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  • 特開-暑熱ストレス緩和剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101004
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】暑熱ストレス緩和剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240719BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240719BHJP
   A23C 9/13 20060101ALN20240719BHJP
   A23G 3/02 20060101ALN20240719BHJP
   A23G 4/06 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
A23C9/13
A23G3/02
A23G4/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085907
(22)【出願日】2024-05-27
(62)【分割の表示】P 2020563280の分割
【原出願日】2019-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018247186
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】397077760
【氏名又は名称】ナガセヴィータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 智子
(72)【発明者】
【氏名】吉實 知代
(72)【発明者】
【氏名】荻原 沙緒理
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 伸
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正樹
(72)【発明者】
【氏名】三皷 仁志
(57)【要約】
【課題】熱中症などの暑熱ストレスの影響を受けやすい幼児や高齢者でも、手軽で簡便かつ安全に摂取することができ、暑熱ストレス環境下で素早く発汗を促し、暑熱ストレスに起因する熱中症などの症状や疾患を予防、緩和または改善する新たな暑熱ストレス緩和剤を提供することを課題とする。
【解決手段】グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤、及びグリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる基礎体温維持剤を提供することにより、上記の課題を解決する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる、暑熱ストレス環境下におけるヒトの深部体温上昇抑制剤(但し、卵白ペプチドを有効成分として含有する剤を除く。)。
【請求項2】
前記グリコシルヘスペレチンが、ヘスペリジン、α-グルコシルヘスペリジン、及び7-O-β-グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の深部体温上昇抑制剤。
【請求項3】
前記α-グリコシルヘスペリジンが、α-グルコシルヘスペリジンである、請求項2に記載の深部体温上昇抑制剤。
【請求項4】
ヒトに対して、1回当たり、ヘスペリジン換算で50乃至500mgの用量で経口投与されるように用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の深部体温上昇抑制剤。
【請求項5】
グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる、暑熱ストレス環境下におけるヒトの発汗促進剤。
【請求項6】
前記グリコシルヘスペレチンが、ヘスペリジン、α-グルコシルヘスペリジン、及び7-O-β-グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項5に記載の発汗促進剤。
【請求項7】
前記α-グリコシルヘスペリジンが、α-グルコシルヘスペリジンである、請求項6に記載の発汗促進剤。
【請求項8】
ヒトに対して、1回当たり、ヘスペリジン換算で50乃至500mgの用量で経口投与されるように用いられることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の発汗促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暑熱ストレス緩和剤に関し、詳細には、暑熱ストレス環境下における発汗促進剤又は深部体温上昇抑制剤として機能する暑熱ストレス緩和剤、及び基礎体温維持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化及びこれに伴う真夏日、猛暑日、熱帯夜の増加や都会のヒートアイランド現象等により、身体に影響を与える暑熱ストレスへの曝露が増大し、暑熱ストレスに起因する熱中症などの疾患の発生率が増加している。熱中症は、従来、暑熱ストレス環境下での運動や労働により頻発していたが、前記地球温暖化などの影響により、最近では日常生活においても発生が増加している。熱中症とは、暑熱ストレス環境下において、不十分な熱放散、体内の水分や塩分のバランスの崩壊などにより、生体内の調節機能が著しく低下することをいい、その症状により熱痙攣、熱疲労、体温調節機能障害を伴う熱射病に分けられ、重症の場合には死に至ることもある。
【0003】
とりわけ、発汗機能が未熟である乳幼児・小児や、加齢により発汗などの体温調節機能が衰えている高齢者などのいわゆる暑熱ストレスの影響を受けやすい者における熱中症の増加は社会的な問題となっており、このような状況を背景として、有効で効果的な暑熱ストレス対策が望まれている。
【0004】
暑熱ストレス環境下においては、生体は汗腺組織から汗を分泌して表皮から放出し、汗が蒸発する際に気化熱が奪われることで生体内の熱を放出して体温を調節している。すなわち、発汗を適切に促して体温を調節することによって熱中症などの暑熱ストレスに起因する疾患を予防、緩和及び改善することができると考えられる。
【0005】
暑熱ストレスに起因する疾患である熱中症の対策としては、住環境や服装の工夫の他、こまめな水分補給や塩分の摂取が推奨され、例えば、特定の糖度と、ナトリウムとを含む清涼飲料が報告されている(特許文献1)。また、熱中症対策として、加齢による体温調節機能の衰えや乳幼児・小児での発汗機能の未熟さによる発汗量の低下に着目し、発汗促進による体温調節が注目されている。発汗を促進する方法として、例えば、非重合体カテキン類を含有し、かつ、浸透圧が体液よりも低い液剤を摂取することによる発汗促進の報告がある(特許文献2)。しかしながら、このような非重合カテキン類は苦味が強く、毎日続けて簡易に摂取できるものではなく、また、カフェインなどが多量に含まれ興奮作用があるため、一般的には乳幼児・小児などには向かないと考えられる。また、暑熱ストレス環境下における摂食可能な発汗促進用組成物として、乳タンパク質を有効成分として含んでなる組成物を摂取することが提案されている(特許文献3)。しかしながら、このような乳タンパク質は一回の摂取量として30g以上と大量の摂取が必要であるとされており、毎日続けて摂取することは困難である。また、α-リノレン酸を含む油脂組成物を含有することを特徴とする熱中症予防剤も提案されているが(特許文献4)、水への溶解度が低いため、スポーツドリンク等を含む飲食品等へ容易に配合や加工が困難であるという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-008712号公報
【特許文献2】特開2014-019691号公報
【特許文献3】再公表WO2018-123873号公報
【特許文献4】特開2016-037498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術に鑑みて為されたもので、その解決しようとする課題は、熱中症などの暑熱ストレスの影響を受けやすい幼児や高齢者でも、手軽で簡便かつ安全に摂取することができ、暑熱ストレス環境下で素早く発汗を促し、暑熱ストレスに起因する熱中症などの症状や疾患を予防、緩和または改善する新たな暑熱ストレス緩和剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明者等は、鋭意研究努力を重ねた結果、意外にもグリコシルヘスペレチンを経口摂取することで暑熱ストレスが緩和されること、詳細には、暑熱ストレス環境下において発汗が促進されること、及び深部体温の上昇が抑制されることを新規に見出し、本発明の暑熱ストレス緩和剤を完成した。
【0009】
本発明者等は、さらに鋭意研究努力を続けた結果、意外にもグリコシルヘスペレチンを経口摂取することで、基礎体温が維持されることを新規に見出し、本発明の基礎体温維持剤を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤、及びグリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる基礎体温維持剤を提供することにより、上記の課題を解決するものである。
【0011】
ヘスペリジンならびにその配糖体に関しては、それらを有効成分とすることを特徴とする外用のための発汗抑制薬の報告が、例えば特開昭52-105221号公報において為されているが、発汗抑制は、暑熱ストレスの緩和に有効であると考えられる発汗促進とは正反対の作用であり、グリコシルヘスペレチンに発汗促進作用があるなどということは、本願出願前、全く予測することのできない、グリコシルヘスペレチンが有する意外な生理機能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の暑熱ストレス緩和剤は、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤であって、ヒトが日常的に継続的に安全かつ容易に、しかも、不快感なく経口摂取することなどができ、しかも、工業的に安価に提供することができる。斯かる本発明の暑熱ストレス緩和剤によれば、暑熱ストレス環境下での発汗を効果的に促進することができる。さらに、斯かる本発明の暑熱ストレス緩和剤によれば、暑熱ストレス環境下での深部体温の上昇を効果的に抑制することができる。殊に、本発明の暑熱ストレス緩和剤は、夏季や炎天下での労作時などの所謂暑熱ストレス環境下において、熱中症等が危惧される者に適用する場合には、所期の作用効果がより顕著に発揮される優れた特徴を有する。
【0013】
本発明の基礎体温維持剤は、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる基礎体温維持剤であって、ヒトが日常的に継続的に安全かつ容易に、しかも、不快感なく経口摂取することなどができ、しかも、工業的に安価に提供することができる。斯かる本発明の基礎体温維持剤によれば、基礎体温を効果的に維持することができる。殊に、本発明の基礎体温維持剤は、冬季や冷房時などの所謂寒冷ストレス環境に伴う冷えに限らず、低体温者や慢性の冷え性者、更年期障害などによるほてり、のぼせ、ホットフラッシュなどの体温調節障害が危惧される者に適用する場合には、所期の作用効果がより顕著に発揮される優れた特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】グリコシルヘスペレチンを単回摂取した時の暑熱ストレス環境下(室温30℃、相対湿度50%における運動負荷時)における被験者の深部体温平均上昇量の経時変化を示す図である。
図2】グリコシルヘスペレチンを長期摂取した時の被験者の基礎体温の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施態様について説明するが、それらは本発明を実施するうえでの好ましい態様のあくまで例示であり、本発明は、それら実施態様に何ら限定されるものではない。
【0016】
本発明は、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤に関するものである。
【0017】
本願明細書で言う暑熱ストレスとは、夏季、真夏日、猛暑日、熱帯夜、都会のヒートアイランド現象等の気候的要因や、風呂、温泉、サウナ、工場内や作業場などの高温高湿の環境的要因が身体に与える刺激に加えて、運動時や労働時といった労作的要因が身体に与える刺激を包含する。また、本願明細書で言う暑熱ストレス環境下とは、前記気候的要因、環境的要因及び/又は労作的要因に起因する暑熱ストレスに暴露された状況下であることを意味する。
【0018】
本願明細書で言う暑熱ストレス緩和とは、暑熱ストレス環境下における発汗促進、及び深部体温上昇抑制を意味し、暑熱ストレス緩和剤とは暑熱ストレス緩和作用を有する剤を意味する。
【0019】
本発明の暑熱ストレス緩和剤の有効成分として用いるグリコシルヘスペレチンとは、ヘスペレチンに糖類が結合した化合物全般を包含し、その好適な具体例としては、ヘスペリジン、7-O-β-グルコシルヘスペレチン、α-グリコシルヘスペリジンなどが挙げられる。
【0020】
ヘスペリジンは、ビタミンPとも呼ばれ、ラムノースとグルコースとからなるルチノースがヘスペレチンに結合した構造を有する、下記化学式1に示す構造式で表わされる化合物で、柑橘類の果皮等に多く含まれている成分である。
【0021】
化学式1:
【化1】
【0022】
また、7-O-β-グルコシルヘスペレチンは、下記化学式2で表わされる、ヘスペリジンのルチノースを構成するラムノース基が離脱した構造を有する化合物であり、ヘスペリジンと比べ、水溶性が高い特徴を有している。7-O-β-グルコシルヘスペレチンは、例えば、特開平10-323196号公報に示されるとおり、ヘスペリジンを含有する溶液にα-L-ラムノシダーゼ(EC 3.2.1.40)を作用させて製造することができる。
【0023】
化学式2:
【化2】
【0024】
更に、α-グリコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンに糖類(例えば、D-グルコース、D-フルクトース、又はD-ガラクトースなどの糖類)が等モル以上α-結合した化合物である。α-グリコシルヘスペリジンの代表例としては、ヘスペリジンのルチノース構造におけるグルコースにグルコースが1分子α-結合した、下記化学式3で表わされるα-グルコシルヘスペリジン(別名:酵素処理ヘスペリジン、糖転移ヘスペリジン、水溶性ヘスペリジン、又は糖転移ビタミンP)が挙げられる。α-グルコシルヘスペリジン含有製品としては、例えば、商品名『林原ヘスペリジンS』(株式会社林原販売)が市販されている。
【0025】
化学式3:
【化3】
【0026】
グリコシルヘスペレチンは、従来より、各種飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの素材として広く用いられている、安全で汎用性の高い物質である。中でも、α-グリコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンや7-O-β-グルコシルヘスペレチンと比べ水溶性が高く、取り扱い性に優れ、生体内においては、ヘスペリジンや7-O-β-グルコシルヘスペレチンと同様、生体内酵素の作用を受けてヘスペレチンにまで加水分解され、ヘスペレチン本来の生理活性を発揮する。
【0027】
なお、本発明において、グリコシルヘスペレチンは、グリコシルヘスペリジンである限り、その由来、製法、純度等にかかわりなく用いることができるが、不純物のより少ない高純度品が好適に用いられ、高純度品としては、結晶化工程を経て得られる高純度グリコシルヘスペレチンであってもよい。
【0028】
例えば、ヘスペリジンは、ヘスペリジン含有植物である柑橘類の果実、果皮、種子、未熟果などを原料とし、水やアルコールなどの溶媒を適宜用いて抽出することにより、工業的にその所望量を製造することができる。また、α-グリコシルヘスペリジンは、例えば、特開平11-346792号公報などに開示されるとおり、ヘスペリジンとα-グルコシル糖化合物とを含有する溶液に、糖転移酵素を作用させて、α-グリコシルヘスペリジンを生成せしめ、これを採取することにより、工業的にその所望量を安価に製造することができる。更に、7-O-β-グルコシルヘスペレチンは、ヘスペリジンにα-L-ラムノシダーゼを作用させ、ヘスペリジンからラムノースを遊離させることにより生成させ、これを採取することにより、工業的にその所望量を安価に製造することができる。
【0029】
また、本願と同じ出願人は、従来グリコシルヘスペレチンの欠点であるとされた、雑味、着色などを解消する目的で、その製造方法を改良することにより、雑味と着色はもとより、臭気(以下、「雑味、着色、及び臭気」を纏めて「雑味等」と言う場合がある。)が低減されたグリコシルヘスペレチンとその製造方法を確立し、再公表WO2015/133483号パンフレットに開示した。雑味等が低減されたグリコシルヘスペレチンは、ヒトが日常的に継続的に安全かつ容易に、しかも、不快感なく経口摂取することなどができるとともに、工業的に安価に提供される優れた利点を有している。したがって、雑味等が低減されたグリコシルヘスペレチンは、本発明を実施する上で好適なグリコシルヘスペレチンとして有利に用いることができる。
【0030】
また本願明細書において、単にグリコシルヘスペレチンという場合、特に断らない限り、ヘスペリジン、α-グリコシルヘスペリジン、及び7-O-β-グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上を主体とするグリコシルヘスペレチン混合物を意味することがある。また、有効成分として用いられるグリコシルヘスペレチンは、α-グリコシルヘスペリジンを含むものであるのが好ましく、α-グリコシルヘスペリジンとしてα-グルコシルヘスペリジンを含むものが、本発明における所期の作用効果、すなわち、発汗促進作用、深部体温上昇抑制作用などの効果がより顕著に奏せられることから好ましい。
【0031】
本願明細書で言うグリコシルヘスペレチン含量とは、グリコシルヘスペレチン含有組成物を試料とし、これを精製水により0.1%(w/v)になるよう希釈又は溶解し、0.45μmメンブランフィルターにより濾過した後、下記の条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供し、試薬ヘスぺリジン(和光純薬工業株式会社販売)を標準物質として用い、UV280nmにおけるクロマトグラムに出現したピークの面積と、ヘスペリジン、α-グリコシルヘスペリジン(α-グルコシルヘスペリジンなど)などの各成分の分子量に基づき計算し、無水物質量換算した組成におけるグリコシルヘスペレチンに該当する各成分の含量の総和を意味する。当該HPLC分析によるグリコシルヘスペレチンに該当する各成分含量の定量方法は、下記(1)乃至(4)に示すとおりである。
【0032】
<HPLC分析条件>
HPLC装置:『LC-20AD』(株式会社島津製作所製)
デガッサー:『DGU-20A3』(株式会社島津製作所製)
カラム:『CAPCELL PAK C18 UG 120』
(株式会社資生堂製)
検 出:UV検出器『SPD-20A』 (株式会社島津製作所製)
データ処理装置:『クロマトパックC-R7A』 (株式会社島津製作所製)
サンプル注入量:10μL
溶離液:水/アセトニトリル/酢酸(80/20/0.01(容積比))
流 速:0.7mL/分
温 度:40℃
測定波長:280nm
【0033】
<グリコシルヘスペレチンの定量>
(1)ヘスペリジン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比に基づいて算出する。
(2)α-グルコシルヘスペリジン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比と、α-グリコシルヘスペリジンとヘスペリジンの分子量比に基づいて算出する。
(3)7-O-β-グルコシルヘスペレチン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比と、7-O-β-グルコシルヘスペレチンとヘスペリジンの分子量比に基づいて算出する。
(4)その他のグリコシルヘスペレチン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比と、その他のグリコシルヘスペレチンとヘスペリジンとの分子量比に基づいて算出する。
【0034】
以上述べたとおり、本発明の暑熱ストレス緩和剤の有効成分として含有せしめるグリコシルヘスペレチンは、ヘスペレチン骨格を有する化合物である(1)ヘスペリジン、α-グリコシルヘスペリジン(α-グルコシルヘスペリジンなど)、及び7-O-β-グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上を主成分として含む組成物、つまり、グリコシルヘスペレチン混合物を意味し、他に、その製造原料に由来するか、その製造工程で副次的に生成すると考えられる(2)ナリルチン、ジオスミン、ネオポンシリン、グルコシルナリルチンなどのフラボノイド、及び(3)塩類などの微量成分を含んでいてもよい。なお、前記グリコシルヘスペレチンは、本発明の所期の作用効果が妨げられない範囲でヘスペレチンを含んでいてもよい。また、本発明で用いるグリコシルヘスペレチンには、本発明の所期の作用効果が妨げられない範囲で、既知の物理的ないしは化学的手法等により水などの溶媒への分散性が高められたヘスペレチンを適宜配合することも可能である。
【0035】
本発明の暑熱ストレス緩和剤の有効成分として含有せしめるグリコシルヘスペレチン、すなわち、グリコシルヘスペレチン混合物は、好適には、乾燥固形物当たりのグリコシルヘスペレチン含量が合計で、通常、50質量%以上100質量%未満、好適には、60質量%以上100質量%未満、より好適には、70質量%以上100質量%未満、更に好適には、80質量%以上100質量%未満、より更に好適には、85質量%以上100質量%未満である。本発明の暑熱ストレス緩和剤の有効成分として含有せしめるグリコシルヘスペレチンの、乾燥固形物当たりの含量の上限は、通常、工業的に比較的大量、安価かつ容易に提供できる99質量%、より安価に提供するには98質量%、更により安価に提供するには97質量%以下にまで低含量のものであってもよい。しかし、当該グリコシルヘスペレチンの乾燥固形物当たりのグリコシルヘスペレチン含量が低い場合には、高含量のものと比べ、必然的に多量用いられることとなり、その結果、操作が煩雑となり、取り扱い性が悪くなることから、グリコシルヘスペレチン含量の下限は、通常、50質量%以上、好適には、60質量%以上、より好適には、70質量%以上、更に好適には、80質量%以上、より更に好適には、85質量%以上とするのが望ましい。
【0036】
本発明の暑熱ストレス緩和剤の有効成分として含有せしめるグリコシルヘスペレチンのより好適な実施態様としては、当該グリコシルヘスペレチンがα-グルコシルヘスペリジンを含むα-グリコシルヘスペリジンである。この場合、グリコシルヘスペレチン中のα-グルコシルヘスペリジンの好適な含量は、通常、乾燥固形物当たり、60質量%以上100質量%未満、好適には、70質量%以上100質量%未満、より好適には75質量%以上100質量%未満である。また、本発明の暑熱ストレス緩和剤の有効成分として含有せしめるグリコシルヘスペレチンにおけるα-グルコシルヘスペリジン含量の上限は、基本的には上記した100質量%未満であるが、本発明に係る暑熱ストレス緩和剤をより安価に提供するという観点からは、通常、工業的に比較的大量、安価かつ容易に提供できる99質量%以下、より好適には95質量%以下、更により好適には90質量%以下の低含量のものであってもよい。また、α-グルコシルヘスペリジン含量の下限は、上記グリコシルヘスペレチン混合物中のグリコシルヘスペレチン含量と同様の理由により、通常、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であるのが望ましい。
【0037】
本発明は、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる基礎体温維持剤に関するものである。
【0038】
ヒトの基礎体温の平均は概ね36.5℃であり、これは体内の酵素が最も活性化され、かつ免疫機能が活発に機能し、健康が維持される温度であるとされている。しかしながら、近年、例えば、朝食をとらないこと、無理なダイエット、ミネラル、ビタミン、タンパク質の不足、喫煙などの食生活の影響、夜型の生活や睡眠不足、日中の身体活動不活発等の生活リズムの変調や、冬季や冷房などの周囲環境や、加齢などが原因となり基礎体温が低下した状態に陥る。このように基礎体温が低下したヒトの体温は、平均基礎体温より0.5~1.5℃低下していることが知られている。斯かる基礎体温の低下は、悪寒や疲労感などの不快感、創傷治癒遅延、免疫力低下、代謝低下、体内酵素活性低下、血圧低下、冷え・肩こり・腰痛・関節痛などといった血行不良、便秘や下痢などといった内臓機能低下、うつ等の神経系疾患や身体機能の支障を招き、極端な基礎体温の低下により死に至ることもあるため、基礎体温を平均基礎体温である36.5℃に近づけるよう適正に調節することは健康を維持するために重要である。
【0039】
本願明細書で言う基礎体温とは、起床時の安静状態で測定した体温のことを意味し、通常、舌下において測定した体温を意味する。また、本願明細書で言う基礎体温維持とは、基礎体温を平均基礎体温である36.5℃に近づけてこれを保持することを意味する。本願明細書中で言う基礎体温が低い傾向にあるヒト、基礎体温が高い傾向にあるヒトとは、舌下における基礎体温の平均値が、それぞれ36.2℃未満、36.2℃以上である者を意味し、厳密には、それぞれ36.1℃未満、36.3℃以上である者を意味し、更に厳密には、それぞれ36.0℃未満、36.4℃以上である者を意味する。
【0040】
前述した本発明の暑熱ストレス緩和剤の有効成分として用いるグリコシルヘスペレチンは、基礎体温維持剤の有効成分としても用いることができる。
【0041】
本発明の暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤は、各種グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなるものである。詳細は後述するものの、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤をヒトが日常的に継続的に経口摂取することなどにより、発汗促進作用及び深部体温上昇抑制作用の効果が発揮されるとともに、基礎体温維持作用も効果的に発揮される。また、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤は、熱中症などの暑熱ストレスに起因する症状や疾患の予防、緩和や改善ができるだけでなく、むくみやドライスキンなどの皮膚障害や肌質の改善、緩和や予防やデトックス効果が期待でき、入眠障害、睡眠維持障害や熟眠障害といった不眠症などの睡眠障害や睡眠障害に伴う症状の予防、緩和や改善に加え、女性及び男性の更年期障害などや更年期障害などに伴うほてりやのぼせ、ホットフラッシュ、異常発汗、動悸、眩暈などの血管運動神経症状、情緒不安、耳鳴り、イライラ、不安感、抑うつ感、不眠、頭重感、無気力、記憶力の低下、倦怠感や疲労感などの精神神経症状、肩こり、腰痛や関節痛などの運動器症状、嘔気や食欲不振などの消化器症状、皮膚乾燥や掻痒感などの皮膚粘膜症状、排尿障害や頻尿、性交障害、外陰部違和感など泌尿生殖器症状などの緩和、予防または改善、血糖異常症、血圧異常症、脂質異常症、尿酸異常症や肥満などの生活習慣病やメタボリックシンドローム、心疾患、肝疾患、腎疾患、脳疾患、神経疾患、アレルギー疾患、感染症、悪性腫瘍などの各種疾患の予防、緩和や改善をするための所謂機能性食品として、また、健康食品、美容食品、栄養機能食品、保健機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品、医薬部外品、医薬品として有利に用いることができる。また、更には、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤は、他の機能性食品、健康食品、美容食品、栄養機能食品、保健機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品、医薬部外品、医薬品、或いは飲食品に適宜配合して利用することも随意である。
【0042】
また、グリコシルヘスペレチンを前記目的で用いる場合には、発汗促進作用、深部体温上昇抑制作用及び基礎体温維持作用を有するその他の動植物由来物質やその抽出物又は化合物などの1種又は2種以上の成分と併用すると、グリコシルヘスペレチンが奏する発汗促進作用、深部体温上昇抑制作用及び基礎体温維持作用がより効果的に発揮されるとともに、前記暑熱ストレスの予防、緩和や改善、前記皮膚障害や肌質の改善、緩和や予防、前記睡眠障害や睡眠障害に伴う症状の予防、緩和や改善、前記更年期障害や更年期障害に伴う症状の予防、緩和や改善、前記各種疾患の予防、緩和や改善がより一層効果的に発揮される。
【0043】
発汗促進作用、深部体温上昇抑制作用及び基礎体温維持作用を有するその他の動植物由来物質やその抽出物又は化合物としては、ウシ胆石、シンジュ、ボレイ、マムシ、ミミズ表皮、ユウタン、レイヨウカク、ロクジョウなどの動物性物質やその抽出物;アーティチョーク、アイブライト、アオダモ、アオミズ、アカザ、アカネ、アカヤジオウ、アキグミ、アグリモニー、アグニ果実、アケビ、アサイ果実、アサツキ、アサフェティダ、アシュワガンダ、アスナロ、アセンヤクノキ、アヒ・アマリージョ、アヒ・リモン、アブラナ、アベマキ、アマチャヅル、アニス、アメリカンマンサク、アリスチン、アルニカ、アンゼリカ、イカリソウ、イタドリ、イタリアンパセリ、イチョウ、イチヤクソウ、イチゴ、イトハユリ、イトフノリ、イヌハッカ、イヌビワ、イノンド、イペ樹皮、イロハモミジ、イワトユリ、インドセンダン、ウイキョウ、ウイッチヘーゼル、ウインターグリーン、ウコン、ウスベニタチアオイ、ウド、ウメ、ウラジロガシ、ウルピカ、エピメジウム・ブレビコルヌム、エイジツ、エキナセア、エゴマ、エシャロット、エゾウコギ、エニシダ、エルカンプーレ、エルダー、エルバ・マテ、オート麦、オールスパイス、オウギ、オウギヤシ、オウバク、オウレン、オオアザミ、オオツヅラフジ、オオバゲッキツ、オオバコ、オオバタネツケバナ、オオムギ、オカヒジキ、オタネニンジン、オトメユリ、オニタ、オニユリ、オレガノ、オレンジ、カヴァ、カキオドシ、カキカズラ、カホクザンショウ、カボチャ種子、カツアバ樹皮、カノコソウ、カノコユリ、カブ、カボス、カモミール、カラシナ、カラタチ、ガラナ、カルカデ、カルダモン、カレープラント、カンアオイ、カンゾウ、カントウ、キキョウ、ギシギシ、キダチトウガラシ、キャラウェイ、ギョウジャニンニク、キョウニン、キンカン、キンセンカ、キンマ、クサギ、クスノハガシワ、クズ、クチナシ、クミン、クララ根、クラリセージ、クルマユリ、クルミ、グレープフルーツ、クレソン、クローブ、クロガラシ、ケイガイ、ケッパー、ケツメイシ、ゲンノショウコ、コケモモ、コショウ、コナギ、コリアンダー、サガラメ、ザクロ、サツマイモ、サネブトナツメ、サフラン、サルサパリラ、サンザシ、サンショウ、シークヮーサー、シシウド、シシトウガラシ、シソ、シカクマメ、シコン、シナニッケイ樹皮・樹枝・根皮、シモツケソウ、シャクヤク、ジャスミン、シャクヤク、ジャノヒゲ、ショウガ、ショウマ、ショウヨウダイオウ、シラヤマギク、シロガラシ、シロザ、シロヨメナ、ジンコウ、スダチ、ステビア、スペインカンゾウ、セージ、セイボリー、セイヨウイラクサ、セイヨウオオバコ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ、セイヨウカラシナ、セイヨウタンポポ、セイヨウニワトコ、セイヨウフキ、セイヨウワサビ、セイロンニッケイ樹皮・樹枝・根皮、セキセツソウ、セリ、センキュウ、センブリ、ソバ、ソレル、ダイオウ、ダイコン、タイマツバナ、タイム、タカサゴユリ、タデ、タネツケバナ、ダビラ・ルゴサ、タマネギ、タモトユリ、タラゴン、チコリ、チャービル、チャイブ、チャデブグレ、チョウジ、チンネベリーセンナ、ツボクサ、ツリーオニオン、ツルドクダミ、デイジー、ディル、デビルスクロー、ツワブキ、テッポウユリ、デビルスクロー根、テンチャ、トウガラシ、トウキ根、トウシキミ果実、トウニン、ドクダミ、トケイソウ、トゲナシ、トチバニンジン、トチュウ葉、トマト、トルメンチラ、ナガバギシギシ、ナツシロギク、ナツメ、ニガヨモギ、ニラ、ニワトコ、ニンニク、ノウゼンハレン、ノコギリヤシ、ノコンギク、ノビル、ネギ、バジル、ハッカ、ハカタユリ、ハギ、ハゴロモグサ、ハジカミ、ハスイモ、パセリ、パチョリ、パッションフラワー、パッションフルーツ、ハトムギ、バニラ、ハバネロ、パフィア根、パプリカ、ハマスゲ、ハマビシ、パラミツ、ハラペーニョ、ピーマン、ヒカンザクラ、ヒソップ、ヒノキ、ヒハツ、ヒハツモドキ、ヒマワリ、ヒメウワバミソウ、ヒメニラ、ヒメユリ、ビラコ、ピリピリ、ビンロウジュ、ブート・ジョロキア、フウトウカズラ、フェヌグリーク種子、フェンネル、フキ、フジマメ、ブラックコホシュ、ブンタン、ヘチマ、ベニバナ、ベニバナボロギク、ヘンナ、ヘンルーダ、ボウフウ、ボタン、ホップ、マオウ、マジョラム、マタタビ、マチルス、マツ、マテバシイ、マテ茶、マドンナ・リリー、マリアアザミ種子、マロニエ種子、ミカン、ミシマサイコ根、ミツバ、ミツバウツギ、ミョウガ、ムベ、ムラサキバレンギク、モズク、ヤナギ、ヤブカンゾウ、ヤマトゲバンレイシ、ヤマノイモ、ヤマユリ、ヤマラッキョウ、ユズ、ヨウサイ、ヨメナ、ライチ種子、ライム、ラッキョウ、ラベージ、ラベンダー、ラムズイヤー、リーガル・リリー、リーキ、リュウキュウチク、リュウキュウバライチゴ、リンゴ未熟果、リンデン花、ルイボス、ルッコラ、ルバーブ、ルリジサ、レタス、レモン、レモングラス、レモンタイム、レモンバーベナ、レモンバーム、レモンマートル、レンギョウ、ローズヒップ、ローズピンクバッツ、ローズマリー、ローズレッド、ローゼル、ローレル、ロコト、ロゼア、ロッグウッド、ワケギ、ワサビ、ワレモコウ、レンゲ草、柿葉、甘草葉、黒大豆種皮、黒米種子、月桃葉、細葉百合、西洋ヤナギ、長明草などの植物またはその抽出物;ハナフノリ、フクロフノリ、マフノリなどの海藻の抽出物;生コーヒー豆、甘藷焼酎粕、サルノコシカケ菌糸体やアガリクス菌糸体などの抽出物;及びレスベラトロール、ケルセチン、クロロゲン酸、アントシアニン、クルクミン、ケンフェロール、カテキン類、フラボノイド類などのポリフェノール;アスタキサンチン、β-クリプトキサンチン、リコペン、フコキサンチン、ルテイン、クロセチン、レチノール、レチナール、レチノイン酸、β-カロテンなどのカロテノイド、塩酸ピロカルピンなどのピロカルピン類、エフェドリン,アスピリン,サリチル酸ナトリウム,インスリン,アドレナリン,アセチルコリン、サリシン、サリチル酸、サリチル酸コリン、ジフルニサル、エテンザミド、メフェナム酸、ジクロフェナック、スリンダク、インドメタシン、フェルビナク、エトドラク、トルメチン、ナプトメン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトブロフェン、ナプロキセン、フェノブロフェン、オキサブロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、ケトロラク、ピロキシカム、アンピロキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム、テノキシカム、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブナトリウム、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、エピリゾール、エモルファゾン、メピリゾール、アセトアミノフェン、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン、ケトフェニルブタゾン、フェプラゾン、スルフィンピラゾン、アンチピリン、スルピリン、イソプロピルアンチピリン、グリシン、テアニン、GABA、清酒酵母、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ゾルピデム酒石酸塩、トリアゾラム、ゾピクロン、エスゾピクロン、エチゾラム、ブロチゾラム、リルマザホン塩酸塩、ロルメタゼパム、フルニトラゼパム、エスタゾラム、ニトラゼパム、クアゼパム、フルラゼパム塩酸塩、ハロキサゾラム、ラメルテオン、スボレキサント、ミルタザピン、アミトリプチリン、ミアンセリン、トラゾドン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、レボメプロマジン、クロルプロマジン、アリイン、アリシン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ショウガオール、ジンゲロール、ジンゲロン、ジンギベレン、ピペリン、サンショオール、サンショアミド、ゲランオール、アリルイソチオシアネート、フェネチルイソチオシアネート、シニグリン、シナルビン、スルフォラファングルコシノレート、エクオール、イソフラボン、L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、4-(2-アミノエチル)ベンゼン-1,2-ジオール、ノルアドレナリン、アドレナリン、5-ヒドロキシトリプタミン、カフェ酸、イフェンプロジル、α-リポ酸、4-ヒドロキシカルコン、エルゴチオネイン、レスベラトロール、カルノシン、カルニチン、サルソリノール臭化水素酸塩、シナピン酸、フェルラ酸、ケイ皮酸、トコフェリルニコチネート、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、ニコチン酸アミド、プロアントシアニン、加水分解性タンニン、カテコール、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、クリプトクロロゲン酸、カフェオイルキナ酸などのクロロゲン酸類、ロイコシアニジン、プルニン、プロシアニドール・オリゴマー、グルコシルルチン、グルコシルナリンギンなどが挙げられる。
【0044】
本発明の暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤の摂取量は、当該剤の摂取頻度や摂取者の体の状態などによって、適宜調節することができ、有効成分であるグリコシルヘスペレチンを全てヘスペリジンと見做して質量換算(以下、本願明細書においては、単に「ヘスペリジン換算」と言う。)したとき、通常、一日1乃至5回、好適には、一日2乃至3回とし、1回当たり、ヘスペリジン換算で、10乃至3,000mg、好適には、20乃至2,000mg、より好適には、30乃至1,000mg、更により好適には、50乃至500mgの範囲とする。また、本発明の暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤の摂取期間は、単回乃至数回の摂取でも所期の作用効果を奏するが、好適には、2週間以上、より好適には、4週間以上、更により好適には、8週間以上に亘って摂取するのが望ましい。なお、前記摂取量の下限を下回ると所期の作用効果が著しく低下するか発揮されなくなる場合があり、また、前記摂取量の上限を上回ると投与量に見合った作用効果が発揮されなくなり、経済性の観点からも好ましくない。
【0045】
本発明の暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤は、トローチ、肝油ドロップ、複合ビタミン剤、口中清涼剤、口中香錠、経口・経管栄養剤、内服薬などの各種固状、顆粒状、粉末状、懸濁状、ペースト状、ゼリー状、液状の形態として利用することができ、また、前記形態にある各種組成物に配合して利用することも随意である。また、前記形態として利用する方法、及び、前記形態にある各種組成物に含有せしめる方法としては、それら組成物が完成するまでの工程で、例えば、混和、混捏、混合、添加、溶解、浸漬、浸透、散布、塗布、噴霧、注入などの公知の1種又は2種以上の方法を適宜用いることができる。なお、本発明の暑熱ストレス緩和剤及び基礎体温維持剤の有効成分として含有せしめるグリコシルヘスペレチンの当該剤への配合量は、所期の作用効果を奏する限り随意である。
【0046】
本発明について、以下の実験によって更に詳細に説明する
【0047】
<実験1:グリコシルヘスペレチン摂取が暑熱ストレス環境下における被験者の発汗量及び深部体温に及ぼす影響>
グリコシルヘスペレチンを含有する被験試料、又は、プラセボ試料を被験者に摂取させ、暑熱ストレス環境下(室温30℃、湿度50%における運動負荷時)の発汗量及び深部体温の変化を測定する試験を行った。
【0048】
<実験1-1:グリコシルヘスペレチンの調製>
国際公開番号第WO2015/133483号パンフレットの実施例1記載の方法に準じてグリコシルヘスペレチンを調製した。すなわち、1規定水酸化ナトリウム水溶液4質量部を80℃に加温し、ヘスペリジン1質量部及びデキストリン(DE20)7質量部を加え、30分間撹拌しつつ溶解させ、pHを9.0とし、これにジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc-91株(日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8所在の独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(IPOD) 受託番号FERM BP-11273)由来のシクロデキストリン・グルカノトランスフェラーゼをデキストリングラム当たり30単位加え、pH6.9、50℃に維持しつつ18時間反応させた。次いで、得られた酵素反応液に残存する酵素を加熱失活させた後、グルコアミラーゼ(商品名『グルコチーム』、ナガセケムテックス社製)を酵素反応液の固形分グラム当り100単位加え、pH5.0、55℃に維持しつつ5時間反応させ、α-グルコシルヘスペリジンを生成させた。得られた酵素反応液を加熱して残存する酵素を失活させ、濾過し、濾液を多孔性合成吸着剤、商品名『ダイヤイオンHP-10』(三菱化学株式会社販売)を充填したカラムにSV2で通液した。次いで、カラムを精製水で洗浄した後、エタノール水溶液濃度を段階的に高めながら更に通液し、α-グルコシルヘスペリジン含有画分を採取し、減圧濃縮し、粉末化して、淡黄色のグリコシルヘスペレチン粉末を得た。なお、本例で得られたグリコシルヘスペレチン粉末は、α-グルコシルヘスペリジン80.0質量%、ヘスペリジン12.3質量%、その他の成分を7.7質量%含有しており、グリコシルヘスペレチンの組成において、市販されているグリコシルヘスペレチン(商品名「林原ヘスペリジンS」(株式会社林原販売)と同等品であった。
【0049】
<実験1-2:被験試料の調製>
表1に示すとおり、実験1-1で得たグリコシルヘスペレチン粉末250mgを市販のニアウォーター(みかん味)200mLに完全に溶解させたものを被験試料として調製した。プラセボ試料としては市販のニアウォーターのみとした。
【0050】
【表1】
【0051】
<グリコシルヘスペレチン摂取試験>
健常成人男性4名(26才~51才)を被験者とし、摂取する試料が被験試料とプラセボ試料のいずれであるかを被験者に知らせることなく、200mLを摂取させた。摂取後20分間安静にさせた後、室温30℃、湿度50%に設定した部屋で運動させた。運動負荷としては、被験者に高さ15cmの踏み台を1分間に20回昇降させる踏み台昇降運動を30分間させた。試験中は、全被験者に同一素材の市販衣類を着衣させた。なお、試験は、クロスオーバー単回投与の二重盲検試験とし、先に被験試料を摂取させた被験者にはプラセボ試料を、先にプラセボ試料を摂取させた被験者には被験試料をそれぞれ摂取させ、同様に試験した。先に摂取した試料の影響を排除するため試験と試験との間を1日空けて実施した。
【0052】
<評価項目及び評価方法>
評価項目は、暑熱ストレス環境下(室温30℃、相対湿度50%における運動負荷時)の発汗量及び深部体温の変化とし、それぞれ測定した。発汗量の測定は、運動負荷後の被験者の着衣重量から運動負荷前の着衣重量を差し引くことにより求め、運動負荷による発汗量の4名の平均値を算出した。また、深部体温は、運動負荷開始後1分ごとに運動終了時(30分後)まで評価を行った。運動負荷中の深部体温の測定には、サーミスタ温度センサを使用した耳式体温測定用の温度プローブを用い、データ収集型ハンディタイプ温度計(グラム株式会社、LT-8A)を用いて測定した。深部体温平均上昇量として、運動負荷直前の深部体温を基準値とし、運動負荷開始後1分ごとにおける温度変化量を求め、4名の平均値を算出した。暑熱ストレス環境下における被験者の発汗量の平均値を表2に示した。また、暑熱ストレス環境下における深部体温の平均変化量を図1及び表3に示した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示されるように、本試験における被験者の平均発汗量は、プラセボ試料摂取群では55.2±32.7gであったのに対して、被験試料摂取群では59.4±34.2gであり、明らかに高値を示した。すなわち、グリコシルヘスペレチンの摂取により、暑熱ストレス環境下における被験者の発汗量が顕著に増加したことを確認した。
【0055】
【表3】
【0056】
また、表3に示されるように、プラセボ試料摂取群では、深部体温の平均上昇量は、運動負荷開始後5分の時点で0.10±0.03℃、10分の時点で0.25±0.06℃、20分の時点で0.41±0.10℃、30分の時点で0.47±0.12℃と、時間を経るごとに上昇した。一方で、被験試料摂取群では運動負荷開始後5分の時点で0.07±0.07℃、10分の時点で0.18±0.09℃、20分の時点で0.33±0.10℃、30分の時点で0.38±0.12℃であった。また、図1に示されるように、被験試料摂取群(図1の符号「■」)は、プラセボ試料摂取群(図1の符号「○」)と比較して、深部体温の平均変化量は明らかに緩やかなものであった。従って、グリコシルヘスペレチンを含有する被験試料の摂取により、暑熱ストレス環境下において深部体温の上昇が顕著に抑制されたことが示された。
【0057】
表2、表3および図1に示されるように、暑熱ストレス環境下において、グリコシルヘスペレチンを摂取することによって、発汗量が上昇すること、及び深部体温の上昇が抑制されることが確認されたことから、グリコシルヘスペレチンは暑熱ストレス緩和剤の有効成分として有用であることが判明した。
【0058】
<実験2:グリコシルヘスペレチンの長期摂取が基礎体温に及ぼす影響>
下記表4に示す組成からなるタブレット(740mg/1錠)形態にある被験試料を被験者に長期摂取させ、基礎体温の変化を測定した。
【0059】
【表4】
【0060】
<グリコシルヘスペレチンの長期摂取試験>
健常成人男性18名(23才~63才)を被験者とした。被験試料(上記表4に示す配合組成を有するグルコシルヘスペレチン含有タブレット)を、被験者に一日一回一錠を任意の時間帯に8週間連続で摂取させた。
【0061】
<評価項目及び評価方法>
各被験者の基礎体温は、各被験者に、毎朝、起床時に安静な状態で基礎体温計(テルモ社製、型番C531)を用いて測定させ、記録させた。測定の詳細としては、基礎体温計の先端部を舌下(舌の裏側)に入れ、口を軽く閉じた状態で5分間保持し測定させた。基礎体温の測定は、試験前観察として被験試料摂取の4週間前から開始し、8週間の被験試料摂取期間を経て、被験試料摂取終了後4週間後までの計16週間行い、各週の基礎体温の平均と標準偏差を求めた。
【0062】
被験試料摂取前1週間の基礎体温の平均値を基にして、基礎体温高温群(被験試料摂取前1週間の基礎体温の平均値が36.2℃以上の基礎体温が高い傾向にある被験者群、9名)と基礎体温低温群(被験試料摂取前1週間の基礎体温の平均値が36.2℃未満の基礎体温が低い傾向にある被験者群、9名)に群分けして層別解析した結果を表5及び図2に示した。
【0063】
<統計解析>
測定値は平均値±標準偏差(SD)で表した。統計解析には、Microsoft Excel 2013(日本マイクロソフト株式会社)を用い、試験前1週間の平均値との比較を行い、統計処理は、対応のあるt検定にて行った。有意水準(p値)として0.05未満(危険率5%未満)を有意差ありと判断した。
【0064】
【表5】
【0065】
表5及び図2に示されるように、グリコシルヘスペレチンを含有する被験試料を摂取させた被験者について、被験試料摂取前4週間から摂取期間8週間を経て摂取終了後4週間に至るまでの各週における基礎体温の平均値は、基礎体温高温群では、被験試料摂取前1週間の平均値との比較において有意差が認められなかったのに対し、基礎体温低温群では、被験試料摂取前1週間の平均値との比較において、被験試料摂取開始後1乃至5週間、被験試料摂取開始後7乃至8週間、及び摂取終了後1乃至4週間において基礎体温が有意に高値を示した(有意水準(p値)が0.05未満、ただし摂取開始後3週間では有意水準(p値)が0.01未満)。すなわち、グリコシルヘスペレチンを含有した被験試料の摂取により、基礎体温高温群(被験試料摂取前1週間の基礎体温の平均値が36.2℃以上の基礎体温が高い傾向にある被験者群)では、基礎体温が平均基礎体温である36.5℃付近にそのまま維持されているのに対して、基礎体温低温群(被験試料摂取前1週間の基礎体温の平均値が36.2℃未満の基礎体温が低い傾向にある被験者群)では基礎体温が上昇し、平均基礎体温である36.5℃付近の適正な体温帯に近づけることが示された。
【0066】
図2で明らかに示されるように、グリコシルヘスペレチンを含有した被験試料を摂取することによって、基礎体温高温群(図2の符号「●」)では、基礎体温を平均基礎体温である36.5℃付近にそのまま維持されること、基礎体温低温群(図2の符号「■」)では基礎体温を上昇させて平均基礎体温である36.5℃付近の適正な体温帯に近づけること、すなわち基礎体温を維持することが確認された。この結果は、グリコシルヘスペレチンが基礎体温維持剤の有効成分として有用であることを物語っている。
【0067】
以下、実施例に基づき、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例0068】
<粉末形態の暑熱ストレス緩和剤>
市販のα-グルコシルヘスペリジン含有粉末(商品名『林原ヘスペリジンS』、株式会社林原販売)を暑熱ストレス緩和剤とした。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、水、お茶、紅茶、コーヒーなどの各種飲料や他の飲食品に添加し、日常的に経口摂取することができる、保存安定性及び熱安定性に優れた暑熱ストレス緩和剤である。
【実施例0069】
<錠剤形態の暑熱ストレス緩和剤>
グリコシルヘスペレチン含有粉末(α-グルコシルヘスペリジン82質量%、ヘスぺリジン1質量%、7-O-β-グルコシルヘスペレチン8質量%、その他成分9質量%)(株式会社林原調製品)1質量部と、α,α-トレハロース二含水結晶含有粉末(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)19質量部、クエン酸0.1質量部、塩化ナトリウム0.1質量部を均一に混合し、常法に従って打錠し、一錠250mgの錠剤形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用に優れ、熱中症を発症している患者或いは熱中症の発症が危惧されるヒトに、通常、成人1日当たり、上記糖転移ヘスペリジンの質量として25~1000mg相当を目安に日常的に摂取させることにより、その症状を緩和又は改善できるとともに、その発症を効果的に遅延乃至は予防することができる。
【実施例0070】
<清涼飲料水形態の暑熱ストレス緩和剤>
水5000質量部に、砂糖200質量部、α,α-トレハロース二含水結晶含有粉末(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)100質量部、クエン酸6質量部、塩化ナトリウム6質量部、塩化カリウム0.2質量部、乳酸カルシウム0.05質量部、塩化マグネシウム0.01質量部、α-グルコシルヘスペリジン結晶粉末(純度99質量%以上、株式会社林原調製品)5質量部と、アスコルビン酸2-グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『アスコフレッシュ』、株式会社林原販売)0.1質量部を均一に溶解して、清涼飲料水形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、風味、呈味ともに良好な暑熱ストレス緩和剤である。
【実施例0071】
<ハードキャンディー形態の暑熱ストレス緩和剤>
α,α-トレハロース二含水結晶含有粉末(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)10質量部と水20質量部とを155℃の減圧下で、水分約2%以下になるまで濃縮し、次いで、120℃まで冷却し、これにクエン酸0.5質量部及びα-グルコシルヘスペリジン含有粉末(商品名『林原ヘスペリジンS』、株式会社林原販売)0.5質量部、塩化ナトリウム0.01質量部及びレモン香料を適量混和し、次いで常法に従って、成形、包装してハードキャンディー形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、風味、呈味ともに良好な暑熱ストレス緩和剤として有用である。
【実施例0072】
<チューイングガム形態の暑熱ストレス緩和剤>
ガムベース3質量部を柔らかくなるまで加熱融解し、α,α-トレハロース(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)6質量部及びグリコシルヘスペレチン含有粉末(α-グルコシルヘスペリジン82質量%、ヘスペリジン1質量%、7-O-β-グルコシルヘスペレチン8質量%、その他成分9質量%)(株式会社林原調製品)を1質量部加え、さらに、クエン酸を0.1質量部と適量の着色料、着香料をそれぞれ混合した後、常法により練り合わせ、成型し、包装してα-グルコシルヘスペリジンを含有するチューインガムを得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、風味、テクスチャーともに良好な暑熱ストレス緩和剤として有用である。
【実施例0073】
<経管経口栄養剤形態の暑熱ストレス緩和剤>
マルトース(商品名『マルトースPH』、株式会社林原販売)30質量部、グルタミン酸ナトリウム3質量部、グリシン2質量部、塩化ナトリウム2質量部、クエン酸2質量部、炭酸マグネシウム0.3質量部、乳酸カルシウム1質量部、α-グルコシルヘスペリジン結晶粉末(純度99質量%以上、株式会社林原調製品)5質量部、チアミン0.02質量部及びリボフラビン0.02質量部からなる配合物を調製した。この配合物を30gずつラミネートアルミ袋に小分けし、ヒートシールして経管経口栄養剤形態の暑熱ストレス緩和剤を調製した。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、一袋約250乃至500mLの滅菌水に溶解し経管又は経口的に、暑熱ストレス緩和剤として、熱中症を改善・予防するための液剤として有利に利用できる。
【実施例0074】
<カプセル剤形態の暑熱ストレス緩和剤>
酢酸カルシウム1水塩10質量部、L-乳酸マグネシウム3水塩50質量部、マルトース57質量部、α-グルコシルヘスペリジン含有粉末(商品名『林原ヘスぺリジンS』、株式会社林原販売)20質量部、及びビタミンE20%含有γ-シクロデキストリン包接化合物12質量部、生姜エキス粉末1質量部を均一に混合し、顆粒成形機にかけて顆粒とした後、常法に従って、ゼラチンカプセルに封入して、1カプセル当たり内容物を150mg含有するカプセル剤形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、熱中症を改善・予防するためのカプセル剤として有利に利用できる。
【実施例0075】
<粉末形態の暑熱ストレス緩和剤>
グリコシルヘスペレチン含有粉末(α-グルコシルヘスペリジン82質量%、ヘスぺリジン1質量%、7-O-β-グルコシルヘスペレチン8質量%、その他成分9質量%)(株式会社林原調製品)を10質量部、蔗糖3質量部、マルチトール1質量部、及び水溶性食物繊維15質量部(商品名『ファイバリクサ』、株式会社林原販売)を撹拌混合し、スティック状の遮光・防湿性包装容器に5gずつ収容し、粉末形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、一日当たり、その1乃至2包を水、お茶、紅茶、コーヒーなどの各種飲料や他の飲食品に添加し、日常的に経口摂取することができる。本品は、発汗促進作用に優れているため、むくみ改善効果、ドライスキン改善効果、新陳代謝促進効果、デトックス効果を有し、美容用健康食品としても有用である。
【実施例0076】
<錠剤形態の暑熱ストレス緩和剤>
L-アスコルビン酸10質量部、α-グルコシルヘスペリジン結晶粉末(純度99質量%以上、株式会社林原調製品)19質量部、マルトース(商品名『サンマルト』、株式会社林原販売)70質量部、及びショ糖ステアリン酸エステル1質量部をそれぞれ均一に混合した後、常法により打錠して錠剤形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、風味、テクスチャーともに良好な暑熱ストレス緩和剤として有用である。本品は、発汗促進作用に優れているため、むくみ改善効果、ドライスキン改善効果、新陳代謝促進効果、デトックス効果を有し、美容用健康食品としても有用である。
【実施例0077】
<グミキャンディー形態の暑熱ストレス緩和剤>
市販のα-マルトシルトレハロース含有シラップ(商品名『ハローデックス』、株式会社林原販売)150質量部を減圧下で加熱して水分含量15質量%まで濃縮し、常法に従ってゼラチン13質量部を水18質量部に溶解したものとα-グルコシルヘスペリジン含有粉末(商品名『林原ヘスペリジンS』、株式会社林原販売)2質量部、クエン酸2質量部、アスコルビン酸2-グルコシド無水結晶粉末(商品名『アスコフレッシュ』、株式会社林原販売)0.1質量部、塩化ナトリウム0.1質量部並びに適量の着色料及び着香剤を均一に混合した後、成型し、包装してα-グルコシルヘスペリジンを含有するグミキャンディー形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、風味、テクスチャーともに良好な暑熱ストレス緩和剤として有用である。本品は、発汗促進作用に優れているため、むくみ改善効果、ドライスキン改善効果、新陳代謝促進効果、デトックス効果を有し、美容用健康食品としても有用である。
【実施例0078】
<サプリメント形態の暑熱ストレス緩和剤>
グリコシルヘスペレチン含有粉末(α-グルコシルヘスぺリジン82質量%、ヘスぺリジン1質量%、7-O-β-グルコシルヘスペレチン8質量%、その他成分9質量%)(株式会社林原調製品)1質量部、水溶性食物繊維(商品名『ファイバリクサ』、株式会社林原販売)50質量部、α,α-トレハロース二含水結晶含有粉末(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)10質量部、グリシン1質量部、テアニン0.1質量部、GABA0.1質量部、カルニチン0.1質量部を均一に混合し、内面がアルミ箔でコーティングされたスティック状紙製容器に3gずつ充填し、サプリメント形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、風味、呈味ともに良好な暑熱ストレス緩和剤として有用である。本品は、深部体温上昇抑制作用に優れているため、安眠効果、睡眠導入効果や睡眠改善効果を有し、健康食品としても有用である。
【実施例0079】
<ヨーグルト形態の暑熱ストレス緩和剤>
α-グルコシルヘスペリジン結晶粉末(純度99質量%以上、株式会社林原調製品)30質量部、脱脂粉乳700質量部、及び精製水4,000質量部を混合して、発酵乳の原料(ヨーグルトミックス)を調製し、これを95℃、10分間加熱殺菌した後、45℃に冷却した。次いで、混合スターター100gを接種し、タンク内において、47℃で5時間発酵させた後、8℃以下に冷却してヨーグルト形態の暑熱ストレス緩和剤を得た。本品は、発汗促進作用または深部体温上昇抑制作用を発揮し、風味、呈味ともに良好な暑熱ストレス緩和剤として有用であり、熱中症を発症している患者或いは熱中症の発症が危惧されるヒトに、通常、成人1日当たり、100~500gを日常的に摂取させることにより、その症状を緩和又は改善できるとともに、その発症を効果的に遅延乃至は予防することができる。本品は、深部体温上昇抑制作用に優れているため、安眠効果、睡眠導入効果や睡眠改善効果を有し、健康食品としても有用である。
【実施例0080】
<粉末形態の基礎体温維持剤>
α-グルコシルヘスペリジン含有粉末(商品名『林原ヘスペリジンS』、株式会社林原販売)を10質量部、α,α-トレハロース二含水結晶含有粉末(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)9質量部、ラクトスクロース(商品名『乳果オリゴ』、株式会社林原販売)1質量部及びデキストリン30質量部、アスコルビン酸2-グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『アスコフレッシュ』、株式会社林原販売)0.1質量部、コエンザイムQ10 0.1質量部を撹拌混合し、スティック状の遮光・防湿性包装容器に5gずつ収容し、粉末形態の基礎体温維持剤を得た。本品は、基礎体温維持作用を発揮し、一日当たり、その1乃至2包を水、お茶、紅茶、コーヒーなどの各種飲料や他の飲食品に添加し、日常的に経口摂取することができる。
【実施例0081】
<混合甘味料形態の基礎体温維持剤>
異性化液糖100質量部、α,α-トレハロース二含水結晶含有粉末(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)1質量部、ラクトスクロース(商品名『乳果オリゴ』、株式会社林原販売)1質量部、及びグリコシルヘスペレチン含有粉末(α-グルコシルヘスペリジン82質量%、ヘスぺリジン1質量%、7-O-β-グルコシルヘスペレチン8質量%、その他成分9質量%)(株式会社林原調製品)1質量部を80℃で30分間加熱処理して混合甘味料形態の基礎体温維持剤を得た。本品は、風味、呈味ともに良好であり、各種飲食品の加熱調理が容易な基礎体温維持作用に優れた液状混合甘味料として有用である。
【実施例0082】
<健康補助飲料形態の基礎体温維持剤>
異性化糖40質量部、マルチトール2質量部、黒酢10質量部、リンゴ酢5質量部、クエン酸2質量部、リンゴ酸2質量部、濃縮リンゴ果汁2質量部、α-グルコシルヘスペリジン結晶粉末(純度99質量%以上、株式会社林原調製品)2質量部を混合・溶解して健康補助飲料形態の基礎体温維持剤を調製した。本品は、風味、呈味ともに良好であり、基礎体温維持剤として有用である。
【実施例0083】
<粉末形態の基礎体温維持剤>
α-グルコシルヘスペリジン含有粉末(商品名『林原ヘスペリジンS』、株式会社林原販売)を10質量部、α,α-トレハロース二含水結晶含有粉末(商品名『トレハ』、株式会社林原販売)3質量部、マルチトール1質量部、及び水溶性食物繊維15質量部(商品名『ファイバリクサ』、株式会社林原販売)、ローヤルゼリー(商品名『林原ローヤルゼリー』、株式会社林原販売)0.1質量部、大豆イソフラボン0.1質量部、プラセンタエキス0.1質量部を撹拌混合し、スティック状の遮光・防湿性包装容器に5gずつ収容し、粉末形態の基礎体温維持剤を得た。本品は、基礎体温維持作用に優れているため、冷え症改善効果や更年期障害改善効果を有し、美容用健康食品としても有用である。
【実施例0084】
<錠剤形態の基礎体温維持剤>
グリコシルヘスペレチン含有粉末(α-グルコシルヘスペリジン82質量%、ヘスペリジン1質量%、7-O-β-グルコシルヘスペレチン8質量%、その他成分9質量%)(株式会社林原調製品)29質量部、マルトース(商品名『サンマルト』、株式会社林原販売)70質量部、及びショ糖ステアリン酸エステル1質量部、ニンニクエキス0.1質量部、マカエキス0.1質量部、牡蠣エキス0.1質量部、亜鉛0.1質量部、アルギニン0.05質量部、シトルリン0.05質量部をそれぞれ均一に混合した後、常法により打錠して錠剤形態の基礎体温維持剤を得た。本品は、基礎体温維持作用に優れているため、冷え症改善効果や更年期障害改善効果を有し、美容用健康食品としても有用である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
叙上のとおり、本発明は、グリコシルヘスペレチンが、ヒトにおいて、顕著な発汗促進作用、深部体温上昇抑制作用を発揮するという独自の知見に基づく、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる暑熱ストレス緩和剤に係るものである。さらには、グリコシルヘスペレチンが、ヒトにおいて、顕著な基礎体温維持作用を発揮するという独自の知見に基づく、グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる基礎体温維持剤に係るものである。本発明の暑熱ストレス緩和剤又は基礎体温維持剤は、健常人や病人が常用すると、健康の維持・回復に効果がある。とりわけ、本発明の暑熱ストレス緩和剤は、発汗促進剤又は深部体温上昇抑制剤として使用でき、夏季や労作時などの所謂暑熱ストレス環境下において、熱中症等が危惧されるヒトに適用する場合には、他の対象者と比べ、所望の作用効果がより顕著に発揮される優れた特徴を有する。さらに、本発明の基礎体温維持剤は、冬季や冷房時などの所謂寒冷ストレス時に限らず慢性の冷え性や、更年期障害などによる体温調節障害が危惧されるヒトに適用する場合には、所望の作用効果がより顕著に発揮される優れた特徴を有する。
【符号の説明】
【0086】
図1において、
○:プラセボ試料摂取群
■:被験試料摂取群
【0087】
図2において、
●:基礎体温高温群
■:基礎体温低温群
*:有意水準(p値)が0.05未満(危険率5%未満)で有意差あり
**:有意水準(p値)が0.01未満(危険率1%未満)で有意差あり
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる、暑熱ストレス環境下におけるヒトの深部体温上昇抑制剤(但し、卵白ペプチドを有効成分として含有する剤を除く。)。
【請求項2】
前記グリコシルヘスペレチンが、ヘスペリジン、α-グコシルヘスペリジン、及び7-O-β-グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の深部体温上昇抑制剤。
【請求項3】
前記α-グリコシルヘスペリジンが、α-グルコシルヘスペリジンである、請求項2に記載の深部体温上昇抑制剤。
【請求項4】
ヒトに対して、1回当たり、ヘスペリジン換算で50乃至500mgの用量で経口投与されるように用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の深部体温上昇抑制剤。
【請求項5】
グリコシルヘスペレチンを有効成分として含有してなる、暑熱ストレス環境下におけるヒトの発汗促進剤。
【請求項6】
前記グリコシルヘスペレチンが、ヘスペリジン、α-グコシルヘスペリジン、及び7-O-β-グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項5に記載の発汗促進剤。
【請求項7】
前記α-グリコシルヘスペリジンが、α-グルコシルヘスペリジンである、請求項6に記載の発汗促進剤。
【請求項8】
ヒトに対して、1回当たり、ヘスペリジン換算で50乃至500mgの用量で経口投与されるように用いられることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の発汗促進剤。