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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101154
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】センサーモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/00 20060101AFI20240722BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20240722BHJP
【FI】
G01P21/00
G01P15/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004934
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】中岡 康
(57)【要約】
【課題】複数のセンサーデバイスに回転運動が加わった場合でも複数のセンサーデバイスがそれぞれ検出した複数の加速度を補正することが可能なセンサーモジュールを提供すること。
【解決手段】筐体と、前記筐体に収容され、nを2以上の整数として、前記筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる第1~第nの加速度を検出する第1~第nのセンサーデバイスと、前記筐体に加わる角速度に基づいて、前記第1~第nの加速度を、前記筐体の所定の基準位置に加わる加速度である第1~第nの基準位置加速度にそれぞれ換算する処理回路と、を備える、センサーモジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収容され、nを2以上の整数として、前記筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる第1~第nの加速度を検出する第1~第nのセンサーデバイスと、
前記筐体に加わる角速度に基づいて、前記第1~第nの加速度を、前記筐体の所定の基準位置に加わる加速度である第1~第nの基準位置加速度にそれぞれ換算する処理回路と、
を備える、センサーモジュール。
【請求項2】
筐体と、
前記筐体に収容され、nを2以上の整数として、前記筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる第1~第nの加速度を検出する第1~第nのセンサーデバイスと、
前記第1の位置を前記筐体の所定の基準位置として、前記第1の加速度を前記基準位置に加わる加速度である第1の基準位置加速度とし、前記筐体に加わる角速度に基づいて、前記第2~第nの加速度を、前記基準位置に加わる加速度である第2~第nの基準位置加速度にそれぞれ換算する処理回路と、
を備える、センサーモジュール。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記処理回路は、前記第1~第nの基準位置加速度が一致しているか否かを判定する、センサーモジュール。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記整数nは3以上であり、
前記処理回路は、前記第1~第nの基準位置加速度に対する多数決により、前記第1~第nの基準位置加速度の各々が正常であるか否かを判定する、センサーモジュール。
【請求項5】
請求項4において、
前記処理回路は、前記第1~第nの基準位置加速度のうちの正常な加速度の平均値を算出する、センサーモジュール。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記角速度を検出する第n+1のセンサーデバイスを備える、センサーモジュール。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記第nのセンサーデバイスは、前記角速度を検出する、センサーモジュール。
【請求項8】
請求項1又は2において、
1以上n以下の各整数jに対して、前記第jのセンサーデバイスは、第jの角速度を検出し、
前記処理回路は、前記第1~第nの角速度に対する多数決により、前記第1~第nの角速度の各々が正常であるか否かを判定し、前記角速度として前記第1~第nの角速度のうちの正常な角速度の平均値を算出する、センサーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、慣性センサーと、慣性センサーの複数の検出軸が互いに直交するように慣性センサーから出力される信号に対して補正係数を適用するミスアライメント補正を実行することにより補正信号を生成する補正回路とをそれぞれ有する複数のセンサーモジュールと、複数のセンサーモジュールのそれぞれの複数の検出軸をいずれか1つの複数のセンサーモジュールの複数の検出軸に整合させる補正係数を各補正信号に適用することにより複数の整合信号を生成する整合処理部と、複数の整合信号と複数の補正信号とを合成して出力する合成処理部とを備える、慣性センサー装置が記載されている。特許文献1に記載の慣性センサー装置によれば、複数のセンサーモジュールの間における検出軸のずれが解消されるため、慣性データの検出精度が悪化することを抑制することができる。また、特許文献1に記載の慣性センサー装置では、各センサーモジュールが有する慣性センサーに含まれる加速度センサーが互いに近接するように配置されており、当該複数の加速度センサーのそれぞれが受ける加速度の相違を小さく抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-196191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の加速度センサーを全く同じ位置に配置することはできないため、複数の加速度センサーに回転運動が加わったとき、複数の加速度センサーの出力が異なるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るセンサーモジュールの一態様は、
筐体と、
前記筐体に収容され、nを2以上の整数として、前記筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる第1~第nの加速度を検出する第1~第nのセンサーデバイスと、
前記筐体に加わる角速度に基づいて、前記第1~第nの加速度を、前記筐体の所定の基準位置に加わる加速度である第1~第nの基準位置加速度にそれぞれ換算する処理回路と、
を備える。
【0006】
本発明に係るセンサーモジュールの他の一態様は、
筐体と、
前記筐体に収容され、nを2以上の整数として、前記筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる第1~第nの加速度を検出する第1~第nのセンサーデバイスと、
前記第1の位置を前記筐体の所定の基準位置として、前記第1の加速度を前記基準位置に加わる加速度である第1の基準位置加速度とし、前記筐体に加わる角速度に基づいて、前記第2~第nの加速度を、前記基準位置に加わる加速度である第2~第nの基準位置加速度にそれぞれ換算する処理回路と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のセンサーモジュールの構成を示す図。
図2】センサーデバイスの分解斜視図。
図3】センサーデバイスが有する回路基板を示す上面図。
図4図3に示す回路基板の下面図。
図5】センサーデバイスの機能的な構成の一例を示す図。
図6】センサーモジュールの斜視図。
図7】センサーモジュールの内部の平面図。
図8】基板及びセンサーモジュールの分解斜視図。
図9】センサーデバイスの機能的な構成の他の一例を示す図。
図10】第1実施形態のセンサーモジュールの他の構成を示す図。
図11】第2実施形態のセンサーモジュールの構成を示す図。
図12】第3実施形態のセンサーモジュールの構成を示す図。
図13】第4実施形態のセンサーモジュールの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態のセンサーモジュールの構成を示す図である。図1に示すように、第1実施形態のセンサーモジュール1は、センサーデバイス2-1~2-nと、処理回路100と、記憶回路110と、通信回路120とを備える。nは2以上の整数である。
【0010】
センサーデバイス2-1~2-nは、不図示のセンサーモジュール1の筐体に収容されており、当該筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる加速度α~αを検出する。すなわち、1以上n以下の各整数jに対して、センサーデバイス2-jは、第jの位置に設けられた加速度センサーを少なくとも備えており、当該加速度センサーが加速度αを検出する。また、センサーデバイス2-nは、センサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωをさらに検出する。すなわち、センサーデバイス2-nは、加速度センサーとともに角速度センサーを備えており、当該角速度センサーが筐体に加わる角速度ωを検出する。
【0011】
例えば、センサーデバイス2-1~2-(n-1)は、3軸加速度センサーデバイスであり、センサーデバイス2-nは、3軸加速度センサーと3軸角速度センサーとを備えた慣性計測ユニットであってもよい。また、第1~第nのセンサーデバイス2-1~2-nは、それぞれ慣性計測ユニットであってもよい。
【0012】
以下では、センサーデバイス2-1~2-nが同様の構造の慣性計測ユニットである場合を例に挙げ、その構造及び機能について説明する。以下では、センサーデバイス2-1~2-nのいずれかをセンサーデバイス2と称する場合もある。
【0013】
図2図4は、センサーデバイス2の構造の一例を示す図である。また、図5は、センサーデバイス2の機能的な構成の一例を示す図である。
【0014】
図2に示すように、センサーデバイス2は、アウターケース21、インナーケース22、接合部材23及び回路基板24を備える。アウターケース21は、インナーケース22が挿入される凹部を有する。アウターケース21及びインナーケース22は、回路基板24を収容及び保持した状態で、接合部材23により互いに接合される。センサーデバイス2は、上方、即ち図2に示すz軸に沿う方向から見て正方形状である。アウターケース2
1は、例えば、上面の対角に位置する一対の角部のそれぞれに設けられたねじ孔211,212を有する。センサーデバイス2は、ねじ孔211,212を利用してねじ止めされることにより基板10に固定され得る。
【0015】
図5に示すように、センサーデバイス2は、3軸加速度センサー27と、第1角速度センサー26aと、第2角速度センサー26bと、第3角速度センサー26cと、補正回路28と、インターフェース回路29とを備える。
【0016】
図3及び図4に示すように、回路基板24には、モジュールコネクター25、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b、第3角速度センサー26c、3軸加速度センサー27、補正回路28等が搭載される。モジュールコネクター25は、センサーデバイス2と基板10との間を接続する。モジュールコネクター25は、例えば、インナーケース22に設けられる開口221を介して基板10に対して露出される。第1角速度センサー26aは、a軸回りの角速度ωを検出する。第2角速度センサー26bは、b軸回りの角速度ωを検出する。第3角速度センサー26cは、c軸回りの角速度ωを検出する。3軸加速度センサー27は、a軸に沿う方向の加速度A、b軸に沿う方向の加速度A及びc軸に沿う方向の加速度Aを検出する。a軸、b軸及びc軸の3つの検出軸は、センサーデバイス2毎に定義される。
【0017】
補正回路28は、例えば、集積回路により構成される。補正回路28は、回路基板24を介して、3軸加速度センサー27、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cのそれぞれに接続される。一般的に、3軸加速度センサー27、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cからそれぞれ出力される信号は、センサーデバイス2の組み立て時のずれ等による3つの検出軸に対する角度誤差であるミスアライメントを有する。このため、補正回路28は、センサーデバイス2の3つの検出軸が互いに直交するように、3軸加速度センサー27、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cからそれぞれ出力される信号を補正することにより補正信号を生成する。具体的には、補正回路28は、3軸加速度センサー27、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cからそれぞれ出力される信号に対して、予め決定された回転行列等の補正係数を適用するミスアライメント補正を実行することにより、補正信号を生成する。3次元直交座標系をなす3つの検出軸は、センサーデバイス2毎に設定される。
【0018】
その他、補正回路28は、3軸加速度センサー27、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cからそれぞれ出力される信号に含まれるオフセット誤差及びスケールファクター誤差を補正する。補正回路28は、補正信号をインターフェース回路29を介して処理回路100に出力する。
【0019】
回路基板24は、z軸に沿う方向から見て例えば正方形状である。回路基板24の中心Oの周りに定義される4つの象限を第1象限Q1、第2象限Q2、第3象限Q3及び第4象限Q4とするとき、3軸加速度センサー27は、第1象限Q1に配置される。
【0020】
なお、モジュールコネクター25は、第2象限Q2及び第3象限Q3における回路基板24の上面241に配置される。第1角速度センサー26aは、第4象限Q4における回路基板24の側面に配置される。第2角速度センサー26bは、第1象限Q1における回路基板24の側面に配置される。第3角速度センサー26cは、第4象限Q4における回路基板24の上面241に配置される。3軸加速度センサー27は、第1象限Q1における回路基板24の上面241に配置される。補正回路28は、第3象限Q3における回路基板24の下面242に配置される。ねじ孔211は、第2象限Q2に、ねじ孔212は
、第4象限Q4にそれぞれ配置される。
【0021】
図6図8は、図2図4の構造の3つのセンサーデバイス2A,2B,2Cを備えたセンサーモジュール1の構造の一例を示す図である。なお、センサーデバイス2A,2B,2Cは、それぞれ図1のセンサーデバイス2-1,2-2,2-3に相当する。
【0022】
図6図8に示すように、センサーモジュール1は、例えば、基板10と、それぞれ基板10に搭載されるセンサーデバイス2A,2B,2Cと、処理回路100と、これらを収容する筐体としての容器9とを備える。センサーモジュール1は、3軸方向の加速度及び3軸回りの角速度を検出する慣性計測ユニットである。センサーモジュール1は、例えば、車両、ロボット、ドローン等の移動体や、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器、その他の種々の対象の運動状態を検出する。運動状態は、例えば、位置、姿勢、速度、加速度、角速度等を含む。
【0023】
図6及び図7に示すように、容器9は、上方に開口する凹部911を有するベース91と、凹部911の開口を塞ぐようにベース91に固定される蓋92とを備える。容器9は、概略として矩形平板状である。ベース91及び蓋92は、蓋92により封止される凹部911の内側に収容空間Sを定義する。収容空間Sは、基板10、センサーデバイス2A,2B,2C、処理回路100等の各部品を収容するための空間である。容器9は、収容空間Sに収容される各部品を塵、湿気、紫外線、衝撃等から保護する。
【0024】
ベース91及び蓋92は、アルミニウム(Al)により構成され得る。その他、ベース91及び蓋92のそれぞれの材料として、例えば、Al合金、亜鉛(Zn)、ステンレス等の金属材料、各種セラミックス、各種樹脂材料、及びこれらの複合材料が採用可能である。
【0025】
センサーモジュール1は、ベース91の側壁に取り付けられるコネクター93と、収容空間Sに配置される通信基板931とを備える。コネクター93は、容器9の内部と外部との間の電気的な接続を行うレセプタクルである。通信基板931は、センサーモジュール1と他の装置との間の通信を処理する回路を有する。
【0026】
基板10は、各種素子及び配線を含む回路基板である。基板10は、センサーデバイス2A,2B,2C、処理回路100及び内部コネクター150等を搭載する。基板10は、例えばベース91に対して相対的に固定される。
【0027】
図7及び図8に示すように、2つのセンサーデバイス2A,2Bは、基板10の下面においてX軸に沿って配列される。センサーデバイス2Cは、Z軸に沿う方向から見てセンサーデバイス2Aに重なるように基板10の上面に配置される。処理回路100及び内部コネクター150は、Z軸に沿う方向から見てセンサーデバイス2Bと重なるように基板10の上面に配置される。このように、基板10の面積及び収容空間Sに対して効率的に各種部品を配置することにより、センサーモジュール1の小型化を図ることができる。
【0028】
センサーデバイス2A,2B,2Cは、基板10を介して処理回路100に接続される。処理回路100は、センサーデバイス2A,2B,2Cの駆動を制御する。処理回路100は、内部コネクター150及び内部コネクター150に接続される図示しない配線を介して、通信基板931に接続される。
【0029】
図8に示すように、センサーデバイス2A,2B,2Cは、それぞれの第1象限Q1が互いに近接するように配置される。即ち、図8に示す例において、センサーデバイス2Aの3軸加速度センサー27A及びセンサーデバイス2Cの3軸加速度センサー27Cは、
Z軸に沿う方向から見て互いに重なるように配置される。センサーデバイス2Aの3軸加速度センサー27A及びセンサーデバイス2Bの3軸加速度センサー27Bは、X軸に沿う方向から見て互いに重なるように配置される。これにより、3軸加速度センサー27A,27B,27Cのそれぞれが受ける加速度の相違を小さく抑えることができる。
【0030】
ここで、空間座標系の位置pにセンサーモジュール1の筐体の基準位置があり、センサーデバイス2-jが筐体座標系の位置rに搭載されているとすると、その空間座標系の位置pは式(1)で表される。例えば、位置rは、センサーデバイス2-jの加速度感度点位置である。
【0031】
【数1】
【0032】
式(1)において、Cは空間座標に対する筐体座標の姿勢を表す座標変換行列である。式(1)を時間微分すると、式(2)のように、空間座標系におけるセンサーデバイス2-jの速度vが得られ、式(2)を更に時間微分すると、式(3)のように、空間座標系におけるセンサーデバイス2-jの加速度aが得られる。
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
式(2)及び式(3)において、vは空間座標系における筐体の基準位置の空間並進速度であり、aは空間座標系における筐体の基準位置の加速度であり、ωは筐体座標系における回転角速度である。角速度ωはセンサーデバイス2-jの搭載位置によらず筐体内はすべて同じ値となる。
【0036】
センサーデバイス2-jが検出する加速度αは、式(4)のように、式(3)で得られた空間加速度aを筐体座標系に変換して得られる。
【0037】
【数4】
【0038】
式(4)において、αは筐体座標系における基準位置の加速度である。式(4)において、クロス積を行列形式で表すと式(5)が得られる。
【0039】
【数5】
【0040】
式(5)より、センサーデバイス2-1~2-nに加わる加速度は、その搭載位置の違いに起因して異なり、特に角速度ωが大きいほど互いの差が大きくなることが分かる。そこで、本実施形態では、処理回路100は、センサーデバイス2-1~2-nが検出する加速度α~αを、それぞれ筐体の基準位置に加わる加速度α’~α’に換算する。
【0041】
図1の説明に戻り、処理回路100は、加速度換算部101、平均化部102及び不一致判定部103を含む。
【0042】
加速度換算部101は、センサーデバイス2-nが検出したセンサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nが検出した、第1~第nの位置にそれぞれ加わる加速度α~αを、筐体の所定の基準位置に加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算する。加速度α~α及び基準位置加速度α’~α’は、それぞれセンサーモジュール1の筐体座標系の加速度であり、角速度ωは、センサーモジュール1の筐体座標系の角速度である。センサーデバイス2-1~2-nがそれぞれ筐体座標系の加速度α~αを出力してもよいし、センサーデバイス2-1~2-nがそれぞれのセンサー座標系の加速度を出力し、加速度換算部101が、これらの加速度を筐体座標系の加速度α~αに座標変換してもよい。また、センサーデバイス2-nが筐体座標系の角速度ωを出力してもよいし、センサーデバイス2-nがセンサー座標系の角速度を出力し、加速度換算部101が、この角速度を筐体座標系の角速度ωに座標変換してもよい。前出の図8の例では、各センサーデバイス2のa軸、b軸及びc軸によって定義されるabc座標系がセンサー座標系であり、センサーモジュール1のX軸、Y軸及びZ軸によって定義されるXYZ座標系が筐体座標系である。
【0043】
ここで、サンプリング間隔Δt毎に、センサーデバイス2-nが検出するk番目の角速度を角速度ω=[ωx,k ωy,k ωz,kとし、1以上n以下の各整数jに対して、センサーデバイス2-jが検出するk番目の加速度をαj,k=[αjx,k αjy,k αjz,kとする。前出の式(5)より、k番目の加速度をαj,kを基準位置加速度αj,k’に換算する式(6)が導かれる。
【0044】
【数6】
【0045】
式(6)より、センサーデバイス2-1~2-nがそれぞれ検出するk番目の加速度α1,k~αn,kの平均値であるk番目の平均加速度α’は、式(7)によって求算出する。
【0046】
【数7】
【0047】
加速度換算部101は、1以上n以下の各整数jに対して、式(6)により、第jの位置rに加わる加速度αを基準位置加速度α’に換算してもよい。例えば、第1~第nの位置r~rは、記憶回路110に記憶されている。
【0048】
平均化部102は、式(7)により、基準位置加速度α’~α’の平均値である平均加速度α’を算出する。
【0049】
不一致判定部103は、基準位置加速度α’~α’が一致しているか否かを判定する。ここで、基準位置加速度α’~α’が一致しているとは、基準位置加速度α’~α’がすべて正確に一致している場合に限られず、基準位置加速度α’~α’の互いの差が所定の閾値よりも小さい場合も含まれる。
【0050】
例えば、不一致判定部103は、1以上n以下の各整数i,j(i≠j)に対してα’とα’の差分の絶対値|α’-α’|を算出し、すべての整数i,j(i≠j)の組に対して差分の絶対値|α’-α’|が所定の閾値以下の場合は基準位置加速度α’~α’が一致していると判定する。また、不一致判定部103は、少なくとも1組の整数i,j(i≠j)に対して差分の絶対値|α’-α’|が所定の閾値よりも大きい場合は基準位置加速度α’~α’の少なくとも1つが他と不一致であると判定する。
【0051】
あるいは、不一致判定部103は、1以上n以下の各整数i,j(i≠j)に対してα’とα’との比の絶対値|α’/α’|を算出し、すべての整数i,j(i≠j)の組に対して比の絶対値|α’/α’|が所定の範囲に含まれる場合は基準位置加速度α’~α’が一致していると判定する。また、不一致判定部103は、少なくとも1組の整数i,j(i≠j)に対して比の絶対値|α’/α’|が所定の範囲に含まれない場合は基準位置加速度α’~α’の少なくとも1つが他と不一致であると判定する。
【0052】
そして、不一致判定部103は、判定結果を示すフラグflgを生成する。例えば、フラグflgは、一致判定の場合は0、不一致判定の場合は1であってもよい。
【0053】
平均化部102が算出した平均加速度α’及び不一致判定部103が生成したフラグflgは、通信回路120を介して、不図示の外部装置に送信される。例えば、当該外部装置は、フラグflgが一致判定を示す場合は、平均加速度α’を用いた所定の演算を行い、フラグflgが不一致判定を示す場合は当該所定の演算を行わなくてもよい。
【0054】
なお、センサーデバイス2は、図5に示した構成に限られず、例えば、図9に示す構成の慣性計測ユニットであってもよい。図9において、図5と同様の構成要素には同じ符号が付されており、その説明を省略又は簡略する。図9の例では、センサーデバイス2は、2つの加速度センサー27-1,27-2を備える点が図5の構成と異なる。
【0055】
3軸加速度センサー27-1は、a軸に沿う方向の加速度Aa1、b軸に沿う方向の加速度Ab1及びc軸に沿う方向の加速度Ac1を検出する。また、3軸加速度センサー27-2は、a軸に沿う方向の加速度Aa2、b軸に沿う方向の加速度Ab2及びc軸に沿う方向の加速度Ac2を検出する。a軸、b軸及びc軸の3つの検出軸は、センサーデバイス2毎に定義される。
【0056】
補正回路28は、3軸加速度センサー27-1、3軸加速度センサー27-2、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cからそれぞれ出力される信号に対して、予め決定された回転行列等の補正係数を適用するミスアライメント補正を実行することにより、補正信号を生成する。3次元直交座標系をなす3つの検出軸は、センサーデバイス2毎に設定される。そして、補正回路28は、3軸加速度Aa1,Ab1,Ac1の補正信号と3軸加速度Aa2,Ab2,Ac2の補正信号を平均してノイズを低減した補正信号を算出する。その他、補正回路28は、3軸加速度センサー27-1、3軸加速度センサー27-2、第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cからそれぞれ出力される信号に含まれるオフセット誤差及びスケールファクター誤差を補正する。補正回路28は、補正信号をインターフェース回路29を介して処理回路100に出力する。
【0057】
図9に示すセンサーデバイス2のその他の構成は、図5と同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1は、図1に示した構成に限られず、例えば、図10に示す構成であってもよい。図10において、図1と同様の構成要素には同じ符号が付されており、その説明を省略又は簡略する。図10の例では、センサーモジュール1は、センサーデバイス2-(n+1)を備える点が図1の構成と異なる。
【0059】
センサーデバイス2-1~2-nは、不図示のセンサーモジュール1の筐体に収容されており、当該筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる加速度α~αを検出する。すなわち、1以上n以下の各整数jに対して、センサーデバイス2-jは、第jの位置に設けられた加速度センサーを少なくとも備えており、当該加速度センサーが加速度αを検出する。また、センサーデバイス2-(n+1)は、センサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωを検出する。すなわち、センサーデバイス2-(n+1)は、角速度センサーを備えており、当該角速度センサーが筐体に加わる角速度ωを検出する。
【0060】
例えば、センサーデバイス2-1~2-nは、3軸加速度センサーデバイスであり、センサーデバイス2-(n+1)は、3軸角速度センサーであってもよい。また、第1~第n+1のセンサーデバイス2-1~2-(n+1)は、それぞれ慣性計測ユニットであってもよい。
【0061】
加速度換算部101は、センサーデバイス2-(n+1)が検出したセンサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nが検出した、第1~第nの位置にそれぞれ加わる加速度α~αを、筐体の所定の基準位置に加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算する。
【0062】
図10に示すセンサーモジュール1のその他の構成は、図1と同様であるため、その説明を省略する。
【0063】
なお、第1実施形態のセンサーモジュール1において、センサーデバイス2-1~2-nは、「第1~第nのセンサーデバイス」の一例である。また、センサーデバイス2-1
~2-(n+1)は、「第n+1のセンサーデバイス」の一例である。また、加速度α~αは、「第1~第nの加速度」の一例である。また、基準位置加速度α’~α’は、「第1~第nの基準位置加速度」の一例である。
【0064】
以上に説明した第1実施形態のセンサーモジュール1では、処理回路100は、筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nが検出した筐体の第1~第nの位置r~rに加わる加速度α~αを、筐体の基準位置に加わる基準位置加速度α’~α’に換算する。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、センサーデバイス2-1~2-nに回転運動が加わった場合でも加速度α~αを補正することができる。
【0065】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、処理回路100の平均化部102の平均化処理によってランダムなノイズ成分が低減された平均加速度α’を算出することができる。
【0066】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、例えば、外部装置は、処理回路100の不一致判定部103による判定結果であるフラグflgに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nの各々が備える3軸加速度センサー27がすべて正常であるか少なくとも1つが故障しているかを判断することができる。
【0067】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態のセンサーモジュールについて、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0068】
図11は、第2実施形態のセンサーモジュール1の構成を示す図である。図11に示すように、第2実施形態のセンサーモジュール1は、第1実施形態と同様、センサーデバイス2-1~2-nと、処理回路100と、記憶回路110と、通信回路120とを備える。nは2以上の整数である。
【0069】
第2実施形態のセンサーモジュール1では、処理回路100は、第1の位置rを筐体の所定の基準位置として、センサーデバイス2-1が検出する加速度αを基準位置に加わる加速度である基準位置加速度α’とし、筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-2~2-nがそれぞれ検出する加速度α~αを、基準位置に加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算する。
【0070】
図11に示すように、処理回路100は、第1実施形態と同様、加速度換算部101、平均化部102及び不一致判定部103を含む。
【0071】
加速度換算部101は、センサーデバイス2-1が備える加速度センサーが搭載された第1の位置rを筐体の所定の基準位置として、センサーデバイス2-nが検出したセンサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-2~2-nが検出した、第2~第nの位置r~rにそれぞれ加わる加速度α~αを、筐体の基準位置である第1の位置rに加わる基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算する。
【0072】
加速度換算部101は、2以上n以下の各整数jに対して、前出の式(6)により、第jの位置rに加わる加速度αを基準位置加速度α’に換算してもよい。第2~第nの位置r~rは、第1の位置rに対する相対位置であり、例えば、第2~第nの位置r~rは、記憶回路110に記憶されている。
【0073】
平均化部102は、前出の式(7)により、基準位置加速度α’~α’の平均値である平均加速度α’を算出する。ただし、基準位置加速度α’は、センサーデバイス2-1が検出した加速度αである。
【0074】
不一致判定部103の機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、第2実施形態のセンサーモジュール1のその他の構成、機能及び構造は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0075】
第2実施形態のセンサーモジュール1は、図11に示した構成に限られず、例えば、図11に示した構成に対して、図10に示した構成のように、センサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωを検出するセンサーデバイス2-(n+1)をさらに備えてもよい。この場合、加速度換算部101は、センサーデバイス2-(n+1)が検出したセンサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-2~2-nが検出した、第2~第nの位置r~rにそれぞれ加わる加速度α~αを、第1の位置rに加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算する。
【0076】
なお、第2実施形態のセンサーモジュール1において、センサーデバイス2-1~2-nは、「第1~第nのセンサーデバイス」の一例である。また、センサーデバイス2-1~2-(n+1)は、「第n+1のセンサーデバイス」の一例である。また、加速度α~αは、「第1~第nの加速度」の一例である。また、基準位置加速度α’~α’は、「第1~第nの基準位置加速度」の一例である。
【0077】
以上に説明した第2実施形態のセンサーモジュール1では、処理回路100は、センサーデバイス2-1が検出した筐体の第1の位置rに加わる加速度αを基準位置である第1の位置rに加わる基準位置加速度α’とするとともに、筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-2~2-nが検出した筐体の第2~第nの位置r~rに加わる加速度α~αを第1の位置rに加わるの基準位置加速度α’~α’に換算する。したがって、第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、センサーデバイス2-1~2-nに回転運動が加わった場合でも加速度α~αを補正することができる。
【0078】
また、第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、筐体の第1の位置rに加わる加速度αを基準位置である第1の位置rに加わる基準位置加速度α’とすることができるので、第1実施形態のセンサーモジュール1と比較して、基準位置加速度α’~α’を算出するための計算負荷が小さい。
【0079】
また、第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、処理回路100の平均化部102の平均化処理によってランダムなノイズ成分が低減された平均加速度α’を算出することができる。
【0080】
また、第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、例えば、外部装置は、処理回路100の不一致判定部103による判定結果であるフラグflgに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nの各々が備える3軸加速度センサー27がすべて正常であるか少なくとも1つが故障しているかを判断することができる。
【0081】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態のセンサーモジュールについて、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0082】
図12は、第3実施形態のセンサーモジュール1の構成を示す図である。図12に示すように、第3実施形態のセンサーモジュール1は、第1実施形態又は第2実施形態と同様、センサーデバイス2-1~2-nと、処理回路100と、記憶回路110と、通信回路120とを備える。ただし、nは3以上の整数である。
【0083】
図12に示すように、処理回路100は、加速度換算部101、平均化部102及び多数決部104を含む。
【0084】
加速度換算部101の機能は、第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
多数決部104は、基準位置加速度α’~α’に対する多数決により、基準位置加速度α’~α’の各々が正常であるか否かを判定する。
【0086】
例えば、多数決部104は、1以上n以下の各整数i,j(i≠j)に対してα’とα’の差分の絶対値|α’-α’|を算出し、任意の整数k,l(k≠l)の組に対して差分の絶対値|α’-α’|が所定の閾値以下の場合は基準位置加速度α’,α’が正常であると判定する。また、多数決部104は、任意の整数k,l,m(k≠l≠m≠k)の組に対して、差分の絶対値|α’-α’|が所定の閾値よりも大きく、かつ、差分の絶対値|α’-α’|が所定の閾値よりも大きく、かつ、差分の絶対値|α’-α’|が所定の閾値以下の場合は、基準位置加速度α’が異常であり、かつ、基準位置加速度α’,α’が正常であると判定する。
【0087】
あるいは、多数決部104は、1以上n以下の各整数i,j(i≠j)に対してα’とα’との比の絶対値|α’/α’|を算出し、任意の整数k,l(k≠l)の組に対して比の絶対値|α’/α’|が所定の範囲に含まれる場合は基準位置加速度α’,α’が正常であると判定する。また、多数決部104は、任意の整数k,l,m(k≠l≠m≠k)の組に対して、比の絶対値|α’/α’|が所定の範囲に含まれず、かつ、比の絶対値|α’/α’|が所定の範囲に含まれず、かつ、比の絶対値|α’/α’|が所定の範囲に含まれる場合は、基準位置加速度α’が異常であり、かつ、基準位置加速度α’,α’が正常であると判定する。
【0088】
そして、多数決部104は、判定結果を示すフラグflgを生成する。例えば、フラグflgは、基準位置加速度α’~α’がそれぞれ正常の場合は1、異常の場合は0であるnビットのデータであってもよい。
【0089】
平均化部102は、多数決部104による多数決の結果に基づいて、基準位置加速度α’~α’のうちの正常な加速度の平均値である平均加速度α’を算出する。例えば、基準位置加速度α’が異常であり、基準位置加速度α’~α’が正常である場合、平均化部102は、基準位置加速度α’~α’の平均加速度α’を算出する。
【0090】
平均化部102が算出した平均加速度α’及び多数決部104が生成したフラグflgは、通信回路120を介して、不図示の外部装置に送信される。例えば、当該外部装置は、平均加速度α’を用いた所定の演算を行ってもよい。
【0091】
第3実施形態のセンサーモジュール1のその他の構成、機能及び構造は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0092】
第3実施形態のセンサーモジュール1は、図12に示した構成に限られず、例えば、図12に示した構成に対して、図10に示した構成のように、センサーモジュール1の筐体
に加わる角速度ωを検出するセンサーデバイス2-(n+1)をさらに備えてもよい。この場合、加速度換算部101は、センサーデバイス2-(n+1)が検出したセンサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-2~2-nが検出した、第2~第nの位置r~rにそれぞれ加わる加速度α~αを、第1の位置rに加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算する。また、第3実施形態のセンサーモジュール1は、図1に示した構成のように、加速度換算部101が、センサーデバイス2-nが検出したセンサーモジュール1の筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nが検出した、第1~第nの位置にそれぞれ加わる加速度α~αを、筐体の所定の基準位置に加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算してもよい。
【0093】
なお、第3実施形態のセンサーモジュール1において、センサーデバイス2-1~2-nは、「第1~第nのセンサーデバイス」の一例である。また、センサーデバイス2-1~2-(n+1)は、「第n+1のセンサーデバイス」の一例である。また、加速度α~αは、「第1~第nの加速度」の一例である。また、基準位置加速度α’~α’は、「第1~第nの基準位置加速度」の一例である。
【0094】
以上に説明した第3実施形態のセンサーモジュール1では、処理回路100は、センサーデバイス2-1が検出した筐体の第1の位置rに加わる加速度αを基準位置である第1の位置rに加わる基準位置加速度α’とするとともに、筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-2~2-nが検出した筐体の第2~第nの位置r~rに加わる加速度α~αを第1の位置rに加わるの基準位置加速度α’~α’に換算する。あるいは、処理回路100は、筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nが検出した筐体の第1~第nの位置r~rに加わる加速度α~αを、筐体の基準位置に加わる基準位置加速度α’~α’に換算する。したがって、第3実施形態のセンサーモジュール1によれば、センサーデバイス2-1~2-nに回転運動が加わった場合でも加速度α~αを補正することができる。
【0095】
また、第3実施形態のセンサーモジュール1によれば、筐体の第1の位置rに加わる加速度αを基準位置である第1の位置rに加わる基準位置加速度α’とした場合、第1実施形態のセンサーモジュール1と比較して、基準位置加速度α’~α’を算出するための計算負荷が小さい。
【0096】
また、第3実施形態のセンサーモジュール1によれば、処理回路100の平均化部102の平均化処理によってランダムなノイズ成分が低減された平均加速度α’を算出することができる。また、センサーデバイス2-1~2-nのいずれかが故障した場合でも、処理回路100が、正常なセンサーデバイスが検出した加速度を用いて平均加速度α’を算出することができる。
【0097】
また、第3実施形態のセンサーモジュール1によれば、例えば、外部装置は、処理回路100の多数決部104による判定結果であるフラグflgに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nの各々が備える3軸加速度センサー27がそれぞれ正常であるか故障しているかを判断することができる。
【0098】
4.第4実施形態
以下、第4実施形態のセンサーモジュールについて、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態~第3実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0099】
図13は、第4実施形態のセンサーモジュール1の構成を示す図である。図13に示すように、第4実施形態のセンサーモジュール1は、第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態と同様、センサーデバイス2-1~2-nと、処理回路100と、記憶回路110と、通信回路120とを備える。ただし、第3実施形態と同様、nは3以上の整数である。
【0100】
第4実施形態のセンサーモジュール1では、センサーデバイス2-1~2-nは、それぞれ慣性計測ユニットである。1以上n以下の各整数jに対して、センサーデバイス2-jは、センサーモジュール1の筐体の第jの位置に加わる加速度αを検出するとともに、当該筐体に加わる角速度ωを検出する。センサーデバイス2-1~2-nの構成は、図5又は図9と同様であるので、その図示及び説明を省略する。
【0101】
図13に示すように、処理回路100は、第3実施形態と同様、加速度換算部101、平均化部102及び多数決部104を含む。
【0102】
加速度換算部101は、センサーモジュール1の筐体に加わる角速度として平均化部102が算出した角速度ω~ωの平均値である平均角速度ω’に基づいて、センサーデバイス2-2~2-nが検出した、第2~第nの位置r~rにそれぞれ加わる加速度α~αを、筐体の第1の位置rに加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算する。加速度換算部101は、2以上n以下の各整数jに対して、前出の式(6)により、第jの位置rに加わる加速度αを基準位置加速度α’に換算してもよい。
【0103】
多数決部104は、第3実施形態と同様、基準位置加速度α’~α’に対する多数決により、基準位置加速度α’~α’の各々が正常であるか否かを判定する。また、多数決部104は、角速度ω~ωに対する多数決により、角速度ω~ωの各々が正常であるか否かを判定する。
【0104】
例えば、多数決部104は、1以上n以下の各整数i,j(i≠j)に対してωとωの差分の絶対値|ω-ω|を算出し、任意の整数k,l(k≠l)の組に対して絶対値|ω-ω|が所定の閾値以下の場合は角速度ω,ωが正常であると判定する。また、多数決部104は、任意の整数k,l,m(k≠l≠m≠k)の組に対して、絶対値|ω-ω|が所定の閾値よりも大きく、かつ、絶対値|ω-ω|が所定の閾値よりも大きく、かつ、絶対値|ω-ω|が所定の閾値以下の場合は、角速度ωが異常であり、かつ、角速度ω,ωが正常であると判定する。
【0105】
あるいは、多数決部104は、1以上n以下の各整数i,j(i≠j)に対してωとωとの比の絶対値|ω/ω|を算出し、任意の整数k,l(k≠l)の組に対して比の絶対値|ω/ω|が所定の範囲に含まれる場合は角速度ω,ωが正常であると判定する。また、多数決部104は、任意の整数k,l,m(k≠l≠m≠k)の組に対して、比の絶対値|ω/ω|が所定の範囲に含まれず、かつ、比の絶対値|ω/ω|が所定の範囲に含まれず、かつ、比の絶対値|ω/ω|が所定の範囲に含まれる場合は、角速度ωが異常であり、かつ、角速度ω,ωが正常であると判定する。
【0106】
そして、多数決部104は、判定結果を示す第1フラグflg1及び第2フラグflg2を生成する。例えば、第1フラグflg1は、基準位置加速度α’~α’がそれぞれ正常の場合は1、異常の場合は0であるnビットのデータであってもよい。また、第2フラグflg2は、角速度ω~ωがそれぞれ正常の場合は1、異常の場合は0であるnビットのデータであってもよい。
【0107】
平均化部102は、多数決部104による多数決の結果に基づいて、基準位置加速度α’~α’のうちの正常な加速度の平均値である平均加速度α’を算出する。例えば、基準位置加速度α’が異常であり、基準位置加速度α’~α’が正常である場合、平均化部102は、基準位置加速度α’~α’の平均加速度α’を算出する。また、平均化部102は、多数決部104による多数決の結果に基づいて、角速度ω~ωのうちの正常な角速度の平均値である平均角速度ω’を算出する。例えば、角速度ωが異常であり、角速度ω~ωが正常である場合、平均化部102は、角速度ω~ωの平均角速度ω’を算出する。
【0108】
平均化部102が算出した平均加速度α’及び平均角速度ω’、並びに、多数決部104が生成した第1フラグflg1及び第2フラグflg2は、通信回路120を介して、不図示の外部装置に送信される。例えば、当該外部装置は、平均加速度α’及び平均角速度ω’を用いた所定の演算を行ってもよい。
【0109】
第4実施形態のセンサーモジュール1のその他の構成、機能及び構造は、第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0110】
第4実施形態のセンサーモジュール1は、図13に示した構成に限られず、例えば、加速度換算部101が、センサーデバイス2-1~2-nが検出した角速度ω~ωのいずれかに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nが検出した、第1~第nの位置にそれぞれ加わる加速度α~αを、筐体の所定の基準位置に加わる加速度である基準位置加速度α’~α’にそれぞれ換算してもよい。
【0111】
なお、第4実施形態のセンサーモジュール1において、センサーデバイス2-1~2-nは、「第1~第nのセンサーデバイス」の一例である。また、加速度α~αは、「第1~第nの加速度」の一例である。また、基準位置加速度α’~α’は、「第1~第nの基準位置加速度」の一例である。また、角速度ω~ωは、「第1~第nの角速度」の一例である。
【0112】
以上に説明した第4実施形態のセンサーモジュール1では、処理回路100は、センサーデバイス2-1が検出した筐体の第1の位置rに加わる加速度αを基準位置である第1の位置rに加わる基準位置加速度α’とするとともに、筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-2~2-nが検出した筐体の第2~第nの位置r~rに加わる加速度α~αを第1の位置rに加わるの基準位置加速度α’~α’に換算する。あるいは、処理回路100は、筐体に加わる角速度ωに基づいて、センサーデバイス2-1~2-nが検出した筐体の第1~第nの位置r~rに加わる加速度α~αを、筐体の基準位置に加わる基準位置加速度α’~α’に換算する。したがって、第3実施形態のセンサーモジュール1によれば、センサーデバイス2-1~2-nに回転運動が加わった場合でも加速度α~αを補正することができる。
【0113】
また、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、筐体の第1の位置rに加わる加速度αを基準位置である第1の位置rに加わる基準位置加速度α’とした場合、第1実施形態のセンサーモジュール1と比較して、基準位置加速度α’~α’を算出するための計算負荷が小さい。
【0114】
また、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、処理回路100の平均化部102の平均化処理によってランダムなノイズ成分が低減された平均加速度α’及び平均角速度ω’を算出することができる。また、センサーデバイス2-1~2-nのいずれかが故障した場合でも、処理回路100が、正常なセンサーデバイスが検出した加速度及び角速度を用いて平均加速度α’及び平均角速度ω’を算出することができる。
【0115】
また、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、例えば、外部装置は、処理回路100の多数決部104による判定結果である第1フラグflg1に基づいて、センサーデバイス2-1~2-nの各々が備える3軸加速度センサー27がそれぞれ正常であるか故障しているかを判断することができる。また、例えば、外部装置は、処理回路100の多数決部104による判定結果である第2フラグflg2に基づいて、センサーデバイス2-1~2-nの各々が備える第1角速度センサー26a、第2角速度センサー26b及び第3角速度センサー26cがそれぞれ正常であるか故障しているかを判断することができる。
【0116】
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0117】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0118】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0119】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0120】
センサーモジュールの一態様は、
筐体と、
前記筐体に収容され、nを2以上の整数として、前記筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる第1~第nの加速度を検出する第1~第nのセンサーデバイスと、
前記筐体に加わる角速度に基づいて、前記第1~第nの加速度を、前記筐体の所定の基準位置に加わる加速度である第1~第nの基準位置加速度にそれぞれ換算する処理回路と、
を備える。
【0121】
このセンサーモジュールによれば、筐体に加わる角速度に基づいて、第1~第nのセンサーデバイスが検出した筐体の第1~第nの位置に加わる第1~第nの加速度を基準位置に加わる第1~第nの基準位置加速度に換算するので、第1~第nのセンサーデバイスに回転運動が加わった場合でも第1~第nの加速度を補正することができる。
【0122】
センサーモジュールの他の一態様は、
筐体と、
前記筐体に収容され、nを2以上の整数として、前記筐体の第1~第nの位置にそれぞれ加わる第1~第nの加速度を検出する第1~第nのセンサーデバイスと、
前記第1の位置を前記筐体の所定の基準位置として、前記第1の加速度を前記基準位置に加わる加速度である第1の基準位置加速度とし、前記筐体に加わる角速度に基づいて、前記第2~第nの加速度を、前記基準位置に加わる加速度である第2~第nの基準位置加速度にそれぞれ換算する処理回路と、
を備える。
【0123】
このセンサーモジュールによれば、第1のセンサーデバイスが検出した筐体の第1の位
置に加わる第1の加速度を基準位置である第1の位置に加わる第1の基準位置加速度とするとともに、筐体に加わる角速度に基づいて、第2~第nのセンサーデバイスが検出した筐体の第2~第nの位置に加わる第2~第nの加速度を第1の位置に加わる第2~第nの基準位置加速度に換算するので、第1~第nのセンサーデバイスに回転運動が加わった場合でも第1~第nの加速度を補正することができる。
【0124】
また、このセンサーモジュールによれば、筐体の第1の位置に加わる第1の加速度を基準位置である第1の位置に加わる第1の基準位置加速度とすることができるので、第1~第nの基準位置加速度を算出するための計算負荷が低減される。
【0125】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記処理回路は、前記第1~第nの基準位置加速度が一致しているか否かを判定してもよい。
【0126】
このセンサーモジュールによれば、例えば、外部装置は、判定結果に基づいて、第1~第nのセンサーデバイスの各々が備える加速度センサーがすべて正常であるか少なくとも1つが故障しているかを判断することができる。
【0127】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記整数nは3以上であり、
前記処理回路は、前記第1~第nの基準位置加速度に対する多数決により、前記第1~第nの基準位置加速度の各々が正常であるか否かを判定してもよい。
【0128】
このセンサーモジュールによれば、例えば、外部装置は、判定結果に基づいて、第1~第nのセンサーデバイスの各々が備える加速度センサーがそれぞれ正常であるか故障しているかを判断することができる。
【0129】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記処理回路は、前記第1~第nの基準位置加速度のうちの正常な加速度の平均値を算出してもよい。
【0130】
このセンサーモジュールによれば、平均化によってランダムなノイズ成分が低減された加速度を算出することができる。また、第1~第nのセンサーデバイスのいずれかが故障した場合でも、処理回路が、正常なセンサーデバイスが検出した加速度を用いて平均加速度を算出することができる。
【0131】
前記センサーモジュールの一態様は、
前記角速度を検出する第n+1のセンサーデバイスを備えてもよい。
【0132】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記第nのセンサーデバイスは、前記角速度を検出してもよい。
【0133】
前記センサーモジュールの一態様において、
1以上n以下の各整数jに対して、前記第jのセンサーデバイスは、第jの角速度を検出し、
前記処理回路は、前記第1~第nの角速度に対する多数決により、前記第1~第nの角速度の各々が正常であるか否かを判定し、前記角速度として前記第1~第nの角速度のうちの正常な角速度の平均値を算出してもよい。
【0134】
このセンサーモジュールによれば、平均化によってランダムなノイズ成分が低減された
角速度を算出することができるとともに、例えば、外部装置は、判定結果に基づいて、第1~第nのセンサーデバイスの各々が備える角速度センサーがそれぞれ正常であるか故障しているかを判断することができる。
【符号の説明】
【0135】
1…センサーモジュール、2,2-1~2-(n+1),2A,2B,2C…センサーデバイス、9…容器、10…基板、21…アウターケース、22…インナーケース、23…接合部材、24…回路基板、25…モジュールコネクター、26a…第1角速度センサー、26b…第2角速度センサー、26c…第3角速度センサー、27,27-1,27-2,27A,27B,27C…3軸加速度センサー、28…補正回路、29…インターフェース回路、91…ベース、92…蓋、93…コネクター、100…処理回路、101…加速度換算部、102…平均化部、103…不一致判定部、104…多数決部、110…記憶回路、120…通信回路、150…内部コネクター、211…ねじ孔、212…ねじ孔、221…開口、241…回路基板の上面、242…回路基板の下面、911…凹部、931…通信基板
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