(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101240
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】印刷制御装置、印刷物を生産する方法および印刷制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G06F3/12 326
G06F3/12 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005114
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松澤 知己
(57)【要約】
【課題】操作ミス等により、遠いエリアに存在するプリンターで印刷を行ってしまう場合があった。
【解決手段】選択可能なプリンターから1台の前記プリンターの選択を受け付ける選択部と、選択された前記プリンターが、自らと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われる設定を禁止し、選択された前記プリンターが、自らと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定を許可する設定部と、選択された前記プリンターに印刷データを送信し、前記設定部の設定に応じて印刷させる印刷制御部と、を備える構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択可能なプリンターから1台の前記プリンターの選択を受け付ける選択部と、
選択された前記プリンターが、自らと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われる設定を禁止し、選択された前記プリンターが、自らと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定を許可する設定部と、
選択された前記プリンターに印刷データを送信し、前記設定部の設定に応じて印刷させる印刷制御部と、
を備えた印刷制御装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記第1の場合は、前記すぐに印刷が行われる設定を、選択された前記プリンターにユーザーが到着してから印刷が行われる設定に変更する、
請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記ユーザーが到着してから印刷が行われる設定は、選択された前記プリンターに前記ユーザーが直接操作を行った後に印刷が行われる設定である、
請求項2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記第1の場合に、設定画面において、前記すぐに印刷が行われる設定の選択を不可能にする、
請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記第2の場合に、設定画面において、前記すぐに印刷が行われる設定の選択を可能にする、
請求項4に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
前記選択部は、予め前記エリアを示す情報を対応付けて登録された登録プリンターから1台の前記プリンターの選択を受け付け、
前記設定部は、選択された前記プリンターに対応付けて登録されている前記エリアが自らと同じである場合に前記近プリンターと判断し、登録されている前記エリアが自らと異なる場合に前記遠プリンターと判断する、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の印刷制御装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記エリアの位置を示すGNSS情報、前記エリアの住所、前記エリアに存在するルーターのSSID、前記エリアに割り当てられたIPアドレスの少なくとも一つを用いて前記近プリンターか、前記遠プリンターか、を判断する
請求項6に記載の印刷制御装置。
【請求項8】
選択されたプリンターに印刷データを送信して印刷させる印刷物を生産する方法であって、
選択された前記プリンターが、ユーザーが存在するエリアと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われない設定で印刷データを生成し、
選択された前記プリンターが、前記ユーザーが存在するエリアと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定と、すぐに印刷が行われない設定と、のうち前記ユーザーが希望する設定で印刷データを生成し、
選択された前記プリンターに印刷データに基づいて印刷させることで印刷物を生産する、
印刷物を生産する方法。
【請求項9】
コンピューターを、
印刷対象として選択されたプリンターが、前記コンピューターが存在するエリアと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われない設定で印刷データを生成させ、
印刷対象として選択された前記プリンターが、前記コンピューターが存在するエリアと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定と、すぐに印刷が行われない設定と、のうちユーザーが希望する設定で印刷データを生成させる設定部、
選択された前記プリンターに前記設定部の設定に応じて印刷させる印刷制御部、
として動作させる印刷制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷物を生産する方法および印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なるエリアに存在するプリンターのいずれかで印刷を実行可能にする技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異なるエリアに存在するプリンターで印刷を実行可能である場合、ユーザーが存在するエリアと同じエリアに存在するプリンターでの印刷を意図していても、操作ミス等により、遠いエリアに存在するプリンターで印刷を行ってしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための印刷制御装置は、選択可能なプリンターから1台の前記プリンターの選択を受け付ける選択部と、選択された前記プリンターが、自らと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われる設定を禁止し、選択された前記プリンターが、自らと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定を許可する設定部と、選択された前記プリンターに印刷データを送信し、前記設定部の設定に応じて印刷させる印刷制御部と、を備える。
【0006】
上記の課題を解決するための印刷物を生産する方法は、選択されたプリンターに印刷データを送信して印刷させる印刷物を生産する方法であって、選択された前記プリンターが、ユーザーが存在するエリアと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われない設定で印刷データを生成し、選択された前記プリンターが、前記ユーザーが存在するエリアと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定と、すぐに印刷が行われない設定と、のうち前記ユーザーが希望する設定で印刷データを生成し、選択されたプリンターに印刷データに基づいて印刷させることで印刷物を生産する。
【0007】
上記の課題を解決するための印刷制御プログラムは、コンピューターを、印刷対象として選択されたプリンターが、前記コンピューターが存在するエリアと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われない設定で印刷データを生成させ、印刷対象として選択された前記プリンターが、前記ユーザーが存在するエリアと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定と、すぐに印刷が行われない設定と、のうち前記ユーザーが希望する設定で印刷データを生成させる設定部、選択された前記プリンターに前記設定部の設定に応じて印刷させる印刷制御部、として動作させるとして動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】印刷制御端末としてのコンピューターのブロック図。
【
図6】印刷制御処理のフローチャートを示す図である。
【
図8】印刷設定のための設定画面の例を示す図である。
【
図9】印刷設定のための設定画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)印刷制御システムの構成:
(1-1)プリンターの構成:
(1-2)サーバーの構成:
(1-3)コンピューターの構成:
(2)印刷制御処理:
(3)他の実施形態:
【0010】
(1)印刷制御システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる印刷制御装置を含む印刷制御システムの一例を示す図である。印刷制御システムは、複数のエリアに存在する電子機器と、サーバー30とを含む。
図1に示す例において、エリア1とエリア2とは、物理的に離れた位置に存在するエリアである。ここでは、エリア1が小規模オフィスであり、ユーザーがエリア1において作業をしている例が想定されている。また、エリア2はユーザーの勤務先のオフィスである例が想定されている。
【0011】
エリア1には、コンピューター10,プリンター11,ルーター12が存在する。コンピューター10およびプリンター11は、有線通信または無線通信によってルーター12と接続している。すなわち、エリア1においては、ルーター12によってコンピューター10とプリンター11とが通信可能なLAN(Local Area Network)が形成されている。また、ルーター12は、インターネットを介して外部装置との通信を制御する。コンピューター10およびプリンター11は、ルーター12を介してサーバー30やエリア2内の電子機器と通信可能である。
【0012】
図1に示す例においては、エリア2にも、エリア1と同様の電子機器が存在する。すなわち、エリア2には、コンピューター20,プリンター21,ルーター22が存在する。エリア2においても、ルーター22によってコンピューター20,プリンター21が互いに通信可能であり、また、外部装置と通信可能である。
【0013】
本実施形態において、ユーザーは、コンピューター10を操作して印刷データを生成し、印刷データが示すコンテンツの印刷指示を行う。この際、ユーザーは、プリンター11のみならずプリンター21も選択可能である。本実施形態においては、このような遠隔地に存在するプリンターへの印刷を可能にするため、サーバー30が稼働している。すなわち、サーバー30は、インターネットを介してコンピューター10から印刷依頼を受け、プリンター11やプリンター21に印刷をさせることが可能である。
【0014】
このように、ユーザーは、自らが操作するコンピューター10と離れた位置に存在するプリンター21を用いて印刷することが可能である。従って、ユーザーは、離れた位置にある勤務先のオフィスに出社して利用する印刷物や、勤務先のオフィスにいる他の者に利用させる印刷物をプリンター21に印刷させることができる。
【0015】
但し、ユーザーが印刷物を利用する際のニーズの大半は、自らの近くにあるプリンター11で印刷した印刷物を自ら利用するニーズである。従って、本実施形態にかかる印刷制御システムにおいては、離れた位置に存在するプリンター21で印刷可能であるという利便性がある一方で、プリンター21を誤選択して印刷が行われた場合に、印刷物が無駄になるという問題がある。また、印刷物に印刷された情報が予定外の者に開示されると言う問題もある。そこで、本実施形態においては、誤選択による印刷を防止するための処理が実施される。
【0016】
以下、上述の印刷制御システムを構成する各装置を説明する。
(1-1)プリンターの構成:
図2は、プリンター11の構成を示すブロック図である。プリンター11は、プロセッサー11aと、通信部11bと、不揮発性メモリー11cと、印刷部11dと、UI部11eと、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部11fとを備える。プロセッサー11aは、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー11cに記録された種々のプログラムを実行しプリンター11の各部を制御することができる。
【0017】
なお、プロセッサー11aは、単一のチップで構成されても良いし、複数のチップで構成されても良いし、様々な機能ブロックとともにSoCとして構成されていても良い。また、例えばCPUに替えてASICが採用されても良いし、CPUとASICとが協働する構成であっても良い。本実施形態における各装置がプロセッサーを備える場合、そのプロセッサーは、プロセッサー11aと同様に種々の態様で実現可能である。
【0018】
通信部11bは、外部機器と各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。プリンター11は、当該通信部11bによってルーター12と通信を行い、ルーター12を介して他の装置と通信することが可能である。なお、通信部11bは、プリンター11に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含んでいてもよい。
【0019】
印刷部11dは、印刷を実行する部位であり、印刷媒体にコンテンツを印刷する。印刷方式は限定されず、例えば、インクジェット方式やトナー方式、昇華式等の各種の方式を採用可能である。また、印刷媒体は印刷用紙に限定されず、布や陶器、樹脂など、各種の印刷媒体であってよい。印刷部11dは、各種の媒体に印刷を実行するためのアクチュエーターや各種装置、センサー、駆動回路、機械部品等を備えている。
【0020】
UI部11eは、タッチパネルディスプレイや各種のキーやスイッチやLED等の少なくともいずれかを含む。タッチパネルディスプレイは、各種の情報、例えば、プリンター11のステータスやインクの残量等を表示する表示パネルと、当該表示パネルに重ねられたタッチ検出パネルとを備え、タッチ操作を検出する。LEDはプリンター11のステータス等を示す点灯あるいは点滅表示を行う。プロセッサー11aは、UI部11eを介して管理者の操作内容を取得することができる。また、プロセッサー11aは、UI部11eのディスプレイに各種の情報を表示し管理者に通知することができる。
【0021】
GNSS受信部11fは、航法衛星が出力する信号を受信する装置である。プロセッサー11aは、GNSS受信部11fが受信した信号に基づいて、プリンター11が存在する座標(緯度および経度)を特定することができる。
【0022】
本実施形態においてプリンター11は、サーバー30から送信された印刷データに基づいて印刷を行うことができる。すなわち、プロセッサー11aは、通信部11bを介してサーバー30から印刷データ10c1を取得し、当該印刷データ10c1に基づいて印刷部11dを制御し、印刷を実施する。
【0023】
本実施形態においてプロセッサー11aは、各種のモードで印刷を実行することが可能であり、その一つとして認証印刷モードを実行可能な場合がある。認証印刷モードは、サーバー30からプリンター11に送信された印刷データ10c1を受信した後、すぐに印刷を行わず、ユーザーによる認証操作が行われるまで、印刷の実行を保留するモードである。認証印刷モードにおいては、このように、ユーザーに対して認証を要求することにより、プリンター11にユーザーが到着してから印刷が行われるように設定される。
【0024】
具体的には、サーバー30から受信した印刷データ10c1に対して、認証印刷モードであることを示す設定情報が対応付けられている場合、プロセッサー11aは、不揮発性メモリー11cに印刷データ10c1を保存して待機する。一方、ユーザーは、プリンター11まで移動し、UI部11eをユーザー自身によって直接操作することによってログイン操作を行う。ログイン操作は種々の手法で行われて良いが、本実施形態においては、ユーザーに割り当てられた認証情報(ユーザーIDとパスワード等)を入力することによって行われる。
【0025】
このような認証を行うため、不揮発性メモリー11cには予め認証情報11c1が保存されている。認証情報11c1は、ユーザーを識別するためのユーザーIDと、当該ユーザーIDに対応付けられたパスワードとによって構成される。ユーザーがログイン操作によって認証情報を入力すると、プロセッサー11aは、認証情報11c1を参照し、入力された認証情報が認証情報11c1として登録された情報と一致するか否か判定する。一致する場合、プロセッサー11aは、ユーザーによるログインを認める。ログインされた後、ユーザーは、UI部11eに対する操作によって、印刷の実行またはキャンセルを指示することができる。印刷の実行が指示されると、プロセッサー11aは、印刷部11dを制御して、印刷データ10c1による印刷を実行させる。キャンセルが指示されると、プロセッサー11aは、印刷データ10c1を不揮発性メモリー11cから削除する。
【0026】
入力された認証情報が認証情報11c1として登録された情報と一致しない場合、ログインは認められず、印刷データ10c1による印刷も実行されない。ログインが認められない場合、印刷データ10c1の取得後、一定時間経過後に印刷データ10c1を自動的に不揮発性メモリー11cから削除しても良い。なお、以上の構成は、プリンター11の構成であるが、プリンター21もプリンター11と同様の構成とすることが可能である。但し、認証印刷は、実行可能である機種と実行不可能な機種が存在し得る。
【0027】
(1-2)サーバーの構成:
図3は、サーバー30の構成を示すブロック図である。サーバー30は、プロセッサー30aと、通信部30bと、不揮発性メモリー30cとを備える。プロセッサー30aは、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー30cに記録された種々のプログラムを実行しサーバー30の各部やネットワークに接続された各装置を制御することができる。
【0028】
通信部30bは、外部機器と各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。サーバー30は、当該通信部30bおよび図示しないルーターを介して他の装置と通信することが可能である。なお、通信部30bは、サーバー30に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含んでいてもよい。
【0029】
サーバー30の不揮発性メモリー30cには、各種の情報が蓄積される。例えば、不揮発性メモリー30cには、サーバー30からの指示によって印刷可能なプリンターとして登録された登録プリンターを示す登録プリンター情報30c1が記録される。
図4は、登録プリンター情報30c1の例を示す図である。本実施形態においては、各登録プリンターを識別するためのプリンターIDに各登録プリンターの位置情報と、認証印刷の実行の可否と、が対応付けられて登録プリンター情報30c1となる。プリンターIDは、登録プリンターを区別することが可能な情報であれば良く、本実施形態においては登録プリンター毎に割り当てられた固有の名称である。
図4においては、プリンター001がプリンター11の名称であり、プリンター002がプリンター21の名称である。
【0030】
また、プリンターの位置情報は、各登録プリンターが存在するエリアの位置を示すGNSS情報およびエリアに割り当てられたIPアドレスである。本実施形態において、GNSS情報は、登録プリンターが存在する座標(緯度および経度)であり、各登録プリンターが備えるGNSS受信部によって取得される。エリアに割り当てられたIPアドレスは、登録プリンターが接続されたルーターのグローバルIPアドレスである。例えば、
図4に示す例であれば、名称がプリンター001であるプリンター11は、ルーター12に接続されているため、
図4に示すグローバルIPアドレスであるxxx.xxx.xxx.xxxは、ルーター12に割り当てられたグローバルIPアドレスである。また、座標(X1,Y1)は、プリンター11のGNSS受信部によって取得された、プリンター11の存在座標である。
【0031】
認証印刷の実行の可否は、プリンターIDで示されるプリンターが、認証印刷の機能を実行可能な機種であるか否かを示す情報である。
図4においては、プリンター11,21の双方とも、認証印刷が可能である例が示されている。
【0032】
登録プリンター情報30c1へのプリンターの登録は、各登録プリンターによる印刷前に、予め実施される。当該登録はユーザーがコンピューター10やコンピューター20を操作することによって実施される。例えば、ユーザーは、コンピューター10の入力部10eを操作し、プリンター11をサーバー30からの指示によって印刷可能な登録プリンターとして指定する。当該指定が行われると、コンピューター10は、プリンター11のプリンターID、プリンター11の座標およびルーター12のグローバルIPアドレス、認証印刷の可否をサーバー30に送信する。サーバー30は、通信部30bを介してこれらの情報を取得し、登録プリンター情報30c1として不揮発性メモリー30cに保存する。なお、プリンター21の登録プリンター情報30c1への登録が、遠隔地から、例えば、コンピューター10から実施可能であっても良い。
【0033】
さらに、印刷データが外部からサーバー30に送信されると、当該印刷データが不揮発性メモリー10cに保存される。例えば、プリンター11で印刷を行うために印刷データ10c1がコンピューター10からサーバー30に送信された場合、当該印刷データ10c1が不揮発性メモリー30cに記録される。プロセッサー30aは、登録プリンター情報30c1に基づいて、印刷実行プリンターとして選択されたプリンター11が存在するエリアのルーター12に対応付けられたグローバルIPアドレスを特定する。そして、プロセッサー30aは、当該グローバルIPアドレスが対応付けられたルーター12に接続されたプリンター11を宛先として印刷データ10c1を送信する。この結果、印刷データ10c1に基づいてプリンター11が印刷を実行する。
【0034】
(1-3)コンピューターの構成:
図5は、コンピューター10の構成を示すブロック図である。コンピューター10は、プロセッサー10aと、通信部10bと、不揮発性メモリー10cと、ディスプレイ10dと、入力部10eと、GNSS受信部10fを備える。プロセッサー10aは、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー10cに記録された種々のプログラムを実行しコンピューター10の各部を制御することができる。
【0035】
通信部10bは、外部機器と各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。コンピューター10は、当該通信部10bによってルーター12と通信を行い、ルーター12を介して他の装置と通信することが可能である。また、通信部10bは、コンピューター10に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含む。
【0036】
ディスプレイ10dは、任意の画像を表示する表示装置である。入力部10eは、ユーザーが入力操作を行う装置であり、例えば、キーボードやマウス等で構成される。本実施形態において、コンピューター10は、据置型の端末であることが想定されているが、むろん、コンピューター10は他の態様の端末であっても良い。例えば、タブレット端末やスマートフォン端末等であっても良い。これらの端末である場合、入力部10eは、タッチパネル等で構成されてよい。いずれにしても、ユーザーは、ディスプレイ10dに表示される画像や文字を視認しながら、入力部10eを操作してユーザーの意図を入力することができる。
【0037】
GNSS受信部10fは、航法衛星が出力する信号を受信する装置である。プロセッサー10aは、GNSS受信部10fが受信した信号に基づいて、コンピューター10が存在する座標(緯度および経度)を特定することができる。
【0038】
プロセッサー10aは、図示しない印刷制御プログラムを実行する。プロセッサー10aが印刷制御プログラムを実行すると、コンピューター10は、印刷制御装置として機能する。また、印刷制御プログラムが実行されると、プロセッサー10aは、選択部10a1,設定部10a2,印刷制御部10a3として機能する。選択部10a1は、選択可能なプリンターから1台のプリンターの選択を受け付ける機能である。本実施形態においては、サーバー30からの指示によって印刷可能なプリンターが予め登録プリンターとして登録され、登録プリンター情報30c1として不揮発性メモリー30cに保存されている。
【0039】
ユーザーは登録プリンターから印刷対象のプリンターを選択することができる。具体的には、コンピューター10は、サーバー30からの指示によって印刷可能な登録プリンターのリストの取得要求を行う。当該取得要求が行われると、サーバー30は、登録プリンター情報30c1を参照し、プリンターIDのそれぞれに対して認証印刷の可否を含む設定可能項目の情報を対応付けたリストを示す登録プリンターリスト10c2を生成し、コンピューター10に送信する。プロセッサー10aは、当該登録プリンターリスト10c2を取得し、不揮発性メモリー10cに保存する。
【0040】
以上のように、予め登録プリンターリスト10c2が登録された状態において、ユーザーが任意のコンテンツを印刷する際には、選択部10a1の機能により、プロセッサー10aが、登録プリンターリスト10c2を参照し、ディスプレイ10dに登録プリンターの一覧を表示させる。ユーザーは、入力部10eを操作し、登録プリンターの一覧から、1台の登録プリンターを選択する。プロセッサー10aは、選択された登録プリンターを受け付け、印刷実行プリンターとして特定する。
【0041】
印刷制御部10a3は、選択された登録プリンターに印刷データ10c1を送信し、各種の設定に応じて印刷させる機能である。印刷対象を示すコンテンツは、種々の態様で生成されて良い。例えば、ユーザーは、入力部10eを操作して図示しないアプリケーションプログラムを動作させ、印刷対象となるコンテンツを生成する。むろん、印刷対象を示すコンテンツを示す情報は、不揮発性メモリー等によってコンピューター10に転送されても良い。
【0042】
ユーザーは、印刷対象のコンテンツに対して各種の設定、例えば、印刷に用いる色、印刷部数、印刷品質等を適用させることができる。このため、ユーザーは、アプリケーションプログラムの機能を用いて印刷対象を示すコンテンツの指定と、設定の指定とを含む印刷指示を行う。プロセッサー10aは、印刷制御部10a3の機能により、当該コンテンツを設定通りに印刷させるための印刷データ10c1を生成し、不揮発性メモリー10cに保存する。印刷設定は、印刷データ10c1の内容に反映されるか、または、印刷データ10c1の一部に設定を示す情報が含まれることで、コンテンツの印刷に適用される。例えば、印刷品質等のように画像処理内容を変化させる設定であれば、当該画像処理によって生成された画像データが印刷データ10c1に含まれることによって、印刷に反映される。一方、認証印刷を実行するか否かなど、プリンターにおける動作を変化させ得る設定については、その動作を実行するか否かを示す情報が印刷データ10c1に含まれる。そして、印刷データ10c1に基づいてプリンターが印刷を行う際に、当該情報が示す動作をすることによって、印刷設定が反映される。
【0043】
なお、本実施形態において、印刷データ10c1の生成処理はコンピューター10によって実施されるが、プリンター11,21で実行されてもよいし、サーバー30,コンピューター20で実行されてもよい。印刷データ10c1が生成されると、プロセッサー10aは、印刷制御部10a3の機能により、印刷データ10c1をサーバー30に送信する。サーバー30が印刷データ10c1を受信すると、印刷実行プリンターとして選択された登録プリンターに印刷データ10c1を送信する。この結果、印刷実行プリンターは、印刷データ10c1に基づいて印刷を実行する。
【0044】
以上の構成において、ユーザーは、ユーザーが存在するエリアと同じエリアに存在するプリンター11、異なるエリアに存在するプリンター21、のいずれも選択可能である。このため、ユーザーがプリンター11で印刷させようとしているにもかかわらず、プリンター21を誤選択してしまうことがある。このような誤選択による印刷の実行を防止するため、本実施形態においては、誤選択の可能性がある場合には、強制的に認証印刷モードに設定される。
【0045】
このような設定を行うため、プロセッサー10aは、設定部10a2として機能する。設定部10a2は、選択されたプリンターが、自らと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われる設定を禁止し、選択されたプリンターが、自らと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定を許可する機能である。
【0046】
具体的には、本実施形態においては選択されたプリンターが遠プリンター、近プリンターのいずれであるかに基づいて設定が行われる。本実施形態において、「自ら」とは、印刷制御装置であるコンピューター10を指す。従って、コンピューター10から見ると、プリンター11は近プリンター、プリンター21は遠プリンターになる。
【0047】
本実施形態において、自らが存在するエリアは、コンピューター10が存在する座標およびコンピューター10が接続されたルーターのグローバルIPアドレスによって特定される。このため、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、通信部30bを介して印刷実行プリンターとして選択された登録プリンターの位置情報、すなわち、座標およびグローバルIPアドレスの送信要求を行う。サーバー30のプロセッサー30aは、当該送信要求に応じて、印刷実行プリンターとして選択された登録プリンターの位置情報を取得し、コンピューター10に返信する。
【0048】
さらに、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、GNSS受信部10fの出力信号を取得し、コンピューター10の座標を特定する。また、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、ルーター12と通信し、ルーター12に割り当てられたグローバルIPアドレスを取得する。
【0049】
プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、自らが存在する座標から既定距離以内の範囲に登録プリンターの座標が含まれる場合に、自らの座標と登録プリンターの座標が一致すると判断する。また、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、自らが通信するルーターのグローバルIPアドレスと印刷実行プリンターとして選択された登録プリンターに対応付けられたグローバルIPアドレスとが同一である場合に、自らに対応するグローバルIPアドレスと登録プリンターに対応するグローバルIPアドレスとが一致すると判断する。
【0050】
座標およびグローバルIPアドレスの双方が一致する場合、プロセッサー10aは、印刷実行プリンターとして選択された登録プリンターに対応付けて登録されたエリアが、自らと同じエリアであり、当該登録プリンターが近プリンターであると判断する。座標、グローバルIPアドレスの少なくとも一方が不一致である場合、プロセッサー10aは、印刷実行プリンターとして選択された登録プリンターに対応付けて登録されたエリアが、自らと異なるエリアであり、当該登録プリンターが遠プリンターであると判断する。
【0051】
本実施形態においては、選択された登録プリンターが遠プリンターである第1の場合において、すぐに印刷が行われる設定が禁止される。上述のように、本実施形態においては、認証印刷モードに設定されていない場合、すぐに印刷が行われる設定となり、認証印刷モードに設定されている場合、すぐに印刷が行われない設定(ユーザー認証が完了するまで印刷されない設定)となる。そこで、プロセッサー10aは、選択された登録プリンターが、自らと異なるエリアに存在する遠プリンターである第1の場合、強制的に認証印刷モードとする。このため、ユーザーが認証印刷モードに設定しないで印刷指示を行ったとしても、プロセッサー10aは、印刷制御部10a3によって生成された印刷データ10c1において認証印刷に関する情報を修正し、認証印刷が実行されるように、設定を変更する。このようにして、認証印刷モード以外の設定で印刷されることが禁止される。そして、ユーザーが認証印刷モードに設定して印刷指示を行ったのであれば、印刷制御部10a3によって生成された印刷データ10c1はそのまま送信されて認証印刷が実行される。
【0052】
また、プロセッサー10aは、選択された登録プリンターが、自らと同じエリアに存在する近プリンターである第2の場合、認証印刷モードに関する自動設定を行わない。このため、ユーザーが認証印刷モードに設定しないで印刷指示を行った場合、プロセッサー10aは、印刷制御部10a3によって生成された印刷データ10c1において認証印刷に関する情報を修正せず、認証印刷が適用されずにすぐに印刷される状態とする。このようにして、認証印刷モード以外の設定で印刷されることが許可される。当然、ユーザーが認証印刷モードに設定して印刷指示を行えば、印刷制御部10a3によって生成された印刷データ10c1はそのまま送信されて認証印刷が実行される。印刷が行われると、印刷物が生産されると言える。
【0053】
以上のように設定された印刷データ10c1に基づいて印刷が行われた場合、ユーザーが遠プリンターを選択しているのであれば、すぐに印刷されず、ユーザーが遠プリンターに到着し、ログインするまで印刷されない。このため、仮にユーザーがプリンター11を意図してプリンター21を誤選択したまま印刷指示を行ったとしても、ユーザーがプリンター21に到着するまで印刷されない。印刷を意図しないのであれば、ユーザーは、プリンター11の前に移動して、プリンター11を操作して印刷データ10c1に基づく印刷キャンセルを指示すれば良い。むろん、コンピューター10からプリンター21における印刷のキャンセルを指示できるように構成されていても良い。あるいは、印刷されなければ、生成されてから一定時間の経過によって印刷データ10c1を削除するようにしてもよい。
【0054】
以上の構成によれば、プリンターの誤選択による無駄な印刷の発生を防止することができる。また、印刷物に印刷された情報が予定外の者に開示されることを防止することができる。プリンターの誤選択ではなく、プリンター21が意図通りなのであれば、ユーザーは、プリンター21にログイン後、印刷実行を指示すれば良い。この結果、プリンター21は印刷データ10c1に基づいて、印刷を実行する。なお、以上の構成は、コンピューター10の構成であるが、コンピューター20もコンピューター10と同様の構成とすることが可能である。
【0055】
(2)印刷制御処理:
図6は、印刷制御処理のフローチャートである。ユーザーが任意のコンテンツに関する印刷を行う場合、ユーザーは、コンピューター10の入力部10eを操作して印刷処理を開始するための入力を行う。当該入力は、種々の手法で行われて良く、例えば、アプリケーションプログラムの実行下において印刷処理を開始するための指示を行うこと等が当該入力に相当する。
【0056】
当該入力が行われると、プロセッサー10aは、印刷制御処理を開始する。印刷制御処理が開始されると、プロセッサー10aは、印刷設定を受け付ける。この過程において、プロセッサー10aは、選択部10a1の機能により、登録プリンターの選択を受け付ける(ステップS100)。具体的には、プロセッサー10aは、登録プリンターリスト10c2を参照し、登録プリンターの名称を取得する。この結果、印刷を実行させる登録プリンターとして選択可能なプリンターが特定される。また、プロセッサー10aは、ディスプレイ10dを制御して、登録プリンターの名称を選択肢として表示し、入力部10eに対する操作により、ユーザーが選択した登録プリンターを受け付ける。
【0057】
次に、プロセッサー10aは、選択可能な登録プリンターが複数存在するか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、プロセッサー10aは、登録プリンターリスト10c2を参照し、登録プリンターが複数存在するか否かを判定する。ステップS105において、登録プリンターが複数存在すると判定されない場合、プロセッサー10aは、印刷制御部10a3の機能により、選択された登録プリンターに印刷データ10c1を送信する(ステップS145)。
【0058】
選択可能な登録プリンターが複数存在しない場合、登録プリンターは、近プリンター1台または遠プリンター1台のいずれかである。従って、この場合、選択肢が1個しかないため、ユーザーが意図外のプリンターを選択している可能性が低い。そこで、本実施形態においては、誤選択の可能性が低いとみなし、印刷設定を修正することなく、印刷を実行する。具体的には、プロセッサー10aは、選択された登録プリンターを印刷実行プリンターと見なす。そして、プロセッサー10aは、印刷対象のコンテンツに基づいて、ユーザーが指定した通りの設定で印刷を行わせるための印刷データ10c1を生成し、印刷実行プリンターを示す情報とともに、印刷データ10c1をサーバー30に送信する。サーバー30が印刷データ10c1を受信すると、サーバー30は、印刷実行プリンターを特定し、当該印刷実行プリンターのグローバルIPアドレスを特定し、当該グローバルIPアドレスおよび印刷実行プリンターを宛先として指定し、印刷データ10c1を送信する。この結果、ステップS100で選択されたプリンターで印刷が実行される。
【0059】
一方、ステップS105において、選択可能な登録プリンターが複数存在すると判定された場合、プリンターが誤選択されている可能性がある。そこで、近プリンターを意図して遠プリンターを誤選択し、印刷指示した場合に、すぐに印刷されることを防止するため、プロセッサー10aは、ステップS110以降の処理を実行する。ステップS110において、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、選択された登録プリンターの位置情報を取得する。すなわち、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、ステップS100で選択された登録プリンターの位置情報の送信要求を、通信部10bを介してサーバー30に送信する。サーバー30のプロセッサー30aは、当該送信要求に応じて、登録プリンター情報30c1を参照し、要求された登録プリンターの位置情報を取得し、コンピューター10に返信する。この結果、プロセッサー10aは、ステップS100で選択された登録プリンターの座標およびグローバルIPアドレスを取得する。
【0060】
次に、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、コンピューターの位置情報を取得する(ステップS115)。具体的には、プロセッサー10aは、GNSS受信部10fの出力信号を取得し、コンピューター10の座標を特定する。また、プロセッサー10aは、通信部10bを介してルーター12と通信し、ルーター12に割り当てられたグローバルIPアドレスを取得する。
【0061】
次に、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、選択された登録プリンターとコンピューターの位置情報を比較する(ステップS120)。具体的には、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、ステップS115で取得したコンピューター10の座標から既定距離以内の範囲に、ステップS110で取得した登録プリンターの座標が含まれるか否か判定する。当該範囲に登録プリンターの座標が含まれる場合、コンピューター10の座標と登録プリンターの座標が一致すると判断する。
【0062】
また、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、ステップS115で取得したグローバルIPアドレスと、ステップS110で取得したグローバルIPアドレスとが同一であるか否か判定する。
【0063】
座標およびグローバルIPアドレスの双方が一致する場合、登録プリンターは、コンピューター10から近いエリアに存在する近プリンターである。また、座標およびグローバルIPアドレスの双方が一致しない場合、登録プリンターは、コンピューター10から遠いエリアに存在する遠プリンターである。
【0064】
座標およびグローバルIPアドレスの双方が一致する場合、すなわち、選択された登録プリンターが近プリンターである場合、ステップS125の判断を経て、プロセッサー10aは、ステップS145を実行する。すなわち、プロセッサー10aは、プリンターの設定を修正することなく、サーバー30に印刷データ10c1を送信し、ユーザーによる設定通りで、ステップS100で選択された登録プリンターを印刷実行プリンターとして印刷を実行させる。
【0065】
座標およびグローバルIPアドレスの少なくとも一方が一致しない場合、すなわち、選択された登録プリンターが遠プリンターである場合、ステップS125の判断を経て、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、選択されたプリンターが認証印刷を実行可能であるか否か判定する(ステップS130)。すなわち、プロセッサー10aは、登録プリンターリスト10c2を参照し、ステップS100で選択されたプリンターが認証印刷を実行可能であるか否か判定する。
【0066】
ステップS130において、選択されたプリンターが認証印刷を実行可能であると判定されない場合、プロセッサー10aは、ディスプレイ10dを制御して警告を表示し、ユーザーの入力を受け付ける(ステップS135)。具体的には、プロセッサー10aは、ディスプレイ10dを制御し、警告画面を表示させる。
図7は、警告画面の例を示す図である。
【0067】
図7に示す例においては、上部に警告を示すアイコンと「警告」の文字が表示され、これらの下部に警告内容が示されている。警告内容には、選択されたプリンターとコンピューターの位置情報が異なることを示す文字と、印刷を続行するか否か問い合わせる文字が含まれる。また、選択されたプリンターの名称、座標、グローバルIPアドレスを示すボックスと、コンピューターの座標、グローバルIPアドレスを示すボックスとが含まれる。
【0068】
さらに、本実施形態においては、警告画面に、選択可能な近プリンターの紹介が含まれる。
図7においては、「コンピューターと近いプリンター」という文字が示され、これらの下部にプリンターの選択肢を表示するボックスが示されている。ユーザーが入力部10eを操作して当該ボックスを指示すると、プロセッサー10aは、近プリンターのリストを取得する。具体的には、プロセッサー10aは、コンピューター10の座標およびコンピューター10が接続されているルーター12のグローバルIPアドレスを取得し、通信部10bを介してサーバー30にこれらの情報を送信する。
【0069】
サーバー30は、登録プリンター情報30c1を参照し、コンピューター10の座標から既定範囲内の座標が対応付けられ、かつ、グローバルIPアドレスが一致する登録プリンターを取得する。すなわち、サーバー30は、コンピューター10に近い近プリンターのプリンターIDを取得する。そして、サーバー30は、通信部30bを介して、近プリンターのプリンターIDをコンピューター10に送信する。
【0070】
コンピューター10は、ディスプレイ10dを制御し、これらの近プリンターのプリンターIDを表示させる。ユーザーは、入力部10eを操作し、所望の近プリンターを選択し、「印刷設定画面を開く」ボタンで指示を行うことにより、印刷実行プリンターを変更することができる。この場合において、ユーザーが印刷設定を行うと、プロセッサー10aは、再度ステップS100から実行開始する。以上の構成によれば、ユーザーは、自ら意図したプリンターと異なるプリンターで印刷しようとしていた場合、紹介された近プリンターを選択することによって、自らの近くのプリンターで印刷することが可能になる。なお、近プリンターが存在しない場合、近プリンターの紹介は行われない。
【0071】
図7に示す画面においては、「OK」ボタンや「cancel」ボタンも表示されている。ユーザーが入力部10eを操作し、「cancel」ボタンで指示を行うと、プロセッサー10aは、ステップS140において、印刷実行指示がないと判定し、印刷制御処理を終了する。この構成によれば、ユーザーは、自ら意図したプリンターと異なるプリンターで印刷しようとしていた場合に、印刷制御処理を実行しないようにすることができる。
【0072】
図7に示す画面において、ユーザーが入力部10eを操作し、「OK」ボタンで指示を行うと、プロセッサー10aは、ステップS140において、印刷実行指示があったと判定し、ステップS145を実行する。すなわち、プロセッサー10aは、ステップS100で選択されたプリンターの変更を行うことなく印刷を実行する指示があったと見なし、印刷実行プリンターを変更せずに、ステップS145において印刷を実行させる。以上の構成によれば、選択されたプリンターが遠プリンターである第1の場合において、選択されたプリンターが認証印刷に対応していない場合、ユーザーが近プリンターを選択するか、明示的に遠プリンターでの印刷実行を指示しなければ印刷されない。このため、ユーザーの操作が行われるまで印刷されないという意味で、すぐに印刷が行われる設定が禁止された状態となる。
【0073】
一方、ステップS130において、選択されたプリンターが認証印刷を実行可能であると判定された場合、プロセッサー10aは、認証印刷を実行する印刷データ10c1を送信する(ステップS150)。具体的には、印刷制御部10a3によって生成された印刷データ10c1において認証印刷を実行しないように設定されていれば、プロセッサー10aは、設定部10a2の機能により、当該認証印刷に関する情報を修正し、認証印刷が実行されるように、設定を変更する。印刷制御部10a3によって生成された印刷データ10c1において認証印刷を実行するように設定されていれば、プロセッサー10aは、当該認証印刷に関する情報を修正しない。そして、プロセッサー10aは、印刷実行プリンターを示す情報とともに、認証印刷を実行するように設定された印刷データ10c1をサーバー30に送信する。サーバー30が印刷データ10c1を受信すると、サーバー30は、印刷実行プリンターを特定し、当該印刷実行プリンターのグローバルIPアドレスを特定し、当該グローバルIPアドレスおよび印刷実行プリンターを宛先として指定し、印刷データ10c1を送信する。
【0074】
この結果、ステップS100で選択されたプリンターの不揮発性メモリーに印刷データ10c1が保存される。ユーザーは、当該プリンターまで移動し、ログイン操作することによって認証を行い、印刷実行を指示することで当該プリンターに印刷を実行させる。以上の構成によれば、遠プリンターが誤選択された可能性がある場合に、すぐに印刷されることを防止し、ユーザーの意図外に遠プリンターで印刷される可能性を低減することができる。
【0075】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、印刷制御システムの装置構成は、
図1に示す構成に限定されない。例えば、エリア2においてコンピューター20が存在しない構成であっても良いし、エリア1,2のそれぞれにプリンターが2台以上存在しても良い。また、エリアが3個以上存在しても良い。また、
図1に示す各端末は、機能を共有するより少数の端末であっても良いし、より多数の端末であっても良い。例えば、コンピューター10とプリンター11とは一体の装置であっても良いし、サーバー30は、各エリアに存在するコンピューター10,20の少なくとも一方と同一の端末であっても良い。さらに、サーバー30がクラウドサーバーであるなど、各端末がより多数の端末で構成されても良い。
【0076】
さらに、上述の実施形態のように、ユーザーが選択したプリンターに応じて警告を行い得るモードと、警告を行わないモードと、が予めユーザーによって選択可能であっても良い。そもそも警告を行う機能を設けなくてもよい。
【0077】
さらに、位置情報は、位置を示す情報であれば様々な情報であってもよく、その情報は外部装置から取得したりユーザーに手入力させたり、様々な方法で取得することができる。例えば、エリアの位置を示すGNSS情報、エリアに割り当てられたIPアドレスに限定されず、エリアの住所やエリアに存在するルーターのSSID(Service Set Identifier)であっても良いし、これらの任意の組合せであっても良い。エリアの住所は、行政区画の名称、数値、記号等によって特定される場所を示す情報であれば良い。住所は、例えば、ユーザーが住所を入力することで特定されても良いし、GNSS情報等によって特定された座標が含まれる住所が、住所管理サーバー等によって特定されても良く、種々の手法で特定されて良い。ルーター12が無線通信可能なルーターである場合、ルーター12にはSSIDが割り当てられる。このため、共通のSSIDを用いて無線通信する機器は同じエリアに存在すると見なすことができる。位置情報には、他にも種々の情報が用いられて良く、例えば、無線LANの基地局や携帯電話網の基地局と端末との通信状況を用いて端末(プリンターやコンピューター)の位置が特定されても良い。
【0078】
さらに、上述のプリンター11,21は、GNSS受信部を用いて座標を特定したが、GNSS受信部を備えないプリンターが存在するエリアが、他の機器の座標等に基づいて特定されても良い。例えば、プリンター11の近くに存在するコンピューター10がGNSS受信部を備えるのであれば、当該GNSS受信部で取得したコンピューター10の座標が、プリンター11のエリアを特定するための座標として登録プリンター情報30c1に登録されても良い。
【0079】
さらに、すぐに印刷が行われる設定を禁止する構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、ユーザーによって印刷設定が行われる設定画面において、第1の場合に、すぐに印刷が行われる設定の選択を不可能にすれば、すぐに印刷が行われる設定をユーザーが選択することができなくなる。この結果、すぐに印刷が行われる設定は禁止される。
図8は、このような設定画面の例である。
図8は、印刷実行プリンターや印刷対象ページを指定可能な画面である。
【0080】
図8に示す画面においては、認証印刷を実行するか否かを指定するラジオボタンが設けられている。すなわち、ユーザーがラジオボタンを選択する度に、認証印刷の実行、不実行を切り替えることができる。但し、本実施形態においては、印刷実行プリンターとして遠プリンターであるプリンター002が選択された場合、認証印刷が選択された状態で固定され、当該設定をユーザーが変更できないように構成されている。
【0081】
すなわち、
図8に示すように遠プリンターが印刷実行プリンターとして選択された場合、認証印刷を実行するか否かを指定するラジオボタンは、認証印刷の実行を示す状態に固定されてグレーアウトする。この状態で、ユーザーは、ラジオボタンに対する操作を行うことは不可能である。この構成によれば、ユーザーが遠プリンターを選択した場合に、強制的に認証印刷を実行させることが可能になる。
【0082】
一方、このような構成であっても、第2の場合には、設定画面において、すぐに印刷が行われる設定の選択が可能である。
図9は、第2の場合の例を示している。すなわち、近プリンターであるプリンター001が選択された場合、ラジオボタンによる選択が可能になる。この結果、第2の場合であれば、ユーザーの意図に応じて認証印刷の実行の可否を決定することができる。
【0083】
選択部は、選択可能なプリンターから1台のプリンターの選択を受け付けることができればよい。すなわち、選択部は、印刷を実行するプリンターを選択することができればよい。選択可能なプリンターは、上述の実施形態のように、サーバー30に予め登録されていても良いし、コンピューター10,20に登録されても良い。
【0084】
自らと同じエリアに存在する近プリンターか、異なるエリアに存在する遠プリンターか、の判断は、上述したものに限られない。プリンターとコンピューターとの位置関係が所定に条件を満足するか否かの判断と、実質的には同一である。すなわち、設定部による設定内容の特定過程で、選択されたプリンターが、ユーザーが使用するコンピューターの近くに存在する場合に近プリンター、遠くに存在する場合に遠プリンターと判断しても良いし、上述の実施形態のようなプリンターとコンピューターとの位置関係が一致しているか否かの判断が行われてもよい。
【0085】
エリアは、ユーザーや、ユーザーが使用するコンピューターから見てプリンターが近いか否かを比較するための概念であり、点であっても良いし、有限の面積を有する領域であっても良い。領域の広さを示す値、例えば、機器が存在する座標からの距離は、予め設定されていれば良く、1km、100m等のように種々の値であって良い。また、点や領域などのように、エリアに属するか否かを物理的な距離関係から定義可能な概念に限定されず、エリアに属するか否かを物理的な距離関係に依存せずに定義可能な概念であっても良い。例えば、特定のグローバルIPアドレスが割り当てられたルーターに接続された複数の機器が同じエリアに属すると見なす構成は、後者の概念に該当する。また、プリンターが発生する無線信号をコンピューターが受信できれば近プリンターであり受信できなければ遠プリンターであると判断してもよい。
【0086】
設定部は、選択されたプリンターが遠プリンターである第1の場合、すぐに印刷が行われる設定を禁止し、選択されたプリンターが近プリンターである第2の場合、すぐに印刷が行われる設定を許可することができればよい。すなわち、選択部は、誤選択による影響が大きい場合には、印刷が即実行されないように設定することができれば良い。すぐに印刷が行われる設定は、プリンターによる印刷処理が印刷実行指示に応じて即実行される設定である。従って、印刷待ちのジョブが存在しなければ、印刷指示に応じてプリンターによって印刷データによる印刷処理が開始される。印刷待ちのジョブが存在するのであれば、印刷指示に係る印刷ジョブが任意の順番で印刷待ちキューに追加される。
【0087】
すぐに印刷が行われる設定が禁止された場合、印刷制御装置においてユーザーによって最初に行われる印刷指示はプリンターによる印刷開始のトリガにはならない。すぐに印刷が行われる設定が禁止された場合、印刷が行われるトリガは、上述の実施形態のようにユーザーによる認証操作に限定されない。例えば、印刷指示後、一定時間が経過することがトリガになってプリンターによる印刷が開始されてもよい。認証を行わずに、ユーザーが印刷するプリンターを直接操作して印刷データを選択して印刷を指示することで印刷が開始されてもよい。あるいは、ユーザーがプリンターの近傍に来たことをセンサーで検知して印刷を開始してもよい。
【0088】
印刷制御部は、選択されたプリンターに印刷データを送信し、設定部の設定に応じて印刷させることができればよい。すなわち、印刷制御部は、選択された近プリンターまたは遠プリンターを制御し、設定部の設定で印刷を実行させることができればよい。設定は、印刷データに含まれていても良いし、印刷データとともに送信されるデータによって設定が示されていてもよい。上述の実施形態においては、近プリンターが選択された場合もサーバーに印刷データが送信され、サーバーから近プリンターに印刷データが送信されて印刷が行われるが、コンピューターから近プリンターに印刷データが送信されても良い。
【0089】
さらに、本発明は、コンピューターが実行するプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各要素が上述した装置とは異なる装置に設けられる場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリーであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、どの装置でどの処理を行うかは適宜変更することができる。例えば、近プリンターか遠プリンターかの判断をサーバー30で行ってもよいし、コンピューターが生成した印刷データをプリンターに送信する際にサーバーを経由させ、サーバーの設定部で印刷データの設定を変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10…コンピューター、10a…プロセッサー、10a1…選択部、10a2…設定部、10a3…印刷制御部、10b…通信部、10c…不揮発性メモリー、10c1…印刷データ、10c2…登録プリンターリスト、10d…ディスプレイ、10e…入力部、10f…GNSS受信部、11…プリンター、11a…プロセッサー、11b…通信部、11c…不揮発性メモリー、11c1…認証情報、11d…印刷部、11e…UI部、11f…GNSS受信部、12…ルーター、20…コンピューター、21…プリンター、22…ルーター、30…サーバー、30a…プロセッサー、30b…通信部、30c…不揮発性メモリー、30c1…登録プリンター情報