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  • 特開-理美容用クロス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101127
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】理美容用クロス
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/08 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A45D44/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004883
(22)【出願日】2023-01-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】522484250
【氏名又は名称】近江 輝生
(74)【代理人】
【識別番号】100190160
【弁理士】
【氏名又は名称】隅田 俊隆
(72)【発明者】
【氏名】近江 輝生
(57)【要約】
【課題】
カットされた毛髪を内側に侵入させることなく、襟足及びその近傍にある毛髪の処置がしやすい形状の襟を備える理美容用クロスを提供すること。
【解決手段】
理美容用クロス100は、着用者の背面を被覆する後身頃111と、着用者の前面で重ね合わされる左右一対の前身頃112、113と、着用者の首を取り囲む襟120とを備え、襟120は後襟部121と、右前襟部122と、左前襟部123とからなり、後襟部121にはV字形又はU字形の切欠部121aを形成する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の背面を被覆する後身頃と、前記着用者の前方で重ね合わされて前面を被覆する左右一対の前身頃と、前記着用者の首を取り囲む襟とを備え、
前記襟は、前記後身頃の上縁に設けられる後襟部と、前記左右一対の前身頃のそれぞれの上縁に設けられ、前記後襟部と連続する左前襟部と右前襟部とを有しており、
前記後襟部には、V字形又はU字形の切欠部が形成されることを特徴とする理美容用クロス。
【請求項2】
前記右前襟部と前記後襟部との間と前記左前襟部と前記後襟部との間とには、任意の形状に屈曲可能なワイヤが配設されることを特徴とする請求項1記載の理美容用クロス。
【請求項3】
前記後身頃は、着用者の肩を背面側から前面側に跨ぐように配置されて、重ね合わされた前記左右一対の前身頃の間に形成される隙間を塞ぐ被覆部材を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の理美容用クロス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカットやヘアカラーを施術する際に被施術者に着用させて身体が汚れないように保護する理美容用クロスであって、特には、襟足近傍の毛髪の施術がしやすい襟を有する理美容用クロスに関する。
【背景技術】
【0002】
理美容室で顧客に対してヘアカットやパーマ、ヘアカラーを施術するときには、カットされた毛髪や、パーマ液やカラー剤といった薬液が被施術者の衣服に付着しないようにするために、ヘアークロス、カットクロス、ケープと称されるクロスを着用させることが行われている。こうした理美容用のクロスは、着座姿勢にある着用者の首元から下方となる肩、腕、胴、脚が被覆されるように形成される。
【0003】
一般的な理美容用クロスの形態としては、着用者の首回りを取り囲むように円状に切り欠かれ、上部に不連続部を有する装着部と、この装着部の不連続部を挟んだ両側に連設され、着用者の両肩から背面を覆う一対の背面被覆部と、装着部および一対の背面被覆部の下方に連設されて、着用者の前方および側方を覆う下方被覆部とを備えたカットクロスが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1のカットクロスは、着用者の首の後方で装着部の両端を面ファスナーで止着させるように形成される。
【0004】
しかしながら、着用者の首の後方に装着部を備える特許文献1のカットクロスでは、両端が面ファスナーで止着された装着部が、襟足及びその近傍にある毛髪を処置するときの邪魔になったり、処置の最中に面ファスナーの止着が外れてしまったりといった不都合が生じていた。これらの不都合に対しては、後身頃と、被着者の前部で重なり合う左右一対の前身頃と、両袖からなり、左右一対の前身頃を首元と胸元に取り付けた止着手段によって係止さるようにしたカットクロスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のカットクロスによれば、着用者の前方で止着手段の止着がされるので、特許文献1のカットクロスのように止着部分が襟足及びその近傍の毛髪の処置の邪魔となることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-154005号公報
【特許文献2】実用新案登録第3231457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のカットクロスは、着用者の首の後方に配置される襟部分が直線形状となっているため、着用者の襟足近傍が十分に露出されず、施術者が処置したい箇所に手が届きにくいという不都合が生じうる。
【0007】
そこで、本発明は、着用者(被施術者)の首の後方にある毛髪の処置がしやすいように形成された襟を備える理美容用クロスを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、着用者の背面を被覆する後身頃と、前記着用者の前方で重ね合わされて前面を被覆する左右一対の前身頃と、前記着用者の首を取り囲む襟とを備え、前記襟は、前記後身頃の上縁に設けられる後襟部と、前記左右一対の前身頃のそれぞれの上縁に設けられ、前記後襟部と連続する左前襟部と右前襟部とを有しており、前記後襟部には、V字形又はU字形の切欠部が形成されることを特徴とする理美容用クロス、である。
【0009】
本発明にかかる理美容用クロスは、後襟部を従前のような直線状にするのではなく、V字形又はU字形をなすように切欠部を設けて形成したことに主たる特徴を有する。このような形状とすることで、着用者の首の後方下側の露出を増やすことができるので、施術者が襟足及びその近傍部分の毛髪の処置を行いやすくなる。また、左右一対の前身頃同士を重ね合わせて着用させる構造を採るので、右前襟部と左前襟部との重なり量を加減して襟長さの調整を行うことができる。これにより、どの着用者に対しても後襟部の切欠部の形状が一定に保たれて、後襟部を首の後方にきちんと密着させることができる。
【0010】
また、前記右前襟部と前記後襟部との間と前記左前襟部と前記後襟部との間とには、任意の形状に屈曲可能なワイヤが配設されてもよい。
【0011】
着用者の肩側に位置する襟部分に屈曲自在のワイヤを設けることで、襟を着用者の首肩形状に合わせて保形できるようになる。
【0012】
また、前記後身頃は、前記着用者の肩を背面側から前面側に跨ぐように配置されて、重ね合わされた前記左右一対の前身頃の間に形成される隙間を塞ぐ被覆部材を備えてもよい。
【0013】
着用者の前方は、重ね合された左右一対の前身頃によって覆われるが、左右一対の前身頃の間にできる隙間にカットされた毛髪が入り込んだり、頭部から垂れた薬液が流れ込んだりするおそれがある。そこで、この隙間を塞ぐための被覆部材をさらに設けることで、毛髪や薬液が理美容用クロスの内側に侵入するのを防止できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる理美容用クロスによれば、後襟部にV字形又はU字形をなす切欠部を形成することで、着用者の襟足及びその近傍の露出を増やすことができるので、当該部分への施術が行いやすくなる。また、左右一対の前身頃を着用者の前方で重ね合わせて着用させる前開きの構造を採るので、着用者の首周り長さの違いによって切欠部の形状が変更されることがなく、どの着用者に対しても後襟部を首に密着させて、毛髪や薬液の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例にかかる理美容用クロスの正面図である。
図2】実施例にかかる理美容用クロスの背面図である。
図3】実施例にかかる理美容用クロスの拡大正面図である。
図4】実施例にかかる理美容用クロスが着用された状態を示す後方斜視図である。
図5】実施例にかかる理美容用クロスが着用された状態を示す前方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例0017】
図1から図5には、本実施例にかかる理美容用クロス100が示されている。図1及び図2に示すように、理美容用クロス100は、クロス本体110と、右袖130aと、左袖130bとを備えており、着用者Uが腕を右袖130aと左袖130bに差し通して着用される。なお、クロス本体110及び袖130a、13bは、既知の理美容用クロスに用いられる布、紙、ポリオレフィン系樹脂やナイロン樹脂等の合成樹脂からなる薄手のシート材から作成することができ、特には表面に毛髪や薬液が付着しにくい素材からなるシート材又は撥水撥油等の表面加工が施されたシート材を用いることが好ましい。
【0018】
クロス本体110は、後身頃111と、右前身頃112と、左前身頃113とを備える。
【0019】
後身頃111は、着用者Uの首元から膝上にかけた背面を覆うことができる縦横長さに形成され、上縁には中央にV字形をなす切欠部121aが形成された後襟部121が設けられている。後襟部121の幅長さは特に限定されないが、カットされた毛髪や薬液が内側に容易に侵入しない程度の幅長さとすることが好ましく、特には1.0cm~3.0cmに設定することが好ましい。また、後身頃111の横幅方向中央の腰下位置にスリットSを設けて、着用者Uが着座しやすいようにしている。
【0020】
右前身頃112と左前身頃113は、それぞれ後身頃111の左右から延設される。すなわち、右前身頃112及び左前身頃113は、それぞれ後身頃111の右縁及び左縁に縫着されている。右前身頃112と左前身頃113は、いずれも着用者U前方の首元から膝上にかけた前面を覆うことができる程度の縦横長さを有しており、それぞれの上縁には右前襟部122と左前襟部123とが後襟部121の左右両端と連続して設けられている。そして、後襟部121、右前襟部122及び左前襟部123とで襟120が形成される。また、右前襟部122と後襟部121との間及び左前襟部123と後襟部121との間には、任意の形状に屈曲可能なワイヤWが内挿されており、ワイヤWを着用者Uの首周り形状に沿わせて屈曲させることで、襟120を着用者Uの首肩形状に合わせて保形できるようにしている。
【0021】
また、右前身頃112の表面の右前襟部122近傍には、2つの雌面ファスナー150a、150bが縫着され、左前身頃123の裏面の左前襟部123近傍には雄面ファスナー150cが縫着されている。着用時に、雌面ファスナー150a、150bのいずれか又は両方と雄面ファスナー150cとを止着させることで、右前襟部122に左前襟部123が重ね合わさった状態で保持されるようになる。なお、雄面ファスナー150cを雌面ファスナー150a、50bのどちらに止着するかは、着用者Uの首周り長さに応じて選択することができる。さらに、左前身頃113の裏面の側縁中腹には雌面ファスナー160aが縫着され、右前身頃112の表面の雌面ファスナー160aと対応する位置には雄面ファスナー160bが縫着されている。着用時に、雌面ファスナー160aと雄面ファスナー160bとを止着させることで、右前身頃112と左前身頃113とが重ね合わさった状態で保持されるようになる。
【0022】
右袖130aと左袖130bは、いずれも着用者Uの腕を差し通せるように筒状に形成され、それぞれの一端がクロス本体110に形成される右袖ぐり110aと左袖ぐり110bとに縫着されている。
【0023】
クロス本体110は、さらに被覆部材140を備える。被覆部材140は、クロス本体110の右肩部分に配置される平板状の部材であり、クロス本体110及び袖130a、130bと同様のシート材から形成されている。被覆部材140は、その一端部140aがクロス本体110の右袖ぐり110aに右袖130aと共に縫着されており、理美容用クロス100が着用されたときには着用者Uの右肩上部を背面側から前面側に跨ぐようにして配置される。これにより、着用者Uの右肩下方で右前身頃112と左前身頃113とが重ね合わさってできる隙間が被覆され、カットされた毛髪や垂れ落ちてくる薬液等がクロス本体110の内側に侵入するのを防止することができる。
【0024】
図4及び図5には、理美容用クロス100を着用した状態が示されている。図4に示すように、被施術者たる着用者Uが理美容用クロス100を着用すると、着用者Uの首の後方の下方が露出するようになっている(実際には、首と襟120との間にタオルやネックペーパーが介在される)。つまり、後襟部121の高さ位置が、切欠部121aによって右前襟部122及び左前襟部123よりも低くなっており、これにより、施術者が襟足及びその近傍の毛髪を処置するときに後襟部121が邪魔にならないようになっている。また、襟120は、着用者Uの首周り長さに合うように左前襟部123を右前襟部122に重ね合わせてから、雌面ファスナー150a、150bと雄面ファスナー150cとを止着することで着用者Uの首に密着される。このとき、襟120は、内挿されたワイヤWによって着用者Uの首肩に沿った形状に保形される。一方、図5に示すように、着用者Uの首の前方で重ね合されて止着される右前襟122及び左前襟123は直線状に形成される。
【0025】
本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【0026】
例えば、実施例の理美容用クロス100では、後襟部121の切欠部121aをV字形としているが、谷部分が曲線状となるU字形に形成してもよい。また、右袖130a及び左袖130bを設けずにマント状に形成したり、被覆部材140やスリットSを省略したりしてもよい。また、面ファスナー150、160に代えて、ボタンやスナップボタン、ホック等既知の止着手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0027】
100 理美容用クロス
110 クロス本体
111 後身頃
112 右前身頃
113 左前身頃
120 襟
121 後襟部
121a 切欠部
122 右前襟部
123 左前襟部
140 被覆部材
150、160 面ファスナー(止着手段)

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の背面を被覆する後身頃と、前記着用者の前方で重ね合わされて前面を被覆する左右一対の前身頃と、前記着用者の首を取り囲む襟とを備え、
前記襟は、前記後身頃の上縁に設けられる後襟部と、前記左右一対の前身頃のそれぞれの上縁に設けられ、前記後襟部と連続する左前襟部と右前襟部とを有し、
前記後襟部は、谷部分の高さ位置が前記左前襟部と前記右前襟部の高さ位置よりも低い位置にあって、前記着用者の首の後方下部を露出させる深さを有するV字形の切欠部が形成されることを特徴とする理美容用クロス。
【請求項2】
前記右前襟部と前記後襟部との間と前記左前襟部と前記後襟部との間とには、任意の形状に屈曲可能なワイヤが配設されることを特徴とする請求項1記載の理美容用クロス。
【請求項3】
前記後身頃は、着用者の肩を背面側から前面側に跨ぐように配置されて、重ね合わされた前記左右一対の前身頃の間に形成される隙間を塞ぐ被覆部材を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の理美容用クロス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカットやヘアカラーを施術する際に被施術者に着用させて身体が汚れないように保護する理美容用クロスであって、特には、襟足近傍の毛髪の施術がしやすい襟を有する理美容用クロスに関する。
【背景技術】
【0002】
理美容室で顧客に対してヘアカットやパーマ、ヘアカラーを施術するときには、カットされた毛髪や、パーマ液やカラー剤といった薬液が被施術者の衣服に付着しないようにするために、ヘアークロス、カットクロス、ケープと称されるクロスを着用させることが行われている。こうした理美容用のクロスは、着座姿勢にある着用者の首元から下方となる肩、腕、胴、脚が被覆されるように形成される。
【0003】
一般的な理美容用クロスの形態としては、着用者の首回りを取り囲むように円状に切り欠かれ、上部に不連続部を有する装着部と、この装着部の不連続部を挟んだ両側に連設され、着用者の両肩から背面を覆う一対の背面被覆部と、装着部および一対の背面被覆部の下方に連設されて、着用者の前方および側方を覆う下方被覆部とを備えたカットクロスが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1のカットクロスは、着用者の首の後方で装着部の両端を面ファスナーで止着させるように形成される。
【0004】
しかしながら、着用者の首の後方に装着部を備える特許文献1のカットクロスでは、両端が面ファスナーで止着された装着部が、襟足及びその近傍にある毛髪を処置するときの邪魔になったり、処置の最中に面ファスナーの止着が外れてしまったりといった不都合が生じていた。これらの不都合に対しては、後身頃と、被着者の前部で重なり合う左右一対の前身頃と、両袖からなり、左右一対の前身頃を首元と胸元に取り付けた止着手段によって係止さるようにしたカットクロスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のカットクロスによれば、着用者の前方で止着手段の止着がされるので、特許文献1のカットクロスのように止着部分が襟足及びその近傍の毛髪の処置の邪魔となることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-154005号公報
【特許文献2】実用新案登録第3231457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のカットクロスは、着用者の首の後方に配置される襟部分が直線形状となっているため、着用者の襟足近傍が十分に露出されず、施術者が処置したい箇所に手が届きにくいという不都合が生じうる。
【0007】
そこで、本発明は、着用者(被施術者)の首の後方にある毛髪の処置がしやすいように形成された襟を備える理美容用クロスを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、着用者の背面を被覆する後身頃と、前記着用者の前方で重ね合わされて前面を被覆する左右一対の前身頃と、前記着用者の首を取り囲む襟とを備え、前記襟は、前記後身頃の上縁に設けられる後襟部と、前記左右一対の前身頃のそれぞれの上縁に設けられ、前記後襟部と連続する左前襟部と右前襟部とを有しており、前記後襟部は、谷部分の高さ位置が前記左前襟部と前記右前襟部の高さ位置よりも低い位置にあって、前記着用者の首の後方下部を露出させる深さを有するV字形の切欠部が形成されることを特徴とする理美容用クロス、である。
【0009】
本発明にかかる理美容用クロスは、後襟部を従前のような直線状にするのではなく、V字形をなすように切欠部を設けて形成したことに主たる特徴を有する。このような形状とすることで、着用者の首の後方下側の露出を増やすことができるので、施術者が襟足及びその近傍部分の毛髪の処置を行いやすくなる。また、左右一対の前身頃同士を重ね合わせて着用させる構造を採るので、右前襟部と左前襟部との重なり量を加減して襟長さの調整を行うことができる。これにより、どの着用者に対しても後襟部の切欠部の形状が一定に保たれて、後襟部を首の後方にきちんと密着させることができる。
【0010】
また、前記右前襟部と前記後襟部との間と前記左前襟部と前記後襟部との間とには、任意の形状に屈曲可能なワイヤが配設されてもよい。
【0011】
着用者の肩側に位置する襟部分に屈曲自在のワイヤを設けることで、襟を着用者の首肩形状に合わせて保形できるようになる。
【0012】
また、前記後身頃は、前記着用者の肩を背面側から前面側に跨ぐように配置されて、重ね合わされた前記左右一対の前身頃の間に形成される隙間を塞ぐ被覆部材を備えてもよい。
【0013】
着用者の前方は、重ね合された左右一対の前身頃によって覆われるが、左右一対の前身頃の間にできる隙間にカットされた毛髪が入り込んだり、頭部から垂れた薬液が流れ込んだりするおそれがある。そこで、この隙間を塞ぐための被覆部材をさらに設けることで、毛髪や薬液が理美容用クロスの内側に侵入するのを防止できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる理美容用クロスによれば、後襟部にV字形をなす切欠部を形成することで、着用者の襟足及びその近傍の露出を増やすことができるので、当該部分への施術が行いやすくなる。また、左右一対の前身頃を着用者の前方で重ね合わせて着用させる前開きの構造を採るので、着用者の首周り長さの違いによって切欠部の形状が変更されることがなく、どの着用者に対しても後襟部を首に密着させて、毛髪や薬液の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例にかかる理美容用クロスの正面図である。
図2】実施例にかかる理美容用クロスの背面図である。
図3】実施例にかかる理美容用クロスの拡大正面図である。
図4】実施例にかかる理美容用クロスが着用された状態を示す後方斜視図である。
図5】実施例にかかる理美容用クロスが着用された状態を示す前方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例0017】
図1から図5には、本実施例にかかる理美容用クロス100が示されている。図1及び図2に示すように、理美容用クロス100は、クロス本体110と、右袖130aと、左袖130bとを備えており、着用者Uが腕を右袖130aと左袖130bに差し通して着用される。なお、クロス本体110及び袖130a、13bは、既知の理美容用クロスに用いられる布、紙、ポリオレフィン系樹脂やナイロン樹脂等の合成樹脂からなる薄手のシート材から作成することができ、特には表面に毛髪や薬液が付着しにくい素材からなるシート材又は撥水撥油等の表面加工が施されたシート材を用いることが好ましい。
【0018】
クロス本体110は、後身頃111と、右前身頃112と、左前身頃113とを備える。
【0019】
後身頃111は、着用者Uの首元から膝上にかけた背面を覆うことができる縦横長さに形成され、上縁には中央にV字形をなす切欠部121aが形成された後襟部121が設けられている。後襟部121の幅長さは特に限定されないが、カットされた毛髪や薬液が内側に容易に侵入しない程度の幅長さとすることが好ましく、特には1.0cm~3.0cmに設定することが好ましい。また、後身頃111の横幅方向中央の腰下位置にスリットSを設けて、着用者Uが着座しやすいようにしている。
【0020】
右前身頃112と左前身頃113は、それぞれ後身頃111の左右から延設される。すなわち、右前身頃112及び左前身頃113は、それぞれ後身頃111の右縁及び左縁に縫着されている。右前身頃112と左前身頃113は、いずれも着用者U前方の首元から膝上にかけた前面を覆うことができる程度の縦横長さを有しており、それぞれの上縁には右前襟部122と左前襟部123とが後襟部121の左右両端と連続して設けられている。そして、後襟部121、右前襟部122及び左前襟部123とで襟120が形成される。また、右前襟部122と後襟部121との間及び左前襟部123と後襟部121との間には、任意の形状に屈曲可能なワイヤWが内挿されており、ワイヤWを着用者Uの首周り形状に沿わせて屈曲させることで、襟120を着用者Uの首肩形状に合わせて保形できるようにしている。
【0021】
また、右前身頃112の表面の右前襟部122近傍には、2つの雌面ファスナー150a、150bが縫着され、左前身頃123の裏面の左前襟部123近傍には雄面ファスナー150cが縫着されている。着用時に、雌面ファスナー150a、150bのいずれか又は両方と雄面ファスナー150cとを止着させることで、右前襟部122に左前襟部123が重ね合わさった状態で保持されるようになる。なお、雄面ファスナー150cを雌面ファスナー150a、50bのどちらに止着するかは、着用者Uの首周り長さに応じて選択することができる。さらに、左前身頃113の裏面の側縁中腹には雌面ファスナー160aが縫着され、右前身頃112の表面の雌面ファスナー160aと対応する位置には雄面ファスナー160bが縫着されている。着用時に、雌面ファスナー160aと雄面ファスナー160bとを止着させることで、右前身頃112と左前身頃113とが重ね合わさった状態で保持されるようになる。
【0022】
右袖130aと左袖130bは、いずれも着用者Uの腕を差し通せるように筒状に形成され、それぞれの一端がクロス本体110に形成される右袖ぐり110aと左袖ぐり110bとに縫着されている。
【0023】
クロス本体110は、さらに被覆部材140を備える。被覆部材140は、クロス本体110の右肩部分に配置される平板状の部材であり、クロス本体110及び袖130a、130bと同様のシート材から形成されている。被覆部材140は、その一端部140aがクロス本体110の右袖ぐり110aに右袖130aと共に縫着されており、理美容用クロス100が着用されたときには着用者Uの右肩上部を背面側から前面側に跨ぐようにして配置される。これにより、着用者Uの右肩下方で右前身頃112と左前身頃113とが重ね合わさってできる隙間が被覆され、カットされた毛髪や垂れ落ちてくる薬液等がクロス本体110の内側に侵入するのを防止することができる。
【0024】
図4及び図5には、理美容用クロス100を着用した状態が示されている。図4に示すように、被施術者たる着用者Uが理美容用クロス100を着用すると、着用者Uの首の後方の下方が露出するようになっている(実際には、首と襟120との間にタオルやネックペーパーが介在される)。つまり、後襟部121の高さ位置が、切欠部121aによって右前襟部122及び左前襟部123よりも低くなっており、これにより、施術者が襟足及びその近傍の毛髪を処置するときに後襟部121が邪魔にならないようになっている。また、襟120は、着用者Uの首周り長さに合うように左前襟部123を右前襟部122に重ね合わせてから、雌面ファスナー150a、150bと雄面ファスナー150cとを止着することで着用者Uの首に密着される。このとき、襟120は、内挿されたワイヤWによって着用者Uの首肩に沿った形状に保形される。一方、図5に示すように、着用者Uの首の前方で重ね合されて止着される右前襟122及び左前襟123は直線状に形成される。
【0025】
本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【0026】
例えば、右袖130a及び左袖130bを設けずにマント状に形成したり、被覆部材140やスリットSを省略したりしてもよい。また、面ファスナー150、160に代えて、ボタンやスナップボタン、ホック等既知の止着手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0027】
100 理美容用クロス
110 クロス本体
111 後身頃
112 右前身頃
113 左前身頃
120 襟
121 後襟部
121a 切欠部
122 右前襟部
123 左前襟部
140 被覆部材
150、160 面ファスナー(止着手段)