(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101131
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/129 20210101AFI20240722BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240722BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240722BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240722BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240722BHJP
【FI】
H01M50/129
H01M50/133
H01G11/78
H01M50/105
H01M50/121
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004890
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 建人
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078AA14
5E078AB02
5E078AB12
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5H011AA02
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD03
5H011KK00
5H011KK01
(57)【要約】
【課題】耐熱性及び成型性の両方を十分に高水準に達成できる蓄電デバイス用外装材を提供する。
【解決手段】蓄電デバイス用外装材であって、少なくとも、基材層と、第一接着層と、バリア層と、シーラント層とをこの順で有する積層構造を備え、第一接着層が熱硬化性樹脂及び樹脂微粒子を含み、樹脂微粒子がポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルゴム系樹脂、ウレタン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂微粒子である、蓄電デバイス用外装材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス用外装材であって、少なくとも
基材層と、
第一接着層と、
バリア層と、
シーラント層と、
をこの順で有する積層構造を備え、
前記第一接着層が熱硬化性樹脂及び樹脂微粒子を含み、
前記樹脂微粒子がポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルゴム系樹脂、ウレタン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂微粒子である、蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂である、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記樹脂微粒子の平均粒径が0.3~3.0μmである、請求項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記第一接着層において、前記樹脂微粒子の単位面積当たりの平均粒子数が0.20~3.0個/μm2である、請求項3に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記第一接着層の厚さが2~10μmである、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記バリア層と前記シーラント層との間に第二接着層を更に有する、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
電池要素と、
前記電池要素を収容する、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材と、
を備える蓄電デバイス。
【請求項8】
全固体電池である、請求項7に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電デバイスの更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することで製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電デバイスの研究開発がなされている。全固体電池は、電解物質として有機電解液を使用せず、固体電解質を使用するという特徴を有する。リチウムイオン電池は、電解液の沸点温度(80℃程度)よりも高い温度条件で使用することができないのに対し、全固体電池は100℃を越える温度条件で使用することが可能であると共に、高い温度条件下(例えば100~150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。
【0006】
全固体電池用外装材は、従来のリチウムイオン電池用外装材と比較し、より高い耐熱性が求められる。具体的には、従来のリチウムイオン電池用外装材は100℃を超える温度条件下で使用されることが想定されていなかったため、そこまで高い高温環境下での層間密着性は求められていなかった。本発明者らの検討によると、従来の外装材に使用されてきた接着剤は、耐熱性が必ずしも十分ではなく、全固体電池用外装材に求められる高温環境下での層間密着性を発現する点において改善の余地がある。ラミネート型の全固体電池を製造する場合、外装材の耐熱性が不十分であることに起因して、外装材の層間、特に、基材層とバリア層との間、あるいは、バリア層とシーラント層との間において、デラミネーションが発生し、その結果、全固体電池のパッケージの密封性が不十分になるおそれがある。
【0007】
他方、蓄電デバイス用外装材には、上述の耐熱性とともに成型性が求められる場合がある。上述のとおり、リチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、凹部内に電池内容物を収容するように構成される。全固体電池用外装材に対してもリチウムイオン電池用外装材と同様、深絞り成型性が要求される。耐熱性を考慮した場合、耐熱性に優れるエポキシ樹脂系接着剤の使用が想定される。エポキシ樹脂系接着剤の硬化膜は脆性が高いことから成型性に優れないといったデメリットがある。すなわち、一般的な耐熱性接着剤では、全固体電池用外装材に求められる高い深絞り成型性を得ることは困難である。
【0008】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び成型性の両方を十分に高水準に達成できる蓄電デバイス用外装材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は蓄電デバイス用外装材(以下、場合により単に「外装材」と言う。)に関する。本開示に係る外装材は、少なくとも基材層と、第一接着層と、バリア層と、シーラント層とをこの順で有する積層構造を備え、第一接着層が熱硬化性樹脂及び樹脂微粒子を含み、樹脂微粒子がポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルゴム系樹脂、ウレタン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂微粒子である。
【0010】
上記外装材は、耐熱性に優れるとともに成型性にも優れる。このような効果が奏される理由については明らかでないが、本発明者は以下のように考えている。すなわち、一般的なエポキシ接着剤に靭性を付与する方法としてポリブタジエン等のゴム成分からなる樹脂微粒子を添加することが挙げられ、このような微粒子を添加した場合、接着層(エポキシ樹脂)中に生成されるゴム成分相にキャビテーションが発生する。このキャビテーションの発生により、ゴム成分相をとりまいているエポキシ樹脂の塑性変形が促進され、靭性が付与される。しかし、この手法の場合、キャビテーションによりエポキシ樹脂自身の架橋密度を低下させてしまうため、ゴム成分を添加する前のものと比較すると耐熱性が低下することとなる。
【0011】
これに対し、ポリアミド系樹脂やアクリル系樹脂などの比較的耐熱性の高い樹脂微粒子を添加した場合、耐熱性を低下させることなく高い靭性を付与することが可能となる。このメカニズムとしては、接着層にせん断や引張等の応力がかかった場合、接着層に分散している樹脂微粒子自身がブリッジングすること、すなわち、樹脂微粒子自身が塑性変形することで応力の緩和が生じる。本開示に係る外装材は、応力緩和のメカニズムが接着層自身の塑性変形に依存していない分、接着層中の架橋密度の大幅な低下を起こすことなく耐熱性が担保させたまま高い靭性を付与することが可能となっている。無機微粒子のような塑性変形が生じにくい微粒子では、このようなブリッジングがほとんど生じないため、応力緩和の向上が期待できない。このように、エポキシ樹脂など耐熱性に優れているものの脆性が高い接着剤に特定の樹脂微粒子を添加することで、耐熱性を維持しつつ成型性に必要な靭性を付与することが可能となる。
【0012】
ところで、上記特許文献1は、蓄電デバイス用外装材に用いられる接着剤に樹脂微粒子を添加する技術を開示する。この文献に記載の発明においては、樹脂微粒子として接着剤と反応して化学的に結合する官能基を有する反応性樹脂を用いている。この場合、接着剤と樹脂微粒子表面との間で架橋反応が生じるため、両者の界面近傍の架橋密度が増大し、これにより界面近傍の接着樹脂層のみ脆性が増大すると推察される。この状態で応力がかかると、界面近傍の接着樹脂層にクラックが生じて界面間に空隙が発生することとなる。そうすると、接着樹脂層の架橋密度が低下し、結果として、靭性が付与されて成型性が一応向上することにはなるが、接着樹脂層本来の耐熱性を維持することは困難である。これに対し、本開示に係る外装材は、樹脂微粒子として接着剤と反応して化学的に結合する官能基を有する反応性樹脂を用いるものではないため、上述の先行技術が抱える問題を発現することなく、耐熱性の向上及び靭性(成型性)の向上の両立化を図ることができる。本開示に係る外装材は耐熱性及び成型性に優れるため、全固体電池用途に適している。
【0013】
本開示の一側面は蓄電デバイスに関する。本開示に係る蓄電デバイスは、電池要素と、電池要素を収容する上記蓄電デバイス用外装材とを備える。この蓄電デバイスは全固体電池であってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性及び成型性の両方を十分に高水準に達成できる蓄電デバイス用外装材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本開示に係る外装材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)は外装材を成型して得られるエンボスタイプの外装材の一例を模式的に示す斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)に示すエンボスタイプの外装材のb-b線に沿った断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は
図1に示す外装材を用いて二次電池を製造する過程を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[蓄電デバイス用外装材]
図1は、本開示に係る蓄電デバイス用外装材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電デバイス用外装材)10は、基材層11と、基材層11の一方の面側に設けられた第一接着層12aと、第一接着層12aの基材層11とは反対側に設けられたバリア層15と、バリア層15の第一接着層12aとは反対側に設けられた第二接着層12bと、第二接着層12bのバリア層15とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。外装材10の厚さは、例えば、50~300μmであり、60~250μm又は70~230μmであってもよい。
【0018】
本実施形態のバリア層15は、バリア層本体部13と、第一接着層12a側に設けられた腐食防止処理層14aと、第二接着層12b側に設けられた腐食防止処理層14bとによって構成されている。なお、バリア層15はその一方の面又は両方の面に腐食防止処理層が形成されていないものであってもよい。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイスの外部側、シーラント層16を蓄電デバイスの内部側に向けて使用される。以下、各層について説明する。
【0019】
<基材層>
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電デバイスの外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0020】
基材層11は、シーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することが好ましい。基材層11がシーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することで、ヒートシール時に基材層11(外側の層)が融解することに起因して外観が悪くなることを抑制できる。シーラント層16が多層構造である場合、シーラント層16の融解ピーク温度は最も融解ピーク温度が高い層の融解ピーク温度を意味する。基材層11の融解ピーク温度は好ましくは290℃以上であり、より好ましくは290~350℃である。基材層11として使用でき且つ上記範囲の融解ピーク温度を有する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、PETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム(PPSフィルム)、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。融解ピーク温度は、JIS K7121-1987に記載の方法に準拠して求められる値を意味する。
【0021】
基材層11として、市販のフィルムを使用してもよいし、コーティング(塗工液の塗布及び乾燥)によって基材層11を形成してもよい。なお、基材層11は単層構造であっても多層構造であってもよく、熱硬化性樹脂を塗工することによって形成してもよい。また、基材層11は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
【0022】
基材層11の融解ピーク温度T11とシーラント層16の融解ピーク温度T16の差(T11-T16は、好ましくは20℃以上である。この温度差が20℃以上であることで、ヒートシールに起因する外装材20の外観の悪化をより一層十分に抑制できる。基材層11の厚さは好ましくは5~50μmであり、より好ましくは12~30μmである。
【0023】
<第一接着層>
第一接着層12aは、バリア層15と基材層11とを接着する層である。第一接着層12aは、基材層11とバリア層15とを強固に接着するために必要な接着力を有すると共に、冷間成型する際において、基材層11によってバリア層15が破断されることを抑制するための追随性も有する。なお、追随性とは、部材が伸縮等により変形したとしても、第一接着層12aが剥離することなく部材上に留まる性質である。
【0024】
本実施形態において、第一接着層12aは十分な耐熱性を有するものであればよく、例えば熱硬化性接着剤等の公知の接着剤を適宜選択して用いることができる。
【0025】
第一接着層12aの形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化樹脂は、1種単独で使用してよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してよいが、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂が耐熱性の点でより好ましい。上記熱硬化性接着剤については、エポキシ樹脂を主剤として用いる場合、硬化剤としてポリアミン樹脂を用いることができる。
【0026】
ウレタン樹脂は、例えば、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールよりなる主剤と、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物等のイソシアネート化合物よりなる硬化剤とを組み合わせて用いる、二液硬化型のポリウレタン樹脂が挙げられる。ここで、主剤の水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(=NCO/OH)は、1~10が好ましく、2~5がより好ましい。
【0027】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸の一種以上とジオールとを反応させることで得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0028】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合させて製造されるものが挙げられる。
【0029】
アクリルポリオールとしては、例えば、少なくとも水酸基含有アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。この場合、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を主成分として含んでいることが好ましい。水酸基含有アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
ポリイソシアネート化合物は、複数のイソシアネート基を含み、上記ポリオールを架橋する働きを担う。ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物及び芳香族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、これらの化合物の多量体(例えば、三量体)も用いることができ、具体的には、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等を用いることができる。
【0032】
ポリイソシアネート化合物は、ポットライフが向上するため、そのイソシアネート基がブロック剤と結合していることが好ましい。ブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム(MEKO)等が挙げられる。ブロック剤がポリイソシアネート化合物のイソシアネート基から脱離する温度は、50℃以上であってよく、ポットライフが一層向上することから、60℃以上であることが好ましい。ブロック剤がポリイソシアネート化合物のイソシアネート基から脱離する温度は、140℃以下であってよく、外装材の成型カール耐性が向上することから、120℃以下であることが好ましい。
【0033】
ブロック剤の解離温度を低下させるため、解離温度を低下させる触媒を用いてもよい。そのような解離温度を低下させる触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン及びN-メチルモルホリン等の三級アミン、並びに、ジブチル錫ジラウレート等の金属有機酸塩などが挙げられる。
【0034】
第一接着層12aは、外装材の外部に存在する硫化水素によるバリア層15の腐食を抑制できるため、硫化水素吸着物質を含むことが好ましい。このような硫化水素吸着物質としては、例えば、酸化亜鉛、過マンガン酸カリウム等が挙げられる。第一接着層12aが硫化水素吸着物質を含む場合、外装材の外部に存在する硫化水素によるバリア層15の腐食を抑制できることから、その含有量は、第一接着層12aの全量に対して1~50質量%であることが好ましい。
【0035】
第一接着層12aは、例えば、上述した接着成分の主剤及び硬化剤を含む組成物を塗工することで得られる。塗工方法は、公知の手法を用いることができるが、例えば、グラビアダイレクト、グラビアリバース(ダイレクト、キス)及びマイクログラビア等が挙げられる。
【0036】
第一接着層12aがウレタン系化合物を含む場合、ポリオール及びポリイソシアネート化合物を含む組成物におけるポリオールの含有割合は、ポリオール及びポリイソシアネート化合物の全量に対して、50~95質量%であることが好ましい。
【0037】
第一接着層12aに含まれる樹脂微粒子としては、例えばポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂などを挙げることができ、市販品を使用することができる。これら樹脂微粒子は1種単独で使用してよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。第一接着層12aに含まれる樹脂微粒子の含有量は、使用する熱硬化性樹脂や樹脂微粒子の種類などによって適宜設定されるべきものであるが、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは1~200質量部であり、より好ましくは3~100質量部である。
【0038】
第一接着層12aに含まれる樹脂微粒子の平均粒径は、特に制限されるものではないが、本発明が奏する効果の観点から、好ましくは0.3~3.0μmであり、より好ましくは0.4~2.5μmであり、更に好ましくは0.5~2.0μmである。この値が0.3μm以上であることで、上述のブリッジングによる応力緩和の効果が十分に発現する傾向にある。他方、この値が3.0μm以下であることで、微粒子自身が密着阻害成分として作用することを抑制できる傾向にある。
【0039】
第一接着層12aに含まれる樹脂微粒子の単位面積当たりの平均粒子数については特に制限されるものではないが、本発明が奏する効果の観点から、好ましくは0.20~3.0個/μm2であり、より好ましくは0.25~2.5個/μm2であり、更に好ましくは0.3~2.0個/μm2である。平均粒径によって最適な単位面積当たりの平均粒子数は変動することになるが、上記範囲に設定することで、本発明の外装材について、耐熱性を維持しつつ靭性を付与することが可能となる。
【0040】
ここで、樹脂微粒子の平均粒径、単位面積当たりの平均粒子数については、次の条件により測定されるものである。すなわち、外装材を適当なサイズ(例えば15mm幅)にカットし、基材とバリア層間を剥離し、いずれかの面に露出した接着剤層の最表面から電子走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面SEM像により行われる。接着層の最表面が観察しにくい場合は、ミクロトームで断面を作成し測定してもかまわない。
【0041】
平均粒径は、200μm×260μmの視野の中で観察される粒子をランダムに20個抽出して粒径を測定し、その算術平均値から求められるものである。なお、通常、樹脂微粒子の形状は球状であるが、短径と長径とを有する楕円体形状やアスペクト比の概念を含む形状である場合は、当該粒子の径として長手方向の径を測定する。
【0042】
単位面積当たりの平均粒子数については、200μm×260μmの視野の中で観察される粒子数を求め、単位面積(1μm2)あたりの粒子数を算出して求められる。
【0043】
第一接着層12aの厚さは、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、好ましくは2~10μmであり、より好ましくは2~6μmである。この値が2μm以上であることで、接着層の応力緩和性を十分に確保でき、十分な成型性を達成できる傾向にある。他方、この値が10μm以下であることで、接着層の形成時(塗工時)において膜厚を制御しやすい傾向にある。
【0044】
<第二接着層>
第二接着層12bは、バリア層15とシーラント層16とを接着する層である。この第二接着層12bは任意に設けることができる層である。第二接着層12bを形成する接着成分としては、例えば、第一接着層12aで挙げたものと同様の接着成分が挙げられる。
【0045】
第二接着層12bは、外装材内部の電池内容物から発生した硫化水素によるバリア層15の腐食を抑制できるため、硫化水素吸着物質を含むことが好ましい。このような硫化水素吸着物質としては、第一接着層12aで挙げたものと同様の硫化水素吸着物質が挙げられる。また、その含有量は、第二接着層12bの全量に対して0.1~50質量%であることが好ましい。
【0046】
第二接着層12bは、第一接着層12aと同様の方法で得られる。第二接着層12bがウレタン系化合物を含む場合、ポリオール及びポリイソシアネート化合物を含む組成物におけるポリオールの含有割合は、第一接着層12aと同様であってよい。
【0047】
第二接着層12bの厚さは、1~5μmであることが好ましい。第二接着層12bの厚さが1μm以上であることにより、バリア層15とシーラント層16との十分な接着強度が得られ易く、5μm以下であることにより、第二接着層12bの割れの発生を抑制することができる。
【0048】
<バリア層>
バリア層15は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。バリア層本体部13を構成する材質は、深絞り成型をするために延展性を有する。バリア層本体部13としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウ蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層本体部13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0049】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、更なる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい(例えば、JIS規格でいう8021材、8079材よりなるアルミニウム箔)。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
【0050】
バリア層15に使用する金属箔は、所望の耐電解液性を得るために、例えば、脱脂処理が施されていることが好ましい。また、製造工程を簡便にするためには、上記金属箔としては、表面がエッチングされていないものが好ましい。中でも、バリア層15に使用する金属箔は、耐電解液性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いるのが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理する場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。上記脱脂処理としては、例えば、ウェットタイプの脱脂処理、又はドライタイプの脱脂処理を用いることができるが、製造工程を簡便にする観点から、ドライタイプの脱脂処理が好ましい。
【0051】
上記ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、金属箔を焼鈍処理する工程において、処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。金属箔を軟質化するために施される焼鈍処理の際に、同時に行われる脱脂処理程度でも充分な耐電解液性が得られる。
【0052】
また、上記ドライタイプの脱脂処理としては、上記焼鈍処理以外の処理であるフレーム処理及びコロナ処理等の処理を用いてもよい。更に、上記ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、金属箔に特定波長の紫外線を照射した際に発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を用いてもよい。
【0053】
上記ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂処理、アルカリ脱脂処理等の処理を用いることができる。上記酸脱脂処理に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸を用いることができる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、アルカリ脱脂処理に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高い水酸化ナトリウムを用いることができる。また、弱アルカリ系の材料及び界面活性剤等が配合された材料を用いて、アルカリ脱脂処理を行ってもよい。上記説明したウェットタイプの脱脂処理は、例えば、浸漬法、スプレー法により行うことができる。
【0054】
バリア層15の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び加工性の点から、9~200μmであることが好ましく、15~150μmであることがより好ましく、15~100μmであることが更に好ましい。バリア層15の厚さが9μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくくなる。バリア層15の厚さが200μm以下であることにより、外装材の質量増加を低減でき、蓄電デバイスの重量エネルギー密度低下を抑制することができる。
【0055】
(腐食防止処理層)
腐食防止処理層14a,14bは、バリア層本体部13の腐食を防止するためにその表面に任意に設けられる層である。また、腐食防止処理層14aは、バリア層本体部13と第一接着層12aとの密着力を高める役割を果たす。腐食防止処理層14bは、バリア層本体部13と第二接着層12bとの密着力を高める役割を果たす。腐食防止処理層14a及び腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。本実施形態においては、バリア層本体部13と第一接着層12aとの間と、バリア層本体部13と第二接着層12bとの間の両方に腐食防止処理層が設けられているが、例えば、バリア層本体部13と第二接着層12bとの間にのみに腐食防止処理層が設けられていてもよい。
【0056】
腐食防止処理層14a,14bは、例えば、腐食防止処理層14a,14bの母材となる層に対して、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、腐食防止能を有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理あるいはこれらの処理を組み合わせた腐食防止処理を実施することで形成することができる。
【0057】
上述した処理のうち脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、特に熱水変性処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔(アルミニウム箔)表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物(アルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト))を形成させる処理である。このため、このような処理は、バリア層本体部13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成している構造を得るために、化成処理の定義に包含されるケースもある。
【0058】
脱脂処理としては、酸脱脂、アルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては上述した硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸を単独あるいはこれらを混合して得られた酸脱脂を用いる方法などが挙げられる。また酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウム等のフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、バリア層本体部13の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、耐フッ酸性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウム等を用いる方法が挙げられる。
【0059】
上記熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にバリア層本体部13を浸漬処理することで得られるベーマイト処理を用いることができる。上記陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理を用いることができる。また、上記化成処理としては、例えば、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、或いはこれらを2種以上組み合わせた処理を用いることができる。これらの熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理は、上述した脱脂処理を事前に施すことが好ましい。
【0060】
なお、上記化成処理としては、湿式法に限らず、例えば、これらの処理に使用する処理剤を樹脂成分と混合し、塗布する方法を用いてもよい。また、上記腐食防止処理としては、その効果を最大限にすると共に、廃液処理の観点から、塗布型クロメート処理が好ましい。
【0061】
コーティングタイプの腐食防止処理に用いられるコーティング剤としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤が挙げられる。特に、希土類元素酸化物ゾルを含有するコーティング剤を用いる方法が好ましい。
【0062】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積あたりの質量は0.005~0.200g/m2の範囲内が好ましく、0.010~0.100g/m2の範囲内がより好ましい。0.005g/m2以上であれば、バリア層15に腐食防止機能を付与し易い。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/m2を超えても、腐食防止機能は飽和しこれ以上の効果が見込めない。なお、上記内容では単位面積あたりの質量で記載しているが、比重がわかればそこから厚さを換算することも可能である。
【0063】
腐食防止処理層14a,14bの厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、例えば10nm~5μmであることが好ましく、20~500nmであることがより好ましい。
【0064】
<シーラント層>
シーラント層16は、外装材10に対し、ヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電デバイスの組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。シーラント層16としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系樹脂からなるフィルムが挙げられる。シーラント層16は、融点が高く、得られる外装材の耐熱性が一層向上することから、ポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく、ポリエステル系樹脂からなるフィルムがより好ましい。
【0065】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が挙げられる。これらアクリル系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。これらポリエステル系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。シーラント層16が多層構成である場合は、各層同士を共押出により積層してもよく、ドライラミネートにより積層してもよい。シーラント層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤及び粘着付与剤等の各種添加材を含んでいてもよい。
【0067】
シーラント層16の厚さは、10~100μmであることが好ましく、20~60μmであることがより好ましい。シーラント層16の厚さが10μm以上であることにより、十分なヒートシール強度を得ることができ、100μm以下であることにより、外装材端部からの水蒸気の浸入量を低減することができる。シーラント層16の融解ピーク温度は、耐熱性が向上することから、200~280℃であることが好ましい。
【0068】
[外装材の製造方法]
次に、外装材10の製造方法について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。外装材10の製造方法として、例えば、下記の工程S11~S13をこの順に実施する方法が挙げられる。
工程S11:バリア層本体部13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、バリア層本体部13の他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する工程。
工程S12:バリア層15の腐食防止処理層14a側の面と基材層11とを、第一接着層12aを介して貼り合わせる工程。
工程S13:バリア層15の腐食防止処理層14b側の面上に、第二接着層12bを介してシーラント層16を形成する工程。
【0069】
<工程S11>
工程S11では、バリア層本体部13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する。腐食防止処理層14a及び14bは、それぞれ別々に形成されてもよく、両方が一度に形成されてもよい。具体的には、例えば、バリア層本体部13の両方の面に腐食防止処理剤(腐食防止処理層の母材)を塗布し、その後、乾燥、硬化、焼付けを順次行うことで、腐食防止処理層14a及び14bを一度に形成する。バリア層本体部13の一方の面に腐食防止処理剤を塗布し、乾燥、硬化、焼き付けを順次行って腐食防止処理層14aを形成した後、バリア層本体部13の他方の面に同様にして腐食防止処理層14bを形成してもよい。腐食防止処理層14a及び14bの形成順序は特に制限されない。また、腐食防止処理剤は、腐食防止処理層14aと腐食防止処理層14bとで異なるものを用いてもよく、同じのものを用いてもよい。腐食防止処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、バーコート法、キスコート法、コンマコート法、小径グラビアコート法等の方法を用いることができる。
【0070】
<工程S12>
工程S12では、基材層11とバリア層15が、第一接着層12aを形成する接着剤を用いてドライラミネーション等の手法で貼り合わせられる。工程S12では、第一接着層12aの接着性の促進のため、加熱処理を行ってもよい。加熱処理時の温度は、外装材が成型カール耐性に優れることから、140℃以下であることが好ましく、ブロック剤のポットライフが向上することから、60℃以上であることが好ましい。なお、第一接着層12aは、より好ましくは、溶剤に樹脂微粒子を配合した熱硬化性樹脂を溶解・分散させて得られる接着樹脂溶液をコーティングすることにより形成される層である。ここで前記溶剤としては、主に酢酸エチル、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)を使用することができ、場合によっては、更にMIBK(メチルイソブチルケトン)やアルコール類を加えた混合溶剤が用いられる。またコーティングの手法としては公知の手法を用いて塗工することが可能であり、例えばグラビアダイレクト、グラビアリバース(ダイレクト、キス)、マイクログラビアなどが挙げられる。
【0071】
<工程S13>
工程S12後、基材層11、第一接着層12a及びバリア層15がこの順に積層された積層体のバリア層15の表面(腐食防止処理層14bが形成された面)と、シーラント層16が、第二接着層12bを形成する接着剤を用いてドライラミネーション等の手法で貼り合わせられる。工程S13では、第二接着層12bの接着性の促進のため、加熱処理を行ってもよい。加熱処理時の温度は、外装材が成型カール耐性に優れることから、140℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、ブロック剤のポットライフが向上することから、60℃以上であることが好ましい。
【0072】
以上説明した工程S11~S13により、外装材10が得られる。なお、外装材10の製造方法の工程順序は、上記工程S11~S13を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程S12を行ってから工程S11を行う等、実施する工程の順序を適宜変更してもよい。
【0073】
[蓄電デバイス]
次に、外装材10を容器として備える蓄電デバイスについて説明する。蓄電デバイスは、電極を含む電池要素1と、上記電極から延在するリード2と、電池要素1を収容する容器とを備え、上記容器は外装材10から、シーラント層16が内側となるように形成される。上記容器は、2つの外装材をシーラント層16同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた外装材10の周縁部をヒートシールして得られてもよく、また、1つの外装材を折り返して重ね合わせ、同様に外装材10の周縁部をヒートシールして得られてもよい。リード2は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。リード2は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。
【0074】
本実施形態の外装材は、様々な蓄電デバイスにおいて使用可能である。そのような蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池及び全固体電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが挙げられる。本実施形態の外装材10はヒートシール後の高温環境下での使用に際しても優れたヒートシール性を維持することができるため、そのような環境での使用が想定される全固体電池用途に適している。
【0075】
[蓄電デバイスの製造方法]
次に、上述した外装材10を用いて蓄電デバイスを製造する方法について説明する。なお、ここでは、エンボスタイプ外装材30を用いて二次電池40を製造する場合を例に挙げて説明する。
図2は上記エンボスタイプ外装材30を示す図である。
図3(a)~(d)は、外装材10を用いた片側成型加工電池の製造工程を示す斜視図である。
図3(a)は、蓄電デバイス用外装材を準備した状態を示す。
図3(b)は、エンボスタイプに加工された蓄電デバイス用外装材と電池要素を準備した状態を示す。
図3(c)は、蓄電デバイス用外装材の一部を折り返して端部を溶融した状態を示す。
図3(d)は、折り返された部分の両側を上方に折り返した状態を示す。二次電池40としては、エンボスタイプ外装材30のような外装材を2つ準備し、それらをアライメントの調整をしつつ貼り合わせて製造される、両側成型加工電池であってもよい。
【0076】
片側成型加工電池である二次電池40は、例えば、以下の工程S21~S26により製造することができる。
工程S21:外装材10、電極を含む電池要素1、並びに上記電極から延在するリード2を準備する工程。
工程S22:外装材10の片面に電池要素1を配置するための凹部32を形成し、エンボスタイプ外装材30を得る工程(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
工程S23:エンボスタイプ外装材30の成型加工エリア(凹部32)に電池要素1を配置し、凹部32を蓋部34が覆うようにエンボスタイプ外装材30を折り返し重ねて、電池要素1から延在するリード2を挟持するようにエンボスタイプ外装材30の一辺をヒートシールする工程(
図3(b)及び
図3(c)参照)。
工程S24:リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺をヒートシールし、その後、残った一辺から電解液を注入し、真空状態で残った一辺をヒートシールする工程(
図3(c)参照)。
工程S25:電流値や電圧値、環境温度等を所定の条件にして充放電を行い、化学変化を起こさせる(化成)工程。
工程S26:リード2を挟持する辺以外のヒートシールされた辺の端部をカットし、成型加工エリア(凹部32)側に折り曲げる工程(
図3(d)参照)。
【0077】
<工程S21>
工程S21では、外装材10、電極を含む電池要素1、並びに上記電極から延在するリード2を準備する。外装材10は、上述した実施形態に基づき準備する。電池要素1及びリード2としては特に制限はなく、公知の電池要素1及びリード2を用いることができる。
【0078】
<工程S22>
工程S22では、外装材10のシーラント層16側に電池要素1を配置するための凹部32が形成される。凹部32の平面形状は、電池要素1の形状に合致する形状、例えば平面視矩形状とされる。凹部32は、例えば矩形状の圧力面を有する押圧部材を、外装材10の一部に対してその厚さ方向に押圧することで形成される。また、押圧する位置、すなわち凹部32は、長方形に切り出した外装材10の中央より、外装材10の長手方向の一方の端部に偏った位置に形成する。これにより、成型加工後に凹部32を形成していないもう片方の端部側を折り返し、蓋(蓋部34)とすることができる。
【0079】
凹部32を形成する方法としてより具体的には、金型を用いた成型加工(深絞り成型)が挙げられる。成型方法としては、外装材10の厚さ以上のギャップを有するように配置された雌型と雄型の金型を用い、雄型の金型を外装材10と共に雌型の金型に押し込む方法が挙げられる。雄型の金型の押込み量を調整することで、凹部32の深さ(深絞り量)を所望の量に調整できる。外装材10に凹部32が形成されることにより、エンボスタイプ外装材30が得られる。このエンボスタイプ外装材30は、例えば
図2に示すような形状を有している。ここで、
図2(a)は、エンボスタイプ外装材30の斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すエンボスタイプ外装材30のb-b線に沿った縦断面図である。
【0080】
<工程S23>
工程S23では、エンボスタイプ外装材30の成型加工エリア(凹部32)内に、正極、セパレータ及び負極等から構成される電池要素1が配置され。また、電池要素1から延在し、正極と負極にそれぞれ接合されたリード2が成型加工エリア(凹部32)から外に引き出される。その後、エンボスタイプ外装材30は、長手方向の略中央で折り返され、シーラント層16同士が内側となるように重ねられ、エンボスタイプ外装材30のリード2を挟持する一辺がヒートシールされる。ヒートシールは、温度、圧力及び時間の3条件で制御され、適宜設定される。ヒートシールの温度は、シーラント層16を融解する温度以上であることが好ましく、具体的には180℃以上とすることができる。
【0081】
ヒートシール後、更にシーラント層16全体を加熱するキュア工程を行う。これにより、ヒートシール部分以外の結晶化を進行させ、外装材10全体の耐熱性を確保する。キュア工程は80~150℃で実施することができる。
【0082】
なお、シーラント層16のヒートシール前の厚さは、リード2の厚さに対し40%以上80%以下であることが好ましい。シーラント層16の厚さが上記下限値以上であることにより、シーラント層16を構成する樹脂がリード2端部を十分充填できる傾向があり、上記上限値以下であることにより、二次電池40の外装材10端部の厚さを適度に抑えることができ、外装材10端部からの水分の浸入量を低減することができる。
【0083】
<工程S24>
工程S24では、リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺のヒートシールが行われる。その後、残った一辺から電解液を注入し、残った一辺が真空状態でヒートシールされる。ヒートシールの条件は工程S23と同様である。
【0084】
<工程S25>
工程S25では、工程S23までに得られた二次電池40に対して充放電を行い、化学変化を起こさせる(化成:40℃環境にて3日間)。そして、化成によって発生したガスの除去や電解液の補充のため、二次電池40を一度開封し、その後最終シールを行う。なお、この工程S25は省略することができる。
【0085】
<工程S26>
リード2を挟持する辺以外のヒートシール辺の端部がカットされ、端部からははみだしたシーラント層16が除去される。その後、ヒートシール部を成型加工エリア(凹部32)側に折り返し、折り返し部42を形成することで、二次電池40が得られる。
【0086】
以上、本発明の蓄電デバイス用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は当該形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、少なくとも、第一接着層12aが必須成分として熱硬化性樹脂及び樹脂微粒子を含有する態様を例示したが、第一接着層12a及び第二接着層12bの両方、あるいは、第二接着層12bのみが必須成分として熱硬化性樹脂及び樹脂微粒子を含有する態様であってもよい。また、上記実施形態においては、バリア層15とシーラント層16との間に第二接着層12bが形成された態様を例示したが、バリア層15とシーラント層16の間に第二接着層12bが介在せず、バリア層15がシーラント層16と直接接していてもよい。
【実施例0087】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
【0089】
<基材層>
基材層として、一方の面をコロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:25μm)を用いた。
【0090】
<第一接着層>
表1に記載の主剤、硬化剤を表2に示す割合で配合した接着剤を用いた。二液混合タイプの熱硬化性樹脂の主剤及び硬化剤の詳細は以下のとおりである。
{主剤}
・ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社製、商品名:デュラノールT5652)
・エポキシ系樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER828)
{硬化剤}
・イソシアネート系樹脂(旭化成株式会社製、商品名:デュラネートMF-K60B)
・ポリアミン樹脂(DIC株式会社製、商品名:N-153-IM-65)
【0091】
一液タイプの熱硬化性樹脂としては、以下に示すものを用いた。
・アミノ樹脂(アイカ工業株式会社製、商品名:UMX-15J)
・フェノール樹脂(アイカ工業株式会社製、商品名:PX-101)
【0092】
第一接着層に含有させる樹脂微粒子として、以下に示すものを用いた。
・ポリアミド系樹脂微粒子(東レ株式会社製、東レナイロン微粒子(ナイロン12、真球状))
・アクリル系樹脂微粒子A(積水化成品工業株式会社製、商品名:テクポリマーTP-NF(平均粒子径0.15μm))
・アクリル系樹脂微粒子B(積水化成品工業株式会社製、商品名:テクポリマーTP-NF(平均粒子径0.3μm))
・アクリル系樹脂微粒子C(積水化成品工業株式会社製、商品名:テクポリマーTP-NF(平均粒子径0.5μm))
・アクリル系樹脂微粒子D(積水化成品工業株式会社製、商品名:テクポリマーSSX-101)
・アクリル系樹脂微粒子E(積水化成品工業株式会社製、商品名:テクポリマーSSX-103)
・アクリルゴム系樹脂微粒子(綜研化学株式会社製、商品名:MX-500)
・ウレタン系樹脂微粒子(根上工業株式会社製、商品名:TK-800T)
・スチレン系樹脂微粒子(積水化成品工業株式会社製、商品名:SBX-4)
【0093】
樹脂微粒子の平均粒径及び単位面積当たりの平均粒子数を求めるにあたっては、日本電子株式会社製JMS-7001F(測定条件:加圧電圧5kV)を用いた。
【0094】
<腐食防止処理層>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
【0095】
<バリア層(厚さ35μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0096】
<シーラント層>
シーラント層として厚さ40μmのCPPフィルム(オカモト株式会社製、商品名:ET20)を用いた。
【0097】
[外装材の製造]
<実施例1~19及び比較例1>
ドライラミネート手法により接着剤(第一接着層)を用いてバリア層を基材層に貼り付けた。
【0098】
このようにして得られた積層体に、80℃で5日のエージングを実施して接着剤を硬化させ、外装材(基材層/第一接着層/バリア層/シーラント層)を製造した。
【0099】
[深絞り成型性]
<測定方法>
各例で得られた外装材について、深絞り成型が可能な成型深度を以下の方法で評価した。成型装置の成型深さを0.25mmごとに2.00~5.00mmに設定し、深絞りしたサンプルについて破断及びピンホールの有無を、外装材にライトを照射しながら目視にて確認し、破断及びピンホールのいずれも生じることなく深絞り成型できた成型深度の最大値を求めた。また、成型深度について以下の基準に従って評価した。結果を表3に示した。なお、△以上を合格とする。
<評価基準>
A:成型深度の最大値が4.00mm以上
B:成型深度の最大値が3.50mm以上4.00mm未満
C:成型深度の最大値が3.00mm以上3.50mm未満
D:成型深度の最大値が3.00mm未満
【0100】
[深絞り成型後の耐熱性]
上記[深絞り成型性]の評価で得られた成型深度2.00mmの外装材(各5検体ずつ)を、180℃、又は200℃に加熱しながら1週間保管した。その後、成型凸部近傍にライトを照射しながら、基材層、バリア層間のデラミネーション発生具合を目視にて確認した。本試験については以下の基準に従って評価した。結果を表2に示した。
<評価基準>
A:5検体のいずれもデラミネーションが発生せず
B:5検体中1検体でデラミネーションが発生
C:5検体中2~3検体でデラミネーションが発生
D:5検体中4~5検体でデラミネーションが発生
【0101】
【0102】
【0103】
上記実施例と比較例との対比から、接着層において熱硬化性樹脂に樹脂微粒子を含有させた場合、樹脂微粒子を含有させない場合(比較例1)と比較して、耐熱性及び成型性の点で優れた外装材が得られることが理解される。また、熱硬化性樹脂として特定の樹脂を用いた場合(実施例14~19)、上記の点で更に優れた効果を発揮することが理解される。
1…電池要素、2…リード、10…外装材(蓄電デバイス用外装材)、11…基材層、12a…第一接着層、12b…第二接着層、13…バリア層本体部、14a,14b…腐食防止処理層、15…バリア層、16…シーラント層、30…エンボスタイプ外装材、32…凹部(成型加工エリア)、34…蓋部、40…二次電池