(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101220
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】運筆練習支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 11/00 20060101AFI20240722BHJP
G09B 5/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G09B11/00
G09B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005088
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】709006024
【氏名又は名称】株式会社ベネッセコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 詩織
(72)【発明者】
【氏名】大坂 奈央子
【テーマコード(参考)】
2C028
【Fターム(参考)】
2C028AA05
2C028BA05
2C028BB01
2C028BC04
(57)【要約】
【課題】学習者による運筆の練習を適切にサポートすることで、学習者の練習意欲を向上させることが可能な運筆練習支援技術を提供する。
【解決手段】受付部110は、入力ペンPNの位置情報に基づき、学習者の運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データ生成する。第1検知部131は、手本線Lmの手本データと、学習者の運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データとを比較することで、運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcから逸脱したか否か、または復帰したか否かを検知する。第2表示制御部142は、運筆軌跡データ及び第1検知部131の検知結果に基づいて、学習者の運筆軌跡に応じた線をタッチパネルTPに表示する。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手本データに基づいて、所定の許容幅を有する手本線を表示装置に表示する第1表示制御部と、
学習者が、前記手本線をなぞったときの運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データの入力を受け付ける受付部と、
前記手本データと前記運筆軌跡データとの比較結果に基づき、前記学習者による運筆軌跡が前記手本線の許容幅から逸脱したか否かを検知する第1検知部と、
前記運筆軌跡データに基づいて、前記学習者の運筆軌跡に応じた線を前記表示装置に表示する第2表示制御部と、を備えた運筆練習支援装置であって、
前記第2表示制御部は、
前記第1検知部によって前記手本線の許容幅からの逸脱が検知された後、再び前記手本線の許容幅内に戻ったことが検知された場合には、前記運筆軌跡の逸脱地点と復帰地点とを結ぶ線を、アシスト線として前記表示装置に表示する、運筆練習支援装置。
【請求項2】
前記第2表示制御部は、
前記第1検知部によって前記手本線の許容幅の逸脱が検知されない場合には、前記学習者による運筆軌跡どおりの手書き線を前記表示装置に表示するとともに、前記手書き線と前記アシスト線とを区別できる形で表示する、請求項1に記載の運筆練習支援装置。
【請求項3】
前記第2表示制御部は、
前記逸脱地点と前記復帰地点との距離が、設定された第1閾値未満である場合に、前記アシスト線を前記表示装置に表示する、請求項1に記載の運筆練習支援装置。
【請求項4】
手本データに基づいて、所定の許容幅を有する手本線を表示装置に表示する第1表示制御部と、
学習者が、前記手本線をなぞったときの運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データの入力を受け付ける受付部と、
前記運筆軌跡データに基づき、前記学習者による前記手本線をなぞる操作の中断、再開を検知する第2検知部と、
前記運筆軌跡データに基づいて、前記学習者の運筆軌跡に応じた線を前記表示装置に表示する第2表示制御部と、を備えた運筆練習支援装置であって、
前記第2表示制御部は、
前記第2検知部によって前記手本線をなぞる操作の中断が検知された後、前記手本線をなぞる操作の再開が検知された場合には、前記操作の中断地点と再開地点とを結ぶ線を、アシスト線として前記表示装置に表示する、運筆練習支援装置。
【請求項5】
前記第2表示制御部は、
前記第2検知部によって前記手本線をなぞる操作の中断が検知されない場合には、前記学習者による運筆軌跡どおりの手書き線を前記表示装置に表示するとともに、前記手書き線と前記アシスト線とを区別できる形で表示する、請求項4に記載の運筆練習支援装置。
【請求項6】
前記第2表示制御部は、
前記中断地点と前記再開地点との距離が、設定された第2閾値未満である場合に、前記アシスト線を前記表示装置に表示する、請求項4に記載の運筆練習支援装置。
【請求項7】
前記手本線のスタートとゴールの間には、1つ以上の確認点が設定されており、
前記手本データと前記運筆軌跡データとの比較結果に基づき、前記学習者による運筆軌跡が、前記確認点を通過したか否かを検知する第3検知部と、
前記第3検知部によって前記学習者による運筆軌跡が前記確認点を通過したことが検知された場合に、前記通過を報知する報知部と、をさらに備える請求項1から6のいずれか一項に記載の運筆練習支援装置。
【請求項8】
前記手本線のスタートとゴールの間には、通過すべき順序が規定された複数の確認点が設定されており、
前記第3検知部は、前記学習者による運筆軌跡が、規定された順序どおりに前記確認点を通過したか否かを検知し、
前記報知部は、前記第3検知部によって規定された順序どおりに前記確認点を通過したことが検知された場合に、前記通過を報知する、請求項7に記載の運筆練習支援装置。
【請求項9】
コンピュータを、
手本データに基づいて、所定の許容幅を有する手本線を表示装置に表示する第1表示制御部と、
学習者が、前記手本線をなぞったときの運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データの入力を受け付ける受付部と、
前記手本データと前記運筆軌跡データとの比較結果に基づき、前記学習者による運筆軌跡が前記手本線の許容幅から逸脱したか否かを検知する第1検知部と、
前記運筆軌跡データに基づいて、前記学習者の運筆軌跡に応じた線を前記表示装置に表示する第2表示制御部として機能させるためのプログラムであって、
前記第2表示制御部は、
前記第1検知部によって前記手本線の許容幅からの逸脱が検知された後、再び前記手本線の許容幅内に戻ったことが検知された場合には、前記運筆軌跡の逸脱地点と復帰地点とを結ぶ線を、アシスト線として前記表示装置に表示する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運筆練習支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、文字や線などをかくときの筆の動かし方(いわゆる運筆)を練習するために、タッチペン等を備えたタブレット端末などが活用されている。例えば、特許文献1には、モニタに文字や線の手本となる運筆の動画などを表示する一方、学習者は、その手本をみながら、タッチペン等で文字や線をかくことで、運筆の練習を可能とするシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記システムにおいては、実際に文字や線の手本を直接なぞって運筆練習するわけではない。このため、学習者は、練習結果(すなわち、タッチペン等を用いて入力された文字や線)を見ただけでは、手本通りに正しい運筆ができているかどうかよくわからず、練習意欲を保つことが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、学習者による運筆の練習を適切にサポートすることで、学習者の練習意欲を向上させることが可能な運筆練習支援技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る運筆練習支援装置は、手本データに基づいて、所定の許容幅を有する手本線を表示装置に表示する第1表示制御部と、学習者が、手本線をなぞったときの運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データの入力を受け付ける受付部と、手本データと運筆軌跡データとの比較結果に基づき、学習者による運筆軌跡が手本線の許容幅から逸脱したか否かを検知する第1検知部と、運筆軌跡データに基づいて、学習者の運筆軌跡に応じた線を表示装置に表示する第2表示制御部と、を備えた運筆練習支援装置であって、第2表示制御部は、第1検知部によって手本線の許容幅からの逸脱が検知された後、再び手本線の許容幅内に戻ったことが検知された場合には、運筆軌跡の逸脱地点と復帰地点とを結ぶ線を、アシスト線として表示装置に表示することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、学習者による運筆の練習を適切にサポートすることで、学習者の練習意欲を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る運筆練習支援システムの概略構成を示す図である。
【
図2】運筆練習支援アプリの主要な機能を説明するための説明図である。
【
図3A】運筆練習支援アプリの主要な機能を説明するための説明図である。
【
図3B】運筆練習支援アプリの主要な機能を説明するための説明図である。
【
図3C】運筆練習支援アプリの主要な機能を説明するための説明図である。
【
図4A】運筆練習支援アプリの主要な機能を説明するための説明図である。
【
図4B】運筆練習支援アプリの主要な機能を説明するための説明図である。
【
図5】ユーザ端末の主要な機能モジュールを示すブロック図である。
【
図6】運筆練習支援処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
A.本実施形態
(1)構成
図1は、本実施形態に係る運筆練習支援システム1000の概略構成を示す図である。
運筆練習支援システム1000は、各学習者が運筆を練習する際に利用するタッチパネルTPを備えたユーザ端末100と、スタイラスなどの入力ペンPNとを備えて構成される。
【0011】
本実施形態では、ユーザ端末100としてタッチ操作が可能なタブレット端末を想定するが、これに限る趣旨ではない。例えばパーソナルコンピュータ(PC)、ノートPC、ハンドヘルドコンピュータデバイス、ウェアラブル端末、携帯電話、スマートフォンなど、タッチ操作が可能なあらゆるデバイスに適用可能である。また、スタイラスなどの入力ペンPNの代わりに学習者の指などを入力手段として利用してもよい。
【0012】
ユーザ端末100は、本システム1000内で学習者を一意に識別するためのユーザIDを管理する。ユーザ端末100には、運筆練習支援アプリAP1がインストールされている。「運筆練習支援アプリ」は、各学習者の運筆の練習を支援するためのアプリケーションソフトであり、主要な機能として運筆関連アシスト機能と運筆関連報知機能を備えている。運筆練習支援アプリAP1は、ユーザ端末100の製造出荷時等にインストールしておくことも可能であるが、各種記憶媒体(半導体メモリなど)から別途インストールしてもよい。また、運筆練習支援アプリAP1は、外部サーバ(図示略)等から通信ネットワークを介してソフトウェアの一部または全部の機能が提供される構成(いわゆるSaaS(Software as a Service)など)であってもよい。
【0013】
図2~
図4は、運筆練習支援アプリAP1の主要な機能を説明するための説明図である。
図2に示すように、ユーザ端末100のタッチパネルTPには、所定の許容幅Wcを有する運筆練習用の手本線Lmが表示される。この手本線Lmのスタート地点Psとゴール地点Pgとの間には、複数の確認点Pc1、Pc2が設定されている。確認点Pc1、Pc2は、学習者が入力ペンPNで手本線Lmをなぞったときの筆跡(すなわち、運筆軌跡)が通過すべき定点である(後述)。学習者は、入力ペンPNを利用して手本線Lmをなぞることで、線や文字をかくときの運筆を練習する。
図2では、学習者が運筆練習をやり直すためのやり直しボタンB1を例示しているが、このようなボタンを設けなくてもよい。
【0014】
<運筆関連アシスト機能>
学習者が入力ペンPNを利用して手本線Lmをなぞると、タッチパネルTPには、入力ペンPNで手本線Lmをなぞったときの運筆軌跡に応じた線が表示される。ここで、
図3Aに示すように、学習者の運筆軌跡が手本線Lmの許容幅内であれば、運筆軌跡どおりの線(例えば、黒色の手書き線)LwがタッチパネルTPに表示される。
【0015】
しかしながら、実際には、
図3Bに示すように、学習者の運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcからはみ出す(すなわち、逸脱する)ことがある。このように、運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcから逸脱したとしても、運筆軌跡が再び手本線Lmの許容幅Wcの範囲内に戻ることで、逸脱地点Pdと復帰地点Prとを結ぶ線(例えば、ピンク色のアシスト線)LaがタッチパネルTPに表示される。
【0016】
さらに、
図3Cに示すように、運筆練習の最中に、学習者による手本線Lmをなぞる操作が中断される(すなわち、入力ペンPNがタッチパネルTPから離れる)ことがある。このように、いったん手本線Lmをなぞる操作が中断されたとしても、手本線Lmをなぞる操作が再開された場合には、当該操作の中断地点Piと再開地点Peとを結ぶ線(例えば、ピンク色のアシスト線)LaがタッチパネルTPに表示される。
【0017】
以上が運筆関連アシスト機能である。かかる機能によれば、運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcからはみ出す等して練習に躓いたとしても、再び許容幅Wcに戻る等の操作を行うことで、手書き線Lwと繋がるアシスト線Laが表示されるため、学習者は、練習意欲を低下させることなく、運筆練習を継続することが可能となる。また、手書き線Lwとアシスト線Laが色分けしてタッチパネルTPに表示されるため、監視者(例えば、子供が学習者であれば、その親)などは、タッチパネルTPの表示を確認することで、学習者がどこで練習に躓いたのかを直ちに把握することができる。
【0018】
<運筆関連報知機能>
運筆関連報知機能は、学習者の運筆軌跡が各確認点Pc1、Pc2を通過したときに報知音(例えば、「いいね!」、「その調子!」など)を発することで、学習者に通過したことを知らせる機能である。
【0019】
本実施形態では、各確認点Pc1、Pc2を通過すべき順序(以下、規定順序)が予め設定されている。具体的には確認点Pc1が1番の通過点、確認点Pc2が2番目の通過点として設定されている(ただし、いずれの確認点も最初の通過のみ有効)。
【0020】
したがって、
図4Aに示すように、学習者の運筆軌跡が、規定順序どおりに、確認点Pc1の後に確認点Pc2を通過した場合には、それぞれの通過タイミングで報知音が発せられる。
【0021】
一方、
図4Bに示すように、学習者の運筆軌跡が確認点Pc2を通過した後、ゴール地点に向かわずに再度確認点Pc1に戻った場合には、その後にPc1やPc2を再度通過したとしても、最初の通過ではないために報知音は発せられない。かかる機能によれば、学習者は、手本線Lmの途中に設定された各確認点Pc1、Pc2を正しい順番で通過できるように努力するため、飽きることなく、運筆練習を継続することが可能となる。なお、確認点Pc1、Pc2を設定する数や位置、規定順序などは、本システム1000の運営者等が適宜設定・変更すればよい。また、規定順序は設けなくてもよい。
【0022】
図1に戻り、ユーザ端末100は、一般的なタブレット端末と同様のハードウェア構成を有しており、CPU等からなる制御装置、半導体メモリ、ハードディスク等からなる記憶装置、タッチパネルTP等からなる表示装置、位置センサ等を備えた入力装置、スピーカーや音源チップ等からなる出力装置、カメラ等を備えた撮像装置、各種通信インタフェース等からなる通信装置などを備えている。なお、ユーザ端末100を利用する各学習者の情報(例えば、ユーザIDを含む学習者の個人情報や、運筆練習に関わる履歴情報など)は、管理サーバ(図示略)が管理する構成であってもよい。以下、
図5等を参照しながらユーザ端末100の機能構成について説明する。
【0023】
図5は、ユーザ端末100の主要な機能モジュールを示すブロック図である。
ユーザ端末(運筆練習支援装置)100は、受付部110と、管理部120と、検知部130と、表示制御部140と、報知部150とを具備する。これらの各部は、ユーザ端末100に搭載された各ハードウェア資源が、運筆練習支援アプリAP1などのソフトウェアと協働することによって実現される。
【0024】
受付部110は、学習者による入力操作を受け付けるものであり、位置センサなどを備えて構成される。位置センサは、タッチパネルTP上の入力ペンPNの位置(接触の有無を含む)を検出する。例えば、
図3Aなどに示すように、学習者が入力ペンPNを利用してタッチパネル(表示装置)TPに表示される手本線Lmをなぞると、受付部110は、位置センサによって検知される入力ペンPNの位置情報に基づき、学習者の運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データ生成し、これを入力データとして受け付ける。
【0025】
管理部120は、運筆練習支援アプリAP1に関わる様々なデータを管理するものであり、手本データベースDB1、運筆履歴データベースDB2などを備えている。
【0026】
手本データベースDB1には、所定の許容幅Wcを有する手本線Lmを表示するための手本データが複数記憶されている。すでに説明したように、手本線Lmのスタート地点Psとゴール地点Pgの間には、規定順序が設定されている複数の確認点Pcが点在する(例えば
図2参照)。
【0027】
ここで、学習者に出題する手本線Lmは、例えば学習者の運筆練習の進捗状況(運筆練習に関わる履歴データなど)に基づいてユーザ端末100が自動で決定してもよいが、学習者が自ら選択できるようにしてもよい。
また、手本線Lmの許容幅Wcは、例えば学習者の運筆練習の進捗状況や、学習者のリクエストなどに応じて、ユーザ端末100側で都度設定・変更できるようにしてもよい。
【0028】
運筆履歴データベースDB2には、学習者の運筆練習に関わる履歴データが記憶されている。履歴データには、例えば学習者のユーザID、運筆の練習状況(練習時間、練習した手本線Lmの難易度、練習結果など)をあらわす情報が含まれる。
【0029】
検知部130は、第1検知部131と第2検知部132と第3検知部133とを備える。
第1検知部131は、学習者が練習している手本線Lmの手本データと、学習者の運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データとを比較することで、運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcから逸脱したか否か、または復帰したか否かを検知する。第1検知部131は、検知結果を表示制御部140に通知する。
【0030】
第2検知部132は、運筆軌跡データに基づき、学習者が手本線Lmをなぞる操作を中断したか否か、または再開したか否かを検知する。別言すると、第2検知部132は、運筆軌跡データに基づき、タッチパネルTPから入力ペンPNが離れたか否か、または入力ペンPNがタッチパネルTPに再び接触したか否かを検知する。第2検知部132は、検知結果を表示制御部140に通知する。
【0031】
なお、本実施形態では、学習者が許容幅内で手本線Lmをなぞっているときに、入力ペンPNがタッチパネルTPから離れたか否か、または入力ペンPNがタッチパネルTPに再び接触したか否かを検知する場合を想定するが、これに限る趣旨ではない。許容幅内であるか否かにかかわらず、学習者が手本線Lmをなぞっているときに、入力ペンPNがタッチパネルTPから離れたか否か、または入力ペンPNがタッチパネルTPに再び接触したか否かを検知してもよい。
【0032】
第3検知部133は、手本データと運筆軌跡データとを比較することで、学習者の運筆軌跡が、各確認点Pcを規定順序どおりに通過したか否かを検知する。第3検知部133は、検知結果を報知部150に通知する。
【0033】
表示制御部140は、第1表示制御部141と第2表示制御部142とを備える。
第1表示制御部141は、手本データに基づいて、学習者に出題する手本線LmをタッチパネルTPに表示する。一例として、第1表示制御部141は、学習者の運筆練習に関わる履歴データを参照し、学習者に適した手本線Lmの難易度を決定する。第1表示制御部141は、決定した難易度をもとに、手本データベースDB1から学習者に適した手本データを抽出し、抽出した手本データに対応する手本線LmをタッチパネルTPに表示する(例えば
図2参照)。
【0034】
第2表示制御部142は、運筆軌跡データ及び各検知部131、132、133の検知結果に基づいて、学習者の運筆軌跡に応じた線をタッチパネルTPに表示する。以下、具体的に説明する。
【0035】
第2表示制御部142は、運筆軌跡データ及び第1検知部131の検知結果に基づいて、学習者の運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcから逸脱していないと判断した場合には、学習者による運筆軌跡どおりの手書き線LwをタッチパネルTPに表示する(
図3A参照)。
【0036】
一方、第2表示制御部142は、運筆軌跡データ及び第1検知部131の検知結果に基づいて、学習者の運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcから逸脱したものの、その後、運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcに戻ったと判断した場合には、当該運筆軌跡の逸脱地点Pdと復帰地点Prとを結ぶアシスト線LaをタッチパネルTPに表示する(
図3B参照)。
【0037】
ただし、第2表示制御部142は、逸脱地点Pdと復帰地点Prの距離が、設定された第1閾値未満の場合にのみ、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示する。別言すると、第2表示制御部142は、逸脱地点Pdと復帰地点Prの距離が第1閾値を超えている場合には、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示しない。
【0038】
また、第2表示制御部142は、運筆軌跡データ及び第2検知部132の検知結果に基づいて、学習者による手本線Lmをなぞる操作が中断されたものの、その後、手本線Lmをなぞる操作が再開されたと判断した場合には、当該操作の中断地点と再開地点とを結ぶアシスト線LaをタッチパネルTPに表示する(
図3C参照)。
【0039】
ただし、第2表示制御部142は、中断地点と再開地点の距離が、設定された第2閾値未満である場合にのみ、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示する。別言すると、第2表示制御部142は、中断地点と再開地点の距離が第2閾値を超えている場合には、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示しない。各閾値は、任意に設定・変更可能である。また、各アシスト線の色や線類なども、任意に設定・変更可能である。
【0040】
報知部150は、運筆軌跡データ及び第3検知部133の検知結果に基づいて、学習者の運筆軌跡が各確認点Pc1、Pc2を通過したと判断した場合に、報知音を発する。すでに説明したように、各確認点Pc1、Pc2の通過順序は予め規定されているため、学習者の運筆軌跡が、規定された通過順序どおりに通過しなければ、報知音は発せられない。確認点や報知音の種類などは、任意に設定・変更可能である。例えば、確認点として店舗アイコンやイラストを表示し、この確認点を通過した場合には、報知音として「いらっしゃいませ!」などの音声メッセージを出力してもよい。また、多言語学習の観点から、英語や日本語などの音声メッセージ(例えば、「Welcome! いらっしゃいませ!」)を出力してもよい。
【0041】
(2)動作
以下、学習者が運筆練習する場合のユーザ端末100の動作について、図面を参照しながら説明する。前提として、運筆練習の開始指示が入力されているものとする。
【0042】
図6は、ユーザ端末100によって実行される運筆練習支援処理を示すフローチャートである。ステップS110において、受付部110は、運筆練習の開始指示を受け付けると、学習者による運筆練習を開始する。運筆練習の開始指示は、例えば、学習者が練習開始ボタン(図示略)をタッチ操作することによって入力される。
【0043】
ステップS120において、第1表示制御部141は、手本データベースDB1の中から、学習者に出題する手本線Lmの手本データを抽出し、抽出した手本データに基づいて、手本線LmをタッチパネルTPに表示する(
図2参照)。
【0044】
ステップS130において、受付部110は、位置センサによって検知される入力ペンPNの位置情報に基づき、学習者の運筆軌跡をあらわす運筆軌跡データ生成し、これを入力データとして受け付ける。
【0045】
ステップS140において、第1検知部131は、手本線Lmの手本データと、入力される学習者の運筆軌跡データとを比較することで、運筆軌跡が手本線Lmの許容幅Wcから逸脱したか否か、または復帰したか否かを検知する。第1検知部131は、検知結果を表示制御部140に通知する。
【0046】
ステップS150において、第2表示制御部142は、第1検知部131による検知結果に基づいて、運筆軌跡に応じた手書き線Lw、またはアシスト線LaをタッチパネルTPに表示する(
図3A及び
図3B参照)。もっとも、本実施形態では、逸脱地点Pdと復帰地点Prの距離が、設定された第1閾値未満の場合にのみ、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示するが、これに限る趣旨ではない。例えば、逸脱地点Pdと復帰地点Prが検出されるまでの時間などに応じて、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示するか否かを判断してもよい。
【0047】
ステップS160において、第2検知部132は、運筆軌跡データに基づき、学習者による手本線Lmをなぞる操作が中断したか否か、または再開したか否かを検知する。別言すると、第2検知部132は、運筆軌跡データに基づき、タッチパネルTPから入力ペンPNが離れたか否か、または入力ペンPNがタッチパネルTPに再び接触したか否かを検知する。第2検知部132は、検知結果を表示制御部140に通知する。
【0048】
ステップS170において、第2表示制御部142は、第2検知部132による検知結果に基づいて、運筆軌跡に応じた手書き線Lw、またはアシスト線LaをタッチパネルTPに表示する(
図3A及び
図3C参照)。もっとも、本実施形態では、中断地点Piと再開地点Peの距離が、設定された第2閾値未満の場合にのみ、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示するが、これに限る趣旨ではない。例えば、中断地点Piと再開地点Peが検出されるまでの時間などに応じて、アシスト線LaをタッチパネルTPに表示するか否かを判断してもよい。
【0049】
ステップS180において、第3検知部133は、運筆軌跡データに基づき、学習者の運筆軌跡が、各確認点Pcを規定順序どおりに通過したか否かを検知する。第3検知部133は、検知結果を報知部150に通知する。
【0050】
ステップS190において、報知部150は、第3検知部133による検知結果に基づいて、報知音を報知する。学習者の運筆軌跡が規定順序どおりに通過した場合には、報知音を発する一方、規定順序どおりに通過していない場合には、報知音を発しない。
【0051】
ステップS200において、受付部110は、学習者による運筆練習が終了したか否かを判断する。一例として、受付部110は、学習者の運筆軌跡が手本線Lmのゴール地点Pgに到達したことを検知した場合や、タッチパネルTP等に表示される強制終了ボタン(図示略)がタップされたことを検知した場合には、運筆練習が終了したと判断し、以上説明した処理を終了する。
【0052】
B.その他
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。したがって、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、前述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、又は並列に実行することができる。また、上記実施形態では、学習者の運筆軌跡が、各確認点Pc1、Pc2を通過したと判断した場合に、音によって報知する態様を例示したが、これに加えて(または代えて)、メッセージを表示したり、振動を与えることで学習者に報知してもよい。また、上記実施形態では、手書き線Lwとアシスト線Laとを色分けして表示する態様を例示したが、これに限定する趣旨ではない。要は、学習者等が手書き線Lwとアシスト線Laを区別することができればよく、例えば手書き線Lwとアシスト線Laの間で線の太さを変えたり(3ptと0.5ptなど)、線の種類を変えたり(実線と点線など)してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1000…運筆支援システム、100…ユーザ端末、110…受付部、120…管理部、130…検知部、131…第1検知部、132…第2検知部、133…第3検知部、140…表示制御部、141…第1表示制御部、142…第2表示制御部、150…報知部、DB1…手本データベース、DB2…運筆履歴データベース、TP…タッチパネル、PN…入力ペン、AP1…運筆練習支援アプリ、Lm…手本線、Wc…許容幅、Lw…手書き線、La…アシスト線、Ps…スタート地点、Pg…ゴール地点、Pi…中断地点、Pe…再開地点、Pc1,Pc2…確認点