IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社FTSの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図1
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図2
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図3
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図4
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図5
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101139
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】高圧ガス貯留装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/12 20060101AFI20240722BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
F17C13/12 301Z
F17C13/08 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004909
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 吉則
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】多田 智記
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰倫
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB20
3E172BB03
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB18
3E172BD03
3E172CA13
3E172CA14
3E172CA24
3E172DA29
3E172DA43
3E172DA47
3E172EA02
3E172EA03
3E172EB02
3E172EB03
(57)【要約】
【課題】外殻体で包囲されたタンクのメンテナンスを容易に行えるようにする。
【解決手段】高圧ガス貯留装置は、高圧ガスを貯留するタンク10と、タンク10の外面との間に間隔を空けて配置され、タンク10の全体を包囲する外殻体20とを備え、外殻体20は、筒状包囲部21と、筒状包囲部21の両端を閉塞する一対のドーム状覆い部22とを有し、一対のドーム状覆い部22のうち少なくとも一方のドーム状覆い部22は、筒状包囲部21とは別体の部品であるドーム状部材24からなり、筒状包囲部21とドーム状部材24との接合部には、筒側フランジ部25とドーム側フランジ部42が形成され、突き合わせた筒側フランジ部25とドーム側フランジ部42を締結ボルト59とナット28によって固定することにより、筒状包囲部21とドーム状部材24が接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクの外面との間に間隔を空けて配置され、前記タンクの全体を包囲する外殻体とを備え、
前記外殻体は、筒状包囲部と、前記筒状包囲部の両端を閉塞する一対のドーム状覆い部とを有し、
前記一対のドーム状覆い部のうち少なくとも一方の前記ドーム状覆い部は、前記筒状包囲部とは別体の部品であるドーム状部材からなり、
前記筒状包囲部と前記ドーム状部材との接合部には、フランジ部が形成され、
突き合わせた前記フランジ部同士を締結部材によって固定することにより、前記筒状包囲部と前記ドーム状部材が接合されている高圧ガス貯留装置。
【請求項2】
前記筒状包囲部が金属製であり、
前記一対のドーム状覆い部が、前記筒状包囲部よりも比重の小さい材料からなる請求項1に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項3】
前記タンクが、前記外殻体のうち前記筒状包囲部のみに支持されている請求項2に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項4】
前記外殻体を貫通した状態で前記タンクに取り付けられる機能部材を備え、
前記機能部材が、前記外殻体のうち前記筒状包囲部のみに支持されている請求項2又は請求項3に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項5】
前記タンクと前記外殻体のうち一方に設けられ、前記タンクを前記外殻体に支持する支持部と、
前記タンクと前記外殻体のうち他方に設けられ、前記支持部を位置決めする位置決め部とを備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項6】
前記タンクと前記外殻体との間には、前記タンクを前記外殻体に支持する脚部が設けられ、
前記脚部には、易変形部が形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高圧ガス貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内槽を外槽で包囲した形態の二重殻タンクが開示されている。内槽には、液化ガスが貯留されている。内槽と外槽との間には、真空空間が形成されている。内槽の全体を外槽で包囲するためには、外槽を複数の構成部材からなる分割構造にする必要がある。また、内槽と外槽との間の空間を真空状態に保つためには、外槽の構成部材を接合した状態で、構成部品間の気密を保つ必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-152260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、外槽の構成部材同士を接合する構造に関して記載も図示も無いため、構成部材同士が溶接によって接合されていると推察される。しかしながら、構成部材を溶接した場合、内槽のメンテナンスを容易に行うことはできない。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、外殻体で包囲されたタンクのメンテナンスを容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクの外面との間に間隔を空けて配置され、前記タンクの全体を包囲する外殻体とを備え、
前記外殻体は、筒状包囲部と、前記筒状包囲部の両端を閉塞する一対のドーム状覆い部とを有し、
前記一対のドーム状覆い部のうち少なくとも一方の前記ドーム状覆い部は、前記筒状包囲部とは別体の部品であるドーム状部材からなり、
前記筒状包囲部と前記ドーム状部材との接合部には、フランジ部が形成され、
突き合わせた前記フランジ部同士を締結部材によって固定することにより、前記筒状包囲部と前記ドーム状部材が接合されている。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、締結部材をフランジ部から外すことによって、筒状包囲部とドーム状部材とを分離させることができる。外殻体が分割可能なので、タンクのメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の高圧ガス貯留装置の側断面図
図2図1のX-X線断面図
図3】タンクの側断面図
図4】外殻体を分割した状態の側断面図
図5】外殻体の部分拡大側断面図
図6】外殻体を分割した状態の部分拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記筒状包囲部が金属製であり、前記一対のドーム状覆い部が、前記筒状包囲部よりも比重の小さい材料からなることが好ましい。この構成によれば、ドーム状覆い部を筒状包囲部よりも比重の小さい材料としたので、外殻体の全体を金属製にした場合に比べると、外殻体を軽量化することができる。
【0010】
前記タンクが、前記外殻体のうち前記筒状包囲部のみに支持されていることが好ましい。この構成によれば、金属製の筒状包囲部によってタンクを安定して支持することができる。
【0011】
前記外殻体を貫通した状態で前記タンクに取り付けられる機能部材を備え、前記機能部材が、前記外殻体のうち前記筒状包囲部のみに支持されていることが好ましい。この構成によれば、金属製の筒状包囲部によって機能部材を安定して支持することができる。
【0012】
前記タンクと前記外殻体のうち一方に設けられ、前記タンクを前記外殻体に支持する支持部と、前記タンクと前記外殻体のうち他方に設けられ、前記支持部を位置決めする位置決め部とを備えていることが好ましい。この構成によれば、タンクを外殻体に対して適正な位置関係で支持することができる。
【0013】
前記タンクと前記外殻体との間には、前記タンクを前記外殻体に支持する脚部が設けられ、前記脚部には、易変形部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、外殻体が外部から衝撃を受けても、易変形部が変形することによって、衝撃が外殻体からタンクに伝わることを抑制できる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図6を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1,3~6におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、図1~6におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、図2におけるR方向を右方と定義する。
【0015】
本実施例1の高圧ガス貯留装置は、車両(図示省略)に搭載して使用される。具体的には、高圧ガス貯留装置は、車内(例えば、荷物室)又は車外(ボディの床下)に配置される。高圧ガス貯留装置は、タンク10と、タンク10を包囲する外殻体20とを備えて構成されている。タンク10は、高圧ガス(高圧の液化ガスと気化ガス)を貯留するための気密性を有する貯留槽である。液化ガスは、常温・大気圧下において気相であるガスを、加圧と冷却によって液相へ相転移したものである。高圧の気化ガスは、液化ガスの蒸発によって生成された気体である。
【0016】
高圧ガス貯留装置に貯留する液化ガスと気化ガスは、車両のエンジン用のガス燃料として使用されるものであり、具体的にはアンモニアである。アンモニアは有害性の物質であるため、本実施例1では、万一、タンク10内の高圧ガス(アンモニアガス)がタンク10外へ漏出した場合の対策として、外殻体20を設けている。外殻体20は、タンク10の全体を間隔を空けて包囲するように配置されている。タンク10の外面と外殻体20の内面との間の空間は、タンク10から漏出した高圧ガスを一時的に貯留しておくための保留室19として機能する。タンク10の外面の全領域と外殻体20の内面の全領域は、保留室19に臨んでいる。
【0017】
図1,3に示すように、タンク10は、1つの筒部11と前後一対のドーム部12とを有し、全体としてカプセル状をなす。筒部11は、軸線を水平方向(前後方向)に向けた円筒形の部位である。一対のドーム部12は、略半球状をなす部位であり、筒部11の両端の開口を閉塞するように配置されている。筒部11と一対のドーム部12は、互いに別体部品として製造された金属製の部材からなり、溶接によって気密状に接合されて一体化されている。
【0018】
筒部11の下端部には、筒部11の内外を上下方向に連通させる第1貫通孔13が形成されている。タンク10を上から視た平面視において、第1貫通孔13は円形に開口している。筒部11の下端部には、固定部材14が、筒部11の外周面と第1貫通孔13の開口縁部に密着した状態で溶接により気密状に固着されている。固定部材14には、筒部11の内外を上下方向に連通させる円筒形の第1筒形嵌合部15が形成されている。一対のドーム部12の外周面における頂点部、即ちドーム部12のうち筒部11から最も遠い位置には、位置決め突部16が設けられている。
【0019】
筒部11の外周面における下端部には、複数の脚部17が溶接によって固着されている。複数の脚部17は、筒部11から下方へ片持ち状に突出しており、タンク10を外殻体20によって支持するための支持部としての機能を有する。複数の脚部17は、前後方向及び周方向(左右方向)に間隔を空けた複数位置に配置されている。各脚部17には、その一部を切り欠いた形状の易変形部18が形成されている。易変形部18は、易変形部18以外の部位よりも厚さが薄くなっている。易変形部18は、脚部17に外力が作用したときに、易変形部18以外の部位よりも変形し易い部位である。
【0020】
外殻体20は、筒状包囲部21と、前後対称な一対のドーム状覆い部22とを有するカプセル状の部材である。筒状包囲部21は、軸線を前後方向(水平方向)に向けた円筒形をなす部位である。ドーム状覆い部22は、略半球状(お椀形)をなす部位であり、筒状部材23の前後両端の開口を閉塞するように配置されている。筒状包囲部21と一対のドーム状覆い部22は、夫々、互いに独立した異なる部品として製造された部品からなる。筒状包囲部21は、円筒形の筒状部材23からなる。ドーム状覆い部22は、略半球形のドーム状部材24からなる。外殻体20は、1つの筒状部材23と2つのドーム状部材24とを締結部材(ナット28と締結ボルト59)によって接合して構成されている。
【0021】
筒状部材23は、金属製であり、剛性と強度の高い部材である。筒状部材23の外周面における前後両端部には、前後一対の筒側フランジ部25が一体に形成されている。図5,6に示すように、筒側フランジ部25は、筒状部材23と同心の円環形をなす。前側の筒側フランジ部25の前面と、後側の筒側フランジ部25の後面は、平面からなり、筒側接合面26として機能する。筒側フランジ部25には、周方向に間隔を空けた複数の筒側取付孔27が形成されている。筒側取付孔27は、筒側フランジ部25を前後方向に貫通する。筒側フランジ部25のうち筒状部材23の軸線方向中央側の面には、各筒側取付孔27と同軸状に配置されたナット28が溶接によって固着されている。
【0022】
筒状部材23の前後両端面には、周方向のシール溝29が形成されている。シール溝29には、リング状のシール部材30が取り付けられている。シール部材30は、シール溝29に嵌合される基部31と、前後対称な一対のセルフシール部32とを有する。基部31のうち筒側接合面26側に露出する領域には、膨出部33が形成されている。膨出部33は、筒状部材23とドーム状部材24が離隔した状態において、筒側接合面26よりも突出している。基部31のうち膨出部33が形成されている外周縁部は、挟圧シール部34として機能する。シール溝29の内面のうち挟圧シール部34と前後方向に当接する領域は、筒側挟圧シール面35として機能する。
【0023】
一対のセルフシール部32は、基部31の内周端から前後両方向へ延出した部位である。各セルフシール部32の内周面は、保留室19内に対して径方向に臨む受圧面36として機能する。筒状部材23の内周面における前後両端部には、セルフシール部32と協動して気密機能を発揮する筒側セルフシール面37が形成されている。筒側セルフシール面37には、一対のセルフシール部32のうち一方のセルフシール部32の外周面が密着する。受圧面36は曲面を含む。受圧面36の曲面部の全領域では、曲面部の法線が筒側セルフシール面37と交差する。受圧面36の平面部の全領域では、平面部の垂線が筒側セルフシール面37と交差する。
【0024】
ドーム状部材24は、筒状部材23よりも比重が小さく、筒状部材23よりも剛性と強度が低い部材である。ドーム状部材24は、略半球形(お椀形)をなす金属製のベース部材40と、ベース部材40の外面に密着した補強層41とを備えて構成されている。ベース部材40と補強層41とを合わせたドーム状部材24全体の厚さは、筒状部材23の厚さと同一の寸法である。ベース部材40は、筒状部材23と同一の金属材料でもよく、筒状部材23とは異種の金属材料でもよい。補強層41は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる複数枚の細長い補強シートを、ベース部材40の外面に積層するように貼り付けることによって構成されたものである。補強層41の比重はベース部材40の比重よりも小さい。
【0025】
ベース部40材は、筒状部材23よりも薄肉であるが、補強層41によって補強されている。CFRPからなる補強層41の比強度(引っ張り強さを密度で除した値)は、金属製のベース部40材よりも大きい。したがって、本実施例1のドーム状部材24と同一の厚さであって金属のみで構成されたドーム状の部材(図示省略)に比べると、本実施例1のドーム状部材24は軽量化されている。
【0026】
ドーム状部材24における筒状部材23側の開口縁部には、ドーム側フランジ部42が形成されている。ドーム側フランジ部42は、ベース部材40に一体に形成された部位である。ドーム側フランジ部42は、ドーム状部材24及び筒側フランジ部25と同心の円環形をなす。前側のドーム側フランジ部42の後面と、後側のドーム側フランジ部42の前面は、筒側接合面26に対して前後方向に当接するドーム側接合面43として機能する。ドーム側接合面43のうち、シール部材30の膨出部33(挟圧シール部34)に接触する領域は、ドーム側挟圧シール面44として機能する。
【0027】
ベース部材40の内周面における筒状部材23側の開口端部には、シール部材30と協動して気密機能を発揮するドーム側セルフシール面45が形成されている。ドーム側セルフシール面45には、一対のセルフシール部32のうち筒側セルフシール面37に密着していない他方のセルフシール部32の外周面が密着する。他方のセルフシール部32の受圧面36のうち、曲面部の全領域では、曲面部の法線がドーム側セルフシール面45と交差する。受圧面36の平面部の全領域では、平面部の垂線がドーム側セルフシール面45と交差する。
【0028】
ドーム側フランジ部42には、周方向に間隔を空けた複数のドーム側取付孔46が形成されている。ドーム側取付孔46は、ドーム側フランジ部42を前後方向に貫通する。複数のドーム側取付孔46は、複数の筒側取付孔27と個別に整合するように配置されている。
【0029】
筒状部材23の下端部には、保留室19と筒状部材23の外部とを上下方向に連通させる第2貫通孔47が形成されている。第2貫通孔47の平面視形状は、第1貫通孔13と同心状の円形である。第2貫通孔47の内径は、第1貫通孔13の内径及び固定部材14の外径よりも大きい。筒状部材23の外周面における下端部には、第2貫通孔47を包囲するように配置されたスペーサ48が、溶接によって気密状に固着されている。スペーサ48の下面には、ボルト締めによって閉塞部材49が取り付けられている。閉塞部材49には、筒状部材23の内外を上下方向に連通させる第2筒形嵌合部50が形成されている。第2筒形嵌合部50は、第1筒形嵌合部15と同心の円筒形をなし、第2貫通孔47内に配置されている。
【0030】
筒状部材23の内周面における下端部には、タンク10の脚部17の下端部が載置されている。タンク10は、複数の脚部17を介すことによって、外殻体20の筒状部材23に支持されている。筒状部材23の内周面における下端部には、複数の位置決め部材52が溶接によって固着されている。位置決め部材52の平面視は、U字形である。複数の位置決め部材52には、複数の脚部17の下端部が個別に嵌合されている。脚部17と位置決め部材52との嵌合によって、外殻体20の筒状部材23とタンク10とが前後方向及び左右方向(周方向)に位置決めされている。筒状部材23の内周面における上端部には、濃度センサ53と圧力センサ54が取り付けられている。濃度センサ53は、保留室19内における気化ガスの存在の有無、及び保留室19内における気化ガスの濃度を検出する。圧力センサ54は、保留室19内の圧力を検出する。
【0031】
タンク10の筒部11には、タンク10と外殻体20に支持された機能部材である燃料ポンプ56が取り付けられている。燃料ポンプ56は、タンク10内の高圧ガスをエンジン(図示省略)へ供給するための装置である。燃料ポンプ56は、全体として軸線を上下方向に向けた円柱形をなす。燃料ポンプ56の外周面にはフランジ状取付部57が形成されている。燃料ポンプ56の下端面には、タンク10内の高圧ガスをエンジンへ供給するための供給管(図示省略)が接続される接続部58が配置されている。
【0032】
燃料ポンプ56は、フランジ状取付部57を固定部材14の下面に重ねた状態で、第1筒形嵌合部15を貫通するように配置されている。燃料ポンプ56の上端側部分は、タンク10内に収容されている。燃料ポンプ56は、フランジ状取付部57と固定部材14をボルト締めすることによって、タンク10に固定されている。固定部材14の下面とフランジ状取付部57の上面との間には、燃料ポンプ56と固定部材14との隙間を気密状にシールするパッキン(図示省略)が設けられている。
【0033】
燃料ポンプ56の下端部は、閉塞部材49の第2筒形嵌合部50に嵌合されている。接続部58は、外殻体20の外部に配置されている。スペーサ48の下面と閉塞部材49の上面との間には、気密状にシールするためのパッキン(図示省略)が設けられている。第2筒形嵌合部50の内周面と燃料ポンプ56の外周面との間には、閉塞部材49と燃料ポンプ56との隙間を気密状にシールするためのパッキン(図示省略)が設けられている。
【0034】
次に、高圧ガス貯留装置の組付け手順を説明する。外殻体20の筒状部材23とドーム状部材24が分離されている状態で、筒状部材23内にタンク10を収容する。このとき、複数の位置決め部材52に対して、複数の脚部17の下端部を上から落とし込むように嵌合させる。これにより、タンク10が筒状部材23に支持されるとともに、タンク10と筒状部材23が前後方向及び左右方向において位置決めされる。
【0035】
この後、ドーム状部材24と筒状部材23を組み付ける。具体的には、ドーム状部材24を筒状部材23の開口部に配置する。このとき、前後両ドーム状部材24の内周面の先端部が、前後両位置決め突部16に当接することによって、タンクとドーム状部材24とが前後方向に位置決めされる。そして、ドーム側フランジ部42を筒側フランジ部25に突き合わせ、ドーム側接合面43を筒側接合面26に密着させるとともに、筒側取付孔27にドーム側取付孔46を整合させる。そして、締結ボルト59を、ドーム側取付孔46と筒側取付孔27とに貫通させ、ナット28にねじ込んで締め付ける。この締結ボルト59とナット28との締付けによって一対のドーム状部材24と筒状部材23とが一体化され、外殻体20の組付けが完了する。
【0036】
外殻体20を組み付けた状態では、シール部材30の挟圧シール部34が、筒側挟圧シール面35とドーム側挟圧シール面44との間で前後方向に挟み付けられて弾性変形する。挟圧シール部34の弾性変形によって筒側接合面26とドーム側接合面43との間が気密状にシールされる。また、セルフシール部32が筒側セルフシール面37とドーム側セルフシール面45に密着するので、タンク10内の気化ガスが漏れて保留室19内の圧力が上昇したときには、受圧面36に作用する圧力によって、セルフシール部32の外周面と筒側セルフシール面37との間、及びセルフシール部32の外周面とドーム側セルフシール面45との間が、気密状にシールされる。
【0037】
外殻体20を組み付けた後は、燃料ポンプ56の取付を行う。取り付けの際には、燃料ポンプ56を、外殻体20の下方から第1筒形嵌合部15に嵌合し、フランジ状取付部57を固定部材14に載置する。そして、ボルト締めによって、フランジ状取付部57を固定部材14に固定する。以上により、燃料ポンプ56がタンク10に固定される。この後、閉塞部材49をスペーサ48の下面に重ねるとともに、第2筒形嵌合部50を燃料ポンプ56の下端部外周に嵌合し、ボルト締めによって閉塞部材49をスペーサ48に固定する。以上により、外殻体20に対する燃料ポンプ56の取付けが完了する。以上により、高圧ガス貯留装置の組付けが完了する。
【0038】
次に、本実施例1の高圧ガス貯留装置の作用を説明する。気化ガスと液化ガスを貯留するタンク10は、その全体が気密性を有する外殻体20によって包囲され、タンク10と外殻体20との間には、タンク10から漏れた高圧ガスを一時的に貯留するための保留室19が確保されている。換言すると、外殻体20の内部に保留室19とタンク10とが収容されている。これにより、万一、タンク10内の高圧ガスがタンク10外へ漏れたとしても、漏れた高圧ガスは、保留室19内に留まる。したがって、タンク10から漏れた高圧ガスが、車両のキャビン内に侵入したり、車両の周辺に拡散したりする虞はない。
【0039】
タンク10内の気化ガスが保留室19へ漏れた場合は、濃度センサ53による気化ガスの検出が行われるとともに、気化ガスの漏れに起因する保留室19内の圧力上昇が圧力センサ54によって検出される。濃度センサ53又は圧力センサ54による検出が行われると、車両のインストルメントパネルに警告ランプが表示される、あるいは車両のキャビン内に警報音が発せられる等によって異常の発生が報知される。
【0040】
外殻体20に対して外部から衝撃が加わった場合、その衝撃が脚部17を介してタンク10に伝わり、タンク10に亀裂や変形を生じさせることが懸念される。しかし、外殻体20への衝撃が一定以上の力である場合には、脚部17の易変形部18が変形又は折れることによって、タンク10に伝わる衝撃が緩和される。これにより、タンク10の変形等を防止できる。
【0041】
本実施例1の高圧ガス貯留装置は、高圧ガスを貯留するタンク10と、外殻体20とを備えている。外殻体20は、タンク10の外面との間に間隔(保留室19)を空けて配置され、タンク10の全体を包囲している。外殻体20は、円筒形の筒状包囲部21と、筒状包囲部21の両端の開口を閉塞する一対のドーム状覆い部22とを有する。一対のドーム状覆い部22は、筒状包囲部21とは別体の部品であるドーム状部材24からなる。筒状包囲部21とドーム状部材24との接合部には、筒側フランジ部25とドーム側フランジ部42が形成されている。
【0042】
互いに突き合わせた筒側フランジ部25とドーム側フランジ部42を締結ボルト59とナット28によって固定することにより、筒状包囲部21とドーム状部材24が接合されている。締結ボルト59を、ナット28から緩めて筒側フランジ部25とドーム側フランジ部42から外せば、筒状包囲部21(筒状部材23)とドーム状覆い部22(ドーム状部材24)とを分離させることができる。ドーム状部材24を筒状部材23から外せば、筒状部材23の前後いずれか一方又は両方の開口が開放されるので、筒状部材23内のタンク10に対するメンテナンスが可能となる。外殻体20が分割可能な構造なので、タンク10のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0043】
筒状包囲部21は金属製であり、一対のドーム状覆い部22は、筒状包囲部21よりも比重の小さい材料からなる。この構成によれば、ドーム状覆い部22を筒状包囲部21よりも比重の小さい材料としたので、外殻体20の全体を金属製にした場合に比べると、外殻体20を軽量化することができる。タンク10は、外殻体20のうち筒状包囲部21(筒状部材23)のみに支持されている。この構成によれば、金属製の筒状包囲部21によってタンク10を安定して支持することができる。
【0044】
燃料ポンプ56は、外殻体20の第2貫通孔47を貫通した状態でタンク10に取り付けられている。外殻体20を構成する筒状部材23とドーム状部材24のうち、燃料ポンプ56を支持するのは、金属製の筒状部材23だけである。この構成によれば、金属製の筒状包囲部21によって燃料ポンプ56を安定して支持することができる。
【0045】
タンク10と外殻体20のうちタンク10には、タンク10を外殻体20に支持する支持部としての脚部17が設けられている。タンク10と外殻体20のうち外殻体20には、脚部17を位置決めする位置決め部材52が設けられている。この構成によれば、タンク10を外殻体20に対して適正な位置関係で支持することができる。タンク10と外殻体20との間には、タンク10を外殻体20に支持するための脚部17が設けられている。脚部17には、易変形部18が形成されている。この構成によれば、外殻体20が外部から衝撃を受けても、易変形部18が変形することによって、衝撃が外殻体20からタンク10に伝わることを抑制できる。
【0046】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
・本発明は、タンクに貯留される液化ガスが、エンジン用のガス燃料として使用される液化石油ガス(LPG)や、燃料電池用のガス燃料として使用される液体水素や、ガス燃料となる気体(例えば、水素)の貯蔵手段であるエネルギーキャリアである場合にも適用できる。
・実施例1では、タンクに液化ガスと気化ガスを貯留したが、タンクには、高圧の気化ガスのみを貯留してもよい。この高圧の気化ガスは、液化ガスの蒸発によって生成された気体ではなく、加圧する過程で大気圧下と同じく気相を保った気体である。気相を保った高圧の気化ガスの具体例としては、圧縮天然ガス(CNG)等がある。
・一対のドーム状覆い部のうちいずれか一方のドーム状覆い部と、筒状包囲部とが、溶接等によって分離困難な状態に一体化されていてもよい。
・一対のドーム状覆い部のうちいずれか一方のドーム状覆い部と、筒状包囲部とが、単一部品を構成するものであってもよい。
・タンクが、筒状包囲部とドーム状覆い部の両方に支持されていてもよく、ドーム状覆い部のみに支持されていてもよい。
・筒状包囲部とドーム状覆い部の材料は同一(例えば、金属や合成樹脂)であってもよい。
・筒状包囲部とドーム状覆い部の比重は同一であってもよい。
・筒状包囲部とドーム状覆い部が異種の金属製であってもよい。
・機能部材が、筒状包囲部とドーム状覆い部の両方に支持されていてもよく、ドーム状覆い部のみに支持されていてもよい。
・脚部(支持部)は、易変形部が形成されていないものであってもよい。
・脚部(支持部)を外殻体に設け、位置決め部をタンクに設けてもよい。
・筒状包囲部よりも比重の小さいドーム状覆い部は、筒状包囲部の端部と同軸状に接合される筒状延長部を有していてもよい。この場合、実施例1のものに比べると、外殻体の更なる軽量化を実現することができる。
・シール部材は、挟圧シール部を有せず、セルフシール部だけでシールする形態でもよく、セルフシール部を有せず、挟圧シール部だけでシールする形態としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…タンク
17…脚部(支持部)
18…易変形部
20…外殻体
21…筒状包囲部
22…ドーム状覆い部
24…ドーム状部材
25…筒側フランジ部(フランジ部)
28…ナット(締結部材)
42…ドーム側フランジ部(フランジ部)
52…位置決め部材(位置決め部)
56…燃料ポンプ(機能部材)
59…締結ボルト(締結部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6