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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101272
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】光度計
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20240722BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01N21/61
G01N21/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005158
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520167645
【氏名又は名称】東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】松田 淳
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA05
2G057DA03
2G057DB02
2G057DB05
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE11
2G059GG08
2G059HH01
2G059JJ03
2G059JJ13
2G059JJ24
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる光度計を提供する。
【解決手段】流体である試料Sが流れる試料流路2cを有する試料セル2と、試料流路2c内に位置する光源3と、試料流路2c内に位置する第1受光センサ5及び第2受光センサ7とを有し、試料流路2c内の試料Sに光源3から照射した光を第1受光センサ5及び第2受光センサ7によって検出し、試料Sを分析する光度計1である。光度計1は、試料流路2c内に取り外し可能に設けられる少なくとも一つの板状部材から構成される反射鏡14、17を有している。反射鏡14、17は、試料流路2c内において、試料流路2cの壁面によって反射面14a、17aを内方に向けた筒状に保持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体である試料が流れる試料流路を有する試料セルと、前記試料流路内に位置する光源と、前記試料流路内に位置するセンサとを有し、前記試料流路内の前記試料に前記光源から照射した光を前記センサによって検出し、前記試料を分析する光度計であって、
前記試料流路内に取り外し可能に設けられる少なくとも一つの板状部材から構成される反射鏡を有し、
前記反射鏡は、
前記試料流路内において、前記試料流路の壁面によって反射面を内方に向けた筒状に保持される、
光度計。
【請求項2】
請求項1に記載の光度計であって、
反射鏡は、
前記試料流路内において、筒状に弾性変形可能に構成される、
光度計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光度計であって、
前記反射鏡は、
表面に金属が蒸着された樹脂製のシートである、
光度計。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光度計であって、
貫通孔を有し、前記貫通孔が前記試料流路の延伸方向に沿って延びるように前記試料流路内に取り付け可能に構成される中間部材を有し、
前記試料セルは、
前記試料流路内における前記中間部材の取り付けによって、前記貫通孔が前記試料流路として構成される、
光度計。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光度計であって、
前記反射鏡は、
分析する前記試料の種類に対応した反射面を有する反射鏡に交換可能に構成される、
光度計。
【請求項6】
請求項1に記載の光度計であって、
前記反射鏡の反射面状態の確認時期を報知する報知手段を有し、
前記センサによる光量の検出値に基づいて、前記報知手段によって前記反射面の汚れ具合の確認時期を報知する、
光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
原子、分子などの物質が特定の波長の光を吸収、散乱または蛍光する性質を利用して試料を分析する光度計が知られている。前記光度計は、分析する試料の光学的性質に適した波長を有する紫外線、赤外線、可視光などが用いられる。
【0003】
例えば、赤外光を用いた光度計である赤外吸光光度計は、赤外光を試料に入射し、前記試料を通過した赤外光の強度を測定する。前記赤外吸光光度計は、前記試料に入射した赤外光と前記試料を通過した赤外光との差分に基づいて、前記試料に含まれている様々な物質の濃度等を定量的に測定することができる。例えば特許文献1の如くである。
【0004】
特許文献1に記載の非分散型赤外ガスセンサは、赤外線が試料の分子によって吸収されることを利用して物質の濃度を測定する赤外吸光光度計である。前記非分散型赤外ガスセンサは、円筒状の鏡筒、前記鏡筒の両端に互いに対向して配置された赤外線を放射する光源及び赤外線を検出する赤外線検出素子を有する。前記鏡筒の内周面は、赤外線を反射する反射面に構成されている。前記非分散型赤外ガスセンサは、前記鏡筒内で前記光源から赤外線検出素子に向かって照射された赤外線が前記鏡筒内で屈曲を繰り返しつつ試料中を通過する際、前記試料によって特定波長の赤外線が吸収されることを利用し、前記試料に含まれる特定の物質の濃度を測定する。
【0005】
このように前記鏡筒を有する前記非分散型赤外ガスセンサは、例えば、呼気のような多量の水分を含むガスを測定する際に前記鏡筒の内周面に結露が生じて反射率が低下すると、前記赤外線検出素子の検出出力が低下して測定が不正確になる。よって、前記非分散型赤外ガスセンサは、前記内周面上の結露を防止するためのヒータを内蔵する断熱ジャケットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-135258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記非分散型赤外ガスセンサが有する鏡筒は、前記内周面上の結露による反射率の低下だけでなく、前記鏡筒内を通過する試料に含まれる物質が前記鏡筒の内周面に付着することによって反射率が低下する。よって、前記非分散型赤外ガスセンサは、前記赤外線検出素子の検出出力が低下した場合、前記鏡筒の洗浄によって前記内周面に付着した物質を除去している。しかしながら、前記鏡筒の内周面の汚れ、傷、腐食、酸化等の把握は、前記鏡筒の内径が小さくなるほど難しくなり、前記鏡筒の全長が長くなるほど難しくなる。よって、前記内周面の状態確認が難しい前記鏡筒を有する光度計は、前記鏡筒の内周面の汚れ、前記内周面の劣化等の見落とし等によって反射率が低下する場合があった。
【0008】
本発明は、筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる光度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、筒状の反射鏡を有する光度計において、筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる光度計の構成について検討した。鋭意検討の結果、本発明者は、以下のような構成に想到した。
【0010】
本発明の一実施形態に係る光度計は、試料が流れる試料流路を有する試料セルと、前記試料流路内に位置する光源と、前記試料流路内に位置するセンサとを有する。前記光度計は、前記試料流路内の試料に前記光源から照射した光を前記センサによって検出し、前記前記試料を分析する。前記光度計は、前記試料流路内に取り外し可能に設けられる少なくとも一つの板状部材から構成される反射鏡を有する。前記反射鏡は、前記試料流路内において、前記試料流路の壁面によって反射面を内方に向けた筒状に保持される。
【0011】
上述の構成では、前記光度計は、前記試料流路内から前記反射鏡を取り外し可能に構成されている。前記反射鏡は、前記試料流路の壁面を覆うように前記反射面を内方に向けた状態で前記試料流路内に位置している。板状部材である前記反射鏡は、前記試料流路内に配置された場合、前記試料セルによって前記試料流路の壁面に沿った閉断面を有する筒状に保持される。また、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外されることで、前記試料流路の壁面に沿った閉断面を有する円筒状に保持されない。つまり、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された場合、開断面を有する板状部材としての形状を有している。よって、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された際に、前記反射面の汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、筒状の前記反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0012】
他の観点によれば、本発明の光度計は、以下の構成を含むことが好ましい。反射鏡は、前記試料流路内において、筒状に弾性変形可能に構成される。
【0013】
上述の構成では、前記反射鏡は、前記試料流路内に配置された場合、前記試料セルによって前記試料流路の内壁に沿った筒状の変形形状に弾性変形される。また、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された場合、弾性変形前の板状部材としての基本形状に復元する。よって、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された際、前記反射面の汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、円筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0014】
他の観点によれば、本発明の光度計は、以下の構成を含むことが好ましい。前記反射鏡は、表面に金属が蒸着された樹脂製シートである。
【0015】
上述の構成では、前記反射鏡は、容易に弾性変形可能な樹脂製のシートによって構成されている。前記反射鏡は、前記試料流路内に配置された場合、前記試料流路の壁面に沿って前記金属が蒸着された反射面を内方に向けた筒状に湾曲される。また、前記試料流路内において筒状に湾曲された前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された場合、湾曲されていない平板状に戻る。よって、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された際に、平板状の状態で前記反射面の汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、円筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0016】
他の観点によれば、本発明の光度計は、以下の構成を含むことが好ましい。前記光度計は、貫通孔を有し、前記貫通孔が前記試料流路の延伸方向に沿って延びるように前記試料流路内に取り付け可能に構成される中間部材を有する。前記試料セルは、前記試料流路内における前記中間部材の取り付けによって、前記貫通孔が前記試料流路として構成される。
【0017】
上述の構成では、前記光度計は、前記中間部材を使用することによって前記中間部材の貫通孔を前記試料流路として機能させる。よって、前記光度計は、前記中間部材によって前記試料流路の形状を変更可能である。また、前記反射鏡は、前記中間部材によって形状が変更された前記試料流路の壁面に沿った筒状に保持される。よって、前記光度計は、前記中間部材によって前記試料流路の形状が変更されても前記反射面の汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、円筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0018】
他の観点によれば、本発明の光度計は、以下の構成を含むことが好ましい。前記反射鏡は、分析する試料の種類に対応した反射面を有する反射鏡に交換可能に構成される。
【0019】
上述の構成では、前記光度計は、分析する試料の種類、分析内容、光源等に適した反射鏡を選択して前記試料流路内に取り付け可能である。また、前記光度計は、分析する試料によって反射面の汚れ具合が異なる場合でも、分析する試料に応じたタイミング、方法で容易に前記反射面の汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を確認することができる。これにより、円筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0020】
他の観点によれば、本発明の光度計は、以下の構成を含むことが好ましい。前記反射鏡は、前記反射面が凹曲面になるように湾曲した複数の板状部材から構成され、前記試料流路内において、筒状に組み合わされた状態で保持される。
【0021】
上述の構成では、前記反射鏡を構成する複数の板状部材は、前記試料流路内に配置された場合、前記試料流路の壁面によって前記反射面を内方に向けた筒状の反射鏡に組み合わせられる。また、前記試料流路内において前記複数の板状部材が組み合わされた筒状の反射鏡は、前記試料流路から取り外された場合、複数の板状部材に分離される。よって、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された際に、複数の板状部材の状態で前記反射面の汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、円筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0022】
他の観点によれば、本発明の光度計は、以下の構成を含むことが好ましい。前記反射鏡の反射面状態の確認時期を報知する報知手段を有する。前記報知手段は、前記センサによる光量の検出値に基づいて、前記報知手段によって前記反射面の汚れ具合の確認時期を報知する。
【0023】
上述の構成では、前記光度計は、前記反射鏡の汚れによる反射率の低下により、前記センサが検出する光の検出レベルが低下する。よって、前記光度計は、前記センサの検出レベルが閾値を下回ると前記反射鏡が汚れている可能性が高いとして、前記反射鏡の確認を使用者に促す。これにより、円筒状の反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0024】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0025】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0026】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な電気的接続または結合を含むことができる。
【0027】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0028】
[光度計]
本明細書において、光度計とは、試料に照射した光の反射、吸収の状態から試料を分析する装置を意味する。光度計は、吸光光度計と分光度計を含む。吸光光度計は、試料に照射された光の量と通過した光の量とから試料が吸収した光(吸光度)から試料の組成を分析する。分光度計は、例えば回折格子によって単色光に分光した光を試料に照射させ、試料を透過した光の強度から試料の組成を分析する。
【0029】
[板状部材]
本明細書において、板状部材とは、板材及び板材が屈曲、湾曲した部材を意味する。また、板状部材は、開断面のみを有する部材である。つまり、板状部材は、閉断面を有さない。板状部材は、例えば、半円状の開断面を有する部材を含む。板状部材は、閉断面を有する形状と閉断面を有さない形状とに弾性変形可能な部材を含む。
【0030】
[筒状]
本明細書において、筒状とは、内部が中空であって一方向に延びた棒状の形状を意味する。筒状の部材は、閉断面を構成している。筒状には、延伸方向における任意の位置で異なる閉断面を有する形状を含む。筒状には、例えば、円筒状、角柱状、円錐台状を含む。筒状の部材の両端部は、開口していても閉塞していてもよい。
【0031】
[反射面]
本明細書において、反射面とは、光源から照射された光が所定の反射率で反射する面を意味する。反射面は、光が入斜された角度と等しい角度で反射する正反射面に加えて、光が様々な方向に反射する乱反射面をも含む。よて、反射面は、光を所定の反射率で反射する面を含む。なお、反射面は、光をほぼ100パーセント反射する鏡面がより好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記反射鏡は、前記試料流路から取り外された際に、前記反射面の汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、筒状の前記反射鏡の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る光度計の全体構成を示す断面模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る光度計の試料流路に反射鏡を取り付ける工程を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に係る光度計の試料流路から反射鏡を取り外す工程を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態1に係る光度計の変形例において全体構成を示す断面模式図である。
図5図5は、本発明の実施形態2に係る光度計の全体構成を示す断面模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態3に係る光度計の試料流路に反射鏡を取り付ける工程を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態4に係る光度計の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[実施形態1]
図1から図3を用いて、本発明に係る光度計の実施形態1である光度計1について説明する。図1は、本発明の実施形態1における光度計1の全体構成を示す模式図である。図2は、光度計1の試料流路2cに反射鏡14を取り付ける工程を示す模式図である。図3は、光度計1の試料流路2cから反射鏡14を取り外す工程を示す模式図である。
【0035】
図1に示すように、光度計1は、非分散型赤外線方式の赤外吸光光度計である。光度計1は、流体である試料が吸収した赤外光Liの量に基づいて試料Sに含まれる物質の種類、濃度等を分析する。光度計1は、試料セル2と、光源3と、光源カバー4と、第1受光センサ5と、第1光学フィルタ6と、第2受光センサ7と、第2光学フィルタ8と、センサカバー10と、光学チョッパ11と、反射鏡14と、制御装置15とを有する。
【0036】
試料セル2は、分析対象である試料Sを保持する筐体である。試料セル2は、試料Sが供給される試料供給口2a、試料Sが排出される試料排出口2b及び試料Sが通過する試料流路2cを有する。試料供給口2aは、試料セル2の一方の端部に位置している。試料供給口2aには、図示しない開閉弁が位置している。試料排出口2bは、試料セル2の他方の端部に位置している。試料排出口2bには、図示しない開閉弁が位置している。試料流路2cは、試料セル2の一端部から他端部に向かって延びる筒状の空間である。本実施形態において、試料流路2cは、円筒状に構成されている。試料流路2cの一端部には、試料供給口2aが接続されている。試料流路2cの他端部には、試料排出口2bが接続されている。試料供給口2aから供給された試料Sは、試料流路2cの一方の端部から他方の端部に流れて試料排出口2bから排出される。また、試料Sは、試料供給口2a及び試料排出口2bの開閉弁が閉状態の場合、試料流路2c内で保持される。
【0037】
光源3は、試料Sに光を照射する。光源3は、可視光から赤外光Liまでの波長域の光を照射するフェラメント光源である。光源3は、流体通路内の一端部に位置している。光源3は、流体通路の一端部から他端部に向かって赤外光Liを含む光を照射する。
【0038】
光源カバー4は、光源3を試料Sから隔離する。光源カバー4は、赤外光Liを通過させる材質から構成されている。光源カバー4は、例えば、ガラスから構成されている。光源カバー4は、光源3の照射側に位置している。つまり、光源カバー4は、光源3と試料流路2cとの間に位置している。光源カバー4は、光源3と試料Sが通過する空間である試料流路2cとを区切っている。これにより、光源3は、試料流路2c内の試料Sに接触しない。
【0039】
第1受光センサ5は、赤外光Liを検出するセンサである。第1受光センサ5は、試料流路2c内の他端部に位置している。つまり、第1受光センサ5は、光源3と対向するように位置している。第1受光センサ5は、例えば、インジウムヒ素アンモチンを用いたフォトダイオードである。第1受光センサ5は、所定の第1波長域の赤外光Liのみを透過させるバンドパスフィルタとして機能する第1光学フィルタ6を有している。第1受光センサ5は、プリアンプ9に電気的に接続されている。第1受光センサ5は、受光した赤外光Liの光量に比例した電圧をプリアンプ9に対して出力する。プリアンプ9は、第1受光センサ5から入力された電圧値からノイズを除去した電圧値を制御装置15に対して出力する。
【0040】
第2受光センサ7は、赤外光Liを検出するセンサである。第2受光センサ7は、試料流路2c内の他端部に位置している。つまり、第2受光センサ7は、光源3と対向するように位置している。第2受光センサ7は、例えば、インジウムヒ素アンモチンを用いたフォトダイオードである。第2受光センサ7は、第1波長域と異なる波長域である第2波長域の赤外光Liのみを透過させるバンドパスフィルタとして機能する第2光学フィルタ8を有している。よって、第2受光センサ7は、第1受光センサ5と異なる波長域の赤外光Liを受光する。第2受光センサ7は、プリアンプ9に電気的に接続されている。第2受光センサ7は、受光した赤外光Liの光量に比例した電圧をプリアンプ9に対して出力する。プリアンプ9は、第2受光センサ7から入力された電圧値からノイズを除去した電圧値を制御装置15に対して出力する。
【0041】
センサカバー10は、第1受光センサ5及び第2受光センサ7を試料Sから保護する。センサカバー10は、赤外光Liを通過させる材質から構成されている。センサカバー10は、例えばガラスから構成されている。センサカバー10は、第1受光センサ5及び第2受光センサ7の受光部側に位置している。つまり、センサカバー10は、試料セル2において、第1受光センサ5及び第2受光センサ7と試料流路2cとの間に位置している。センサカバー10は、第1受光センサ5及び第2受光センサ7と試料Sが通過する空間とを区切っている。これにより、第1受光センサ5及び第2受光センサ7は、試料流路2c内の試料Sに接触しない。
【0042】
光学チョッパ11は、光源3から照射された赤外光Liを所定の周期のパルス光に変換する装置である。光学チョッパ11は、円板状のブレード12と、ブレード12を回転させるモータ13と、図示しないモータードライバとを有する。ブレード12は、少なくとも一つのスリットを有している。ブレード12の一部は、試料流路2c内であって、光源3と第1受光センサ5及び第2受光センサ7との間に位置している。また、ブレード12は、試料流路2cの延伸方向に対して側面が垂直になるように位置している。ブレード12は、試料流路2cの延伸方向に対して垂直な方向に回転可能に構成されている。ブレード12は、モータ13によって回転されることで、スリットが試料流路2c内を通過する。光学チョッパ11は、スリットが試料流路2c内に位置している場合、光源3からの赤外光Liを通過させる。また、光学チョッパ11は、スリットが試料流路2c内に位置していない場合、光源3からの赤外光Liを遮光する。これにより、光学チョッパ11は、光源3が照射する赤外光Liをブレード12の回転速度に応じたパルス光に変換可能である。
【0043】
反射鏡14は、光源3から照射された赤外光Liを反射させる。反射鏡14は、反射面14aを有する板状部材から構成されている。反射鏡14は、試料流路2c内に取り外し可能に設けられる。反射鏡14は、試料流路2c内において反射面14aを内方に向けた筒状に構成されている。反射鏡14は、光学チョッパ11のブレード12と第1受光センサ5及び第2受光センサ7との間に位置する。つまり、反射鏡14は、光学チョッパ11によってパルス光に変換された赤外光Liを反射面14aによって反射させる。これにより、反射鏡14は、赤外光Liが第1受光センサ5及び第2受光センサ7によって受光されるまでの試料流路2c内の経路を長くすることができる。
【0044】
制御装置15は、光源3、プリアンプ9、光学チョッパ11を制御する。制御装置15は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続されている。または、制御装置15は、ワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置15は、光源3、第1受光センサ5、第2受光センサ7、プリアンプ9、光学チョッパ11を制御するために種々のプログラムおよびデータが格納されている。
【0045】
制御装置15は、光源3、プリアンプ9、光学チョッパ11に電気的に接続されている。制御装置15は、赤外光Liを照射させる制御信号を光源3に対して送信可能である。制御装置15は、光学チョッパ11のブレード12を回転させる制御信号をモータ13に対して送信可能である。制御装置15は設定可能なサンプリング間隔に従いプリアンプ9の出力信号をサンプリングし、振幅の算出、時間平均の算出等の前処理をして第1受光センサ5が検出した第1波長域の赤外光Liの光量と第2受光センサ7が検出した第2波長領域の赤外光Liの光量の評価値を算出する。制御装置15は、第1受光センサ5が検出した第1波長域の赤外光Liの光量と第2受光センサ7が検出した第2波長域の赤外光Liの光量との差分を算出する。制御装置15は算出したデータを後処理のために保持することができる。
【0046】
このように構成される光度計1は、例えば試料Sに含まれる二酸化酸素量を測定する場合、二酸化炭素が吸収する波長域2350cm-1(カイザー)±100cm-1(カイザー)の赤外光Liを通過させる第1光学フィルタ6と二酸化炭素が吸収しない波長域2600cm-1(カイザー)±100cm-1(カイザー)の赤外光Liを通過させる第2光学フィルタ8を有する。光度計1には、図示しない前処理装置によって測定対象である二酸化炭素の全てを窒素ガスに混合した試料Sが試料供給口2aから供給される。光度計1の制御装置15は、試料セル2の試料流路2c内に試料Sが充填された状態において、光学チョッパ11を一定の速度で連続回転させる。光源3から照射された光は、光学チョッパ11によってパルス光に変換される。光度計1は、試料Sが充填された試料流路2c内を通過したパルス光を第1受光センサ5及び第2受光センサ7によって検出する。第1受光センサ5及び第2受光センサ7が検出するパルス光は反射鏡14によって反射されたパルス光を含む。
【0047】
制御装置15は、第1受光センサ5が検出した波長域2350cm-1±100cm-1の赤外光Liの光量と、第2受光センサ7が検出した波長域2600cm-1±100cm-1の赤外光Liの光量との差分を算出する。波長域2350cm-1±100cm-1の赤外光Liは、一部が二酸化炭素に吸収されている。一方、波長域2600cm-1±100cm-1の赤外光Liは、二酸化炭素に吸収されない。つまり、波長域2350cm-1±100cm-1の赤外光Liの光量と波長域2600cm-1±100cm-1の赤外光Liと光量との差分から二酸化炭素が吸収した光量が算出可能である。したがって、光度計1は、第1受光センサ5の検出値と第2受光センサ7の検出値との差分から試料Sの二酸化炭素の濃度を測定することができる。
【0048】
制御装置15は、試料流路2c内の試料Sの濃度を単位時間毎に測定する。制御装置15は、試料流路2c内に窒素ガスが充填されている状態から二酸化炭素が混合された試料Sが供給され、二酸化炭素が混合された試料Sが全て試料流路2c内から排出されるまで測定を継続する。制御装置15は、全ての単位時間毎の測定結果を積算処理することで、試料流路2cを通過した全ての二酸化炭素量を算出することができる。
【0049】
次に、反射鏡14の配置について詳細に説明する。
【0050】
図2及び図3に示すように、反射鏡14は、板状部材である樹脂製のシートによって構成されている。反射鏡14は、例えば、50μmから100μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレート(ペット)製のシートである。前記シートは、一方の表面に金属が蒸着され、光を反射可能な反射面14aとして構成されている。つまり、反射鏡14は、一方の表面に反射面14aが構成されている樹脂製のシートである。反射鏡14は、外力が加えられない場合、平板状の形態である基本形状を維持する。また、反射鏡14は、外力が加えられることによって、例えば筒状の変形形状に弾性変形される。このように、反射鏡14は、開断面を有する平板状の基本形状から閉断面を有する筒状等の変形形状に弾性変形可能である。
【0051】
反射鏡14を試料流路2c内に配置する場合、反射鏡14は、平板状の基本形状から試料流路2cの内径よりも小さい外径であって反射面14aを径方向の内方に向けた円筒状の変形形状に弾性変形される。円筒状に弾性変形された反射鏡14は、試料流路2cの端部から試料流路2c内に延伸方向に挿入される。反射鏡14は、外周面が試料流路2cの壁面に接触した状態で試料流路2c内に配置される。本実施形態において、反射鏡14は、試料流路2c内において、円筒状の試料流路2cの壁面に沿って円筒状に保持される。
【0052】
円筒状に弾性変形された反射鏡14は、径方向外方に広がろうとする反発力が生じる。反射鏡14には、反発力によって反射鏡14の外周面と試料流路2cの壁面との間に摩擦力が生じる。よって、反射鏡14は、試料流路2c内において、摩擦力によって壁面に沿って閉断面を有する円筒状の変形形状に保持される。つまり、反射鏡14は、試料流路2cの形状に基づいた形状で試料流路2c内に取り付けられる。反射鏡14の内部には、試料セル2の試料供給口2aから供給される試料Sが供給される。
【0053】
反射鏡14を試料流路2c内から取り外す場合、反射鏡14は、試料流路2cの端部から試料流路2cの延伸方向に引き抜かれる。反射鏡14は、試料流路2cの壁面と反射鏡14の外周面との間に生じる摩擦力よりも大きな力を試料流路2cの延伸方向に加えられることで試料流路2cの外部に移動される。または、反射鏡14は、試料流路2cの内径よりも小さい外径の円筒状の形状に弾性変形された状態で試料流路2c内から引き抜かれる。試料流路2cの壁面によって円筒状の変形形状に保持されていた反射鏡14は、試料流路2cから取り出されることで平板状の基本形状に戻る。よって、反射鏡14は、試料流路2cの外において開断面を有する平板状の基本形状を維持している。
【0054】
反射面14aにおける損傷、腐食、試料の付着等よって反射鏡14の反射率が低下した場合、光度計1では、反射鏡14の交換または洗浄が行われる。試料流路2c内において反射面14aが閉断面の内方に位置する円筒状の変形形状に保持される反射鏡14は、試料流路2cから取り外されると弾性力によって閉断面を有さない平板状の基本形状に戻る。つまり、試料流路2cの外部において、反射鏡14は、反射面14aを遮る部分を有さない開断面を有する基本形状を維持する。よって、反射鏡14は、試料流路2cの外部において、反射面14aの状態を容易に視認可能である。光度計1は、試料流路2cの外部において、試料流路2cから取り出した反射鏡14の反射面14aの状態に応じて、反射鏡1の洗浄または交換が行われる。
【0055】
このように、光度計1は、試料流路2cの形状に基づいて弾性変形可能な板状部材である樹脂製のシートから構成される反射鏡14を有している。反射鏡14は、開断面を有する板状部材としての基本形状を有している。反射鏡14は、試料流路2c内に配置された場合、試料流路2cの壁面に沿って反射面14aを内方に向けた筒状に湾曲される。また、反射鏡14は、試料流路2cから取り外されることで弾性変形前の板状部材としての基本形状に復元できる。つまり、反射鏡14は、試料流路2cから取り外された場合、閉断面の内方に反射面14aが位置する円筒状の変形形状のまま閉断面の外方から反射面14aの状態を覗き込むようにして確認する必要がない。よって、反射鏡14は、試料流路2cから取り外された際に、反射面14aの汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、筒状の反射鏡14の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0056】
また、光度計1は、分析する試料Sの種類、分析内容、光源等に対応した特性の反射面14aを有する反射鏡14に交換可能である。光度計1は、例えば、試料Sの種類に応じた反射率を有する反射鏡14を取り付けることができる。また、光度計1は、例えば、試料Sの種類に応じて赤外光Liが乱反射するように反射面14aに凹凸を有する反射鏡14を取り付けてもよい。これにより、光度計1は、赤外光Liによる測定精度を向上させることができる。また、光度計1は、分析する試料Sによって反射面14aの汚れ具合が異なる場合でも、試料Sに応じたタイミング、方法で容易に反射面14aの汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を確認することができる。
【0057】
[実施形態1の変形例]
次に図4を用いて、本発明の実施形態1に係る光度計1の変形例について説明する。図4は、本発明の実施形態1に係る光度計1の変形例において全体構成を示す断面模式図である。
【0058】
図4に示すように、反射鏡14は、光源3から第1受光センサ5及び第2受光センサ7に向かうにつれて内径が小さくなる円錐台状でもよい。
【0059】
試料セル2の試料流路2cは、試料セル2の一端部から他端部に向かって延びる筒状の空間である。また、試料流路2cは、光源3が設けられている試料流路2cの一端部から第1受光センサ5及び第2受光センサ7が設けられている試料流路2cの他端部に向かうにつれて内径が小さくなる円錐台状に形成されている。つまり、試料流路2cは、大径側である一端部から小径側である他端部に向かうにつれて径方向内方に位置する壁面を有する。
【0060】
反射鏡14は、外力が加えられていない場合、平板状の形態である基本形状を維持する。また、反射鏡14は、外力が加えられることによって、例えば円錐台状の変形形状に弾性変形する。このように、反射鏡14は、開断面を有する平板状の基本形状から閉断面を有する円錐台状等の変形形状に弾性変形可能である。
【0061】
反射鏡14を試料流路2c内に配置する場合、光度計1には、平板状の基本形状から試料流路2cの円錐台状の空間内に配置可能であって反射面14aを径方向の内方に向けた円錐台状の変形形状に弾性変形される。円錐台状に弾性変形された反射鏡14は、小径側の端部から試料流路2cの大径側の一端部に延伸方向に挿入される。反射鏡14は、試料流路2c内において、外周面が試料流路の壁面に接触した状態で試料流路2c内に配置される。本実施形態において、反射鏡14は、試料流路2c内において、円錐台状の試料流路2cの壁面に沿って円錐台状に保持される。反射鏡14には、径方向外方に広がろうとする反発力によって反射鏡14の外周面と試料流路の壁面との間に摩擦力が生じる。よって、反射鏡14は、試料流路2c内において、円錐台状の試料流路2cの壁面に沿って円錐台状に保持される。
【0062】
反射鏡14を試料流路2c内から取り外す場合、反射鏡14は、試料流路2cの大径側の一端部から試料流路2cの延伸方向に引き抜かれる。反射鏡14は、試料流路2cの壁面との反射鏡14の外周面との間に生じる摩擦力よりも大きな力を試料流路2cの延伸方向に加えることで試料流路2c内から試料流路2cの外部に移動される。または、反射鏡14は、試料流路2cの内径よりも小さい外径の円錐台状の形状に弾性変形された状態で試料流路2c内から引き抜かれる。試料流路2cの壁面によって円錐台状の変形形状に保持されていた反射鏡14は、試料流路2cから取り出されることで、弾性力によって平板状の基本形状に戻る。よって、反射鏡14は、試料流路2cの外部において開断面を有する平板状の基本形状を維持している。
【0063】
反射鏡14の大径側に位置する光源3から照射された赤外光Liは、反射鏡14の小径側に向かうにつれて反射により第1受光センサ5及び第2受光センサ7に集約される。よって、円錐台状の反射鏡14は、赤外光Liが第1受光センサ5及び第2受光センサ7に受光されるまでに試料流路2c内の赤外光Liの経路を長くするとともに、第1受光センサ5及び第2受光センサ7が受光する赤外光Liの光量を増大させることができる。
【0064】
[実施形態2]
図5を用いて、本発明に係る光度計の実施形態2である光度計1Aについて説明する。図5は、光度計1Aの全体構成を示す断面模式図である。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0065】
図5に示すように、光度計1Aは、試料セル2の試料流路2c内に取り付け可能に構成される中間部材16を有する。
【0066】
中間部材16は、試料セル2の試料流路2cの形状を他の形状に変換するアダプタである。中間部材16は、円筒状の空間である試料流路2c内に配置可能な円筒形状を有している。つまり、中間部材16は、試料流路2c内に取り付け可能に構成されている。また、中間部材16は、軸線方向に延びる貫通孔である変換試料流路16aを有している。本実施形態において、変換試料流路16aは、円筒状の空間として構成されている。
【0067】
中間部材16は、軸線が試料流路2cの延伸方向に延びるように試料流路2c内に配置される。つまり、試料流路2c内に配置された中間部材16の変換試料流路16aは、試料流路2cの延伸方向に沿って延びるように試料流路2c内に位置している。また、中間部材16は、ブレード12と第1受光センサ5及び第2受光センサ7との間に位置する。よって、中間部材16の変換試料流路16aには、光学チョッパ11によってパルス光に変換された赤外光Liが照射される。変換試料流路16aの一端部には、試料供給口2aが連結されている。変換試料流路16aの他端部には、試料排出口2bが連結されている。これにより、変換試料流路16aには、試料供給口2aから変換試料流路16a内に試料Sが供給される。変換試料流路16a内に供給された試料Sは、試料排出口2bから外部に排出される。変換試料流路16a内には、反射鏡14が取り外し可能に設けられる。
【0068】
反射鏡14を変換試料流路16a内に配置する場合、反射鏡14は、平板状の基本形状から変換試料流路16aの内径よりも小さい外径であって反射面14aを径方向の内方に向けた円筒状の変形形状に弾性変形される。円筒状に弾性変形された反射鏡14は、変換試料流路16aの端部から変換試料流路16a内に延伸方向に挿入される。反射鏡14は、外周面が変換試料流路16aの壁面に接触した状態で変換試料流路16a内に配置される。本実施形態において、反射鏡14は、変換試料流路16a内において、円筒状の変換試料流路16aの壁面に沿って円筒状に保持される。反射鏡14は、変換試料流路16a内において閉断面を有する円筒状の変形形状に保持される。
【0069】
反射鏡14を変換試料流路16a内の取り外す場合、反射鏡14は、変換試料流路16aの端部から変換試料流路16aの延伸方向に引き抜かれる。または、反射鏡14は、変換試料流路16aの内径よりも小さい外径の円筒状の形状に弾性変形された状態で変換試料流路16a内から引き抜かれる。反射鏡14は、変換試料流路16aから取り出されることで、弾性力によって平板状の基本形状に戻る。なお、反射鏡14は、試料流路2cから中間部材16を取り外した後に変換試料流路16a内から取り外してもよい。
【0070】
このように、光度計1Aは、中間部材16によって試料流路2cの形状を変更可能である。よって、光度計1Aは、試料Sの種類に基づいて最適な形状の変換試料流路16aを有する中間部材16を取り付けることで測定精度が向上する。また、反射鏡14は、中間部材16によって形状が変更された変換試料流路16aの壁面に沿った筒状に保持される。よって、光度計1Aは、中間部材16によって試料Sが通過する空間の形状が変更されても反射面14aの汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、円筒状の反射鏡14の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0071】
[実施形態3]
図6を用いて、本発明に係る光度計の実施形態3である光度計1Bについて説明する。図6は、光度計1Bの試料流路2cに反射鏡17を取り付ける工程を示す模式図である。
【0072】
図6に示すように、光度計1Bは、複数の板状部材から構成される反射鏡17を有する。
【0073】
反射鏡17は、反射面17aを有する2つの板状部材17Y、17Zから構成されている。板状部材17Y、17Zは、反射面17aが凹曲面になるように半円状に湾曲している。また、板状部材17Y、17Z同士は、反射面17aが内方に位置する円筒状に組み合わせた組み合わせ形状を構成可能である。板状部材17Y、17Zは、例えば、金属製の板金部材から構成される。板状部材17Y、17Zは、研磨、メッキ等によって反射面17aが形成されている。
【0074】
板状部材17Y、17Zは、試料流路2c内において、反射面17aを内方に向けた円筒状の組み合わせ形状で配置可能である。板状部材17Y、17Zは、試料流路2c内に取り外し可能に設けられる。反射鏡17は、ブレード12と第1受光センサ5及び第2受光センサ7との間に位置する。
【0075】
反射鏡17を試料流路2c内に配置する場合、試料流路2c内には、板状部材17Y、17Zを組み合わせた円筒状の反射鏡17が試料流路2cの延伸方向から挿入される。反射鏡17は、試料流路2c内において、外周面が試料流路2cの壁面に接触した状態で配置される。反射鏡17は、試料流路2c内において、円筒状の試料流路2cの壁面に沿って円筒状に組み合わされた状態で保持される。なお、板状部材17Y、17Zは、それぞれ試料流路2c内に挿入された後に円筒状の組み合わせ形状に組み合わせてもよい。
【0076】
反射鏡17を試料流路2c内から取り外す場合、反射鏡17は、試料流路2cの端部から試料流路2cの延伸方向に引き抜かれる。試料流路2cの壁面によって円筒状に組み合わせられた状態を保持されていた反射鏡17は、試料流路2cから取り出されることで開断面を有する半円状の板状部材17Y、17Zに分離される。よって、板状部材17Y、17Zは、試料流路2cの外部において、反射面17aの状態を視認可能である。光度計1Bは、試料流路2cの外部において、試料流路2cから取り出した反射鏡17の反射面17aの状態に応じて、反射鏡17の洗浄または交換が行われる。
【0077】
このように、試料流路2c内において板状部材17Y、17Zが組み合わされた筒状の反射鏡17は、試料流路2cから取り外された際に、板状部材17Y、17Zに分離される。反射鏡17は、板状部材17Y、17Zにおけるそれぞれの反射面17aの汚れ、傷、腐食または酸化等の位置、程度を容易に確認することができる。これにより、円筒状の反射鏡17の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0078】
[実施形態4]
図7を用いて、本発明に係る光度計の実施形態4である光度計1Cについて説明する。図7は、光度計1Cの制御構成を示すブロック図である。
【0079】
図7に示すように、光度計1Cは、反射鏡14、17の汚れ具合の確認時期を報知する報知手段を有する。
【0080】
報知手段は、第2受光センサ7、制御装置15及び報知装置18から構成される。報知装置18は、反射鏡14または反射鏡17の反射面14aまたは反射面17aの反射面の状態の確認時期を報知する表示装置等から構成される(図1図5参照)。報知装置18は、制御装置15と電気的に接続されている。制御装置15は、報知装置18を作動させる信号を報知装置18に対して送信可能である。
【0081】
制御装置15は、第2受光センサ7が検出する赤外光Liの光量が閾値を下回っているか否か判定する。制御装置15は、第2受光センサ7が検出する赤外光Liの光量が閾値を下回っていると判定した場合、反射鏡14または反射鏡17の反射率が低下している可能性があるとして報知装置18を作動させる制御信号を送信する。
【0082】
報知装置18は、制御装置15から制御信号が入力されると、表示装置等を作動させる。
【0083】
第2受光センサ7が検出する光量の検出レベルは、反射面14aまたは反射面17aの反射率の低下により低下する。よって、光度計1Cは、第2受光センサ7の検出レベルが閾値を下回ると反射面14aまたは反射面17aが汚れている可能性が高いとして、反射鏡14または反射鏡17の確認を使用者に促す。これにより、円筒状の反射鏡14または反射鏡17の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0084】
[その他の実施形態]
上述の全ての実施形態において、光度計1、1A、1B、1Cは、非分散型赤外線方式の赤外吸光光度計である。しかしながら、光度計は、試料流路内において光を反射させる構成の光度計であればよい。光度計は、例えば、分散型赤外線方式の赤外吸光光度計であってもよい。
【0085】
上述の全ての実施形態において、試料セル2は、円筒状の空間である試料流路2cを有している。しかしながら、試料流路は、円筒状の空間でなくてもよい。試料流路は、筒状の空間であればよい。また、筒状の試料流路は、延伸方向における任意の位置で異なる閉断面を有する形状を含む。筒状の試料流路は、例えば、円筒状、角柱状、円錐台状を含む。
【0086】
上述の全ての実施形態において、光度計1、1A、1B、1Cは、試料流路2c内に取り外し可能な反射鏡14、17が取り付けられている。しかしながら、光度計は、試料流路の壁面が反射面として構成されている場合、前記試料流路内に透明または透光性を有する樹脂シート等の弾性部材を取り外し可能に取り付けてもよい。前記弾性部材は、前記壁面に沿って弾性変形し、前記壁面を覆っている。よって、前記弾性部材は、前記壁面によって光源からの赤外光を反射可能な状態で前記壁面への試料S等の付着を防止する。これにより、前記反射面の反射率の低下に伴う測定精度の低下を抑制することができる。
【0087】
上述の全ての実施形態において、光度計1、1A、1B、1Cは、試料Sに含まれる二酸化炭素の濃度を測定している。しかしながら、光度計は、二酸化炭素以外の物質を分析する構成でもよい。
【0088】
上述の全ての実施形態において、光度計1、1A、1B、1Cは、第1受光センサ5が検出する光量と第2受光センサ7が検出する光量との差分から試料Sを分析している。しかしながら、光度計は、単一の受光センサによって試料を分析する構成でもよい。また、光度計は、3つ以上の受光センサによって試料を分析する構成でもよい。
【0089】
上述の全ての実施形態において、第1受光センサ5及び第2受光センサ7は、インジウムヒ素アンモチンを用いたフォトダイオードから構成されている。しかしながら、第1受光センサ及び第2受光センサは、アルミニウムインジウムアンモチンを用いたフォトダイオードでもよい。
【0090】
上述の全ての実施形態において、光度計1、1A、1B、1Cは、試料流路2c内の試料Sに赤外光Liを照射して試料Sの分析を行う。しかしながら、光度計は、試料流路内の試料に応じて赤外光以外の波長の光を照射する構成でもよい。
【0091】
上述の全ての実施形態において、光度計1、1A、1B、1Cは、可視光から赤外光までの波長域の光を照射するフェラメント光源である光源3から試料Sに光を照射している。しかしながら、光度計は、LEDを光源としてもよい。
【0092】
上述の全ての実施形態において、光度計1、1A、1B、1Cは、光学チョッパ11によって光源3からの赤外光Liをパルス光に変換している。しかしながら、光度計は、LED光源を点滅させることによってパルス光を試料に照射する構成でもよい。
【0093】
上述の実施形態1において、反射鏡14、17は、例えば、50μmから100μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレート(ペット)製のシートによって構成されている。しかしながら、反射鏡は、筒状の試料流路内において、筒状の変形形状に弾性変形可能な材質、形状であればよい。反射鏡は、例えば、50μm程度の厚みを有する金属板でもよい。
【0094】
上述の実施形態1及び実施形態2において、反射鏡14は、試料流路2cの壁面に沿って円筒状の変形形状に弾性変形される1枚の平板状の板状部材から構成されている。しかしながら反射鏡は、平板状の基本形状を有する複数の板状部材が試料流路の壁面に沿って弾性変形されていてもよい。
【0095】
反射鏡は、例えば、前記試料流路内において、前記試料流路の壁面に沿って円弧状に弾性変形した状態で周方向に並ぶ3枚の板状部材によって円筒状に構成されていてもよい。また、反射鏡は、例えば、前記試料流路内において、前記試料流路の壁面に沿って円筒状に弾性変形した状態で試料流路の延伸方向に並ぶ2枚の板状部材から構成されていてもよい。
【0096】
上述の実施形態3において、反射鏡17は、反射面17aが凹曲面になるように半円状に湾曲している2つの板状部材17Y、17Zから構成されている。反射鏡17は、試料流路2c内において、円筒状に組み合わされた状態で保持される。しかしながら、反射鏡は、前記試料流路内において、反射面が凹曲面になるように湾曲している3つ以上の板状部材から円筒状に構成されていてもよい。
【0097】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
1、1A、1B、1C 光度計
2 試料セル
2a 試料供給口
2b 試料排出口
2c 試料流路
3 光源
4 光源カバー
5 第1受光センサ
6 第1光学フィルタ
7 第2受光センサ
8 第2光学フィルタ
9 プリアンプ
10 センサカバー
11 光学チョッパ
12 ブレード
13 モータ
14、17 反射鏡
14a、17a 反射面
15 制御装置
16 中間部材
16a 変換試料流路
17Y、17Z 板状部材
18 報知装置
S 試料
Li 赤外光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7