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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101173
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201M
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004965
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003915
【氏名又は名称】弁理士法人岡田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 烈
(72)【発明者】
【氏名】三代 妙子
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】積層セラミックコンデンサの向きの判別を容易にするとともに、高温信頼性を向上させることが可能な積層セラミックコンデンサを提供すること。
【解決手段】本発明にかかる積層セラミックコンデンサ10は、積層された複数の誘電体層を含む積層体12を有し、積層体12の第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差が45以上100以下であり、積層体12の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiのうちの少なくともいずれか1つからなり、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの全面積に対して、3%以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層および前記誘電体層上に配置された複数の内部電極層を含み、
積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を有する積層体と、
前記第1の端面上に配置された第1の外部電極と、
前記第2の端面上に配置された第2の外部電極と、
を有する積層セラミックコンデンサにおいて、
前記積層体は、
前記誘電体層と前記内部電極層が交互に積層されてなる内層部と、
前記内層部を前記第1の主面側および前記第2の主面側から挟み込むように配置された第1の主面側外層部および第2の主面側外層部と、
前記内層部を前記第1の側面側および前記第2の側面側から挟み込むように配置された第1の側面側外層部および第2の側面側外層部と、を有し、
前記第1の主面側外層部および前記第2の主面側外層部の幅方向の端部の色味を再現するRGB値と前記第1の側面側外層部および前記第2の側面側外層部の幅方向の端部の色味を再現するRGB値との差が45以上100以下であり、
前記誘電体層は、誘電体材料を含み、
前記積層体の積層方向および幅方向がなすWT断面における、前記第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、
前記偏析相はCaおよびSiのうちの少なくともいずれか1つからなり、
前記偏析相の配置された領域は、前記積層体の前記WT断面の内の、前記第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、3%以下である、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体層中の前記誘電体材料は、
Zrを含み、Caを含むペロブスカイト型構造からなる、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミックコンデンサが知られている。一般に、積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウムなどの誘電体セラミックスからなるセラミック焼結体を備える。このセラミック焼結体の内部には、セラミック層を介して重なり合うように複数の内部電極が配置されている。また、このセラミック焼結体の一方端面上および他方端面上には、内部電極に電気的に接続されるように外部電極が形成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-306580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の積層セラミックコンデンサには、以下の課題があった。すなわち、複数のセラミック層の積層体であるセラミック焼結体は、平行六面体の外形を有するところ、外部電極が形成された端面以外の面である主面と側面とは、外観上判別することが困難であった。これは、たとえば、積層セラミックコンデンサを搬送する工程において、搬送面における積層セラミックコンデンサの向きが主面側を向いているのか、側面側を向いているのかの判別を困難とし、その後の外観選別や実装の効率を低下させることになっていた。更に、従来の積層セラミックコンデンサにおいては、高温信頼性が十分とは言えなかった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、積層セラミックコンデンサの向きの判別を容易にするとともに、高温信頼性を向上させることが可能な積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、積層された複数の誘電体層および誘電体層上に配置された複数の内部電極層を含み、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を有する積層体と、第1の端面上に配置された第1の外部電極と、第2の端面上に配置された第2の外部電極と、を有する積層セラミックコンデンサにおいて、積層体は、誘電体層と内部電極層が交互に積層されてなる内層部と、内層部を第1の主面側および第2の主面側から挟み込むように配置された第1の主面側外層部および第2の主面側外層部と、内層部を第1の側面側および第2の側面側から挟み込むように配置された第1の側面側外層部および第2の側面側外層部と、を有し、第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向の端部の色味を再現するRGB値と第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向の端部の色味を再現するRGB値との差が45以上100以下であり、誘電体層は、セラミック材料を含み、積層体の積層方向および幅方向がなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiのうちの少なくともいずれか1つからなり、偏析相の配置された領域は、積層体のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、3%以下である、積層セラミックコンデンサである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、主面と側面との判別を容易にするとともに、高温信頼性を向上させることが可能な積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【0008】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサを示す外観斜視図である。
図2図1の線II-IIにおける断面図である。
図3図1の線III-IIIにおける断面図である。
図4】この発明の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.積層セラミックコンデンサ
この発明の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサの一例について説明する。
【0011】
図1は、この発明の第1の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサの一例である積層セラミックコンデンサを示す外観斜視図である。図2は、図1の線II-IIにおける断面図である。図3は、図1の線III-IIIにおける断面図である。
【0012】
積層セラミックコンデンサ10は、たとえば図1ないし図3に示すように、たとえば直方体状の積層体12を備える。積層体12は、積層された複数の誘電体層14と複数の内部電極層16とを有する。さらに、積層体12は、積層方向xに相対する第1の主面12aおよび第2の主面12bと、積層方向xに直交する幅方向yに相対する第1の側面12cおよび第2の側面12dと、積層方向xおよび幅方向yに直交する長さ方向zに相対する第1の端面12eおよび第2の端面12fとを有する。この積層体12には、角部および稜線部に丸みがつけられていることが好ましい。角部とは、積層体12の隣接する3面が交わる部分のことであり、稜線部とは、積層体12の隣接する2面が交わる部分のことである。
【0013】
なお、第1の主面12aおよび第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12d、第1の端面12eおよび第2の端面12fの一部または全部に凹凸などが形成されていてもよい。
【0014】
積層体12は、単数もしくは複数枚の誘電体層14とそれらの上に配置される複数枚の内部電極層16から構成される内層部18を有する。内部電極層16は、第1の端面12eに引き出される第1の内部電極層16aと第2の端面12fに引き出される第2の内部電極層16bを有し、内層部18では、複数枚の第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bが誘電体層14を介して対向している。
【0015】
積層体12は、第1の主面12a側に位置し、第1の主面12aと第1の主面12a側の内層部18の最表面とその最表面の一直線上との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第1の主面側外層部20aを有する。
【0016】
同様に、積層体12は、第2の主面12b側に位置し、第2の主面12bと第2の主面12b側の内層部18の最表面とその最表面の一直線上との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第2の主面側外層部20bを有する。
【0017】
積層体12は、第1の側面12c側に位置し、第1の側面12cと第1の側面12c側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第1の側面側外層部22aを有する。
【0018】
同様に、積層体12は、第2の側面12d側に位置し、第2の側面12dと第2の側面12d側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第2の側面側外層部22bを有する。
【0019】
積層体12は、第1の端面12e側に位置し、第1の端面12eと第1の端面12e側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第1の端面側外層部24aを有する。
【0020】
同様に、積層体12は、第2の端面12f側に位置し、第2の端面12fと第2の端面12f側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第2の端面側外層部24bを有する。
【0021】
第1の主面側外層部20aは、積層体12の第1の主面12a側に位置し、第1の主面12aと第1の主面12aに最も近い内部電極層16との間に位置する複数枚の誘電体層14の集合体である。
【0022】
第2の主面側外層部20bは、積層体12の第2の主面12b側に位置し、第2の主面12bと第2の主面12bに最も近い内部電極層16との間に位置する複数枚の誘電体層14の集合体である。
【0023】
積層体12の誘電体層14の誘電体材料としては、Zrを含み、Caを含むペロブスカイト型構造を有する化合物である。このような積層体12の誘電体層14の誘電体材料としては、たとえば、SrBaZrO3が挙げられる。
【0024】
また、特に、積層体12の第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bを構成する誘電体層14の誘電体材料は、Zrを含み、Caを含むペロブスカイト型構造を有する化合物であるとともに、さらに後述する偏析相のために、CaおよびSiのうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
積層体12は、たとえば図4に示すように、第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部の色味(図中白抜き)を再現するRGB値と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの少なくとも両側面側12c,12dを含む端部の色味を再現するRGB値との差が45以上100以下である。
【0026】
更に、積層体12は、その積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには偏析相が配置される。偏析相にはCa、Siの少なくとも1つが含まれる。また、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの全面積に対して、3%以下である。
【0027】
第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差が45未満の場合は、色味差が小さくなることで、外観選別の判別性の低下や実装性の低下が起こる。また、このRGB値の差が100より大きい場合は、焼成時における第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部と第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの端部における収縮差が大きくなり、構造欠陥が大きくなってしまう。
【0028】
また、偏析相の配置された領域が、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの全面積に対して、3%よりも大きくなると、高温信頼性を高める効果が低下してしまう。
【0029】
第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部と第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの端部とのRGB値の差(色味差)の測定には、たとえば、顕微鏡(KeyenceVHX-5000)を用いた。顕微鏡で観察した撮像画像(第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部と第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22b)を、画像解析ソフトを使って解析して、RGB値を測定する。
【0030】
偏析相の測定には、たとえば、波長分散型蛍光X線分光装置を用いる。当該装置においては、X線を照射した試料から放出させた蛍光X線を、分光素子で分光させた後、検出器にて検出する。蛍光X線の波長をλ、分光素子の面間隔をd、分光素子を介した蛍光X線の分光角を2θとすると、2dsinθ=nλ(n:正の整数)の関係が成り立つ(ブラッグの条件)。
【0031】
蛍光X線の波長λは試料の元素に対応して固有の値を持つため、分光素子の面間隔dが既知であれば、蛍光X線の分光角2θも元素毎に決まった値として求められる。
【0032】
したがって、分光素子および検出器の間に分光角2θに基づく関係を保持したまま走査を行うと、検出器で検出される蛍光X線は、試料中の元素に固有の分光角2θにて強度のピークが現れるので、試料中の元素の種類が同定できる。一方、試料中の元素の種類が既知である場合、当該既知の元素固有の波長に対応した分光角2θにおける蛍光X線の強度を測定することで、当該試料中の元素の含有量を測定できる。このようにして、偏析相における元素を同定、定量する。
【0033】
積層体12は、複数の内部電極層16として、たとえば略矩形状の複数の第1の内部電極層16aおよび複数の第2の内部電極層16bを有する。複数の第1の内部電極層16aおよび複数の第2の内部電極層16bは、積層体12の積層方向xに沿って誘電体層14を挟んで等間隔に交互に配置されるように埋設されている。
【0034】
第1の内部電極層16aは、複数の誘電体層14上に配置され、積層体12の内部に位置している。第1の内部電極層16aは、第2の内部電極層16bと対向する第1の対向電極部26aと、第1の内部電極層16aの一端側に位置し、第1の対向電極部26aから積層体12の第1の端面12eまでの第1の引出電極部28aとを有する。第1の引出電極部28aは、その端部が第1の端面12eの表面に引き出され、積層体12から露出している。
【0035】
第1の内部電極層16aの第1の対向電極部26aの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0036】
第1の内部電極層16aの第1の引出電極部28aの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0037】
第1の内部電極層16aの第1の対向電極部26aの幅と、第1の内部電極層16aの第1の引出電極部28aの幅は、同じ幅で形成されていてもよく、どちらか一方の幅が狭く形成されていてもよい。
【0038】
第2の内部電極層16bは、複数の誘電体層14上に配置され、積層体12の内部に位置している。第2の内部電極層16bは、第1の内部電極層16aと対向する第2の対向電極部26bと、第2の内部電極層16bの一端側に位置し、第2の対向電極部26bから積層体12の第2の端面12fまでの第2の引出電極部28bを有する。第2の引出電極部28bは、その端部が第2の端面12fの表面に引き出され、積層体12から露出している。
【0039】
第2の内部電極層16bの第2の対向電極部26bの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0040】
第2の内部電極層16bの第2の引出電極部28bの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0041】
第2の内部電極層16bの第2の対向電極部26bの幅と、第2の内部電極層16bの第2の引出電極部28bの幅は、同じ幅で形成されていてもよく、どちらか一方の幅が狭く形成されていてもよい。
【0042】
第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bは、たとえば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、Ag-Pd合金等の、それらの金属の少なくとも一種を含む合金などの適宜の導電材料により構成することができる。
【0043】
積層体12の第1の端面12e側および第2の端面12f側には、図1ないし図3に示されるように、外部電極30が配置される。
【0044】
外部電極30は、第1の外部電極30aおよび第2の外部電極30bを有する。
【0045】
第1の外部電極30aは、第1の内部電極層16aに接続され、少なくとも第1の端面12eの表面に配置されている。
【0046】
また、第1の外部電極30aは、積層体12の第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部にも配置されていてもよい。本実施の形態では、第1の外部電極30aは、第1の端面12e上から第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部にまで延びて形成されている。この場合、第1の外部電極30aは、第1の内部電極層16aの第1の引出電極部28aと電気的に接続される。
【0047】
第2の外部電極30bは、第2の内部電極層16bに接続され、少なくとも第2の端面12fの表面に配置されている。
【0048】
また、第2の外部電極30bは、積層体12の第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部にも配置されていてもよい。本実施の形態では、第2の外部電極30bは、第1の端面12e上から第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部にまで延びて形成されている。この場合、第2の外部電極30bは、第2の内部電極層16bの第2の引出電極部28bと電気的に接続される。
【0049】
積層体12内においては、第1の内部電極層16aの第1の対向電極部26aと第2の内部電極層16bの第2の対向電極部26bとが誘電体層14を介して対向することにより、静電容量が形成されている。そのため、第1の内部電極層16aが接続された第1の外部電極30aと第2の内部電極層16bが接続された第2の外部電極30bとの間に、静電容量を得ることができ、コンデンサの特性が発現する。
【0050】
外部電極30は、第1の端面12eおよび第2の端面12f上に配置される下地電極層32と、下地電極層32の表面に配置されるめっき層34とを有することが好ましい。
【0051】
下地電極層32は、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bを有する。
【0052】
第1の下地電極層32aは、第1の内部電極層16aに接続され、第1の端面12eの表面に配置されている。また、第1の下地電極層32aは、第1の端面12eから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部にも配置される。この場合、第1の下地電極層32aは、第1の内部電極層16aの第1の引出電極部28aと電気的に接続される。
【0053】
第2の下地電極層32bは、第2の内部電極層16bに接続され、第2の端面12fの表面に配置されている。また、第2の下地電極層32bは、第2の端面12fから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部にも配置される。この場合、第2の下地電極層32bは、第2の内部電極層16bの第2の引出電極部28bと電気的に接続される。
【0054】
下地電極層32は、焼付け層、導電性樹脂層および薄膜層等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0055】
以下、下地電極層32を上記の焼付け層、導電性樹脂層および薄膜層とした場合の各構成について説明する。
【0056】
(焼付け層の場合)
焼付け層は、ガラスと金属とを含む。焼付け層のガラスとしては、B、Si、Ba、Sr、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、K、Na、L等から選ばれる少なくとも1つを含む。焼付け層の金属成分としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0057】
焼付け層は、複数層であってもよい。
【0058】
焼付け層は、ガラスおよび金属を含む導電性ペーストを積層体12に塗布して焼付けたものであり、内部電極層16と同時焼成したものでもよく、内部電極層16を焼成した後に焼付けてもよい。
【0059】
焼付け層の厚みは、10μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0060】
また、第1の主面12aおよび第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12d上に下地電極層32を設ける場合には、第1の主面12aおよび第2の主面12b、ならびに第1の側面12cおよび第2の側面12d上に位置する第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bである長さ方向zの中央部における第1の焼付け層および第2の焼付け層の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下程度であることが好ましい。
【0061】
(導電性樹脂層の場合)
導電性樹脂層は、第1の導電性樹脂層と第2の導電性樹脂層とを有する。
【0062】
第1の導電性樹脂層は、第1の下地電極層32aを覆うように配置されており、第2の導電性樹脂層は、第2の下地電極層32bを覆うように配置されている。具体的には、第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層は、第1の端面12eおよび第2の端面12f上に位置する第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32b上に配置され、第1の主面12aおよび第2の主面12b、並びに第1の側面12cおよび第2の側面12d上に位置する第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32b上にも至るように設けられていることが好ましい。もっとも、第1の導電性樹脂層と第2の導電性樹脂層は、第1の端面12e上に位置する第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32b上にのみに配されていてもよい。
【0063】
第1の導電性樹脂層と第2の導電性樹脂層の厚みは、例えば、10μm以上200μm以下程度であることが好ましい。
【0064】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層は、熱硬化性樹脂と、金属成分と、を含む。
【0065】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層は、熱硬化性樹脂を含むため、例えば、めっき膜や導電性ペーストの焼成物からなる下地電極層32よりも柔軟性に富んでいる。このため、積層セラミックコンデンサ10に物理的な衝撃や熱サイクルに起因する衝撃が加わった場合であっても、導電性樹脂層が緩衝層として機能し、積層セラミックコンデンサ10へのクラックを防止することができる。
【0066】
熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの公知の種々の熱硬化性樹脂を使用することができる。その中でも、耐熱性、耐湿性、密着性などに優れたエポキシ樹脂は最も適切な樹脂の一つである。
【0067】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層には、熱硬化性樹脂とともに、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、ベース樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂の硬化剤としては、フェノール系、アミン系、酸無水物系、イミダゾール系など公知の種々の化合物を使用することができる。
【0068】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層に含まれる金属成分としては、Ag、Cu、またはそれらの合金を使用することができる。また、金属粉の表面にAgコーティングされたものを使用することができる。金属粉の表面にAgコーティングされたものを使用する際には金属粉としてCuやNiを用いることが好ましい。
【0069】
またCuに酸化防止処理を施したものを使用することもできる。Agコーティングされた金属を用いる理由としては、上記のAgの特性は保ちつつ、母材の金属を安価なものにすることが可能になるためである。
【0070】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層に含まれる金属は、導電性樹脂全体の体積に対して、35vol%以上75vol%以下で含まれていることが好ましい。
【0071】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層に含まれる金属の形状は、特に限定されない。導電性フィラーは、球状、扁平状等であってもよい。
【0072】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層に含まれる金属の平均粒径は、特に限定されない。導電性フィラーの平均粒径は、例えば、0.3μm以上10μm以下程度であってもよい。
【0073】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層に含まれる金属は、主に導電性樹脂層の通電性を担う。具体的には、導電性フィラーどうしが接触することにより、導電性樹脂層内部に通電経路が形成される。
【0074】
第1の導電性樹脂層および第2の導電性樹脂層に含まれる金属は、球形状、扁平状などのものを用いることができるが、球形状金属粉と扁平状金属粉とを混合して用いるのが好ましい。
導電性樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂を含む樹脂層を含んでもよい。樹脂層を形成する場合は、焼付け層を形成せずに積層体12上に直接形成してもよい。
【0075】
(めっき層の場合)
めっき層34は、第1のめっき層34aと第2のめっき層34bとを有する。
【0076】
めっき層34は、導電性樹脂層を覆うように形成されている。具体的には、第1のめっき層34aと第2のめっき層34bは、導電性樹脂層上の第1の端面12eおよび第2の端面12fに配され、導電性樹脂層上の第1の主面12aおよび第2の主面12b、並びに第1の側面12cおよび第2の側面12dにも至るように設けられていることが好ましい。もっとも、第1のめっき層34aと第2のめっき層34bは、導電性樹脂層上の第1の端面12eおよび第2の端面12fの上のみに配されていてもよい。
【0077】
めっき層34としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0078】
めっき層34は複数層により形成されていてもよい。好ましくは、Niめっき、Snめっきの2層構造であることが好ましい。導電性樹脂層を覆うようにNiめっきからなるめっき層を設けることにより、積層セラミックコンデンサ10を実装する際に、実装に用いられるはんだによって下地電極層や導電性樹脂層が侵食されることを防止することができる。また、Niめっき層からなるめっき層の上に、さらにSnめっき層からなるめっき層を設けることにより、積層セラミックコンデンサ10を実装する際に、実装に用いられるはんだの濡れ性を向上させ、容易に実装することができる。
【0079】
Niめっき層の厚みは、1μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0080】
Snめっき層の厚みは、1μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0081】
積層セラミックコンデンサ10の長さ方向zの寸法をL寸法とし、積層セラミックコンデンサ10の積層方向xの寸法をT寸法とし、積層セラミックコンデンサ10の幅方向yの寸法をW寸法とする。
積層セラミックコンデンサ10の寸法は、長さ方向zのL寸法が0.2mm以上3.6mm以下、幅方向yのW寸法が0.1mm以上2.6mm以下、積層方向xのT寸法が0.1mm以上2.6mm以下である。
また、積層セラミックコンデンサ10の寸法は、マイクロスコープにより測定することができる。
【0082】
図1に示す積層セラミックコンデンサ10は、積層体12の第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差が45以上100以下であり、積層体12の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiのうちの少なくとも1つからなり、偏析相の配置された領域は、積層体のWT断面の内の、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの全面積に対して、3%以下なので、主面と側面との判別を容易にして、積層セラミックコンデンサの向きの判別が可能となり、外観選別や実装での方向指定が可能になり、外観選別や実装をより効率的に実施することが可能になるとともに、高温信頼性に悪影響を与えるCa、Siの量がコントロールされて、高温信頼性を向上できる。
【0083】
2.積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、この積層セラミックコンデンサの製造方法の一例について、説明する。
【0084】
まず、誘電体シートおよび内部電極用の導電性ペーストが準備される。誘電体シートや内部電極用の導電性ペーストには、バインダおよび溶剤が含まれる。バインダおよび溶剤は公知のものを用いることができる。
【0085】
誘電体シートの準備には、溶剤中にバインダ、誘電体材料を分散させたセラミックスラリーを調合分散機にて調合し、セラミックスラリーをシートに塗布し乾燥することにより、誘電体シートを得る。
【0086】
そして、誘電体シート上に、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などにより所定のパターンで内部電極用の導電性ペーストで印刷される。これにより、第1の内部電極層のパターンが形成された誘電体シートおよび第2の内部電極層のパターンが形成された誘電体シートが準備される。
【0087】
続いて、内部電極層のパターンが印刷されていない外層用の誘電体シートが所定枚数積層されることにより、第2の主面側の第2の主面側外層部20bとなる部分が形成される。そして、第2の主面側外層部20bとなる部分の上に、第1の内部電極層のパターンが印刷された誘電体シートおよび第2の内部電極層のパターンが印刷された誘電体シートが順次積層されることにより、内層部18となる部分が形成される。さらに内層部18となる部分の上に内部電極層のパターンが印刷されていない誘電体シートを所定枚数積層されることにより、第1の主面側の第1の主面側外層部20aとなる部分が形成される。これにより、積層シートが作製される。
【0088】
なお、第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bと第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bとで誘電体層14に色味差を付けるために、それぞれの部分に対応する誘電体シート、および後述する積層チップに関し、(a)表面積、(b)焼成温度、(c)セラミック調合時の樹脂量、の全部又は一部をコントロールする。
また、積層体12において、その積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには偏析相を配置し、偏析相はCa及びSiのうちの少なくとも1つからなり、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの全面積に対して、3%以下である、構成とするために、積層チップの焼成温度、セラミックスラリー調合用の調合分散機のローターの回転数、調合分散の時間、およびセラミックスラリー中のバインダの量を制御する。
【0089】
次に、積層シートが静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされることにより、積層ブロックが作製される。
【0090】
そして、積層ブロックが所定のサイズにカットされることにより、積層チップが切り出される。このとき、バレル研磨などにより、積層チップの角部および稜線部に丸みをつけてもよい。
【0091】
次に、積層チップを焼成し積層体を作製する。焼成温度は、積層体12や内部電極層16の材料にもよるが、900℃以上1400℃以下であることが好ましい。
【0092】
続いて金属成分とガラス成分を含む第1の下地電極層用の導電性ペーストと金属成分とガラス成分を含む第2の下地電極層用の導電性ペーストを準備する。
そして、積層体12の両端面に第1の下地電極層および第2の下地電極層となる導電性ペーストを塗布し、焼付け層としての第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bを形成する。たとえば、ディッピングやスクリーン印刷などの方法により、積層体12の両端面である第1の端面12eおよび第2の端面12fに導電性ペーストを塗布し、その後、焼付け処理を行い、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bを形成する。この時の焼付け処理の温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。
【0093】
(導電性樹脂層の場合)
なお、下地電極層32を導電性樹脂層で形成する場合は、以下の方法によることができる。なお、導電性樹脂層は、焼付け層の表面に形成されてもよく、焼付け層を形成せずに導電性樹脂層を単体で積層体12上に直接形成してもよい。
【0094】
導電性樹脂層は、熱硬化性樹脂および金属成分を含む導電性樹脂ペーストを焼付け層上もしくは積層体12上に塗布し、250℃以上550℃以下の温度で熱処理を行い、樹脂を熱硬化させることにより、形成する。この時の熱処理時の雰囲気は、N2雰囲気であることが好ましい。また、樹脂の飛散を防ぎ、かつ、各種金属成分の酸化を防ぐため、酸素濃度は100ppm以下に抑えることが好ましい。
【0095】
(薄膜層の場合)
また、下地電極層32を薄膜層で形成する場合は、スパッタ法または蒸着法等の薄膜形成法により下地電極層を形成することができる。薄膜層で形成された下地電極層32は金属粒子が堆積された1μm以下の層とする。
【0096】
(めっき層の場合)
さらに、下地電極層32を設けずに積層体12の内部電極層16の露出部にめっき層を設けてもよい。その場合は、以下の方法で形成することができる。
【0097】
積層体12の第1の端面12e及び第2の端面12fにめっき処理を施し、内部電極層16の露出部上に下地めっき膜を形成する。めっき処理を行うにあたっては、電解めっき、無電解めっきのどちらを採用してもよいが、無電解めっきはめっき析出速度を向上させるために、触媒などによる前処理が必要となり、工程が複雑化するというデメリットがある。したがって、通常は、電解めっきを採用することが好ましい。めっき工法としては、バレルめっきを用いることが好ましい。また、必要に応じて、下層めっき電極の表面に形成される上層めっき電極を同様に形成してもよい。
【0098】
次に、必要に応じて、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bの表面にめっきを施し、めっき層34を形成する。本実施の形態では、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bにめっき層34を2層形成した。具体的には、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bにNiめっき層およびSnめっき層のめっき層34を形成した。Niめっき層およびSnめっき層は、たとえばバレルめっき法により、順次形成される。
【0099】
以上のようにして、この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサ10が得られる。
【0100】
3.実験例
上述した実施の形態にかかる製造方法にしたがって、試料である積層セラミックコンデンサを作製し、チップ向き方向判別試験と高温信頼性試験を行った。
【0101】
(a)実施例及び比較例の各試料の仕様
・積層セラミックコンデンサの寸法:L×W×T=2.0mm×1.2mm×0.6mm
・セラミック材料:SrBaZrO3
・容量:20nF
・定格電圧:100V
・内部電極層の材料:Ni
・外部電極の構造
下地電極層:導電性金属(Cu)とガラス成分を有する
第1の端面および第2の端面に位置する中央部の膜厚:約130μm
めっき層:
Niめっき層とSnめっき層の2層で形成
Niめっき層の厚み:約2.5μm
Snめっき層の厚み:約4μm
【0102】
実施例における積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差の値は、45以上100以下の範囲内で設定した。
また、実施例における積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含む。偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、3%以下とした。
【0103】
比較例1及び比較例2における積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差の値は、45以上100以下の範囲外となるように設定し、比較例1では10、比較例4では150とした。なお、比較例2及び比較例3では、積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差の値は、いずれも70とした。
また、比較例における積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含む。偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して3%以上の範囲に設定した。
【0104】
(b)試験方法
(チップ向き方向判別試験)
顕微鏡で観察した撮像画像(第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの幅方向yの端部と第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの端部)を、画像解析ソフトを使って解析して、RGB値を測定した。また、試料の向きを、光学顕微鏡を介した簡易的な画像解析により判別した。
【0105】
そして、画像解析により正しく判別された試料を「○」と判定し、誤って判別された試料か、あるいは、構造欠陥が生じた試料を「×」と判定した。なお、実施例および比較例の試料それぞれ2000個ずつ行った。
【0106】
(高温信頼性試験)
高温信頼性試験は、HALT試験法に基づいた各サンプルの高温負荷試験により実施した。より詳細には、各サンプルを単体で専用治具にセッティングし、これを温度が150℃の恒温槽内に投入するとともに、200Vの直流電圧を一対の外部電極30間に印加した状態とし、当該状態を3000時間にわたって維持した。
【0107】
そして、試験中に故障しなかったものを「○」と判定し、試験中に1~5個故障したものを「△」とし、試験中に6個以上故障したものを「×」と判定した。なお、実施例および比較例の試料それぞれ36個ずつ行った。
【0108】
(c)結果
表1は、実施例1ないし実施例6、ならびに比較例1ないし比較例4の各試料に対する色味(RGB値)の測定結果、およびWT断面における偏析相の割合に基づく、チップ向き判別性、および高温信頼性の試験結果を示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1によれば、実施例1ないし実施例6の試料では、積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差を45以上100以下であることから、チップ向きの判別が良好であった。また、実施例1ないし実施例6の試料では、積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含み、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、3%以下であるので、高温信頼性の試験結果も良好な結果が得られた。
【0111】
一方、比較例1の試料では、積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差が10であるので、チップ向きの判別ができなかった。また、比較例1の試料では、積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含み、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、10%であるので、高温信頼性を高める効果が低下し、試験結果が不良と判定された。
【0112】
また、比較例2の試料では、積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差が70であるので、チップ向きの判別は良好であるものの、積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含み、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、10%であるので、高温信頼性を高める効果が低下し、試験結果が不良と判定された。
【0113】
さらに、比較例3の試料では、積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差が70であるので、チップ向きの判別は良好であるものの、積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含み、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、20%であるので、高温信頼性を高める効果が低下し、試験結果が不良と判定された。
【0114】
さらにまた、比較例4の試料では、積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差が150であるので、焼成時における第1及び第2の主面側外層部の幅方向の端部と第1及び第2の側面側外層部の幅方向の端部における収縮差が生じ、その結果構造欠陥が生じた。また、比較例4の試料では、積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含み、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、10%であるので、高温信頼性を高める効果が低下し、試験結果が不良と判定された。
【0115】
以上の結果から、積層体の第1の主面側外層部および第2の主面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値と、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの端部の色味を再現するRGB値との差を45以上100以下にすることで、主面と側面との判別を容易にして、積層セラミックコンデンサの向きの判別が可能となり、外観選別や実装での方向指定が可能になり、外観選別や実装をより効率的に実施することが可能になった。また、積層体の積層方向xおよび幅方向yがなすWT断面における、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には偏析相が配置され、偏析相はCa及びSiを含み、偏析相の配置された領域は、積層体12のWT断面の内の、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の全面積に対して、3%以下にするように、高温信頼性に悪影響を与えるCa、Siの量をコントロールすることで、高温信頼性を向上できる効果が得られた。
【0116】
なお、以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0117】
すなわち、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0118】
10 積層セラミックコンデンサ
12 積層体
12a 第1の主面
12b 第2の主面
12c 第1の側面
12d 第2の側面
12e 第1の端面
12f 第2の端面
14 誘電体層
16 内部電極層
16a 第1の内部電極層
16b 第2の内部電極層
18 内層部
20a 第1の主面側外層部
20b 第2の主面側外層部
22a 第1の側面側外層部
22b 第2の側面側外層部
24a 第1の端面側外層部
24b 第2の端面側外層部
26a 第1の対向電極部
26b 第2の対向電極部
28a 第1の引出電極部
28b 第2の引出電極部
30 外部電極
30a 第1の外部電極
30b 第2の外部電極
32 下地電極層
32a 第1の下地電極層
32b 第2の下地電極層
34 めっき層
34a 第1のめっき層
34b 第2のめっき層
図1
図2
図3
図4