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特開2024-101296表面被覆難燃剤粒子、樹脂組成物、及び成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101296
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】表面被覆難燃剤粒子、樹脂組成物、及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/02 20060101AFI20240722BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240722BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20240722BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20240722BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C09K21/02
C08K5/13
C08K5/36
C08K5/49
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005196
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】390036722
【氏名又は名称】神島化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】松田 華奈
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA10
4H028AA12
4H028BA06
4J002BB031
4J002BB061
4J002BB081
4J002BB121
4J002BC021
4J002BE011
4J002BG001
4J002BG041
4J002BG051
4J002BN151
4J002CE001
4J002CF041
4J002CF061
4J002CG001
4J002CL001
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002DE076
4J002DE146
4J002EJ027
4J002EJ037
4J002EV047
4J002EW067
4J002FD077
4J002FD136
4J002GC00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】樹脂組成物等の難燃剤として使用する際に、樹脂の耐熱老化性を改善することができる、表面被覆難燃剤粒子、これを含む樹脂組成物、及びその成形体を提供する。
【解決手段】本発明の表面被覆難燃剤粒子は、難燃剤粒子と、該難燃剤粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆剤とを含む表面被覆難燃剤粒子であって、前記被覆剤は、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを、同一分子内に又は混合物として含む。本発明の樹脂組成物は、このような表面被覆難燃剤粒子を含み、本発明の成形体は、このような樹脂組成物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤粒子と、該難燃剤粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆剤とを含む表面被覆難燃剤粒子であって、前記被覆剤は、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを、同一分子内に又は混合物として含む、表面被覆難燃剤粒子。
【請求項2】
前記難燃剤粒子が、水酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、ベーマイト粒子、又はこれら粒子の二種以上の混合物である、請求項1に記載の表面被覆難燃剤粒子。
【請求項3】
前記酸化防止成分が、硫黄系化合物、リン系化合物、若しくはフェノール系化合物、又はこれら化合物の残基成分である、請求項1に記載の表面被覆難燃剤粒子。
【請求項4】
前記長鎖炭化水素成分が、炭素数5~30の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する、請求項1に記載の表面被覆難燃剤粒子。
【請求項5】
前記被覆剤は、前記難燃剤粒子と反応する反応性官能基を有する、請求項1に記載の表面被覆難燃剤粒子。
【請求項6】
樹脂100質量部に対し、請求項1~5の何れか1項に記載の表面被覆難燃剤粒子5~500質量部と、熱劣化防止剤0~50質量部とが配合されている樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化マグネシウム粒子等の難燃剤粒子の表面を被覆剤で被覆した表面被覆難燃剤粒子、これを含む樹脂組成物、及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物は、幅広い分野で使用される樹脂成形品の難燃剤等として、幅広く用いられている。水酸化アルミニウムは、耐酸性に優れた無機材料であるが、熱可塑性樹脂に樹脂添加剤として用いて成形した場合、約200℃以上の温度で発泡現象を起こして、成形体とした際の機械的強度を低下させるという問題がある。
【0003】
一方、水酸化マグネシウムは、約300℃で分解が始まるため、高い加工温度でも耐えることができる、樹脂に対してフィラーとして用いることで、樹脂に難燃性を付与できる。また、ハロゲン系の難燃剤と異なり有毒ガスが発生せず、環境負荷を低減することができる。
【0004】
しかし、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機フィラーを樹脂に配合すると、樹脂の耐熱老化性を低下させてしまうという問題がある。その対策として老化防止剤の使用が挙げられるが、ブリードによる外観不良の原因にもなるため多量に配合することは出来ない。また、老化防止剤と水酸化マグネシウム等が反応してしまい、老化防止剤が失活してしまう場合もあった。
【0005】
このような難燃剤粒子による樹脂の耐熱老化性低下を抑制する技術として、難燃剤粒子の表面を表面処理剤で被覆する方法が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、水酸化マグネシウム等の金属水和物をシランカップリング剤で表面処理したものを、特定の樹脂組成物の難燃剤として使用することが提案されている。また、この文献には、オレイン酸等の不飽和脂肪酸や、ステアリン酸等の飽和脂肪酸を併用して表面処理することが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、鉄及び/又はマンガンと硫黄とを含む水酸化マグネシウム粒子からなり、硫黄の含有量Sが水酸化マグネシウム粒子に対し10~1800ppmの範囲である水酸化マグネシウム組成物が提案されている。また、この文献には、硫黄を含有するハイドロサルファイトを用いて水酸化マグネシウム粒子を被覆することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-314516号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/153936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、本発明者らの検討によると、特許文献1の技術では、ステアリン酸等の飽和脂肪酸を併用する場合、長鎖アルキル成分による効果は得られるものの、樹脂の耐熱老化性低下を抑制する効果が不十分であることが判明した。
【0010】
また、特許文献2の技術についても、本発明者らの検討によると、ハイドロサルファイト等を用いて水酸化マグネシウム粒子を被覆するだけでは、樹脂の耐熱老化性低下を抑制する効果が不十分であることが判明した。
【0011】
そこで、本発明の目的は、樹脂組成物等の難燃剤として使用する際に、樹脂の耐熱老化性を改善することができる、表面被覆難燃剤粒子、これを含む樹脂組成物、及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを、同一分子内に又は混合物として含む被覆剤で難燃剤粒子を被覆することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1] 難燃剤粒子と、該難燃剤粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆剤とを含む表面被覆難燃剤粒子であって、前記被覆剤は、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを、同一分子内に又は混合物として含む、表面被覆難燃剤粒子。
[2] 前記難燃剤粒子が、水酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、ベーマイト粒子、又はこれら粒子の二種以上の混合物である、[1]に記載の表面被覆難燃剤粒子。
[3] 前記酸化防止成分が、硫黄系化合物、リン系化合物、若しくはフェノール系化合物、又はこれら化合物の残基成分である、[1]又は[2]に記載の表面被覆難燃剤粒子。
[4] 前記長鎖炭化水素成分が、炭素数5~30の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する、[1]~[3]の何れかに記載の表面被覆難燃剤粒子。
[5] 前記被覆剤は、前記難燃剤粒子と反応する反応性官能基を有する、[1]~[4]の何れかに記載の表面被覆難燃剤粒子。
[6] 樹脂100質量部に対し、[1]~[5]の何れかに記載の表面被覆難燃剤粒子5~500質量部と、熱劣化防止剤0~50質量部とが配合されている樹脂組成物。
[7] [6]に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、樹脂組成物等の難燃剤として使用する際に、樹脂の耐熱老化性を改善することができる、表面被覆難燃剤粒子、これを含む樹脂組成物、及びその成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[表面被覆難燃剤粒子]
本発明の表面被覆難燃剤粒子は、難燃剤粒子と、該難燃剤粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆剤とを含むものである。つまり、難燃剤粒子の表面のうち、被覆剤によって一部又は全部が被覆されていればよい。被覆剤により被覆する割合としては、樹脂の耐熱老化性を良好に改善する観点から、難燃剤粒子の表面の30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく,80%以上が更に好ましく、100%が最も好ましい。つまり、被覆剤により被覆する割合の上限としては、100%が好ましい。
【0015】
被覆剤は、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを、同一分子内に又は混合物として含むものである。つまり、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを同一分子内に含む被覆剤、又は、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを混合物として含む被覆剤の何れも使用でき、両者を併用することも可能である。また、被覆剤としては、2種以上の酸化防止成分と2種以上の長鎖炭化水素成分とを、同一分子内に又は混合物として含むものでもよい。
【0016】
難燃剤粒子の表面がこのような被覆剤によって被覆されることにより、難燃剤粒子が樹脂等の母材と直接接触することを抑制することができ、母材の耐熱老化性を改善することができる。また、母材に老化防止剤を添加する場合でも、難燃剤粒子が老化防止剤と直接接触するのを抑制して、老化防止剤が失活するのを防止することができる。
【0017】
表面被覆難燃剤粒子においては、被覆剤が難燃剤粒子と反応する反応性官能基を有することが好ましく、これにより、被覆剤と難燃剤粒子と化学結合させることができる。その結果、被覆剤が樹脂等の母材からブリードするのを防止することができる。
【0018】
難燃剤粒子の配合時、樹脂等の母材の老化は難燃剤粒子と樹脂等との界面で発生しやすく、本発明では、その界面に老化防止の効果を有する化合物を偏在させることができるため、樹脂等の耐熱老化性を効率良く改善できると共に、難燃剤粒子の配合時のデメリットを克服することが出来る。
【0019】
例えば、被覆剤が老化防止効果のある硫黄を含んだシランカップリング剤と、長鎖の不飽和脂肪酸又はその塩とを含む場合、シランカップリング剤のシラノールと難燃剤粒子の水酸基との縮合反応で化学結合が生じて、ブリードが防止できる。また、長鎖の不飽和脂肪酸又はその塩がシランカップリング剤で処理できなかった表面部分を被覆することで、樹脂等に含まれる老化防止剤と難燃剤粒子の接触と失活を抑制することができる。
【0020】
以下、各成分について説明する。
【0021】
[難燃剤粒子]
難燃剤粒子としては、無機系難燃剤粒子、又は有機系難燃剤粒子が挙げられるが、原料コスト、環境面の観点から、無機系難燃剤粒子が好ましい。無機系難燃剤粒子としては、金属水酸化物、酸化金属水和物、金属酸化物、ケイ素系難燃剤粒子が挙げられるが、難燃性の向上効果の観点から金属水酸化物、酸化金属水和物が好ましい。
【0022】
特に好ましい難燃剤粒子としては、水酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、ベーマイト粒子(アルミナ1水和物粒子)、三酸化アンチモン、ホウ酸化亜鉛、又はこれら粒子の二種以上の混合物が挙げられるが、環境面、安全面の観点から、最も好ましくは、水酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、ベーマイト粒子(アルミナ1水和物粒子である。これらは2種以上を併用することも可能であり、同じ種類で物性の異なるものを2種以を併用することも可能である。
【0023】
難燃剤粒子の代表的な物性としては、以下のような水酸化マグネシウム粒子について説明する通りである。
【0024】
(水酸化マグネシウム粒子)
水酸化マグネシウム粒子は、水酸化マグネシウムを主成分とする粉体からなるものであり、主成分となる水酸化マグネシウムの割合は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上が更に好ましい。なお、原料由来の不純物成分を含むことができる。水酸化マグネシウムは、安価であること、化学的に安定であること、塩基性を示すこと、無毒性を有すること、それ自体が燃焼しないこと、分解時に吸熱をすること、そして分解して熱容量の大きな水分子を放出すること等の優れた特性を有する。
【0025】
水酸化マグネシウム粒子は、樹脂内の分散性を向上させる観点から、BET比表面積が好ましくは50m/g以下であり、更に好ましくは10m/g以下である。水酸化マグネシウム粒子のBET比表面積の下限値は、実用性、難燃性の観点から、0.1m/g以上が好ましく、1m/g以上がより好ましく、1.5m/g以上がさらに好ましい。
【0026】
水酸化マグネシウム粒子は、樹脂内の分散性を向上させる観点から、平均粒子径が0.1μm以上であり、好ましくは0.2μm以上であり、更に好ましくは0.5μm以上である。水酸化マグネシウム粒子の平均粒子径の上限値は、実用性、難燃性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0027】
また、本発明の水酸化マグネシウム粒子の形状は、1次粒子あるいは2次粒子が、平板状、不定形、針状等のいずれの形状でも良いが、流動性や力学特性等を向上させる観点から、1次粒子の形状が、平板状、不定形の形状であることが好ましく、平板状がより好ましい。平板状としては、実質的に平板状の立体形状であれば、平板状の頂点が丸みを帯びる等多少変形したものでもよいが、六角形平板状の形状であることが好ましい。
【0028】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、必ずしも純度100%である必要はなく、その製法等に応じて不純物を含有する場合がある。例えば、鉄、銅、マンガン、クロム、コバルト、ニッケル、バナジウムなどの金属の化合物である。これらの不純物の含有量は、金属換算で、粒子中に0.1質量%以下であることが望ましい。
【0029】
水酸化マグネシウム粒子は、天然物および合成物共に用いることができ、市販品として入手することもできるが、代表的には以下のようにして得られる。例えば塩化マグネシウム又はその水和物の水溶液を調製し、そこにアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)を添加してサスペンジョンを得た後、このサスペンジョンに水熱処理を施してスラリーを得て、次いでスラリーをろ過、洗浄、乾燥することで所望の水酸化マグネシウム粒子を製造することができる。
【0030】
(水酸化アルミニウム粒子)
水酸化アルミニウム粒子としては、特に限定されず、難燃性樹脂成形体に通常用いられるものが挙げられる。水酸化アルミニウムは、その表面に、シランカップリング剤の反応部位と水素結合若しくは共有結合等、又は分子間結合により、化学結合しうる部位(例えば、酸素原子)を有している。
【0031】
水酸化アルミニウムの粒径は、特に限定されないが、頻度50%径(粒径(D50)という。)として、0.8~2.5μmが好ましく、0.8~2.0μmがより好ましい。
【0032】
水酸化アルミニウム粒子としては、例えば、BF013(商品名、日本軽金属社製)、ハイジライトH42M、H43M(いずれも商品名、昭和電工社製)、OL-104LEO、OL-107LEO(いずれも商品名、ヒューバー社製)、C301N(商品名、住友化学社製)等が挙げられる。
【0033】
(ベーマイト粒子)
ベーマイトとは、酸化アルミニウムの一水和物(Al・HO)をいう。ベーマイトは、その表面に、シランカップリング剤の反応部位と水素結合若しくは共有結合等、又は分子間結合により、化学結合しうる部位(例えば、酸素原子)を有している。
【0034】
ベーマイトの粒径は、特に限定されないが、粒径(D50)として、0.5~2.5μmが好ましく、さらには0.7~2.2μmが好ましい。
【0035】
ベーマイト粒子は、通常の方法により、製造することができる。例えば、オートクレーブ等を用いて水酸化アルミニウムを加圧水熱処理することにより、製造することができる。このときの条件も特に限定されず、通常の条件を採用することができる。原料である水酸化アルミニウムの粒径や水熱処理時間等を適宜に設定することにより、ベーマイトの粒径(D50)、さらには形状等を設定することができる。
ベーマイト粒子としては、市販品を使用することもできる。例えば、APYRAL AOH30、APYRAL AOH60(いずれも商品名、ナバルテック社製)、BMM、BMB-1(いずれも商品名、河合石灰工業社製)等が挙げられる。
【0036】
[被覆剤]
難燃剤粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆剤は、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを、同一分子内に又は混合物として含むものである。つまり、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを同一分子内に含む被覆剤、又は、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを混合物として含む被覆剤の何れも使用でき、両者を併用することも可能である。
【0037】
酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを同一分子内に含む場合、酸化防止成分となる残基と長鎖炭化水素成分となる残基の質量比(前者/後者)は、耐熱性と、コスト面のバランスを図る観点から、1/10~10/1が好ましく、1/5~5/1がより好ましく、1/3~3/1が更に好ましい。
【0038】
酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを混合物として含む場合、酸化防止成分となる化合物と長鎖炭化水素成分となる化合物の質量比(前者/後者)は、耐熱性と、コスト面のバランスを図る観点から、1/10~10/1が好ましく、1/5~5/1がより好ましく、1/3~3/1が更に好ましい。
【0039】
被覆剤は、母材からのブリードを防止する観点から、前記難燃剤粒子と反応する反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基の数は、同一分子内に1~5個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましい。
【0040】
反応性官能基としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等のアルコキシシラン基、チタネート基、アルコキシアルミニウム基、カルボン酸基、ヒドロキシ基などが挙げられる。このような反応性官能基を有する被覆剤は、以下で例示する酸化防止成分又は長鎖炭化水素成分から選択することが可能である。また、シラン系カップリング剤等のカップリング剤の中から選択することが可能である。
【0041】
例えば、シラン系カップリング剤の中から、酸化防止成分を含むものを選択する場合、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを選択することができる。
【0042】
(酸化防止成分)
【0043】
酸化防止成分としては、硫黄系化合物、リン系化合物、若しくはフェノール系化合物、又はこれら化合物の残基成分が挙げられる。また、ベンゾイミダゾール系化合物を使用することも可能である。
【0044】
硫黄系化合物としては、例えば、ビス(2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、2-メルカプトベンゾイミダゾール及びその亜鉛塩、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)などがあり、これらの中でも、樹脂組成物に高い耐熱性を付与する点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0045】
リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、ヘプタキス(ジプロピレングリコール)トリホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ジオレイルヒドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピルグリコールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリ(デシル)ホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールとステアリン酸カルシウム塩との混合物、アルキル(C10)ビスフェノールAホスファイト、テトラフェニル-テトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、(1-メチル-1-プロペニル-3-イリデン)トリス(1,1-ジメチルエチル)-5-メチル-4,1-フェニレン)ヘキサトリデシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、3,9-ビス(4-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスフェススピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト、ポリ4,4’-イソプロピリデンジフェノールC12-15アルコールホスファイト、ビス(ジイソデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0046】
フェノール系化合物としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス(3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6-ヘキサンジオール-ビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5,-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどがあり、これらの中でも、樹脂組成物に高い耐熱性を付与する点から、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル基もしくは3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル基を2個以上有するものが好ましく、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0047】
ベンゾイミダゾール系化合物としては、例えば2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール、4-メルカプトメチルベンゾイミダゾール、5-メルカプトメチルベンゾイミダゾールやこれらの亜鉛塩などがある。
【0048】
(長鎖炭化水素成分)
長鎖炭化水素成分としては、例えば炭素数5~30、好ましくは炭素数10~25の飽和又は不飽和の炭化水素基を有するものが挙げられる。具体的な化合物としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アルカリ金属塩、高級脂肪酸と多価アルコールとからなるエステル類、及びリン酸と高級アルコールとからなるリン酸エステル類、長鎖炭化水素基を有する界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0049】
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸が挙げられ、ステアリン酸が分散性やハンドリング性の点で好ましい。高級脂肪酸アルカリ金属塩としては、上述の高級脂肪酸のアルカリ金属塩が挙げられ、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等を好適に用いることができる。分散性の観点から高級脂肪酸アルカリ金属塩が好ましく、中でも、ステアリン酸ナトリウムがより好ましい。これらは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0050】
高級脂肪酸と多価アルコールとからなるエステル類としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等の多価アルコールと脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0051】
リン酸と高級アルコールとからなるリン酸エステル類としては、例えば、オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のモノまたはジエステルまたは両者の混合物であって、それらの酸型またはアルカリ金属塩またはアミン塩等のリン酸エステル等が挙げられる。
【0052】
長鎖炭化水素基を有する界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン系界面活性剤が使用可能である。
【0053】
アニオン系界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフエニルエーテルジスルホン酸ナトリム等のアルキルジフエニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル(又はアルキルアリル)硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0054】
カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライト、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルペンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド等が挙げられる。
【0055】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
【0056】
(両成分を同一分子内に含む被覆剤)
次ぎに、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを同一分子内に含む被覆剤について説明する。このような被覆剤としては、硫黄系化合物、リン系化合物、若しくはフェノール系化合物に、長鎖炭化水素基が単結合、二重結合、エーテル結合、エステル結合などの結合基や、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、シクロ環基、複素環基などの連結基を介して結合したものが挙げられる。
【0057】
例えば、実施例で使用した下記の化学式(1)の化合物は、硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分とが単結合を介して結合したものである。
【0058】
【化1】
【0059】
また、実施例で使用した下記の化学式(2)の化合物は、フェノール系系酸化防止成分と長鎖アルキル成分とが、エステル結合とアルキレン基を介して結合したものである。
【0060】
【化2】
【0061】
酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを同一分子内に含む被覆剤として、特に好ましいものとしては、硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分とが、単結合等を介して結合した化合物である。
【0062】
(被覆剤の任意成分)
被覆剤には、任意成分として、カップリング剤、リン酸エステル等を含有していてもよい。
【0063】
カップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、p-トリメトキシシリルスチレン、p-トリエトキシシリルスチレン、p-トリメトキシシリル-α-メチルスチレン、p-トリエトキシシリル-α-メチルスチレン3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル) 3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル) 3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-プロピル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどシラン系カップリング剤や、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤、さらには、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤が挙げられる。このようなカップリング剤は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0064】
(被覆剤による被覆処理)
被覆剤を用いて、難燃剤粒子の表面処理(被覆処理)を行うには、公知の乾式法ないし湿式法を適用することができる。また、複数の被覆剤を用いる場合、同時又は順次被覆を行なうことが可能である。難燃剤粒子と反応する反応性官能基を有する被覆剤を用いで順次被覆を行なう場合、生産面では最初に反応性官能基を有する被覆剤で被覆することが好ましい。なお、反応性基の有無にかかわらず、先に酸化防止成分を含む化合物を用いて処理することが、耐熱性向上の観点から好ましい。
【0065】
乾式法としては、難燃剤粒子をヘンシェルミキサー等の混合機により、攪拌下で被覆剤を液状、エマルジョン状、あるいは固体状で加え、加熱又は非加熱下に充分に混合すればよい。
【0066】
湿式法としては、難燃剤粒子を水系溶媒若しくは非水系溶媒スラリーに、被覆剤を溶液状態又はエマルジョン状態で加え、例えば1~100℃程度の温度で機械的に混合し、その後、非水系溶媒の場合、乾燥等によって非水系溶媒を除去すればよい。非水系溶媒としては、例えばイソプロピルアルコールやメチルエチルケトン等が挙げられる。
【0067】
被覆剤の添加量は適宜選択することができるが、乾式法を採用する場合、湿式法に比べて不均一な表面処理レベルとなりやすいため、湿式法よりは若干多めの添加量とした方が良い。具体的には、難燃剤粒子100質量%に対して0.5~10質量%の範囲が好ましく、1~5質量%の範囲がより好ましい。湿式法を採用する場合、充分な表面処理及び被覆剤の凝集防止の点から、難燃剤粒子100質量%に対して0.1~10質量%の範囲が好ましく、0.2~5質量%の範囲がより好ましく、0.3~3質量%の範囲が更に好ましい。
【0068】
表面処理を行った難燃剤粒子は、必要に応じて、造粒、乾燥、粉砕、及び分級等の手段を適宜選択して実施することができる。なお、表面処理前の難燃剤粒子の各物性値は、前記の通りであるが、表面処理する割合が難燃剤粒子に対してわずかな量であるため、表面処理後の難燃剤粒子の各物性値も、表面処理前の難燃剤粒子の各物性値と殆ど同じ値を採用することができる。従って、表面処理後の難燃剤粒子の各物性値の記載は、ここでは省略する。
【0069】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、樹脂100質量部に対し、前記難燃剤粒子が5~500質量部と、熱劣化防止剤0~50質量部とが配合されていることを特徴とする。つまり、熱劣化防止剤は樹脂組成物に配合されていなくてもよい。ここで、熱劣化防止剤は、酸化防止剤、老化防止剤等を含む概念である。
【0070】
樹脂100質量部に対し、前記難燃剤粒子を好ましくは50~300質量部、より好ましくは100~200質量部配合できる。
【0071】
また、。樹脂100質量部に対し、熱劣化防止剤を好ましくは0~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部配合できる。
【0072】
前記樹脂として、特に制限されないものの、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。前記熱可塑性樹脂として、特に制限されないものの、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸メチル・メタクリル酸メチルコポリマー等の(メタ)アクリル酸エステル類の単独重合体又は共重合体等のアクリル樹脂;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、EVA(エチレンビニルアセテート樹脂)、EEA(エチレンエチルアクリレート樹脂)、EMA(エチレンアクリル酸メチル共重合樹脂)、EAA(エチレンアクリル酸共重合樹脂)、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン樹脂(PE);ポリプロピレンホモポリマー、エチレンプロピレン共重合体等のポリプロピレン樹脂(PP);ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマー);ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46等の各種ナイロンを含むポリアミド樹脂が挙げられる。これら樹脂は単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
本発明では、例えば、前記熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。流動性や力学特性等を向上させる観点から、前記熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂及びポリエチレン樹脂(PE)を含有することがより好ましい。
【0074】
熱劣化防止剤としては、4,4’-ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、2-メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル-チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。
【0075】
樹脂組成物は、上記の各成分を、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置で、好ましくは150℃~240℃で溶融混練して得ることができる。
【0076】
上記樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に他の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤、顔料、発泡剤、可塑剤、充填剤、補強剤、難燃剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、及び滑剤等が挙げられる。
【0077】
上記他の添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわなければ良いとの観点から特に限定されないものの、上記樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部配合するのが好ましい。
【0078】
[成形体]
成形体は前記樹脂組成物を用いて得ることができる。このような成形体は、樹脂等に所定量の難燃剤粒子を配合した後、公知の成形方法により得ることができる。このような成形方法としては、例えば押出成形、射出成形、カレンダー成形などである。
【0079】
成形体には、前述した所定の難燃剤粒子が配合されているので、機械特性、難燃性等が優れている。このような成形体は機械特性、難燃性等が求められる各種用途に用いることができ、例えば、OA機器、自動車部品(内外装品)、鉄道車両、船舶、航空機、産業機材、ゲーム機、建築部材(室内用、住宅用材)、電気製品(エアコン、冷蔵庫の外側、いわゆる電子・電気機器全般のハウジング用途)、室内装飾品、絶縁電線、光ファイバーケーブル、雑貨、文具、家具、楽器(リコーダー)、機械部品等の用途に用いることができる。
【実施例0080】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、物性等の測定と評価は、次ぎのようにして行なった。
【0081】
[粒子物性の測定]
(1)BET比表面積
8連式プリヒートユニット(MOUNTECH社製)を用いて窒素ガス雰囲気下、約130℃、約30分間で前処理した試料粉末を、BET比表面積測定装置としてMacsorb HM Model-1208(MOUNTECH社製)を用いて、窒素ガス吸着法で、BET比表面積を測定した。
【0082】
(2)平均粒子径
エタノール50mLを100mL容量のビーカーに採り、約0.2gの試料粉末を入れ、3分間の超音波処理(トミー精工社製 UD-201)を施して分散液を調製した。この調製液をレーザー回折法-粒度分布計(日機装株式会社製 Microtrac HRA Model 9320-X100)を用いて、体積基準のD50値を平均粒子径(μm)として、測定した。
【0083】
(3)エーテル抽出量
5gの試料粉末(表面処理する前後の水酸化マグネシウム粒子)を6N塩酸35mLに溶解させ、この試料溶液をエタノールで希釈した後、200mL容量の分液ロートに入れ、振とう機で5分間振とうした。その後、ジエチルエーテル35mLを加え、再び振とう機で3分間振とうした。下層を捨て飽和食塩水を約50mL、メチルオレンジを1滴加え、再度、振とう機で1分間振とうした。この操作を下層の液が黄色に変わるまで繰り返した後、下層を捨て、エーテル層を予め乾燥した重量既知の50mLビーカーにガラスフィルターを通して移した。エーテル層をドラフト内で揮発、105℃で2時間乾燥後、秤量し、エーテル抽出物の重量からエーテル抽出量を算出した。
【0084】
(4)硫黄含有量
ICP-AES法によって測定した。具体的には、4.2gの試料粉末(表面処理する前後の水酸化マグネシウム粒子)を6N塩酸35mLに溶解させ、250mLメスフラスコに入れてメスアップする。この試料溶液を誘導結合プラズマ-発光分光分析装置(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。別途、S標準液を用いて検量線を作成し、検量線法により、水酸化マグネシウム中のS含有量を算出した。
[樹脂物性の評価]
(5)170℃耐熱性の評価
・測定用成型体の作製
PP樹脂(商品名:ノバテックPP、銘柄:BC6D、メーカー:日本ポリプロ株式会社)に対して、試料粉末(表面被覆難燃剤粒子)140質量部、酸化防止剤(BASFジャパン社製:Irganox1010)0.5質量部を配合した後に、ラボプラストミル(東洋精機株式会社)を用いて、180℃で5分間、回転数50rpmで溶融混練して得た混練物を、縦125mm×横125mm×厚み2mmの空間のある型枠に入れて180℃でプレス成型し、縦125mm×横125mm×厚み2mmの成形体を作製した。
・耐熱性評価
作製した成型体を電動丸鋸で3cm四方に切り取り、試験片を作成した後、試験片の重量を測定した。測定後、170℃のギヤオーブン(エスペック株式会社)内に静置させ、一定期間ごとに取り出し重量を測定し、重量減少率を計算して試験片重量減少率が5重量%を超えるまでの日数を計測して劣化の判定を行った。重量減少率は以下の式(1)より算出した。
重量減少率={( W- W)/ W}×100 (1)
(W):劣化前の樹脂片重量
(W):劣化後の樹脂片重量
(W):劣化前の樹脂片に含まれる樹脂重量(ここで、樹脂重量はW=W-W×{樹脂重量/(樹脂+フィラー+酸化防止剤重量)}で求める値ある。)
【0085】
(6)引張物性の評価
エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂(三井・ダウ ポリケミカル社製、エバフレックスEV180)を用い、試験体試料を調製して評価を行った。試験体試料はEVA樹脂100質量部に対して実施例等で調製した表面被覆難燃剤粒子135質量部と、熱劣化防止剤(BASFジャパン社製、Irganox1010)0.5質量部とを配合した後に、ラボプラストミル(東洋精機株式会社)を用いて、180℃で5分間、回転数50rpmで溶融混練して得た混練物を、縦125mm×横125mm×厚み2mmの空間のある型枠に入れて180℃でプレス成形した。このシート成形体から2号形ダンベル状に打ち抜いた試験片を作製した。
【0086】
この引張用試験体を用いて、JIS K7113に準じ、試験速度200mm/minで引張強度と伸びの測定を行った。また、溶融混練時のトルクを確認した。
【0087】
<製造例1>(水酸化マグネシウムの製造)
3L容量のポリエチレン製容器に、マグネシウム原料として高純度MgCl6HOを480g秤量し、純水1Lを加えて攪拌し、MgCl水溶液を調製した。これにアルカリ原料として8.3NのNaOH水溶液510mLを攪拌下にゆっくりと添加し(Mg2+モル数:OHモル数は1:1.8であった)、さらに純水を加え、2Lのサスペンジョンを調製した。このサスペンジョンを3L容量のハステロイC-276製の接液部を有するオートクレーブ内に流し込み、攪拌下で140℃、5時間の水熱処理を行った。水熱処理後のスラリーを真空ろ過後、固形分に対し20倍容量以上の純水で充分洗浄した。その後、120℃乾燥機で乾燥させ、粉砕することで平均粒子径約1.1μm、BET比表面積約6.0m/g、0.5μm以下の粒子の割合が5.3vol%の水酸化マグネシウム粒子を得た。
【0088】
<実施例1>
製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子の、濃度150g/リットルの水懸濁液に、0.02質量%酢酸に調整した1質量%γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランを、水酸化マグネシウム100質量%に対してγーメルカプトプロピルトリメトキシシランが1.0質量%となるように、添加した。
この懸濁液を70℃で8時間、弱撹拌後、オレイン酸ナトリウムの5.0質量%水溶液(80℃)を、オレイン酸ナトリウムが水酸化マグネシウムの重量に対して1質量%になるように添加し、1時間撹拌した。次いで表面処理したスラリーを減圧濾過した後に、脱水ケーキを濾布に挟んで型枠に入れ、加圧圧搾して含水率を50%以下へ調整した。加圧圧搾して得たケーキを乾燥・粉砕して、含水率が0.2%程度の表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0089】
この表面被覆難燃剤粒子と表面処理前の水酸化マグネシウム粒子とを用いて、BET比表面積、平均粒子径、エーテル抽出量、硫黄含有量を測定したところ、下記の表1の通りであった。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、エーテル抽出量、硫黄含有量が処理前後で上昇していることから処理剤が水酸化マグネシウム粒子の表面に吸着していることが分かる。
【0092】
また、引張物性を評価した結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示すように、低トルク化、引張強度と伸びの増加から、表面処理によって樹脂への分散性が増加したことが確認できた。
【0095】
<実施例2>
製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子の、濃度150g/リットルの水懸濁液を、攪拌しながら80℃になるまで加温した。5質量%に調製した3-ドデシルチオプロピオン酸(長鎖炭化水素を有する酸化防止剤、反応性基はカルボン酸基)の水分散液を80℃の熱湯中に分散させた後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液で100%けん化したものを水酸化マグネシウム固形分重量に対し3-ドデシルチオプロピオン酸を1質量%となるように添加し、80℃で1時間攪拌して湿式法で表面処理を行った。その後、真空ろ過・水洗(水酸化マグネシウム固形分質量に対し5倍容量以上)、乾燥、粉砕して、表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0096】
<実施例3>
実施例1において、オレイン酸ナトリウムの代わりに、デカン酸ナトリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0097】
<実施例4>
実施例1において、オレイン酸ナトリウム1質量%を添加する代わりに、デカン酸ナトリウムを3質量%を添加したこと以外は、実施例1と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0098】
<実施例5>
製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子の、濃度150g/リットルの水懸濁液を、攪拌しながら80℃になるまで加温した。6質量%に調製した、硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分と有する下記の化合物(アデカ社製、AO-412S)の水分散液を80℃の熱湯中に分散させた後、水酸化マグネシウム固形分重量に対しAO-412Sを2質量%となるように添加し、80℃で1時間攪拌して湿式法で表面処理を行った。その後、真空ろ過・水洗(水酸化マグネシウム固形分質量に対し5倍容量以上)、乾燥、粉砕して、表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0099】
【化3】
【0100】
<実施例6>
実施例2において、3-ドデシルチオプロピオン酸を添加する代わりに、硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分と有する化合物:3,3′-チオジプロピオン酸ジオクタデシルエステル(BASFジャパン社製、IrganoxPS802FL)2質量%を添加したこと以外は、実施例2と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0101】
<実施例7>
製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子の濃度150g/リットルの水懸濁液を、攪拌しながら80℃になるまで加温した。リン系酸化防止剤(アデカ社製、アデカスタブ1500)の水分散液を、水酸化マグネシウム粒子100質量%に対し、リン系酸化防止剤として2質量%となるように添加した。この懸濁液を80℃で1時間撹拌した後、ステアリン酸ナトリウムを水酸化マグネシウム粒子100質量%に対し、1質量%となるように添加し、1時間撹拌した。このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥、粉砕して、表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0102】
【化4】
【0103】
<実施例8>
実施例7において、リン系酸化防止剤2質量%を添加する代わりに、下記のフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製、Irganox245)1質量%を添加したこと以外は、実施例7と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0104】
【化5】
【0105】
<実施例9-1>
製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子の、濃度150g/リットルの水懸濁液を、攪拌しながら80℃になるまで加温した。6質量%に調製したAO-412S(硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分と有する化合物、アデカ社製)分散液を、80℃の熱湯中に分散させた後、水酸化マグネシウム固形分重量に対しAO-412Sを1.5質量%になるよう添加した。5質量%に調整したIr245(フェノール系酸化防止剤、BASFジャパン社製)分散液を、80℃の熱湯中に分散させた後、Mg(OH)固形分重量に対しIr245を0.5質量%となるように添加し、80℃で1時間攪拌して湿式法で表面処理を行った。その後、5質量%に調製したステアリン酸ナトリウム水溶液を、Mg(OH)固形分重量に対しステアリン酸ナトリウムを1.0質量%となるように添加し、80℃で1時間攪拌して湿式法で表面処理を行った。その後、真空ろ過・水洗(水酸化マグネシウム固形分質量に対し5倍容量以上)、乾燥、粉砕して、表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0106】
<実施例9-2>
実施例9-1において、硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分と有する化合物(アデカ社製、AO-412S)を1.5質量%添加する代わりに、2.0質量%を添加したこと以外は、実施例9-1と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0107】
<実施例9-3>
実施例9-1において、硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分と有する化合物(アデカ社製、AO-412S)を1.5%質量添加する代わりに、3.0質量%を添加したこと以外は、実施例9-1と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0108】
<実施例9-4>
実施例9-1において、硫黄系酸化防止成分と長鎖アルキル成分と有する化合物(アデカ社製、AO-412S)を1.5質量%添加する代わりに、6.0質量%を添加したこと以外は、実施例9-1と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0109】
<実施例10>
実施例8において、フェノール系酸化防止剤1質量%を添加する代わりに、リン系酸化防止剤(アデカ社製、アデカスタブ1500)1.5質量%とフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製、Irganox245)0.5質量%とを添加したこと以外は、実施例8と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0110】
<実施例11>
実施例2において、3-ドデシルチオプロピオン酸1質量%を添加する代わりに、酸化防止成分と長鎖アルキル成分と有する下記の化合物(BASFジャパン社製、Irganox1076)2質量%を添加したこと以外は、実施例2と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0111】
【化6】
【0112】
<実施例12>
実施例5において、水酸化マグネシウム粒子の代わりに、ベーマイト粒子(神島化学工業社製、アルキューブ、粒径約1μm、BET比表面積約5m/g)を用いたこと以外は、実施例5と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0113】
<実施例13>
実施例5において、水酸化マグネシウム粒子の代わりに、水酸化アルミニウム粒子(ヒューバー社製、OL-104LEO、粒径約2μm、BET比表面積約4m/g)を用いたこと以外は、実施例5と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0114】
<比較例1>
製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子(無処理品)をそのまま用いて評価した。
【0115】
<比較例2>
特許文献2(国際公開WO2009/153936号公報)の実施例9の記載に従って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0116】
即ち、製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子の懸濁液中の水酸化マグネシウム粒子に対して0.5質量%に当るビニルトリメトキシシランを1質量% 酢酸溶液に混合して溶解し、そのビニルトリエトキシラン-酢酸混合溶液を水酸化マグネシウム懸濁液に添加して表面処理を行なった。
【0117】
更に、表面処理された水酸化マグネシウム粒子懸濁液中の水酸化マグネシウム粒子に対して鉄分が210ppmに当る塩化鉄(III)と、塩化鉄(III)に対して2.2倍のモル数に当る硫黄を含有するハイドロサルファイトを100gの水に溶解させた後、水酸化マグネシウム粒子懸濁液に添加し、十分に攪拌後、該懸濁液をスプレードライヤーで乾燥し、表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0118】
<比較例3>
製造例1で製造した水酸化マグネシウム粒子100質量%と、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1質量%と、オレイン酸ナトリウム1質量%とを別々に使用して混練することで、評価用の樹脂組成物を調製した。
【0119】
<比較例4>
2.3質量%のステアリン酸で表面処理された市販の水酸化マグネシウム粒子(神島化学工業社製、N-6、粒径約1μm、BET比表面積約4m/g)を用いて評価した。
【0120】
<比較例5>
4質量%のステアリン酸で表面処理された市販のベーマイト粒子(神島化学工業社製、FKB-104、粒径約1μm、BET比表面積約5m/g)を用いて評価した。
【0121】
<比較例6>
比較例2において、塩化鉄(III)を使用せず、ハイドロサルファイトを0.5質量%したこと以外は、比較例2と同様な操作を行って表面被覆難燃剤粒子を得た。
【0122】
以上のような表面被覆難燃剤粒子等を用いて評価を行なった結果を表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
表3に示すように、無処理の水酸化マグネシウム粒子を用いた比較例1では、170℃耐熱性が2日であるのに対して、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを混合物として含む被覆剤で被覆した実施例(実施例1~4、7~10)では、170℃耐熱性が大きく改善した。また、酸化防止成分と長鎖炭化水素成分とを同一分子内に含む被覆剤で被覆した実施例(実施例5~6、11~13)でも、170℃耐熱性が大きく改善した。また、酸化防止成分を増量した実施例9-2~9-4では、170℃耐熱性がより大きく改善した。
【0125】
これに対して、ハイドロサルファイトを含む被覆剤で被覆した比較例2、6では、170℃耐熱性が無処理品より低下していた。また、樹脂の混練り時に被覆剤となる成分を添加した比較例3では、被覆剤で被覆した実施例1と比較して、170℃耐熱性の改善効果が小さかった。更に、長鎖炭化水素成分のみを含む被覆剤で被覆した市販品である比較例4~5では、170℃耐熱性が不十分であった。