(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101278
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】集電体、蓄電デバイス及び集電体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20240722BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20240722BHJP
H01G 11/18 20130101ALI20240722BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240722BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240722BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01G11/68
H01G11/18
H01M4/02 Z
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005166
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 匠昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 守
(72)【発明者】
【氏名】瀬上 正晴
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB01
5E078AB02
5E078AB03
5E078FA13
5E078FA15
5E078FA24
5H017AA03
5H017AS03
5H017BB16
5H017CC01
5H017EE05
5H017EE06
5H017HH03
5H017HH04
5H017HH10
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB03
5H050CB20
5H050DA04
5H050DA08
5H050DA09
5H050EA12
5H050FA03
5H050FA08
5H050GA15
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高める。
【解決手段】本開示の集電体は、バイポーラ型蓄電デバイスに用いられる集電体であって、アルミニウム金属により構成された領域であるアルミニウム部と、アルミニウム部の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ型蓄電デバイスに用いられる集電体であって、
アルミニウム金属により構成された領域であるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有する、集電体。
【請求項2】
前記アルマイト部は、格子状に形成されており、
前記アルミニウム部は、前記格子内に形成されている、請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記アルマイト部に隣接する前記アルミニウム部とアルミニウム部との間の抵抗が0.5Ω以上である、請求項1又は2に記載の集電体。
【請求項4】
前記アルマイト部は、前記アルミニウム部との全体に対して面積比で20%以下である、請求項1又は2に記載の集電体。
【請求項5】
前記アルマイト部は、前記アルミニウム部同士の間である長さが5mm以下であり、耐曲げ曲率半径Rの下限値が0.5mmである、請求項1又は2に記載の集電体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の集電体と、
前記集電体の1の面に前記アルミニウム部と前記アルマイト部とに接触して形成された正極合材層と、
前記集電体の他の面に前記アルミニウム部と前記アルマイト部とに接触して形成された負極合材層と、を備えた電極構造体が積層されてなる、蓄電デバイス。
【請求項7】
バイポーラ型蓄電デバイスに用いられる集電体の製造方法であって、
アルミニウム金属箔に所定形状のマスキング材を形成したのち、アルマイト処理を実行し、マスキング材を除去することによって、アルミニウム金属の領域であるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有する集電体を得る処理工程、
を含む集電体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、集電体、蓄電デバイス及び集電体の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電デバイスとしては、支持基板を準備し、導電層を支持基板の表側に形成し、導電層を、樹脂含有シートの表面および裏面に転写することにより得られる積層型導電シートを、リチウムイオン二次電池として用いられるバイポーラ電池の集電体として用いるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この蓄電デバイスでは、製造コストが低減されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、樹脂含有シートの表裏に導電層を形成した集電体を用いたバイポーラ型リチウムイオン二次電池を実現できるものの、内部短絡発生時の安全性については検討されていなかった。このように、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡に対処することができる集電構造が求められていた。
【0005】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高めることができる集電体、蓄電デバイス及び集電体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究した結果、アルミニウム金属により構成された領域の間にアルミニウム金属がアルマイト処理されたアルミニウム酸化物であるアルマイト部を存在させることによって、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高めることができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する集電体は、
バイポーラ型蓄電デバイスに用いられる集電体であって、
アルミニウム金属により構成された領域であるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有するものである。
【0008】
本明細書で開示する蓄電デバイスは、
上述した集電体と、
前記集電体の1の面に前記アルミニウム部と前記アルマイト部とに接触して形成された正極合材層と、
前記集電体の他の面に前記アルミニウム部と前記アルマイト部とに接触して形成された負極合材層と、を備えた電極構造体が積層されてなるものである。
【0009】
本明細書で開示する集電体の製造方法は、
バイポーラ型蓄電デバイスに用いられる集電体の製造方法であって、
アルミニウム金属箔に所定形状のマスキング材を形成したのち、アルマイト処理を実行し、マスキング材を除去することによって、アルミニウム金属の領域であるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有する集電体を得る処理工程、
を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、バイポーラ型の蓄電デバイスでは、内部短絡が発生すると、短絡した電極全体から短絡局所に向かって集電体内を面方向に電流が集中して流れるために、短絡部位に電流が集中し発熱することがある。一方、本開示の集電体では、アルミニウム部の複数の領域の間にアルマイト部が存在するため、内部短絡時の面方向への電流集中をより抑制することができ、その結果、発熱を抑制し、より安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】蓄電デバイス10の断面の一例を示す模式図。
【
図3】通常の充放電時の蓄電デバイス10における電流の流れを示す説明図。
【
図4】内部短絡発生時の蓄電デバイス10における電流の流れを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態で説明する本開示の集電体、蓄電デバイス及び集電体の製造方法は、バイポーラ型の蓄電デバイスに関するものである。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、アルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスのキャリアイオンは、リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどの第1族(アルカリ金属)イオン、マグネシウムイオンやストロンチウムイオン、カルシウムイオンなどの第2族イオンなどが挙げられる。ここでは、説明の便宜のため、蓄電デバイスが、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池である場合を、その主たる一例として以下説明する。
【0013】
(集電体)
実施形態で説明する本開示の集電体は、蓄電デバイスに用いられるシート状の集電体であり、アルミニウム金属により構成された領域であるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有する。この集電体において、アルミニウム部とアルマイト部との界面であるバリア層は、アルミニウム部と一体になっていることが好ましい。この集電体において、アルマイト部は、格子状に形成されており、アルミニウム部は、格子内に形成されているものとしてもよい。この集電体では、格子内のアルミニウム部は導電性を有し、格子状のアルマイト部は導電性を有さないため、例えば、内部短絡時に集電体の面方向への通電を効果的に抑制することができる。また、集電体は、アルマイト部に隣接するアルミニウム部とアルミニウム部との間の抵抗が0.5Ω以上であることが好ましく、1Ω以上であるものとしてもよいし、5Ω以上であるものとしてもよい。なお、この抵抗は、アルマイト部が格子状である場合は、格子間抵抗としてもよい。
【0014】
集電体において、アルマイト部は、アルミニウム部との全体に対して面積比で20%以下であることが好ましく、17.5%以下であることがより好ましく、15%以下としてもよい。この面積比は、5%以上が好ましく、7.5%以上としてもよいし、10%以上としてもよい。この面積比は、より高い方がより安全性を高めることができる一方、より低い方が内部短絡時以外の充放電において、高抵抗な領域がより少なく、好ましい。この集電体において、アルミニウム部同士の間であるアルマイト部の長さLと、アルマイト部により区切られたアルミニウム部の長さXとの比L/Xは、例えば、0.01以上0.5以下の範囲が好ましく、0.05以上や0.1以上がより好ましく、0.15以上としてもよいし、0.20以上としてもよい。また、この比L/Xは、0.45以下が好ましく、0.4以下としてもよい。アルマイト部は、アルミニウム部同士の間である長さLが5mm以下であることが好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下としてもよい。アルマイト部の長さLは、絶縁性や作製の容易性の観点から、0.5mm以上であるものとしてもよい。また、アルミニウム部は、アルマイト部により区切られる1辺の長さXが5mm以上であることが好ましく、10mm以上としてもよいし、20mm以上としてもよい。アルミニウム部の長さXは、内部短絡時の導電性の観点から、50mm以下としてもよい。アルマイト部が格子状である場合、アルミニウム部の縦方向の長さX1と横方向の長さX2とは、同じであってもよいし、異なってもよい。同様に、アルマイト部の縦方向の幅L1と横方向の幅L2とは、同じであってもよいし、異なってもよい(
図1参照)。
【0015】
この集電体において、集電体を曲率半径Rの面に沿って曲げた際の耐曲げ曲率半径Rの下限値が0.5mm程度が好ましく、それ以下であることが好ましい。この曲率半径Rは、より小さいことが集電体の柔軟性及び曲げ強度的には好ましい。この下限値は、1.0mmであるものとしてもよいし、1.5mmであるものとしてもよい。ここで、耐曲げ曲率半径Rの下限値とは、その曲率半径Rで集電体を曲げた際に、アルマイト部にワレが生じない範囲としてもよい。また、耐曲げ曲率半径Rの下限値とは、その曲率半径Rで集電体を曲げた際に、アルマイト部にヒビが生じてもワレが生じない範囲としてもよい。
【0016】
(蓄電デバイス)
本開示の蓄電デバイスは、上述した集電体と、集電体の1の面にアルミニウム部とアルマイト部とに接触して形成された正極合材層と、集電体の他の面にアルミニウム部とアルマイト部とに接触して形成された負極合材層と、を備えた電極構造体が積層されてなるものである。蓄電デバイスは、いわゆるバイポーラ型の二次電池である。
【0017】
本実施形態で開示する蓄電デバイスについて図面を用いて説明する。
図1は、蓄電デバイス10の一例を示す模式図である。
図2は、蓄電デバイス10の一例を示す断面図である。
図4は、通常の充放電時の蓄電デバイス10における電流の流れを示す説明図である。
図5は、内部短絡発生時の蓄電デバイス10における電流の流れを示す説明図である。
【0018】
蓄電デバイス10は、単セル30が多段に積層された単セル積層体40と、一対の外部集電体50と、を備えている。単セル30は、集電体20と、正極合材層32と、負極合材層34と、正極合材層32と負極合材層34との間に介在するイオン伝導媒体36と、を備えている。ここでは、イオン伝導媒体36は、正極合材層32と負極合材層34との間に介在するセパレータ38に含浸されている。集電体20は、上述した集電体である。単セル積層体40は、内部集電体としての集電体20を介して単セル30が直列になるように、つまり正極合材層32と負極合材層34とが交互になるように、多段に積層されている。この単セル積層体40は、集電体20の一方の面に正極合材層32を備え他方の面に負極合材層34を備えた電極構造体15が積層された構造を有している。単セル積層体40及び外部集電体50は、外装ケース60に収容されている。
【0019】
正極合材層32は、正極活物質を含むものである。正極合材層32は、例えば、正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体20の一方の面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。前者としては、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、後者としては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムバナジウム複合酸化物、リチウム鉄リン酸化合物などを用いることができる。導電材としては、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。溶剤としては、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。
【0020】
負極合材層34は、負極活物質を含むものである。負極合材層34は、例えば、負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体20の他方の面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。また、負極合材層34は、負極活物質を、集電体20の他方の面に密着させて形成したものとしてもよい。負極活物質としては、アルミニウムを集電体として利用可能であるものが好ましく、例えば、充放電電位がリチウム基準電位で0.75V以上であることが好ましく、0.8V以上、1.0V以上、1.2V以上であることが好ましい。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な、複数の元素を含む複合酸化物、複合材料、導電性ポリマーなどが挙げられる。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。複合材料としては、例えば、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体などが挙げられる。層状構造体としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸ジリチウムやビフェニルジカルボン酸ジリチウムなどが挙げられる。導電材や結着材、溶剤については、正極合材層32と同様のものを用いることができる。
【0021】
イオン伝導媒体36は、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などとしてもよいし、水溶液系電解液としてもよい。非水系電解液の溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0022】
セパレータ38は、キャリアイオンのイオン伝導を阻害せず正極合材層32と負極合材層34とを絶縁するものである。言い換えると、セパレータ38は、キャリアイオンを通し電子を通さないように構成されたものである。セパレータ38としては、蓄電デバイス10の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。このセパレータ38の厚さは、例えば、5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であるものとしてもよい。この厚さが5μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。また、セパレータ38の厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この厚さが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。
【0023】
外部集電体50は、単セル積層体40の両端に位置する2つの単セル30の各々の外側の電極層と接するように、一対設けられている。外部集電体50は、内部短絡が発生したときの安全性をより高める観点から、集電体20と同様の構造を有するものとしてもよい。また、外部集電体50は、通常の充放電を円滑に行う観点から、例えば連続体である導体で構成されているなど、集電体20と異なる構造を有するものとしてもよい。その場合、外部集電体50には、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。外部集電体50は集電体20と同じ材質としてもよいし異なる材質としてもよい。外部集電体50の形状は、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。外部集電体50の厚さは、集電体20の厚さTと同じかそれよりも厚いことが好ましい。外部集電体50の厚さは、例えば500μm以下としてもよい。外部集電体50の一方と他方とは、材質及び形状が同じものとしてもよいし、材質及び形状の少なくとも一方が異なるものとしてもよい。
【0024】
外装ケース60は、単セル積層体40及び外部集電体50を収容するものであり、各外部集電体50の一部を露出させる開口を有している。外装ケース60は、例えば円筒形状に形成されている。外装ケース60の材質は、例えば、ラミネートフィルムとしてもよく、例えば、熱融着性樹脂フィルムと金属箔と剛性を有する樹脂フィルムとが内側から外側へこの順に積層された高分子金属複合フィルムとしてもよい。熱融着性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、アイオノマー、エチレンビニルアセテートなどを用いることができる。金属箔としては、例えば、アルミ箔、ニッケル箔などを用いることができる。剛性を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどを用いることができる。この外装ケース60には、集電体20が、熱融着性樹脂フィルムの熱融着などによって固定されていてもよい。
【0025】
この蓄電デバイス10では、通常の充放電時には、
図3に示すように集電体20の厚さ方向に電流が流れる(白抜き矢印参照)。ここで、バイポーラ型電池では、内部短絡が発生すると、短絡した電極全体から短絡局所に向かって集電箔内を面方向に電流が集中して流れるために、短絡部位に電流が集中し発熱する。発熱の程度は短絡抵抗によって異なるが、時として温度が上昇し、発火する場合もある。一方、本開示の蓄電デバイス10では、集電体20を有しており、格子状のアルマイト部22がアルミニウム部21の間に形成されている。この蓄電デバイス10において、Al集電体を格子状、かつほぼ厚み方向全体にアルマイト化した集電体20では、蓄電デバイス10が内部短絡した場合、アルマイト格子内のアルミニウム部からは短絡箇所に向かって電流が流れるが、アルマイト格子外からは絶縁体であるアルマイトに遮られて、電流が大きく抑制されるため温度の上昇が抑制され、発火しにくくなる(
図4の点線矢印参照)。バイポーラ型蓄電デバイスの充放電電流は、積層された電極を積層方向に流れるため(
図3)、集電体内の電流の流れは厚さ方向である。したがって、集電体を格子状にアルマイト化してその部分の抵抗が高くなっても、電流はアルミニウム部を面内に流れず、厚さ方向のみに流れるため、充放電はほとんど阻害されない。例えば、アルマイト部の格子の上下の電極は若干充放電しにくくなるが、集電体のアルマイト部の格子の幅が5mmの場合、格子の両端から2.5mmはほぼ充放電するため、アルマイト部/(アルミニウム部+アルマイト部)の面積比が20%以下であることと相まって、アルマイト部のない集電体とほぼ同等の充放電性能が得られる。
【0026】
(集電体の製造方法)
本開示の集電体の製造方法は、上述したバイポーラ型の蓄電デバイス10に用いられる集電体20の製造方法である。この製造方法は、アルミニウム部21及びアルマイト部22を有する集電体20を製造する方法であり、処理工程を含む。
図5は、集電体20の製造方法の一例を示す説明図であり、
図5Aが処理対象物70の斜視図、
図5Bが処理対象物70の側面図、
図5Cがアルマイト処理中の図、
図5Dがアルマイト処理後の図、
図5Eが除去処理後の図である。この処理工程には、形成処理と、アルマイト化処理と、除去処理とを含むものとしてもよい。
【0027】
形成処理では、アルミニウム金属箔(Al箔71)に所定形状のマスキング材72を形成した処理対象物70を得るものとしてもよい(
図5A,B)。この形成処理において、マスキング材72に覆われた部分がアルミニウム部21になり、覆われない部分がアルマイト部22になる。この形成処理では、上述したように、アルマイト部22が格子状になるようにマスキングするものとしてもよい。このとき、長さLや長さXが上述した範囲になるようにすることが好ましい。マスキング材72は、アルマイト処理に影響しない材質であることが好ましく、例えば、樹脂材料としてもよい。マスキング材72の形成は、例えば、樹脂溶液をAl箔71の表面に、除去可能な態様で塗布して固化してもよいし、所定形状のマスキング材72をAl箔71の表面に除去可能な態様で貼付してもよい。また、形成処理では、マスキング材72を形成した面と異なる面に支持体73を形成してもよい。処理対象物70が支持体73を有するものとすれば、ハンドリングがし易く、好ましい。支持体73は、例えば、Al箔71の面に予め貼付するものとしてもよい。この支持体73は、アルマイト処理に影響しない材質が好ましく、樹脂材料としてもよい。樹脂材料としては、マスキング材72と同様の材質としてもよい。
【0028】
アルマイト処理では、処理対象物70に対して所定の条件でアルマイト処理を実行する。アルマイト処理は、処理液中で通電することでAlを強制的に酸化する処理である。この製造方法では、Al箔71の厚さ方向全てを酸化するものとする(
図5D)。アルマイト処理では、処理を行う面の脱脂処理などを行い、清浄化を図ることが好ましい。処理液としては、例えば、硫酸やシュウ酸などが挙げられ、硫酸が好ましい。また、処理条件は、より穏和な条件がアルマイト部22の柔軟性に関して好ましく、例えば、印加する電圧は、15V以下、10V以下、あるいは8V以下が好ましい。処理効率の観点から、印加する電圧は、5V以上としてもよい。また、処理時間は、Al箔71の厚さに応じて適宜設定すればよいが、1時間以上や、2時間以上、3時間以上などを適宜選択すればよい。アルマイト処理を行うと、マスキング材72のないAl箔71がアルマイト化し、細孔部74や細孔部よりも細孔径の小さな多孔部75を有するアルマイトが形成される。このアルマイトは、バリア面76で密接にAl箔71と接続され、その連続性が保たれた状態でアルミニウム部21とアルマイト部22とが形成される(
図5C,D)。
【0029】
除去処理では、マスキング材72を除去することによって、アルミニウム金属の領域であるアルミニウム部21と、アルミニウム部21の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部22と、を有する集電体20を得る。除去処理では、貼付されたマスキング材72を剥がす処理を行うものとしてもよい。また、支持体73を有する場合は、支持体73も除去する。このようにして、アルミニウム部21とアルマイト部22とを有する集電体20を作製することができる。
【0030】
以上詳述した集電体20及び蓄電デバイス10では、バイポーラ型の蓄電デバイスにおいて、内部短絡発生時の安全性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、バイポーラ型の蓄電デバイス10では、内部短絡が発生すると、短絡した電極全体から短絡局所に向かって集電体内を面方向に電流が集中して流れるために、短絡部位に電流が集中し発熱することがある。一方、本開示の集電体20では、アルミニウム部21の領域の間にアルマイト部22が存在するため、内部短絡時の面方向への電流集中をより抑制することができ、その結果、発熱を抑制し、より安全性を高めることができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、集電体20は、格子状のアルマイト部22と、格子内にアルミニウム部21を有するものとしたが、特にこれに限定されず、アルミニウム部21は、櫛歯状又は複数の線状に形成されており、アルマイト部22は、アルミニウム部21の間に形成されているものとしてもよい。
図6は、別の集電体20Bの一例を示す説明図である。この集電体20Bでは、線状のアルミニウム部21Bの領域とその間に線状のアルマイト部22Bの領域を有している。この集電体20においても、アルマイト部22により、面方向への電流集中をより抑制することができ、その結果、発熱を抑制し、より安全性を高めることができる。
【0033】
上述した実施形態では、アルマイト部22を矩形の格子状とし、アルミニウム部21の領域を矩形として説明したが、円形や楕円形、六角形や八角形など多角形としてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、正極活物質をリチウムイオン二次電池の正極活物質としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
【0035】
本開示は、以下の[1]~[8]のいずれかに示すものとしてもよい。
[1] バイポーラ型蓄電デバイスに用いられる集電体であって、
アルミニウム金属により構成された領域であるアルミニウム部と、前記アルミニウム部の複数の領域に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有する、集電体。
[2] 前記アルマイト部は、格子状に形成されており、
前記アルミニウム部は、前記格子内に形成されている、[1]に記載の集電体。
[3] 前記アルミニウム部は、櫛歯状又は複数の線状に形成されており、
前記アルマイト部は、前記アルミニウム部の間に形成されている、[1]に記載の集電体。
[4] 前記アルマイト部に隣接する前記アルミニウム部とアルミニウム部との間の抵抗が0.5Ω以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の集電体。
[5] 前記アルマイト部は、前記アルミニウム部との全体に対して面積比で20%以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の集電体。
[6] 前記アルマイト部は、前記アルミニウム部同士の間である幅が5mm以下であり、耐曲げ曲率半径Rの下限値が0.5mmである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の集電体。
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の集電体と、
前記集電体の1の面に前記アルミニウム部と前記アルマイト部とに接触して形成された正極合材層と、
前記集電体の他の面に前記アルミニウム部と前記アルマイト部とに接触して形成された負極合材層と、を備えた電極構造体が積層されてなる、蓄電デバイス。
[8] バイポーラ型蓄電デバイスに用いられる集電体の製造方法であって、
アルミニウム金属箔に所定形状のマスキング材を形成したのち、アルマイト処理を実行し、マスキング材を除去することによって、アルミニウム金属の領域であるアルミニウム部と、前記アルミニウム部に隣接しアルミニウム金属がアルマイト化された領域であるアルマイト部と、を有する集電体を得る処理工程、
を含む集電体の製造方法。
【実施例0036】
以下には、上述した蓄電デバイスについて実験で検討した例を実験例として説明する。なお、実験例3が実施例に相当し、実験例1、2が比較例に相当する。
【0037】
(集電体の作製)
図5に示すような処理を経て、集電体を作製した。厚さ15μmのアルミニウム箔(A1000系)に、1辺が20mmの矩形状のマスキングテープを9個、それぞれの間隔が3mmになるように貼布した(
図5A)。マスキングテープが貼付されていない裏面に、支持材としてのポリプロピレン(PP)フィルムを貼布したのちに、脱脂処理を行い、マスキングテープが貼布されている側のアルミニウム面を清浄にした試料を得た。この試料を硫酸電解液中に浸漬し、陽極酸化法の処理電圧と処理時間を変化させて15μmの厚さのほぼ全てをマスキングテープを貼布した側のAl面からアルマイト化し、格子幅3mm、格子間隔20mmで格子状にアルマイト化したアルミニウム集電体を得た。アルマイトの処理電圧は一般的な20Vと、その1/3程度の7Vで行った。処理時間は、処理電圧が20Vの場合は1時間、7Vの場合には1時間および3時間とした。アルマイト化した試料は、マスキングテープの除去、PPフィルムの除去を行い、評価に供した。
【0038】
(実験例1~3)
アルマイト処理を20V、1時間行ったものを実験例1とし、7V、1時間行ったものを実験例2とし、7V、3時間行ったものを実験例3とした。
【0039】
(集電体の評価)
一般的なアルマイト化では、アルミニウム部の表面全体を薄くアルマイト化することで、表面の絶縁性向上、耐酸化性の向上、意匠性の向上などを付与する(例えば
図5C)。したがって、アルマイト層の厚さ方向の絶縁性や、アルマイト層とAl金属層との間に存在するバリア層とAl金属層との剥離強度が重要である。本開示の集電体は、(1)アルマイト部/アルミニウム部の境界がシャープであること、(2)アルマイト部/アルミニウム部が接続されており且つ剥離しないこと、(3)アルマイト部が面方向に絶縁であること、(4)アルマイト部に曲げ強度などの強度があること、(5)アルマイト格子内のアルミニウム部は導通すること、(6)アルミニウム部間にあるアルマイト部の導電性などを満足するかについて、評価を行った。
【0040】
(1)アルマイト部/アルミニウム部の境界の鋭角性
境界がシャープであるものを「A」と評価し、境界がシャープでないものを「D」と評価した。評価Aでは、アルマイト格子幅の制御性が高いと判定することができる。評価は、おもて面を目視により評価した。
(2)アルマイト部/アルミニウム部の接続性
アルマイト部とアルミニウム部との間で剥離している領域がないものを「A」と評価し、剥離している領域が存在するものを「D」と評価した。評価Aでは、集電体使用時の電解液バリア性がより高いと判定することができる。
(3)アルマイト部の面方向の絶縁性
アルマイト部の絶縁性があるものを「A」と評価し、導電性があるものを「D」と評価した。
(4)アルマイト部の曲げ強度
集電体を所定の曲げ曲率で曲げた際に、割れないものを「A」と評価し、割れはないがヒビが一部生じるものを「B」と評価し、割れが生じたものを「D」と評価した。
(5)アルマイト格子内のアルミニウム部の導電性
絶縁性は、抵抗が1Ω以上であるものを「A」と評価し、10mΩ以下であるものを「C」と評価し、測定不能であるものを「D」と評価した。
(6)アルミニウム部間にあるアルマイト部の格子間抵抗
2つのアルミニウム部の間にあるアルマイト部による格子間抵抗を評価した。格子間抵抗は、抵抗が0.5Ω以上であるものを「A」と評価し、0.5Ω未満であるものを「C」と評価し、測定不能であるものを「D」と評価した。
【0041】
(結果と考察)
実験例1~3の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、アルマイト条件(20V、1時間)でアルマイト化した場合、Al箔の厚さ全体にアルマイト化が進行し、アルマイト化した部位は面方向に絶縁していたが、アルマイト化した部位が脆く、容易にワレるため集電体としての利用は不適であった。これに対して、アルマイト化時の電圧を7Vに低下させてアルマイト化した場合は、アルマイト化した部位がワレにくくなっていた。この集電体を円柱に沿わせて評価する曲率半径Rでの耐曲げ強度では、R=1.5mmでは、実験例2,3共にワレ、ヒビが認められず、R=0.5mmになると若干ヒビが入るもののワレない程度にまで高強度になった。この場合、処理時間が1時間ではAl箔の厚さ方向全体にアルマイト化されておらず、格子を跨いだアルミニウム部間の抵抗は10mΩ以下で、所望の0.5Ω以上の抵抗は得られなかった。しかし、処理時間を3時間とした実験例3では、Al箔の厚さ方向全体にアルマイト化が進行することで、格子を跨いだアルミニウム部間の抵抗が1~5Ω程度まで増大し、0.5Ω以上という所望の抵抗値を得ることができた。この実験例3では、上記6つの評価項目を全て満足する格子状にアルマイト化したアルミニウム集電体を得ることができることがわかった。
【0042】
【0043】
(バイポーラ電池に用いた場合の正常時と内部短絡時の電流の流れについて)
正極活物質にニッケル酸リチウム、負極活物質ににチタン酸リチウムを用いたバイポーラ電池について考察する、負極活物質にチタン酸リチウム(充放電電位:1.5V Li
+/Li)を用いており、正負極とも集電体はAlが使用可能である。ちなみに、セルの電圧は、2.7V程度である。
図3に示す通常時には電流は集電体内を厚さ方向に流れる。一方、電池内で集電体が異物等で短絡した場合は、通常の集電体を用いていると短絡した電極全体から短絡電流が集電体を面方向に流れ続けて短絡局所を加熱してしまう。これに対して、アルミニウム集電体において、金属状態のアルミニウム部とアルマイト化したアルマイト部とを有する場合には、
図4に示すように、内部短絡が発生しても、一つの格子内の小さな電極内のエネルギーが放電されるものの、短絡部位以外の電極からの電流はアルマイト部の高抵抗層に遮られて、短絡局所の加熱にはほとんど消費されず、極めて安全になる。表2に、通常集電箔と格子状アルマイト化集電箔のバイポーラ電極内で正負極が内部短絡した場合の短絡局所の消費エネルギーをシミュレーションで求めた結果を示す。表2には、箔状の集電体を縦10分割、横10分割の格子状にアルマイト化したものを検討した結果をまとめた。
【0044】
単セルの電圧2.7V、容量10Ah、単セルインピーダンスRi=50mΩのバイポーラ電池が、短絡抵抗RS=0~50Ωで短絡した場合を計算した。短絡直後の短絡局所を除いたセル全体の熱流量Wiと、短絡直後の短絡局所の熱流量Wsとは、RsとRiの比によって変わり、Riと同じ抵抗で短絡した(Rs)時にWsが最も大きくなり36.5Wとなった。このときに、内部短絡時の短絡局所の加熱速度が最大となり、通常集電体の場合は、この加熱が13.5Whのエネルギーだけ継続し、熱暴走に至る可能性が高いと考えられた。これに対して、集電体を格子状アルマイトによって0.5Ω以上の抵抗で10分割した場合は、短絡直後のWsは36.5Wで変わらないものの、この加熱は0.1~0.2Whのみのエネルギー分しか継続せず熱暴走に至る可能性は極めて低くなることが分かった。ちなみに通常充放電時には、格子状アルマイト化集電箔のアルマイト面積が面積比で20%以下であり、および格子幅が5mm以下であると、電極内でLiイオンが拡散することから、10C以下のレートでは、通常集電箔の98%以上の容量が得られるのでAl集電体のアルマイト化により電池性能が低下することはほとんどないことが分かっている。なお、内部短絡時には、集電箔のみでなく正極、負極電極の面方向を通っても短絡電流が流れるが、表3に示したように、正極合材、負極合材の抵抗はアルミニウム集電体に対して極めて大きいため、正極、負極電極の面方向を通っても流れる短絡電流は無視できる程度に小さい。
【0045】
【0046】
【0047】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
10 蓄電デバイス、15 電極構造体、20,20B 集電体、21,21B アルミニウム部、22,22B アルマイト部、23 合材層形成領域、30 単セル、32 正極合材層、34 負極合材層、36 イオン伝導媒体、38 セパレータ、40 単セル積層体、50 外部集電体、60 外装ケース、70 処理対象物、71 Al箔、72 マスキング材、73 支持体、74 細孔部、75 多孔部、76 バリア面、L1,L2,X1,X2 長さ。