(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101175
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】泥土圧シールド掘削機及びそのチャンバー内土質性状観測方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
E21D9/093 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004972
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 真
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太
(72)【発明者】
【氏名】上岡 隼人
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054BA03
2D054CA01
2D054DA03
2D054FA01
2D054GA10
2D054GA17
2D054GA52
2D054GA63
(57)【要約】
【課題】簡便にチャンバー内の泥土の塑性流動性を把握することができる泥土圧シールド掘削機及びそのチャンバー内観測方法の提供。
【解決手段】泥土圧シールド掘削機1は、隔壁5のチャンバー固定盤側表面に配置された第一の土圧計14と、隔壁から突出した突出部材13のチャンバー半径方向周面に配置された第二の土圧計15と、第一の土圧計及び第二の土圧計によって計測された土圧R1,R2の土圧比Rに基づいてチャンバー6内の泥土の塑性流動性を判定する塑性流動性判定手段16とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に掘削土を取り込み、該掘削土に塑性流動性を持たせた泥土を通して切羽にジャッキの推進圧を作用させつつ掘進する泥土圧シールド掘削機において、
前記隔壁のチャンバー固定盤側表面に配置された第一の土圧計と、前記隔壁の前記第一の土圧計近傍から前記チャンバー内に向けて突出した突出部材のチャンバー半径方向周面に配置された第二の土圧計と、前記第一の土圧計によって計測された土圧と前記第二の土圧計によって計測された土圧との土圧比に基づいて前記チャンバー内の泥土の塑性流動性を判定する塑性流動性判定手段とを備えていることを特徴とする泥土圧シールド掘削機。
【請求項2】
前記第一の土圧計及び前記第二の土圧計からなる土圧計測部を前記チャンバー内の複数個所に設置する請求項1に記載の泥土圧シールド掘削機。
【請求項3】
前記突出部材が前記チャンバー内の泥土攪拌用の固定翼である請求項1又は2に記載の泥土圧シールド掘削機。
【請求項4】
前記第一の土圧計及び前記第二の土圧計の近傍にそれぞれ間隙水圧計を備えている請求項1又は2に記載の泥土圧シールド掘削機。
【請求項5】
前記チャンバー内の泥土に弾性波を発信する振動体と、該振動体から発信された弾性波の速度を計測する計測手段とを備えている請求項1又は2に記載の泥土圧シールド掘削機。
【請求項6】
前記隔壁から前記チャンバー内の泥土に向けて貫入される貫入部材と、該貫入部材を前記泥土に貫入した際の貫入抵抗を計測する抵抗計測手段とを備えている請求項1又は2に記載の泥土圧シールド掘削機。
【請求項7】
カッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に掘削土を取り込み、該掘削土に塑性流動性を持たせた泥土を通して切羽にジャッキの推進圧を作用させつつ掘進するシールド掘削機の前記チャンバー内の性状を観測する泥土圧シールド掘削機のチャンバー内土質性状観測方法において、
前記隔壁のチャンバー固定盤側表面に配置された第一の土圧計と、前記隔壁の前記第一の土圧計近傍からチャンバー内に向けて突出した突出部材のチャンバー半径方向周面に配置された第二の土圧計とを使用し、
前記第一の土圧計によって計測された土圧と前記第二の土圧計によって計測された土圧との土圧比を算出し、該土圧比に基づいて前記チャンバー内の泥土の塑性流動性を判定することを特徴とする泥土圧シールド掘削機のチャンバー内土質性状観測方法。
【請求項8】
前記第一及び第二の土圧計からなる土圧計測部を前記チャンバー内の複数個所に設置し、前記土圧計測部の位置毎にチャンバー内の塑性流動性を判定する請求項7に記載の泥土圧シールド掘削機のチャンバー内土質性状観測方法。
【請求項9】
前記第一の土圧計及び前記第二の土圧計の近傍にそれぞれ間隙水圧計を備え、前記第一及び第二の土圧計で計測された土圧から前記間隙水圧計で計測された間隙水圧を差し引いた有効土圧によって前記土圧を算出する請求項7又は8に記載の泥土圧シールド掘削機のチャンバー内土質性状観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルを建設する際に使用される泥土圧シールド掘削機及びそのチャンバー内土質性状観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの建設においては、幅広い地質に適用でき、大断面及び高土水圧下でも対応可能なことから土圧式シールド工法の一つに分類される泥土圧シールド工法が広く用いられている。
【0003】
泥土圧シールド工法は、カッターヘッドにて掘削した掘削土をカッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に取り込み、チャンバー内に取り込まれた掘削土を攪拌しつつ、掘削土に添加材を注入する等して塑性流動性を持たせ、塑性流動性を有する掘削土を通してシールドの推進力を切羽に作用させつつ掘削することによって、切羽地山の応力解放による崩壊を抑えるととともに、余剰分の掘削土をチャンバー内からスクリュー式排土装置を用いて円滑に排土できるようにしている。
【0004】
この泥土圧シールド工法では、チャンバー内の泥土を介してジャッキの推進圧を切羽に均等に作用させるためにチャンバー内の泥土の性状(塑性流動性)が均一化されていることが望ましく、施工に際してチャンバー内の泥土の性状を把握する必要がある。
【0005】
しかしながら、チャンバー内は、隔壁によって隔てられた領域となっており、泥土の塑性流動性を目視や直接的に確認することができないため、チャンバー内の泥土の塑性流動性を確認するための効果的な観測方法が求められている。
【0006】
そこで、従来では、隔壁のチャンバー固定盤側に土圧計を設け、土圧計によって計測された土圧によりチャンバー内の性状を把握する方法(例えば、特許文献1を参照)や、回転翼に土圧計やセンサを設けてチャンバー内の性状を把握する方法(例えば、特許文献2を参照)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-025480号公報
【特許文献2】特開2017-106263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の如き従来の技術では、個々の土圧計の計測データから単独でチャンバー内の泥土の塑性流動性を評価することが困難であり、面内の全データに対して統計的分析を行い、総合的に評価しなければならず、評価方法が煩雑であるという問題があった。
【0009】
また、上述の特許文献2の如き従来の技術では、攪拌翼の回転に伴う泥土の移動の影響が大きく、正確な塑性流動性を評価することが困難であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、簡便にチャンバー内の泥土の塑性流動性を把握することができる泥土圧シールド掘削機及びそのチャンバー内観測方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、カッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に掘削土を取り込み、該掘削土に塑性流動性を持たせた泥土を通して切羽にジャッキの推進圧を作用させつつ掘進する泥土圧シールド掘削機において、前記隔壁のチャンバー固定盤側表面に配置された第一の土圧計と、前記隔壁の前記第一の土圧計近傍から前記チャンバー内に向けて突出した突出部材のチャンバー半径方向周面に配置された第二の土圧計と、前記第一の土圧計によって計測された土圧と前記第二の土圧計によって計測された土圧との土圧比に基づいて前記チャンバー内の泥土の塑性流動性を判定する塑性流動性判定手段とを備えていることにある。
【0012】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記第一の土圧計及び前記第二の土圧計からなる土圧計測部を前記チャンバー内の複数個所に設置することにある。
【0013】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記突出部材が前記チャンバー内の泥土攪拌用の固定翼であることにある。
【0014】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記第一の土圧計及び前記第二の土圧計の近傍にそれぞれ間隙水圧計を備えていることにある。
【0015】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記チャンバー内の泥土に弾性波を発信する振動体と、該振動体から発信された弾性波の速度を計測する計測手段とを備えていることにある。
【0016】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記隔壁から前記チャンバー内の泥土に向けて貫入される貫入部材と、該貫入部材を前記泥土に貫入した際の貫入抵抗を計測する抵抗計測手段とを備えていることにある。
【0017】
請求項7に記載の発明の特徴は、カッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に掘削土を取り込み、該掘削土に塑性流動性を持たせた泥土を通して切羽にジャッキの推進圧を作用させつつ掘進するシールド掘削機の前記チャンバー内の性状を観測する泥土圧シールド掘削機のチャンバー内土質性状観測方法において、前記隔壁のチャンバー固定盤側表面に配置された第一の土圧計と、前記隔壁の前記第一の土圧計近傍からチャンバー内に向けて突出した突出部材のチャンバー半径方向周面に配置された第二の土圧計とを使用し、前記第一の土圧計によって計測された土圧と前記第二の土圧計によって計測された土圧との土圧比を算出し、該土圧比に基づいて前記チャンバー内の泥土の塑性流動性を判定することにある。
【0018】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項7の構成に加え、前記第一及び第二の土圧計からなる土圧計測部を前記チャンバー内の複数個所に設置し、前記土圧計測部の位置毎にチャンバー内の塑性流動性を判定することにある。
【0019】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項7又は8の構成に加え、前記第一の土圧計及び前記第二の土圧計の近傍にそれぞれ間隙水圧計を備え、前記第一及び第二の土圧計で計測された土圧から前記間隙水圧計で計測された間隙水圧を差し引いた有効土圧によって前記土圧を算出することにある。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る泥土圧シールド掘削機は、請求項1に記載の構成を具備することによって、簡便にチャンバー内の泥土の塑性流動性を把握することができる。
【0021】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、チャンバー内における塑性流動性の分布状態を把握することができる。
【0022】
さらに、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、既存の部材を用いて、適切な位置に土圧計を設置することができる。
【0023】
また、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、土骨格に実質的に作用する有効応力を用いて高い精度での評価を行うことができる。また、流動化材として気泡を混合した場合、飽和度が空間的に不均一になりやすいことから、間隙水圧を用いて飽和度のばらつきを評価することもできる。
【0024】
さらに、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、第一及び第二の土圧計の土圧比による評価に加え、飽和度の定量評価、非排水せん断強さの定量評価を行え、複合的にチャンバー内の泥土の性状を把握することができる。
【0025】
また、本発明において、請求項6の構成を具備することによって、非排水せん断強さの定量評価を行うことができ、複合的にチャンバー内の泥土の性状を把握することができる。
【0026】
本発明に係る泥土圧シールド掘削機のチャンバー内土質性状観測方法は、請求項7に記載の構成を具備することによって、簡便にチャンバー内の泥土の塑性流動性を把握することができる。
【0027】
また、本発明において、請求項8の構成を具備することによって、チャンバー内における塑性流動性の分布状態を把握することができる。
【0028】
さらに、本発明において、請求項9の構成を具備することによって、土骨格に実質的に作用する有効応力を用いて高い精度での評価を行うことができる。また、流動化材として気泡を混合した場合、飽和度が空間的に不均一になりやすいことから、間隙水圧を用いて飽和度のばらつきを評価することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る泥土圧シールド掘削機の概略を示す断面図である。
【
図2】同上の土圧計測部の配置を示す断面図である。
【
図5】同上の他の実施態様を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係る泥土圧シールド掘削機及びそれのチャンバー内土質性状観測方法の実施態様を
図1~
図5に示した実施例に基づいて説明する。なお、図中符号1は泥土圧シールド掘削機、符号2は切羽である。
【0031】
泥土圧シールド掘削機1は、
図1に示すように、筒状のスキンプレート3と、スキンプレート3の前面部に配置されたカッターヘッド4と、カッターヘッド4の後方に配置された隔壁5と、カッターヘッド4と隔壁5との間に形成されたチャンバー6(圧力室)と、カッターヘッド4を回転させる駆動手段7と、シールドジャッキ8,8からなる推進手段とを備え、カッターヘッド4によって切羽2を掘削しつつ、後方に設置されたセグメント9,9…の端面をシールドジャッキ8,8で押して推進するようになっている。
【0032】
この泥土圧シールド掘削機1、カッターヘッド4によって掘削した掘削土10をチャンバー6内に取り込み、チャンバー6内に取り込まれた掘削土10に添加材等を加えて塑性流動性を持たせ、塑性流動性を有する掘削土10を通してシールドジャッキ8,8による推進力を切羽2に作用させつつ掘削するとともに、チャンバー6内に取り込まれた掘削土10をチャンバー6内からスクリュー式排土装置11によって排出するようになっている。
【0033】
また、カッターヘッド4の後方には、泥土攪拌用の回転翼12,12…が突設され、カッターヘッド4の回転に伴って回転翼12,12…がチャンバー6内を周回移動し、チャンバー6内に取り込まれた掘削土10を攪拌するようになっている。
【0034】
さらに、隔壁5のチャンバー6固定盤側には、複数の泥土攪拌用の固定翼13,13…が突設され、固定翼13,13…が抵抗となることによって、回転翼12,12…によって攪拌される掘削土10の攪拌効果が高められている。
【0035】
回転翼12,12…及び固定翼13,13…の位置は、特に限定されないが、回転に伴って移動する回転翼12,12…と固定翼13,13…とが互いに干渉しないように位置決めされている。
【0036】
また、固定翼13,13…は、チャンバー6内の複数個所にバランスよく分布して配置されることが望ましい。
【0037】
また、特に図示しないが、カッターヘッド4の回転軸部分の内部には、添加材供給用のパイプが配管されており、このパイプを通して供給された添加材がカッタービット付近に設置された各注入孔よりカッターヘッド4前面側の任意の位置にそれぞれ投入できるようになっている。
【0038】
この泥土圧シールド掘削機1は、隔壁5のチャンバー6固定盤側表面に配置された第一の土圧計14と、隔壁5の第一の土圧計14近傍からチャンバー6内に向けて突出した突出部材のチャンバー6半径方向周面に配置された第二の土圧計15とからなる土圧計測部がチャンバー6内の1か所或いは複数個所に設置され、チャンバー6内の泥土の性状を観測できるようになっている。
【0039】
また、この泥土圧シールド掘削機1は、第一の土圧計14によって計測された土圧R1と第二の土圧計15によって計測された土圧R2との土圧比Rに基づいてチャンバー6内の掘削土10の塑性流動性を判定する塑性流動性判定手段16を備え、チャンバー6内の泥土の塑性流動性を客観的に把握できるようになっている。
【0040】
第一の土圧計14は、
図3、
図4に示すように、固定翼13,13…の根本辺りに受圧面をチャンバー6の固定盤側面、即ち、チャンバー6内に向けた状態で固定され、攪拌に伴うチャンバー6内での泥土の移動方向に沿って、掘削土10(泥土)の移動方向と受圧面が相対しないように配置されている。
【0041】
第二の土圧計15は、
図3、
図4に示すように、突出部材である固定翼13,13…のチャンバー6半径方向に受圧面を向けて固定翼13,13…の外周面に固定され、攪拌に伴うチャンバー6内での掘削土(泥土)10の移動方向に沿って、泥土の移動方向と受圧面が相対しないように配置されている。
【0042】
尚、第一の土圧計14は、固定翼13,13…の第二の土圧計15が固定された側の付け根部分に位置する隔壁5の表面部に固定され、且つ、第一及び第二の土圧計14,15がそれぞれ攪拌に伴う泥土の移動方向と受圧面が相対しないように配置されているので、泥土移動の影響に差がないようになっている。
【0043】
第一及び第二の土圧計14,15には、例えば、受圧面のひずみを検出し、圧力に変換する抵抗線式ひずみゲージ圧力計、泥土に押圧された際の受圧面の変位を差動トランスにより電気信号として伝送する差動トランス式圧力計等を用いることができる。
【0044】
また、第一及び第二の土圧計14,15は、伝送用のコードが隔壁5を通して隔壁5後方側へ引き出され、コンピュータ機器等からなる塑性流動性判定手段16に接続されている。
【0045】
さらに、この泥土圧シールド掘削機1では、特に図示しないが、第一の土圧計14及び前記第二の土圧計15の近傍にそれぞれ間隙水圧計を備えるようにしてもよい。その場合、間隙水圧計では、伝送用のコードが隔壁5を通して隔壁5後方側へ引き出され、コンピュータ機器等からなる塑性流動性判定手段16に接続されている。
【0046】
各間隙水圧計は、それぞれ第一及び第二の土圧計14,15と隣接して配置され、第一及び第二の土圧計14,15と略同じ位置における間隙水圧を計測できるようにしている。
【0047】
塑性流動性判定手段16は、コンピュータ機器により構成され、第一及び第二の土圧計14,15から入力された計測データをもとに、土圧比R=R2/R1を算出し、土圧比Rによってその位置の塑性流動性を判定するようになっている。
【0048】
具体的には、土圧比が0.5≦R<0.7の範囲にある場合には泥土の骨格が保たれている状態(塑性状態)と判定し、0.7≦R<1.0の範囲にある場合には適度な流動性が保たれている状態であると判定する。
【0049】
尚、塑性流動性判定手段16は、間隙水圧計を備えている場合、第一及び第二の土圧計14,15で計測された「全土圧」より隣接された間隙水圧計で計測された間隙水圧を差し引いて「有効応力」を算出し、当該有効圧力を用いてR=R2´/R1´を算出する。
【0050】
このように構成された泥土圧シールド掘削機1を用いたチャンバー6内土質性状観測方法では、チャンバー6内の同じ位置において、第一の土圧計14によって主方向(掘進方向)の土圧を計測し、第二の土圧計15によって側方(シールド半径方向)を計測し、その互いに異なる方向の土圧比Rを算出することによって、簡便な構成で具体的な塑性流動性を判定することができる。
【0051】
また、この泥土圧シールド掘削機1を用いたチャンバー6内土質性状観測方法では、第一の土圧計14及び第二の土圧計15からなる土圧計測部をチャンバー6内の複数個所に設置することによって、チャンバー6内の各位置における塑性流動性の分布を客観的に把握することができる。
【0052】
具体的には、土圧計側部が設置された各個所の土圧比Rをそれぞれ算出し、0.7≦R<1.0の合格基準を満足する個所数が80%以上であればチャンバー6内で良好な流動状態が実現できていると判定し、80%未満であれば、合格基準を満足しない個所に対し、流動化剤を追加添加して土や礫の性質の改善を図る。
【0053】
さらに、この泥土圧シールド掘削機1を用いたチャンバー6内土質性状観測方法では、第一及び第二の土圧計14,15に加え、間隙水圧計を用いることによって、土骨格に実質的に作用する「有効応力」を用いて高い精度でチャンバー6内泥土の流動性を評価することができる。
【0054】
尚、本発明に係る泥土圧シールド掘削機1では、土圧比による塑性流動性の評価に加え、泥土の飽和度や非排水せん断強さによってチャンバー6内の土質性状を複合的に観測するようにしてもよい。
【0055】
泥土の飽和度や非排水せん断強さを算出するには、
図5に示すように、例えば、チャンバー6内の泥土に弾性波を発信する圧電素子等からなる振動体17と、振動体17から発信された弾性波の速度を計測する計測手段18とを備え、弾性波の速度に基づいて求める。
【0056】
振動体17は、例えば、固定翼13,13…の根本付近に第二の土圧計15と隣接して設けられ、計測手段18は、固定翼13,13…の先端部に設けられている。
【0057】
そして、計測手段18では、弾性波の速度を継続的に計測し、最初に測定された波(P波)と、P波が継続しつつある中で続いて測定される波(S波)の伝播速度が伝播媒体(泥土)の弾性率や剛性率によって決まることから、P波の速度により飽和度を定量的に評価でき、S波の速度により非排水せん断強さを定量的に評価することができるようになっている。
【0058】
また、この泥土圧シールド掘削機1では、隔壁5からチャンバー6内の泥土に向けて貫入される貫入部材と、貫入部材を泥土に貫入した際の貫入抵抗を計測する抵抗計測手段とを備え、貫入抵抗値から泥土の非排水せん断強さを定量的に評価するようにしてもよい。
【0059】
尚、上述の実施例では、第二の土圧計15を設ける突出部材として泥土攪拌用の固定翼13,13…を用いた場合について説明したが、突出部材は、その設置位置及び設置個数については上述の実施例に限定されず、固定翼13,13…とは別個に設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 泥土圧シールド掘削機
2 切羽
3 スキンプレート
4 カッターヘッド
5 隔壁
6 チャンバー
7 駆動手段
8 シールドジャッキ
9 セグメント
10 掘削土
11 スクリュー式排土装置
12 回転翼
13 固定翼
14 第一の土圧計
15 第二の土圧計
16 塑性流動性判定手段
17 振動体
18 計測手段