(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101213
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】全天候型常温アスファルト混合物及び舗装方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/20 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
E01C7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005056
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】592179067
【氏名又は名称】株式会社ガイアート
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】佐澤 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 一之
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AG01
2D051AG11
2D051AH02
(57)【要約】
【課題】天候状態に左右されずに常温施工が可能で、また施工後、早期に高い強度を発現可能とする全天候型常温アスファルト混合物及び舗装方法を提供する。
【解決手段】カットバックアスファルト13と、ロジン類又はロジン類から得られるロジン誘導体からなるロジン添加材12aと、アルカリ土類金属からなるアルカリ性添加材12cと、を含み、敷き均した後に水14を添加すると固まる構成を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットバックアスファルトと、
ロジン類又はロジン類から得られるロジン誘導体からなるロジン添加材と、
アルカリ土類金属からなるアルカリ性添加材と、
を含み、敷き均した後に水が添加されると固まる、ことを特徴とする全天候型常温アスファルト混合物。
【請求項2】
前記カットバックアスファルトに対する前記ロジン添加材の質量比が、20~30%の範囲に設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の全天候型常温アスファルト混合物。
【請求項3】
前記カットバックアスファルトに対する前記アルカリ性添加材の質量比が、20~30%の範囲に設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の全天候型常温アスファルト混合物。
【請求項4】
低溶融樹脂改質材を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の全天候型常温アスファルト混合物。
【請求項5】
前記カットバックアスファルトに対する前記低溶融樹脂改質材の質量比が、15%以下に設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載の全天候型常温アスファルト混合物。
【請求項6】
骨材が混合された請求項1に記載の全天候型常温アスファルト混合物を、舗装施工位置に敷き均した後に水を添加して固める、ことを特徴とする舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装等に使用する全天候型常温アスファルト混合物及びその混合物を使用する舗装方法に関するものであり、特に天候状態に左右されずに常温施工が可能で、施工後、早期に高い強度を発現可能とした全天候型常温アスファルト混合物及びその混合物を使用する舗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路舗装等の舗装を行う、一般的な表層の施工として、粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトを100℃以上に加熱してつくられる、加熱アスファルト混合物を使用する加熱アスファルト舗装と、アスファルト乳剤やカットバックアスファルトを常温(100℃以下)で用いる常温アスファルト混合物を使用する常温アスファルト舗装と、アスファルト混合物の製造時に発泡剤及び発泡強化剤などを添加することにより、使用温度を加熱アスファルト混合物と比べて約30℃程度の低減を可能にした、中温化アスファルト混合物を使用する中温アスファルト舗装等が知られている。
【0003】
加熱アスファルト舗装は、加熱アスファルト混合物常温アスファルト舗装及び中温アスファルト舗装などに比べて、舗設直後に大きな強度が得られる利点がある。反面、混合物温度が低下して舗装上を使用できるまでの待ち時間を大きく必要とする。また、加熱されたアスファルト混合物を現場まで長時間に亘って運搬する場合や、少量施工で温度低下が懸念される場合などには適用が困難である。
【0004】
中温アスファルト舗装は、加熱アスファルト舗装と比べて、可使温度を低下させることができるが、施工量・運搬時間等については加熱アスファルト混合物と同様である。
【0005】
常温アスファルト舗装は、常温アスファルト混合物として、バインダにカットバックアスファルトを用いるものと、アスファルト乳剤を用いるものとがある。
【0006】
カットバックアスファルトを用いる常温アスファルト舗装は、鉱物油等のカットバック材(溶媒)によってアスファルトを軟化させてカットバック材の揮発に伴って強度を発現する。これに対して、アスファルト乳剤を用いる常温アスファルト舗装は、界面活性剤等の効果によりアスファルトを水中に分散させ、骨材等との接触により分解して強度を発現する。しかし、これらの常温アスファルト混合物は、強度が交通開放を行うことができるまでに復活する時間、すなわち養生時間が長大となることが欠点になっている。また、アスファルト乳剤については、分解に時間を要する他、いずれの場合においても水の存在下においては強度発現し難いという欠点がある。
【0007】
なお、常温施工を可能とする常温アスファルト合材の一例としては、特許文献1及び特許文献2等で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-284628号公報
【特許文献1】特開2004-67736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、加熱アスファルト混合物を使用した加熱アスファルト舗装は、舗設直後に大きな強度が得られるものの、混合物温度が低下して舗装上を使用できるまでの待ち時間を大きく必要とする。また、加熱されたアスファルト混合物を現場まで長時間に亘って運搬する場合や、その他、温度低下が懸念される少量施工の場合などには、適用が困難である。
【0010】
一方、常温アスファルト混合物を使用した常温アスファルト舗装は、耐久性に劣る。また、補修後に早期に剥がれて骨材の飛散などが生じて、繰り返し補修を行う必要があった。さらに、補修箇所の表面が陥没してできる穴、すなわち補修箇所のポットホール等には、水が溜まっている場合も多い。そのため、従来の常温アスファルト舗装では、水の介在する箇所では固化せず、また骨材飛散が早期に生じることがあるという問題点があった。
【0011】
そこで、天候状態に左右されずに、常温施工が可能で、また施工後、早期に高い強度を発現可能とする全天候型常温アスファルト混合物及び舗装方法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、カットバックアスファルトと、ロジン類又はロジン類から得られるロジン誘導体からなるロジン添加材と、アルカリ土類金属からなるアルカリ性添加材と、を含み、敷き均した後に水が添加されると固まる、全天候型常温アスファルト混合物を提供する。
【0013】
この構成によれば、カットバックアスファルトに、ロジン添加材とアルカリ性添加材を添加すると、カットバックアスファルトの揮発成分であるケロシン(灯油)等の鉱物油と、ロジン添加材及びアルカリ性添加材に含まれるカルシウムと、水と、による化学反応により、常温アスファルト混合物が固化して早期に高い強度を発現する。また、天候状態に左右されることなく常温施工が可能になる。さらに、カットバックアスファルトとロジン添加材とアルカリ性添加材とを袋詰めして製品化し、使用時に袋詰め製品を補修箇所等に散布し、敷き均した後、水を添加すると固められて、カットバックアスファルトの揮発成分であるケロシン(灯油)等の鉱物油がゲル化し、早期に強度が得られる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記カットバックアスファルトに対する前記ロジン添加材との質量比が、20~30%の範囲に設定されている、全天候型常温アスファルト混合物を提供する。
【0015】
この構成によれば、カットバックアスファルトに対するロジン添加材との質量比を20~30%の範囲に設定することにより常温アスファルト混合物の化学反応が良好化し、早期に高い強度を発現させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記カットバックアスファルトに対する前記アルカリ性添加材の質量比が、20~30%の範囲に設定されている、全天候型常温アスファルト混合物を提供する。
【0017】
この構成によれば、カットバックアスファルトに対するアルカリ性添加材の質量比を20~30%の範囲に設定することにより常温アスファルト混合物の化学反応が良好化し、早期に高い強度を発現させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、低溶融樹脂改質材を更に含む、全天候型常温アスファルト混合物を提供する。
【0019】
この構成によれば、低溶融樹脂改質材を添加し、混合することにより常温(100℃)以下でのアスファルト舗装が可能になる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成において、前記カットバックアスファルトに対する前記低溶融樹脂改質材の質量比が、15%以下に設定されている、全天候型常温アスファルト混合物を提供する。
【0021】
この構成によれば、カットバックアスファルトに対する低溶融樹脂改質材の質量比が、15%以下に設定されていることにより常温アスファルト混合物の化学反応が良好化し、早期に高い強度を発現させることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、骨材が混合された請求項1に記載の全天候型常温アスファルト混合物を、舗装施工位置に敷き均した後に水を添加して締め固める、舗装方法を提供する。
【0023】
この方法によれば、舗装施工位置において、骨材とカットバックアスファルトとロジン添加材とアルカリ性添加材と水とを添加すると、カットバックアスファルトの揮発成分であるケロシン(灯油)等の鉱物油と、ロジン添加材及びアルカリ性添加材に含まれるカルシウムと、水と、による化学反応により、常温アスファルト混合物が固化して早期に高い強度を発現する。また、カットバックアスファルトとロジン添加材とアルカリ性添加材とを袋詰めして製品化し、使用時にはこの袋詰め含製品を補修箇所等に散布して敷き均した後、水を添加して固めると、カットバックアスファルトの揮発成分であるケロシン(灯油)等の鉱物油がゲル化して、早期に強度が得られる。また、天候状態に左右されずに常温施工が可能になる。カットバックアスファルトとロジン添加材とアルカリ性添加材とを袋詰めしたものを舗装施工位置まで運び、使用時に袋詰め製品を補修箇所等に散布し、敷き均した後、水を添加して固めると、カットバックアスファルトの揮発成分であるケロシン(灯油)等の鉱物油がゲル化して、早期に強度が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、舗装施工位置において、カットバックアスファルトとロジン添加材とアルカリ性添加材に含まれるカルシウムと水を添加すると、化学反応により、常温アスファルト混合物が固化して早期に高い強度を発現するので、交通開放を行うことができるまでに強度が復活するまでの時間、すなわち養生時間を大幅に短縮することができる。また、雨などが存在しても大きな影響を受けることがないので、天候状態に左右されずに常温施工が可能になる。さらに、カットバックアスファルトとロジン添加材とアルカリ性添加材とを袋詰め等して製品化し、使用時にこの袋詰め製品を補修箇所等に散布し、敷き均した後、水を添加して固めると早期に強度が得られるので、取り扱いの簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る全天候型常温アスファルト混合物の一実施例を示し、その常温アスファルト混合物の構成と、常温アスファルト混合物を構成している添加材と、その添加材の役割を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、天候状態に左右されずに常温施工が可能で、また施工後、早期に高い強度を発現可能とする全天候型常温アスファルト混合物及び舗装方法を提供するという目的を達成するために、カットバックアスファルトと、ロジン類又はロジン類から得られるロジン誘導体からなるロジン添加材と、アルカリ土類金属からなるアルカリ性添加材と、を含み、敷き均した後に水を添加すると固まり強度を発現する、構成とすることにより実現した。
【実施例0027】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0028】
図1は本発明の一実施例に係る全天候型常温アスファルト混合物11(以下、単に「常温アスファルト混合物11」という)の構成の一例と、常温アスファルト混合物11を構成している添加材の役割を説明する概略構成図である。
【0029】
図1において、常温アスファルト混合物11は、添加材12として、ロジン添加材12aと、アルカリ性添加材12bと、低溶融樹脂改質材12cとを含む。
【0030】
添加材12は、舗装施工位置において、カットバックアスファルト13と混合するとともに、施工時に水14を供給するとカットバックアスファルト13とともに固化されものである。なお、カットバックアスファルト13は、鉱物油13aとアスファルト13bとを含む。
【0031】
ロジン添加材12aは、ロジン類またはロジン類から得られるロジン誘導体からなる。更に詳述すると、ロジン添加材12aは、樹脂酸類がアビエチン酸、レポピマル酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸類及びテトラヒドロアビエチン酸類からなる群より選ばれる樹脂酸類、もしくは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素ロジンからなる群より選ばれる樹脂酸化合物類である。
【0032】
アルカリ性添加材12bは、樹脂酸類もしくは樹脂酸化合物類と反応して塩を形成するアルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属化合物である。より具体的には、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、マグネシウム化合物等が挙げられる。これらの内、コスト面からカルシウム化合物が好ましく、反応性からアルカリ土類金属の水酸化化合物を用いることが好ましい。
【0033】
低溶融樹脂改質材12cは、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエステル樹脂からなる群より選ばれ樹脂及びこれらから得られる変性樹脂からなる改質材である。
【0034】
そして、このように構成された常温アスファルト混合物11を使用した舗装方法を、
図1を用いて次に説明する。
【0035】
まず、骨材15と、鉱物油13aとアスファルト13bとを含むカットバックアスファルト13と、ロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bを含む添加材12と、を順に混合させて常温アスファルト混合物11を製造する。なお、ここでの骨材15の加熱温度は110℃、カットバックアスファルト13は60℃、添加材12は常温である。そして、常温アスファルト混合物11が常温(約100℃以下)となるまで放冷する。
【0036】
その後、常温アスファルト混合物11を舗装施工位置に敷き均す。常温アスファルト混合物11を舗装施工位置に敷き均したら、常温アスファルト混合物11の上から水14を供給し、常温アスファルト混合物11に水14を添加する。こうして、常温アスファルト混合物11に水14を添加すると、ロジン添加材12aに含まれる樹脂酸類とアルカリ性添加材12bに含まれるアルカリ土類金属類がカットバックアスファルト13中の石油由来の鉱物油(溶媒)13aと反応してゲル化する。そして、粘度を増加させて強度を発現し、強度の高い常温アスファルト混合物11を得ることができる。
【0037】
また、必要に応じてカットバックアスファルト13に、添加材12として、低溶融樹脂改質材12cをロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bと共に混合させると、低溶融樹脂改質材12cでカットバックアスファルト13中のアスファルト13bが改質され、カットバックアスファルト13の強度が更に向上され、更に高強度な常温アスファルト混合物11を得ることができる。
【0038】
以下、これについて検証する。なお、検証における添加材12としてのロジン添加材12a、アルカリ性添加材12b、低溶融樹脂改質材12cは、それぞれ次のものを使用した。
【0039】
ロジン添加材12aは、ロジン類又はロジン類から得られるロジン誘導体からなる。ロジン添加材12aは、具体的には例えば、樹脂酸類がアビエチン酸、レポピマル酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸類及びテトラヒドロアビエチン酸類からなる群より選ばれる樹脂酸類、もしくは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素ロジンからなる群より選ばれる樹脂酸化合物類である。
【0040】
アルカリ性添加材12bは、樹脂酸類もしくは樹脂酸化合物類と反応して塩を形成するアルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属化合物であり、具体的には例えば、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、マグネシウム化合物等が挙げられる。これらの内、実際に使用されるアルカリ性添加材12bとしては、コスト面からカルシウム化合物が好ましく、反応性からアルカリ土類金属の水酸化化合物を用いることが好ましい。
【0041】
低溶融樹脂改質材12cは、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエステル樹脂からなる群より選ばれ樹脂及びこれらから得られる変性樹脂からなる改質材である。
【0042】
(実証実験1)
実証実験1は、ロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bによる混合物強度の発現、すなわちロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bによるカットバックアスファルト13の硬化に伴う強度発現について検証を行った。表1は、合成粒度毎の通過質量百分率(%)を示す。
【0043】
【0044】
まず、ロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bを質量比で100:100の混合体をカットバックアスファルト13に対して質量で40%、50%、60%の割合で外割り添加したものを検証した。この検証での常温アスファルト混合物11の混合手順は,骨材15、カットバックアスファルト13、添加材12の順とし、また骨材15の加熱温度は110℃、カットバックアスファルト13の温度は60℃、添加材12は常温である。
【0045】
そして、常温アスファルト混合物11の製造後、常温となるまで放冷した後、常温アスファルト混合物11を図示しないマーシャル試験用モールド(型枠)に投入した後に水14を添加し、その後、図示しないランマーによって締固め(両面50回)を行い、24時間養生後に常温にてマーシャル安定度試験を実施した。
【0046】
表2は、実証実験1の結果である。
【0047】
【0048】
表2から、ロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bの混合体を添加することで、カットバックアスファルト13の常温安定度(kN)、すなわち常温アスファルト混合物11の強度が向上していることが分かる。ただし、添加率が多くなるに従って粉体含有量が増加し、混合性に影響を与えることからカットバックアスファルト13に対して質量で60%以上の添加は望ましくないと言える。したがって、ここでの混合物はカットバックアスファルト13に対して質量で40~60%の範囲で添加することが好ましいと言える。
【0049】
(実証実験2)
実証実験2では、ロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bに低溶融樹脂改質材12cを加えた添加材12を使用する混合体とし、この混合体を固化させた場合におけるバインダの強度について検証を行った。
【0050】
表3は実証実験2の概要と結果を示す。
【0051】
【0052】
表3では、ロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bを質量比1:1で作った混合体を、カットバックアスファルト13に対して質量で40%添加する。次いで、ロジン添加材12aとアルカリ性添加材12bを添加したカットバックアスファルト13に対して低溶融樹脂改質材12cを、質量で10%、15%、20%の割合で外割添加したときの常温安定度(kN)を示したものである。
【0053】
表3から、低溶融樹脂改質材12cが、カットバックアスファルト13に対して質量で15%を超えると強度がわずかに低下することが分かる。よって、低溶融樹脂改質材12cは、カットバックアスファルト13に対して質量で15%以下の範囲で添加することが望ましいと言える。
【0054】
(実証実験3)
次に、溶融温度について検証を行った。低溶融樹脂改質材12cの溶融温度を110℃、94℃、87℃、80℃に調整したものについて検証した。
表4は、その実験結果である。
【0055】
【0056】
表4から、溶融温度が低下すると強度向上することが分かる。しかし、溶融温度を大きく低下させると、常温安定度が低下し、低溶融樹脂改質材12cの効果が低下することが分かる。よって、低溶融樹脂改質材12cの溶融温度は、80℃よりも高く、110℃よりも低い温度、例えば87~94℃の範囲が望ましいと言える。
【0057】
(実証実験4)
次に、常温アスファルト混合物11の標準的な配合による品質の保証について検証を行った。表5は、その常温アスファルト混合物11の配合量の一例を示す。
【0058】
【0059】
この検証での常温アスファルト混合物11の混合手順は、骨材15、カットバックアスファルト、添加材12の順とし、また骨材15の加熱温度は110℃、カットバックアスファルト13の温度は60℃、添加材12は常温である。
【0060】
そして、常温アスファルト混合物11の製造後、常温となるまで放冷した後、常温アスファルト混合物11を図示しないマーシャル試験用モールド(型枠)に投入した後に水14を添加し、その後、図示しないランマーによって締固め(両面50回)を行い、24時間養生後に各種試験を実施した。
【0061】
表6は、各アスファルト混合物の実験結果である。なお、表6の開発品は本実施例における常温アスファルト混合物11で、比較品は一般市場に流通している全天候型常温アスファルト混合物である。
【0062】
【0063】
表6において、マーシャル安定度については、開発品の常温アスファルト混合物11は5.37kN、比較品が5.66kNであり、加熱混合物基準値は4.9kN以上である。残留安定度については、開発品の常温アスファルト混合物11は127.0%、比較品は252.7%、加熱混合物の規格値は75%以上である。動的安定度(DS)については、開発品の常温アスファルト混合物11は6,000回/mm以上、比較品は6,000回/mm以上、加熱混合物の規格値は3,000回/mm以上である。また、施工直後の性状を評価する実験を行った結果、常温低速動的安定度については、開発品の常温アスファルト混合物11は6,000回/mm以上、比較品は6,000回/mm以上、加熱混合物の規格値は3,000回/mm以上である。常温カンタブロ損失率については、開発品の常温アスファルト混合物11は1.0%、比較品は40.0%、加熱混合物の規格値は20%以下である。次に、積雪寒冷地における低温環境下における供用性を評価する実験を行った結果、低温カンタブロ損失率については、開発品の常温アスファルト混合物11は1.0%、比較品は19.4%、加熱混合物の規格値は20%以下である。ラベリングすり減り量については、開発品の常温アスファルト混合物11は0.19mm2、比較品は1.07mm2、加熱混合物の規格値は0.7mm2以下である。したがって、
図7の実験結果から、開発品の常温アスファルト混合物11は、加熱混合物に要求されている品質規格を満足しており、比較品に対しては特に、低温環境下における供用性について著しく優れた値を示した。
【0064】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。