(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101090
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】積層体の剥離方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240722BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240722BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B32B27/00 Z
A47G27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004813
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 信太郎
【テーマコード(参考)】
3B120
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
3B120AB02
3B120BA04
3B120DB10
3B120EB30
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB31
4F100GB32
4F100JA04B
4F100JA04C
4F100JA04D
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JB16D
4F401AA28
4F401AC01
4F401AD01
4F401BA13
4F401CA35
4F401CB01
4F401FA01Y
(57)【要約】
【課題】各層を純度よく剥離すること。
【解決手段】第1熱可塑性樹脂を含んだ第1層10と第1熱可塑性樹脂よりも融点が高い第2熱可塑性樹脂を含み第1層10に接着した第2層20とを備える積層体100を、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、第1熱可塑性樹脂の融点以上であって第2熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、第1熱可塑性樹脂を溶融させて、第1層10を、第2層20とは反対側に配される部材50に溶着させる押圧加熱工程と、一対のプレス板70,71を開いて第2層20を第1層10から剥離する剥離工程と、を含む、積層体100の剥離方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱可塑性樹脂を含んだ第1層と前記第1熱可塑性樹脂よりも融点が高い第2熱可塑性樹脂を含み前記第1層に接着した第2層とを備える積層体を、一対のプレス板の間に挟んで押圧し、前記第1熱可塑性樹脂の融点以上であって前記第2熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、前記第1熱可塑性樹脂を溶融させて、前記第1層を、前記第2層とは反対側に配される部材に溶着させる押圧加熱工程と、
前記一対のプレス板を開いて前記第2層を前記第1層から剥離する剥離工程と、を含む、積層体の剥離方法。
【請求項2】
前記押圧加熱工程では、前記第2熱可塑性樹脂よりも融点が低い第3熱可塑性樹脂を含み前記第2層において前記第1層とは反対側の面に接着した第3層と前記第1熱可塑性樹脂及び前記第3熱可塑性樹脂よりも融点が高い第4熱可塑性樹脂を含み前記第3層において前記第2層とは反対側の面に接着した第4層とを備える前記積層体を、前記第1熱可塑性樹脂及び前記第3熱可塑性樹脂の融点以上であって前記第2熱可塑性樹脂及び前記第4熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、前記第3熱可塑性樹脂を溶融させて、前記第3層を、前記第2層に溶着させ、
前記剥離工程では、前記一対のプレス板を開いて、前記第4層を前記第3層から剥離した後に、前記第2層を前記第1層から剥離する、請求項1に記載の積層体の剥離方法。
【請求項3】
前記押圧加熱工程では、前記第2層よりも目付が高い前記第1層を備える前記積層体であって、乗物の床材の端材によりなる前記積層体を、前記一対のプレス板の間に挟んで押圧し、加熱する、請求項1または請求項2に記載の積層体の剥離方法。
【請求項4】
前記押圧加熱工程では、平部と前記平部に対し曲がった曲部とを備える前記積層体を、前記一対のプレス板の間に挟んで押圧し、加熱することにより、前記曲部が前記平部に対し平らになるよう成形する、請求項1または請求項2に記載の積層体の剥離方法。
【請求項5】
前記押圧加熱工程の前に行われ、前記第1層において前記第2層とは反対側に板状体を配する配置工程を含み、
前記押圧加熱工程では、前記積層体及び前記板状体を、前記一対のプレス板の間に挟んで押圧し、加熱することで、前記第1層を、前記第2層とは反対側に配された前記板状体に溶着させる、請求項1または請求項2に記載の積層体の剥離方法。
【請求項6】
前記剥離工程では、前記第2層を前記第1層から剥離した後に、前記板状体を前記第1熱可塑性樹脂の融点未満に冷却し、前記第1層を前記板状体から剥離する、請求項5に記載の積層体の剥離方法。
【請求項7】
前記配置工程では、金属板を、前記板状体として配する、請求項5に記載の積層体の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層体の剥離方法として、特許文献1に記載の技術が知られている。具体的に、特許文献1には、コンベアベルト上にタイルカーペット(積層体)を置き、加熱炉で加熱し、該タイルカーペットの端部の表皮層端部とバッキング樹脂層端部を、それぞれ上下反対方向に引き剥がすことで、タイルカーペットの表皮層とバッキング樹脂層とを分離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、表皮層にバッキング樹脂層が部分的に残ってしまうこと、あるいはバッキング層に表皮層が部分的に残ってしまうことが考えられる。その場合、分離後に得られる各層の材料の純度が低下するため、各層をそれぞれ再利用して得られる再利用品の品質が低下する。また、積層体から各層を剥離するように分離させる場合、一方の層を他方の層からスムーズに剥離できることが望ましい。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、各層を純度よく剥離することができる積層体の剥離方法を提供することを目的の一つとする。また、各層を上手く剥離することができる積層体の剥離方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1熱可塑性樹脂を含んだ第1層と前記第1熱可塑性樹脂よりも融点が高い第2熱可塑性樹脂を含み前記第1層に接着した第2層とを備える積層体を、一対のプレス板の間に挟んで押圧し、前記第1熱可塑性樹脂の融点以上であって前記第2熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、前記第1熱可塑性樹脂を溶融させて、前記第1層を、前記第2層とは反対側に配される部材に溶着させる押圧加熱工程と、前記一対のプレス板を開いて前記第2層を前記第1層から剥離する剥離工程と、を含む、積層体の剥離方法である。
【0007】
このような積層体の剥離方法によると、押圧加熱工程において、積層体が一対のプレス板の間に挟まれて押圧、及び加熱されることで、積層体のうち、第1層の第1熱可塑性樹脂が溶融し、第2層の第2熱可塑性樹脂が溶融していない状態となる。そして、この溶融した第1熱可塑性樹脂により、第1層を、第2層とは反対側に配される部材(例えば当該第1層に接するプレス板、或いはプレス板と第1層との間に配される層材等)に溶着させることで、剥離工程において、第2層を第1層から剥離し易くなる。そして、剥離した第2層に第1層が部分的に残ること(又は第1層に第2層が部分的に残ること)を抑制し、剥離後の第1層と第2層の材料の純度を高めることができる。
【0008】
前記押圧加熱工程では、前記第2熱可塑性樹脂よりも融点が低い第3熱可塑性樹脂を含み前記第2層において前記第1層とは反対側の面に接着した第3層と前記第1熱可塑性樹脂及び前記第3熱可塑性樹脂よりも融点が高い第4熱可塑性樹脂を含み前記第3層において前記第2層とは反対側の面に接着した第4層とを備える前記積層体を、前記第1熱可塑性樹脂及び前記第3熱可塑性樹脂の融点以上であって前記第2熱可塑性樹脂及び前記第4熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、前記第3熱可塑性樹脂を溶融させて、前記第3層を、前記第2層に溶着させ、前記剥離工程では、前記一対のプレス板を開いて、前記第4層を前記第3層から剥離した後に、前記第2層を前記第1層から剥離してもよい。
【0009】
このような積層体の剥離方法によると、押圧加熱工程において、積層体のうち、第1層の第1熱可塑性樹脂と第3層の第3熱可塑性樹脂が溶融し、第2層の第2熱可塑性樹脂と第4層の熱可塑性樹脂が溶融していない状態となる。そして、この溶融した第1熱可塑性樹脂と第3熱可塑性樹脂により、第1層を、第2層とは反対側に配される部材に溶着させ、第3層を、第4層とは反対側に配される第2層に溶着させる。これにより、剥離工程において、第4層を第3層から容易に剥離し、その後、第2層を第1層から容易に、順番に、剥離することが可能となる。押圧加熱工程を1回行うだけで、剥離工程において、積層体を複数の層に分けて剥離させることができ、スムーズな剥離を行うことができる。また、押圧加熱工程では、第3層において第4層側が第2層側よりもプレス板から伝わる熱により溶融し易いため(第2層側には第2層及び第1層が配されているため)、剥離工程において、第4層を第3層から剥離し易くなる。そして、剥離した第4層に第3層が部分的に残ること(又は第3層に第4層が部分的に残ること)を抑制し、剥離後の第3層と第4層の材料の純度を高めることができる。
【0010】
前記押圧加熱工程では、前記第2層よりも目付が高い前記第1層を備える前記積層体であって、乗物の床材の端材によりなる前記積層体を、前記一対のプレス板の間に挟んで押圧し、加熱してもよい。
【0011】
乗物の床材は、音等の振動が乗物室内に伝達することを抑制するために、乗物室外側の層(第1層)の目付を、乗物室内側の層(例えば第2層)よりも高くすることがある。上記のような積層体の剥離方法によると、このような床材の端材であっても、各層を上手く分離させて再利用させることが可能となる。
【0012】
前記押圧加熱工程では、平部と前記平部に対し曲がった曲部とを備える前記積層体を、前記一対のプレス板の間に挟んで押圧し、加熱することにより、前記曲部が前記平部に対し平らになるよう成形してもよい。
【0013】
このような積層体の剥離方法によると、曲部を備えるような積層体であっても、押圧加熱工程を行うことにより、その形を平らに成形し、続く剥離工程をスムーズに行うことが可能となる。
【0014】
上記積層体の剥離方法は、前記押圧加熱工程の前に行われ、前記第1層において前記第2層とは反対側に板状体を配する配置工程を含み、前記押圧加熱工程では、前記積層体及び前記板状体を、前記一対のプレス板の間に挟んで押圧し、加熱することで、前記第1層を、前記第2層とは反対側に配された前記板状体に溶着させてもよい。
【0015】
このような積層体の剥離方法によると、押圧加熱工程において、積層体及び板状体が一対のプレス板の間に挟まれて押圧、及び加熱されることで、積層体のうち、第1層の第1熱可塑性樹脂が溶融し、第2層の第2熱可塑性樹脂が溶融していない状態となる。そして、この溶融した第1熱可塑性樹脂により、第1層を、板状体に溶着させることで、剥離工程において、第2層を第1層から剥離し易くなる。そして、剥離した第2層に第1層が部分的に残ること(又は第1層に第2層が部分的に残ること)を抑制し、剥離後の第1層と第2層の材料の純度を高めることができる。
【0016】
前記剥離工程では、前記第2層を前記第1層から剥離した後に、前記板状体を前記第1熱可塑性樹脂の融点未満に冷却し、前記第1層を前記板状体から剥離してもよい。
【0017】
このような積層体の剥離方法によると、板状体に溶着した第1層を硬化させて、第1層を板状体から上手く剥離することができる。またこの硬化工程を、第2層を第1層から剥離した後に行うことで、各層の剥離をスムーズに行うことができる。
【0018】
前記配置工程では、金属板を、前記板状体として配してもよい。
【0019】
このような積層体の剥離方法によると、押圧加熱工程においてプレス板の熱が板状体を介して第1層に伝熱し易い。そして、第1層を板状体に上手く溶着させ、剥離工程において、第2層が第1層から剥離し易くなる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、各層を純度よく剥離することができる積層体の剥離方法の提供が可能となる。また、各層を上手く剥離することができる積層体の剥離方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る積層体を板状体に配した工程を示す図
【
図2】一対のプレス板によって積層体と板状体を挟んで押圧し、加熱する工程を示す図
【
図6】板状体をテーブルに載せ替えて冷却する工程を示す図
【
図8】剥離した層を重ねて一対のプレス板の間に配した工程を示す図
【
図9】剥離した層を一対のプレス板で挟んで押圧し、加熱する工程を示す図
【
図11】実施形態2に係る積層体と板状体を挟んで押圧し、加熱する工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本開示の実施形態1を
図1から
図10によって説明する。本実施形態では、自動車(乗物)の床を構成する積層体100と、その剥離方法を説明する。尚、各図において、上側を各部材又は各層の表面側(車室内側)とし、下側を各部材又は各層の裏面側(車室外側)とする。
【0023】
図1に示すように、積層体100は、自動車の床のうち、板金を構成するフロアパネルに敷設されるフロアカーペット(床材)の端材とされる。積層体100は、積層体100と同じ断面構成である基材から、フロアカーペットが切り抜かれた後に残る端材である。このような端材は、種々の形(例えば、平板状、曲板状、不定形状等)をなすものがある。従って、積層体100の形は特に限定されないが、本実施形態では、平部100Aと平部100Aに対し上方に曲がった曲部100Bとを備える積層体100を例示する。
【0024】
積層体100は、第1熱可塑性樹脂を含んだ第1層10と、第1熱可塑性樹脂よりも融点が高い第2熱可塑性樹脂を含み第1層10の表面に接着した第2層20と、第2熱可塑性樹脂よりも融点が低い第3熱可塑性樹脂を含み第2層20の表面(第2層20において第1層10とは反対側の面)に接着した第3層30と、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂よりも融点が高い第4熱可塑性樹脂を含み第3層30の表面(第3層30において第2層20とは反対側の面)に接着した第4層40と、を備える。
【0025】
第1層10は、積層体100において、自動車のフロアパネル側(車室外側)に配される層であって、音等の振動を好適に吸収する(他の層20,30,40よりも吸収する)ための機能を有する層であり、バッキング層と呼ばれることがある。また、第1層10は、第2層20に接着する層である。第2層20は、第1層10で吸収できなかった振動を吸収するための機能を有する。第3層30は、第2層20と第4層40とを接着するための接着剤としての機能を有する。第4層40は、積層体100において、自動車の車室内側に配される層であり、表皮としての機能を有する。第4層40によって、積層体100の車室内側面の質感、触感、意匠性等を向上させることが可能である。
【0026】
第1熱可塑性樹脂、第2熱可塑性樹脂、第3熱可塑性樹脂、及び第4熱可塑性樹脂として用いられる材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等の熱可塑性樹脂のうち、1種又は2種以上を用いることができる。本実施形態では、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂として、融点が125度であるPEを採用し、第2熱可塑性樹脂及び第4熱可塑性樹脂として、融点がPEよりも高い260度であるPETを採用する。尚、第1熱可塑性樹脂は、第3熱可塑性樹脂と同一の材料とするが、異なる材料であってもよい。第2熱可塑性樹脂は、第4熱可塑性樹脂と同一の材料とするが、異なる材料であってもよい。
【0027】
第1層10は、第2層20に比して、目付(単位面積当たりの質量)が高い。また、第1層10は、他の層20,30,40よりも、目付が高くてもよい(積層体100のうち最も目付が高い層であってもよい)。第1層10の目付は、200g/m2以上1000g/m2以下でもよく、400g/m2以上800g/m2以下でもよく、500g/m2以上700g/m2以下でもよい。第2層20の目付は、第3層30よりも高くてもよく、第4層40よりも低くてもよい。第2層20の目付は、100g/m2以上500g/m2以下でもよく、200g/m2以上400g/m2以下でもよく、250g/m2以上350g/m2以下でもよい。第3層30は、他の層10,20,40に比して、目付が低くてもよい(積層体100のうち最も目付が低い層であってもよい)。第3層30の目付は、10g/m2以上200g/m2以下でもよく、50g/m2以上150g/m2以下でもよく、80g/m2以上120g/m2以下でもよい。第4層40の目付は、100g/m2以上600g/m2以下でもよく、200g/m2以上500g/m2以下でもよく、300g/m2以上400g/m2以下でもよい。
【0028】
続いて、積層体100の剥離方法について説明する。積層体100の剥離方法は、大別すると、積層体100が、板状体50の表面に接した状態となるようにそれぞれ配する配置工程と、配置工程の後に行われ、接した状態の積層体100及び板状体50を、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、加熱する押圧加熱工程と、押圧加熱工程の後に行われ、一対のプレス板70,71を開いて積層体100を剥離する剥離工程と、を含む。
【0029】
図1に示すように、配置工程では、第1層10の裏面側(第1層10において第2層20とは反対側)に板状体50を配する。このとき、第1層10の裏面のうち、積層体100の平部100Aの裏面が、板状体50に接し、第1層10の裏面のうち、積層体100の曲部100Bの裏面が、板状体50から浮いた状態となっている。そして、板状体50と板状体50の表面に載置された積層体100を、一対のプレス板70,71のうち下プレス板70の表面に載置する。板状体の材料としては、特に限定されないが、例えば、木材、樹脂等の有機材料や、ガラス、金属等の無機材料を用いることができる。その中でも、板状体の材料としては、金属を板状にした金属板が好ましく、鉄板がより好ましい。
【0030】
次に、
図2に示すように、押圧加熱工程では、積層体100と板状体50を、板状体50に積層体100が接した状態のまま、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、加熱する。一対のプレス板70,71は、上プレス板71を下プレス板70に近接させることにより、積層体100と板状体50を挟むことができる。そして、積層体100を、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、加熱することにより、曲部100Bが平部100Aに対し平らになるよう成形する。これにより、積層体100は、全体として平板状となる。一対のプレス板70,71が積層体100を押圧する圧力は、特に限定されないが、例えば、加熱なしで曲部100Bが平部100Aに対し平らになるよう変形可能な圧力以上の圧力とすることができる。
【0031】
また、押圧加熱工程では、一対のプレス板70,71により、積層体100及び板状体50を、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂の融点(PEの融点)以上であって第2熱可塑性樹脂及び第4熱可塑性樹脂の融点(PETの融点)未満の温度で加熱することで、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂を溶融させる。尚、第1熱可塑性樹脂と第3熱可塑性樹脂の材料が異なる場合は、一対のプレス板70,71による加熱温度の下限値は、第1熱可塑性樹脂と第3熱可塑性樹脂の融点のうち、いずれか高い方の融点とする。第2熱可塑性樹脂と第4熱可塑性樹脂の材料が異なる場合は、一対のプレス板70,71による加熱温度の上限値は、第2熱可塑性樹脂と第4熱可塑性樹脂の融点のうち、いずれか低い方の融点とする。本実施形態では、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂の材料がPEであり、第2熱可塑性樹脂及び第4熱可塑性樹脂の材料がPETであるため、一対のプレス板70,71による加熱温度としては、例えば、125度以上260度未満としてもよく、140度以上200度未満としてもよく、150度以上170度未満としてもよい。
【0032】
一対のプレス板70,71によって積層体100を押圧し加熱することにより、第3層30を、第2層20の表面に溶着させ、第1層10を、板状体(第2層とは反対側に配される部材)50の表面に溶着させる。第3層30は、第4層40よりも第2層20に溶着し易い。この理由としては、例えば、第3層30と上プレス板71との間の層材(第4層40)よりも第3層と下プレス板70との間の層材(第2層20、第1層10、及び板状体)の方が多い(或いは厚い)ため、第3層30の表面側が裏面側よりも加熱され易く溶融した状態を保ち易いところ、第3層30の裏面側は、溶融したとしても比較的早く硬化して第2層20に溶着し易いことが挙げられる。また、第3層30と第2層20との間の接着面積(接着力)が、第3層30と第4層40との間の接着面積よりも大きくなるように、第2層20の表面形状と第4層40の裏面形状を適宜変更しておくこと(例えば第2層20の表面に凹凸形状を付与しておく等)が挙げられる。そして、第1層10は、第2層20よりも板状体50に溶着し易い。この理由としては、第1層10の第1熱可塑性樹脂(PE)と板状体50(鉄板)が、第1層10の第1熱可塑性樹脂(PE)と第2層20の第2熱可塑性樹脂(PET)に比して、接着し易い材料の組み合わせであることや、第1層10と第2層20の接着面積よりも第1層10と板状体50の接着面積の方が大きいことが挙げられる。
【0033】
次に、
図3に示すように、剥離工程では、上プレス板71を下プレス板70から離間させることで、一対のプレス板70,71を開いて、
図4に示すように、第4層40を第3層30から剥離する。このとき、板状体50は下プレス板70に載置されて保熱されている(第3熱可塑性樹脂が部分的に溶融したままの状態であってもよい)。そして、例えば作業者が積層体100や板状体50を掴んで下プレス板70から動かないように固定し、剥離工具90を用いて第4層40の剥離を行う。剥離工具90は、本体部91と本体部91から生える針状の複数の引っ掻き部92とを備えており、全体としてブラシ状をなしている。作業者は、剥離工具90の引っ掻き部92によって第4層40の端部40Aを引っ掻きつつ、第3層30に対し端部40A側から離間させるようにして、第4層40を第3層30から剥離する。
【0034】
続いて、
図5に示すように、積層体100(積層体100から第4層40が剥離してなる中間体101)において、第2層20を第1層10から剥離する。具体的には、引き続き板状体50を下プレス板70に載置して保熱したまま(このとき、第1熱可塑性樹脂が部分的に溶融したままの状態であってもよい)、剥離工具90の引っ掻き部92によって第2層20の端部20Aを引っ掻きつつ、第1層10に対し端部20A側から離間させるようにして、第2層20を第1層10から剥離する。
【0035】
その後、
図6に示すように、第1層10が溶着した板状体50を、冷却部材80に載せ替えることで、板状体50を第1熱可塑性樹脂の融点未満に冷却し、第1層10を硬化させる。冷却部材80は、例えば常温(23度)のテーブルとされ、板状体50を常温に冷却することが可能である。そして、
図7に示すように、作業者の爪等で第1層10の端部10Aを引っ掻いて摘まみ、板状体50に対し端部10A側から離間させるようにして、第1層10を板状体50から剥離する。
【0036】
次に、積層体100の再利用工程について説明する。この再利用工程は、上述した積層体100の剥離方法と共に、積層体100の再利用方法を構成する。まず、積層体100の剥離を行った後に、
図8に示すように、剥離された第4層40を、剥離第4層41として下プレス板70に載置し、剥離された第2層20を、剥離第2層21として剥離第4層41の表面に重ね、別の積層体100から剥離され、剥離第4層41とは異なる第4層40を、剥離第4層42として剥離第2層21の表面に重ねて、重畳体102を形成する。各剥離層41,21,42は、大きさや形が不揃いであってもよく、各剥離層41,21,42の間に、完全に剥離することのできなかった第1層10や第3層30の一部である接着部60が配されていてもよい。
【0037】
そして、
図9に示すように、上プレス板71を下プレス板70に近接させ、重畳体102を一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧する。さらに、一対のプレス板70,71により、重畳体102を、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂の融点以上であって第2熱可塑性樹脂及び第4熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、接着部60を溶融させるとともに、各剥離層41,21,42を結着させる。これにより、板状の再利用体103を形成する。再利用体103は、一対のプレス板70,71を開いて取り出すことができる。得られた再利用体103は、乗物の床材等、乗物用内装材として再利用することができる。尚、重畳体102を形成するための各剥離層の種類や数は、適宜変更可能である。
【0038】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、第1熱可塑性樹脂を含んだ第1層10と第1熱可塑性樹脂よりも融点が高い第2熱可塑性樹脂を含み第1層10に接着した第2層20とを備える積層体100を、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、第1熱可塑性樹脂の融点以上であって第2熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、第1熱可塑性樹脂を溶融させて、第1層10を、第2層20とは反対側に配される部材50に溶着させる押圧加熱工程と、一対のプレス板70,71を開いて第2層20を第1層10から剥離する剥離工程と、を含む、積層体100の剥離方法を示した。
【0039】
このような積層体100の剥離方法によると、押圧加熱工程において、積層体100が一対のプレス板70,71の間に挟まれて押圧、及び加熱されることで、積層体100のうち、第1層10の第1熱可塑性樹脂が溶融し、第2層20の第2熱可塑性樹脂が溶融していない状態となる。そして、この溶融した第1熱可塑性樹脂により、第1層10を、第2層20とは反対側に配される部材(例えば当該第1層10に接するプレス板、或いはプレス板と第1層10との間に配される層材等)に溶着させることで、剥離工程において、第2層20を第1層10から剥離し易くなる。そして、剥離した第2層20に第1層10が部分的に残ること(又は第1層10に第2層20が部分的に残ること)を抑制し、剥離後の第1層10と第2層20の材料の純度を高めることができる。
【0040】
押圧加熱工程では、第2熱可塑性樹脂よりも融点が低い第3熱可塑性樹脂を含み第2層20において第1層10とは反対側の面に接着した第3層30と第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂よりも融点が高い第4熱可塑性樹脂を含み第3層30において第2層20とは反対側の面に接着した第4層40とを備える積層体100を、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂の融点以上であって第2熱可塑性樹脂及び第4熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、第3熱可塑性樹脂を溶融させて、第3層30を、第2層20に溶着させ、剥離工程では、一対のプレス板70,71を開いて、第4層40を第3層30から剥離した後に、第2層20を第1層10から剥離する。
【0041】
このような積層体100の剥離方法によると、押圧加熱工程において、積層体100のうち、第1層10の第1熱可塑性樹脂と第3層30の第3熱可塑性樹脂が溶融し、第2層20の第2熱可塑性樹脂と第4層40の熱可塑性樹脂が溶融していない状態となる。そして、この溶融した第1熱可塑性樹脂と第3熱可塑性樹脂により、第1層10を、第2層20とは反対側に配される部材に溶着させ、第3層30を、第4層40とは反対側に配される第2層20に溶着させる。これにより、剥離工程において、第4層40を第3層30から容易に剥離し、その後、第2層20を第1層10から容易に、順番に、剥離することが可能となる。押圧加熱工程を1回行うだけで、剥離工程において、積層体100を複数の層に分けて剥離させることができ、スムーズな剥離を行うことができる。また、押圧加熱工程では、第3層30において第4層40側が第2層20側よりもプレス板から伝わる熱により溶融し易いため(第2層20側には第2層20及び第1層10が配されているため)、剥離工程において、第4層40を第3層30から剥離し易くなる。そして、剥離した第4層40に第3層30が部分的に残ること(又は第3層30に第4層40が部分的に残ること)を抑制し、剥離後の第3層30と第4層40の材料の純度を高めることができる。
【0042】
押圧加熱工程では、第2層20よりも目付が高い第1層10を備える積層体100であって、乗物の床材の端材によりなる積層体100を、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、加熱する。
【0043】
乗物の床材は、音等の振動が乗物室内に伝達することを抑制するために、乗物室外側の層(第1層10)の目付を、乗物室内側の層(例えば第2層20)よりも高くすることがある。上記のような積層体100の剥離方法によると、このような床材の端材であっても、各層を上手く分離させて再利用させることが可能となる。
【0044】
押圧加熱工程では、平部100Aと平部100Aに対し曲がった曲部100Bとを備える積層体100を、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、加熱することにより、曲部100Bが平部100Aに対し平らになるよう成形する。
【0045】
このような積層体100の剥離方法によると、曲部100Bを備えるような積層体100であっても、押圧加熱工程を行うことにより、その形を平らに成形し、続く剥離工程をスムーズに行うことが可能となる。
【0046】
上記積層体100の剥離方法は、押圧加熱工程の前に行われ、第1層10において第2層20とは反対側に板状体50を配する配置工程を含み、押圧加熱工程では、積層体100及び板状体50を、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、加熱することで、第1層10を、第2層20とは反対側に配された板状体50に溶着させる。
【0047】
このような積層体100の剥離方法によると、押圧加熱工程において、積層体100及び板状体50が一対のプレス板70,71の間に挟まれて押圧、及び加熱されることで、積層体100のうち、第1層10の第1熱可塑性樹脂が溶融し、第2層20の第2熱可塑性樹脂が溶融していない状態となる。そして、この溶融した第1熱可塑性樹脂により、第1層10を、板状体50に溶着させることで、剥離工程において、第2層20を第1層10から剥離し易くなる。そして、剥離した第2層20に第1層10が部分的に残ること(又は第1層10に第2層20が部分的に残ること)を抑制し、剥離後の第1層10と第2層20の材料の純度を高めることができる。
【0048】
剥離工程では、第2層20を第1層10から剥離した後に、板状体50を第1熱可塑性樹脂の融点未満に冷却し、第1層10を板状体50から剥離する。
【0049】
このような積層体100の剥離方法によると、板状体50に溶着した第1層10を硬化させて、第1層10を板状体50から上手く剥離することができる。またこの硬化工程を、第2層20を第1層10から剥離した後に行うことで、各層の剥離をスムーズに行うことができる。
【0050】
配置工程では、金属板を、板状体50として配する。
【0051】
このような積層体100の剥離方法によると、押圧加熱工程においてプレス板70の熱が板状体50を介して第1層10に伝熱し易い。そして、第1層10を板状体50に上手く溶着させ、剥離工程において、第2層20が第1層10から剥離し易くなる。
【0052】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2を
図11によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。積層体200は、第1層10と、第2層20と、を備えており、上記実施形態とは異なり、第3層30と、第4層40と、を備えていない。
【0053】
押圧加熱工程では、積層体200と板状体50を、板状体50に積層体200が接した状態のまま、一対のプレス板70,71の間に挟んで押圧し、加熱する。一対のプレス板70,71により、積層体200及び板状体50を、第1熱可塑性樹脂以上であって第2熱可塑性樹脂の融点未満の温度で加熱することで、第1熱可塑性樹脂を溶融させ、第1層10を、板状体(第2層とは反対側に配される部材)50の表面に溶着させる。次に、剥離工程では、積層体200において、第2層20を第1層10から剥離した後に、第1層10を板状体50から剥離する。
【0054】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0055】
(1)配置工程では、下プレス板の表面に、積層体を載せ、その積層体の表面に、板状体を載せた状態にしてもよい。その場合、積層体は、上記実施形態に比して上下を反転させた形(第4層が下プレス板の表面に接する形)で配置される。
【0056】
(2)積層体の剥離方法において、板状体を用いなくてもよい。例えば、配置工程において、積層体をそのまま下プレス板の表面に載せて、積層体のみを一対のプレス板によって押圧し加熱してもよい。この場合、積層体の第1層を、第2層とは反対側に配される部材としての下プレス板に溶着させる。
【0057】
(3)上記実施形態では、一対のプレス板によって押圧と加熱を行ったが、これに限定されない。押圧工程と加熱工程とが別工程(別の装置)で行われてもよい。例えば、積層体と板状体とをコンベヤ上に載置してコンベアによってヒータ装置に搬送させ、ヒータ装置によって積層体と板状体とを加熱した後に、コンベアによって一対のプレス板に搬送させ、一対のプレス板によって加熱された積層体と板状体とを押圧してもよい。
【0058】
(4)配置工程において、板状体に載せられる積層体の体勢は限定されない。例えば、積層体が全体として平板状である場合は、板状体に対し積層体の裏面(第1層の裏面)の全面が面接触していてもよい。また、積層体が全体として曲がっている場合は、板状体に対し積層体の両端の角のみが板状体に線接触し、積層体の中央部分が板状体から浮いた体勢をなしていてもよい。
【0059】
(5)上記実施形態では、積層体は、床材の端材としたが、これに限定されない。例えば、積層体は、床材そのものでもよく、床材以外の乗物用部材(ドアトリム等の乗物用内装材の基材、吸音材、緩衝材等)であってもよい。
【0060】
(6)上記実施形態で例示した積層体の剥離方法は、車両用の積層体に限定されず、種々の乗物において用いられる積層体に対して行われてもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物において用いられる積層体に対しても上記積層体の剥離方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10…第1層、20…第2層、30…第3層、40…第4層、50…板状体、70,71…一対のプレス板、100,200…積層体、100A…平部、100B…曲部