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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101157
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】水栓用ハンドル
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
E03C1/042 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004939
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 隆聖
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆裕
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BB01
2D060BC02
2D060BE13
(57)【要約】
【課題】固定表示部にかかる負荷を低減することが可能な水栓用ハンドルを提供すること。
【解決手段】水栓本体10に取り付けられる回転式の水栓用ハンドル1は、筒状のハンドル部2と、固定部3と、固定表示部4と、を有する。ハンドル部2は、その筒内に、水栓本体10から突出する吐水状態の切替え操作用の操作軸11と一体に連結されるアーム2Cを備える。固定部3は、水栓本体10に固定される張出部B2と、張出部B2の張り出した先の端部に固定される支持板3Dと、を備える。張出部B2は、操作軸11に沿ってアーム2Cの回転方向の可動域から外れた領域を軸方向に張り出す。支持板3Dは、張出部B2よりも軸方向とは交差する方向に広く延び出す。固定表示部4は、支持板3Dに固定され、ハンドル部2の筒端部の開口を覆う。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体に取り付けられる回転式の水栓用ハンドルであって、
前記水栓本体から突出する吐水状態の切替え操作用の操作軸と一体に連結されるアームを筒内に備える筒状のハンドル部と、
前記水栓本体に固定され、前記操作軸に沿って前記アームの回転方向の可動域から外れた領域を軸方向に張り出す張出部、及び該張出部の張り出した先の端部に固定され、前記張出部よりも前記軸方向とは交差する方向に広く延び出す支持板を備える固定部と、
前記支持板に固定され、前記ハンドル部の筒端部の開口を覆う固定表示部と、を有する水栓用ハンドル。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓用ハンドルであって、
前記張出部の前記水栓本体に対する固定及び前記支持板の前記張出部に対する固定が、前記支持板と前記張出部とに貫通して前記水栓本体に前記軸方向に差し込まれる差込式の締結構造の締結による固定とされる水栓用ハンドル。
【請求項3】
請求項2に記載の水栓用ハンドルであって、
前記固定部が、前記操作軸を取り囲む環形状とされて前記張出部を一体に備える固定本体部を更に有し、
前記固定本体部が、前記差込式の締結構造により前記水栓本体に締結される位置とは異なる別の位置で別の差込式の締結構造により前記水栓本体に締結され、
前記差込式の締結構造と前記別の差込式の締結構造との各締結位置が、互いに前記操作軸を中心とする非点対称となる位置に設定される水栓用ハンドル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓用ハンドルであって、
前記固定表示部が、前記支持板に対して、各々に形成された嵌合部位同士の前記軸方向の嵌合により固定される水栓用ハンドル。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓用ハンドルであって、
前記固定部が金属製とされる水栓用ハンドル。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓用ハンドルであって、
前記ハンドル部が円筒状の外周部を有し、
前記固定部が、前記操作軸を取り囲む環形状とされて前記水栓本体に対してシール部材を介して全周に亘ってシールされた状態に固定される固定台座を更に有し、
前記固定台座が、前記ハンドル部の円筒内にインロー状に非接触状態で入り込む環状突起を有する水栓用ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用ハンドルに関する。詳しくは、水栓本体に取り付けられる回転式の水栓用ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓本体の吐水状態を切り替える回転式の水栓用ハンドルが開示されている。この水栓用ハンドルは、円筒状のハンドル部と、ハンドル部の筒端部の筒内を覆う円板状の固定表示部と、を有する。固定表示部は、ハンドル部が回転操作されても回転しないように水栓本体に固定されている。それにより、固定表示部にハンドル部の操作状態を示す「開」「閉」等の表示を定位置に設定することが可能とされる。
【0003】
具体的には、ハンドル部は、その円筒の中心部に向かって延び出すアームが、水栓本体に組み込まれる切替弁の操作軸と連結される構成とされる。アームは、水栓本体に固定される固定部とは当たらないように設けられ、固定部との当たりにより回転規制される構成とされる。固定表示部は、固定部に取り付けられることで、ハンドル部が回転してもハンドル部に追従しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-322697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、固定表示部が、固定部に対するスナップフィット嵌合と、ハンドル部に対する円筒同士の嵌合と、の2つの嵌合によって、固定部に対して傾がないように組み付けられている。このような構成では、固定表示部が、ハンドル部との間の建付けやハンドル部の回転操作によって受ける負荷により破損しやすくなるおそれがある。そこで、本発明は、固定表示部にかかる負荷を低減することが可能な水栓用ハンドルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の水栓用ハンドルは、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、水栓本体に取り付けられる回転式の水栓用ハンドルであって、前記水栓本体から突出する吐水状態の切替え操作用の操作軸と一体に連結されるアームを筒内に備える筒状のハンドル部と、前記水栓本体に固定され、前記操作軸に沿って前記アームの回転方向の可動域から外れた領域を軸方向に張り出す張出部、及び該張出部の張り出した先の端部に固定され、前記張出部よりも前記軸方向とは交差する方向に広く延び出す支持板を備える固定部と、前記支持板に固定され、前記ハンドル部の筒端部の開口を覆う固定表示部と、を有する水栓用ハンドルである。
【0007】
第1の発明によれば、固定表示部が、水栓本体に固定される張出部の先の端部に固定される支持板に固定されることで、ハンドル部との係合を伴うことなく、水栓本体に適切に固定される。詳しくは、固定表示部の固定される支持板は、張出部の先の端部に固定されて張出部から広く延び出す構成とされる。そのようなことから、固定表示部を固定部に適切に固定することができる。また、固定表示部がハンドル部との係合を伴わないことから、ハンドル部との間の建付けやハンドル部の回転操作により固定表示部にかかる負荷を低減することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記張出部の前記水栓本体に対する固定及び前記支持板の前記張出部に対する固定が、前記支持板と前記張出部とに貫通して前記水栓本体に前記軸方向に差し込まれる差込式の締結構造の締結による固定とされる水栓用ハンドルである。
【0009】
第2の発明によれば、張出部の水栓本体に対する固定や支持板の張出部に対する固定が径方向の撓みを伴うスナップフィットや径方向の重なりを伴う嵌合により成されるものと比べて、構造全体の径方向の大型化を抑制することができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記固定部が、前記操作軸を取り囲む環形状とされて前記張出部を一体に備える固定本体部を更に有し、前記固定本体部が、前記差込式の締結構造により前記水栓本体に締結される位置とは異なる別の位置で別の差込式の締結構造により前記水栓本体に締結され、前記差込式の締結構造と前記別の差込式の締結構造との各締結位置が、互いに前記操作軸を中心とする非点対称となる位置に設定される水栓用ハンドルである。
【0011】
第3の発明によれば、固定部を水栓本体に対してより適切に固定することができる。なおかつ、固定部を差込式の締結構造により締結する位置と別の差込式の締結構造により締結する位置とを取り違える誤組み付けを防止することができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記固定表示部が、前記支持板に対して、各々に形成された嵌合部位同士の前記軸方向の嵌合により固定される水栓用ハンドルである。
【0013】
第4の発明によれば、固定表示部を広い支持面を備える支持板に対して簡便かつ適切に組み付けることができる。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記固定部が金属製とされる水栓用ハンドルである。
【0015】
第5の発明によれば、張出部の水栓本体に対する固定や支持板の張出部に対する固定を強固に行うことができる。その結果、固定表示部を支持板に対して強固に固定することができる。
【0016】
本発明の第6の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記ハンドル部が円筒状の外周部を有し、前記固定部が、前記操作軸を取り囲む環形状とされて前記水栓本体に対してシール部材を介して全周に亘ってシールされた状態に固定される固定台座を更に有し、前記固定台座が、前記ハンドル部の円筒内にインロー状に非接触状態で入り込む環状突起を有する水栓用ハンドルである。
【0017】
第6の発明によれば、固定台座の環状突起により、ハンドル内部が水栓本体との間の隙間から外部に露出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る水栓用ハンドルの概略構成を表す斜視図である。
図2】水栓用ハンドルの正面図である。
図3】水栓用ハンドルから固定表示部を外した分解斜視図である。
図4】固定表示部を奥側から見た斜視図である。
図5】水栓用ハンドルの分解斜視図である。
図6図5を奥側から見た分解斜視図である。
図7】固定側の主要部品を水栓本体に組み付けた状態を表す斜視図である。
図8】更にハンドル部を組み付けた状態を表す斜視図である。
図9】更に支持板を組み付けた状態を表す斜視図である。
図10図2のX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
《第1の実施形態》
(水栓用ハンドル1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓用ハンドル1の構成について、図1図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、水栓用ハンドル1が取り付けられる水栓本体10の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0021】
図1図2に示すように、本実施形態に係る水栓用ハンドル1は、浴室の壁面に設置される壁付け混合栓の水栓本体10に取り付けられている。水栓用ハンドル1は、水栓本体10から吐出される湯水の設定温度を調節するための回転式の温調ハンドルとされる。水栓本体10には、その他にも、湯水の吐水先や吐水先に対する吐止水(吐水/止水)を切り替えるための不図示の切替ハンドルが取り付けられている。
【0022】
水栓用ハンドル1は、水栓本体10の図示手前側面に取り付けられている。水栓用ハンドル1は、図示前後方向に筒軸方向(回転の軸方向)を向ける有天円筒状の部材から成る。水栓用ハンドル1は、その筒外周のハンドル部2を左右に回転させることにより、湯水の設定温度を調節する。具体的には、ハンドル部2を右回り(図示時計回り)に回転させることで、湯水の設定温度が上げられる。また、ハンドル部2を左回り(図示反時計回り)に回転させることで、湯水の設定温度が下げられる。
【0023】
水栓用ハンドル1は、その図示手前中央の天板部が、ハンドル部2を回転させても追従しない固定表示部4として構成されている。固定表示部4は、水栓本体10と一体を成すように組み付けられており、ハンドル部2を左右どちらの向きに回転させても回転することなく、常に定位置を維持するようになっている。固定表示部4には、例えば、湯水の設定温度を示す「C」「40」「H」等の温度目盛(不図示)が表示される。
【0024】
なお、温度目盛は、水栓本体10のハンドル部2の周囲に沿って設けられていても良い。その場合、固定表示部4には、水栓用ハンドル1を装飾する図形や文字、色彩、又はこれらを組み合わせたものを表示しても良い。また、固定表示部4の表示面をLEDや有機EL等の面状発光体から成る映像表示面で構成しても良い。そして、この映像表示面において、ハンドル部2の回転操作位置に応じて、予め設定された図形や文字、色彩、又はこれらを組み合わせた映像を表示するようにしても良い。
【0025】
図3に示すように、固定表示部4は、円板状を成し、ハンドル部2の円筒内部に設けられる固定部3の支持板3Dに図示手前側から嵌め込まれることで取り付けられている。具体的には、図4に示すように、固定表示部4の図示奥側面の中央部には、固定表示部4の円板形状と同心状に突出する円筒状の嵌合部位4Eが形成されている。嵌合部位4Eは、その突出した先の外周縁にフランジ状の張出しを有する形状とされる。
【0026】
また、固定表示部4の図示奥側面の中央上部には、丸穴状に窪む嵌合凹部4Fが形成されている。図3に示すように、固定表示部4は、次の手順により支持板3Dに取り付けられる。先ず、固定表示部4の図示奥側中央の嵌合部位4Eを、支持板3Dの中央に空けられた丸孔状の嵌合孔D1に図示手前側から差し込む。それにより、嵌合部位4Eが、支持板3Dの嵌合孔D1の内周面に沿って形成された環状の突起である嵌合部位D2に圧入嵌合され、そのフランジ状の張出しを嵌合部位D2の奥側に引掛けた状態に嵌合される。
【0027】
その際、固定表示部4の嵌合凹部4Fを、支持板3Dを水栓本体10に固定している図示上側の締結ビス15の頭部の位置に合わせておくことで、嵌合凹部4Fが締結ビス15の頭部に嵌合する。その結果、固定表示部4が、支持板3Dに対して、筒軸まわりの回転が止められると共に図示手前側に抜け止めされた状態として一体に取り付けられる。
【0028】
この取り付けにより、図1に示すように、固定表示部4は、ハンドル部2の図示手前側の筒端部から筒内側に張り出すリング板状のフランジ2Bと面一状の手前側面を成す状態にセットされる。それにより、固定表示部4は、その周囲をハンドル部2のフランジ2Bにより取り囲まれた状態として、ハンドル部2の図示手前側の筒端部の開口を覆った状態に設けられる。
【0029】
(各部構成について)
以下、水栓用ハンドル1の各部の具体的な構成について説明する。図3に示すように、水栓用ハンドル1は、円筒状のハンドル部2と、上述した支持板3Dを備える固定部3と、支持板3Dに固定される固定表示部4と、を有する。ハンドル部2、固定部3、及び固定表示部4は、それぞれ、金属製の成形部品から成る。
【0030】
図5図6に示すように、ハンドル部2は、水栓本体10の図示手前側面から突出する操作軸11と一体に連結される。それにより、ハンドル部2は、その回転に伴い操作軸11を一体的に回転させて、操作軸11と繋がる水栓本体10の内部の不図示のスピンドルを操作する。この操作により、水栓本体10の内部に供給される湯水の混合割合が、操作位置に対応した設定温度となるように調節される。
【0031】
具体的には、ハンドル部2は、使用者により把持される円筒部2Aと、円筒部2Aの図示手前側の筒端部から筒内側に張り出すリング板状のフランジ2Bと、を有する。また、ハンドル部2は、円筒部2Aの筒内周面から延び出すアーム2Cを有する。アーム2Cは、操作軸11との連結部を成す。具体的には、アーム2Cは、その延び出した先の端部に、円筒部2Aと同心状を成す有天円筒状の連結筒部C1を有する形状とされる。ここで、円筒部2Aが、本発明の「外周部」に相当する。
【0032】
図6に示すように、連結筒部C1の筒内周面には、全周に亘って雌セレーションが形成されている。連結筒部C1は、その筒内に操作軸11の外周部にセレーション嵌合される噛合ナット12が差し込まれることにより、噛合ナット12の外周面に形成された雄セレーションと嵌合される。この嵌合により、連結筒部C1は、噛合ナット12を介して操作軸11と回転方向に一体に連結される。その結果、ハンドル部2は、操作軸11に対し、円筒部2Aが操作軸11と同心状を成す状態に組み付けられる。
【0033】
図5図6に示すように、固定部3は、リング板状の固定台座3Aと、固定台座3Aの図示手前側面上に組み付けられるリング板状の固定本体部3Bと、を有する。また、固定部3は、固定本体部3Bの図示手前側に張り出す張出部B2の図示手前側面上に組み付けられるリング板状の支持板3Dを有する。固定台座3A、固定本体部3B、及び支持板3Dは、それぞれ、各々のリング板が操作軸11と同心状を成す状態に組み付けられる。
【0034】
図5に示すように、固定台座3Aは、リング板状のリング底板A1と、リング底板A1の図示手前側面から外周縁に沿ってリング状に突出する環状突起A2と、を有する。環状突起A2は、リング底板A1の外周縁を残すリング径方向の外縁寄りの箇所から、リング底板A1と同心状を成す形に突出する。また、図6に示すように、固定台座3Aは、リング底板A1の図示奥側面から外周縁に沿ってリング状に突出する環状突座A3を有する。環状突座A3は、リング底板A1の外周縁からリング底板A1と同心状を成す形に突出する。
【0035】
図5に示すように、固定本体部3Bは、リング板状のリング底板B1と、リング底板B1の図示手前側面におけるリング周方向の一部から、外周縁に沿って円弧状に突出する張出部B2を有する。張出部B2は、リング底板B1のリング中央の孔の周縁箇所から外周縁を残す外縁寄りの箇所までの領域を、リング底板B1と同心状の円弧を成すようにリング周方向に円弧状に突出する形に形成されている。
【0036】
詳しくは、張出部B2は、リング底板B1の中心孔の周縁からリング底板B1の外縁までの径方向寸法の半分以上の径方向寸法を有し、リング周方向に90度以上180度未満の長さで円弧状に延びる形状とされる。張出部B2の図示手前側面には、外周縁に沿って円弧状に突出するガイドB3が形成されている。ガイドB3は、張出部B2に支持板3Dを組み付ける際のリング径方向の組み付け位置を案内する位置決め部として機能する。
【0037】
また、図6に示すように、固定本体部3Bは、そのリング底板B1の図示奥側面から外周縁に沿ってリング状に突出する環状突座B4を有する。環状突座B4は、リング底板B1の外周縁を残すリング径方向の外縁寄りの箇所から、リング底板B1と同心状を成す形に突出する。
【0038】
図5に示すように、支持板3Dは、そのリング中央の嵌合孔D1の周縁から図示手前側にフランジ状に張り出す嵌合部位D2を有する。また、図6に示すように、支持板3Dは、その図示奥側面からひと回り小さな外径のリング板状を成す形に突出する組付け座D3を有する。組付け座D3は、支持板3Dのリング形状と同心状を成す形に突出する。
【0039】
(水栓用ハンドル1の組み付け手順)
上記固定部3を含む水栓用ハンドル1は、次の手順により水栓本体10に組み付けられる。先ず、図7に示すように、固定台座3Aを、そのリング内に操作軸11を通しながら水栓本体10の図示手前側面上にセットする。それにより、図10に示すように、固定台座3Aの環状突座A3が水栓本体10の図示手前側面上に底付いた状態にセットされる。その際、固定台座3Aの環状突座A3により囲まれた環内にパッキンSをセットして、固定台座3Aと水栓本体10との間を全周に亘ってシールする。ここで、パッキンSが、本発明の「シール部材」に相当する。
【0040】
次いで、図7に示すように、固定台座3Aのリング底板A1の図示手前側面上に、固定本体部3Bのリング底板B1をセットする。その際、図10に示すように、固定本体部3Bの環状突座B4の外周部にOリングRを装着して、固定本体部3Bのリング底板B1と固定台座3Aの環状突起A2との間を全周に亘ってシールする。
【0041】
そして、図7に示すように、固定本体部3Bのリング底板B1に空けられた締結用の孔に締結ビス14を図示手前側から差し込む。そして、図10に示すように、リング底板B1に差し込んだ締結ビス14を、固定台座3Aのリング底板A1に空けられた孔を貫通させて水栓本体10に空けられた孔に通して締結する。それにより、固定本体部3Bと固定台座3Aとが、水栓本体10に一体に固定される。
【0042】
次に、図7に示すように、操作軸11の外周部に噛合ナット12を図示手前側から差し込んでセレーション嵌合させる。なお、噛合ナット12は、水栓用ハンドル1の組み付け前に予め操作軸11にセレーション嵌合させておいても良い。次いで、図8に示すように、ハンドル部2の中央の連結筒部C1を、固定本体部3Bのリング中央の孔に図示手前側から通して、噛合ナット12の外周部に差し込んでセレーション嵌合させる。
【0043】
次に、連結筒部C1の天板中央部に空けられた固定用の孔に固定ビス13を図示手前側から差し込んで、操作軸11の中央の孔に通して締結する。それにより、連結筒部C1の天板部が、固定ビス13の頭部と操作軸11との間に挟まれた状態に締結される。その結果、ハンドル部2が操作軸11と回転方向及び筒軸方向に一体に連結される。
【0044】
図10に示すように、ハンドル部2は、操作軸11への連結により、その円筒部2Aが固定台座3Aの環状突起A2の外周部に対して、筒径方向に僅かに隙間を空けたインロー状に嵌め込まれた状態にセットされる。それにより、ハンドル部2は、固定台座3Aと干渉することなく、固定台座3Aとの間でハンドル内部を外部に対して被覆する。上記組み付けにより、ハンドル部2は、そのアーム2Cが張出部B2と筒軸方向の配置が重なる位置で筒周方向(回転方向)に並んで配置された状態となる。
【0045】
次に、図9に示すように、支持板3Dを、ハンドル部2の円筒内に図示手前側から通して、その奥側面である組付け座D3を固定本体部3Bの張出部B2の図示手前側面に当接させる(図10参照)。そして、組付け座D3を、張出部B2の円弧状に突出するガイドB3の内周面に当てて位置合わせした後、図9に示すように、支持板3Dに空けられた締結用の孔に締結ビス15を図示手前側から差し込む。
【0046】
そして、図10に示すように、支持板3Dに差し込んだ締結ビス15を、固定本体部3Bの張出部B2に空けられた孔と固定台座3Aに空けられた孔とを貫通させて水栓本体10に空けられた孔に通して締結する。それにより、支持板3Dと固定本体部3Bと固定台座3Aとが、水栓本体10に一体に固定される。
【0047】
詳しくは、支持板3Dは、締結ビス15で固定本体部3Bに締結されることで、ガイドB3による外周側からの支持と合わせて、固定本体部3Bに対して回転方向にも径方向にも位置決めされた状態に固定される。また、固定本体部3Bと固定台座3Aとは、2本の締結ビス14,15による締結により、水栓本体10に対して回転方向にも径方向にも位置決めされた状態に固定される。
【0048】
図2に示すように、2本の締結ビス14,15の締結位置は、互いに操作軸11を間に挟む一直線上の位置ではなく、操作軸11を中心とする非点対称となる位置に設定されている。そのような配置とされることで、固定部3を2本の締結ビス14,15で締結する際の各位置を取り違えるといった誤組み付けを防止することができる。ここで、締結ビス15が、本発明の「差込式の締結構造」に相当する。また、締結ビス14が、本発明の「別の差込式の締結構造」に相当する。
【0049】
図9に示すように、支持板3Dは、上記組み付けにより、張出部B2の図示手前側面上において、張出部B2よりも筒周方向に広く延び出すリング板を成す状態にセットされる。そして、上記組み付け後に、支持板3Dに対し、図3で前述した手順に従って固定表示部4を図示手前側から差し込んで組み付ける。それにより、図1で前述した有天円筒状を成す水栓用ハンドル1が組み立てられる。
【0050】
このように、水栓用ハンドル1は、図5図6で前述したハンドル部2、固定部3、及び固定表示部4が、それぞれ金属製の成形部品から成ることにより、それぞれの固定に撓みを伴うスナップフィットを設定しづらい構成とされている。しかしながら、水栓用ハンドル1は、上述した各締結ビス14,15を用いた固定や、張出部B2に固定表示部4の支持面積を拡張するための支持板3Dを取り付ける構成により、径方向の大型化を招くことなく固定表示部4及び固定部3を水栓本体10に対して適切に固定した状態に組み付けることができる。
【0051】
上記組み立てられた水栓用ハンドル1は、ハンドル部2を次の可動範囲で固定部3に対して回転させることが可能とされる。すなわち、図8に示すように、ハンドル部2は、その回転操作により、アーム2Cが固定本体部3Bの張出部B2に回転方向の一端又は他端と当接する位置の間で、固定部3に対して回転させることが可能とされる。すなわち、アーム2Cの回転方向の可動域は、張出部B2の形成領域から外れた回転方向の領域とされる。
【0052】
ハンドル部2は、固定部3や固定表示部4とは係合することなく操作軸11と連結されていることにより、固定部3や固定表示部4とは干渉することなく回転する。したがって、固定部3や固定表示部4が、ハンドル部2との間の建付けやハンドル部2の回転操作によってハンドル部2から負荷を受けることが抑制され、破損しにくくなる。また、ハンドル部2の回転操作をスムーズに行うことができる。
【0053】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓用ハンドル1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0054】
すなわち、水栓本体(10)に取り付けられる回転式の水栓用ハンドル(1)は、筒状のハンドル部(2)と、固定部(3)と、固定表示部(4)と、を有する。ハンドル部(2)は、その筒内に、水栓本体(10)から突出する吐水状態の切替え操作用の操作軸(11)と一体に連結されるアーム(2C)を備える。固定部(3)は、水栓本体(10)に固定される張出部(B2)と、張出部(B2)の張り出した先の端部に固定される支持板(3D)と、を備える。
【0055】
張出部(B2)は、操作軸(11)に沿ってアーム(2C)の回転方向の可動域から外れた領域を軸方向に張り出す。支持板(3D)は、張出部(B2)よりも軸方向とは交差する方向に広く延び出す。固定表示部(4)は、支持板(3D)に固定され、ハンドル部(2)の筒端部の開口を覆う。
【0056】
このように、固定表示部(4)が、水栓本体(10)に固定される張出部(B2)の先の端部に固定される支持板(3D)に固定されることで、ハンドル部(2)との係合を伴うことなく、水栓本体(10)に適切に固定される。詳しくは、固定表示部(4)の固定される支持板(3D)は、張出部(B2)の先の端部に固定されて張出部(B2)から広く延び出す構成とされる。
【0057】
そのようなことから、固定表示部(4)を固定部(3)に適切に固定することができる。また、固定表示部(4)がハンドル部(2)との係合を伴わないことから、ハンドル部(2)との間の建付けやハンドル部(2)の回転操作により固定表示部(4)にかかる負荷を低減することができる。
【0058】
また、張出部(B2)の水栓本体(10)に対する固定及び支持板(3D)の張出部(B2)に対する固定が、支持板(3D)と張出部(B2)とに貫通して水栓本体(10)に軸方向に差し込まれる差込式の締結構造(15)の締結による固定とされる。上記構成によれば、張出部(B2)の水栓本体(10)に対する固定や支持板(3D)の張出部(B2)に対する固定が径方向の撓みを伴うスナップフィットや径方向の重なりを伴う嵌合により成されるものと比べて、構造全体の径方向の大型化を抑制することができる。
【0059】
また、固定部(3)が、操作軸(11)を取り囲む環形状とされて張出部(B2)を一体に備える固定本体部(3B)を更に有する。固定本体部(3B)が、差込式の締結構造(15)により水栓本体(10)に締結される位置とは異なる別の位置で別の差込式の締結構造(14)により水栓本体(10)に締結される。差込式の締結構造(15)と別の差込式の締結構造(14)との各締結位置が、互いに操作軸(11)を中心とする非点対称となる位置に設定される。
【0060】
上記構成によれば、固定部(3)を水栓本体(10)に対してより適切に固定することができる。なおかつ、固定部(3)を差込式の締結構造(15)により締結する位置と別の差込式の締結構造(14)により締結する位置とを取り違える誤組み付けを防止することができる。
【0061】
また、固定表示部(4)が、支持板(3D)に対して、各々に形成された嵌合部位(4E,D2)同士の軸方向の嵌合により固定される。上記構成によれば、固定表示部(4)を広い支持面を備える支持板(3D)に対して簡便かつ適切に組み付けることができる。
【0062】
また、固定部(3)が金属製とされる。上記構成によれば、張出部(B2)の水栓本体(10)に対する固定や支持板(3D)の張出部(B2)に対する固定を強固に行うことができる。その結果、固定表示部(4)を支持板(3D)に対して強固に固定することができる。
【0063】
また、ハンドル部(2)が円筒状の外周部(2A)を有する。固定部(3)が、操作軸(11)を取り囲む環形状とされて水栓本体(10)に対してシール部材(S)を介して全周に亘ってシールされた状態に固定される固定台座(3A)を更に有する。固定台座(3A)が、ハンドル部(2)の円筒内にインロー状に非接触状態で入り込む環状突起(A2)を有する。上記構成によれば、固定台座(3A)の環状突起(A2)により、ハンドル内部が水栓本体(10)との間の隙間から外部に露出することを抑制することができる。
【0064】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0065】
1.本発明の水栓用ハンドルは、水栓本体に対する回転の軸方向を水栓幅方向や水栓高さ方向など、水栓前後方向以外の方向に向けて設けられるものであっても良い。水栓用ハンドルは、浴室の他、キッチンや洗面化粧台、トイレ等の屋外又は水栓柱等の屋外で使用される水栓本体に取り付けられるものであっても良い。
【0066】
また、水栓用ハンドルは、混合水栓の他、単水栓の水栓本体に取り付けられるものであっても良い。また、水栓用ハンドルは、温調ハンドルの他、湯水の吐水先や吐水先に対する吐止水(吐水/止水)を切り替える切替ハンドルとして構成されるものであっても良い。
【0067】
2.水栓用ハンドルを構成するハンドル部、固定部、及び固定表示部は、それぞれ、金属製の他、樹脂製の構成とされても良い。また、水栓本体に対する固定本体部の固定や張出部に対する支持板の固定は、締結ビス等の差込式の締結構造による締結の他、抜け止めピンや抜け止めリングを用いた係止やスナップフィット嵌合、圧入嵌合によるものであっても良い。
【0068】
また、水栓本体に対する固定本体部の固定は、螺合によるものであっても良い。固定本体部は、リング底板を備えず張出部のみを備える構成であっても良い。固定部は、固定台座を備えず固定本体部が水栓本体に直接接触して取り付けられる構成であっても良い。固定本体部は、固定台座と一部品で構成されるものであっても良い。
【0069】
張出部は、アームとの当接によりハンドル部の可動域を規制するものの他、単に、支持板を固定するための張出しとして形成されるものであっても良い。すなわち、アームとの当接によりハンドル部の可動域を規制する部位が、張出部ではなく、固定部の他の部位に形成される構成であっても良い。
【0070】
ハンドル部は、角筒等の円筒以外の筒状の外周部を有する構成から成るものであっても良い。ハンドル部は、その固定表示部によって覆われる筒端部が、筒内側に張り出すリング板状のフランジを備えず、固定表示部によって筒端部全体又は筒内部全体が覆われる構成であっても良い。支持板は、張出部よりも軸方向とは交差する方向に広く延び出すものであれば良く、筒周方向及び/又は筒径方向に張り出すものであっても良い。
【0071】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1…水栓用ハンドル,2…ハンドル部,2A…円筒部(外周部),2B…フランジ,2C…アーム,C1…連結筒部,3…固定部,3A…固定台座,A1…リング底板,A2…環状突起,A3…環状突座,3B…固定本体部,B1…リング底板,B2…張出部,B3…ガイド,B4…環状突座,3D…支持板,D1…嵌合孔,D2…嵌合部位,D3…組付け座,4…固定表示部,4E…嵌合部位,4F…嵌合凹部,10…水栓本体,11…操作軸,12…噛合ナット,13…固定ビス,14…締結ビス(別の差込式の締結構造),15…締結ビス(差込式の締結構造),S…パッキン(シール部材),R…Oリング
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