(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101038
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】スキンケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20240719BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240719BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q19/00
A61K8/73
A61K8/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087964
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2022543622の分割
【原出願日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】62/965,189
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 智洋
(72)【発明者】
【氏名】ビン ファング デイアー
(57)【要約】
【課題】ビリルビン分解を改善することが可能な組成物を皮膚に塗布することにより、血色不良の見た目の皮膚の外観を改善するパーソナルケア組成物を提供することが望ましい。また、ビリルビン分解効果に加え、スキンケア効果も得られるスキンケア組成物を提供することも望ましい。
【解決手段】皮膚の外観を改善するための方法及び組成物が提供される。本方法及び組成物は、皮膚におけるビリルビンの分解を向上させることによって、血色不良の見た目の皮膚を改善するのに特に適している。本明細書の方法及び組成物は、ビリルビンレベルを低減させる驚くべき能力を実証する、1つ以上のスクロースエステルを利用する。本方法は、有効量のスクロースエステルを含有するスキンケア組成物を、ビリルビンレベルの低減が所望される皮膚の標的部分に塗布することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚のビリルビンを分解する非治療的方法であって、
a)処置が望まれる皮膚の標的部分を特定すること、
b)皮膚の前記標的部分に化粧品スキンケア組成物を提供することであって、化粧品スキンケア組成物内の有効量のスクロースエステルが処置期間にわたってビリルビンを低下させる化粧品スキンケア組成物を適用することを含み、
前記化粧品スキンケア組成物が、
a)有効量のスクロースエステルと、
b)皮膚科学的に許容される担体と、を含み、
前記スクロースエステルがラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースの組み合わせであり、前記ラウリン酸スクロースが、前記スクロースエステルの55重量%~80重量%で存在し、前記ジラウリン酸スクロースが、前記スクロースエステルの20重量%~45重量%で存在し、前記ラウリン酸スクロースの前記ジラウリン酸スクロースに対する重量比が3:1~3:2であり、前記有効量のスクロースエステルがビリルビン分解アッセイに従ってビリルビンレベルを低下させる、方法。
【請求項2】
前記スクロースエステルが、前記組成物の0.001重量%~10重量%で存在する、請求項1に記載のスキンケア組成物。
【請求項3】
前記組成物が、ビタミン、ミネラル、ペプチド、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、フラボノイド化合物、抗酸化剤、防腐剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、潤滑剤、抗ニキビ活性物質、キレート剤、抗しわ活性物質、抗萎縮活性物質、フィトステロール、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、及び抗真菌剤、コンディショニング剤、乳化剤、レオロジー変性剤、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの追加の成分を更に含む、請求項1に記載のスキンケア組成物。
【請求項4】
前記追加の成分が、ポリアクリル酸ナトリウム超吸収性ポリマー、デンプングラフト化ポリアクリル酸ナトリウム超吸収性ポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される、レオロジー変性剤を含む、請求項3に記載のスキンケア組成物。
【請求項5】
少なくとも10%のシリコーン流体を更に含む、請求項1に記載のスキンケア組成物。
【請求項6】
前記スキンケア組成物が、水中油型エマルジョンである、請求項1に記載のスキンケア組成物。
【請求項7】
前記スキンケア組成物が、12:1~1:1の水:油の重量比を有する、請求項6に記載のスキンケア組成物。
【請求項8】
非イオン性乳化剤を更に含む、請求項6又は7に記載のスキンケア組成物。
【請求項9】
前記皮膚の標的部分が、ビリルビン蓄積の徴候を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量のスクロースエステルが、b*アッセイに従って、ビヒクル対照と比較して少なくとも10%b*値を減少させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有効量のスクロースエステルが、ビリルビン分解アッセイに従って、陽性対照と比較して少なくとも10%ビリルビンレベルを低下させる、請求項9または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理期間が少なくとも2週間続く、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記処理期間が4週間続く、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、皮膚色調状態を処理するためのスキンケア組成物に関する。より具体的には、本開示は、有効量のスクロースエステルを利用して、ビリルビン分解効果を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血色不良又は黄色の見た目の皮膚は、一般的に不健康又は高齢に伴うもので、様々な生理的及び環境的要因が影響している可能性がある。例えば、黄色又は血色不良の見た目の皮膚は、ビリルビンとして知られる黄色色素の蓄積によって引き起こされ得ることがよく知られている。例えば、ビリルビンは、あざ又は黄疸に関連する皮膚における黄色味を帯びた着色の原因である。ビリルビンは、古い細胞又は損傷した細胞が身体から除去されるときに、赤血球におけるヘムの異化分解の結果として生成される。典型的には、ビリルビンは肝臓によって処理され、次いで老廃物として身体から排泄される。したがって、ビリルビン蓄積と関連する黄色又は血色不良の見た目の皮膚の外観を改善する方法を提供することが望ましいであろう。
【0003】
皮膚内のビリルビンレベルを低減させる1つの既知の方法は、光線療法(別名光療法)による。ある特定の波長の光はビリルビンと反応し、ビリルビンを身体によってより容易に処理及び除去される形態に変換する。光線療法は、新生児の望ましくない高いビリルビンレベル(すなわち、高ビリルビン血症)を治療する一般的な形態のうちの1つである。しかしながら、光線療法は、自宅から離れた環境で(例えば、病院で)人工光源の下においてかなりの時間(例えば、12~72時間)を過ごすことを必要とする場合があり、これは、そのような状態を患う多くの人々にとって望ましくない場合がある。したがって、皮膚内のビリルビンを分解する、より便利な方法を提供して血色不良の見た目の皮膚の外観を改善することが望ましいであろう。
【0004】
ビリルビンの分解を改善することを主張する化粧品組成物は市販されているが、全てではないとはいえ多くのそのような製品は、目の周りのくまの外観の改善に使用することを意図している。例えば、LipotecからのEyedeline(商標)海洋成分ブランドの化粧品アイケア製品は、とりわけ、ビリルビン分解を向上させることにより、目の周りのくまの外観を改善すると言われている。Truthinaging.comでは、AQ Skin Solutionから入手可能な目元専用製品等の、N-ヒドロキシスクシンイミドを含む化粧品及び美容製品が、目の周りのくまの外観に寄与するビリルビン等の血液由来色素の排除を活性化すると開示している。別の例では、ゴクラクチョウカ(White Bird of Paradise flower)から得られる植物成分(Lonza(New Jersey)からVivillume(商標)として市販されている)は、ビリルビンを分解すると言われている。目の周りのくまを処理するためのAvani社(Spain)によって販売されている化粧品製品は、Vivillume(商標)を含むと宣伝されている。目の処理製品は、顔の眼窩周囲領域に存在する比較的小さな皮膚領域を処理するように配合されており、したがって、皮膚内のビリルビンの存在に関連する外観上の問題(例えば、血色不良の見た目の皮膚及び/又は不均一な皮膚色調)に対処するよう皮膚のより広い領域を処理するためには、好適でない場合がある。加えて、血色不良の見た目の皮膚を患う少なくとも一部の人々は、小じわ、しわ、色素沈着したしみ、及び/又はくすんだ皮膚などの他の美容的皮膚状態を処理するスキンケア製品も所望している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ビリルビン分解を改善することが可能な組成物を皮膚に塗布することにより、血色不良の見た目の皮膚の外観を改善するパーソナルケア組成物を提供することが望ましい。また、ビリルビン分解効果に加え、スキンケア効果も得られるスキンケア組成物を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
皮膚の外観を改善する方法及び/又は皮膚におけるビリルビンの分解方法が、本明細書に記載される。本方法は、ビリルビンの低減が望まれる人の皮膚の標的部分を特定することと、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、及び/又はトリラウリン酸スクロースから選択される有効量のスクロースエステルを含む組成物を処理期間中に皮膚の標的部分に塗布することと、を含み、有効量のスクロースエステルは、処理期間中にビリルビンレベルを低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】b
*値に対するスクロースエステルのインビトロでの効果を示す図である。
【
図2】ビリルビンレベルに対するスクロースエステルのインビトロでの効果を示す図である。
【
図3】皮膚の黄色度に対するスクロースエステル組成物のインビボでの効果を示す図である。
【
図4】ビリルビンレベルとb
*値との直接的な相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
皮膚内のビリルビンの存在及び/又は蓄積に関連する欠点は周知であるが、光線療法等の皮膚内のビリルビンレベルを低減させるための従来の治療は、全ての使用者にとって好適ではない場合がある。本発見以前は、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、トリラウリン酸スクロースなどの特定のスクロースエステルを使用してビリルビンを分解できることは知られていなかった。驚くべきことに、スクロースエステルを含むスキンケア組成物を使用して、血色不良の見た目の皮膚及び/又は不均一な皮膚色調の外観を改善できることが現在判明している。
【0009】
本明細書中での「実施形態」等への言及は、その実施形態と関連付けて説明される、特定の材料、特徴、構造、及び/又は特性が、少なくとも1つの実施形態、任意選択的に多数の実施形態に含まれていることを意味するが、全ての実施形態に、説明された材料、特徴、構造、及び/又は特性が組み入れられることを意味するものではない。更に、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、異なる実施形態にわたって、任意の好適な方法で組み合わされてもよく、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、説明されるものから除外されてもよいし、代用されてもよい。したがって、本明細書に記載されている実施形態及び態様は、別段明記しない限り又は不適合性が明示されてされない限り、組み合わせて明示的に例示されていなくても、他の実施態様及び/又は態様の要素又は構成成分を含むか又はこれらと組み合わされることが可能である。
【0010】
全ての実施形態において、別途記載のない限り、成分の百分率は全て化粧品組成物の重量を基準としている。特に記載のない限り、全ての比率は重量比である。有効桁数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。特に別途記載のない限り、全ての数量は、単語「約」によって修飾されるものと理解される。別途記載のない限り、全ての測定は、およそ25℃の周囲条件でなされたと理解され、「周囲条件」とは、約1気圧及び相対湿度約50%の条件を意味する。全ての数値範囲は包括的であり、明示的に開示されていない狭い範囲を形成するために組み合わせることが可能である。例えば、区切られた上下の範囲制限は、更なる範囲を作る上で互換性がある。
【0011】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須成分及び任意成分を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなることができる。本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」とは、組成物又は構成成分が、特許請求される組成物又は方法の基本的かつ新規な特性を実質的に変えない追加の成分のみを含み得ることを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0012】
定義
「約」とは、言及された値のプラスマイナス20パーセント(±20%)又はそれよりも低い値(例えば、15%、10%未満、若しくは更には5%未満)に等しい範囲を指すことで、特定の値を修飾する。
【0013】
「剤」とは、特定の効果又は機能を提供することを目的とした材料並びにその構成成分を指す。例えば、皮膚軟化剤は、皮膚に皮膚軟化効果を提供することを目的とした材料(例えば、脂肪アルコール)であり、増粘剤は、概して、組成物の粘度を増加させることを目的とした材料である。
【0014】
組成物に関連して使用される「塗布する」又は「塗布」は、本発明の組成物を表皮などのヒトの皮膚表面上に塗布又は拡げることを意味する。
【0015】
「ビリルビン」は、CAS番号635-65-4として同定され、化学式C33H36N4O6及び以下の構造を有する化合物を意味する。
【0016】
【0017】
「化粧品組成物」とは、本明細書に記載されるスクロースエステルなどの化粧剤を含む組成物を意味する。化粧品組成物の例としては、カラー化粧品(例えば、ファンデーション、リップスティック、コンシーラー、及びマスカラ)、スキンケア組成物(例えば、保湿剤及び日焼け止め剤)、パーソナルケア組成物(例えば、洗い流す及び洗い流さないボディソープ及び石鹸)、ヘアケア組成物(例えば、シャンプー及びコンディショナー)が挙げられる。
【0018】
本明細書において、「誘導体」とは、所定の化合物のアミド、エーテル、エステル、アミノ、カルボキシル、アセチル、及び/又はアルコールの誘導体を意味する。
【0019】
「有効量」は、処理期間の過程にわたってケラチン性組織に対して正の効果を有意に誘導するのに十分な化合物及び組成物の量を意味する。正の効果は、本明細書に開示される効果を独立して又は組み合わせて含む、健康、外観、及び/又は感触の効果であり得る。特定の実施例では、有効量のスクロースエステルは、ビリルビンレベルを低減させるのに十分な量である。
【0020】
「外観を改善する」とは、人の皮膚の外観における顕著な望ましい変化又は効果を提供することを意味し、例えば、b*値の減少によって、定量化することができる。外観の改善を判定するための例示的な方法は、以下でより詳細に説明する。
【0021】
「L*a*b*」は、国際照明委員会(International Commission on Illumination、CIE)によって規定された一般に認められている色空間を指す。3つの座標は、(i)色の明るさ(すなわち、L*=0で黒を生じ、L*=100は白の拡散を示す)、(ii)マゼンタと緑との間の色の位置(すなわち、負のa*値は緑を示し、正a*の値はマゼンタを示す)、及び(iii)黄と青との間の色の位置(すなわち、負のb*値は青を示し、正のb*値は黄を示す)、を表している。
【0022】
「安全かつ有効な量」とは、(健全な医学的判断の範囲内で)重篤な副作用を避けるのに十分低い、成分の有効量を意味する。
【0023】
本明細書における皮膚の外観に関する「血色不良」は、一般的に不健康な状態に関連する特定の個体に関して、異常な及び/又は望ましくない黄色又は蒼白な皮膚色調を意味する。血色不良の外観の皮膚は、客観的に(例えば、L*又はb*等の色彩値で)、又は主観的に(例えば、スキンケアの専門家によって又は消費者による自己診断を介して)診断することができる。
【0024】
「スキンケア」とは、皮膚状態の制御及び/又は改善を意味する。いくつかの非限定的な例としては、より滑らかで、より均一な外観及び/若しくは感触を提供することによって皮膚の外観及び/若しくは感触を改善することと、皮膚の1つ以上の層の厚さを増加させることと、皮膚の弾性又は弾力性を改善することと、皮膚のハリを改善することと、並びに皮膚の脂っぽい、てかてかした、及び/若しくはくすんだ外観を低減し、皮膚の水分量の状態若しくは保湿を改善し、小じわ及び/若しくはしわの外観を改善し、皮膚角質除去若しくは落屑を改善し、皮膚を膨化させ、皮膚バリア特性を改善し、皮膚の色合いを改善し、発赤若しくは皮膚のしみの外観を低減させ、及び/又は皮膚の明るさ、つや、若しくは透明感を改善することと、が挙げられる。
【0025】
「スキンケア活性物質」は、皮膚に塗布すると、皮膚又は皮膚の中に通常見られる細胞の一種に急性効果及び/又は慢性効果をもたらす、化合物又は化合物の組み合わせを意味する。スキンケア活性物質は、肌又はそれに関連する細胞を調節及び/又は改善する(例えば、肌の弾性、肌水分量、肌のバリア機能、及び/又は細胞代謝を改善する)ことができる。
【0026】
「スキンケア組成物」は、スキンケア活性物質を含み、皮膚の状態を調節及び/又は改善する組成物を意味する。
【0027】
「皮膚色調」は、基本的な皮膚色又は色の均一性の全体的な外観を意味する。皮膚色調は、典型的には、顔の皮膚の全体又は他の身体皮膚表面(例えば、腕、脚、背部、手、首、胸、及び腹部)までを含めた皮膚のより大きな領域にわたって特徴付けられ、これは一般に100mm2を超える。皮膚色調は、画像分析により測定することができる。皮膚色調の1つの尺度は、明るさであり、L*a*b*色空間内のL*座標により測定することができる(国際照明委員会)。メラニン及び/又はビリルビンマッピング等の発色団マッピングも、皮膚色調の指標として使用することができる。メラニン及び/又はビリルビンの平均値は、発色団マップデータから計算され得る。加えて、皮膚色調はメラニン及び/又はビリルビンの均一性(例えば、標準偏差)に相関し得、メラニン均一性も発色団マップデータから計算することができる。
【0028】
本明細書で使用される「処理期間」は、材料又は組成物が標的皮膚表面に塗布される時間の長さ及び/又は頻度を意味する。
【0029】
組成物
本明細書における組成物は、皮膚科学的に許容される担体中に配置された有効量のスクロースエステルを含有し、ヒトの皮膚への局所塗布を意図する。スクロースエステルの量は、インビトロにおいてビリルビン分解効果を実証するのに十分なものであるべきであり、かつ/又は好適な処理過程(例えば、2、4、又は8週間)後の血色不良の見た目の皮膚の外観を改善するのに十分なものであるべきである。本明細書の組成物はまた、他の皮膚状態を処理することもでき、1つ以上の追加の皮膚活性物質又は局所スキンケア組成物に一般的に含まれるタイプの他の成分を任意選択的に含んでもよい。本明細書のスキンケア組成物は、スキンケア組成物成分を組み合わせる従来の方法を使用して作製することができる。
【0030】
本明細書のスキンケア組成物は、化粧品組成物、医薬組成物、又は薬用化粧品組成物であってもよく、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、トナー、スティック、スプレー、エアロゾル、軟膏、クレンジングリキッド洗浄液及び固形バー、ペースト、フォーム、ムース、シェービングクリーム、拭き取り用品、ストリップ、パッチ、電動式パッチ、ヒドロゲル、フィルム形成製品、フェイシャル及びスキンマスク(不溶性シートを有するもの、及び有さないもの);ファンデーション、アイライナー及びアイシャドウ等のメークアップ等を含むがこれらに限定されない様々な製品形態で提供することができる。いくつかの場合には、組成物の形態は、選択された皮膚科学的に許容される特定の担体に従い得る。例えば、組成物(及び担体)は、エマルジョン(例えば、油中水型、水中油型、若しくは水中油中水型)又は水性分散液の形態で提供されてもよい。
【0031】
スクロースエステル
本明細書の組成物は、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、トリラウリン酸スクロース、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせから選択される有効量のスクロースエステルを含む。本明細書で使用される「ラウリン酸スクロース」は、式C24H44O12及びCAS#25339-99-5を有する化合物を意味する。「ジラウリン酸スクロース」は、式C36H66O13及びCAS#25915-57-5を有する化合物を意味し、「トリラウリン酸スクロース」は、式C48H88O14及びCAS#94031-23-9を有する化合物を意味する。スクロースエステルは、全組成物の0.0001重量%~15重量%(例えば、0.0002重量%~10重量%、0.001重量%~15重量%、0.025重量%~10重量%、0.05重量%~7重量%、0.05重量%~5重量%、又は更には0.1重量%~3重量%)で存在し得る。いくつかの場合には、スクロースエステルは、単一のスクロースエステル(例えば、100%ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、トリラウリン酸スクロース、又はこれらの誘導体)又は2若しくは3つのスクロースエステルのブレンドであり得、2つ以上のスクロースエステルは、任意の1つのスクロースエステルと別のスクロースエステルとの比率が1:10~1:1(例えば、1:7、1:5、1:3、又は1:2)で存在する。いくつかの場合には、スクロースエステルは、ラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースのブレンドであり得、ラウリン酸スクロースは、スクロースエステルの50重量%~80重量%で存在し、ジラウリン酸スクロースは、スクロースエステルの20重量%~45重量%で存在する。あるいは、スクロースエステルは、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、及びトリラウリン酸スクロースのブレンドであり得、ジラウリン酸スクロースは、スクロースエステルの35重量%以上で存在する。本明細書で使用するためのスクロースエステルの好適な例は、BASFからのBC10034であり、これはラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースとのブレンドである。BC10034スクロースエステル材料は、ラウリン酸スクロースとジラウリン酸スクロースとの比が3:1~3:2の範囲であり得る。
【0032】
皮膚科学的に許容される担体
本明細書のビリルビン分解組成物は、皮膚科学的に許容される担体(「担体」と称され得る)を含む。「皮膚科学的に許容される担体」なる語句は、担体がケラチン性組織への局所塗布に適当であり、良好な審美特性を有し、組成物中の活性物質と相溶性を有し、安全性又は毒性について不当な懸念をいっさい生じさせないことを意味する。一実施形態において、担体は、約50重量%~約99重量%、約60重量%~約98重量%、約70重量%~約98重量%、又はあるいは約80重量%~約95重量%のレベルで存在する。
【0033】
担体は、多種多様な形態であってよい。いくつかの場合には、構成成分(例えば、抽出物、日焼け止め活性物質、追加の成分)の溶解性又は分散性によって担体の形態及び特徴が決定され得る。非限定的な例としては、単純な溶液(例えば、水性又は無水)、分散液、エマルジョン、及び固体形態(例えば、ゲル、スティック、流動性固体、又は非晶質材料)が挙げられる。いくつかの場合には、皮膚科学的に許容される担体は、エマルジョンの形態である。エマルジョンは、連続水相(例えば、水中油型若しくは水中油中水型エマルジョン)又は連続油相(例えば、油中水型若しくは油中水中油型エマルジョン)を有し得る。本発明の油相には、シリコーンオイル、炭化水素油、エステル、エーテル等の非シリコーン油、及びこれらの混合物が含まれ得る。水相は、典型的には、水及び水溶性成分(例えば、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他のスキンケア活性物質)を含む。しかしながら、いくつかの場合には、水相は、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他の水溶性スキンケア活性物質が挙げられるが、これらに限定されない水以外の構成成分を含んでもよい。いくつかの場合には、組成物の非水構成成分は、グリセリン及び/又は他のポリオール等の湿潤剤を含む。
【0034】
いくつかの場合には、本明細書における組成物は、軽くてべたつかない感覚的感触を提供する水中油型(「O/W」)エマルジョンの形態である。本明細書における好適なO/Wエマルジョンは、組成物の50重量%超の連続水相を含み得、残部は分散油相であり得る。水相は、任意の水溶性及び/又は水混和性成分と共に水相の重量に基づいて、1%~99%の水を含み得る。これらの場合では、分散油相は、油性組成物の望ましくない感触効果を幾分か回避するのを助けるために、典型的には、組成物の30重量%未満(例えば、1%~20%、2%~15%、3%~12%、4%~10%、又は更には5%~8%)で存在する。油相は、1つ以上の揮発性及び/又は非揮発性油(例えば、植物油、シリコーン油、及び/又は炭化水素油)を含み得る。本組成物に使用するのに好適であり得る油のいくつかの非限定的な油の例は、米国特許第9,446,265号及び米国特許出願公開第2015/0196464号に開示されている。
【0035】
担体は、1つ以上の皮膚科学的に許容される親水性希釈剤を含有してよい。本明細書で使用するとき、「希釈剤」としては、スクロースエステルを分散、溶解、又は別の方法で組み込むことができる材料が挙げられる。親水性希釈剤としては、水、低級一価アルコール(例えば、C1~C4)、並びに低分子量グリコール及びポリオール等の有機親水性希釈剤が挙げられ、これらには、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量200~600g/モル)、ポリプロピレングリコール(例えば、分子量425~2025g/モル)、グリセロール、ブチレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ソルビトールエステル、ブタンジオール、エーテルプロパノール、エトキシル化エーテル、プロポキシル化エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
他の任意選択の成分
本明細書の組成物は、任意選択の成分が組成物の所望される効果を許容できないように変更しない限り、局所スキンケア組成物における使用が既知である1つ以上の任意選択の成分を含んでもよい。追加の成分は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー応答などを伴わずに、ヒトの皮膚組織と接触させて使用するのに好適でなければならない。存在する場合、任意選択の成分は、組成物の約0.001重量%~50重量%(例えば、0.01重量%~40重量%、0.1重量%~30重量%、0.5重量%~20重量%、又は1重量%~10重量%)の量で含まれてもよい。追加の成分のいくつかの非限定的な例としては、ビタミン、ミネラル、ペプチド及びペプチド誘導体、糖アミン、サンスクリーン、オイルコントロール剤、微粒子、フラボノイド化合物、育毛調整剤、抗酸化剤及び/又は抗酸化前駆体、防腐剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、日焼け止め剤、サンレスタンニング剤、潤滑剤、抗ニキビ剤、抗セルライト剤、キレート剤、抗しわ活性物質、抗萎縮活性物質、フィトステロール及び/又は植物ホルモン、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、並びに抗真菌剤が挙げられる。本明細書での使用に好適であり得る追加の成分及び/又はスキンケア活性物質の他の非限定的な例が、米国特許出願公開第2002/0022040号、同第2003/0049212号、同第2004/0175347号、同第2006/0275237号、同第2007/0196344号、同第2008/0181956号、同第2008/0206373号、同第2010/00092408号、同第2008/0206373号、同第2010/0239510号、同第2010/0189669号、同第2010/0272667号、同第2011/0262025号、同第2011/0097286号、同第2012/0197016号、同第2012/0128683号、同第2012/0148515号、同第2012/0156146号、及び同第2013/0022557号、並びに米国特許第5,939,082号、同第5,872,112号、同第6,492,326号、同第6,696,049号、同第6,524,598号、同第5,972,359号、及び同第6,174,533号に記載されている。
【0037】
コンディショニング剤
本明細書の組成物は、0.1重量%~50重量%のコンディショニング剤(例えば、0.5%~30%、1%~20%、又は更には2%~15%)を含んでもよい。コンディショニング剤を添加することは、望ましい感触特性(例えば、塗布時の絹のような滑らかな感触)を有する組成物を提供するのに役立ち得る。コンディショニング剤のいくつかの非限定的な例としては、炭化水素油及びワックス、シリコーン、脂肪酸誘導体、コレステロール、コレステロール誘導体、ジグリセリド、トリグリセリド、植物油、植物油誘導体、アセトグリセリドエステル、アルキルエステル、アルケニルエステル、ラノリン、ワックスエステル、蜜蝋誘導体、ステロール及びリン脂質、これらの塩、異性体、及び誘導体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。コンディショニング剤の特に好適な例としては、ジメチコンコポリオール、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、混合C1~30アルキルポリシロキサン、フェニルジメチコン、ジメチコノール、ジメチコン、ジメチコノール、シリコーンクロスポリマー、及びこれらの組み合わせなどの揮発性又は非揮発性シリコーン流体が挙げられる。ジメチコンは特に好適であり得るが、これは、一部の消費者は、特定のジメチコン流体によって提供される感触特性を良好な保湿と関連付けるためである。コンディショニング剤として使用するのに好適であり得るシリコーン流体の他の例は、米国特許第5,011,681号に記載されている。
【0038】
レオロジー変性剤
本明細書の組成物は、好適なレオロジー及び皮膚感触特性を有する組成物を提供するために、0.1%~5%のレオロジー変性剤(例えば、増粘剤)を含んでもよい。増粘剤のいくつかの非限定的な例としては、架橋ポリアクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、多糖類、ガム、及びこれらの混合物が挙げられる。特に好適な例では、組成物は、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプングラフト化ポリアクリル酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせなどの超吸収性ポリマー増粘剤を含んでもよい。超吸収性ポリマー増粘剤のいくつかの非限定的な例は、例えば、米国特許第9,795,552号に記載されている。
【0039】
一部の消費者は、コンディショニング剤としてシリコーン流体を使用した組成物が、望ましくない脂っぽい又は重い感触であることを見出す。したがって、シリコーン流体を含まないか又は実質的に含まない組成物を提供することが望ましい場合がある。また、例えば、組成物中の水の量、水対油の比(例えば、12:1と1:1の間)、及び/又は水と増粘剤との比又は油と増粘剤との比を調整することによって、組成物に軽くて空気感のある感触を与えるために超吸収性ポリマー増粘剤を調整することが望ましい場合がある。
【0040】
乳化剤
組成物がエマルジョンの形態である場合、乳化剤を含有してもよい。乳化剤は、非イオン性であってもよく、アニオン性であってもよく、又はカチオン性であってもよい。好適な乳化剤は、例えば、米国特許第3,755,560号、同第4,421,769号、米国特許出願公開第2006/0275237号、及びMcCutcheon’s Detergents and Emulsifiers,North American Edition,pages317-324(1986)に開示されている。好適なエマルジョンは、所望の製品形態に応じて広い範囲の粘度を有することができる。
【0041】
本明細書における組成物中に任意選択の成分を含む場合、組成物中の他の成分、特に、ナイアシンアミド、サリチレート、及びペプチド(例えば、パルミトイル-リジン-スレオニン(pal-KT)又はパルミトイル-リジン-スレオニン-スレオニン-リジン-セリン(pal-KTTKS)などのpH感受性成分と複合体を形成しないか、そうでなくても、望ましくない相互作用をしない成分を選択することが望ましい場合がある。特に、追加の成分は、スクロースエステルがビリルビンを分解する能力に望ましくない影響を与えるべきではない。いくつかの場合には、両方の薬剤の有効性を低減させ得る活性物質が互いに干渉しないように、異なる生物学的経路によって機能するスキンケア活性物質を選択することが望ましい場合がある。
【0042】
使用方法
本方法は、処理を必要とする人の皮膚の標的部分を特定することと、処理期間中に、有効量の本明細書に記載のスクロースエステルのうちの1つ以上、及び任意選択的に1つ以上の追加のスキンケア剤を含む、組成物を、皮膚の標的部分に塗布することと、を含む。皮膚の標的部分は、額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻、及び/若しくは頬)等の顔の皮膚表面上、又は身体の別の部分(例えば、手、腕、脚部、背部、胸)にあってもよい。処理を必要とする人は、皮膚に望ましくないレベルのビリルビンを呈する人、及び/又は別の望ましくない美容的皮膚状態を呈する人であり得る。ビリルビンレベルは、当該技術分野において既知の任意の好適な方法に従って決定することができる。例えば、ビリルビンレベルは、血液サンプル分析によって決定することができる。別の実施例では、望ましくない高ビリルビンレベルに対応する所定の閾値レベルを超えるb*値を皮膚の標的部分が有する場合、望ましくないビリルビンレベルが示され得る。b*値は、以下に詳述される色彩撮像方法に従って決定することができる。いくつかの場合には、人は、皮膚が黄色若しくは血色不良の外観を呈する場合、及び/又は人が不均一な皮膚色調を有する場合、処理を必要とする人として特定され得る。別の実施例では、専門家(例えば、皮膚科医又は化粧品専門家)によって皮膚の標的部分に望ましくないレベルの黄色度が存在すると決定される場合、処理を必要とする人と特定され得る。処理を必要とする人はまた、あざが存在する場合に、皮膚の標的部分を特定することができる。いくつかの場合には、皮膚の標的部分は、ビリルビンの蓄積を患っているように見えない場合があるが、使用者(例えば、黄疸又はあざを患っている人又はその傾向がある人)は依然として、予防措置として皮膚の標的部分を処理することを望む場合がある(例えば、人が、黄疸等のビリルビン蓄積を引き起こす状態を生じる傾向がある場合)。
【0043】
組成物は、処理期間中、皮膚の標的部分に、かつ所望される場合には周囲の皮膚に、少なくとも1日1回、1日2回、又はそれ以上の頻度で毎日塗布することができる。1日2回塗布する場合、1回目と2回目の塗布の間は、少なくとも1~12時間の間隔を空ける。組成物は典型的に、朝及び/又は夜就寝前に塗布される。本明細書の方法に従って使用される場合、本組成物は、例えば、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、又はそれ以上)のb*の低減によって実証されるように、ビリルビンレベルを低減させることによって皮膚の外観を改善する。いくつかの場合には、ビリルビンレベルの低減は、従来のインビボ方法(例えば、血液分析)に従ってビリルビンレベルを測定し、測定されたレベルを所定の閾値又は処理期間の開始前に測定されたビリルビンのベースラインレベルと比較することによって決定することができる。
【0044】
処理期間は、理想的には、組成物中に存在するスクロースエステルが、皮膚の標的部分のビリルビンレベルを低減させるのに十分な時間の期間である。いくつかの場合には、スクロースエステルによって提供されるビリルビン低減効果は、所定のb*値(すなわち、b*ベースライン値又は閾値)と比較したb*値の低減によって実証することができる。加えて又はあるいは、ビリルビン低減効果は、測定したb*値及び/又はビリルビンレベルを、対照値(例えば、ビヒクル対照)又は他の基準値と比較することによって実証することができる。処理期間は、少なくとも1週間(例えば、約2週間、4週間、8週間、又は更には12週間)にわたって持続し得る。いくつかの場合には、処理期間は、数ヶ月(すなわち3~12ヶ月)に及ぶであろう。いくつかの場合には、少なくとも2週間、4週間、8週間、又は12週間の処理期間中に、週の大半の日数(例えば、少なくとも週に4日、5日又は6日)にわたって、少なくとも1日に1回、又は更には1日に2回組成物を塗布し得る。
【0045】
組成物を塗布する工程は、局所的塗布により行うことができる。組成物の塗布に関する用語「局所的な」、「局所」、又は「局所的に」とは、処理を望まない皮膚表面への送達を最小限に抑えながら、組成物を標的領域(例えば、色素沈着したしみ又はその一部)に送達することを意味する。本組成物は、ある皮膚領域に塗布し、軽く揉み込むことができる。組成物又は皮膚科学的に許容される担体の形態は、局所的塗布が容易となるように選択されるべきである。本明細書における特定の実施形態は、組成物をある領域に局所的に塗布することを想到しているが、本明細書における組成物は、1つ以上の皮膚表面に更に全身的に又は広範に塗布され得ることが理解されよう。特定の実施形態において、本明細書における組成物は、多段階式美容法の一部として使用してもよく、この多段階式美容法では、本組成物を1つ以上の他の組成物の前及び/又は後に塗布してよい。
【0046】
方法
ビリルビン分解アッセイ
このアッセイは、材料又は組成物がビリルビン分解にどのように影響するかを決定するインビトロ方法を提供する。各試験サンプルの3つの複製物を、96ウェルプレート(例えば、FALCONブランド96ウェル組織培養プレート又は同等物)において、合計体積250μL/ウェルで調製する。250ug/mLの間接ビリルビンの原液(すなわち、血清中に最も一般的に見られるビリルビンの非共役形態)は、DMSO(Sigma、カタログ番号D8414-100mL)中にビリルビン粉末(Cayman Chemicals Company、カタログ番号17161)を溶解させて、10倍の作用濃度で原液溶液を得ることによって作製される。ビリルビンの作用濃度は、陰性/ビヒクル対照ウェル以外の全てのウェルで25ug/mLに設定する。各試験ウェルには、25ulの250ug/mlビリルビンストック溶液、200ulのPBS、DMSOで作成した25ulの10倍処理溶液ストックが含まれている。0.01%(w/v)のスクロースエステル処置では、DMSOで0.1%(w/v)の10倍濃縮ストックを作製する。当然、DMSOの量は活性物質の溶解度によって調整することができ(例えば、本明細書のスクロースエステルなどの水不溶性活性物質に対しては80%以上のDMSO)、試験用の安定な溶液を提供できることを理解されたい。陰性/ビヒクル対照のウェルでは、DMSOをPBSと混合し、試験ウェルと同じ最終DMSO濃度(例えば、80%(v/v)以上)とする。陽性対照のウェルには、DMSOで作成した25ulの250ug/mlビリルビンストック、200ulのPBS(AccuGENE,カタログ番号51225)、及び試験ウェルと同じ最終DMSO濃度となるように十分なDMSOを追加した。
【0047】
試験サンプルを収容するプレートをアルミニウム箔で覆い、マイクロプレート振とう器(VWR、カタログ番号12620-938)上に置く。インキュベーションは、150rpmで一定に振とうしながら室温で20時間行った。20時間のインキュベーション後にビリルビン濃度を定量化して、陽性ビリルビン対照と比較した活性治療剤の結果として、ビリルビン分解の効果を判定した。市販のビリルビン定量化キット(Cell Biolab、カタログ番号MET-5010)をビリルビン定量化に使用した。アッセイは、ジアゾ化スルファニル酸がビリルビンと反応してアゾビリルビンを形成する、Jendrassik-Grof方法に基づくものであり、アゾビリルビンは、540nmのODで検出することができる。標準的なビリルビン曲線は、処理及び定量化に使用される同じビリルビンを使用して生成する。以下の表1は、標準曲線設定を記載する。
【0048】
【0049】
全ての試験脚部のビリルビン濃度は、標準的なビリルビン曲線に対する線形回帰を使用して計算する。投与の結果得られたビリルビン濃度は、ビリルビン陽性対照脚と比較される。ビリルビン分解活性は、対応のあるスチューデントのt検定(P<0.05)を用いて、投与脚対ビリルビン陽性対照脚のビリルビン定量の数値低下によって確認できる。
【実施例0050】
実施例1:配合物
以下の表2は、スクロースエステルを含む局所スキンケア組成物の例を提供する。この例示的な組成物は、A相成分を好適なミキサー(例えば、Tekmar RW20DZM又は同等物)でブレンドし、70~80℃の温度に加熱し、攪拌しながらその温度を維持することによって製造される。別個に、B相成分を好適なミキサーでブレンドし、70~75℃に加熱しながら、混合している間温度を維持する。相Bを相Aに添加し、同時に十分に混合して水中油型(O/W)エマルジョンを形成する。次いで、エマルジョンを、好適なミル(例えば、Tekmar T-25又は同等物)を使用して5分間粉砕する。エマルジョンが60℃であるとき、混合を継続しながら相Cを添加する。40℃において、相D及びEの成分をエマルジョンに添加する。次いで、エマルジョンを5分間粉砕して、均一な組成物を得る。
【0051】
【0052】
【表2-2】
1.Dow Chemical社から入手可能なDOWSIL。
2.Nouryonから入手可能なDRYFLO TS。
3.信越化学工業から入手可能KSP-100。
4.Kobo Productsから入手可能なMAKIMOUSSE-25。
5.Seppicから入手可能なSIMULGEL INS。
6.BASFのBC10034。
7.Symriseから入手可能なSYMDIOL 68。
8.Dow Corningから入手可能なXIAMETER PMX-1503。
【0053】
実施例2:スクロースエステルは、ビリルビン分解効果を提供する。
この実施例は、不溶性ビリルビンに起因する黄色度を用量依存的に低減させる、スクロースエステルの能力を実証する。試験組成物及び対照組成物を、上記のビリルビン分解アッセイに記載されているように調製した。2つの試験組成物には、それぞれ0.01%及び0.05%のスクロースエステル(BASFのBC10034)が含まれる。試験組成物を収容するプレートをアルミニウム箔で覆い、マイクロプレート振とう器(VWR、カタログ番号12620-938)上に置く。インキュベーションは、150rpmで一定に振とうしながら、室温で20時間行った。黄色度(b
*)は、適した分光光度計を用いて、350nmから750nmまで10nm刻みでサンプルの吸光度を測定し、以下のように求めた(b
*アッセイ)。T=0(すなわちプレートセットアップ直後)、及び20時間のインキュベーション後に吸光度を3回測定した。次いで、黄色度測定からの吸光度スペクトルを、変換ソフトウェアを使用してコンピュータによってL
*a
*b
*値に変換する。分析結果の概要を表3及び
図1に示す。表3及び
図1から分かるように、スクロースエステルは、陽性対照と比較して統計的に有意な量だけ黄色度(b
*)を減少させた。本明細書のスキンケア組成物は、ビヒクル対照と比較して少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、又はそれ以上)b
*値を低減する有効量のスクロースエステルを含み得る。
【0054】
【0055】
また、20時間のインキュベーション後の試験サンプルを分析し、スクロースエステル投与により分解されたビリルビンの量を測定した。ビリルビン量は、ビリルビン分解アッセイに従って定量した。この分析結果を
図2に示す。
図2は、スクロースエステルが陽性対照と比較してビリルビンレベルを低下させたことを示している。いくつかの場合には、陽性対照と比較して少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、又はそれ以上)ビリルビンレベルを低減する量のスクロースエステルを含むようにスキンケア組成物を配合することが望ましい場合がある。
【0056】
0.01%(w/v)のスクロースエステル試験脚は、0.05%(w/v)のスクロースエステル試験脚よりも優れたビリルビン低減を示したが、これは予想外のことであったことが分かる。通常、スクロースエステルの濃度が高いほど、低い濃度よりも優れたビリルビン分解をもたらす用量反応を期待することができる。しかし、理論によって限定されるものではないが、この実施例で観察された非典型的な用量反応は、スクロースエステルが20%DMSO溶液に不溶であることに起因すると考えられる。実際、スクロースエステルの濃度が高いと、スクロースエステルが溶液から「クラッシュアウト」してしまい、それによって試験組成物の有効性が低下するようである。試験組成物中のDMSOの量を増加させる(例えば、80%(v/v)以上にする)と、予想される用量反応曲線が得られるはずである。
【0057】
実施例3:臨床試験
この実施例は、処理期間の過程にわたって改善されたビリルビン分解を提供する、1%のスクロースエステル組成物の能力を実証する。1%のスクロースエステルを含む試験組成物について、女性被験者336名(25~55歳)を対象とした8週間の試験を実施した。試験は、ハーフサイド、無作為化、ビヒクル対照、ラウンドロビン方式で、1試験脚あたり96回の観察が行われた。試験中、被験者の一部は顔の片側に1%のスクロースエステル試験組成物を塗布し、もう片側にはビヒクル対照を塗布した。試験組成物を下記表4に示す。試験組成物及びビヒクル対照を、水中油型乳化型スキンケア組成物の通常の作製方法を用いて処方した。
【0058】
【0059】
画像分析システムREAL(Rapid Evaluation of Anti-aging Leads)を用いて、隔週で各被験者の顔のデジタル画像をキャプチャ及び分析し、b
*値を決定した。REAL画像分析システムは、Miyamotoら,「Development of Digital Imaging System for Objective Measurement of Hyperpigmented Spots on Face」Skin Res Technol 2002;8:227-35に記載されている。臨床試験の結果の概要を、以下の表5及び
図3に示す。0.1以下のp値が統計的に有意であると考えられる。表5及び
図3から分かるように、試験組成物は、6週間使用した後、ビヒクル対照と比較して、皮膚の黄色度の増加を有意に抑制する。
【0060】
【0061】
試験組成物ではそれほどでもないが、試験の過程にわたってb*値が増加しているようであることに留意されたい。理論によって限定されるものではないが、b*値の増加は、夏に試験が行われたためであると考えられている。夏に多い日光強度及び日光曝露の増加は、皮膚でのメラニン生成を増加させる傾向があり、メラニンレベルが高いほどb*値が高くなることはよく知られている。このように、被験者の夏場の日光曝露に伴うメラニンレベルの増加により、8週間の試験の過程にわたって、b*値がより高く増加したと考えられる。しかし、試験組成物を使用した被験者は、ビヒクル対照と比較してb*の増加が少なく、試験組成物の有効性が実証された。
【0062】
実施例4:ビリルビン濃度を黄色度に相関させる。
理論に束縛されるものではないが、皮膚内のビリルビン濃度は、黄色又は血色不良の皮膚の外観と直接相関を有すると考えられる。ビリルビン濃度と黄色度との間の相関性を決定するために、ビリルビン標準曲線を生成する。ビリルビン粉末(Cayman Chemicals Company、カタログ番号17161)をDMSO(Sigma、カタログ番号D8414-100mL)中に溶解させて、500ug/mLビリルビン原液を作製する。このビリルビン原液を、上の表1に示されるようにPBS中に希釈して、50、25、12.5、5、2.5、及び0ug/mLのビリルビンレベルを得る。黄色度(b*)を測定するために、サンプルを96ウェルプレートに三連に充填し、各サンプルの吸光度を、好適な分光光度計を使用して、350nm~750nmにおいて10nm刻みで測定する。次いで、黄色度測定からの吸光度スペクトルを、好適な変換ソフトウェアを使用してコンピュータによってL*a*b*値に変換する。
【0063】
表6及び
図4に示されるように、b
*スコアは、0ug/mL~50ug/mLのビリルビンの範囲のビリルビン濃度との線形相関を示す。ヒトの生物学的ビリルビン濃度は、この濃度範囲内に収まる。したがって、データは、皮膚におけるビリルビン濃度が、血色不良の外観と直接相関していることを示す。
【0064】
【0065】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0066】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0067】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。