(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101295
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/30 20210101AFI20240722BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240722BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240722BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240722BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240722BHJP
【FI】
H01M50/30
H01M50/119
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/342 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005195
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小倉 正也
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
【Fターム(参考)】
5H011AA10
5H011AA13
5H011CC06
5H011DD13
5H011KK01
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD05
5H012FF01
(57)【要約】
【課題】容器内への水分侵入を抑制しつつ、容器内の気体を常時排出することが可能であり、容器の内圧の上昇を抑制できる二次電池を提供する。
【解決手段】金属製の容器13の内部に、電極端子が電気的に接続された電極体が収容されるとともに、電解液が封入された二次電池であって、容器13は、電解液の液面高さよりも上方の位置に、他の部分よりも厚みが薄い薄肉部15を有し、当該薄肉部15に容器13の内外を貫通するように微細孔19が形成されており、微細孔19は、孔径が1μm以上20μm以下であり、長さRが孔径の0.8倍以上5倍以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の容器の内部に、電極端子が電気的に接続された電極体が収容されるとともに、電解液が封入された二次電池であって、
前記容器は、前記電解液の液面高さよりも上方の位置に、他の部分よりも厚みが薄い薄肉部を有し、当該薄肉部に容器の内外を貫通するように微細孔が形成されており、
前記微細孔は、孔径が1μm以上20μm以下であり、長さが孔径の0.8倍以上5倍以下である二次電池。
【請求項2】
前記容器は、
上部に開口を有する筐体と、
前記開口を封止する蓋体とを備え、
前記蓋体に前記薄肉部が形成され、当該薄肉部に前記蓋体の表裏を貫通するように前記微細孔が形成されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記微細孔は、前記蓋体の表面と直交する方向視における中央部に形成されている請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記薄肉部が容器内の圧力増大によって開弁する防爆弁部である請求項2又は3に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の容器の内部に、電極端子が電気的に接続された電極体が収容されるとともに、電解液が封入された二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド自動車などのモータを駆動源とする電動車両では、ニッケル水素蓄電池やリチウムイオン蓄電池などの二次電池が電源として用いられている。この種の二次電池では、内部短絡による発煙などに起因して電池ケース内の圧力が上昇した際に、電池ケースが破裂するという問題などが生じる虞がある。そこで、従来から、二次電池には、内部圧力が上昇した際における電池ケースの破裂を防止するための防爆弁(安全弁)が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属製の蓋体や、当該蓋体により内部が密閉され、内部に発電素子等が収容される金属製のケース、蓋体によって密閉されたケースの内圧が所定値以上に上昇すると破断する蓋体の一部に形成した安全弁などを備えた二次電池が開示されている。この二次電池においては、ケースの内圧が所定値以上に上昇した際には、安全弁が開弁してケースの外部に気体が排出されるため、ケースの破裂などの問題が発生し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1記載の二次電池では、蓋体及びケースがいずれも金属製であるため、使用時にケース内で気体が発生しても、発生した気体が蓋体やケースを通して外部へと排出されない。つまり、特許文献1記載の二次電池では、一旦発生した気体がケースの外部へと排出されずにケース内に蓄積されるため、気体の総発生量が増えるにつれてケースの内圧が上昇し、一旦上昇したケースの内圧は安全弁が開弁するまで大きく変化することなく維持され易い。
【0006】
そのため、ケースの内圧の上昇によって安全弁や蓋体とケースとの接合箇所に負荷が掛かる。これにより、安全弁の性能低下によって安全弁が二次電池の寿命末期まで安定した開弁圧性能を維持することができないという問題や、溶接箇所の破損を抑えるために溶接サイクルタイムの増加等によって溶接箇所の高強度化を図らなければならないという問題がある。
【0007】
このように、上記特許文献1記載の二次電池においては、ケース内の気体を常時排出することができないため、ケースの内圧の上昇を抑制できず、当該ケースの内圧に起因して種々の問題が生じる。
【0008】
ケース内の気体を常時排出できるようにするために、ケースに内外に貫通する孔を設けた場合、当該孔を通じて外部の水分がケース内に侵入し、二次電池の性能低下が引き起こされる。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、容器内への水分侵入を抑制しつつ、容器内の気体を常時排出することが可能であり、容器の内圧の上昇を抑制できる二次電池の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る二次電池の特徴構成は、
金属製の容器の内部に、電極端子が電気的に接続された電極体が収容されるとともに、電解液が封入された二次電池であって、
前記容器は、前記電解液の液面高さよりも上方の位置に、他の部分よりも厚みが薄い薄肉部を有し、当該薄肉部に容器の内外を貫通するように微細孔が形成されており、
前記微細孔は、孔径が1μm以上20μm以下であり、長さが孔径の0.8倍以上5倍以下である点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、微細孔が形成されていることで、容器の内部で気体が発生しても、微細孔を通じて容器の内部の気体を常時排出することができ、容器の内圧の上昇を抑制できる。また、微差孔の孔径が1μm以上20μm以下であり、長さが孔径の0.8倍以上5倍以下であることにより、微細孔を通じた容器内への水分侵入量を抑えられる。
すなわち、上記特徴構成によれば、容器内への水分侵入を抑制しつつ、容器内の気体を常時排出することが可能であり、容器の内圧の上昇を抑制できる。
【0012】
また、本発明に係る二次電池の更なる特徴構成は、
前記容器は、
上部に開口を有する筐体と、
前記開口を封止する蓋体とを備え、
前記蓋体に前記薄肉部が形成され、当該薄肉部に前記蓋体の表裏を貫通するように前記微細孔が形成されている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、筐体の側壁等に微細孔が形成されている場合と比較して、容器内において電解液の液面上に集まった気体を、微細孔を通じて効率よく排気することができる。したがって、上記特徴構成によれば、容器の内圧の上昇をより抑制し易い。
【0014】
また、本発明に係る二次電池の更なる特徴構成は、
前記微細孔は、前記蓋体の表面と直交する方向視における中央部に形成されている点にある。
【0015】
容器の内圧が高くなって容器が膨張すると、蓋体が中央部を頂部とする山なり形状に変形する場合がある。上記特徴構成によれば、蓋体の中央部に微細孔が設けられている。そのため、蓋体が中央部を頂部とする山なり形状に変形した際に、容器内の気体が微細孔に向けて流れ易くなり、微細孔を通じた気体の排気効率が向上する。したがって、上記特徴構成によれば、蓋体の変形を伴うような容器の内圧の上昇に対応できる。
【0016】
また、本発明に係る二次電池の更なる特徴構成は、
前記薄肉部が容器内の圧力増大によって開弁する防爆弁部である点にある。
【0017】
一般的に、防爆弁部の上方には、当該防爆弁部が開弁した際に容器内から排出される気体を所望の場所まで送るための排気経路が設けられる。上記特徴構成によれば、防爆弁部に微細孔が形成されている。そのため、微細孔を通じて排出された気体を排気経路を通じて所望の場所まで送ることができる。すなわち、上記特徴構成によれば、通常時(防爆弁部が開弁しておらず、微細孔から容器内の気体が排出されている時)と、異常時(防爆弁部が開弁している時)とで、排気経路を共用できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る封口体及びこれを備えた二次電池によれば、容器内への水分侵入を抑制しつつ、容器内の気体を常時排出することが可能であり、容器の内圧の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】一実施形態に係る二次電池の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図2のA部(防爆弁部近傍)を示す拡大断面図である。
【
図5】微細孔の孔径と水分侵入量との関係を示すグラフである。
【
図6】微細孔の孔径に対する孔の長さ(長さ/孔径)と水分侵入量との関係を示すグラフである。
【
図7】電池ケースの内圧が上昇した状態を示す図である。
【
図8】別実施形態に係る二次電池における防爆弁部近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る二次電池について説明する。なお、以下においては、二次電池がリチウムイオン二次電池である態様を例にとって説明する。また、以下では、説明を明確にするために、各記載や各図面を適宜簡略化している。
【0021】
〔二次電池1の構成〕
図1及び
図2を参照して、本実施形態の二次電池1の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る二次電池1の斜視図である。また、
図2は、本実施形態に係る二次電池1の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、二次電池1の高さ方向と平行な方向をZ軸方向とし、後述する電極体20の長手方向と平行な方向をX軸方向とし、電極体20の厚さ方向と平行な方向をY軸方向とする。Z軸方向は上下方向と平行な方向であり、X軸方向とY軸方向とは互いに直交し、水平方向と平行な方向である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の二次電池1は、ケース本体11及び封口板13からなる電池ケース10や、外部端子25,26及び集電端子27,28からなる電極端子、電極体20、電解液Lなどを備えている。二次電池1は、ケース本体11の内部に電極体20や集電端子27,28などを収容してケース本体11の開口を封口板13で封止した上で、ケース本体11の内部に電解液Lを注入した密閉型の二次電池である。
【0023】
〔電池ケース10の構成〕
図1及び
図2に示すように、本実施形態の電池ケース10は、上部が開口した略直方体形状のケース本体11と、ケース本体11の開口を封止する封口板13とから構成されている。本実施形態において、ケース本体11及び封口板13はいずれもアルミニウム製であるが、これに限られるものではなく、ケース本体11及び封口板13の材料には、各種金属や合金を用いることができる。本実施形態において、電池ケース10が「容器」に相当し、ケース本体11が「筐体」に相当する。
【0024】
本実施形態において、封口板13は、ケース本体11の開口の形状に応じた形状を有しており、ケース本体11の開口を封止可能に構成されている。本実施形態の封口板13は、略矩形状の平板部材からなり、長手方向(X軸方向)の一方端側に正極外部端子25及び正極集電端子27からなる正極端子PSが配設され、他方端側に負極外部端子26及び負極集電端子28からなる負極端子NSが配設されている。本実施形態において、封口板13が「蓋体」に相当し、正極端子PS及び負極端子NSが「電極端子」に相当する。
【0025】
また、詳細については後述するが、本実施形態の封口板13には、正極端子PSと負極端子NSとの間に、電池ケース10内の圧力増大によって開弁する防爆弁部15が形成されており、防爆弁部15には微細孔19が形成されている。更に、本実施形態において、封口板13には、防爆弁部15と正極端子PSとの間に、電池ケース10の内部に電解液Lを注入するための注液部14が形成されている。
【0026】
〔電極体20の構成〕
本実施形態において、電極体20は、長尺な帯状の正極材及び負極材を同じく帯状のセパレータを介して積層した状態で捲回して扁平形状に圧縮した捲回体で構成される。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の電極体20は、厚み方向視(Y軸方向視)において略矩形状であり、厚み方向視における長手方向(X軸方向)の一方端側には、正極材が集箔された正極端子接合部21が形成され、他方端側には、負極材が集箔された負極端子接合部22が形成されている。なお、電極体20の構造は特に限定されるものではなく、一般的な密閉型二次電池に用いられる種々の構造を採用できる。また、正極材及び負極材に用いる材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態において、正極材にはアルミニウム、負極材には銅を用いている。
【0027】
本実施形態において、電極体20は、絶縁性を有するフィルムに覆われた状態で、厚み方向及び長手方向が水平方向と平行になる姿勢でケース本体11の内部に収容されている。また、電極体20とケース本体11とは、絶縁性フィルム(図示せず)によって絶縁されている。
【0028】
〔正極側及び負極側の構成〕
本実施形態において、二次電池1は、外部端子としての正極外部端子25及び負極外部端子26を備え、集電端子としての正極集電端子27及び負極集電端子28を備えている。また、本実施形態の二次電池1は、正極絶縁部材29、負極絶縁部材30、正極ガスケット31及び負極ガスケット32を備えている。
【0029】
正極外部端子25及び負極外部端子26は、外部接続用の端子であり、封口板13の表面13a(上面)の側、換言すれば、ケース本体11の外部に配設されている。本実施形態において、各外部端子25,26は、それぞれ平面視略矩形状の板状部25a,26aなどを有している。本実施形態において、正極外部端子25はアルミニウム製、負極外部端子26は銅製であるが、各外部端子25,26の材料は特に限定されるものではなく、導電性の良好な各種金属や合金を用いることができる。
【0030】
正極ガスケット31及び負極ガスケット32は、絶縁性を有する材料からなる部材である。本実施形態において、正極ガスケット31及び負極ガスケット32には、ともにPFA樹脂を用いている。本実施形態において、正極ガスケット31及び負極ガスケット32は、板状の部位である基部(図示せず)の表面外縁部から上方に向けて側壁部31a,32aが延設された形状を有しており、側壁部31a,32aに周囲を囲まれた空間内に板状部25a,26aが位置するように正極外部端子25及び負極外部端子26が配置される。
【0031】
正極集電端子27及び負極集電端子28は、電極体20から電力を出入力するための端子であり、封口板13の裏面13b(下面)の側、換言すれば、ケース本体11の内部に配設されている。本実施形態において、正極集電端子27はアルミニウム製、負極集電端子28は銅製であるが、各集電端子27,28の材料は特に限定されるものではなく、導電性の良好な各種金属や合金を用いることができる。
【0032】
本実施形態の正極集電端子27及び負極集電端子28は、二次電池1の高さ方向(Z軸方向)に沿って延びる長尺な板状の部材である。各集電端子27,28の下端側には、電極体20の端子接合部(正極端子接合部21及び負極端子接合部22)に接合される電極接続部27a,28aを有している。一方、各集電端子27,28の上端側には、各外部端子25,26に電気的に接続される端子接続部27b,28bを有している。
【0033】
正極絶縁部材29及び負極絶縁部材30は、絶縁性を有する材料からなる板状の部材である。本実施形態において、正極絶縁部材29及び負極絶縁部材30には、ともにPFA樹脂を用いている。
【0034】
本実施形態の正極側においては、封口板13における長手方向の一方端側の表面13aの側に正極ガスケット31が配設され、当該正極ガスケット31上に正極外部端子25が配設されている。一方、封口板13における長手方向の一方端側の裏面13bの側に正極絶縁部材29が配設され、当該正極絶縁部材29の下側に正極集電端子27が配設されており、正極集電端子27の電極接続部27aが電極体20の正極端子接合部21に接合されている。なお、本実施形態では、正極外部端子25と封口板13とが正極ガスケット31によって絶縁され、正極集電端子27と封口板13とが正極絶縁部材29によって絶縁されている。
【0035】
本実施形態では、正極外部端子25の板状部25aの下面に軸部が形成されており、正極ガスケット31、封口板13、正極絶縁部材29及び正極集電端子27の端子接続部27bにそれぞれ形成された貫通孔に正極外部端子25の軸部が挿通し、端子接続部27bから突出した軸部の下端部(加締め部)が加締め加工されることで、正極外部端子25と正極集電端子27とが接合されている。なお、正極外部端子25の軸部と封口板13に形成された貫通孔と間は、正極ガスケット31によって気密が維持されている。
【0036】
詳細な説明については省略するが、本実施形態の二次電池1においては、負極側も同様の構成を有している。
【0037】
〔電解液L〕
電解液Lは、ケース本体11と封口板13とを接合後、含浸によって電極体20に保持させる液量を超える余剰量が注液部14から電池ケース10内に注入される。なお、注入された電解液Lの余剰量は、電池ケース10内に溜まる。具体的に、本実施形態においては、電解液Lの液面が、液面最大高さLHmaxを超えないように電池ケース10内に電解液Lを注入する。なお、液面最大高さLHmaxは、電池ケース10(具体的にはケース本体11)の底部内面から電極体20の上端と封口板13の裏面との間に任意に設定される位置までの高さである。そして、電極体20に十分に電解液Lが保持されると、余剰量の電解液Lが電池ケース10内に溜まる。本実施形態では、電池ケース10内に溜まった余剰量の電解液Lの液面高さLHは、電池ケース10(具体的にはケース本体11)の底部内面から二次電池1の高さ方向における略中間の位置までの高さとなる。また、電解液Lの液面高さLHは、通常の使用状態(外部端子25,26を上側に向けて据え置いた状態)における電解液Lの液面の高さである。
【0038】
なお、電解液には、電荷担体として機能する電解質を溶媒に溶解したものを用いることができ、添加剤等を含んでいてもよい。また、電解質の種類も特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば、LiPF6などのリチウム塩を1種又は複数組み合わせて用いることができる。更に、電解液に含まれる溶媒の種類も特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば、カーボネート類などの非水系溶媒を1種又は複数組み合わせて用いることができる。
【0039】
〔防爆弁部15の構成〕
次に、防爆弁部15の構成について、図面を参照して詳細に説明する。
図3は、
図2のA部(防爆弁部15近傍)を示す拡大断面図である。
図4は、封口板13の防爆弁部15近傍を示す平面図である。
【0040】
図1~
図4に示すように、封口板13は、その長手方向における中央部に防爆弁部15が形成されている。具体的に、本実施形態の防爆弁部15は、封口板13の裏面13bが表面13aの側に向けて凹むとともに、表面13aが裏面13bの側に向けて裏面13bの凹みよりも相対的に深さが浅くなるように凹んで形成されている。つまり、防爆弁部15は、封口板13の表面13aと直交する方向視における中央部に、封口板13の他の部分よりも厚みが薄い薄肉部として形成されている。なお、防爆弁部15の厚みは、要求される開弁圧に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1mm~0.2mmである。
【0041】
また、
図3及び
図4に示すように、本実施形態において、防爆弁部15には、電池ケース10内の圧力増大による電池ケースの破裂を防ぐため、電池ケースが破裂しない程度の内部圧力で開裂するための起点となる破断起点部16が形成されている。具体的に、本実施形態においては、防爆弁部15の表面15a及び裏面15bのそれぞれに形成された断面凹形状の2本の破断用溝部17a,17b,18a,18bにより破断起点部16が構成されており、防爆弁部15の表面15aに形成された2本の破断用溝部17a,17bは平面視において交差し、裏面15bに形成された2本の破断用溝部18a,18bは底面視において交差している。つまり、破断起点部16は、防爆弁部15の他の部分よりも厚みが薄い薄肉部として形成されている。なお、破断起点部16の厚みは、要求される開弁圧に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.02mm~0.08mmである。また、当該破断起点部16を構成する破断用溝部の数や断面形状についても、要求される開弁圧に応じて適宜変更すればよい。
【0042】
ここで、本実施形態の二次電池1のように、ケース本体11及び封口板13がいずれも金属製である、換言すれば、電池ケース10が金属製である密閉型の二次電池においては、電池ケース10内への水分の侵入と電池ケース10外への電解液Lの漏出とを防止できるという利点がある。その一方で、電池ケース10が金属製の密閉型二次電池では、内部短絡による発煙などのように、使用時に電池ケース10内で気体が発生しても、発生した気体が電池ケース10の外部へと排出されない。そのため、電池ケース10の内圧の上昇を抑制できず、電池ケース10の内圧に起因して種々の問題が生じる虞がある。
【0043】
そこで、本実施形態の二次電池1においては、電池ケース10内の気体を排出して電池ケース10の内圧の上昇を抑制するための措置として、電池ケース10に微細孔19を形成する措置を講じている。
【0044】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の微細孔19は、電解液Lの液面高さLH及び液面最大高さLHmaxよりも上方に位置する封口板13に形成された防爆弁部15に、その表裏面を貫通するように形成されている。より具体的に、微細孔19は、防爆弁部15に形成された破断起点部16の平面視中央部(2本の破断用溝部17a,17bの交点)に、表裏面を貫通するように形成されている。つまり、微細孔19は、電解液Lの液面高さLH及び液面最大高さLHmaxよりも上方の位置に形成された肉薄部に電池ケース10の内外を貫通するように形成されている。
【0045】
ここで、二次電池1に微細孔19が形成されている場合、二次電池1の性能低下を抑制すべく、微細孔19を通じた電池ケース10内への水分侵入を抑制する必要がある。
【0046】
そこで、発明者は鋭意研究を重ねた結果、微細孔19の孔径及び孔径に対する孔の長さの比を所定の範囲に調整することで、電池ケース10内からの気体の排出を可能にしつつ、電池ケース10内への水分侵入を抑制できることを見出した。
【0047】
すなわち、発明者は、孔径及び孔径に対する孔の長さの比が異なる微細孔を形成した二次電池1を作製し、各二次電池1の電池ケース10内に侵入した水分量を測定した。具体的には、各二次電池1の電池ケース10に厚み15μmの薄肉部を形成し、当該薄肉部に直径1μm、5μm、10μm、20μm及び30μmの微細孔を形成し、電池ケース10内に侵入した水分量を測定した。
図5及び
図6は、その結果をまとめたグラフであり、
図5は、微細孔の孔径と水分侵入量との関係を示すグラフであり、
図6は、微細孔の孔径に対する孔の長さ(長さ/孔径)と水分侵入量との関係を示すグラフである。
【0048】
図5から分かるように、微細孔の孔径が1μm以上20μm以下であれば、水分侵入量が抑えられる。一方、
図6から分かるように、孔径に対する孔の長さの比(長さ/孔径)が0.8~5、換言すれば、長さが孔径の0.8倍以上5倍以下であれば、水分侵入量が抑えられる。このように、孔径が1μm以上20μm以下であり、且つ、長さが孔径の0.8倍以上5倍以下であれば、水分侵入量を抑えつつ気体の排出が可能となるのは、孔径が気体を通しつつ、当該気体よりも分子サイズが小さく粘度が大きい水を通さないサイズとなり、且つ、孔内での水の拡散が抑えられるためであると推察される。
【0049】
したがって、本実施形態の二次電池1において、微細孔19は、孔径Rが1μm以上20μm以下であり、長さT1が孔径の0.8倍以上5倍以下である。なお、本実施形態において、孔径Rとは、微細孔の開口縁に外接する円の直径をいうものとする。また、本実施形態において、長さT1は、破断起点部16の板厚と同義である。
【0050】
なお、本実施形態の封口板13を作製する手法としては、アルミニウムなどの板材に防爆弁部15や破断起点部16が形成されるようにプレス加工や切削加工を施し、集束イオンビーム法などのミクロンオーダーの加工が可能な既知の手法を用いて微細孔19を形成する方法を例示できる。
【0051】
以上の構成を備えた二次電池1の作用効果について説明する。
図7は、電池ケース10の内圧が上昇した状態を示す図であり、同図中における太線の矢印は気体の流れを表している。
【0052】
本実施形態の二次電池1によれば、微細孔19を通じた電池ケース10内への水分侵入量を抑えながら、当該微細孔19を通じて電池ケース10の内部で発生した気体を常時排出することができ、電池ケース10の内圧の上昇を抑制できる。
【0053】
したがって、本実施形態の二次電池1によれば、電池ケース10の内圧を低くするために確保していた余剰空間を減らし、発電に関与する電極体20などの電池要素が占める領域を増やして、電池容量の向上を図ることが可能である。
【0054】
また、本実施形態の二次電池1によれば、電池ケース10の内圧の上昇を抑制できることで、防爆弁部15や破断起点部16へのダメージを低減でき、電池の寿命末期まで安定した開弁圧性能を維持できる。
【0055】
更に、本実施形態の二次電池1では、電池ケース10の内圧の上昇を抑制できることで、ケース本体11と封口板13との溶接箇所へのダメージを低減できる。したがって、溶接時の溶け込み深さを減らし、溶接サイクルタイムや溶接エネルギーを削減できる。
【0056】
また、本実施形態の二次電池1では、封口板13の平面視中央部に形成された防爆弁部15の破断起点部16に微細孔19が設けられている。これにより、
図7に示すように、電池ケース10内に気体が発生し、発生した気体が電池ケース10の上方に集まって当該電池ケース10の内圧が上昇し、封口板13が中央部を頂部とする山なり形状に変形した際に、電池ケース10内の気体が微細孔19に向けて流れ易い。したがって、微細孔19が封口板13の中央部以外に形成されている場合や、微細孔19がケース本体11に形成されている場合と比較して、当該微細孔19を通じて気体を効率よく排気できる。また、電池ケース10内の内圧が急激に上昇して封口板13が変形するような事態が生じても、微細孔を通じて気体を効率よく排気できるため、内圧を低下させることが可能である。
【0057】
また、一般的な二次電池においては、防爆弁部15の上方に当該防爆弁部15が開弁した際に電池ケース10内から排出される気体を外部に送るための排気経路が設けられる。本実施形態の二次電池1においては、微細孔19が防爆弁部15に形成されていることにより、微細孔19を通じて電池ケース10内から排出された気体を排気経路を通じて外部に送ることが可能である。すなわち、本実施形態の二次電池1では、通常時(防爆弁部15が開弁していない時)と異常時(防爆弁部15が開弁している時)とで、排気経路を共用できる。したがって、微細孔19を通じて排出された気体を外部に排出するための設備を別途設ける必要がなく、設備コストを削減できる。
【0058】
〔別実施形態〕
〔1〕上記実施形態では、封口板13に微細孔19が形成されている態様について説明したが、このような態様に限られるものではない。ケース本体11における電解液Lの液面高さLHよりも上方の位置に薄肉部が形成され、当該薄肉部に微細孔が形成されている態様であってもよい。このような態様であっても、微細孔を通じた電池ケース10内への水分侵入量を抑えながら、当該微細孔を通じて電池ケース10の内部で発生した気体を常時排出することができ、電池ケース10の内圧の上昇を抑制できる。
【0059】
〔2〕上記実施形態では、封口板13の平面視中央部に薄肉部として形成された防爆弁部15の破断起点部16に微細孔19が形成されている態様について説明したが、このような態様に限られるものではない。封口板13の平面視中央部以外の部分に形成された薄肉部に微細孔19が形成されている態様であってもよい。また、防爆弁部15に破断起点部16が形成されているか否かにかかわらず、
図8に示すように、防爆弁部15に微細孔19が形成されている態様であってもよく、この態様において、長さT2は、防爆弁部15の板厚と同義である。このような態様であっても、微細孔を通じた電池ケース10内への水分侵入量を抑えながら、当該微細孔を通じて電池ケース10の内部で発生した気体を常時排出することができ、電池ケース10の内圧の上昇を抑制できる。
【0060】
〔3〕上記実施形態では、封口板13に一つの微細孔19が形成されている態様について説明したが、このような態様に限られるものではない。例えば、封口板13に複数の微細孔が形成されるとともに、ケース本体11にも複数の微細孔が形成されている態様、換言すれば、電池ケース10に複数の微細孔が形成されている態様であってもよい。このような態様であっても上記と同様に、電池ケース10の内圧の上昇を抑制できる。
【0061】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 :二次電池
10 :電池ケース(容器)
11 :ケース本体(筐体)
13 :封口板(蓋体)
15 :防爆弁部(薄肉部)
16 :破断起点部(薄肉部)
19 :微細孔
PS :正極端子(電極端子)
NS :負極端子(電極端子)
L :電解液
LH :液面高さ
R :孔径
T1 :長さ
T2 :長さ