(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101247
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】スラブ構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/38 20060101AFI20240722BHJP
E04B 5/32 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
E04B5/38 Z
E04B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005125
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田部井 正樹
(57)【要約】
【課題】間隔をあけて鉄筋を配置するための配筋作業の工数を低減することである。
【解決手段】スラブ構造は、板状で、構造部材に掛け渡されると共に、上面に一方向に延びる凹部が複数並んで形成され、上面にコンクリートが打設されるプレキャスト板と、凹部に夫々配置される複数の第一鉄筋と、プレキャスト板の上面で、一方向に対して交差する交差方向に並べられる複数の第二鉄筋とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状で、構造部材に掛け渡されると共に、上面に一方向に延びる凹部が複数並んで形成され、上面にコンクリートが打設されるプレキャスト板と、
前記凹部に夫々配置される複数の第一鉄筋と、
前記プレキャスト板の上面で、前記一方向に対して交差する交差方向に並べられる複数の第二鉄筋と、
を備えるスラブ構造。
【請求項2】
前記プレキャスト板の上面には、前記第二鉄筋を位置決めする位置決め部が形成されている、
請求項1に記載のスラブ構造。
【請求項3】
前記凹部の底面には、前記一方向に間隔をあけて突起が形成されている、
請求項1又は2に記載のスラブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予め鉄筋を埋め込んで成形されたプレキャストスラブと、プレキャストスラブの上面側に突出された鉄筋の一部を埋設するように打設されたコンクリートとから構成されてなるスラブ構造であって、プレキャストスラブは、上方側が開口された断面視凹状に形成され、この凹状部分の開口部に、閉鎖板が配設され、これら凹状部分及び閉鎖板によって区画された空間部が、各種配管・配線が配設可能な配設スペースとされている構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、コンクリートスラブを採用する場合には、一対の梁の上面にデッキプレートを載せ、デッキプレートの上方に配筋した後、コンクリートを打設するようになっている。
【0005】
ここで、配筋については、予め決められた間隔をあけて鉄筋を配置しなければならず、この作業に工数を要している。
【0006】
本開示の課題は、間隔をあけて鉄筋を配置するための配筋作業の工数を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係るスラブ構造は、板状で、構造部材に掛け渡されると共に、上面に一方向に延びる凹部が複数並んで形成され、上面にコンクリートが打設されるプレキャスト板と、前記凹部に夫々配置される複数の第一鉄筋と、前記プレキャスト板の上面で、前記一方向に対して交差する交差方向に並べられる複数の第二鉄筋と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記に係る構成によれば、プレキャスト板の上面に一方向に延びる凹部が複数並んで形成されており、第一鉄筋は、この凹部に夫々配置される。これにより、プレキャスト板の上面が平面状である場合と比して、間隔をあけて第一鉄筋を配置するための配筋作業の工数を低減することができる。
【0009】
第2態様に係るスラブ構造は、前記プレキャスト板の上面には、前記第二鉄筋を位置決めする位置決め部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記に係る構成によれば、プレキャスト板の上面に位置決め部が形成されていない場合と比して、間隔をあけて第二鉄筋を配置する配筋作業の工数を低減することができる。
【0011】
第3態様に係るスラブ構造は、前記凹部の底面には、前記一方向に間隔をあけて突起が形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記に係る構成によれば、プレキャスト板の上面に打設されたコンクリートは、突起によって第一鉄筋が凹部の底面と離隔することで、第一鉄筋の周囲に回り込む。これにより、突起が形成されていない場合と比して、打設されたコンクリートに第一鉄筋を効果的に定着させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、間隔をあけて鉄筋を配置するための配筋作業の工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るスラブ構造を示した斜視図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るスラブ構造を示した斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るスラブ構造を示した斜視図である。
【
図4】(A)(B)(C)(D)本開示の第1実施形態に係るスラブ構造を施工する工程を示した工程図である。
【
図5】本開示の第2実施形態に係るスラブ構造に用いられるプレキャスト板を示した斜視図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係るスラブ構造に用いられるプレキャスト板及び鉄筋を示した斜視図である。
【
図7】本開示の第3実施形態に係るスラブ構造に用いられるプレキャスト板及び鉄筋を示した断面図である。
【
図8】本開示の実施形態に係るスラブ構造に対する変形例に係るスラブ構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係るスラブ構造の一例について
図1~
図4に従って説明する。なお、各図に示す矢印Wは、水平方向であって、幅方向を示し、矢印Dは、水平方向であって、奥行き方向を示し、矢印Hは、鉛直方向であって、上下方向を示す。また、矢印W、矢印D及び矢印Hは、互いに直交する。
【0016】
(構成)
スラブ構造10は、
図1に示されるように、奥行き方向に延びると共に幅方向に離隔する一対のワンウェイキャピタル50に掛け渡されるプレキャスト板12と、幅方向に延びるように配置された主筋としての第一鉄筋20(
図2参照)と、奥行き方向に延びるように配置された配力筋としての第二鉄筋30(
図3参照)とを含んで構成されている。ワンウェイキャピタル50は、構造部材の一例であって、例えば、梁、フーチング等である。
【0017】
〔プレキャスト板12〕
プレキャスト板12は、
図1に示されるように、幅方向に離間する一対のワンウェイキャピタル50に掛け渡されており、上方から見て、幅方向に延びる矩形状とされている。そして、プレキャスト板12は、奥行き方向、及び幅方向に並べられている。また、幅方向に並べられているプレキャスト板12の間には隙間が設けられている。
【0018】
このプレキャスト板12の内部には、幅方向に延びると共に奥行方向に間隔をあけて配置された複数の鉄筋と、奥行き方向に延びると共に幅方向に間隔をあけて配置された鉄筋とが埋設されている(
図4(A)参照)。
【0019】
また、プレキャスト板12の上面には、複数の断面U字状のU溝12aが形成されている。具体的には、複数のU溝12aは、幅方向に延び、奥行き方向に間隔をあけて配置されている。U溝12aは、凹部の一例であって、幅方向は、一方向の一例である。
【0020】
この構成において、夫々のU溝12aに、第一鉄筋20を配置すると、
図2に示されるように、第一鉄筋20の両端部分が、U溝12aから夫々突出するようになっている。
【0021】
(施工工程)
次に、本実施形態に係るスラブ構造10を施工する施工工程について説明する。
【0022】
先ず、
図1、
図4(A)に示されるように、一対のワンウェイキャピタル50に掛け渡されるように、複数のプレキャスト板12を奥行き方向及び幅方向に並べて配置する。
【0023】
次に、
図2、
図4(B)に示されるように、プレキャスト板12のU溝12aに第一鉄筋20を夫々配置する。
【0024】
次に、
図3、
図4(C)に示されるように、プレキャスト板12の上面に第二鉄筋30を配置する。具体的には、奥行き方向に延びる複数の第二鉄筋30を、幅方向に間隔をあけて配置する。奥行き方向は、交差方向の一例である。
【0025】
次に、
図4(D)に示されるように、プレキャスト板12の上側にコンクリート38を打設して、床スラブ40とする。
【0026】
(まとめ)
以上説明したように、スラブ構造10においては、U溝12aが奥行き方向に間隔をあけてプレキャスト板12の上面に複数形成されており、このU溝12aに第一鉄筋20を夫々配置する。このため、プレキャスト板の上面が平面状である場合と比して、間隔をあけて第一鉄筋20を配置する配筋作業の工数を低減することができる。
【0027】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係るスラブ構造の一例について、
図5、
図6に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0028】
第2実施形態に係るスラブ構造60に用いられるプレキャスト板62の上面には、
図5に示されるように、半球状の複数の凸部62bが形成されている。具体的には、凸部62bは、プレキャスト板62の上面において奥行き方向の奥側の部分と、奥行き方向の手前側の部分とに形成されている。そして、奥行き方向の奥側の部分及び手前側の部分で、凸部62bは、間隔をあけて幅方向に並んで配置されている。凸部62bは、位置決め部の一例である。
【0029】
この構成において、
図6に示されるように、第二鉄筋30を、奥行き方向の奥側における一対の凸部62bの間に配置し、かつ、奥行き方向の手前側における一対の凸部62bの間に配置することで、第二鉄筋30が、幅方向に間隔をあけて配置される。このように、凸部62bは、第二鉄筋30の位置決めとして機能している。
【0030】
これにより、スラブ構造60では、プレキャスト板の上面に凸部が形成されていない場合と比して、間隔をあけて第二鉄筋30を配置する配筋作業の工数を低減することができる。
【0031】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係るスラブ構造の一例について、
図7に従って説明する。なお、第3実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0032】
第3実施形態に係るスラブ構造110のプレキャスト板112のU溝12aの底面には、
図7に示されるように、突起112bが、幅方向に間隔をあけて形成されている。そして、第一鉄筋20は、この複数の突起112bと接触して突起112bに支持されている。換言すれば、第一鉄筋20において突起112bと接触している部分以外の部分は、U溝12aの底面から離隔している。
【0033】
これにより、プレキャスト板112の上面に打設されたコンクリートは、第一鉄筋20の周囲に回り込むことで、突起が形成されていない場合と比して、打設されたコンクリートに第一鉄筋20を効果的に定着させることができる。
【0034】
また、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。特許請求の範囲、明細書および図面の記載から当業者が認識することができる技術的思想に反しない限り、変更、削除、付加、及び各実施形態の組み合わせが可能である。
【0035】
また、上記実施形態では、所謂一般スラブを例にとって説明したが、
図8に示されるように、マットスラブに本願の開示技術を用いてもよい。
【0036】
また、上記第2実施形態では、凸部62bを第二鉄筋30の位置決め部として用いたが、第二鉄筋30が位置決めされればよく、トラス鉄筋の埋設や凹部等であってもよい。
【0037】
(((1)))
板状で、構造部材に掛け渡されると共に、上面に一方向に延びる凹部が複数並んで形成され、上面にコンクリートが打設されるプレキャスト板と、
前記凹部に夫々配置される複数の第一鉄筋と、
前記プレキャスト板の上面で、前記一方向に対して交差する交差方向に並べられる複数の第二鉄筋と、
を備えるスラブ構造。
【0038】
(((2)))
前記プレキャスト板の上面には、前記第二鉄筋を位置決めする位置決め部が形成されている、
(((1)))に記載のスラブ構造。
【0039】
(((3)))
前記凹部の底面には、前記一方向に間隔をあけて突起が形成されている、
(((1)))又は(((2)))に記載のスラブ構造。
【符号の説明】
【0040】
10 スラブ構造
12 プレキャスト板
12a U溝(凹部の一例)
20 第一鉄筋
30 第二鉄筋
50 ワンウェイキャピタル(構造部材の一例)
60 スラブ構造
62 プレキャスト板
62b 凸部(位置決め部の一例)
110 スラブ構造
112 プレキャスト板