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  • 特開-高圧ガス貯留装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101138
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】高圧ガス貯留装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/12 20060101AFI20240722BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
F17C13/12 301Z
F17C13/02 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004908
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 吉則
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】小原 悠
(72)【発明者】
【氏名】大前 和広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰倫
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB20
3E172BB12
3E172BB18
3E172BD03
3E172CA11
3E172DA43
3E172DA47
3E172EA02
3E172EA03
3E172EB02
3E172EB03
3E172KA02
3E172KA03
3E172KA11
3E172KA22
(57)【要約】
【課題】タンク内の流体の漏出を抑制する。
【解決手段】高圧ガス貯留装置は、高圧ガスを貯留するタンク10と、タンク10の外面との間に調圧室19を空けるように配置され、タンク10の全体を包囲する外殻体20と、調圧室19に加圧気体を圧送し、調圧室19内をタンク10内と同圧又はタンク10内よりも高圧の状態にする加圧装置45とを備えている。調圧室19内をタンク10内と同圧又はタンク10内よりも高圧にすることによって、タンク10内の流体である高圧ガスが調圧室19へ漏出することを抑制できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクの外面との間に調圧室を空けるように配置され、前記タンクの全体を包囲する外殻体と、
前記調圧室に加圧気体を圧送し、前記調圧室内を前記タンク内と同圧又は前記タンク内よりも高圧の状態にする加圧装置とを備えている高圧ガス貯留装置。
【請求項2】
前記加圧装置による前記加圧気体の圧送が行われず、前記調圧室内が前記タンク内よりも低圧の状態において、前記調圧室内の圧力を経時的に検出する調圧室用圧力センサを備えており、
前記加圧装置は、前記調圧室用圧力センサの検出値が上昇したことを条件として前記加圧気体の圧送を開始する請求項1に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項3】
前記タンク内の圧力を検出するタンク用圧力センサを備え、
前記加圧装置は、前記タンク用圧力センサの検出値と前記調圧室用圧力センサの検出値とに基づいて前記加圧気体の圧送圧力を調整する請求項2に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項4】
前記加圧装置による前記加圧気体の圧送が行われず、前記調圧室内が前記タンク内よりも低圧の状態において、前記調圧室内における前記高圧ガスの有無を経時的に検出する濃度センサを備えており、
前記加圧装置は、前記濃度センサが前記調圧室内における前記高圧ガスの存在を検出したことを条件として前記加圧気体の圧送を開始する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項5】
前記加圧装置による前記加圧気体の圧送が行われない状態では、前記調圧室内に、前記タンク内よりも低圧の空気が充填されており、
前記高圧ガスは、空気よりも比重の小さい気体であり、
前記濃度センサが、前記調圧室の上端部に配置されている請求項4に記載の高圧ガス貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンク内に液化ガスを貯留したタンクシステムが開示されている。タンク内には、液化ガスと、液化ガスが蒸発することによって生成された気化ガスとが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-036417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のタンクシステムでは、タンクに亀裂が生じた場合に、タンク内の気化ガスが、亀裂を通ってタンク外へ漏出し、タンクシステムの周辺へ拡散する虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、タンク内の流体の漏出を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクの外面との間に調圧室を空けるように配置され、前記タンクの全体を包囲する外殻体と、
前記調圧室に加圧気体を圧送し、前記調圧室内を前記タンク内と同圧又は前記タンク内よりも高圧の状態にする加圧装置とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
調圧室内をタンク内と同圧又はタンク内よりも高圧にすることによって、タンク内の流体である高圧ガスが調圧室へ漏出することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の高圧ガス貯留装置の側断面図
図2図1のX-X線断面図
図3】タンクから調圧室への高圧ガスの漏れ検出とその対策を講じるためのシステムをあらわすブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記加圧装置による前記加圧気体の圧送が行われず、前記調圧室内が前記タンク内よりも低圧の状態において、前記調圧室内の圧力を経時的に検出する調圧室用圧力センサを備えており、前記加圧装置は、前記調圧室用圧力センサの検出値が上昇したことを条件として前記加圧気体の圧送を開始することが好ましい。この構成によれば、タンク内の高圧ガスが漏出して調圧室内の圧力が上昇すると、加圧装置から調圧室への加圧気体の圧送が開始するので、調圧室内の圧力が上昇する。調圧室内を、常時、高圧状態に維持しておく必要がないので、外殻体の疲労破壊を回避できる。加圧装置を常時作動させておく必要がないので、加圧装置を作動させるためのエネルギーの消費量を低減できる。
【0010】
前記タンク内の圧力を検出するタンク用圧力センサを備え、前記加圧装置は、前記タンク用圧力センサの検出値と前記調圧室用圧力センサの検出値とに基づいて前記加圧気体の圧送圧力を調整することが好ましい。この構成によれば、調圧室内の圧力が、タンク内の圧力に対して適正な値となるように調整することができる。
【0011】
前記加圧装置による前記加圧気体の圧送が行われず、前記調圧室内が前記タンク内よりも低圧の状態において、前記調圧室内における前記高圧ガスの有無を経時的に検出する濃度センサを備えており、前記加圧装置は、前記濃度センサが前記調圧室内における前記高圧ガスの存在を検出したことを条件として前記加圧気体の圧送を開始することが好ましい。この構成によれば、タンク内の流体の漏出が濃度センサによって検知されると、加圧装置が加圧気体の圧送を開始するので、調圧室内の圧力が上昇する。調圧室内を高圧状態に維持しておく必要がないので、外殻体における疲労破壊を回避できる。加圧装置を、常時、作動させておく必要がないので、加圧装置を作動させるためのエネルギーの消費量を低減できる。
【0012】
前記加圧装置による前記加圧気体の圧送が行われない状態では、前記調圧室内に、前記タンク内よりも低圧の空気が充填されており、前記高圧ガスは、空気よりも比重の小さい気体であり、前記濃度センサが、前記調圧室の上端部に配置されていることが好ましい。この構成によれば、タンク内から漏出した高圧ガスは、空気よりも軽いので調圧室内を上昇し、濃度センサによって検出される。漏出した高圧ガスの検出を効率的に行うことができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、図1,2におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、図2におけるR方向を右方と定義する。
【0014】
本実施例1の高圧ガス貯留装置は、車両(図示省略)に搭載して使用される。具体的には、高圧ガス貯留装置は、車内(例えば、荷物室)又は車外(ボディの床下)に配置される。図1に示すように、高圧ガス貯留装置は、タンク10と、タンク10を包囲する外殻体20とを備えて構成されている。タンク10は、高圧ガス(高圧の液化ガスと気化ガス)を貯留するための気密性を有する貯留槽である。液化ガスは、常温・大気圧下において気相であるガスを、加圧と冷却によって液相へ相転移したものである。高圧の気化ガスは、液化ガスの蒸発によって生成された気体である。
【0015】
高圧ガス貯留装置に貯留する液化ガスと気化ガスは、車両のエンジン用のガス燃料として使用されるものであり、具体的にはアンモニアである。アンモニアは有害性を有する物質であるため、本実施例1では、万一、タンク10内の気化ガス(アンモニアガス)がタンク10外へ漏出した場合の対策として、外殻体20を設けている。タンク10と外殻体20との間には、タンク10から漏れた気化ガスを一時的に保留する調圧室19が確保されている。さらに、タンク10からの漏れを抑制し、漏れに対する処置を行うための時間を確保するための手段として、調圧室19内に空気を圧送し、調圧室19内の圧力を高めるようになっている。
【0016】
タンク10は、1つの筒部11と一対のドーム部12とを有し、全体としてカプセル状をなす。筒部11は、軸線を水平方向(前後方向)に向けた円筒形の部位である。一対のドーム部12は、略半球状をなす部位であり、筒部11の両端の開口を閉塞するように配置されている。筒部11と一対のドーム部12は、互いに別体部品として製造された金属製の部材からなり、溶接によって気密状に接合されて一体化されている。
【0017】
筒部11の上端部には、筒部11の内外を上下方向に連通させる第1貫通孔13が形成されている。筒部11の上端部には、固定部材14が、筒部11の外周面と第1貫通孔13の開口縁部に密着した状態で溶接により気密状に固着されている。固定部材14には、筒部11の内外を上下方向に連通させる円筒形の第1筒形嵌合部15が形成されている。筒部11の外周面における下端部には、複数の脚部16が溶接によって固着されている。複数の脚部16は、前後方向及び周方向に間隔を空けた複数位置に配置されている。複数の脚部16は、タンク10を外殻体20に支持するための部材である。
【0018】
外殻体20は、タンク10の全体を間隔を空けて包囲するカプセル状の部材である。タンク10の外面と外殻体20の内面との間の空間は、タンク10から漏出した気化ガスを一時的に貯留しておくための調圧室19として機能する。タンク10の外面の全領域と外殻体20の内面の全領域は、調圧室19に臨んでいる。外殻体20は、筒状部材21と前後一対のドーム状部材22を接合して構成されている。筒状部材21は、軸線を水平方向(前後方向)に向けた円筒形の部材であり、タンク10の筒部11と同軸状に配置されている。ドーム状部材22は、筒状部材21よりも比重の小さい材料からなる略半球状の部材である。一対のドーム状部材22は、筒状部材21の前後両端の開口を閉塞するように配置されている。
【0019】
筒状部材21の上端部には、調圧室19と筒状部材21の外部とを上下方向に連通させる第2貫通孔23が形成されている。筒状部材21の外周面における上端部には、第2貫通孔23を包囲するように配置されたスペーサ24が溶接により気密状に固着されている。スペーサ24の上面には、ボルト締めによって閉塞部材25が取り付けられている。閉塞部材25には、筒状部材21の内外を上下方向に連通させる円筒形の第2筒形嵌合部26が形成されている。第2筒形嵌合部26は第2貫通孔23内に配置されている。
【0020】
筒状部材21の内周面における下端部には、タンク10の脚部16の下端部が載置されている。タンク10は、複数の脚部16を介すことによって、外殻体20の筒状部材21に支持されている。筒状部材21の内周面における下端部には、複数の位置決め部材27が固着されている。外殻体20を上から視た平面視において、位置決め部材27は、U字形をなしている。複数の位置決め部材27には、複数の脚部16の下端部が個別に嵌合されている。脚部16と位置決め部材27との嵌合によって、外殻体20の筒状部材21とタンク10とが前後方向及び左右方向に位置決めされている。
【0021】
筒状部材21の外周面における前後両端部には、筒状部材21と同心の円環形をなす筒側フランジ部28が一体に形成されている。筒側フランジ部28には、周方向に間隔を空けた複数の取付孔(図示省略)が形成されている。筒側フランジ部28のうち筒状部材21の軸線方向中央側の面には、取付孔と同軸状に配置されたナット29が溶接によって固着されている。筒状部材21の前後両端面には、筒状部材21とドーム状部材22との接合部をシールするためのリング状のセルフシール部材30が取り付けられている。
【0022】
ドーム状部材22は、略半球形(お椀形)をなす金属製のベース部材31と、ベース部材31の外面に密着した補強層32とを備えて構成されている。ベース部材31と補強層32とを合わせたドーム状部材22全体の厚さは、筒状部材21の厚さと同一の寸法である。補強層32は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる複数枚の細長い補強シートを、ベース部材31の外面に積層するように貼り付けることによって構成されたものである。ベース部材31は、筒状部材21と同一の金属材料でも、筒状部材21とは異種の金属材料のいずれでもよい。
【0023】
ベース部材31は、筒状部材21よりも薄肉であるが、補強層32によって補強されている。CFRPからなる補強層32の比強度(引っ張り強さを密度で除した値)は、金属製のベース部材31よりも大きい。したがって、本実施例1のドーム状部材22と同一の厚さであって金属のみで構成されたドーム状の部材(図示省略)に比べると、本実施例1のドーム状部材22は軽量化されている。
【0024】
ドーム状部材22における筒状部材21側の開口縁部には、ドーム状部材22及び筒側フランジ部28と同心の円環形をなすドーム側フランジ部33が形成されている。ドーム側フランジ部33は、ベース部材31に一体に形成された部位である。ドーム側フランジ部33には、筒側フランジ部28の取付孔と個別に整合する複数の取付孔(図示省略)が形成されている。
【0025】
ドーム状部材22を筒状部材21に組み付ける際には、一対のドーム状部材22を筒状部材21の前後両端の開口部に配置する。そして、ドーム側フランジ部33を筒側フランジ部28に突き合わせ、締結ボルト34を、ドーム側フランジ部33と筒側フランジ部28の取付孔に貫通させ、ナット29にねじ込んで締め付ける。この締結ボルト34とナット29との締付けによって一対のドーム状部材22と筒状部材21とが一体化され、外殻体20の組付けが完了する。
【0026】
タンク10の筒部11には、タンク10内の高圧ガスをエンジン(図示省略)へ供給するための燃料ポンプ35が取り付けられている。燃料ポンプ35は、全体として軸線を上下方向に向けた円柱形をなす。燃料ポンプ35の外周面にはフランジ状取付部36が形成されている。燃料ポンプ35の上端面には、タンク10内の高圧ガスをエンジンへ供給するための供給管(図示省略)が接続される接続部37が配置されている。
【0027】
燃料ポンプ35は、フランジ状取付部36を固定部材14の上面に載置した状態で、第1筒形嵌合部15を貫通するように配置されている。燃料ポンプ35の下端側部分は、タンク10内に収容されている。燃料ポンプ35は、フランジ状取付部36と固定部材14をボルト締めすることによって、タンク10に固定されている。固定部材14の上面とフランジ状取付部36の下面との間には、燃料ポンプ35と固定部材14との隙間を気密状にシールするシール部材(図示省略)が設けられている。
【0028】
燃料ポンプ35の上端部は、閉塞部材25の第2筒形嵌合部26に嵌合されている。接続部37は、外殻体20の外部上方へ突出していている。スペーサ24の上面と閉塞部材25の下面との間には、気密状にシールするためのシール部材(図示省略)が設けられている。第2筒形嵌合部26の内周面と燃料ポンプ35の外周面との間には、閉塞部材25と燃料ポンプ35との隙間を気密状にシールするためのシール部材(図示省略)が設けられている。
【0029】
次に、タンク10内の気化ガスが調圧室19内に漏れた場合の対処手段について説明する。図1に示すように、タンク10には、タンク用圧力センサ40が設けられている。タンク用圧力センサ40は、筒部11の内周面に取り付けられ、タンク10内の圧力を検出する。調圧室19内には、濃度センサ41と調圧室用圧力センサ42が設けられている。濃度センサ41は、筒状部材21の内周面における上端部に配置され、調圧室19内における気化ガスの存在の有無、及び調圧室19内における気化ガスの濃度を検出する。調圧室用圧力センサ42は、筒状部材21の内周面における上端部に配置され、調圧室19内の圧力を検出する。図3に示すように、タンク用圧力センサ40から出力された検出信号と、調圧室用圧力センサ42から出力された検出信号と、濃度センサ41から出力された検出信号は、制御部43に入力されるようになっている。
【0030】
図1に示すように、外殻体20の筒状部材21には、バルブ44が取り付けられている。バルブ44は、調圧室19の内部と外殻体20の外部とに臨むように配置されている。バルブ44の一次側の開口は、外殻体20の外部に配置した加圧装置45に接続されている。バルブ44の二次側の開口は調圧室19内に臨んでいる。加圧装置45は、調圧室19内への加圧エアの圧送を行うコンプレッサとしての機能を備えた装置である。制御部43は、タンク用圧力センサ40からの検出信号、調圧室用圧力センサ42からの検出信号、及び濃度センサ41からの検出信号に基づいて、バルブ44の開閉と加圧装置45の動作を制御する。
【0031】
制御部43には、報知部46が接続されている。報知部46の具体例としては、車両のインストルメントパネルに表示される警告ランプや、車両のキャビン内に警報音を発するスピーカー等がある。制御部43は、調圧室用圧力センサ42からの検出信号と、濃度センサ41からの検出信号に基づいて、報知部46へ異常検出信号を出力する。
【0032】
次に、本実施例1の高圧ガス貯留装置の作用を説明する。高圧ガスを貯留するタンク10は、その全体が気密性を有する外殻体20によって包囲され、タンク10と外殻体20との間には、タンク10から漏れた気化ガスを一時的に貯留するための調圧室19が確保されている。換言すると、外殻体20の内部に調圧室19とタンク10とが収容されている。これにより、万一、タンク10内の気化ガスがタンク10外へ漏れたとしても、漏れた気化ガスは、調圧室19内に留まる。したがって、タンク10から漏れた気化ガスが、車両のキャビン内に侵入したり、車両の周辺に拡散したりする虞はない。
【0033】
タンク10の気化ガスが調圧室19へ漏れると、調圧室19内の圧力が上昇し、この圧力上昇が調圧室用圧力センサ42によって検出され、その検出信号が制御部43に入力される。調圧室用圧力センサ42による検出と前後して、調圧室19内に漏れた気化ガスが濃度センサ41によって検出され、濃度センサ41からの検出信号が制御部43に入力される。調圧室用圧力センサ42と濃度センサ41のうちいずれか一方からの検出信号が制御部43に入力されると、制御部43は、直ちに報知部46へ報知信号を出力し、これと同時に、バルブ44を開弁するとともに加圧装置45を起動させる。
【0034】
加圧装置45が起動すると、調圧室19内に加圧空気が供給され、調圧室19内の圧力が上昇する。調圧室19内の圧力が、タンク10内の蒸気圧と同じ圧力になるか、タンク10内の蒸気圧よりも高くなると、タンク10内から調圧室19内への気化ガスの漏れが停止する。調圧室19内における気化ガスの濃度は、加圧装置45によって外部から供給される加圧空気によって低下する。
【0035】
制御部43は、タンク用圧力センサ40からの検出信号と調圧室用圧力センサ42からの検出信号とに基づいて、加圧装置45による加圧空気の圧送量を調整する。この調整によって、調圧室19内の圧力がタンク10内よりも著しく高くならない状態を保てば、タンク10から調圧室19への気化ガスの漏れを抑制又は防止しながら、調圧室19内の空気がタンク10内に侵入することを抑制又は防止できる。
【0036】
タンク10における亀裂が、タンク10内の液化ガスの液面よりも低い位置で生じた場合は、液化ガスの漏れが懸念される。液化ガスが調圧室19内に漏れた場合は、漏れた液化ガスが蒸発して気化ガスとなるため、上記と同様に調圧室用圧力センサ42と濃度センサ41によって、気化ガスの発生が検出される。気化ガスが検出されると、上記同様に加圧空気が調圧室19へ圧送される。加圧空気の圧送によって調圧室19の圧力が上昇すると、液化ガスの漏れが抑制又は停止する。
【0037】
本実施例1の高圧ガス貯留装置は、タンク10と、外殻体20と、加圧装置45とを備えている。タンク10は、液化ガスと、液化ガスの蒸発により生成された気化ガスとを貯留する。外殻体20は、タンク10の外面との間に調圧室19を空けるように配置された状態で、タンク10の全体を包囲する。加圧装置45は、調圧室19に加圧気体を圧送し、調圧室19内をタンク10内と同圧又はタンク10内よりも高圧の状態にする。タンク10内の気化ガスが調圧室19に漏れ出した場合は、調圧室19内をタンク10内と同圧又はタンク10内よりも高圧にすることによって、タンク10内の流体である気化ガスや液化ガスが調圧室19へ漏出することを抑制できる。
【0038】
調圧室19内には調圧室用圧力センサ42が設けられている。加圧装置45による加圧気体の圧送が行われず、調圧室19内がタンク10内よりも低圧の状態では、調圧室用圧力センサ42は、調圧室19内の圧力を経時的に検出する。加圧装置45は、調圧室用圧力センサ42の検出値が上昇したことを条件として、加圧気体の調圧室19への圧送を開始する。この構成によれば、タンク10内の気化ガスや液化ガスが漏出して調圧室19内の圧力が上昇すると、加圧装置45から調圧室19への加圧気体の圧送が開始するので、調圧室19内の圧力が上昇する。調圧室19内を、常時、高圧状態に維持しておく必要がないので、外殻体20の疲労破壊を回避できる。加圧装置45を常時作動させておく必要がないので、加圧装置45を作動させるためのエネルギーの消費量を低減できる。
【0039】
加圧装置45による加圧空気の圧送が行われた場合、調圧室19内がタンク10内に比べて極端に高圧になると、調圧室19内の加圧気体がタンク10内に侵入する虞がある。この対策として、タンク10内に、タンク10内の圧力を検出するタンク用圧力センサ40を設けた。加圧装置45は、タンク用圧力センサ40の検出値と調圧室用圧力センサ42の検出値とに基づいて加圧気体の圧送圧力を調整する。この構成によれば、調圧室19内の圧力が、タンク10内の圧力に対して適正な値(例えば、タンク10内よりも少し高い圧力)となるように調整することができる。
【0040】
調圧室19内には、濃度センサ41が設けられている。加圧装置45による加圧気体の圧送が行われず、調圧室19内がタンク10内よりも低圧の状態において、濃度センサ41は、調圧室19内における気化ガスの有無を経時的に検出する。加圧装置45は、濃度センサ41が調圧室19内における気化ガスの存在を検出したことを条件として、加圧気体の圧送を開始する。この構成によれば、タンク10内の流体の漏出が濃度センサ41によって検知されると、加圧装置45が加圧気体の圧送を開始するので、調圧室19内の圧力が上昇する。調圧室19内を高圧状態に維持しておく必要がないので、外殻体20における疲労破壊を回避できる。加圧装置45を、常時、作動させておく必要がないので、加圧装置45を作動させるためのエネルギーの消費量を低減できる。
【0041】
加圧装置45による加圧気体の圧送が行われない状態では、調圧室19内にタンク10内よりも低圧の空気が充填されている。気化ガス(アンモニア)は、空気よりも比重の小さい気体である。濃度センサ41は、調圧室19の上端部に配置されている。この構成によれば、タンク10内から漏出した気化ガスは、空気よりも軽いので調圧室19内を上昇し、濃度センサ41によって検出される。漏出した気化ガスの検出を効率的に行うことができる。
【0042】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
・本発明は、タンクに貯留される液化ガスが、エンジン用のガス燃料として使用される液化石油ガス(LPG)や、燃料電池用のガス燃料として使用される液体水素や、ガス燃料となる気体(例えば、水素)の貯蔵手段であるエネルギーキャリアである場合にも適用できる。
・実施例1では、タンクに液化ガスと気化ガスを貯留したが、タンクには、高圧の気化ガスのみを貯留してもよい。この高圧の気化ガスは、液化ガスの蒸発によって生成された気体ではなく、加圧する過程で大気圧下と同じく気相を保った気体である。気相を保った高圧の気化ガスの具体例としては、圧縮天然ガス(CNG)等がある。
・加圧装置による加圧気体の圧送が行われない状態で、調圧室内に充填しておく気体は、空気以外の気体でもよく、空気と空気以外の気体とを混合した気体でもよく、気化ガスよりも比重の大きい気体あることが好ましい。
・調圧室は、必ずしも高い気密性を有していなくてもよい。
・加圧装置による加圧気体の圧送が行われない状態で、調圧室に充填しておく気体は、気化ガスよりも比重の小さい気体であってもよい。この場合、濃度センサを調圧室の下端部に配置すれば、気化ガスを効果的に検出することができる。
・濃度センサは、タンクに配置してもよい。
・保留室内の異なる位置に複数の濃度センサを設けてもよい。この場合、濃度センサは、外殻体とタンクの両方に配置してもよく、タンクのみに配置してもよい。
・加圧装置を起動させるためのセンサは、圧力センサと濃度センサのいずれか一方だけでもよい。
・調圧室内を、常時、タンク内と同圧又はタンク内よりも高圧の状態に維持しておいてもよい。
・タンク内の圧力が流体の漏出の有無に拘わらず一定である場合は、タンク用圧力センサを設けずに、調圧室用圧力センサの検出値だけに基づいて、加圧装置の圧送圧力を調整してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…タンク
19…調圧室
20…外殻体
40…タンク用圧力センサ
41…濃度センサ
42…調圧室用圧力センサ
45…加圧装置
図1
図2
図3