(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101033
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】プリプレグマイカテープ、回転電機及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087591
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2020201653の分割
【原出願日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2020005704
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020057187
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】師岡 寿至
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓明
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 直大
(72)【発明者】
【氏名】亀川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正一
(57)【要約】
【課題】
本発明は、導体の表面のマイカ絶縁層と鉄心スロットとの間に形成される間隙の形成を抑制するプリプレグマイカテープ、及び、課電時の放電の発生を抑制する回転電機を提供する。
【解決手段】
本発明のプリプレグマイカテープは、基材とマイカペーパとが、接着剤により、接着されるマイカテープと、マイカテープの最表面に保持される、半硬化状態のワニスと、を有することを特徴とする。そして、本発明の回転電機は、鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有し、マイカ絶縁層は、基材とマイカペーパとが接着剤で接着され、半硬化状態のワニスが含浸するマイカテープと、マイカテープの最表面に保持され、半硬化状態のワニスと、を有するプリプレグマイカテープを有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とマイカペーパとが、接着剤により、接着されるマイカテープと、前記マイカテープの最表面に保持される、半硬化状態のワニスと、を有することを特徴とするプリプレグマイカテープ。
【請求項2】
請求項1に記載するプリプレグマイカテープであって、
前記半硬化状態のワニスは、フィラーを含有することを特徴とするプリプレグマイカテープ。
【請求項3】
請求項2に記載するプリプレグマイカテープであって、
前記マイカテープの最表面は、前記マイカペーパの最表面、又は/及び、前記基材の最表面であることを特徴とするプリプレグマイカテープ。
【請求項4】
請求項2に記載するプリプレグマイカテープであって、
前記基材及び前記マイカペーパのうち、少なくとも前記マイカペーパには、半硬化状態のワニスが含浸されることを特徴とするプリプレグマイカテープ。
【請求項5】
鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有する回転電機であって、
前記マイカ絶縁層は、基材とマイカペーパとが接着剤で接着される、半硬化状態のワニスが含浸するマイカテープと、前記マイカテープの最表面に保持され、半硬化状態のワニスと、を有するプリプレグマイカテープにより形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載する回転電機であって、
前記半硬化状態のワニスは、フィラーを含有することを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項5に記載する回転電機であって、
前記固定子巻線は、前記鉄心スロットに前記コイル単体と共に挿入される、前記コイル単体を保護するスロットライナと、前記コイル単体を絶縁するスロット内絶縁材と、を有し、
前記コイル単体と、前記スロットライナと、前記スロット内絶縁材と、により形成され、前記マイカ絶縁層と前記鉄心スロットとの間に形成される間隙に、前記マイカ絶縁層に含浸、保持され、前記マイカ絶縁層から流動したワニスを有することを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載する回転電機であって、
前記スロットライナと、前記スロット内絶縁材と、前記鉄心スロットに、前記コイル単体、前記スロットライナ、前記スロット内絶縁材を固定するウェッジと、の少なくとも一つは、半硬化状態のワニスを保持し、前記マイカ絶縁層と前記鉄心スロットとの間に形成される間隙に、前記スロットライナ、前記スロット内絶縁材、前記ウェッジ、の少なくとも一つから流動したワニスを有することを特徴とする回転電機。
【請求項9】
鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有する回転電機の製造方法であって、
基材とマイカペーパとを、接着剤で接着したマイカテープに、ワニスを含浸させ、前記ワニスを半硬化状態にし、
その後、前記マイカテープの最表面に、半硬化状態のワニスを保持させ、プリプレグマイカテープを作製し、
前記プリプレグマイカテープを、前記導体に巻回し、前記マイカ絶縁層を形成し、前記コイル単体を製造し、
前記コイル単体を、鉄心スロットに、前記コイル単体を保護するスロットライナ、前記コイル単体を絶縁するスロット内絶縁材と共に挿入し、
前記コイル単体、前記スロットライナ、前記スロット内絶縁材を、前記鉄心スロットに固定し、中間段階の固定子巻線を製造することを特徴とする回転電機の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載する回転電機の製造方法であって、
前記中間段階の固定子巻線を加熱し、前記マイカ絶縁層に含浸され、保持されたワニスを、流動させ、
前記コイル単体と、前記スロットライナと、前記スロット内絶縁材と、により形成され、前記マイカ絶縁層と前記鉄心スロットとの間に形成される間隙に、前記マイカ絶縁層に含浸、保持され、流動したワニスを形成し、硬化させ、前記固定子巻線を製造することを特徴とする回転電機の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載する回転電機の製造方法であって、
前記スロットライナと、前記スロット内絶縁材と、前記鉄心スロットに、前記コイル単体、前記スロットライナ、前記スロット内絶縁材を固定するウェッジと、の少なくとも一つに、あらかじめ半硬化状態のワニスを保持させ、
前記中間段階の固定子巻線を加熱し、前記マイカ絶縁層と前記鉄心スロットとの間に形成される間隙に、前記マイカ絶縁層に含浸、保持されたワニス、及び、前記スロットライナ、前記スロット内絶縁材、前記ウェッジの少なくとも一つに保持されたワニスを流動、硬化させ、前記固定子巻線を製造することを特徴とする回転電機の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載する回転電機の製造方法であって、
前記プリプレグマイカテープが保持する半硬化状態のワニスは、フィラーを含有することを特徴とする回転電機の製造方法。
【請求項13】
鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有する回転電機の製造方法であって、
基材とマイカペーパとを、接着剤で接着したマイカテープに、ワニスを含浸させ、前記ワニスを半硬化状態にし、
その後、前記マイカテープの最表面に、半硬化状態のワニスを保持させ、プリプレグマイカテープを作製し、
前記プリプレグマイカテープを、前記導体に巻回し、前記マイカ絶縁層を形成し、中間段階のコイル単体を製造し、
前記中間段階のコイル単体を加熱、加圧し、最終段階のコイル単体を製造し、
前記最終段階のコイル単体を、鉄心スロットに、コイル単体を保護するスロットライナ、コイル単体を絶縁するスロット内絶縁材と共に挿入し、固定子巻線を製造することを特徴とする回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグマイカテープ、回転電機及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機、電動機、変圧器などの電気機器において、これら電気機器に使用されるコイルを絶縁し、固着するため、電気絶縁性(絶縁信頼性)が高く、機械的特性にも優れる熱硬化性樹脂が広く使用される。
【0003】
そして、発電機や電動機などの高電圧の回転電機の絶縁には、絶縁信頼性が高いマイカ絶縁システムが使用される。
【0004】
特に、回転電機を構成する固定子巻線の製造方法には、このマイカ絶縁システムが使用され、例えば、以下のような製造方法(3つの従来の方式)がある。
【0005】
(1)一体注入方式(全含浸方式)
先ず、絶縁被覆した導体に、ドライマイカテープを巻回してコイル単体を製造する。次に、このコイル単体を、スロットライナ及びスロット内絶縁材と共に、鉄心スロットに組み込み、ウェッジを設置し、これらを鉄心スロットに固定し、固定子巻線を製造する。次に、この固定子巻線をワニスに浸漬し、この固定子巻線にワニスを真空含浸(真空加圧注入)する。最後に、この固定子巻線を加熱し、ワニスを熱硬化し、固定子巻線を製造する。
【0006】
(2)単独注入方式
発電所や変電所で使用される高電圧・大容量の発電機のように、非常に大きな固定子巻線が使用される場合、固定子巻線全体にワニスを真空含浸することは、設備上、実質的に困難である。このため、ワニスが硬化した後のコイル単体を鉄心スロットに組み込み、固定子巻線を製造することが多い。
【0007】
つまり、先ず、絶縁被覆した導体に、ドライマイカテープを巻回してコイル単体を製造する。次に、このコイル単体をワニスに浸漬し、このコイル単体にワニスを真空含浸(真空加圧注入)する。次に、このコイル単体を加熱し、ワニスを熱硬化し、コイル単体を製造する。最後に、このコイル単体を、スロットライナ及びスロット内絶縁材と共に、鉄心スロットに組み込み、ウェッジを設置し、これらを鉄心スロットに固定し、固定子巻線を製造する。
【0008】
(3)プリプレグ方式
マイカテープにあらかじめワニスを含浸させ、ワニスを半硬化状態にしたプリプレグマイカテープを使用する。
【0009】
そして、先ず、絶縁被覆した導体に、プリプレグマイカテープを巻回してコイル単体を製造する。次に、このコイル単体を加熱・加圧し、ワニスを熱硬化し、コイル単体を製造する。最後に、このコイル単体を、スロットライナ及びスロット内絶縁材と共に、鉄心スロットに組み込み、ウェッジを設置し、これらを鉄心スロットに固定し、固定子巻線を製造する。なお、プリプレグ方式においては、ワニスを真空含侵(真空加圧注入)する必要はない。
【0010】
一体注入方式は、例えば、車両用電動機や産業電動機などの中電圧及び中容量の電動機などに好適であり、一方、単独注入方式やプリプレグ方式は、例えば、電力用大型発電機などの高電圧及び高容量の発電機などに好適である。
【0011】
こうした技術分野における背景技術として、プリプレグ方式について、特開2010-158113号公報(特許文献1)がある。
【0012】
特許文献1には、マイカ層がマイカと半硬化状態の熱硬化性樹脂とからなるプリプレグマイカテープを使用することが記載されている(段落0026参照)。そして、特許文献1には、コイル(導体)と電気絶縁層(マイカ絶縁層)とからなる固定子コイル(コイル単体)は、楔(ウェッジ)が打ち込まれた後、加熱され、電気絶縁層(マイカ絶縁層)を形成する電気絶縁テープ(プリプレグマイカテープ)の熱硬化性樹脂が硬化され、これによって、固定子コイル(コイル単体)は、固定子スロット(鉄心スロット)に固定されることが記載されている(段落0050参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1には、固定子コイル(コイル単体)が、固定子スロット(鉄心スロット)に固定されることが記載されている。しかし、特許文献1には、コイル(導体)の表面の電気絶縁層(マイカ絶縁層)と固定子スロット(鉄心スロット)との間には、間隙が形成され、課電時に、この間隙で放電が発生する恐れについては記載されていない。
【0015】
そこで、本発明は、導体の表面のマイカ絶縁層と鉄心スロットとの間に形成される間隙の形成を抑制するプリプレグマイカテープ、並びに、課電時の放電の発生を抑制する回転電機及び回転電機の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した課題を解決するため、本発明のプリプレグマイカテープは、基材とマイカペーパとが、接着剤により、接着されるマイカテープと、マイカテープの最表面に保持される、半硬化状態のワニスと、を有することを特徴とする。
【0017】
また、上記した課題を解決するため、本発明の回転電機は、鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有する回転電機であって、マイカ絶縁層は、基材とマイカペーパとが接着剤で接着され、半硬化状態のワニスが含浸するマイカテープと、マイカテープの最表面に保持され、半硬化状態のワニスと、を有するプリプレグマイカテープを有することを特徴とする。
【0018】
また、上記した課題を解決するため、本発明の回転電機の製造方法は、鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有する回転電機の製造方法であって、
・基材とマイカペーパとを、接着剤で接着したマイカテープに、ワニスを含浸させ、ワニスを半硬化状態にし、
・その後、マイカテープの最表面に、半硬化状態のワニスを保持させ、プリプレグマイカテープを作製し、
・プリプレグマイカテープを、導体に巻回し、マイカ絶縁層を形成し、コイル単体を製造し、
・コイル単体を、鉄心スロットに、コイル単体を保護するスロットライナ、コイル単体を絶縁するスロット内絶縁材と共に挿入し、
・コイル単体、スロットライナ、スロット内絶縁材を、鉄心スロットに固定し、中間段階の固定子巻線を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、導体の表面のマイカ絶縁層と鉄心スロットとの間に形成される間隙の形成を抑制するプリプレグマイカテープ、並びに、課電時の放電の発生を抑制する回転電機及び回転電機の製造方法を提供することができる。
【0020】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施例に記載する固定子巻線10の構成を模式的に説明する断面図である。
【
図2】本実施例に記載するコイル単体12の構成を模式的に説明する説明図である。
【
図3】本実施例に記載する(a)プリプレグマイカテープ30、(b)プリプレグマイカテープ35、(c)プリプレグマイカテープ36、及び、(d)プリプレグマイカテープ37の構成を模式的に説明する説明図である。
【
図4】本実施例に記載する固定子巻線10の構成を斜視的に説明する説明図である。
【
図5A】本実施例に記載する鉄心スロット13にコイル単体12が組み込まれる、
図4の平面Hにおける、従来のプリプレグマイカテープ30を使用する場合の、断面構成を説明する説明図である。
【
図5B】本実施例に記載する鉄心スロット13にコイル単体12が組み込まれる、
図4の平面Hにおける、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)を使用する場合の、断面構成を説明する説明図である。
【
図6】本実施例に記載するコイル単体12の導体21に形成されるマイカ絶縁層22の最表面の断面を模式的に説明する説明図であり、(a)1重の場合、及び、(b)2重(多重)の場合である。
【
図7】本実施例に記載する固定子巻線10の加熱によるワニスの流動・硬化プロセスの温度プロファイルを模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を使用して、本発明の実施例を説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例0023】
先ず、本実施例に記載する固定子巻線10の構成を模式的に説明する。
【0024】
図1は、本実施例に記載する固定子巻線10の構成を模式的に説明する断面図である。
【0025】
本実施例に記載する固定子巻線10は、鉄心スロット13が形成される固定子鉄心11と、鉄心スロット13に組み込まれる(挿入される)コイル単体12と、を有する。なお、図示はしていないが、固定子巻線10は、鉄心スロット13と鉄心スロット13との間でコイル単体12が巻回される。
【0026】
回転電機は、固定子巻線10の内側に、回転子コイル(図示せず)が設置される。つまり、回転電機は、固定子巻線10と回転子コイルとを有する。
【0027】
このように、固定子巻線10と回転子コイルとを使用し、発電機や電動機などの回転電機を構成する。そして、回転電機が発電機である場合には、回転子コイルを、外部からの動力により回転させ、固定子巻線10から電流を取り出すことができる。また、回転電機が電動機である場合には、固定子巻線10に電流を流し、回転子コイルを回転させ、動力を外部に供給することができる。つまり、固定子巻線10の内側に設置される回転子コイルが駆動(回転)することにより、回転電機として機能する。
【0028】
次に、本実施例に記載するコイル単体12の構成を模式的に説明する。
【0029】
図2は、本実施例に記載するコイル単体12の構成を模式的に説明する説明図である。なお、(A)はコイル単体12の全体構成を示し、(B)はコイル単体12の部分拡大を示す。
【0030】
本実施例に記載するコイル単体12は、
図2(A)に示すように、両端部において、結ばれて(捻られて)形成される。つまり、一端部(例えば、紙面左側)は、コイル単体12が結ばれて(捻られて)形成され、固定子巻線10の外側に存在する。また、他端部(例えば、紙面右側)は、コイル単体12が結ばれて(捻られて)形成され、固定子巻線10の外側に存在する。
【0031】
そして、コイル単体12のいずれかの端部は、導体21が露出し、導体21は、固定子巻線10の外側に露出する。この端部は、外部電源や蓄電池と接続される。
【0032】
なお、コイル単体12は、
図2(A)中、上下方向の長尺部分が、鉄心スロット13に挿入される。つまり、
図2(A)に示すコイル単体12は、固定子巻線10を径方向から見た状態を示すものである。
【0033】
また、コイル単体12は、
図2(B)に示すように、断面が矩形形状の導体21(例えば、金属線など)とマイカ絶縁層22とを有する。
【0034】
導体21と導体21とは、例えば、樹脂材料などにより、相互に絶縁される。そして、相互に絶縁される(絶縁被覆した)導体21は、マイカ絶縁層22の内部に形成される。そして、マイカ絶縁層22には、プリプレグマイカテープが使用される。
【0035】
つまり、マイカ絶縁層22は、プリプレグマイカテープにより形成される。そして、コイル単体12は、絶縁被覆した導体21とマイカ絶縁層22とにより形成され、コイル単体12は、絶縁被覆した導体21に、プリプレグマイカテープ(マイカ絶縁層22)を巻回して形成される。
【0036】
次に、本実施例に記載する(a)プリプレグマイカテープ30、(b)プリプレグマイカテープ35、(c)プリプレグマイカテープ36、及び、(d)プリプレグマイカテープ37の構成を模式的に説明する。
【0037】
図3は、本実施例に記載する(a)プリプレグマイカテープ30、(b)プリプレグマイカテープ35、(c)プリプレグマイカテープ36、及び、(d)プリプレグマイカテープ37の構成を模式的に説明する説明図であり、(a)は、従来のプリプレグマイカテープ30であり、(b)、(c)、(d)は、本実施例のプリプレグマイカテープ35、プリプレグマイカテープ36、プリプレグマイカテープ37である。
【0038】
なお、プリプレグマイカテープ30、プリプレグマイカテープ35、プリプレグマイカテープ36、プリプレグマイカテープ37は、いずれも、テープ形状を有し、導体21に巻回し易い形状を有する。
【0039】
従来のプリプレグマイカテープ30は、基材33とマイカペーパ31と接着剤32とを有する。つまり、基材33とマイカペーパ31とを、接着剤32で接着する(貼り合わせる、固定する)。
【0040】
マイカペーパ31は、通常、脆いため、マイカペーパ31を基材33に接着し、補強する。なお、マイカとは、所謂「雲母」と呼称されるものである。マイカの形態は、特に制限されない。マイカペーパ31には、マイカとして、集成マイカが広く使用される。なお、用途や絶縁材の製造方法などに応じて、マイカとして、フレークマイカを使用してもよい。また、集成マイカやフレークマイカを構成するマイカの粒径も、用途や絶縁材の製造方法などに応じて、設定する。
【0041】
基材33は、脆いマイカペーパ31を補強するものである。つまり、基材33は、マイカペーパ31の補強基材として使用される。基材33は、例えば、耐熱性や絶縁性に応じて、ガラスクロスなどの無機基材、又は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、セルロース紙、アラミド紙、不織布などの有機基材が使用される。また、その形状も、例えば、シート形状やテープ形状などが使用される。
【0042】
接着剤32は、マイカペーパ31と基材33とを接着するものである。従って、接着剤32は、マイカペーパ31と基材33とを接着できる材料(成分)を含む。
【0043】
そして、マイカペーパ31にワニスを含浸させ、含浸させたワニスを半硬化状態にすることにより、従来のプリプレグマイカテープ30を作製する。
【0044】
なお、接着剤32は、マイカペーパ31に含浸させるワニスでもよい。つまり、含浸させたワニスを半硬化状態にすることにより、マイカペーパ31と基材33とを接着してもよい。
【0045】
本実施例のプリプレグマイカテープは、従来のプリプレグマイカテープ30の最表面に、半硬化状態のワニス34を形成する(保持させる)。なお、この半硬化状態のワニス34は、フィラーを含有することが好ましい。つまり、本実施例のプリプレグマイカテープは、マイカペーパ31にワニスを含浸させた、半硬化状態のワニスを有するプリプレグマイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34を有する。
【0046】
以下、本実施例では、この半硬化状態のワニス34は、フィラーを含有するものとして、説明する。つまり、本実施例のプリプレグマイカテープは、基材33と接着剤32とマイカペーパ31とを有し、その最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34を有する。このように、本実施例では、マイカペーパ31に、ワニスを含浸させた、半硬化状態のワニスを有するプリプレグマイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34を、形成する。
【0047】
ただし、プリプレグマイカテープの最表面に、フィラーを含有しない硬化状態のワニス34を、形成してもよい。つまり、この半硬化状態のワニス34は、フィラーを含有しなくてもよい。
【0048】
また、本実施例のプリプレグマイカテープは、マイカペーパ31及び基材33にワニスを含浸させた、半硬化状態のワニスを有するプリプレグマイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34を、有してもよい。このように、本実施例では、マイカペーパ31及び基材33に、ワニスを含浸させ、半硬化状態のワニスを有するプリプレグマイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34を、形成してもよい。
【0049】
そして、基材33として、ガラスクロスなどの無機基材、又は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、セルロース紙、アラミド紙、不織布などの有機基材を使用する場合には、基材33の空隙に、ワニスを含浸させ、半硬化状態にする。
【0050】
図3(b)に示すプリプレグマイカテープ35は、マイカペーパ31にワニスを含浸させ、ワニスが半硬化状態のマイカペーパ31の最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34が形成される。
【0051】
図3(c)に示すプリプレグマイカテープ36は、基材33の最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34が形成される。
【0052】
図3(d)に示すプリプレグマイカテープ37は、マイカペーパ31にワニスを含浸させ、ワニスが半硬化状態のマイカペーパ31の最表面、及び、基材33の最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス34が形成される。
【0053】
なお、半硬化状態にするワニスとしては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が使用される。特に、シリコーン樹脂の硬化反応は、脱水縮合のような低分子量の化合物を生成する縮合反応と、ヒドロシリル化反応(付加反応)と、に大別される。
【0054】
特に、縮合反応の場合、低分子量の化合物が絶縁層に残留すると、気泡(ボイド)が形成され、絶縁性の欠陥となる恐れがある。また、絶縁層から低分子量の化合物が抜けることにより、硬化時の収縮が大きくなる恐れがある。このため、ワニスとして、シリコーン樹脂を使用する場合には、ヒドロシリル化反応により硬化する付加硬化型のワニスを使用することが好ましい。
【0055】
このように、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)は、以下の工程により、作製される。
(1)先ず、基材33とマイカペーパ31とを接着剤32で接着し、貼り合わせ、固定されるマイカテープ(基材33とマイカペーパ31とを、接着剤32で固定したもの)に、ワニスを含浸させ、含浸されたワニス(含浸ワニス)を半硬化状態にする。つまり、マイカテープは、基材33とマイカペーパ31とが接着剤32で接着され、貼り合わせ、固定され、半硬化状態のワニスが含浸する。
(2)そして、このマイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニス(追加ワニス)34を形成する。
【0056】
つまり、本実施例におけるマイカ絶縁層22は、半硬化状態のワニス(含浸ワニス)を含浸したマイカテープ(プリプレグマイカテープ)と、マイカテープの最表面に保持され、フィラーを含有する半硬化状態のワニス(追加ワニス)と、を有するプリプレグマイカテープ(35、36、37)により形成される。
【0057】
また、追加ワニスに含有するフィラーとしては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素などの絶縁材料に使用される無機粒子が好ましい。このフィラーの種類、形状、粒径、及び、含有量を調整することにより、追加ワニスの粘度を調整することができる。
【0058】
このフィラーの種類、形状、粒径、及び、含有量を調整することにより、加熱時の追加ワニスの粘度を低くすることができ、つまり、追加ワニスの流動性を高くすることができ、プリプレグマイカテープ(35、36、37)から追加ワニスを流動しやすくすることができる。
【0059】
なお、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)は、テープとしての形状を保持するため、含浸ワニス及び追加ワニスが、加熱前には流動しないように、これらワニスを半硬化状態、つまり、B-ステージにする。
【0060】
一方、絶縁被覆した導体21に、プリプレグマイカテープを巻回する上で、プリプレグマイカテープに必要となる柔軟性を持たせるため、含浸ワニス及び追加ワニスの硬化度合いを調整する。なお、加熱時の含浸ワニス及び追加ワニスの粘度(流動性)は、含浸ワニス及び追加ワニスの硬化度合いにより相違する。
【0061】
含浸ワニス及び追加ワニスは、加熱によるワニスの流動・硬化プロセスの初期段階において、加熱により粘度が低下した半硬化状態の含浸ワニス及び追加ワニスが染み出す(流動する、流出する)ようになる。
【0062】
そして、含浸ワニス及び追加ワニスの流動性、つまり、硬化度合いの相違による加熱時の粘度は、コイル単体12や鉄心スロット13の大きさや形状により相違するため、適宜、調整する。なお、コイル単体12や鉄心スロット13の大きさや形状に応じて、含浸ワニス及び追加ワニスの量や半硬化状態の程度を調整する。更に、固定子巻線10の加熱によるワニスの流動・硬化プロセスの温度プロファイルを調整する。
【0063】
また、含浸ワニスの硬化度合いと追加ワニスの硬化度合いとは、同一でもよいし、相違してもよい。例えば、含浸ワニスの硬化度合いよりも、追加ワニスの硬化度合いを低くする。これにより、加熱時の追加ワニスの粘度を、含浸ワニスの粘度よりも低くし、つまり、追加ワニスの流動性を、含浸ワニスの流動性よりも高くし、プリプレグマイカテープから追加ワニスを流動しやすくすることができる。
【0064】
このように、本実施例におけるプリプレグマイカテープは、基材33とマイカペーパ31とが、接着剤32により、接着されるマイカテープと、マイカテープの最表面に保持される、半硬化状態のワニス34と、を有する。なお、半硬化状態のワニス34は、フィラーを含有することが好ましい。そして、マイカペーパ31、又は、基材33及びマイカペーパ31は、半硬化状態のワニスが含浸されることが好ましい。つまり、基材33及びマイカペーパ31のうち、少なくともマイカペーパ31には、半硬化状態のワニスが含浸されることが好ましい。
【0065】
そして、本実施例におけるプリプレグマイカテープの製造方法は、基材33とマイカペーパ31とを、接着剤32で接着したマイカテープに、ワニスを含浸させ、ワニスを半硬化状態にした後、マイカテープの最表面に、半硬化状態のワニス34を保持させる。
【0066】
次に、本実施例に記載する固定子巻線10の構成を斜視的に説明する。
【0067】
図4は、本実施例に記載する固定子巻線10の構成を斜視的に説明する説明図である。
【0068】
固定子巻線10は、
図4に示すように、固定子鉄心11とコイル単体12とを有する。なお、固定子巻線10は、(a)相間絶縁、(b)対地絶縁、(c)巻線ターン間絶縁の三つの絶縁を有する。
【0069】
固定子鉄心11は、円形状の鋼板が積層された円柱状の積層鋼板の外周に一定間隔で形成される、軸方向(積層方向)に伸びる矩形の溝である鉄心スロット13を有する。
【0070】
次に、本実施例に記載する鉄心スロット13にコイル単体12が組み込まれる、
図4の平面Hにおける、従来のプリプレグマイカテープ30を使用する場合の、断面構成を説明する。
【0071】
図5Aは、本実施例に記載する鉄心スロット13にコイル単体12が組み込まれる、
図4の平面Hにおける、従来のプリプレグマイカテープ30を使用する場合の、断面構成を説明する説明図である。
【0072】
鉄心スロット13には、積層される2つのコイル単体12と、2つのコイル単体12の側方(固定子巻線10の周方向)の溝側壁との間で、2つのコイル単体12を挟み込む位置に設置されるスロットライナ42と、2つのコイル単体12を上下(固定子巻線10の径方向)に挟み込むように設置される3つのスロット内絶縁材43と、が設置される。更に、スロット内絶縁材43の上(固定子巻線10の径方向)にはウェッジ41が設置される。
【0073】
つまり、スロットライナ42が挿入される鉄心スロット13には、3つのスロット内絶縁材43に、2つのコイル単体12が挟持される。
【0074】
ウェッジ41は、コイル単体12、スロット内絶縁材43、スロットライナ42を、鉄心スロット13に、固定するものである。ウェッジ41は、鉄心スロット13に楔状に設置される。つまり、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43が、鉄心スロット13に挿入された後に、ウェッジ41により、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43が、鉄心スロット13に、固定される。
【0075】
このように、コイル単体12は、スロットライナ42及びスロット内絶縁材43と共に、鉄心スロット13に挿入され、コイル単体12は、スロットライナ42及びスロット内絶縁材43と共に、ウェッジ41により、固定される。
【0076】
スロットライナ42は、導体21(コイル単体12)と固定子鉄心11との絶縁を補強すると共に、マイカ絶縁層22(コイル単体12)を保護するものである。なお、スロットライナ42には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、セルロース紙、アラミド紙、不織布などの有機基材が使用される。
【0077】
スロット内絶縁材43は、導体21(コイル単体12)と導体21(コイル単体12)との絶縁、導体21(コイル単体12)と固定子鉄心11との絶縁、及び、導体21(コイル単体12)とウェッジ41との絶縁を補強するものである。なお、スロット内絶縁材43には、ガラスクロスと樹脂との積層複合材料が使用される。
【0078】
ウェッジ41は、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を、鉄心スロット13に固定するものである。なお、ウェッジ41には、ガラスクロスと樹脂との積層複合材料が使用される。
【0079】
従来のプリプレグマイカテープ30を使用する場合では、鉄心スロット13に挿入される2つのコイル単体12及び3つのスロット内絶縁材43と鉄心スロット13の内壁(溝側壁)との間に、間隙44が形成される場合がある。つまり、導体21の表面のマイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に、間隙44が形成される場合がある。このように、間隙44が形成される場合、課電時に、この間隙44で放電が発生する恐れがある。
【0080】
次に、本実施例に記載する鉄心スロット13にコイル単体12が組み込まれる、
図4の平面Hにおける、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)を使用する場合の、断面構成を説明する。
【0081】
図5Bは、本実施例に記載する鉄心スロット13にコイル単体12が組み込まれる、
図4の平面Hにおける、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)を使用する場合の、断面構成を説明する説明図である。
【0082】
本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)を使用する場合では、
図5Bに示すように、鉄心スロット13に挿入される2つのコイル単体12及び3つのスロット内絶縁材43と鉄心スロット13の内壁との間に形成される間隙44が小さくなる。これは、後述するワニスの流動・硬化プロセスにより、本実施例におけるマイカ絶縁層22(本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37))から染み出したワニスが、マイカ絶縁層22の表面を被覆し、更に、間隙44を埋めるためである。つまり、ワニス45(間隙44を埋めるワニス45)が、間隙44に形成される。
【0083】
なお、ワニス45が、この間隙44を完全に埋めることが好ましい。これにより、課電時に、この間隙44に発生する放電を完全に抑制することができる。ただし、ワニス45が、この間隙44を完全に埋めることなく、この間隙44を小さくすることによっても、課電時に、この間隙44に発生する放電を抑制することができる。
【0084】
なお、3つの従来の方式では、間隙44における放電の発生を抑制するため、固定子巻線10に、コロナ防止層(d)や電界緩和層(e)が設置される場合がある(
図4参照)。特に、電力用大型発電機などの高電圧及び高容量の発電機では、固定子巻線10に、コロナ防止層(d)や電界緩和層(e)が設置される。
【0085】
一方、本実施例に記載する回転電機は、こうした3つの従来の方式に対して、固定子巻線10と回転子コイルとを有し、固定子巻線10は、鉄心スロット13が形成される固定子鉄心11と、絶縁被覆した導体21及び特別なマイカ絶縁層22を有するコイル単体12(絶縁被覆した導体21にマイカ絶縁層22を形成したコイル単体12)と、を有する。つまり、本実施例に記載する回転電機は、鉄心スロット13が形成される固定子鉄心11と、絶縁被覆した導体21に特別なマイカ絶縁層22を形成したコイル単体12と、を有する固定子巻線10を有する。
【0086】
そして、この特別なマイカ絶縁層22は、基材33とマイカペーパ31とが接着剤32で接着され、半硬化状態のワニス(含浸ワニス)が含浸するマイカテープと、マイカテープの最表面に保持され、フィラーを含有する半硬化状態のワニス(追加ワニス)と、を有するプリプレグマイカテープにより形成される。
【0087】
つまり、コイル単体12は、絶縁被覆した導体21に形成される、含浸ワニス及び追加ワニスを有するマイカ絶縁層22を有する。
【0088】
更に、固定子巻線10は、鉄心スロット13にコイル単体12と共に挿入され、コイル単体12を保護するスロットライナ42と、コイル単体12を絶縁するスロット内絶縁材43と、コイル単体12、スロット内絶縁材43、スロットライナ42を、鉄心スロット13に固定するウェッジ41と、を有する。
【0089】
そして、コイル単体12と、スロットライナ42と、スロット内絶縁材43と、により形成され、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44に、マイカ絶縁層22に含浸、保持され、マイカ絶縁層22から染み出したワニスを形成する。
【0090】
つまり、固定子巻線10を加熱することにより、含浸ワニス及び追加ワニスがマイカ絶縁層22から染み出し、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44を、これらワニスで埋め、固定子巻線10が作製される。これにより、課電時に、間隙44における放電の発生を抑制する。
【0091】
次に、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)を使用する、回転電機の製造方法、特に、固定子巻線10の製造方法を説明する。
【0092】
つまり、本実施例に記載する回転電機の製造方法は、特に、鉄心スロット13が形成される固定子鉄心11と、導体21にマイカ絶縁層22を形成したコイル単体12と、を有する固定子巻線10の製造方法であり、以下のSTEPを有する。
【0093】
STEP1:含浸ワニス(半硬化状態)及び追加ワニス(半硬化状態)を有するプリプレグマイカテープを、絶縁被覆した導体21に巻回し、マイカ絶縁層22を形成し、コイル単体12を製造する。
【0094】
つまり、STEP1では、基材33とマイカペーパ31とを、接着剤32で接着したマイカテープに、ワニスを含浸させ、ワニスを半硬化状態にし、その後、マイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニスを保持させ、プリプレグマイカテープ(35、36、37)を作製し、プリプレグマイカテープ(35、36、37)を、導体21に巻回し、マイカ絶縁層22を形成し、コイル単体12を製造する。
【0095】
STEP2:STEP1で製造されるコイル単体12と共に、スロットライナ42とスロット内絶縁材43とを、鉄心スロット13に挿入し、その後、ウェッジ41を設置する。ウェッジ41により、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を固定し、中間段階の固定子巻線10(加熱前の固定子巻線10)を製造する。
【0096】
つまり、STEP2では、コイル単体12を、鉄心スロット13に、コイル単体12を保護するスロットライナ42、コイル単体12を絶縁するスロット内絶縁材43と共に挿入し、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を、鉄心スロット13に、ウェッジ41により固定し、中間段階の固定子巻線10を製造する。
【0097】
STEP3:その後、STEP2で製造される中間段階の固定子巻線10を加熱することにより、マイカ絶縁層22の含浸ワニス及び追加ワニスを、流動させる。
【0098】
そして、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44に、マイカ絶縁層22に含浸され、保持されたワニスが注入され(ワニスが流動し)、ワニス45が、間隙44を埋め、ワニス45が、間隙44に形成される。間隙44に埋められたワニス45は、その後、硬化する。
【0099】
つまり、STEP3では、中間段階の固定子巻線10を加熱し、マイカ絶縁層22に含浸され、保持されたワニスを、流動させ、コイル単体12と、スロットライナ42と、スロット内絶縁材43と、により形成され、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44に、マイカ絶縁層22に含浸、保持され、流動したワニスを形成し、硬化させ、固定子巻線10(加熱後の固定子巻線10、最終段階の固定子巻線10)を製造する。
【0100】
このように、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)を使用し、固定子巻線10を製造する場合には、絶縁被覆した導体21に、このプリプレグマイカテープを巻回し、マイカ絶縁層22を形成し、コイル単体12を製造し、鉄心スロット13に、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を挿入し、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を、ウェッジ41により固定し、固定子巻線10を製造する。
【0101】
そして、固定子巻線10を、ワニスの流動・硬化プロセスに基づき加熱し、含浸ワニス及び追加ワニスを、流動・硬化させ、固定子巻線10を製造する。流動する含浸ワニス及び追加ワニスは、マイカ絶縁層22の表面から染み出し、加熱前にあった間隙44を埋める。つまり、ワニス45が、間隙44に形成される。
【0102】
その結果、間隙44が小さくなり、又は、間隙44が完全に埋まり、課電時に、この間隙44で発生する恐れがある放電を抑制することができる。
【0103】
次に、本実施例に記載するコイル単体12の導体21に形成されるマイカ絶縁層22の最表面の断面を模式的に説明する。
【0104】
図6は、本実施例に記載するコイル単体12の導体21に形成されるマイカ絶縁層22の最表面の断面を模式的に説明する説明図であり、(a)1重の場合、及び、(b)2重(多重)の場合である。なお、プリプレグマイカテープ35を使用する場合を示す。ただし、プリプレグマイカテープ36又はプリプレグマイカテープ37を使用する場合も同様である。
【0105】
プリプレグマイカテープ35は、STEP1において、包帯(螺旋帯)を巻くように、一部をオーバーラップさせながら、導体21に巻回される。このため、STEP3において、固定子巻線10を加熱した際、プリプレグマイカテープ35に含浸するワニス(含浸ワニス)及びプリプレグマイカテープ35の最表面に形成されるフィラーを含有するワニス(追加ワニス)は、プリプレグマイカテープ35の表面及び端面から、マイカ絶縁層22の表面、及び、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に染み出す。
【0106】
つまり、加熱により粘度が低下した半硬化状態の含浸ワニス及び追加ワニスは、加熱によるワニスの流動・硬化プロセスの初期段階において、プリプレグマイカテープ35の表面から、マイカ絶縁層22の表面に、染み出すようになると共に、
図6(a)に示すように、プリプレグマイカテープ35の端面から、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46にも、染み出すようになる。
【0107】
このように、含浸ワニス及び追加ワニスは、プリプレグマイカテープ35から、マイカ絶縁層22の表面に、及び、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に、染み出し、マイカ絶縁層22の表面に、及び、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に、フィラーを含有する熱硬化性樹脂層を形成する。これにより、課電時に、発生する恐れがある放電を抑制することができる。
【0108】
特に、
図6(b)に示すように、プリプレグマイカテープ35を多重に積層する場合、プリプレグマイカテープ35の積層方向の絶縁性は高い。ただし、積層されるプリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との界面には、隙間46が形成され、絶縁性の欠陥となる場合がある。
【0109】
そこで、本実施例では、特に、プリプレグマイカテープ35を多重に積層する場合(複数層にプリプレグマイカテープを巻回する場合)、含浸ワニス及び追加ワニスは、プリプレグマイカテープ35の端面から、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に染み出す。
【0110】
このように、本実施例によれば、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に、フィラーを含有する熱硬化性樹脂層を形成することができる。これにより、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との界面の耐部分放電特性を向上させることができる。
【0111】
なお、含浸ワニス及び追加ワニスは、プリプレグマイカテープ35の端面からマイカ絶縁層22の表面にも染み出す。
【0112】
また、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)は、プリプレグ方式を使用する回転電機の製造方法、特に、固定子巻線10の製造方法にも使用することができる。
【0113】
そして、この場合における固定子巻線10の製造方法は、以下のSTEPを有する。
【0114】
STEP1では、基材33とマイカペーパ31とを、接着剤32で接着したマイカテープに、ワニスを含浸させ、ワニスを半硬化状態にし、その後、マイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニスを保持させ、プリプレグマイカテープ(35、36、37)を作製し、プリプレグマイカテープ(35、36、37)を、導体21に巻回し、マイカ絶縁層22を形成し、中間段階のコイル単体12を製造する。
【0115】
STEP2では、この中間段階のコイル単体12を加熱、加圧し、ワニスを熱硬化し、最終段階のコイル単体12を製造する。
【0116】
STEP3では、この最終段階のコイル単体12を、鉄心スロット13に、スロットライナ42、スロット内絶縁材43と共に挿入し、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を、鉄心スロット13に、ウェッジにより、固定し、固定子巻線10を製造する。
【0117】
これにより、含浸ワニス及び追加ワニスは、プリプレグマイカテープ35の端面から、マイカ絶縁層22の表面及びプリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に染み出す。
【0118】
そして、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に、フィラーを含有する熱硬化性樹脂層を形成することができる。これにより、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との界面の耐部分放電特性を向上させることができる。
【0119】
次に、本実施例に記載する固定子巻線10の加熱によるワニスの流動・硬化プロセスの温度プロファイルを模式的に説明する。
【0120】
図7は、本実施例に記載する固定子巻線10の加熱によるワニスの流動・硬化プロセスの温度プロファイルを模式的に説明する説明図である。
【0121】
STEP3において、半硬化状態のワニスは、温度が上昇すると共に、ワニスの粘度が低下し、ワニスがゲル化し、更に温度が上昇すると、ワニスが硬化し始め、最後に全体のワニスが硬化する。つまり、加熱の初期段階において、ワニスの温度上昇により、マイカ絶縁層22の含浸ワニス及び追加ワニスの粘度が低下し、ワニスが、マイカ絶縁層22の表面、及び、プリプレグマイカテープ35とプリプレグマイカテープ35との間の隙間46に染み出し、鉄心スロット13の内部を流動する。
【0122】
特に、固定子巻線10が加熱される際、固定子巻線10は軸中心に回転するため、染み出すワニスは、鉄心スロット13の内部を流動し易い。これにより、染み出すワニスが、加熱前にあった間隙44や隙間46を埋める。つまり、染み出すワニスが、間隙44や隙間46に形成される。これにより、課電時に、この間隙44や隙間46で発生する恐れがある放電を抑制することができる。
【0123】
<スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41の少なくとも一つに、半硬化状態のワニスを保持>
なお、本実施例では、マイカ絶縁層22に半硬化状態のワニスを含浸、保持させ、更に、スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41の少なくとも一つにも、半硬化状態のワニスを保持させてもよい。
【0124】
なお、ワニスは、スロットライナ42のみ、スロット内絶縁材43のみ、ウェッジ41のみに保持されてもよい。また、ワニスは、スロットライナ42とウェッジ41とに保持され、スロットライナ42とスロット内絶縁材43とに保持され、ウェッジ41とスロット内絶縁材43とに保持されてもよい。
【0125】
そして、鉄心スロット13に、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41が設置された後に、固定子巻線10を加熱して、ワニスを流動・硬化させてもよい。
【0126】
つまり、本実施例では、固定子巻線10を加熱することにより、マイカ絶縁層22に含侵、保持されるワニスが流動し、更に、スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41にもワニスが保持される場合には、固定子巻線10を加熱することにより、これらに保持されるワニスの粘度も低下し、これらに保持されるワニスも、鉄心スロット13の内部を流動する。
【0127】
スロットライナ42にワニスが保持される場合には、ワニスは、フィルムや紙の表面(スロットライナ42の表面)に塗布(保持)され、フィルムや紙の空隙(内部)(スロットライナ42の空隙)に含浸(保持)される。
【0128】
スロット内絶縁材43にワニスが保持される場合には、ワニスは、スロット内絶縁材43の表面、特に、スロット内絶縁材43の表面であって、コイル単体12に対向する面に塗布(保持)される。
【0129】
ウェッジ41にワニスが保持される場合には、ワニスは、ウェッジ41の表面、特に、ウェッジ41の表面であって、スロット内絶縁材43に対向する面に塗布(保持)される。
【0130】
なお、コイル単体12や鉄心スロット13の大きさや形状に応じて、スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41に保持されるワニスの量や半硬化状態の程度を調整する。また、固定子巻線10の加熱によるワニスの流動・硬化プロセスの温度プロファイルを調整する。
【0131】
また、鉄心スロット13にワニスを補充してもよい。スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41に、ワニスを保持させることに限定されず、コイル単体12に、ワニスを直接塗布して、補充してもよい。
【0132】
スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41の少なくとも一つに使用されるワニスとしては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましく、含浸ワニス及び追加ワニスに使用されるワニスと同一のものを使用することが好ましい。
【0133】
そして、この場合における固定子巻線10は、鉄心スロット13に、コイル単体12と共に挿入される、スロットライナ42と、スロット内絶縁材43と、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を鉄心スロット13に固定するウェッジ41と、を有し、コイル単体12と共に、スロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41の少なくとも一つに半硬化状態のワニスを保持する。
【0134】
そして、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44に、マイカ絶縁層22に含浸、保持されたワニス、及び、スロットライナ42と、スロット内絶縁材43と、ウェッジ41と、の少なくとも一つに保持されたワニスを、流動させる。
【0135】
つまり、この場合における固定子巻線10は、あらかじめワニスを含浸、保持したマイカ絶縁層22を有するコイル単体12と、あらかじめワニスを保持したスロットライナ42、スロット内絶縁材43、ウェッジ41の少なくとも一つと、を有し、鉄心スロット13に、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を挿入し、ウェッジ41により、これらを固定したものであってもよい。
【0136】
そして、この場合における固定子巻線10の製造方法は、以下のSTEPを有する。
【0137】
STEP1では、基材33とマイカペーパ31とを、接着剤32で接着したマイカテープに、ワニスを含浸させ、ワニスを半硬化状態にし、その後、マイカテープの最表面に、フィラーを含有する半硬化状態のワニスを保持させ、プリプレグマイカテープ(35、36、37)を作製し、プリプレグマイカテープ(35、36、37)を、導体21に巻回し、マイカ絶縁層22を形成し、コイル単体12を製造する。
【0138】
STEP2では、スロットライナ42と、スロット内絶縁材43と、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を、鉄心スロット13に固定するウェッジ41と、の少なくとも一つに、あらかじめ半硬化状態のワニスを保持させる。
【0139】
そして、コイル単体12を、鉄心スロット13に、スロットライナ42、スロット内絶縁材43と共に挿入し、コイル単体12、スロットライナ42、スロット内絶縁材43を、鉄心スロット13に、ウェッジにより、固定し、中間段階の固定子巻線10を製造する。
【0140】
STEP3では、中間段階の固定子巻線10を加熱し、マイカ絶縁層22に含浸され、保持されたワニス、及び、スロットライナ42と、スロット内絶縁材43と、ウェッジ41と、の少なくとも一つに保持されたワニスを、流動させる。
【0141】
そして、コイル単体12と、スロットライナ42と、スロット内絶縁材43と、により形成され、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44に、これら流動したワニスを形成し、硬化させ、固定子巻線10(加熱後の固定子巻線10、最終段階の固定子巻線10)を製造する。
【0142】
<本実施例の効果>
本実施例によれば、本実施例のプリプレグマイカテープ(35、36、37)を使用することにより、ワニスを真空加圧注入する製造設備や製造工程が不要となる。
【0143】
本実施例によれば、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44を、ワニス45(マイカ絶縁層22(プリプレグマイカテープ(35、36、37))から染み出す含浸ワニス及び追加ワニス)で埋めることができ、間隙44にフィラーを含有する熱硬化性樹脂層を形成することができる。これにより、マイカ絶縁層22と鉄心スロット13との間に形成される間隙44における放電の発生を抑制することができる。
【0144】
本実施例によれば、マイカ絶縁層22の表面に、及び、プリプレグマイカテープとプリプレグマイカテープとの間の隙間46に、フィラーを含有する熱硬化性樹脂層を形成することができる。これにより、プリプレグマイカテープとプリプレグマイカテープとの界面の耐部分放電特性を向上させることができる。
【0145】
マイカ絶縁層22にボイドが残存すると、課電時に、放電が発生する恐れがある。このため、一体注入方式や単独注入方式においては、マイカ絶縁層22にボイドが残存しないように、ドライマイカテープの微細な空隙に、ワニスを注入する。通常、ドライマイカテープの微細な空隙に、長い時間をかけて、ワニスを真空含浸(真空加圧注入)させる。本実施例では、ドライマイカテープの微細な空隙に、長い時間をかけて、ワニスを真空含浸(真空加圧注入)させる必要はない。
【0146】
また、プリプレグ方式と相違し、コイル単体12を加圧せずに、ワニスを硬化させ、コイル単体12を製造することができる。このため、製造時間を短縮することができる。
【0147】
また、一体注入方式と相違し、固定子巻線10をワニスに浸漬する必要がないため、不必要な部位に余分なワニスが付着することがない。これにより、ワニスの使用量を削減することができる。また、例えば、ワニスが固定子巻線10の内周に付着した場合には、固定子巻線10と回転子コイルとの間のギャップに影響し、ワニスが固定子巻線10の外周に付着した場合には、固定子巻線10の冷却効率に影響する場合がある。
【0148】
このように、本実施例によれば、今後の回転電機において、マイカ絶縁層22のボイドや隙間46、間隙44における放電の発生を抑制し、絶縁信頼性の高い回転電機を提供することができる。
【0149】
また、本実施例によれば、回転電機(固定子巻線10)の製造に関する製造設備や製造工程を簡略化することができ、製造時間を短縮することができる。
【0150】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
10…固定子巻線、11…固定子鉄心、12…コイル単体、13…鉄心スロット、21…導体、22…マイカ絶縁層、30…従来のプリプレグマイカテープ、31…マイカペーパ、32…接着剤、33…基材、34…ワニス、35…本実施例のプリプレグマイカテープ、36…本実施例のプリプレグマイカテープ、37…本実施例のプリプレグマイカテープ、41…ウェッジ、42…スロットライナ、43…スロット内絶縁材、44…間隙、45…間隙44を埋めるワニス、46…隙間
また、上記した課題を解決するため、本発明の回転電機は、鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有する回転電機であって、マイカ絶縁層は、基材とマイカペーパとが接着剤で接着され、ワニスの流動硬化プロセスの初期段階において加熱により粘度が低下し流動する半硬化状態の熱硬化性樹脂であるワニスが含浸ワニスとして含浸するマイカテープと、マイカテープの最表面に保持され、ワニスの流動硬化プロセスの初期段階において加熱により粘度が低下し流動する半硬化状態の熱硬化性樹脂である追加ワニスと、を有し、加熱時の前記追加ワニスの粘度を加熱時の前記含浸ワニスの粘度よりも低くするプリプレグマイカテープを有することを特徴とする。
また、上記した課題を解決するため、本発明の回転電機の製造方法は、鉄心スロットが形成される固定子鉄心と、導体にマイカ絶縁層を形成したコイル単体と、を有する固定子巻線を有する回転電機の製造方法であって、
・基材とマイカペーパとを、接着剤で接着したマイカテープに、熱硬化性樹脂であるワニスを含浸させ、ワニスをワニスの流動硬化プロセスの初期段階において加熱により粘度が低下し流動する半硬化状態の含浸ワニスにし、
・その後、マイカテープの最表面に、ワニスの流動硬化プロセスの初期段階において加熱により粘度が低下し流動する半硬化状態の熱硬化性樹脂である追加ワニスを保持させ、プリ加熱時の前記追加ワニスの粘度を加熱時の前記含浸ワニスの粘度よりも低くし、プレグマイカテープを作製し、
・プリプレグマイカテープを、導体に巻回し、マイカ絶縁層を形成し、コイル単体を製造し、
・コイル単体を、鉄心スロットに、コイル単体を保護するスロットライナ、コイル単体を絶縁するスロット内絶縁材と共に挿入し、
・コイル単体、スロットライナ、スロット内絶縁材を、鉄心スロットに固定し、中間段階の固定子巻線を製造することを特徴とする。