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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101075
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】導体劣化検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/9013 20210101AFI20240722BHJP
【FI】
G01N27/9013
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004763
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】滋野 弘崇
(72)【発明者】
【氏名】中野 武
(72)【発明者】
【氏名】田澤 和俊
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB21
2G053BA02
2G053BA14
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053DB16
2G053DB20
2G053DB25
(57)【要約】
【課題】導体の劣化の検出精度を向上することができる導体劣化検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】導体劣化検出装置1は、軸線方向Xに沿って延在する電線Wの導体W1の劣化を検出するセンサ11が収容されたセンサユニット10と、電線Wが軸線方向Xに沿って貫通すると共に、内部にセンサユニット10が設けられる筐体20と、筐体20を電線Wに対して軸線方向Xに沿って相対移動させる駆動機構30と、センサユニット10を電線W側に押し付ける弾性部材40と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在する電線の導体の劣化を検出するセンサが収容されたセンサユニットと、
前記電線が前記軸線方向に沿って貫通すると共に、内部に前記センサユニットが設けられる筐体と、
前記筐体を前記電線に対して前記軸線方向に沿って相対移動させる駆動機構と、
前記センサユニットを前記電線側に押し付ける弾性部材と、
を備えた、導体劣化検出装置。
【請求項2】
前記センサユニットは、前記筐体に前記軸線方向と交差する方向に沿って移動可能に支持され、
前記弾性部材は、前記軸線方向と交差する方向に沿って前記センサユニットを前記電線側に押し付ける、
請求項1に記載の導体劣化検出装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記センサユニットの前記軸線方向の両側に設けられ前記電線上を走行する一対のローラと、前記一対のローラを駆動するモータと、を有し、
前記センサユニットは、前記筐体に前記軸線方向と交差する上下方向に沿って移動可能に支持され、
前記センサユニットの下端部は、前記弾性部材の自由状態において、前記一対のローラの下端部同士を結ぶ前記軸線方向と平行な仮想直線よりも下方に位置される、
請求項1または2に記載の導体劣化検出装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、当該弾性部材の弾性力によって前記センサユニットを前記電線側に押し付けるダンパねじによって構成される、
請求項1または2に記載の導体劣化検出装置。
【請求項5】
前記センサは、前記導体に渦電流を発生させ、当該導体で発生した渦電流に応じた磁界を検出するコイルセンサによって構成される、
請求項1または2に記載の導体劣化検出装置。
【請求項6】
前記筐体の前記軸線方向の両端部に設けられ前記電線を挟持する一対のクランプ部と、前記一対のクランプ部に取り付けられ前記電線と当接する回転体と、を有したクランプ部材を備えた、
請求項1または2に記載の導体劣化検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体劣化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の導体劣化検出装置に関する技術として、例えば、特許文献1には、電線の導体の劣化を検出するセンサが収容されたセンサユニットと、内部にセンサユニットが設けられる筐体と、筐体を電線に対して軸線方向に沿って相対移動させる駆動機構と、を備えた導体劣化検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-71350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載の導体劣化検出装置では、例えば、電線側に撓み等が生じていると劣化状況の検出精度が低下することがあり、この点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、導体の劣化の検出精度を向上することができる導体劣化検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る導体劣化検出装置は、軸線方向に沿って延在する電線の導体の劣化を検出するセンサが収容されたセンサユニットと、前記電線が前記軸線方向に沿って貫通すると共に、内部に前記センサユニットが設けられる筐体と、前記筐体を前記電線に対して前記軸線方向に沿って相対移動させる駆動機構と、前記センサユニットを前記電線側に押し付ける弾性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る導体劣化検出装置には、センサユニットを電線側に押し付ける弾性部材が設けられている。この構成により、導体劣化検出装置は、例えば、筐体の電線に対する軸線方向への相対移動時において、電線側に撓み等が生じていても弾性部材の弾性力によってセンサユニットを電線に密着させて当該センサユニット側のセンサと電線との間の距離(位置)を一定に保つことができる。この結果、導体劣化検出装置は、導体の劣化の検出精度を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る導体劣化検出装置の例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る導体劣化検出装置の例示的な断面図である。
図3図3は、実施形態に係る導体劣化検出装置のセンサユニットおよび駆動機構付近の例示的な斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る導体劣化検出装置のセンサユニットおよび駆動機構付近の例示的な側面図である。
図5図5は、実施形態に係る導体劣化検出装置の例示的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る導体劣化検出装置1の斜視図であり、図2は、導体劣化検出装置1の断面図である。なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、および第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「上下方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと上下方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、導体劣化検出装置1による検査対象である電線Wが延在する方向、導体劣化検出装置1の前後方向(長手方向)に相当する。幅方向Yは、典型的には、導体劣化検出装置1の左右方向(横幅方向)に相当する。上下方向Zは、典型的には、導体劣化検出装置1の高さ方向(縦幅方向)、検査対象である電線Wに導体劣化検出装置1を設置した状態で、電線Wが自重等によって撓む方向、言い換えれば、鉛直方向に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、電線Wが導体劣化検出装置1に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0011】
図1、2に示される本実施形態の導体劣化検出装置1は、いわゆる渦電流探傷法(ECT:EddyCurrent Testing)を用いて電線Wの導体W1の劣化を検出する検査装置である。電線Wは、導体劣化検出装置1によって導体W1の劣化が検査される検査対象(検体)である。電線Wは、導体W1と、絶縁被覆W2と、を含んで構成される。導体W1は、導電性を有する複数の金属素線を束ねたり撚り合せたりして構成される芯線である。絶縁被覆W2は、絶縁性を有する樹脂材料からなり、導体W1の外周面を覆い絶縁するものである。電線Wは、軸線方向Xと直交する断面形状が略円形状に形成され、導体W1、絶縁被覆W2が軸線方向Xに沿ってほぼ同じ径で線状に延びるように形成される。導体劣化検出装置1は、後述するセンサユニット10が発生させる磁界(磁束)によって電線Wの導体W1に渦電流を発生させ、当該渦電流に応じた磁界(磁束)を検出することで、導体W1の劣化を検出する。以下、各図を参照して導体劣化検出装置1の各構成について詳細に説明する。
【0012】
なお、導体劣化検出装置1によって検査する導体W1の劣化とは、典型的には、導体W1の腐食や導体W1の割れ等であり、例えば、経年変化等によって発生する。また、以下の説明では、導体劣化検出装置1によって検査する電線Wは、例えば、電柱等を介して空中に架けられた架空配電線であるものとして説明するがこれに限らない。また、以下の説明では、導体劣化検出装置1は、渦電流探傷法を用いて電線Wの導体W1の劣化を検出するものとして説明するがこれに限らない。
【0013】
図1、2に示されるように、導体劣化検出装置1は、例えば、センサユニット10と、筐体20と、駆動機構30と、弾性部材40と、クランプ部材50と、を備えている。センサユニット10や、駆動機構30、弾性部材40、クランプ部材50は、筐体20の内部に収容されている。導体劣化検出装置1は、例えば、当該導体劣化検出装置1を制御するコントローラとの間で、筐体20に設けられた入出力端子や無線通信モジュール等を介して有線、無線を問わず、各種駆動信号や検出信号等を授受(送受信)することが可能である。
【0014】
センサユニット10は、センサ11と、センサ11を収容するケース12と、を有している。センサ11は、例えば、上述した渦電流探傷法を用いたコイルセンサであり、それぞれ巻線が螺旋状や渦巻き状に巻回されることで構成される一対の励磁コイルおよび検出コイルを含んでいる。励磁コイルは、交流電流が印加されることによって磁界(磁束)を発生させるコイルであり、発生させた磁界によって導体W1に渦電流を発生させる。検出コイルは、磁界(磁束)を検出するコイルであり、導体W1で発生した渦電流に応じた磁界の磁束変化により誘導電流が流れる。励磁コイルによる磁界発生、および検出コイルによる磁界検出は、電子回路等によって制御される。
【0015】
電子回路は、例えば、発振回路や検出回路等を含んで構成される。発振回路は、励磁コイルを励磁させ、磁界を発生させる励磁回路である。発振回路は、励磁を励磁させる交流電流を生成し、当該交流電流を励磁コイルに印加する。発振回路は、励磁コイルに電気的に接続され、当該励磁コイルに交流電流を印加する。発振回路は、励磁コイルに電気的に接続され、当該励磁コイルに交流電流を印加する。検出回路は、検出コイルに流れる誘導電流を検出信号として検出する回路である。検出回路によって検出される検出信号(誘導電流)は、例えば、導体W1で発生した渦電流に応じた磁界の磁束変化等に応じて変化し、すなわち、導体W1で発生した渦電流等に応じた信号となる。検出回路は、検出コイルに電気的に接続され、検出コイルに流れる誘導電流を検出信号として検出する。検出回路は、検出コイルに流れる誘導電流を検出信号として検出する。
【0016】
ケース12は、例えば、ロアケースやアッパケース等の複数の部材が組み合わされて全体として中空箱状に形成される。ケース12は、ロアケースおよびアッパケースによって区画される内部の空間部がセンサ11が収容される収容空間部として機能する。また、ケース12は、例えば、電線Wに対して上下方向Zの一方側、すなわち上方側に対向して配置される。センサ11は、ケース12内における下壁部12a上に搭載され、電線Wに対して下壁部12aの上下方向Zの厚さ分だけ離れて位置される。
【0017】
筐体20は、内部にセンサユニット10が設けられる箱状の部材である。筐体20は、絶縁性を有する樹脂材料等によって構成される。筐体20は、例えば、軸線方向Xが長辺方向となる略直方体の箱状に形成される。筐体20は、天壁部20aや、底壁部20b、一対の側壁部20c、一対の端壁部20d、一対の中壁部20e等の複数の壁部を有している。天壁部20aおよび底壁部20bは、いずれも、上下方向Zと直交する方向に沿って延びており、上下方向Zに間隔をあけて互いに平行に設けられている。天壁部20aは、筐体20の上端部を構成し、底壁部20bは、筐体20の下端部を構成している。
【0018】
一対の側壁部20cは、いずれも、幅方向Yと直交する方向に沿って延びており、幅方向Yに間隔をあけて互いに平行に設けられている。一対の側壁部20cのうち一方は、天壁部20aおよび底壁部20bの幅方向Yの一端部の間に渡り、筐体20の左端部を構成している。一対の側壁部20cのうち他方は、天壁部20aおよび底壁部20bの幅方向Yの他端部の間に渡り、筐体20の右端部を構成している。
【0019】
一対の端壁部20dは、いずれも、軸線方向Xと直交する方向に沿って延びており、軸線方向Xに間隔をあけて互いに平行に設けられている。一対の端壁部20dのうち一方は、天壁部20aおよび底壁部20bの軸線方向Xの一端部の間に渡り、筐体20の前端部を構成している。一対の端壁部20dのうち他方は、天壁部20aおよび底壁部20bの軸線方向Xの他端部の間に渡り、筐体20の後端部を構成している。
【0020】
そして、筐体20には、一対の端壁部20dを軸線方向Xに沿って貫通する電線挿通孔20fが設けられている。電線挿通孔20fは、筐体20の内外に渡って電線Wを挿通させるための貫通孔であり、一対の端壁部20dの間に渡るように軸線方向Xに沿って延びている。電線挿通孔20fは、例えば、筐体20のうち上下方向Zの略中央部よりも下方側の領域に形成され、軸線方向Xの両側および下方側に開放されている。
【0021】
一対の中壁部20eは、いずれも、一対の側壁部20cの間に位置され、天壁部20aと底壁部20bとの間に渡るように設けられている。一対の中壁部20eは、例えば、第1部分20e1と、第2部分20e2と、第3部分20e3と、をそれぞれ含んで構成される。第1部分20e1は、底壁部20bから電線挿通孔20fと面するように上下方向Zに沿って延びている。第2部分20e2は、第1部分20e1の上端部から一対の側壁部20cに向けて幅方向Yに沿って延びている。第3部分20e3は、第2部分20e2の幅方向Yの両端部から天壁部20aに向けて上下方向Zに沿って延びている。
【0022】
ここで、筐体20内には、中壁部20eの第2部分20e2と第3部分20e3とによって囲まれた収容空間部20gが設けられている。収容空間部20gは、センサユニット10や、クランプ部材50、後述する駆動機構30のローラ31(図3参照)等が配置される空間部である。収容空間部20gは、上述した電線挿通孔20fに対して上方側に対向して形成され、少なくとも上方側に開放されている。収容空間部20gは、中壁部20eからセンサユニット10が取り外された状態において、電線挿通孔20fと上下方向Zに連通する。
【0023】
図3は、導体劣化検出装置1のセンサユニット10および駆動機構30付近の斜視図である。図3に示されるように、駆動機構30は、軸線方向Xに沿って電線Wと筐体20とを相対移動させるものである。本実施形態の駆動機構30は、電柱等を介して空中に架けられた電線Wに対して筐体20を軸線方向Xに沿って移動させる。駆動機構30は、例えば、一対のローラ31と、モータ32と、ギア機構33と、プーリ34と、を含んで構成される。
【0024】
モータ32は、回転動力を発生させる動力源であり、ギア機構33を介して回転動力を一対のローラ31に伝達する。一対のローラ31は、筐体20の内部で電線Wと接触した状態で設けられ、モータ32が発生させる回転動力によって回転駆動するものである。一対のローラ31は、筐体20に対して幅方向Yに沿って延びる回転中心回りに回転可能に支持されている。本実施形態では、例えば、一対のローラ31のうちの一方が駆動ローラとして機能し、他方が従動ローラとして機能する。プーリ34は、一対のローラ31の間を連結し、駆動ローラの回転動力を従動ローラに伝達する。
【0025】
そして、駆動機構30は、回転駆動する一対のローラ31によって上述した電線挿通孔20fの軸線方向Xの一端部から電線Wを筐体20の内部に引き込むと共に、軸線方向Xの他端部から当該電線Wを筐体20の外部に送り出すようにして、導体劣化検出装置1を、電線W上を走行させる。これにより、駆動機構30は、電線Wに対して筐体20を軸線方向Xに沿って相対移動させることができる。なお、本実施形態では、ローラ31は、センサユニット10の軸線方向Xの両側に一対で設けられているがこれに限らない。
【0026】
また、センサユニット10は、例えば、ケース12の側壁から幅方向Yの両側に張り出した取付部12bを有している。取付部12bは、上述した中壁部20eの第2部分20e2に沿って延びており、当該第2部分20e2上に重ねられている。そして、本実施形態では、取付部12bは、第2部分20e2に弾性部材40を介して取り付けられている。弾性部材40は、例えば、ダンパねじ41によって構成される。
【0027】
ダンパねじ41は、例えば、第2部分20e2に立設され取付部12bを上下方向Zに貫通する軸部42や、軸部42の上端部に設けられる反力受け部43、軸部42に装着され反力受け部43と取付部12bとの間で弾性変形する弾性部材40(スプリング)等を含んで構成される。取付部12bは、弾性部材40によって第2部分20e2に対して軸部42(上下方向Z)に沿ってスライド可能に支持されている。ダンパねじ41は、センサユニット10の四隅に設けられている。
【0028】
本実施形態では、ダンパねじ41は、弾性部材40の弾性力によって取付部12bひいてはセンサユニット10を上下方向Zに沿って電線W側に押し付けた状態で、当該取付部12bを第2部分20e2に固定している。また、ダンパねじ41は、弾性部材40の弾性変形によって取付部12bひいてはセンサユニット10の上下方向Zの移動を許容し、当該取付部12bを第2部分20e2に対して上下方向Zに沿って移動可能に支持している。なお、本実施形態では、弾性部材40は、ダンパねじ41によって構成されているがこれに限らない。
【0029】
本実施形態では、上下方向Zは、軸線方向Xと交差する方向の一例である。なお、弾性部材40は、この例には限定されず、例えば、軸線方向Xと交差する幅方向Yに沿ってセンサユニット10を電線W側に押し付けるように設けられてもよい。言い換えると、センサユニット10は、電線Wに対して上方ではなく側方(幅方向Y)に取り付けられてもよい。
【0030】
図4は、導体劣化検出装置1のセンサユニット10および駆動機構30付近の側面図である。図4に示されるように、本実施形態のセンサユニット10は、上述したダンパねじ41によって第1位置P1と第2位置P2との間で上下方向Zに沿って移動可能に支持されている。第1位置P1は、ダンパねじ41の弾性部材40(スプリング)の自由状態における位置であり、初期位置等とも称される。第2位置P2は、ダンパねじ41の弾性部材40の圧縮状態における位置であり、可動位置やセット位置等とも称される。センサユニット10は、電線Wに対して第2位置P2に位置された状態で取り付けられ、ローラ31と共に軸線方向Xに沿って電線W上を走行する。
【0031】
そして、本実施形態では、センサユニット10の下端部12a1は、上述した第1位置P1において、一対のローラ31の下端部31a同士を結ぶ軸線方向Xと平行な仮想直線Vよりも下方に位置されている。この構成により、導体劣化検出装置1は、例えば、電線Wによってセンサユニット10が上方に押し上げられた第2位置P2で取り付けられることで、導体劣化検出装置1の全体の自重がかかった状態でセンサユニット10と電線Wとが密着するように構成されている。
【0032】
導体劣化検出装置1は、上述したセンサユニット10が電線Wと密着した状態で電線W上を自走することで、軸線方向Xに沿って電線Wの導体W1の劣化を検出する。電線Wの導体W1は、腐食や割れ等による劣化が存在すると、当該劣化部位において、センサ11(コイルセンサ)が発生させた磁界によって発生する渦電流の分布が変化し当該渦電流が相対的に少なくなる傾向にある。この結果、電線Wの導体W1は、腐食や割れ等による劣化が存在すると、当該劣化部位において、センサ11によって検出される検出値が相対的に小さくなる傾向にある。センサ11によって検出される検出値は、導体W1の劣化の度合いが相対的に大きくなるほど相対的に小さくなる傾向にある。このことを利用して、センサ11は、導体W1の劣化状況を検出することができる。
【0033】
クランプ部材50は、電線Wのセンサユニット10やローラ31に対する上下方向Zの位置および幅方向Yの位置を保持するものである。クランプ部材50は、例えば、筐体20の軸線方向Xの両端部に設けられる一対のクランプ部51と、一対のクランプ部51を連結する連結部52と、一対のクランプ部51に取り付けられる複数の回転体53(図5参照)と、を含んで構成される。
【0034】
図5は、導体劣化検出装置1の正面図である。図5に示されるように、クランプ部51は、一対の端壁部20dの内側に位置されている。クランプ部51は、例えば、下方側に開放された略U字状に形成され、電線Wを幅方向Yの両側から挟持可能である。また、クランプ部51には、それぞれ一対の回転体53が取り付けられている。回転体53は、例えば、軸線方向Xに沿った電線Wと導体劣化検出装置1との相対移動に伴って当該電線Wの外面上を軸線方向Xに沿って転動するローラ等である。一対の回転体53は、上下方向Zに沿って延びる回転中心回りに回転可能であり、クランプ部51において、幅方向Yに互いに間隔をあけて設けられている。
【0035】
回転体53は、クランプ部51と電線Wとの間の隙間を最小にしつつクランプ部51と電線Wとの間に生じる摩擦を低減することができる。ここでは、回転体53は、電線Wと接触する転動面が直線形状に形成されているがこれに限らない。本実施形態では、一対の回転体53の間に電線Wが挟持されることによって、電線Wのセンサユニット10やローラ31に対する位置を保持しつつ、電線Wとクランプ部51との間の摺動抵抗が低減される。また、クランプ部51における一対の回転体53の間の開口幅が比較的広めに確保され、これにより、直径が異なる複数の仕様の電線Wに対応することができるように構成されている。
【0036】
連結部52は、筐体20の上方に位置され、一対のクランプ部51を連結している。連結部52は、例えば、軸線方向Xに沿って延びる二つの連結バー54を有しており、当該二つの連結バー54の開度(角度)を調節することによってクランプ部51を開閉可能である。具体的には、連結部52は、例えば、二つの連結バー54が開いた図5の状態では、クランプ部51を閉じ、二つの連結バー54が閉じた状態、言い換えると二つの連結バー54の幅方向Yの間隔が図5よりも狭まった状態では、クランプ部51を開くことができる。
【0037】
また、連結部52は、例えば、コイルスプリング等によって二つの連結バー54が開く方向、すなわちクランプ部51が閉じる方向に付勢されている。作業者は、二つの連結バー54が閉じるように連結部52を把持することによって、クランプ部51を開くことができる。また、連結部52は、例えば、導体劣化検出装置1の運搬時において作業者の把持部としても機能する。
【0038】
以上のように、本実施形態の導体劣化検出装置1は、軸線方向Xに沿って延在する電線Wの導体W1の劣化を検出するセンサ11が収容されたセンサユニット10と、電線Wが軸線方向Xに沿って貫通すると共に、内部にセンサユニット10が設けられる筐体20と、筐体20を電線Wに対して軸線方向Xに沿って相対移動させる駆動機構30と、センサユニット10を電線W側に押し付ける弾性部材40と、を備える。この構成により、導体劣化検出装置1は、例えば、筐体20の電線Wに対する軸線方向Xへの相対移動時において、電線W側に撓み等が生じていても弾性部材40の弾性力によってセンサユニット10を電線Wに密着させて当該センサユニット10側のセンサ11と電線Wとの間の距離(位置)を一定に保つことができる。この結果、導体劣化検出装置1は、導体W1の劣化の検出精度を向上することができる。
【0039】
ここで、導体劣化検出装置1は、軸線方向Xに沿って電線W上を自走することから当該電線Wが比較的撓み易い。また、電線W上を自走することから当該電線W上の微細の凹凸を拾ってセンサユニット10と電線Wとの相対位置が変動する虞がある。その点、本実施形態によれば、弾性部材40の弾性力によってセンサユニット10を電線W側に押し付けて当該センサユニット10と電線Wとの間に隙間が空かないようにすることができる。この結果、導体劣化検出装置1は、導体W1の劣化の検出精度を向上することができる。
【0040】
また、本実施形態の導体劣化検出装置1では、センサユニット10は、筐体20に軸線方向Xと交差する方向としての上下方向Zに沿って移動可能に支持され、弾性部材40は、上下方向Zに沿ってセンサユニット10を電線W側に押し付ける。この構成により、導体劣化検出装置1は、例えば、直径違いの複数の仕様の電線Wに対応して当該電線Wの誤差を吸収することができ、ひいては直径が異なる複数の仕様の電線Wとセンサユニット10とが密着可能な構成とすることができる。
【0041】
また、本実施形態の導体劣化検出装置1では、駆動機構30は、センサユニット10の軸線方向Xの両側に設けられ電線W上を走行する一対のローラ31と、一対のローラ31を駆動するモータ32と、を有し、センサユニット10の下端部12a1は、弾性部材40の自由状態において、一対のローラ31の下端部31a同士を結ぶ軸線方向Xと平行な仮想直線Vよりも下方に位置される。この構成により、導体劣化検出装置1は、例えば、電線Wによってセンサユニット10が上方に押し上げられた状態で取り付けられることで、筐体20の自重がかかった状態でセンサユニット10と電線Wとが密着する。この結果、導体劣化検出装置1は、センサユニット10と電線Wとの密着性をより高めることができる。
【0042】
また、本実施形態の導体劣化検出装置1では、弾性部材40は、当該弾性部材40の弾性力によってセンサユニット10を電線W側に押し付けるダンパねじ41によって構成される。この構成により、導体劣化検出装置1は、例えば、ダンパねじ41によってセンサユニット10を電線W側に押し付ける機能と、センサユニット10を筐体20に対して固定する機能とを担うことができ、ひいてはセンサユニット10を電線W側に押し付ける構成を比較的容易に得ることができる。
【0043】
また、本実施形態の導体劣化検出装置1では、センサ11は、導体W1に渦電流を発生させ、当該導体W1で発生した渦電流に応じた磁界を検出するコイルセンサによって構成される。この構成により、導体劣化検出装置1は、例えば、コイルセンサによる渦電流探傷法を用いた導体劣化検出装置1において、センサユニット10側のセンサ11と電線Wとの間の距離(位置)を一定に保つことができ、ひいては導体W1の劣化の検出精度を向上することができる。
【0044】
また、本実施形態の導体劣化検出装置1では、筐体20の軸線方向Xの両端部に設けられ電線Wを挟持する一対のクランプ部51と、一対のクランプ部51に取り付けられ電線Wと当接する回転体53と、を有したクランプ部材50を備える。この構成により、導体劣化検出装置1は、例えば、一対のクランプ部51によって電線Wのセンサユニット10やローラ31に対する上下方向Zおよび幅方向Yの位置を保持しつつ、回転体53によって電線Wとの摺動抵抗を低減することができる。また、例えば、直径違いの複数の仕様の電線Wに対応して当該電線Wの誤差を吸収することができ、ひいては直径が異なる複数の仕様の電線Wとセンサユニット10やローラ31とが密着しやすい構成とすることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 導体劣化検出装置
10 センサユニット
11 センサ(コイルセンサ)
12a1 下端部
20 筐体
30 駆動機構
31 ローラ
32 モータ
40 弾性部材
41 ダンパねじ
50 クランプ部材
51 クランプ部
53 回転体
W 電線
W1 導体
X 軸線方向
Y 幅方向(軸線方向と交差する方向)
Z 上下方向(軸線方向と交差する方向)

図1
図2
図3
図4
図5