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特開2024-101191デバイスモジュール、及び、変更部材付属蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101191
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】デバイスモジュール、及び、変更部材付属蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/358 20210101AFI20240722BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240722BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240722BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240722BHJP
【FI】
H01M50/358
H01M50/342 101
H01M50/204 401H
H01M50/119
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005003
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 泰憲
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC06
5H011FF02
5H012AA07
5H012BB02
5H012CC03
5H012DD05
5H012EE01
5H012EE04
5H012FF01
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスに異常が生じて、安全弁が開弁した場合でも、モジュールをなす構造体に不具合を生じることを抑制したデバイスモジュール、及び、これに用いる変更部材付属蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】デバイスモジュール30は、安全弁9を有する蓄電デバイス2と、蓄電デバイスと一体にされた構造体40であって、安全弁9が開弁したときに、安全弁9から噴出物SPが噴出する噴出方向SPHに位置する噴出方向部49Dを含む構造体40と、安全弁9と噴出方向部49Dとの間に位置して、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを変更する方向変更部11を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全弁を有する蓄電デバイスと、
前記蓄電デバイスと一体にされた構造体であって、
前記安全弁が開弁したときに、前記安全弁から噴出物が噴出する噴出方向に位置する噴出方向部を含む
構造体と、を備える
デバイスモジュールであって、
前記安全弁と前記噴出方向部との間に位置して、前記安全弁から前記噴出方向に噴出する前記噴出物の少なくとも一部の進行方向を変更する方向変更部を更に備える
デバイスモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスモジュールであって、
前記方向変更部は、
前記噴出物の前記進行方向を分散させる分散部である
デバイスモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスモジュールであって、
前記分散部は、
前記安全弁から噴出した前記噴出物を、複数の進行方向に分けて導く複数経路形成部材を有する
デバイスモジュール。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、
前記方向変更部のうち、少なくとも前記噴出物が当たる部位は、前記噴出物の温度に耐える耐熱材料からなる
デバイスモジュール。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、
前記方向変更部を、前記安全弁を覆う形態で、前記蓄電デバイスに一体に設けてなる
デバイスモジュール。
【請求項6】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、
前記方向変更部を、前記構造体に一体に設けてなる
デバイスモジュール。
【請求項7】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、
前記蓄電デバイスは、
ケース壁部をなす金属ケースを有し、
前記安全弁は、
前記ケース壁部の一部に設けられた薄肉部が破断して開弁する破断型安全弁であり、
前記噴出方向部は、
前記安全弁に正対する正対噴出方向部である
デバイスモジュール。
【請求項8】
安全弁を有する蓄電デバイスと、
前記安全弁を覆い、
前記安全弁が開弁したときに、前記安全弁から噴出方向に噴出する噴出物の少なくとも一部の進行方向を変更する方向変更部をなし、
前記蓄電デバイスに一体に設けた
変更部材と、を備える
変更部材付属蓄電デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の変更部材付属蓄電デバイスであって、
前記方向変更部は、
前記噴出物の進行方向を分散させる分散部である
変更部材付属蓄電デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の変更部材付属蓄電デバイスであって、
前記分散部は、
前記安全弁から噴出した前記噴出物を、複数の進行方向に分けて導く複数経路形成部材を有する
変更部材付属蓄電デバイス。
【請求項11】
請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の変更部材付属蓄電デバイスであって、
前記変更部材のうち、少なくとも前記噴出物が当たる部位は、前記噴出物の温度に耐える耐熱材料からなる
変更部材付属蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスモジュール、及び、変更部材付属蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1又は複数の二次電池を筐体などの構造体内に収容して電池モジュールとし、この電池モジュールを自動車などの各種の機器に用いる場合がある。
このような二次電池には、安全弁が設けられている。もし二次電池に異常が生じ、二次電池の内圧が上昇した場合には、安全弁を作動させて、ガス等を噴出させて内圧を下げるためである。但し、安全弁が開弁した際に、高温の噴出物が噴出する虞がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、安全弁(ガス排出弁)と電極体との間であって、安全弁と対向する位置に金属製の遮蔽部材を配置した角形二次電池を開示している。この二次電池によれば、安全弁が作動した際に、高温の溶融物や火花等が安全弁から電池ケース外に噴出することを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2018/079423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の二次電池を用いた場合でも、開弁した安全弁から高温のガスなどの噴出物が噴出するのを防止することはできない。
開弁した安全弁から噴出する噴出物は、噴出方向に集中してビーム状に噴出しがちである。このため、モジュールを構成する筐体などの構造体のうち、噴出方向に位置する部位に高温の噴出物が集中して当たり続けることで、この部位に穴が空き、この穴を通じてモジュール外に噴出物が噴出したり、この部位付近が熱変形したりする不具合が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、デバイスモジュールに含まれる蓄電デバイスに異常が生じて、安全弁が開弁した場合でも、モジュールをなす構造体に不具合を生じることを抑制したデバイスモジュール、及び、これに用いる変更部材付属蓄電デバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、安全弁を有する蓄電デバイスと、前記蓄電デバイスと一体にされた構造体であって、前記安全弁が開弁したときに、前記安全弁から噴出物が噴出する噴出方向に位置する噴出方向部を含む構造体と、を備えるデバイスモジュールであって、前記安全弁と前記噴出方向部との間に位置して、前記安全弁から前記噴出方向に噴出する前記噴出物の少なくとも一部の進行方向を変更する方向変更部を更に備えるデバイスモジュールである。
【0008】
このデバイスモジュールでは、安全弁と構造体のうち噴出方向部との間に方向変更部を備えている。このため、安全弁が開弁した場合に、安全弁から噴出方向に向けて噴出した高温のガスなど噴出物のうち、一部又は全部の進行方向が変更され、噴出物が噴出方向部に集中的に当たるのを抑制或いは防止できる。かくして、噴出物によって、噴出方向部に穴が開いたり、噴出物がこの穴を通じて外部に噴き出たり、噴出方向部をなす部材に熱変形を生じたりする不具合の発生を抑制できる。
【0009】
蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池等の二次電池やリチウムイオンキャパシタなどのキャパシタが挙げられる。
安全弁としては、蓄電デバイスの内圧が開弁圧を越えた場合に、弁部材の破断などを生じて開弁する非復帰型の安全弁のほか、ガスを排出して内圧が低下した場合には、弁を閉じる復帰型の安全弁も用い得る。
また、構造体は、1又は複数の蓄電デバイスと一体とされて、蓄電デバイスと共にデバイスモジュールを構成する部材であり、例えば、デバイスモジュールにおいて蓄電デバイスなどを収容する筐体、カバー、噴出するガスなどを外部に排出する排出路を構成する排出路構成部材などが挙げられる。
【0010】
噴出方向部は、構造体のうち、安全弁から噴出物が噴出する噴出方向に位置する部位である。
方向変更部は、デバイスモジュールのうち安全弁と噴出方向部との間において、噴出方向に噴出する噴出物の少なくとも一部(一部又は全部)の進行方向を分散可能に配置されていれば良い。従って例えば、方向変更部をなす変更部材を、蓄電デバイス及び構造体とは別体として設けることができる。また、方向変更部をなす変更部材を、蓄電デバイスに一体に設けることもできる。また逆に、噴出方向部をなす部材など構造体をなす部材と一体に設けることもできる。またデバイスモジュールは、蓄電デバイス毎に分散部を各々1つ備えるものでも、1つの分散部が複数の蓄電デバイスの安全弁に対応するようにしても良い。
【0011】
(2)上述の(1)に記載のデバイスモジュールであって、前記方向変更部は、前記噴出物の前記進行方向を分散させる分散部であるデバイスモジュールとすると良い。
【0012】
上述のデバイスモジュールでは、安全弁と噴出方向部との間に設ける方向変更部を分散部としている。このため、安全弁の開弁部位から噴出した噴出物の少なくとも一部の進行方向が変更され且つ分散される。このため、噴出物が噴出方向部に集中的に当たるのを抑制できるのみならず、噴出物を分散して進行させるので、噴出物が当たった部位における熱的影響を更に低下させることができる。かくして、噴出物によって、噴出方向部をなす部材に穴が開いたり、この穴を通じて噴出物が外部に噴き出たり、噴出方向部をなす部材に熱変形を生じたりする不具合の発生をさらに確実に抑制できる。
【0013】
(3)さらに(2)に記載のデバイスモジュールであって、前記方向変更部は、前記噴出物の前記進行方向を分散させる分散部であるデバイスモジュールとすると良い。
【0014】
上述のデバイスモジュールでは、分散部が複数経路形成部材を有しているので、確実に噴出物の進行方向を分散することができる。
【0015】
(4)更に、(1)~(3)のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、前記方向変更部のうち、少なくとも前記噴出物が当たる部位は、前記噴出物の温度に耐える耐熱材料からなるデバイスモジュールとすると良い。
【0016】
このデバイスモジュールでは、方向変更部のうち少なくとも噴出物が当たる部位が耐熱材料からなるので、噴出した噴出物が当たっても、確実に噴出物の進行方向を変更させ続けることができる。
【0017】
なお使用し得る耐熱材料としては、噴出物の温度及び予測される噴出の継続時間を考慮して選択すれば良いが、融点が600℃以上の材料、例えば、炭素鋼,ステンレス鋼などの鋼材、鉄、銅、ニッケル、チタンやこれらの合金などの金属材やアルミナなどのセラミックス材が挙げられる。
【0018】
(5)また、(1)~(4)のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、前記方向変更部を、前記安全弁を覆う形態で、前記蓄電デバイスに一体に設けてなるデバイスモジュールとすると良い。
【0019】
このデバイスモジュールでは、方向変更部を蓄電デバイスに一体に設けているので、蓄電デバイスおよび安全弁に対して、方向変更部を常に適切な位置に配置した状態とすることができる。
【0020】
方向変更部を蓄電デバイスに一体に設ける手法としては、方向変更部をなす変更部材を蓄電デバイスのケースに溶接、接着、係合などによって固着する手法が挙げられる。
【0021】
(6)或いは(1)~(4)のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、前記方向変更部を、前記構造体に一体に設けてなるデバイスモジュールとしても良い。
【0022】
このデバイスモジュールでは、方向変更部を構造体に一体に設けているので、構造体の噴出方向部に対して、方向変更部を常に適切な位置に配置した状態とすることができる。
【0023】
(7)さらに(1)~(6)のいずれか1項に記載のデバイスモジュールであって、前記蓄電デバイスは、ケース壁部をなす金属ケースを有し、前記安全弁は、前記ケース壁部の一部に設けられた薄肉部が破断して開弁する破断型安全弁であり、前記噴出方向部は、前記破断型安全弁に正対する正対部であるデバイスモジュールとすると良い。
【0024】
このデバイスモジュールでは、安全弁は破断型安全弁であり、噴出方向部は正対噴出方向部である。即ち、正対噴出方向部は破断型安全弁に正対しているので、方向変更部を設けない場合には、噴出方向が正対噴出方向部に概ね直交することとなり、安全弁から噴出した噴出物が正面から正対噴出方向部に当たるので、正対噴出方向部に穴が空くなどの不具合を生じ易い。
これに対し、本技術では、方向変更部を備えているので、正対噴出方向部に当たる噴出物を減少させ或いは無くすことができ、正対噴出方向部に穴が空くなどの不具合発生を抑制或いは防止できる。
【0025】
(8)さらに他の解決手段は、安全弁を有する蓄電デバイスと、前記安全弁を覆い、前記安全弁が開弁したときに、前記安全弁から噴出方向に噴出する噴出物の少なくとも一部の進行方向を変更する方向変更部をなし、前記蓄電デバイスに一体に設けた変更部材と、を備える変更部材付属蓄電デバイスである。
【0026】
この変更部材付属デバイスでは、変更部材を蓄電デバイスに一体に設けている。このため、安全弁が開弁した場合に、安全弁から噴出方向に向けて噴出した高温のガスなど噴出物のうち、一部又は全部の進行方向が変更され、噴出物が噴出方向に集中的に進行するのを抑制或いは防止できる。
かくして、この変更部材付属デバイスを構造体に組み付けてデバイスモジュール等とした場合に、構造体のうち噴出方向に位置する噴出方向部をなす部材に、噴出物が集中して当たって穴が開いたり、この穴を通じて噴出物が外部に噴き出たり、噴出方向部をなす部材に熱変形を生じたりする不具合の発生を抑制できる。
しかも、この変更部材付属蓄電デバイスでは、変更部材を蓄電デバイスに一体に設けているので、蓄電デバイスおよび安全弁に対して、方向変更部を常に適切な位置に配置した状態にできる。
【0027】
(9)また(8)に記載の変更部材付属蓄電デバイスであって、前記方向変更部は、前記噴出物の進行方向を分散させる分散部である変更部材付属蓄電デバイスとすると良い。
【0028】
この変更部材付属蓄電デバイスでは、方向変更部が分散部である。このため、噴出物が噴出方向に集中的に進行するのを抑制できるのみならず、噴出物を分散して進行させるので、噴出物が当たった部位における熱的影響を更に低下させることができる。かくして、噴出物が当たった部材に穴が開いたり、この穴を通じて噴出物が外部に噴き出たり、噴出方向部をなす部材に熱変形を生じたりする不具合の発生を、さらに確実に抑制できる。
【0029】
(10)更に(9)に記載の変更部材付属蓄電デバイスであって、前記分散部は、前記安全弁から噴出した前記噴出物を、複数の進行方向に分けて導く複数経路形成部材を有する変更部材付属蓄電デバイスとすると良い。
【0030】
この変更部材付属蓄電デバイスでは、分散部が複数経路形成部材を有しているので、確実に噴出物の進行方向を分散することができる。
【0031】
(11)更に(8)~(10)のいずれか1項に記載の変更部材付属蓄電デバイスであって、前記変更部材のうち、少なくとも前記噴出物が当たる部位は、前記噴出物の温度に耐える耐熱材料からなる変更部材付属蓄電デバイスとすると良い。
【0032】
この変更部材付属蓄電デバイスでは、変更部材のうち少なくとも噴出物が当たる部位が耐熱材料からなるので、噴出した噴出物が当たっても、確実に噴出物の進行方向を変更させ続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る変更部材付属電池の斜視図である。
図2】実施形態に係る分散部材の斜視図である。
図3】実施形態に係る変更部材付属電池のうち、分散部材付近を拡大して示す部分拡大断面図である。
図4】実施形態及び変形形態1~6に係る電池モジュールの斜視図である。
図5】実施形態及び変形形態1~6に係る電池モジュールのトッププレートを除去した状態を示す斜視図である。
図6】実施形態に係る変更部材付属電池に釘刺し試験を行う様子を示す説明図である。
図7】比較形態に係り、変更部材を設けない電池の安全弁が開弁した場合の、噴出物の進行状態を示す説明図である。
図8】実施形態に係る変更部材付属電池の安全弁が開弁した場合の、噴出物の進行状態を示す説明図である。
図9】変形形態1に係る変更部材付属電池のうち、分散部材付近を拡大して示す部分拡大断面図である。
図10】変形形態2に係る変更部材付属電池のうち、分散部材付近を拡大して示す部分拡大断面図である。
図11】変形形態3に係る変更部材付属電池のうち、分散部材付近を拡大して示す部分拡大断面図である。
図12】変形形態4に係る変更部材付属電池のうち、分散部材付近を拡大して示す部分拡大断面図である。
図13】変形形態5に係る変更部材付属電池のうち、分散部材付近を拡大して示す部分拡大断面図である。
図14】変形形態6に係る変更部材付属電池のうち、分散部材付近を拡大して示す部分拡大断面図である。
図15】変形形態7に係る電池モジュールのトッププレートを除去した状態を示す斜視図である。
図16】変形形態7係る分散部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る変更部材付属電池(変更部材付属蓄電デバイスの一例、以下単に付属電池ともいう)1、及び、これを用いた電池モジュール(デバイスモジュールの一例)30を、図1図8を参照しつつ説明する。なお、以下では、付属電池1をなす電池2の電池高さ方向AH、電池幅方向BH及び電池厚み方向CHを、図1に示す方向と定めて説明する。この電池2は、角型で密閉型のリチウムイオン二次電池であり、電池モジュール30および変更部材付属電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両や各種の機器に搭載される。
【0035】
本実施形態の付属電池1は、電池2とこの電池2に固設された分散部材10とからなる。このうち、電池2は、ケース3と、ケース3の内部に収容された電極体4(図8参照)と、ケース3に固設された正極端子5及び負極端子6と、これらとケース3との間を絶縁する絶縁部材7,8とから構成されている。電極体4は、ケース3内で、図示しない袋状の絶縁フィルムに覆われている。またケース3内には、電解液(図示しない)が収容されており、その一部は電極体4内に含浸され、一部はケース3の底部に溜まっている。
【0036】
このうちケース3は、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなり、電池高さ方向AHの一方(図1において上方)が開口する有底角筒状のケース本体3Bと、ケース本体3Bの開口を閉塞する形態でケース本体3Bに溶接された矩形板状の蓋体3Lとから構成されている。
【0037】
蓋体3Lのうち電池幅方向BHの一方(図1において右方)の端部付近には、アルミニウム材から構成され、蓋体3Lを貫通してケース3内から外部に延出する正極端子5が、絶縁部材7を介して蓋体3Lと絶縁された状態で、蓋体3Lに固設されている。この正極端子5は、ケース3内で電極体4に接続し導通している。
また蓋体3Lのうち電池幅方向BHの他方(図1において左方)の端部付近には、銅材から構成され、蓋体3Lを貫通してケース3内から外部に延出する負極端子6が、負極絶縁部材8を介し蓋体3Lと絶縁された状態で、蓋体3Lに固設されている。この負極端子6は、ケース3内で電極体4に接続し導通している。
【0038】
なお、絶縁部材7,8は、絶縁性樹脂からなり、本実施形態では具体的にはPFAからなる。なお、絶縁部材7,8を構成する絶縁性樹脂材としては、上述のPFAなどのフッ素系樹脂のほか、PE,PP,PPSなど適宜の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0039】
また蓋体(ケース壁部の一例)3Lのうち電池幅方向BHの中央付近には、ケース3の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する破断型の安全弁9が設けられている。本実施形態では、安全弁9は、平面視、電池幅方向BHに長い長円形状で蓋体3Lよりも薄い薄肉部9Sを有している。この長円形状の薄肉部9Sの電池幅方向BHの中央には、更にV溝状に薄肉とされた中央溝部9Gが形成されており、電池2の異常により内圧が開弁圧を越えると、薄肉部9Sのうち中央溝部9Gから破断が開始して開弁する。この際、安全弁9からは、高温のガス等の噴出物SPが、噴出方向SPHに向けて噴出する。具体的には、噴出物SPが、略円柱状や先太で細い円錐台状などのビーム形状となって狭い範囲に集中しつつ、蓋体3Lに直交する電池高さ方向AHにほぼ一致する噴出方向SPHに噴出する(図7参照)。
【0040】
なお、ケース3内に収容された電極体4は、いわゆる扁平捲回型電極体であり、図示しない帯状の正極板と帯状の負極板とを一対の帯状のセパレータを介して捲回し、電池厚み方向CHに押圧して扁平にしてなる。この電極体4は、横倒しの姿勢、即ち、捲回軸を電池幅方向BHに一致する姿勢として、ケース3内に収容されている(図7図8参照)。
【0041】
一方、分散部材10(変更部材の一例、図2図3参照)は、安全弁9を電池高さ方向AHから覆うように配置され、ケース3の蓋体3Lに固設されている。この分散部材10は、分散部11と、この分散部11を保持する保持部材12とからなる。本実施形態では、分散部材10をなす分散部11及び保持部材12は、耐熱性を考慮して、いずれも鉄からなる。このため、後述するように分散部11に安全弁9から噴出した噴出物SPが当たっても、熔融したりすること無く、分散部11で確実に噴出物SPの進行方向RDを変更させ、進行方向RDを分散させ続けることができる(後述する変形形態1~7の分散部材或いは変更部材110~710も同様)。
【0042】
分散部11は、図2及び図3に示すように、図3の紙面に直交する電池厚み方向CHに延びる複数の平板状のフィン11Fから構成されている。各フィン11Fは、電池幅方向BHの中央11Cに対し電池幅方向BHに対称に、かつ、いずれのフィン11Fも電池高さ方向AHの上側(安全弁9から離れる側)ほど、電池幅方向BHに位置するように傾けて配置されている。但し、中央11Cに対し電池幅方向BHの外側に位置するフィン11Fほど傾きが小さくなるように配置されている。しかも、分散部11は、安全弁9と後述するトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に位置している。これにより分散部11は、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部(本実施形態では全部)の進行方向RDを、中央11Cから電池幅方向BHの両外側に向かう方向に変更する。
【0043】
このため、電池2に分散部11を設けない場合には、図7に示すように、安全弁9から噴出し、ビーム形状となって狭い範囲に集中しつつ噴出方向SPHに向けて進行する噴出物SPについて、少なくとも一部(本実施形態では全部)の噴出物SPの進行方向RDを噴出方向SPHから変化させて、噴出方向部49Dに向けて進行する噴出物SPの量を減少させることができる。
【0044】
しかも、この分散部11は、噴出物SPの進行方向RDを分散させる分散部である。即ち、分散部11を設けない場合に、安全弁9からの噴出物SPが噴出方向SPHに向けて進行する範囲に比して、少なくとも噴出物SPの一部の進行方向RDを変化させて、噴出物SPが進行する方向の範囲を拡げている(図8参照)。
【0045】
加えてこの分散部11は、安全弁9から噴出した噴出物SPを、複数の進行方向RDに分けて導くフィン(複数経路形成部材の一例)11Fを有している。このため、確実に噴出物SPの進行方向RDを分散することができる(図8参照)。
【0046】
一方、保持部材12は、分散部11をなすフィン11Fを保持して電池高さ方向AHに延びる板状の立壁部12Wと、立壁部12Wに対しL字状に屈曲し、蓋体3Lに沿って延びる支持部12Sとを有する。本実施形態では、支持部12Sを蓋体3Lに固着(本実施形態では超音波溶接)することにより、分散部材10が蓋体3Lに固設されている。
【0047】
このように、本実施形態の付属電池1では、分散部材10を電池2に一体に設けている。このため、安全弁9が開弁した場合に、安全弁9から噴出方向SPHに向けて噴出した噴出物SPのうち、一部又は全部の進行方向RDを変更でき、噴出物SPが噴出方向SPHに集中的に進行するのを抑制或いは防止できる。
しかも前述したように、分散部11で、噴出物SPの進行方向RDが分散されるので、噴出物SPが当たった部位における熱的影響を更に低下させることができる。かくして、噴出物SPが当たった部材に穴が開くなどの不具合の発生をさらに確実に抑制できる。
【0048】
しかも、この付属電池1では、分散部材10を電池2に一体に設けているので、電池2および安全弁9に対して、方向変更部を常に適切な位置に配置した状態にできる。
【0049】
ついで、電池モジュール30について説明する(図4図5参照)。なお、図5は、図4に示す電池モジュール30から、トッププレート49を取り除いた状態を示している。電池モジュール30は、複数(本実施形態では12個)の付属電池1と、これら付属電池1と一体にされたモジュール構造体40とを備える。複数の付属電池1は、電池厚み方向CHに板状のスペーサ41と交互に積層し、さらに一対のエンドプレート42で挟み、エンドプレート42同士の間に架け渡した一対のサイドプレート43を止めネジ44で固定して、積層体50を構成している。この積層体50では、各電池2の安全弁9及び分散部材10は、電池厚み方向CHに並んで配置されている。
【0050】
この電池モジュール30では、分散部11を有する分散部材10を電池2に一体に設けた付属電池1を用いているので、電池2および安全弁9に対して、分散部11を常に適切な位置に配置した状態とすることができる。
【0051】
なお、本実施形態の積層体50では、各電池2の正極端子5及び負極端子6を、タイバー45A~45E、正極総端子板46P及び負極総端子板46Nを用いて相互に接続し、並列接続した2つの電池2を6段に直列接続した回路構成として接続している。正極総端子板46Pは、電池厚み方向CHの一方側(図5において左下側)に配置した四角筒状の端子接続口部材47Aの開口47AHを通じて、外部の機器に接続する。また、負極総端子板46Nは、電池厚み方向CHの他方側(図5において右上側)に配置した四角筒状の端子接続口部材47Bの開口47BHを通じて、外部の機器に接続する。
【0052】
なお、本実施形態の電池モジュール30において、モジュール構造体40は、複数の付属電池1と一体とされて、付属電池1と共に電池モジュール30を構成する部材である。具体的に、モジュール構造体40には、前述したスペーサ41、エンドプレート42、サイドプレート43、止めネジ44、タイバー45A~45E、正極総端子板46P、負極総端子板46N、端子接続口部材47A,47B、ガス排出口部材48A,48B、トッププレート49が含まれる。
【0053】
本実施形態の電池モジュール30では、いずれかの電池2の安全弁9が開弁した場合、ガス等は、各電池2の蓋体3L、スペーサ41、サイドプレート43の立壁部43W、端子接続口部材47A,47Bから電池幅方向BHに延びる立壁部47AW,47BW、及び、トッププレート49で囲まれた空間で構成された排出路EPに噴出する。そして、電池厚み方向CHの一方側(図5において左下側)に配置した四角筒状のガス排出口部材48Aのガス排出口48AH、及び、電池厚み方向CHの他方側(図5において右上側)に配置した四角筒状のガス排出口部材48Bのガス排出口48BHを通じて、外部に排出できる。
【0054】
なお、本実施形態の電池モジュール30では、アルミニウム製のトッププレート49に、図4において破線で囲んで示す噴出方向部49Dを複数(本実施形態では12ヶ)有する。これらの噴出方向部49Dは、安全弁9が開弁したときに、安全弁9から噴出物SPが噴出する噴出方向SPHに位置している。しかも、各々の噴出方向部49Dは、各々の安全弁9に正対している。
【0055】
このため、電池2とトッププレート49との間に、分散部11を設けない場合には、安全弁9が開弁したとき、図7に示すように、噴出方向SPHに集中してビーム状に噴出する噴出物SPが、トッププレート49の噴出方向部49Dに集中して当たり続けるため、この噴出方向部49Dに穴が空き、この穴を通じて電池モジュール30外に噴出物SPが噴出したり、トッププレート49のうち噴出方向部49D付近が熱変形したりすることがある。特に各々の噴出方向部49Dは、各電池2の安全弁9に正対しているので、分散部11を設けない場合には、噴出方向SPHが噴出方向部49Dに概ね直交することとなり、噴出物SPが噴出方向部49Dに正面から当たるので、噴出方向部49Dに穴が空くなどの不具合を生じ易い。
【0056】
しかるに、本実施形態の電池モジュール30では、各々の安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に、前述の分散部材10をそれぞれ備えている。このため、安全弁9が開弁しても、分散部材10の分散部11によって、安全弁9から噴出方向SPHに向けて噴出した噴出物SPのうち、少なくとも一部(本実施形態では全部)の進行方向RDが変更され、噴出物SPが噴出方向部49Dに集中的に当たるのを抑制或いは防止できる。かくして、噴出物SPによって、噴出方向部49Dに穴が開いたり、噴出物SPが外部に噴き出たり、トッププレート49に熱変形を生じたりする不具合の発生を抑制できる。
【0057】
(実施例及び比較例による釘刺し試験)
本実施形態の電池モジュール30において分散部11を設けた効果を確認するため、以下のようにして、電池2の釘刺し試験を行った(図6参照)。
まず、モジュール構造体40を模して、厚さ3mmのアルミニウム板からなる収容ボックスBXを製作する。この収容ボックスBX内に、容量50Ahの電池2(比較例)、或いは、この電池2に分散部材10を溶接した付属電池1(実施例)を配置する。なお、分散部材10を厚さ0.5mmの鉄板で形成した。また、分散部材10から収容ボックスBXの天井部BXTまでの距離LLを、LL=10mmとした。
【0058】
各々電池電圧4.2Vに定電圧充電した、比較例及び実施例に係る電池2の長側面壁部3BMの中心に、直径3mmの釘NLを1mm/sの速さで突刺して、電池2を熱暴走させガスを発生させて安全弁9を開弁させ、概ね30秒に亘る噴出物SPの噴出によって、収容ボックスBXの天井部BXTの穴(開裂)が生じたか否かを観察した。
【0059】
(比較例)
分散部材10を有しない電池2を用いた比較例では、図7に示すように、アルミニウム製の収容ボックスBXの天井部BXTに穴HOが空き、この穴HOから収容ボックスBX外に、噴出物SPが噴出した。安全弁9から、ビーム形状となって狭い範囲に集中しつつ噴出方向SPHに向けて高温の噴出物SPが噴出したため、天井部BXTのうち安全弁9と正対する正対部位BXTDに集中して噴出物SPが当たり、穴HOが空いたと推測される。
【0060】
(実施例)
これに対し、電池2に分散部材10を固着した付属電池1を用いた実施例では、図8に示すように、天井部BXTに穴HOが空くことは無く、収容ボックスBX外に噴出物SPが噴出することも無かった。安全弁9から噴出し噴出方向SPHに進行した噴出物SPは、分散部材10の分散部11で、少なくとも一部(分散部11によれば全部)の噴出物SPの進行方向RDを噴出方向SPHから変化させて、天井部BXTに向けて進行する噴出物SPの量を減少させることができ、しかも、噴出物SPが進行する方向の範囲を拡げたためであると推測される。かくして、電池モジュール30において分散部11を設ける効果を確認できた。
【0061】
上述の実施形態においては、電池モジュール30に用いる付属電池1に設けた分散部材10のうち、分散部11のフィン11Fの配置形態を、図3に示す形態とした。
しかし、他の形態とすることもできる。なお、以下の説明では、異なる部分を中心に説明し、同様な部分については説明を省略する。
【0062】
(変形形態1)
例えば、変形形態1の電池モジュール130に用いる変更部材付属電池101では、電池2に固着する分散部材110のうち、分散部111のフィン111Fの配置形態を、図9に示す形態とする。なお、分散部材110のうち保持部材12については、実施形態と同様であるので、説明を省略する(後述する変形形態2~5も同様)。
【0063】
本変形形態1の分散部111も、電池厚み方向CHに延びる複数の平板状のフィン111Fから構成されている。各フィン111Fも、電池幅方向BHの中央111Cに対し電池幅方向BHに対称に、かつ、いずれのフィン111Fも電池高さ方向AHの上側(安全弁9から離れる側)ほど、電池幅方向BHに位置するように傾けて配置されている。但し、実施形態の分散部11とは異なり、いずれのフィン111Fも同じ傾きとされている。この分散部111も、安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に位置している。これにより分散部111は、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを、中央11Cから電池幅方向BHの両外側に向かう方向に変更する。また、噴出物SPの進行方向RDを電池幅方向BHに分散することができる。さらに、各フィン111Fで、噴出物SPを複数の進行方向RDに分けて導くことができ、確実に噴出物SPの進行方向RDを分散することができる。
【0064】
(変形形態2)
また例えば、変形形態2の電池モジュール230に用いる変更部材付属電池201では、電池2に固着する分散部材210のうち、分散部211をなすフィン211Fの配置形態を、図10に示す形態とする。
【0065】
本変形形態2の分散部211も、電池厚み方向CHに延びる複数の平板状のフィン211Fから構成されている。但し、各フィン211Fは、電池幅方向BHの一方側(図10において左側)のフィン211Fほど、電池高さ方向AHの上側(安全弁9から離れる側)ほど、電池幅方向BHの一方側に位置して、傾きが小さくなるように配置されている。この分散部211も、安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に位置している。これにより分散部211は、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを、電池幅方向BHの一方側(図10において左側)に向かうように変更する。また、噴出物SPの進行方向RDを電池幅方向BHの一方側に分散することができる。さらに、各フィン211Fで、噴出物SPを複数の進行方向RDに分けて導くことができ、確実に噴出物SPの進行方向RDを分散することができる。
【0066】
(変形形態3)
実施形態及び変形形態1,2では、分散部11,111,211をそれぞれ複数の板状のフィン11F,111F,211Fで構成した。これに対し、変形形態3の分散部311では、フィンに代えて、電池厚み方向CHに延び電池高さ方向AHのうち図中下方(安全弁9に近づく側)に凸の凸部材311Pを有している(図11参照)。即ち、本変形形態3の電池モジュール330に用いる変更部材付属電池301では、電池2に固着する分散部材310における分散部311として、図11に示す凸部材311Pを用いた形態とする。
【0067】
図11に示すように、凸部材311Pの断面形状は、電池幅方向BHの中央311Cに対し電池幅方向BHに対称に、かつ、電池高さ方向AHのうち図中下方(安全弁9に近づく側)に凸の二等辺三角形状とされている。このため凸部材311Pには、図11において、左下を向き電池厚み方向CH(紙面に直交する方向)に延びる平面からなる第1斜面311S1、及び、右下を向き電池厚み方向CHに延びる平面からなる第2斜面311S2が形成される。そしてこの分散部311も、安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に位置している。このため分散部311は、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの進行方向RDを、中央11Cに対し電池幅方向BHの両外側に向かうように変更できる。また、噴出物SPの進行方向RDを電池幅方向BHの2方向に分散することができる。
【0068】
(変形形態4)
上述の変形形態3では、分散部311に用いる凸部材311Pの断面形状を三角形としたが、他の形態とすることもできる。即ち、本変形形態4では、分散部411に用いる凸部材411Pの断面形状を図12に示す形態とする。即ち、本変形形態4の電池モジュール430に用いる変更部材付属電池401では、電池2に固着する分散部材410の分散部411を、図12に示す凸部材411Pを用いた形態とする。
【0069】
図12に示すように、凸部材411Pの断面形状は、電池幅方向BHの中央411Cに対し電池幅方向BHに対称で、電池高さ方向AHのうち図中下方(安全弁9に近づく側)に凸の略三角形状とされている。但し、変形形態3の凸部材311Pと異なり、図12において、左下を向き電池厚み方向CHに延びる第1斜面411S1、及び、右下を向き電池厚み方向CHに延びる第2斜面411S2とも、内側に向けて凹む凹形状とされている。そしてこの分散部411も、安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に位置している。この分散部411でも、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの進行方向RDを、中央11Cに対し電池幅方向BHの両外側に向かうように変更できる。また、噴出物SPの進行方向RDを電池幅方向BHの2方向に分散することができる。
【0070】
(変形形態5)
前述の変形形態3では、分散部311に用いる凸部材311Pの断面形状を、電池幅方向BHの中央311Cに対し対称(図において左右対称)で電池高さ方向AHのうち図中下方に凸の二等辺三角形状とした。しかし、本変形形態5では、方向変更部511に用いる凸部材511Pの断面形状を図13に示す直角三角形状とする。即ち、本変形形態5の電池モジュール530に用いる変更部材付属電池501では、電池2に固着する変更部材510の方向変更部511を、図13に示す凸部材511Pを用いた形態とする。
【0071】
具体的には、凸部材511Pの断面形状は、電池幅方向BHの一方側(図において左側)ほど、電池高さ方向AHの上方(安全弁9から離れる側)となる斜辺を有する直角三角形状とされている。この凸部材511Pは、この直角三角形の斜辺をなして、図13において左下を向き電池厚み方向CHに延びる第1斜面511S1を形成している。この方向変更部511も、安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に位置している。そしてこの方向変更部511は、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを、電池幅方向BHの一方側(図13において左側)に向かうように変更する。
【0072】
(変形形態6)
実施形態及び変形形態1~5では、分散部11等により、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを、電池幅方向BHに変更する例を示した。
しかし、進行方向RDを電池幅方向BHに変更するのみならず、他の方向、即ち、電池厚み方向CHに変更したり、電池幅方向BH及び電池厚み方向CHに変更したりすることもできる。本変形形態6では、方向変更部611により、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを、電池厚み方向CHの一方側(図14において左側)に向かうように変更する。即ち、本変形形態6の電池モジュール630に用いる変更部材付属電池601では、電池2に固着する変更部材610のうち方向変更部611を、変形形態5の凸部材511Pに似た、断面が直角三角形状の凸部材611Pを用いた、図14に示す形態とする。
【0073】
具体的には、凸部材611Pの断面形状は、電池厚み方向CHの一方側(図において左側)ほど、電池高さ方向AHの上方(安全弁9から離れる側)となる斜辺を有する直角三角形状とされている。この凸部材611Pは、この直角三角形の斜辺をなして、図14において左下を向き電池幅方向BH(紙面に直交する方向)に延びる第1斜面511S1を形成している。この方向変更部611も、安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に位置している。そしてこの方向変更部611は、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを、電池厚み方向CHの一方側(図13において左側)に向かうように変更する。
【0074】
一方、保持部材612は、実施形態の分散部材10における保持部材12と同様に、方向変更部611をなす凸部材611Pを保持して電池高さ方向AHに延びる板状の立壁部612Wと、立壁部612Wに対しL字状に屈曲し、蓋体3Lに沿って延びる支持部612Sとを有する形態とする。本変形形態6でも、支持部612Sを蓋体3Lに固着することにより、変更部材610が蓋体3Lに固設されている。
【0075】
なお、変形形態6では、方向変更部611に断面が直角三角形状の凸部材611Pを用いた例を示したが、実施形態及び変形形態1,2に示したフィン11F~211Fと同様の断面配置形態としたフィンを用いることもできる。或いは、変形形態3,4に示した凸部材311P,411Pと同様の断面形態の凸部材を用いることもできる。
【0076】
(変形形態7)
実施形態及び変形形態1~6では、分散部11~411を有する分散部材10~410或いは方向変更部511,611を有する変更部材510,610を、個々の電池2の蓋体3Lに固着して変更部材付属電池1~601とし、複数の付属電池1~601を電池モジュール30~630に用いた例を示した(図4図5参照)。
しかし、分散部材或いは変更部材を電池に固着しておく必要は無く、電池モジュール30などにおいて、各々の電池2の安全弁9とトッププレート49の噴出方向部49Dとの間に、噴出物SPの少なくとも一部の進行方向RDを変更する分散部或いは方向変更部が位置していれば良い。
【0077】
例えば具体的には、図15に示す変形形態7の電池モジュール730のように、複数の電池2に共通して用いる分散部材710を、各電池2とトッププレート49との間に位置するように配置すれば良い。図15図16に示す分散部材710は、電池厚み方向CHに長い形態とされ、全て(12個)の電池2について、各々の安全弁9を電池高さ方向AHから覆うように配置される。なお、変形形態7の電池モジュール730は、分散部材10を固設した電池2を用いた電池モジュール30とは、分散部材10を用いず、電池2及び上述の分散部材710を用いる点で異なる。そこで、同様の部分については同じ符号を用いると共に説明を省略する。
【0078】
この分散部材710は、分散部711と、この分散部711を保持する保持部材712とからなり、前述した実施形態の分散部材10と同様の断面形状(図3参照)を有している。即ち、分散部711は、図16に示すように、電池厚み方向CHに延びる複数の平板状のフィン711Fから構成されている。各フィン711Fは、分散部711の電池幅方向BHの中央に対し電池幅方向BHに対称に、かつ、いずれのフィン711Fも電池高さ方向AHの上側ほど、電池幅方向BHに位置するように傾けて配置されている。但し、中央から電池幅方向BHの外側に位置するフィン711Fほど傾きが小さくなるように配置されている。しかも、分散部711は、各電池2の安全弁9とトッププレート49の各噴出方向部49Dとの間に位置している。これにより分散部711でも、安全弁9から噴出方向SPHに噴出する噴出物SPの少なくとも一部(本変形形態7では全部)の進行方向RDを、中央から電池幅方向BHの両外側に向かう方向に変更する。また、噴出物SPの進行方向RDを電池幅方向BHに分散することができる。さらに、各フィン711Fで、噴出物SPを複数の進行方向RDに分けて導くことができ、確実に噴出物SPの進行方向RDを分散することができる。
【0079】
なお、分散部材710は、詳細は説明しないが、保持部材712の支持部712Sを用いて、端子接続口部材47A,47Bから電池幅方向BHに延びる立壁部47AW,47BWに接続して、電池モジュール730に一体とする。
【0080】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1~7に即して説明したが、本発明は実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば実施形態及び変形形態1~6では、同じ電池モジュール30等に用いる複数の電池2にそれぞれ固設する分散部材に、いずれも同じ形態の分散部材を用いた。
しかし、電池モジュール内における各電池2の電池厚み方向CHの位置と、ガス排出口48AH,48BHの位置関係を考慮して、ガスなどの噴出物SPの進行方向RDが適切な方向となるように、分散部におけるフィンや凸部材などの形状を異ならせた複数種類の分散部材を作製しておき、電池2の電池厚み方向CHの位置に応じて、固設する分散部材を異ならせるようにしても良い。
また、比較形態7の分散部材710と同様、複数の電池2に対応する分散部材において、電池2毎に、ガスなどの噴出物SPの進行方向RDが異なる方向となるように、フィンや凸部材などの形状を異ならせることもできる。
【0081】
また、実施形態及び変形形態1~7では、分散部材或いは変更部材10~710をなす分散部或いは方向変更部11~711を、耐熱性のある鉄で形成した例を示した。
しかし、安全弁9から噴出物SPが噴出する噴出継続時間は限られている。例えば、前述の電池2を用いる実施形態等では、前述したように概ね30秒間である。一方、噴出物SPの噴出が終了した後にまで、分散部材の分散部や変更部材の方向変更部が、健全に残存している必要のない場合もある。この場合には、噴出方向部(トッププレート49の噴出方向部49D)などの噴出物SPに対する耐熱時間から逆算して、噴出継続時間のうち、前側の或る程度の時間に亘って、噴出物SPに耐えられる程度の耐熱性を有するように、分散部材の分散部などの材質(耐熱温度の低い材質、例えばアルミニウムやプラスチックなど)や厚みなどの寸法を選択するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0082】
1,101,201,301,401,501,601 変更部材付属電池(変更部材付属蓄電デバイス)
2 電池(蓄電デバイス)
3 ケース(金属ケース)
3L 蓋体(ケース壁部)
9 安全弁(破断型安全弁)
9S 薄肉部
9G 中央溝部
10,110,210,310,410,710 分散部材(変更部材)
510,610 変更部材
11,111,211,311,411,711 分散部(方向変更部)
511,611 方向変更部
11C,111C,311C,411C 中央
11F,111F,211F,711F フィン(複数経路形成部材)
311P,411P 凸部材(複数経路形成部材)
511P,611P 凸部材
311S1,411S1,511S1,611S1 第1斜面
311S2,411S2 第2斜面
12,612,712 保持部材
12W,612W 立壁部
12S,612S 支持部
30,130,230,330,430,530,630,730 電池モジュール(デバイスモジュール)
40 モジュール構造体(構造体)
49 トッププレート
49D 噴出方向部(正対噴出方向部)
AH 電池高さ方向
BH 電池幅方向
CH 電池厚み方向
SP 噴出物
SPH 噴出方向
RD 進行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16