(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101185
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】廃棄物処理計画演算装置および廃棄物処理計画演算方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240722BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20240722BHJP
F22B 35/18 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G06Q50/10
F23G5/50 Q
F23G5/50 Z
F23G5/50 R
F22B35/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004988
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國政 瑛大
(72)【発明者】
【氏名】山根 雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 隼太
【テーマコード(参考)】
3K062
3L021
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3K062AB01
3K062AC01
3K062BA02
3K062CB01
3K062CB09
3K062DA36
3K062DA38
3L021BA08
3L021DA38
3L021FA12
3L021FA21
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を実用的な時間で策定することができる廃棄物処理計画演算装置および方法を提供する。
【解決手段】廃棄物処理計画演算装置は、廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する処理回路を備え、処理回路は、施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲を算出し、外部廃棄物受入量および施設ごとの廃棄物搬入量推定値を合計した合計搬入量推定値を、分配条件に基づいて施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲内において複数の施設に分配して、施設ごとの分担計画量を決定し、起動停止計画を施設ごとに決定し、処理条件に基づいて施設ごとの起動停止計画に応じて対応する分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定し、施設ごとの処理計画量の決定を、計画期間である第1単位期間より短く、複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる、第2単位期間ごとに行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する廃棄物処理計画演算装置であって、
前記複数の施設は、それぞれ、当該施設に搬送された廃棄物を一時貯留する貯留ピットと、廃棄物を処理する処理装置と、を含み、
前記廃棄物処理計画演算装置は、前記分担処理計画を演算する処理回路を備え、
前記処理回路は、
施設ごとの前記処理装置における処理量の範囲を定める処理負荷運用範囲、施設ごとの前記貯留ピットにおける貯留量の範囲を定める貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの前記処理装置において連続して処理可能な期間を定める連続稼働範囲、および、施設ごとの前記処理装置を休止する期間を定める定期点検計画を取得し、当該データから施設ごとに受け入れ可能な廃棄物量の範囲を定める廃棄物搬入可能量範囲を算出し、
前記複数の施設外から受け入れる外部廃棄物の量を定める外部廃棄物受入量および施設ごとの廃棄物搬入量推定値のデータを取得し、前記外部廃棄物受入量および施設ごとの前記廃棄物搬入量推定値を合計した、合計搬入量推定値を、予め定められた分配条件に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記複数の施設に分配して、施設ごとの分担計画量を決定し、
施設ごとの前記分担計画量、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、および前記定期点検計画のデータに基づいて、前記処理装置において廃棄物の処理を行う起動期間および前記廃棄物の処理を停止する停止期間を定めた起動停止計画を施設ごとに決定し、
施設ごとの前記分担計画量、前記起動停止計画、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、および前記演算時点におけるピット残量を用いて、予め定められた処理条件に基づいて、施設ごとの前記起動停止計画に応じて対応する前記分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定し、
前記施設ごとの処理計画量の決定を、計画期間である第1単位期間より短く、前記複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる、第2単位期間ごとに行う、廃棄物処理計画演算装置。
【請求項2】
前記分配条件は、前記複数の施設に設定された優先順位が高い施設から当該施設における前記廃棄物搬入可能量範囲内において優先的に前記合計搬入量推定値を割り当てることを含む、請求項1に記載の廃棄物処理計画演算装置。
【請求項3】
前記分配条件は、施設ごとの発電効率、前記外部廃棄物の発生場所から施設までの距離、前記外部廃棄物の運搬時の二酸化炭素排出量、または廃棄物搬入可能量範囲に基づいて定められる施設間の分担比率に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記合計搬入量推定値を各施設に割り当てることを含む、請求項1に記載の廃棄物処理計画演算装置。
【請求項4】
前記複数の施設は、それぞれ、前記処理装置の排熱を利用して発電を行う発電機を含み、
前記処理回路は、
施設ごとの前記発電機における発電量の上限を定める定格発電量、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の処理量に対する前記処理装置において処理した廃棄物により発生する熱量の関係を示す平均発熱量、および、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の発熱量に対する発電量の関係を定める発電効率のデータを取得し、
施設ごとの前記平均発熱量および前記発電効率から施設ごとの処理量に対する発電量の関係を決定し、
前記分配条件は、施設ごとの前記処理量に対する発電量の関係、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、および前記定期点検計画のデータを用いて各施設における発電量が最大化するように、施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記合計搬入量推定値を各施設に割り当てることを含む、請求項1に記載の廃棄物処理計画演算装置。
【請求項5】
前記複数の施設は、それぞれ、前記処理装置の排熱を利用して発電を行う発電機を含み、
前記処理回路は、
施設ごとの前記発電機における発電量の上限を定める定格発電量、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の処理量に対する前記処理装置において処理した廃棄物により発生する熱量の関係を示す平均発熱量、および、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の発熱量に対する発電量の関係を定める発電効率のデータを取得し、
施設ごとの前記平均発熱量および前記発電効率から施設ごとの処理量に対する発電量の関係を決定し、
前記処理条件は、所定の目的関数を最大化することを含み、
前記目的関数は、前記処理量に対する発電量の関係から求められる施設ごとの発電量、前記発電量から当該施設で消費される消費電力量を差し引いた余剰電力量、または、前記余剰電力量および電力の売電単価から求められる売電利益であり、
前記処理回路は、前記目的関数を最大化する最適化演算を行うことにより、施設ごとの処理計画量を決定する、請求項1から4の何れかに記載の廃棄物処理計画演算装置。
【請求項6】
前記処理回路は、決定された施設ごとの起動停止計画または処理計画量を所定の最適化手法に適用することにより、所定の目的関数がより高い値となる施設ごとの起動停止計画または処理計画量の解を求める最適化問題として前記解を探索する、請求項1から4の何れかに記載の廃棄物処理計画演算装置。
【請求項7】
前記最適化手法は、メタヒューリスティックスを含み、
前記処理回路は、決定された施設ごとの起動停止計画または処理計画量を、前記メタヒューリスティックスにおける暫定解として入力し、当該暫定解に基づいて新たな候補解を探索し、前記目的関数が前記暫定解より高い候補解が得られた場合に当該候補解を暫定解に更新し、予め定められた数の候補解を探索するまで探索を繰り返し、最終的な暫定解を最適解として出力する、請求項6に記載の廃棄物処理計画演算装置。
【請求項8】
前記最適化手法は、分枝限定法を含み、
前記処理回路は、決定された施設ごとの起動停止計画または処理計画量を、前記分枝限定法における暫定解として入力し、前記暫定解から前記最適化問題の暫定値を算出し、前記最適化問題の暫定値を前記最適化問題の下界値とし、前記最適化問題の一部制約を緩和する緩和法により最適化問題から緩和問題を生成し、前記緩和問題の最適化計算から前記緩和問題の最適値を算出し、前記緩和問題の最適値を最適化問題の上界値とし、前記最適化問題を場合分けによって複数の部分問題に分解し、前記複数の部分問題について限定操作および分枝操作を行い、前記目的関数が前記暫定解より高い新たな解が見つかった場合に、前記暫定解および前記下界値を更新し、前記上界値と前記下界値との差が予め定められた基準値以下となる場合、または、前記複数の部分問題についての操作がすべて終了した場合に、最終的な前記暫定解を最適解として出力する、請求項6に記載の廃棄物処理計画演算装置。
【請求項9】
廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する廃棄物処理計画演算方法であって、
前記複数の施設は、それぞれ、当該施設に搬送された廃棄物を一時貯留する貯留ピットと、廃棄物を処理する処理装置と、を含み、
前記方法は、
施設ごとの前記処理装置における処理量の範囲を定める処理負荷運用範囲、施設ごとの前記貯留ピットにおける貯留量の範囲を定める貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの前記処理装置において連続して処理可能な期間を定める連続稼働範囲、および、施設ごとの前記処理装置を休止する期間を定める定期点検計画のデータを取得し、当該データから施設ごとの外部から受け入れ可能な廃棄物量の範囲を定める廃棄物搬入可能量範囲を算出し、
前記複数の施設外から受け入れる外部廃棄物の量を定める外部廃棄物受入量および施設ごとの廃棄物搬入量推定値のデータを取得し、前記外部廃棄物受入量および施設ごとの前記廃棄物搬入量推定値を合計した、合計搬入量推定値を、予め定められた分配条件に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記複数の施設に分配して、施設ごとの分担計画量を決定し、
施設ごとの前記分担計画量、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、前記定期点検計画、および前記廃棄物搬入量推定値のデータに基づいて、前記処理装置において廃棄物の処理を行う起動期間および前記廃棄物の処理を停止する停止期間を定めた起動停止計画を施設ごとに決定し、
施設ごとの前記分担計画量、前記起動停止計画、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、および前記演算時点におけるピット残量を用いて、予め定められた処理条件に基づいて、施設ごとの前記起動停止計画に応じて対応する前記分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定し、
前記施設ごとの処理計画量の決定を、計画期間である第1単位期間より短く、前記複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる、第2単位期間ごとに行う、廃棄物処理計画演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃棄物処理計画演算装置および廃棄物処理計画演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物に対して焼却等の処理を行う廃棄物処理施設では、日々各地から収集した廃棄物が搬入され、一時貯留ピットに貯留された後、処理装置にて順次処理が行われる。廃棄物処理施設では、処理の際に生じる熱エネルギーを利用して発電し、廃棄物処理施設の電源として利用したり、周辺の地域に電力供給したり、売電したりしている。
【0003】
下記特許文献1には、複数の廃棄物処理施設を通信ネットワークで繋いで複数の廃棄物処理施設を遠隔運転可能な構成が開示されている。特許文献1には、複数の廃棄物処理施設を炉の形式等からグループ分けし、一の運転員が同じグループに属する複数の廃棄物処理施設の運転操作を行うようにすることで廃棄物処理施設を安定に運転することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1には、廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担することについては言及されていない。特に、廃棄物処理施設では、処理負荷運用範囲、連続稼働範囲、定期点検計画等の廃棄物の処理についての運用上の制約がある。したがって、運用上の制約を遵守しつつ複数の施設間で効率のよい分担処理計画を策定することは容易ではない。
【0006】
そこで、本開示は、複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を実用的な時間で策定することができる廃棄物処理計画演算装置および廃棄物処理計画演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る廃棄物処理計画演算装置は、廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する廃棄物処理計画演算装置であって、前記複数の施設は、それぞれ、当該施設に搬送された廃棄物を一時貯留する貯留ピットと、廃棄物を処理する処理装置と、を含み、前記廃棄物処理計画演算装置は、前記分担処理計画を演算する処理回路を備え、前記処理回路は、施設ごとの前記処理装置における処理量の範囲を定める処理負荷運用範囲、施設ごとの前記貯留ピットにおける貯留量の範囲を定める貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの前記処理装置において連続して処理可能な期間を定める連続稼働範囲、および、施設ごとの前記処理装置を休止する期間を定める定期点検計画を取得し、当該データから施設ごとに受け入れ可能な廃棄物量の範囲を定める廃棄物搬入可能量範囲を算出し、前記複数の施設外から受け入れる外部廃棄物の量を定める外部廃棄物受入量および施設ごとの廃棄物搬入量推定値のデータを取得し、前記外部廃棄物受入量および施設ごとの前記廃棄物搬入量推定値を合計した、合計搬入量推定値を、予め定められた分配条件に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記複数の施設に分配して、施設ごとの分担計画量を決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、および前記定期点検計画のデータに基づいて、前記処理装置において廃棄物の処理を行う起動期間および前記廃棄物の処理を停止する停止期間を定めた起動停止計画を施設ごとに決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記起動停止計画、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、および前記演算時点におけるピット残量を用いて、予め定められた処理条件に基づいて、施設ごとの前記起動停止計画に応じて対応する前記分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定し、前記施設ごとの処理計画量の決定を、計画期間である第1単位期間より短く、前記複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる、第2単位期間ごとに行う。
【0008】
本開示の他の態様に係る廃棄物処理計画演算方法は、廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する廃棄物処理計画演算方法であって、前記複数の施設は、それぞれ、当該施設に搬送された廃棄物を一時貯留する貯留ピットと、廃棄物を処理する処理装置と、を含み、前記方法は、施設ごとの前記処理装置における処理量の範囲を定める処理負荷運用範囲、施設ごとの前記貯留ピットにおける貯留量の範囲を定める貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの前記処理装置において連続して処理可能な期間を定める連続稼働範囲、および、施設ごとの前記処理装置を休止する期間を定める定期点検計画のデータを取得し、当該データから施設ごとの外部から受け入れ可能な廃棄物量の範囲を定める廃棄物搬入可能量範囲を算出し、前記複数の施設外から受け入れる外部廃棄物の量を定める外部廃棄物受入量および施設ごとの廃棄物搬入量推定値のデータを取得し、前記外部廃棄物受入量および施設ごとの前記廃棄物搬入量推定値を合計した、合計搬入量推定値を、予め定められた分配条件に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記複数の施設に分配して、施設ごとの分担計画量を決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、前記定期点検計画、および前記廃棄物搬入量推定値のデータに基づいて、前記処理装置において廃棄物の処理を行う起動期間および前記廃棄物の処理を停止する停止期間を定めた起動停止計画を施設ごとに決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記起動停止計画、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、および前記演算時点におけるピット残量を用いて、予め定められた処理条件に基づいて、施設ごとの前記起動停止計画に応じて対応する前記分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定し、前記施設ごとの処理計画量の決定を、計画期間である第1単位期間より短く、前記複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる、第2単位期間ごとに行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を実用的な時間で策定することができる廃棄物処理計画演算装置および廃棄物処理計画演算方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態に係る廃棄物処理計画演算装置の対象となる廃棄物処理施設を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施の形態に係る廃棄物処理計画演算装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態における分担処理計画を決定するための演算の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3における第2単位期間ごとの分担処理計画の演算の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施の形態における合計搬入量推定値および合計搬入可能量範囲の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本実施の形態における施設ごとの分担計画量および施設ごとの搬入可能量範囲の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、焼却炉における廃棄物の処理量に対する余剰電力量を示すグラフである。
【
図8】
図8は、一の施設において起動停止計画から処理計画量を決定する例を示す図である。
【
図9】
図9は、メタヒューリスティックスにおける最適化演算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、分枝限定法における最適化演算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、
図10におけるステップSD6における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施の形態に係る廃棄物処理計画演算装置について説明する。まず、前提となる廃棄物処理施設の一例について説明する。
【0012】
[廃棄物処理施設の概要]
図1は、本開示の一実施の形態に係る廃棄物処理計画演算装置の対象となる廃棄物処理施設を示す概略構成図である。本実施の形態において、廃棄物処理施設1は、処理装置として焼却炉2を備えた焼却プラントとして構成される。廃棄物処理施設1は、酸素含有ガスを用いて廃棄物を焼却するための火炉室3を有する焼却炉2と、焼却炉2から排出される焼却炉排ガスから排熱を水蒸気として回収する蒸気回収装置であるボイラ4と、を含む。焼却炉2のボイラ4とは反対側には、ホッパー5および給じん機6が配置されており、ボイラ4からは、排ガスの排気経路7が煙突8まで延びている。排気経路7には、上流側から順に、エコノマイザー、減温塔、集塵機およびブロワが配置されている。
【0013】
廃棄物処理施設1は、ホッパー5の火炉室3とは反対側に、焼却炉2に投入される廃棄物を一時貯留するための貯留ピット9を備えている。貯留ピット9の上方にはクレーン10が設けられている。ホッパー5には、貯留ピット9に貯められた廃棄物がクレーン10により投入される。給じん機6は、所定のインターバルで間欠的に作動する、または、所定の速度で連続的に作動することにより、ホッパー5に投入された廃棄物を焼却炉2の火炉室3内に送り込む。
【0014】
焼却炉2は、火炉室3の下方に設けられたストーカを有している。ストーカは、廃棄物の搬送手段として機能する。ストーカは、給じん機6に近い側から順に乾燥ストーカ11、燃焼ストーカ12および後燃焼ストーカ13を有する。すなわち、これらのストーカ11,12,13は、廃棄物の移動方向に配列されている。乾燥、燃焼および後燃焼ストーカ11,12,13の下方には、風箱14,15,16がそれぞれ配置されている。さらに、焼却炉2は、火炉室3とボイラ4との間に火炉室3と連続する再燃焼室17を有する。なお、燃焼ストーカ12は、図例では1段であるが、2段以上設けられていてもよい。乾燥ストーカ11、燃焼ストーカ12および後燃焼ストーカ13は、例えば、互いに異なるインターバルで間欠的に作動する。
【0015】
火炉室3では、廃棄物の熱分解および部分酸化反応により燃焼ガスが生成され、この燃焼ガスが廃棄物と共に燃焼される。再燃焼室17は、火炉室3から流出する燃焼ガスを完全燃焼させるためのものである。廃棄物の燃焼後の灰は、後燃焼ストーカ13に隣接して設けられた排出口18から排出される。
【0016】
ボイラ4では、焼却炉2から排出される排ガスから得られる排熱によって蒸気が生成される。より詳しくは、
図1に示すように、ボイラ4は、再燃焼室17の上方に配置された放射室19と、放射室19と上部同士が連通する第1煙道20と、第1煙道20と下部同士が連通する第2煙道21と、を含む。ボイラ4で排熱から生成された蒸気は、発電機23と連結されたタービン22に送られて発電に利用される。発電機23で発電した電力は、廃棄物処理施設1において利用される。また、余った電力は、周辺の地域に供給される、または、電力会社に売電される。ボイラ4を通過した排ガスの大部分は、排気経路7を流れた後に、煙突8から大気中へ放出される。
【0017】
なお、
図1においては、廃棄物処理施設1が1つの焼却炉2を有する構成として図示されているが、廃棄物処理施設1は、複数の焼却炉2、すなわち、複数の処理装置を備えていてもよい。
【0018】
[廃棄物処理計画演算装置の構成]
図2は、本開示の一実施の形態に係る廃棄物処理計画演算装置の概略構成を示すブロック図である。
図2の例において、廃棄物処理計画演算装置30は、インターネット等の通信ネットワーク38を介して複数の廃棄物処理施設1A,1B,1Cの制御装置に接続されている。なお、
図2の例では、複数の廃棄物処理施設として、3つの廃棄物処理施設、すなわち、A施設1A、B施設1B、C施設1Cが例示されるが、複数の廃棄物処理施設は、2以上であればよい。以下において、廃棄物処理施設は、単に施設と略記する場合がある。
【0019】
図2に示す廃棄物処理計画演算装置30は、廃棄物を処理する複数の施設1A,1B,1C間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する。廃棄物処理計画演算装置30は、各種の信号処理を行う処理回路31を備えている。処理回路31は、例えばマイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、PLC(Programmable Logic Controller)等のコンピュータを有する。より具体的には、処理回路31は、プロセッサ32、メモリ33、および周辺回路34を含む。
【0020】
プロセッサ32は、例えば、CPUまたはMPU等を含む。メモリ33は、ROM、RAM、レジスタ等の揮発性メモリおよびフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。メモリ33には、分担処理計画演算プログラムが予め記憶されている。周辺回路34は、入出力インターフェイス等を含む。プロセッサ32、メモリ33および周辺回路34は、バス35を通じて相互にデータ伝達を行う。プロセッサ32は、分担処理計画演算プログラムを実行することにより、メモリ33に記憶された各種の情報に基づいて後述する施設ごとの処理計画を演算する。
【0021】
さらに、廃棄物処理計画演算装置30は、データ取得器36および出力器37を備えている。データ取得器36は、後述する各種データを取得し、周辺回路34を通じてメモリ33にデータを伝送する。データ取得器36は、ユーザが入力操作を行う入力器として構成されてもよいし、廃棄物処理施設1の制御装置から送信される各種データを受信する通信インターフェイスとして構成されてもよい。出力器37は、プロセッサ32による演算結果を、周辺回路34を通じて取得し、出力する。例えば、出力器37は、廃棄物処理計画演算装置30に接続された表示装置に、施設ごとの処理計画を表示する。また、出力器37は、処理計画を含むデータを対応する施設1A,1B,1Cに送信する通信インターフェイスとして構成されてもよい。
【0022】
なお、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、または手段はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0023】
[分担処理計画演算]
分担処理計画を策定するための前提として、廃棄物処理施設1における廃棄物の処理には運用上の制約がある。例えば、廃棄物処理施設1における運用上の制約は、焼却炉2の連続稼働期間、焼却炉2の定期点検計画、焼却炉2の処理負荷運用範囲、貯留ピット9の貯留量運用範囲、および、発電機23の定格発電量等がある。これらの廃棄物処理施設1における運用上の制約に関するデータは、施設ごとのデータとして、メモリ33に予め記憶される。
【0024】
焼却炉2の連続稼働期間は、焼却炉2において連続して処理可能な期間、すなわち、上限値を定める。連続稼働期間は、焼却炉2の能力維持のために焼却炉2ごとに予め定められている。焼却炉2の定期点検計画は、焼却炉2を休止する期間を定める。定期点検計画は、焼却炉2のメンテナンス上の制約として、例えば1年にX回、1回あたりY日停止等のように焼却炉2ごとに定められている。処理負荷運用範囲は、焼却炉2における処理量の範囲、すなわち、焼却炉2における単位時間当たりの処理量の上限値および下限値を定める。貯留量運用範囲は、貯留ピット9における貯留量の範囲、すなわち貯留ピットにおける容量の上限値および下限値を定める。処理量の上限値および貯留ピット9の容量の上限値は、廃棄物処理施設1の性能上限を示す値として廃棄物処理施設1ごとに予め決定されている。処理量の下限値および貯留ピット9の容量の下限値は、焼却炉2が廃棄物の焼却動作を継続的に行うために最低限必要な値として廃棄物処理施設1ごとに予め決定されている。なお、処理量および貯留量は、例えば、重量、体積またはそれらの組み合わせによって定められる。定格発電量は、発電機23における発電量の上限値を定める。
【0025】
また、データ取得器36は、施設ごとの貯留ピット9におけるピット残量を所定のタイミングごとに取得し、メモリ33に記憶させる。運用上の制約に関するデータには、演算時点におけるピット残量のデータが含まれる。
【0026】
図3は、本実施の形態における分担処理計画を決定するための演算の流れを示すフローチャートである。
図4は、
図3における第2単位期間ごとの分担処理計画の演算の流れを示すフローチャートである。
【0027】
まず、データ取得器36は、分担処理計画を策定する計画期間である第1単位期間のデータを取得する。例えば、第1単位期間のデータは、ユーザが操作入力した値である。例えば、第1単位期間は、1年または6か月等である。廃棄物処理計画演算装置30の処理回路31は、第1単位期間を演算単位である第2単位期間に分割する(ステップSA1)。第2単位期間は、第1単位期間より短く、複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる期間に設定される。このため、処理回路31は、施設ごとの連続稼働期間のデータを取得し、各施設における起動停止周期を推定する。
【0028】
例えば、A施設1Aの連続稼働期間が90日であり、A施設1Aが2つの焼却炉2を備える場合、当該A施設1Aでは、連続稼働期間の半分の日数ごとに焼却炉2が停止すると推定される。すなわち、A施設1Aにおける起動停止周期は、45日と推定される。さらに、処理回路31は、A施設1Aごとの定期点検計画のデータを取得し、焼却炉2の1回の停止期間を考慮して起動停止周期を推定してもよい。
【0029】
処理回路31は、施設ごとの起動停止周期から第2単位期間を設定する。例えば、第2単位期間を起動停止周期の1回分とする場合、第2単位期間は、起動停止周期の日数以下に設定される。なお、廃棄物処理施設1は、一般的に週単位で稼働するため、第2単位期間は、7の倍数の日数に設定されてもよい。例えば、起動停止周期が45日の場合、起動停止周期を1回以下とする第2単位期間は、7日、14日、21日、28日、35日、または、42日に設定される。第2単位期間が起動停止周期に近いほど第2単位期間における演算を実用的な時間で演算可能としつつ第1単位期間に含まれる第2単位期間の数、すなわち、後述する分担処理計画を演算する回数を減らすことができる。
【0030】
ただし、第2単位期間を起動停止周期より十分に短い期間に設定することにより、第2単位期間における演算時間を確実に低減することができる。例えば、起動停止周期が45日の場合、起動停止周期を1回以下とする第2単位期間を、起動停止周期の半分以下の日数である21日または14日とすることが好ましい場合もある。これにより、なるべく第2単位期間において施設の焼却炉2における起動停止の切り替えタイミングが含まれる割合を減らすことができる。なお、第2単位期間の設定は、処理回路31が、第1単位期間のデータに基づいて自動的に算出されてもよいし、ユーザが所望の期間を入力することにより行われてもよい。
【0031】
処理回路31は、設定された第2単位期間を用いて第1単位期間を分割する。この際、複数の第2単位期間同士が第1単位期間内で重複してもよい。すなわち、次の第2単位期間の開始日が前の第2単位期間の終了日より前に設定されてもよい。例えば、第1単位期間が4月1日から9月30日までの6か月間であり、第2単位期間が21日に設定され、重複期間として設定される第3単位期間が14日である場合、1番目の第2単位期間が4月1日から4月21日までに設定され、2番目の第2単位期間が4月8日から4月28日までに設定されてもよい。なお、第3単位期間は7の倍数の日数でなくてもよい。これに代えて、複数の第2単位期間が重複しないように設定されてもよい。ただし、この場合でも、1つの第2単位期間と次の第2単位期間との間が空かない、すなわち、演算に含まれない期間が発生しないように設定される。
【0032】
処理回路31は、各施設における運用制約データを用いて分割された第2単位期間ごとに分担処理計画を演算する(ステップSA2)。まず、処理回路31は、施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲Pを算出する(ステップSB1)。このために、処理回路31は、施設ごとの処理負荷運用範囲、施設ごとの貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの連続稼働範囲、および、施設ごとの定期点検計画を取得する。処理回路31は、演算時点におけるピット残量として、メモリ33に記憶されている施設ごとの最新のピット残量を取得する。これに代えて、処理回路31は、メモリ33に記憶されている施設ごとのピット残量の履歴から演算する第2単位期間におけるピット残量を推定してもよい。
【0033】
処理回路31は、これらのデータから施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲Pを算出する。廃棄物搬入可能量範囲Pは、施設ごとに受け入れ可能な廃棄物量の範囲を定める。廃棄物搬入可能量範囲Pは、下限値Pminと上限値Pmaxとの間の範囲として定められる。廃棄物搬入可能量範囲Pは、焼却炉2を所定の稼働率で起動した場合に、後述する起動停止計画に従った焼却炉2の稼働を実現するために必要な廃棄物の最小量と搬入可能な廃棄物の最大量との間の範囲に定められる。
【0034】
処理回路31は、複数の施設1A,1B,1Cにおける廃棄物搬入可能量範囲Pを合計した合計搬入可能量範囲Ptを算出する(ステップSB2)。合計搬入可能量範囲Ptは、下限値Ptminと上限値Ptmaxとの間の範囲として定められる。
【0035】
さらに、処理回路31は、複数の施設1A,1B,1Cにおける廃棄物搬入量推定値および外部廃棄物受入量を合計した合計搬入量推定値Ctを算出する(ステップSB3)。このために、処理回路31は、第2単位期間における施設ごとの廃棄物搬入量推定値を取得する。廃棄物搬入量推定値は、各施設における過去の稼働実績、廃棄物を排出する工場などの事業計画に基づく廃棄物排出予測情報、または、廃棄物の収集領域における人口変動、工場等の大型施設の増減等の周辺環境情報から当該施設に搬入される廃棄物の搬入量が推定される。施設ごとの廃棄物搬入量推定値は、データ取得器36により、各施設1A,1B,1Cから取得されてもよいし、処理回路31が、各施設の稼働実績、廃棄物排出予測情報または周辺環境情報を取得し、取得したデータから施設ごとの廃棄物搬入量推定値を算出してもよい。処理回路31は、施設ごとの廃棄物搬入量推定値を、合計搬入量推定値Ctを算出する都度、各施設1A,1B,1Cから取得してもよいし、予め取得したデータをメモリ33に記憶しておき、メモリ33から読み出してもよい。
【0036】
廃棄物搬入量推定値は、第2単位期間を第2単位期間より短い第4単位期間ごとに区切って当該第4単位期間ごとの推定値の積算値として構成される。例えば第2単位期間を21日とし、第4単位期間を7日とすると、廃棄物搬入量推定値は、1週間ごとの推定値が3週間分積算されたものとなる。また、第4単位期間ごとの推定値は、そのときの気温、湿度、時期等により変動し得る。時期による変動は、例えば、休暇期間、繁忙期等によって廃棄物の発生量が変動し得ることを意味する。
【0037】
同様に、処理回路31は、第2単位期間における外部廃棄物受入量を取得する。外部廃棄物受入量は、複数の施設外から受け入れる外部廃棄物の量を定めるものである。例えば、分担処理を行う複数の施設1A,1B,1Cとは別の廃棄物処理施設において、故障等の計画外停止が発生した場合、大規模災害の発生時等において、施設ごとの搬入量推定値に基づいて定められる許容値を超えた量の廃棄物処理要請が生じた場合等において複数の施設1A,1B,1Cで処理すべき廃棄物の量が、外部廃棄物受入量として設定される。
【0038】
外部廃棄物受入量は、現実に上記状況が発生した場合における実際の値であってもよいし、上記状況を想定してユーザが入力した値であってもよい。外部廃棄物受入量を考慮しない場合、外部廃棄物受入量は、0としてもよい。
【0039】
処理回路31は、複数の施設1A,1B,1Cの廃棄物搬入量推定値および外部廃棄物受入量を加えて合計搬入量推定値Ctを算出する。
【0040】
算出された合計搬入量推定値Ctも、第2単位期間を第4単位期間ごとに区切って当該第4単位期間ごとの推定値の積算値として構成される。
図5は、本実施の形態における合計搬入量推定値および合計搬入可能量範囲の一例を示すグラフである。横軸は、第2単位期間の開始時期を0とし、開始時期から第2単位期間経過後の時刻をT1としている。縦軸は、重量の積算値を示している。したがって、合計搬入量推定値Ctのグラフは、第4単位期間ごとに、水平または右肩上がりに変化するグラフとして示される。
【0041】
このため、
図5において、合計搬入可能量範囲Ptは、第4単位期間あたりの合計搬入可能量範囲を第2単位期間分累積したものが第2単位期間における合計搬入可能量範囲Ptとなるようなグラフとして示されている。例えば、第2単位期間が21日、すなわち3週間で第4単位期間が7日、すなわち1週間である場合、合計搬入可能量範囲Ptのグラフは、1週間ごとの合計搬入可能量範囲がPt/3であるようなグラフとして示されている。また、
図5において、合計搬入可能量範囲Ptは、各施設1A,1B,1Cにおける廃棄物搬入可能量範囲P(1A),P(1B),P(1C)を合計したものであることが模式的に示されている。
【0042】
処理回路31は、合計搬入量推定値Ctが合計搬入可能量範囲Pt内に含まれるかどうかを判定する。より具体的には、処理回路31は、第4単位期間ごとに第2単位期間において合計搬入量推定値Ctが合計搬入可能量範囲Ptにおける上限値Ptmaxと下限値Ptminとの間に位置するかどうかを判定する。すなわち、
図5において第2単位期間における合計搬入量推定値Ctが時刻0からT1までの全域が、原点0、上限値Ptmaxおよび下限値Ptminを頂点とする三角形の領域内に含まれるかどうかが判定される。
【0043】
処理回路31は、合計搬入量推定値Ctが合計搬入可能量範囲Pt内に含まれない場合、合計搬入量推定値Ctまたは合計搬入可能量範囲Ptの変更を行う。例えば、処理回路31は、外部廃棄物受入量を減らすことにより、合計搬入量推定値Ctを下げたり、各施設における稼働率を変更することにより、合計搬入可能量範囲Ptの上限値Ptmaxおよび下限値Ptminを変更したりする調整を行う。各施設における稼働率の調整は、例えば、連続稼働期間の上限値または処理負荷運用範囲の上限値を増減すること等により行われ得る。
【0044】
処理回路31は、合計搬入可能量範囲Ptおよび合計搬入量推定値Ctを用いて施設ごとの分担計画量Cpを決定する(ステップSB4)。より具体的には、処理回路31は、合計搬入量推定値Ctを、予め定められた分配条件に基づいて施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲P内において複数の施設1A,1B,1Cに分配して、施設ごとの分担計画量Cpを決定する。
【0045】
図6は、本実施の形態における施設ごとの分担計画量および施設ごとの搬入可能量範囲の一例を示すグラフである。
図6に示すように、決定された各施設の分担計画量Cp(1A),Cp(1B),Cp(1C)は、対応する施設の廃棄物搬入可能量範囲P(1A),P(1B),P(1C)内に含まれる。
【0046】
例えば、分配条件は、複数の施設1A,1B,1Cに設定された優先順位が高い施設から当該施設における廃棄物搬入可能量範囲P内において優先的に合計搬入量推定値Ctを割り当てることを含んでもよい。例えば、A施設1A、B施設1B、C施設1Cの順で優先順位が設定されている場合、処理回路31は、優先順位が最も高いA施設1Aに合計搬入量推定値Ctから最大限の量を割り当てる。最大限の量は、各施設における廃棄物搬入可能量範囲Pの上限値Pmaxとしてもよいし、上限値Pmaxより低い所定の値に設定されてもよい。さらに、処理回路31は、2番目に優先順位が高いB施設1Bに残りの合計搬入量推定値Ctから最大限の量を割り当てる。さらに、処理回路31は、合計搬入量推定値Ctが残っている場合には、優先順位が最も低いC施設1Cに当該残りの量を割り当てる。
【0047】
あるいは、分配条件は、施設間の所定の分配比率に基づいて施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲P内において合計搬入量推定値Ctを各施設に割り当てることを含んでもよい。所定の分配比率は、施設ごとの発電効率、外部廃棄物の発生場所から施設までの距離、外部廃棄物の運搬時の二酸化炭素排出量または廃棄物搬入可能量範囲Pに基づいて定められ得る。例えば、発電効率に基づいた分配比率が設定される場合、発電効率の高い施設から順に合計搬入量推定値Ctが割り当てられ得る。
【0048】
また、例えば、外部廃棄物の発生場所から施設までの距離に基づいた分配比率が設定される場合、当該距離が近い順に合計搬入量推定値Ctが割り当てられ得る。また、例えば、外部廃棄物の運搬時の二酸化炭素排出量に基づいた分配比率が設定される場合、当該二酸化炭素排出量が少ない順に合計搬入量推定値Ctが割り当てられ得る。なお、分配比率を外部廃棄物の発生場所から施設までの距離または外部廃棄物の運搬時の二酸化炭素排出量に基づいて設定する場合、合計搬入量推定値Ctを外部廃棄物受入量と複数の施設1A,1B,1Cの廃棄物搬入量推定値の合計値とを区別して、外部廃棄物受入量の割り当てに対して当該分配比率を適用してもよい。
【0049】
また、例えば、廃棄物搬入可能量範囲Pに基づいた分配比率が設定される場合、廃棄物搬入可能量範囲Pが大きい順に合計搬入量推定値Ctが割り当てられ得る。分配比率は、上記のような複数の要素を組み合わせることにより設定されてもよい。その際、要素に応じた重み付けが付与されてもよい。
【0050】
また、分配条件は、各施設における発電量が最大化するように、施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲P内において合計搬入量推定値Ctを各施設に割り当てることを含んでもよい。この場合、処理回路31は、施設ごとの発電機23の定格発電量Em、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の処理量に対する処理した廃棄物により発生する熱量の関係を示す平均発熱量Eh、および、施設ごとの焼却炉2における廃棄物の発熱量に対する発電量の関係を定める発電効率Egのデータを取得する。なお、焼却炉2において発生する熱量は、例えば、焼却炉2内における蒸気流量、バーナ燃料流量および燃焼用空気温度から算出される。
【0051】
定格発電量Emのデータは、上述のようにメモリ33に予め記憶されている。また、発電効率Egのデータは、焼却炉2で生じた発熱量に対する発電機23が発電する発電量の関係を示すデータであり、施設ごとの発電性能のパラメータとして予めメモリ33に記憶されている。また、平均発熱量Ehのデータは、焼却炉2に供給される廃棄物の量、すなわち、処理量と、焼却炉2において発生する熱量のデータとから算出される。データ取得器36は、施設ごとの焼却炉2における処理量および熱量を所定のタイミングごとに取得し、メモリ33に記憶させる。
【0052】
処理回路31は、演算時点における平均発熱量Ehとして、メモリ33に記憶されている施設ごとの最新の平均発熱量Ehを取得する。これに代えて、処理回路31は、メモリ33に記憶されている施設ごとの平均発熱量Ehの履歴から演算する第2単位期間における平均発熱量Ehを推定してもよい。
【0053】
図7は、焼却炉における廃棄物の処理量に対する余剰電力量を示すグラフである。余剰電力量は、発電機23で発電した発電量から廃棄物処理施設1における消費電力を差し引いた余剰の電力量である。
図7のグラフにおけるLloは、処理負荷運用範囲の下限値を示し、Lhiは、処理負荷運用範囲の上限値を示す。
【0054】
焼却炉2における廃棄物の処理量が増えると、それに伴って発生する熱量も増加する。焼却炉2において発生する熱量が増えると、発電機23における発電量も増加する。したがって、
図7に示すように、平均発熱量EhがEh1,Eh2,Eh3の何れである場合においても処理量に対して余剰電力量は単調増加する。
【0055】
ここで、焼却炉2において発生する熱量と発電機23における発電量とは、1対1に対応するが、発電機23は、例えば蒸気タービンの構造等から定格発電量Emを超えて発電できないため、定格発電量Emを超えた熱量が発生しても、発電量はそれ以上増えない。一方で、焼却炉2における処理量の増加に伴い、廃棄物処理施設1における消費電力は増大する。このため、発電機23で発電した発電量から廃棄物処理施設1における消費電力を差し引いた余剰電力量は、定格発電量Emに対応する処理量において最大値Es(Em)となり、処理量が定格発電量Emに対応する処理量を超えると、余剰電力量は、最大値Es(Em)より低下する。
【0056】
さらに、焼却炉2において処理した廃棄物により発生する熱量は、焼却炉2に供給される廃棄物の水分または材質等の性状や、気温または湿度等の周囲の環境に応じて時々刻々変化し得る。したがって、焼却炉2における処理量とそれに伴って発生する熱量とは1対1に対応しない。そのため、施設ごとの処理量に対する発電量は、定格発電量Em以下において、平均発熱量Ehと発電効率Egとを掛け合わせたものになる。
図7の例において、平均発熱量Ehの大きさは、Eh1>Eh2>Eh3であるため、平均発熱量Ehが高いほど少ない処理量で高い発電量が得られ、定格発電量Emに達するまで同じ処理量に対する余剰電力量も平均発熱量Ehが高いほど多くなる。
【0057】
以上のような関係を用いて、処理回路31は、施設ごとの平均発熱量Ehおよび発電効率Egから施設ごとの処理量に対する発電量の関係を決定する。処理回路31は、分配条件として、処理量に対する発電量の関係を用いて施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲P内において合計搬入量推定値Ctを各施設に割り当てる。例えば、処理回路31は、各施設における発電量が定格発電量Em以下の所定のしきい値以上になるように、施設ごとの廃棄物搬入可能量範囲P内において合計搬入量推定値Ctを各施設に割り当てる。
【0058】
処理回路31は、処理量に対する発電量の関係を用いて合計搬入量推定値Ctを各施設に割り当てる際、施設ごとの処理負荷運用範囲、貯留量運用範囲、演算時点におけるピット残量、連続稼働範囲、および定期点検計画を考慮する。例えば、処理回路31は、これらのデータを考慮して発電量が最大となる定格処理量範囲を算出する。定格処理量範囲は、起動停止計画に従った焼却炉2の稼働を実現するために必要な廃棄物の最小量とその施設における定格発電量に対応する処理量となる廃棄物の最大量との間の範囲として定められる。
【0059】
割り当ての優先度は、単位処理量あたりの発電量が高い順に設定されてもよいし、単位処理量あたりの施設における消費電力が低い順に設定されてもよい。
【0060】
分配条件として、発電量を最大化する代わりに、発電量から当該施設で消費される消費電力量を差し引いた余剰電力量、または、余剰電力量および電力の売電単価から求められる売電利益を、最大化することが、設定されてもよい。このために、データ取得器36は、各施設における消費電力量を各施設から所定のタイミングごとに取得してメモリ33に記憶させてもよい。さらに、データ取得器36は、所定のタイミングごとに買電事業者から売電価格を取得してメモリ33に記憶させてもよい。
【0061】
なお、上記で例示した複数の分配条件のいくつかが適宜組み合わせられてもよい。決定された施設ごとの分担計画量は、施設1A,1B,1Cに対応付けてメモリ33に記憶される。
【0062】
処理回路31は、決定された施設ごとの分担計画量Cpを用いて施設ごとの処理装置、すなわち、焼却炉2において廃棄物の処理を行う起動期間および廃棄物の処理を停止する停止期間を定めた起動停止計画Qを決定する(ステップSB5)。1つの廃棄物処理施設1が複数の焼却炉2を備える場合には、処理回路31は、焼却炉2ごとの起動停止計画Qを決定する。起動停止計画Qを決定するために、処理回路31は、施設ごとの処理負荷運用範囲、施設ごとの貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの連続稼働範囲、および施設ごとの定期点検計画に関する運用制約データを取得する。
【0063】
処理回路31は、これらの運用制約データから第2単位期間において、いつ、どのくらい焼却炉2を稼働または停止するかを定めることにより、焼却炉2ごとの起動停止計画Qを決定する。処理回路31は、各焼却炉2において所定の稼働率となるように焼却炉2ごとの起動停止計画Qを決定する。複数の施設1A,1B,1Cにおける起動停止計画Qは、互いに独立して決定され得る。すなわち、複数の施設1A,1B,1C間における焼却炉2の停止期間は互いに重複し得る。ただし、これに代えて、複数の施設1A,1B,1Cにおける起動停止計画Qは、それぞれ、複数の施設1A,1B,1Cに含まれる各焼却炉2の停止期間がなるべく重複しないように決定されてもよい。決定された焼却炉2ごとの起動停止計画Qは、その焼却炉2が含まれる施設1A,1B,1Cに対応付けてメモリ33に記憶される。
【0064】
処理回路31は、施設ごとの起動停止計画Qに応じて対応する分担計画量Cpを処理可能な施設ごとの処理計画量Rを決定する(ステップSB6)。処理回路31は、予め定められた処理条件に基づいて施設ごとの処理計画量Rを決定する。処理計画量Rは、各施設における運用上の制約を遵守する必要がある。そのため、処理回路31は、施設ごとの処理負荷運用範囲、施設ごとの貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量に関する運用制約データを取得する。
【0065】
処理条件は、所定の目的関数を最大化することを含む。例えば、目的関数は、当該施設における処理量に対する発電量の関係から求められる施設ごとの発電量に設定される。この場合、処理回路31は、施設ごとの起動停止計画に応じて対応する施設の発電量を最大化するように、対応する分担計画量Cpを処理可能な施設ごとの処理計画量Rを決定する。施設ごとの処理量に対する発電量の関係は、上述した通りである。なお、目的関数はこれに限られず、種々設定可能である。例えば、発電量から当該施設で消費される消費電力量を差し引いた余剰電力量、または、余剰電力量および電力の売電単価から求められる売電利益が、目的関数として設定されてもよい。
【0066】
図8は、一の施設において起動停止計画から処理計画量を決定する例を示す図である。
図8の例では、一の施設が2つの焼却炉2を備えている場合を示している。前述の通り、焼却炉2ごとに起動停止計画Qが決定される。
図8には、1号炉の起動停止計画Q1および2号炉の起動停止計画Q2が示されている。1号炉の起動停止計画Q1は、第2単位期間の開始時である時刻0から焼却炉2を起動し、途中の時刻T2から第2単位期間の終了時である時刻T1まで焼却炉2を停止するように定められている。一方、2号炉の起動停止計画Q2は、第2単位期間全体において焼却炉2を起動するように定められている。
【0067】
前述したように、第2単位期間は、複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる期間に設定される。
図8の例において、第2単位期間は、起動停止周期が1回以下となる期間に設定されている。そのため、
図8に示すように、何れの焼却炉2の起動停止計画Q1,Q2においても、起動期間と停止期間との間の切り替え回数は、0回または1回である。
【0068】
処理回路31は、このように定められた起動停止計画Q1,Q2に応じて、当該施設に割り当てられた分担計画量Cpを2つの焼却炉2で処理するための処理計画量Rを決定する。この際、上記の運用制約を超えない範囲で目的関数を最大化するように各焼却炉2における処理計画量Rが決定される。例えば、1号炉の発電効率Egが2号炉の発電効率Egより高い場合、1号炉および2号炉の両方が起動している期間、すなわち、時刻0から時刻T2までの期間は、1号炉における処理を優先する。ただし、当該期間における1号炉への処理計画量R1は、分担計画量Cp、処理負荷運用範囲、貯留量運用範囲、ピット残量により時間経過に伴って変動し得る。
【0069】
また、
図8の例において、時刻T2から時刻T1までの期間は、1号炉が停止しているため、2号炉において当該期間の分担計画量Cpを負担する必要がある。処理回路31は、2号炉において当該期間の分担計画量Cpを処理しつつ目的関数を最大化するように2号炉における処理計画量R2を決定する。2号炉への処理計画量R2も、分担計画量Cp、処理負荷運用範囲、貯留量運用範囲、ピット残量により時間経過に伴って変動し得る。
【0070】
以上のように、本実施の形態における廃棄物処理計画演算装置30および演算方法によれば、複数の施設1A,1B,1Cのそれぞれにおける起動停止計画Qが、複数の施設1A,1B,1Cに搬入される廃棄物搬入量推定値および複数の施設1A,1B,1C外から受け入れる外部廃棄物受入量を合計した値Ctから決定される。このため、複数の施設1A,1B,1Cにおいて1つの施設における定期点検期間に縛られない柔軟な運用を行うことができる。すなわち、合計搬入量推定値Ctに対して複数の施設1A,1B,1Cにおける運用上の制約を遵守しつつ複数の施設1A,1B,1C間における所望の分配条件および施設ごとの所望の処理条件を満たすような処理計画量Rを施設ごとに決定することができる。
【0071】
さらに、当該施設ごとの処理計画量Rを決定するための演算が第2単位期間ごとに行われることにより、施設ごとの分担計画量Cpから施設ごとの処理計画量を決定する演算を簡単化することができ、演算量および演算時間を低減することができる。これにより、複数の施設1A,1B,1Cのそれぞれについて分担計画量Cpを決定する際の分配条件および施設ごとの分担計画量Cpに基づいて施設ごとの処理計画量Rを決定する際の処理条件を同時に満たすような施設ごとの処理計画量Rを求める演算量および演算時間を低減することができる。したがって、複数の施設1A,1B,1C間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を実用的な時間で策定することができる。
【0072】
また、施設ごとの処理装置における処理量に対する発電量の関係に基づいて、各施設における発電量が最大化するように合計搬入量推定値Ctを複数の施設1A,1B,1Cに割り当てて分担計画量Cpを決定することにより、複数の施設1A,1B,1Cの全体的な発電効率を考慮することができる。したがって、複数の施設1A,1B,1C全体のエネルギー回収効率を高めることができる。
【0073】
さらに、施設ごとの発電量等が最大化するように、施設ごとの起動停止計画Qに応じて対応する分担計画量Cpを処理可能な施設ごとの処理計画量Rを決定することにより、各施設におけるエネルギー回収効率を最大化することができる。
【0074】
[最適化手法の利用]
以上のように、処理回路31は、施設ごとの起動停止計画Qおよび処理計画量Rを上記分担処理計画演算により決定することができる。しかし、当該演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rは、実現可能な解ではあるものの、それが最適解であるとは限らない。言い換えると、より適切な解が存在する余地がある。
【0075】
そのため、処理回路31は、上記分担処理計画演算により決定された施設ごとの起動停止計画Qまたは処理計画量Rを所定の最適化手法に適用することにより、所定の目的関数がより高い値となる施設ごとの起動停止計画Qまたは処理計画量Rの解を求める最適化問題として当該解を探索する処理を行い得る。
【0076】
例えば、最適化手法は、メタヒューリスティックスを含む。
図9は、メタヒューリスティックスにおける最適化演算処理の流れの一例を示すフローチャートである。処理回路31は、決定された施設ごとの起動停止計画Qまたは処理計画量Eを、メタヒューリスティックスにおける初期解として入力し、当該初期解を暫定解に設定する(ステップSC1)。処理回路31は、暫定解を用いて新たな候補解を探索する(ステップSC2)。
【0077】
例えば、処理回路31は、起動停止計画Qまたは処理計画量Eに応じたコード配列をランダムで生成する。処理回路31は、生成されたコード配列を暫定解におけるコード配列に近づける更新処理を行う。処理回路31は、更新後のコード配列において起動停止計画Qまたは処理計画量Eとして実現可能なコード配列を候補解として抽出する。あるいは、処理回路31は、暫定解に近いコード配列を所定の規則に沿って生成し、生成されたコード配列が起動停止計画Qまたは処理計画量Eとして実現可能である場合に当該コード配列を候補解としてもよい。
【0078】
処理回路31は、得られた候補解において目的関数を算出する(ステップSC3)。処理回路31は、当該目的関数の値が暫定解における目的関数の値より高いか否かを判定する(ステップSC4)。候補解における目的関数の値が暫定解における目的関数の値より高い場合(ステップSC4でYes)、処理回路31は、当該候補解を暫定解に更新する(ステップSC5)。処理回路31は、候補解の抽出回数をカウントし、候補解の抽出回数が規定回数以上か否かを判定する(ステップSC6)。候補解の抽出回数が規定回数以上になった場合(ステップSC6でYes)、処理回路31は、現在の暫定解を最適解として出力する(ステップSC7)。すなわち、処理回路31は、予め定められた数の候補解を探索するまで探索を繰り返し、最終的な暫定解を最適解として出力する。
【0079】
このように、最適化演算の初期解および最初の暫定解として、上記分担処理計画演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rを用いることにより、最適解に近い暫定解から探索を開始することができる。したがって、最適化演算に要する時間を短縮することができる。なお、メタヒューリスティックスのアルゴリズムは、特に限定されず、例えば、遺伝的アルゴリズム、焼きなまし法、粒子群最適化等、種々のアルゴリズムが適用可能である。
【0080】
なお、本例では、メタヒューリスティックスの初期解を、上記分担処理計画演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rとする態様を例示した。これに代えて、処理回路31は、上記分担処理計画演算によらない初期解を用いて最適化演算を実行し、候補解が抽出できない場合、または抽出した候補解における目的関数の値が基準値以下である場合に、現在の暫定解に代えて、上記演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rを新たな暫定解に決定してもよい。なお、上記分担処理計画演算によらない初期解は、例えば、起動停止計画Qまたは処理計画量Eに応じたコード配列がランダムで生成されたものが用いられ得る。
【0081】
また、処理回路31は、メタヒューリスティックスの初期解を複数個生成し、そのうちの少なくとも1つを上記分担処理計画演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rに基づくコード配列に置き換えてもよい。この場合、処理回路31は、複数の初期解についてそれぞれ最適化演算を実行することで複数の最終的な暫定解を演算する。処理回路31は、複数の最終的な暫定解のうち、目的関数の値が最も高いものを最適解として出力する。
【0082】
起動停止計画Qまたは処理計画量Rを求めるための最適化手法は、メタヒューリスティックスに限られない。例えば、最適化手法は、分枝限定法を含んでもよい。
図10は、分枝限定法における最適化演算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11は、
図10におけるステップSD6における処理の流れの一例を示すフローチャートである。処理回路31は、最適化問題の一部制約を緩和する緩和法により最適化問題から緩和問題を作成する。処理回路31は、作成した緩和問題を最適化計算することにより、当該緩和問題の最適値を算出する。処理回路31は、算出された緩和問題の最適値を最適化問題の上界値に設定する(ステップSD1)。
【0083】
処理回路31は、上記分担処理計画演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rを、分枝限定法における暫定解に設定する。処理回路31は、当該暫定解における最適化問題の暫定値、すなわち、目的関数の値を算出し、算出された最適化問題の暫定値を最適化問題の下界値に設定する(ステップSD2)。
【0084】
処理回路31は、最適化問題を場合分けによって複数の部分問題に分解する分枝操作を実行することにより複数の部分問題pを含む部分問題リストLを生成する(ステップSD3)。処理回路31は、部分問題リストLが空集合である、または、上界値から下界値を差し引いた値Vが予め定められた基準値Vth以下であるか否かを判定する(ステップSD4)。
【0085】
部分問題リストLが空集合ではなく、かつ、値Vが基準値Vthより大きい場合(ステップSD4でNo)、処理回路31は、部分問題リストLに含まれる部分問題pを選択し、当該部分問題pを部分問題リストLから削除する(ステップSD5)。処理回路31は、選択された部分問題pについて限定操作および分枝操作を実行する(ステップSD6)。処理回路31は、選択された部分問題pが実行可能かを判定する(ステップSD61)。選択された部分問題pが実行不可能である場合(ステップSD61でNo)、処理回路31は、ステップSD4の処理に戻る。
【0086】
選択された部分問題pが実行可能である場合(ステップSD61でYes)、処理回路31は、部分問題pの最適解を最適化演算により求める。処理回路31は、最適解が得られるかどうかを判定する(ステップSD62)。最適解が得られた場合(ステップSD62でYes)、処理回路31は、当該部分問題pの最適解における目的関数の値を算出し、当該値が下界値よりも高い値であるか否かを判定する(ステップSD63)。得られた値が下界値よりも低い値である場合(ステップSD63でNo)、処理回路31は、ステップSD4の処理に戻る。得られた値が下界値よりも高い値である場合(ステップSD63でYes)、当該部分問題pの最適解を暫定解に更新するとともに、当該部分問題pの最適解における目的関数の値を下界値に更新する(ステップSD64)。これにより、新しい下界値は、上界値により近い値となる。暫定解および下界値の更新後、処理回路31は、ステップSD4の処理に戻る。
【0087】
ステップSD62において、部分問題pの最適解が得られない場合(ステップSD62でNo)、処理回路31は、部分問題pの制約条件の一部を緩和して得られる緩和問題を生成する(ステップSD65)。処理回路31は、当該緩和問題を解き、当該緩和問題の解における目的関数の値を算出する。処理回路31は、緩和問題の解における目的関数の値が下界値よりも高い値であるか否かを判定する(ステップSD66)。目的関数の値が下界値よりも低い値である場合(ステップSD66でNo)、処理回路31は、ステップSD4の処理に戻る。
【0088】
目的関数の値が下界値よりも高い値である場合(ステップSD66でYes)、処理回路31は、部分問題pに対して分枝操作を実行することにより、複数の部分問題pkを生成する(ステップSD67)。処理回路31は、生成した部分問題pkを部分問題リストLに含める(ステップSD68)。その後、処理回路31は、ステップSD4の処理に戻る。
【0089】
このようにして、処理回路31は、部分問題リストL内の部分問題pおよびpkについて限定操作および分枝操作を繰り返し実行し、目的関数の値が暫定値より高い新たな解が見つかった場合に、暫定解およびそれに対応する下界値を更新する。処理回路31は、上界値と下界値との差Vが予め定められた基準値Vth以下となる、または、複数の部分問題pおよびpkについての操作がすべて終了し、部分問題リストLが空集合となった場合(ステップSD4でYes)に、最終的な暫定解を最適解として出力する(ステップSD7)。
【0090】
このように、上記分担処理演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rを下界値に設定することにより、分枝限定法による最適化演算において、限定操作を演算初期から実施することができ、不要な探索を省略することができる。また、最初に設定される下界値を上界値にある程度近い値とすることができ、演算量を提言することができる。
【0091】
なお、本例では、分枝限定法による最適化演算における下界値として、上記分担処理演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rを用いる態様を例示したが、上界値と比較して何らかの処理を行うために下界値が設定される他の最適化演算において、上記分担処理演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rが当該下界値に設定されてもよい。例えば、ラグランジュ緩和におけるペナルティ項の係数に相当するラグランジュ乗数を更新するためのステップサイズに用いられる下界値またはラグランジュ乗数を更新する際の終了条件に用いられる下界値に対して、上記分担処理演算により決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rが設定されてもよい。
【0092】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0093】
例えば、上記実施の形態においては、廃棄物処理計画演算の対象として、ストーカ式の焼却炉2を有する廃棄物処理施設1を例示したが、廃棄物を処理する処理装置を備えた廃棄物処理施設であれば、これに限られない。例えば、本開示の廃棄物処理計画演算方法を、流動層式の焼却炉を有する焼却プラント、廃棄物を破砕する破砕機を有する破砕選別プラント等に適用することも可能である。また、廃棄物処理施設1は、焼却炉2以外の処理装置を備えてもよい。例えば、処理装置は、炭化装置または埋立処分場等を含み得る。
【0094】
また、上記実施の形態においては、廃棄物処理計画演算装置30が複数の施設1A,1B,1Cと通信ネットワーク38を介して接続される独立した装置または施設として構成される態様を例示したが、これに限られない。例えば、廃棄物処理計画演算装置30は、複数の施設1A,1B,1Cの何れかの廃棄物処理施設に設置されてもよい。また、廃棄物処理計画演算装置30は、複数の施設1A,1B,1Cを管理する管理施設に設置されてもよいし、クラウドサーバ等の情報処理装置として管理施設とは別に設置されてもよい。あるいは、管理施設はなくてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態においては、廃棄物処理計画演算装置30が各施設1A,1B,1Cの起動停止計画Qを決定する態様を例示したが、これに限られない。例えば、各施設1A,1B,1Cの起動停止計画Qは、対応する施設1A,1B,1Cで決定され、決定された起動停止計画Qが廃棄物処理計画演算装置30に送信されてもよい。また、起動停止計画Qの決定は、所定の決定プログラムによって自動的に決定されてもよいし、ユーザが起動停止計画Qを作成し、それを廃棄物処理計画演算装置30に入力してもよい。このように、廃棄物処理計画演算装置30の処理回路31は、施設ごとの起動停止計画Qを決定しなくてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態においては、3つの施設1A,1B,1Cの廃棄物搬入量推定値および外部廃棄物受入量を加えた合計搬入量推定値Ctに基づいて3つの施設1A,1B,1Cの処理計画量Rを決定する態様を例示したが、これに限られない。例えば、3つの施設1A,1B,1Cのうちの少なくとも何れか1つの施設に以前に決定されていた起動停止計画に従わない計画外停止が発生した場合に、3つの施設1A,1B,1Cのうちの残りの施設に対する廃棄物受け入れ要請があった場合の当該残りの施設における処理計画量Rの再決定にも上記実施の形態における演算態様が適用可能である。例えば、A施設1Aに計画外停止が発生した場合、処理回路31は、A施設1Aにおける計画外停止発生以後の廃棄物搬入量推定値を外部廃棄物受入量として、残りの施設1B,1Cの廃棄物搬入量推定値と、外部廃棄物受入量とを合計した合計搬入量推定値Ctに基づいて残りの施設1B,1Cにおける処理計画量Rを上記演算態様と同様に演算し得る。
【0097】
また、上記実施の形態では、決定された起動停止計画Qまたは処理計画量Rに対して最適化手法を適用可能であることを示したが、最適化手法の適用は必須ではない。また、最適化手法は、起動停止計画Qの決定に対してのみ適用されてもよいし、処理計画量Rの決定に対してのみ適用されてもよいし、起動停止計画Qおよび処理計画量Rの決定の双方に適用されてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、廃棄物処理計画演算装置30の処理回路31が最適化手法を適用した演算を行う態様を例示したが、初期解、暫定解または下界値とする起動停止計画Qまたは処理計画量Rを演算する処理回路と、最適化手法を適用した演算を行う処理回路とが別の処理回路であってもよい。
【0099】
[本開示のまとめ]
[項目1]
本開示の一態様に係る廃棄物処理計画演算装置は、廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する廃棄物処理計画演算装置であって、前記複数の施設は、それぞれ、当該施設に搬送された廃棄物を一時貯留する貯留ピットと、廃棄物を処理する処理装置と、を含み、前記廃棄物処理計画演算装置は、前記分担処理計画を演算する処理回路を備え、前記処理回路は、施設ごとの前記処理装置における処理量の範囲を定める処理負荷運用範囲、施設ごとの前記貯留ピットにおける貯留量の範囲を定める貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの前記処理装置において連続して処理可能な期間を定める連続稼働範囲、および、施設ごとの前記処理装置を休止する期間を定める定期点検計画を取得し、当該データから施設ごとに受け入れ可能な廃棄物量の範囲を定める廃棄物搬入可能量範囲を算出し、前記複数の施設外から受け入れる外部廃棄物の量を定める外部廃棄物受入量および施設ごとの廃棄物搬入量推定値のデータを取得し、前記外部廃棄物受入量および施設ごとの前記廃棄物搬入量推定値を合計した、合計搬入量推定値を、予め定められた分配条件に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記複数の施設に分配して、施設ごとの分担計画量を決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、および前記定期点検計画のデータに基づいて、前記処理装置において廃棄物の処理を行う起動期間および前記廃棄物の処理を停止する停止期間を定めた起動停止計画を施設ごとに決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記起動停止計画、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、および前記演算時点におけるピット残量を用いて、予め定められた処理条件に基づいて、施設ごとの前記起動停止計画に応じて対応する前記分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定し、前記施設ごとの処理計画量の決定を、計画期間である第1単位期間より短く、前記複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる、第2単位期間ごとに行う。
【0100】
上記構成によれば、複数の施設のそれぞれにおける起動停止計画が、複数の施設に搬入される廃棄物搬入量推定値および複数の施設外から受け入れる外部廃棄物受入量を合計した値から決定される。このため、複数の施設において1つの施設における定期点検期間に縛られない柔軟な運用を行うことができる。すなわち、合計搬入量推定値に対して複数の施設における運用上の制約を遵守しつつ複数の施設間における所望の分配条件および施設ごとの所望の処理条件を満たすような処理計画量を施設ごとに決定することができる。
【0101】
さらに、当該施設ごとの処理計画量を決定するための演算が第2単位期間ごとに行われることにより、施設ごとの分担計画量から施設ごとの処理計画量を決定する演算を簡単化することができ、演算量および演算時間を低減することができる。これにより、複数の施設のそれぞれについて分担計画量を決定する際の分配条件および施設ごとの分担計画量に基づいて施設ごとの処理計画量を決定する際の処理条件を同時に満たすような施設ごとの処理計画量を求める演算量および演算時間を低減することができる。したがって、複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を実用的な時間で策定することができる。
【0102】
[項目2]
項目1の廃棄物処理計画演算装置において、前記分配条件は、前記複数の施設に設定された優先順位が高い施設から当該施設における前記廃棄物搬入可能量範囲内において優先的に前記合計搬入量推定値を割り当てることを含んでもよい。
【0103】
[項目3]
項目1または2の廃棄物処理計画演算装置において、前記分配条件は、施設ごとの発電効率、前記外部廃棄物の発生場所から施設までの距離、前記外部廃棄物の運搬時の二酸化炭素排出量、または廃棄物搬入可能量範囲に基づいて定められる施設間の分担比率に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記合計搬入量推定値を各施設に割り当てることを含んでもよい。
【0104】
[項目4]
項目1から3の何れかの廃棄物処理計画演算装置において、前記複数の施設は、それぞれ、前記処理装置の排熱を利用して発電を行う発電機を含み、前記処理回路は、施設ごとの前記発電機における発電量の上限を定める定格発電量、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の処理量に対する前記処理装置において処理した廃棄物により発生する熱量の関係を示す平均発熱量、および、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の発熱量に対する発電量の関係を定める発電効率のデータを取得し、施設ごとの前記平均発熱量および前記発電効率から施設ごとの処理量に対する発電量の関係を決定し、前記分配条件は、施設ごとの前記処理量に対する発電量の関係、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、および前記定期点検計画のデータを用いて各施設における発電量が最大化するように、施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記合計搬入量推定値を各施設に割り当てることを含んでもよい。
【0105】
これによれば、施設ごとの処理装置における処理量に対する発電量の関係に基づいて、各施設における発電量が最大化するように合計搬入量推定値を複数の施設に割り当てて分担計画量を決定することにより、複数の施設の全体的な発電効率を考慮することができる。したがって、複数の施設全体のエネルギー回収効率を高めることができる。
【0106】
[項目5]
項目1から4の何れかの破棄物処理計画演算装置において、前記複数の施設は、それぞれ、前記処理装置の排熱を利用して発電を行う発電機を含み、前記処理回路は、施設ごとの前記発電機における発電量の上限を定める定格発電量、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の処理量に対する前記処理装置において処理した廃棄物により発生する熱量の関係を示す平均発熱量、および、施設ごとの前記処理装置における廃棄物の発熱量に対する発電量の関係を定める発電効率のデータを取得し、施設ごとの前記平均発熱量および前記発電効率から施設ごとの処理量に対する発電量の関係を決定し、前記処理条件は、所定の目的関数を最大化することを含み、前記目的関数は、前記処理量に対する発電量の関係から求められる施設ごとの発電量、前記発電量から当該施設で消費される消費電力量を差し引いた余剰電力量、または、前記余剰電力量および電力の売電単価から求められる売電利益であり、前記処理回路は、前記目的関数を最大化する最適化演算を行うことにより、施設ごとの処理計画量を決定してもよい。
【0107】
これによれば、施設ごとの発電量等が最大化するように、施設ごとの起動停止計画に応じて対応する分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定することにより、各施設におけるエネルギー回収効率を最大化することができる。
【0108】
[項目6]
項目1から5の何れかの廃棄物処理計画演算装置において、前記処理回路は、決定された施設ごとの起動停止計画または処理計画量を所定の最適化手法に適用することにより、所定の目的関数がより高い値となる施設ごとの起動停止計画または処理計画量の解を求める最適化問題として前記解を探索してもよい。
【0109】
これによれば、最適化演算の初期解、暫定解または下界値として、上記演算により決定された起動停止計画および処理計画量を用いることにより、最適解に近い解から探索を開始することができる。したがって、最適化演算に要する時間を短縮することができる。
【0110】
[項目7]
項目6の廃棄物処理計画演算装置において、前記最適化手法は、メタヒューリスティックスを含み、前記処理回路は、決定された施設ごとの起動停止計画または処理計画量を、前記メタヒューリスティックスにおける暫定解として入力し、当該暫定解に基づいて新たな候補解を探索し、前記目的関数が前記暫定解より高い候補解が得られた場合に当該候補解を暫定解に更新し、予め定められた数の候補解を探索するまで探索を繰り返し、最終的な暫定解を最適解として出力してもよい。
【0111】
[項目8]
項目6の廃棄物処理計画演算装置において、前記最適化手法は、分枝限定法を含み、前記処理回路は、決定された施設ごとの起動停止計画または処理計画量を、前記分枝限定法における暫定解として入力し、前記暫定解から前記最適化問題の暫定値を算出し、前記最適化問題の暫定値を前記最適化問題の下界値とし、前記最適化問題の一部制約を緩和する緩和法により最適化問題から緩和問題を生成し、前記緩和問題の最適化計算から前記緩和問題の最適値を算出し、前記緩和問題の最適値を最適化問題の上界値とし、前記最適化問題を場合分けによって複数の部分問題に分解し、前記複数の部分問題について限定操作および分枝操作を行い、前記目的関数が前記暫定解より高い新たな解が見つかった場合に、前記暫定解および前記下界値を更新し、前記上界値と前記下界値との差が予め定められた基準値以下となる場合、または、前記複数の部分問題についての操作がすべて終了した場合に、最終的な前記暫定解を最適解として出力してもよい。
【0112】
[項目9]
本開示の他の態様に係る廃棄物処理計画演算方法は、廃棄物を処理する複数の施設間で廃棄物の処理量を分担するための分担処理計画を演算する廃棄物処理計画演算方法であって、前記複数の施設は、それぞれ、当該施設に搬送された廃棄物を一時貯留する貯留ピットと、廃棄物を処理する処理装置と、を含み、前記方法は、施設ごとの前記処理装置における処理量の範囲を定める処理負荷運用範囲、施設ごとの前記貯留ピットにおける貯留量の範囲を定める貯留量運用範囲、施設ごとの演算時点におけるピット残量、施設ごとの前記処理装置において連続して処理可能な期間を定める連続稼働範囲、および、施設ごとの前記処理装置を休止する期間を定める定期点検計画のデータを取得し、当該データから施設ごとの外部から受け入れ可能な廃棄物量の範囲を定める廃棄物搬入可能量範囲を算出し、前記複数の施設外から受け入れる外部廃棄物の量を定める外部廃棄物受入量および施設ごとの廃棄物搬入量推定値のデータを取得し、前記外部廃棄物受入量および施設ごとの前記廃棄物搬入量推定値を合計した、合計搬入量推定値を、予め定められた分配条件に基づいて施設ごとの前記廃棄物搬入可能量範囲内において前記複数の施設に分配して、施設ごとの分担計画量を決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、前記演算時点におけるピット残量、前記連続稼働範囲、前記定期点検計画、および前記廃棄物搬入量推定値のデータに基づいて、前記処理装置において廃棄物の処理を行う起動期間および前記廃棄物の処理を停止する停止期間を定めた起動停止計画を施設ごとに決定し、施設ごとの前記分担計画量、前記起動停止計画、前記処理負荷運用範囲、前記貯留量運用範囲、および前記演算時点におけるピット残量を用いて、予め定められた処理条件に基づいて、施設ごとの前記起動停止計画に応じて対応する前記分担計画量を処理可能な施設ごとの処理計画量を決定し、前記施設ごとの処理計画量の決定を、計画期間である第1単位期間より短く、前記複数の施設の起動停止周期が所定の回数以下となる、第2単位期間ごとに行う。
【符号の説明】
【0113】
1,1A,1B,1C 廃棄物処理施設
2 焼却炉
9 貯留ピット
23 発電機
30 廃棄物処理計画演算装置
31 処理回路