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特開2024-101162ロータリーダンパー及びロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101162
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ロータリーダンパー及びロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/04 20060101AFI20240722BHJP
   F16F 13/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
F16F7/04
F16F13/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004944
(22)【出願日】2023-01-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯山 俊男
【テーマコード(参考)】
3J047
3J066
【Fターム(参考)】
3J047AA22
3J066AA24
3J066CA02
3J066CB07
(57)【要約】
【課題】(1)回転体8の回転開始直後にあっても回転体8に所要抵抗トルクを作用させることが可能な、新規のロータリーダンパーを提供すること。(2)ロータリーダンパーの回転体8に作用する回転トルクが漸次増大する場合であっても、回転体8の回転速度を抑制することができるようにすること。
【解決手段】(1)回転体8が回転した際、フック部28が保持部材12によってばね部材10の締め付けが強まる方向に相対的に押されるようにする。(2)ロータリーダンパー4にリンク機構6を組み合わせ、外部機器が旋回すると、片側リンク片54と中間リンク片58とを接続する片側可動節P1が偏心軸o2の周りを回動しながら回転軸o1に接近して他側リンク片56が回転せしめられるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の装着部を備えた回転体と、線材を螺旋状に巻回して形成され、前記回転体の前記装着部に装着されるばね部材と、固定の保持部材とを具備し、
前記ばね部材はフック部を有し、前記フック部が前記保持部材によって保持されることで前記ばね部材は前記保持部材に対して回転不能であり、
前記回転体が回転すると、前記フック部が前記保持部材によって相対的に押されて、前記回転体は前記ばね部材に対して摺動し、
前記回転体は、前記ばね部材に対する回転速度が増大するに従って前記ばね部材との間の摩擦力が増大する特性を有する合成樹脂材料により形成されるロータリーダンパーにおいて、
前記回転体が回転した際、前記フック部は前記保持部材によって前記ばね部材の締め付けが強まる方向に相対的に押される、ことを特徴とするロータリーダンパー。
【請求項2】
前記ばね部材を形成する前記線材の巻回数は1である、請求項1に記載のロータリーダンパー。
【請求項3】
前記フック部は法線方向に延びている、請求項1に記載のロータリーダンパー。
【請求項4】
前記ばね部材にはフッ素系のグリスが塗布されている、請求項1に記載のロータリーダンパー。
【請求項5】
前記ばね部材は前記装着部の外周面に装着されている、請求項1に記載のロータリーダンパー。
【請求項6】
前記ばね部材は軸方向に複数配置されている、請求項1に記載のロータリーダンパー。
【請求項7】
前記回転体は所要角度範囲内で回転する、請求項1に記載のロータリーダンパー。
【請求項8】
前記回転体は一方向クラッチを備えている、請求項7に記載のロータリーダンパー。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせであって、
前記リンク機構は、前記回転体の回転軸に対して偏心した偏心軸を軸として回転可能であって且つ外部機器と一体回転する片側リンク片、前記回転軸を軸として回転可能であって且つ前記回転体と一体回転する他側リンク片、及び前記片側リンク片と前記他側リンク片とを接続する中間リンク片を含み、
外部機器が旋回すると、前記片側リンク片と前記中間リンク片とを接続する片側可動節が前記偏心軸の周りを回動しながら前記回転軸に接近して前記他側リンク片が回転せしめられる、組み合わせ。
【請求項10】
前記片側リンク片及び前記他側リンク片には夫々、前記保持部材と当接して外部機器の旋回を阻止する旋回阻止手段が形成されている、請求項9に記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリーダンパー及びロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体の回転速度を抑制するため回転体に所要抵抗トルクを作用せしめるロータリーダンパーが既に広く実用に供されている。ロータリーダンパーは例えば室内の窓近傍に設置されるブラインドの巻き取り機構に組み込まれ、この巻き取り機構に接続されたボトムレールが鉛直方向に自由落下する際の落下速度を抑制する。この場合、ロータリーダンパーの回転体は一方向に連続回転せしめられ、回転体にかかる回転トルクの大きさは一定である。また、ロータリーダンパーは例えば洋式便器の便蓋及び弁座や複写機のカバーの如き開位置と閉位置との間で旋回自在な外部機器(旋回部材)に接続され、これが開位置から閉位置に向かって重力によって旋回閉動する際の旋回速度を抑制することもある。この場合、ロータリーダンパーの回転体は比較的狭い所要角度範囲内でのみ回転せしめられ、回転体にかかる回転トルクの大きさは外部機器の旋回角度位置によって変化する。後者の使い方をするロータリーダンパーは揺動ダンパーと称されることもある。
【0003】
ロータリーダンパーは、ハウジング内部に封入されたシリコンオイル等の比較的粘性の高い流体の粘性抵抗を利用する所謂オイルダンパーが主流である。然しながら、オイルダンパーには、封入された流体が外部に漏洩する虞や、流体の粘性抵抗は温度による影響を受けやすく従って動作温度によって性能がばらつきやすいという問題がある。
【0004】
上記問題を解決するロータリーダンパーとして、本願の出願人は流体の粘性抵抗を利用することなく線材を巻回して形成されるばね部材を利用するロータリーダンパーを考案した。このロータリーダンパーは本願の出願人によって本願に先立って出願され、既に特許されている(下記特許文献1)。下記特許文献1には、断面円形の装着部を備えた回転体と、線材を螺旋状に複数回巻回して形成され、前記回転体の前記装着部の外周面に装着されるばね部材と、固定の保持部材とを具備し、前記ばね部材はフック部を有し、前記フック部が前記保持部材によって保持されることで前記ばね部材は前記保持部材に対して回転不能であり、前記回転体が回転すると、前記フック部が前記保持部材によって前記ばね部材の締め付けが弱まる方向に相対的に押されて、前記回転体は前記ばね部材に対して摺動し、前記回転体は、前記ばね部材に対する回転速度が増大するに従って前記ばね部材との間の摩擦力が増大する特性を有する合成樹脂材料により形成されるロータリーダンパーが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7088993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、上記特許文献1に示されたロータリーダンパーには以下のとおりの解決すべき課題がある。即ち、(1)回転体の回転開始直後にフック部が慣性によって過剰に緩み方向に撓むことでばね部材の内径が過剰に拡径され、回転体が所要抵抗トルク下で回転するまでに時間遅れを生じてしまう。また、(2)例えばブラインドの巻き取り機構に組み込まれた場合にはボトムレールが鉛直方向に自由落下する際の落下速度を充分に抑制することができるが、重力によって開位置から閉位置へ旋回閉動する外部機器に接続された場合には外部機器の旋回速度を充分に抑制することができない。これは、前者の場合、鉛直方向に自由落下するボトムレールには重力による一定の力が作用するため、ロータリーダンパーの回転体に作用する回転トルクの大きさは一定であるが、後者の場合、ロータリーダンパーの回転体に作用する回転トルクは、外部機器が開位置から閉位置へ旋回閉動するに従って漸次増大するためである。これについては後に更に言及する。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その第一の課題は、回転体の回転開始直後にあっても回転体に所要抵抗トルクを作用させることが可能な、新規且つ改良されたロータリーダンパーを提供することである。
【0008】
また、本発明の第二の課題は、ロータリーダンパーの回転体に作用する回転トルクが漸次増大する場合であっても、回転体の回転速度を抑制することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、回転体が回転した際、フック部が保持部材によってばね部材の締め付けが強まる方向に相対的に押されるようにすることで、上記第一の課題を解決できることを見出した。また、ロータリーダンパーにリンク機構を組み合わせて、ロータリーダンパーの回転体に作用する回転トルクの大きさを低減させることで、上記第二の課題を解決できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明によれば、上記第一の課題を解決するロータリーダンパーとして、断面円形の装着部を備えた回転体と、線材を螺旋状に巻回して形成され、前記回転体の前記装着部に装着されるばね部材と、固定の保持部材とを具備し、
前記ばね部材はフック部を有し、前記フック部が前記保持部材によって保持されることで前記ばね部材は前記保持部材に対して回転不能であり、
前記回転体が回転すると、前記フック部が前記保持部材によって相対的に押されて、前記回転体は前記ばね部材に対して摺動し、
前記回転体は、前記ばね部材に対する回転速度が増大するに従って前記ばね部材との間の摩擦力が増大する特性を有する合成樹脂材料により形成されるロータリーダンパーにおいて、
前記回転体が回転した際、前記フック部は前記保持部材によって前記ばね部材の締め付けが強まる方向に相対的に押される、ことを特徴とするロータリーダンパーが提供される。
【0011】
好ましくは、前記ばね部材を形成する前記線材の巻回数は1である。前記フック部は法線方向に延びているのが好ましい。前記ばね部材にはフッ素系のグリスが塗布されているのがよい。前記ばね部材は前記装着部の外周面に装着されているのが好都合である。好適には、前記ばね部材は軸方向に複数配置されている。前記回転体は所要角度範囲内で回転するのが好適である。この場合には、前記回転体は一方向クラッチを備えているのがよい。
【0012】
また、本発明によれば、上記第二の課題を解決する組み合わせとして、少なくとも前記回転体が所要角度範囲内で回転する上記ロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせであって、前記リンク機構は、前記回転体の回転軸に対して偏心した偏心軸を軸として回転可能であって且つ外部機器と一体回転する片側リンク片、前記回転軸を軸として回転可能であって且つ前記回転体と一体回転する他側リンク片、及び前記片側リンク片と前記他側リンク片とを接続する中間リンク片を含み、
外部機器が旋回すると、前記片側リンク片と前記中間リンク片とを接続する片側可動節が前記偏心軸の周りを回動しながら前記回転軸に接近して前記他側リンク片が回転せしめられる、組み合わせが提供される。
【0013】
好ましくは、前記片側リンク片及び前記他側リンク片には夫々、前記保持部材と当接して外部機器の旋回を阻止する旋回阻止手段が形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のロータリーダンパーにあっては、回転体が回転した際にフック部は保持部材によってばね部材の締め付けが強まる方向に相対的に押されることから、回転体の回転開始直後においてフック部が慣性によって過剰に撓むことはない。それ故に、回転体は回転開始直後から、つまり時間遅れなく、所要抵抗トルク下で回転することができる。
【0015】
本発明の組み合わせにあっては、外部機器が旋回すると、片側リンク片と中間リンク片とを接続する片側可動節が偏心軸の周りを回動しながら回転軸に接近して他側リンク片が回転せしめられる。片側リンク片は外部機器と一体回転することから、外部機器が旋回することで発生する回転トルクは片側可動節にて中間リンク片に伝達される。また、片側可動節は回転軸に接近することから、その分だけ上記回転トルクは低減して他側リンク片に伝達される。他側リンク片から見ると、回転中心である回転軸からの腕の長さつまり片側可動節までの距離が漸次低減せしめられるためである。それ故に、外部機器が重力によって開位置から閉位置へ旋回閉動せしめられて回転トルクが漸次増大する場合であっても、かかる回転トルクはリンク機構によって漸次低減せしめられるため、上記したロータリーダンパーであっても外部機器の旋回速度を充分抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従って構成されるロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせの好適実施形態の構成を示す図。
図2図1に示す組み合わせにおける、ロータリーダンパーの回転体を単体で示す図。
図3図1に示す組み合わせにおける、ロータリーダンパーのばね部材を単体で示す図。
図4図1に示す組み合わせにおける、ロータリーダンパーの保持部材を単体で示す図。
図5図1に示す組み合わせにおける、リンク機構の片側リンク片を単体で示す図。
図6図5に示す片側リンク片に連結される駆動シャフトを単体で示す図。
図7図1に示す組み合わせにおける、リンク機構の他側リンク片を単体で示す図。
図8図7に示す他側リンク片に連結される従動シャフトを単体で示す図。
図9図1に示す組み合わせにおける、リンク機構の中間リンク片を単体で示す図。
図10図1に示す組み合わせにおいて、外部機器が旋回閉動したときのC-C断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に従って構成されるロータリーダンパー及びこのロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせについて、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0018】
図1には本発明に従って構成されるロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせの好適実施形態が番号2で示されており、ロータリーダンパーは番号4、リンク機構は番号6で夫々示されている。この組み合わせ2は洋式便器の便蓋及び弁座や複写機のカバーの如き外部機器である旋回部材Xに接続され、これを開位置と閉位置との間で旋回可能に軸支する。図1には旋回部材Xが開位置にある状態が示されており、旋回部材Xは重力によって図10(b)に示す閉位置まで旋回閉動する。
【0019】
ロータリーダンパー4は回転体8とばね部材10と保持部材12とを具備している。図1と共に図2を参照して説明すると、回転体8は回転軸o1を軸として回転可能であって、後述する所定の性質を備えた合成樹脂材料により形成される。回転体8は断面円形の装着部14を備えている。図示の実施形態においては、装着部14は円筒形状、つまり装着部14の外周面の断面が円形である。装着部14の外周面の軸方向片側端部には径方向外方に延出する円環形状のフランジ部16が設けられている。回転体8の内側は軸方向に貫通しており、軸方向片側には断面円形の挿通穴18が軸方向他側には支持穴20が夫々回転軸o1と同軸上に配置されている。支持穴20の径は挿通穴18の径よりも大きく、支持穴20を規定する回転体8の内周面には軸方向に直線状に延びる支持突条22が周方向に等角度間隔をおいて3つ形成されている。図1のA-A断面図及びB-B断面図に示されるとおり、支持穴20には一方向クラッチ24が配置される。容易に理解できるよう一方向クラッチ24にハッチングは付していない。一方向クラッチ24はこれの外周面に形成された凹溝25に支持突条22が係合することで回転体8に対して回転不能である。一方向クラッチ24は周知のもの、例えば本願の出願人が本願に先立って出願して既に特許された特許第3501352号公報に記載のものであってよく、その詳細な説明は省略する。一方向クラッチ24の内側には後述する従動シャフト90が挿通され、一方向クラッチ24は、従動シャフト90が図1のA-A断面図において反時計方向に回転するときはこれと一体となって回転し、従動シャフト90が同時計方向に回転するときはこれに対して回転つまり空転する。
【0020】
図1と共に図3を参照して説明すると、ばね部材10は断面円形の金属製の線材を螺旋状に巻回して形成され、回転体8の装着部14(図示の実施形態においてはその外周面)に装着される。図示の実施形態においては、ばね部材10は装着部14に2つ配置されており、何れのばね部材10にもフッ素系のグリスが塗布されている。ばね部材10は、上記線材が巻回された巻回部26と上記線材が直線状に延びるフック部28及び30とを有する。巻回部26を軸方向に見ると円形であって、線材の巻回数は1である。そして、自由状態における巻回部26の内径は回転体8の装着部14の外径よりも小さく、ばね部材10は巻回部26が拡径した状態で回転体8の装着部14の外周面に装着される。図示の実施形態においては、フック部28及び30はばね部材10を形成する線材の両端部に夫々設けられており、フック部28は法線方向に、フック部30は接線方向に夫々延びている。
【0021】
図1と共に図4を参照して説明すると、保持部材12は適宜の硬質合成樹脂により形成され、ボルトの如き締結手段によって図示しない壁等に固定される。図示の実施形態においては、保持部材12は矩形の端板32と端板32の外周縁から軸方向に延びる角筒形状の外周壁34とを備えたカップ状であり、開放された外周壁34の開放端は端板32と同一形状のシールド板36により閉鎖されている。図1のA-A断面図においては、容易に理解できるようシールド板36にハッチングは付していない。端板32は比較的肉厚であってその底面には、ばね部材10が装着された回転体8を収容する収容凹部38が形成されている。収容凹部38は、回転体8の装着部14の軸方向端部が嵌合せしめられてこれを回転可能に支持する円形の支持部40を備えている。支持部40の中央には端板32を軸方向に貫通して後述する従動シャフト90の他側部96を回転可能に軸支する断面円形の従動側連通穴42が連設されている。収容凹部38は、フック部28が嵌め合わされるフック溝44及びフック部30が嵌め合わされるフック逃げ空間部46も備えている。フック溝44は径方向に直線状に延び、その溝幅はばね部材10を形成する線材の線径と同一又はこれよりも幾分広く、フック部28はフック溝44にて保持部材12に保持される。これにより、ばね部材10は保持部材12に対して回転不能となる。一方、フック逃げ空間部46は略扇形状であって、フック部30はフック逃げ空間部46に嵌め合わされるもののフック逃げ空間部46にて保持部材12と当接することはなく、従ってフック部30は保持部材12に保持されない。収容凹部38は更に、回転体8のフランジ部16が嵌合せしめられてこれを回転可能に支持する円形のフランジ受容部48も備えている。端板32の底面には更に、後述する駆動シャフト68の中間部70を軸受けする軸受け凹部50も形成されている。軸受け凹部50は断面円形であって、収容凹部38から離隔して形成されている。軸受け凹部50の中央には端板32を軸方向に貫通して後述する駆動シャフト68の他側部74の基端部を回転可能に軸支する断面円形の駆動側連通穴52が連設されている。
【0022】
本発明のロータリーダンパーにあっては、回転体8が回転した際、フック部28が保持部材12によってばね部材10の締め付けが強まる方向に相対的に押されることが重要であり、回転体8はばね部材10に対して摺動する。図示の実施形態においては、回転体8が図1のA-A断面において反時計方向に回転することで、フック部28はフック溝44において保持部材12によってばね部材10の締め付けが強まる方向に相対的に押される。ここで、回転体8の材質について言及すると、回転体8は、ばね部材10に対する回転速度が増大するに従ってばね部材10との間の摩擦力が増大する特性を有する合成樹脂材料により形成される。それ故に、例えば回転体8がブラインドのボトムレールに接続されてこれが鉛直方向に自由落下する場合には、回転体8の回転速度は重力による一定加速度の元で加速しようとするが、回転体8の回転速度が加速するとその分、回転体8がばね部材10から受ける摩擦力が増大するため、回転体8の回転速度は抑制される。上記特性を有する合成樹脂材料としては、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)又はPA(ポリアミド)が存在し、回転体8の剛性を高めると共に速度依存性を向上させつつコストを抑制させることを企図して上記合成樹脂材料にはガラスファイバー及び炭化カルシウムを夫々適宜添加することが好ましい。また、図示の実施形態においては、フック部28は法線方向に延びているため、フック部28全体が保持部材12によって相対的に押されるため、フック部28の撓みが可及的に防止される。
【0023】
本発明のロータリーダンパーにあっては、回転体8が回転した際にフック部28は保持部材12によってばね部材10の締め付けが強まる方向に相対的に押されることから、回転体8の回転開始直後においてフック部28が慣性によって過剰に撓むことはない。それ故に、回転体8は回転開始直後から、つまり時間遅れなく、所要抵抗トルク下で回転することができる。そして、図示の実施形態においては、ばね部材10を形成する線材の巻回数は1であるため、回転体8が回転した際にフック部28が保持部材12によってばね部材10の締め付けが強まる方向に相対的に押されても、回転体8はばね部材10に対してロック状態となることなく確実に摺動することができる。
【0024】
而して、回転体8が上記特性を有する材料により形成されていても、ロータリーダンパー4がリンク機構6を介することなく旋回部材Xに直接連結された場合、ロータリーダンパー4は旋回部材Xの旋回速度を充分に抑制することはできない。回転体8がブラインドのボトムレールに接続された場合には、ボトムレールは鉛直方向に自由落下することから回転体8には重力に基づく一定の回転トルクが作用するが、回転体8が旋回部材Xに接続された場合には、旋回部材Xは重力によって旋回することから旋回部材の旋回角度位置によって回転体8に作用する回転トルクの大きさが変化するためである。これについては後に更に言及する。以下、リンク機構6についての説明を続ける。
【0025】
図1を参照して説明すると、リンク機構6は片側リンク片54、他側リンク片56、及び中間リンク片58を含んでいる。図1と共に図5を参照して説明すると、片側リンク片54は平板状の主部60を備えている。主部60の側面の所要部位には外方に突出する阻止突部61が設けられている。主部60には更に、片側面に形成された円柱形状の突出部62と、片側面から他側面に貫通する連結穴部64とが形成されている。連結穴部64の断面は全体的に円形であるが、内周面には周方向に等角度間隔をおいて軸方向に直線状に延びる突条66が6つ形成されている。連結穴部64を介して片側リンク片54は駆動シャフト68に連結せしめられる。図6も参照して説明を続けると、駆動シャフト68は中実であって、中間部70と、中間部70の軸方向片側に位置する片側部72と、中間部70の軸方向他側に位置する他側部74とに区画される。中間部70は円柱形状であって、保持部材12の端板32に形成された軸受け凹部50に配置されてこれによって回転可能な状態で支持される。片側部72は全体的に中間部70より小径な円柱形状であるが、その基端部の外周面には軸方向に直線状に延びる突条76が周方向に等角度間隔をおいて6つ形成されている。片側部72が片側リンク片54の連結穴部64に挿通せしめられて突条76が突条66と周方向に係合することで片側リンク片54は駆動シャフト68に連結せしめられる。片側部72における突条76の形成されていない先端部はシールド板36に形成された円形の貫通穴78によって回転可能な状態で軸受けされる。他側部74は全体的に中間部70より小径な円柱形状であるが、その先端部の外周面には軸方向に直線状に延びる凹溝80が周方向に等角度間隔をおいて6つ形成されている。他側部74における凹溝80の形成されていない基端部は保持部材12の端板32に形成された駆動側連通穴52に挿入されてこれによって回転可能な状態で軸受けされる。そして、他側部74の先端部は凹溝80を介して旋回部材Xに連結される。このことから、片側リンク片54は回転体8の回転軸o1に対して偏心した偏心軸o2を軸として、旋回部材Xと一体となって回転する。
【0026】
図1と共に図7を参照して説明すると、他側リンク片56は平板状の主部82を備えている。主部82の側面の所要部位には外方に突出する阻止突部83が設けられている。主部82には更に、片側面に形成された円柱形状の突出部84と、片側面から他側面に貫通する連結穴部86とが形成されている。連結穴部86の断面は全体的に円形であるが、内周面には周方向に等角度間隔をおいて軸方向に直線状に延びる突条88が6つ形成されている。連結穴部86を介して他側リンク片56は従動シャフト90に連結せしめられる。図8も参照して説明を続けると、従動シャフト90は中実であって、中間部92と、中間部92の軸方向片側に位置する片側部94と、中間部92の軸方向他側に位置する他側部96とに区画される。中間部92は円柱形状であってロータリーダンパー4の回転体8の内側に挿入される。このとき、中間部92の軸方向片側は回転体8の挿通穴18に、軸方向他側は一方向クラッチ24の内側に夫々配置される。片側部94は全体的に中間部92より小径な円柱形状であるが、その基端部の外周面には軸方向に直線状に延びる突条98が周方向に等角度間隔をおいて6つ形成されている。片側部94は他側リンク片56の連結穴部86に挿通せしめられて突条98が突条88と周方向に係合することで他側リンク片56は従動シャフト90に連結せしめられる。片側部94における突条98の形成されていない先端部はシールド板36に形成された円形の貫通穴100によって回転可能な状態で軸受けされる。他側部96は中間部92より小径な円柱形状であって保持部材12の端板32に形成された従動側連通穴42に挿入されてこれによって回転可能な状態で軸受けされる。このことから、他側リンク片56は回転軸o1を軸として、ロータリーダンパー4の回転体8と一体となって回転可能である。
【0027】
図1と共に図9を参照して説明すると、中間リンク片58は平板状であって、片側面から他側面に貫通する円形の片側穴102及び他側穴104が形成されている。片側穴102には片側リンク片54に形成された突出部62が、他側穴104には他側リンク片56に形成された突出部84が夫々隙間嵌合せしめられる。かくして片側リンク片54及び他側リンク片56は中間リンク片58を介して接続され、これらのリンク片がリンク機構をなす。そして、片側リンク片54と中間リンク片58とを接続する突出部62及び片側穴102が片側可動節P1、他側リンク片56と中間リンク片58とを接続する突出部84及び他側穴104が他側可動節P2となる。
【0028】
続いて、図1と共に図10を参照して組み合わせ2の作動について説明する。上述したとおり、図1には旋回部材Xが開位置にあるときの状態が示されている。図示の実施形態においては、旋回部材Xは水平方向に対して80度起立した状態で開位置となる。旋回部材Xが開位置にあるとき、片側リンク片54に設けられた阻止突部61が保持部材12の外周壁34の内面と当接して、片側リンク片54が偏心軸o2を軸として図1のC-C断面図において反時計方向に回転することを阻止する。これにより、旋回部材Xが開位置から更に旋回開動することは阻止される。
【0029】
図1に示す状態、つまり旋回部材Xが開位置にある状態から重力によって旋回閉動せしめられ、旋回部材Xが水平方向に対して45度傾斜したときのC-C断面が図10(a)に示されている。図1のC-C断面図と図10(a)とを比較参照することによって理解されるとおり、旋回部材Xが図中時計方向に旋回することで、これと駆動シャフト68を介して一体回転する片側リンク片54は偏心軸o2を軸として時計方向に回転する。そうすると、リンク機構6つまり片側リンク片54と他側リンク片56と中間リンク片58との作動により、片側可動節P1が偏心軸o2の周りを時計方向に回動しながら回転軸o1に接近し、他側リンク片56は回転軸o1を軸として反時計方向に回転する。他側リンク片56には従動シャフト90が連結されているため、従動シャフト90も反時計方向に回転する。ここで、従動シャフト90が反時計方向に回転する場合、一方向クラッチ24は従動シャフト90と回転体8とを相対回転不能に接続することから、回転体8は従動シャフト90と一体となって反時計方向に回転する(回転体8の回転方向を図1のA-A断面図中に矢印で示す)。これにより、ばね部材10のフック部28は保持部材12のフック溝44においてばね部材10の締め付けが強まる方向に相対的に押され、回転体8には制動トルクが作用する。
【0030】
ここで、旋回部材Xの質量をm、重力加速度をg、水平方向に対する旋回部材Xの旋回角度をθとすると、旋回部材Xが重力によって旋回閉動せしめられる際に、旋回部材Xが重力によって旋回方向に受ける分力Fはmgcosθである。かかる分力Fは、旋回部材Xの旋回角度θが小さくなるつまり旋回部材Xが閉位置に向かって旋回閉動するに従って漸次増大する。トルクは力に比例するため、旋回部材Xが偏心軸o2を軸として旋回する際の回転トルクも漸次増大する。そして、分力F及びこれによる回転トルクは閉位置(θ=0°)にて最大となる。そのため、旋回部材Xがリンク機構6を介さずにロータリーダンパー4に直接連結される場合には、ばね部材10によって回転体8に制動トルクが作用せしめられたとしても充分ではなく、回転体8の回転速度つまり旋回部材Xの旋回速度を充分抑制させることができない。然しながら、図示の実施形態においては、ロータリーダンパー4はリンク機構6を介して旋回部材Xに接続されている。そのため、旋回部材Xが旋回すると、片側リンク片54と中間リンク片58とを接続する片側可動節P1が偏心軸o2の周りを回動しながら回転軸o1に接近して他側リンク片56が回転せしめられる。片側リンク片54は旋回部材Xと一体回転することから、旋回部材Xが旋回することで発生する回転トルクは片側可動節P1にて中間リンク片58に伝達される。また、片側可動節P1は回転軸o1に接近することから、その分だけ上記回転トルクは低減して他側リンク片56に伝達される。他側リンク片56から見ると、回転中心である回転軸o1からの腕の長さつまり片側可動節P1までの距離が漸次低減せしめられるためである。それ故に、旋回部材Xが重力によって開位置から閉位置へ旋回閉動せしめられて回転トルクが漸次増大する場合であっても、かかる回転トルクはリンク機構6によって漸次低減せしめられるため、上記したロータリーダンパー4であっても旋回部材Xの旋回速度を充分抑制させることができる。
【0031】
なお、本発明のロータリーダンパーにあっては、回転体8が回転した際、フック部28は保持部材12によってばね部材10の締め付けが強まる方向に相対的に押されることから、フック部28がばね部材10の締め付けが弱まる方向に相対的に押される場合と比べて回転体8の外周面の摩耗が促進されて使用寿命が短くなる傾向にある(発生トルクは大きくなるため、発生トルク対比では同じ)。然しながら、回転体8は旋回部材Xが旋回する所定角度範囲内でのみ回転するため、回転体8が一方向に連続回転する場合に比べてばね部材10に対する回転体8の回転回数は低減される。それ故に、本発明のロータリーダンパーが図示の実施形態のようにして使用される場合、ロータリーダンパー4そのものの使用寿命は問題になりにくい。
【0032】
旋回部材Xが更に回転して図10(b)に示される閉位置(θ=0°)まで旋回閉動せしめられると、他側リンク片56に設けられた阻止突部83が保持部材12の外周壁34の内面と当接して、他側リンク片56が回転軸o1を軸として図10(b)において反時計方向に回転することを阻止する。これにより、旋回部材Xが閉位置を超えて旋回閉動することは阻止される。
【0033】
旋回部材Xを図10(b)に示す状態から図1に示す状態に旋回開動つまり閉位置から開位置へ旋回開動させる際には、上記した旋回閉動とは逆に作動する。つまり、従動シャフト90は図10(b)において時計方向に回転せしめられるため、従動シャフト90は一方向クラッチ24(回転体8)に対して空転し、何らの抵抗トルクを受けることなく旋回部材Xは旋回開動することができる。
【0034】
以上、本発明に従って構成されたロータリーダンパー及びロータリーダンパーとリンク機構との組み合わせについて添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、ばね部材10は回転体8の装着部14の外周面に装着されていたが、装着部の内周面に装着することもできる。その場合には、ばね部材のフック部は回転体の内側に挿通された軸状の保持部材によって保持され、一方向クラッチは装着部の外周面に嵌め合わされる。図示の実施形態においては、ばね部材10は2つのフック部28及び30を備えていたが、フック部30は省略してもよい。また、フック部28は必ずしも法線方向に延びていなければならないわけではなく、保持部材12によって保持されれば任意の形態であってよい。
【符号の説明】
【0035】
2:組み合わせ
4:ロータリーダンパー
6:リンク機構
8:回転体
10:ばね部材
12:保持部材
14:装着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10