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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101101
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 1/08 20060101AFI20240722BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20240722BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01P1/08 Z
G03H1/22
G02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004829
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 邦光
【テーマコード(参考)】
2K008
【Fターム(参考)】
2K008HH01
2K008HH06
2K008HH26
(57)【要約】
【課題】部品の3次元形状を良好に再現したホログラム像が用いられた車両表示装置を得る。
【解決手段】ここでは、視線方向Uの周りでディスプレイ10を筒状に囲むフード20が設けられる。再生用光源30はこのフード20に固定される。車両用表示装置1においては、再生用光L4は直接ホログラム素子200に入射せず、板状の光制御素子40に入射する。光制御素子40は、再生用光L4のホログラム素子200に対する入射角度がホログラム素子200の法線方向に近くなるように偏向させる。光補正素子50は、ユーザ側からみたホログラム像の位置を調整するように、回折光の光路を補正する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、情報を表示するディスプレイである表示部が用いられ、運転者が前記表示部の画面を視認する際に前記画面に重畳されたホログラム像が形成される車両用表示装置であって、
前記ホログラム像が記録されたホログラム素子と、
前記ホログラム素子に照射されることによって前記ホログラム像を再生させる再生用光を発する再生用光源と、
を具備し、
前記再生用光源は、前記運転者の眼と前記画面とを結ぶ前記画面の法線方向である視線方向に沿って前記運転者が前記画面を視認した際に前記画面の外側に設けられ、
前記ホログラム素子は、前記視線方向において前記画面と前記再生用光源との間に設けられ、
前記ホログラム素子の前記視線方向における前記再生用光源側において、前記再生用光の前記ホログラム素子に対する入射角を、前記法線方向に近い側に偏向する光制御素子が設けられたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示部及び前記ホログラム素子を前記運転者側からみて前記視線方向の周りで囲むフードを具備し、
前記再生用光源は前記フードに固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記運転者からみた前記ホログラム像の前記視線方向と垂直な位置を補正するように前記ホログラム素子からの回折光を偏向する光補正素子が、前記光制御素子と空隙を介して前記光制御素子と前記画面との間に設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記光制御素子と前記光補正素子は、前記空隙が形成された状態で互いに固定されて構成されたことを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記光制御素子及び前記光補正素子における光の入射面はフレネルレンズ形状とされたことを特徴とする請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記画面において、前記車両の速度が円周上の位置として表される速度表示が表示され、
前記ホログラム像は、前記速度表示を同心で囲む円筒形状とされて、速度計として用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて各種の情報を表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、現在の速度を表示する速度計(スピードメーター)や、エンジン回転数を表示する回転計(タコメーター)等が搭載されている。従来は、これらの各々は部品として設けられて搭載されたが、近年は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されたディスプレイを用い、この表示画面にスピードメータやタコメータ等を仮想的に表示させて用いる場合も多い。この場合、単一の大きなディスプレイ上に速度計、回転計等を表示させることができるため、部品点数を減らし、インジケータパネル周りの構成を簡略化することもできる。また、この場合、例えば単一のディスプレイ上において、回転計を表示させる場合と、回転計は表示させず代わりにナビゲーション画面(地図)を表示させるような動作も容易となり、これによってユーザ(運転者)はこのディスプレイから有効な情報を容易に得ることができるため、安全運転にも有効である。
【0003】
一方で、この場合、例えばこのような速度計、回転計(表示装置)は2次元的な表示となるため、実体の部品として構成された従来の表示装置に慣れたユーザ(運転者)にとっては違和感が大きい。また、高級感という観点からも、これらの仮想的な表示装置は実体の部品とされた表示装置と比べて劣る場合もある。
【0004】
このような2次元的な表示と3次元的な他の部品とを組み合わせ用いることによって、こうした点を解消し、見やすく高級感のある表示装置を得ることができる。しかしながら、このような3次元的な実体である部品を上記のようなディスプレイと組み合わせた場合、例えば前記のような画面の切替を行う際には、表示される画面に応じてこの部品を除去することが必要となる場合がある。このため、ディスプレイの画面の表示とこのような部品の有無を連動させる必要があり、このような実体としての部品を用いることは適切ではない。
【0005】
こうした点を考慮し、特許文献1には、このようにディスプレイの表示と組み合わせる部品を実体の部品とせずに、3次元的に表示されるホログラム像とする技術が記載されている。ホログラム像は、実体の部品の3次元像が記録されたホログラム板(ホログラム素子)に対してレーザ光を照射することによって3次元的に再生され、ユーザ(運転者)からはこの部品が実体として存在しているものと同様に認識される。また、このホログラム像のオン・オフは照射されるレーザ光のオン・オフと連動する。このため、必要な場合においてのみこのホログラム像を再生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-303386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ある部品のホログラム像を記録する際には、この部品を照明するレーザ光の光源、この部品、ホログラム像が記録されるホログラム素子の位置関係を適切に定めた上で、この記録を行う必要がある。3次元形状が良好に再生されるようなホログラム像を作成するためには、これらの位置関係には一定の制限が存在する。一般的には、この記録は、車両とは無関係の環境において行われ、このような記録時の態様(部品、ホログラム素子、光源等の位置関係)はここで適切に実現することができる。
【0008】
このように位置関係に一定の制限が存在するのは、ホログラム像の記録時だけでなく、ホログラム像の再生時においても同様であり、基本的には、3次元形状を良好に再生するためには、再生時の光源とホログラム素子の位置関係は、記録時における位置関係と等しい(近い)ことが要求される。しかしながら、記録時とは異なり、ホログラム像の再生は実際の車両上で行われる。この場合には、例えばホログラム素子と再生用の光源との間の位置関係、あるいはホログラム像と併用されるディスプレイとこれらとの間の位置関係は、大きく制限される。このため、再生時において光源、ホログラム素子、ディスプレイ等の位置関係を適切にすることは容易ではなく、このホログラム像によって良好に部品の3次元形状を再生することは困難であった。
【0009】
このため、部品の3次元形状を良好に再現したホログラム像が用いられた車両表示装置が求められた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両に搭載され、情報を表示するディスプレイである表示部が用いられ、運転者が前記表示部の画面を視認する際に前記画面に重畳されたホログラム像が形成される車両用表示装置であって、前記ホログラム像が記録されたホログラム素子と、前記ホログラム素子に照射されることによって前記ホログラム像を再生させる再生用光を発する再生用光源と、を具備し、前記再生用光源は、前記運転者の眼と前記画面とを結ぶ前記画面の法線方向である視線方向に沿って前記運転者が前記画面を視認した際に前記画面の外側に設けられ、前記ホログラム素子は、前記視線方向において前記画面と前記再生用光源との間に設けられ、前記ホログラム素子の前記視線方向における前記再生用光源側において、前記再生用光の前記ホログラム素子に対する入射角を、前記法線方向に近い側に偏向する光制御素子が設けられている。
前記表示部及び前記ホログラム素子を前記運転者側からみて前記視線方向の周りで囲むフードを具備し、前記再生用光源は前記フードに固定されていてもよい。
前記運転者からみた前記ホログラム像の前記視線方向と垂直な位置を補正するように前記ホログラム素子からの回折光を偏向する光補正素子が、前記光制御素子と空隙を介して前記光制御素子と前記画面との間に設けられていてもよい。
前記光制御素子と前記光補正素子は、前記空隙が形成された状態で互いに固定されて構成されていてもよい。
前記光制御素子及び前記光補正素子における光の入射面はフレネルレンズ形状とされていてもよい。
前記画面において、前記車両の速度が円周上の位置として表される速度表示が表示され、前記ホログラム像は、前記速度表示を同心で囲む円筒形状とされて、前記車両用表示装置は速度計として用いられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、部品の3次元形状を良好に再現したホログラム像が用いられた車両表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両用表示装置において表示される画像の例である。
図2】ホログラム像の記録時の構成の一例を示す図である。
図3】ホログラム像の再生時の構成の一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る車両表示装置の構成を示す図である。
図5】フレネルレンズの形態の例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る車両表示装置における、光制御素子がある場合における再生用光と回折光の光路を模式的に示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る車両表示装置における、光制御素子と光補正素子がある場合における再生用光と回折光の光路を模式的に示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係る車両表示装置において、光制御素子と光補正素子とを組み合わせて固定する際の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る車両用表示装置について説明する。この車両用表示装置1は、車両に搭載された状態で、ユーザ(運転者)から視認されて用いられる。ここでこのユーザにとって視認されるのは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等であるディスプレイの画面と、実体ではないがユーザにとっては3次元的に表示されるために実体と同様に視認されるホログラム像である。ホログラム像はホログラム(ホログラム素子)に照射光(レーザ光)を照射することによって再生されるため、この照射光の光源も設けられる。
【0015】
図1は、この車両用表示装置1において表示される画像(映像)の構成の例を示す図である。図1(a)は、この画像をディスプレイ(表示部)10の法線方向からみた平面図である。この画像は速度計とされ、この画像においては、円周上に配置された複数の目盛C1、目盛C1に対応した速度(km/h)を示す目盛数値C2、現在の速度を示す指針C3が設けられる。この画像においては、目盛C1、目盛数値C2は変化せず、指針C3の方向(設定角度)が現在の速度に応じて設定変化し、この指針C3が示す目盛C1に対応した数値がこの速度となる。この際、半透明の円環状のメーター枠C4が目盛C1と重複するように設けられることにより、この速度計の視認性が高められている。
【0016】
図1(b)(c)は、実際のこの画像の構成を模式的に示す分解図であり、図1(b)はこの画像の平面における分解図、図1(c)はこの画像をディスプレイ10の法線方向から傾斜した方向からみた斜視図である。図1(b)に示されるように、図1(a)における目盛C1、目盛数値C2、指針C3はディスプレイ10の画面に表示されるが、メーター枠C4はディスプレイ10には表示されず、ユーザ(運転者)から見てディスプレイ10の画面に重畳するように別途形成される。
【0017】
また、この車両用表示装置1においては、図1に示された画像(速度計)を表示させず、代わりにディスプレイ10の画面に地図を表示させ、例えば速度は別途デジタル表示することもできる。この場合には、ディスプレイ10では目盛C1、目盛数値C2、指針C3は表示されず、メーター枠C4の表示も行われないように設定される。
【0018】
ここで、目盛C1、目盛数値C2、指針C3はディスプレイ10の画面における2次元的な表示となるのに対し、メータ枠C4は、図1(c)に示されるように立体的(3次元的)な表示とされる。これにより、図1(a)の表示の視認性を高めることができる。ユーザ側からみたメータ枠C4のこのような表示は、メータ枠C4をホログラム像として形成することによって実現することができる。上記の技術については、特許文献1に記載されたものと同様である。このようなホログラム像は、レーザ光を実体の部品に照射することによって作成されたホログラム素子を用いて形成することができる。
【0019】
図2においては、このようなホログラム素子を形成する(ホログラム像を記録する)際の構成を模式的に示す図である。ここでは、ホログラム像として表示される表示部品100(メータ枠C4の実体)のホログラム像がホログラム素子200に記録されるものとする。このためのレーザ光Lを発する記録用光源210が用いられ、このレーザ光Lはビームスプリッタ(ハーフミラー)220に入射して照明光L1と参照光L2に2分割される。照明光L1が物体照射用ミラー230を介して表示部品100を照射することによって、表示部品100によって照明光L1が回折された物体光L3が発せられる。この物体光L3は板状のホログラム素子200を照射する。なお、物体照射用ミラー230は、反射によって照明光L1の光路を変える(偏向する)だけでなく、表示部品100全体が照明光L1で照明されるように照明光L1を適宜発散・集光させる。
【0020】
一方、参照光L2も参照光用ミラー240を介してホログラム素子200を照射する。このため、ホログラム素子200上では物体光L3と参照光L2が干渉する。ホログラム素子200は入射した物体光L3と参照光L2の干渉後の光強度を明暗として記録する。この干渉後の光強度には表示部品100の立体的形状の情報が反映される。
【0021】
なお、前記の物体照射用ミラー230と同様に、参照光用ミラー240も、単に反射によって参照光L2の光路を変えるだけでなく、物体光L3と対応させて参照光L2がホログラム素子200を照射するように、参照光L2を適宜発散・集光させる。図2においてはこの発散角はθ1、ホログラム素子200の法線Nに対する参照光L2の光軸(中心)の角度がθ2とされる。すなわち、ホログラム素子200の参照光L2による照明条件はθ1、θ2で定まる。
【0022】
一方、図3は、このように記録済みのホログラム素子200を用いてホログラム像の再生を行う際の構成を図2に対応させて示す図である。ここで、前記のようにこの場合にはディスプレイ10が組み合わされるものとし、ユーザの視線方向はUとされ、車両表示装置においては、これは図2におけるホログラム素子200の法線Nと等しい。ホログラム素子200はディスプレイ10に近接して積層され、前記の記録用光源210と同一(同一の波長のレーザ光を発する)の再生用光源310が用いられ、ここから発せられた再生用光L4はこの状態のホログラム素子200を照射する。この再生用光L4のホログラム素子200からの回折光L5が視線方向Uの先にあるユーザの眼に入射し、この回折光L5においては、表示部品100の立体的な形状が再現される。これらの内容は、周知のホログラフィ技術におけるものと同様である。
【0023】
ここで、図2においてホログラム素子200への記録をする際の参照光L2の照明条件としての前記のθ1、θ2に対応して、図3における再生用光L4の照明条件としても、θ1Aとθ2Aが定義される。前記のように、図2におけるθ1、θ2は、適正にホログラム像がホログラム素子200に記録されるように適宜設定される。例えば、θ2は、参照光L2が垂直入射(θ2=0°)とはならない範囲で小さくすることが好ましい。このように記録されたホログラム像を適正に再生するためには、図2における照明条件と図3における照明条件を等しくする(θ1=θ1A、θ2=θ2A)、あるいは近くすることが好ましい。一方、再生用光源310は、ユーザがディスプレイ10を視認する際の視野の外側に設置される必要がある。
【0024】
このためには、図3における再生用光源310は、ホログラム素子200及びディスプレイ10から遠い位置にあることが好ましい。しかしながら、車両用表示装置においては、ディスプレイ10の視線方向Uに沿った手前側にはユーザが位置するため、このように離れた箇所に再生用光源310を設けた場合には、例えばユーザの動作等によって再生用光L4が遮られる場合もある。こうした状況を回避するためには、再生用光源310はホログラム素子200及びディスプレイ10に近い位置に設けることが必要である。一方で、再生用光源310はユーザからみてディスプレイ10の画面と重複しないことが要求される。この場合、θ2Aを前記のθ2のように小さくすることは困難である。なお、図2における参照光用ミラー240と同様のミラーを再生用光L4の照射のために用いた場合には再生用光源310の位置は適宜変更が可能であるが、この場合には、このミラーの位置が上記と同様に制限されるため、状況は同様である。
【0025】
本発明の実施の形態に係る車両用表示装置1においては、再生用光源30がホログラム素子200及びディスプレイ10に近く、かつユーザからみて再生用光源30はディスプレイ10の画面と重複しないように配置されるにも関わらず、図3におけるθ2Aが小さく(θ2に近く)なるような構成とされる。以下に、この構成について説明する。
【0026】
図4は、この車両用表示装置1の構成を図3に対応させて示す図である。ここでは、視線方向Uの周りでディスプレイ10(ホログラム素子200)を筒状に囲むフード20が設けられる。フード20が設けられることによって、太陽光等がフード20で囲まれた内部に進入しにくくなるため、これによってもこの車両用表示装置1の視認性を高めることができる。図4におて、M1(ディスプレイ10の大きさ)、M2(フード20の高さ)は共に100~150mm程度である。ユーザは、視線方向Uにおいて、フード20の先端部分よりも図示の範囲外の右側における外側に位置する。
【0027】
ここで、この車両用表示装置1においては、再生用光源30はこのフード20に固定される。これにより、ユーザからみてこの再生用光源30はディスプレイ10の画面の外側に位置する。また、再生用光源30がフード20内に設けられれば、ホログラム素子200に達する前の再生用光L4が遮られることも発生しにくい。
【0028】
一方、この場合には、再生用光源30は視線方向Uに沿った範囲でホログラム素子200に近い側において視線方向Uからみた外側からホログラム素子200を照射するため、図3における再生用光L4と視線方向Uとの間の角度θ2Aを小さくする(θ2Aを図2におけるθ2に近くする)ことは困難となる。このため、この車両用表示装置1においては、再生用光L4は直接ホログラム素子200に入射せず、板状の光制御素子40に入射し、入射角がθ2に近い角度とされて光制御素子40から出射し、ホログラム素子200に入射するように設定される。すなわち、光制御素子40は、再生用光L4のホログラム素子200に対する入射角度がホログラム素子200の法線方向に近くなるように偏向させる。
【0029】
ここで、このような光制御素子40を設けた場合には、ホログラム素子200から発せられる回折光L5も光制御素子40を通過した後にユーザ側に到達する。このため、光制御素子40の有無によって、例えばユーザが認識するホログラム像の位置が変化する。図1に示されたように、ディスプレイ10の画面とホログラム像(メーター枠C4)の位置は整合することが要求されるため、光補正素子50は、ユーザ側からみたこのようなホログラム像の位置を調整するように、回折光L5の光路を補正する。
【0030】
すなわち、この車両用表示装置1においては、再生用光源30をホログラム素子200の近傍かつ視線方向Uからみた外側に設け、かつ光制御素子40を用いたことによって、再生用光L4の照明条件を記録時における参照光L2の照明条件に近づけることができ、これによってホログラム素子200によるホログラム像を高精度で再生することができる。この際におけるユーザ側からみたホログラム像とディスプレイ10の画面の位置関係は、光補正素子50によって調整することができる。
【0031】
以下に、光制御素子40、光補正素子50について具体的に説明する。上記のように再生用光L4の光路を偏向する光制御素子40は、例えばガラス製や透明な樹脂材料性のレンズやプリズムを用いて構成することもできる。しかしながら、図4に示されるように、これらはディスプレイ10と組み合わせた積層構造の中で用いられるため、これらは薄い板状であることが好ましく、通常のレンズやプリズムを単体として用いた場合には、このような形態を実現することは容易ではない。このような薄い板状の形態を実現するためには、この光制御用素子40をフレネルレンズとして構成する、あるいは、光制御用素子40の表面をフレネルレンズ形状とすることが好ましい。
【0032】
図5(a)は、一般的なフレネルレンズFLの一例の形状を示す平面図(上)、そのA-A方向の断面図(下)である。周知のように、フレネルレンズFLにおいては、通常のレンズにおける屈折面となる表面が複数環状の形状で分断されて形成された複数の屈折面FSが設けられ、隣接する屈折面FSの間に段差を形成し、表面の高さが一定範囲内に収まるような形態とされる。光制御素子40の表面をこのような形状とすることによって、光制御素子40を薄い板状とすることができる。光補正素子40は例えば透明な樹脂材料で構成され、この場合には、型枠を用いた成形によってこのような形状を容易に実現することができる。
【0033】
図6は、この光制御素子40が用いられた場合の再生用光L4と回折光L5の光路を模式的に示す図である。ここでは、光制御用素子40の図4における右側(再生用光源310がある側)の表面をS1、左側(ホログラム素子200がある側)の表面をS2としている。光制御素子40の表面をフレネルレンズ形状とした場合には、表面S1、S2は図5(a)における一つの屈折面FSに対応する。ここでは、表面S1は視線方向Uに垂直であるものとする。
【0034】
前記の通り、まず、再生用光L4は入射角度θ2A(>θ2)で入射側の表面S1に入射する。再生用光L4は表面S1で屈折することによって光制御素子40内でその方向が図中でより水平に近くなり、出射側の表面S2で屈折することによってその方向が更に水平に近づき、ホログラム素子200への入射角度をより小さなθ2Bとすることができる。
【0035】
一方、ホログラム素子200から垂直に発せられた回折光L5は、逆に表面S2から入射して表面S1から出射し、表面S1、S2の各々で屈折することによって、ユーザ側に向かう。図6における表面S1と表面S2のなす角度θpは、θ2Bをθ2に近く、光制御素子40から出射後の回折光L5が視線方向U(図中水平)に近くなるように設定することができる。
【0036】
このように光制御素子40は再生用光L4のホログラム素子200に対する入射角度を適正にするが、この際、ホログラム素子200から発せられた回折光L5もこの光制御素子40の影響を受ける。光補正素子50は、この影響を補正するために用いられる。図7(a)は、光補正素子50を図6における光制御素子40と組み合わせた場合の光路を示す図であり、図7(b)はその破線で囲まれた部分の部分拡大図である。ここで、光補正素子50の表面S3(再生用光L4の入射側)、S4(再生用光L4の出射側)も光制御素子40と同様にフレネルレンズ形状とされ、光制御素子40と光補正素子50を構成する材料は同一であるものとする。
【0037】
ここで、光制御素子40(表面S2)と光補正素子50は間隔Dの空隙を介して設置されるものとする。この場合、再生用光L4、回折光L5の光路は光制御素子40(表面S1、S2)、光補正素子50(表面S3、S4)の影響を受ける。このため、ホログラム素子200を照射する再生用光L4の光路、ユーザ側に向かう回折光L5の光路は、光制御素子40における表面S1と表面S2のなす角度θpだけでなく、光補正素子50における表面S3と表面S4のなす角度θsの影響も受ける。
【0038】
このうち、回折光L5は、光補正素子50内、空隙、光制御素子40内を順次通過するが、図7(b)に示されるように、この際、光補正素子50内における回折光L5と光制御素子40内における回折光L5は平行となるが、これらは間隔D1だけ離間する。このため、視線方向Uの先のユーザからみたホログラム像の位置は、図7(a)の光補正素子50の有無によって影響を受ける。この際、D=0の場合にはD1=0となり、D1はDに比例する。光制御素子40におけるθp、光補正素子50におけるθsは光制御素子40、光補正素子50の製造時において定まるのに対し、間隔Dは、これらが個別に製造された後で調整することが可能である。このため、視線方向Uの先のユーザからみたホログラム像の位置を、間隔Dによって調整することができ、この調整によって、図1におけるディスプレイ10の画面とホログラム像(メーター枠C4)の位置関係を調整することができる。
【0039】
図8は、このように光制御素子40と光補正素子50を一定の間隔Dで組み合わせた構成の例を示す図である。なお、図7における間隔Dは視線方向Uから傾斜した表面S2と表面S3の間隔であったのに対し、図8における間隔Dは視線方向Uに沿ったこれらの間の間隔となるため、厳密には図7における間隔Dとは異なるが、両者は対応するため、ここでは同様にDと記載している。図8(a)の構成においては、共に薄い板状とされた光制御素子40と光補正素子50の間に、端部側においてスペーサ60を介して、これらが接合される。この場合、間隔Dは、スペーサ60の厚さによって調整することができるため、厚さが異なる複数種類のスペーサ60を予め製造しておけば、間隔Dの微調整(ホログラム像の位置)を、スペーサ60の選択によって容易に行うことができる。
【0040】
図4において、光制御素子40と光補正素子50の機能を一体化して光制御素子として用いてもよい。しかしながら、このように光制御素子40と光補正素子を別体として形成し、これらの間の位置関係を調整することによって、再生用光L4、回折光L5の光路、及びこれによるホログラム像の位置の調整を容易に行うことができ、これらの調整の自由度を高めることができる。
【0041】
一方、図8(b)の構成においては、光補正素子50における光制御素子40側に、前記のスペーサ60に対応した突起51が形成されて、同様に光補正素子50と光制御素子40が接合される。前記のように、光補正素子50を樹脂材料で構成した場合には、成形時にこのような突起51を容易に形成することができる。なお、光補正素子50側ではなく光制御素子40側に突起を設けてもよい。また、このような突起と前記のスペーサとを組み合わせてもよい。
【0042】
なお、光制御素子40、光補正素子50の表面形状は、図5(a)に示されたようなフレネルレンズ形状、あるいはこの中の部分的な形状とすることができる。また、例えば図2、3における参照光L2の発散角θ1、再生用光L4の発散角θ1Aは図中上下方向における広がりに対応しているが、この広がりとしては、各図の紙面垂直方向(水平方向)においても同様に考えることができる。この場合、上下方向と水平方向の発散角は独立して定めることができる。この場合、これに応じて、光制御素子40、光補正素子50の表面形状を、図5(b)に示されるように、楕円形状を基本としたフレネルレンズ形状としてもよい。
【0043】
また、前記のように、ホログラム素子200には、光の干渉に基づく光の強弱が明暗のパターンとして記録されるが、ホログラム素子200の母材を透明な基板とし、かつレーザ光の波長を適正に設定することによって、再生用光L4が照射されない状態において、ユーザがホログラム素子200自身を視認しにくくすることができる。この場合には、ホログラム素子200全体は認識しにくく、ホログラム像のみを再生用光L4の照射によって表示させることができる。
【0044】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用表示装置
10 ディスプレイ(表示部)
20 フード
30、310 再生用光源
40 光制御素子
50 光補正素子
51 突起
60 スペーサ
100 表示部品
200 ホログラム素子
210 記録用光源
220 ビームスプリッタ(ハーフミラー)
230 物体照射用ミラー
240 参照光用ミラー
C1 目盛
C2 目盛数値
C3 指針
C4 メーター枠(ホログラム像)
FL フレネルレンズ
FS 屈折面
L レーザ光
L1 照明光
L2 参照光
L3 物体光
L4 再生用光
L5 回折光
S1~S4 表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8