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特開2024-101134コイル部品及びこれを備える回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101134
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】コイル部品及びこれを備える回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240722BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240722BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 F
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004901
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】奥村 武史
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】筒井 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 響
(72)【発明者】
【氏名】水谷 洋介
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070CB12
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】実装面がコイル軸方向に対して垂直であるコイル部品において、端子電極の面積を十分に確保しつつ、コイルパターンの浮遊容量を低減する。
【解決手段】コイル部品1は、実装面S1を有する素体2と、素体2に埋め込まれ、コイル軸方向が実装面S1に対して垂直なコイルパターンC1~C4と、コイルパターンC1~C4に接続され、実装面S1に露出する端子電極E1~E4とを備える。端子電極E1~E4には、コイル軸方向から見た平面視でコイルパターンC1~C4と重ならないよう切り欠き部Aが設けられている。これにより、実装面S1における端子電極E1~E4の露出面積を確保しつつ、コイルパターンC1~C4の浮遊容量を削減することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する素体と、
前記素体に埋め込まれ、コイル軸方向が前記実装面に対して垂直なコイルパターンと、
前記コイルパターンに接続され、前記実装面に露出する端子電極と、を備え、
前記端子電極には、前記コイル軸方向から見た平面視で前記コイルパターンと重ならないよう切り欠き部が設けられている、コイル部品。
【請求項2】
前記切り欠き部を構成するエッジは、平面視で前記コイルパターンの最外周ターンに沿って延在する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記素体は、複数の絶縁層と前記コイルパターンを構成する複数の導体層が交互に積層されたコイル層と、前記コイル層を覆い、前記実装面を構成する磁性材料層とを含む、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記端子電極は、前記磁性材料層に埋め込まれたバンプ導体を含み、
前記バンプ導体には、平面視で前記コイルパターンと重ならないよう切り欠き部が設けられている、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記コイルパターンは、互いに磁気結合する第1及び第2のコイルパターンを含み、
前記端子電極は、前記第1のコイルパターンの一端に接続された第1の端子電極と、前記第2のコイルパターンの一端に接続された第2の端子電極と、前記第1のコイルパターンの他端に接続された第3の端子電極と、前記第2のコイルパターンの他端に接続された第4の端子電極とを含み、
前記実装面は、第1乃至第4の角部を有し、
前記第1乃至第4の端子電極は、それぞれ前記第1乃至第4の角部に配置されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された基板と、を備え、
前記基板は、前記端子電極に接続されたランドパターンを有し、
前記ランドパターンには、平面視で前記コイルパターンと重ならないよう切り欠き部が設けられている、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品に関し、特に、実装面がコイル軸方向に対して垂直であるコイル部品に関する。また、本開示は、このようなコイル部品が実装された回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、実装面がコイル軸方向に対して垂直であるコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2013/031880
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のコイル部品においては、端子電極とコイルパターンがコイル軸方向に重なるとコイルパターンの浮遊容量が増加し、高周波特性が悪化することがある。しかしながら、端子電極とコイルパターンが重ならないよう、単に端子電極の平面形状を小型化するだけでは、端子電極の面積を十分に確保できない場合があった。
【0005】
本開示においては、実装面がコイル軸方向に対して垂直であるコイル部品において、端子電極の面積を十分に確保しつつ、コイルパターンの浮遊容量を低減する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面によるコイル部品は、実装面を有する素体と、素体に埋め込まれ、コイル軸方向が実装面に対して垂直なコイルパターンと、コイルパターンに接続され、実装面に露出する端子電極とを備え、端子電極には、コイル軸方向から見た平面視でコイルパターンと重ならないよう切り欠き部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、実装面がコイル軸方向に対して垂直であるコイル部品において、端子電極の面積を十分に確保しつつ、コイルパターンの浮遊容量を低減する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示に係る技術の一実施形態によるコイル部品1の外観を示す略透視斜視図である。
図2図2は、コイル部品1をZ方向から見た略透視平面図である。
図3図3は、図2の変形例である。
図4図4は、導体層L1のパターン形状を説明するための略平面図である。
図5図5は、絶縁層60のパターン形状を説明するための略平面図である。
図6図6は、導体層L2のパターン形状を説明するための略平面図である。
図7図7は、絶縁層70のパターン形状を説明するための略平面図である。
図8図8は、導体層L3のパターン形状を説明するための略平面図である。
図9図9は、絶縁層80のパターン形状を説明するための略平面図である。
図10図10は、導体層L4のパターン形状を説明するための略平面図である。
図11図11は、絶縁層90のパターン形状を説明するための略平面図である。
図12図12は、端子電極E1~E4のパターン形状を説明するための略平面図である。
図13図13は、コイル部品1の模式的な断面図である。
図14図14は、コモンモード信号の減衰特性(Scc21)を示すグラフであり、実線は本実施形態によるコイル部品1の特性を示し、破線は比較例によるコイル部品の特性を示している。
図15図15は、コイル部品1が実装される基板100の主要部の構成を示す略平面図である。
図16図16は、第1の変形例によるコイル部品1Aの模式的な断面図である。
図17図17は、第2の変形例によるコイル部品1Bの外観を示す略透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態によるコイル部品1の外観を示す略透視斜視図である。
【0011】
本実施形態によるコイル部品1は表面実装型のコモンモードフィルタであり、図1に示すように、素体2と、素体2に埋め込まれた4つの端子電極E1~E4とを備えている。素体2は、フェライトなどの高透磁率材料からなる支持体3と、支持体3に積層されたコイル層4と、コイル層4に積層された磁性材料層5を有している。コイル層4は、絶縁層と導体層がZ方向に交互に積層された構造を有し、導体層には後述するコイルパターンが形成されている。磁性材料層5は、フェライトやパーマロイなどからなる磁性粉末と樹脂が混合された複合磁性材料であっても構わない。端子電極E1~E4は磁性材料層5に埋め込まれ、その一部表面が素体2から露出している。
【0012】
素体2は略直方体形状であり、XY面を構成し互いに反対側に位置する実装面S1及び上面S2と、XZ面を構成し互いに反対側に位置する側面S3,S4と、YZ面を構成し互いに反対側に位置する側面S5,S6とを有している。実装面S1及び上面S2は、積層方向であるZ方向と直交している。
【0013】
図1に示すように、端子電極E1は、実装面S1及び側面S3,S5からなる角部に露出している。端子電極E2は、実装面S1及び側面S3,S6からなる角部に露出している。端子電極E3は、実装面S1及び側面S4,S5からなる角部に露出している。端子電極E4は、実装面S1及び側面S4,S6からなる角部に露出している。
【0014】
図2は、本実施形態によるコイル部品1をZ方向から見た略透視平面図である。
【0015】
素体2に含まれるコイル層4には、図2に示すようにコイルパターンC1~C4が埋め込まれている。コイルパターンC1~C4のコイル軸方向はZ方向であり、実装面S1に対して垂直である。本実施形態においては、Z方向から見た平面視で、コイルパターンC1~C4と端子電極E1~E4が重なりを有しておらず、端子電極E1~E4の全体がコイルパターンC1~C4の径方向における外側領域と重なる位置に配置されている。これにより、コイルパターンC1~C4と端子電極E1~E4の間に生じる浮遊容量が低減される。
【0016】
ここで、端子電極E1に着目してより詳細に説明すると、端子電極E1は、実装面S1と側面S3の境界に沿って延在するエッジE11と、実装面S1と側面S5の境界に沿って延在するエッジE12と、実装面S1上に位置するエッジE13とを有しており、エッジE13の一部はコイルパターンC1~C4の最外周ターンに沿って延在している。エッジE11のX方向における幅はW11であり、エッジE12のY方向における幅はW12である。図2に示すように、側面S5からX方向に幅W11の距離に相当する位置にはコイルパターンC1~C4が存在し、側面S3からY方向に幅W12の距離に相当する位置にはコイルパターンC1~C4が存在している。このため、端子電極E1の形状として、X方向における幅がW11であり、Y方向における幅がW12である矩形状とした場合、平面視で端子電極E1とコイルパターンC1~C4に重なりが生じてしまう。しかしながら、本実施形態においては、このような重なりが生じないよう、端子電極E1に切り欠き部Aを設けている。このような切り欠き部Aにより、端子電極E1の平面形状は矩形ではなく、矩形の一部を切り欠いた形状となる。
【0017】
切り欠き部Aを構成するエッジE13の一部は、平面視でコイルパターンC1~C4の最外周ターンに沿って延在している。このため、端子電極E1のX方向における幅は、側面S3からY方向に離れるにしたがって徐々に狭くなる部分を有し、端子電極E1のY方向における幅は、側面S5からX方向に離れるにしたがって徐々に狭くなる部分を有する。他の端子電極E2~E4についても、同様の形状を有している。
【0018】
本実施形態においては、端子電極E1~E4がこのような形状を有していることから、コイルパターンC1~C4に生じる浮遊容量が低減されるだけでなく、実装面S1に露出する端子電極E1~E4の平面形状を単純な矩形状とした場合と比べ、実装面S1における端子電極E1~E4の露出面積を拡大することが可能となる。尚、図1及び図2に示す例では、端子電極E1のエッジE13がコイルパターンC1~C4の最外周ターンに沿って延在しているが、本発明がこれに限定されるものではなく、図3に示す変形例のように、端子電極E1~E4の平面形状がL字型であっても構わない。
【0019】
次に、コイル層4を構成する各層の構成について説明する。
【0020】
コイル層4は、図4図11に示す絶縁層50,60,70,80,90と導体層L1~L4が支持体3の表面に交互に積層された構造を有している。図4に示すように、絶縁層50は支持体3のXY表面を覆う層であり、その表面に導体層L1が形成される。導体層L1は、スパイラル状に巻回されたコイルパターンC1と、接続パターン11,21,31,41と、ダミーパターンD1,D2とを有している。コイルパターンC1の外周端は、接続パターン11に接続されている。他の接続パターン21,31,41は、コイルパターンC1には接続されておらず、面内で独立した導体パターンである。
【0021】
また、ダミーパターンD1,D2も面内で独立した導体パターンであり、コイルパターンC1の外周に設けられている。このうち、ダミーパターンD1は、コイルパターンC1の最外周ターンと側面S3の間に配置され、コイルパターンC1の最外周ターンに沿ってX方向に延在している。一方、ダミーパターンD2は、コイルパターンC1の最外周ターンと側面S4の間に配置され、コイルパターンC1の最外周ターンに沿ってX方向に延在している。側面S3,S4は、ダイシングラインDLxによって定義される。図4に示すようにダミーパターンD1,D2は、それぞれ突出部D1a,D2aを有している。突出部D1aは、ダミーパターンD1の本体部から側面S3に向かってY方向に突出し、突出部D2aは、ダミーパターンD2の本体部から側面S4に向かってY方向に突出する。
【0022】
導体層L1は、図5に示す絶縁層60で覆われる。絶縁層60は、開口部61~66を有している。開口部61~64は、それぞれ接続パターン11,21,31,41と重なる位置に設けられる。開口部65は、コイルパターンC1の内周端と重なる位置に設けられる。開口部66は、コイルパターンC1に囲まれた内径領域と重なる位置に設けられる。
【0023】
絶縁層60の表面には、図6に示す導体層L2が形成される。導体層L2は、スパイラル状に巻回されたコイルパターンC2と、接続パターン12,22,32,42と、中継パターン52とを有している。コイルパターンC2の外周端は、接続パターン22に接続されている。他の接続パターン12,32,42及び中継パターン52は、コイルパターンC2には接続されておらず、面内で独立した導体パターンである。接続パターン12,22,32,42は、絶縁層60に設けられた開口部61~64を介して、導体層L1の接続パターン11,21,31,41にそれぞれ接続される。また、中継パターン52は、絶縁層60に設けられた開口部65を介して、コイルパターンC1の内周端に接続される。ここで、コイルパターンC2のうちX方向に延在する区間C2xの本数が8本であるのに対し、コイルパターンC1のうちX方向に延在する区間C1xの本数は7本であるため、区間C2xの最外周ターンにおいて段差が生じるおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、区間C2xの最外周ターンと重なる位置にダミーパターンD1が配置されていることから、このような段差が生じにくい。
【0024】
導体層L2は、図7に示す絶縁層70で覆われる。絶縁層70は、開口部71~77を有している。開口部71~74は、それぞれ接続パターン12,22,32,42と重なる位置に設けられる。開口部75は、中継パターン52と重なる位置に設けられる。開口部76は、コイルパターンC2の内周端と重なる位置に設けられる。開口部77は、開口部66と重なる位置に設けられる。
【0025】
絶縁層70の表面には、図8に示す導体層L3が形成される。導体層L3は、スパイラル状に巻回されたコイルパターンC3と、接続パターン13,23,33,43と、中継パターン53と、ダミーパターンD3を有している。コイルパターンC3の外周端は、接続パターン33に接続されている。他の接続パターン13,23,43、中継パターン53及びダミーパターンD3は、コイルパターンC3には接続されておらず、面内で独立した導体パターンである。接続パターン13,23,33,43は、絶縁層70に設けられた開口部71~74を介して、導体層L2の接続パターン12,22,32,42にそれぞれ接続される。また、コイルパターンC3の内周端は、開口部75を介して中継パターン52に接続される。これにより、コイルパターンC3の内周端とコイルパターンC1の内周端は、中継パターン52を介して互いに接続される。さらに、中継パターン53は、絶縁層70に設けられた開口部76を介して、コイルパターンC2の内周端に接続される。
【0026】
導体層L3は、図9に示す絶縁層80で覆われる。絶縁層80は、開口部81~86を有している。開口部81~84は、それぞれ接続パターン13,23,33,43と重なる位置に設けられる。開口部85は、中継パターン53と重なる位置に設けられる。開口部86は、開口部77,66と重なる位置に設けられる。
【0027】
絶縁層80の表面には、図10に示す導体層L4が形成される。導体層L4は、スパイラル状に巻回されたコイルパターンC4と、接続パターン14,24,34,44とを有している。コイルパターンC4の外周端は、接続パターン44に接続されている。他の接続パターン14,24,34は、コイルパターンC4には接続されておらず、面内で独立した導体パターンである。接続パターン14,24,34,44は、絶縁層80に設けられた開口部81~84を介して、導体層L3の接続パターン13,23,33,43にそれぞれ接続される。また、コイルパターンC4の内周端は、開口部85を介して中継パターン53に接続される。これにより、コイルパターンC4の内周端とコイルパターンC2の内周端は、中継パターン53を介して互いに接続される。ここで、コイルパターンC4のうちX方向に延在する区間C4xの本数が8本であるのに対し、コイルパターンC3のうちX方向に延在する区間C3xの本数は7本であるため、区間C4xの最外周ターンにおいて段差が生じるおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、区間C4xの最外周ターンと重なる位置にダミーパターンD3が配置されていることから、このような段差が生じにくい。
【0028】
導体層L4は、図11に示す絶縁層90で覆われる。絶縁層90は、開口部91~95を有している。開口部91~94は、それぞれ接続パターン14,24,34,44と重なる位置に設けられる。開口部95は、開口部86,77,66と重なる位置に設けられる。
【0029】
絶縁層90の表面には、図12に示す端子電極E1~E4が形成される。端子電極E1~E4は磁性材料層5に埋め込まれたバンプ導体を含み、実装面S1に露出するバンプ導体の表面が端子電極E1~E4を構成する。実装面S1に露出するバンプ導体の表面は、ハンダの濡れ性を高めるための表面処理が施されていても構わない。端子電極E1~E4を構成するバンプ導体の底部は、それぞれ開口部91~94を介して導体層L4の接続パターン14,24,34,44に接続される。これにより、端子電極E1と端子電極E3の間にはコイルパターンC1,C3が直列に接続され、端子電極E2と端子電極E4の間にはコイルパターンC2,C4が直列に接続されることになる。そして、コイルパターンC1~C4はZ方向にこの順に積層されていることから、コイルパターンC1,C3からなるインダクタとコイルパターンC2,C4からなるインダクタとの間で高い磁気結合が生じる。
【0030】
また、絶縁層90の表面のうち、端子電極E1~E4が形成されていない部分には、図1に示した磁性材料層5が形成される。磁性材料層5の一部5A(図2参照)は、開口部95,86,77,66に埋め込まれ、これによりコイルパターンC1~C4の内径領域における磁路として機能する。
【0031】
実際にコイル部品1を作製する際には、集合基板を用いて複数のコイル部品1が多数個取りされる。多数個取りする際には、図4図12に示すダイシングラインDLx,DLyに沿って集合基板をX方向及びY方向に切断することによりコイル部品1を個片化する。
【0032】
ダイシング位置は、図示しないアライメントマークを参照することによって正しく制御されるが、製造誤差によって多少のアライメントずれが不可避的に生じる。ここで、ダイシングラインDLxのY方向における位置が大きくずれた場合、コイルパターンC1~C4が素体2の側面S3又はS4から露出するおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、ダミーパターンD1,D2に突出部D1a,D2aが設けられていることから、ダイシングラインDLxのY方向における位置ずれによってコイルパターンC1~C4が素体2の側面S3又はS4から露出する前に、突出部D1a又はD2aの露出によって、ダイシングラインDLxのY方向における位置ずれを検知することができる。したがって、突出部D1a又はD2aが露出した場合、以降の製造ロットにおいてダイシングラインDLxのY方向における位置を再調整することにより、コイルパターンC1~C4の側面S3,S4からの露出を防止することができる。尚、ダミーパターンD1,D2は独立した導体パターンであり、電気的にフローティング状態であることから、突出部D1a又はD2aが露出した場合であっても、所望の特性を得ることが可能である。
【0033】
図13は、本実施形態によるコイル部品1の模式的な断面図である。
【0034】
図13に示す例では、端子電極E2がバンプ導体B2とその表面を覆う表面処理層P2からなり、端子電極E4がバンプ導体B4とその表面を覆う表面処理層P4からなる。バンプ導体B2,B4の平面形状は、実装面S1上における表面処理層P2,P4の平面形状とそれぞれ同じである。つまり、バンプ導体B2,B4には、平面視でコイルパターンC1~C4と重ならないよう、図2に示した切り欠き部Aと同様の切り欠き部が設けられている。このため、図13に示すように、バンプ導体B2,B4は、コイル軸方向から見た平面視でコイルパターンC1~C4と重なりを有していない。図示しないが、他の端子電極E1,E3についても同様である。これにより、コイルパターンC1~C4の浮遊容量を低減することができるとともに、磁性材料層5を構成する複合磁性材料のボリュームを増大することが可能となる。
【0035】
図14は、コモンモード信号の減衰特性(Scc21)を示すグラフであり、実線は本実施形態によるコイル部品1の特性を示し、破線は比較例によるコイル部品の特性を示している。比較例によるコイル部品は、端子電極E1~E4の平面形状がいずれも矩形であり、コイルパターンC1~C4と重なりを有している。比較例によるコイル部品における端子電極E1~E4のX方向における幅はW11であり、Y方向における幅はW12である。
【0036】
図14に示すように、本実施形態によるコイル部品1は比較例によるコイル部品と比べて、共振周波数が高く、且つ、共振周波数及びそれ以上の周波数帯域における減衰量が大きいことが分かる。これは、比較例によるコイル部品と比べ、本実施形態によるコイル部品1においては、コイルパターンC1~C4の容量成分が低減されているためである。コイルパターンC1~C4の容量成分がコモンモード信号の減衰特性(Scc21)に与える影響は、端子電極E1~E4に近いほど顕著となるが、本実施形態においては、端子電極E1~E4とコイルパターンC1~C4の間に生じる容量成分が低減されていることから、良好な減衰特性を得ることが可能となる。しかも、比較例によるコイル部品と比べ、本実施形態によるコイル部品1は、磁性材料層5を構成する複合磁性材料のボリュームが大きいことから、インダクタンス成分も増加し、その結果、共振周波数よりも低い周波数帯域における減衰量についても改善される。
【0037】
図15は、本実施形態によるコイル部品1が実装される基板100の主要部の構成を示す略平面図である。
【0038】
図15に示す基板100は、コイル部品1が実装される実装領域Mと、実装領域M内に設けられたランドパターン101~104と、ランドパターン101~104にそれぞれ接続された信号ライン121~124を有している。信号ライン121,122は例えば入力側を構成する一対の差動信号ラインを構成し、信号ライン123,124は例えば出力側を構成する一対の差動信号ラインを構成する。実装領域Mにコイル部品1が実装されると、コイル部品1の端子電極E1~E4がハンダを介してそれぞれランドパターン101~104に接続される。
【0039】
そして、図15に示す例では、ランドパターン101~104がそれぞれ端子電極E1~E4と同様の平面形状を有している。つまり、ランドパターン101~104は単純な矩形ではなく、平面視でコイルパターンC1~C4と重ならないよう切り欠き部Aを有している。これにより、実装領域Mにコイル部品1を実装した後においても、コイルパターンC1~C4の浮遊容量がほとんど増加することがない。但し、図15において破線で示すように、矩形状のランドパターン111~114を用いても構わない。この場合、平面視でランドパターン111~114とコイルパターンC1~C4に重なりが生じることから、実装後にコイルパターンC1~C4の浮遊容量が増加するものの、コイルパターンC1~C4とランドパターン111~114は少なくとも磁性材料層5の厚さに相当する距離だけ離間していることから、浮遊容量の増加は僅かである。
【0040】
図16は、第1の変形例によるコイル部品1Aの模式的な断面図である。
【0041】
図16に示す第1の変形例によるコイル部品1Aは、端子電極E1~E4にバンプ導体が含まれておらず、端子電極E1~E4が磁性材料層5の表面を覆う金属膜からなる点において、上記実施形態によるコイル部品1と相違している。このような構成であっても、実装面S1上における端子電極E1~E4の平面形状を図2に示す形状とすれば、コイルパターンC1~C4の浮遊容量を低減することが可能となる。第1の変形例が例示するように、本発明によるコイル部品にバンプ導体が含まれている点は必須でない。但し、バンプ導体はコイルパターンとの距離が近いため、本発明による効果はバンプ導体を有するコイル部品において顕著である。
【0042】
図17は、第2の変形例によるコイル部品1Bの外観を示す略透視斜視図である。
【0043】
図17に示す第2の変形例によるコイル部品1Bは、2つの端子電極E5,E6を含む2端子型のコイル部品である点において、上記実施形態によるコイル部品1と相違している。このような構成であっても、平面視でE5,E6が図示しないコイルパターンと重ならない形状とすれば、コイルパターンの浮遊容量を低減することが可能となる。第2の変形例が例示するように、本発明によるコイル部品がコモンモードフィルタである点は必須でなく、単純コイル、パルストランス、バルントランス、LC複合部品など、種々のコイル部品に適用することが可能である。
【0044】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0045】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0046】
本開示の一側面によるコイル部品は、実装面を有する素体と、素体に埋め込まれ、コイル軸方向が実装面に対して垂直なコイルパターンと、コイルパターンに接続され、実装面に露出する端子電極とを備え、端子電極には、コイル軸方向から見た平面視でコイルパターンと重ならないよう切り欠き部が設けられている。これによれば、実装面における端子電極の露出面積を確保しつつ、コイルパターンの浮遊容量を削減することが可能となる。
【0047】
上記のコイル部品において、切り欠き部を構成するエッジは、平面視でコイルパターンの最外周ターンに沿って延在しても構わない。これによれば、端子電極とコイルパターンの重なりを避けつつ、実装面における端子電極の露出面積を拡大することが可能となる。
【0048】
上記のコイル部品において、素体は、複数の絶縁層とコイルパターンを構成する複数の導体層が交互に積層されたコイル層と、コイル層を覆い、実装面を構成する磁性材料層とを含んでいても構わない。これによれば、高いインダクタンスを得ることが可能となる。
【0049】
上記のコイル部品において、端子電極は磁性材料層に埋め込まれたバンプ導体を含み、バンプ導体には、平面視でコイルパターンと重ならないよう切り欠き部が設けられていても構わない。これによれば、バンプ導体とコイルパターンの重なりによる浮遊容量の増加を防止することが可能となる。
【0050】
上記のコイル部品において、コイルパターンは、互いに磁気結合する第1及び第2のコイルパターンを含み、端子電極は、第1のコイルパターンの一端に接続された第1の端子電極と、第2のコイルパターンの一端に接続された第2の端子電極と、第1のコイルパターンの他端に接続された第3の端子電極と、第2のコイルパターンの他端に接続された第4の端子電極とを含み、実装面は第1乃至第4の角部を有し、第1乃至第4の端子電極は、それぞれ第1乃至第4の角部に配置されていても構わない。これによれば、高周波特性に優れたコモンモードフィルタを提供することが可能となる。
【0051】
本開示の一側面による回路基板は、上記のコイル部品と、コイル部品が実装された基板とを備え、基板は、端子電極に接続されたランドパターンを有し、ランドパターンには、平面視でコイルパターンと重ならないよう切り欠き部が設けられていても構わない。これによれば、コイル部品を基板に実装した後においても、コイルパターンの浮遊容量の増加を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1,1A,1B コイル部品
2 素体
3 支持体
4 コイル層
5 磁性材料層
5A 磁性材料層の一部
11~14,21~24,31~34,41~44 接続パターン
50,60,70,80,90 絶縁層
52,53 中継パターン
61~66,71~77,81~86,91~95 開口部
100 基板
101~104,111~114 ランドパターン
121~124 信号ライン
A 切り欠き部
B2,B4 バンプ導体
C1~C4 コイルパターン
C1x~C4x 区間
D1~D3 ダミーパターン
D1a,D2a 突出部
DLx,DLy ダイシングライン
E1~E6 端子電極
E11~E13 エッジ
L1~L4 導体層
M 実装領域
P2,P4 表面処理層
S1 実装面
S2 上面
S3~S6 側面
W11,W12 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17