(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101116
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】フィルム搬送機、フィルム搬送方法、及びフィルム製造装置
(51)【国際特許分類】
B65H 20/02 20060101AFI20240722BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20240722BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20240722BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20240722BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20240722BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240722BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20240722BHJP
B29C 55/20 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B65H20/02 Z
B29C48/305
B29C48/08
B29C48/395
B29C48/88
B29C48/25
B29C55/14
B29C55/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004858
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】澤田 朋樹
【テーマコード(参考)】
3F103
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
3F103AA03
3F103BA01
3F103BA25
3F103EA09
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK11
4F207KK64
4F207KL84
4F207KW41
4F210AJ08
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QL14
(57)【要約】
【課題】フィルムを自動的に送るフィルム搬送機を提供できる。
【解決手段】フィルム83を上流から下流に向けて送るフィルム搬送機は、フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロールUR71及び第1下ロールLR71と、第1上ロールと第1下ロールとが接近するように第1上ロールと第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、第1上ロール及び第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロールUR72及び第2下ロールLR72と、第2上ロールと第2下ロールとが接近するように第2上ロールと第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源(例えば、昇降機構725)と、第2上ロール及び第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む送り機構70を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを上流から下流に向けて送るフィルム搬送機であって、
フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、
前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、
前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、
前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、
前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、
前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、
を含む送り機構
を備える、フィルム搬送機。
【請求項2】
前記送り機構は、前記第1上下駆動源により、前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近し、フィルムを把持し、前記第1回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送り、
前記第2上下駆動源により、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近し、送られたフィルムを把持し、前記第2回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送るように構成される、
請求項1に記載のフィルム搬送機。
【請求項3】
前記送り機構より上流の縦延伸領域に設けられ、フィルムを縦延伸するとともに下流に向けて搬送する縦延伸機と、
前記送り機構より下流の横延伸領域に設けられ、フィルムを横延伸するとともに下流に向けて搬送する横延伸機と、を更に備える、請求項1に記載のフィルム搬送機。
【請求項4】
前記第2上ロールは、第2左上ロールと第2右上ロールを含み、前記第2下ロールは、第2左下ロールと第2右下ロールを含み、
前記第2左上ロールを回転させる左上回転駆動源と、
前記第2右上ロールを回転させる右上回転駆動源と、
前記第2左下ロールを回転させる左下回転駆動源と、
前記第2右下ロールを回転させる右上回転駆動源と、
前記左上回転駆動源、前記右上回転駆動源、前記左下回転駆動源及び右上回転駆動源のそれぞれの回転速度を制御する制御部と、を備える、請求項1に記載のフィルム搬送機。
【請求項5】
前記フィルムの蛇行を検知する蛇行検知部と、
前記蛇行が検知された場合に、前記制御部は、検知結果に基づいて、フィルムの蛇行を修正するように、前記左上回転駆動源、前記右上回転駆動源、前記左下回転駆動源及び右上回転駆動源のそれぞれの回転速度を制御する、請求項4に記載のフィルム搬送機。
【請求項6】
前記第2左上ロールと前記第2左下ロールとが接近するように前記第2左上ロールと前記第2左下ロールとを相対的に移動させる上下駆動源と、
前記第2右上ロールと前記第2右下ロールとが接近するように前記第2右上ロールと前記第2右下ロールとを相対的に移動させる上下駆動源と、
を備える、請求項4に記載のフィルム搬送機。
【請求項7】
前記第1上ロールは、前記フィルムとの間の静電気を除去するための除電器を有する、請求項1に記載のフィルム搬送機。
【請求項8】
フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、
前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む送り機構を用いた、フィルムを上流から下流に向けて送るフィルム搬送方法であって、
前記第1上下駆動源により、前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近し、フィルムを把持し、前記第1回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送り、
前記第2上下駆動源により、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近し、送られたフィルムを把持し、前記第2回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送る、フィルム搬送方法。
【請求項9】
投入された樹脂原料を溶融させて押し出す押出機と、
前記押出機に連結され、溶融樹脂をフィルム状に成形するダイと、
前記ダイから押し出されたフィルム状の前記溶融樹脂を冷却しつつ、前記溶融樹脂が固化した樹脂フィルムを搬出する冷却ロールと、
前記冷却ロールより下流に設けられ、フィルムを縦延伸するとともに下流に向けて送る縦延伸機と、
フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、
前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む送り機構と、
前記送り機構より下流に設けられ、フィルムを横延伸するとともに下流に向けて送る横延伸機と、を備える、フィルム製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム搬送機、フィルム搬送方法、及びフィルム製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、押出成形されたフィルムを搬送し、フィルムを延伸する延伸機及びフィルムをクリップにより把持させるクリップ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、縦延伸領域と横延伸領域との間においては、フィルムを送ることができないため、複数人による手作業でフィルムを送っていた。こうした手作業は、面倒で非効率である。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、フィルムを自動的に送るフィルム搬送機等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るフィルム搬送機では、
フィルムを上流から下流に向けて送るフィルム搬送機であって、
フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、
前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、
前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、
前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、
前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、
前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、
を含む送り機構を備える。
【0007】
一実施形態に係るフィルム搬送方法では、
フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、
前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む送り機構を用いた、フィルムを上流から下流に向けて送るフィルム搬送方法であって、
前記第1上下駆動源により、前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近し、フィルムを把持し、前記第1回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送り、
前記第2上下駆動源により、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近し、送られたフィルムを把持し、前記第2回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送る。
【0008】
一実施形態に係るフィルム製造装置では、
投入された樹脂原料を溶融させて押し出す押出機と、
前記押出機に連結され、溶融樹脂をフィルム状に成形するダイと、
前記ダイから押し出されたフィルム状の前記溶融樹脂を冷却しつつ、前記溶融樹脂が固化した樹脂フィルムを搬出する冷却ロールと、
前記冷却ロールより下流に設けられ、フィルムを縦延伸するとともに下流に向けて送る縦延伸機と、
フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、
前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む送り機構と、
前記送り機構より下流に設けられ、フィルムを横延伸するとともに下流に向けて送る横延伸機と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、フィルムを自動的に送るフィルム搬送機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】いくつかの実施形態に係るフィルム搬送機及びフィルム製造装置の全体構成を示す模式的斜視図である。
【
図2】いくつかの実施形態に係るフィルムの送り機構の構成及び動作を示す模式的側面図である。
【
図3】いくつかの実施形態に係るフィルムの送り機構及びクリップ装置を示す模式的斜視図である。
【
図4】他の実施形態に係るフィルムの送り機構及びクリップ装置を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。
【0012】
<フィルム製造装置の全体構成>
まず、
図1を参照して、第1の実施形態に係る樹脂フィルム搬送機を含むフィルム製造装置の全体構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るフィルム製造装置の全体構成を示す模式的斜視図である。
【0013】
なお、
図1及びその他の図面に示したxyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正向きが鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。また、本明細書において、フィルムは、樹脂フィルムであり得、樹脂シートを含み得る。
【0014】
図1に示すように、フィルム製造装置1は、押出機10、Tダイ20、冷却機30、縦延伸機40、送り機構70、横延伸機50、及び巻取機60を備えている。第1の実施形態に係るフィルム製造装置1は、押出機10に連結されたTダイ20のリップ間の隙間からフィルム状の溶融樹脂82aを押し出す押出成形タイプのフィルム製造装置である。なお、
図1では、第1ロール機構71及び第2ロール機構72の詳細部分は省略されている。
【0015】
図1に示した押出機10は、スクリュー式押出機である。押出機10では、x軸方向に延設されたシリンダ11の内部にx軸方向に延設されたスクリューが収容されている。シリンダ11のx軸負方向側端部の上側に、樹脂フィルム83の原料である樹脂ペレットを投入するためのホッパ13が設けられている。
【0016】
ホッパ13から供給された樹脂ペレットは、回転するスクリューの根元から先端に向かって、すなわちx軸正方向に搬送される。また、樹脂ペレットは、シリンダ11の内部において、加熱されると共に回転するスクリューによってせん断されて溶融し、溶融樹脂82に変化する。
【0017】
なお、図示しないが、スクリューには、例えば、減速機を介してモータが駆動源として連結される。また、シリンダ11の外周面には、長手方向の略全域に亘り、シリンダ11の内部を加熱するためのヒータが設けられており、シリンダ11の内部に投入された樹脂ペレットが加熱される。
【0018】
図1に示すように、Tダイ20は、押出機10の先端部(x軸正方向側端部)の下側に連結されている。Tダイ20の下端に位置するリップの隙間からフィルム状の溶融樹脂82aが下向き(z軸負方向)に押し出される。ここで、Tダイ20のリップ間隔を調整できる。製造される樹脂フィルム83の幅方向(y軸方向)における厚みが均一になるように、リップの長手方向(y軸方向)に沿った複数箇所において、Tダイ20のリップ間隔を調整できる。
【0019】
図1に示すように、冷却機30は、冷却ロールCR1~CR4を備える。
冷却ロールCR1は、Tダイ20から押し出されたフィルム状の溶融樹脂82aを冷却しつつ、フィルム状の溶融樹脂82aが固化した樹脂フィルム83を冷却ロールCR2に搬出する。冷却ロールCR1は、キャストロールとも呼ばれる。
【0020】
そして、
図1に示すように、冷却ロールCR2~CR4は、この順に樹脂フィルム83を冷却しつつ搬送する。冷却ロールCR1~CR4のそれぞれは、図示しない駆動源によって駆動される駆動ロールでもよい。駆動源は、例えばサーボモータ等の可変速モータである。
【0021】
なお、冷却ロールCR1~CR4のそれぞれは、樹脂フィルム83を冷却するための冷却機構を備えていてもよい。また、冷却ロールCR1~CR4のそれぞれは、樹脂フィルム83を加熱するための加熱機構を備えていてもよい。冷却機30は、樹脂フィルム83を搬送する駆動ロールを複数備えるため、本実施形態に係るフィルム搬送機の一形態になり得る。
【0022】
図1に示すように、縦延伸機40は、冷却機30から搬出された樹脂フィルム83を搬送しつつ、長手方向に延伸する。
図1に示した縦延伸機40は、11個のロールR1~R11を備えている。ロールR1~R11のそれぞれは、図示しない駆動源によって駆動される駆動ロールである。駆動源は、例えばサーボモータ等の可変速モータである。縦延伸機40は、本実施形態に係るフィルム搬送機の一形態である。
【0023】
なお、縦延伸機40は、樹脂フィルム83を搬送する複数の駆動ロールを備えればよく、縦延伸機40が備える駆動ロールの個数、配置は、適宜決定される。また、ロールR1~R11のそれぞれは、樹脂フィルム83を冷却するための冷却機構及び樹脂フィルム83を加熱するための加熱機構の少なくとも一方を備えてもよい。さらに、縦延伸機40は、樹脂フィルム83をロールR1~R11のいずれかに押し当てるためのニップロールを単数又は複数備えていてもよい。ニップロールは、駆動ロールではない。なお、フィルムの搬送経路において、縦延伸機40によりフィルムの縦延伸が行われる領域は、縦延伸領域とも呼ばれる。
【0024】
送り機構70は、縦延伸機40から搬出された樹脂フィルム83を、後続の横延伸機50に自動的に送る。これまで、縦延伸機40と横延伸機50とは、それぞれの送り機構が異なるため、縦延伸機40から搬出された樹脂フィルム83を、後続の横延伸機50に送るためには、複数人による手作業が必要であった。しかし、この作業は面倒で非効率あるので、本開示では、フィルムを把持する機能と送る機能を有するフィルムの送り機構70を新たに設けている。この送り機構70の詳細は、後述する。送り機構70は、本実施形態に係るフィルム搬送機の一形態になり得る。
【0025】
横延伸機50は、送り機構70から搬出された樹脂フィルム83をその幅方向(y軸方向)に延伸する。より詳細には、横延伸機50は、一対のレールRL1、RL2を備えている。そして、レールRL1、RL2の全体に、図示しない多数のクリップがスライド可能に並設されている。
【0026】
図1において、レールRL1、RL2に示した矢印は、クリップの移動方向を示している。
図1に示すように、レールRL1、RL2は、クリップが樹脂フィルム83の搬送方向(x軸正方向)に進む往路とその逆方向(x軸負方向)に進む復路とを備えたループ構造を有している。すなわち、横延伸機50では、ループ構造を有するレールRL1、RL2に沿って、クリップが周回する。
図1には示されていないが、フィルムに対し、クリップクローザ(
図3及び
図4の501)によりテンタークリップを閉じる動作が行われる。
図1に示すように、レールRL1、RL2は、xz平面に平行な面に対して対称な構成を有している。
【0027】
図1に示すように、レールRL1及びレールRL2はいずれも、搬送方向(x軸正方向)に進む往路とその逆方向(x軸負方向)に進む復路とにおいて略平行に設けられている。レールRL1の復路は、樹脂フィルム83の幅方向外側(y軸負方向側)に設けられている。レールRL2の復路も、樹脂フィルム83の幅方向外側(y軸正方向側)に設けられている。
【0028】
図1に示すように、レールRL1、RL2の往路は、長手方向(x軸方向)の両端部に、x軸に平行な一対の平行部を備えると共に、両平行部の間に、y軸方向に斜行する斜行部を備えている。レールRL1の斜行部はy軸負方向に斜行し、レールRL2の斜行部はy軸正方向に斜行している。すなわち、レールRL1、RL2の往路の斜行部では、レールRL1とレールRL2とのy軸方向の間隔が、x軸正方向に進行するにつれて広くなっている。
【0029】
ここで、
図1に示すレールRL1、RL2の往路において、樹脂フィルム83と接触した部分では、クリップが樹脂フィルム83の幅方向(y軸方向)両端部を把持しつつ、レールRL1、RL2に沿ってx軸正方向に移動する。そのため、
図1に示すように、レールRL1、RL2の往路の斜行部では、樹脂フィルム83がx軸正方向に搬送されつつ、幅方向(y軸方向)に延伸される。他方、レールRL1、RL2の往路の平行部では、樹脂フィルム83はx軸正方向に搬送されるのみであって、幅方向(y軸方向)に延伸されない。
【0030】
図1に示す横延伸機50は、樹脂フィルム83を搬送するためのクリップを駆動させる駆動源を有している。駆動源は、例えばサーボモータ等の可変速モータである。横延伸機50は、本実施形態に係るフィルム搬送機の一形態になり得る。
【0031】
横延伸機50から搬出された樹脂フィルム83は、巻取機60によって巻き取られる。巻取機60は図示しない駆動源によって駆動される駆動ロールである。なお、巻取機60は、駆動源によって駆動される複数の駆動ロールを含んでもよい。その場合、巻取機60は、本実施形態に係るフィルム搬送機の一形態になり得る。なお、フィルムの搬送経路において、横延伸機50によりフィルムの横延伸が行われる領域は、横延伸領域とも呼ばれる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るフィルム搬送機は、冷却機30、縦延伸機40、送り機構70、横延伸機50、及び巻取機60の一部又は全部が、本実施形態に係るフィルム搬送機の一態様であり得る。
【0033】
<送り機構の全体構成>
図2は、フィルムの送り機構の構成を示す模式的側面図である。一例として、送り機構70は、フィルムの搬送経路において、縦延伸機40の下流で、かつ横延伸機50の上流に設けられ得る。
【0034】
送り機構70は、縦延伸機40から送られたフィルムを把持し、その後、フィルムを把持しながら下流の横延伸機50に送る。送り機構70は、上流側に設けられた第1ロール機構71と、下流側に設けられた第2ロール機構72を有する。第1ロール機構71は、フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロールUR71及び第1下ロールLR71と、第1上ロールUR71と第1下ロールLR71とが接近するように前記第1上ロールと第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、第1上ロールUR71及び第1下ロールLR71のうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、を含む。
【0035】
なお、
図2の例では、第1下ロールLR71は、高さが固定され、第1上ロールUR71が、不図示の第1上下駆動源により、第1下ロールLR71に接触するまで下降する。第1上ロールUR71及び第1下ロールLR71が、その間にフィルムを把持した後、第1上ロールUR71は、回転駆動源により、反時計回りに回転し、第1下ロールLR71は、回転駆動源により、時計回りに回転する。これにより、フィルムは、下流に向けて送られる。いくつかの実施形態では、第1上ロールUR71は、回転駆動源により、反時計回りに回転し、第1下ロールLR71は、回転駆動源を有しないフリーロールであってもよい。
【0036】
第2ロール機構72は、更に、フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロールUR72及び第2下ロールLR72と、第2上ロールUR72と第2下ロールLR72とが接近するように第2上ロールUR72と第2下ロールLR72とを相対的に移動させる第2上下駆動源(
図2では、725)と、第2上ロールUR72及び第2下ロールLR72のうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む。
【0037】
図2の例では、第2上ロールUR72は、上下駆動源725により、略水平に送られるフィルムの位置まで下降し、第2下ロールLR72は、上下駆動源(不図示)により、当該フィルムの位置(すなわち、第2上ロールUR72の下降位置)まで上昇する。すなわち、第2上ロールUR72は、第2下ロールLR72と接触する。第2上ロールUR72及び第2下ロールLR72がフィルムを把持した後、第2上ロールUR72は、回転駆動源により、反時計回りに回転し、第2下ロールLR72は、回転駆動源により、時計回りに回転する。これにより、フィルムは、下流に向けて送られる。なお、いくつかの実施形態では、第2上ロールUR72は、回転駆動源により、反時計回りに回転し、第2下ロールLR72は、回転駆動源を有しないフリーロールであってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2下ロールLR72が固定された下ベース部L720には、第2下ロールLR72の下流の中央付近に、補助下ロールSLR72が設けられてもよい。同様に、第2上ロールUR72が固定された上ベース部U720には、第2上ロールUR72の下流付近に、補助上ロールSUR72が設けられてもよい。補助下ロールSLR72及び補助上ロールSUR72は、前述した第2上ロールUR72と第2下ロールLR72との接触動作により、互いに接触する。これにより、補助下ロールSLR72及び補助上ロールSUR72は、フィルムを下流に送るのを助けることができる。補助下ロールSLR72及び補助上ロールSUR72の一方又は両方は、回転駆動源を有していてもよい。あるいは、補助下ロールSLR72及び補助上ロールSUR72はいずれも、回転駆動源を有しないフリーロールであってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1上ロールUR71が第1下ロールLR71に接触するまで下降する動作の後に、第2上ロールUR72が略水平に送られるフィルムの位置まで下降し、第2下ロールLR72が第2上ロールUR72の下降位置まで上昇する動作が行われ得る。他の実施形態では、第1上ロールUR71が第1下ロールLR71に接触するまで下降する動作と、第2上ロールUR72が略水平に送られるフィルムの位置まで下降し、第2下ロールLR72が第2上ロールUR72の下降位置まで上昇する動作とは、ほぼ同時に開始され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、フィルムの蛇行を検知する蛇行検知部90(例えば、カメラ、レーザセンサ、エッジセンサなどの各種センサ)が設けられてもよい。他の実施形態では、
図2に示すように、上ベース部U720には、フィルムのしわを検知するしわ検知部7121(例えば、カメラやエッジセンサ)が設けられてもよい。検知結果に基づく蛇行修正動作及びしわ除去動作の詳細な説明は後述する。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1上ロールUR71には、フィルムの静電気を除去するための除電器718が設けられてもよい。除電器718は、例えば、電圧印加式除電器であり、電極針、高圧電源及びアースから構成され得る。除電器718は、対象物であるフィルムがプラスに帯電していた場合、マイナスのイオンを発生させ、フィルムにぶつけることで、中和することができる。逆に除電器718は、フィルムがマイナスに帯電していた場合、プラスのイオンを発生させ、フィルムにぶつけることで、中和することができる。なお、除電器は、既知の様々な構成のものを使用することもできる。
【0042】
図3は、いくつかの実施形態に係るフィルムの送り機構及びクリップ装置を示す模式的斜視図である。
縦延伸機40(
図1)は、フィルムを、横延伸機50のクリップクローザ501まで送ると、第1ロール機構71の第1上ロールUR71及び第1下ロールLR71がフィルムを把持する。クリップクローザ501,501は、第1上ロールUR71及び第1下ロールLR71により把持されたフィルムの両端部に、それぞれクリップを閉じる。その後、
第1ロール機構71の第1上ロールUR71及び第1下ロールLR71は、フィルムを第2ロール機構72の第2上ロールUR72と第2下ロールLR72まで送る。第2上ロールUR72と第2下ロールLR72は、フィルムを把持した後、フィルムを下流に向けて送ることができる。
【0043】
このように、送り機構70は、横延伸のための、クリップクローザのクリップ留め動作を助けることができる。これにより、複数人による手作業が不要となり、フィルムの円滑な搬送を可能にすることができる。
【0044】
<その他の実施形態>
図4は、他の実施形態に係るフィルムの送り機構及びクリップ装置を示す模式的斜視図である。
他の実施形態では、第2ロール機構72の第2上ロールUR72は、第2左上ロールLUR72と第2右上ロールRUR72を含み得る。また、第2ロール機構72の第2下ロールLR72は、第2左下ロールLLR72と第2右下ロールRLR72を含み得る。第2ロール機構72は、図示していないが、第2左上ロールLUR72を回転させる左上回転駆動源と、第2右上ロールRUR72を回転させる右上回転駆動源と、第2左下ロールLLR72を回転させる左下回転駆動源と、第2右下ロールRLR72を回転させる右上回転駆動源とを更に備える。具体的には、左上回転駆動源は、第2左上ロールLUR72を第1回転数で反時計回りに回転させることができる。右上回転駆動源は、第2右上ロールRUR72を第2回転数で反時計回りに回転させることができる。左下回転駆動源は、第2左下ロールLLR72を第3回転数で時計回りに回転させることができる。右上回転駆動源は、第2右下ロールRLR72を第4回転数で時計回りに回転させる。制御部は、これらの左上回転駆動源、右上回転駆動源、左下回転駆動源及び右上回転駆動源のそれぞれの回転速度を独立して制御することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、送られるフィルム83の上方に(例えば、上ベース部U720の下部に)、フィルム83のしわを検知するしわ検知部7121(例えば、カメラやエッジセンサ)を設けてもよい。他の実施形態では、しわ検知部7121は、上ベース部U720とは離れた場所(例えば、天井など)であって、縦延伸機40と上ベース部U720との間に設けてもよい。制御部は、フィルムの撮像画像(すなわち、しわの検知結果)に基づいて、上下駆動源725によりフィルムの把持力を調整することができる。また、制御部は、フィルムの撮像画像に基づいて、フィルムのしわの位置に応じて、更に、独立した左右回転駆動源により、第2左上ロールLUR72と第2右上ロールRUR72の回転数を別々に変更することができる。これにより、フィルムのしわを除去することができる。
【0046】
他の実施形態では、第2ロール機構72は、第2左上ロールLUR72と第2左下ロールLLR72とが接近するように第2左上ロールと第2左下ロールとを相対的に移動させる第3上下駆動源と、第2右上ロールRUR72と第2右下ロールRLR72とが接近するように前記第2右上ロールと前記第2右下ロールとを相対的に移動させる第4上下駆動源と、を備えてもよい。制御部は、しわ検知部7121の検知結果(しわの位置)に基づいて、第3上下駆動源によるフィルムの把持力、及び第4上下駆動源によるフィルムの把持力をそれぞれ調整することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、縦延伸機40から送られるフィルム83の上方に、蛇行検知部90を設けてもよい。蛇行検知部90により、フィルムの蛇行が検知された場合に、第2ロール機構72は、検知結果(すなわち、蛇行の方向)に基づいて、フィルム83に対して、上下駆動源725によりフィルムの把持力を調整しつつ、左右独立回転駆動源の回転数を変更することができる。例えば、フィルムが進行方向に対して左側に蛇行していた場合は、右側の回転駆動源の回転数を、左側の回転駆動源の回転数より上げてもよい。他の実施形態では、制御部は、蛇行検知部90の検知結果(蛇行の方向)に基づいて、第3上下駆動源によるフィルムの把持力、及び第4上下駆動源によるフィルムの把持力をそれぞれ調整することができる。これにより、フィルムの蛇行を修正することができ、後続する横延伸を適切に行うことができる。
【0048】
なお、第2ロール機構72の動作は、不図示の制御部により制御されている。当該制御部は、蛇行検知部90など各種センサからのセンサ信号を受信し、センサ信号に基づき、第2ロール機構72等に関する各種駆動部を駆動させるように制御し得る。制御部は、記憶部に格納された各種プログラムに基づいて、各種制御を実行することができ、中央演算処理装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力ポート(I/O)等により実現される。
【0049】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0051】
いくつかの実施形態では、フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む送り機構を用いた、フィルムを上流から下流に向けて送るフィルム搬送方法が提供され得る。当該フィルム搬送方法は、前記第1上下駆動源により、前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近し、フィルムを把持し、前記第1回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送り、前記第2上下駆動源により、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近し、送られたフィルムを把持し、前記第2回転駆動源により、把持した当該フィルムを下流に向けて送る。
【0052】
他の実施形態では、投入された樹脂原料を溶融させて押し出す押出機と、前記押出機に連結され、溶融樹脂をフィルム状に成形するダイと、前記ダイから押し出されたフィルム状の前記溶融樹脂を冷却しつつ、前記溶融樹脂が固化した樹脂フィルムを搬出する冷却ロールと、前記冷却ロールより下流に設けられ、フィルムを縦延伸するとともに下流に向けて送る縦延伸機と、フィルムの搬送経路の上流に設けられた第1上ロール及び第1下ロールと、前記第1上ロールと前記第1下ロールとが接近するように前記第1上ロールと前記第1下ロールとを相対的に移動させる第1上下駆動源と、前記第1上ロール及び前記第1下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第1回転駆動源と、前記フィルムの搬送経路の下流に設けられた第2上ロール及び第2下ロールと、前記第2上ロールと前記第2下ロールとが接近するように前記第2上ロールと前記第2下ロールとを相対的に移動させる第2上下駆動源と、前記第2上ロール及び前記第2下ロールのうち少なくとも一方を回転させる第2回転駆動源と、を含む送り機構と、前記送り機構より下流に設けられ、フィルムを横延伸するとともに下流に向けて送る横延伸機と、を備える、フィルム製造装置が提供され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 フィルム製造装置
10 押出機
11 シリンダ
13 ホッパ
20 Tダイ
30 冷却機
40 縦延伸機
50 横延伸機
60 巻取機
70 送り機構
71 第1ロール機構
72 第2ロール機構
82a 溶融樹脂
83 フィルム
90 蛇行検知部
500 クリップ装置
501 クリップクローザ
718 除電器
725 昇降機構
7121 しわ検知部
CR1~CR4 冷却ロール
R1~R11 ロール
RL1、RL2 レール
UR71 第1上ロール
LR71 第1下ロール
UR72 第2上ロール
LR72 第2下ロール
RUR72 第2右上ロール
LUR72 第2左上ロール
RLR72 第2右下ロール
LLR72 第2左下ロール