(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101264
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240722BHJP
【FI】
G05D1/02 W
G05D1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005148
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】土方 優明
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 功一
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG12
5H301HH10
5H301MM04
5H301MM09
(57)【要約】
【課題】全方向移動車輪のいずれかが故障した場合であっても、移動体を退避させることができる制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置2は、移動体1に配置された3個以上の全方向移動車輪を制御する制御装置であって、全方向移動車輪を制御して移動体1を移動させる制御部21を備え、制御部21は、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、全方向移動車輪に対する制御方法を、全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪の各々を制御して移動体1を移動させる第2制御方法に切り替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配置された3個以上の全方向移動車輪を制御する制御装置であって、
前記全方向移動車輪を制御して前記移動体を移動させる制御部を備え、
前記制御部は、前記全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、前記全方向移動車輪に対する制御方法を、前記全方向移動車輪の各々を制御して前記移動体を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪の各々を制御して前記移動体を移動させる第2制御方法に切り替える、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1制御方法から前記第2制御方法に切り替えた場合に、前記移動体を退避させる方向に前記移動体の向きを回転させてから、前記退避させる方向に前記移動体を直進させる、
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記移動体の基準点を原点とするxy直交座標系における以下の式(1)を用いて、前記退避させる方向φを算出する、
【数1】
(ここで、n:正常に動作する残りの全方向移動車輪の個数、i:1~nまでの整数、x
i:全方向移動車輪の各々の代表点のx座標、y
i:全方向移動車輪の各々の代表点のy座標、θ
i:全方向移動車輪の各々の回転面方向とx軸とのなす角度、とする)
請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
3個以上の全方向移動車輪を備える移動体において実行される方法であって、
前記全方向移動車輪を制御して前記移動体を移動させるステップを含み、
前記移動体を移動させるステップは、前記全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、前記全方向移動車輪に対する制御方法を、前記全方向移動車輪の各々を制御して前記移動体を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪の各々を制御して前記移動体を移動させる第2制御方法に切り替える、
制御方法。
【請求項5】
前記移動体を移動させるステップは、前記第1制御方法から前記第2制御方法に切り替えた場合に、前記移動体を退避させる方向に前記移動体の向きを回転させてから、前記退避させる方向に前記移動体を直進させる、
請求項4記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動車輪を制御する制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全方向に移動できる移動体として、複数の全方向移動車輪(例えば、オムニホイール)を備える移動体が開発されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の全方向移動車輪の各々を制御して移動体を走行させる場合、移動体が所望の方向に所望の速度で走行するように、全方向移動車輪を個別に制御することになる。このとき、例えば、いずれかの全方向移動車輪が故障すると、各車輪に対する制御量のバランスが崩れ、移動体を走行させることが難しくなる。この場合、例えば、移動できなくなった移動体によって作業場の通路が塞がれることや、移動体が稼働する領域に作業員が立ち入ることになり、生産性や安全性が低下する要因になる。
【0005】
そこで、本発明は、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合であっても、移動体を退避させることができる制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る制御装置は、移動体に配置された3個以上の全方向移動車輪を制御する制御装置であって、全方向移動車輪を制御して移動体を移動させる制御部を備え、制御部は、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、全方向移動車輪に対する制御方法を、全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第2制御方法に切り替える。
【0007】
この態様によれば、移動体に配置された3個以上の全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、全方向移動車輪に対する制御方法を、全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第2制御方法に切り替えることができる。これにより、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合であっても、正常に動作する残りの全方向移動車輪のみを制御することで移動体を退避させることが可能となる。
【0008】
上記態様において、制御部は、第1制御方法から第2制御方法に切り替えた場合に、移動体を退避させる方向に移動体の向きを回転させてから、退避させる方向に移動体を直進させてもよい。
【0009】
この態様によれば、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、退避場所に向けて移動体を直進走行させる簡易な走行制御を実行することで移動体を退避させることができる。
【0010】
上記態様において、制御部は、移動体の基準点を原点とするxy直交座標系における以下の式(1)を用いて、退避させる方向φを算出してもよい。
【数1】
(ここで、n:正常に動作する残りの全方向移動車輪の個数、i:1~nまでの整数、x
i:全方向移動車輪の各々の代表点のx座標、y
i:全方向移動車輪の各々の代表点のy座標、θ
i:全方向移動車輪の各々の回転面方向とx軸とのなす角度、とする)
【0011】
この態様によれば、全方向移動車輪のいずれかが故障したときに、式(1)により求まる方向φに移動体を直進走行させることが可能となる。
【0012】
本発明の他の態様に係る制御方法は、3個以上の全方向移動車輪を備える移動体において実行される方法であって、全方向移動車輪を制御して移動体を移動させるステップを含み、移動体を移動させるステップは、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、全方向移動車輪に対する制御方法を、全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第2制御方法に切り替える。
【0013】
この態様によれば、移動体に配置された3個以上の全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、全方向移動車輪に対する制御方法を、全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪の各々を制御して移動体を移動させる第2制御方法に切り替えることができる。これにより、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合であっても、正常に動作する残りの全方向移動車輪のみを制御することで移動体を退避させることが可能となる。
【0014】
上記態様において、移動体を移動させるステップは、第1制御方法から第2制御方法に切り替えた場合に、移動体を退避させる方向に移動体の向きを回転させてから、退避させる方向に移動体を直進させてもよい。
【0015】
この態様によれば、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合に、退避場所に向けて移動体を直進走行させる簡易な走行制御を実行することで移動体を退避させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合であっても、移動体を退避させることができる制御装置及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る移動体の物理的な構成を例示する図である。
【
図2】実施形態に係る移動体が備える制御装置の機能的な構成を例示する図である。
【
図3】各全方向移動車輪の目標角速度を算出する方法の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、図面は模式的なものであるため、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは相違する。
【0019】
図1は、実施形態に係る移動体1の物理的な構成を例示する図である。
図1の構成は、例示的に、移動体1が台車である場合の構成である。移動体1は、例えば、台車の荷台3と、荷台3の底面側に配置された4個の全方向移動車輪11a、11b、11c、11dと、全方向移動車輪11a、11b、11c、11dの中心点を通る回転軸13a、13b、13c、13dをそれぞれ駆動する4個のモータ12a、12b、12c、12dと、モータ12a、12b、12c、12dを制御する制御装置2とを備える。
【0020】
以下において、全方向移動車輪11a、11b、11c、11d、モータ12a、12b、12c、12d、及び回転軸13a、13b、13c、13dのそれぞれを特に区別する必要がない場合には、全方向移動車輪11、モータ12、及び回転軸13と呼ぶことにする。
【0021】
なお、移動体1は、台車であることに限定されず、全方向移動車輪11を用いて移動するものであれば、どのようなものであってもよい。例示的に、移動体1は、搬送ロボットや、監視ロボット、エンターテイメントロボット、掃除ロボットなどを含む各種のロボットであってよい。
【0022】
全方向移動車輪11として、例えば、オムニホイールを用いることができる。本実施形態では、例示的に、全方向移動車輪11がオムニホイールである場合について説明する。
【0023】
各全方向移動車輪11は、任意の位置に任意の角度で配置することができるが、少なくとも2個の全方向移動車輪11の推力方向が異なるように配置することが好ましい。これにより、複数の全方向移動車輪11を非対称な状態で配置することができるようになり、例えば、農業機械などのように、非対称な構造に対しても有効に車輪を配置することが可能となる。
【0024】
推力方向は、全方向移動車輪11の車輪本体が回転することにより推進力が生じる方向である。換言すると、推力方向は、全方向移動車輪11の回転軸13に直交する方向であり、さらに、回転軸13と直交する全方向移動車輪11の回転によって形成される面及びその面に平行な全方向移動車輪11内の任意の面の方向(以下、「回転面方向」ともいう。)でもある。
【0025】
複数の全方向移動車輪11の推力方向が異なる配置として、例えば、2個の全方向移動車輪11をハの字形に配置することが挙げられる。他方、2個の全方向移動車輪11を平行に配置した場合には、2個の全方向移動車輪11の推力方向が同じ方向になる。
【0026】
各モータ12は、制御装置2により制御され、対応する全方向移動車輪11をそれぞれ制御する。モータ12がエンコーダを有してもよいし、モータ12とは別個にエンコーダを備えてもよい。モータ12又は全方向移動車輪11の角度や回転数を測定して、制御装置2に提供できれば、どのような構成であってもよい。
【0027】
図2は、移動体1が備える制御装置2の機能的な構成を例示する図である。制御装置2は、モータ12を制御するモジュールであり、例えば、制御部21及び記憶部22を有する。
【0028】
制御部21は、物理的にはプロセッサであり、プロセッサが記憶部22に記憶されているプログラムを実行することで、例えば、モータ12を制御する。制御部21が各モータ12を制御することで、各全方向移動車輪11が駆動され、移動体1の動きが制御される。記憶部22は、物理的にはメモリであり、モータ12を制御するためのプログラムやデータ等を記憶する。以下において、制御部21の各種機能について説明する。
【0029】
制御部21は、移動体1の目標速度及び目標角速度に基づいて、各全方向移動車輪11の目標角速度をそれぞれ算出する。そして、制御部21は、算出した各目標角速度で回転するように、対応する全方向移動車輪11を駆動するモータ12をそれぞれ制御することで、移動体1の走行を制御する。
【0030】
移動体1の目標速度及び目標角速度として、例えば、移動体1の指令速度及び指令角速度を用いることができる。移動体1の角速度として、例えば、移動体1の旋回による角速度を用いることができる。
【0031】
図3を参照して、各全方向移動車輪11の目標角速度を算出する方法の一例について説明する。
【0032】
図3は、
図1と同様に、4個の全方向移動車輪11a、11b、11c、11dが移動体1に配置されている状態を例示する。同図のxy直交座標系は、移動体1の重心を原点として設けられた座標系である。なお、xy直交座標系の原点は、重心であることに限定されず、各全方向移動車輪11の速度モーメントを導出可能な基準点であればよい。
【0033】
図3では、例示的に、x軸の正の方向を移動体1の前進方向とする。また、x軸の正の方向における移動体1の速度成分をV
xとし、y軸の正の方向における移動体1の速度成分をV
yとする。さらに、xy直交座標系の原点を中心とする旋回の角速度をΩとする。この角速度Ωは、反時計回りを正とする。
【0034】
図3の各全方向移動車輪11の半径をrとし、各全方向移動車輪11の角速度をω
n(
図3では、n=1,2,3,4)とし、全方向移動車輪11の回転面方向の速度成分をV
nとする。この場合、V
n=r×ω
nとなる。
【0035】
また、各全方向移動車輪11の代表点Pnの座標を(xn,yn)とし、x軸と各全方向移動車輪11の回転面方向とのなす角度をθnとする。全方向移動車輪11の代表点Pnとして、例えば、全方向移動車輪11の中心や重心などを用いることができる。
【0036】
この場合、制御部21は、移動体1の目標速度V
x、V
y及び目標角速度Ωに基づいて、各全方向移動車輪11の目標角速度ω
nを、例えば、以下の式(2)を用いて算出することができる。
【数2】
【0037】
なお、
図3では、全方向移動車輪11が4個である場合を例示しているが、移動体1に配置する全方向移動車輪11は、3個以上であればよい。つまり、式(2)のnは3以上の整数であればよい。
【0038】
ここで、各全方向移動車輪11に生ずる推進力は、実際には車輪の滑りなどの影響を受けるものの、各全方向移動車輪11の対地速度に比例すると仮定し、各全方向移動車輪11の対地速度ベクトルが移動体1の旋回中心に与える速度モーメントがつり合っている状態を考えると、以下の式(3)及び式(4)を導出できる。
【数3】
【数4】
【0039】
式(3)及び式(4)において、n(nは3以上の整数、
図3ではnが4である)個の全方向移動車輪11の各々の代表点P
nのx座標をx
i(i:1~nまでの整数)、y座標をy
iとし、n個の全方向移動車輪11の各々の回転面方向の速度ベクトルをV
iとし、各々の回転面方向とX軸とのなす角度をθ
iとし、移動体1の旋回中心(xy直交座標系の原点)から速度ベクトルV
iの各々により形成される直線に引いた垂線の長さをl'
iとし、移動体1の速度のx方向成分をV
x、移動体1の速度のy方向成分をV
yとする。
【0040】
式(3)及び式(4)は、移動体1の移動により全方向移動車輪11の各々に生ずる速度ベクトルViと、その速度ベクトルViを基準にして求まる移動体1の旋回中心までの距離l'iとの積により表される速度モーメントの総和がゼロになることを表している。
【0041】
したがって、式(3)及び式(4)を満たすように、各全方向移動車輪11を移動体1に配置することで、各全方向移動車輪11の対地速度ベクトルが移動体1の旋回中心に与える速度モーメントのつり合いを保つことができるようになり、移動体1の制御性及び直進性を担保することが可能となる。
【0042】
式(3)及び式(4)を満たすように、各全方向移動車輪11を移動体1に配置するという発想は、例えば、以下の制御方法に利用することができる。その制御方法は、移動体1に配置したいずれかの全方向移動車輪11が故障などにより動作しなくなった場合に、正常に動作する残りの全方向移動車輪11を制御して、移動体1を退避させる方法である。この制御方法について、以下に具体的に説明する。
【0043】
制御部21は、全ての全方向移動車輪11が正常に動作する場合には、上述した式(2)に基づいて、各全方向移動車輪11を駆動するモータ12をそれぞれ制御して、移動体1を移動させる(第1制御方法)。
【0044】
他方、制御部21は、全方向移動車輪11のいずれかが故障した場合には、正常に動作する残りの全方向移動車輪11を駆動するモータ12をそれぞれ制御して、移動体1を移動させる(第2制御方法)。ここで、正常に動作する残りの全方向移動車輪11は、2個以上であることが好ましい。
【0045】
全方向移動車輪11のいずれかが故障すると、上述した式(2)による制御則を満たさなくなるため、移動体1を第1制御方法で制御することができなくなる。この場合、移動できなくなった移動体1によって作業場の通路が塞がれることや、移動体1が稼働する領域に作業員が立ち入ることになるという問題が発生する。そこで、全方向移動車輪11のいずれかが故障した場合には、第1制御方法から第2制御方法に切り替えて移動体1を安全な場所まで退避させることにした。
【0046】
ここで、上述した式(3)及び式(4)を満たす方向に、移動体1は直進することができる。したがって、全方向移動車輪11のいずれかが故障した場合であっても、正常に動作する残りの全方向移動車輪11のみを駆動させて、式(3)及び式(4)を満たす方向が存在すれば、その方向に移動体1を直進させることが可能となる。
【0047】
このような原理を利用して、正常に動作する残りの全方向移動車輪11のみを駆動させて、式(3)及び式(4)を満たす方向X’が存在すると仮定し、その方向X’とX軸方向とのなす角度をφとすると、以下の式(5)を立てることができる。
【数5】
【0048】
式(5)において、正常に動作する残りの全方向移動車輪の個数をnとし、1~nまでの整数をiとし、全方向移動車輪11iの各々の代表点Piのx座標をxi、y座標をyiとし、全方向移動車輪11iの各々の回転面方向とx軸とのなす角度をθiとする。
【0049】
式(5)をφについて解くと、以下の式(6)のように表される。
【数6】
【0050】
移動体1は、φの方向に直進することができるため、φの方向に直進走行する移動体1として制御することで、移動体1を安全な場所まで退避させることが可能となる。
【0051】
移動体1をφの方向に直進させる際に、移動体1の向きをφの方向に回転させてから直進させることが好ましい。これにより、移動体1を回転させた後に、退避場所に向けて移動体1を直進走行させる簡易な走行制御を実行することで移動体1を移動させることができる。
【0052】
上述したように、実施形態に係る制御装置2によれば、移動体1に配置された全方向移動車輪11を制御して移動体1を移動させ、全方向移動車輪11のいずれかが故障した場合に、全方向移動車輪11に対する制御方法を、全方向移動車輪11の各々を制御して移動体1を移動させる第1制御方法から、正常に動作する残りの全方向移動車輪11の各々を制御して移動体1を移動させる第2制御方法に切り替えることが可能となる。
【0053】
これにより、全方向移動車輪11のいずれかが故障した場合であっても、正常に動作する残りの全方向移動車輪11のみを制御することで移動体1を安全な場所に移動させることが可能となる。
【0054】
したがって、全方向移動車輪のいずれかが故障した場合であっても、移動体を退避させることが可能となる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【0056】
例えば、本発明は、複数の全方向移動車輪11のうち少なくとも2個の全方向移動車輪11の推力方向が異なるように配置(非対称な状態で配置)されている場合に限らず、複数の全方向移動車輪11が対称な状態で配置されている場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…移動体、2…制御装置、3…荷台、11…全方向移動車輪、12…モータ、13…回転軸、21…制御部、22…記憶部