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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100988
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G01C21/34
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085291
(22)【出願日】2024-05-27
(62)【分割の表示】P 2023032624の分割
【原出願日】2015-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】浜田 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】釣 愛
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 伸明
(72)【発明者】
【氏名】平林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】赤司 信彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 賢
(57)【要約】
【課題】低コストとなるように経路案内することができるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置1の通信部8が、通過時の条件を示す通過パラメータに関連付けられた通過成否情報rを取得し、制御部2が、通過成否情報rと、通過しようとする際の通過パラメータと、に基づいて環状交差点の通過に成功するか否かを予測する通過成功率を算出し、通過成功率に基づいて通過コストを算出する。現在位置から目的地までの経路のうち、コストが最も低くなる経路を選択し、この経路を含むように目的地までの経路を作成して車両を案内することで、低コストとなるように経路案内することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が環状交差点の通過に成功したか否かを示す通過成否情報と該移動体が該環状交差点を通過した際の条件を示す通過パラメータとを取得する取得部と、
移動体が環状交差点の通過に成功するか否かを予測する通過成功率を、前記通過成否情報、及び、前記通過パラメータに基づいて算出する成功率算出部と、
移動体を案内する経路を探索する経路探索部と、
移動体が通過しようとする環状交差点において発生する通過コストを、前記経路及び前記通過成功率に基づいて算出するコスト算出部と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が環状交差点を通過する際の通過コストを算出するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状交差点にバイパス路が付設されている場合に、環状交差点を避けるように車両をバイパス路に案内するナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された従来のナビゲーション装置は、車両をバイパス路に案内することにより、ユーザにとっての利便性を向上させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-101919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のナビゲーション装置では、環状交差点が単純な構成を有している場合や、バイパス路が目的地まで大きく迂回している場合等には、車両をバイパス路に案内することによってコストが上昇してしまうことがある。即ち、環状交差点を通過する経路のコストが高い場合と、環状交差点を避ける経路のコストが高い場合と、があり、従来のナビゲーション装置では、低コストとなる経路を案内することができることができなかった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、低コストとなるように経路案内することができるナビゲーション装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のナビゲーション装置は、移動体が環状交差点の通過に成功したか否かを示す通過成否情報と該移動体が該環状交差点を通過した際の条件を示す通過パラメータとを取得する取得部と、移動体が環状交差点の通過に成功するか否かを予測する通過成功率を、前記通過成否情報、及び、前記通過パラメータに基づいて算出する成功率算出部と、移動体を案内する経路を探索する経路探索部と、移動体が通過しようとする環状交差点において発生する通過コストを、前記経路及び前記通過成功率に基づいて算出するコスト算出部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項6に記載の本発明のナビゲーション方法は、移動体が環状交差点の通過に成功したか否かを示す通過成否情報と該移動体が該環状交差点を通過した際の条件を示す通過パラメータとを取得する取得工程と、移動体が環状交差点の通過に成功するか否かを予測する通過成功率を、前記通過成否情報、及び、前記通過パラメータに基づいて算出する成功率算出工程と、移動体を案内する経路を探索する経路探索工程と、移動体が通過しようとする環状交差点において発生する通過コストを、前記経路及び前記通過成功率に基づいて算出するコスト算出工程と、を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係るナビゲーション装置の概略を示すブロック図である。
図2】前記ナビゲーション装置が搭載された車両が環状交差点を通過する様子を示す模式図である。
図3】前記ナビゲーション装置に接続されたサーバが実行する情報取得処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】前記ナビゲーション装置が実行する経路作成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5】前記ナビゲーション装置が搭載された車両が案内される経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係るナビゲーション装置は、移動体が環状交差点の通過に成功したか否かを示す通過成否情報と移動体が環状交差点を通過した際の条件を示す通過パラメータとを取得する取得部と、移動体が環状交差点の通過に成功するか否かを予測する通過成功率を、通過成否情報、及び、通過パラメータに基づいて算出する成功率算出部と、移動体を案内する経路を探索する経路探索部と、移動体が通過しようとする環状交差点において発生する通過コストを、経路及び通過成功率に基づいて算出するコスト算出部と、を備える。
【0010】
このような本実施形態のナビゲーション装置によれば、通過成否情報と通過パラメータとに基づいて環状交差点における通過成功率を算出し、通過成功率に基づいて通過コストを算出することにより、低コストとなるように経路案内することができる。このとき、過去の通過成否情報とそのときの通過パラメータとが関連付けて記憶され、過去の通過成否情報及び通過パラメータと、通過しようとする際の通過パラメータと、に基づいて通過成功率を算出することが好ましい。
【0011】
尚、成功率算出部は、移動体が通過しようとする環状交差点に固有の通過成否情報に基づいて通過成功率を算出してもよいし、複数の環状交差点における通過成否情報に基づいて通過成功率を算出してもよい。
【0012】
通過成否情報は、移動体が経路案内されている場合には、移動体が環状交差点を一周せずに案内された出口を通過した際に成功とされ、移動体が経路案内されていない場合には、移動体が環状交差点を一周せずに出口を通過した際に成功とされることが好ましい。それにより、移動体が経路案内されている場合、移動体が案内された出口以外の出口を通過した際、即ち、移動体が案内された出口を通り越してしまったり、この出口よりも手前の出口から環状交差点を抜け出したりしてしまった際に、通過成否情報を失敗とすることができる。また、移動体が環状交差点を一周以上周回してしまった際にも、通過成否情報を失敗とすることができる。
【0013】
通過パラメータは、環状交差点における、出口の数と、直径と、中央島の有無と、車線の数と、上下に重なった階層の数と、のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。それにより、出口の数が多い場合や、車線の数が多い場合、階層の数が多い場合には、環状交差点の構造が複雑であり、移動体が通過に失敗しやすくなると考えられ、このように通過の成否を左右しやすい情報を通過パラメータとすることで通過成功率の算出精度を向上させることができる。また、中央島がない場合には、環状交差点であることが分かりにくいとともに、周回路の内周側を案内する部分が明確でないことから、通過に失敗しやすくなると考えられ、通過の成否を左右しやすい情報を通過パラメータとすることで通過成功率の算出精度を向上させることができる。
【0014】
通過パラメータは、移動体が環状交差点を通過する際の、天候と、時間帯と、同一の移動体又は運転者による環状交差点の過去通過回数と、通り越す出口の数と、経路案内中であるか否かと、のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。それにより、雨や曇りの場合や、日没後の時間帯である場合、通り越す出口の数が多い場合、同一の移動体又は同一の運転者による過去通過回数が少ない場合には、移動体が環状交差点の通過に失敗しやすくなると考えられ、このように通過の成否を左右しやすい情報を通過パラメータとすることで通過成功率の算出精度を向上させることができる。
【0015】
コスト算出部は、移動体が環状交差点に進入する入口から案内された出口までの距離と、入口が延びる方向と出口が延びる方向とのなす角度と、のうち少なくとも一方に基づいて通過コストを算出することが好ましい。それにより、コスト算出部は、移動体が環状交差点に進入してから案内された出口に到達するためのコストを精度良く算出することができ、通過コストの算出精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の実施形態に係るナビゲーション方法は、移動体が環状交差点の通過に成功したか否かを示す通過成否情報と移動体が環状交差点を通過した際の条件を示す通過パラメータとを取得する取得工程と、移動体が環状交差点の通過に成功するか否かを予測する通過成功率を、通過成否情報、及び、通過パラメータに基づいて算出する成功率算出工程と、移動体を案内する経路を探索する経路探索工程と、移動体が通過しようとする環状交差点において発生する通過コストを、経路及び通過成功率に基づいて算出するコスト算出工程と、を含む。このような本実施形態のナビゲーション方法によれば、上記のナビゲーション装置と同様に、低コストとなるように経路案内することができる。
【0017】
また、上述したナビゲーション方法をコンピュータにより実行させるナビゲーションプログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、低コストとなるように経路案内することができる。
【0018】
また、上述したナビゲーションプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0019】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。図1は、ナビゲーション装置の概略を示すブロック図であり、図2は、ナビゲーション装置が搭載された車両が環状交差点を通過する様子を示す模式図であり、図3は、ナビゲーション装置に接続されたサーバが実行する情報取得処理の手順の一例を示すフローチャートであり、図4は、ナビゲーション装置が実行する経路作成処理の手順の一例を示すフローチャートであり、図5は、ナビゲーション装置が搭載された車両が案内される経路を示す模式図である。
【0020】
ナビゲーション装置1は、移動体としての車両に搭載されて経路案内するものであって、図1に示すように、制御部2と、GPS受信部3と、記憶装置4と、操作部5と、表示部6と、音声出力部7と、通信部8と、を備える。
【0021】
制御部2は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、ナビゲーション装置1の全体制御を司る。また、制御部2は、現在位置から目的地まで車両を案内する経路を探索して経路探索部として機能するとともに、車両を案内して案内部として機能する。さらに、制御部2は、後述するように通過成功率を算出して成功率算出部として機能するとともに、通過コスト、通過到達コスト及び非通過到達コストを算出してコスト算出部として機能する。
【0022】
GPS受信部3は、公知であるように複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信して、現在の位置情報(現在位置情報)を求めて制御部2に出力する。なお、本実施例では、GPS受信部3がナビゲーション装置1に一体に設けられている例を示すが、GPS受信部3が別体として構成され、ナビゲーション装置1と着脱自在となっていてもよい。
【0023】
記憶装置4は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、経路探索および表示部6に表示するための地図データや、制御部2がナビゲーション装置1を制御するためのプログラムやデータ等および後述する部品消耗情報が格納され、制御部2からの制御により読み書きがなされる。
【0024】
操作部5は、ボタンやタッチパネル等の入力手段やマイク等の音声入力手段で構成されている。操作部5は、ナビゲーション装置1の各種入力操作が行われ、入力操作を示す制御信号が制御部2に出力される。
【0025】
表示部6は、液晶ディスプレイや該液晶ディスプレイを制御するドライバ回路等から構成される。表示部6は、制御部2の制御により、液晶ディスプレイに地図データや各種アイコンおよび操作用のボタン等や、目的地までの経路や進行方向等を表示する。
【0026】
音声出力部7は、スピーカおよびスピーカを駆動するアンプ等から構成され、制御部2からの制御により操作時の案内音声や確認音等が出力される。
【0027】
通信部8は、インターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成されている。通信部8は、外部のサーバSVの通信部SV1と通信し、制御部SV2を介して記憶部SV3から後述する通過成否情報rを取得し、取得部として機能する。
【0028】
通過成否情報rは、車両が環状交差点の通過に成功したか否かを示す情報であって、車両が経路案内されている場合、この車両が環状交差点を一周せずに案内された出口を通過した際に成功(r=0)として記憶され、車両が案内された出口以外の出口を通過したり車両が環状交差点を一周以上したりした際に失敗(r=1)として記憶される。また、通過成否情報rは、車両が経路案内されていない場合、車両が環状交差点を一周せずに任意の出口を通過した際に成功(r=0)として記憶され、車両が環状交差点を一周以上した際に失敗(r=1)として記憶される。サーバSVが、任意の環状交差点を通過した車両に搭載されたナビゲーション装置と通信することにより通過成否情報rを取得し、記憶部SV3に記憶されるものとする。
【0029】
このような通過成否情報rは、車両が環状交差点を通過する際の条件を示す複数の通過パラメータに関連付けて記憶される。通過パラメータは、環状交差点の構造によって定まる静的情報と、車両の通過時の状況によって変化する動的情報と、の両方を含む。本実施例では、通過パラメータは、静的情報として、環状交差点における、出口の数v1と、直径v2と、車線の数(2車線以上であるか否か)v3と、を含み、動的情報として、経路案内中か否かv4と、通り越す出口の数v5と、同一車両によるその環状交差点の過去通行回数v6と、を含む。運転者を区別できる場合には、同一車両の過去通行回数に代えて同一運転者の通行回数としてもよい。
【0030】
具体例として、図2に示すような環状交差点RAにおいて、過去にこの環状交差点RAを1回通行したことがある車両が案内され、4つの出口R1~R4のうち入口R0から時計回りに2番目の出口R2を通過する場合の通過パラメータについて説明する。このとき、出口が4つであるためv1は4となり、直径が40mであるためv2が0.4となり(本実施例では100m単位とする)、環状交差点RA内で1車線であるためv3が0となり、経路案内中であるためv4が1となり、1つの出口R1を通り越すためv5が1となり、過去通行回数が1回であるためv6が1となる。このような6つの通過パラメータを成分とする6次元の特徴ベクトルV=(v1,v2,v3,v4,v5,v6)がそのときの通過成否情報rとともに記憶される。尚、2車線以上である場合にはv3を1とし、経路案内中でない場合にはv4を0とする。
【0031】
ここで、サーバSVの制御部SV2が図3に示す情報取得処理を実行する手順について説明する。まず、制御部SV2は、サーバSVするナビゲーション装置が搭載されている車両のうち、任意の環状交差点に進入した車両があるか否かを繰り返し判定する(S100)。環状交差点に進入した車両がある場合(S100でY)、制御部SV2は、そのときの条件を示す特徴ベクトルVを算出する(S110)。次に、制御部SV2は、この車両が環状交差点を一周以上周回したかを判定する(S120)。車両が環状交差点を一周以上周回した場合(S120でY)、制御部SV2は、通過に失敗したと判断して通過成否情報rを1とする(130)。一方、車両が一周する前に環状交差点から脱出した場合(S120でN)、制御部SV2は、この車両が当該車両に搭載されたナビゲーション装置によって案内されているか否かを判定する(S140)。車両がナビゲーション装置によって案内されている場合(S140でY)、制御部SV2は、車両が通過した出口が案内された出口と一致しているか否かを判定する(S150)。車両がナビゲーション装置によって案内されていない場合(S140でN)、及び、車両が通過した出口が案内された出口と一致している場合(S150でY)、制御部SV2は、通過に成功したと判断して通過成否情報rを0とする(S160)。一方、車両が通過した出口が案内された出口と一致していない場合(S150でN)、制御部SV2はS130に進む。S130又はS160において通過成否情報rを決定した後、制御部SV2は、通過成否情報r及び特徴ベクトルVを事例データとして記憶部SV3に記憶し(S170)、再びS100に戻る。情報取得処理は、サーバSVの稼働時には常に実行されているものとする。
【0032】
尚、情報取得処理は、各車両に搭載されたナビゲーション装置が実行してもよく、通過成否情報r及び特徴ベクトルVを事例データとしてサーバSVに送信する構成としてもよい。
【0033】
以下、車両が環状交差点の通過に成功するか否かを予測する通過成功率を制御部2が算出する方法の詳細について説明する。尚、本実施例では、通過失敗率について算出するものとし、1から通過失敗率を減じた値が通過成功率となる。即ち、通過失敗率を算出することは通過成功率を算出することと等しい。また、後述する方法と同様の方法で通過成功率を算出してから通過失敗率を算出してもよい。
【0034】
各通過パラメータは、通過の成否と相関関係を有しているものと考えられることから、この相関関係を数値化して重みベクトルW=(w1,w2,w3,w4,w5,w6)とした場合、ベクトルVとベクトルWとの内積が通過の失敗のしやすさの指標Fとなる。この指標Fの値域が0以上1以下となるようにP=1/{1+exp(-F)}として正規化することにより、このPが通過失敗率となる。従って、事例として蓄積された通過成否情報rと特徴ベクトルVとの組み合わせに基づいて重みベクトルWを算出しておき、通過しようとする際の条件を示す特徴ベクトルVaを通過失敗率Pの式に代入することにより、その条件で環状交差点の通過に失敗するか否かを予測する通過失敗率Paを算出することができる。
【0035】
次に、重みベクトルWの算出方法について説明する。尚、本実施例では、サーバSVの制御部SV1が重みベクトルWを算出して記憶部SV3に記憶し、ナビゲーション装置1が通信部8によってサーバSVから重みベクトルWを取得するものとするが、ナビゲーション装置1がサーバSVから通過成否情報rと特徴ベクトルVとを取得し、制御部2が重みベクトルWを算出してもよい。重みベクトルWは、過去の事例における特徴ベクトルVによって求めたPの値が、そのときに実際に通過に成功したか否かを示す通過成否情報r(1又は0)に近い値となるように決定される。即ち、過去の複数の事例全てについて、通過成否情報rと、特徴ベクトルVによって算出される通過失敗率Pと、の差の絶対値が小さくなるように(差の二乗が小さくなるように)重みベクトルWを決定すればよい。そこで、例えば最急降下法を用いて重みベクトルWを更新していく方法が考えられる。最急降下法では、次式(1)に示すようにk回目の事例における通過成否情報rkと通過失敗率Pkとの差の二乗をfkとして定義する。次に、次式(2)に示すように、差の二乗fkに基づいて、k-1回目までの事例で求めた重みベクトルWk-1を更新してWkを算出する。ここで、αは学習率であって、Vkはk回目の事例における特徴ベクトルとする。
【0036】
【数1】
【数2】
【0037】
以下、最急降下法を用いた重みベクトルWの算出方法の具体例について説明する。まず、表1に示すような3回の事例における通過成否情報rと特徴ベクトルVの各成分とが順に記憶されていくとともに、初期の重みベクトルW0の全ての成分が0であり、学習率αが0.1であるものとする。
【0038】
【表1】
【0039】
1回目の事例についての情報が記憶されると、初期の重みベクトルW0と、1回目の事例における通過成否情報r1及び特徴ベクトルV1と、に基づいて、1回目の事例までの重みベクトルW1を算出することができ、表2に示すような値となる。次に、2回目の事例についての情報が記憶されると、1回目までの重みベクトルW1と、2回目の事例における通過成否情報r2及び特徴ベクトルV2と、に基づいて、2回目の事例までの重みベクトルW2を算出することができ、表2に示すような値となる。同様に、3回目の事例までの重みベクトルW3も算出することができ、このような計算が繰り返されることで重みベクトルWは更新されていき、事例の数が増えるにしたがって重みベクトルWの精度が向上していく。
【0040】
【表2】
【0041】
本実施例では、例えば日本国内全ての環状交差点を対象として事例データを蓄積し、重みベクトルWを算出するものとする。従って、複数の環状交差点における通過成否情報に基づいて通過成功率及び通過失敗率を求めるようになっている。
【0042】
以上のように重みベクトルWを求めることにより、車両が環状交差点を通過しようとする際の通過失敗率Paを算出することができ、制御部2は、車両が案内される経路と、通過失敗率Paと、に基づいて、この環状交差点において発生する通過コストを算出することができる。即ち、車両が周回せずに案内された出口を通過するためのコストをC1とし、車両が環状交差点を一周するコストをC2とすると、コストC1と、コストC2に通過失敗率Paを乗じた値と、の和が通過コストC3となる。より具体的には、例えばコストC1が0.2であり、コストC2が1であり、通過失敗率Paが0.4である場合、通過コストC3は0.6となる。このとき、コストC1は、例えば、入口から案内された出口までの距離が長いほど大きく、入口が延びる方向とこの出口が延びる方向との成す角度(例えば時計回りを正として0°以上360°未満)が大きいほど大きく設定されていればよい。また、コストC2は、例えば環状交差点の直径が大きいほど大きく設定されていればよい。このようなコストは環状交差点以外の交差点にも設定されており、信号の有無や進行方向(左折、右折又は直進)に応じた適宜な値となっている。制御部2は、探索した経路における合計のコストを算出可能に構成されている。
【0043】
以下、制御部2が実行する経路作成処理の一例について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
搭乗者が操作部5を操作することによって目的地が入力されると、制御部2は現在位置から目的地までの経路を複数探索する。探索した複数の経路に、環状交差点を通過する経路が含まれている場合、制御部2は図4に示す経路作成処理を実行する。まず、制御部2は、現在位置から見て環状交差点よりも先の地点Xを決定する(S200)。このとき、地点Xは、大きな通り同士が交差する交差点の付近等、多くの経路が通過する位置であることが好ましい。次に、制御部2は、サーバSVから重みベクトルWを取得し(S210)、そのときの条件を示す特徴ベクトルVを算出する(S220、取得工程)。次いで、制御部2は、重みベクトルWと特徴ベクトルVとに基づいて通過失敗率Pを算出し(S230、成功率算出工程)、通過コストC3を算出する(S240)。さらに、制御部2は、通過コストC3に基づいて、現在位置から環状交差点を通過して地点Xまで到達するための通過到達コストC4を算出する(S250)。即ち、現在位置から地点Xまでの経路において環状交差点以外で生じるコストと、通過コストC3との和が、通過到達コストC4となる。
【0045】
次に、制御部2は、環状交差点を通過しない経路において、現在位置から地点Xまで到達するための非通過到達コストC5を算出する(S260)。さらに、制御部2は、非通過到達コストC5が未算出であり且つ環状交差点を経由せず地点Xを通過する経路があるか否かを判定する(S270)。非通過到達コストC5が未算出の経路がある場合(S270でY)、制御部2はS260に戻る。一方、環状交差点を経由せず地点Xに到達可能な全ての経路について非通過到達コストC5が算出されている場合(S270でN)、制御部2は、通過到達コストC4と非通過到達コストC5とを比較し、コストが最も低くなる経路を選択する(S280)。制御部2は、選択した経路を含むように現在位置から目的地までの経路を作成し(S290)、経路作成処理を終了する。制御部2は、S290で作成した経路に車両を案内する。
【0046】
制御部2が経路を選択する方法について、具体例を挙げて説明する。図5に示すように、現在地Aから地点Xまで到達する経路として、環状交差点を通過する通過経路RT1と、通過しない非通過経路RT2と、が検索された場合について考える。このとき、通過コストC3が例えば0.6と算出されたとする。通過経路RT1では環状経路以外では全て直進となるため、環状交差点以外でのコストを0とし、通過経路RT1における通過到達コストC4は0.6となる。一方、非通過経路RT2において、例えば、交差点CR1を左折するコストが0.2であり、交差点CR2を右折するコストが0.4であり、交差点CR3を左折するコストが0.2であるものとすると、非通過到達コストC5は0.8と算出される。従って、通過到達コストC4の方が非通過到達コストC5よりも低くなり、制御部2は通過経路RT1を選択して目的地までの経路を作成する。
【0047】
尚、上記の例では直進時のコストを0としたが、信号の有無や一時停止線の有無、道幅、制限速度等に応じて直進時のコストを設定してもよい。
【0048】
上記の構成により、現在位置から地点Xまでの経路のうち、コストが最も低くなる経路を選択し、この経路を含むように目的地までの経路を作成して車両を案内することで、低コストとなるように経路案内することができる。
【0049】
さらに、複数の環状交差点における通過成否情報に基づいて通過成功率及び通過失敗率を算出することで、交通量の少ない環状交差点や新たに建設された環状交差点等、通過成否情報が少ない環状交差点を通過しようとする場合であっても、通過成功率及び通過失敗率を算出することができる。
【0050】
さらに、通過パラメータが環状交差点の構造によって定まる静的情報と、車両の通過時の状況によって変化する動的情報と、の両方を含むことで、通過しようとする環状交差点に固有の通過しにくさをパラメータとするとともに、状況によって変化する通過しにくさをパラメータとすることができ、通過成功率及び通過失敗率の算出精度を向上させることができる。
【0051】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0052】
例えば、前記実施例では、複数の環状交差点における通過成否情報に基づいて通過成功率及び通過失敗率を求めるものとしたが、車両が通過しようとする環状交差点に固有の通過成否情報に基づいて通過成功率及び通過失敗率を算出してもよい。即ち、環状交差点毎に重みベクトルを算出し、通過しようとする環状交差点の重みベクトルに基づいて通過成功率(通過失敗率)を算出してもよい。このとき、通過パラメータは動的情報だけで構成されていてもよい。
【0053】
また、前記実施例では、通過パラメータが静的情報と動的情報との両方を含むものとしたが、通過パラメータは静的情報と動的情報とのうち一方のみで構成されていてもよい。また、静的情報として、環状交差点における、出口の数と、直径と、車線の数と、を例示し、動的情報として、車両が環状交差点を通過する際に、経路案内中か否かと、通過する出口の数と、その車両によるその環状交差点の過去通行回数と、を例示したが、通過パラメータは、静的情報として、環状交差点における中央島の有無や上下に重なった階層の有無を含んでいてよいし、動的情報として、天候や時間帯を含んでいてもよく、通過の成否への影響が大きい項目を通過パラメータとすればよい。また、通過パラメータは、これらのパラメータのうち適宜なものを少なくとも1つ含んでいればよい。
【0054】
また、前記実施例では、車両が環状交差点に進入する入口から案内された出口までの距離と、入口が延びる方向と出口が延びる方向とのなす角度と、の両方に基づいて通過コストを算出するものとしたが、この距離と角度とのうち少なくとも一方に基づいて通過コストを算出してもよい。また入口と出口との組み合わせごとに予めコストが設定されていてもよい。
【0055】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 ナビゲーション装置
2 制御部(成功率算出部、経路探索部、案内部、コスト算出部)
8 通信部(取得部)
図1
図2
図3
図4
図5