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  • 特開-被処理水の膜処理方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101118
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】被処理水の膜処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240722BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20240722BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240722BHJP
【FI】
C02F1/44 D
C02F1/44 A
C02F1/44 C
C02F3/12 B
C02F1/28 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004861
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】早水 基頼
【テーマコード(参考)】
4D006
4D028
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA57Z
4D006KA01
4D006KB12
4D006KB14
4D006KB22
4D006KB25
4D006MC18
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB08
4D028AA08
4D028BB02
4D028BC17
4D028BD06
4D028BD17
4D028BE04
4D624AA02
4D624AA04
4D624AA05
4D624AB12
4D624BA14
4D624BC01
4D624CA01
4D624DB05
4D624DB15
(57)【要約】
【課題】 分離膜のバイオファウリングを確実に抑制して被処理水の膜処理を効率良く行うことができる被処理水の膜処理装置を提供する。
【解決手段】 供給された被処理水に含まれるリンを生物処理により除去する生物処理装置3と、生物処理装置3を経た被処理水を膜透過水と膜濃縮水とに分離する分離膜12とを備え、分離膜12により生成された膜濃縮水の一部を被処理水に合流させて生物処理装置3に循環させる被処理水の膜処理装置1である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を生物処理装置に供給して、被処理水に含まれるリンを生物処理により除去するリン除去工程と、
前記リン除去工程を経た被処理水を分離膜に供給して、前記分離膜を透過した膜透過水と前記分離膜を透過しない膜濃縮水とに分離する膜ろ過工程とを備え、
前記リン除去工程は、前記膜ろ過工程で生成された膜濃縮水の一部を被処理水に合流させて前記生物処理装置に循環させる工程を備える被処理水の膜処理方法。
【請求項2】
前記リン除去工程は、生物処理が行われた被処理水に残存するリンを吸着剤により吸着して除去する工程を備える請求項1に記載の被処理水の膜処理方法。
【請求項3】
前記リン除去工程は、前記生物処理装置に供給する前の被処理水に酸素を溶解させる工程を備える請求項1または2に記載の被処理水の膜処理方法。
【請求項4】
供給された被処理水に含まれるリンを生物処理により除去する生物処理装置と、
前記生物処理装置を経た被処理水を膜透過水と膜濃縮水とに分離する分離膜とを備え、
前記分離膜により生成された膜濃縮水の一部を被処理水に合流させて前記生物処理装置に循環させる被処理水の膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の膜処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水等の被処理水の処理方法として、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの分離膜を用いた膜処理方法が従来から知られている。分離膜による膜処理においては、分離膜の膜面で微生物が繁殖することで分離膜の目詰まりを生じさせる、いわゆるバイオファウリングが発生するおそれがあることから、この対策が従来から検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、逆浸透膜モジュールユニットの供給側に、被処理水に含まれるリンを吸着剤により除去する除去手段を設けることで、逆浸透膜モジュールユニットの微生物汚染を防止する水処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-218267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、被処理水に含まれるリンを除去手段により完全に除去することは困難であり、除去手段を通過した被処理水には依然としてリンが残存しているため、これが逆浸透膜モジュールユニットに徐々に蓄積されることで、バイオファウリングの抑制効果が不十分になるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、分離膜のバイオファウリングを確実に抑制して被処理水の膜処理を効率良く行うことができる被処理水の膜処理方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、被処理水を生物処理装置に供給して、被処理水に含まれるリンを生物処理により除去するリン除去工程と、前記リン除去工程を経た被処理水を分離膜に供給して、前記分離膜を透過した膜透過水と前記分離膜を透過しない膜濃縮水とに分離する膜ろ過工程とを備え、前記リン除去工程は、前記膜ろ過工程で生成された膜濃縮水の一部を被処理水に合流させて前記生物処理装置に循環させる工程を備える被処理水の膜処理方法により達成される。
【0008】
この被処理水の膜処理方法において、前記リン除去工程は、生物処理が行われた被処理水に残存するリンを吸着剤により吸着して除去する工程を備えることが好ましい。
【0009】
前記リン除去工程は、前記生物処理装置に供給する前の被処理水に酸素を溶解させる工程を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記目的は、供給された被処理水に含まれるリンを生物処理により除去する生物処理装置と、前記生物処理装置を経た被処理水を膜透過水と膜濃縮水とに分離する分離膜とを備え、前記分離膜により生成された膜濃縮水の一部を被処理水に合流させて前記生物処理装置に循環させる被処理水の膜処理装置により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分離膜のバイオファウリングを確実に抑制して被処理水の膜処理を効率良く行うことができる被処理水の膜処理方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る被処理水の膜処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る被処理水の膜処理装置(以下、単に「膜処理装置」という)の概略構成図である。図1に示すように、膜処理装置1は、給水ポンプ2、生物処理装置3、保安フィルタ4、高圧ポンプ5および分離膜ユニット10を備えており、給水ポンプ2により供給される被処理水が、生物処理装置3および保安フィルタ4を通過した後、高圧ポンプ5により昇圧されて分離膜ユニット10に供給され、分離膜ユニット10において分離膜12による膜分離が行われる。保安フィルタ4は、被処理水に異物等が混入した場合に高圧ポンプ5や分離膜ユニット10の損傷を防止するためのフィルタである。
【0014】
被処理水は、表層海水、河川水、湖沼水等を例示することができるが、リンを含む液体であれば特に限定されるものではなく、工場排水や生活排水等であってもよい。
【0015】
生物処理装置3は、被処理水に含まれるリンを生物処理により除去することができる装置であり、例えば、合成樹脂の発泡体等からなる球状、ペレット状、フィルタ状の担体に微生物を担持させたものを、ケーシング内に充填する等して構成することができる。
【0016】
本実施形態の生物処理装置3は、リンを生物処理により除去する生物処理部3aの他に、被処理水に含まれるリンを吸着除去する鉄化合物等の吸着剤を有する吸着処理部3bを備えており、生物処理部3aと吸着処理部3bとを組み合わせることで、リンの除去効率をより高めることができる。生物処理部3aおよび吸着処理部3bを備える生物処理装置3として、例えば、デュポン社製の「B-Free」を挙げることができる。吸着処理部3bは、本実施形態のように生物処理部3aの下流側に配置されることが好ましいが、生物処理部3aの上流側に配置してもよい。生物処理装置3は、吸着処理部3bを備えない構成であってもよい。
【0017】
分離膜ユニット10が備える分離膜12の種類は必ずしも限定されないが、海水や河川水等の膜処理に適したナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)を好ましく例示することができる。分離膜ユニット10に供給された被処理水は、分離膜12を透過した膜透過水と、分離膜12を透過しない膜濃縮水とに分離され、膜濃縮水の一部が循環流路6を経て、給水ポンプ2により供給される被処理水に合流する。分離膜12の材質は、例えば、酢酸セルロース系等の各種ポリマーが挙げられる。
【0018】
次に、上記の構成を備える膜処理装置1の作動を説明する。まず、被処理水を、給水ポンプ2により生物処理装置3に供給することで、被処理水に含まれるリンを生物処理により除去するリン除去工程を行う。ついで、リン除去工程を行った被処理水を、保安フィルタ4を経て高圧ポンプ5により昇圧し、分離膜ユニット10に供給することで、分離膜12により膜透過水と膜濃縮水とに分離する膜ろ過工程を行う。
【0019】
本実施形態の膜処理装置1は、膜ろ過工程で生成された膜濃縮水の一部を循環流路6に供給し、膜濃縮水の残部を系外に排出するするように構成されており、上記のリン除去工程は、膜ろ過工程で生成された膜濃縮水の一部を被処理水に合流させて、生物処理装置3に循環させる工程を備えている。
【0020】
膜ろ過工程で生成された膜濃縮水は、予め生物処理装置3を通過することでリン濃度が低減されているため、膜濃縮水を被処理水に合流させて生物処理装置3に循環させることにより、膜濃縮水を被処理水に合流させない場合に比べて、リン濃度が低い被処理水に対して生物処理を行うことができる。したがって、分離膜ユニット10に供給する被処理液のリン濃度を十分低減させることができるので、分離膜12の膜面におけるバイオファウリングの発生を確実に防止しつつ、膜濃縮水の循環により被処理水の膜処理効率を高めることができる。
【0021】
上記のリン除去工程は、生物処理装置3に供給する前の被処理水に酸素を溶解させる工程を備えてもよい。被処理水の溶存酸素濃度を高めることで、生物処理装置3の生物処理部3aにおける生物処理の効率が高まるだけでなく、吸着処理部3bで吸着したリンの溶出を抑制することができるので、生物処理装置3におけるリンの除去効率を向上させることができる。
【0022】
被処理水に酸素を溶解させる方法は特に限定されないが、例えば、被処理水に酸素を吹き込む方法や、脱気膜等を使用して被処理液に供給する酸素の気泡を微細化する方法等を挙げることができる。被処理液に対する酸素の供給位置は、給水ポンプ2の上流側または下流側のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 膜処理装置
3 生物処理装置
3a 生物処理部
3b 吸着処理部
10 分離膜ユニット
12 分離膜
図1