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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101128
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ロボットハンド装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240722BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B25J15/00 F
B23P19/00 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004885
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 優
【テーマコード(参考)】
3C030
3C707
【Fターム(参考)】
3C030DA24
3C030DA27
3C707AS01
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707EU07
3C707EV05
3C707EV23
3C707EW01
(57)【要約】
【課題】被クランプ物に歪が生じた場合であっても、被クランプ物の保持を可能とするロボットハンド装置を提供する。
【解決手段】ロボットハンド装置は、ロボットアームに取り付けられた状態でロボットアームによって移動制御されるとともに被クランプ物をクランプする装置である。ロボットハンド装置は、ロボットアームに着脱機構を介して着脱可能に取り付けるフレーム本体と、フレーム本体に設けられ、被クランプ物を上方から押圧する押圧機構とを備える。ロボットハンド装置は、フレーム本体に揺動可能に設けられ、被クランプ物の下方から当該被クランプ物に当接するスイングアームを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに取り付けられた状態で前記ロボットアームによって移動制御されるとともに被クランプ物をクランプするロボットハンド装置であって、
前記ロボットアームに着脱機構を介して着脱可能に取り付けるフレーム本体と、
前記フレーム本体に設けられ、前記被クランプ物を上方から押圧する押圧機構と、
前記フレーム本体に揺動可能に設けられ、前記被クランプ物の下方から当該被クランプ物に当接するスイングアームと、
を備えたロボットハンド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットハンド装置であって、
前記フレーム本体は、前記被クランプ物をクランプした状態において、前記被クランプ物に対して上方に配置されるアッパーフレーム部と、前記アッパーフレーム部から延出するとともに前記被クランプ物に対して側方に配置されるサイドフレーム部とを有し、
前記押圧機構は、前記アッパーフレーム部に設けられ、前記スイングアームは、前記サイドフレーム部に揺動可能に設けられる、
ロボットハンド装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロボットハンド装置であって、
前記被クランプ物は、熱処理されるワークが搭載される熱処理治具である。
ロボットハンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被クランプ物をクランプ爪で把持するロボットハンド装置が開示されている。当該ロボットハンド装置は、被クランプ物である万棒を一対のクランプ爪で側方から挟んで保持する。このため、当該ロボットハンド装置は、クランプ爪を精度よく停止することで保持した万棒を落とさないように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-41173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のロボットハンド装置を利用して熱処理対象物が搭載される熱処理治具を移動することで、移動作業を軽減する提案がなされている。
【0005】
この場合、ロボットハンド装置は、クランプ爪で熱処理治具を把持することとなるが、熱処理治具には、熱処理工程において歪が発生し得る。熱処理治具の歪が大きくなると、熱処理治具を把持するクランプ爪の停止位置が変化する。すると、クランプ爪の位置を検出する検出処理においてクランプエラーが生じ、ロボットハンド装置で被クランプ物を保持できなくなる虞がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、被クランプ物に歪が生じた場合であっても、被クランプ物の保持を可能とするロボットハンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、ロボットアームに取り付けられた状態で前記ロボットアームによって移動制御されるとともに被クランプ物をクランプするロボットハンド装置であって、前記ロボットアームに着脱機構を介して着脱可能に取り付けるフレーム本体と、前記フレーム本体に設けられ、前記被クランプ物を上方から押圧する押圧機構と、前記フレーム本体に揺動可能に設けられ、前記被クランプ物の下方から当該被クランプ物に当接するスイングアームと、を備えたロボットハンド装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、フレーム本体に設けられた押圧機構で被クランプ物を上方から押圧するとともに、フレーム本体に設けられたスイングアームを被クランプ物の下方から被クランプ物に当接する。これにより、被クランプ物は、スイングアームによって下方から支持されるとともに、押圧機構によって上方から押圧された状態で位置決めされる。
【0009】
このように、スイングアームを被クランプ物に当接することで被クランプ物の保持が可能となるので、クランプ爪の停止位置を精度よく制御しなければならない場合と比較して、被クランプ物に歪が生じた場合であっても、被クランプ物の保持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るロボットハンド装置が設けられたロボットの模式図である。
図2図2は、ロボットハンド装置を示す説明図である。
図3図3は、ロボットハンド装置を用いて熱処理治具にワークを搭載する際の搭載手順を示す説明図である。
図4図4は、ロボットハンド装置で熱処理治具をクランプするクランプ手順を示す説明図である。
図5図5は、図4に続くクランプ手順を示す説明図である。
図6図6は、図5に続くクランプ手順を示す説明図である。
図7図7は、図3に続く搭載手順を示す説明図である。
図8図8は、図7に続く搭載手順を示す説明図である。
図9図9は、図8に続く搭載手順を示す説明図である。
図10図10は、図9に続く搭載手順を示す説明図である。
図11図11は、図10に続く搭載手順を示す説明図である。
図12図12は、図11に続く搭載手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係るロボットハンド装置10について説明する。図1は、本実施形態に係るロボットハンド装置10が設けられたロボット12の模式図である。図2は、ロボットハンド装置10を示す説明図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るロボットハンド装置10は、ロボット12のロボットアーム14の先端より延出した取付部16に取り付けられる。ロボット12は、多軸ロボットであり、ロボットアーム14によりロボットハンド装置10の位置及び向きを六軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及び各軸回りの回転方向)に制御可能である。
【0013】
図2に示すように、ロボットハンド装置10は、被クランプ物をクランプ可能である。被クランプ物としては、金属製の熱処理治具20が挙げられる。熱処理治具20は、底部22と、底部22に起立した複数の支柱24と、底部22から離間した位置で各支柱24に支持された搭載部26とを備える。搭載部26には、ワーク30(図9から図12参照)を支持するワーク支持部(図示省略)が設けられている。
【0014】
熱処理治具20は、熱処理するワーク30を搭載した状態で熱処理炉に投入され、熱処理炉においてワーク30と共に加熱される。また、熱処理治具20は、ワーク30を熱処理する際に繰り返し使用される。このため、熱処理治具20には、歪が生じ得る。
【0015】
熱処理されるワーク30としては、一例として連続可変自動変速機で用いられるプーリが挙げられる。本実施形態では、ワーク30がプーリの場合を例に挙げて説明するが、ワーク30は、これに限定されるものでない。ワーク30は、他の部品であってもよい。
【0016】
ロボットハンド装置10は、ロボットアーム14の取付部16(図1参照)に着脱可能に取り付けられる着脱機構40を備える。ロボットハンド装置10は、着脱機構40によってロボットアーム14に取り付けられた状態と、ロボットアーム14から切り離された状態とを形成可能である。着脱機構40は、ロボットハンド装置10のフレーム本体42に設けられている。
【0017】
(フレーム本体)
フレーム本体42は、ロボットアーム14の取付部16の延出方向に対して交差する方向に延びる長尺状のアッパーフレーム部44を備える。アッパーフレーム部44の両端からは支持板46が延出している。
【0018】
アッパーフレーム部44の一端部からは、第一サイドフレーム部50が延出する。第一サイドフレーム部50は、アッパーフレーム部44に対して交差方向に延在する。アッパーフレーム部44の他端部からは、第二サイドフレーム部52が交差方向に延出する。第二サイドフレーム部52は、アッパーフレーム部44に対して交差方向に延在する。
【0019】
両サイドフレーム部50、52は、アッパーフレーム部44に対して同方向に延出する。両サイドフレーム部50、52の間には、熱処理治具20を配置可能な配置空間54が形成される。
【0020】
ロボットハンド装置10で熱処理治具20をクランプして保持する際には、熱処理治具20を配置空間54に配置する。配置空間54に配置された熱処理治具20をクランプした状態において、フレーム本体42のアッパーフレーム部44は、熱処理治具20に対して上方に配置される。また、フレーム本体42の各サイドフレーム部50、52は、熱処理治具20に対して側方に配置される。
【0021】
(押圧機構)
フレーム本体42のアッパーフレーム部44には、熱処理治具20を上方から押圧する複数の押圧機構60が設けられている。
【0022】
各押圧機構60は、ナチュラルロック方式のシリンダで構成される。各押圧機構60を構成するシリンダは、例えばエアシリンダで構成されており、各押圧機構60は、ロッド62が各サイドフレーム部50、50に沿って延び出すように構成されている。
【0023】
各ロッド62の先端には、押圧板64が設けられている。各押圧機構60は、ロッド62を延出することで、押圧板64を熱処理治具20の支柱24の上端に押圧可能である。
【0024】
各押圧機構60は、熱処理治具20を上方から押圧する際にロッド62の延出を開始すし、延出を開始してから所定時間(例えば2秒)経過後にロッド62を停止するとともに延出位置を機械的に固定してロック状態を形成する(ナチュラルロック方式)。このロック状態において、各押圧機構60は、押圧板64が熱処理治具20の対応する支柱24を上方から押圧する。
【0025】
なお、本実施形態の各押圧機構60は、ロッド62の停止タイミングを時間で管理するナチュラルロック方式を採用した場合を例に挙げて説明するが、本実施形態は、これに限定されるものではない。各押圧機構60は、他のナチュラルロック方式を採用することができる。他のナチュラルロック方式としては、例えば、ロッド62が受ける反力が所定値以上になった際にロッド62を停止する方式が挙げられる。
【0026】
(スイングアーム)
フレーム本体42には、熱処理治具20の下方から当該熱処理治具20に当接するスイングアーム(72、82)が揺動可能に設けられている。
【0027】
具体的に説明すると、フレーム本体42の第一サイドフレーム部50からは、第一支持ブラケット70が第一サイドフレーム部50の延出方向に延出している。第一支持ブラケット70には、中途部で屈曲した第一スイングアーム72が揺動可能に支持されている。
【0028】
第一スイングアーム72は、屈曲部分が第一支持ブラケット70に軸支されており、第一スイングアーム72は、軸支点よりも一方側に、第一サイドフレーム部50に設けられた第一シリンダ74のロッド76が支持されている。
【0029】
これにより、第一シリンダ74のロッド76を延出して第一スイングアーム72を軸支点中心に回動することで、軸支点よりも他方側の第一スイングアーム72の部位を熱処理治具20の下方から熱処理治具20の底部22に当接可能である。また、第一シリンダ74のロッド76を後退して第一スイングアーム72を軸支点中心に回動することで、熱処理治具20の底部22に当接した第一スイングアーム72の部位を底部22から離間可能である。
【0030】
また、フレーム本体42の第二サイドフレーム部52からは、第二支持ブラケット80が第二サイドフレーム部52の延出方向に延出している。第二支持ブラケット80には、中途部で屈曲した第二スイングアーム82が揺動可能に支持されている。
【0031】
第二スイングアーム82は、屈曲部分が第二支持ブラケット80に軸支されており、第二スイングアーム82は、軸支点よりも一方側に、第二サイドフレーム部52に設けられた第二シリンダ84のロッド86が支持されている。
【0032】
これにより、第二シリンダ84のロッド86を延出して第二スイングアーム82を軸支点中心に回動することで、軸支点よりも他方側の第二スイングアーム82の部位を熱処理治具20の下方から当該熱処理治具20の底部22に当接可能である。また、第二シリンダ84のロッド86を後退して第二スイングアーム82を軸支点中心に回動することで、熱処理治具20の底部22に当接した第二スイングアーム82の部位を底部22から離間可能である。
【0033】
第一シリンダ74及び第二シリンダ84は、ナチュラルロック方式のシリンダで構成され、各シリンダ74、84は、例えばエアシリンダで構成される。
【0034】
各シリンダ74、84は、対応するスイングアーム72、82を熱処理治具20の底部22に当接する際に、各ロッド76、86の延出を開始する。そして、各シリンダ74、84は、延出を開始してから所定時間(例えば2秒)経過後に各ロッド76、86の延出を停止するとともに、延出位置を機械的に固定してロック状態を形成する(ナチュラルロック方式)。このロック状態において、各シリンダ74、84で作動される各スイングアーム72、82は、熱処理治具20の下方から当該熱処理治具20の底部22に押圧される。
【0035】
なお、本実施形態の各シリンダ74、84は、各ロッド76、86の停止タイミングを時間で管理するナチュラルロック方式を採用した場合を例に挙げて説明するが、本実施形態は、これに限定されるものではない。各シリンダ74、84は、他のナチュラルロック方式を採用することができる。他のナチュラルロック方式としては、例えば、各ロッド76、86が受ける反力が所定値以上になった際に各ロッド76、86の延出を停止する方式が挙げられる。
【0036】
また、本実施形態では、各スイングアーム72、82がフレーム本体42の各サイドフレーム部50、52に揺動可能に設けられたロボットハンド装置10を例に挙げて説明するが、本実施形態のロボットハンド装置10は、この構成に限定されるものではない。例えば、鉤状のスイングアームがアッパーフレーム部44に揺動可能に支持され、鉤状のスイングアームを熱処理治具20の下方から当該熱処理治具20に当接させる構造のロボットハンド装置10であってもよい。
【0037】
(動作説明)
次に、図3図12を参照して、ロボットハンド装置10を用いて熱処理治具20にワーク30を搭載する動作について説明する。
【0038】
図3は、ロボットハンド装置10を用いて熱処理治具20にワーク30を搭載する際の搭載手順を示す説明図である。図4は、ロボットハンド装置10で熱処理治具20をクランプするクランプ手順を示す説明図である。図5は、図4に続くクランプ手順を示す説明図である。図6は、図5に続くクランプ手順を示す説明図である。図7は、図3に続く搭載手順を示す説明図である。図8は、図7に続く搭載手順を示す説明図である。図9は、図8に続く搭載手順を示す説明図である。図10は、図9に続く搭載手順を示す説明図である。図11は、図10に続く搭載手順を示す説明図である。図12は、図11に続く搭載手順を示す説明図である。
【0039】
なお、図3図12では、説明を分かり易くするためにロボット12及びロボットアーム14を省略している。
【0040】
図3に示すように、ワーク30を搭載する熱処理治具20は二段重ねで配置される。熱処理治具20の側部には、仮置き場100が設けられている。仮置き場100には、底板102が配置され、底板102上には、載置板104が設けられている。載置板104は、底板102よりもサイズが小さく、載置板104の周りには、段差部106が形成されている。この段差部106によって、熱処理治具20を支持する各スイングアーム72、82と載置板104との干渉を抑制する(図8参照)。底板102の側部には、対をなす仮置きバー108が設けられている。
【0041】
次に、図4に示すように、ロボットハンド装置10で熱処理治具20をクランプする際には、作業場の天井に設置された3Dカメラ(図示せず)で熱処理治具20の位置情報を取得する。3Dカメラで取得した位置情報は、ロボット12に送られる。ロボット12は、ロボットアーム14に取り付けられたロボットハンド装置10を、3Dカメラからの位置情報に基づく姿勢に維持した状態で位置情報に基づく位置へ移動制御する。
【0042】
ロボット12は、ロボットハンド装置10を移動先へ移動制御することで、ロボットハンド装置10の配置空間54内に上段の熱処理治具20を配置する。そして、ロボット12は、ロボットハンド装置10で熱処理治具20をクランプする。
【0043】
次に、図5に示すように、ロボット12は、ロボットハンド装置10のフレーム本体42に設けられた各押圧機構60の押圧板64を熱処理治具20の支柱24に合わせる。そして、ロボット12は、ロボットハンド装置10の各押圧機構60を作動する。すると、各押圧機構60は、ロッド62を延出し、各押圧板64を対応する支柱24の上端に押し当てる。
【0044】
各押圧機構60は、ロッド62の延出を開始してから所定時間(例えば2秒)経過後に作動を停止するとともにロッド62の延出位置を固定してロック状態を形成する。このロック状態において、各押圧機構60は、押圧板64によって熱処理治具20の対応する支柱24を上方から押圧する。これにより、ロボットハンド装置10と上段の熱処理治具20との位置関係が決定される。
【0045】
次に、図6に示すように、ロボット12は、ロボットハンド装置10の各シリンダ74、84を作動する。各シリンダ74、84は、ロッド76、86を延出して対応するスイングアーム72、82を回動する。すると、各シリンダ74、84は、対応するスイングアーム72、82を、熱処理治具20の下方から当該熱処理治具20の底部22に押し当てる。
【0046】
各シリンダ74、84は、各ロッド76、86の延出を開始してから所定時間(例えば2秒)経過後に作動を停止するとともに各ロッド76、86の延出位置を固定してロック状態を形成する。このロック状態において、各スイングアーム72、82は、熱処理治具20の下方から当該熱処理治具20の底部22を斜め上方へ向けて押圧する。
【0047】
この状態において、上段の熱処理治具20は、各押圧機構60及び各スイングアーム72、82によって上下からクランプされた状態で保持される。これにより、ロボットハンド装置10と上段の熱処理治具20との位置関係が固定される。
【0048】
次に、図7及び図8に示すように、ロボット12は、ロボットハンド装置10を移動制御し、上段の熱処理治具20を仮置き場100へ移動する。仮置き場100において、ロボット12は、ロボットハンド装置10に設けられた支持板46を、仮置き場100に設けられた仮置きバー108上に配置し、ロボットハンド装置10を仮置きバー108で支持する。このとき、熱処理治具20の底部22を、底板102上の載置板104で支持してもよい。
【0049】
ロボットハンド装置10を仮置きバー108で支持した状態において、ロボット12は、着脱機構40を作動してロボットアーム14からロボットハンド装置10を切り離す。これにより、ロボットハンド装置10は、保持した熱処理治具20との位置関係を維持した状態で、熱処理治具20と共に仮置き場100に仮置きされる。
【0050】
次に、図9に示すように、ロボット12は、ロボットアーム14の取付部16に把持装置120を取り付ける。そして、ロボット12は、ロボットアーム14に取り付けられた把持装置120によって下段の熱処理治具20に熱処理するワーク30を搭載する。
【0051】
次に、ロボット12は、ロボットアーム14の取付部16から把持装置120を切り離す。また、ロボット12は、仮置き場100に仮置きされたロボットハンド装置10をロボットアーム14の取付部16に取り付ける。
【0052】
続けて、図10に示すように、ロボット12は、ロボットハンド装置10を下段の熱処理治具20上へ移動し、ロボットハンド装置10に保持された熱処理治具20を下段の熱処理治具20上に配置して熱処理治具20のクランプ状態を解除する。このとき、ロボットハンド装置10で熱処理治具20を保持した時点からロボットハンド装置10で熱処理治具20を下段の熱処理治具20上に配置するまでの間、ロボットハンド装置10とロボットハンド装置10に保持された熱処理治具20との位置関係は維持されている。このため、積み重ね状態から一旦移動された上段の熱処理治具20を、移動前と同じ位置及び姿勢で下段の熱処理治具20上に戻すことができる。
【0053】
ロボット12は、保持した熱処理治具20を下段の熱処理治具20上に配置した状態において、各シリンダ74、84及び各押圧機構60を作動して、各押圧機構60及び各スイングアーム72、82によるクランプ状態を解除する。そして、ロボット12は、ロボットハンド装置10を所定の場所へ戻し、ロボットアーム14とロボットハンド装置10とを切り離す。
【0054】
次に、図11から図12に示すように、ロボット12は、ロボットアーム14の取付部16に把持装置120を取り付けるとともに、ロボットアーム14に取り付けられた把持装置120によって上段の熱処理治具20に熱処理するワーク30を搭載する。
【0055】
(作用及び効果)
以上のように構成されたロボットハンド装置10の主な作用効果についてまとめて説明する。
【0056】
(1)ロボットハンド装置10は、ロボットアーム14に取り付けられた状態でロボットアーム14によって移動制御されるとともに被クランプ物としての熱処理治具20をクランプする装置である。ロボットハンド装置10は、ロボットアーム14に着脱機構40を介して着脱可能に取り付けるフレーム本体42と、フレーム本体42に設けられ、熱処理治具20を上方から押圧する押圧機構60とを備える。ロボットハンド装置10は、フレーム本体42に揺動可能に設けられ、熱処理治具20の下方から当該熱処理治具20に当接する各スイングアーム72、82を備える。
【0057】
本実施形態によれば、フレーム本体42に設けられた各押圧機構60で熱処理治具20の支柱24を上方から押圧するとともに、フレーム本体42に設けられた各スイングアーム72、82を熱処理治具20の下方から熱処理治具20の底部22に当接する。これにより、熱処理治具20は、各スイングアーム72、82によって下方から支持されるとともに、各押圧機構60によって上方から押圧された状態で位置決めされる。
【0058】
このように、各スイングアーム72、82を熱処理治具20に当接することで熱処理治具20の保持が可能となるので、クランプ爪の停止位置を精度よく制御しなければならない場合と比較して、熱処理治具20に歪が生じた場合であっても、熱処理治具20の保持が可能となる。
【0059】
これにより、ロボット12を利用した熱処理治具20の積み卸しが可能となるので、人手による作業工数を低減するとともに、作業員の作業負担を抑えることができる。
【0060】
そして、ロボットハンド装置10は、フレーム本体42をロボットアーム14に着脱可能に取り付ける着脱機構40を備えている。
【0061】
このため、熱処理治具20を保持した状態でロボットハンド装置10をロボットアーム14から切り離すことができるので、ロボットハンド装置10と熱処理治具20との位置関係を維持したまま、ロボットハンド装置10を熱処理治具20と共に仮置きできる。これにより、積み重ね状態から一旦移動した上段の熱処理治具20を、移動前と同じ位置及び姿勢で下段の熱処理治具20上に戻すことができるので、熱処理治具20に歪が生じた場合であっても、元の積み重ね状態に戻すことができる。
【0062】
(2)フレーム本体42は、熱処理治具20をクランプした状態において、熱処理治具20に対して上方に配置されるアッパーフレーム部44と、アッパーフレーム部44から延出するとともに熱処理治具20に対して側方に配置される各サイドフレーム部50、52とを有する。各押圧機構60は、アッパーフレーム部44に設けられ、各スイングアーム72、82は、対応するサイドフレーム部50、52に揺動可能に設けられる。
【0063】
本実施形態によれば、各スイングアーム72、82は、アッパーフレーム部44から延出した各サイドフレーム部50,52に揺動可能に設けられている。
【0064】
このため、アッパーフレーム部44に鉤状のスイングアームを揺動可能に支持する場合と比較して、各スイングアーム72、82の揺動幅を大きくすることなく、各スイングアーム72、82を熱処理治具20の下方から熱処理治具20に当接することできる。
【0065】
これにより、熱処理治具20の高さ寸法が大きい場合であっても、各スイングアーム72、82と他との干渉を抑制することが可能となる。
【0066】
(3)ロボットハンド装置10がクランプする被クランプ物は、熱処理されるワーク30が搭載される熱処理治具20である。
【0067】
本実施形態において、ロボットハンド装置10がクランプする被クランプ物は、ワーク30が搭載される熱処理治具20であり、被クランプ物として熱処理治具20は、ワーク30と共に熱処理される際に歪が生じ得る。
【0068】
しかし、本実施形態のロボットハンド装置10は、前述したように、熱処理治具20に歪が生じた場合であっても、熱処理治具20の保持が可能である。このため、本実施形態のロボットハンド装置10は、熱処理治具20のクランプに適している。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0070】
上記実施形態では、ロボットハンド装置10がクランプする被クランプ物が熱処理治具20である場合を例に挙げて説明したが、被クランプ物は、これに限定されるものではない。ロボットハンド装置10がクランプする被クランプ物は、熱処理以外の要因で歪が生じ得るものであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 ロボットハンド装置
14 ロボットアーム
20 熱処理治具(被クランプ物)
30 ワーク
40 着脱機構
42 フレーム本体
44 アッパーフレーム部
50 第一サイドフレーム部
52 第二サイドフレーム部
60 押圧機構
72 第一スイングアーム
82 第二スイングアーム
図1
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