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  • 特開-太陽電池モジュール 図1
  • 特開-太陽電池モジュール 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101123
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20240722BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20240722BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004867
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151DA10
5F151EA05
5F151EA19
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F251DA10
5F251EA05
5F251EA19
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】
【課題】太陽電池セルを破損し難い太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る太陽電池モジュール1は、それぞれ裏面に縦横に配列して配設される複数の正電極12および負電極13を有し、一定の方向に端部を重ねて配置される複数の太陽電池セル10と、編組線からなり、隣接する前記太陽電池セル10の前記正電極12と前記負電極13をそれぞれ接続する複数のインターコネクタ20と、前記正電極12および前記負電極13と前記インターコネクタ20とを接合する導電性接着剤30と、前記複数の太陽電池セル10の表面側を覆う表面保護材40と、前記複数の太陽電池セル10の裏面側を覆う裏面保護材50と、前記表面保護材40と前記裏面保護材50の間に充填され、前記複数の太陽電池セル10を封止する封止材60と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ裏面に縦横に配列して配設される複数の正電極および負電極を有し、一定の方向に端部を重ねて配置される複数の太陽電池セルと、
編組線からなり、隣接する前記太陽電池セルの前記正電極と前記負電極をそれぞれ接続する複数のインターコネクタと、
前記正電極および前記負電極と前記インターコネクタとを接合する導電性接着剤と、
前記複数の太陽電池セルの表面側を覆う表面保護材と、
前記複数の太陽電池セルの裏面側を覆う裏面保護材と、
前記表面保護材と前記裏面保護材の間に充填され、前記複数の太陽電池セルを封止する封止材と、
を備える、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記導電性接着剤の高さは、前記インターコネクタの厚みよりも小さい、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記封止材は、前記正電極および前記負電極が存在しない領域において前記太陽電池セルと前記インターコネクタとの間に介在する、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記封止材は、前記太陽電池セルの端部と前記インターコネクタの間に介在する、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の太陽電池セルをインターコネクタ(配線材)で接続して形成される太陽電池ストリングを備える太陽電池モジュールが利用されている。また、太陽電池ストリングに用いられる太陽電池セルとして、インターコネクタによって太陽電池セルに入射する光を遮断しないよう、裏面に正負の電極を配設したバックコンタクト型の太陽電池セルも広く知られている。バックコンタクト型の太陽電池セルでは、正負の集電構造が互いに入り組んだ相補的な形状に形成されるため、集電構造の内部抵抗が高くなりやすい。このため、例えば特許文献1に記載されるように、裏面側に正負それぞれ複数の電極を分散して配置することにより、集電抵抗を低減した太陽電池セルが利用され得る。
【0003】
さらに、特許文献1には、太陽電池モジュールの単位面積当たりの光電変換効率を向上するために、太陽電池セルの端部を一定の方向に重ねた状態で接続するいわゆるシングリングを行うことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2021-020465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バックコンタクト型の太陽電池セルを用いる場合、太陽電池セルとインターコネクタとの熱膨張率の違いにより、太陽電池セルに反りを生じさせ得る。太陽電池セルに正負それぞれ複数の電極を分散して配設すると、隣接する太陽電池セル間を接続するインターコネクタの長さも長くなるため、太陽電池セルの反りが大きくなりやすく、太陽電池セルに割れを生じさせるおそれもある。さらに、太陽電池セルをシングリング接続する場合、太陽電池セルの端縁にインターコネクタが強く圧接され、太陽電池セルに欠けを生じさせる可能性もある。
【0006】
このような実情に鑑みて、本発明は、太陽電池セルを破損し難い太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る太陽電池モジュールは、それぞれ裏面に縦横に配列して配設される複数の正電極および負電極を有し、一定の方向に端部を重ねて配置される複数の太陽電池セルと、編組線からなり、隣接する前記太陽電池セルの前記正電極と前記負電極をそれぞれ接続する複数のインターコネクタと、前記正電極および前記負電極と前記インターコネクタとを接合する導電性接着剤と、前記複数の太陽電池セルの表面側を覆う表面保護材と、前記複数の太陽電池セルの裏面側を覆う裏面保護材と、前記表面保護材と前記裏面保護材の間に充填され、前記複数の太陽電池セルを封止する封止材と、を備える。
【0008】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記導電性接着剤の高さは、前記インターコネクタの厚みよりも小さくてもよい。
【0009】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記封止材は、前記正電極および前記負電極が存在しない領域において前記太陽電池セルと前記インターコネクタとの間に介在してもよい。
【0010】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記封止材は、前記太陽電池セルの端部と前記インターコネクタの間に介在してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る太陽電池モジュールは、太陽電池セルを破損し難い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの裏面図である。
図2図1の太陽電池モジュールのX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール1の裏面図である。図2は、太陽電池モジュール1の断面図である。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0014】
太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池セル10と、隣接する太陽電池セル10を接続する複数のインターコネクタ20と、太陽電池セル10とインターコネクタ20を接合する導電性接着剤30と、複数の太陽電池セル10の表面側を覆う表面保護材40と、複数の太陽電池セル10の裏面側を覆う裏面保護材50と、表面保護材40と裏面保護材50の間に充填され、複数の太陽電池セル10を封止する封止材60と、を備える。
【0015】
太陽電池セル10は、一定の方向に端部を重ねて配置(シングリング)される。互いに端部が重ねられた太陽電池セル10同士は、インターコネクタ20によって接続される。これにより、複数の太陽電池セル10を一列に連接した太陽電池ストリングが形成される。太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池ストリングを含み得る。
【0016】
太陽電池セル10は、半導体基板11と、それぞれ半導体基板11の裏面に縦横に配列して配設される複数の正電極12および負電極13と、を有する。半導体基板11は、互いに異なる導電型を有し、裏面に相補的な形状に形成される2つの半導体層と、各半導体層に積層される集電パターンと、を有する構成とされ得る。正電極12および負電極13は、集電パターンと一体に形成されるランド部であってもよいが、半導体基板11の集電パターンにさらに積層されるパッド電極として形成されることが好ましく、裏面側に突出するような十分に高さを有することがより好ましい。
【0017】
図1に示すように、正電極12および負電極13は、それぞれ太陽電池セル10の接続方向(図1における上下方向)に電極12,13が並ぶ複数の列を形成し、太陽電池セル10の接続方向に垂直な方向に正電極12の列と負電極13の列が交互に配置されるよう配設されることが好ましい。これにより、隣接する2つの太陽電池セル10の一方の一列に並んだ複数の正電極12と他方の一列に並んだ複数の負電極13とを1つのインターコネクタ20によって接続することができる。このため、太陽電池セル10は、交互に反対向きに配置され得る。図1にさらに示すように、正電極12と負電極13は、短絡を防止しやすいよう、太陽電池セル10の接続方向の位置をずらして交互に配置されることが好ましい。
【0018】
インターコネクタ20は、隣接する太陽電池セル10の一方の正電極12と他方の負電極13とを接続する。これにより、複数の太陽電池セル10を電気的に直列に接続した太陽電池ストリングを形成する。インターコネクタ20は、直線上に並んだ電極12,13に接合される。このため、隣接する2つの太陽電池セル10を接続するために、太陽電池セル10の正電極12または負電極13の列数と等しい数のインターコネクタ20が用いられる。
【0019】
インターコネクタ20は、可撓性および弾性を有する編組線からなり、外力や温度変化により太陽電池セル10に作用し得る応力を緩和する。具体的には、編組線からなるインターコネクタ20は、長さ方向に僅かに伸縮が可能であり、インターコネクタ20を形成する材料と太陽電池セル10の半導体基板11との熱膨張率の違いを吸収することで、太陽電池セル10に作用し得る曲げ応力を緩和する。また、インターコネクタ20の厚み方向の弾性は、インターコネクタ20が半導体基板11の端縁、電極12,13の積層部等に局所的に圧接されて半導体基板11に割れや欠けを生じさせることを抑制する。
【0020】
導電性接着剤30は、正電極12および負電極13とインターコネクタ20とを接合する。このため、導電性接着剤30は、導電性粒子とそのバインダを含む。バインダは、熱プレスにより太陽電池セル10にインターコネクタ20を接続できるよう、熱硬化性を有することが好ましい。このような導電性接着剤30は、編組線からなるインターコネクタの内部の隙間に浸透し難いため、比較的少量でインターコネクタ20を電極12,13に接続することができる。また、インターコネクタ20の内部に導電性接着剤30が浸透しないことにより、インターコネクタ20の可撓性および弾性が保持されるため、インターコネクタ20に作用する張力を緩和して電極12,13からのインターコネクタ20の剥離を抑制したり、インターコネクタ20太陽電池セル10を圧迫して太陽電池セル10に割れを生じさせること防止できる。
【0021】
導電性接着剤30の高さは、インターコネクタ20の厚みよりも小さいことが好ましく、インターコネクタ20の厚みの70%以下であることがより好ましい。これにより、硬化した導電性接着剤30が太陽電池セル10に押圧されて太陽電池セル10に割れを生じさせることを防止できる。なお、「導電性接着剤30の高さ」および「インターコネクタ20の厚み」とは、それぞれの電極12,13上における導電性接着剤30またはインターコネクタ20の半導体基板11に垂直な方向の最大高さの平均値を意味する。
【0022】
表面保護材40は、封止材60を介して太陽電池セル10の表面を覆うことにより、太陽電池セル10を保護する。表面保護材40は、板状またはシート状の材料から形成することができ、透光性、耐傷性および耐候性に優れることが好ましい。具体的には、表面保護材40の材質としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、表面保護材40の表面は、光の反射を抑制するために、凹凸状に加工されたり、反射防止コーティング層で被覆されてもよい。
【0023】
裏面保護材50は、封止材60を介して、太陽電池セル10の裏面を覆うことによって、太陽電池セル10を保護する。裏面保護材50は、表面保護材40と同様に、板状またはシート状の材料から形成することができ、遮水性に優れることが好ましい。具体的には、裏面保護材50は、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート等の樹脂、ガラスなどからなる板状の材料、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂フィルムによって形成することができる。また、裏面保護材50として、樹脂フィルムとアルミニウム箔等の金属箔との積層体を用いてもよい。
【0024】
封止材60は、太陽電池セル10を保護するために、太陽電池セル10の受光側の面と表面保護材40との間、太陽電池セル10の裏側の面と裏面保護材50との間、および太陽電池セル10同士の隙間に充填される。封止材60は、太陽電池ストリングと表面保護材40および裏面保護材50とを接着すると共に、太陽電池ストリングの周囲の隙間をなくすことで、太陽電池セル10に水分等が接触することを防止する。さらに、封止材60は、電極12,13が存在しない領域において太陽電池セル10とインターコネクタ20との間に介在するよう充填されることが好ましい。封止材60により太陽電池セル10の電極12,13以外の部分をインターコネクタ20から隔離することによって、封止材60の弾性によりインターコネクタ20が太陽電池セル10に作用させる応力をさらに低減できる。特に、封止材60が裏側の太陽電池セル10の端部とインターコネクタ20との間に介在するよう充填されることによって、太陽電池セル10の端縁にインターコネクタ20が圧接されることに起因する太陽電池セル10の割れや欠けを防止できる。
【0025】
封止材60としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性を有する樹脂が好適に用いられる。封止材60は、製造段階では太陽電池セル10の隙間に浸入する熱可塑性を有し、最終製品において熱可塑性を喪失するにより太陽電池モジュール1の温度が上昇しても形状を保持できる材料から形成されることが好ましい。つまり、封止材60は、熱可塑性樹脂を主体とし、この熱可塑性樹脂の軟化点よりも高い温度で活性化し、熱可塑性樹脂を架橋して硬化させる架橋剤を含有する樹脂組成物によって形成されることが好ましい。
【0026】
以上のように、太陽電池モジュール1は、太陽電池セル10を弾性および可撓性を有する編組線からなるインターコネクタ20によって接続する。このため、太陽電池モジュール1では、外力、温度変化等によって太陽電池セル10に作用し得る応力が緩和されるので、太陽電池モジュール1の製造時(特に封止材60による封止時)および太陽電池モジュール1の使用時に太陽電池セル10が破損し難い。つまり、太陽電池モジュール1は、製造時の歩留まりが高く、使用時の長期信頼性に優れる。また、太陽電池モジュール1では、導電性接着剤によりインターコネクタ20を電極12,13に接合するため、インターコネクタ20の弾性および可撓性を損なわないため、太陽電池セル10に作用し得る応力を確実に低減できる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例として、本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、インターコネクタによる太陽電池セルの短絡を防止するために、太陽電池セルに電極が存在しない領域に積層される絶縁層を設けてもよく、太陽電池セルとインターコネクタの間に別部材である絶縁シートを配設してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 太陽電池モジュール
10 太陽電池セル
11 半導体基板
12 正電極
13 負電極
20 インターコネクタ
30 導電性接着剤
40 表面保護材
50 裏面保護材
60 封止材
図1
図2