、好ましくは1であり、さらには0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.28、0.27の順により好ましい。該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.15、0.20、0.22、0.24、0.25の順により好ましい。
【0130】
さらに、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するP2O5の含有量の質量比[P2O5/(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限は、好ましくは1であり、さらには0.5、0.3、0.1、0.08、0.07、0.06の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.005、0.008、0.011、0.012の順により好ましい。
【0131】
ガラス組成Aにおいて、ガラス成分としてLi2O、Na2O、K2O、Cs2O、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3を適宜導入することにより、所望のアッベ数νdおよび部分分散比Pg,Fを得ることができる。しかし、これら成分をケイ酸塩系ガラスに導入すると再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。一方、P2O5は再加熱時の安定性を向上させる成分である。したがって、質量比[P2O5/(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]が高すぎると、ガラスの安定性が悪化し、部分分散比Pg,Fが上昇するおそれがあり、また、低すぎても、再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。よって、該質量比は上記範囲であることが好ましい。
【0132】
そして、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SiO2、P2O5およびB2O3の合計含有量に対するLi2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(SiO2+P2O5+B2O3)]の上限は、好ましくは5であり、さらには4、3、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.02であり、さらには0.1、0.2、0.3、0.4、0.45の順により好ましい。
【0133】
ガラス組成Aにおいて、質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(SiO2+P2O5+B2O3)]が低すぎると、ガラス転移点Tgが上昇するほか、熔解性が悪化し、部分分散比Pg,Fが上昇するおそれがある。また、高すぎると、ガラスの熔融時の粘性が低下し、融液の熱的安定性が低下するほか、再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。
【0134】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するLi2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限は、好ましくは4であり、さらには3,2,1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.015であり、さらには0.100、0.200、0.300の順により好ましい。
【0135】
ガラス組成Aにおいて、質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]が低すぎると、部分分散比Pg,Fが上昇し、透過率が悪化するおそれがある。また、高すぎると、アッベ数が大きくなり、屈折率も低下するほか、再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。
【0136】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、MgOの含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、MgOの含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラスの比抵抗を高めて熔解効率を向上させる場合のMgOの含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、4%、または6%とすることもできる。
【0137】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、CaOの含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、CaOの含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラスの比抵抗を高めて熔解効率を向上させる場合のCaOの含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、4%、6%、または8%とすることもできる。
【0138】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、SrOの含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、SrOの含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラスの比抵抗を高めて熔解効率を向上させる場合のSrOの含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、4%、6%、または8%とすることもできる。
【0139】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、BaOの含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、BaOの含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラスの比抵抗を高めて熔解効率を向上させる場合のBaOの含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、4%、6%、または8%とすることもできる。
【0140】
ガラス組成Aにおいて、MgO、CaO、SrO、BaOは、いずれもガラスの熱的安定性および耐失透性を改善させる働きを有するガラス成分である。しかし、これらガラス成分の含有量が多くなると、比重が増加し、高分散性が損なわれ、また、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。そのため、これらガラス成分の各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0141】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、ZnOの含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、ZnOの含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラスの比抵抗を高めて熔解効率を向上させる場合、あるいはガラス転移点を低下させる場合のZnOの含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、4%、または6%とすることもできる。
【0142】
ZnOは、ガラス組成Aにおいて、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、ZnOの含有量が多すぎると比重が上昇するおそれがある。そのため、ZnOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0143】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、MgOおよびCaOの合計含有量[MgO+CaO]の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。高分散化を妨げることなく熱的安定性を維持する観点から、該合計含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0144】
また、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量[MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO]の上限は、好ましくは20%であり、さらには、14%、9%、4%、2%、1%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラスの比抵抗を高めて熔解効率を向上させる場合の該合計含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、4%、6%、または8%とすることもできる。比重の増加を抑制し、また高分散化を妨げることなく熱的安定性を維持する観点から、該合計含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0145】
また、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量に対するMgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量の質量比[(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)]の上限は、好ましくは20であり、さらには18、16、14の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0であり、さらには5、8、10、12、13の順により好ましい。該質量比は0であってもよい。ガラスの比重の増加を抑制する観点、ガラスの充填率の向上によって、熔融性を高めながら高屈折率高分散化する観点、および、ガラスの比抵抗を適切に維持する観点から、該質量比は上記範囲であることが好ましい。
【0146】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、La2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、17%、14%、12%の順により好ましい。屈折率よりも安定性を重視する場合のLa2O3の含有量の上限は、9%、7%、5%、3%、2%、または1%とすることもできる。上限は0%であってもよい。また、La2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラス形成成分の含有量を維持したまま屈折率を高める場合のLa2O3の含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、4%、または6%とすることもできる。
【0147】
ガラス組成Aにおいて、La2O3の含有量が多くなると、ガラスの高分散化が抑制され、また熱的安定性が低下する。したがって、La2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0148】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Y2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには、17%、14%、12%の順により好ましい。屈折率よりも安定性を重視する場合のY2O3の含有量の上限は、9%、7%、5%、3%、2%、または1%とすることもできる。上限は0%であってもよい。また、Y2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。特に、ガラス形成成分の含有量を維持したまま屈折率を高める場合のY2O3の含有量の下限は、好ましくは1%であり、2%、3%、または5%とすることもできる。
【0149】
ガラス組成Aにおいて、Y2O3の含有量が多くなり過ぎると、ガラスの高分散化が抑制され、また熱的安定性が低下し、製造中にガラスが失透しやすくなる。したがって、Y2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0150】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Sc2O3の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには、2%、1.5%、1%、0.5%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、Sc2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0151】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、HfO2の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには、2%、1.5%、1%、0.5%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、HfO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0152】
Sc2O3、HfO2は、ガラス組成Aにおいて、ガラスの高分散性を高める働きを有するが、高価な成分である。そのため、Sc2O3、HfO2の各含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0153】
なお、HfO2はZrO2の原料に一定量含まれることがある。したがって、ZrO2を含有するガラスは、一定量のHfO2を含有することがある。そのため、第1実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、ZrO2の含有量に対するHfO2の含有量の質量比[HfO2/ZrO2]も所定範囲となりうる。例えば、該質量比[HfO2/ZrO2]の下限は、0.005であってもよく、さらには0.010、0.013、または、0.015であってもよい。一方で、該質量比の上限は、0.05であってもよく、さらには0.040、0.030、0.020、または0.018であってもよい。耐火物レンガの成分がガラス中に熔出することを抑える観点から、ガラスは少量のZrO2を含有することが好ましく、そのためにHfO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0154】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Lu2O3の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには、2%、1.5%、1%、0.5%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、Lu2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0155】
Lu2O3は、ガラス組成Aにおいて、ガラスの高分散性を高める働きを有するが、分子量が大きいことから、ガラスの比重を増加させるガラス成分でもある。そのため、Lu2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0156】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、GeO2の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには、2%、1.5%、1%、0.5%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、GeO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0157】
GeO2は、ガラス組成Aにおいて、ガラスの高分散性を高める働きを有するが、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、GeO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0158】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Gd2O3の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには、2%、1.5%、1%、0.5%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、Gd2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0159】
ガラス組成Aにおいて、Gd2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性が低下する。また、Gd2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの比重が増大し、好ましくない。したがって、ガラスの熱的安定性を良好に維持しつつ、比重の増大を抑制する観点から、Gd2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0160】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、Yb2O3の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには、2%、1.5%、1%、0.5%の順により好ましい。上限は0%であってもよい。また、Yb2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0161】
ガラス組成Aにおいて、Yb2O3は、La2O3、Gd2O3、Y2O3と比べて分子量が大きいため、ガラスの比重を増大させる。ガラスの比重が増大すると、光学素子の質量が増大する。例えば、質量の大きいレンズをオートフォーカス式の撮像レンズに組み込むと、オートフォーカス時にレンズの駆動に要する電力が増大し、電池の消耗が激しくなる。したがって、Yb2O3の含有量を低減させて、ガラスの比重の増大を抑えることが望ましい。
【0162】
また、ガラス組成Aにおいて、Yb2O3の含有量が多すぎるとガラスの熱的安定性が低下し、また近赤外領域に吸収を生じやすい。ガラスの近赤外領域の透過率を維持し、熱的安定性の低下を防ぎ、比重の増大を抑制する観点から、Yb2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0163】
本実施形態に係る成形用ガラス素材は、ガラス組成Aの場合、主として上述のガラス成分、すなわちSiO2、P2O5、B2O3、Al2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、Bi2O3、Ta2O5、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Y2O3、Sc2O3、HfO2、Lu2O3、GeO2、Gd2O3、およびYb2O3で構成されていることが好ましく、上述のガラス成分の合計含有量の下限は、好ましくは95.5%であり、さらには、96.0%、96.5%、97.0%、97.5%、98.0%、98.5%、99.0%の順により好ましい。
【0164】
なお、本実施形態に係る成形用ガラス素材は、基本的に上記ガラス成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することも可能である。また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0165】
(その他の成分)
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態に係る成形用ガラス素材はこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0166】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態に係る成形用ガラス素材はこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0167】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、本実施形態に係る成形用ガラス素材はこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0168】
Sb(Sb2O3)、Ce(CeO2)は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤であるほか、少量の導入において還元されやすい成分の酸化を促進し、λτ80を高める効果を持つ。Ce(CeO2)は、Sb(Sb2O3)と比較し、清澄効果が小さい。Ce(CeO2)は、多量に添加するとガラスの着色が強まる傾向がある。
【0169】
Sb2O3の含有量は、外割り表示とする。すなわち、Sb2O3およびCeO2以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSb2O3の含有量の上限は、好ましくは1.000質量%であり、さらには、0.500質量%、0.300質量%、0.100質量%、0.080質量%、0.060質量%、0.040質量%の順により好ましい。また、Sb2O3の含有量の下限は、好ましくは0.000質量%であり、さらには、0.001質量%、0.003質量%、0.005質量%、0.010質量%、0.015質量%、0.020質量%の順により好ましい。なおSb2O3自身もガラスの透過吸収端を長波長シフトさせるため、ガラスの短波長域の透過率をなるべく高める観点では、Sb2O3の含有量は0.008質量%以下であってもよく、さらには0.004質量%以下であってもよく、0.000質量%であってもよい。
【0170】
CeO2の含有量も、外割り表示とする。すなわち、CeO2、Sb2O3以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのCeO2の含有量の上限は、好ましくは1.000質量%であり、さらには、0.500質量%、0.300質量%、0.100質量%、0.080質量%、0.060質量%、0.040質量%の順により好ましい。また、CeO2の含有量の下限は、好ましくは0.000質量%であり、さらには、0.005質量%、0.010質量%、0.015質量%、0.020質量%の順により好ましい。CeO2の含有量は0質量%であってもよい。
【0171】
(ガラス組成Aを有する場合のガラスの特性)
<アッベ数νd>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、アッベ数νdの上限は、好ましくは50であり、45、40、35、33、31、または30としてもよい。また、アッベ数νdの下限は、好ましくは15であり、17、18、19、20、21、22、23、または24としてもよい。
【0172】
アッベ数νdを上記範囲とすることで、高分散性のガラスを得ることができる。
アッベ数νdは、高分散化に寄与するガラス成分である、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の含有量を調整することにより制御できる。
【0173】
<屈折率nd>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、屈折率ndの下限は1.65とすることができ、さらには1.70、1.72、1.74、1.76、または1.80とすることもできる。また、屈折率ndの上限は2.30とすることができ、さらには2.10、2.00、または1.90とすることもできる。屈折率は、高屈折率化に寄与するガラス成分である、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の含有量を調整することにより制御できる。
【0174】
<ガラス転移温度Tg>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、ガラス転移温度Tgの上限は、好ましくは700℃、680℃、670℃、660℃、650℃、640℃、630℃、620℃、610℃、600℃、590℃、580℃の順により好ましい。また、ガラス転移温度Tgの下限は、特に制限されないが、好ましくは200℃であり、さらには300℃、400℃、450℃の順により好ましい。ガラス転移温度Tgは、質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]等を調整することにより制御できる。
【0175】
ガラス転移温度Tgの上限が上記を満たすことにより、ガラスの再加熱時の成型温度およびアニール温度の上昇を抑制することができ、再加熱成形用設備およびアニール設備への熱的ダメージを軽減できる。
【0176】
ガラス転移温度Tgの下限が上記を満たすことにより、本発明のガラスが所望のアッベ数、屈折率あるいは透過率を備えつつ、再加熱時の成形性およびガラスの熱的安定性を良好に維持しやすくなる。
【0177】
<比重>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、比重の上限は、好ましくは4.3であり、さらには4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6の順により好ましい。比重の下限は特に制限されないが、通常2.0であり、好ましくは2.5である。
【0178】
比重は、繰り返し測定精度が±0.001~±0.002の範囲となる測定法により測定する。
【0179】
<λτ80>
ガラス組成Aの場合、厚さ2.0mm±0.1mmおよび10.0mm±0.1mmのガラス試料を用いて、JOGIS17(光学ガラスの内部透過率の測定方法)に準じ波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定し、厚さ10mmの内部透過率が80%となる波長をλτ80とする。
【0180】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、λτ80の上限は、好ましくは395nmであり、さらには、390nm、385nm、380nm、375nm、370nmの順に、数値が小さいほど好ましい。λτ80の下限は、特に制限されないが、通常250nmであり、紫外光の透過率を抑える観点からは300nmでもよく、さらには320nmでもよい。
【0181】
<λ70>
ガラス組成Aの場合、厚さ10.0mm±0.1mmのガラス試料について波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定し、外部透過率が70%となる波長をλ70とする。
【0182】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、λ70の上限は、好ましくは445nmであり、さらには、440nm、430nm、420nm、410nm、400nm、390nm、380nmの順により好ましい。λ70の下限は、特に制限されないが、通常255nmであり、紫外光の透過率を抑える観点からは305nmでもよく、さらには325nmでもよい。
【0183】
なお、本発明では、ガラス組成Aの場合、高屈折率でありながら部分分散比Pg,fが小さい。したがって、後述する工程3でのガラスの冷却速度を10分の1にした場合でも、ガラスの分散性の変動を抑えることができる。例えば、工程3で、後述する冷却速度により得られるガラスと、その冷却速度を10分の1にしたときに得られるガラスとで、アッベ数の変化Δνdは、好ましくは-0.10より大きく、より好ましくは-0.09より大きく、さらにその下限は、-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、-0.04、-0.03の順により好ましい。また、低分散レンズとの組み合わせにおいて効果的に色収差を補正する観点からは、本実施形態のガラス素材のアッベ数νdは好ましくは50以下となる。したがって、上記Δνdの上限は+0.10であり、さらには+0.08、+0.06、+0.04、+0.02、+0.01の順により好ましい。特にアッベ数が35以下、好ましくは30以下の場合には、上記Δνdの上限は、好ましくは+0.005であり、さらには+0.00、-0.01、-0.02、または-0.03とすることもできる。
【0184】
<平均線膨張係数αL>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Aの場合、-30~70℃における平均線膨張係数αLの下限は、好ましくは0.70×10-5℃-1であり、さらには0.71×10-5℃-1、0.72×10-5℃-1、0.73×10-5℃-1、0.74×10-5℃-1、0.75×10-5℃-1、0.76×10-5℃-1、0.77×10-5℃-1、0.78×10-5℃-1、0.79×10-5℃-1の順により好ましい。また、平均線膨張係数αLの上限は、ガラスの安定性を保持し所望の光学特性を得る観点から、1.10×10-5℃-1を例示でき、好ましくは1.05×10-5℃-1以下であり、さらには1.00×10-5℃-1、0.96×10-5℃-1、0.92×10-5℃-1、0.88×10-5℃-1、0.84×10-5℃-1の順により好ましい。
【0185】
ガラス組成Aの場合、-30~70℃における平均線膨張係数αLを上記範囲とすることで、幅広い温度環境に使用できる成形用ガラス素材を得ることができる。
【0186】
平均線膨張係数αLは、JOGIS16の規定に基づいて測定する。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とする。試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように加熱し、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定する。平均線膨張係数αLは-30~70℃における線膨張係数の平均値である。
【0187】
なお、JOGIS16では、「平均線膨張係数は、10-7℃-1の単位で、整数部の一の位まで表示する」と規定されているが、本明細書では、平均線膨張係数αLは[10-5・℃-1]を単位として表示する。
【0188】
本明細書では、平均線膨張係数αLについては[10-5・℃-1]を用いた単位で表しているが、単位として[10-5・K-1]を用いた場合でも平均線膨張係数αLの数値は同じである。
【0189】
(ガラス組成B)
次に、本実施形態に係る成形用ガラス素材がガラス組成Bを有する場合の、ガラス成分の含有量・比率、およびガラス特性ついて説明する。
【0190】
本実施形態では、ガラス組成Bを有する場合、酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量を、それぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とする。
【0191】
上記以外のガラス成分Ta2O5、Sc2O3、HfO2、Lu2O3、GeO2、およびYb2O3の質量%表示による含有量は、それぞれC(Ta2O5)、C(Sc2O3)、C(HfO2)、C(Lu2O3)、C(GeO2)、およびC(Yb2O3)とする。
【0192】
本実施形態では、ガラス組成Bを有する場合、SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とする。
【0193】
上記以外のガラス成分TaO2.5、ScO1.5、HfO2、LuO1.5、GeO2、およびYbO1.5の各化学式量は、それぞれM(TaO2.5)、M(ScO1.5)、M(HfO2)、M(LuO1.5)、M(GeO2)、およびM(YbO1.5)とする。
【0194】
すなわち、本実施形態では、ガラス組成Bを有する場合、例えば酸化物XyOzについて、質量%表示による含有量をC(XyOz)とできる。また、酸化物XyOzにおけるカチオン(カチオン“X”)1モル当たりの化学式量、すなわち、XOz/yにおける化学式量をM(XOz/y)とできる。そして、{C(XyOz)/M(XOz/y)}の式で表されるのは、モル%表示でのカチオン“X”の含有量、すなわち、カチオン%表示での“X”の含有量である。
【0195】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}とするとき、A1の下限は、好ましくは1/3であり、さらには1.1/3、1.2/3、1.3/3、1.4/3、1.5/3、1.6/3、1.7/3、1.8/3、1.9/3の順により好ましい。また、A1の上限は、好ましくは3.0/3であり、さらには2.9/3、2.8/3、2.7/3、2.6/3、2.5/3、2.4/3、2.3/3の順により好ましい。
【0196】
ガラス組成Bにおいて、A1を上記範囲とすることで、-30~70℃における平均線膨張係数αLの大きい、低分散の成形用ガラス素材を得ることができる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。さらに、La2O3を多量に含有させる場合でもガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。一方、A1が小さすぎると、屈折率ndを高め、平均線膨張係数αLの低下を防ぐガラス成分であるLa2O3およびY2O3を多量に含む場合にガラスが不安定になるおそれがある。またA1が大きすぎると、ガラスの安定性、化学的耐久性、および機械的特性が低下するおそれがある。
【0197】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}とするとき、B1の下限は、好ましくは0.62であり、さらには0.63、0.65、0.67、0.69、0.71、0.73、0.75、0.77、0.79、0.81、0.83、0.85、0.87の順により好ましい。また、B1の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.99、0.98の順により好ましい。B1は1.00であってもよい。
【0198】
ガラス組成Bにおいて、B1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率の成形用ガラス素材が得られる。また、平均線膨張係数αLを大きくしつつ熱的安定性の低下を抑制できる。一方、B1が小さすぎると、平均線膨張係数αLおよび屈折率ndが低下し、ガラスの安定性が損なわれるおそれがある。
【0199】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}とするとき、C1の下限は、好ましくは8/9であり、さらには8.2/9、8.4/9、8.6/9、8.8/9、9.0/9、9.2/9、9.4/9、9.5/9の順により好ましい。また、C1の上限は、好ましくは27/9であり、さらには25/9、23/9、21/9、19/9、17/9、15/9、13/9、12/9の順により好ましい。
【0200】
ガラス組成Bにおいて、C1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材が得られる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。一方、C1が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、C1が大きすぎるとガラスの安定性が低下するおそれがある。
【0201】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)とするとき、D1の上限は、好ましくは13.50であり、さらには12.00、11.00、10.50、10.00、9.50、9.00、8.50の順により好ましい。また、D1の下限は、好ましくは0であり、さらには1、2、3、4、5、6、7、8の順により好ましい。D1は、0であってもよい。
【0202】
ガラス組成Bにおいて、D1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制できる。また高分散化を抑えて、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材が得られる。さらに、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を増大させない効果もある。D1は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、D1を0より大きくすることもできる。一方、D1が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0203】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}とするとき、E1の下限は、好ましくは1.25であり、さらには1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70の順により好ましい。また、E1の上限は、好ましくは3.00であり、さらには2.80、2.60、2.40、2.20、2.10の順により好ましい。
【0204】
ガラス組成Bにおいて、E1を上記範囲とすることで、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材が得られる。一方、E1が小さすぎると、ガラスの高屈折高分散性が失われ、平均線膨張係数αLが低下するおそれがある。またE1が大きすぎるとガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0205】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、F1={C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)}/{C(Y2O3)/M(YO1.5)}とするとき、F1の上限は、好ましくは2.0であり、さらには1.8、1.6、1.4、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.6の順により好ましい。また、F1の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.2、0.3、0.4の順により好ましい。F1は0であってもよい。
【0206】
ガラス組成Bにおいて、F1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい成形用ガラス素材が得られる。また、ガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。F1は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、F1を0より大きくすることもできる。一方、F1が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0207】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、G1=C(BaO)/M(BaO)+C(La2O3)/M(LaO1.5)+C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Y2O3)/M(YO1.5)とするとき、G1の下限は、好ましくは0.47であり、さらには0.475、0.48、0.485の順により好ましい。また、G1の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53の順により好ましい。
【0208】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLの低下が抑制され、かつ高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、G1を上記範囲とすることが好ましい。一方、G1が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、G1が大きすぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0209】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}の下限は、好ましくは0.35であり、さらには0.37、0.39、0.41、0.43、0.45、0.47の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.75であり、さらには0.73、0.71、0.69、0.67、0.65、0.63、0.61、0.59の順により好ましい。
【0210】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、低分散の成形用ガラス素材を得る観点から、{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0211】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、{C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}の下限は、好ましくは0.15であり、さらには0.16、0.17、0.18、0.19、0.20の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.30であり、さらには0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23の順により好ましい。
【0212】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率の成形用ガラス素材を得る観点から、{C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0213】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}の下限は、好ましくは0.15であり、さらには0.16、0.17、0.18、0.19、0.20の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.35であり、さらには0.34、0.33、0.32、0.31、0.30、0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23の順により好ましい。
【0214】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率の成形用ガラス素材を得る観点から、{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0215】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、{C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}の下限は、好ましくは0.15であり、さらには0.16、0.17、0.18、0.19、0.20の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.35であり、さらには0.34、0.33、0.32、0.31、0.30、0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23の順により好ましい。
【0216】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、{C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0217】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}の下限は、好ましくは0.05であり、さらには0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.30であり、さらには0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23、0.22、0.21の順により好ましい。
【0218】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0219】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは1.0であり、さらには1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは5.5であり、さらには5.3、5.1、4.9、4.7、4.5、4.3、4.1、3.9、3.7、3.5の順により好ましい。
【0220】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点、および相対屈折率の温度係数(dn/dT)を小さくする観点から、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0221】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは0.80であり、さらには0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.70であり、さらには1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35の順により好ましい。
【0222】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点、および相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性を小さくする観点から、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0223】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[{C(BaO)+C(Li2O)+C(SrO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは0.5であり、さらには1.0、1.5、2.0、2.2、2.4の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは7.0であり、さらには6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5の順により好ましい。
【0224】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、質量比[{C(BaO)+C(Li2O)+C(SrO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0225】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[{C(Li2O)+C(Na2O)+C(K2O)+C(Cs2O)+C(CaO)+C(SrO)+C(BaO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは0.5であり、さらには1.0、1.5、2.0、2.2、2.4の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは7.0であり、さらには6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5の順により好ましい。
【0226】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、質量比[{C(Li2O)+C(Na2O)+C(K2O)+C(Cs2O)+C(CaO)+C(SrO)+C(BaO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0227】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは0であり、さらには1、2、3、4、5の順により好ましい。該合計含有量は0であってもよい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは15であり、さらには14、13、12、11、10、9、8、7、6の順により好ましい。
【0228】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、分散の小さい成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0229】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは5であり、さらには6、7、8、9の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは25であり、さらには24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14の順により好ましい。
【0230】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、かつ高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0231】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは5であり、さらには6、7、8、9の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは25であり、さらには24、23、22、21、20、19、18、17、16の順により好ましい。
【0232】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、かつ高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0233】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[C(Al2O3)+C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは5であり、さらには6、7、8、9の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは25であり、さらには24、23、22、21、20、19、18、17、16の順により好ましい。
【0234】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、かつ高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[C(Al2O3)+C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0235】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)]の下限は、好ましくは25であり、さらには26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは50であり、さらには49、48、47、46、45、44、43の順により好ましい。
【0236】
ガラス組成Bにおいて、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0237】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]の下限は、好ましくは15であり、さらには16、17、18、19の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは30であり、さらには29、28、27、26、25の順により好ましい。
【0238】
ガラス組成Bにおいて、屈折率をなるべく低下させずに、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0239】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[{C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}]の下限は、好ましくは1.00であり、さらには1.05、1.10、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.80であり、さらには1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.54、1.53、1.52、1.51、1.50の順により好ましい。
【0240】
ガラス組成Bにおいて、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、質量比[{C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}]は上記範囲とすることが好ましい。
【0241】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]の下限は、好ましくは20であり、さらには21、22、23、24、25、26の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは45であり、さらには44、43、42、41、40、39、38、37、36、35の順により好ましい。
【0242】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0243】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[{C(La2O3)+C(Y2O3)}/{C(B2O3)+C(BaO)}]の下限は、好ましくは0.50であり、さらには0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.30であり、さらには1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.92の順により好ましい。
【0244】
ガラス組成Bにおいて、高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、質量比[{C(La2O3)+C(Y2O3)}/{C(B2O3)+C(BaO)}]は上記範囲とすることが好ましい。
【0245】
本実施形態において、ガラス組成Bの場合、[C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)]の下限は、好ましくは0であり、さらには0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06の順により好ましい。該値は0であってもよい。また、その上限は、好ましくは0.30であり、さらには0.25、0.20、0.18、0.16、0.14、0.12、0.10、0.08の順により好ましい。
【0246】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、[C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0247】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(Gd2O3)}]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53、0.52、0.51、0.50、0.49、0.48、0.47、0.46の順により好ましい。
【0248】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、質量比[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(Gd2O3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0249】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、質量比[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(TiO2)}]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.50であり、さらには0.49、0.48、0.47、0.46、0.45の順により好ましい。
【0250】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLが大きく、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、質量比[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(TiO2)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0251】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、合計含有量[C(BaO)+C(La2O3)+C(Y2O3)]の下限は、好ましくは50であり、さらには52、54、56、58、60、62、64、66、68、70の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは85であり、さらには83、81、79、77、76の順により好ましい。
【0252】
ガラス組成Bにおいて、平均線膨張係数αLの低下が抑制され、かつ高屈折率低分散性の成形用ガラス素材を得る観点から、合計含有量[C(BaO)+C(La2O3)+C(Y2O3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0253】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、SiO2の含有量の下限は、好ましくは3.0%であり、さらには3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%の順により好ましい。また、SiO2の含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには14.5%、14.0%、13.5%、13.0%、12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%の順により好ましい。
【0254】
SiO2は、ガラス組成Bにおいて、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善し、熔融ガラスの粘度を高め、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する。またSiO2は、たとえばガラス組成Bに多く含まれるLa2O3、BaO、およびY2O3と比べて、ΔPg,Fの値を大きくする働きが強い。一方、SiO2の含有量が多いと、平均線膨張係数αLが比較的低下しやすいほか、屈折率ndが低下するおそれがある。また、SiO2の含有量が少なすぎると、再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。そのため、SiO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0255】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、B2O3の含有量の下限は、好ましくは8.0%であり、さらには8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%の順により好ましい。また、B2O3の含有量の上限は、好ましくは20.0%であり、さらには19.5%、19.0%、18.5%、18.0%、17.5%、17.0%、16.5%、16.0%、15.5%、15.0%の順により好ましい。
【0256】
B2O3は、ガラス組成Bにおいて、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。また、ネットワーク形成成分の中では比較的、平均線膨張係数αLを低下させない成分である。さらに、低分散性を損なうことなく屈折率ndの高いガラスを得る観点から、B2O3の含有量を上記範囲とすることもできる。一方、B2O3の含有量が多いと、屈折率ndが低下するおそれがある。また、B2O3の含有量が少なすぎると、再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。
【0257】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Al2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Al2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Al2O3の含有量は0%でもよい。
【0258】
Al2O3は、ガラス組成Bにおいて、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有するガラス成分であり、ネットワーク形成成分として考えることができる。一方、Al2O3の含有量が多くなると、屈折率ndが低下し、ガラスの熱的安定性および熔融性が低下するおそれがある。そのため、Al2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0259】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、P2O5の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、P2O5の含有量の下限は、好ましくは0%である。P2O5の含有量は0%でもよい。
【0260】
P2O5は、ガラス組成Bにおいて、屈折率ndを低下させる成分であり、加えてガラスの熱的安定性を低下させる成分でもある。そのため、P2O5の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0261】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Li2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Li2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。Li2Oの含有量は0%でもよい。
【0262】
Li2Oは、ガラス組成Bにおいて、ガラスの低比重化に寄与する成分であり、ガラスの熔融性を改善し、また平均線膨張係数αLを大きくする働きを有する。さらにガラス転移温度Tgの低下に寄与する成分であり、精密プレス成型の際には成形性の向上に寄与する。また、低分散性を損なうことなく屈折率ndの高いガラスを得る観点から、Li2Oの含有量を上記範囲とすることもできる。一方、Li2Oの含有量が多くなると、耐失透性や耐酸性が低下するおそれがある。また、低分散性も損なわれるおそれもある。
【0263】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Na2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Na2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。Na2Oの含有量は0%でもよい。
【0264】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、K2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、K2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。K2Oの含有量は0%でもよい。
【0265】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Na2OおよびK2Oの合計含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.001%、0.01%、0.05%の順により好ましい。
【0266】
ガラス組成Bにおいて、Na2O、K2Oは、いずれもガラスの熔融性を改善する働きを有する。また平均線熱膨張係数を大きくする働きを有する。一方、これらの含有量が多くなると、熱的安定性、耐失透性、化学的耐久性、耐候性が低下する。したがって、Na2O、およびK2Oの各含有量およびその合計含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0267】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Cs2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Cs2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。Cs2Oの含有量は0%でもよい。
【0268】
Cs2Oは、ガラス組成Bにおいて、ガラスの熔融性を改善する働きを有するが、含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性、屈折率ndが低下し、また熔解中にガラス成分の揮発が増加して、所望のガラスが得られなくなるおそれがある。そのため、Cs2Oの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0269】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。該合計含有量は0%でもよい。ガラスの液相温度が上昇するのを抑制する観点から、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0270】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、MgOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、MgOの含有量の下限は、好ましくは0%である。MgOの含有量は0%でもよい。
【0271】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、CaOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、CaOの含有量の下限は、好ましくは0%である。CaOの含有量は0%でもよい。
【0272】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、SrOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%の順により好ましい。また、SrOの含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.05%、0.10%、0.15%、0.20%の順により好ましい。
【0273】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、MgO、CaO、およびSrOの合計含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.05%、0.10%、0.15%、0.20%の順により好ましい。該合計含有量は0%でもよい。
【0274】
ガラス組成Bにおいて、MgO、CaO、SrOは、いずれもガラスの熔融性を改善する働きを有するガラス成分であり、平均線膨張係数を比較的大きくする働きも有する。しかし、これらガラス成分の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。そのため、これらガラス成分の各含有量および合計含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0275】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、BaOの含有量の下限は、好ましくは20%であり、さらには21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%の順により好ましい。また、BaOの含有量の上限は、好ましくは45%であり、さらには44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%の順により好ましい。
【0276】
BaOは、ガラス組成Bにおいて、高屈折率・低分散特性を損なうことなく、平均線膨張係数αLを増加させる働きを有するガラス成分であり、ΔPg,Fの値を比較的小さくする成分でもある。BaOの含有量を上記範囲とすることで、高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLが改善された成形用ガラス素材が得られる。一方で、BaOの含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透するおそれがあり、再加熱時の安定性が悪化するおそれもある。
【0277】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、SiO2およびB2O3の合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは13%であり、さらには14%、15%、16%、17%、18%の順により好ましい。
【0278】
ガラス組成Bにおいて、ガラスの安定性を保持しつつ、屈折率の低下を抑制する観点から、SiO2およびB2O3の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0279】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、BaOの含有量と、SiO2およびB2O3の合計含有量との質量比[BaO/(SiO2+B2O3)]の上限は、好ましくは3.00であり、さらには2.80、2.60、2.40、2.20、2.00、1.80、1.70の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.60であり、さらには0.80、0.90、1.00、1.10、1.20、1.30の順により好ましい。
【0280】
ガラス組成Bにおいて、ガラスの安定性が保持されかつ平均線膨張係数αLが大きいガラスを得る観点から、該質量比は上記範囲とすることが好ましい。
【0281】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、ZnOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.03%、0.02%、0.01%の順により好ましい。また、ZnOの含有量の下限は、好ましくは0%である。ZnOの含有量は0%でもよい。
【0282】
ZnOは、ガラス組成Bにおいて、ガラスの熔融性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、ZnOの含有量が多すぎると、ガラスの比重が増大し、平均線膨張係数αLが低下するおそれがある。また、ガラスの低分散性を損なうおそれもある。さらに、ガラス転移温度Tgが低下するおそれもある。そのため、ZnOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0283】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、La2O3の含有量の下限は、好ましくは15%であり、さらには16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%の順により好ましい。また、La2O3の含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%の順により好ましい。
【0284】
La2O3は、ガラス組成Bにおいて、アッベ数νdの減少を抑えつつ屈折率を高める働きを有するガラス成分である。また、部分分散比Pg,Fを小さくする成分であり、BaOと比べてΔPg,Fの値を小さくする働きが強い。したがって、La2O3の含有量を上記範囲とすることで、高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の増大を抑制した成形用ガラス素材が得られる。一方で、La2O3の含有量が多くなり過ぎると、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがあり、再加熱時の安定性が悪化するおそれもある。
【0285】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Gd2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%の順により好ましい。また、Gd2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Gd2O3の含有量は0%でもよい。
【0286】
Gd2O3は、ガラス組成Bにおいて、高屈折・低分散であって平均線膨張係数αLの低下を抑制できる成分であるが、BaOを多く導入する本実施形態のガラスにおいてはGd2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下し、製造中にガラスが失透しやすくなる。また、Gd2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの比重が増大し、好ましくない。また原料コスト削減の観点においても不利である。したがって、Gd2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0287】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Y2O3の含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%の順により好ましい。また、Y2O3の含有量の上限は、好ましくは25%であり、さらには24%、23%、22%、21%、20%、19%の順により好ましい。
【0288】
Y2O3は、ガラス組成Bにおいて、アッベ数νdの減少を抑えつつ屈折率を高める働きを有する成分である。また、アルカリ成分やアルカリ土類成分の中でBaOまたはSrOを比較的多く導入する本実施形態のガラスにおいて、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、高屈折低分散特性を付与するために有効な成分である。また、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善し、ガラス転移温度を高める働きも有する。部分分散比Pg,Fを小さくする成分であり、ΔPg,Fの値を小さくする働きも有する。一方で、Y2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。再加熱時の安定性が悪化するおそれもある。そのため、Y2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0289】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、ZrO2の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2.5%の順により好ましい。また、ZrO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%の順により好ましい。ZrO2の含有量は0%でもよい。
【0290】
ZrO2は、ガラス組成Bにおいて、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。しかし、ZrO2は平均線膨張係数αLを比較的小さくする成分であるほか、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性を増大させる成分でもある。また、含有量があまりにも多すぎると、著しく熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、ZrO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0291】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、TiO2の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%の順により好ましい。また、TiO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1%、2%、3%、4%、5%の順により好ましい。TiO2の含有量は0%でもよい。
【0292】
TiO2は、ガラス組成Bにおいて、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。TiO2は、部分分散比Pg,Fを大きくする成分であり、かつNb2O5と比べてPg,FおよびΔPg,Fの値を大きくする働きが強い。一方、TiO2の含有量が多すぎると、平均線膨張係数αLが低下するおそれがあるほか、アッベ数νdが低下するおそれがあり、またガラスの着色が強まり、さらに熔融性が悪化するおそれがある。再加熱時の安定性が悪化するおそれもある。そのため、TiO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0293】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Nb2O5の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、5%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Nb2O5の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.001%、0.003%、0.005%、0.010%、0.050%、0.080%、0.100%の順により好ましい。Nb2O5の含有量は0%でもよい。
【0294】
Nb2O5は、ガラス組成Bにおいて、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。また、Nb2O5は、部分分散比Pg,FおよびΔPg,Fを大きくする成分でもある。一方、Nb2O5の含有量が多すぎると、平均線膨張係数αLが低下するおそれがあるほか、ガラスの着色が強まるおそれがある。再加熱時の安定性が悪化するおそれもある。そのため、Nb2O5の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0295】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、WO3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.1%の順により好ましい。また、WO3の含有量の下限は、好ましくは0%である。WO3の含有量は0%でもよい。
【0296】
WO3は、ガラス組成Bにおいて、他の高分散成分に対してガラス転移温度Tgを下げる働きを持つため、ガラスを軟化成形するとき、とりわけ精密プレスを実施するとき、成形型やその保護膜、成形機を保護するために成形温度を低下させる目的で導入することが出来る。一方でガラスの透過率を高める観点、およびガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)の上昇を抑える観点から、WO3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0297】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Bi2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.1%の順により好ましい。また、Bi2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Bi2O3の含有量は0%でもよい。
【0298】
Bi2O3は、ガラス組成Bにおいて、屈折率ndを高める一方で、アッベ数νdを低下させる成分である。また、ガラスの着色を増大させやすい成分でもある。したがって、Bi2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0299】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Ta2O5の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、13%、10%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、Ta2O5の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ta2O5の含有量は0%でもよい。
【0300】
Ta2O5は、ガラス組成Bにおいて、ガラスの熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。一方、Ta2O5は、屈折率を上昇させ、ガラスを高分散化させる。また、Ta2O5の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスを熔融するときに、ガラス原料の熔け残りが生じやすくなる。また、平均線膨張係数αLを比較的低下させる成分である。そのため、Ta2O5の含有量は上記範囲であることが好ましい。さらに、Ta2O5は、他のガラス成分と比較し、極めて高価な成分であり、Ta2O5の含有量が多くなるとガラスの生産コストが増大する。さらに、Ta2O5は他のガラス成分と比べて分子量が大きいため、ガラスの比重を増大させ、結果的に光学素子の重量を増大させる。
【0301】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Sc2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Sc2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0302】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、HfO2の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、HfO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0303】
ガラス組成Bにおいて、Sc2O3、HfO2は、いずれも屈折率ndを高める働きを有し、また高価な成分である。そのため、Sc2O3、HfO2の各含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0304】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Lu2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Lu2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0305】
Lu2O3は、ガラス組成Bにおいて、屈折率ndを高める働きを有する。また、分子量が大きいことから、ガラスの比重を増加させるガラス成分でもある。そのため、Lu2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0306】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、GeO2の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、GeO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0307】
GeO2は、ガラス組成Bにおいて、屈折率ndを高める働きを有し、また、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、GeO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0308】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、La2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、La2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。La2O3の含有量は0%であってもよい。
【0309】
ガラス組成Bにおいて、La2O3の含有量が多くなるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下し、製造中にガラスが失透しやすくなる。したがって、熱的安定性および耐失透性の低下を抑制する観点から、La2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0310】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、Yb2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Yb2O3の含有量の下限は、好ましくは0
%である。
【0311】
ガラス組成Bにおいて、Yb2O3の含有量が多すぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。また、一般的に使用されるガラス成分の中でも、高価な成分である。ガラスの熱的安定性の低下を防ぎ、比重の増大を抑制する観点、またガラスの製造コストを抑える観点から、Yb2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0312】
本実施形態に係る成形用ガラス素材は、ガラス組成Bの場合、主として上述のガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、P2O5、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、Bi2O3、Ta2O5、Sc2O3、HfO2、Lu2O3、GeO2、およびYb2O3で構成されていることが好ましく、上述のガラス成分の合計含有量は、95%以上が好ましく、98%以上より好ましく、99%以上がさらに好ましく、99.5%以上が一層好ましい。
【0313】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、TeO2の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、TeO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0314】
TeO2は毒性を有することから、TeO2の含有量を低減させることが好ましい。そのため、TeO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0315】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、フッ素Fの含有量は3%以下であることが好ましく、その上限は1%、0.5%、0.3%の順により好ましい。Fの含有量は少ない方が好ましく、その下限は好ましくは0%である。Fの含有量は0%でもよい。また、好ましくは、フッ素Fを実質的に含まない。
【0316】
ガラス組成Bにおいて、Fの含有量を上記範囲とすることで、ガラスを熔解中の揮発を抑えることができ、屈折率の変動、脈理を抑えることができる。
【0317】
なお、本実施形態に係る成形用ガラス素材は、基本的に上記ガラス成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することも可能である。また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0318】
<その他の成分組成>
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態に係る成形用ガラス素材がこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0319】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態に係る成形用ガラス素材がこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0320】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、本実施形態に係る成形用ガラス素材がこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0321】
Sb(Sb2O3)、Ce(CeO2)は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤である。
【0322】
Sb2O3の含有量は、外割り表示とする。すなわち、Sb2O3およびCeO2以外
の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSb2O3の含有量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。さらに、は0.05質量%未満、0.03質量%未満、0.02質量%未満、0.01%未満の順に好ましい。Sb2O3の含有量は0質量%であってもよい。
【0323】
CeO2の含有量も、外割り表示とする。すなわち、CeO2、Sb2O3以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのCeO2の含有量は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。CeO2の含有量は0質量%であってもよい。CeO2の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0324】
(ガラス組成Bを有する場合のガラスの特性)
<屈折率nd>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、屈折率ndには特に制限はなく、例えば1.60~2.10を例示でき、好ましくは1.65~2.00であり、より好ましくは1.70~1.88であり、さらに好ましくは1.73~1.85である。屈折率ndの下限は1.65、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、または1.79でもよく、屈折率ndの上限は2.0、1.9、1.84、1.83、または1.82でもよい。
【0325】
屈折率ndは、ガラス組成Bにおける各ガラス成分の含有量を適宜調整することにより所望の値にすることができる。相対的に屈折率ndを高める働きを有する成分(高屈折率化成分)は、Nb5+、Ti4+、W6+、Bi3+、Ta5+、Zr4+、La3+
3等(すなわち酸化物表示では、Nb2O5、TiO2、WO3、Bi2O3、Ta2O5、ZrO2、La2O3等)である。一方、相対的に屈折率ndを低くする働きを有する成分(低屈折率化成分)は、P5+、Si4+、B3+、Li+、Na+、K+等(すなわち酸化物表示では、P2O5、SiO2、B2O3、Li2O、Na2O、K2O等)
である。
【0326】
<アッベ数νd>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、アッベ数νdは、20~70を提示でき、好ましくは25~65であり、より好ましくは30~60であり、さらに好ましくは35~55である。アッベ数νdの下限は23、28、32、36、37、38、39、または40でもよく、アッベ数νdの上限は67、63、57、53、51、49、47、45、43、または42でもよい。
【0327】
アッベ数νdは、ガラス組成Bおける各ガラス成分の含有量を適宜調整することにより所望の値にすることができる。相対的にアッベ数νdを低くする成分、すなわち高分散化成分は、Nb5+、Ti4+、W6+、Bi3+、Ta5+、Zr4+等(すなわち酸化物表示では、Nb2O5、TiO2、WO3、Bi2O3、Ta2O5、ZrO2等)である。一方、相対的にアッベ数νdを高くする成分、すなわち低分散化成分は、P5+、Si4+、B3+、Li+、Na+、K+、La3+、Ba2+、Ca2+、Sr2+等(すなわち酸化物表示では、P2O5、SiO2、B2O3、Li2O、Na2O、K2O、La2O3、BaO、CaO、SrO等)である。
【0328】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、屈折率ndとアッベ数νdとは、好ましくは下記式(1)を満たし、より好ましくは下記式(2)を満たし、さらに好ましくは下記式(3)を満たし、特に好ましくは下記式(4)を満たす。屈折率ndとアッベ数νdとが下記式を満たすことで、高屈折率・低分散特性を有する成形用ガラス素材が得られる。
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.502)≧0 …(1)
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.512)≧0 …(2)
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.522)≧0 …(3)
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.532)≧0 …(4)
【0329】
<平均線膨張係数αL>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、-30~70℃における平均線膨張係数αLの下限は、好ましくは0.80×10-5℃-1であり、さらには0.81×10-5℃-1、0.82×10-5℃-1、0.83×10-5℃-1、0.84×10-5℃-1、0.85×10-5℃-1、0.86×10-5℃-1、0.87×10-5℃-1、0.88×10-5℃-1の順により好ましい。また、平均線膨張係数αLの上限は、ガラスの安定性を保持し所望の光学特性を得る観点から、1.20×10-5℃-1を例示でき、好ましくは1.10×10-5℃-1以下であり、さらには1.00×10-5℃-1、0.98×10-5℃-1、0.96×10-5℃-1、0.95×10-5℃-1、0.94×10-5℃-1、0.93×10-5℃-1の順により好ましい。
【0330】
ガラス組成Bの場合、-30~70℃における平均線膨張係数αLを上記範囲とすることで、幅広い温度環境に使用できる成形用ガラス素材を得ることができる。
【0331】
平均線膨張係数αLは、JOGIS16の規定に基づいて測定する。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とする。試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように加熱し、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定する。平均線膨張係数αLは-30~70℃における線膨張係数の平均値である。
【0332】
なお、JOGIS16では、「平均線膨張係数は、10-7℃-1の単位で、整数部の一の位まで表示する」と規定されているが、本明細書では、平均線膨張係数αLは[10-5・℃-1]を単位として表示する。
【0333】
本明細書では、平均線膨張係数αLについては[10-5・℃-1]を用いた単位で表しているが、単位として[10-5・K-1]を用いた場合でも平均線膨張係数αLの数値は同じである。
【0334】
<平均線膨張係数α100-300>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、100~300℃における平均線膨張係数α100-300の下限は、好ましくは90であり、さらには92、94、95の順により好ましい。また、平均線膨張係数α100-300の上限は、ガラスの安定性を保持し所望の光学特性を得る観点から、130を例示でき、好ましくは115であり、さらには110、106、104の順により好ましい。
【0335】
平均線膨張係数α100-300は、JOGIS08の規定に基づいて測定する。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とする。試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように加熱し、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定する。平均線膨張係数α100-300は100~300℃における線膨張係数の平均値である。
【0336】
なお、本明細書では、平均線膨張係数α100-300は、JOGIS08の規定に従い、10-7℃-1の単位で、整数第1位まで表示する。すなわち、平均線膨張係数α100-300は[10-7・℃-1]を単位とする整数で表示する。
【0337】
<相対屈折率の温度係数dn/dT>
ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)は、日本産業規格JISB7072-2(光学ガラスにおける屈折率の温度係数の測定方法-第2部:干渉法)により、波長632.8nmの光についての、-40℃から110℃に温度を変化させた際における相対屈折率の温度係数の値を測定する。
なお、本明細書では、相対屈折率の温度係数(dn/dT)を[10-6・℃-1]の単位で表しているが、単位として[10-6・K-1]を用いた場合でも相対屈折率の温度係数dn/dTの数値は同じである。
【0338】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、相対屈折率の温度係数dn/dTの上限は、He-Neレーザの波長(633nm乃至632.8nm)、温度20~40℃の範囲で、好ましくは2.0×10-6℃-1であり、さらには1.5×10-6℃-1、1.0×10-6℃-1、0.5×10-6℃-1、0.0×10-6℃-1、-0.5×10-6℃-1、-1.0×10-6℃-1の順により好ましい。また、該相対屈折率の温度係数dn/dTの下限に明確な制限はないが、He-Neレーザの波長(633nm乃至632.8nm)、かつ温度20~40℃の範囲で、好ましくは-13.0×10-6℃-1であり、さらには-10.0×10-6℃-1、-9.0×10-6℃-1、-8.0×10-6℃-1、-7.0×10-6℃-1、-6.5×10-6℃-1の順により好ましい。
【0339】
dn/dTを上記範囲とし、dn/dTが正の値である光学素子、あるいはdn/dTが負の値でレンズの焦点距離の符号が異なる光学素子などと組み合わせることで、光学素子の温度が大きく変動するような環境下でも屈折率の変動が小さくなるため、より幅広い温度範囲において、所望の光学特性を高精度に発揮できる。
【0340】
他方で、エネルギーの大きな光、たとえばレーザ光のような光や、ガラスの吸収波長に相当する光などがガラスに入射する際は、光の強度や照射時間によってガラスの温度上昇の幅が変化する。この場合、本実施形態のガラス単独で、屈折率の温度変化を小さくすることが要求されることもある。
【0341】
このような場合の相対屈折率の温度係数dn/dTの上限は、He-Neレーザの波長(633nm乃至632.8nm)、温度20~40℃の範囲を例にとると、好ましくは2.0×10-6℃-1であり、さらには1.5×10-6℃-1、1.0×10-6℃-1、0.5×10-6℃-1、0.3×10-6℃-1、0.1×10-6℃-1の順にいっそう好ましい。また、該相対屈折率の温度係数dn/dTの下限は、好ましくは-2.0×10-6℃-1であり、さらには-1.5×10-6℃-1、-1.0×10-6℃-1、-0.5×10-6℃-1、-0.3×10-6℃-1、-0.1×10-6℃-1の順にいっそう好ましい。相対屈折率の温度係数dn/dTを0.0×10-6℃-1にすることもできる。なお、本実施形態に係る成形用ガラス素材の相対屈折率の温度係数(dn/dT)の値は、本明細書の記載を参酌し、使用するレーザ波長によって上記の好ましい範囲の中で適宜選択してもよい。
【0342】
<相対屈折率の温度係数dn/dTの温度依存性の測定方法>
本実施形態のガラスは、ガラス組成Bの場合、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性が小さい。その測定法は以下のとおりである。
【0343】
日本光学硝子工業会規格JOGIS18「光学ガラスの屈折率の温度係数の測定方法」に記載された方法のうち、干渉法により測定する。-40℃から80℃に温度を変化させ、温度-30℃、-10℃、+10℃、+30℃、+50℃、+70℃において波長632.8nmのdn/dT(以下、dn/dT@632.8と表記する。)を測定し、温度に対するdn/dT@632.8の値の近似直線を最小二乗法によって求め、その直線の傾きをa、温度0℃における切片をbとする。
【0344】
上記の傾きaが0に近いほど、温度によるdn/dTの変化量が小さいため、異なる温度域においても温度変化あたりのdn/dTの値の変化が小さくなることを意味する。つまり、光学素子の単位温度変化に対する焦点距離のずれ方が温度によらず一定になることから、受光素子側の位置調整機構を簡素化でき、高精度な結像を求められる光学素子に有効である。
【0345】
したがって、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、上記傾きaの値の範囲は、好ましくは10.0×10-9~-10.0×10-9であり、さらには8.0×10-9~-8.0×10-9、6.0×10-9~-6.0×10-9、4.0×10-9~-4.0×10-9、3.0×10-9~-3.0×10-9の順により好ましい。
【0346】
また上記の切片bが0.0×10-6に近いほど、近似直線における0℃でのdn/dT@632.8の値が小さいため、dn/dTの値の絶対値が小さいことを意味する。したがって、単独の光学素子の単位温度変化に対する焦点距離のずれ量自体が小さくなることから、高精度な結像を求められる光学素子に有効である。
【0347】
したがって、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、上記切片bの値の範囲は、好ましくは3.0×10-6~-3.0×10-6であり、さらには2.0×10-6~-2.0×10-6、1.0×10-6~-1.0×10-6、0.5×10-6~-0.5×10-6の順により好ましい。なお上記傾きaの値を一定の値以下、好ましくは0付近に制御すれば、かならずしも上記切片bが0でなくてもよい。上記切片bを0付近にすることもできる。
【0348】
<ガラス転移温度Tg>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、ガラス転移温度Tgの上限は、好ましくは730℃であり、さらには720℃、710℃、700℃の順により好ましい。また、ガラス転移温度Tgの下限は、好ましくは500℃であり、さらには550℃、560℃、570℃、580℃の順により好ましい。
【0349】
ガラス転移温度Tgの上限が上記範囲を満たすことにより、ガラスの成型温度およびアニール温度の上昇を抑制することができ、プレス成形用設備およびアニール設備への熱的ダメージを軽減できる。また、ガラス転移温度Tgの下限が上記範囲を満たすことにより、所望のアッベ数、屈折率を維持しつつ、ガラスの熱的安定性を良好に維持しやすくなる。また、精密プレス素材として用いる際に良好な成形性を得ることができる。
【0350】
他方で、ガラス転移温度Tgが高いほど、単位温度変化あたりの膨張量が小さくなる傾向にあるので、単位温度変化あたりの熱膨張による形状変化の度合いを軽減できる傾向がある。また、加熱によってガラスの温度がTg付近あるいは歪点以上まで上昇してしまうと、その後にガラスが冷却されても光学性能が元の状態に戻らなくなるおそれもある。したがってTgの下限は上記範囲を満たすことが好ましい。
【0351】
<ガラスの比重>
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、比重は、好ましくは5.50以下であり、さらには、5.00以下、4.80以下の順により好ましい。ガラスの比重を低減することができれば、レンズの重量を減少できる。その結果、レンズを搭載するカメラレンズのオートフォーカス駆動の消費電力を低減できる。
【0352】
<ガラスの光線透過性>
本実施形態に係る成形用ガラス素材の光線透過性は、着色度λ5、λ70、およびλ80により評価できる。
ガラス組成Bの場合、厚さ10.0mm±0.1mmのガラス試料について波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定し、外部透過率が5%となる波長をλ5とし、外部透過率が70%となる波長をλ70とし、外部透過率が80%となる波長をλ80とする。
【0353】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、λ5は、好ましくは400nm以下であり、より好ましくは380nm以下であり、さらに好ましくは360nm以下であり、特に好ましくは350nm以下である。
【0354】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、λ70は、好ましくは440nm以下であり、より好ましくは430nm以下であり、さらに好ましくは420nm以下である。
【0355】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Bの場合、λ80は、好ましくは510nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは490nm以下である。
【0356】
λ5、λ70、およびλ80が上記のように短波長化された成形用ガラス素材を用いることで、好適な色再現を可能とする光学素子を提供できる。
【0357】
(ガラス組成C)
次に、本実施形態に係る成形用ガラス素材がガラス組成Cを有する場合の、ガラス成分の含有量・比率、およびガラス特性ついて説明する。
【0358】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SiO2は、ガラスのネットワーク形成成分として、ガラスの熱的安定性や再加熱失透性、化学的耐久性および耐候性を改善し、熔融ガラスの粘度を高め、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する必須成分である。以上の観点から、SiO2含有量は、質量%表示でB2O3とP2O5の合計含有量よりも多いことが好ましい。ガラス組成Cの場合、ケイ酸塩ガラスであることが好ましい。ガラス組成Cの場合、SiO2含有量は、8.0%以上であることが好ましく、10.00%以上、11.00%以上、12.00%以上、13.00%以上、14.00%以上、14.50%以上、15.00%以上、15.50%以上、16.00%以上、16.50%以上、16.60%以上の順により好ましい。
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、ガラスの耐失透性向上、熔融性の向上および部分分散特性改善の観点からは、SiO2含有量は、50.00%以下であることが好ましく、45.00%以下、40.00%以下、35.00%以下、30.00%以下、28.00%以下、26.00%以下、25.00%以下、24.50%以下、24.00%以下、23.50%以下、23.00%以下、22.75%以下、22.50%以下、22.00%以下の順により好ましい。
【0359】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SiO2とB2O3との合計含有量(SiO2+B2O3)は、ガラスの熱的安定性の向上、より一層の低比重化およびより望ましい光学恒数を得る観点から、10.00%以上であることが好ましく、12.00%以上、14.00%以上、15.00%以上、16.00%以上、17.00%以上、17.75%以上、18.00%以上、18.25%以上、18.50%以上、18.60%以上の順により好ましく、35.00%以下であることが好ましく、32.00%以下、30.00%以下、28.00%以下、27.00%以下、26.50%以下、26.00%以下、25.50%以下、25.00%以下、24.50%以下、24.40%以下、24.30%以下の順により好ましい。
【0360】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SiO2とB2O3はガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、SiO2の含有量が多くなるとガラスの熔融性が低下する傾向がある。以上の観点から、SiO2とB2O3との合計含有量に対するSiO2の質量比(SiO2/(SiO2+B2O3))は、0.50以上であることが好ましく、0.55以上、0.60以上、0.65以上、0.70以上、0.75以上、0.77以上、0.80以上の順により好ましく、1.00以下であることが好ましく、0.99以下、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.90以下、0.89以下、0.88以下の順により好ましい。
【0361】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SiO2含有量に対するB2O3含有量の質量比(B2O3/SiO2)は、化学的耐久性向上、αmaxの低下ならびに再加熱失透性の向上の観点から、1.00未満であることが好ましく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.35以下、0.32以下、0.31以下、0.30以下、0.29以下、0.28以下、0.27以下、0.26以下、0.25以下の順により好ましい。熱的安定性向上の観点からは、質量比(B2O3/SiO2)は、0.00以上であることが好ましく、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上の順により好ましい。
【0362】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、B2O3含有量は、0.00%以上であることが好ましく、0.00%超であることがより好ましく、0.10%以上、0.20%以上、0.30%以上、0.35%以上、0.37%以上、0.39%以上、0.40%以上、0.41%以上、0.42%以上、0.43%以上、0.44%以上、0.45%以上、0.46%以上、0.47%以上、0.48%以上、0.49%以上の順により好ましい。また、B2O3含有量は、30.00%以下であることが好ましく、25.00%以下、20.00%以下、18.00%以下、16.00%以下、14.00%以下、12.00%以下、10.00%以下、9.00%以下、8.00%以下、7.00%以下、6.00%以下、5.50%以下、5.20%以下、5.10%以下、5.00%以下、4.90%以下、4.80%以下の順により好ましい。B2O3含有量を上記範囲とすることにより、ガラスの比重をより低減でき、また、ガラスの熱的安定性を改善できる。
【0363】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、CaO含有量は、ガラスの熔融性および熱的安定性向上の観点から、3.00%以上であることが好ましく、4.00%以上であることがより好ましく、5.00%以上、5.10%以上、5.20%以上、5.30%以上、5.40%以上、5.50%以上、5.60%以上、5.70%以上、5.80%以上、5.90%以上の順により好ましい。また、同様の観点から、CaO含有量は、40.00%以下であることが好ましく、35.00%以下、30.00%以下、28.00%以下、26.00%以下、24.00%以下、22.00%以下、21.50%以下、21.00%以下、20.50%以下、20.25%以下、20.00%以下、19.50%以下の順により好ましい。
【0364】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、アルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、SrOおよびBaOとZnOとの合計含有量(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)は、5.00%以上であることが好ましく、7.00%以上、10.00%以上、11.00%以上、12.00%以上、13.00%以上、13.50%以上、14.00%以上、14.50%以上、15.00%以上、15.30%以上、15.50%以上、16.00%以上の順により好ましい。また、合計含有量(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)は、50.00%以下であることが好ましく、45.00%以下、40.00%以下、39.00%以下、38.00%以下、37.00%以下、36.50%以下、36.00%以下、35.50%以下、35.00%以下、34.50%以下、34.00%以下の順により好ましい。合計含有量(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)が上記範囲であることは、より一層の低比重化、および高分散化を妨げることなく熱的安定性を維持する観点から好ましい。
【0365】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの中で、MgO、CaOは、SrO、BaO、ZnOと比べてガラスの比重を抑えるうえで有効な成分である。したがって、比重の増大をより一層抑制する観点から、MgOおよびCaOの合計含有量に対するZnO、SrOおよびBaOの合計含有量の質量比((ZnO+SrO+BaO)/(MgO+CaO))は、2.78以下であることが好ましく、2.77以下、2.76以下、2.75以下、2.74以下、2.73以下の順により好ましい。
一方、SrO、BaO、ZnOは、MgO、CaOよりも部分分散特性を改善する働きが大きい。そのため、部分分散特性を改善する観点から、質量比((ZnO+SrO+BaO)/(MgO+CaO))は、0.17以上であることが好ましく、0.18以上、0.19以上、0.20以上の順により好ましい。
【0366】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量に対するCaO含有量の質量比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO))は、より一層の高屈折率化および更なる低比重化の観点から、0.35以上であることが好ましく、0.36以上、0.37以上、0.38以上、0.39以上、0.40以上、0.41以上、0.42以上の順により好ましい。熱的安定性向上の観点からは、質量比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO))は、1.00以下であることが好ましく、0.95以下、0.90以下、0.89以下、0.88以下、0.87以下、0.86以下、0.85以下、0.84以下、0.83以下、0.80以下、0.78以下の順により好ましい。
【0367】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量に対するCaOとMgOとの合計含有量の質量比((CaO+MgO)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO))は、より一層の低比重化の観点からは、0.35以上であることが好ましく、0.36以上、0.37以上、0.38以上、0.39以上、0.40以上、0.41以上、0.42以上の順により好ましい。熱的安定性向上の観点からは、質量比((CaO+MgO)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)は、1.00以下であることが好ましく、0.95以下、0.90以下、0.89以下、0.88以下、0.87以下、0.86以下、0.85以下、0.84以下、0.83以下、0.80以下、0.78以下の順により好ましい。
【0368】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、アルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、SrOおよびBaOならびにZnOは、液相温度を下げ、熱的安定性を改善する働きを有する。他方、これらの含有量が多くなると、化学的耐久性および/または耐候性が低下する傾向がある。また、SiO2およびB2O3は、熱的安定性を改善し、再加熱失透性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると熔融性が低下する傾向がある。以上の観点から、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量に対するSiO2とB2O3との合計含有量の質量比((SiO2+B2O3)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO))は、0.40以上であることが好ましく、0.45以上、0.50以上、0.52以上、0.54以上、0.56以上、0.57以上、0.58以上、0.59以上、0.60以上、0.61以上、0.70以上、0.80以上、0.90以上,1.00以上、1.10以上の順により好ましく、2.00以下であることが好ましく、1.80以下、1.60以下、1.55以下、1.50以下、1.45以下、1.40以下、1.35以下の順により好ましい。
【0369】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、MgO含有量は、0.00%以上であることが好ましい。また、MgO含有量は、15.00%以下であることが好ましく、12.00%以下、9.00%以下、7.00%以下、6.00%以下、5.00%以下、4.00%以下、3.50%以下、3.00%以下、2.50%以下、2.10%以下の順により好ましい。
【0370】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SrO含有量は、0.00%以上であることが好ましく、0.10%以上、0.20%以上、0.25%以上、0.26%以上、0.27%以上、0.28%以上、0.29%以上、0.30%以上、0.31%以上の順により好ましい。また、SrO含有量は、15.00%以下であることが好ましく、12.00%以下、10.00%以下、9.00%以下、8.50%以下、8.00%以下、7.50%以下、7.00%以下、6.50%以下、6.00%以下の順により好ましい。
【0371】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、BaO含有量は、0.00%以上であることが好ましく、0.10%以上、0.20%以上、0.30%以上、0.40%以上、0.50%以上、0.60%以上、0.70%以上、0.80%以上、0.90%以上、1.00%以上、1.10%以上、1.20%以上、1.30%以上の順により好ましい。また、BaO含有量は、25.00%以下であることが好ましく、22.00%以下、20.00%以下、19.00%以下、18.00%以下、17.00%以下、16.50%以下、16.00%以下、15.50%以下、15.25%以下、15.00%以下の順により好ましい。
【0372】
MgO、CaO、SrOおよびBaOは、いずれもガラスの熱的安定性および耐失透性を改善させる働きを有するガラス成分である。高分散性およびより一層の低比重化の観点とガラスの熱的安定性および耐失透性の向上の観点から、これらガラス成分の各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0373】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、ZnO含有量は、0.00%以上であることが好ましい。また、ZnO含有量は、10.00%以下であることが好ましく、9.00%以下、8.00%以下、7.00%以下、6.00%以下、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順により好ましい。ZnOは、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するガラス成分である。より一層の低比重化、ガラスの熱的安定性向上ならびにより望ましい光学恒数を得る観点から、ZnOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0374】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、希土類酸化物であるLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量(La2O3+Gd2O3+Y2O3)は、高屈折率化および低分散性の観点から、0%超であることが好ましく、0.50%以上、1.00%以上、1.33%以上、1.50%以上、2.00%以上、2.50%以上、3.00%以上の順により好ましい。より一層の低比重化の観点からは、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量(La2O3+Gd2O3+Y2O3)は、30.00%以下であることが好ましく、29.00%以下、28.00%以下、26.00%以下、24.00%以下、22.00%以下、20.00%以下、18.00%以下、16.00%以下、15.00%以下、14.50%以下、14.00%以下、13.50%以下、13.00%以下、12.50%以下、12.00%以下の順により好ましい。
【0375】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、BaOと、希土類酸化物であるLa2O3、Gd2O3およびY2O3とは、いずれも低分散性に寄与する(即ち、アッベ数νdを大きくする)成分であるが、これらの含有量が多くなるとガラスの比重が高くなる傾向がある。以上の観点から、ガラス組成Cの場合、BaOと希土類酸化物La2O3、Gd2O3およびY2O3との合計含有量(BaO+La2O3+Gd2O3+Y2O3)は、30.00%以下であることが好ましく、29.00%以下、28.00%以下、27.00%以下、26.00%以下、25.00%以下、24.50%以下、24.00%以下、23.50%以下、23.00%以下の順により好ましい。また、アッベ数νdをより大きくする観点から、BaO、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量(BaO+La2O3+Gd2O3+Y2O3)は、0%超であることが好ましく、1.00%以上、2.00%以上、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上、6.00%以上、7.00%以上、7.50%以上、8.00%以上、8.50%以上の順により好ましい。
【0376】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、BaOおよびLa2O3はいずれも低分散化成分であるが、BaOはLa2O3と比べて屈折率を高める働きが少ない。したがって、屈折率を高める観点からは、La2O3の含有量に対するBaOの含有量の質量比(BaO/La2O3)は、8.30以下であることが好ましく、8.00以下、7.50以下、7.00以下、6.50以下、6.00以下、5.50以下、5.40以下、5.30以下、5.20以下、5.10以下、5.00以下、4.90以下、4.80以下、4.70以下の順により好ましい。
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、質量比(BaO/La2O3)は、0であってもよく、0.00以上であってもよい。ガラスの熱的安定性の維持の観点からは、質量比(BaO/La2O3)は、0.00超であることが好ましく、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上の順により好ましい。
【0377】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、希土類酸化物であるLa2O3、Gd2O3およびY2O3は、屈折率を高め、低分散性に寄与することができるが、これらの含有量が多くなると熱的安定性が低下する傾向がある。また、SiO2およびB2O3は熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると熔解性が低下する傾向や屈折率が低下する傾向がある。以上の観点から、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するSiO2とB2O3との合計含有量の質量比((SiO2+B2O3)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00超であることが好ましく、0.25以上、0.50以上、0.75以上、1.00以上、1.25以上、1.50以上、1.75以上、1.80以上、1.85以上の順により好ましく、7.47以下であることが好ましく、7.40以下、7.35以下、7.30以下、7.25以下の順により好ましい。
【0378】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、La2O3、Gd2O3およびY2O3は、いずれもガラスの屈折率を高めることができる成分であるが、Gd2O3およびY2O3は、La2O3と比べて比重を高くする成分である。したがって、より一層の低比重化の観点からは、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するLa2O3含有量の質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00超であることが好ましく、0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.75以上の順により好ましい。質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、1.00以下とすることができる。
同様の観点から、ガラス組成Cの場合、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するGd2O3含有量の質量比(Gd2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、1.00未満であることが好ましく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.25以下、0.20以下の順により好ましい。質量比(Gd2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00以上とすることができる。
また、同様の観点から、ガラス組成Cの場合、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するY2O3含有量の質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、1.00未満であることが好ましく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.25以下の順により好ましい。質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00以上とすることができる。
【0379】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、上記の観点から、希土類酸化物である上記成分の含有量は、それぞれ以下の範囲であることが好ましい。
La2O3含有量は、0.00%以上であることが好ましく、0.00%超、0.50%以上、1.00%以上、1.33%以上、1.50%以上、2.00%以上、2.50%以上、2.75%以上、3.00%以上の順により好ましい。また、La2O3含有量は、30.00%以下であることが好ましく、25.00%以下、20.00%以下、18.00%以下、16.00%以下、15.00%以下、14.00%以下、13.50%以下、13.00%以下、12.50%以下、12.00%以下の順により好ましい。
Gd2O3含有量は、0.00%以上であることが好ましい。また、Gd2O3含有量は、10.00%以下であることが好ましく、9.00%以下、8.00%以下、7.00%以下、6.00%以下、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順により好ましい。
Y2O3含有量は、0.00%以上であることが好ましい。また、Y2O3含有量は、10.00%以下であることが好ましく、9.00%以下、8.00%以下、7.00%以下、6.00%以下、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順により好ましい。
【0380】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、La2O3はガラスの屈折率を高める働きを有し、B2O3はガラスの屈折率を低下させる傾向がある。したがって、より一層の高屈折率化の観点からは、B2O3含有量に対するLa2O3含有量の質量比(La2O3/B2O3)は、1.30以上であることが好ましく、1.35以上、1.40以上、1.45以上、1.50以上、1.55以上、1.60以上、1.65以上、1.70以上、1.72以上の順により好ましい。より一層の低比重化の観点からは、質量比(La2O3/B2O3)は、20.00以下であることが好ましく、18.00以下、16.00以下、14.00以下、13.00以下、12.00以下、11.50以下、11.00以下、10.50以下、10.00以下の順により好ましい。
【0381】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、La2O3含有量に対するB2O3含有量の質量比(B2O3/La2O3)は、0.79以下であることが好ましく、0.78以下、0.77以下、0.76以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.64以下、0.62以下、0.61以下、0.60以下、0.59以下、0.58以下、0.57以下、0.50以下の順により好ましい。質量比(La2O3/B2O3)は、0.00以上であることが好ましく、0.00超であることがより好ましい。
【0382】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、希土類酸化物は、ガラスの屈折率を高めることができるが、希土類酸化物の含有量が多くなると熱的安定性が低下し、ガラスの熔融性が低下する傾向がある。したがって、ガラスの熱的安定性を維持しつつ、屈折率をより一層高める観点から、BaOとLa2O3、Gd2O3およびY2O3との合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量の質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(BaO+La2O3+Gd2O3+Y2O3))は1.00以下であることが好ましく、1.00未満、0.99以下、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.90以下の順により好ましい。質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(BaO+La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00超であることが好ましく、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.20以上の順により好ましい。
【0383】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、希土類酸化物はガラスの屈折率を高めることができるが、その含有量が多くなるとガラスの熔融性が低下する傾向がある。一方、アルカリ土類金属酸化物はガラスの熔融性を高めることができるが、その含有量が多くなると屈折率が低下する傾向がある。したがって、ガラスの熔融性を維持しつつ屈折率をより一層高める点から、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量の質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00超であることが好ましく、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上の順により好ましく、0.85以下であることが好ましく、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.44以下、0.43以下、0.42以下、0.41以下、0.40以下の順により好ましい。
【0384】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、希土類酸化物はガラスの屈折率を高めることができるが、その含有量が多くなるとガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。一方、B2O3はガラスの熱的安定性を高めることができるが、その含有量が多くなると屈折率が低下する傾向がある。したがって、ガラスの熱的安定性を維持しつつ屈折率をより一層高める点から、BaO、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するB2O3含有量の質量比(B2O3/(BaO+La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00以上であることが好ましく、0.00超、0.01以上、0.02以上、0.03以上の順により好ましく、1.00以下であることが好ましく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、0.35以下の順により好ましい。
【0385】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、La2O3、Gd2O3およびY2O3は、ガラスの屈折率を高く働きを有するが、これらの合計含有量が多いと熱的安定性が低下する傾向がある。一方、B2O3は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、屈折率を低下させる傾向がある。したがって、ガラスの熱的安定性を維持しながら屈折率を高める観点から、B2O3、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量の質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(B2O3+La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.57以上であることが好ましく、0.58以上、0.59以上、0.60以上、0.61以上、0.62以上、0.63以上、0.64以上の順により好ましい。より一層の低比重化の観点からは、質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(B2O3+La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、1.00以下であることが好ましく,1.00未満、0.99以下、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.90以下、0.89以下、0.88以下、0.87以下、0.86以下、0.85以下の順により好ましい。
【0386】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびZrO2は屈折率を高め、部分分散特性を改善する働きを有するが、ZrO2の含有量が多くなると、ガラスの熔融性が低下する傾向がある。以上の観点から、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびZrO2の合計含有量に対するZrO2含有量の質量比(ZrO2/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+ZrO2))は、0.01以上であることが好ましく、0.02以上、0.03以上、0.04以上の順により好ましく、5.00以下であることが好ましく、4.00以下、3.00以下、2.00以下の順により好ましい。
【0387】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびZrO2は、いずれも屈折率を高める成分であるが、ZrO2はLa2O3、Gd2O3、Y2O3と比べて、屈折率を高める働きが大きく、分散を高くする働き(アッベ数を減少させる働き)も大きい。分散を低く維持する観点から、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するZrO2の含有量の質量比(ZrO2/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、3.30以下であることが好ましく、3.00以下、2.90以下、2.80以下、2.70以下、2.60以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.10以下、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、1.40以下、1.30以下、1.25以下の順により好ましい。質量比(ZrO2/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00以上とすることができ、屈折率をより高める観点からは、0.00超であることが好ましく、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上の順により好ましい。
【0388】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、ZrO2含有量は、望ましい光学恒数の実現および部分分散特性改善の観点から、7.63%以下であることが好ましく、7.63%未満、7.60以下、7.50以下、7.40以下、7.30以下、7.20以下、7.10以下、7.00以下、6.90以下、6.80以下、6.70以下、6.60以下、6.50以下、6.40以下、6.30以下、6.20以下、6.10以下、6.00以下、5.95以下、5.90以下、の順により好ましく、特に再加熱失透性を高める観点からは、6.00以下、5.50以下、5.00以下、4.00以下、3.00以下、2.50以下の順により好ましい。また、ZrO2含有量は、より望ましい光学恒数の実現および部分分散特性の更なる改善の観点から、0.00%以上であることが好ましく、0.00%超、0.10%以上、0.20%以上、0.30%以上、0.40%以上、0.50%以上、0.60%以上、0.65%以上、1.10%以上、1.60%以上の順により好ましい。
【0389】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは、ガラスの熱的安定性を改善する働きがあるが、これらの含有量が多くなると屈折率が低下する傾向がある。一方、La2O3、Gd2O3およびY2O3は屈折率を高める働きをするが、これらの含有量が多くなると熱的安定性が低下する傾向がある。以上の観点から、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するMgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量の質量比((MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3))は、0.00超であることが好ましく、0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.80以上、0.90以上、1.00以上、1.10以上、1.20以上、1.30以上、1.40以上の順により好ましく、20.00以下であることが好ましく、18.00以下、16.00以下、14.00以下、11.09以下、11.08以下、11.07以下、11.06以下、11.05以下、11.04以下、11.03以下、11.02以下、11.01以下、11.00以下の順により好ましい。
【0390】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SrO、BaO、La2O3、Gd2O3およびY2O3は、いずれも低分散性を維持するうえで有効な成分である。そのため、より低分散性を維持する観点から、SrO、BaO、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量(SrO+BaO+La2O3+Gd2O3+Y2O3)は9.00%以上であることが好ましく、9.50%以上、10.00%以上、10.50%以上、11.00%以上、11.50%以上、12.00%以上、12.50%以上、13.00%以上、13.50%以上、の順により好ましい。
また、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、より一層の低比重化の観点からは、合計含有量(SrO+BaO+La2O3+Gd2O3+Y2O3)は、45.00%以下であることが好ましく、40.00%以下、35.00%以下、30.00%以下、29.00%以下、28.00%以下、27.00%以下、26.00%以下、25.00%以下の順により好ましい。
【0391】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、La2O3、Gd2O3およびY2O3は、屈折率を高める働きをする成分であり、SiO2はガラスの熱的安定性を維持する成分である。La2O3、Gd2O3、Y2O3およびSiO2の合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量の質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+SiO2))は、屈折率をより高める観点から、0.12以上であることが好ましく、0.13以上であることが更に好ましい。ガラスの熱的安定性を維持する観点からは、質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+SiO2))は、0.70以下であることが好ましく、0.60以下、0.50以下、0.49以下、0.48以下、0.47以下、0.46以下、0.45以下、0.44以下、0.43以下、0.42以下、041以下の順により好ましい。
【0392】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するSiO2とCaOとの合計含有量の質量比((SiO2+CaO)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))について、分母は屈折率を高める働きが大きい成分の合計含有量であり、分子は低分散化、低比重化に有効な成分の合計含有量である。高屈折率化、低分散性の維持、低比重化および熱的安定性の維持の観点から、質量比((SiO2+CaO)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、1.20以下であることが好ましく、1.09以下、1.08以下、1.07以下、1.06以下、1.05以下、1.04以下、1.03以下、1.02以下、1.01以下、0.99以下、0.94以下、0.89以下、0.86以下の順により好ましい。また、更なる高屈折率化、より一層の低分散性の維持および更なる低比重化の観点から、質量比((SiO2+CaO)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.25以上であることが好ましく、0.30以上、0.35以上、0.40以上、0.42以上、0.44以上、0.46以上、0.48以上、0.50以上、0.52以上、0.54以上、0.55以上の順により好ましい。
【0393】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、屈折率を高める成分であるZrO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、Bi2O3の中で、ZrO2は、分散を高める作用が比較的小さい。そのため、より低分散性を維持する観点から、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するZrO2含有量の質量比(ZrO2/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.00以上であることが好ましく、0.01以上、0.02以上の順により好ましい。ガラスの熱的安定性の維持、ガラスを加熱、軟化してプレス成形する際の耐失透性(再加熱プレス成形時の安定性:リヒートプレス成形性とも言う)の維持の観点からは、質量比(ZrO2/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.21以下であることが好ましく、0.20以下、0.19以下、0.18以下、0.17以下、0.16以下、0.15以下、0.12以下、0.10以下,0.08以下、0.06以下の順により好ましい。
【0394】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.2%、0.5%、1.0%、1.2%、1.5%、の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、8%,6%、4%、2%の順により好ましい。
【0395】
ガラス組成Cにおいて、合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]の下限が上記を満たすことで、ガラスの熔融性を改善し、液相温度の上昇を抑制できる。また、該合計含有量の上限が上記を満たすことで、ガラスの粘性を高めてガラス融液の結晶化の速度を小さくするとともに、再加熱時の安定性を向上できる。
【0396】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O、K2OおよびCs2Oは、部分分散特性を改善する働きを有し、液相温度を下げ、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。これらの観点から、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)は、0.00%以上であることが好ましく、0.00%超、0.05%以上、0.10%以上、0.15%以上、0.20%以上、0.25%以上、0.28%以上、0.60%以上、1.10%以上、1.30%以上、1.60%以上の順により好ましい。化学的耐久性および耐候性の向上の観点からは、合計含有量(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)は、20.00%以下であることが好ましく、18.00%以下、16.00%以下、14.00%以下、12.00%以下、10.00%以下、9.00%以下、8.00%以下、7.00%以下、6.50%以下、6.00%以下、5.50%以下、5.00%以下、4.50%以下、3.90%以下、2.90%以下、2.40%以下の順により好ましい。
【0397】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SiO2、P2O5およびB2O3の合計含有量に対するLi2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(SiO2+P2O5+B2O3)]の上限は、好ましくは1.0であり、さらには0.7、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.001であり、さらには0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06の順により好ましい。
【0398】
ガラス組成Cにおいて、質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(SiO2+P2O5+B2O3)]が低すぎると、熔解性が悪化するおそれがある。また、高すぎると、ガラスの熔融時の粘性が低下し、融液の熱的安定性が低下するほか、再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。
【0399】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Nb2O5、TiO2、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するLi2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]の上限は、好ましくは1.0であり、さらには0.5、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.005であり、さらには0.01、0.02、0.03、0.04の順により好ましい。
【0400】
ガラス組成Cにおいて、質量比[(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O)/(Nb2O5+TiO2+WO3+Bi2O3)]が低すぎると、部分分散比Pg,Fが上昇し、透過率が悪化するおそれがある。また、高すぎると、アッベ数が大きくなり、屈折率も低下するほか、再加熱時の安定性が悪化するおそれがある。
【0401】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物は、ガラスの熔融性および熱的安定性を維持することに寄与できるが、これらの含有量が多くなるとガラスの熔融性および熱的安定性が低下する傾向がある。したがって、ガラスの熔融性や熱的安定性を維持する観点からは、アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O、K2OおよびCs2Oとアルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、SrOおよびBaOとの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+MgO+CaO+SrO+BaO)は、5.00%以上であることが好ましく、7.00%以上、9.00%以上、10.00%以上、12.00%以上、14.00%以上、15.00%以上、16.00%以上、17.00%以上、18.00%以上、18.50%以上の順により好ましく、50.00%以下であることが好ましく、48.00%以下、46.00%以下、44.00%以下、43.00%以下、42.00%以下、41.00%以下、40.00%以下、39.00%以下、38.00%以下、37.00%以下、36.00%以下、35.00%以下、34.50%以下、34.00%以下の順により好ましい。
【0402】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物は、液相温度を下げ、熱的安定性を改善する働きがあるが、ガラスのネットワーク形成成分に対するこれらの含有量が多くなると、化学的耐久性および耐候性が低下する傾向がある。また、SiO2およびB2O3は熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると熔融性が低下する傾向がある。これらの観点から、SiO2とB2O3との合計含有量に対するLi2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量の質量比((Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+MgO+CaO+SrO+BaO)/(SiO2+B2O3))は、0.50以上であることが好ましく、0.52以上、0.54以上、0.56以上、0.58以上、0.60以上、0.62以上、0.64以上、0.66以上、0.68以上、0.70以上、0.72以上、0.74以上、0.75以上、0.76以上、0.77以上、0.78以上、0.79以上の順により好ましく、5.00以下であることが好ましく、4.50以下、4.00以下、3.50以下、3.00以下、2.50以下、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.65以下、1.60以下の順により好ましい。
【0403】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Li2O、Na2OおよびK2Oの中で、Li2Oは最も屈折率を低下させにくい成分である。したがって、より一層の高屈折率化の観点からは、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量に対するLi2O含有量の質量比(Li2O/(Li2O+Na2O+K2O))は、0.00以上であることが好ましく、0.00超、0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.40以上、0.45以上の順により好ましい。他方で、質量比(Li2O/(Li2O+Na2O+K2O))は、例えば、1.00以下とすることができ、再加熱失透性の低下を抑制する観点からは、0.99以下、0.98以下、0.95以下、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.50以下とすることもできる。
【0404】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOはガラスの熱的安定性を改善し、ガラスの熔融性を改善する働きを有するが、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量が多くなるとガラスは高分散性傾向を示す。したがって、より望ましい分散性得る観点から、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量に対するLi2O、Na2O、K2Oの合計含有量の質量比((Li2O+Na2O+K2O)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO))は、0.00以上であることが好ましく、0.00超、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上の順により好ましく、4.00以下であることが好ましく、3.50以下、3.00以下、2.50以下、2.00以下、1.50以下、1.00以下、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.35以下の順により好ましい。
【0405】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SiO2とB2O3との合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量の質量比((Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+B2O3))は、熱的安定性の維持および/またはリヒートプレス成形性の維持の観点から、1.00以下であることが好ましく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.35以下、0.30以下、0.25以下の順により好ましい。熔融性の維持および/または部分分散比を減少させて高次の色収差補正に好適なガラスを提供する観点からは、質量比((Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+B2O3))は、0.00以上であることが好ましく、0.00超、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上の順により好ましい。
【0406】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Li2O含有量は、0.00%以上であることが好ましく、0.05%以上、0.10%以上、0.15%以上、0.20%以上、0.25%以上、0.30%以上、0.40%以上、0.50%以上、0.60%以上の順により好ましい。また、Li2O含有量は、14.00%以下であることが好ましく、12.00%以下、10.00%以下、8.00%以下、7.00%以下、6.50%以下、6.00%以下、5.50%以下、5.00%以下の順により好ましい。Li2Oの含有量を上記囲とすることは、より望ましい光学恒数を実現する観点から好ましく、また化学的耐久性、耐候性、再加熱時の安定性を保持する観点から好ましい。
【0407】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Na2O含有量は、0.00%以上であることが好ましい。また、Na2O含有量は、10.00%以下であることが好ましく、8.00%以下、7.00%以下、6.00%以下、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順により好ましい。Na2Oの含有量を上記範囲とすることは、部分分散特性改善の観点から好ましい。
【0408】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、K2O含有量は、0.00%以上であることが好ましい。また、K2O含有量は、10.00%以下であることが好ましく、8.00%以下、7.00%以下、6.00%以下、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下の順により好ましい。K2Oの含有量を上記範囲とすることは、ガラスの熱的安定性向上の観点から好ましい。
【0409】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Cs2O含有量は、5.00%以下であることが好ましく、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましく、0%でもよい。
【0410】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)は、より一層の高屈折率化の観点から、30.00%以上であることが好ましく、31.00%以上、32.00%以上、33.00%以上、34.00%以上、35.00%以上、36.00%以上、36.50%以上、37.00%以上、37.55%以上の順により好ましい。より一層の低比重化および熱的安定性向上の観点からは、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)は、60.00%以下であることが好ましく、58.00%以下、56.00%以下、54.00%以下、52.00%以下、51.00%以下、50.00%以下、49.50%以下、49.00%以下、48.50%以下の順により好ましい。
【0411】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するSiO2とB2O3との合計含有量の質量比((SiO2+B2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、比重の増加を抑えつつ屈折率の高いガラスを得る観点から、好ましくは0.75以下である。上記に加えて望ましいアッベ数νdを実現する観点、部分分散特性改善の観点および耐失透性向上の観点からは、質量比((SiO2+B2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.16以上であることが好ましく、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.35以上、0.36以上、0.37以上、0.38以上、0.39以上、0.40以上、0.41以上、0.42以上の順により好ましく、0.75以下であることが好ましく、0.74以下、0.73以下、0.72以下、0.71以下、0.70以下、0.69以下、0.68以下、0.67以下、0.66以下、0.65以下、0.64以下の順により好ましい。
【0412】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SiO2およびB2O3は屈折率を低下させ、分散を低下させる(アッベ数を増加させる)働きがある。一方、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、Bi2O3、ZrO2は高屈折率高分散化成分である。より屈折率を高める観点から、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、Bi2O3およびZrO2の合計含有量に対するSiO2とB2O3との合計含有量の質量比((SiO2+B2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3+ZrO2))は、0.64以下であることが好ましく、0.63以下、0.62以下、0.61以下、0.60以下、0.59以下、0.58以下の順により好ましい。
一方、ガラス組成Cの場合、高分散化を抑制する観点からは、質量比((SiO2+B2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3+ZrO2))は、0.13以上であることが好ましく、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、0.30以上、0.31以上、0.32以上、0.33以上、0.34以上、0.35以上、0.36以上、0.37以上、0.38以上の順により好ましい。
【0413】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量の質量比((Li2O+Na2O+K2O)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、部分分散特性および透過率改善の観点からは、0.00以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。ガラスの熱的安定性および/またはリヒートプレス成形性の維持の観点からは、質量比((Li2O+Na2O+K2O)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.67以下であることが好ましく、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下、0.15以下、0.10以下の順により好ましい。
【0414】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは、ガラスの熱的安定性を改善する働きがあるが、これらの含有量が多くなると屈折率が低下する傾向があり、ガラスがより低分散性になる傾向がある。一方、TiO2、Nb2O5、WO3およびBi2O3は、屈折率を高くし、ガラスをより高分散性にする傾向があるが、これらの含有量が多くなると熱的安定性が低下する傾向がある。以上の観点から、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するMgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量の質量比((MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.09以上であることが好ましく、0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、0.30以上、0.31以上、0.32以上、0.35以上、0.40以上、0.45以上の順により好ましく、1.66以下であることが好ましく、1.60以下、1.50以下、1.40以下、1.30以下、1.20以下、1.10以下、1.00以下、0.95以下、0.90以下、0.88以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下の順により好ましい。
【0415】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの中で、MgO、CaOは、SrO、BaO、ZnOと比べてガラスの比重の増大を抑え、かつα100-300やαmaxを小さくする上で有効な成分である。したがって、比重の増大を抑制する観点から、MgOおよびCaOの合計含有量に対するZnO、SrOおよびBaOの合計含有量の質量比((ZnO+SrO+BaO)/(MgO+CaO))は、1.98以下であることが好ましく、1.96以下、1.94以下、1.92以下、1.90以下、1.88以下、1.86以下、1.85以下、1.84以下、1.83以下、1.82以下、1.81以下、1.80以下、1.79以下、1.78以下、1.50以下、1.20以下、0.95以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下の順により好ましい。
【0416】
一方、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、SrO、BaO、ZnOは、少量の導入によりガラスの安定性を高め、また屈折率を高める働きも有する。そのため、低分散性を維持する観点から、質量比((ZnO+SrO+BaO)/(MgO+CaO))は、0.17以上であることが好ましく、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上の順により好ましい。
【0417】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Nb2O5およびTiO2の合計含有量に対するLi2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O)/(Nb2O5+TiO2)]の下限は、好ましくは0.001であり、さらには0.01、0.02、0.03、0.04の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.50、0.30、0.20、0.10、0.08、0.06の順により好ましい。
【0418】
ガラス組成Cにおいて、ガラスの熔解特性や熱的安定性、再加熱時の安定性を維持しながら所望の光学恒数を得る観点から、質量比[(Li2O+Na2O+K2O)/(Nb2O5+TiO2)]は上記範囲であることが好ましい。
【0419】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、分散性への寄与に関して、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3とLa2O3、Gd2O3およびY2O3とを対比すると、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3はガラスをより低分散性にする傾向があり、La2O3、Gd2O3およびY2O3はガラスをより高分散性にする傾向がある。望ましい分散性を得る観点からは、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量の質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.00超であることが好ましく、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上の順により好ましく、1.00以下であることが好ましく、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、0.35以下、0.32以下の順により好ましい。
【0420】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するTiO2含有量の質量比(TiO2/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、高屈折率かつ低比重化する観点から、0.00以上であることが好ましく、0.00超、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上の順により好ましい。他方でガラスの着色を抑制し、ガラスの安定性を高める観点から1.00以下であることが好ましく、1.00未満、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.73以下、0.60以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下の順により好ましい。
【0421】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するNb2O5含有量の質量比(Nb2O5/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、部分分散特性改善の観点から、0.00以上であることが好ましく、0.00超、0.01以上、0.05以上、0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上の順により好ましい。他方でガラスの熱的安定性の向上や、再加熱失透性の改善のためには1.00以下であることが好ましく、1.00未満、0.99以下、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.66以下の順により好ましい。
【0422】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するTa2O5含有量の質量比(Ta2O5/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、ガラスの原料コスト低減およびより一層の低比重化の観点から、1.00以下であることが好ましく、0.80以下、0.60以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下、0.10以下の順により好ましく、0であることが特に好ましい。
【0423】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、高屈折率高分散化成分であるTiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の中で、WO3およびBi2O3は比重を高める働きが大きい。したがって、より一層の低比重化の観点から、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するWO3含有量の質量比(WO3/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、1.00以下であることが好ましく、0.80以下、0.60以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下、0.10以下の順により好ましく、0であることが特に好ましい。
同様の観点から、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するBi2O3含有量の質量比(Bi2O3/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、1.00以下であることが好ましく、0.80以下、0.60以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下、0.10以下の順により好ましく、0であることが特に好ましい。
【0424】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Li2O3、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3は屈折率を高める働きを有する。一方、SiO2、B2O3、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは屈折率を低下させる傾向がある。より一層の高屈折率化の観点からは、Li2O3、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量に対するSiO2、B2O3、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの質量比((SiO2+B2O3+Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(Li2O+La2O3+Gd2O3+Y2O3+ZrO2+TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3))は、0.12以上であることが好ましく、0.15以上、0.20以上、0.30以上、0.35以上、0.40以上、0.45以上、0.50以上、0.55以上の順により好ましく、2.83以下であることが好ましく、2.80以下、2.60以下、2.40以下、2.20以下、2.00以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、1.40以下、1.30以下、1.26以下、1.25以下、1.24以下の順により好ましい。
【0425】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、Bi2O3およびZrO2は、ガラスの屈折率を高める働きを有するが、ZrO2含有量が多くなるとガラスの熔融性が低下する傾向がある。以上の観点から、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、Bi2O3およびZrO2の合計含有量に対するZrO2含有量の質量比(ZrO2/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3+ZrO2))は、0.00以上であることが好ましく、0.01以上、0.02以上の順により好ましく、0.17以下であることが好ましく、0.16以下、0.15以下、0.14以下、0.13以下の順により好ましい。
【0426】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2、Nb2O5、WO3およびZnOは屈折率を高くし、ガラスをより高分散性にする傾向があるが、これらを多く含む場合、ガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。一方、MgO、CaO、SrOおよびBaOは、ガラスをより低分散性にする傾向があり、熱的安定性を改善する働きを有するが、これらを多く含む場合、屈折率が低下する傾向がある。以上の観点から、TiO2、Nb2O5、WO3およびZnOの合計含有量に対するMgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量の質量比((MgO+CaO+SrO+BaO)/(TiO2+Nb2O5+WO3+ZnO))は、0.10以上であることが好ましく、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、0.30以上、0.31以上、0.32以上の順により好ましく、1.50以下であることが好ましく、1.30以下、1.20以下、1.10以下、1.00以下、0.95以下、0.90以下、0.87以下の順により好ましい。
【0427】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、TiO2含有量は、0.00%以上であることが好ましく、0.00%超、0.50%以上、1.00%以上、1.50%以上、2.00%以上、2.50%以上、3.00%以上、3.50%以上、4.00%以上の順により好ましく、50.00%以下であることが好ましく、45.0%以下、40.00%以下、38.00%以下、36.00%以下、35.00%以下、34.00%以下、32.00%以下、31.00%以下、30.00%以下、29.50%以下、29.00%以下の順により好ましい。TiO2の含有量が上記範囲であることは、より望ましい光学恒数の実現し、またガラスの原料コストを低減する観点から好ましい。
【0428】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Nb2O5含有量は、0.00%以上であることが好ましく、0.00%超、1.00%以上、2.00%以上、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上、6.00%以上、7.00%以上、8.00%以上、9.00%以上、10.00%以上、10.50%以上の順により好ましい。また、Nb2O5含有量は、60.00%以下であることが好ましく、58.00%以下、56.00%以下、54.00%以下、52.00%以下、50.00%以下、49.00%以下、48.00%以下、47.00%以下、46.00%以下、45.00%以下、44.00%以下の順により好ましい。Nb2O5含有量が上記範囲であることは、より望ましい光学恒数の実現、より一層の低比重化および部分分散特性の改善の観点から好ましい。
【0429】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Ta2O5含有量は、0.00%以上とすることができる。また、Ta2O5含有量は、5.00%以下であることが好ましく、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。Ta2O5含有量が上記範囲であることは、ガラスの熱的安定性向上、融性向上およびより一層の低比重化の観点から好ましい。
【0430】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、WO3含有量は、0.00%以上とすることができる。また、WO3含有量は、5.00%以下であることが好ましく、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。WO3含有量が上記範囲であることは、ガラスの透過率向上、部分分散特性改善およびより一層の低比重化の観点から好ましい。
【0431】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、Bi2O3含有量は、0.00%以上とすることができる。また、Bi2O3含有量は、5.00%以下であることが好ましく、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。Bi2O3含有量が上記範囲であることは、ガラスの熱的安定性向上、部分分散特性の改善およびより一層の低比重化の観点から好ましい。
【0432】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、GeO2は、屈折率を高める働きをするが、非常に高価な成分である。ガラスの製造コストを抑える観点から、GeO2含有量は、0.00%以上とすることができ、2.00%以下であることが好ましく、1.50%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。
【0433】
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、更に、上記成分に加えて、P2O5、Al2O3等の一種以上を含むこともできる。
P2O5含有量は、0.00%以上とすることができ、好ましくは10.00%以下であり、8.00%以下、6.00%以下、4.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。P2O5含有量が上記範囲であることは、ガラスの熱的安定性向上および部分分散特性改善の観点から好ましい。
Al2O3含有量は、0.00%以上であることができ、好ましくは10.00%以下であり、8.00%以下、6.00%以下、4.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。Al2O3含有量が上記範囲であることは、ガラスの耐失透性および熱的安定性向上の観点から好ましい。
【0434】
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、それぞれ毒性を有する。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことが好ましい。
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことが好ましい。
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr,Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ceは、ガラスの着色を増大させたり、蛍光の発生源となり、光学素子用のガラスに含有させる元素としては好ましくない。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことが好ましい。
【0435】
Sb、Snは清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。
Sbの添加量は、Sb2O3に換算し、Sb2O3以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたとき、0~0.11質量%の範囲にすることが好ましく、0.01~0.08質量%の範囲にすることがより好ましく、0.02~0.05質量%の範囲にすることが更に好ましい。
Snの添加量は、SnO2に換算し、SnO2以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたとき、0~0.50質量%の範囲にすることが好ましく、0~0.20質量%の範囲にすることがより好ましく、0質量%にすることが更に好ましい。
【0436】
<ガラス物性>
(屈折率nd)
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、屈折率の高いガラスとすることができる。ガラス組成Cの場合、屈折率ndは、1.860以上であることが好ましく、1.865以上、1.870以上、1.875以上、1.880以上、1.885以上、1.890以上、1.895以上、1.900以上の順により好ましい。また、屈折率ndは、例えば、1.950以下、1.945以下、1.940以下、1.935以下、1.930以下、または1.925以下とすることができる。本発明および本明細書において、「屈折率」は、「屈折率nd」を意味する。
【0437】
(アッベ数νd)
アッベ数νdは分散性に関する性質を表す値であり、d線、F線、C線における各屈折率nd、nF、nCを用いてνd=(nd-1)/(nF-nC)と表される。本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、光学素子用材料としての有用性の観点から、アッベ数νdは、22.00以上であることが好ましく、22.50以上、23.00以上、23.50以上、24.00以上、24.20以上、24.40以上、24.60以上、24.70以上、24.80以上、25.00以上、25.50以上、25.60以上、25.80以上、26.00以上の順により好ましい。同様の観点から、アッベ数νdは、30.00以下であることが好ましく、29.50以下、29.00以下、28.50以下、28.40以下、28.30以下、28.20以下、28.10以下、28.00以下、27.90以下、27.80以下、27.70以下の順により好ましい。
【0438】
また、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、光学素子用材料としての有用性の観点から、屈折率ndとアッベ数νdとが、下記関係式の1つ以上を満たすことも好ましい。
nd≧-0.0025νd+1.925
nd≧-0.0025νd+1.935
nd≦-0.0025νd+1.995
nd≦-0.0025νd+2.005
【0439】
(比重d)
光学系を構成する光学素子では、光学素子を構成するガラスの屈折率と光学素子の光学機能面(制御しようとする光線が入射、出射する面)の曲率によって、屈折力が決まる。光学機能面の曲率を大きくしようとすると、光学素子の厚みも増加する。その結果、光学素子が重くなる。これに対し、屈折率の高いガラスを使用すれば、光学機能面の曲率を大きくしなくても大きな屈折力を得ることができる。
以上より、ガラスの比重の増加を抑えつつ、屈折率を高めることができれば、一定の屈折力を有する光学素子の軽量化が可能となる。
以上の観点から、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、比重dは、4.100以下であることが好ましく、4.095以下、4.090以下、4.085以下、4.080以下、4.050以下、4.000以下、3.995以下、3.990以下、3.985以下の順により好ましい。比重が低いほど光学素子の軽量化の観点から好ましいため、比重について、下限は特に限定されない。一形態では、比重は、3.400以上、3.450以上、3.500以上、3.550以上、3.600以上、3.650以上、3.700以上、または3.750以上とすることができる。
【0440】
(d/nd)
比重dに関して先に記載した点と同様の観点から、本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、比重dを屈折率ndで除した値(d/nd)は、4.35以下であることが好ましく、4.00以下、3.50以下、3.00以下、2.90以下、2.80以下、2.70以下、2.60以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.15以下の順により好ましい。(d/nd)の値が小さいほど光学素子の軽量化の観点から好ましいため、(d/nd)について、下限は特に限定されない。一形態では、(d/nd)は、例えば、1.74以上、1.76以上、1.78以上、1.80以上、1.82以上、1.84以上、1.85以上、1.86以上、1.87以上、1.88以上、1.89以上、1.90以上、1.91以上、1.92以上、1.93以上、1.94以上、または1.95以上とすることができる。
【0441】
(着色度λ5)
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、ガラスの光線透過性、詳しくは、短波長側の光吸収端の長波長化が抑制されていることは、着色度λ5により評価することができる。着色度λ5とは、紫外域から可視域にかけて、厚さ10mmのガラスの分光透過率(表面反射損失を含む)が5%となる波長を表す。ガラス組成Cの場合、分光透過率とは、例えばより詳しくは、10.0±0.1mmの厚さに研磨された互いに平行な平面を有するガラス試料を用い、上記研磨された面に対して垂直方向から光を入射して得られる分光透過率、すなわち、上記ガラス試料に入射する光の強度をIin、上記ガラス試料を透過した光の強度をIoutとしたときのIout/Iinのことである。
着色度λ5によれば、分光透過率の短波長側の吸収端を定量的に評価することができる。接合レンズ作製のためにレンズ同士を紫外線硬化型接着剤により接合する際等には、光学素子を通して接着剤に紫外線を照射し接着剤を硬化させることが行われる。効率よく紫外線硬化型接着剤の硬化を行う観点からは、分光透過率の短波長側の吸収端が短い波長域にあることが好ましい。この短波長側の吸収端を定量的に評価する指標として、着色度λ5を用いることができる。ガラス組成Cの場合、好ましくは400nm以下のλ5を示すことができる。λ5は、395nm以下、390nm以下、385nm以下、380nm以下の順により好ましい。λ5は、低いほど好ましく、下限は特に限定されるものではない。
【0442】
(ガラス転移温度Tg)
本実施形態に係る成形用ガラス素材において、ガラス組成Cの場合、ガラス転移温度Tgは、機械加工性の観点からは、好ましくは560℃以上である。ガラス転移温度が高いガラスは、切断、切削、研削、研磨等のガラスの機械加工を行う際に破損しにくい傾向があり好ましい。機械加工性の観点からは、ガラス転移温度Tgは、570℃以上であることがより好ましく、580℃以上、590℃以上、600℃以上の順に更に好ましい。一方、アニール炉や成形型への負担軽減の観点からは、ガラス転移温度Tgは、800℃以下であることが好ましく、790℃以下、780℃以下、770℃以下、760℃以下、750℃以下、740℃以下の順により好ましい。
【0443】
ガラス転移温度Tgは、次のようにして求められる。示差走査熱量分析において、ガラス試料を昇温すると比熱の変化に伴う吸熱挙動、即ち、吸熱ピークが現れ、更に昇温すると発熱ピークが現れる。示差走査熱量分析では横軸を温度、縦軸を試料の発熱吸熱に対応する量とする示差走査熱量曲線(DSC曲線)が得られる。この曲線でベースラインから吸熱ピークが現れる際に傾きが最大になる点における接線と上記ベースラインの交点をガラス転移温度Tgとする。ガラス転移温度Tgの測定は、ガラスを乳鉢等で十分粉砕したものを試料とし、示差走査熱量計を使用して、昇温速度を10℃/分として行うことができる。
【0444】
(液相温度)
ガラスの熱的安定性には、ガラス融液を成形する際の耐失透性と、一度固化したガラスを再加熱したときの耐失透性とがある。
ガラス融液を成形する際の耐失透性については、液相温度LTを目安にすることができる。液相温度が低いほど優れた耐失透性を有しているということができる。液相温度が高いガラスでは、失透を防止するために、ガラス融液、即ち、熔融ガラスの温度を高温に保持しなければならず、易揮発成分の揮発が生じる、坩堝の侵蝕が助長される、特に貴金属製坩堝の場合は貴金属イオンがガラス融液に溶け込んでガラスが着色する、成形時の粘性が低くなって均質性の高いガラスを成形することが難しくなる等の現象が発生し得る。そのため、ガラス組成Cの場合、液相温度は、1400℃以下であることが好ましく、1370℃以下、1340℃以下、1310℃以下、1280℃以下、1270℃以下、1260℃以下、1250℃以下の順により好ましい。また、液相温度は、例えば、1000℃以上、1050℃以上または1100℃以上とすることができるが、ここに例示した値を上回ることもできる。
【0445】
本発明および本明細書における「液相温度」は、以下の方法によって求められる。
示差走査熱量計を用いて、流量0.3L/minの窒素を流しながら窒素雰囲気中で、およそ0.02mlの粉砕したガラス試料を昇温速度10℃/minで1350℃まで昇温したときに、昇温過程で生じたガラス中の結晶が、ガラス転移温度や結晶化温度よりも高い温度域において融解するときに生じる吸熱ピークの終点を液相温度とする。
図1は、示差走査熱量曲線(DSC曲線)を模式的に示した図である。横軸が温度で、横軸上で右にいくほど高温、左にいくほど低温である。縦軸は試料の発熱・吸熱に対応し、ベースライン(点線)よりも上側が発熱、下側が吸熱である。昇温過程における結晶析出が発熱ピーク、析出した結晶の融解が吸熱ピークに対応する。結晶が融解して融液化する温度が、液相温度である。液相温度は、吸熱ピークの高温側の接線とベースラインの交点の温度として求められる。
【0446】
(ガラス素材の製造)
本発明の実施形態に係るガラスは、上記所定の組成となるようにガラス原料を調合し、調合したガラス原料により作製できる。例えば、複数種の化合物を調合し、十分混合してバッチ原料とし、バッチ原料を石英坩堝や白金坩堝中に入れて粗熔解(ラフメルト)する。粗熔解によって得られた熔融物を冷却、粉砕してカレットを作製する。さらにカレットを白金坩堝中に入れて加熱、再熔融(リメルト)して熔融ガラスとし、さらに冷却清澄、均質化した後に、熔融ガラスがTg未満の温度Txに達するように温度調整された金型に鋳込み(工程1)、温度Txで保持する(工程2)。その後、ガラスの歪み点温度確実に下回るよう-30℃/hrで4時間冷却し(工程3)、ガラスが割れない程度の徐冷速度で、炉外に取り出せる温度にまで放冷する(工程4)。
【0447】
なお、ガラス中に所望のガラス成分を所望の含有量となるように導入することができれば、バッチ原料を調合するときに使用する化合物は特に限定されないが、このような化合物として、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、フッ化物等が挙げられる。
【0448】
以下、工程1~4について説明する。
【0449】
(工程1)
工程1では、熔融ガラスは、ガラス転移温度Tg未満の温度Txに達するように温度調整された金型に鋳込まれる。熔融ガラスの温度を上記のように制御することで、ガラスに加える熱エネルギーを抑え、ガラス内の原子の動きを抑えることができる。その結果、ガラス内の原子間の結合距離や結合角といったガラス内部の構造因子が均質化される前に原子の移動が規制される。そして、融液状態のような乱雑なガラス構造を維持することにより、再加熱時の安定性に優れるガラス素材が得られる。
【0450】
なお、工程1の前の熔解ガラスの温度は、通常、ガラスの液相温度~ガラスの熔解温度である。また、工程1において、熔融ガラスを金型に鋳込む際のガラス温度は、ガラスの熔融時の温度であり、おおむね1500℃~1100℃、好ましくは1400℃~1200℃の範囲である。したがって、工程1では、熔融ガラスは金型に鋳込まれる際に冷却される。このときの冷却は、通常は、大気による放冷である。しかし、あまりにも冷却速度が速すぎると、ガラスの内部の一部の箇所が流動しないほど高粘度化あるいは固化するそれがある。そうすると、ガラスの均質化に支障をきたし、またガラスにクラックが生じたり、ガラスが破断するおそれもある。したがって、工程1における冷却速度の下限は、好ましくはおおむね1℃/秒であり、さらには3℃/秒、6℃/秒の順により好ましい。冷却速度の上限は、好ましくは20℃/秒であり、さらには15℃/秒、12℃/秒、10℃/秒の順により好ましい。
【0451】
(工程2)
工程2では、熔融ガラスは温度Txで保持される。工程2における保持温度Txは、好ましくはガラス転移温度Tg未満であり、その上限はTg-1℃、Tg-5℃、Tg-10℃、Tg-15℃、Tg-20℃の順により好ましい。保持温度Txの上限を上記範囲とすることで、ガラス構造の乱雑性が高まり、再加熱時の安定性に優れるガラス素材が得られる。
【0452】
工程2における保持温度Txの下限は、好ましくはTg-100℃であり、さらには、Tg-90℃、Tg-80℃、Tg-70℃、Tg-60℃、Tg-50℃の順により好ましい。特に、Txが歪点を下回りすぎないことが好ましく、歪点以上であることがより好ましい。保持温度Txの下限を上記範囲とすることで、過剰なガラスの内部歪を除去することができ、後工程におけるガラスの加工性の悪化を抑制し、あるいはガラスバルク体の破損を防止することができる。後工程におけるガラスの加工性の悪化を問わないプロセスの場合、工程2の温度の下限は特に規定されない。
【0453】
工程2における保持時間は、熔融状態から冷却された高温のガラスを均熱化させるため、ガラスの厚みが大きいほど、またガラスの体積が大きいほど長くなる傾向があるが、好ましくは10分以上であり、20分以上、または30分以上とすることもできる。生産性の観点およびガラスの熱的安定性保持の観点からは、保持時間の上限は3時間未満で十分であり、さらには2時間未満、1.5時間未満、または1.0時間未満としてもよい。保持時間が長すぎると、熔融状態における原子配置の無秩序な状態が保持されず、原子配置の秩序化が進むことによりガラスの熱的安定性が低下し、αmaxも大きくなる傾向がある。
【0454】
(工程3)
工程3では、ガラスは、徐冷中に歪み点温度を確実に下回るよう-30℃/hrで4時間冷却される。この冷却に要する時間は、温度Txが歪点よりも高い場合は、好ましくは4時間以上であり、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは6時間以上である。温度Txが歪点よりも低い場合は、4時間未満とすることもできる。
【0455】
(工程4)
工程4では、ガラスは、割れない程度の徐冷速度で、炉外に取り出せる温度にまで放冷される。工程4における徐冷速度は、おおむね-50℃/hrより小さいことが好ましく、-10℃/hrあるいは-30℃/hr程度とすることができる。-1℃/hrより小さいと生産性に支障をきたすおそれがある。また炉外に取り出せるガラスの温度は、炉外の断熱の状況によるが、好ましくはおよそ100℃以下であり、さらには80℃以下、60℃以下、40℃以下、20℃以下の順により好ましい。室温との差で表すと、炉外に取り出せるガラスの温度の上限は、好ましくは室温+50℃であり、さらには室温+40℃、室温+30℃、室温+20℃、室温+10℃の順により好ましい。炉外に取り出せるガラスの温度の下限は室温とすればよい。
【0456】
ガラスの徐冷には、上記の温度プロファイルが得られるような公知の方法、たとえば温度プログラムが可能な徐冷炉などを用いればよい。
【0457】
工程1における冷却速度、および工程2における保持温度Txを上記範囲とすることで、ガラス構造の乱雑性が高まり、再加熱時の安定性に優れるガラス素材が得られる。また、工程3、工程4のようにガラスを冷却、徐冷することにより、ガラスの歪を取り除き、後工程におけるガラスの加工性を維持することができる。
【0458】
本発明の実施形態に係る光学ガラスとして、本発明の実施形態に係る成形用ガラス素材をそのまま用いることができる。
【0459】
(光学素子等の製造)
本発明の実施形態に係る成形用ガラス素材を使用して光学素子を作製するには、公知の方法を適用すればよい。例えば、上記ガラス素材の製造において、熔融ガラスを鋳型に流し込んで板状に成形し、本発明に係る成形用ガラス素材を作製する。得られたガラス素材を適宜、切断、研削、研磨し、再加熱後の成形に適した大きさおよび形状を有する成形前駆体(カットピースともいう)を作製する。カットピースを加熱、軟化して、公知の方法で成形(リヒートプレス、丸棒成形、押出成形等)し、光学素子の形状に近似する光学素子ブランクを作製する。光学素子ブランクをアニールし、公知の方法で切断、研削、研磨等することにより光学素子を作製する。
【0460】
作製した光学素子の光学機能面には使用目的に応じて、反射防止膜、全反射膜などをコーティングしてもよい。
【0461】
本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなる光学素子を提供することができる。光学素子の種類としては、球面レンズ、非球面レンズ等のレンズ、プリズム、回折格子等を例示することができる。レンズの形状としては、両凸レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ等の諸形状を例示することができる。光学素子は、上記光学ガラスからなるガラス成形体を加工する工程を含む方法により製造することができる。加工としては、切断、切削、粗研削、精研削、研磨等を例示することができる。こうした加工を行う際、上記ガラスを使用することにより、破損を軽減することができ、高品質の光学素子を安定して供給することができる。
【0462】
第2実施形態
第2実施形態に係る成形用ガラス素材は、
線膨張係数の最大値αmaxと、100~300℃における平均線膨張係数α100-300と、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とが、下記式(4)を満たす。
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦264 ・・・(4)
【0463】
第2実施形態に係る成形用ガラス素材において、線膨張係数の最大値αmaxと、100~300℃における平均線膨張係数α100-300と、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とは、下記式(4)を満たし、好ましくは下記式(5)を満たし、より好ましくは下記式(5)を満たす。下記式を満たすことで、再加熱時の安定性に優れる成型用ガラス素材が得られる。
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦264 ・・・(4)
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦260 ・・・(5)
αmax/α100-300×[SiO2+ZrO2]≦255 ・・・(6)
【0464】
線膨張係数の最大値αmaxおよび平均線膨張係数α100-300は、ガラス素材の製造工程において、熔融ガラスを冷却する条件を調整することにより、制御できる。
【0465】
線膨張係数の最大値αmaxおよび平均線膨張係数α100-300は、第1実施形態と同様にして測定できる。
【0466】
第2実施形態に係る成形用ガラス素材において、線膨張係数の最大値αmaxと、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とは、好ましくは下記式(1)を満たし、より好ましくは下記式(2)を満たし、さらに好ましくは下記式(3)を満たす。再加熱時の安定性に優れる成型用ガラス素材を得る観点から、下記式を満たすことが好ましい。
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27900 ・・・(1)
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27500 ・・・(2)
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27000 ・・・(3)
【0467】
線膨張係数の最大値αmaxは、ガラス素材の製造工程において、熔融ガラスを冷却する条件を調整することにより、制御できる。
【0468】
第2実施形態に係る成形用ガラス素材において、上記以外の特性およびガラス組成については、第1実施形態と同様とすることができる。また、第2実施形態におけるガラス素材の製造および光学素子等の製造についても、第1実施形態と同様とすることができる。
【0469】
第3実施形態
第3実施形態に係る成形用ガラス素材は、
線膨張係数の最大値αmaxが、当該成形用ガラス素材をガラス転移温度Tgにおいて均熱化した後-30℃/hrで4時間冷却し、その後放冷して得たガラス素材の線膨張係数の最大値αmax(Tg)よりも小さい。
【0470】
第3実施形態に係る成形用ガラス素材において、線膨張係数の最大値αmaxは、当該成形用ガラス素材をガラス転移温度Tgにおいて均熱化した後-30℃/hrで4時間冷却し、その後放冷して得たガラス素材の線膨張係数の最大値αmax(Tg)よりも小さい。ただし、線膨張係数の最大値αmaxは、上記線膨張係数の最大値αmax(Tg)よりわずかに大きくてもよい。したがって、αmaxとαmax(Tg)の差分[αmax(Tg)-αmax]は、10-7・℃-1の単位で整数第1位まで表示すると、好ましくは-9以上であり、さらには-4以上、0以上、5以上、10以上、20以上、40以上、60以上、80以上、100以上、120以上、140以上、160以上、180以上、200以上、250以上、300以上の順により好ましい。また、該差分の上限は特に限定されないが、通常、αmax(Tg)であり、好ましくはαmax(Tg)-100程度である。
【0471】
第3実施形態に係る成形用ガラス素材において、最大値αmax(Tg)の測定方法は、第1実施形態と同様である。
【0472】
第3実施形態に係る成形用ガラス素材において、線膨張係数の最大値αmaxと、質量%表示でのSiO2およびZrO2の合計含有量[SiO2+ZrO2]とは、好ましくは下記式(1)を満たし、より好ましくは下記式(2)を満たし、さらに好ましくは下記式(3)を満たす。再加熱時の安定性に優れる成型用ガラス素材を得る観点から、下記式を満たすことが好ましい。
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27900 ・・・(1)
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27500 ・・・(2)
αmax×[SiO2+ZrO2]≦27000 ・・・(3)
【0473】
線膨張係数の最大値αmaxは、ガラス素材の製造工程において、熔融ガラスを冷却する条件を調整することにより、制御できる。
【0474】
第3実施形態に係る成形用ガラス素材において、上記以外の特性およびガラス組成については、第1実施形態と同様とすることができる。また、第3実施形態におけるガラス素材の製造および光学素子等の製造についても、第1実施形態と同様とすることができる。
【実施例0475】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0476】
(実施例1-1)
表1(1)に示すガラス組成Iを有するガラスサンプルを以下の手順で作製し、得られたガラスサンプルについて各種評価を行った。結果を表2(1)、2(2)に示す。
【0477】
[ガラスサンプルの製造]
まず、ガラスの構成成分に対応する酸化物、水酸化物、炭酸塩、および硝酸塩を原材料として準備し、得られる光学ガラスのガラス組成が、表1(1)に示す組成Iとなるように上記原材料を秤量、調合して、原材料を十分に混合した。こうして得られた調合原料(バッチ原料)を、白金坩堝に投入し、1350℃~1450℃で2時間加熱して熔融ガラスとし、攪拌して均質化を図り、清澄してから、熔融ガラスを適当な温度に予熱した金型に鋳込んで急冷し(工程1)。鋳込んだガラスを、ガラス転移温度Tgより25℃低い保持温度Txで30分間保持(工程2)した。そして、工程2の保持温度Txより120℃低い温度まで‐30℃/hrの速度で冷却し(工程3)、その後炉内で室温まで放冷する(工程4)ことにより、ガラスサンプルを得た。ここでのガラスの量は150gとした。
【0478】
ここで、工程2の保持温度Txは、ガラス転移温度Tg(単位:℃)の1の位を四捨五入した値をそのガラスサンプルのTgとし、この温度より25℃低い値とした。表2(2)には、このような温度差に相当する、四捨五入されたTgと、保持温度Txの差分を表示している。このようにすることで、Tgの測定値の多少のばらつきによらず同じ保持温度Txを設定することができ、複数のサンプルを一度に保持することができるので、本発明のガラスの生産効率が向上する。
【0479】
[ガラス成分組成の確認]
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で各ガラス成分の含有量を測定した。表1(1)に示す組成Iのとおりであることを確認した。
【0480】
[ガラス転移温度Tg]
ガラス転移温度Tgは、NETZSCH JAPAN社製の示差走査熱量分析装置(DSC3300SA)を使用し、昇温速度10℃/分にて測定した。
【0481】
[安定性試験]
得られたガラスサンプルを、光学顕微鏡(100倍)で内部に異物が無いことを確認した後に切断、切削し11mm×11mm×10.5mmの試料を得た。この試料を、Tgより200℃高い温度に設定した熱処理炉に入れて加熱し、5分後に取り出し、ガラス試料を冷却した。冷却後のガラス試料端部を光学研磨し、光学顕微鏡(100倍)でガラス試料内部を観察した。このガラス試料全体から観察された結晶(輝点)の数を数えて、1gあたりの数に換算した。結晶は1~300μmの範囲の大きさとした。なお、ガラス試料にヒビ、脈理は見られなかった。
【0482】
[線膨張係数]
得られたガラスサンプルについて、JOGIS08の規定を参照して平均線膨張係数を測定した。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とした。試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように加熱し、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定した。室温~屈伏点温度(試料が屈伏して見かけ上の伸びが止まる温度)の間において、単位温度上昇あたりの試料の伸びが極大となる温度における線膨張係数の最大値をαmaxとした。なお、αmaxは、測定点31個における線膨張係数の移動平均処理をして得られた値の最大値を採用した。また、100~300℃における線膨張係数の平均値を平均線膨張係数α100-300とした。
【0483】
線膨張係数の最大値αmaxと、工程2での保持温度Txをガラス転移温度としたガラスの線膨張係数の最大値αmax(Tg)とを測定し、その差分Q:αmax(Tg)-αmaxを算出した。
【0484】
[平均線膨張係数αL]
得られたガラスサンプルについて、JOGIS16の規定を参照して平均線膨張係数を測定した。平均線膨張係数はNETZSCH JAPAN社製の熱機械分析装置(TMA4000SE)を使用し測定した。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とした。まず、液体窒素を用いて試料温度が-80℃以下になるまで冷却し、20分間保持した後、測定を開始した。測定中は試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように320℃まで昇温させながら、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定した。-30~70℃における線膨張係数の平均値を平均線膨張係数αLとした。
【0485】
[光学特性の測定]
得られたガラスサンプルについて、屈折率nd、ng、nFおよびnC、アッベ数νd、部分分散比Pg,F、ΔPg,Fを測定した。結果を表2(1)、2(2)に示す。
【0486】
(i)屈折率nd、ng、nF、nCおよびアッベ数νd
上記ガラスサンプルについて、日本産業規格 JIS B 7071-1の屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、nCを測定し、下記式に基づきアッベ数νdを算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0487】
(ii)部分分散比Pg,F、ΔPg,F
g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、nCを用いて、下記式に基づき部分分散比Pg,FおよびΔPg,Fを算出した。
Pg,F=(ng-nF)/(nF-nC) ・・・(13)
ΔPg,F=Pg,F-(0.6483-0.001802×νd) ・・・(14)
【0488】
[光透過性の評価]
(i)λτ80
厚さ2.0mm±0.1mmおよび10.0mm±0.1mmのガラス試料を用いて、JOGIS17(光学ガラスの内部透過率の測定方法)に準じ波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定した。厚さ10mmの内部透過率が80%となる波長をλτ80とした。結果を表2(1)に示す。
【0489】
(ii)λ70
厚さ10.0mm±0.1mmのガラス試料について波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定した。外部透過率が70%となる波長をλ70とした。結果を表2(1)に示す。
【0490】
[比重]
比重は、アルキメデス法により測定した。結果を表2(1)に示す。
【0491】
(実施例1-2)
ガラスサンプルの製造において、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgより50℃低い温度とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0492】
(実施例1-3)
ガラスサンプルの製造において、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgより100℃低い温度とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0493】
(実施例2-1)
表1(1)に示すガラス組成IIを有するガラスサンプルを製造した。ガラスサンプルの製造において、ガラス組成IIとなるように原材料を調合し、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgより60℃低い温度とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0494】
(比較例1-1)
ガラスサンプルの製造において、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgより30℃高い温度とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0495】
(比較例1-2)
ガラスサンプルの製造において、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgとした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。なお、比較例1-2における線膨張係数の最大値をαmax(Tg)とし、実施例1-1、1-2、1-3における線膨張係数の最大値αmaxと比較した。
【0496】
(比較例1-3)
ガラスサンプルの製造において、工程2における保持時間を72時間とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。なお、比較例1-3ではガラスが得られたものの、安定性試験においては著しい失透を生じた。また屈折率nd、アッベ数νd、部分分散比Pg,F、ΔPg,Fを測定できなかった。
【0497】
(比較例2-1)
ガラスサンプルの製造において、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgとした他は、実施例2-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例2-1と同様に、各種評価を行った。なお、比較例2-1における線膨張係数の最大値をαmax(Tg)とし、実施例2-1における線膨張係数の最大値αmaxと比較した。
【0498】
(実施例3-1)
表1(2)に示すガラス組成IIIを有するガラスサンプルを製造した。ガラスサンプルの製造において、ガラス組成IIIとなるように原材料を調合し、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgより60℃低い温度とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0499】
(実施例3-2)
表1(2)に示すガラス組成IIIを有するガラスサンプルを製造した。ガラスサンプルの製造において、ガラス組成IIIとなるように原材料を調合し、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgより100℃低い温度とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0500】
(実施例4-1)
表1(3)に示すガラス組成IVを有するガラスサンプルを製造した。ガラスサンプルの製造において、ガラス組成IVとなるように原材料を調合し、工程2における保持温度Txをガラス転移温度Tgと同じ温度とした他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0501】
(実施例4-2)
表1(3)に示すガラス組成IVを有するガラスサンプルを製造した。ガラスサンプルの製造において、ガラス組成IVとなるように原材料を調合した他は、実施例1-1と同様にガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、各種評価を行った。
【0502】
【0503】
【0504】
【0505】
【0506】
【0507】
(実施例3)
実施例1-1、1-2、1-3、2-1、3-1、3-2、4-1、4-2において作製した各ガラスサンプルを用いて、公知の方法により、レンズブランクを作製し、レンズブランクを研磨等の公知方法により加工して各種レンズを作製した。
作製した光学レンズは、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ等の各種レンズである。
各種レンズは、他種の光学ガラスからなるレンズと組合せることにより、二次の色収差を良好に補正することができた。
【0508】
同様にして、実施例1-1、1-2、1-3、2-1、3-1、3-2、4-1、4-2で作製した各種光学ガラスを用いてプリズムを作製した。
【0509】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0510】
例えば、上記に例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを作製することができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。