(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101239
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/54 20060101AFI20240722BHJP
B65H 43/02 20060101ALI20240722BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B65H29/54
B65H43/02
B65H5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005113
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸平
(72)【発明者】
【氏名】川上 和久
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一順
【テーマコード(参考)】
3F048
3F049
3F053
【Fターム(参考)】
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA14
3F048BB02
3F048CC02
3F048DA06
3F048DC12
3F048EB22
3F049AA07
3F049LA07
3F049LB03
3F053AA04
3F053LA07
3F053LB03
(57)【要約】
【課題】搬送ベルトを傷付けることを抑えつつ、搬送ベルトから媒体を剥離できる記録装置を提供する。
【解決手段】記録装置は、電荷により媒体Mを吸着させて搬送する搬送ベルト73と、搬送ベルト73に搬送される媒体Mに記録を行う記録ユニット30と、媒体Mのジャム発生を判定する判定部と、送風により、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離部120とを有する。ジャム発生時に搬送ベルト73上に滞留した媒体Mがある場合、剥離部120は、搬送ベルト73と媒体Mとで鋭角な隙間ASが形成された状態の下で、鋭角な隙間ASに向けて送風することにより、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、
媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、
送風により、前記搬送ベルトから媒体を剥離する剥離部と、
を有し、
前記ジャムの発生時に前記搬送ベルト上に滞留した媒体がある場合、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで鋭角な隙間が形成された状態の下で、前記鋭角な隙間に向けて送風することにより、前記搬送ベルトから媒体を剥離する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記搬送ベルトの上流または下流に位置し、媒体の有無を検知する検知部を有し、
前記検知部が媒体を検知した場合、
前記剥離部は前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて送風し、
前記検知部が媒体を検知しなかった場合、
前記搬送ベルトは、前記検知部によって媒体が検知される位置に媒体を搬送し、
前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて送風する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の記録装置であって、
イオンを発生するイオン発生部を有し、
前記剥離部は、前記イオン発生部が発生したイオンを含む風を送風する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の記録装置であって、
前記剥離部は、媒体のサイズに応じて送風量を変更する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、
媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、
シート部材又はワイヤよりなる剥離部材により、前記搬送ベルトから媒体を剥離する剥離部と、
を有し、
前記ジャムの発生時に前記搬送ベルト上に滞留した媒体がある場合、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで鋭角な隙間が形成された状態の下で、前記鋭角な隙間に向けて前記剥離部材を挿入することにより、前記搬送ベルトから媒体を剥離する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の記録装置であって、
前記搬送ベルトの上流または下流に位置し、媒体の有無を検知する検知部を有し、
前記ジャムの発生時に、前記検知部が媒体を検知した場合、
前記剥離部は前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて前記剥離部材を挿入し、
前記ジャムの発生時に、前記検知部が媒体を検知していない場合、
前記搬送ベルトは、前記検知部によって媒体が検知される位置に媒体を搬送し、
前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて前記剥離部材を挿入する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置であって、
前記剥離部材は導電性を有する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の記録装置であって、
前記剥離部材は、前記シート部材であり、
前記シート部材を巻いて格納する格納部と、
前記格納部に格納された前記シート部材を、前記鋭角な隙間に向けて送り出す駆動部と、を有することを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載の記録装置であって、
前記シート部材の先端部には、保護部材が設けられている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項6又は請求項7に記載の記録装置であって、
前記剥離部材は、前記シート部材であり、
前記シート部材は、媒体が搬送される搬送方向と交差する幅方向に複数設けられ、複数の前記シート部材のうち動作させるシート部材を媒体サイズに応じて選択可能に構成される、ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項6又は請求項7に記載の記録装置であって、
前記剥離部材は、前記ワイヤであり、
媒体が搬送される搬送方向と交差する幅方向において前記搬送ベルトの両側の側端よりも外側の位置で前記ワイヤを前記搬送ベルトと平行に前記幅方向に沿って張設された状態で支持する一対の可動部と、
一対の前記可動部を前記搬送ベルトの前記側端に沿って移動させることで、前記ワイヤを前記鋭角な隙間に向けて送り出す駆動部と、を有する記録装置。
【請求項12】
電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、
媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、
前記搬送ベルトの一方の端部を固定端として、前記搬送ベルトの他方の端部である自由端を下方に移動させる移動機構と、
前記搬送ベルトの前記自由端よりも媒体の搬送方向の下流側に設けられ、媒体をニップするローラー対と、を有し、
前記ジャムの発生時に、前記ローラー対が媒体をニップしている場合、
前記移動機構は、前記搬送ベルトを下方に移動させ、
前記ローラー対が媒体をニップしていない場合、
前記搬送ベルトは、前記ローラー対がニップ可能な位置に媒体を搬送し、
前記移動機構は、前記搬送ベルトの前記自由端を下方に移動させる、ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する搬送ベルトを備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、記録対象である用紙等の媒体を搬送する搬送ベルト(例えば転写ベルト)と、搬送ベルトから媒体を剥離する剥離ユニットを備える画像形成装置(記録装置の一例)が開示されている。媒体は、静電吸着力により転写ベルトに吸着しつつ搬送される。
【0003】
媒体のジャム発生時に電源が切れても、搬送ベルトに残留した残留電荷による静電力の作用によって媒体は搬送ベルトに吸着されている。そのため、媒体を摘まむための浮き上がり部や隙間がなく、媒体を除去する除去作業が困難である。剥離ユニットは、ベルト部材面に略平行で且つ媒体の搬送方向に略垂直な軸周りに回動可能に支持された爪状部材を有する。爪状部材の先端がベルト部材の表面を実質上摺擦しながら移動して、ベルト部材からシートを剥離させる。そのため、ユーザーが媒体を摘まみ易く、媒体の除去作業が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、爪状部材により搬送ベルトから媒体を剥離する際に、爪状部材によって搬送ベルトを傷付ける可能性があるという課題がある。そのため、搬送ベルトを傷付けることを抑えつつ、搬送ベルトから媒体を剥離できる記録装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する記録装置は、電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、送風により、前記搬送ベルトから媒体を剥離する剥離部と、を有し、前記ジャムの発生時に前記搬送ベルト上に滞留した媒体がある場合、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで鋭角な隙間が形成された状態の下で、前記鋭角な隙間に向けて送風することにより、前記搬送ベルトから媒体を剥離する。
【0007】
上記課題を解決する記録装置は、記録装置は、電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、シート部材又はワイヤよりなる剥離部材により、前記搬送ベルトから媒体を剥離する剥離部と、を有し、前記ジャムの発生時に前記搬送ベルト上に滞留した媒体がある場合、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで鋭角な隙間が形成された状態の下で、前記鋭角な隙間に向けて前記剥離部材を挿入することにより、前記搬送ベルトから媒体を剥離する。
【0008】
上記課題を解決する記録装置は、記録装置は、電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、前記搬送ベルトの一方の端部を固定端として、前記搬送ベルトの他方の端部である自由端を下方に移動させる移動機構と、前記搬送ベルトの前記自由端よりも媒体の搬送方向の下流側に設けられ、媒体をニップするローラー対と、を有し、前記ジャムの発生時に、前記ローラー対が媒体をニップしている場合、前記移動機構は、前記搬送ベルトを下方に移動させ、前記ローラー対が媒体をニップしていない場合、前記搬送ベルトは、前記ローラー対がニップ可能な位置に媒体を搬送し、前記移動機構は、前記搬送ベルトの前記自由端を下方に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における記録装置を示す模式正断面図である。
【
図2】静電搬送部の概略構成を示す模式正面図である。
【
図3】第1実施例の剥離部を備える静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図4】剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図5】剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図6】剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図7】剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図8】剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図9】第2実施例の剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図10】剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図11】記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図13】第2実施形態における剥離部を備える静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図14】第3実施例におけるシート式剥離部を示す斜視図である。
【
図16】
図15における16-16線で破断したシート式剥離部を示す正断面図である。
【
図17】
図16とは異なるシート式剥離部を示す斜視図である。
【
図18】第4実施例における複数のシート式剥離部が配置された状態を示す平面図である。
【
図19】シート式剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図20】シート式剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図21】シート式剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図22】シート式剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図23】シート式剥離部の動作を説明する静電搬送部を示す模式正面図である。
【
図24】第3実施形態におけるワイヤ式剥離部を備える静電搬送部を示す模式平面図である。
【
図25】ワイヤ式剥離部の動作を示す模式正面図である。
【
図26】第4実施形態における搬送ベルトを退避させる剥離動作を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、記録装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態の記録装置は、用紙などの媒体にインクを吐出することで、文字や画像を記録するインクジェットプリンターである。
図1では、記録装置11が水平面上に置かれているものとする。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の記録装置11の筐体12内には、媒体Mを搬送経路に沿って搬送する搬送部20と、搬送されている媒体Mに記録を行う記録ユニット30と、が設けられている。
図1において紙面と直交する方向を媒体Mの幅方向Xとした場合、搬送経路は、媒体Mの幅方向Xと交差(直交)する方向に媒体Mを搬送するように形成されている。
【0012】
なお、以降の説明では、媒体Mが搬送される方向を「搬送方向Y」とし、鉛直方向を「鉛直方向Z」とする。ここで、搬送方向Yは幅方向Xと交差(例えば直交)する方向である。換言すれば、幅方向Xは、搬送方向Yと交差(例えば直交)する方向である。鉛直方向Zは幅方向X及び搬送方向Yと交差(例えば直交)する方向である。また、搬送方向Yの反対方向を搬送方向上流とも言い、搬送方向Yを搬送方向下流とも言う。
【0013】
記録ユニット30は、媒体Mの幅方向Xの略全域に亘って色材の一例であるインクを同時に吐出可能なラインヘッド型の記録ヘッド31を備える。そして、この記録ヘッド31に形成されたノズル32(
図2参照)から吐出されたインクが媒体Mに付着することにより、媒体Mの記録面Mbに記録が行われる。因みに、複数色のインクを吐出可能な記録ヘッド31においては、同色のインクを吐出する複数のノズル32からなるノズル列が幅方向Xに形成され、異色のインクを吐出するノズル列が搬送方向Yに並ぶように形成される。
【0014】
搬送部20は、記録前の媒体Mを搬送経路に沿って給送する給送機構部50と、記録済みの媒体Mを筐体12外に排出する排出機構部40とを備える。ここで、給送機構部50は搬送方向上流側に設けられ、排出機構部40は搬送方向下流側に設けられている。
【0015】
給送機構部50は、第1媒体供給部51と、第2媒体供給部52と、第3媒体供給部53と、静電搬送部70と、を備える。第1媒体供給部51、第2媒体供給部52及び第3媒体供給部53は静電搬送部70に向けて媒体Mを搬送し、静電搬送部70は排出機構部40に向けて媒体Mを搬送する。
【0016】
筐体12の一側面(
図1では右側面)には開閉可能な給送トレイ13が設けられており、この給送トレイ13が開放されることにより挿入口12Aが露出される。第1媒体供給部51は、挿入口12Aから筐体12内に挿入された媒体Mを挟持する第1給送ローラー54を備える。そして、この第1給送ローラー54の回転によって、媒体Mが静電搬送部70に向けて搬送される。
【0017】
また、筐体12の下部には、記録前の媒体Mが積層状態でセットされる給送カセット55が設けられる。第2媒体供給部52は、給送カセット55から媒体Mを給送するための供給部である。すなわち、第2媒体供給部52は、給送カセット55内の最上位の媒体Mを給送カセット55外に送り出すピックアップローラー56と、複数枚の媒体Mが重なって搬送されることを抑制する分離ローラー57と、分離ローラー57を通過した1枚の媒体Mを挟持する第2給送ローラー58とを備える。そして、ピックアップローラー56、分離ローラー57及び第2給送ローラー58の回転によって、媒体Mが静電搬送部70に向けて搬送される。
【0018】
第3媒体供給部53は、媒体Mの両側の面に記録する両面記録を行うときに、片側の面が記録済みとなった媒体Mを、再び静電搬送部70に導くための供給部である。第3媒体供給部53は、静電搬送部70よりも搬送方向下流において、排出口48に至る第1搬送路61又は第1搬送路61から分岐する第2搬送路62に、媒体Mの搬送経路を切り替える分岐機構64を備える。また、第3媒体供給部53において、第2搬送路62には分岐搬送ローラー65が設けられ、第2搬送路62から分岐する第3搬送路63には複数の反転搬送ローラー66が設けられている。
【0019】
そして、両面記録を行う場合、片側の面が記録済みとなった媒体Mは、静電搬送部70から分岐機構64によって第2搬送路62に導かれる。このとき、分岐搬送ローラー65の正方向への回転によって、媒体Mが搬送方向下流に搬送される。そして、媒体Mの後端が第2搬送路62に導かれると、分岐搬送ローラー65が逆方向に回転され、媒体Mが逆方向に搬送される。すると、媒体Mは、
図1において記録ユニット30よりも上方に位置する第3搬送路63に導かれ、複数の反転搬送ローラー66の回転によって、媒体Mが第3搬送路63に沿って搬送される。これにより、媒体Mが、静電搬送部70よりも搬送方向上流で第1搬送路61に合流され、当該媒体Mが静電搬送部70に再び導かれる。
【0020】
このように静電搬送部70に媒体Mが再び導かれると、記録済みとなった面が静電搬送部70に接触し、記録されていない面が記録ヘッド31に対向することとなる。なお、以降の説明では、媒体Mの両面のうち、静電搬送部70に接触する面のことを「裏面Ma」とも言い、裏面Maの反対側の面を「記録面Mb」とも言う。
【0021】
排出機構部40は、搬送経路に沿って配置されている複数のローラー対41,42,43,44,45を有している。ローラー対41~45は、回転駆動することで媒体Mに搬送力を付与する駆動ローラー46と、媒体Mの搬送に伴って従動回転する従動ローラー47と、をそれぞれ備える。駆動ローラー46及び従動ローラー47は、幅方向Xを回転軸方向とし、従動ローラー47は駆動ローラー46に向けて付勢されている。また、駆動ローラー46の幅方向Xと交差する断面形状は円形とされる一方、従動ローラー47の幅方向Xと交差する断面形状は略星形とされている。すなわち、従動ローラー47は、媒体Mの記録が行われた面に接するローラーであるため、当該面に対する接触面積ができるだけ小さくなるような形態とされている。
【0022】
そして、排出機構部40によって搬送される媒体Mは、筐体12に形成されている排出口48から筐体12外に排出される。つまり、この排出口48が、搬送経路の下流端、すなわち搬送経路の最下流となっている。そして、排出口48から排出された媒体Mは、
図1に二点鎖線で示すように、載置台49上に積層状態で載置される。
【0023】
また、
図1に示すように、筐体12の他の一側面(
図1では左側面)には開閉可能なカバー15が設けられている。筐体12内において、搬送経路の途中で媒体Mが詰まるジャムが発生した場合、ユーザーは、カバー15を開けることで露出する筐体12内に対して、ジャムの媒体Mを除去するジャム除去作業を行うことが可能である。
【0024】
また、筐体12内の所定位置には、制御部100が配置されている。制御部100は、搬送部20及び記録ユニット30等を制御する。
次に、
図2を参照し、静電搬送部70とその周辺部材の構成について説明する。
図2に示すように、記録装置11は、電荷により媒体Mを吸着させて搬送する搬送ベルト73と、搬送ベルト73に搬送される媒体Mに記録を行う記録ユニット30とを備える。
【0025】
静電搬送部70は、記録ヘッド31よりも搬送方向Yの上流に配置された第1ベルトローラー71と、記録ヘッド31よりも搬送方向Yの下流に配置された第2ベルトローラー72とを有する。第1ベルトローラー71及び第2ベルトローラー72の各回転軸は、幅方向Xと平行である。また、第1ベルトローラー71は、その駆動源であるベルトモーター105(
図11)に接続され回転駆動可能なローラーであり、第2ベルトローラー72は、駆動源に接続されない回転駆動不能なローラーである。
【0026】
そして、無端状(環状)の搬送ベルト73は、第1ベルトローラー71及び第2ベルトローラー72の外周に巻き掛けられている。搬送ベルト73は、弾性を有するゴム材料又は樹脂材料によって構成されている。ここで、
図2に白抜矢印で示すように、第2ベルトローラー72は、第1ベルトローラー71から離れる方向(図中左方)に付勢されている。このため、搬送ベルト73には、第2ベルトローラー72によって、搬送ベルト73の回転方向に張力が作用している。
【0027】
第1ベルトローラー71が回転駆動されることにより、搬送ベルト73が回転し、媒体Mが搬送方向Yに搬送される。搬送ベルト73が媒体Mを搬送する際には、搬送ベルト73の外面が、媒体Mの裏面Maに接触し当該媒体Mを支持する支持面として機能する。
【0028】
また、記録ユニット30は、搬送ベルト73の支持面と対向する位置に配置されている。換言すれば、記録ユニット30は、媒体Mの搬送経路を挟んで搬送ベルト73と対向する位置に配置される。記録ユニット30は、前述の記録ヘッド31を備える。記録ヘッド31は、搬送ベルト73と対向する面であるノズル面31Aと、ノズル面31Aに開口する前述のノズル32とを有する。
【0029】
また、記録ユニット30は、記録ヘッド31を昇降させる昇降機構33を備えてもよい。昇降機構33は、例えば、記録ヘッド31を鉛直方向Zに案内する昇降レール34と、昇降レール34に沿って昇降させる駆動力を記録ヘッド31に付与する駆動源35とを備える。駆動源35は、例えば、電動モーターであってもよい。この場合、駆動源35が正逆転駆動されることで、記録ヘッド31は
図2に実線で示す記録位置と
図2に二点鎖線で示す退避位置との間を昇降可能に構成される。
【0030】
以降の説明では、搬送ベルト73において第1ベルトローラー71及び第2ベルトローラー72に接触する面を「内面73a」とし、搬送ベルト73において媒体Mを支持する際に媒体Mの裏面Maに接触する面を「外面73b」とする。また、搬送ベルト73が回転する際にこの搬送ベルト73が移動する経路を「周回経路」とも言う。
【0031】
図2に示すように、記録ヘッド31の直下であって搬送ベルト73の周回経路の内側には、搬送ベルト73の内面73aを支持するバックアッププレート74が設けられている。バックアッププレート74は、例えば、金属などの導電性材料から構成されるとともに、接地されていてもよい。また、
図2に白抜矢印で示すように、バックアッププレート74は、当該搬送ベルト73を記録ヘッド31側に付勢している。このため、搬送ベルト73には、バックアッププレート74によって、搬送ベルト73の回転方向に張力が作用している。
【0032】
図2に示すように、搬送ベルト73の鉛直下方には、搬送ベルト73の外面73bを払拭する払拭部75が設けられている。払拭部75は、搬送ベルト73の外面73bに接触するクリーニングブレード76と、クリーニングブレード76を支持するブレード支持部77と、を備える。
【0033】
払拭部75は、搬送ベルト73の回転中にクリーニングブレード76によって搬送ベルト73の外面73bを払拭する。なお、ブレード支持部77は、昇降可能に設けられてもよい。これによれば、搬送ベルト73に対するクリーニングブレード76の接触圧を変化させたり、クリーニングブレード76を搬送ベルト73に接触しない退避位置に退避させることができる。
【0034】
また、払拭部75と搬送ベルト73を挟んで向かい合う位置には、払拭部75とともに搬送ベルト73を挟持する挟持部78が設けられている。払拭部75による搬送ベルト73の払拭時には、挟持部78が、クリーニングブレード76の付勢に抗して搬送ベルト73を裏面から支持することで、搬送ベルト73の払拭性能が向上する。
【0035】
図2に示すように、搬送ベルト73よりも搬送方向上流には、第1媒体供給部51、第2媒体供給部52又は第3媒体供給部53から供給された媒体Mを搬送ベルト73に向かって搬送する供給用のローラー対81が設けられている。ローラー対81は、駆動回転することで媒体Mに搬送力を付与する駆動ローラー82と、搬送される媒体Mに接触することで従動回転する従動ローラー83とを備える。従動ローラー83は、駆動ローラー82に向けて付勢されている。また、駆動ローラー82及び従動ローラー83の回転軸は、幅方向Xと平行である。そして、供給用のローラー対81は、回転駆動状態において媒体Mを搬送方向Yの下流に搬送する。
【0036】
図2に示すように、第1ベルトローラー71よりも搬送方向上流(図中右側)には、帯電部84が設けられている。帯電部84は、帯電ローラー85を備える。帯電ローラー85は、幅方向Xを回転軸方向とし、搬送ベルト73の外面73bに接触している。帯電ローラー85は電源に接続され、電源から直流電圧が印加される。
【0037】
そして、第1ベルトローラー71の回転が搬送ベルト73を通じて帯電ローラー85に伝達されることにより、帯電ローラー85が第1ベルトローラー71に対して従動回転する。このとき、帯電ローラー85は、搬送ベルト73の外面73bにおいて帯電ローラー85に接触している部位に電荷を供給する。本実施形態の記録装置11では、帯電ローラー85は搬送ベルト73に正の電荷を供給し、搬送ベルト73の外面73bを正の電荷で帯電させる。なお、帯電ローラー85は搬送ベルト73に負の電荷を供給し、搬送ベルト73の外面73bを負の電荷で帯電させる構成でもよい。
【0038】
また、記録ヘッド31よりも搬送方向上流(図中右側)には、静電搬送部70に搬送された媒体Mを搬送ベルト73に押し付けるサポートローラー87が設けられている。サポートローラー87は、例えば、金属などの導電材料で構成されるとともに、接地されている。そして、第1ベルトローラー71の回転が搬送ベルト73を通じてサポートローラー87に伝達されることにより、サポートローラー87が第1ベルトローラー71に対して従動回転する。
【0039】
図2に示すように、搬送方向Yにおいて、サポートローラー87と記録ヘッド31との間には、除電部90が設けられている。除電部90は、搬送ベルト73に向かって突出するブラシを有する除電ブラシ91と、搬送ベルト73(媒体M)に対する除電ブラシ91の接触圧を調整する稼動部92とを備える。
【0040】
除電ブラシ91は、媒体Mから電荷を除去できる材質(例えば、導電性ナイロンなどの樹脂材料)で形成されるブラシを有すればよい。また、除電ブラシ91は、搬送ベルト73(媒体M)に接触したときの搬送ベルト73(媒体M)に対する接触圧が幅方向Xにおいて一様になるように形成されている。
【0041】
稼動部92は、例えば、ソレノイドなど、除電ブラシ91を直線移動させることのできる機構を有する。そして、稼動部92は、
図2に両方向矢印で示すように除電ブラシ91の位置を変更することで、除電ブラシ91の搬送ベルト73(媒体M)に対する接触圧を調整する。例えば、稼動部92は、媒体Mの記録面Mbを除電する必要がある場合には、搬送ベルト73の外面が撓む程度の接触圧で除電ブラシ91を搬送ベルト73に接触させる。一方、稼動部92は、媒体Mの記録面Mbを除電する必要のないときは、除電ブラシ91を搬送ベルト73から退避させる。
【0042】
図2に示すように、搬送ベルト73よりも搬送方向Yの上流位置には、媒体Mの有無を検知する第1検知部21が設けられている。第1検知部21は、搬送ベルト73へ搬入される媒体Mを事前に検知する。制御部100は、第1検知部21から入力する検知信号が、オンとオフとの間で切り替わることで、搬送ベルト73よりも所定の経路長だけ上流の位置で、通過する媒体Mの先端及び後端を検知する。
【0043】
また、搬送ベルト73よりも搬送方向Yの下流位置には、媒体Mの有無を検知する第2検知部22が設けられている。第2検知部22は、搬送ベルト73から排出された媒体Mを検知する。制御部100は、第2検知部22から入力する検知信号が、オンとオフとの間で切り替わることで、搬送ベルト73よりも所定の経路長だけ下流の位置で、通過する媒体Mの先端及び後端を検知する。
【0044】
制御部100は、第1検知部21及び第2検知部22からの各検知信号に基づいて、搬送経路における媒体Mの位置(搬送位置)を認識する。また、制御部100は、第1検知部21及び第2検知部22からの各検知信号に基づいて搬送ベルト73上で発生した媒体Mのジャムを検出する。
【0045】
次に、搬送ベルト73による媒体Mの静電吸着について詳しく説明する。
搬送ベルト73は、内側に形成された環状をなす導電層と、この導電層の外側に形成された環状の絶縁層とを有している。この絶縁層は、導電層よりも電気抵抗が大きい。なお、絶縁層の外面は搬送ベルト73の外面73bであり、導電層の内面は搬送ベルト73の内面73aである。
【0046】
第1ベルトローラー71の回転によって搬送ベルト73が回転されると、帯電ローラー85が従動回転することにより、搬送ベルト73の外面73b側、すなわち絶縁層の外面側に正の電荷(+)が帯電し、絶縁層の内面側に負の電荷(-)が帯電する。
【0047】
そして、搬送ベルト73の外面73bにサポートローラー87によって媒体Mが押し付けられると、媒体Mが搬送ベルト73に密接し、媒体Mの内部で分極が起こる。つまり、媒体Mの裏面Ma側に負の電荷が帯電する一方、媒体Mの裏面Maの反対側となる記録面Mb側に正の電荷が帯電する。その後、媒体Mの記録面Mb側に帯電した正の電荷は、当該記録面Mbに接触する除電ブラシ91によって除去されることで、搬送ベルト73による媒体Mに対する静電吸着力が発生する。本実施形態は、搬送ベルト73を正の電荷のみで帯電(DC帯電)させる。
【0048】
搬送ベルト73が回転されると、搬送ベルト73の導電層及びバックアッププレート74が摺接することで、搬送ベルト73の導電層が意図せずに摩擦帯電する場合がある。この場合、搬送ベルト73の外面73bにおける正の電荷量が減少する虞があるが、バックアッププレート74が接地されているため、導電層が摩擦帯電することが抑制される。なお、搬送ベルト73を正の電荷及び負の電荷を交互に帯電(AC帯電)させる構成でもよい。
【0049】
<剥離部120の構成>
次に、
図2を参照して、剥離部120の構成について説明する。
図2に示すように、記録装置11は、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離部120を備える。ここで、搬送ベルト73上で媒体Mのジャムが発生した場合、帯電ローラー85による帯電は停止される。しかし、搬送ベルト73及び媒体Mは、帯電した状態にあるので、搬送ベルト73と媒体Mとの吸着力は維持される。そのため、ユーザーがジャムの媒体Mを除去する際に、静電吸着力に抗して媒体Mを搬送ベルト73の表面から引き剥がす必要がある。このとき、無理に引き剥がされようとする媒体Mが破れる場合がある。媒体Mが破れると、媒体Mの除去が面倒な作業になり、ジャムの解除に時間を要する場合がある。ジャムの解除に時間を要すると、記録待ち時間が長くなり、記録を待つユーザーの作業効率の低下をもたらす。この点において、ジャム解除時間は短く済むことが好ましい。そのため、本実施形態では、ユーザーがジャム解除作業を行う前に事前に媒体Mを搬送ベルト73から剥離する。
【0050】
そのために、記録装置11は、搬送ベルト73上でジャムが発生した場合、そのジャムの媒体Mを搬送ベルト73から剥離する剥離部120を備える。本実施形態では、搬送ベルト73上に媒体Mがある状態で発生するジャムを、「第1ジャム」という。ここで、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する方向には、主に搬送方向Yの上流側から媒体Mを剥離する第1の方向と、搬送方向Yの下流側から媒体Mを剥離する第2の方向とがある。
【0051】
本実施形態では、搬送ベルト73に対して搬送方向Yの下流側に、ジャムの解除作業を行うためにユーザーが開閉するカバー15が位置する。そのため、ユーザーがジャム除去作業を行う下流側の媒体Mの剥離を優先する。そのために、剥離部120は、搬送ベルト73に対して搬送方向Yの下流から上流に向かう第2の方向に向かって媒体Mを剥離する。
【0052】
そのため、本実施形態では、搬送ベルト73の下流に位置し、媒体Mの有無を検知する第2検知部22が、検知部の一例に相当する。つまり、本実施形態は、検知部が、搬送ベルト73の下流に位置する例である。ジャム発生時に、
図2に示す鋭角な隙間ASが形成されているか否かの判定に、第2検知部22の検知結果が用いられる。
【0053】
剥離部120は、ジャム発生時に搬送ベルト73から媒体Mを剥離するために搬送ベルト73と媒体Mとが吸着した界面(以下、単に「吸着界面」ともいう。)に挿入される対象を案内するガイド部材121を有する。挿入される対象は、空気等の流体でもよいし、吸着界面に挿入し易い所定形状を有する剥離部材でもよい。剥離部材としては、例えば、シート形状で可撓性を有する部材等が挙げられる。
【0054】
ここで、鋭角な隙間ASとは、搬送ベルト73が巻き掛けられた複数のベルトローラー71,72の回転軸線と平行な方向から見た
図2における正面視において、搬送ベルト73の搬送方向Yの端部から離間した部分の媒体Mと、搬送ベルト73の搬送方向Yの端部に形成される円弧面とで形成される空間部を指す。この鋭角な隙間ASは、剥離部120から送られる対象を吸着界面に案内するガイド空間として機能する。そのため、ガイド部材121は、剥離部120から送られる対象を、
図2に破線の矢印で示す経路に沿って鋭角な隙間ASを指向する位置及び角度で設けられている。
【0055】
制御部100は、搬送部20、記録ユニット30、帯電部84、除電部90及び剥離部120を制御する。制御部100は、媒体Mを搬送ベルト73に吸着させるために、帯電部84を構成する電源及び除電部90を制御する。また、制御部100は、媒体Mのジャムが発生したか否かを判定する。制御部100は、第1ジャムが発生したと判定したジャム発生時に、搬送ベルト73上に滞留するジャムの媒体Mの位置状態を検出し、搬送ベルト73に対して剥離部120が位置する搬送方向Yの下流側に、媒体Mと搬送ベルト73とで
図2に示す鋭角な隙間ASが形成されているか否かを判定する。制御部100は、鋭角な隙間ASが形成されているか否かを、検知部の一例である第2検知部22の検知結果に基づいて判定する。本実施形態の制御部100は、鋭角な隙間ASが形成された状態の下で、剥離部120に剥離動作を行わせる。
【0056】
制御部100は、搬送ベルト73上で媒体Mのジャムを検出した場合、剥離部120の駆動によって、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離動作を行った後、ジャム発生の旨の情報及びジャムの解消を促す旨の情報を含むメッセージを表示部102(
図11参照)に表示させる。メッセージを読んだユーザーは、カバー15(
図1参照)を開けてジャムの媒体Mを除去する。ジャムを解消したユーザーは、操作部101(
図11参照)で「OK」の旨の操作を行うことで、記録装置11に対してジャム解消の旨を通知する。制御部100は、操作部101からジャム解消の旨の通知を受け付けると、ジャムで中止した記録動作を再開する。
【0057】
<第1実施例>
次に、
図3~
図8を参照して、剥離部120の第1実施例の構成について説明する。この第1実施例は、送り込む対象が空気流等の流体である。
図3に示す記録装置11は、送風により、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離部120を有する。剥離部120は、搬送経路25の下方に配置されている。剥離部120は、ジャム発生時に搬送ベルト73上に滞留した媒体Mがある場合、搬送ベルト73と媒体Mとで鋭角な隙間AS(
図4、
図8を参照)が形成された状態の下で、
図4に示す鋭角な隙間ASに向けて送風することにより、空気流によって搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。こうして、剥離部120は、媒体Mを剥離する際に、搬送ベルト73に傷がつく虞を軽減する。
【0058】
制御部100は、剥離部120を駆動させる。本実施形態の剥離部120は、送風可能なファン130である。制御部100は、ファン130を駆動させる。ファン130から送風された気流(空気流)は、ガイド部材121に沿って所定経路で案内されることで、鋭角な隙間ASに送り込まれる。例えば、
図4に示すように、搬送ベルト73と媒体Mとの間の吸着界面に沿って空気流が送り込まれることで、空気流によって搬送ベルト73から媒体Mが剥離される。ファン130の駆動時間は、空気流によって、
図4に示す剥離が開始されてから、
図6に示すように媒体Mの剥離が完了するまでに必要な駆動時間に設定される。駆動時間は、例えば、1~10秒の範囲内の所定値である。
【0059】
図6に示す例では、搬送部20は、サポートローラー87と搬送ベルト73との間にニップされる媒体Mのニップを解除する解除機構を備えていない。そのため、搬送ベルト73からの媒体Mの剥離は、サポートローラー87が媒体Mをニップする位置よりも搬送方向Yの下流側の領域で行われる。なお、搬送部20は、サポートローラー87と搬送ベルト73との間にニップされる媒体Mのニップを解除する解除機構を備えてもよい。この場合、制御部100は、ジャム発生時に解除機構を駆動することで、サポートローラー87を、
図2~
図6等に示すニップ位置から搬送ベルト73に対して離間するニップ解除位置へ退避させる。この構成によれば、剥離部120により、搬送ベルト73から媒体Mをほぼ完全に剥離することが可能である。
【0060】
制御部100は、
図4に示すように、ジャム発生時に第2検知部22が媒体Mを検知している場合、剥離部120の一例であるファン130を駆動させることで、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて送風する。この送風により搬送ベルト73から媒体Mが剥離される(
図5、
図6を参照)。
【0061】
一方、制御部100は、ジャム発生時に第2検知部22が媒体Mを検知していなかった場合(
図7参照)、搬送ベルト73を駆動させることで、第2検知部22によって媒体Mが検知される位置に媒体Mを搬送する(
図8参照)。ファン130は、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて送風する(
図8参照)。
【0062】
ファン130は、媒体Mのサイズ(以下、「媒体サイズ」ともいう。)に応じて送風量を変更してもよい。送風量を変更する方法には、ファン130の送風量を変更する第1の方法と、複数のファン130のうち送風させるファン130の個数を変更する第2の方法とがある。記録装置11は、媒体Mの幅を検出する媒体幅センサー23(
図11参照)を備える。制御部100は、媒体幅センサー23の検出結果から媒体サイズを取得してもよい。
【0063】
第1の方法では、ファン130は、媒体幅センサー23が検出した媒体幅情報に基づく媒体サイズに応じて送風量を変化させてもよい。例えば、媒体サイズが第1サイズである場合にファン130が第1送風量で送風し、媒体Mのサイズが第1サイズよりも大きな第2サイズである場合にファン130が第1送風量よりも大きな第2送風量で送風してもよい。
【0064】
また、第2の方法では、複数(例えばN個)のファン130が幅方向Xに沿って配置される。例えば、媒体サイズが第1サイズである場合に第1の個数(例えばM個(但し、MはM<N))のファン130が送風し、媒体サイズが第1サイズよりも大きな第2サイズである場合に第1の個数よりも多い第2の個数(例えばN個)のファン130が送風する構成でもよい。
【0065】
このように、制御部100は、媒体幅センサー23が検出した媒体幅情報に基づいてファン130の送風量又は駆動数を変化させてもよい。
<第2実施例>
次に、
図9、
図10を参照して、剥離部120の第2実施例の構成について説明する。第2実施例の記録装置11は、第1実施例の剥離部120に加え、イオン発生部135を更に備える。記録装置11のその他の構成は、第1実施例と同様である。
【0066】
図9に示すように、記録装置11は、イオンを発生するイオン発生部135を有する。イオン発生部135は、剥離部120の一例であるファン130の送風経路上に配置される。ファン130は、イオン発生部135が発生したイオンを含む風を送風する。
【0067】
例えば、制御部100は、第1ジャムを検出すると、イオン発生部135を駆動させることで、イオンを発生させる。イオン発生部135が発生するイオンは、搬送ベルト73が帯電している電荷と正負が反対の電荷に帯電されている。例えば、第1実施形態の例では、搬送ベルト73の絶縁層の外面73bは、正に帯電している。そのため、イオン発生部135は、搬送ベルト73の外面73bに帯電した正の電荷を中和することが可能な負の電荷を帯びたマイナスイオンを発生する。なお、搬送ベルト73の外面73bが負の電荷を帯電する構成の場合は、イオン発生部135が、外面73bに帯電している負の電荷を中和させることが可能な正の電荷を帯びたプラスイオンを発生する構成でもよい。
【0068】
第1ジャムの発生時に、制御部100は、第1実施形態と基本的に同様の制御を行う。第1実施形態と異なる点は、ファン130が空気流を鋭角な隙間ASに向けて吹き付ける剥離動作の際に、イオン発生部135が発生したイオンを含む空気流を吹き付けることである。
【0069】
そのため、
図10に示すように、ファン130は、イオン発生部135が発生したイオンを含む空気流を、媒体Mと搬送ベルト73とで形成される鋭角な隙間ASに向けて送り込む。
【0070】
第1ジャムが発生したとき、制御部100は、搬送部20及び記録ヘッド31の動作を停止させる。さらに、制御部100は、昇降機構33の駆動源35を制御して、記録ヘッド31を記録位置から退避位置まで上昇させることで上方へ退避させる。
【0071】
さらに、制御部100は、剥離部120を駆動させる。本実施形態の制御部100は、ファン130を駆動させる。ファン130から送風された気流(空気流)は、ガイド部材121に沿って所定の経路で案内されることで、鋭角な隙間ASに送り込まれる。例えば、
図10に示すように、搬送ベルト73と媒体Mとの間の吸着面に沿って空気流が送り込まれることで、空気流によって搬送ベルト73から媒体Mが剥離される。
【0072】
また、第1実施例と同様に、制御部100は、媒体幅センサー23が検出した媒体幅情報に基づいてファン130の駆動量又は駆動数を制御する。
<記録装置11の電気的構成>
次に、
図11を参照して記録装置11の電気的構成を説明する。
【0073】
図11に示すように、記録装置11は、前述の制御部100を備える。制御部100は、α:コンピュータープログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサー、β:各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはγ:それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。ハードウェア回路は、例えば特定用途向け集積回路である。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0074】
制御部100には、入力系として、操作部101、表示部102、第1検知部21、第2検知部22及び媒体幅センサー23が電気的に接続されている。操作部101は、ユーザーが記録装置11に対して指示を与えるために操作される。制御部100は、操作部101からユーザーの操作に基づく操作信号を入力する。表示部102は、各種のメニュー画面等を表示する表示機構を備える。表示部102が、例えば、タッチパネルにより構成される場合、そのタッチ操作機能を操作部101の少なくとも一部として構成してもよい。また、表示部102は、ユーザーに対して異常が発生した旨の情報を表示する報知機能も有する。制御部100は、例えば、ジャムを検出した場合、表示部102にジャム発生の旨及びジャム解除作業を促すメッセージ等の報知情報を表示することで、ユーザーに異常の発生を報知する。
【0075】
また、第1検知部21及び第2検知部22は、それぞれの検知位置において媒体Mの有無を検知する。制御部100は、第1検知部21及び第2検知部22からの各検知信号に基づき、搬送中の媒体Mの位置(搬送位置)の検出、及び搬送経路25の途中で媒体Mが詰まるジャムを検出する。
【0076】
また、媒体幅センサー23は、媒体Mの幅を検出する。詳しくは、媒体幅センサー23は、記録対象として搬送される媒体Mの幅方向Xの両側端を検知する。制御部100は、媒体幅センサー23から入力する検知信号に基づき、媒体Mの幅に関する情報である媒体幅情報を取得する。媒体幅情報には、媒体Mの幅方向Xの位置及び幅サイズのうち少なくとも幅サイズが含まれる。制御部100は、媒体Mの幅を検出することで、実際に搬送された媒体Mの幅が、記録条件情報で指定された媒体サイズと一致するかどうかを判定する。また、制御部100は、媒体幅センサー23の検知信号に基づき、媒体Mの幅方向Xのずれ量を検出し、そのずれ量に応じて記録位置を幅方向Xに調整する。
【0077】
さらに、制御部100は、媒体幅情報を基に、第1ジャム発生時に搬送ベルト73の表面から剥離する媒体Mのサイズを特定してもよい。媒体Mのサイズが特定されることで、媒体Mを搬送ベルト73から剥離するために必要なファン130の送風量を制御してもよい。また、ファン130を幅方向Xに複数配置してもよい。この場合、制御部100は、駆動させるファン130の駆動数を、媒体幅情報に基づいて決定してもよい。つまり、制御部100は、媒体幅情報に基づく個数のファン130を駆動させてもよい。なお、媒体幅センサー23から取得される媒体幅情報に替え、記録条件情報に含まれる媒体サイズの情報に基づき、剥離部120(ファン130)の駆動量(例えば送風量)又は駆動数を決定してもよい。
【0078】
また、
図11に示すように、制御部100には、出力系として、記録ユニット30、搬送部20、帯電部84、除電部90、剥離部120、振動発生部125及びイオン発生部135が電気的に接続されている。制御部100は、記録ユニット30を構成する記録ヘッド31の吐出制御を行う。制御部100には、搬送部20を構成する、給送モーター103、搬送モーター104、ベルトモーター105が電気的に接続されている。制御部100は、給送モーター103、搬送モーター104及びベルトモーター105をそれぞれ制御する。なお、制御部100は、供給用のローラー対81と、第1媒体供給部51、第2媒体供給部52又は第3媒体供給部53との駆動を制御して、搬送ベルト73に搬送する媒体Mのスキューを解消するスキュー取り動作を行わせてもよい。
【0079】
制御部100は、印刷データPDを入力する。制御部100は、印刷データPDに基づいて、記録ユニット30及び搬送部20を駆動制御することで、媒体Mに記録する記録制御を行う。印刷データPDには、印刷コマンド、印刷条件情報及び画像データが含まれる。印刷条件情報には、媒体の種類、サイズ、カラー/モノクロの印刷モード等が含まれる。
【0080】
制御部100は、記録ヘッド31を制御する。ここで、印刷データPDに含まれる画像データは、ドットデータである。画像データのドット情報により記録ヘッド31のノズル32から吐出されるインクの量が決定される。インク滴のサイズが複数段階に分かれており、サイズの異なるインク滴を打ち分ける階調記録を行う構成でもよい。例えば、インク滴のサイズは、大小の2種類でもよいし、大中小の3種類でもよいし、4種類以上の複数種類であってもよい。
【0081】
制御部100は、記録ユニット30を構成する昇降機構33の駆動源35を制御する。制御部100は、昇降機構33を制御することで、記録ヘッド31を記録位置と退避位置とに昇降させる。
【0082】
制御部100は、帯電部84を制御する。詳しくは、制御部100は、帯電部84の電源を制御することで、帯電ローラー85に印加する直流電圧の大きさを変更させる。例えば、帯電ローラー85に印加する直流電圧を高くすると、帯電ローラー85によって帯電される搬送ベルト73及び搬送ベルト73によって帯電される媒体Mに帯電する電荷も多くなる。その結果、媒体Mに対する搬送ベルト73の静電吸着力が高くなる。すなわち、制御部100は、電源を制御することで、帯電ローラー85の帯電する電荷の量を調整し、搬送ベルト73による媒体Mに対する静電吸着力を変化させる。また、制御部100は、ジャム検出時に、帯電部84の電源をオフに制御することで、帯電ローラー85への直流電圧の印加を停止させる。
【0083】
制御部100は、除電部90を制御する。制御部100は、搬送ベルト73の帯電量を多くする場合には、帯電量を少なくする場合よりも、除電ブラシ91の媒体Mの記録面Mbに対する接触圧を高くしてもよい。因みに、搬送ベルト73の帯電量は、帯電部84の電源が帯電ローラー85に印加する直流電圧と相関関係があるため、帯電部84の電源が帯電ローラー85に印加する電圧値に応じて除電ブラシ91の接触圧を変更してもよい。
【0084】
また、制御部100は、剥離部120の駆動部122を制御する。本実施形態では、剥離部120がファン130であるので、制御部100は、ファン130の駆動部122であるファンモーターを駆動制御する。また、制御部100は、イオン発生部135が備えられる構成の場合、ファン130の駆動部122と共にイオン発生部135を駆動させる。なお、制御部100は、搬送ベルト73上で媒体Mのジャムを検出すると、駆動部122に先んじてイオン発生部135を駆動させてもよい。また、振動発生部125が備えられる構成の場合、制御部100は、振動発生部125を駆動させてもよい。振動発生部125が発生させる振動は搬送ベルト73に伝播され、搬送ベルト73が振動する。このように、振動発生部125は、搬送ベルト73を振動させることで、媒体Mを搬送ベルト73から剥離させることを振動で補助する。第1ジャム発生時には、制御部100は、駆動部122のみ駆動させてもよいし、駆動部122及びイオン発生部135の2つを駆動させてもよいし、駆動部122、イオン発生部135及び振動発生部125の3つを駆動させてもよい。
【0085】
また、制御部100は、媒体幅センサー23が検出した媒体幅情報に基づいて剥離部120の駆動量又は駆動数を制御する。例えば、検出された媒体幅情報に基づく媒体幅が最大幅である場合、制御部100は、ファン130を最大の駆動量で駆動させる。換言すれば、制御部100は、検出された媒体幅情報に基づく媒体幅が第1幅である場合、ファン130を第1駆動量で駆動させる。制御部100は、検出された媒体幅情報に基づく媒体幅が第1幅よりも広い第2幅である場合、ファン130を第1駆動量よりも大きな第2駆動量で駆動させる。なお、剥離部120であるファン130は、幅方向Xに複数配置されてもよい。制御部100は、検出された媒体幅情報に基づく媒体幅が第1幅である場合、ファン130を第1個数で駆動させる。制御部100は、検出された媒体幅情報に基づく媒体幅が第1個数よりも多い第2個数である場合、ファン130を第1個数よりも多い第2個数で駆動させてもよい。
【0086】
制御部100は、コンピューター110を備える。コンピューター110は、第1カウンター111及び第2カウンター112を備える。さらに、コンピューター110は、吐出制御部113、判定部114、剥離制御部115及び記憶部116を備える。記憶部116には、プログラムPRが記憶されている。プログラムPRには、
図12にフローチャートで示される記録制御ルーチンが含まれる。吐出制御部113、判定部114及び剥離制御部115は、コンピューター110がプログラムPRを実行することで構築されるソフトウェア、あるいはASIC等の電子回路よりなるハードウェアにより構成されてもよい。さらに、吐出制御部113、判定部114及び剥離制御部115は、ソフトウェアとハードウェアとの協働により構成されてもよい。なお、本実施形態では、吐出制御部113、判定部114、及び剥離制御部115は、少なくとも一部にソフトウェアを含む。
【0087】
第1カウンター111は、媒体Mの搬送経路上の位置を示す値を計数する。例えば、媒体Mの先端が第1検知部21に検知されると第1カウンター111はリセットされ、その後、搬送モーター104の回転を検出するロータリーエンコーダー(図示略)からの入力パルスの数又はパルスエッジの数を計数する。この第1カウンター111の計数値は、媒体Mの先端が第1検知部21に検知されたときの第1検知位置を起点(例えば零)とする媒体Mの搬送経路上の位置である搬送位置を示す。制御部100は、第1カウンター111の計数値から媒体Mの搬送位置を認識する。
【0088】
第2カウンター112は、媒体Mの先端又は後端が第1検知部21に検知されたときの第1検知位置から媒体Mが搬送された搬送量を計数する。第2カウンター112は、第1検知位置から、第2検知部22の検知位置である第2検知位置までの搬送経路25に沿う所定経路長に所定のマージンを加えた目標経路長に相当する計数値を、目標計数値とする。第2カウンター112は、例えば、目標計数値が零になるまでカウントダウンされる構成でもよい。
【0089】
吐出制御部113は、記録ヘッド31を制御する。詳しくは、吐出制御部113は、印刷データPDに含まれる画像データに基づいて記録ヘッド31を制御する。吐出制御部113は、画像データの画素値に基づくデューティー値で記録ヘッド31のノズル32に対応する吐出駆動素子を駆動制御することで、ノズル32から吐出されるインク滴のサイズ(量)を制御する。なお、吐出駆動素子は、圧電素子、静電素子、ヒーター素子のいずれであってもよい。
【0090】
判定部114は、媒体Mのジャムが発生したか否かを判定する。ジャムには、搬送ベルト73上に媒体Mがある状態で発生するジャムである第1ジャムが含まれる。第1ジャムは、搬送ベルト73上に媒体Mが存在する状態で発生したジャムである。判定部114は、第1検知部21によって検知された媒体Mが、第2検知部22によって検知されるまでに必要な所定の搬送量に所定のマージンを加えた目標経路長を搬送したにも関わらず、第2検知部22が、第1検知部21により検知された媒体Mの先端又は後端を検知しないことをもって、第1ジャムを検出する。判定部114は、この第1ジャムの検出のために、第2カウンター112を用いる。判定部114は、第2カウンター112が目標計数値を計数しても、第2検知部22から媒体Mを検知した旨の検知信号を入力しないことをもって、第1ジャムを検出する。判定部114は、記録中において、ジャムを検出するためのジャム判定処理を行い、ジャム判定処理の結果、ジャムが検出されると、その検出されたジャムが、搬送ベルト73上に媒体Mが存在する状態で媒体Mが詰まる第1ジャムであるか否かを判定する。なお、判定部114は、搬送経路上の途中で媒体Mの有無を検知する不図示の検知部からの検知信号に基づいて、搬送ベルト73以外の位置で媒体Mが詰まる第2ジャムも検出する。
【0091】
剥離制御部115は、第1ジャム発生時に、剥離部120を駆動制御することで、搬送ベルト73に吸着された媒体Mを搬送ベルト73から剥がす剥離動作を剥離部120に行わせる。剥離制御部115は、第1ジャム発生時に、検知部の一例である第2検知部22が媒体Mを検知した場合、剥離部120に対して搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて、流体(空気流)などの送込み対象を送り込むことで、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。また、制御部100は、第1ジャム発生時に、第2検知部22が媒体Mを検知しなかった場合、搬送ベルト73を駆動させて、第2検知部22によって媒体Mが検知される位置に媒体Mを搬送させる。本実施形態では、媒体Mは、搬送方向Yの下流に搬送される。この媒体Mの搬送によって、制御部100は、搬送ベルト73の搬送方向Yの下流側に、媒体Mと搬送ベルト73とで鋭角な隙間ASを形成させる。このとき、媒体Mが搬送される位置は、媒体Mが第2検知部22に検知される位置であればよい。媒体Mが搬送される位置は、媒体Mの先端部が、ローラー対41にニップされていなくてもよいし(
図4に実線で示される媒体Mの位置)、ローラー対41にニップされていてもよい(
図4に二点鎖線で示される媒体Mの位置)。
【0092】
第1実施例における剥離部120は、媒体Mを搬送ベルト73から剥離するために空気流を発生させるファン130である。制御部100は、ファン130を駆動させることで発生させた空気流をガイド部材121に沿って鋭角な隙間ASに向かって吹き付ける。
【0093】
なお、第2実施例においては、制御部100が、さらにイオン発生部135を駆動させることで、ファン130からの空気流と一緒にイオンを鋭角な隙間ASに向けて吹き付ける。鋭角な隙間ASに吹き付けられた空気流は、鋭角な隙間ASの角部を押し広げながら吸着された界面に流れ込む力によって媒体Mを搬送ベルト73から剥離する。
【0094】
<第1実施形態の作用>
次に、第1実施形態における記録装置11の作用を説明する。
図12を参照して、記録装置11においてジャム検出時の剥離制御を含む記録制御について説明する。
【0095】
制御部100内のコンピューター110は、
図12にフローチャートで示されるプログラムPRを実行することで、記録装置11の記録制御を行う。この記録制御には、記録の途中で搬送ベルト73上に媒体Mがある状態でジャムが検出された場合、媒体Mを搬送ベルト73から剥離する剥離制御が含まれる。以下、コンピューター110が実行する記録制御について説明する。
【0096】
まずステップS11において、コンピューター110は、印刷を行う。つまり、印刷データPDにより指示された印刷処理を行う。シリアル記録方式である場合、印刷処理には、媒体Mを次の記録位置まで搬送する搬送動作と、記録位置にある媒体Mに記録ヘッド31からインク等の液体を吐出することで画像等を記録する記録動作とが含まれる。
【0097】
次のステップS12において、コンピューター110は、ジャム判定処理を行う。コンピューター110は、搬送経路上の媒体Mの有無を検知可能な第1検知部21及び第2検知部22を含む複数の検知部の検知結果に基づいて媒体Mのジャムの発生の有無を判定する。
【0098】
次のステップS13において、コンピューター110は、ジャムを検知したか否かを判定する。すなわち、コンピューター110は、ジャム判定処理の結果、ジャムが検知されたか否かを判定する。ジャムには、搬送ベルト73上に媒体Mがある状態で発生する第1ジャムや、搬送ベルト73以外の搬送経路上において発生するその他の第2ジャムが存在する。コンピューター110は、ジャムを検知すればステップS14に進み、ジャムを検知していなければステップS11に戻り、印刷を継続する。
【0099】
次のステップS14において、コンピューター110は、搬送ベルト73上に媒体Mがあるか否かを判定する。つまり、コンピューター110は、ジャムが第1ジャムであるか否かを判定する。搬送ベルト73上に媒体MがあればステップS15に進み、搬送ベルト73上に媒体MがなければステップS23に進む。なお、ステップS23の処理は、印刷終了であるか否かを判定する処理であり、ジャム判定処理とは独立した処理である。そのため、
図12では、便宜上、ステップS12,S23を直列な処理として描いているが、ステップS23の印刷終了判定処理は、必ずしもステップS12のジャム判定処理の次に行う必要はない。例えば、1枚の印刷が終わる度にステップS23の処理を行ってもよい。ステップS23において、まだ印刷対象があり、印刷が終了していなければ、ステップS11に戻る。このため、印刷は、ジャム等の異常が発生しない限り、すべて終了するまで継続される。また、コンピューター110は、搬送ベルト73上に媒体Mがある第1ジャムを検出すると、昇降機構33の駆動源35を駆動させて記録ヘッド31を
図3に示す記録位置から
図4に示す退避位置まで上昇させる。さらに、コンピューター110は、第1ジャムを検出すると、帯電部84の電源をオフにする。
【0100】
次のステップS15において、コンピューター110は、第2検知部22が媒体Mを検知しているか否かを判定する。ここで、第2検知部22は、媒体Mの先端(下流端)が搬送ベルト73の下流端よりも搬送方向Yに所定量以上の下流に位置するか否かを判定する。この所定量とは、搬送ベルト73の下流端から第2検知部22の検知位置までの搬送経路25上の距離以上の距離に相当する。つまり、このステップS15では、媒体Mと搬送ベルト73とで鋭角な隙間ASが形成された状態にあるか否かを判定する。鋭角な隙間ASが形成された状態には、第2検知部22に検知された媒体Mが、ローラー対41にニップされていない状態と、ローラー対41にニップされている状態との両方が含まれる。第2検知部22が媒体Mを検知しており、鋭角な隙間ASが形成された状態にあれば、ステップS17に進む。一方、第2検知部22が媒体Mを検知しておらず、鋭角な隙間ASが形成されていなければ、ステップS16に進む。
【0101】
ステップS16において、コンピューター110は、媒体Mと搬送ベルト73とで鋭角な隙間ASを形成する搬送動作を行う。この鋭角な隙間ASを形成する搬送動作には、主に2種類ある。1つは、媒体Mが第2検知部22に検知されるまで媒体Mを搬送する第1搬送動作である。他の1つは、媒体Mが第2検知部22に検知された後、さらに搬送動作を媒体Mの先端部がローラー対41にニップされるまで搬送する第2搬送動作である。第1搬送動作では、
図4に示す実線の位置まで媒体Mを搬送する。この位置では、媒体Mの先端M1が第2検知部22とローラー対41との間に位置する。一方、第2搬送動作では、
図4に2点鎖線で示す位置まで媒体Mを搬送することで、媒体Mの先端部をローラー対41にニップさせる。厚紙やボード紙等の厚みがある硬めの媒体Mであれば、第1搬送動作でもよいが、薄紙等の柔らかい媒体Mである場合は、第2搬送動作の方が好ましい。以下では、剥離動作の際に剥離部120が送り込む対象の吸着界面への案内をより確実に行うため、第2搬送動作を採用する例で説明する。なお、ステップS15において、第2検知部22が媒体Mを検知している場合、媒体Mがローラー対41にニップされていることを確実にするため、媒体Mがローラー対41にニップされる位置まで搬送動作を行ってもよい。この搬送動作の搬送量は、第2検知部22の検知位置からローラー対41のニップ位置までの搬送経路25上の距離に所定のマージン距離を加えた距離に相当する。
【0102】
ステップS17において、コンピューター110は、剥離動作を行う。詳しくは、第1実施形態の剥離部120は、ファン130である。コンピューター110は、ファン130を駆動させる。ファン130の送風による空気流は、ガイド部材121に案内されて鋭角な隙間ASに送り込まれる。鋭角な隙間ASに送り込まれた空気流は、鋭角な隙間ASが徐々に狭くなることで徐々に気流の流速が大きくなるとともにその気流が確実に媒体Mと搬送ベルト73との吸着界面に流れ込む。この空気流の圧力により媒体Mは、
図5に示すように搬送ベルト73に対して下流端側から剥離され、
図6に示すように搬送ベルト73の上流端近くまで剥離される。また、第2実施例の構成では、
図10に示すように、イオン発生部135が発生したイオンを含む空気流が鋭角な隙間ASに送り込まれ、イオンを含む空気流の圧力で搬送ベルト73から媒体Mが剥離される。この剥離過程で空気流中のイオンが搬送ベルト73の残留電荷を中和する。このため、搬送ベルト73から剥離された媒体Mが搬送ベルト73に再吸着されにくい。さらに、剥離動作中は、振動発生部125が搬送ベルト73を振動させる。このため、空気流による剥離動作が振動の補助で促進される。
【0103】
サポートローラー87が媒体Mを所定の付勢力で押圧している場合、この押圧位置よりも下流側のエリアで媒体Mは空気流により搬送ベルト73から剥離される。また、サポートローラー87の自動変位機構を備える場合は、サポートローラー87が上昇位置にあるので、媒体Mは空気流により搬送ベルト73の上流端までの全域で剥離される。なお、剥離は、搬送ベルト73の上面のうち搬送方向Yに一部(例えば半分)の領域のみでもよい。
【0104】
ステップS18において、コンピューター110は、ジャムを報知する。詳しくは、コンピューター110は、ジャムが発生した旨及びジャムの除去をユーザーに促す旨の情報を表示部102に表示する。この表示部102の表示内容を見たユーザーは、カバー15を開けてジャムを解除するジャム解除作業を行う。
【0105】
このとき、媒体Mは搬送ベルト73から剥離されているので、ユーザーは媒体Mを搬送ベルト73から比較的簡単に除去することができる。例えば、剥離動作が行われない場合、ユーザーが媒体Mを搬送ベルト73から除去する際に、媒体Mが搬送ベルト73に吸着している。そのため、ユーザーは媒体Mを搬送ベルト73から剥がしながら除去する必要がある。このとき、媒体Mが破れる場合がある。媒体Mが破れると、媒体Mを搬送ベルト73から除去する除去作業が一層面倒なものとなる。
【0106】
これに対して、この第1実施形態では、ユーザーが媒体除去作業を行う前に、剥離部120としてのファン130が送風で送り込んだ空気流により媒体Mが搬送ベルト73から剥離される。このため、ユーザーは、搬送ベルト73に吸着されていない媒体Mを比較的弱い力で搬送ベルト73から除去することができる。そのため、媒体除去作業の際に、媒体Mが破れることもない。そして、媒体除去作業を終えたユーザーは、カバー15を閉じた後、操作部101を操作してジャムを除去した旨を記録装置11に対して通知する。
【0107】
次のステップS19において、コンピューター110は、ジャム除去通知を受信したか否かを判定する。コンピューター110は、ジャム除去通知を受信すればステップS20に進み、ジャム除去通知を受信していなければ、ジャム除去通知を受信するまで待機する。
【0108】
ステップS20において、コンピューター110は、ジャム判定処理を行う。このジャム判定処理は、ステップS13と基本的に同様の処理である。
次のステップS21において、コンピューター110は、ジャムが除去されたか否かを判定する。コンピューター110は、ジャムが除去されていればステップS22に進む。一方、コンピューター110は、ジャムが除去されていなければステップS18に戻り、ジャムを報知する。このように、コンピューター110は、ステップS21において、ジャムが除去されたと判定するまで、ステップS18~ステップS21の各処理を繰り返し実行する。
【0109】
ステップS22において、コンピューター110は、印刷を再開する。コンピューター110は、ジャムで失敗した頁から印刷を再開する。
次のステップS23において、コンピューター110は、印刷終了であるか否かを判定する。すなわち、コンピューター110は、印刷データPDに基づく指定枚数の印刷を終了したか否かを判定する。印刷終了でなければステップS11に戻る。そして、再開した印刷を行う(ステップS11)。
【0110】
以下、同様に、コンピューター110は、ステップS11~ステップS23の処理を、ステップS23において印刷終了と判定するまで印刷を継続する。そして、ステップS23において、コンピューター110は、印刷終了と判定すると、当該ルーチンを終了する。
【0111】
よって、第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1-1)記録装置11は、電荷により媒体Mを吸着させて搬送する搬送ベルト73と、搬送ベルト73に搬送される媒体Mに記録を行う記録ユニット30と、媒体Mのジャムが発生したか否かを判定する判定部114と、送風により、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離部120とを有する。ジャムの発生時に搬送ベルト73上に滞留した媒体Mがある場合、剥離部120は、搬送ベルト73と媒体Mとで鋭角な隙間ASが形成された状態の下で、鋭角な隙間ASに向けて送風することにより、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。
【0112】
この構成によれば、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する際に、搬送ベルト73に傷がつく虞を軽減できる。例えば、媒体Mが搬送ベルト73に対して先端まで吸着されていると、媒体Mを搬送ベルト73から剥離する際の剥離の起点となる剥がれた部分が全くないので、例えば、先端が尖った部材(例えば爪状部材)を搬送ベルト73と媒体Mの間に強制的に挿し込んで、媒体Mが搬送ベルト73から少し剥がれた部分である剥離の起点を生成する必要がある。この場合、部材の尖った先端部により搬送ベルト73を損傷する虞がある。これに対して、本構成では、媒体Mの先端部が搬送ベルト73から剥がれた部分と搬送ベルト73とで鋭角な隙間ASが形成されている。剥離部120から送られた風(気流)が、鋭角な隙間ASにガイドされることで、搬送ベルト73と媒体Mとの吸着した界面へ導入される。よって、搬送ベルト73を傷付けることを抑えつつ、搬送ベルト73から媒体Mを剥離できる。
【0113】
(1-2)記録装置11は、搬送ベルト73の上流または下流に位置し、媒体Mの有無を検知する検知部の一例としての第2検知部22を有する。ジャム検出時に第2検知部22が媒体Mを検知している場合、剥離部120は搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて送風する。一方、ジャム検出時に第2検知部22が媒体Mを検知していない場合、搬送ベルト73は、第2検知部22によって媒体Mが検知される位置に媒体Mを搬送する。剥離部120は、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて送風する。この構成によれば、第2検知部22が媒体Mを検知しないときは、鋭角な隙間ASが形成されていない可能性がある。この場合、媒体Mが鋭角な隙間ASを形成する方向に搬送される。よって、媒体Mの剥離ミスを低減できる。
【0114】
(1-3)記録装置11は、イオンを発生するイオン発生部135を有する。剥離部120は、イオン発生部135が発生したイオンを含む風を送風する。この構成によれば、風に含まれるイオンにより搬送ベルト73の残留電荷を低減できる。よって、例えば、搬送ベルト73からの媒体Mの剥離を促進できたり、あるいは剥離した媒体Mの搬送ベルト73への再吸着を抑制できたりする。
【0115】
(1-4)剥離部120は、媒体サイズに応じて送風量を変更する。この構成によれば、媒体サイズに適した送風量に調整される。よって、媒体サイズに依らず、搬送ベルト73から媒体Mをより確実に剥離することができる。すなわち、媒体Mサイズに依る剥離ミスの発生のばらつきを低減できる。
【0116】
(第2実施形態)
次に、
図13~
図23等を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、剥離部120が鋭角な隙間ASに向けて送り込む対象である剥離部材が、シート部材141である。
【0117】
図1、
図2及び
図13に示すように、記録装置11の基本的な構成は、第1実施形態と同様である。すなわち、記録装置11は、電荷により媒体Mを吸着させて搬送する搬送ベルト73と、搬送ベルト73に搬送される媒体Mに記録を行う記録ユニット30とを備える。
【0118】
記録装置11は、第1及び第2実施例と同様に、搬送ベルト73の上流に位置する第1検知部21と、搬送ベルト73の下流に位置する第2検知部22とを有する。第1検知部21は、搬送ベルト73の上流の位置で媒体Mの有無を検知する。第2検知部22は、搬送ベルト73の下流の位置で媒体Mの有無を検知する。この第3実施例においても、下流側の第2検知部22が、検知部の一例を構成する。
【0119】
第2実施形態における剥離部120は、鋭角な隙間ASに向けて送り込む対象である剥離部材がシート部材141であるシート式剥離部140である。シート式剥離部140は、シート部材141により、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。
【0120】
図13に示すように、シート式剥離部140は、駆動部122の駆動力により、格納部142に格納されたシート部材141がガイド部材121に沿って送り出される。第2実施形態は、1つのシート式剥離部140を有する第3実施例の構成(
図14~
図18を参照)と、複数のシート式剥離部140を有する第4実施例の構成(
図18参照)とを含む。第3及び第4実施例のいずれにおいても、シート式剥離部140の基本的な構成は同様である。
【0121】
<第3実施例>
まず、
図14~
図16を参照して、第3実施例のシート式剥離部140の詳細な構成について説明する。
図14~
図16に示すように、シート式剥離部140は、シート部材141を巻いて格納する格納部142と、格納部142に格納されたシート部材141を、鋭角な隙間ASに向けて送り出す駆動部122とを有する。格納部142は、例えば、所定形状のフレーム144に回転可能に支持された円筒状の芯材143を有し、芯材143の外周にシート部材141が巻き重ねられることで構成される。このように、シート部材141は、芯材143に巻き重ねられた状態で格納されるので、必要な長さのシート部材141を配置するためのスペースが小さく済む。ここで、効果的に媒体Mを剥離するためには、搬送方向Yにおいて搬送ベルト73の中央位置よりも上流側までシート部材141の先端が届くだけの長さがシート部材141にあるとよい。
【0122】
図15に示すように、駆動部122は、例えば、電動モーターである。駆動部122と芯材143との間は歯車機構145を介して動力伝達可能に連結されている。歯車機構145は、複数の歯車146~148を含む。駆動部122の出力軸122Aの先端部に固定された歯車146の回転は、歯車147を介して歯車148に伝達され、歯車148が固定された芯材143が歯車148と共に回転する。駆動部122が正転駆動されると、歯車146~148を介して芯材143が正転する。これにより、格納部142からシート部材141が送り出される。一方、駆動部122が逆転駆動されると、歯車146~148を介して芯材143が逆転することで、シート部材141が芯材143に巻き取られる。
【0123】
図16に示すように、駆動部122が正転駆動すると、シート部材141は、ガイド部材121に案内されながら鋭角な隙間AS(
図19参照)に向けて送り出される。一方、駆動部122が逆転駆動すると、シート部材141は、芯材143に巻き取られることで格納部142に格納される。よって、シート部材141は、使用時は剥離に必要な長さだけ送り出され、不要時には巻き取られることで格納部142にコンパクトに格納される。
【0124】
シート部材141は、導電性を有してもよい。シート部材141自体が導電性を有する材料で形成されたり、導電性を有する材料で少なくとも搬送ベルト73と接触する面がコーティングされることで、シート部材141に導電性が付与されている。
【0125】
ジャム発生時には、帯電部84の電源から帯電ローラー85に対する直流電圧の印加は停止される。しかし、搬送ベルト73は残留電荷により帯電している。この残留電荷により媒体Mは搬送ベルト73に吸着されている。媒体Mを剥離しても、搬送ベルト73の残留電荷により媒体Mが搬送ベルト73に再吸着されることも起こりうる。本実施例では、シート部材141を導電性にすることで、搬送ベルト73の残留電荷をシート部材141を介して逃がすことで中和する。シート部材141の基部は格納部142内で接地されている。シート部材141が剥離過程で搬送ベルト73に接触することで搬送ベルト73の残留電荷が中和する。このため、剥離した媒体Mの搬送ベルト73への再吸着が緩和される。このように、シート式剥離部140は、シート部材141による媒体Mの搬送ベルト73からの剥離と、搬送ベルト73の残留電荷の中和による媒体Mの再吸着の抑制とを実現する。
【0126】
さらに、
図17に示すように、シート部材141の先端部には、保護部材149が設けられてもよい。保護部材149は、シート部材141の先端部に別部材として固定されたものでもよいし、シート部材141の先端部に塗布した塗料を硬化させることで形成されたものでもよい。この構成によれば、シート部材141の先端部と搬送ベルト73とが衝突するときは、保護部材149と搬送ベルト73とが衝突する。そのため、シート部材141の先端部と搬送ベルト73とが衝突することによる搬送ベルト73の損傷を軽減できる。
【0127】
<第4実施例>
次に、
図18を参照して、第4実施例のシート式剥離部140の詳細な構成について説明する。
図18に示すように、シート部材141は、幅方向Xに複数設けられてもよい。第4実施例では、複数のシート式剥離部140が、幅方向Xに沿って一列に並んで配置されている。そのため、複数のシート部材141は、格納部142からの送り出し及び格納部142への巻き取りが個別に行われる。複数のシート部材141のうち動作させるシート部材141を媒体サイズに応じて選択可能に構成されてもよい。
【0128】
図18に示す例では、3つのシート式剥離部140A~140Cが幅方向Xに一列に配置されている。第1のシート式剥離部140Aと第3のシート式剥離部140Cは、シート部材141の幅が同じである。2つの剥離部140A,140Cの間となる中央に位置する第2のシート式剥離部140Bは、幅寸法の広いシート部材141を有する。第2のシート式剥離部140Bのシート部材141の幅寸法は、他の2つのシート部材141の幅寸法よりも広い。
【0129】
図18に示すように、媒体Mは搬送ベルト73に対して幅中央に寄せたセンター基準で搬送される。媒体サイズが小さい第1媒体MAが搬送される場合、ジャム検出時に第2のシート式剥離部140Bのみが駆動される。このため、第2のシート式剥離部140Bからシート部材141が送り出されることで、小サイズの第1媒体MAが搬送ベルト73から剥離される。一方、媒体サイズが大きい第2媒体MBが搬送される場合、ジャム検出時に第1~第3のシート式剥離部140A~140Cが同時に駆動される。このため、3つのシート式剥離部140A~140Cから3つのシート部材141が同時に送り出されることで、大サイズの第2媒体MBが搬送ベルト73から剥離される。
【0130】
<第2実施形態の作用>
次に、第2実施形態における記録装置11の作用を説明する。制御部100の判定部114(
図11参照)は、搬送ベルト73上に媒体Mが滞留する第1ジャムが発生したか否かを判定する。判定部114が、搬送ベルト73上に媒体Mが滞留する第1ジャムであると判定した場合、シート式剥離部140は、搬送ベルト73と媒体Mとで鋭角な隙間ASが形成された状態の下で、鋭角な隙間ASに向けてシート部材141を送り出す。詳しくは、制御部100のコンピューター110が、第1実施形態と同様に、
図12に示される記録制御ルーチンのプログラムPRを実行することで、ジャム発生時に搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離動作を含む記録制御が行われる。
【0131】
図19に示すように、ジャム発生時に第2検知部22が媒体Mを検知している場合(ステップS15で肯定判定)、シート式剥離部140は、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けてシート部材141を挿入する。第2検知部22が媒体Mを検知している場合、その検知された媒体Mは搬送ベルト73の下流端から所定の距離以上だけ搬送方向Yの下流に位置している。そのため、第2検知部22が媒体Mを検知していれば、鋭角な隙間ASが形成されている可能性が高い。制御部100は、第2検知部22が媒体Mを検知していることをもって、鋭角な隙間ASが形成されていると推定する。
【0132】
この鋭角な隙間ASは、搬送ベルト73と媒体Mとの吸着界面に挿入できるようにシート部材141を案内可能なガイド空間として機能する。格納部142から送り出されたシート部材141は、略水平な媒体Mと円弧状の搬送ベルト73とで形成される鋭角な隙間ASにガイドされながら、吸着界面に挿入される(
図20)。そして、シート式剥離部140からシート部材141が更に送り出されることで、媒体Mは搬送ベルト73の搬送方向Yの上流端近くまで剥離される(
図21)。
【0133】
一方、
図22に示すように、ジャム発生時に第2検知部22が媒体Mを検知していない場合、搬送ベルト73は、第2検知部22によって媒体Mが検知される位置に媒体Mを搬送する。この搬送動作は、媒体Mを第2検知部22に検知される位置に搬送する第1搬送動作でもよいし、媒体Mを第2検知部22に検知された後にさらにローラー対41にニップされる位置に搬送する第2搬送動作でもよい。
【0134】
例えば、
図23に示すように、媒体Mはローラー対41にニップされる位置に搬送される。次に、シート式剥離部140は、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けてシート部材141を挿入する。格納部142から送り出されたシート部材141は、略水平な媒体Mと円弧状の搬送ベルト73とで形成される鋭角な隙間ASにより案内されて吸着界面に挿入される(
図20)。そして、シート式剥離部140からシート部材141が更に送り出されることで、媒体Mは搬送ベルト73の搬送方向Yの上流端近くまで剥離される(
図21)。
【0135】
よって、第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2-1)記録装置11は、電荷により媒体Mを吸着させて搬送する搬送ベルト73と、搬送ベルト73に搬送される媒体Mに記録を行う記録ユニット30と、媒体Mのジャムが発生したか否かを判定する判定部114とを有する。さらに、記録装置11は、剥離部材の一例としてのシート部材141により、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離部120を有する。ジャムの発生時に搬送ベルト73上に滞留した媒体Mがある場合、剥離部120は、搬送ベルト73と媒体Mとで鋭角な隙間ASが形成された状態の下で、鋭角な隙間ASに向けてシート部材141を挿入することにより、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。この構成によれば、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する際に、搬送ベルト73に傷がつく虞を軽減できる。例えば、媒体Mが搬送ベルト73に対して先端まで吸着されていると、媒体Mを搬送ベルト73から剥離する際の剥離の起点となる剥がれた部分が全くないので、例えば、先端が尖った部材(例えば爪状部材)を搬送ベルト73と媒体Mの間に強制的に挿し込んで、媒体Mが搬送ベルト73から少し剥がれた部分である剥離の起点を生成する必要がある。この場合、尖った部材の先端部が搬送ベルト73を損傷する虞がある。これに対して、本構成では、媒体Mの先端部が搬送ベルト73から剥がれた部分と搬送ベルト73とで鋭角な隙間ASが形成されている。剥離部120から送られたシート部材141が、鋭角な隙間ASを形成する搬送ベルト73と媒体Mとにガイドされることで、搬送ベルト73と媒体Mとの吸着界面へ挿入される。これにより、シート部材141の先端部を尖らせなくても、剥離部120材を搬送ベルト73と媒体Mとの吸着界面へ挿入できる。よって、搬送ベルト73を傷付けることを抑えつつ、搬送ベルト73から媒体Mを剥離できる。
【0136】
(2-2)記録装置11は、搬送ベルト73の下流に位置し、媒体Mの有無を検知する検知部の一例としての第2検知部22を有する。ジャムの発生時に第2検知部22が媒体Mを検知している場合、剥離部120は搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて剥離部材の一例としてのシート部材141を挿入する。一方、ジャムの発生時に、第2検知部22が媒体Mを検知していない場合、搬送ベルト73は、第2検知部22によって媒体Mが検知される位置に媒体Mを搬送する。そして、剥離部120は、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けてシート部材141を挿入する。この構成によれば、ジャム発生時に第2検知部22が媒体Mを検知していないときは、鋭角な隙間ASが形成されていない可能性がある。この場合、媒体Mが鋭角な隙間ASを形成する方向に搬送される。よって、媒体Mの剥離ミスを低減できる。
【0137】
(2-3)記録装置11は、剥離部材の一例としてのシート部材141は導電性を有する。この構成によれば、導電性を有する剥離部120材が搬送ベルト73に接触することで、搬送ベルト73の残留電荷を低減できる。
【0138】
(2-4)剥離部材の一例であるシート部材141を巻いて格納する格納部142と、格納部142に格納されたシート部材141を、鋭角な隙間ASに向けて送り出す駆動部122とを有する。この構成によれば、シート部材141は巻かれた状態で格納されるので、シート部材141を配置するスペースを小さくできる。例えば、記録装置11の小型化に寄与する。
【0139】
(2-5)シート部材141の先端部には、保護部材149が設けられている。この構成によれば、シート部材141の先端部が搬送ベルト73に衝突することによる搬送ベルト73の損傷を軽減できる。
【0140】
(第3実施形態)
次に、
図24及び
図25等を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、剥離部120が鋭角な隙間ASに向けて送り込む対象が、ワイヤ151である。
【0141】
図24に示すように、記録装置11は、電荷により媒体Mを吸着させて搬送する搬送ベルト73と、搬送ベルト73に搬送される媒体Mに記録を行う記録ユニット30と、媒体Mのジャムが発生したか否かを判定する判定部114(
図11参照)とを有する。さらに、記録装置11は、検知部の一例として、搬送ベルト73の下流に位置し、媒体Mの有無を検知する第2検知部22を有する。そして、本実施形態の記録装置11は、剥離部材の一例としてのワイヤ151により、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する剥離部120の一例としてワイヤ式剥離部150を有する。
【0142】
次に、
図24及び
図25を参照して、剥離部120としてのワイヤ式剥離部150の構成について説明する。
図24に示すように、ワイヤ式剥離部150は、剥離部材の一例としてワイヤ151を有する。ワイヤ151は、幅方向Xに沿って張設された状態で搬送方向Yに沿って移動可能に構成される。
図24に示す例では、ワイヤ151を駆動させる駆動部122の駆動力は、動力伝達機構152を介してワイヤ151に伝達される。動力伝達機構152は、ワイヤ151の両端部を支持する一対の可動部153と、一対の可動部153を案内する案内部154とを備える。一対の可動部153は、幅方向Xにおいて搬送ベルト73の両側の側端よりも外側の位置に配置される。ワイヤ151の両端部は、一対の可動部153により支持されている。ワイヤ151は、搬送ベルト73と平行な状態で且つ幅方向Xに沿って延びるように張設されている。案内部154は、一対の可動部153を、搬送ベルト73の両側の側端に沿って移動するように案内する。案内部154は、レールとベルトの少なくとも一方を含んでもよい。
【0143】
ジャム発生時に搬送ベルト73上に滞留した媒体Mがある場合、ワイヤ式剥離部150は、搬送ベルト73と媒体Mとで鋭角な隙間ASが形成された状態の下で、鋭角な隙間ASに向けてワイヤ151を送り込む。挿入することにより、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。このとき、ワイヤ151は、
図24に実線及び
図25に二点鎖線で示す待機位置から、
図24に破線の矢印で示す搬送方向Yの上流に向かう方向に移動することで、
図25に示すように、搬送ベルト73から媒体Mを剥離する。
【0144】
詳しくは、制御部100が判定部114の判定結果に基づき次の制御を行う。ジャム発生時に第2検知部22が媒体Mを検知している場合、ワイヤ式剥離部150は搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けてワイヤ151を挿入する。一方、ジャム発生時に、第2検知部22が媒体Mを検知していない場合、搬送ベルト73は、第2検知部22によって媒体Mが検知される位置に媒体Mを搬送する。そして、剥離部120は、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けてワイヤ151を挿入する。
【0145】
よって、第3実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3-1)剥離部材の一例はワイヤ151である。記録装置11は、一対の可動部153と駆動部122とを有する。一対の可動部153は、幅方向Xに搬送ベルト73の両側の側端よりも外側の位置でワイヤ151を搬送ベルト73と平行に幅方向Xに沿って張設された状態で支持する。駆動部122は、一対の可動部153を搬送ベルト73の側端に沿って移動させることで、ワイヤ151を鋭角な隙間ASに向けて送り出す。この構成によれば、ワイヤ151により搬送ベルト73から媒体Mを剥離することができる。ワイヤ151を媒体Mと搬送ベルト73との吸着界面に対して幅方向Xの全域に亘り挿入できるので、吸着界面の幅方向Xの一部のみに挿入される剥離部材を使用する構成に比べ、搬送ベルト73から媒体Mをより確実に剥離できる。
【0146】
(第4実施形態)
次に、
図26を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態の記録装置11は、前記各実施形態と同様に、搬送ベルト73、記録ユニット30、ローラー対41及び判定部114を備える。詳しくは、搬送ベルト73は、電荷により媒体Mを吸着させて搬送する。記録ユニット30は、搬送ベルト73に搬送される媒体Mに記録を行う。さらに、記録装置11は、搬送ベルト73の一方の端部を固定端(例えば第1ベルトローラー71側)として、搬送ベルト73の他方の端部である自由端(例えば第2ベルトローラー72側)を下方に移動させる移動機構160を備える。ローラー対41は、搬送ベルト73の自由端よりも媒体Mの搬送方向Yの下流側に設けられ、媒体Mをニップ可能に構成される。ローラー対41は、媒体Mをニップする状態で回転することで、媒体Mを搬送方向Yの下流へ搬送する。判定部114は、制御部100に備えられ、媒体Mのジャムが発生したか否かを判定する。
【0147】
図26に示す例では、移動機構160は、搬送ベルト73を記録ヘッド31から離れる方向に下降(退避)させる。本実施形態の記録装置11は、記録ヘッド31のクリーニングを含むメンテナンスを行うために不図示のメンテナンス装置を備える。メンテナンス装置は、メンテナンス時に、記録ヘッド31のノズル32に連通する閉塞空間を形成するためにノズル面31Aに接触可能に構成されるキャップ部材を有する。メンテナンス装置は、キャップ部材を、
図26に実線で示す搬送ベルト73の邪魔にならない退避位置と、
図26に二点鎖線で示す下降位置へ搬送ベルト73が退避した状態において記録ヘッド31のノズル面31Aに接触するキャッピング位置とに移動可能に備える。そのため、移動機構160は、搬送ベルト73を、
図26に示す実線で示す搬送位置と、
図26に二点鎖線で示す退避位置との間で回動可能に構成される。
【0148】
移動機構160は、第1アーム161及び第2アーム162を含むリンク機構と、駆動源163とを備える。駆動源163の出力軸164には第1アーム161の基端部が固定されている。第1アーム161の先端部は第2アーム162の基端部と回動軸165を介して回動可能に連結されている。第2アーム162の先端部は搬送ベルト73に対して不図示の回動軸を介して回動可能に連結されている。駆動源163は、例えば、電動モーターにより構成される。制御部100(
図1参照)は、搬送ベルト73と、記録ユニット30を構成する記録ヘッド31及び昇降機構33と、搬送部20と、駆動源163とを制御する。
【0149】
制御部100は、判定部114が媒体Mのジャム(第1ジャム)が発生したと判定したジャム発生時に、以下の制御を行う。ローラー対41が媒体Mをニップしている
図26に示す状態にある場合、移動機構160は、搬送ベルト73を固定端(例えば第1ベルトローラー71の回動軸)を中心に
図26における反時計回り方向に回動させることで、搬送ベルト73の自由端を下方に移動させる。一方、ローラー対41が媒体Mをニップしていない場合、搬送ベルト73は、ローラー対41がニップ可能な位置に媒体Mを搬送する。そして、ローラー対41が媒体Mをニップしている
図26に実線で示す状態の下で、移動機構160は、搬送ベルト73を固定端を中心に
図26に二点鎖線で示す位置まで反時計回り方向に回動させることで、搬送ベルト73の自由端を下方に移動させる。
【0150】
媒体Mが搬送ベルト73の自由端よりも下流側の位置でローラー対41にニップされた状態の下で、搬送ベルト73の自由端が下方に移動する。この結果、媒体Mの張力の方向と搬送ベルト73の吸着面とのなす角度が大きくなるとともに、媒体Mのニップ位置と搬送ベルト73上の吸着位置とが離間することで媒体Mに作用する張力が大きくなる。よって、この第4実施形態によっても、搬送ベルト73を傷付けることを抑えつつ、搬送ベルト73から媒体Mを剥離できる。
【0151】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0152】
・第1~第6実施例において、検知部は、搬送ベルト73の上流に位置し、媒体Mの有無を検知する第1検知部21であってもよい。この場合、剥離部120(130,140),150は、搬送ベルト73に対して搬送方向Yの上流側に配置する。そして、ジャム発生時に第1検知部21が媒体Mを検知している場合、剥離部120,150は、搬送ベルト73に対して搬送方向Yの上流側に搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて、送風するか又は剥離部材(シート部材141又はワイヤ151)を送り込む。また、ジャム発生時に第1検知部21が媒体Mを検知していない場合、搬送ベルト73は、第1検知部21により検知されるまで媒体Mを搬送方向Yの上流に搬送する。その後、剥離部120は、搬送ベルト73と媒体Mとで形成される鋭角な隙間ASに向けて送風するか又は剥離部材を送り込む。なお、鋭角な隙間ASを形成する媒体Mは、搬送ベルト73の搬送方向Yの上流端よりもさらに上流位置に配置される供給用のローラー対81にニップされてもよい。
【0153】
・媒体サイズに応じて剥離動作における駆動速度を変更してもよい。この場合、まず第1剥離速度で剥離動作を行い、次に第1剥離速度よりも低速又は高速な第2剥離動作を行ってもよい。また、まず第1剥離速度で剥離動作を開始し、その後、第1剥離速度から第2剥離速度まで段階的又は連続的に剥離速度を変化させてもよい。例えば、シート部材141を吸着界面に至るまでは高速で送り、シート部材141を吸着界面に挿入して媒体Mを搬送ベルト73から剥離する過程でシート部材141を低速で送ってもよい。なお、駆動速度とは、第1実施形態ではファン130の回転速度を指し、第2実施形態ではシート部材141の送り速度を指し、第3実施形態ではワイヤ151の移動速度を指す。
【0154】
・媒体サイズに応じて剥離動作における駆動速度を変化させてもよい。例えば、制御部100は、媒体サイズがサイズ閾値未満であるか否かを判定する。媒体サイズがサイズ閾値未満であれば、剥離部120の駆動部122を第1駆動速度で駆動させ、媒体サイズがサイズ閾値以上であれば、剥離部120の駆動部122を第1駆動速度よりも高速な第2駆動速度で駆動させてもよい。ここで、剥離部120は、第1実施形態ではファン130である。第2実施形態ではシート式剥離部140である。剥離部120がファン130である第1実施形態において、媒体サイズに応じてファン130の回転速度を変化させてもよい。剥離部120がシート式剥離部140である第2実施形態において、媒体サイズに応じてシート部材141の送り速度を変化させてもよい。ここで、サイズ閾値は、1つに限らず段階的に複数設定されてもよい。サイズ閾値は、例えば、A4判サイズとA3判サイズとの間に設定されてもよい。サイズ閾値は、一定値でもよいし、第1ジャム発生時に搬送ベルト73上に吸着される媒体Mの推定吸着面積に応じて選択される設定でもよい。
【0155】
・第1実施形態において、媒体サイズに応じてファン130の駆動時間を変化させてもよい。例えば、制御部100は、媒体サイズがサイズ閾値未満であれば、剥離部120の駆動部122を第1駆動時間に亘り駆動させ、媒体サイズがサイズ閾値以上であれば、剥離部120の駆動部122を第1駆動時間よりも長い第2駆動時間に亘り駆動させてもよい。
【0156】
・前記各実施形態において、搬送ベルト73に対して搬送方向Yの上流から下流に向かう第1方向に向かって媒体Mを剥離してもよい。この構成の場合、第1検知部21が、検知部の一例に相当する。この場合、ジャム解除作業を行う際に開閉されるカバー15は、搬送ベルト73に対して搬送方向Yの上流側に設けられてもよい。
【0157】
・第2実施形態における保護部材149のない構成において、シート部材141の先端部に丸みを付ける加工を施した加工部を形成してもよい。加工部は、例えば、成形による丸み加工でもよいし、例えば、熱可塑性樹脂よりなるシート部材141の先端部に加熱処理を施して熱溶融させることで先端部に丸みを付けてもよい。
【0158】
・第2~第6実施例において、振動発生部125により搬送ベルト73を振動させることで、媒体Mを搬送ベルト73から剥離させる剥離動作を補助してもよい。
・搬送ベルト73の振動のみ発生させることで、媒体Mを搬送ベルト73から剥離させてもよい。
【0159】
・剥離部120として、ファン130とシート式剥離部140の両方を採用してもよい。
・剥離部材は、シート部材141やワイヤ151に替え、ロッド部材でもよい。ワイヤ151は張力を付与できるように両端部を支持する両持ちの必要があるが、ロッド部材は剛性を有するので、片持ちでも両持ちでもよい。例えば、搬送ベルト73の幅方向Xの両側から片持ちで2本のロッドを支持する構成でもよい。また、1本のロッド部材を片持ち又は両持ちで支持してもよい。ロッド部材は、搬送ベルト73の幅方向Xにベルト幅の半分以上に亘る領域に配置可能に構成してもよい。
【0160】
・搬送ベルト73は、静電吸着力で媒体Mを吸着する構成に限定されない。例えば、搬送ベルト73は、表面に粘着層を有するものでもよい。
・媒体Mは、用紙等に限定されず、布や不織布などの布帛又はボード紙、合成樹脂製のフィルムや、ラミネート媒体などでもよい。
【0161】
・記録装置11は、用紙に印刷するインクジェット式の印刷装置(プリンター)に限定されず、捺染装置でもよい。さらに、記録装置11は、レーザープリンター、ドットインパクトプリンター、感熱印字型プリンター等であってもよい。
【0162】
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)記録装置は、電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、送風により、前記搬送ベルトから媒体を剥離する剥離部と、を有し、前記ジャムの発生時に前記搬送ベルト上に滞留した媒体がある場合、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで鋭角な隙間が形成された状態の下で、前記鋭角な隙間に向けて送風することにより、前記搬送ベルトから媒体を剥離する。
【0163】
この構成によれば、搬送ベルトから媒体を剥離する際に、搬送ベルトに傷がつく虞を軽減できる。例えば、媒体が搬送ベルトに対して先端まで吸着されていると、媒体を搬送ベルトから剥離する際の剥離の起点となる剥がれた部分が全くないので、例えば、先端が尖った部材(例えば爪状部材)を搬送ベルトと媒体の間に強制的に挿し込んで、媒体が搬送ベルトから少し剥がれた部分である剥離の起点を生成する必要がある。この場合、尖った部材の先端部により搬送ベルトを損傷する虞がある。これに対して、本構成では、媒体の先端部が搬送ベルトから剥がれた部分と搬送ベルトとで鋭角な隙間が形成されている。剥離部から送られた風(気流)が、鋭角な隙間にガイドされることで、搬送ベルトと媒体との吸着した界面へ導入される。よって、搬送ベルトを傷付けることを抑えつつ、搬送ベルトから媒体を剥離できる。
【0164】
(B)上記(A)に記載の記録装置であって、前記搬送ベルトの上流または下流に位置し、媒体の有無を検知する検知部を有し、前記検知部が媒体を検知した場合、前記剥離部は前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて送風し、前記検知部が媒体を検知しなかった場合、前記搬送ベルトは、前記検知部によって媒体が検知される位置に媒体を搬送し、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて送風してもよい。
【0165】
この構成によれば、検知部が媒体を検知しないときは、鋭角な隙間が形成されていない可能性がある。この場合、媒体が鋭角な隙間を形成する方向に搬送される。よって、媒体の剥離ミスを低減できる。
【0166】
(C)上記(A)又は(B)に記載の記録装置であって、イオンを発生するイオン発生部を有し、前記剥離部は、前記イオン発生部が発生したイオンを含む風を送風してもよい。
【0167】
この構成によれば、風に含まれるイオンにより搬送ベルトの残留電荷を低減できる。よって、例えば、搬送ベルトからの媒体の剥離を促進できたり、あるいは剥離した媒体の搬送ベルトへの再吸着を抑制できたりする。
【0168】
(D)上記(A)~(C)のいずれか一つに記載の記録装置であって、前記剥離部は、媒体のサイズに応じて送風量を変更してもよい。
この構成によれば、媒体サイズに適した送風量に調整される。よって、媒体サイズに依らず、搬送ベルトから媒体をより確実に剥離することができる。すなわち、媒体サイズに依る剥離ミスの発生を低減できる。
【0169】
(E)記録装置は、電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、シート部材又はワイヤよりなる剥離部材により、前記搬送ベルトから媒体を剥離する剥離部と、を有し、前記ジャムの発生時に前記搬送ベルト上に滞留した媒体がある場合、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで鋭角な隙間が形成された状態の下で、前記鋭角な隙間に向けて前記剥離部材を挿入することにより、前記搬送ベルトから媒体を剥離する。
【0170】
この構成によれば、搬送ベルトから媒体を剥離する際に、搬送ベルトに傷がつく虞を軽減できる。例えば、媒体が搬送ベルトに対して先端まで吸着されていると、媒体を搬送ベルトから剥離する際の剥離の起点となる剥がれた部分が全くないので、例えば、先端が尖った部材(例えば爪状部材)を搬送ベルトと媒体の間に強制的に挿し込んで、媒体が搬送ベルトから少し剥がれた部分である剥離の起点を生成する必要がある。この場合、尖った部材の先端部が搬送ベルトを損傷する虞がある。これに対して、本構成では、媒体の先端部が搬送ベルトから剥がれた部分と搬送ベルトとで鋭角な隙間が形成されている。剥離部から送られた剥離部材が、鋭角な隙間を形成する搬送ベルトと媒体とにガイドされることで、搬送ベルトと媒体との吸着界面へ挿入される。これにより、剥離部材の先端部を尖らせなくても、剥離部材を搬送ベルトと媒体とび吸着界面へ挿入できる。よって、搬送ベルトを傷付けることを抑えつつ、搬送ベルトから媒体Mを剥離できる。
【0171】
(F)上記(E)に記載の記録装置であって、前記搬送ベルトの上流または下流に位置し、媒体の有無を検知する検知部を有し、前記ジャムの発生時に、前記検知部が媒体を検知した場合、前記剥離部は前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて前記剥離部材を挿入し、前記ジャムの発生時に、前記検知部が媒体を検知していない場合、前記搬送ベルトは、前記検知部によって媒体が検知される位置に媒体を搬送し、前記剥離部は、前記搬送ベルトと媒体とで形成される前記鋭角な隙間に向けて前記剥離部材を挿入してもよい。
【0172】
この構成によれば、ジャムの発生時に検知部が媒体を検知していないときは、鋭角な隙間が形成されていない可能性がある。この場合、媒体が鋭角な隙間を形成する方向に搬送される。よって、媒体の剥離ミスを低減できる。
【0173】
(G)上記(E)又は(F)に記載の記録装置であって、前記剥離部材は導電性を有してもよい。
この構成によれば、導電性を有する剥離部材が搬送ベルトに接触することで、搬送ベルトの残留電荷を低減できる。
【0174】
(H)上記(E)~(G)のいずれか一つに記載の記録装置であって、前記剥離部材は、前記シート部材であり、前記シート部材を巻いて格納する格納部と、前記格納部に格納された前記シート部材を、前記鋭角な隙間に向けて送り出す駆動部と、を有してもよい。
【0175】
この構成によれば、シート部材は巻かれた状態で格納されるので、シート部材を配置するスペースを小さくできる。例えば、記録装置の小型化に寄与する。
(I)上記(E)~(H)のいずれか一つに記載の記録装置であって、前記剥離部材は、前記シート部材であり、前記シート部材の先端部には、保護部材が設けられてもよい。
【0176】
この構成によれば、シート部材の先端部が搬送ベルトに衝突することによる搬送ベルトの損傷を軽減できる。
(J)上記(E)~(I)のいずれか一つに記載の記録装置であって、前記剥離部材は、前記シート部材であり、前記シート部材は、媒体が搬送される搬送方向と交差する幅方向に複数設けられ、複数の前記シート部材のうち動作させるシート部材を媒体サイズに応じて選択可能に構成されてもよい。
【0177】
この構成によれば、媒体サイズに応じて選択された適切な数のシート部材を鋭角な隙間に向けて送ることができる。よって、媒体サイズに依らず、搬送ベルトから媒体をより確実に剥離することができる。例えば、常に同じ数(例えば1つ)のシート部材で剥離動作を行う場合に発生し易い、大きな媒体サイズほど剥離ミスの発生頻度が高くなることを低減できる。
【0178】
(K)上記(E)~(G)のいずれか一つに記載の記録装置であって、前記剥離部材は、前記ワイヤであり、媒体が搬送される搬送方向と交差する幅方向において前記搬送ベルトの両側の側端よりも外側の位置で前記ワイヤを前記搬送ベルトと平行に前記幅方向に沿って張設された状態で支持する一対の可動部と、一対の前記可動部を前記搬送ベルトの前記側端に沿って移動させることで、前記ワイヤを前記鋭角な隙間に向けて送り出す駆動部と、を有してもよい。
【0179】
この構成によれば、ワイヤにより搬送ベルトから媒体を剥離することができる。ワイヤを媒体と搬送ベルトとの吸着界面に対して幅方向の全域に亘り挿入できるので、吸着界面の幅方向の一部のみに挿入される剥離部材を使用する構成に比べ、搬送ベルトから媒体をより確実に剥離できる。
【0180】
(L)記録装置は、電荷により媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに搬送される媒体に記録を行う記録ユニットと、媒体のジャムが発生したか否かを判定する判定部と、前記搬送ベルトの一方の端部を固定端として、前記搬送ベルトの他方の端部である自由端を下方に移動させる移動機構と、前記搬送ベルトの前記自由端よりも媒体の搬送方向の下流側に設けられ、媒体をニップするローラー対と、を有し、前記ジャムの発生時に、前記ローラー対が媒体をニップしている場合、前記移動機構は、前記搬送ベルトを下方に移動させ、前記ローラー対が媒体をニップしていない場合、前記搬送ベルトは、前記ローラー対がニップ可能な位置に媒体を搬送し、前記移動機構は、前記搬送ベルトの前記自由端を下方に移動させる。
【0181】
この構成によれば、搬送ベルトから媒体を剥離する際に、搬送ベルトに傷がつく虞を軽減できる。例えば、媒体が搬送ベルトに対して先端まで吸着されていると、媒体を搬送ベルトから剥離する際の剥離の起点となる剥がれた部分が全くないので、例えば、先端が尖った部材を搬送ベルトと媒体の間に強制的に挿し込んで、媒体が搬送ベルトから少し剥がれた部分である剥離の起点を生成する必要がある。この場合、尖った部材の先端部が搬送ベルトを損傷する虞がある。これに対して、本構成では、媒体が搬送ベルトの自由端よりも下流側の位置でローラー対にニップされた状態の下で、搬送ベルトの自由端が下方に移動する。この結果、媒体の張力の方向と搬送ベルトの吸着面とのなす角度が大きくなるとともに、媒体のニップ位置と搬送ベルト上の吸着位置とが離間することで媒体Mに作用する張力が大きくなる。よって、搬送ベルトを傷付けることを抑えつつ、媒体を搬送ベルトから剥離できる。
【符号の説明】
【0182】
11…記録装置、12…筐体、12A…挿入口、13…給送トレイ、15…カバー、20…搬送部、21…第1検知部、22…検知部の一例としての第2検知部、23…媒体幅センサー、25…搬送経路、30…記録ユニット、31…印刷ヘッド、31A…ノズル面、32…ノズル、33…昇降機構、34…昇降レール、35…駆動源、40…排出機構部、41~45…排出用のローラー対、46…駆動ローラー、47…従動ローラー、48…排出口、49…載置台、50…給送機構部、51…第1媒体供給部、52…第2媒体供給部、53…第3媒体供給部、54…第1給送ローラー、55…給送カセット、56…ピックアップローラー、57…分離ローラー、58…第2給送ローラー、61…第1搬送路、62…第2搬送路、63…第3搬送路、64…分岐機構、65…分岐搬送ローラー、66…反転搬送ローラー、70…静電搬送部、71…第1ベルトローラー、72…第2ベルトローラー、73…搬送ベルト、73a…内面、73b…外面、74…バックアッププレート、75…払拭部、76…クリーニングブレード、77…ブレード支持部、78…挟持部、81…供給用のローラー対、82…駆動ローラー、83…従動ローラー、84…帯電部、85…帯電ローラー、87…サポートローラー、90…除電部、91…除電ブラシ、92…稼動部、100…制御部、101…操作部、102…表示部、110…コンピューター、111…第1カウンター、112…第2カウンター、113…吐出制御部、114…判定部、115…剥離制御部、116…記憶部、120…剥離部、121…ガイド部材、122…駆動部、122A…出力軸、125…振動発生部、130…剥離部の一例としてのファン、135…イオン発生部、140…剥離部の一例としてのシート式剥離部、140A…第1のシート式剥離部、140B…第2のシート式剥離部、140C…第3のシート式剥離部、141…シート部材、142…格納部、143…芯材、144…フレーム、145…歯車機構、146,147,148…歯車、149…保護部材、150…剥離部の一例としてのワイヤ式剥離部、151…ワイヤ、152…動力伝達機構、153…可動部、154…案内部、160…移動機構、161…第1アーム、162…第2アーム、163…駆動源、164…出力軸、165…回動軸、M…媒体、Ma…裏面、Mb…記録面、M1…先端、AS…鋭角な隙間、PD…印刷データ、PR…プログラム、X…幅方向、Y…搬送方向、Z…鉛直方向。