IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-薬液注入装置 図1
  • 特開-薬液注入装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101156
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/004 20060101AFI20240722BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240722BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20240722BHJP
   G21D 1/00 20060101ALN20240722BHJP
【FI】
G21C9/004 300
C02F1/00 K
B01J4/00 103
G21D1/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004937
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】太田 優介
(72)【発明者】
【氏名】小部 強
【テーマコード(参考)】
2G002
4G068
【Fターム(参考)】
2G002AA01
2G002CA02
2G002DA01
2G002EA02
4G068AA01
4G068AB15
4G068AC16
4G068AD21
4G068AF01
(57)【要約】
【課題】省スペース化及び設備費用の低減を実現することができる薬液注入装置を提供する。
【解決手段】薬液注入装置100は、第2流路P2と、薬液タンク3と、第1弁4Aと、第2弁4Bと、を備える。第2流路P2は、注水ポンプ1の吐出口に繋がる第1流路P1に並列に接続される。薬液タンク3は、第2流路P2に設けられ、薬液を貯留する。第1弁4Aは、薬液タンク3の下流側の第2流路P2に設けられる。第2弁4Bは、第1流路P1と第2流路P2とが接続される2つの接続部(C1、C2)の間の第1流路P1に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注水ポンプの吐出口に繋がる第1流路に並列に接続される第2流路と、
前記第2流路に設けられ、薬液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液タンクの下流側の前記第2流路に設けられる第1弁と、
前記第1流路と前記第2流路とが接続される2つの接続部の間の前記第1流路に設けられる第2弁と、
を備える薬液注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記注水ポンプは、複数あり、
前記薬液注入装置は、それぞれの注水ポンプの吐出口に繋がる流路が合流する合流部の下流に設けられる
ことを特徴とする薬液注入装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記薬液タンクの上流側の前記第2流路に設けられ、前記第2流路の下流から上流へ前記薬液が逆流することを防止する逆止弁を備える
ことを特徴とする薬液注入装置。
【請求項4】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記第1弁を閉じ、前記第2弁を開くことで水を前記第1流路の先端から放出し、
前記第1弁を開き、前記第2弁を閉じることで前記薬液を前記第1流路の先端から放出する
ことを特徴とする薬液注入装置。
【請求項5】
請求項4に記載の薬液注入装置であって、
前記薬液は、アルカリ性であり、原子力発電プラントのサプレッションプールに注入される
ことを特徴とする薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液のpHをアルカリ性とすることで液相から気相への無機ヨウ素の再揮発化及び有機ヨウ素の発生を抑制することが可能である。そのため、原子力発電プラントにおいてはサプレッションプール水をアルカリ性に保ち、格納容器内雰囲気中のヨウ素を低減し、格納容器ベントの際に放射性物質の環境影響低減を目的としたpH調整設備が導入されつつある。
【0003】
pHを調整することを目的に薬液をポンプまたはガス加圧によって輸送することで目的の溶液に薬液を注入する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-175775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
福島での震災以降、原子力発電プラントは安全性の向上を目的に規制局から設けられた新規制の要求を満たす設備を有することが要求されている。そのため、これまでの原子力発電プラントと比較して設備が増加している。
【0006】
安全性の向上を目的とした設備の内、原子力発電プラントの事故時にサプレッションプール水内に溶解する無機ヨウ素の揮発化を防ぐことを目的としてpHを調整する設備が考案されているが、新規制の要求以上の自主対策設備であるため省スペース化(設備の物量低減)及び設備費用の低減が課題として挙げられる。
【0007】
本発明の目的は、省スペース化及び設備費用の低減を実現することができる薬液注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の薬液注入装置は、注水ポンプの吐出口に繋がる第1流路に並列に接続される第2流路と、前記第2流路に設けられ、薬液を貯留する薬液タンクと、前記薬液タンクの下流側の前記第2流路に設けられる第1弁と、前記第1流路と前記第2流路とが接続される2つの接続部の間の前記第1流路に設けられる第2弁と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、省スペース化及び設備費用の低減を実現することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態による薬液注入装置を含む注水系統の構成図である。
図2】第2の実施形態による薬液注入装置を含む注水系統の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1~第2の実施形態によるpH調整を目的とした設備(薬液注入装置)の追設について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による薬液注入装置100を含む注水系統の構成図である。注水系統は、原子力発電プラントのサプレッションプールへ注水を行う。
【0013】
(薬液注入装置の構成)
第1流路P1の上流には、注水ポンプ1が設けられる。注水ポンプ1は吸込口から吸い込んだ水を吐出口から吐出する。注水ポンプ1と第1流路P1は、例えば、既存の設備である。
【0014】
薬液注入装置100は、第2流路P2と、薬液タンク3と、第1弁4Aと、第2弁4Bと、を備える。これらの構成要素(設備)は、新設されるが、第2弁4Bは既存の設備であってもよい。
【0015】
第2流路P2は、注水ポンプ1の吐出口に繋がる第1流路P1に並列に接続される。薬液タンク3は、第2流路P2に設けられ、薬液を貯留する。第1弁4Aは、薬液タンク3の下流側の第2流路P2に設けられる。第2弁4Bは、第1流路P1と第2流路P2とが接続される2つの接続部(C1、C2)の間の第1流路P1に設けられる。第1弁4A及び第2弁4Bは、例えば、電動弁である。
【0016】
図1に示すように、薬液注入装置100は、逆止弁5を備えることが好ましい。逆止弁5は、薬液タンク3の上流側の第2流路P2に設けられ、第2流路の下流から上流へ薬液が逆流することを防止する。逆止弁5は、新設される。
【0017】
本実施形態では、第1弁4Aを閉じ、第2弁4Bを開くことで水を第1流路P1の先端から放出し(注水)、第1弁4Aを開き、第2弁4Bを閉じることで薬液を第1流路P1の先端から放出する(薬液の注入)。なお、図1の第1弁4Aの記号の色(黒)は、この弁が閉じられている状態を示しており、第2弁4Bの記号の色(白)は、この弁が開いている状態を示している。
【0018】
薬液の注入時には、第1弁4Aを開き、第2弁4Bを閉じることで、注水ポンプ1から吐出された水は、接続部C1と逆止弁5を通過し、薬液タンク3に流れ込む。そして、薬液タンク3の内部の薬液は、薬液タンク3に流れ込んだ水によって押し出され、第1弁4Aと接続部C2を通過し、第1流路P1の先端から放出される。
【0019】
薬液は、アルカリ性であり、原子力発電プラントのサプレッションプールに注入される。サプレッションプール水がアルカリ性になることで、無機ヨウ素の再揮発化及び有機ヨウ素の発生を抑制することができる。第2流路P2の先端は、ドライウェル又はサプレッションプール(圧力抑制室)に接続される。ドライウェルと圧力抑制室は連通しているため、第2流路P2から放出された薬液は、最終的にサプレッションプール水と混合する。
【0020】
なお、第2流路P2の先端は、沸騰水型原子炉の原子炉格納容器に接続されるということもできる。本実施形態の薬液は、液体であるが、粉末状(固体)の薬剤を溶かして生成してもよい。
【0021】
(薬液注入装置の制御)
薬液注入装置は、例えば、制御装置によって制御される。第1弁4A及び第2弁4Bは、制御装置からの指令に応答して作動する。制御装置は、例えば、CPU等のプロセッサ、メモリ等の記憶装置、キーボード等の入力装置、ディスプレイ等の表示装置、通信I/F等の通信装置から構成される。
【0022】
以下では、説明を簡単にするため、注水ポンプ1はすでに作動しており、第1弁4Aは閉じており、第2弁4Bは開いているとする。すなわち、注水系統により注水が行われている。
【0023】
制御装置は、所定のイベント(ユーザからの入力、上位システムからの指令等)が発生したときに、第2弁4Bを閉じ、第1弁4Aを開くように制御を行うことで、薬液をサプレッションプールに注入する。制御装置は、例えば、所定の時間経過後、第1弁4Aを閉じ、第2弁4Bを開くように制御を行うことで、注水を再開させる。なお、注水ポンプ1の制御は、上位システムが行ってもよいし、制御装置が行ってもよい。
【0024】
本実施形態によれば、薬液注入装置100が第1流路P1に並列に設けられるため、pH調整機構の追設が可能となる。また、薬液用ポンプが不要であるため、省スペース化及び設備費用の低減という効果を奏する。
【0025】
[第2の実施形態]
図2は、第2の実施形態による薬液注入装置100を含む注水系統の構成図である。以下、図2を用いて、共有の流路を持つポンプの注水流路の合流部に対して下流側の位置に注水流路と並列に設置された薬液タンクを有する薬液を注入可能な設備の構成を説明する。
【0026】
本実施形態では、薬液注入装置100の上流側に、複数の注水ポンプ1A、1B、1Cがある。薬液注入装置100は、それぞれの注水ポンプの吐出口に繋がる流路が合流する合流部2の下流に設けられる。
【0027】
詳細には、図2の設備は、共有の流路を有する注水ポンプ1A、1B、1Cと注水流路の合流部2、及び合流部2の下流側において注水経路(第1流路P1)と並列に設置された薬液タンク3を有し、開閉状態の切り替えによって注水から薬液の注入へと機能を切り替え可能とする第1弁4Aと第2弁4Bを有する。また、図2の設備は、注水が可能な状態での薬液タンク3から薬液が逆流することを防ぐ逆止弁5を有する。
【0028】
共有の流路を有する注水ポンプ1が複数設置されるため他系統のポンプではあるが薬液注入機能に対して駆動源が多重化されている。
【0029】
本実施形態によれば、薬液注入装置100が第1流路P1に並列に設けられるため、pH調整機構の追設が可能となる。また、薬液用ポンプが不要であるため、省スペース化及び設備費用の低減という効果を奏する。さらに、複数の注水系統の注水ポンプ1A、1B、1Cを駆動源として薬液が押し出されるので、いずれかの注水ポンプが故障等により停止しても、薬液の注入を継続することができる。その結果、薬液の注入の信頼性が向上する。
【0030】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば、図2に示す合流部2の上流側のそれぞれの流路に、逆止弁が設けられていてもよい。
【0031】
本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。
【0032】
(1).薬液タンクを注水系統に並列設置することによる薬液注入機能の追設可能とする。他系統の注水ポンプを駆動源として注水によって薬液をタンクから押し出す。複数の注水系統が共有する流路合流部の下流側に薬液タンクを設置し、駆動源となるポンプを複数有することによる多重化を可能とする。
【0033】
(2).薬液タンクが注水ポンプ下流側に位置することを特徴とした(1)に記載の設備。
【0034】
上記の態様の実施形態では、従来はポンプの上流に設置される薬液タンクをポンプの下流側で注水経路と並列に設置することで薬液の注入機能を追設する。流路の切り替えは電動弁の開閉によって操作する。
【0035】
また、原子力発電プラントでは複数のシナリオを想定して同一の流路を共有する複数のポンプによって注水が可能であることから前記の複数ポンプを用いた注水流路の合流部に対して下流側に設置することで複数のポンプが駆動ポンプとなり、実質的な駆動源の多重化を図る。
【0036】
従来、薬液注入を目的に設置されていたポンプ及び配管などの削減によって省スペース化(設備の物量低減)及び設備費用低減に寄与する。薬液は、注水ポンプの注水を介して薬液タンクから注水先へと押し出される。
【0037】
以上説明したように、従来であればpH調整を目的として設備を設計するが注水機能を有する設備に薬液タンクを並列に設置することでpH調整機能を追設することを可能とする。pH調整を目的としたポンプ及び配管設備の設置が不要または大きく削減可能となることから従来のpH調整機能を目的とする設備と比較して省スペース化(設備の物量低減)及び費用低減が期待できる。サプレッションプールへの注水が可能なポンプによる注水経路の合流部かつ下流側へ薬液タンクを設置することで薬液注入ポンプの多重化を可能とする。
【符号の説明】
【0038】
1、1A、1B、1C…注水ポンプ
2…合流部
3…薬液タンク
4A…第1弁
4B…第2弁
5…逆止弁
100…薬液注入装置
図1
図2