(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101204
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20240722BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240722BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240722BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B41J2/01 127
B41J2/01 129
B41J2/01 305
H01L33/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005039
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 貴広
(72)【発明者】
【氏名】井上 顕彰
【テーマコード(参考)】
2C056
4G075
5F142
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056HA27
2C056HA29
2C056HA40
2C056HA44
2C056HA60
4G075AA30
4G075AA51
4G075BA04
4G075CA33
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB31
4G075ED11
4G075FC04
5F142AA12
5F142AA66
5F142BA32
5F142CB12
5F142CB23
5F142CD02
5F142DB02
5F142DB60
5F142GA31
(57)【要約】
【課題】ワークの処理対象面に対して十分な照度での紫外光の照射が可能であって、かつ、ワークの処理対象面によって光源側へと反射される紫外光の量を低減させた光照射装置を提供する。
【解決手段】複数のLED素子が、第一面と平行な面上に配列された光源ユニットと、光源ユニットを収容する筐体と、出射面が第一面と平行に配置された、LED素子から出射される紫外光を筐体の外側に取り出すための光出射窓と、光出射窓が設けられた筐体の壁面と対向する被照射領域の少なくとも一部において、処理対象面を光出射窓の出射面に対して傾斜させ、第一方向に関する被照射領域の少なくとも一方の端部において、中央部よりも光出射窓から離間した位置でワークを搬送する搬送機構とを備え、搬送機構は、被照射領域の少なくとも一部において、所定の関係式を満たすように処理対象面を光出射窓の出射面に対して傾斜させた状態でワークを搬送する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの処理対象面に紫外光を照射して処理する光照射装置であって、
前記紫外光を出射する複数のLED素子が、第一方向と、前記第一方向と直交する第二方向からなる第一面と平行な面上に配列された光源ユニットと、
前記光源ユニットを収容する筐体と、
出射面が前記第一面と平行に配置された、前記LED素子から出射される前記紫外光を前記筐体の外側に取り出すための光出射窓と、
前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面と対向する被照射領域の少なくとも一部において、前記処理対象面を前記光出射窓の出射面に対して傾斜させるとともに、前記第一方向に関する前記被照射領域の少なくとも一方の端部において、中央部よりも前記光出射窓から離間した位置で前記ワークを搬送する搬送機構とを備え、
前記光出射窓の出射面の法線方向に関し、前記ワークと前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面とが最も接近している位置における離間距離をD1とし、前記ワークと前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面とが最も離間している位置における離間距離をD2とし、前記ワークと前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面とが、最も接近している位置と最も離間している位置との前記第一方向における離間距離をD3としたときに、前記搬送機構は、前記被照射領域の少なくとも一部において、下記(1)式及び(2)式を満たすように前記処理対象面を前記光出射窓の出射面に対して傾斜させた状態で前記ワークを搬送することを特徴とする光照射装置。
0mm<D1≦20mm (1)
5°≦tan-1((D2-D1)/D3)≦25° (2)
【請求項2】
前記搬送機構は、前記被照射領域において、前記ワークを前記光出射窓から徐々に離間させながら搬送することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記搬送機構は、前記被照射領域において、前記ワークを前記光出射窓に徐々に接近させながら搬送することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、前記第二方向に見たときに、前記被照射領域内において、前記ワークの前記処理対象面と前記光出射窓の出射面とがなす角度を変化させて前記ワークを搬送することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置、光処理方法に関し、特にLED素子から出射される紫外光を照射して、ワークの表面処理を行う光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シール剤の硬化処理やプリンタのインク滴の加熱処理に用いられる、紫外光を照射する処理装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、シール剤の硬化処理を行うUV照射装置が記載されており、下記特許文献2には、インクジェット式の印写装置において、記録紙上に吐出されたインク滴に紫外光を照射する光加熱モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-241389号公報
【特許文献2】特開2005-22097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上述のような、シール剤や記録紙上のインク滴(以下、これらをまとめて「ワーク」と称する。)の処理に用いる光照射装置や、ガラス板や液晶パネルの表面処理に用いる光照射装置について検討していたところ、以下のような課題があることを見出した。
【0005】
ワークの処理対象面に照射された紫外光は、主としてシール剤の硬化やインク滴の硬化処理に利用されるが、一部の紫外光は、処理対象面によって光源側に向かうように反射される。そして、光源側に反射された紫外光のほとんどは、そのまま光源に照射されるか、光源の周囲に存在する基板や筐体の壁面に照射される。
【0006】
光源や筐体は、ワークの処理対象面によって反射された紫外光が照射されると、当該紫外光を吸収して発熱する。このとき、例えば、光源がLEDであった場合、当該発熱によって温度が上昇し、発光効率の低下や短寿命化に繋がるおそれがある。また、筐体は、紫外光が照射されて発熱すると、熱膨張を引き起こし、場合によっては光出射窓を構成するガラス板等を破損させてしまうおそれがある。
【0007】
ここで、上記特許文献1においては、UV光源を基板ステージに対して傾斜させた装置が記載されており、上記特許文献2においては、光の出射端を処理対象面であるインクが滴下された記録紙の主面に対して傾斜させた装置が記載されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置は、シール剤との間に遮光膜や金属配線層が形成されていても、シール剤に紫外光を照射可能とすることを目的としており、上記特許文献2に記載の装置は、記録紙に滴下されると同時に紫外光を照射することを目的としている。
【0009】
上記特許文献1及び特許文献2に記載の装置は、いずれもワークの処理対象面によって反射される紫外光について、何ら問題視されておらず、処理対象面に対して光源や出射端を傾斜させる角度についても具体的に特定されていない。つまり、いずれの装置においても、構成によっては、処理対象面によって反射される紫外光が光源側、又は出射端側に戻ってしまい、上述したような発熱の問題が生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、ワークの処理対象面に対して十分な照度での紫外光の照射が可能であって、かつ、ワークの処理対象面によって光源側へと反射される紫外光の量を低減させた光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光照射装置は、
ワークの処理対象面に紫外光を照射して処理する光照射装置であって、
前記紫外光を出射する複数のLED素子が、第一方向と、前記第一方向と直交する第二方向からなる第一面と平行な面上に配列された光源ユニットと、
前記光源ユニットを収容する筐体と、
出射面が前記第一面と平行に配置された、前記LED素子から出射される前記紫外光を前記筐体の外側に取り出すための光出射窓と、
前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面と対向する被照射領域の少なくとも一部において、前記処理対象面を前記光出射窓の出射面に対して傾斜させ、前記第一方向に関する前記被照射領域の少なくとも一方の端部において、中央部よりも前記光出射窓から離間した位置で前記ワークを搬送する搬送機構とを備え、
前記光出射窓の出射面の法線方向に関し、前記ワークと前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面とが最も接近している位置における離間距離をD1とし、前記ワークと前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面とが最も離間している位置における離間距離をD2とし、前記ワークと前記光出射窓が設けられた前記筐体の壁面とが、最も接近している位置と最も離間している位置との前記第一方向における離間距離をD3としたときに、前記搬送機構は、前記被照射領域の少なくとも一部において、下記(1)式及び(2)式を満たすように前記処理対象面を前記光出射窓の出射面に対して傾斜させた状態で前記ワークを搬送することを特徴とする。
0mm<D1≦20mm (1)
5°≦tan-1((D2-D1)/D3)≦25° (2)
【0012】
本明細書における「平行」については、完全に平行な状態のみならず、製造工程上で不可避的に生じ得る程度の傾斜は許容される。具体的には、相互の傾斜角度が1°以下であれば「平行」として許容し得る。
【0013】
ワークは、処理対象面と筐体とが接触している状態で搬送されると、当該処理対象面が損傷してしまうおそれがある。したがって、離間距離D1は、0mmよりも大きいことが好ましい。なお、よりワークの処理対象面で反射した紫外光を、筐体の外側へと進行させるには、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。
【0014】
さらに、離間距離D1が大きすぎると、ワークの処理対象面に対して、光出射窓から出射される紫外光が、所望の照度でワークの処理対象面に照射されないおそれがある。このため、離間距離D1は、20mm以下とすることが好ましい。
【0015】
光出射窓の出射面の法線方向に向かって光出射窓から出射され、LED基板の主面に対して傾斜した状態の処理対象面に入射した紫外光の一部は、少なからず第一方向に向かって進行するように反射される。そして、当該反射光は、第一方向に関し、光出射窓の中央部側ではなく、端部側に向かって進行する。
【0016】
ここで、光出射窓の出射面に対するワークの処理対象面の傾斜角度が5°未満だと、処理対象面で反射された紫外光が、光出射窓の出射面の法線方向において、処理対象面から筐体にまで進行する間に、筐体の外側にまではほとんど進行しない。
【0017】
また、当該傾斜角度が25°以上となると、離間距離D2の値が大きくなりすぎるため、上述したように、光出射窓から出射された紫外光が、所望の照度でワークの処理対象面に照射されないおそれがある。
【0018】
そこで、上記構成とすることで、ワークの処理対象面に対して、所望の照度での紫外光照射ができるとともに、ワークの処理対象面で反射した紫外光を、より多く筐体の外側へと進行するように反射させることができる。したがって、当該反射光が、筐体の壁面、光出射窓の枠体、光源ユニットに対して照射されにくくなり、これらが加熱されて、変形、破損してしまうことが抑制される。
【0019】
なお、上記構成によって、ワークの処理対象面で反射した紫外光が、より筐体の外側へと進行しやすくなることについては、「発明を実施するための形態」の項目において、検証シミュレーションの詳細とともに詳述される。
【0020】
上記光照射装置において、
前記搬送機構は、前記被照射領域において、前記ワークを前記光出射窓から徐々に離間させながら搬送するように構成されていても構わない。
【0021】
また、上記光照射装置において、
前記搬送機構は、前記被照射領域において、前記ワークを前記光出射窓に徐々に接近させながら搬送するように構成されていても構わない。
【0022】
上記構成は、搬送機構の構造が簡便な構成で実現できるため、光照射装置の製造コストが抑制される。
【0023】
また、上記光照射装置において、
前記搬送機構は、前記第二方向に見たときに、前記被照射領域内において、前記ワークの前記処理対象面と前記光出射窓の出射面とがなす角度を変化させて前記ワークを搬送するように構成されていても構わない。
【0024】
上記構成によれば、ワークの処理対象面における処理の進行状態に応じて、照射する紫外光の照度を変化させることができる。また、上記構成によれば、被照射領域内の上流側と下流側とで、紫外光を異なる方向に反射されることができるため、処理対象面で反射される紫外光をより多く筐体とは異なる方向に進行させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ワークの処理対象面に対して十分な照度での紫外光の照射が可能であって、かつ、ワークの処理対象面によって光源側へと反射される紫外光の量を低減させた光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】光照射装置の一実施形態の模式的な図面である。
【
図3】光照射装置の一実施形態における、光源ユニット周辺の図面である。
【
図4】光照射装置の一実施形態における、光源ユニット周辺の図面である。
【
図5】光照射装置の一実施形態の模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の光照射装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0028】
図1Aは、光照射装置1の一実施形態の模式的な図面であり、
図1Bは、
図1Aの光源ユニット10周辺の拡大図である。
図1Aに示すように、光照射装置1は、筐体2と、ワークW1を搬送する、複数の搬送ローラ3aからなる搬送機構3とを備える。
【0029】
以下の説明においては、
図1Aに示すように、ワークW1が搬送される方向をX方向とし、ワークW1と光源ユニット10とが対向する方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。なお、以下の説明においては、X方向は第一方向に、Y方向は第二方向に対応し、XY平面が第一面に対応する。
【0030】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0031】
また、本実施形態の説明においては、ワークW1がフィルム材であることを前提として説明するが、本発明の光照射装置1は、フィルム材以外のワークW1(例えば、ガラス板や半導体ウエハ等)の表面処理に利用することも想定される。
【0032】
図2は、筐体2を-Z側から見たときの図面である。
図2に示すように、筐体2の内側には、複数のLED素子10aが、LED基板10bの主面10p上にX方向及びY方向に配列されてなる光源ユニット10が搭載されている。より詳細には、LED基板10bの主面10p上において、(X1,Y1)=(26mm,1080mm)の領域に、1mm□のLED素子10aが合計3000個配置されている。
【0033】
これに対し、本実施形態において、光出射窓2aの大きさは、(X2,Y2)=(111mm,1125mm)、筐体2の光出射窓2aが設けられた側面の大きさは、(X3,Y3)=(120mm,1200mm)となっている。
【0034】
なお、
図1Aにおいて模式的に示されているが、筐体2内には、LED素子10aを点灯させるための電力を供給する電源部11が搭載されている。
【0035】
本実施形態におけるLED素子10aは、主たる発光波長が365~405nmの紫外光を出射するLED素子である。なお、ここでいう、「主たる発光波長」とは、出射する光のスペクトルにおけるピーク強度を示す波長をいう。上記LED素子10aは、単なる一例であって、処理対象となるワークW1の種類や処理内容に応じて適宜選択される。
【0036】
次に、
図1Bを参照しながら、光源ユニット10と、搬送機構3によって搬送されるワークW1の位置関係について説明する。
【0037】
まず、
図1Aに示すように、ワークW1の処理対象面W1aのうち、Z方向に関し、光出射窓2aと対向している領域が、被照射領域A1に相当する。そして、搬送機構3は、被照射領域A1において、ワークW1を光出射窓2aから徐々に離間させながら搬送するように構成されている。
【0038】
光出射窓2aの光出射面2a1の法線方向(Z方向)に関し、ワークW1と光出射窓2aが設けられた筐体2の壁面2pとが最も接近している位置における離間距離をD1とする。Z方向に関し、ワークW1と光出射窓2aが設けられた筐体2の壁面2pとが最も離間している位置における離間距離をD2とする。ワークW1と光出射窓2aが設けられた筐体2の壁面2pとが、最も接近している位置と最も離間している位置とのX方向における離間距離をD3とする。
【0039】
本実施形態の光照射装置1は、まず、離間距離D1は、下記(1)式を満たすように、10mmとなっている。
0mm<D1≦20mm (1)
【0040】
次に、ワークW1は、少なくとも被照射領域A1における処理対象面W1aが、光出射窓2aの光出射面2a1に対して、すなわち、XY平面に対して、角度θだけ傾斜して搬送されている。そして、本実施形態においては、角度θが15°となるように、下記(2)式に基づいて、D2が20mm、D3が60mmとなるように調整されている。なお、処理対象面W1aに対して紫外光を十分に照射する観点からすれば、離間距離D2は、20mm以下であることが好ましく、18mm以下であることがより好ましい。
5°≦tan-1((D2-D1)/D3)≦25° (2)
【0041】
光出射窓2aから出射される紫外光は、ワークW1に照射されるまでの進行距離が長くなるほどエネルギーの損失が大きくなる。このため、筐体2とワークW1とは、あまりに離間させすぎると、ワークW1の十分に処理ができないおそれがある。
【0042】
そこで、ワークW1を処理できることとするため、上記(1)式を満たすように、筐体2とワークW1の距離が設定される。
【0043】
次に、筐体2の壁面2pと、ワークW1の処理対象面W1aとが、極僅かに傾斜している、すなわち、角度θが1°未満である場合、光出射窓2aから出射されて、ワークW1によって反射された紫外光は、ほとんど筐体2の壁面2pに照射される。
【0044】
また、離間距離D3があまりに大きいと、角度θをある程度大きくしたとしても、光出射窓2aから出射されて、ワークW1で反射された紫外光は、筐体2よりも外側に向かう紫外光に比べて、筐体2の壁面2pに照射される紫外光の方が圧倒的に多くなる。
【0045】
そこで、光出射窓2aから出射されてワークW1で反射される紫外光が、できる限り筐体2の壁面2pの外側へと進行するように、上記(2)式を満たすように、各離間距離(D1,D2,D3)が設定される。
【0046】
図3及び
図4は、
図1とは別の光照射装置1の一実施形態における、光源ユニット10周辺の図面である。例えば、上記(1)式及び(2)式を満たすのであれば、
図3及び
図4に示すように、筐体2の壁面2pと、ワークW1の処理対象面W1aとのなす角度が、途中で変化するように構成されていても構わない。
【0047】
なお、これらの構成における各離間距離(D1,D2,D3)は、それぞれ
図3及び
図4に示すとおりとなる。ここで、
図4に示す構成では、処理対象面W1aが、搬送ローラ3aを中心に+X側と-X側とで対象となるように構成されているが、搬送ローラ3aを中心に+X側と-X側とで非対称となっていても構わない。
【0048】
なお、上記で説明したいずれの構成であっても、X方向に関し、ワークW1の処理対象面W1aにおけるいずれかの一方の端部は、中央部よりも筐体2の壁面2pから離間するように配置されている。これは、ワークW1の処理対象面W1aの中央部が最も離間していると、処理対象面W1aで反射された紫外光が、筐体2の壁面2pの外側に進行しにくくなるためである。
【0049】
[検証]
ここで、上記の各構成によって、筐体2の壁面2pへと戻る光の量が低減されることを確認する検証シミュレーションを行ったので、その詳細について説明する。
【0050】
(検証条件)
光出射窓2aから出射されてワークW1によって反射されて、筐体2の壁面2pに照射される紫外光の光量について、
図1B(実施例1)、
図3(実施例2)及び
図4(実施例3)に示す構成と、処理対象面W1aを傾斜させない構成、すなわち、角度θ=0°の構成とで比較した。
【0051】
本検証は、角度θ=0°の場合において筐体2の壁面2pに照射される紫外光の光量を基準としたときの、角度θ=5°、10°、15°、20°、25°の場合において筐体2の壁面2pに照射される紫外光の光量の比を算出して比較した。
【0052】
また、ワークディスタンス(以下、「WD」と省略する場合がある。)については、上記実施形態の構成である10mmと、上記(1)式の上限である20mmとで確認した。
【0053】
(検証結果)
結果は、下記表1のとおりである。
【0054】
【0055】
上記表1の結果によれば、いずれの構成においても、角度θ=0°の構成よりも、筐体2の壁面2pに戻る紫外光の量が低減されていることが確認される。なお、いずれの結果においても、WDが20mmにおいては筐体2の壁面2pへと戻る紫外光の量が低減されていることが確認でき、10mmとの相関関係から、0mmに限りなく近づけたとしても、100%を超えることはないことが推認できる。
【0056】
ここで、実施例1における筐体2の壁面2pに戻る光の低減量が、実施例2及び実施例3に比べて小さいのは、
図1Bに示す搬送ローラ3aの+Y側の処理対象面W1aで反射された光が、角度θ=0°の場合よりも筐体2よりも外側へと進行しにくくなったためと推察される。
【0057】
また、
図3及び
図4に示す構成は、あくまでワークW1がある程度の柔軟性を有するフィルム材を対象としているために可能な態様であって、ワークW1が板状の液晶パネルやガラス板である場合は、必然的に
図1Bに示す実施例1と同じような態様での紫外光の照射となる。このような場合においても、上記(1)式及び(2)式を充足するように構成することで、筐体2の壁面2pへと戻る紫外光の光量が低減されることが確認できる。
【0058】
以上より、上記の各構成によれば、筐体2の壁面2pへと戻る光の量が低減される。そして、筐体2の壁面2pへと戻る紫外光の量が低減されることで、筐体2や光源ユニット10が当該紫外光によって加熱されることが抑制される。
【0059】
上述した光照射装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【0060】
図5は、光照射装置1の上記実施形態とはさらに別の一実施形態の模式的な図面である。
図5に示すように、搬送機構3を構成する搬送ローラ3aのそれぞれが、X方向又はZ方向に独立して位置の変更が可能に構成されていても構わない。当該構成とすることで、例えば、ワークW1の形状に応じて、適宜角度θを最適化することができる。
【0061】
また、ワークW1がフィルム材のような柔軟性を有する対象物であった場合は、上記構成によれば、ワークW1の状態や処理環境に応じて、被照射領域A1におけるワークW1の経路を微調整することができる。
【0062】
また、
図1A及び
図1Bで示す構成は、被照射領域A1において、ワークW1を光出射窓2aから徐々に離間させながら搬送する構成であるが、被照射領域A1において、ワークW1を光出射窓2aに徐々に接近させながら搬送する構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0063】
1 : 光照射装置
2 : 筐体
2a : 光出射窓
2a1 : 光出射面
2p : 壁面
3 : 搬送機構
3a : 搬送ローラ
10 : 光源ユニット
10a : LED素子
10b : LED基板
10p : 主面
W1 : ワーク
W1a : 処理対象面