(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101212
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】静止誘導電器
(51)【国際特許分類】
H01F 30/12 20060101AFI20240722BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240722BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20240722BHJP
H01F 27/26 20060101ALI20240722BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20240722BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240722BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01F30/12 A
H01F27/24 G
H01F27/24 J
H01F27/24 K
H01F27/245 155
H01F27/26 130S
H01F27/26 130Z
H01F27/25
H01F30/10 A
H01F37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005055
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 明
(72)【発明者】
【氏名】真島 康
(72)【発明者】
【氏名】多田 周二
(72)【発明者】
【氏名】山田 直希
(57)【要約】
【課題】
アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、内鉄心の外周を囲む、珪素鋼板から成る外鉄心とで構成される鉄心を備える静止誘導電器において、締金具の取り付けによるアモルファス薄帯の特性劣化や破損を防ぐ。
【解決手段】
アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心2と、前記内鉄心2の外周を囲む、珪素鋼板から成る外鉄心1aとで構成される鉄心と、前記鉄心の脚部に配置したコイル3と、前記鉄心の両側から、前記鉄心を締め付け保持する締金具5,6と、を備える静止誘導電器であって、前記内鉄心2の幅W1は、前記外鉄心1aの幅W2に対して幅狭であって、前記内鉄心2の端部と前記締金具5,6との間に隙間を有するものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、前記内鉄心の外周を囲む、珪素鋼板から成る外鉄心とで構成される鉄心と、
前記鉄心の脚部に配置したコイルと、
前記鉄心の両側から、前記鉄心を締め付け保持する締金具と、
を備える静止誘導電器であって、
前記内鉄心の幅は、前記外鉄心の幅に対して幅狭であって、前記内鉄心の端部と前記締金具との間に隙間を有する静止誘導電器。
【請求項2】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記外鉄心は、珪素鋼板を巻回した巻鉄心である静止誘導電器。
【請求項3】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記外鉄心は、珪素鋼板を積層した積鉄心である静止誘導電器。
【請求項4】
請求項3に記載の静止誘導電器において、
前記外鉄心は、短冊状の珪素鋼板を、前記内鉄心の幅方向に積層した積鉄心である静止誘導電器。
【請求項5】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記内鉄心は、アモルファス磁性薄帯を巻回した巻鉄心2つを並列に密着して配置した静止誘導電器。
【請求項6】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記内鉄心は、アモルファス磁性薄帯を巻回した巻鉄心1つで構成した静止誘導電器。
【請求項7】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記静止誘導電器は、三相三脚変圧器である静止誘導電器。
【請求項8】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記静止誘導電器は、単相変圧器である静止誘導電器。
【請求項9】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記静止誘導電器は、リアクトルである静止誘導電器。
【請求項10】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記内鉄心を構成するアモルファス薄帯の間に接地部材を配置し、前記内鉄心の端部と前記締金具との間の前記隙間で前記接地部材を配線した静止誘導電器。
【請求項11】
請求項10に記載の静止誘導電器において、
前記接地部材は、導電性の板材または線材である静止誘導電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器やリアクトル等の静止誘導電器に係り、特に、アモルファス磁性薄帯を用いた静止誘導電器の好適な構造を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー型の変圧器として、鉄損が少なく磁気特性に優れたアモルファス磁性薄帯を用いたアモルファス鉄心変圧器が知られている。アモルファス磁性薄帯は、鉄(Fe)を主成分とする合金を溶解し、回転する鋳造ロールに滴下し、急冷して製造する。アモルファス磁性薄帯は、結晶構造を持たないためヒステリシス損失が小さく、また、板厚が薄く電気抵抗率も高いため渦電流損失が小さい等の特性を有しており、方向性電磁鋼板に比べて、鉄損が少ないという特長を有している。一方、アモルファス磁性薄帯は硬くて脆いという特性も有している。
【0003】
アモルファス鉄心変圧器の大容量高電圧化に伴い、信頼性の向上を図るため、変圧器の大型化に伴う鉄心の自立性の向上、変圧器の全装可搬化、既設変圧器の置き換え時の基礎ベースの流用などが期待されるが、アモルファス鉄心の機械的強度や寸法制約により、大形化にはリスクが出てくる。
【0004】
アモルファス鉄心変圧器の従来技術として、特許文献1(特開平8-88128号公報)には、「アモルファス磁性薄帯を巻回した鉄心を並列に密着してなる内鉄心と、前記内鉄心の外周を囲み、少なくともケイ素鋼板を最外周側に巻回、若しくは積層した外鉄心とにより構成したことを特徴とする多相変圧器鉄心。」(請求項1参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、アモルファス磁性薄帯を巻回した鉄心を並列に密着してなる内鉄心と、前記内鉄心の外周を囲み、少なくとも珪素鋼板を最外周側に巻回、若しくは積層した外鉄心とにより構成した多相変圧器鉄心、が開示されており、珪素鋼板を最外周側に巻回、若しくは積層した外鉄心を備えることにより、鉄損低減に優れているアモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心を保護して、機械的強度および剛性を確保することができる。
【0007】
変圧器鉄心においては、一般に、鉄心の下部および上部において、鉄心を両側から締め付け保持する下部締金具および上部締金具を取り付ける。しかし、アモルファス鉄心に締金具を取り付けると、アモルファス薄帯に力が加わりアモルファス鉄心の特性が劣化し、また、硬くて脆いアモルファス薄帯が破損する恐れが生じる。
【0008】
特許文献1記載の多相変圧器鉄心では、締金具の取り付けによるアモルファス鉄心の特性劣化や破損は考慮されていない。
【0009】
本発明は、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、前記内鉄心の外周を囲む、珪素鋼板から成る外鉄心とで構成される鉄心を備える静止誘導電器において、鉄心への締金具の取り付けによるアモルファス薄帯の特性劣化や破損を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための、本発明の「静止誘導電器」の一例を挙げるならば、
アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、前記内鉄心の外周を囲む、珪素鋼板から成る外鉄心とで構成される鉄心と、前記鉄心の脚部に配置したコイルと、前記鉄心の両側から、前記鉄心を締め付け保持する締金具と、を備える静止誘導電器であって、
前記内鉄心の幅は、前記外鉄心の幅に対して幅狭であって、前記内鉄心の端部と前記締金具との間に隙間を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心の幅を、内鉄心の外周を囲む、珪素鋼板から成る外鉄心の幅よりも幅狭に構成し、内鉄心の端部と締金具との間に隙間を設けたことにより、鉄心への締金具の取り付けによるアモルファス薄帯の特性劣化や破損を防ぐことができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、内鉄心の外周を囲む珪素鋼板を巻回した外鉄心とにより構成した三相三脚変圧器鉄心を示す図である。
【
図2】
図1の変圧器鉄心に、締金具を取り付けた状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1の、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、内鉄心の外周を囲む珪素鋼板を巻回した外鉄心とにより構成した三相三脚変圧器鉄心を示す図である。
【
図4】
図3の変圧器鉄心に、締金具を取り付けた状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2の、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、内鉄心の外周を囲む珪素鋼板を積層した外鉄心とにより構成した三相三脚変圧器鉄心を示す図である。
【
図6】
図5の変圧器鉄心に、締金具を取り付けた状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施例3の、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、内鉄心の外周を囲む珪素鋼板を巻回した外鉄心とにより構成した単相変圧器鉄心を示す図である。
【
図8】
図7の変圧器鉄心に、締金具を取り付けた状態を示す図である。
【
図9】本発明の実施例4の、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心に接地部材を取り付けた変圧器鉄心の一部斜視図である。
【
図10】本発明の実施例4の、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心に接地部材を取り付けた変圧器鉄心の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例を説明するに先立って、アモルファス磁性薄帯を巻回したアモルファス鉄心を有する従来の変圧器について説明する。
【0015】
図1に、特許文献1に記載された変圧器鉄心を示す。
図1(a)は変圧器鉄心の正面図、
図1(b)はその側面図、
図1(c)はその上面図である。
図1の変圧器鉄心は、三相三脚変圧器鉄心を示している。
【0016】
アモルファス磁性薄帯を略矩形に巻回した巻鉄心2つを並列に密着して内鉄心2を構成する。そして、内鉄心2の外周を囲むように、珪素鋼板を略矩形に巻き回して外鉄心1aを構成し、内鉄心2と外鉄心1aから成る変圧器鉄心を構成する。図において、内鉄心2の幅と外鉄心1aの幅は共にWで、同じ幅である。
【0017】
図1の変圧器鉄心において、外周に配設した珪素鋼板は、それ自体でも鉄心を構成すると共に、鉄心全体の外面を被覆し、鉄損低減に優れているアモルファス巻鉄心を保護して、機械的強度および剛性を確保することができる。そして、鉄損特性が優れ、かつ、組立作業の容易化に効果的な変圧器鉄心が得られる。
【0018】
一般に、変圧器鉄心においては、鉄心の下部および上部において、鉄心を両側から締め付け保持する下部締金具および上部締金具を取り付ける。
図2に、
図1の変圧器鉄心に締金具を取り付けた一例の図を示す。
図2(a)は正面図、
図2(b)は側面図、
図2(c)は上面図である。
【0019】
内鉄心2および外鉄心1aから構成される変圧器鉄心の上部には上部締金具5が、下部には下部締金具6を取り付ける。図の締金具5,6は、一対のコ字状の金具で構成され、変圧器鉄心の両側にコ字状の金具を配置し取付ボルト7で連結することにより、鉄心を両側から締め付け保持する。しかし、
図1に記載のアモルファス鉄心に締金具5,6を取り付けると、アモルファス薄帯から成る内鉄心2に力が加わりアモルファス鉄心の特性が劣化し、また、硬くて脆いアモルファス薄帯が破損する恐れが生じる。
【0020】
本発明では、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心と、前記内鉄心の外周を囲む、珪素鋼板から成る外鉄心とで構成される鉄心を備える静止誘導電器において、締金具の取り付けによるアモルファス薄帯の特性劣化や破損を防止した静止誘導電器を提供する。
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略することがある。
また、図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状などに限定されるものではない。
【実施例0022】
図3に、本発明の実施例1の変圧器鉄心を示す。
図3(a)は変圧器鉄心の正面図、
図3(b)はその側面図、
図3(c)はその上面図である。
図3の変圧器鉄心は、三相三脚変圧器鉄心を示している。
【0023】
アモルファス磁性薄帯を略矩形に巻き回した巻鉄心2つを並列に密着して内鉄心2を構成する。そして、内鉄心2の外周を囲むように、珪素鋼板を略矩形に巻回して外鉄心1aを構成する。そして、内鉄心2と外鉄心1aから成る変圧器鉄心を構成する。
図3(b)および
図3(c)に示すように、内鉄心2の幅W1は、外鉄心1aの幅W2に対して幅狭である。
【0024】
図4に、
図3の変圧器鉄心に締金具を取り付けた一例の図を示す。
図4(a)は正面図、
図4(b)は側面図、
図4(c)は上面図である。
【0025】
変圧器鉄心の3つの脚部には、それぞれコイル(巻線)3を配置する。そして、内鉄心2および外鉄心1aから構成される変圧器鉄心の上部に上部締金具5を、下部に下部締金具6を取り付ける。図の締金具は、一対の断面コ字状の金具で構成され、変圧器鉄心の両側にコ字状の金具を配置し取付ボルト7で連結することにより、鉄心を両側から締め付け保持する。なお、締金具5,6は、鉄心を締め付け保持するものであればよく、図の形状のものに限定されるものではない。
【0026】
本実施例の変圧器鉄心では、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心2の幅W1が、内鉄心2の外周を囲む、珪素鋼板を巻回した外鉄心1aの幅W2よりも狭く構成し、内鉄心2の端部と締金具5,6との間に隙間を設けている。そのため、変圧器鉄心の両側に締金具を配置し締め付けてもアモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心に力が加わることなく、締金具の取り付けによるアモルファス薄帯の特性劣化や破損を防止することができる。なお、珪素鋼板は、アモルファス磁性薄帯に比べて、厚さが厚く、強度が高いので、締金具を取り付けても特性劣化や破損することがない。
変圧器鉄心の3つの脚部には、それぞれコイル(巻線)3を配置する。そして、内鉄心2および外鉄心1bから構成される変圧器鉄心の上部に上部締金具5を、下部に下部締金具6を取り付ける。図の締金具5,6は、一対の断面コ字状の金具で構成され、変圧器鉄心の両側にコ字状の金具を配置し取付ボルト7で連結することにより、鉄心を両側から締め付け保持する。なお、締金具5,6は、鉄心を締め付け保持するものであればよく、図の形状のものに限定されるものではない。
本実施例の変圧器鉄心では、アモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心の幅W1が、内鉄心の外周を囲む、珪素鋼板を積層した外鉄心1bの幅W2よりも狭く構成し、内鉄心2の端部と締金具5,6との間に隙間を設けている。そのため、変圧器鉄心の両側に締金具5,6を配置し締め付けてもアモルファス磁性薄帯を巻回した内鉄心2に力が加わることがなく、締金具の取り付けによるアモルファス薄帯の特性劣化や破損を防止することができる。なお、珪素鋼板は、アモルファス磁性薄帯に比べて、厚さが厚く、強度が高いので、締金具を取り付けても破損することがない。